特表2018-531952(P2018-531952A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2018-531952チエノピリミジン化合物の新規製造方法、及びそれに使用される中間体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-531952(P2018-531952A)
(43)【公表日】2018年11月1日
(54)【発明の名称】チエノピリミジン化合物の新規製造方法、及びそれに使用される中間体
(51)【国際特許分類】
   C07D 495/04 20060101AFI20181005BHJP
   A61K 31/519 20060101ALN20181005BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20181005BHJP
   A61P 11/00 20060101ALN20181005BHJP
   A61P 43/00 20060101ALN20181005BHJP
【FI】
   C07D495/04 105Z
   C07D495/04CSP
   A61K31/519
   A61P35/00
   A61P11/00
   A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-521115(P2018-521115)
(86)(22)【出願日】2016年10月31日
(85)【翻訳文提出日】2018年4月23日
(86)【国際出願番号】KR2016012335
(87)【国際公開番号】WO2017074147
(87)【国際公開日】20170504
(31)【優先権主張番号】10-2015-0151993
(32)【優先日】2015年10月30日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG
(71)【出願人】
【識別番号】516132149
【氏名又は名称】ハンミ ファーマシューティカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】チャン、 ウク
(72)【発明者】
【氏名】ムン、 ヨン ホ
(72)【発明者】
【氏名】ハ、 テ ヒ
(72)【発明者】
【氏名】ソ、 キ ヒョン
【テーマコード(参考)】
4C071
4C086
【Fターム(参考)】
4C071AA01
4C071BB01
4C071CC02
4C071CC21
4C071EE13
4C071FF05
4C071GG01
4C071HH01
4C071HH05
4C071HH17
4C071JJ01
4C071JJ08
4C071KK14
4C071LL01
4C086AA03
4C086AA04
4C086CB29
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA20
4C086ZA59
4C086ZB26
4C086ZC20
(57)【要約】
チロシンキナーゼ、特に、変異性上皮細胞成長因子受容体チロシンキナーゼを選択的に抑制する活性を有するチエノピリミジン化合物の新規製造方法、及びそれに使用される新規中間体に係り、これにより、変異性上皮細胞成長因子受容体チロシンキナーゼによって誘発された非小細胞性肺癌の治療薬剤として有用な化学式1の化合物を、従来技術より簡便であって効率的に工業的量産が可能になった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)下記化学式3の化合物を、有機溶媒中で、塩基存在下で化学式4の化合物と反応させ、下記化学式2の化合物を得る段階と、
2)前記得られた化学式2の化合物を、有機溶媒中で、酸存在下で化学式5の化合物と反応させ、下記化学式1の化合物を得る段階と、を含む化学式1の化合物の製造方法:
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】
【請求項2】
前記段階1)で使用された有機溶媒は、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、N’,N’−ジメチルホルムアミド、N’N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドであり、また混合物から構成された群から選択されたことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記塩基は、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、及びその混合物から構成された群から選択されたことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記段階1)の反応後、化学式2の化合物が存在する溶液に、有機溶媒及び水の混合溶媒を添加し、化学式2の化合物を沈澱させる段階をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記有機溶媒は、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、及びその混合物から構成された群から選択されたことを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記有機溶媒は、アセトンまたはイソプロパノールであることを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記混合溶媒は、有機溶媒及び水の混合比が、体積比で、3:1〜1:3であることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項8】
前記段階2)で使用された有機溶媒は、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、ブタノール、2−ブタノール、イソプロパノール、N’N−ジメチルホルムアミド、N’,N’−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、及びその混合物から構成された群から選択されたことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記酸は、無機酸または有機酸であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
前記無機酸は、塩酸、硝酸、硫酸、及びその混合物から構成された群から選択されたことを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記有機酸は、ベンゾ酸、トルエン、スルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、及びその混合物から構成された群から選択されたことを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【請求項12】
前記有機酸は、トリフルオロ酢酸であることを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記段階2)の反応後、化学式1の化合物が存在する溶液に、有機溶媒及び水の混合溶媒を添加し、化学式1の化合物を沈澱させる段階をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項14】
前記有機溶媒は、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、及びその混合物から構成された群から選択されたことを特徴とする請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記有機溶媒は、アセトンまたはイソプロパノールであることを特徴とする請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記混合溶媒は、有機溶媒及び水の混合比が、体積比で、1:3〜1:9であることを特徴とする請求項13に記載の製造方法。
【請求項17】
下記化学式2の化合物:
【化6】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チロシンキナーゼ、特に、変異性上皮細胞成長因子受容体チロシンキナーゼを選択的に抑制する活性を有するチエノピリミジン化合物の新規製造方法、及びそれに使用される新規中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、変異性上皮細胞成長因子受容体チロシンキナーゼを選択的に抑制する活性を有する下記化学式1のチエノピリミジン化合物が開示されている。
【0003】
【化1】
【0004】
また、前記文献には、化学式1の化合物を製造する方法を開示している。具体的には、下記反応式1のように、化学式3の2,4−ジクロロチエノ[3,2−d]ピリミジンを3−ニトロフェノールと反応させ、化学式Bの化合物を製造し、化学式Bの化合物を4−(4−メチルピペラジン−1−イル)アニリンと反応させ、化学式Cの化合物を製造した後、化学式Cの化合物のニトロ基を還元させ、化学式Dの化合物を製造し、化学式Dの化合物を塩化アクリロイルと反応させ、化学式1の化合物を製造する。
【0005】
【化2】
【0006】
しかし、前記反応式1の経路を介した合成法は、製法上、次のような問題点がある。化学式Cの化合物を得る段階で生成される不純物を除去するために、カラムクロマトグラフィ精製法を利用したが、それは、工業的生産に適さず、収率も低いという問題点がある。化学式Cの化合物のニトロ基を還元させるために、鉄を過量に使用しなければなければならず、得られた化学式Dの化合物を、取り扱い難い塩化アクリロイルと反応させる過程を必要とする。また、化学式Dの化合物、及び化学式1の化合物いずれも工業的生産に適用し難い不適なカラムクロマトグラフィ法によって精製しなければならない困難さが伴う。
【0007】
それゆえに、本発明者らは、製造が容易であり、効率的であって工業的適用が可能なチエノピリミジン化合物の新規製造方法を開発することにより、本発明完成に至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第8,957,065号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、チエノピリミジン化合物を、簡便であって効率的に製造する方法を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、前記チエノピリミジン化合物の製造に使用される中間体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は、1)下記化学式3の化合物を、有機溶媒中で、塩基存在下で化学式4の化合物と反応させ、下記化学式2の化合物を得る段階、及び2)前記得られた化学式2の化合物を、有機溶媒中で、酸存在下で化学式5の化合物と反応させ、下記化学式1の化合物を得る段階を含む化学式1の化合物の製造方法を提供する:
【0012】
【化3】
【0013】
【化4】
【0014】
【化5】
【0015】
【化6】
【0016】
【化7】
【0017】
前記他の目的を達成するために、本発明は、下記化学式2の化合物を提供する:
【0018】
【化8】
【0019】
本発明の方法によって、変異性上皮細胞成長因子受容体チロシンキナーゼによって誘発された非小細胞性肺癌の治療薬剤として有用な化学式1の化合物を、従来技術より簡便であって効率的に工業的量産が可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0021】
本発明は、1)下記化学式3の化合物を、有機溶媒中で、塩基存在下で化学式4の化合物と反応させ、下記化学式2の化合物を得る段階、及び2)前記得られた化学式2の化合物を、有機溶媒中で、酸存在下で化学式5の化合物と反応させ、下記化学式1の化合物を得る段階を含む化学式1の化合物の製造方法を提供する:
【0022】
【化9】
【0023】
【化10】
【0024】
【化11】
【0025】
【化12】
【0026】
【化13】
【0027】
本発明は、前記化学式3の化合物を、有機溶媒中で、塩基存在下で前記化学式4の化合物と反応させ、前記化学式2の化合物を得る段階1)を提供する。
【0028】
前記化学式2の化合物の製造工程において、化学式3の化合物と反応する化学式4の化合物は、化学式3の化合物1モル当量に対して、1.0〜1.5モル当量、具体的には、1.2〜1.3モル当量の量でも使用される。
【0029】
前記段階1)の反応で使用される有機溶媒は、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、N’,N’−ジメチルホルムアミド、N’N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、及びその混合物から構成された群から選択されたいずれか一つでもある。本発明の一具体例によれば、前記有機溶媒は、N’,N’−ジメチルホルムアミド、N’N−ジメチルアセトアミドまたはジメチルスルホキシドでもある。使用される有機溶媒の量は、化学式3の化合物1gに対して、5〜20ml、具体的には、10〜15mlでもある。反応条件は、10℃〜60℃、具体的には、20℃〜35℃であり、3〜30時間、具体的には、4〜24時間遂行される。
【0030】
また、前記反応に使用される塩基は、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、及びその混合物でもある。本発明の一具体例によれば、前記塩基は、炭酸カリウムまたは炭酸ナトリウムでもある。反応に使用される塩基は、化学式3の化合物1モル当量に対して、1.0〜5.0モル当量、具体的には、2.0〜3.0モル当量の量でも使用される。
【0031】
前記反応によって生成される化学式2の化合物は、化学式2の化合物が存在する反応物に、有機溶媒及び水の混合溶媒を加え、固体として沈澱させて得ることができる。
【0032】
前記化学式2の化合物の沈澱のために使用される有機溶媒は、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、及びその混合物でもある。本発明の一具体例によれば、前記有機溶媒は、アセトンまたはイソプロパノールでもある。
【0033】
前記有機溶媒は、水と混合して使用することができ、このとき、有機溶媒及び水の混合比は、有機溶媒の種類によっても異なる。本発明の一具体例によれば、該有機溶媒として、アセトンまたはイソプロパノールを使用する場合、有機溶媒と水との混合比は、体積比で3:1〜1:3、具体的には、2:1〜1:2でもある。本発明の一具体例によれば、前記混合比は、1:1でもある。
【0034】
また、本発明は、前記方法によって得られた化学式2の化合物の純度を高める段階を追加して含んでもよい。純度を高めるために、下記2つの方法のうちいずれか一つ、または2つの方法をいずれも利用することができる。
【0035】
第1の方法は、得られた化学式2の化合物を追加精製する方法であり、化学式2の化合物に有機溶媒及び水の混合溶媒を加え、溶媒の還流温度まで加温及び撹拌し、それを室温に冷却し、再沈殿された固体を濾過して乾燥させ、さらに精製された化学式2の化合物を得ることができる。
【0036】
第2の方法は、有機溶媒及び水の混合溶媒を加えて固体として沈澱させる前に遂行される方法であり、化学式4の化合物と反応させた反応液に有機溶媒を添加し、加温して生成された不溶物を濾過して除去した後、そこに有機溶媒を添加して冷却させた後、前述のように、沈澱を介して、さらに精製された化学式2の化合物を得ることができる。
【0037】
前記純度を高める段階で使用される有機溶媒は、化合物の沈澱のために使用することができる有機溶媒と同一であり、該有機溶媒は、単独で、または水と混合して使用することができ、このとき、該有機溶媒及び水の混合比は、有機溶媒の種類によっても異なる。
【0038】
本発明は、化学式2の化合物を、有機溶媒中で、酸存在下で化学式5の化合物と反応させ、下記化学式1の化合物を得る段階2)を提供する。
【0039】
前記化学式1の化合物製造工程において、化学式2の化合物と反応する化学式5の化合物は、化学式2の化合物1モル当量に対して、1.0〜2.0モル当量、具体的には、1.3〜1.7モル当量の量でも使用される。
【0040】
前記段階2)で使用される有機溶媒は、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、ブタノール、2−ブタノール、イソプロパノール、N’N−ジメチルホルムアミド、N’,N’−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、及びその混合物から構成された群から選択されたいずれか一つでもある。使用される有機溶媒の量は、化学式2の化合物1gに対して、5〜20ml、具体的には、10〜15mlでもある。反応条件は、60℃〜120℃、具体的には、80℃〜100℃であり、1〜15時間、具体的には、2〜12時間遂行される。
【0041】
また、前記反応に使用される酸は、無機酸または有機酸でもある。前記無機酸の例は、塩酸、硝酸、硫酸などがあり、前記有機酸の例は、ベンゾ酸、トルエン、スルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸などがある。本発明の一具体例によれば、前記酸は、酢酸またはトリフルオロ酢酸でもある。反応に使用される酸は、化学式2の化合物1モル当量に対して、2.0〜5.0モル当量、具体的には、3.0〜4.0モル当量の量でも使用される。
【0042】
本発明による製造方法は、前記反応を遂行した後、化学式1の化合物が存在する有機溶媒階を分離する段階を追加して含んでもよい。
【0043】
該有機溶媒階の分離のために、反応が終わった反応溶液を常温に冷却した後、追加して有機溶媒、または有機溶媒及び水の混合溶媒を添加してpHを適正にする。
【0044】
該有機溶媒階の分離にも使用される有機溶媒は、クロロホルム、ジクロロメタン、及びその混合物でもある。前記有機溶媒は、単独で、または水と混合して使用することができ、そのとき、該有機溶媒及び水の混合比は、有機溶媒の種類によっても異なる。本発明の一具体例によれば、該有機溶媒として、クロロホルムまたはジクロロメタンを使用する場合、該有機溶媒と水との混合比は、体積比で1:1〜1:5、具体的には、1:1.5〜1:3でもある。また、前記pHは、2.0〜5.0、具体的には、3.0〜4.0にも調整される。pH調整のために、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの水溶液を使用することができる。このように、該有機溶媒層を分離する過程は、1回以上、具体的には、1〜3回反復される。
【0045】
前述の反応によって生成される化学式1の化合物は、反応物に有機溶媒を添加して生成された固体を乾燥させ、固体として沈澱させて得ることができる。化学式1の化合物沈澱のために使用される有機溶媒は、前記化学式2の化合物沈澱のために使用される有機溶媒と同一有機溶媒を使用することができる。
【0046】
前記有機溶媒は、水と混合して使用することができ、このとき、該有機溶媒及び水の混合比は、有機溶媒の種類によっても異なる。本発明の一具体例によれば、該有機溶媒として、アセトンまたはイソプロパノールを使用する場合、該有機溶媒と水との混合比は、体積比で1:3〜1:9、具体的には、1:3〜1:6でもある。本発明の一具体例によれば、前記混合比は、体積比で1:3または1:6でもある。
【0047】
また、本発明は、前記方法によって得られた化学式1の化合物の純度を高める段階を追加して含んでもよい。
【0048】
純度を高めるために、前記得られた化学式1の化合物を、有機溶媒及び水の混合溶媒に再沈殿させ、それを溶媒の還流温度で加温して溶解させた後、さらにそれを冷却し、再沈殿された固体を濾過して乾燥させ、さらに精製された化学式1の化合物を得ることができる。
【0049】
再沈殿のために使用される有機溶媒は、単独で、または水と混合して使用することができ、該有機溶媒の例は、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリルなどがある。本発明の一具体例によれば、前記有機溶媒は、アセトンまたはイソプロパノールでもある。前記有機溶媒を水と混合させて使用する場合、該有機溶媒及び水の混合比は、有機溶媒の種類によっても異なる。本発明の一具体例によれば、該有機溶媒として、アセトンまたはイソプロパノールを使用する場合、有機溶媒と水との混合比は、体積比で8:1〜2:1、具体的には、5:1〜3:1でもある。本発明の一具体例によれば、前記混合比は、体積比で4:1でもある。
【0050】
溶解のための反応条件は、50℃以上、具体的には、50℃から溶媒還流温度までにおいて、0.5〜3時間、具体的には、1〜2時間遂行される。また、再沈殿段階において冷却は、常温以下、具体的には、5℃から常温までにおいて、2〜10時間、具体的には、3〜5時間遂行される。該再沈殿は、1回以上、具体的には、2回以上遂行される。
【0051】
前述の方法において、出発物質として使用される化学式3の化合物、各段階で添加される反応物質である化学式4の化合物、及び化学式5の化合物は、商業的に購入したり、従来の方法によって製造したりすることができる。
【0052】
また、本発明は、下記化学式2の化合物を提供する:
【0053】
【化14】
【0054】
以下、本発明について、実施例によって詳細に説明する。ただし、下記実施例は、本発明を例示するためのものであり、それらによって本発明が限定されるものではない。
【0055】
実施例1.N−(3−((2−((4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル)アミノ)チエノ[3,2−d]ピリミジン−4−イル)オキシ)フェニル)アクリルアミド(化学式1)の製造−1
【0056】
1.1.N−(3−((2−クロロチエノ[3,2−d]ピリミジン−4−イル)オキシ)フェニル)アクリルアミド(化学式2)の製造
【0057】
【化15】
【0058】
125.5g(0.61mol)の2,4−ジクロロチエノ[3,2−d]ピリミジン(化学式3)、及び110.0g(0.67mol)のN−(3−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド(化学式4)を1.5lのジメチルスルホキシドに添加した。そこに、169.4g(1.23mol)の炭酸カリウムを加え、常温で24時間撹拌した。前記反応液に、750mlのアセトン及び750mlの水が混合された混合溶媒を徐々に添加し、常温で2時間撹拌した後、沈澱された固体を濾過した。前記濾過物を200mlの水で洗浄して乾燥させ、197.0gの標題化合物(収率:97.0%、HPLC純度93.5%)を得た。
【0059】
前記得られた標題化合物に、3.2の水と800mlのメタノールとが混合された混合溶媒を添加した後、100℃で1時間加熱還流した。反応終了後、反応溶液の温度を室温に下げて生成された固体を濾過し、400mlの水で洗浄した。前記洗浄物を50℃で乾燥させ、165.3gの標題化合物(収率:83.9%、HPLC純度98.7%)を得た。
【0060】
融点:233℃〜235℃
MSスペクトル:m/z=332.05(M+1)
H−NMRスペクトル(300MHz,DMSO−d6) δ10.46(s,1H)、8.57(d,1H)、7.80(d,1H)、7.65(s,1H)、7.56(d,1H)、7.47(t,1H)、7.12−7.09(m,1H)、6.46(dd,1H)、6.27(dd,1H)、5.79(dd,1H)
【0061】
1.2.N−(3−((2−((4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル)アミノ)チエノ[3,2−d]ピリミジン−4−イル)オキシ)フェニル)アクリルアミド(化学式1)の製造
【0062】
【化16】
【0063】
100.0g(0.30mol)のN−(3−((2−クロロチエノ[3,2−d]ピリミジン−4−イル)オキシ)フェニル)アクリルアミド(化学式2)、及び86.5g(0.45mol)の4−(4−メチルピペラジン−1−イル)アニリン(化学式5)を、1.0lのN’,N’−ジメチルアセトアミドに添加した。そこに、67.2ml(0.90mol)のトリフルオロ酢酸を徐々に加え、90℃で12時間撹拌した。前記反応液の温度を35℃に下げ、500mlのクロロホルム、及び1.0の水を混合した混合溶媒を添加した。そこに、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、pHを3.0に調節した後、該有機溶媒層を分離し、水層に、500mlのクロロホルム、及び水を混合した混合溶媒(体積比3:1)を添加した。このように、該有機溶媒層を分離する過程は、2回反復した。分離された該有機溶媒層を合わせ、500mlの飽和重炭酸ナトリウム水溶液及び500mlの水で洗浄した。前記洗浄された有機溶媒層を、200gの無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、それを40℃で減圧濃縮した。得られた残渣に500mlのイソプロパノールを添加し、それを40℃で再び減圧濃縮した。そこに、さらに400mlのイソプロパノールを添加し、2.5の水を徐々に滴加した後、常温で24時間撹拌して生成された固体を濾過した。前記濾過物を水で洗浄し、それを50℃で乾燥させ、85.0gの標題化合物の粗生性物(収率57.9%、HPLC純度96.0%)を得た。
【0064】
前記得られた85.0gの標題化合物の粗生性物を、850mlのアセトン及び水を混合した混合溶媒(体積比4:1)に添加し、65℃で1時間加温して溶解させた。その後、溶解物を徐々に冷却し、5時間撹拌して固体を得た。前記得られた固体を濾過し、10℃以下に冷却した85mlのアセトン及び水を混合した混合溶媒(体積比4:1)と、170mlのアセトン及び水の混合溶媒(体積比1:1)とで順次洗浄した。そのように得られた固体を、50℃で24時間乾燥させ、63.3gの一次精製された標題化合物(収率74.5%、HPLC純度98.3%)を得た。
【0065】
前記得られた60.0gの一次精製された標題化合物を、900mlのアセトン及び水を混合した混合溶媒(体積比4:1)で、前述の一次精製方法と同一にさらに精製し、50.6g(収率84.3%、HPLC純度99.1%)の二次精製された標題化合物を製造した。
【0066】
融点:204℃〜205℃
MSスペクトル:m/z=487.19(M+1)
H−NMRスペクトル(300MHz,DMSO−d6) δ10.37(s,1H)、9.24(s,1H)、8.27(d,1H)、7.71(d,1H)、7.64(d,1H)、7.49−7.41(m,3H)、7.32(d,1H)、7.07(dd,1H)、6.71(d,2H)、6.42(dd,1H)、6.28(dd,1H)、5.78(dd,1H)、2.99(t,4H)、2.43(t,4H)、2.21(s,3H)
【0067】
実施例2.N−(3−((2−((4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル)アミノ)チエノ[3,2−d]ピリミジン−4−イル)オキシ)フェニル)アクリルアミド(化学式1)の製造−2
【0068】
2.1.N−(3−((2−クロロチエノ[3,2−d]ピリミジン−4−イル)オキシ)フェニル)アクリルアミド(化学式2)の製造
【0069】
【化17】
【0070】
125.5g(0.61mol)の2,4−ジクロロチエノ[3,2−d]ピリミジン(化学式3)、及び110.0g(0.67mol)のN−(3−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド(化学式4)を、1.5のジメチルスルホキシドに添加した。そこに、101.2g(0.73mol)の炭酸カリウムを加え、常温で4時間撹拌した。前記反応液に500mlのアセトンを加え、50℃に加温した後、20分間撹拌した。その後、前記反応液を珪藻土で濾過し、250mlのアセトンで洗浄した。濾液を35℃に加温し、1.25lのイソプロパノールを添加した後、温度を常温に徐々に冷却し、それを1時間撹拌した。そこに、500mlのアセトン、及び1.0の水が混合された混合溶媒を徐々に添加し、常温で1時間撹拌した後、生成された固体を濾過した。前記濾過物を250mlのアセトン、及び500mlの水が混合された混合溶媒で一次洗浄した後、250mlのアセトンで二次洗浄した。その後、50℃で乾燥させ、176.7gの標題化合物(収率:87.0%、HPLC純度99.4%)を得た。
【0071】
融点:235℃〜236℃
【0072】
2.2.N−(3−((2−((4−(4−メチルピペラジン−1−イル)フェニル)アミノ)チエノ[3,2−d]ピリミジン−4−イル)オキシ)フェニル)アクリルアミド(化学式1)の製造
【0073】
【化18】
【0074】
180.0g(0.54mol)のN−(3−((2−クロロチエノ[3,2−d]ピリミジン−4−イル)オキシ)フェニル)アクリルアミド(化学式2)、及び155.7g(0.81mol)の4−(4−メチルピペラジン−1−イル)アニリン(化学式5)を、720mlのN’,N’−ジメチルアセトアミド、及び720mlのイソプロパノールが混合された混合溶媒に添加した。そこに、103ml(1.35mol)のトリフルオロ酢酸を滴加し、90℃で2時間撹拌した。前記反応液を50℃に冷却した後、減圧濃縮してイソプロパノールを除去した。常温に冷却した残渣に、1.8lの水、及び1.25lのジクロロメタンを添加し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液でpHを3.0に調節した。その後、有機溶媒層を分離し、水層を1.0lのジクロロメタンで抽出する過程を2回反復した。分離した有機溶媒層を合わせ、1.0の飽和重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し、不溶物は、濾過して除去した後、濾液を減圧濃縮した。得られた残渣に、400mlのイソプロパノールを加え、減圧濃縮した後、そこにさらに1.5lのイソプロパノールを加え、4.5lの水を徐々に滴加した。前記混合液を常温で2時間撹拌した後、生成された固体を濾過し、720mlの水で洗浄した。前記洗浄された固体を50℃で乾燥させ、216.0gの標題化合物の粗生性物(収率81.8%、HPLC純度92.2%)を得た。
【0075】
前記得られた180.0gの標題化合物の粗生性物を2.15lのアセトン、及び200mlの水が混合された混合溶媒に入れ、60℃で1時間加温して溶解させた。前記溶解された溶液を常温に徐々に冷却し、3時間撹拌した後、さらに冷却し、5〜10℃で2時間撹拌した。その後、生成された固体を濾過し、それを450mlのアセトン、及び水の混合溶媒(体積比4:1)で洗浄し、50℃で乾燥させ、136.7gの一次精製された標題化合物(収率63.3%、HPLC純度97.8%)を得た。得られた一次精製された標題化合物を、その精製方法と類似してさらに精製し、118.6gの二次精製された標題化合物(収率86.8%、HPLC純度99.1%)を製造した。
【0076】
融点:204℃〜205℃
【国際調査報告】