特表2018-532028(P2018-532028A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-532028(P2018-532028A)
(43)【公表日】2018年11月1日
(54)【発明の名称】官能化されたフッ素化コポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08F 214/22 20060101AFI20181005BHJP
   C08F 8/20 20060101ALI20181005BHJP
   C08F 8/40 20060101ALI20181005BHJP
   C08F 216/16 20060101ALI20181005BHJP
   C08F 214/24 20060101ALI20181005BHJP
   C08F 8/30 20060101ALI20181005BHJP
【FI】
   C08F214/22
   C08F8/20
   C08F8/40
   C08F216/16
   C08F214/24
   C08F8/30
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2018-521844(P2018-521844)
(86)(22)【出願日】2016年10月18日
(85)【翻訳文提出日】2018年6月21日
(86)【国際出願番号】FR2016052687
(87)【国際公開番号】WO2017072427
(87)【国際公開日】20170504
(31)【優先権主張番号】1560355
(32)【優先日】2015年10月29日
(33)【優先権主張国】FR
(31)【優先権主張番号】1655305
(32)【優先日】2016年6月9日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(71)【出願人】
【識別番号】311016455
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シアンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(71)【出願人】
【識別番号】515011944
【氏名又は名称】ウニヴェルシテ・ドゥ・モンペリエ
(71)【出願人】
【識別番号】511087176
【氏名又は名称】エコール・ナショナル・スーぺリウール・ドゥ・シミ・ドゥ・モンペリエ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラニュゼル,ティエリー
(72)【発明者】
【氏名】ドミンゲス・ドス・サントス,ファブリス
(72)【発明者】
【氏名】スレスタン,ティボー
(72)【発明者】
【氏名】ラドミハル,バンサン
(72)【発明者】
【氏名】アメディール,ブルーノ
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AC22Q
4J100AC24P
4J100AC25P
4J100AC26Q
4J100AC27Q
4J100AC30Q
4J100AC31Q
4J100AE02R
4J100AE04R
4J100AE06R
4J100AE09Q
4J100AE09R
4J100AE10R
4J100AL08Q
4J100AS06Q
4J100BA03R
4J100BA57Q
4J100BB01R
4J100BB07Q
4J100BB18Q
4J100BC54R
4J100CA05
4J100CA25
4J100CA31
4J100DA22
4J100DA24
4J100DA41
4J100EA03
4J100EA05
4J100FA03
4J100GC07
4J100GC26
4J100HA08
4J100HA21
4J100HA53
4J100HA61
4J100HB29
4J100HC51
4J100HC55
4J100HC75
4J100HC77
4J100HE14
4J100JA01
4J100JA43
(57)【要約】
本発明は、特にフッ化ビニリデン(VDF)又はトリフルオロエチレン(TrFE)をベースとし、官能性及び/又は官能化可能なビニルエーテルによって特に官能化されたフッ素化コポリマーに関する。本発明はまた、前記コポリマーを製造する方法、及びその用途に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I)のフッ素化コポリマー。
poly[A−co−(X−E−X)] (I)
[式中、Aはフッ素化モノマーであり、Xは電子受容性を有する二重結合を有するフッ素化モノマーであり、Xは、一方でモノマーAと、他方ではモノマーEと交互に共重合可能であり、Eは、電子供与性を有する二重結合を有する官能性又は官能化可能な基を有するモノマーであり、a及びbは、モノマーA及び三連構造X−E−Xのモル比をそれぞれ表し、aは、0.85より大きく、好ましくは0.90より大きく、有利には0.95より大きく、bは、0.15より小さく、好ましくは0.10より小さく、有利には0.05より小さく、かつ0より大きく、X:Eのモル比は、2以上であり、好ましくは2に等しい。]
【請求項2】
X:Eのモル比が2より大きい、式poly[A−co−X−co−(X−E−X)]の請求項1に記載のフッ素化コポリマー。
【請求項3】
前記電子受容性を有する二重結合を有するフッ素化モノマーが、クロロフルオロエチレン(CFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、フッ化ビニル(VF)、テトラフルオロエチレン(TFE)、テトラフルオロプロペン、ヘキサフルオロブテン、ペルフルオロブタジエン、ペルフルオロブテン、ペルフルオロビニルエーテル、例えば、ペルフルオロ(メチルビニル)エーテル(PMVE)、ペルフルオロ(プロピルビニル)エーテル(PPVE)、ペンタフルオロプロペン(PFP)、ペルフルオロ(4−メチル−3,6−ジオキサオクト−7−エン)スルホニルフルオライド(PFSVE)又は2−(トリフルオロメチル)アクリル酸及びそのエステル誘導体から選択される、請求項1又は2に記載のコポリマー。
【請求項4】
前記フッ素化モノマーAが、フッ化ビニリデン(VDF)、トリフルオロエチレン(TrFE)又はそれらの混合物である、請求項1及び2のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項5】
前記電子供与性を有する二重結合を有するモノマーEが、式CH=CH−O−Rのアルキルビニルエーテル(式中、Rは、以下の基、即ち、アルキル、例えば、エチル、ブチル、イソブチル、2−エチルヘキシル又はtert−ブチル;アルコール、例えば、4−ヒドロキシブチル又は2−ヒドロキシエチル;グリセロール、サッカライド(ヘキソース及びペントース);ハロゲン化基、例えば、2−クロロエチル又はクロロ−(2,2−ジメチルプロピル);チオール、シラン、酸、アジド、アルキン、エポキシ、カーボネート、アミン、アンモニウム、アミジン、アルデヒド、イソシアネート、尿素、カルボキシレート、スルホネート、ホスホネート、シリコーン、フッ素化又は炭化水素系ポリマー及びオリゴマーから選択される)である、請求項1から4のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項6】
前記モノマーAが、VDF、TrFE又はそれらの混合物であり、前記モノマーXがCTFEであり、前記モノマーEが、式CH=CH−O−Rのアルキルビニルエーテル(式中、Rは、以下の基、即ち、アルキル、例えば、エチル、ブチル、イソブチル、2−エチルヘキシル又はtert−ブチル;アルコール、例えば、4−ヒドロキシブチル又は2−ヒドロキシエチル;グリセロール、サッカライド(ヘキソース及びペントース);ハロゲン化基、例えば、2−クロロエチル又はクロロ−(2,2−ジメチルプロピル);チオール、シラン、酸、アジド、アルキン、エポキシ、カーボネート、アミン、アンモニウム、アミジン、アルデヒド、イソシアネート、尿素、カルボキシレート、スルホネート、ホスホネート、シリコーン、フッ素化又は炭化水素系ポリマー及びオリゴマーから選択される)である、請求項1又は2に記載のコポリマー。
【請求項7】
− 85%より大きく、好ましくは90%より大きく、有利には95%より大きい、前記モノマーAから誘導される部分の割合;
− 15%より小さく、好ましくは10%より小さく、有利には5%より小さい、クロロトリフルオロエチレン−ビニルエーテル−クロロトリフルオロエチレン三連構造から誘導される部分の割合;
− 5%より小さく、好ましくは2%より小さく、有利には1%より小さく、かつ0.1%以上の前記ビニルエーテルモノマーから誘導される部分の割合;
− 2以上、好ましくは2に等しい、X:E(クロロトリフルオロエチレン:ビニルエーテル)のモル比
を有する請求項6に記載のコポリマー。
【請求項8】
前記フッ素化モノマーA、前記モノマーE及び前記モノマーXを含む反応混合物をラジカル共重合する工程を含み、X:Eのモル比が、2以上、好ましくは2に等しく、前記モノマーAのモル比が、0.85より大きく、好ましくは0.90より大きく、有利には0.95より大きく、前記三連構造X−E−Xのモル比が、0.15より小さく、好ましくは0.10より小さく、有利には0.05より小さい、請求項1から7のいずれか一項に記載の式(I)のコポリマーの製造方法。
【請求項9】
前記モノマーAが、VDF、TrFE又はそれらの混合物であり、前記モノマーXがCTFEであり、前記モノマーEが、式CH=CH−O−Rのアルキルビニルエーテル(式中、Rは、以下の基、即ち、アルキル、例えば、エチル、ブチル、イソブチル、2−エチルヘキシル又はtert−ブチル;アルコール、例えば、4−ヒドロキシブチル又は2−ヒドロキシエチル;グリセロール、サッカライド(ヘキソース及びペントース);ハロゲン化基、例えば、2−クロロエチル又はクロロ−(2,2−ジメチルプロピル);チオール、シラン、酸、アジド、アルキン、エポキシ、カーボネート、アミン、アンモニウム、アミジン、アルデヒド、イソシアネート、尿素、カルボキシレート、スルホネート、ホスホネート、シリコーン、フッ素化又は炭化水素系ポリマー及びオリゴマーから選択される)である、式(I)のコポリマーを製造するための請求項8に記載の方法。
【請求項10】
− 前記反応混合物におけるVDF、TrFE又はそれらの混合物のモル比が、85%、好ましくは90%、有利には95%より大きく;
− 前記反応混合物におけるVEのモル比が、5%、好ましくは2%、有利には1%より小さく、かつ0.1%以上であり;
− X:E(クロロトリフルオロエチレン:ビニルエーテル)のモル比が、2以上、好ましくは2に等しく;
前記モル比が、VDF、TrFE、CTFE及びVEのモルの合計に関する、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記コポリマーが、ラジカル開始剤及び溶媒の存在下での前記反応混合物の共重合工程を含むラジカル溶液重合法によって得られる、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記溶媒が、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、アセトニトリル、メチルエチルケトン、ジメチルカーボネート、2,2,2−トリフルオロエタノール、tert−ブタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、酢酸メチル、酢酸エチル、シクロヘキサノン及び水、並びにそれらの混合物から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記コポリマーが、水、開始剤、任意の分散剤及び任意の連鎖移動剤の存在下での前記反応混合物の共重合工程を含むラジカル懸濁重合法によって得られる、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記コポリマーが、水、界面活性剤及び開始剤の水性分散液の存在下での前記反応混合物の重合工程を含むラジカル乳化重合によって得られる、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記VEモノマーの官能化の追加の工程を含む、請求項8から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1から7のいずれか一項に記載の少なくとも1つのコポリマーを含むコーティング。
【請求項17】
請求項1から7のいずれか一項に記載の少なくとも1つのコポリマーを含む膜。
【請求項18】
請求項1から7のいずれか一項に記載の少なくとも1つのコポリマーを含む電気活性デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、特に官能性及び/又は官能化可能なビニルエーテルによって官能化された、特にフッ化ビニリデン(VDF)及び/又はトリフルオロエチレン(TrFE)をベースとするフッ素化コポリマー、これらのコポリマーを製造する方法及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
技術背景
フルオロポリマーは、光学部品、マイクロエレクトロニクス、光電池、燃料電池及びLi−イオン電池等のエネルギー、及び膜技術を介して、塗料又は特殊コーティングからシーリングジョイントまで数多くの用途に特筆すべき特性を持つ種類の化合物を代表する。これらのフルオロポリマーの中で、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)は、その化学的及び熱安定性が認められているポリマーである。このポリマーはフッ化ビニリデン(VDF)からのラジカル重合によって調製される。このフッ素化モノマーは、非フッ素化モノマー、例えば、ビニルエーテル、アクリレート、メタクリレート又はスチレンと共重合することは困難である。PVDFのある種の特性、例えば、接着性、コーティングの耐腐食性、疎水性又は親水性を改善すると同時に、その特性、特に耐薬品性及び耐熱性を保持するためには、化学的機能を有するモノマーを組み込むことによりそれを官能化することが必要である。しかし、VDFと十分に共重合することができる官能化された又は官能化可能なモノマーの数が少ないため、官能化されたPVDFはほとんど知られていない。
【0003】
トリフルオロエチレン(TrFE)自体は、例えば、ビニルエーテル、アクリレート、メタクリレート及びスチレン等の官能性モノマーと共重合することが困難であるため、別の既知のフルオロポリマーであるポリ(トリフルオロエチレン)は、官能化されるという観点で同じ難点を有する。
【0004】
したがって、フッ素化モノマーによって提供される特定の特性を同時に維持しながら、フッ素化コポリマーを既知のものよりも多様な用途に適したものにする機能性を示す、新規のフッ素化コポリマー、特にVDF及び/又はTrFEをベースとするコポリマーを開発する必要がある。
【0005】
クロロトリフルオロエチレン(CTFE)は、他のフッ素化モノマー、例えば、VDF又はTrFEと容易に共重合するが、非フッ素化モノマー、特にビニルエーテルとも共重合する。Chem Rev、2014,114,927−980のBoschet F.及びAmeduri B.による刊行物は、種々の既知のCTFE系コポリマーを詳細に記載しており、これは2つのカテゴリー、即ち、i)コモノマーの割合が低いコポリマーであって、その特性が熱可塑性及び高結晶化度に関してポリ(クロロトリフルオロエチレン)の特性に近いもの、ii)電子供与体コモノマーを含有するコポリマーであって、主として交互の構造を与える受容体−供与体型の重合反応によって得られるコポリマーに分類される。後者のカテゴリーの中には、ラジカル重合によって調製される式poly(CTFE−alt−ビニルエーテル)の交互共重合体がある。現時点では、このビニルエーテル(VE)が式CH=CH−O−R(式中、Rは、例えば、以下の基、即ち、アルキル、例えば、エチル、ブチル、イソブチル、4−ヒドロキシブチル、2−クロロエチル、2−エチルヘキシル、2−ヒドロキシエチル、グリシジル、3−クロロ−(2,2−ジメチルプロピル)であることができる)のアルキルビニルエーテルである、この種の多くの交互共重合体が調製されてきた。前記ビニルエーテルは、重合後の工程において、例えば、イミダゾール基、カーボネート基又はホスホネート基でさらに官能化することもできる。上述の交互共重合体では、CTFE:VEのモル比は1に近い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Boschet F.及びAmeduri B.のChem Rev、2014,114,927−980
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、新規な官能化されたフッ素化コポリマー、特に、Xが電子受容性を有する、即ち、電子が枯渇した少なくとも1つの二重結合を有するフッ素化モノマーであり、一方でXはVDF又はTrFEのようなフッ素化モノマーと共重合可能であり、他方では、電子供与性を有する、即ち、電子富化され、官能性又は官能化可能な基を有する少なくとも1つの二重結合を有するモノマーEと共重合可能である三連構造(X−E−X)の、ポリマー鎖への規則的な取り込みによって官能化されたVDF及び/又はTrFEのコポリマーを提供することを提案する。前記三連構造は、例えば、クロロトリフルオロエチレン(モノマーX)及びビニルエーテル(モノマーE)から形成され、即ち、(CTFE−VE−CTFE)である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、何よりもまず、以下の式(I)のフッ素化コポリマーに関する。
poly[A−co−(X−E−X)] (I)
[式中、Aはフッ素化モノマーであり、Xは電子受容性を有する少なくとも1つの二重結合を有するフッ素化モノマーであり、Xは、一方でモノマーAと、他方ではモノマーEと交互に共重合可能であり、Eは、電子供与性を有する少なくとも1つの二重結合を有する官能性又は官能化可能な基を有するモノマーである。添え字a及びbは、モノマーA及び三連構造X−E−Xのモル比をそれぞれ表す。]
【0009】
モノマーA及びXは互いに共重合する。
【0010】
モノマーEはフッ素化モノマーAと共重合しない。
【0011】
特徴的には、コポリマー中のX:Eモル比は2以上であり、好ましくは2に等しい。
【0012】
特徴的には、aは0.85より大きく、好ましくは0.90より大きく、有利には0.95より大きい。
【0013】
特徴的には、bは0.15より小さく、好ましくは0.10より小さく、有利には0.05より小さく、かつ0より大きい。
【0014】
一実施形態によれば、フッ素化モノマーAはフッ化ビニリデン(VDF)である。
【0015】
一実施形態によれば、フッ素化モノマーAはトリフルオロエチレン(TrFE)である。
【0016】
別の実施形態によれば、フッ素化モノマーAは、VDFとTrFEとの混合物であり、したがって本発明によるコポリマーは三連構造(X−E−X)を含むpoly[VDF−co−TrFE−co−(X−E−X)]コポリマーを含む。
【0017】
一実施形態によれば、モノマーEは、独立して、例えば、ホスホン酸及びホスホネート、及びカルボン酸及びそれらから誘導されるエステル等の酸又はその誘導体、ハロゲン(塩素、臭素又は要素等)、アジド、アルキン、アルコール、チオール、エポキシ、カーボネート、トリエトキシシランのようなシラン、スルホネート、シリコーン、第三級アミン、アルデヒド、サッカライド、フルオロポリマー又は炭化水素系ポリマーであることができる1つ以上の官能基を有する。
【0018】
別の実施形態によれば、モノマーEは、式(I)のコポリマーが得られた後に官能化されるアルキルビニルエーテルである。
【0019】
本発明の主題はまた、フッ素化モノマーA、モノマーX及びモノマーEを含む反応混合物のラジカル共重合の工程を含む、式(I)のコポリマーの製造方法である。
【0020】
モノマーEが所望の官能基を有さない場合、本発明による方法は、モノマーEの官能化の追加の工程を含み、次いでこれは官能化可能なモノマーと呼ばれる。
【0021】
本発明の主題はまた、膜、塗料、コーティング及びワニス、電気活性デバイス、エネルギー、パッケージングにおける用途のためのVDF及び/又はTrFEをベースとする機能性コポリマーである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、20℃におけるDMSO d中の、実施例1に記載の方法により合成したpoly[VDF−co−(CTFE−CEVE−CTFE)]コポリマーの19F NMRスペクトルを表す。
図2図2は、20℃におけるDMSO d中のpoly[VDF−co−(CTFE−CEVE−CTFE)](上部、実施例1)コポリマー、poly[VDF−co−(CTFE−IEVE−CTFE)](中間、実施例2)コポリマー及びpoly[VDF−co−(CTFE−NVE−CTFE)](底部、実施例5)コポリマーのH NMRスペクトルを表す。
図3図3は、poly[VDF−co−(CTFE−IEVE−CTFE)](破線、実施例2)コポリマー及びpoly[VDF−co−(CTFE−NVE−CTFE)](実線、実施例5)コポリマーのFTIRスペクトルを表す。
図4図4は、20℃におけるアセトンd中の、実施例1に記載の方法により合成したpoly[TrFE−co−(CTFE−iBuVE−CTFE)]コポリマーのH NMRスペクトルを表す。
図5図5は、20℃におけるアセトンd中の、実施例1に記載の方法により合成したpoly[TrFE−co−(CTFE−iBuVE−CTFE)]コポリマーの19F NMRスペクトルを表す。
図6図6は、実施例1に記載の方法により合成したpoly[VDF−co−(CTFE−iBuVE−CTFE)]コポリマー(実線)及びpoly[TrFE−co−(CTFE−CEVE−CTFE)コポリマー(破線)の、空中での10℃/分におけるTGAサーモグラムを表す。
図7図7は、poly[VDF−co−(CTFE−CEVE−CTFE)]コポリマー(実施例1)のDSCサーモグラムを表す。
図8図8は、25℃におけるDMF d中の、実施例6に記載の方法により合成したpoly[VDF−co−(CTFE−OHVE−CTFE)]コポリマーの19F NMRスペクトルを表す。
図9図9は、25℃におけるDMF d中の同じpoly[VDF−co−(CTFE−OHVE−CTFE)]コポリマーのH NMRスペクトルを表す。
図10図10は、25℃におけるアセトンd中の、実施例7に記載の方法によって合成した、アリルイソシアネートで官能化されたpoly[VDF−co−(CTFE−OHVE−CTFE)]コポリマーの19F NMRスペクトルを表す。
図11図11は、25℃におけるアセトンd中の同じ官能化されたpoly[VDF−co−(CTFE−OHVE−CTFE)]コポリマーのH NMRスペクトルを表す。
図12図12は、25℃におけるアセトンd中の、実施例7に記載の方法によって合成した、2−(メタクリロイルオキシ)エチルイソシアネートで官能化されたpoly[VDF−co−(CTFE−OHVE−CTFE)]コポリマーの19F NMRスペクトルを表す。
図13図13は、25℃におけるアセトンd中の同じ官能化されたpoly[VDF−co−(CTFE−OHVE−CTFE)]コポリマーのH NMRスペクトルを表す。
図14図14は、実施例8に記載された方法により合成した、種々の架橋剤を用いて架橋されたpoly[VDF−co−(CTFE−OHVE−CTFE)]コポリマーのFTIRスペクトルを表す。
図15図15は、25℃におけるアセトンd中の、実施例9に記載の方法により合成したpoly[VDF−co−(CTFE−GcVE−CTFE)]コポリマーの19F NMRスペクトルを表す。
図16図16は、25℃におけるアセトンd中の、同じpoly[VDF−co−(CTFE−GcVE−CTFE)]コポリマーのH NMRスペクトルを表す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の実施形態の説明
本発明は、以下の説明において、より詳細に、非限定的に記載される。
【0024】
本発明の主題は、以下の式(I)のフッ素化コポリマーである。
poly[A−co−(X−E−X)] (I)
式中、Aはフッ素化モノマーであり、Xは電子受容性を有する少なくとも1つの二重結合を有するフッ素化モノマーであり、Xは、一方でモノマーAと、他方ではモノマーEと交互に共重合可能であり、Eは、電子供与性を有する二重結合を有する官能性又は官能化可能な基を有するモノマーである。添え字a及びbは、モノマーA及び三連構造X−E−Xのモル比をそれぞれ表す。
【0025】
モノマーA及びXは互いに共重合する。
【0026】
モノマーEはフッ素化モノマーAと共重合しない。
【0027】
反応性二重結合が電子供与性であるモノマーEは、例えば、ホスホン酸、アルキルホスホネート、スルホン酸、スルホネート、カルボン酸及びそれから誘導されるエステル等の酸又はその誘導体、ハロゲン、アジド、アルキン、アルコール、チオール、エポキシ、カーボネート、トリエトキシシラン等のシラン、シリコーン、第3級アミン、アルデヒド、サッカライド、フルオロポリマー又は炭化水素系ポリマーであることができる少なくとも1つの官能性又は官能化可能な基を含む。
【0028】
特徴的には、コポリマー中のX:Eモル比は2以上であり、好ましくは2に等しい。
【0029】
特徴的には、aは0.85より大きく、好ましくは0.90より大きく、有利には0.95より大きい。
【0030】
特徴的には、bは0.15より小さく、好ましくは0.10より小さく、有利には0.05より小さく、かつ0より大きい。
【0031】
一実施形態によれば、X:E比が2より大きい場合、本発明によるコポリマーはpoly[A−co−X−co−(X−E−X)]コポリマーである。「コポリマー」という用語は、少なくとも2つの異なる種類の繰り返し部分を含む任意のポリマーを包含するものとして理解されるべきである。「共重合」という用語は、少なくとも2つの異なる種類のモノマーを含む任意の重合反応を意味する。
【0032】
一実施形態によれば、フッ素化モノマーAはフッ化ビニリデン(VDF)である。
【0033】
一実施形態によれば、フッ素化モノマーAはトリフルオロエチレン(TrFE)である。
【0034】
一実施形態によれば、フッ素化モノマーAは、VDFとTrFEとの混合物からなる。
【0035】
別の実施形態によれば、フッ素化モノマーAは、VDFとTrFEとの混合物であり、したがって本発明によるコポリマーは三連構造(X−E−X)を含むpoly(VDF−co−TrFE)コポリマーを含む。
【0036】
一実施形態によれば、フッ素化モノマーXは、クロロフルオロエチレン(CFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、フッ化ビニル(VF)、テトラフルオロエチレン(TFE)、テトラフルオロプロペン、ヘキサフルオロブテン、ペルフルオロブタジエン、ペルフルオロブテン、ペルフルオロビニルエーテル、例えば、ペルフルオロ(メチルビニル)エーテル(PMVE)、ペルフルオロ(プロピルビニル)エーテル(PPVE)、ペンタフルオロプロペン(PFP)、ペルフルオロ(4−メチル−3,6−ジオキサオクト−7−エン)スルホニルフルオライド(PFSVE)又は2−(トリフルオロメチル)アクリル酸及びそのエステル誘導体等の電子受容性を有する反応性二重結合を有するフッ素化モノマーから選択される。
【0037】
一実施形態によれば、反応性二重結合が電子供与性であるモノマーEは、式CH=CH−O−R(式中、Rは、例えば、以下の基、即ち、アルキル、例えば、エチル、ブチル、イソブチル、2−エチルヘキシル又はtert−ブチル;アルコール、例えば、4−ヒドロキシブチル又は2−ヒドロキシエチル;グリセロール、サッカライド(ヘキソース及びペントース);ハロゲン化基、例えば、2−クロロエチル又はクロロ−(2,2−ジメチルプロピル);チオール、シラン、酸、アジド、アルキン、エポキシ、カーボネート、アミン、アンモニウム、アミジン、アルデヒド、イソシアネート、尿素、カルボキシレート、スルホネート、ホスホネート、シリコーン、フッ素化又は炭化水素系ポリマー及びオリゴマーから選択され得る)のアルキルビニルエーテルである。
【0038】
一実施形態によれば、モノマーEは、例えば、酸又はその誘導体、例えば、ホスホン酸、アルキルホスホネート、スルホン酸、スルホネート、カルボン酸及びそれから誘導されるエステル、ハロゲン、アジド、アルキン、アルコール、チオール、エポキシ、カーボネート、トリエトキシシランのようなシラン、スルホネート、シリコーン、第3級アミン、アルデヒド、サッカライド、フルオロポリマー又は炭化水素系ポリマーであり得る官能基(以下の図のG)を有する。
【0039】
一実施形態によれば、本発明によるコポリマーは、VDF若しくはTrFE、又はVDFとTrFEとの混合物、CTFE(モノマーX)、及び例えば酸及びその誘導体、例えば、ホスホン酸、ホスホネート、カルボン酸、ハロゲン、アジド、アルキン、アルコール、チオール、エポキシ、カーボネート、トリエトキシシランのようなシラン、スルホネート、シリコーン、第3級アミン、アルデヒド、サッカライド、フルオロポリマー又は以下の図に示されるようなポリマーであることができる官能基(以下の図のG)を有することができる官能性又は官能化可能なビニルエーテル(モノマーE)を含む機能性コポリマーである。
【0040】
【化1】
【0041】
一実施形態によれば、このコポリマーは、以下の組成(モルで表される)を有する。
− 85%より大きく、好ましくは90%より大きく、有利には95%より大きいフッ化ビニリデン(VDF)及び/又はトリフルオロエチレン(TrFE)モノマーから誘導される部分の割合;
− 15%より小さく、好ましくは10%より小さく、有利には5%より小さいクロロトリフルオロエチレン−ビニルエーテル−クロロトリフルオロエチレン三連構造から誘導される部分の割合;
− 5%より小さく、好ましくは2%より小さく、有利には1%より小さく、かつ0.1%以上のビニルエーテルモノマーから誘導される部分の割合;
− 2以上、好ましくは2に等しいX:E(クロロトリフルオロエチレン:ビニルエーテル)のモル比。
【0042】
一実施形態によれば、本発明によるコポリマーは、VDF(モノマーA)、CTFE(モノマーX)及びビニルエーテル(モノマーE)を含むコポリマーである。
【0043】
一実施形態によれば、本発明によるコポリマーは、TrFE(モノマーA)、CTFE(モノマーX)及びビニルエーテル(モノマーE)を含むコポリマーである。
【0044】
一実施形態によれば、本発明によるコポリマーは、VDFとTrFEとの混合物(モノマーA)、CTFE(モノマーX)及びビニルエーテル(モノマーE)を含むコポリマーである。
【0045】
第1の実施形態によれば、ビニルエーテルは、本発明によるコポリマーの組成物の一部である他のモノマーとの重合の前に所望の官能基を有し、追加の化学的修飾を受ける必要のない官能化コポリマーが得られる。しかし、このコポリマーは、特にそれを架橋させるために、必要に応じて変性することができる。
【0046】
別の実施形態によれば、モノマーEは、式(I)のコポリマーが得られた後に官能化されるアルキルビニルエーテルである。
【0047】
これらの2つの実施形態では、ビニルエーテル(VE)は、特に以下により官能化することができる。
− コーティングの接着性及び耐腐食性を改善するためにホスホン酸官能基;
− Li−イオン電池におけるリチウムイオンの伝導のためのポリ(エチレングリコール)(PEG)側鎖;
− ポリマーの架橋を可能にする他の化学官能基。そのとき、架橋の程度は、導入されたVEの量によって制御される。コポリマーの架橋により特にコポリマーを不溶性にすることが可能になる。
【0048】
特に、上記第1の実施形態では、コポリマーは、ビニルエーテルが有する官能基を、例えば、コポリマーのラジカル架橋若しくは光架橋又は求核置換若しくは重付加によるその架橋を可能にする官能基に変換することによって、又はコポリマーを多官能性架橋剤と直接反応させることによって架橋することができる。
【0049】
したがって、塩素原子を有するビニルエーテル(例えば、2−クロロエチルビニルエーテル又はCEVE)を使用する場合、このモノマーから得られるコポリマーは、以下の図及び実施例2に示されるように、ヨウ化ナトリウムによるヨウ素化(フィンケルシュタイン反応)によって変性することができる。
【0050】
【化2】
【0051】
式:poly[VDF−co−(CTFE−IEVE−CTFE)]の、得られたヨウ素化コポリマーは、例えば、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)及びラジカル開始剤の存在下でのラジカル架橋、又はヨウ素の求核置換による架橋に供すことができる。変形例として、ヨウ素化コポリマーはアジド化反応を受けて、下記の図及び実施例5に示されるように、式poly[VDF−co−(CTFE−NEVE−CTFE)]のコポリマーを得ることができる。
【0052】
【化3】
【0053】
次いで、この変性コポリマーは、例えば、ポリアルキン又はポリニトリルとそれを反応させることによって環化付加によって架橋することができる。
【0054】
別の可能性によれば、上記のヨウ素化コポリマーは、以下の図及び実施例3に示されるように、ジエチルビニルホスホネート(DEVP)官能基を有するコポリマーpoly[VDF−co−(CTFE−DEVP−CTFE)]を形成するために、アルブゾフ反応によって亜リン酸(亜リン酸トリエチル等)と反応させることができる。
【0055】
【化4】
【0056】
このようにして得られたコポリマーは、下記の図及び実施例4に示されるように、加水分解によりビニルホスホン酸(VPA)官能基を有する式poly[VDF−co−(CTFE−VPA−CTFE)]のホスホン化誘導体を形成する。
【0057】
【化5】
【0058】
ホスホン酸のような酸官能基を有するVEの導入により、金属基材のような種々の基材へのPVDFの接着が改善される。
【0059】
変形例として、本発明によるコポリマーの調製に使用されるビニルエーテルは、アリル基又は(メタ)アクリロイル基等の重合性基のグラフト化を可能にする官能基を有することができる。実施例7に示されるように、一旦コポリマーが形成されると、それは、特に重合性基によって官能化されたイソシアネートと反応することができるヒドロキシル官能基であることができる。このグラフト工程の後、コポリマーは熱ラジカル開始剤又は光開始剤を使用して、任意の架橋助剤の存在下で架橋することができる。
【0060】
さらなる変形例として、本発明によるコポリマーの調製に使用されるビニルエーテルは、多官能性架橋剤と共有結合を形成することができる官能基、例えば、ジカルボン酸、ジエポキシ又はジイソシアネート(2−ヒドロキシエチルビニルエーテルのような、ヒドロキシル官能基を有するビニルエーテルの場合)、あるいはジオール又はジアミン(グリシジルビニルエーテルのような、エポキシ官能基を有するビニルエーテルの場合)、特にヒドロキシル官能基又はエポキシ官能基を有することができる。このような架橋方法は、特に実施例8に示されている。
【0061】
本発明の主題はまた、フッ素化モノマーA、モノマーE及びモノマーXを含む反応混合物を、以下のモル比、即ち、2以上、好ましくは2に等しいX:E;0.85以上、好ましくは0.90超、有利には0.95超のa、及び0.15より小さく、好ましくは0.10より小さく、有利には0.05より小さく、かつ0を越えるbでラジカル共重合する工程を含む、上記の式(I)のコポリマーの製造方法である。
【0062】
重合反応は、溶液中、懸濁液中又はエマルジョン中で、ラジカル開始剤、溶媒、任意の連鎖移動剤及び任意の分散剤又は界面活性剤の存在下でのラジカル重合法に従って行われる。
【0063】
共重合反応は、ラジカル開始剤の存在下で行われる。開始剤は、例えば、tert−ブチルペルオキシピバレート(即ち、TBPPI)、tert−アミルペルオキシピバレート、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート等のペルオキシジカーボネート、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム若しくは過硫酸カリウム、過酸化ベンゾイル及びその誘導体、tert−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化tert−ブチル又は2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサンであることができる。
【0064】
一実施形態によれば、共重合は、分散剤の存在下で行うことができる。これは、例えば、アルキルセルロース又はアルキル及びヒドロキシアルキルセルロース等の水溶性セルロース系誘導体、パラフィン、又はポリビニルアルコールであることができる。
【0065】
一実施形態によれば、共重合は、コポリマーのモル質量を調整することを可能にする連鎖移動剤の存在下で行うことができる。モル質量の調整により、特にコポリマーの加工を容易にすることが可能になる。これらのモル質量調整剤は、例えば、酢酸エチルのような酢酸アルキル、ジエチルカーボネートのようなジアルキルカーボネート、2−ブタノンのようなケトン、チオール、ハロゲン化アルキル、ジスルフィド、イソプロパノールのような飽和アルコール及びプロパンのようなアルカンであることができる。
【0066】
第1の実施形態によれば、poly[A−co−(CTFE−EV−CTFE)]コポリマーは、ラジカル開始剤及び溶媒の存在下での、フッ化ビニリデン及び/又はトリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン及び官能化可能な又は官能化されたビニルエーテルの反応混合物の共重合工程を含むラジカル溶液重合法によって調製される。
【0067】
一実施形態によれば、
− 反応混合物中のVDF及び/又はTrFEのモル比は、85%より大きく、好ましくは90%より大きく、有利には95%より大きく;
− VEの割合は5%より小さく、好ましくは2%より小さく、有利には1%より小さく、かつ0.1%以上であり;
− X:E(クロロトリフルオロエチレン:ビニルエーテル)のモル比は2以上、好ましくは2に等しく;
モル比は、VDF、TrFE、CTFE及びVEのモルの合計に関連する。
【0068】
一実施形態によれば、反応混合物は、VDF及び/又はTrFE、CTFE及びVE、ラジカル開始剤及び溶媒の混合物から本質的になり、好ましくはそれらからなる。
【0069】
この反応は、例えば、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、アセトニトリル、メチルエチルケトン、ジメチルカーボネート、2,2,2−トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、tert−ブタノール、酢酸メチル、酢酸エチル、シクロヘキサノン及び水、並びにそれらの混合物から選択される溶媒中で行われる。
【0070】
一実施形態によれば、反応混合物は、30〜100℃の間、好ましくは40〜80℃の間の反応開始温度まで加熱される。オートクレーブ内の初期圧力は、溶媒、反応温度及びモノマーの量によって変化する。一般にそれは0〜80バールである。最適温度の選択は、使用される開始剤に依存する。一般に、反応は、開始剤の半減期が1〜10時間の間である温度で少なくとも6時間行われる。
【0071】
好ましい一実施形態によれば、コポリマー中のVDF及び/又はTrFE(モノマーA)部分のモル比は85%より大きく、好ましくは90%より大きく、有利には95%より大きい。
【0072】
好ましい一実施形態によれば、コポリマー中のCTFE−VE−CTFE三連構造から誘導される部分のモル比は、15%より小さく、好ましくは10%より小さく、有利には5%より小さい。
【0073】
一実施形態によれば、VEモノマーから誘導される部分のモル比は、5%より小さく、好ましくは2%より小さく、有利には1%より小さく、かつ0.1%以上である。
【0074】
好ましい一実施形態によれば、CTFE:VEモル比は2以上であり、好ましくは2に等しい。
【0075】
溶液重合によって得られるpoly[A−co−(CTFE−VE−CTFE)]コポリマーのモル質量は、好ましくは5000〜150000g/モル、より優先的には10000〜100000g/モルである。
【0076】
別の実施形態によれば、poly[A−co−(CTFE−VE−CTFE)]コポリマーは、水、ラジカル開始剤、任意の分散剤及び任意の連鎖移動剤の存在下で、VDF及び/又はTrFE、CTFE及びVEの反応混合物を共重合させる工程を含むラジカル懸濁重合法によって調製される。
【0077】
懸濁法によって、コポリマーの合成及び精製の間に、(生物濃縮性で有毒で持続性のPFOA又はPFOSタイプの)有毒な溶媒及びフッ素化界面活性剤の使用を回避することが可能になる。
【0078】
懸濁法では、VDF及び/又はTrFE、CTFE及びVEを、脱イオン水、任意の分散剤及び任意の連鎖移動剤で満たされた攪拌反応器に仕込む。
【0079】
次に反応器を所望の開始温度にし、この温度を重合中に一般に40〜60℃の間の値に維持する。次いで重合を開始させるために、開始剤を反応器に注入する。モノマー消費により、連続的な水の供給によって補償される圧力の低下がもたらされる。したがって、圧力は、好ましくは80〜110バールの範囲に維持される。次いで、反応器を冷却し、脱気する。生成物は排出され、懸濁液の形で回収される。この懸濁液を濾過し、湿った粉末を洗浄し、次いで乾燥させる。
【0080】
懸濁重合によって得られるコポリマーのモル質量は、好ましくは100000〜500000g/モル、より優先的には150000〜400000g/モルである。
【0081】
さらに別の実施形態によれば、本発明に従って使用されるコポリマーは、ラジカル乳化重合法に従って調製される。
【0082】
これを行うために、重合を実施するために使用される界面活性剤によって安定化された開始剤の水性分散液を調製することが有利である。この分散を実施するために、水、開始剤、全ての界面活性剤の少量を分散機中で混合する。開始時に添加され、任意に重合中に添加されるのはこの分散液である。重合反応器に水、界面活性剤、任意のパラフィン及び任意のモノマーEを仕込んだ後、酸素を除去した後、モノマーAを単独で、又はモノマーX及びモノマーEのようなコモノマーとの混合物として加え、得られた混合物を選択した温度にしながら、反応器を加圧する。有利には、水性エマルジョンは、50〜130℃の温度で重合される。好ましくは、重合は40〜120バールの絶対圧で実施される。反応の開始は、開始剤分散液を添加することによって得られる。重合中、圧力を維持し又は制御された圧力変動を得るために、モノマーAは単独で又はモノマーX及びモノマーEのようなコモノマーとの混合物として任意に添加される。開始剤は、任意に徐々に又は連続的に添加される。連鎖移動剤(CTA)は、重合の開始時又は重合中に任意に添加することができる。後者の場合、それは徐々に又は連続的に導入することができる。計画された量のモノマーA又はコモノマー混合物の導入後、反応器を脱気し、冷却し、ラテックスを排出する。
【0083】
ラテックスからのコポリマーの回収は仕上げ操作を構成する。これは乾燥粉末を得るために、本質的にラテックスを凝固させ、次に凝固物を乾燥させることからなる。仕上げは、洗浄工程を含むこともできる。この洗浄は、例えば、任意に希釈したラテックスを、それに空気中で剪断をかける凝集沈殿装置に導入することによって行うことができる。これらの2つの作用の累積効果の下で、ラテックスは水の密度より低い密度を有する気泡入りクリームに変換される。このクリームは、任意に、例えば、特許US4,128,517号及びEP0460284号に記載されている方法に従って、脱イオン水で向流洗浄することができる。乾燥は、当業者に既知の任意の工業的手段によって実施することができる。特に、凝固したラテックス又はクリームは、有利には噴霧乾燥機で乾燥させることができる。したがって、洗浄カラムを出るとき、又は凝固直後に、気泡入りクリームは、ポンピングによって、気泡入りクリームを乾燥粉末に変換する噴霧乾燥機に導かれる前に貯蔵容器に送られる。噴霧乾燥機におけるこの乾燥工程はまた、事前に希釈されていてもしなくても、例えば、機械的剪断によって凝固された初期の任意に希釈されたラテックス又は気泡入りクリームに適用することができる。
【0084】
コポリマーを製造するために使用することができる別の乳化重合法は、文献US7,122,608号に記載されている方法である。
【0085】
本発明に従って調製されるpoly[A−co−(CTFE−VE−CTFE)]コポリマーは、共重合法によって制御され得る三連構造CTFE−VE−CTFEのランダム分布を有する鎖を有する。CTFEはVDF及びTrFEとランダムに共重合するが、VEはCTFEとのみ共重合し、これは交互に行われる。PVDF、PTrFE及びpoly(VDF−co−TrFE)の耐薬品性及び耐熱性等の主な性質は保持される。
【0086】
本発明により得られるコポリマーは、特に、膜、塗料、コーティング及びワニス、例えば、腐食防止コーティング、電気活性デバイス、光起電性パネル、燃料電池又はLi−イオン電池のようなエネルギー装置の製造に使用される。
【実施例】
【0087】
以下の実施例は、本発明を限定することなく説明する。
【0088】
測定技術及び装置
核磁気共鳴(NMR)。NMRスペクトルは、Bruker AC 400装置で得られ、重水素化アセトン又は重水素化DMFが溶媒として使用される。カップリング定数及び化学シフトは、それぞれヘルツ(Hz)及び百万分の一(ppm)で与えられる。H(又は19F)NMRの取得パラメータは、19F NMRについては、回転角90°(30°)、取得時間4.5秒(0.7秒)、パルスシーケンス2秒、スキャン数8(128)、及びパルス時間5μsである。
【0089】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)。SEC分析は、35℃に恒温にされた2つの5μmのPLゲル混合Cカラム(モル質量範囲200〜2×10g/モル)を備えたPolymer Laboratories PL−GPC 50 Plus装置で行った。屈折率変化検出器を使用する。テトラヒドロフラン(THF)を溶離液(1.0ml/分)として使用する。流速の基準としてのポリスチレン(PS)標準及びトルエンを用いて、この装置を較正する。
【0090】
熱重量分析(TGA)。TGA分析は、アルミニウム皿中のTAインストルメンツのTGA Q50装置上で10〜15mgの試料に対して実施する。空気下、25℃〜590℃の間で10℃/分で温度上昇を実施する。
【0091】
示差走査熱量測定(DSC)。以下の分析サイクル、即ち、周囲温度〜−50℃まで20℃/分で冷却、−50℃で5分間の等温、−50℃〜200℃まで10℃/分で第1の上昇、200〜−50℃まで10℃/分で冷却、50℃で3分間の等温、−50〜200℃まで10℃/分で第2の温度上昇、200℃〜周囲温度まで最終冷却を用いてNetzsch DSC 200 F3装置で10〜15mgの試料について、DSC測定を得る。較正は貴金属で行い、分析の前にインジウムサンプルで確認した。
【0092】
赤外分光法(FTIR)。FTIRスペクトルは、ATRモジュールを備えたPerkin−Elmer Spectrum 1000分光計で、25℃で±2cm−1の精度で記録した。
【0093】
[実施例1]VDFとCTFE及びCEVEとのラジカル共重合
ハステロイ(Hastelloy)製の100mlのオートクレーブは、時間の関数として圧力の変化を記録するコンピュータに接続された、入口弁及び出口弁、破裂板、圧力計、及び圧力センサを備えている。漏れがないことを確認するために、オートクレーブを30バールの窒素で加圧する。次いで、それはあらゆる微量の酸素を除去するために、3回の真空/窒素サイクルを受ける。反応器の不活性化後、ジメチルカーボネート(DMC)中のジ(tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート(1.02g、2.56ミリモル)及び2−クロロエチルビニルエーテル(CEVE、1.90g、12.8ミリモル)を含む脱気溶液60mlを反応器に導入する。次いで、ガス状モノマーを導入するために反応器を−80℃に冷却する。クロロトリフルオロエチレン(CTFE、4.5g、39ミリモル)、次いでフッ化ビニリデン(VDF、20.0g、313ミリモル)を二重秤量によって反応器に移す。全ての試薬を仕込んだ後、オートクレーブを周囲温度に再加熱し、次いで48℃に加熱する。反応は15時間続き、反応開始時の23バールに対して16バールの圧力降下が観察される。反応後、反応器を氷浴に入れ、脱気する。この粘稠で無色の反応粗生成物をビーカーに移し、200mlのアセトンで希釈する。この溶液を4Lの低温ペンタンから沈殿させる。得られた生成物である白色固体を真空下、60℃で14時間乾燥させる。H(図3)及び19F(図2)NMR分光法、SEC(M=42kg/モル)、TGA(図6)及びDSC(図7)により、得られたポリマー(収率=82%)を特徴付ける。モノマーに関する初期VDF/CTFE/CEVEモル組成は86/10/4であり、コポリマーの最終VDF/CTFE/CEVEモル組成は79/14/7である。
【0094】
[実施例2]フィンケルシュタイン反応、poly[VDF−co−(CTFE−IEVE−CTFE)]コポリマーの調製
poly[VDF−co−(CTFE−CEVE−CTFE)]コポリマー20.0gを乾燥アセトンに溶解し、100mlのオートクレーブに導入する。9.0g(60ミリモル)のヨウ化ナトリウムを添加した後、反応器を閉じ、60℃で7日間撹拌する。反応の終わりに、オートクレーブを周囲温度まで冷却する。焼結ガラス漏斗で濾過した後、溶液を冷水から沈殿させ、次いでポリマーをアセトンに溶解し、低温メタノールから2度目の沈殿をさせる。得られた黄色の固体を濾過し、次いで真空下(10ミリバール)、60℃で14時間乾燥させる(収率75%)。
【0095】
[実施例3]ミカエリス−アルブゾフ反応、poly[VDF−co−(CTFE−DEVP−CTFE)]コポリマーの調製
10.0gのpoly[VDF−co−(CTFE−IEVE−CTFE)]コポリマーを垂直水冷凝縮器に囲まれた100mlの丸底フラスコ中で50mlの亜リン酸トリエチルに溶解する。反応物を140℃で8時間加熱する。粗製溶液をジエチルエーテルから2回沈殿させ、次いで固体を濾過し、次いで0.05ミリバールで120℃で24時間乾燥させる。最後に、ジエチルエーテルから最終的に沈殿させることにより、茶色の粉末(収率63%)を得ることができ、これを真空下、80℃で14時間乾燥させる。
【0096】
[実施例4]加水分解、poly[VDF−co−(CTFE−VPA−CTFE)]コポリマーの調製
50mlの滴下漏斗、垂直凝縮器及び温度計を備えた250mlの三口丸底フラスコを乾燥させ、窒素で15分間フラッシュする。この丸底フラスコは実施例3で合成したコポリマー8.0gを収容している。系内に水分が混入するのを防止するために、わずかな窒素過圧をアセンブリに加える。60mlの無水テトラヒドロフランを滴下漏斗を介して添加する。反応媒体を氷浴に入れ、4℃に冷却する。675mgのブロモトリメチルシラン(TMSBr、4.41ミリモル)を15分間かけて滴下して導入する。30分後、反応媒体を徐々に周囲温度に戻す。反応を15時間行い、次いで100mlのメタノールを滴下漏斗を介して導入する。溶液を2時間激しく撹拌する。反応が終了したら、ロータリーエバポレーターを用いて50℃の真空下で溶媒を蒸発させる。得られた固体をアセトンに溶解し、次いで2リットルの低温メタノールから2回沈殿させる。得られた白色粉末(収率42%)を真空下、60℃で14時間乾燥させ、次いでH、19F及び31P NMR分光法、TGA及びDSCによって特徴付ける。
【0097】
[実施例5]アジ化反応、poly[VDF−co−(CTFE−NEVE−CTFE)]コポリマーの調製
5.00gのpoly[VDF−co−(CTFE−IEVE−CTFE)]コポリマーを30mlのDMFに溶解する。次いで、得られた溶液及び1.00gのアジ化ナトリウム(15.4ミリモル)を50ml丸底フラスコに入れ、撹拌する。反応物を50℃で24時間加熱する。次いで、生成物を濾紙を通して濾過する。生成物を低温メタノールからの沈殿により精製し、真空下、40℃で14時間乾燥させる(図3、収率87%)。微細で淡黄色の粉末が得られる。
【0098】
図1は、20℃におけるDMSO d中の、実施例1に記載の方法により合成したpoly[VDF−co−(CTFE−CEVE−CTFE)]コポリマーの19F NMRスペクトルを表す。
【0099】
19F NMRスペクトルにより、コポリマー中に存在する様々な種類のフッ素原子を観察することが可能になる。このスペクトルは、−92ppmでの通常付加(頭部−尾部)及び−114及び−116ppmでの逆付加(頭部−頭部)を有するPVDFホモポリマーのスペクトルに非常に類似している。−108及び−120ppmの未定のピークは、CTFEのフッ素原子に起因する。
【0100】
19F NMRスペクトルにより、コポリマーのモル組成を計算するのに必要なVDF/CTFEモル比を決定することが可能になる。
【0101】
CTFE−CTFE配列に特徴的なシグナルは−127ppmには見られず、長い交互CTFE−VE−CTFE配列に特徴的なシグナルもない。これらのシグナルが存在しないことにより、ポリマー鎖に沿った単一のCTFE−VE−CTFE三連構造の導入が確認される。
【0102】
図2は、20℃におけるDMSO d中の、poly[VDF−(CTFE−CEVE−CTFE)](上部、実施例1)コポリマー、poly[VDF−co−(CTFE−IEVE−CTFE)](中間、実施例2)コポリマー及びpoly[VDF−co−(CTFE−NVE−CTFE)](底部、実施例5)コポリマーのH NMRスペクトルを表す。
【0103】
H NMRスペクトルにより、コポリマー中に存在する様々な種類のプロトンを観察することが可能になる。2.6〜3.2ppmの間の未定のピークは、頭部−尾部配列におけるVDF単位のCプロトンに対応する。2.3〜2.6ppmの間の未定のピークは、尾部−尾部配列におけるVDF単位のCプロトンに対応する。
【0104】
3.2〜3.6ppmの間の未定のピークは、コポリマーの骨格に沿ったVE単位のC−CH(OR)−プロトンに対応する。4.3〜4.9ppmの間の未定のピークは、コポリマーの骨格に沿ったVE単位のCH−C(OR)−プロトンに対応する。3.8〜4.1ppmの間の未定のピークは、ビニルエーテル側鎖の酸素に隣接するOCCH−Xプロトンに対応する。
【0105】
OCH−Xプロトンに対応する未定のピークは、コポリマーに応じて3.1〜3.8ppmの間でシフトする。これは、様々な官能化工程の特徴である。各工程の間に、前のシグナルの完全な消失が観察され、そのことにより化学変性の効率が確認される。
【0106】
H NMRスペクトルにより、コポリマーのモル組成を計算するのに必要なVDF/VEモル比を決定することが可能になる。
【0107】
H NMRスペクトルにより、官能化/化学変性工程の有効性を証明することが可能になる。
【0108】
図3は、poly[VDF−co−(CTFE−IEVE−CTFE)](破線、実施例2)コポリマー及びpoly[VDF−co−(CTFE−NVE−CTFE)](実線、実施例5)コポリマーのFTIRスペクトルを表す。
【0109】
この図により、コポリマーの化学変性、特にH NMRではほとんど見えないアジ化工程が確認される。アジド官能基(N)の存在を、2200cm−1付近に観測される価電子振動帯によって確認する。
【0110】
図4は、20℃におけるアセトンd中の、実施例1に記載の方法により合成したpoly[TrFE−co−(CTFE−iBuVE−CTFE)]コポリマーのH NMRスペクトルを表す。
【0111】
H NMRスペクトルにより、コポリマー中に存在する様々な種類のプロトンを観察することが可能になる。5.5〜6.5ppmの間の未定ピークは、トリフルオロエチレン部分のCF単位のプロトンに対応する。1.1ppmの未定ピークは、ビニルエーテルのイソブチル部分の6個のCプロトンに対応する。
【0112】
H NMRスペクトルにより、ポリマー中へのビニルエーテルの取り込みが証明されるが、TrFE及びiBuVEは共重合しない。
【0113】
図5は、20℃におけるアセトンd中の、実施例1に記載の方法により合成したpoly[TrFE−co−(CTFE−iBuVE−CTFE)]コポリマーの19F NMRスペクトルを表す。
【0114】
19F NMRスペクトルにより、コポリマー中に存在する様々な種類のフッ素原子を観察することが可能になる。−195及び−225ppmで観察されるシグナルは、トリフルオロエチレンのCH単位のフッ素原子に対応する。−105〜−145ppmの間の複雑な未定のピークは、トリフルオロエチレン、CF及びCTFE、CF及びCFClのものに対応する。
【0115】
19F NMRスペクトルにより、ポリマー鎖に沿ったCTFEの導入が証明される。
【0116】
図6は、実施例1に記載の方法により合成したpoly[VDF−co−(CTFE−iBuVE−CTFE)]コポリマー(実線)及びpoly[TrFE−co−(CTFE−CEVE−CTFE)]コポリマー(破線)の、空気下での10℃/分におけるTGAサーモグラムを表す。
【0117】
CTFE−VE−CTFE三連構造の導入により、フルオロポリマーの非常に良好な熱安定性は低下しない。PVDF骨格を有するポリマーは、300℃までの空気中で安定なままである。
【0118】
図7は、poly[VDF−co−(CTFE−CEVE−CTFE)]コポリマー(実施例1)のDSCサーモグラムを表す。
【0119】
CTFE−VE−CTFE三連構造の導入により、PVDFの融点が5〜10℃低下し、その結晶度も低下する。しかし、コポリマーは非常に結晶性のままであり、融点は最終コポリマーの特性を保証するのに十分高いままである。
【0120】
[実施例6]poly[VDF−co−(CTFE−OHVE−CTFE)]コポリマーの調製
ハステロイ製の100mlのオートクレーブは、時間の関数として圧力の変化を記録するコンピュータに接続された、入口弁及び出口弁、破裂板、圧力計、及び圧力センサを備えている。漏れがないことを確認するために、オートクレーブを30バールの窒素で加圧する。次いで、あらゆる微量の酸素を除去するために、それは3回の真空/窒素サイクルを受ける。反応器を不活性化した後、ジメチルカーボネート(DMC)中のジ(tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート(1.02g、2.56ミリモル)及び2−ヒドロキシエチルビニルエーテル(OHVE、2.29g、26.0ミリモル)を含む脱気溶液60mlを反応器に導入する。次いで、ガス状モノマーを導入するために反応器を−80℃に冷却する。クロロトリフルオロエチレン(CTFE、8.0g、69ミリモル)、次いでフッ化ビニリデン(VDF、30.5g、477ミリモル)を二重秤量によって反応器に移す。全ての試薬を仕込んだ後、オートクレーブを周囲温度に再加熱し、次いで48℃に加熱する。反応は15時間続き、48℃の反応の開始時の23バールと比較して16バールの圧力降下が観察される。反応後、反応器を氷浴に入れ、脱気する。粘稠で無色の反応粗生成物をビーカーに移し、200mlのアセトンで希釈する。この溶液を4Lの低温ペンタンから沈殿させる。得られた生成物である白色固体を真空下、60℃で14時間乾燥させる。
【0121】
コポリマー(収率=81%)をH(図9)及び19F(図8)NMR分光法によって特徴付ける。H NMRスペクトルで約5PPMを中心とする広範囲のシグナル及び3.6及び3.9ppmでのシグナルにより、コポリマー中のOHVE(ヒドロキシエチルビニルエーテル)の存在が確認される。19F NMRスペクトルは、CTFE−CTFE配列の特徴的なシグナル(−130ppm)又は長い交互のCTFE−VE CTFE配列の特徴的なシグナル(−110ppm〜−126ppmの広範囲で複雑な未定のピーク)を示さない。これらのシグナルがないことにより、鎖に沿った単一のCTFE−VE−CTFE三連構造の導入が確認される。H及び19F NMRスペクトルを組み合わせて得られたコポリマーのVDF/CTFE/OHVEモル組成は80/14/6である。
【0122】
[実施例7]官能化poly[VDF−co−(CTFE−OHVE−CTFE)]コポリマーの調製
50.0gの2−ブタノン(MEK)に実施例6に従って得られた10.0gのターポリマーを含む原液を50℃で調製する。原液5.0gを試料管に移し、これにアリルイソシアネート(AlI)又は2−(メタクリロイルオキシ)エチルイソシアネート(MAI)0.909ミリモルを添加する。激しく撹拌しながら24時間後、溶液を激しく撹拌した冷水1Lから沈殿させる。コポリマーである白色固体を濾過により回収し、次いで真空下、50℃で24時間乾燥させる。最終生成物を、19F(図10及び12)及びH(図11及び13)NMRにより特徴付ける。図8のNMRスペクトルと同一である19F NMRスペクトルから明らかなように、官能性イソシアネート部分のグラフト化は、ポリマー鎖の構造を変性しない。H NMRにおいて、5.6及び6.1ppmのシグナルがAlI官能化コポリマー(図11)について観察され、前記シグナルはアリル官能基の二重結合のプロトンの特徴である。最初は3.6及び3.9ppmにあったVEのペンダント鎖の−O−C−C−Oに割り当てられたシグナルは、3.4及び4.2ppmにシフトしており、これによりウレタン結合の形成が確認される。
【0123】
したがって、このH NMRスペクトルは、AlIが官能基化コポリマーのペンダントヒドロキシル基に実際にグラフトされていることを示す。同様に、MAI官能化コポリマーについて得られたH NMRスペクトル(図13)により、MAI基のグラフト化が確認される(二重結合のシグナルは5.2ppm付近に存在する)。
【0124】
得られたコポリマーはペンダント二重結合を有し、これにより、コポリマーが架橋助剤、及び熱開始剤又は光開始剤であることができるラジカル開始剤の存在下でラジカル法により容易に架橋することが可能になる。架橋パラメータ(温度、光強度、波長)は、使用される開始剤に応じて当業者によって選択される。
【0125】
[実施例8]架橋poly[VDF−co−(CTFE−OHVE−CTFE)]コポリマーの調製
50.0gの2−ブタノン(MEK)中に10.0gのターポリマーを含有する原液を50℃で調製する。5.0gの溶液を試料管に移し、これに0.909ミリモルのヘキサメチルジイソシアネート(HMDI)を加える。均質化後、ガラス板上にこの混合物からフィルムを製造する。25℃で2時間後、大気圧で100℃の換気オーブンで乾燥を続ける。トルエンジイソシアネート(TDI)及びイソホロンジイソシアネート(IDI)を用いてこの手順を繰り返す。ジイソシアネートを含まないフィルムも基準として製造する。全てのフィルムは約23μmの厚さを有し、均質で、わずかに不透明であり、ガラスに対する非常に良好な接着特性を示す。それらをFTIRで特徴付け、そのスペクトル(図14)は、1750cm−1でウレタン結合の特徴であるバンドを示す。
【0126】
これらの架橋ポリマーを、25℃で24時間のDMF中のそれらの溶解度を評価するために試験し、それを官能化コポリマーのフィルムのものと比較した。上記のプロトコルに従って調製した全てのコポリマーは不溶性であった。
【0127】
[実施例9]poly[VDF−co−(CTFE−GcVE−CTFE)]コポリマーの調製
実施例6と同様の方法で、ハステロイ製の100mlオートクレーブは、時間の関数として圧力の変化を記録するコンピュータに接続された入口弁及び出口弁、破裂板、圧力計、圧力センサを備えている。漏れがないことを確認するために、オートクレーブを30バールの窒素で加圧する。次いで、あらゆる微量の酸素を除去するために、それは3回の真空/窒素サイクルを受ける。反応器を不活性化した後、ジメチルカーボネート(DMC)中にジ(tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート(1.02g、2.56ミリモル)及びグリシジルビニルエーテル(GcVE、2.18g、21.8ミリモル)を含む脱気溶液60mlを反応器に導入する。次いで、ガス状モノマーを導入するために反応器を−80℃に冷却する。クロロトリフルオロエチレン(CTFE、9.0g、78ミリモル)、次いでフッ化ビニリデン(VDF、28.0g、438ミリモル)を二重秤量によって反応器に移す。全ての試薬を仕込んだ後、オートクレーブを周囲温度に再加熱し、次いで48℃に加熱する。反応は15時間続き、48℃の反応の開始時の23バールと比較して16バールの圧力降下が観察される。反応後、反応器を氷浴に入れ、脱気する。この粘稠で無色の反応粗生成物をビーカーに移し、200mlのアセトンで希釈する。この溶液を4Lの低温ペンタンから沈殿させる。得られた白色固体を真空下、60℃で14時間乾燥させる。
【0128】
得られたコポリマー(収率=74%)を、19F(図15)及びH(図16)NMR分光法によって特徴付ける。19F NMRスペクトルでは、CTFE−CTFE配列(−130ppm)に特徴的な非常に弱いシグナルが観察されるが、長い交互のCTFE−VE−CTFE配列(−110ppm〜−126ppmの間の広範囲で複雑な未定のピーク)に特徴的なシグナルは観察されない。これらのシグナルがないことにより、鎖に沿った単一のCTFE−VE−CTFE三連構造の導入が確認される。H NMRでは、3.4ppmの広範囲のピークはGcVE部分のプロトンに対応し、したがってポリマー鎖に沿ってその存在が確認される。H及び19F NMRスペクトルを組み合わせて得られたターポリマーのVDF/CTFE/GcVEモル組成は73/23/4である。
【0129】
このコポリマーは、ジアミン、ジオール又はジカルボン酸のような多官能性化合物とそれを反応させることにより、当業者にとって慣用の方法で架橋することができる。
図1
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【国際調査報告】