(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-532507(P2018-532507A)
(43)【公表日】2018年11月8日
(54)【発明の名称】歯科矯正用セルフライゲーティングブラケット
(51)【国際特許分類】
A61C 7/28 20060101AFI20181012BHJP
【FI】
A61C7/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2018-522555(P2018-522555)
(86)(22)【出願日】2016年10月27日
(85)【翻訳文提出日】2018年6月21日
(86)【国際出願番号】US2016059197
(87)【国際公開番号】WO2017075267
(87)【国際公開日】20170504
(31)【優先権主張番号】62/249,110
(32)【優先日】2015年10月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/081,574
(32)【優先日】2016年3月25日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA
(71)【出願人】
【識別番号】518145802
【氏名又は名称】オルト オーガナイザーズ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ペイン,マーク エー.
(72)【発明者】
【氏名】コリー,コリン
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052AA20
4C052JJ04
(57)【要約】
歯並びの悪い歯の歯科矯正治療のための歯科矯正用セルフライゲーティングブラケット。本ブラケットは、ブラケット本体、ブラケットドア、およびブラケットドアにより保持されているばね機構を含む。ブラケット本体は、歯の表面に付着するように形作られているブラケット本体の底部にある基部と、近遠心の方向に延在しており、アーチワイヤを取り外し可能に保持するように構成されているにブラケット本体の上部にあるブラケットスロットと、ブラケットスロットに向かって咬合面歯肉方向に延在するブラケット本体の上部にあるブラケット溝とを有する。ばね機構は、ブラケットドアおよびブラケット本体と接触するように構成されている1つ以上のばねを含む。よってブラケットドアは、開口位置と閉鎖位置との間でブラケット本体により保持され、かつブラケット本体と滑動可能に係合することができる。また、1つ以上の追加的な能動ばね部材を提供してもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯並びの悪い歯の歯科矯正治療のための歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットであって、前記ブラケットが、
底部および上部を有するブラケット本体であって、前記ブラケット本体が
歯の表面に付着するように形作られている前記ブラケット本体の底部にある基部と、
前記ブラケット本体の上部にあるブラケットスロットであって、前記ブラケットスロットが近遠心の方向に延在し、アーチワイヤを取り外し可能に保持するように構成されている、ブラケットスロットと、
前記ブラケットスロットに向かって延在する前記ブラケット本体の上部にあるブラケット溝と、
を含む、ブラケット本体と、
底部および上部を有するブラケットドアであって、前記ブラケットドアが、開口位置と閉鎖位置との間で前記ブラケット溝と滑動可能に係合し、前記ブラケットスロットが、前記ブラケットドアが前記アーチワイヤの配置および取り外しを可能にするために前記開口位置にある場合に露出しており、前記ブラケットスロットが、前記ブラケットドアが前記閉鎖位置にある場合に前記アーチワイヤを安全に保持するように覆われている、ブラケットドアと、
前記ブラケットドアにより支えられているように構成されている1つ以上のばねと、
を含む、歯科矯正用セルフライゲーティングブラケット。
【請求項2】
前記ブラケット溝が、前記ブラケットスロットに向かって咬合面歯肉方向に延在し、前記ブラケット本体が、1つ以上の第1のくぼみおよび1つ以上の第2のくぼみを含む、請求項1に記載の歯科矯正用セルフライゲーティングブラケット。
【請求項3】
前記ブラケットドアが、前記1つ以上のばねが前記1つ以上の第1のくぼみの中へと滑動するように前記ドアに力が加わると、滑動可能に移動可能になり、前記開口位置へと進み、かつ前記ブラケットドアが、前記1つ以上のばねが前記1つ以上の第2のくぼみの中へと滑動するように前記ドアに力が加わると、滑動可能に移動可能になり、前記閉鎖位置へと進む、請求項2に記載の歯科矯正用セルフライゲーティングブラケット。
【請求項4】
それぞれが第1の部分および第2の部分を含む1つ以上の能動ばねであって、前記1つ以上の能動ばねの第1の部分が、前記ブラケットドアに挿入されるよう構成されており、
前記1つ以上の能動ばねの第2の部分が、前記ブラケットドアが前記閉鎖位置にある場合に前記ブラケットスロット内のアーチワイヤと接触するように構成されている、能動ばね
をさらに含む、請求項1に記載の歯科矯正用セルフライゲーティングブラケット。
【請求項5】
前記ブラケットドアが前記閉鎖位置にある場合に前記ブラケットスロット内のアーチワイヤと接触するように構成されている1つ以上の能動ばねであって、前記1つ以上の能動ばねのそれぞれが、前記ブラケットドアにより一体となり保持されているタングである、能動ばね
をさらに含む、請求項1に記載の歯科矯正用セルフライゲーティングブラケット。
【請求項6】
前記1つ以上のばねが、互いに鏡像である複数のばねを含み、前記歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットが、歯先円すい角およびトルクを含む所定の規定を有し、前記複数のばねにより、前記ブラケットの所定の規定に関わらず、前記歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットが作動する、請求項1に記載の歯科矯正用セルフライゲーティングブラケット。
【請求項7】
歯並びの悪い歯の歯科矯正治療のための歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットであって、前記ブラケットが、
底部および上部を有するブラケット本体であって、前記ブラケット本体が
歯の表面に付着するように形作られている前記ブラケット本体の底部にある基部と、
前記ブラケット本体の上部にあるブラケットスロットであって、前記ブラケットスロットが近遠心の方向に延在し、アーチワイヤを取り外し可能に保持するように構成されている、ブラケットスロットと、
前記ブラケットスロットに向かって咬合面歯肉方向に延在し、1つ以上の第1のくぼみおよび1つ以上の第2のくぼみを含む、前記ブラケット本体の上部にあるブラケット溝と、
を含む、ブラケット本体と、
底部および上部を有するブラケットドアであって、前記ブラケットドアが、開口位置と閉鎖位置との間で前記ブラケット溝と滑動可能に係合し、前記ブラケットスロットが、前記ブラケットドアが前記アーチワイヤの配置および取り外しを可能にするために前記開口位置にある場合に露出しており、前記ブラケットスロットが、前記ブラケットドアが前記閉鎖位置にある場合に前記アーチワイヤを安全に保持するように覆われている、ブラケットドアと、
1つ以上のばねであって、前記ブラケットドアが、前記1つ以上のばねが前記1つ以上の第1のくぼみの中へと滑動するように前記ドアに力が加わると、滑動可能に移動可能になり、前記開口位置へと進み、前記ブラケットドアが、前記1つ以上のばねが前記1つ以上の第2のくぼみの中へと滑動するように前記ドアに力が加わると、滑動可能に移動可能になり、前記閉鎖位置へと進む、ばねと、
を含む、歯科矯正用セルフライゲーティングブラケット。
【請求項8】
前記1つ以上の第1のくぼみおよび前記1つ以上の第2のくぼみが、1つ以上の中間点で互いに向かい細くなり、前記1つ以上の中間点がし、前記ブラケットドアが前記開口位置と前記閉鎖位置との間で進む位置を画定する、請求項7に記載の歯科矯正用セルフライゲーティングブラケット。
【請求項9】
前記1つ以上のばねが、前記ドアにより支えられている、請求項7に記載の歯科矯正用セルフライゲーティングブラケット。
【請求項10】
それぞれが第1の部分および第2の部分を含む1つ以上の能動ばねであって、前記1つ以上の能動ばねの第1の部分が、前記ブラケットドアに挿入されるように構成されており、
前記1つ以上の能動ばねの第2の部分が、前記ブラケットドアが前記閉鎖位置にある場合に前記ブラケットスロット内のアーチワイヤと接触するように構成されている、能動ばね
をさらに含む、請求項7に記載の歯科矯正用セルフライゲーティングブラケット。
【請求項11】
前記ブラケットドアが前記閉鎖位置にある場合に前記ブラケットスロット内のアーチワイヤと接触するように構成されている1つ以上の能動ばねであって、前記1つ以上の能動ばねのそれぞれが、前記ブラケットドアにより一体となり保持されているタングである、能動ばね
をさらに含む、請求項7に記載の歯科矯正用セルフライゲーティングブラケット。
【請求項12】
前記1つ以上のばねが、互いに鏡像である複数のばねを含み、前記歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットが、歯先円すい角およびトルクを含む所定の規定を有し、前記複数のばねにより、前記ブラケットの所定の規定に関わらず、前記歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットが作動する、請求項7に記載の歯科矯正用セルフライゲーティングブラケット。
【請求項13】
歯並びの悪い歯の歯科矯正治療のための歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットであって、前記ブラケットが、
底部および上部を有するブラケット本体であって、前記ブラケット本体が
歯の表面に付着するように形作られている前記ブラケット本体の底部にある基部と、
前記ブラケット本体の上部にあるブラケットスロットであって、前記ブラケットスロットが近遠心の方向に延在し、アーチワイヤを取り外し可能に保持するように構成されている、ブラケットスロットと、
前記ブラケットスロットに向かって延在するブラケット本体の上部にあるブラケット溝と、
を含む、ブラケット本体と、
底部および上部を有するブラケットドアであって、前記ブラケットドアが、開口位置と閉鎖位置との間で前記ブラケット溝と滑動可能に係合し、前記ブラケットスロットが、前記ブラケットドアが前記アーチワイヤの配置および取り外しを可能にするために前記開口位置にある場合に、露出しており、前記ブラケットスロットが、前記ブラケットドアが前記閉鎖位置にある場合に前記アーチワイヤを安全に保持するように覆われている、ブラケットドアと、
前記ブラケットドアにより支えられており、前記ブラケットドアが前記閉鎖位置にある場合に前記ブラケットスロット内のアーチワイヤと接触するように構成されている、能動ばねと、
を含む、歯科矯正用セルフライゲーティングブラケット。
【請求項14】
前記1つ以上の能動ばねが、それぞれ第1の部分および第2の部分を含み、前記1つ以上の能動ばねの第1の部分が、前記ブラケットドアに挿入されるよう構成されており、
前記1つ以上の能動ばねの第2の部分が、前記ブラケットドアが前記閉鎖位置にある場合に前記ブラケットスロット内のアーチワイヤと接触するように構成されている、
請求項13に記載の歯科矯正用セルフライゲーティングブラケット。
【請求項15】
前記1つ以上の能動ばねのそれぞれが、前記ブラケットドアにより一体となり保持されているタングである、請求項13に記載の歯科矯正用セルフライゲーティングブラケット。
【請求項16】
前記ブラケット溝が、前記ブラケットスロットに向かって咬合面歯肉方向に延在し、前記ブラケット本体が、1つ以上の第1のくぼみおよび1つ以上の第2のくぼみを含み、前記ブラケットドアが、前記1つ以上のばねが前記1つ以上の第1のくぼみの中へと滑動するように前記ドアに力が加わると、滑動可能に移動可能になり、前記開口位置へと進み、前記ブラケットドアが、前記1つ以上のばねが前記1つ以上の第2のくぼみの中へと滑動するように前記ドアに力が加わると、滑動可能に移動可能になり、前記閉鎖位置へと進む、請求項13に記載の歯科矯正用セルフライゲーティングブラケット。
【請求項17】
互いに鏡像である複数のばねをさらに含み、前記歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットが、歯先円すい角およびトルクを含む所定の規定を有し、前記複数のばねにより、前記ブラケットの所定の規定に関わらず、前記歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットが作動する、請求項13に記載の歯科矯正用セルフライゲーティングブラケット。
【請求項18】
歯並びの悪い歯の歯科矯正治療のための歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットであって、前記ブラケットが、
底部および上部を有するブラケット本体であって、前記ブラケット本体が
歯の表面に付着するように形作られている前記ブラケット本体の底部にある基部と、
前記ブラケット本体の上部にあるブラケットスロットであって、前記ブラケットスロットが近遠心の方向に延在し、アーチワイヤを取り外し可能に保持するように構成されている、ブラケットスロットと、
前記ブラケットスロットに向かって延在する前記ブラケット本体の上部にあるブラケット溝と
を含む、ブラケット本体と、
底部および上部を有するブラケットドアであって、前記ブラケットドアが、開口位置と閉鎖位置との間で前記ブラケット溝と滑動可能に係合し、前記ブラケットスロットが、前記ブラケットドアが前記アーチワイヤの配置および取り外しを可能にするために前記開口位置にある場合に、露出しており、前記ブラケットスロットが、前記ブラケットドアが前記閉鎖位置にある場合に前記アーチワイヤを安全に保持するように覆われている、ブラケットドアと、
互いに鏡像である複数のばねであって、前記歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットが、歯先円すい角およびトルクを含む所定の規定を有し、前記複数のばねにより、前記ブラケットの所定の規定に関わらず、前記歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットが作動する、複数のばねと、
を含む、歯科矯正用セルフライゲーティングブラケット。
【請求項19】
前記1つ以上のばねが、前記ドアにより支えられている、請求項18に記載の歯科矯正用セルフライゲーティングブラケット。
【請求項20】
前記ブラケット溝が、前記ブラケットスロットに向かって咬合面歯肉方向に延在し、前記ブラケット本体が、1つ以上の第1のくぼみおよび1つ以上の第2のくぼみを含み、前記ブラケットドアが、前記1つ以上のばねが前記1つ以上のくぼみの中へと滑動するように前記ドアに力が加わると、滑動可能に移動可能になり、前記開口位置へ進み、前記ブラケットドアが、前記1つ以上のばねが前記1つ以上の第2のくぼみの中へと滑動するように前記ドアに力が加わると、滑動可能に移動可能になり、前記閉鎖位置へと進む、請求項18に記載の歯科矯正用セルフライゲーティングブラケット。
【請求項21】
それぞれが第1の部分および第2の部分を含む1つ以上の能動ばねであって、前記1つ以上の能動ばねの第1の部分が、前記ブラケットドアに挿入されるように構成されており、
前記1つ以上の能動ばねの第2の部分が、前記ブラケットドアが前記閉鎖位置にある場合に前記ブラケットスロット内のアーチワイヤと接触するように構成されている、能動ばね
をさらに含む、請求項18に記載の歯科矯正用セルフライゲーティングブラケット。
【請求項22】
前記ブラケットドアが前記閉鎖位置にある場合に前記ブラケットスロット内のアーチワイヤと接触するように構成されている1つ以上の能動ばねであって、前記1つ以上の能動ばねのそれぞれが、前記ブラケットドアにより一体となり保持されているタングである、能動ばね
をさらに含む、請求項18に記載の歯科矯正用セルフライゲーティングブラケット。
【請求項23】
歯並びの悪い歯の歯科矯正治療のための歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットであって、前記ブラケットが、
底部および上部を有するブラケット本体であって、前記ブラケット本体が
歯の表面に付着するように形作られている前記ブラケット本体の底部にある基部と、
前記ブラケット本体の上部にあるブラケットスロットであって、前記ブラケットスロットが近遠心の方向に延在し、アーチワイヤを取り外し可能に保持するように構成されている、ブラケットスロットと、
前記ブラケットスロットに向かって咬合面歯肉方向に延在し、1つ以上の第1のくぼみおよび1つ以上の第2のくぼみを含む、前記ブラケット本体の上部にあるブラケット溝と
を含む、ブラケット本体と、
底部および上部を有するブラケットドアであって、前記ブラケットドアが、開口位置と閉鎖位置との間で前記ブラケット溝と滑動可能に係合し、前記ブラケットスロットが、前記ブラケットドアが前記アーチワイヤの配置および取り外しを可能にするために前記開口位置にある場合に、露出しており、前記ブラケットスロットが、前記ブラケットドアが前記閉鎖位置にある場合に前記アーチワイヤを安全に保持するように覆われている、ブラケットドアと、
前記ブラケットドアにより支えられている1つ以上のばねであって、前記1つ以上のばねが、互いに鏡像である複数のばねを含み、前記歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットが、歯先円すい角およびトルクを含む所定の規定を有し、前記複数のばねにより、前記ブラケットの所定の規定に関わらず、前記歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットが作動する、1つ以上のばねと、
前記ブラケットドアにより支えられており、前記ブラケットドアが前記閉鎖位置にある場合に前記ブラケットスロット内のアーチワイヤと接触するように構成されている、1つ以上の能動ばねと、
を含み、
前記ブラケットドアが、前記1つ以上のばねが前記第1つ以上の第1のくぼみの中へと滑動するように前記ドアに力が加わると、滑動可能に移動可能になり、前記開口位置へと進み、前記ブラケットドアが、前記1つ以上のばねが前記1つ以上の第2のくぼみの中へと滑動するように前記ドアに力が加えわると、滑動可能に移動可能になり、前記閉鎖位置へと進む、歯科矯正用セルフライゲーティングブラケット。
【請求項24】
前記1つ以上の能動ばねが、それぞれ第1の部分および第2の部分を含み、前記1つ以上の能動ばねの第1の部分が、前記ブラケットドアに挿入されるように構成されており、
前記ブラケットドアの底部が、凹部およびチャネルを含み、前記凹部が、前記1つ以上の能動ばねの第1の部分を受領する大きさであり、前記チャネルが、前記1つ以上の能動ばねの第2の部分を受領する大きさであり、
前記1つ以上の能動ばねの前記第2の部分が、前記ブラケットドアが前記閉鎖位置にある場合に前記ブラケットスロット内のアーチワイヤと接触するように構成されている、
請求項23に記載の歯科矯正用セルフライゲーティングブラケット。
【請求項25】
前記1つ以上の能動ばねのそれぞれが、前記ブラケットドアにより一体となり保持されているタングである、請求項23に記載の歯科矯正用セルフライゲーティングブラケット。
【請求項26】
前記ブラケット本体が、前記ブラケット溝の近心側の近心の凹部と、前記ブラケット溝の遠心側の遠心の凹部とを含み、前記近心の凹部が、近心の第1のくぼみおよび近心の第2のくぼみを含み、前記遠心の凹部が、遠心の第1のくぼみおよび遠心の第2のくぼみを含み、
前記1つ以上のばねが、近心側のばねおよび遠心側のばねを含み、前記近心側のばねおよび前記遠心側のばねが、それぞれ、第1の端部、中間部、および第2の端部を含み、前記近心側のばねの第1の端部が、前記ブラケットドアの中へと係合し、前記近心側のばねの第2の端部が、前記ブラケット溝の近心側と作用し、前記遠心側のばねの第1の端部が前記ブラケットドアの中へと係合し、前記遠心側のばねの第2の端部が、前記ブラケット溝の遠心側と作用し、前記近心側のばねおよび前記遠心側のばねの中間部が、それぞれ、前記ブラケットドアの表面の周囲を包み、
前記ブラケットドアが、前記近心側のばねが前記近心の第1のくぼみの中へと滑動し、前記遠心側のばねが前記遠心の第1のくぼみの中へと滑動するように前記ドアに力が加わると、滑動可能に移動可能になり、前記開口位置へと進み、かつ、前記ブラケットドアが、前記近心側のばねが前記近心の第2のくぼみの中へと滑動し、前記遠心側のばねが前記遠心の第2のくぼみの中へと滑動するように前記ドアに力が加わると、滑動可能に移動可能になり、前記閉鎖位置へと進み、
前記近心の第1のくぼみおよび前記近心の第2のくぼみが、第1の中間点で互いに向かい細くなり、前記遠心の第1のくぼみおよび前記遠心の第2のくぼみが、第2の中間点で互いに向かい細くなり、前記第1の中間点および前記第2の中間点が、前記ブラケットドアが前記開口位置と前記閉鎖位置との間で進む位置を画定する、
請求項23に記載の歯科矯正用セルフライゲーティングブラケット。
【請求項27】
各ばねの第1の端部および第2の端部が異なる平面で配置され、かつ各ばねの中間部が各ばねの第1の端部および第2の端部が整列されている平面に関して角度付けされた別の平面に配置されるように、前記近心側のばねおよび前記遠心側のばねが、前記ブラケットドアおよび前記ブラケット本体と接触するように構成されている、請求項23に記載の歯科矯正用セルフライゲーティングブラケット。
【請求項28】
前記ブラケットが、前記ブラケットドアが、前記ブラケット溝と滑動可能に係合されており、前記開口位置と前記閉鎖位置との間で移動する場合に、前記近心側のばねの一部および前記遠心側のばねの一部が屈折するリリーフエリアを含む、請求項23に記載の歯科矯正用セルフライゲーティングブラケット。
【請求項29】
前記ブラケット溝が、前記ブラケットドアが前記ブラケット溝の中に滑動可能に挿入されると前記近心側のばねおよび前記遠心側のばねと接触するように構成された先細の側部を含む、請求項23に記載の歯科矯正用セルフライゲーティングブラケット。
【請求項30】
前記ブラケットドアの底部が、トレーリング近心溝を有する近心のキャビティおよびトレーリング遠心溝を有する遠心のキャビティを含み、前記近心のキャビティが、前記近心側のばねの中間部が前記トレーリング近心溝に沿って進むように前記近心側のばねの第1の端部を受領するように構成されており、前記遠心のキャビティが、前記遠心側のばねの中間部が前記トレーリング遠心溝に沿って進むように前記遠心側のばねの第1の端部を受領するように構成されており、
前記ブラケットドアが、前記ブラケットドアの近心側および遠心側の両方に湾曲したばねの凹部を含み、各中間部が、それぞれの湾曲したばねの凹部内のブラケットドアの表面の周りを包むように構成されており、
前記ブラケットドアの底部が、前記近心側のばねの第1の端部および前記遠心側のばねの第1の端部を受領するように構成されているレッジを含む、
請求項23に記載の歯科矯正用セルフライゲーティングブラケット。
【請求項31】
前記ブラケットドアが、雄ダブテールの形態で形成されており、前記ブラケット溝が、雌ダブテールの形態で形成されている、請求項23に記載の歯科矯正用セルフライゲーティングブラケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2015年10月30日に出願の米国仮出願第62/249,110号および2016年3月25日に出願の米国非仮出願第15/081,574号の優先権を主張するものであり、それら全体は参照により援用される。
【背景技術】
【0002】
本発明は、概して、歯並びの悪い歯の歯科矯正治療を提供する歯科矯正用ブラケット、より具体的には、ブラケットスロットにアーチワイヤを取り外し可能に保持するスライディングドアを備える歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットに関する。
【0003】
歯科矯正用ブラケットまたは装具は、歯並びのずれたまたは歯並びの悪い歯を治療する非常に一般的な方法である。従来より、ブラケットは、患者の歯の唇面または可能な場合は舌面に接着されており、歯の移動を誘導するために、アーチワイヤが各ブラケットのスロットに配置されている。ブラケットは、一般に、歯の動きの平均的な事例に関して最適化されているトルク、ティップ、およびインアウトといった固有の規定を有するように、あらかじめ調節されている。たとえばブラケットは、ブラケットが配置される歯に応じて咬合平面に関して角度をつけてもよい(すなわちブラケットは「歯先円すい角」を有する)。リガチャーまたはライゲーティングモジュール、典型的にはゴムバンドなどのエラストマーのバンドが、所定の位置にアーチワイヤを保持するようにブラケットの結合ウィング周辺に配置されている。しかしながら、リガチャーは、典型的には、移動の間にワイヤ上で摩擦を引き起こし、これにより治療プロセスが比較的遅くなり、プラークが付きやすくなり、食べかすが詰まりやすくなる傾向がある。これらは一般に虫歯または感染症の原因である。結果として、歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットの使用は、着実に、不正咬合の治療に代わる解決策となり普及している。
【0004】
歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットは、所定の位置にアーチワイヤを保持するためにリガチャーを必要としない。むしろ、ブラケットは、ブラケットスロットにアーチワイヤを取り外し可能に保持するように開口かつ閉鎖するクリップまたはスライドを使用する。よって、ワイヤの移動による摩擦は、従来のブラケットと比較して低減し、これにより治療期間が短くなる可能性がある。従来のセルフライゲーティングブラケットの一例は、歯の表面に取り付けるための基部、アーチワイヤを受領する大きさのアーチワイヤスロット、基部に形成されアーチワイヤスロットに対して横方向に配向されたチャネル、およびチャネルで滑動可能に保持され、アーチワイヤスロットの上方で閉鎖可能である滑動部材を含む。ブラケットの側部は、滑動部材を安全に保持するように圧着されている。別の種類のセルフライゲーティングブラケットは、閉鎖位置で滑動部材を固定するための可撓性のピンを含む。しかしながら、これらの種類のセルフライゲーティングブラケットは、ブラケットに滑動部材を固定するための追加的な手法または添加剤を必要とすることにより、さらに製造工程が複雑となり費用が増加する。
【0005】
さらに、滑動部材を保持するブラケットの側部を圧印、湾曲、または圧着する間にもたらされる失敗は、典型的には、ブラケットに損傷を与えることなく元に戻すことはできず、よって費用がかなり高くなる可能性がある。たとえば、ブラケットの側部を圧縮しすぎると滑動部材が移動しなくなり、ブラケットを廃棄する必要性が生じる場合がある。さらに、ブラケットの側部への圧縮が少なすぎると、使用中、ブラケットから滑動部材が偶発的に外れ、患者および医師に不満が生じ、ブラケットがリコールになる可能性がある。
【0006】
よって、ブラケットに対して滑動部材を圧着、湾曲、圧印、締め付け、または接着することを必要としないセルフライゲーティングブラケットを提供することにより、組み立てのプロセスを容易にすることが望ましい。さらに、製造および組み立てが容易であり、すなわち費用対効果が高く、ブラケットに対して滑動部材を組み立てるための接着剤も添加剤も必要とせず、かつブラケット内の空間を最小限にしてプラークの形成を低減するセルフライゲーティングブラケットを提供することが望ましい。さらに、ブラケットスロットにおいてアーチワイヤを完全に覆うような滑動部材を提供することにより、ブラケットの規定をパッシブまたはアクティブに示すことができる歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットを提供することが望ましい。さらに、プロファイルが低く、患者の快適さが改善し、製造が容易になり、ドアの作動が改善し、視覚的な歯科矯正用の参照基準が改善することを伴う、金属製の審美的なセルフライゲーティングブラケットを提供することが望ましい。本発明は、これらおよび他の需要に合致するものである。
【発明の概要】
【0007】
本発明に係る歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットは、限定するものではないが、ブラケットに対して滑動部材またはブラケットドアを圧着、湾曲、圧印、締め付け、または接着する必要のないセルフライゲーティングブラケットを含む、従来技術によって以前に提供されていない1つ以上の利点および長所を提供する。セルフライゲーティングブラケットは、パッシブまたはアクティブであってもよく、ブラケットドアにより支えられているばね機構を組み込む。好ましい実施形態では、ばね機構は、開口位置と閉鎖位置との間でブラケットドアを付勢または進め、外れることを防止しつつブラケット本体に対するブラケットドアの組み立てを容易にし、ブラケットの規定に関わらずいずれのセルフライゲーティングブラケットにも費用対効果が高い状態で使用することが可能である。
【0008】
よって、底部、舌側部、上部、および唇側部を有するブラケット本体と、底部、舌側部、上部、および唇側部を有するブラケットドアと、ブラケットドアと接触し、同ブラケットドアにより保持されるように構成されている1つ以上のばねを含むばね機構とを含む、歯並びの悪い歯の歯科矯正治療のための歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットを提供する。ブラケット本体は、歯の表面に付着するように形作られているブラケット本体の底部にある基部と、近遠心の方向に延在しており、アーチワイヤを取り外し可能に保持するように構成されている、ブラケット本体の上部にあるブラケットスロットと、咬合面歯肉方向に延在する、ブラケット本体の上部にあるブラケット溝とを有する。好ましくは、ブラケット本体は、1つ以上のばねを係合または受領する大きさである、1つ以上の第1のくぼみおよび1つ以上の第2のくぼみを有する。
【0009】
ブラケットドアは、ブラケットスロットがアーチワイヤの配置および取り外しを可能にするように露出している開口位置と、ブラケットスロットがアーチワイヤを安全に保持するように覆われている閉鎖位置との間で、ブラケット溝を滑動可能に係合する。好ましい実施形態では、ブラケットドアは、1つ以上のばねが1つ以上の第1のくぼみの中へと滑動するようにドアに力が加わると、滑動可能に移動可能になり、開口位置へと進み、かつ、ブラケットドアは、1つ以上のばねが1つ以上の第2のくぼみの中へと滑動するようにドアに力が加わると、滑動可能に移動可能になり、閉鎖位置へと進む。
【0010】
本発明の好ましい実施形態では、1つ以上のばねは、近心側のばねおよび遠心側のばねを含み、このそれぞれが、ブラケットドア、およびブラケット溝の近心側または遠心側とそれぞれ接触するように構成されている。ブラケット本体は、近心の第1のくぼみおよび近心の第2のくぼみを有するブラケット溝の近心側の近心の凹部と、遠心の第1のくぼみおよび遠心の第2のくぼみを有するブラケット溝の遠心側の遠心の凹部とを含む。この実施形態では、ブラケットドアは、近心側のばねが近心の第1のくぼみの中へと滑動し、遠心側のばねが遠心の第1のくぼみの中へと滑動するようにドアに力が加わると、滑動可能に移動可能になり、開口位置へと進む。同様に、ブラケットドアは、近心側のばねが近心の第2のくぼみの中へと滑動し、遠心側のばねが遠心の第2のくぼみの中へと滑動するようにドアに力が加わると、滑動可能に移動可能になり、閉鎖位置へと進む。
【0011】
好ましい態様では、近心の第1のくぼみおよび近心の第2のくぼみは、第1の中間点で互いに向かい細くなり、遠心の第1の凹部および遠心の第2の凹部は、第2の中間点で互いに向かい細くなっている。ここで、第1の中間点および第2の中間点は、ブラケットドアが開口位置から閉鎖位置へと進む(逆もまた同様)位置を画定する。
【0012】
好ましくは、近心側のばねおよび遠心側のばねは、それぞれ、第1の端部、中間部、および第2の端部を有する。各ばねの第1の端部は、ブラケットドアと接触するように構成されており、各ばねの第2の端部は、ブラケット本体と接触するように構成されている。さらに各ばねの中間部は、好ましくは、ばねの伸びた長さ(running length)を最大限にし、ブラケットドアの移動により引き起こされる応力を分配するように、例えばU字型の構成で形成されている。さらに、各ばねの中間部は、ブラケットドアの表面の周りを包むように構成されている。
【0013】
本発明の別の好ましい態様では、近心側のばねおよび遠心側のばねは、各ばねの第1の端部および第2の端部が異なる平面に配置されるように、かつ各ばねの中間部が、各ばねの第1の端部および第2の端部が整列されている平面に関して角度付けされた別の平面に配置されるように、ブラケットドアおよびブラケット本体と接触するように構成されている。一態様では、各ばねの第1の端部および第2の端部が整列されている平面は、直交した平面である。代替的な態様では、各ばねの第1の端部および第2の端部が整列されている平面は、平行の平面である。
【0014】
この好ましい実施形態では、ブラケットドアは、1つ以上のばねを係合または受領する大きさである受領部(receiving feature)を含む。本発明の好ましい態様では、受領部は、ブラケットドアの底部にあり、トレーリング近心溝を有する近心のキャビティおよびトレーリング遠心溝を有する遠心のキャビティを含む。近心のキャビティは、近心側のばねの中間部がトレーリング近心溝に沿って進むよう、近心側のばねの第1の端部を受領するように構成されている。さらに、遠心のキャビティは、遠心側のばねの中間部がトレーリング遠心溝に沿って進むよう、遠心側のばねの第1の端部を受領するように構成されている。代替的な好ましい態様では、受領部は、近心側のばねおよび遠心側のばねの第1の端部を受領するように構成されている近心のキャビティおよび遠心のキャビティに代わり、レッジ(ledge)を含む。
【0015】
受領部は、好ましくは、ブラケットドアの表面の1つ以上の凹部、たとえばブラケットドアの近心側および遠心側の両方にある湾曲したばねの凹部を含む。この表面は、ブラケットドアの外または中にあってもよい。さらに、各中間部は、それぞれの湾曲したばねの凹部の中のブラケットドアの表面の周りを包むように構成されている。
【0016】
他の好ましい態様では、ブラケットドアは、近心側のばねの第2の端部および遠心側のばねの第2の端部が、ブラケットドアがブラケット溝と滑動可能に係合し、開口位置と閉鎖位置との間で移動する際に屈折する、リリーフエリアを含む。さらに、ブラケット溝は、ブラケットドアがブラケット溝に滑動可能に挿入されると、近心側のばねおよび遠心側のばねと接触するように構成されている先細の側部を含む。一部の態様では、ブラケットは、咬合平面に対して歯先円すい角で配向されていてもよく、近心側のばねおよび遠心側のばねは、歯先円すい角に適応するように配置されている。
【0017】
本発明の歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットは、パッシブまたはアクティブであってもよい。上述の好ましい実施形態のアクティブなバージョンでは、ブラケットは、それぞれが第1の部分および第2の部分を含む1つ以上の能動ばねを含む。好ましくは、各能動ばねの第1の部分は、ブラケットドアに挿入可能であり、かつブラケットドアにより保持されており、各能動ばねの第2の部分は、ブラケットドアが閉鎖位置にある場合にブラケットスロット内のアーチワイヤと接触する。あるいは、能動ばねは、ブラケットドアにより一体となり支えられており、かつブラケットドアから延在するタング(tang)である。
【0018】
好ましい態様では、ブラケットドアは、凹部およびチャネルを含むブラケットドアの底部にある受領部を使用して、1つ以上の能動ばねを保持する。凹部は、1つ以上の能動ばねの第1の部分を受領し、チャネルは、アーチワイヤと係合または接触する際に1つ以上の能動ばねの第2の部分を受領する大きさである。本発明の別の好ましい態様では、ブラケットドアは、チャネルに接続しているリリーフエリアを含む。
【0019】
他の様々な好ましい態様は、上述の好ましい実施形態の範囲内に含まれている。たとえば1つの好ましい態様では、本発明の好ましい実施形態は上述のパッシブなブラケットまたはアクティブなブラケットとすることができる。別の好ましい態様では、ブラケット本体の基部は、大臼歯の表面と係合するように形作られているデュアルコンパウンド(dual compound)である。別の好ましい態様では、ブラケットの基部は滑らかであってもよく、または接着システムを有してもよい。たとえば、基部の接着システムは、パイロンまたはメッシュを含んでもよい。あるいは基部は、ブラケットの接着システムとしての小さなセラミックのかけらを含む滑らかな表面を有してもよい。
【0020】
別の本発明の好ましい態様では、ブラケットは、歯先円すい角およびトルクを含む所定の規定を有する。複数のばねを使用する実施形態では、ばねは、好ましくは、互いに鏡像であり、よって歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットを歯先円すい角およびトルクに関わらず任意の所定のブラケットの規定で作動可能にする。
【0021】
さらなる本発明の別の好ましい態様では、ブラケット本体の上部は、ブラケットドアが閉鎖位置にある場合にブラケットドアを開口するツールを受け入れるように構成されているブラケットスロットに隣接したツール用のくぼみ(tool depression)を含む。本発明の別の好ましい態様では、ブラケット本体は、ブラケット本体の歯肉側およびブラケット本体の咬合側で、任意のリガチャーの配置のための湾曲した結合ウィングの溝を含む。本発明の別の好ましい態様では、ブラケット本体の上部およびブラケットドアは、視覚的な歯科矯正用の参照基準を適用する領域または溝を含む。
【0022】
本発明のさらなる好ましい態様では、ブラケットスロットの外側の端は、アーチワイヤの切り欠きを防止するように丸みがつけられている。別の好ましい態様では、ブラケットスロットは、ブラケットスロットへのアーチワイヤの挿入を容易にする溝付きの入口を含む。本発明の別の好ましい態様では、ブラケットドアの上部は、患者の快適さを改善するように丸みがつけられている。本発明の別の好ましい態様では、1つ以上のばねは、丸いワイヤ状のばねである。本発明の別の好ましい態様では、ブラケットドア、ブラケット本体、および1つ以上のばねは、プラークの成長または石灰化に関する空間を最小限にするように係合されている。本発明の別の好ましい態様では、ブラケットドアおよびブラケット溝は、それぞれ雄ダブテールおよび雌ダブテールの形態で形成されている。
【0023】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面と組み合わせて以下の好ましい実施形態の詳細な説明から、明らかであり、これらは例として本発明の作用を例示する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の好ましい実施形態に係る、ブラケット本体と、ブラケットドアと、1つ以上のばねとを有する歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットの斜視図である。
【
図2】
図1に表される歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットのブラケット本体の上部平面図である。
【
図3A】
図1に表される歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットのブラケットドアの底部平面図である。
【
図4A】
図1に例示されるブラケット本体およびブラケットドアと接触するばねの斜視図である。
【
図5】ブラケットドアに関連したばねの配置を例示するブラケットドアの歯肉側の図面である。
【
図6】ばねが適切にブラケットドアに配置されており、ブラケットドアがブラケット本体と係合する歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットの咬合側の図面である。
【
図7】ブラケットスロットが、アーチワイヤを配置または取り外すように露出するような開口位置でのドアを示す歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットの上部平面図である。
【
図8】開口位置でのドアを示す
図7に表される歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットの近遠心側の側面図である。
【
図9】ブラケットドアがアーチワイヤを安全に保持するようにブラケットスロットを覆うような閉鎖位置でのドアを示す歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットの上部平面図である。
【
図10】閉鎖位置でのドアを示す
図9に表される歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットの近遠心側の側面図である。
【
図11A】開口位置でのドアと共に
図1に表される好ましい実施形態に係る例示的な歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットの上部平面図である。
【
図11B】開口位置でのドアと共に
図1に表される好ましい実施形態に係る別の例示的な歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットの斜視図である。
【
図12A】閉鎖位置でのドアを示す
図11Aに示される歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットの上部平面図である。
【
図12B】閉鎖位置でのドアを示す
図11Bに示される歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットの斜視図である。
【
図13A】
図12Aに表される歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットの近遠心側の側面図である。
【
図13B】
図12Bに表される歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットの近遠心側の側面図である。
【
図14】
図1に表される好ましい実施形態の代替的な態様に係る、大臼歯の歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットの咬合側の側面図である。
【
図15】
図14に表される歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットの近遠心の側面図である。
【
図16】
図14に表される歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットの歯肉側の側面図である。
【
図17】
図1に表される好ましい実施形態に係る、ブラケット本体と、ブラケットドアと、1つ以上のばねとを含み、ブラケットドアにより保持されている追加的な能動ばね部材を有する、歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットの上部平面図である。
【
図18】
図17に例示されている歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットに表されるブラケットドアの舌側部の斜視図である。
【
図19】能動ばね部材を例示する
図18に表されるブラケットドアの舌側部の側面図である。
【
図20】
図17に表される歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットの近遠心の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、従来の歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットよりも組み立てやすく、費用対効果が高い歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットを提供する。本発明は、ブラケットにクリップまたはスライドを圧着、湾曲、作製、締め付け、または接着する必要はなく、ブラケットにスライドを組み立てるための力を与える機構、好ましくは、ばね機構を使用する。また本発明は、接着剤または添加剤を必要とせず、ブラケットにおける空間を最小限にすることによりプラークの形成を低減することを支援し、ならびにプロファイルが低く、患者の快適さが増大し、製造が容易となり、開口および閉鎖に関わる力および機構が改善し、かつ医師にとって視覚的な手掛かりが改善した、金属製の審美的なセルフライゲーティングブラケットを提供する。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係る歯科矯正用セルフライゲーティングブラケット10を例示する。セルフライゲーティングブラケットは、舌側部または底部14および唇側部または上部16を有するブラケット本体12、ブラケット本体と滑動可能に係合するブラケットドアまたはスライド18、ならびにブラケット本体およびブラケットドアと係合する1つ以上のばね(70Aおよび70B)を含むばね機構20を含む。1つの好ましい態様では、ばね機構は、ブラケット本体およびブラケットドアと係合する際は一定して張力がかかっている。代替的な好ましい態様では、ばね機構は、ブラケット本体およびブラケットドアと係合する際に、静止状態で、実質的に張力のない状態にある。ばね機構は、好ましくは、セルフライゲーティングブラケットの上部または舌面を見る際に使用者に対して可視化されていない。
【0027】
ブラケット本体の底部は、歯の表面と係合するように形作られている組み合わせ(compound)である基部22を有し、アーチワイヤスロットまたはブラケットスロット24は、ブラケット本体の上部に配置されている。ブラケットスロットは、近遠心の方向に延在しており、アーチワイヤ26を取り外し可能に保持する大きさである。好ましくは、ブラケットスロットの外側の端は、歯科矯正治療の間のアーチワイヤの切り欠きの防止を支援するように丸みがつけられており、これによりブラケットスロット内でのアーチワイヤの移動により引き起こされる摩耗または損傷のリスクが低下する。ブラケット本体およびブラケットドアは、好ましくは、射出成形部品を使用して作製され、これらは、金属、セラミック、プラスチック、または他の種類の物質から製造することができる。任意に、セルフライゲーティングブラケット10は、歯肉と接触することなく、フック27の上でのリガチャーなどのエラストマーの取り付けを容易にするように形成されている同フック27を含む。フックの形状は、強度が強くなったブラケットを提供するために、セルフライゲーティングブラケットに使用される物質に応じて変動してもよい。歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットの個々の部品およびこれらがどのように組み合わせて使用されるかは、以下の図面を参照して論述されている。
【0028】
図2を参照すると、ブラケット本体の上部は、ブラケット溝28、近心面29A、および遠心面29Bを含む。ブラケット溝28は、咬合面歯肉方向に延在し、かつブラケット溝に沿ってブラケットドアの動きを誘導する対向する側のスロット(87)を含む。ブラケット本体の近心面29Aおよび遠心面29Bは、さらに、ブラケット溝に沿ったブラケットドアの動きを支持する。1つの好ましい態様では、ブラケット溝は、
図2に例示されるように、ブラケットスロットと最終的に接続する。あるいは、ある壁(不図示)が、ブラケットスロットからブラケット溝を分離してもよい。
【0029】
ブラケット本体は、好ましくは、ばね機構の1つ以上のばねを受領または係合する大きさの1つ以上の凹部を含む。1つ以上の凹部は、
図2に例示的に表されているように、ブラケット本体の側部にあってもよい。あるいは、1つ以上の凹部は、ブラケット溝の中のいずれかに配置されていてもよい。
図2に表される例示的な実施形態では、近心の凹部30は、ブラケット溝に隣接したブラケット本体の近心側32に配置されており、遠心の凹部34は、ブラケット溝に隣接したブラケット本体の遠心側36に配置されている。近心の凹部は、好ましくは、ブラケットの歯先円すい角44と直交して配向されている中心線42Aおよび42Bをそれぞれ有する、ブラケットスロットから離れて配置された近心の第1のくぼみ38およびブラケットスロットに向かって配置された近心の第2のくぼみ40を含む。同様に、遠心の凹部は、好ましくは、ブラケットの歯先円すい角に直交して配向されている中心線をそれぞれ有する、ブラケットスロットから離れて配置された遠心の第1のくぼみ46およびブラケットスロットに向かって配置された遠心の第2のくぼみ48を含む。代替的な実施形態(不図示)では、凹部は、ブラケット溝の中、たとえばブラケット溝の中央に配置されていてもよく、ブラケットスロットから離れて配置された第1のくぼみおよびブラケットスロットに向かって配置された第2のくぼみを含んでもよい。
【0030】
1つ以上のくぼみは、使用者がアーチワイヤを取り外しまたは配置できるようにブラケットスロットが露出している開口位置と、アーチワイヤがブラケットスロットに安全に保持されているようにブラケットスロットが覆われている閉鎖位置との間でブラケットドアを各位置へと動かすまたは切り替えることができるようなばね機構と係合する大きさである。たとえば、
図1および2に表される例示的な実施形態では、ブラケットドアは、ばね機構が近心の第1のくぼみおよび遠心の第1のくぼみの中へ滑動し、ドアを開口へと進めるまたは付勢するようにドアに力が加わると、開口位置へと滑動可能に移動可能である。また、ブラケットドアは、ばね機構が近心の第2のくぼみおよび遠心の第2のくぼみの中へと滑動し、ドアを閉鎖へと進めるまたは付勢するようにドアに力が加わると、閉鎖位置へと滑動可能に移動可能である。好ましくは、近心の第1のくぼみおよび近心の第2のくぼみの中心線の間の距離(42Aと42Bとの間の距離)、ならびに遠心の第1のくぼみおよび遠心の第2のくぼみの中心線の間の距離は、好ましくは、ブラケットスロットを十分明確にするために、ブラケットドアの開口位置を考慮する大きさである。
【0031】
好ましい実施形態では、歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットは、ブラケット本体に作動可能に係合したブラケットドアとあらかじめ組み合わせてもよい。あるいは、ブラケットドアは別々の部品であってもよく、この場合、ブラケットドアは、ブラケット本体と係合するように、後述するように容易に組み立てることができる。ブラケット本体は、ブラケット溝に向かって先細りするブラケット本体の近心側および遠心側の両方に配置されている先細の側部50を含む。これらの先細の側部は、ブラケットドアが近心の第1のくぼみ38および遠心の第1のくぼみ46に向かって滑動可能に押圧されると、ばね機構と係合し、ブラケット本体へのブラケットドアの組み立てを容易にすることができる。さらに、くぼみ38および46は、それぞれ、好ましくは、ばね機構を保持し、ブラケット本体からブラケットドアが偶発的に外れることを防ぐように協同的に角度付けされている。
【0032】
図3Aおよび3Bを参照すると、ブラケットドアは、対向する側端53を有するドアヘッド52と、好ましくは、湾曲した対向する側端55を有するドアの基部54とを含む。ドアヘッドの上部56は、好ましくは、患者の快適さを改善するために丸みがつけられている。好ましくは、ブラケットドアは、割れ目またはぎざぎざの縁のない連続した表面をブラケットの幅全体にわたり延在することにより、プラークを予防し、さらには患者の快適さを改善する。またブラケットドアは、好ましくは、アーチワイヤスロットの全体幅を延ばし、これにより、より良好なブラケットの規定の表示を可能にする。
【0033】
好ましい態様では、ばね機構は1つ以上のばねを含み、ブラケットドアは、1つ以上のばねを係合する大きさの受領部57を含む。受領部は、ばね機構をロックかつ実施するように作動する。ばね機構が2つのばねを含む
図3Aに表される好ましい実施形態では、受領部57は、ドアの基部の底部58にあり、2つのキャビティおよび2つの溝、すなわち、トレーリング近心溝62を有する近心のキャビティ60と、トレーリング遠心溝66を有する遠心のキャビティ64とを含む。代替的な例示的実施形態(不図示)では、ばね機構は1つのばねのみを含んでもよく、ドアの基部の底部にある受領部は、キャビティおよび溝を1つのみ、たとえばトレーリング中心溝を有する中心キャビティを含んでもよい。図面はドアの基部の底部にある受領部を表すが、受領部は限定されるものではなく、たとえば受領部は、ブラケットドアの中または表面の異なる位置に配置されていてもよいことに留意されたい。
【0034】
さらに受領部57は、ドアの基部の表面の周りで湾曲し、ばね機構を係合する大きさの1つ以上のばねの凹部68を含む。たとえば
図3Bに例示される好ましい実施形態では、ばねの凹部68は、ドアの基部の近心側および遠心側の両方の外面の周りで湾曲する。あるいは、ばねの凹部は、ドアの基部の内面の周り、たとえばトレーリング中心溝の中で湾曲してもよい。本発明の範囲内で1つ以上のばねのばね機構を係合するために、他の様々な受領部の構成を当業者が考慮してもよい。
【0035】
図1および3Aに表される好ましい例示的な実施形態では、ばね機構は、好ましくは、互いに鏡像である2つのばね70Aおよび70Bを含む。これらのばねは、好ましくは、金属製であり、ブラケットドアの中へ挿入されると屈折し、ブラケットドアおよびブラケット本体と作用するとばね力を提供する。好ましい態様では、これらのばねは、それぞれ3つの異なる力:ブラケットドアを開口し始めるために必要な力、ブラケットドアを閉鎖し始めるために必要な力、およびドアを開口位置および閉鎖位置のいずれかへと進めるために必要とされる開口位置と閉鎖位置との間のおおよそ中間で起こる力を、提供する。
【0036】
図4Aおよび4Bは、わかりやすくするため2つのばねのうちの1つのみ(70A)が例示されているが、各ばねの好ましい配置または構成を例示する。各ばねは、第1の端部72、ばね部分76を含む中間部74、および第2の端部78を有する。中間部は、好ましくは、ばねの伸びた長さを最大限にし、かつ、ブラケットドアの移動により、たとえば
図4Aに表されるように1つ以上のばねコイルのU字型の構成を有することにより引き起こされる応力を分配するように、形成されている。各ばねの第1の端部は、ブラケットドアの底部にあるキャビティ(たとえばキャビティ60または64)と係合または接触する大きさであり、各ばねの第2の端部は、ブラケット本体にある凹部(たとえば凹部30または34)のくぼみと係合または接触する大きさである。各ばねの中間部は、ブラケットドアの底部にあるトレーリング溝(たとえば溝62または66)と適合、係合、または接触し、かつブラケットドアの外面または内面に沿ってばねの凹部(たとえば、ばねの凹部68)の周りを包むまたは適合する大きさである。たとえば
図3Bに示されるように、各ばねの中間部は、ブラケットドアの外面に沿ってばねの凹部の周りを包んでもよい。
【0037】
好ましくは、ばねは丸いワイヤ状のばねであり、よって、簡便であり、費用を削減でき、かつ製造における公差が縮まることとなる。各ばねの第2の端部は、好ましくは、製造時に滑らかで丸いまたは半球形の表面に形成されており、これにより、ブラケットドアが作動するためにブラケット溝の凹部に沿ってこれらのばねの端を滑動させることができる。
【0038】
図1に表される例示的な実施形態の好ましい態様では、両ばねは互いに鏡像であり、よって、ブラケットドアの開口または閉鎖の間、ほぼ同一の対向する力で作動し、これにより、ブラケットドアの接着を防ぐ。別の好ましい態様では、各ブラケットの規定に関して専用に設計された個々のばねを必要とすることなく、ブラケットの規定および歯先円すい角に関わらず、両ばねを歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットに使用でき、よって、製造の容易さおよびスケールメリット(すなわち費用対効果)を可能にする。好ましくは、1つ以上のばね、ブラケットドアにある1つ以上のキャビティ、およびブラケット本体にある1つ以上のくぼみは、ブラケットの歯先円すい角に適合するようにブラケットスロットから個々に配向された異なる距離にあることにより、規定に関わらず各ブラケットでほぼ同一のばねを使用することができる。この方法での好ましい実施形態は、ブラケットの規定または歯先円すい角のそれぞれの変化のために個々に異なるばねを製造することを必要とすることなく、ばねの生産においてスケールメリットを可能にするため、従来技術を超えて有意に改善する。さらに、中心線(たとえば
図2の42Aおよび42B)がブラケットの歯先円すい角と直交するようなブラケット本体にある1つ以上のくぼみの配置は、ほぼ同一の、両ばねに課せられた力および両ばねによる力を用いて、ブラケットの歯先円すい角に関わらず、かつ1つ以上のくぼみがブラケット本体の側部またはブラケット溝に配置されているかに関わらず、開口位置と閉鎖位置との間でのブラケットドアの一定した転位を提供する。
【0039】
本明細書中に記載される好ましい実施形態における本発明での鏡像のばねの使用は、歯先円すい角、トルク、およびインアウトに関わらず、これらのばねがすべてのブラケットの規定に広く使用することができるため、従来のセルフライゲーティングブラケットを超えて有意に有益である。歯科矯正用ブラケットの規定は非常に多く、ブラケットの規定がMBT、Roth、Andrews、Hilgers、Rickets、または他のいずれかの規定かどうかに応じて、およびブラケットが中央歯、側歯、犬歯、小臼歯、門歯、または他のいずれかの上顎もしくは下顎の歯に使用されるかどうかに応じて変化する、様々な歯先円すい角およびトルクを含んでもよい。よって、好ましい実施形態での鏡像ばね70Aおよび70Bの使用は、各歯およびブラケットの歯先円すい角またはトルクの各変化のために独自にばねの構成を設計することを必要とせず、これらのばねを複数のブラケットの規定に使用できるため、費用対効果およびスケールメリットの有意な利点を提供する。
【0040】
これらの鏡像ばねはブラケットドアにより保持されるように上述されてきたが、鏡像ばねの使用により提供される利点は、ばねがブラケット本体により保持される代替的な実施形態にも等しく当てはまることに留意することが重要である。この方法では、ばねは、歯先円すい角およびトルクに関わらず、およびばねがブラケットドアまたはブラケット本体により支えられているかどうかに関わらず、すべてのブラケットの規定で広く使用することができる。
【0041】
好ましい態様では、1つ以上のばねは、これらのセクションが3つの異なる平面を占めるように配向されている。具体的には、各ばねの第1の端部は第1の平面に沿って整列されている。以下では第1の平面をばねロック面80と呼ぶ。各ばねの第2の端部は、第1の平面と異なり、かつブラケット本体の歯先円すい角と直交する第2の平面に沿って整列されている。以下では第2の平面をばね作動面82と呼ぶ。最後に、各ばねの中間部は、第1の平面および第2の平面の両方と異なり、かつこれら平面に関して角度付けされている第3の平面に沿って最大の伸びた長さを有する大きさである。以下では第3の平面をばね本体面84と呼ぶ。
図4Bに表される例示的な実施形態では、ばね作動面はばねロック面と直交しており、ばね本体面は、ばねロック面およびばね本体面の両方に関して45度に角度付けされている。しかしながら、すべての3つの平面の間で他の角度関係が可能であり、たとえば、ばね作動面はばねロック面と平行であってもよく、ばね本体面は、ばね作動面およびばねロック面の両方に関して他の角度で鋭角的に角度付けされてもよい。これらの平面に沿った各ばねの複数のセクションの固有の配置により、好ましくは、各セクションを互いとは無関係に拡張かつ屈折させることができ、容易に外れることなくブラケットドアおよびブラケット本体の両方によりばね機構を安全に保持することができ、ブラケットドアを作動させることができる。これらすべては以下で
図5〜10を参照として説明されている。
【0042】
図5および6は、
図3Aおよび3Bで具現されているブラケットドアに関するばね機構の配置を例示する。好ましい態様では、各ばねの第1の端部は、ばねロック面に沿ってブラケットドアのドアの基部の底部にあるキャビティと係合または接触し、各ばねの第2の端部は、ブラケット本体のブラケット溝に隣接した凹部と係合してばね作動面に沿って自由に移動する。別の好ましい態様では、ブラケットドアは、ブラケットドアがブラケット本体に設置されまたはブラケット本体に沿って移動しつつ、ばね部分76が屈折できる空間を提供するリリーフエリアまたはキャビティ86(
図3Bにも示されている)を含む。これらのリリーフエリアは、好ましくは、丸いワイヤ状のばねを受領する大きさの丸い端を有する。これらは、好ましくは、見えない状態にあり、ブラケットの外面に露出しておらず、ブラケットドアがブラケット本体に設置される際に、ばね作動面に沿ってばねの屈折を最大限にすることができる。
【0043】
図5および6で強調されるように、ブラケットドアのドアの基部は、好ましくは、ダブテールの形態で形成されている。ダブテールの形状は、1つ以上のばねがブラケットドアに配置または挿入できる総面積を最大限にする。さらに、ダブテールの形状は、応力の分配を支援する各ばねの伸びた長さを最大限することにより、ドアの移動により引き起こされる応力の流動を改善できる。さらに、ダブテールの形状のブラケットドアは、ブラケットの強度に重要であり、ブラケットドアの強度を改善する厚さの増した断面を提供する。さらに、ブラケットドアが、好ましくは、完全に拡大したブラケットスロットを覆うという事実と組み合わせて、ブラケットドアの断面の厚さは、ブラケットドアのダブテールに対してドアの全幅に沿って変換される処置の間の、アーチワイヤの移動により課せられた応力を許容し、さらにブラケットの強度を改善する。好ましくは、ブラケットドアはまた、アーチワイヤの移動により課せられた応力の集中を低減し、射出成形の間での製造を容易にする湾曲した形状を有する。
【0044】
ダブテールの形状は、さらに、1つ以上のばねの伸びた長さを最大限にすることによりブラケットドアのばね機構を保持することを支援する。各ばねの中間部は、ばね本体面に沿ってブラケットドアの表面の周りで、たとえば
図3Bおよび6に示される湾曲したばねの凹部68の中で、包まれており、各ばねの第1の端部は、ブラケットドアからばね機構が外れないように支援する。代替的な実施形態では、たとえば、ばねの凹部がブラケットドアの内面の周りで湾曲する場合、1つ以上のばねの中間部は、ブラケットドアからばね機構が外れないように支援する。結果として、各ばねの第1の端部または中間部は、ブラケットドアからばね機構が外れないように支援してもよく、添加剤または接着剤を必要とすることなく、ブラケットドアに各ばねを安全にロックすることができる。ばね本体面に沿った各ばねの中間部のわずかな変形は起こり得るが、各ばねの中間部は、好ましくは、組み立ての間、ばねに何らかの永続的な変形をもたらすことなくばね機構を容易に設置することができる大きくカーブした湾曲を有する大きさである。
【0045】
さらに、ブラケット溝は、好ましくは、ブラケットドアのドアの基部を滑動して受領するように形成されている。ブラケット溝の対向する側のスロット87は、好ましくは、ブラケットドアのダブテール状に形成されたドアの基部を相補的に受領するように湾曲されている。さらに、対向する側のスロット87は、開口位置と閉鎖位置との間でブラケットスロットから離れておよびブラケットスロットに向かい単一の軸に沿って移動する際に、ブラケットドア、特にドアの基部の対向する側端55を誘導かつ支持する。さらに、ブラケット本体の近心面29Aおよび遠心面29Bは、ブラケットドアが開口位置と閉鎖位置との間で移動する際、ドアヘッドの対向する側端53を支持する。よってブラケット本体は、ブラケットドアが他のいずれかの移動面に沿って移動しないようにすることにより、ブラケットドアがアーチワイヤからの応力を受ける際に接着を防止し、応力の上昇を低減する。
【0046】
さらに、ばね機構を有するブラケットドアが、ブラケットドアの設置の間、ブラケット本体のブラケット溝へと先細の側部50に沿って押圧される場合、各ばねのばね部分76は、各ばねの第2の端部がそれぞれのくぼみ(38および46)の中へと滑動するまで、ばねの作用面に沿って、好ましくは、弾性的にあるいは塑性的に屈折することにより、接着剤または添加剤を必要とすることなく、ブラケット本体でブラケットドアを保持する。さらに、ばねは、ブラケットを外そうとする際に開口位置を過ぎてブラケットドアを戻して移動させようとする場合に、ばねを屈折させないブラケット本体との表面‐表面の接触を形成する。よってこの構成は、ブラケット溝の配置およびばね機構の配置によってブラケット本体からブラケットドアを外すためにより大きな力を必要とし、そのため組み立てを容易にし、かつ従来のセルフライゲーティングブラケットで以前より使用された圧着、湾曲、圧印、固定、接着、または他の同様の組み立て方法を必要とすることなく取り外しを比較的困難にすることができる。
【0047】
よって好ましい実施形態は、二重のロック機構であって、添加剤、接着剤、ブラケット本体に対するブラケットドアの圧着、湾曲、圧印、締め付け、または接着を必要とすることなく、ばねの第1の端部がブラケットドアにロックし、ばねの第2の端部がブラケット本体にロックする、二重のロック機構を実施する。よってこの機構は、ブラケットがばね機構に課した物理的な障壁により達成することが困難である、ばねの作用面に沿ったばねの屈折を介したブラケットドアの取り外しのみを可能にする。よってブラケットドアは、1つ以上のばねの有意な変形によってのみブラケットから取り外すことができる。さらに、ブラケット本体およびブラケットドアに対するばね機構の堅い係合は、好ましくは、空洞または空間をもたらさず、これによりプラークまたは石灰化を成長させる空間を最小限にする。
【0048】
図7〜10は、ブラケットドアがブラケット本体にうまく組み立てられた後のセルフライゲーティングブラケットの上述の好ましい実施形態を例示する。特に、
図7〜8は、開口位置でのブラケットドアを表し、
図9〜10は、閉鎖位置でのブラケットドアを表す。ブラケットドアが開口すると、ブラケットスロットが露出し、使用者がブラケットスロット内のアーチワイヤを取り外すことまたは配置することができる。ブラケットドアが閉鎖されると、ブラケットドアは、ブラケットスロット内のアーチワイヤを完全に覆うことにより、ブラケットが規定をパッシブに示すことができる。あるいは、ばね機構は、
図17〜20を参照して後述されるものなどの、移動の間、アーチワイヤと接触するように適合されている追加的なばねを含んでもよく、これにより、ブラケットが規定を完全またはアクティブに示すことができる。
【0049】
ブラケット溝に沿ったブラケットドアの移動は、比較的直線的である。好ましい態様では、ブラケット溝の両側の両凹部は、中間点88まで互いに向かい細くなるくぼみを含む(
図2参照)。これらの中間点または先細の角は、ブラケットドアが、開口位置から閉鎖位置へと(逆も同様)滑らかに転位して進む位置を画定する。たとえば、ブラケットドアが開口位置にある場合、各ばねの第2の端部は、それぞれ近心の第1のくぼみおよび遠心の第1のくぼみを係合する。ブラケットドアが、ブラケットスロットに向かってブラケット溝に沿って移動すると、各ばねの第2の端部およびばね部分76は、くぼみが、それぞれの中間点に向けて細くなるようにブラケットの歯先円すい角44と直交する方向でブラケット溝の中心に向かい、リリーフエリア86の中で弾性的または塑性的に屈折する。各ばねの第2の端部がそれぞれの中間点に達すると、ばねの屈折により引き起こされる張力が放出され、閉鎖位置へとブラケット溝に沿ってブラケットドアを進ませるまたは付勢する直線状の力へと変換される。ブラケットドアが閉鎖位置から開口位置へと移動する場合、同様の手法がとられる。各ばね部分76のほぼ同一の長さにより、両ばねは、ブラケットの歯先円すい角に関わらずほぼ同一の力で応じ、ブラケット本体の両側に向かうドアの付勢を防止することにより、ブラケットドアの接着を防止する。
【0050】
様々な他のブラケットの特徴を、好ましい態様として含めてもよい。1つの好ましい態様では、ブラケット本体の上部は、好ましくは、平頭ねじ回しなどのブラケットドアをこじ開けるために使用できるトルク機構を受領する大きさであるブラケットスロットに隣接した配置されたツール用のくぼみ90を含む(
図7参照)。別の好ましい態様では、ブラケットドアは、ツールを用いることなく開口されてもよい。別の好ましい態様では、ブラケット本体は、任意のリガチャーの潜在的な使用のためブラケット本体の咬合側および歯肉側の両方に溝92(
図8参照)を有する湾曲した結合ウィングを含む。これらの湾曲した結合ウィングは、好ましくは、丸みをつけたカットを用いて作製されていることにより、適合および強度が改善し、かつエラストマーのバンドを良好に保持することができる。
【0051】
別の好ましい態様では、ブラケット本体の上部は、色でコード分けされた印などの視覚的な歯科矯正用の参照基準を適用してもよい領域94および溝96(
図9参照)を含んでもよく、これによりたとえばブラケットの垂直軸およびアーチワイヤの軸を説明する視覚上明確な手掛かりを有するブラケットを医師に提供することができる。さらなる好ましい態様では、ブラケットドアの頭部は、ブラケットの強度および耐久性を改善する断面の厚さとなるような大きさである。別の好ましい態様では、ブラケット本体にあるくぼみは、ブラケットの強度および従来のセラミックまたは金属製のブラケットの射出成形のための大きさであり、丸いワイヤ状のばねと完全にかみあう大きさである湾曲(curvature)を有することにより、ブラケットドアの接着の可能性を少なくしつつ、ブラケットドアの滑動作用を改善することができる。
【0052】
図11A〜13Bは、開口位置および閉鎖位置の両方で上述のセルフライゲーティングブラケットの例示的な実施形態を例示する。本明細書中のこの例示は、2つの異なる歯用のセルフライゲーティングブラケットの2つの例、具体的には、上顎または上部の歯に配置するためのU3Rブラケットなどの上顎犬歯のブラケット100(
図11A、12B、および13A参照)、および下顎または下部の歯への配置のためのL12ブラケットなどの下顎前歯のブラケット200(
図11B、12B、および13B参照)を、表す。2つの異なる歯に関する2つの例のみが本明細書に例示されているが、歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットは、いずれの上顎の歯および下顎の歯に配置するために設計されてもよいことが、理解されている。
【0053】
図14〜16は、大臼歯に使用するものとして
図1〜13Bに表される好ましい実施形態の代替的な好ましい態様を例示する。具体的には、
図14〜16は、ブラケット本体12、ダブテール状に形成されたブラケットドア18、および開口位置と閉鎖位置との間でブラケットを移動させる1つ以上のばねのばね機構20を含む、上述の歯科矯正用セルフライゲーティングブラケット10を例示する。しかしながら、この態様では、基部22は、デュアルコンパウンドで形作られており、大臼歯の表面に基部を接着するためのパイロン300を含む。この態様における1つ以上のばねは、
図1〜13Bに例示されるばね機構で使用されるばねと同一であり、よってブラケットドアの開口または閉鎖の間でほぼ同一の対向する力を用いて作動する。この方法では、セルフライゲーティングブラケット10は、ブラケットの規定または歯先円すい角の各変化のため個々に異なるばねを製造することを必要とすることなく、ばねの生産におけるスケールメリットを可能にするため、従来技術を超えて有意に改善している。
【0054】
好ましい態様では、基部にあるパイロンは、接着表面積を最大にし、接着力を改善する。さらに基部は、好ましくは、より大きな接着力を提供するようにマイクロエッチング処理されている。さらに、パイロンは図面に明確に言及されているが、他の接着システムを使用してもよいことに留意すべきである。たとえばメッシュ状の基部を使用してもよく、または小さなセラミックのかけらを含む滑らかな基部を使用してもよい。これらの接着システムは、上顎の歯または下顎の歯のいずれにも使用してよい。
【0055】
セルフライゲーティングブラケットの他の様々な好ましい態様を提供する。1つの好ましい態様では、ブラケットドアおよびブラケット本体は金属製またはセラミック製であってもよく、ばね機構は金属製である。別の好ましい態様では、
図14〜16のブラケットは、歯肉と接触することなく、フック上でのリガチャーなどのエラストマーの取り付けを容易にするように形成されている同フック27を含んでもよい。フックの形状は、ブラケットに高い強度を提供するためにセルフライゲーティングブラケットに使用される物質に応じて変動してもよい。さらなる好ましい態様では、ブラケットスロット24は、ブラケットドアが閉鎖位置にありつつ、ブラケットスロット内へのアーチワイヤの挿入を容易にするための溝付きの入口を有する。さらなる好ましい態様では、セルフライゲーティングブラケットは、任意のリガチャーまたは他のエラストマーの使用を可能にするため、ブラケット本体の咬合側および歯肉側の結合ウィングの下に湾曲した結合ウィングの溝92を含む。さらなる好ましい態様では、セルフライゲーティングブラケットは、色でコード分けされた印などの視覚的な歯科矯正用の参照基準を使用してもよい領域94または溝96を含んでもよく、よって、たとえばブラケットの垂直軸およびアーチワイヤの軸を説明する視覚上明確な手掛かりを含むブラケットを医師に提供することができる。
【0056】
さらなる別の好ましい態様では、ブラケットドアが閉鎖されると、ブラケットドアは、ブラケットスロット内のアーチワイヤを完全に覆うことにより、ブラケットは規定をパッシブに示すことが可能となる。別の好ましい態様では、ブラケットドアは、以下で
図17〜20を参照して説明されるものなどの、移動の間、アーチワイヤと接触するように適合されている追加的なばねを含んでもよく、これによりブラケットは規定を完全またはアクティブに示すことが可能となる。
【0057】
図17〜20は、アーチワイヤに対してアクティブに押圧するための追加的なばねを含む、
図1〜16を参照して上記に記載かつ表される歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットの好ましい実施形態の、代替的な好ましい態様を例示する。具体的には、
図17〜20は、ブラケット本体12、ダブテール状に形成されたブラケットドア18、およびブラケット本体にある1つ以上のくぼみと係合し、開口位置と閉鎖位置との間でブラケットを付勢または進め、かつブラケット本体からブラケットドアが外れないようにする1つ以上のばねを含む、歯科矯正用セルフライゲーティングブラケット10を例示する。しかしながら、この好ましい態様では、1つ以上のばねの第1の端部72および第2の端部78(70A、70B)は、直交した平面(それぞればねロック面80およびばね作動面82として
図4Bに表されている)の代わりに平行な平面に整列されている。さらに、各ばねの第1の端部72は、ドアの基部54の両側にあるレッジ302(
図18および19参照)に配置かつ同レッジにより保持されており、これは、
図3Aに例示される近心のキャビティ60および遠心のキャビティ64と置き換えられている。
【0058】
図17〜20に表されるブラケットの好ましい態様では、ばね機構20は、互いに鏡像である2つのばねを含み、よってブラケットドアの開口または閉鎖の間、ほぼ同一の対向する力で作動し、これにより、ブラケットドアの接着を防ぐ。好ましい態様では、各ブラケットの規定に関して専用に設計された個々のばねを必要とすることなく、ブラケットの規定および歯先円すい角に関わらず、両ばねを歯科矯正用セルフライゲーティングブラケットに使用でき、よって、製造の容易さおよびスケールメリット(すなわち費用対効果)を可能にする。この方法では、好ましい実施形態は、ブラケットの規定または歯先円すい角のそれぞれの変化のために個々に異なるばねを製造することを必要とすることなく、ばねの生産においてスケールメリットを可能にするため、従来技術を超えて有意に改善する。
【0059】
鏡像のばねの使用によりもたらされる費用対効果およびスケールメリットの利点は、歯先円すい角およびトルクに関わらず全てのブラケットの規定に共通してこのばねを使用できるため、従来のセルフライゲーティングブラケットを超えて有意に有益である。これらの鏡像のばねは、ブラケットドアにより保持されていると上述されてきたが、鏡像ばねの使用により提供される利点は、ばねがブラケット本体により保持されている実施形態にも等しく当てはまることに留意することが重要である。この方法では、ばねは、歯先円すい角およびトルクに関わらず、およびばねがブラケットドアまたはブラケット本体により支えられているかどうかに関わらず、すべてのブラケットの規定で広く使用することができる。
【0060】
図17を参照すると、この好ましい態様では、ブラケットドアにより支えられており、アーチワイヤ26と接触またはアーチワイヤ26を押圧するように配置されている1つ以上の能動ばね部材400を提供する。単一の能動ばね部材400が、セルフライゲーティングブラケットの中心と整列するように図面に表されているが、複数の能動ばね部材400が、ブラケットの幅に沿って任意の複数の位置に配置されてもよいことに留意すべきである。
【0061】
1つ以上の能動ばね部材は、好ましくは、第1の部分または保持部分402、および第2の部分または接触部分404を有する。好ましくは、保持部分402は、ブラケットドアに挿入可能であり、かつブラケットドアにより支えられている。あるいは能動ばね部材400は、単一の部品として、ブラケットドアにより一体となり支えられており、かつ同ブラケットドアから延在する、タングである。接触部分404は、ブラケットドアが閉鎖位置にある場合にブラケットスロット内のアーチワイヤと接触し、アーチワイヤの大きさに直接比例するアーチワイヤに対する力を次第に適用するように構成されている。1つ以上の能動ばね部材の捕捉物は、ブラケットドアに配置された1つ以上の能動ばねキャビティ406および1つ以上の能動ばねチャネル408である。
【0062】
1つ以上の能動ばねキャビティおよび能動ばねチャネルの構成は、ブラケットドアに1つ以上の能動ばね部材を完全に保持させる。
図17〜18を参照して記載される好ましい態様では、能動ばねキャビティ406は、ブラケットドアのドアの基部54の底部または舌側部の中央に配置されており、能動ばね部材の、挿入可能な垂直に延在する保持部分402を受領かつ保持する大きさである。よって能動ばねキャビティ406は、ブラケットドアが閉鎖位置にある際に垂直方向および水平方向での能動ばね部材の動きを防止する。あるいは、能動ばね部材は、ブラケットドアおよび能動ばね部材が単一の部品の中に形成されるように、保持部分402が能動ばねキャビティ406の中に一体となり適合されているタングである。さらに、能動ばねチャネル408は、ブラケットドアに配置されたアパーチャ410の中へと開口するまで、ブラケットスロット24に向かって歯肉方向へとブラケットドアのドアの基部54およびドアヘッド52の舌側部に沿って作用するように中央に配置されている。
図17〜18は、アパーチャ410がブラケットドアの唇側部に配置され、唇側部から見えることを例示しているが、アパーチャ410は、ブラケットドアが唇側部から見えないようにブラケットドアの舌側部に配置されてもよい。能動ばねチャネル408は、アーチワイヤとの接触から屈折する場合に能動ばね部材の接触部分404を受領する大きさである。より具体的には、アーチワイヤの大きさが歯科矯正治療の間に大きくなる場合、能動ばね部材の接触部分404は、アーチワイヤの最大の大きさを使用するまで、アーチワイヤと接触することにより次第に湾曲し、この後、接触部分は最大限に屈折し、能動ばねチャネルに受領される。能動ばねチャネル408は、能動ばね部材が最大限に屈折する際に、チャネルに能動ばね部材を誘導するように作用するチャネル側部412をさらに含むことにより、アーチワイヤとの接触により能動ばね部材がチャネルと接着またはチャネルから離れて屈折しないようにする。
【0063】
1つの好ましい態様では、セルフライゲーティングブラケットは、リガチャーなどの任意のエラストマーの配置を容易にする購入ポイントを臨床医に提供する、ブラケット本体の歯肉側に配置された中央の結合ウィングの溝414(
図17参照)を含んでもよい。別の好ましい態様では、セルフライゲーティングブラケットは、鋼鉄製のリガチャーまたはパワーチェーンなどの任意のリガチャーまたは他のエラストマーを個々に以上で同時に使用できる、ブラケット本体の咬合側および歯肉側の結合ウィングの下の湾曲した結合ウィングの溝92(
図20参照)を含む。さらなる別の好ましい態様では、1つ以上の能動ばね部材は任意であり、選択的に、ブラケットドアに接続可能であり、かつブラケットドアから取り外し可能であることにより、セルフライゲーティングブラケットが、アクティブな構成およびパッシブな構成の両方、ならびに各構成での同一のブラケットドアおよびブラケット本体の使用からの製造におけるスケールメリットを、有することができる。
【0064】
さらなる好ましい態様では、ブラケット本体の基部22は、歯の表面に基部を接着するためのパイロン300(
図20参照)を含む。好ましい態様では、基部にあるパイロンは、接着表面積を最大限にでき、接着力を改善する。さらに基部は、好ましくは、より大きな接着力を提供するためにマイクロエッチング処理されている。さらに、パイロンが明示的に言及されているが、他の接着システムを、本発明の範囲から逸脱することなく使用してもよいことに留意すべきである。たとえば、メッシュ状の基部が使用されてもよく、または小さなセラミックのかけらを含む滑らかな基部を使用してもよい。これらの接着システムは、上顎の歯または下顎の歯のいずれにも使用してよい。
【0065】
図20に例示されるように、1つ以上の能動ばね部材は、ブラケットスロットが空である場合に静止状態にある。ブラケットドアが閉鎖位置にありつつアーチワイヤがブラケットスロットに挿入されると、1つ以上の能動ばね部材が、アーチワイヤと接触またはアーチワイヤを押圧する。1つの好ましい態様では、1つ以上の能動ばね部材は、従来の大きさのいずれかのアーチワイヤと接触し、アーチワイヤの大きさが大きくなると、ブラケットスロット内のアーチワイヤに対して次第により強い力をかけるように配置されており、これにより、従来の最大の大きさのアーチワイヤが使用されるまで、能動ばねチャネルに向かい接触部分404が次第に大きく屈折する。代替的な好ましい態様では、1つ以上の能動ばね部材は、所定のアーチワイヤの大きさでのみアーチワイヤと接触する。この態様では、アーチワイヤが所定のアーチワイヤの大きさを有する場合のみ、接触部分は、1つ以上の能動ばね部材と対向するブラケットスロットの角に対してアーチワイヤを押圧する。別の好ましい態様では、ブラケットスロット内のアーチワイヤに対して1つ以上の能動ばね部材によりかけられる力は、1つ以上の能動ばね部材のテンパー度、直径および配置に基づいて変動してもよい。
【0066】
特定の実施形態を本明細書中に例示および記載してきたが、これらの実施形態は必ずしも、本発明の主要部である装置を実施する他の実施形態を超える利点があると、解釈されるわけではない。他の変形および均等物は可能であり、本発明の主要部の範囲内にあると考慮されるべきである。
【国際調査報告】