特表2018-532712(P2018-532712A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2018-532712歯磨きで除去可能な歯牙付着用パッチ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-532712(P2018-532712A)
(43)【公表日】2018年11月8日
(54)【発明の名称】歯磨きで除去可能な歯牙付着用パッチ
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/70 20060101AFI20181012BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20181012BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20181012BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20181012BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20181012BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20181012BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20181012BHJP
   A61K 33/40 20060101ALI20181012BHJP
   A61K 33/22 20060101ALI20181012BHJP
   A61K 33/42 20060101ALI20181012BHJP
   A61K 33/16 20060101ALI20181012BHJP
   A61K 33/14 20060101ALI20181012BHJP
   A61K 33/08 20060101ALI20181012BHJP
   A61K 36/899 20060101ALI20181012BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20181012BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20181012BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20181012BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20181012BHJP
   A61K 8/84 20060101ALI20181012BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20181012BHJP
   A61K 8/22 20060101ALI20181012BHJP
   A61K 8/24 20060101ALI20181012BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20181012BHJP
   A61K 8/20 20060101ALI20181012BHJP
   A61K 8/21 20060101ALI20181012BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20181012BHJP
【FI】
   A61K9/70
   A61K47/32
   A61K47/38
   A61K47/36
   A61K47/42
   A61K45/00
   A61P1/02
   A61K33/40
   A61K33/22
   A61K33/42
   A61K33/16
   A61K33/14
   A61K33/08
   A61K36/899
   A61K8/02
   A61Q11/00
   A61K8/73
   A61K8/81
   A61K8/84
   A61K8/86
   A61K8/22
   A61K8/24
   A61K8/19
   A61K8/20
   A61K8/21
   A61K47/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2018-512590(P2018-512590)
(86)(22)【出願日】2016年8月30日
(85)【翻訳文提出日】2018年3月8日
(86)【国際出願番号】KR2016009662
(87)【国際公開番号】WO2017043800
(87)【国際公開日】20170316
(31)【優先権主張番号】10-2015-0127721
(32)【優先日】2015年9月9日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2015-0140101
(32)【優先日】2015年10月6日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2015-0140104
(32)【優先日】2015年10月6日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー ハウスホールド アンド ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジョン−フン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジェ−ヒョン・アン
(72)【発明者】
【氏名】グァン−ホ・オ
(72)【発明者】
【氏名】イン−ホ・イ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C084
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4C076AA73
4C076BB22
4C076CC09
4C076DD37
4C076DD38
4C076DD46
4C076EE06
4C076EE07A
4C076EE09A
4C076EE15A
4C076EE16A
4C076EE23A
4C076EE30
4C076EE32A
4C076EE33A
4C076EE36A
4C076EE38A
4C076EE42A
4C076EE53
4C076FF36
4C076FF70
4C083AA122
4C083AB171
4C083AB281
4C083AB321
4C083AB331
4C083AB411
4C083AB471
4C083AC102
4C083AC122
4C083AD041
4C083AD051
4C083AD071
4C083AD072
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD212
4C083AD241
4C083AD261
4C083AD262
4C083AD271
4C083AD281
4C083AD282
4C083CC41
4C083DD21
4C083EE07
4C083EE32
4C083EE33
4C083EE35
4C084AA17
4C084NA10
4C084ZA671
4C084ZA672
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA02
4C086HA03
4C086HA04
4C086HA06
4C086HA16
4C086HA19
4C086HA21
4C086HA22
4C086HA24
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA57
4C086NA10
4C086ZA67
4C088AB76
4C088AC02
4C088AD01
4C088BA37
4C088CA02
4C088MA06
4C088MA56
4C088NA10
4C088ZA67
(57)【要約】
本発明は、歯牙に薬物を伝達する薬物層、及び、前記薬物層の歯牙付着面の反対側に位置し、水溶性高分子と水不溶性高分子とを一緒に含む支持層を含むことを特徴とする歯牙付着用パッチに関する。本発明によるパッチは、支持層を取り外すことなく、歯磨きだけで容易に除去することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯牙に薬物を伝達する薬物層と、
前記薬物層の歯牙付着面の反対側に位置し、水溶性高分子と水不溶性高分子とを一緒に含む支持層と、
を含むことを特徴とする、歯牙または歯牙周辺部付着用パッチ。
【請求項2】
前記水溶性高分子が、ポリアルキルビニルエーテル−マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポロキサマー407、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン−ビニルアセテート共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリクオタニウム−11、ポリクオタニウム−39、カルボキシポリメチレン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、でん粉、ゼラチン及びアルギン酸からなる群より選択されるいずれか一種以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載の歯牙または歯牙周辺部付着用パッチ。
【請求項3】
前記水溶性高分子が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドンまたはこれらの混合物であることを特徴とする、請求項2に記載の歯牙または歯牙周辺部付着用パッチ。
【請求項4】
前記支持層に含まれる水溶性高分子と水不溶性高分子との含量は、支持層に含まれる水溶性高分子と水不溶性高分子との重量比が、1:4〜4:1であることを特徴とする、請求項1に記載の歯牙または歯牙周辺部付着用パッチ。
【請求項5】
前記薬物層が、歯牙美白成分、しみる歯の予防または改善用の成分、虫歯予防成分及び歯周疾患予防成分からなる群より選択されたいずれか一つ以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載の歯牙または歯牙周辺部付着用パッチ。
【請求項6】
前記歯牙美白成分が、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化カルシウム、過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム、過酸化ピロリン酸ナトリウム及びこれらの混合物からなる群より選択されるいずれか一種以上の過酸化物;ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウムカリウム、ピロリン酸カリウム、ウルトラリン酸塩であるウルトラメタリン酸塩及び酸性ポリリン酸塩からなる群より選択されるいずれか一種以上のポリリン酸塩;またはこれらの混合物であることを特徴とする、請求項5に記載の歯牙または歯牙周辺部付着用パッチ。
【請求項7】
しみる歯または虫歯の予防または改善用成分が、塩化ストロンチウム、炭酸カルシウム、クエン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、シリカ、ヒドロキシアパタイト、窒酸カリウム及びリン酸カリウムからなる群より選択されるいずれか一種以上であることを特徴とする、請求項5に記載の歯牙または歯牙周辺部付着用パッチ。
【請求項8】
前記歯周疾患予防成分が、竹塩、トウモロコシ不けん化物の定量抽出物、ポリクレスレン、テトラサイクリン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化セチルピリジウム、サンギナリン、トリクロサン、厚朴、センテラアジアティカ、カモマイル、ラタニア、没薬、桑白皮、升麻、緑茶、甘草、コガネバナ、蒲公英及びスイカズラからなる群より選択されたいずれか一つ以上であることを特徴とする、請求項5に記載の歯牙または歯牙周辺部付着用パッチ。
【請求項9】
250gの荷重で1分あたり往復90回の速度で3分間ブラッシングし、1mmのメッシュで濾した残余物の乾燥重量が、ブラッシング前のパッチの全体重量に対して2重量%未満であることを特徴とする、請求項1に記載の歯牙または歯牙周辺部付着用パッチ。
【請求項10】
支持層に破断誘導部が形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の歯牙または歯牙周辺部付着用パッチ。
【請求項11】
前記破断誘導部が、凹凸または気泡を含むことを特徴とする、請求項10に記載のパッチ。
【請求項12】
前記凹凸は、凹部の深さが凸部を基準で0μm超過30μm 以下であることを特徴とする、請求項11に記載のパッチ。
【請求項13】
前記凹凸は、凹部の幅が0mm超過0.1mm以下であることを特徴とする、請求項11に記載のパッチ。
【請求項14】
歯牙に薬物を伝達する薬物層と、
前記薬物層の歯牙付着面の反対側に位置し、水不溶性高分子及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含む支持層と、
を含み、
前記支持層が、歯ブラシによるブラッシングによって分解される、歯牙または歯牙周辺部付着用パッチ。
【請求項15】
前記水不溶性高分子が、セルロースアセテートフタレート、セラック、ポリビニルアセテート、エチルセルロース、ポリメチルメタクリレート、メタクリロイルエチルベタイン/メタクリレート共重合体、メタクリル酸共重合体及びアミノアルキルメタクリレート共重合体からなる群より選択されるいずれか一種以上であることを特徴とする、請求項14に記載の歯牙または歯牙周辺部付着用パッチ。
【請求項16】
前記水不溶性高分子が、エチルセルロースであることを特徴とする、請求項14に記載の歯牙または歯牙周辺部付着用パッチ。
【請求項17】
前記歯牙または歯牙周辺部付着用パッチの支持層に含まれる水不溶性高分子とHPMCとの混合割合は、水不溶性高分子とHPMCとの重量比が1:0.2〜1:4であることを特徴とする、請求項14に記載の歯牙または歯牙周辺部付着用パッチ。
【請求項18】
250gの荷重で分あたり往復90回の速度で3分間ブラッシングし、500μmのメッシュで濾した残余物の乾燥重量が、前記ブラッシング前のパッチの全体重量に対して5重量%未満であることを特徴とする、請求項14に記載の歯牙または歯牙周辺部付着用パッチ。
【請求項19】
支持層に破断誘導部が形成されていることを特徴とする、請求項14に記載の歯牙または歯牙周辺部付着用パッチ。
【請求項20】
前記破断誘導部が、凹凸または気泡を含むことを特徴とする、請求項19に記載の歯牙または歯牙周辺部付着用パッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯磨きで除去可能な歯牙付着用パッチに関し、より詳しくは、薬物層を支持している支持層を取り外すことなく歯磨きだけで簡単に除去できる歯牙付着用パッチに関する。
【0002】
本出願は、2015年9月9日出願の韓国特許出願第10−2015−0127721号、2015年10月6日出願の韓国特許出願第10−2015−0140101号及び2015年10月6日出願の韓国特許出願第10−2015−0140104号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
歯牙の美白などのような施術は過去には主に歯科病院で行われてきたが、歯科施術は煩わしく、費用面でも相当に高価であることから、最近は簡便に使用可能な製品の開発が盛んである。
【0004】
歯牙美白のための製品として、歯磨き粉、マウスリンス、チューインガム、マウストレイ、歯牙塗布用ゲル、口腔用パッチなどがあるが、使用の便利性からパッチ形態の製品が最もよく用いられている
【0005】
通常、歯牙付着用パッチは、歯牙美白用薬物、しみる歯の予防または改善用薬物など、その使用目的による薬物を含んでいる薬物層と、前記薬物成分を選択的に歯牙に伝達する支持層と、を含む構造を有する。
【0006】
韓国登録特許第10−0458337号は、パッチが含む薬物成分が歯牙のみに選択的に伝達されるように前記支持層を水不溶性のもので製造することを提案している。しかし、このような水不溶性支持層を含むパッチは、製品使用後に残っている支持層を取り外さなくてはならない手間がかかる。また、取り外すことなく歯磨きだけで除去する場合、分解されないフィルムの固まりが歯ブラシに絡みついてしまい、歯ブラシからの除去が困難であった。なお、これを改善した製品として、パッチの付着後に口腔内で溶解される製品が開発されたが、薬物成分が歯牙に選択的に伝達されず、唾液と混合されてしまい、目的とする薬効が発現しないという問題が発生した。
【0007】
そこで、本発明の発明者は鋭意研究の末、使用過程で唾液や水によっては分解されないながらも、使用後の歯磨きによって容易に除去できるパッチを発明した。延いては、歯ブラシによるブラッシングによって容易に除去でき、特に、分解された断片の大きさが小さくて口腔内で異物感なく除去できる方案について研究した結果、本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国登録特許第10−0458337号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、歯磨きだけで歯牙の表面から容易に除去することができ、かつ分解されないフィルムの固まりが歯ブラシの間に絡みつかない歯牙付着用パッチを提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、使用後に別途の残余物が生じず、簡単に歯磨きだけで除去できる簡便な歯牙付着用パッチを提供することを他の目的とする。
【0011】
さらに、除去能力に特に優れており、分解された粒子の大きさが小さくて異物感なく優れた使用感を提供でき、歯磨きで容易に分解または除去可能な歯牙または歯牙周辺部付着用パッチを提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を達成するため、本発明は、歯牙または歯牙周辺部付着用パッチ1から薬物層10の薬物が選択的に歯牙の表面のみに移動するようにし、パッチの形態を一定に維持する役割を果たす歯牙付着用パッチの支持層20が水溶性高分子と水不溶性高分子とを一緒に含むことで、使用後の歯磨きのような圧力のみで容易に分解されて除去できるという事実を見出し、本発明を完成した。
【0013】
多くのパッチ剤形の薬物伝達システム(drug delivery system)、特に、歯牙付着用パッチは、目的の部位に特異的に薬物を伝達可能にするために支持層を備えている。前記支持層は、水分や唾液に溶解されない高分子を用いることで歯牙に付着しても形態を維持するようにしている。そして、歯牙への付着時、薬効成分が溶出して歯牙に伝達されるときも、歯牙方向のみへ溶出するようにする。即ち、選択的に歯牙方向へ薬物が伝達され、薬物が唾液や水と希釈されないようにするために水不透過性または水不溶性に製造されることが一般的であった。
【0014】
このような水不透過性または水不溶性の支持層は、パッチを用いた後に歯牙の表面から取り外さなければならなかった。
【0015】
使用後に支持層を除去した後、歯牙の表面に残っている残余物を除去するために歯磨きをすべきであり、本発明の発明者は、前記支持層の除去なく歯磨きのみで歯牙の表面に薬物を伝達し、完璧な仕上げができる方案を模索した結果、本発明の完成に至った。
【0016】
即ち、業界で、いままで水不溶性としてのみ製作されて使っていた薬物支持層を、唾液によって溶解できるように製作するに至ったのである。
【0017】
具体的に、本発明の発明者は、歯牙に薬物を伝達する薬物層及び前記薬物層の歯牙付着面の反対側に位置し、水溶性高分子と水不溶性高分子とを一緒に含む支持層を含む歯牙または歯牙周辺部付着用パッチを提供する。
【0018】
前記薬物層は、歯牙に伝達される薬物を含むことができる。前記薬物は、望ましくは、歯牙の表面に伝達され、前記薬物の例としては、歯牙美白成分、しみる歯の予防または改善用の成分、歯周炎、歯肉炎などの歯周疾患の予防または改善用成分、または虫歯予防成分を含み得る。
【0019】
前記歯牙美白成分としては、過酸化物、ポリリン酸塩、酵素、塩素系漂白物が挙げられる。過酸化物としては、過酸化水素(hydrogen peroxide)、過酸化尿素(carbamide peroxide)、過酸化カルシウム(calcium peroxide)、過炭酸ナトリウム(sodium percarbonate)、過ホウ酸ナトリウム(sodium perborate)、過酸化ピロリン酸ナトリウム(tetrasodiumpyrophosphate peroxidate)及びこれらの混合物からなる群より選択して用い得る。リン酸塩及び酵素は、エナメル付着層に含まれた主要ステイン(stain)の除去に効果的である。ポリリン酸塩としては、例えば、ピロリン酸ナトリウム(tetrasodium pyrophosphate,TSPP)、酸性ピロリン酸ナトリウム(sodium acid pyrophosphate,SAPP)、メタリン酸ナトリウム(sodium hexametaphosphate,SHMP)、ポリリン酸ナトリウム(sodium tripolyphosphate,STP)、ピロリン酸ナトリウムカリウム(sodium potassium tripolyphosphate,SKTP)、ピロリン酸カリウム(tetrapotassium pyrophosphate,TKPP)、そして、ウルトラリン酸塩であるウルトラメタリン酸塩(acidic sodium meta−polyphosphate)及び酸性ポリリン酸塩(acidic sodium polyphosphate)からなる群よりの一種または二種以上を用い得る。通常、ポリリン酸塩は、歯磨き粉における歯石制御(tartar control)剤であって、歯石生成の抑制及び歯石除去に効果的であると知られている。また、これらは、金属のよいキレート剤であって、歯牙のステインのうち、飲食物や、作業環境中における鉄、カルシウム、マグネシウムなどの金属によって生成された歯牙ステインを効果的に除去できることから、美白効果の向上に寄与する。本発明による製剤において、このようなポリリン酸塩を用いる場合、ひどくない外因性汚染(light extrinsic stain)の除去による美白効果の向上のみならず、歯牙と縮合リン酸塩との接触時間を延長させることから、歯石生成の抑制及び歯石除去にも効果を奏すると期待される。塩素系美白物としては、亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウムなどが挙げられる。その他、パパイン、ビタミンE及び重曹なども、美白剤として使用可能である。
【0020】
また他の実施例で、しみる歯または虫歯の予防または改善成分としては、塩化ストロンチウム、炭酸カルシウム、クエン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、シリカ、ヒドロキシアパタイト、窒酸カリウム及びリン酸カリウムなどを用い得る。
【0021】
さらに他の実施例で、薬効成分は、歯周疾患予防成分を含み得、歯周疾患は、臨床的に、歯周炎、歯肉炎症と出血、歯周ポケットの形成及び歯槽骨の破壊などによって歯牙の喪失をもたらすことを意味する。歯周疾患の発生を予防するために、前記薬効層は、竹塩、トウモロコシ不けん化物の定量抽出物、ポリクレスレン、テトラサイクリン(Tetracycline)、グルコン酸クロルヘキシジン(Chlorhexidine gluconate)、塩化セチルピリジウム(Cetylpyridium chloride)、サンギナリン(Sanguinarine)、トリクロサン(Triclosan)などを含み得、厚朴、センテラアジアティカ、カモマイル、ラタニア、没薬、桑白皮、升麻、緑茶、甘草、コガネバナ、蒲公英及びスイカズラなどのような生薬抽出物も含み得る。
【0022】
薬物層は、乾燥状態では接着力がないか、強度が弱く、美白剤の作用希望部位で少量の水によって水和しながら接着力が生じるか、水和しながら美白剤の放出が始まる乾式型(dry type)が望ましいが、それ自体の粘度によって歯牙に付着可能なゲル状としても使用可能である。ここで用いられる高分子は、親水性または少なくとも部分的に親水性を有していなくてはならない。高分子としては、主に、ポリアルキルビニルエーテル−マレイン酸共重合体(PVM/MA copolymer;Gantrez AN 119,AN 139,S−97)、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポロキサマー407(Poloxamer 407;Pluronic,poly(ethylene oxide)−poly(propylene oxide)−poly(ethylene oxide)triblock copolymer)、ポリエチレンオキシド(Polyox)、ポリビニルピロリドン−ビニルアセテート共重合体(PVP/VA copolymer;Luviskol VA,Plasdone S PVP/VA)、ポリビニルピロリドン(PVP;K−15〜K−120)、ポリクオタニウム−11(polyquaternium−11,Gafquat 755N)、ポリクオタニウム−39(polyquaternium−39,Merquat plus 3330)、カルボキシポリメチレン(Carbomer,Carbopol)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、でん粉、ゼラチン(gelatin)及びアルギン酸(sodium alginate)を単独でまたはこれらの混合物を用い得る。これら高分子の溶媒としては、主に、水、エタノール単独またはこれらの混合物、そして他の有機溶媒、例えば、エチルアセテート、メチレンクロライド、イソプロピルアルコール、アセトニトリルを単独でまたはこれらの混合物を、割合を調節して用いることもできる。
【0023】
歯牙付着物は、歯牙に直接付着して歯牙の屈曲に沿って形態が作られるべきであるため、充分柔軟でなければならない。いによってはこのような柔軟性が足りないものもあるので、適切な可塑剤を添加してもよい。適切な可塑剤は、高分子の種類とその処方によって相違するが、可塑剤として通常使用されるポリプロピレングリコール(polypropylene glycol)、グリセリン(glycerin)またはポリエチレングリコール(polyethylene glycol)が挙げられ、これらのいずれも使用することができる。
【0024】
また、薬物層には、過酸化物の経時安定性を向上させる目的から、キレート剤、例えば、EDTAやクエン酸ナトリウムなどを添加し得る
【0025】
本明細書で用いられた「薬物層」という用語は、歯牙付着用パッチの目的が達成できる薬効成分を含んでいる層を意味する。例えば、歯牙美白用パッチは、歯牙美白成分(望ましくは、過酸化水素、過酸化ナトリウムなど)を含む層を意味し、しみる歯防止パッチは、しみる歯の防止成分である窒酸カリウム、塩化カリウムなどを含む層を意味する。
【0026】
前記薬物層を、唾液、口腔内接触など、物理的・化学的な接触から保護するか、または製品の形態を維持するために用いられる支持層は、支持層の役割を果たすために通常水不溶性高分子を用いることが望ましく、支持層を使用後に取り外すべきものとして業界では認識されてきた。しかし、本発明の発明者は、このような業界の通常の認識から逸脱して、前記支持層に水溶性高分子を含ませ、取り外すことなく簡単に歯磨きだけで容易に除去して用いる方法を考案した。
【0027】
本明細書で用いられた「支持層」とは、歯牙以外の口腔内の他の皮膚と接触することを防止する役割を果たす層を意味する。
【0028】
本発明の一実施例で、前記支持層は、通常口腔用フィルムに用いられる水不溶性高分子を含み得、例えば、セルロースアセテートフタレート、セラック(Shellac)、ポリビニルアセテート、エチルセルロース、ポリメチルメタクリレート、メタクリロイルエチルベタイン/メタクリレート共重合体(methacryloylethyl betain/methacrylate copolymer;Yukaformer,Mitsubishi社製)、メタクリル酸共重合体(methacrylic acid copolymer;Eudragit L 100,Eudragit L 12,5,Eudragit L 100−55,Eudragit L 30D−55)及びアミノアルキルメタクリレート共重合体(aminoalkyl methacrylate copolymer;Eudragit E 100,Eudragit E 12,5,Eudragit RL 100,Eudragit RL 30D)を用い得る。合わせて、本発明の歯牙または歯牙周辺部付着用パッチの支持層は、水溶性高分子を含む。本明細書で用いられた水溶性高分子は、水に溶解または膨潤(swelling)するか、または小さい粒子に分散できる高分子を意味する。親水性高分子も、本発明の水溶性高分子と同一の意味に用いられ得る。
【0029】
前記水溶性高分子は、薬物層に使用可能な水溶性高分子を含み得、ポリアルキルビニルエーテル−マレイン酸共重合体(PVM/MA copolymer;Gantrez AN 119,AN 139,S−97)、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポロキサマー407(Poloxamer 407;Pluronic,poly(ethylene oxide)−poly(propylene oxide)−poly(ethylene oxide)triblock copolymer)、ポリエチレンオキシド(Polyox)、ポリビニルピロリドン−ビニルアセテート共重合体(PVP/VA copolymer;Luviskol VA,Plasdone S PVP/VA)、ポリビニルピロリドン(PVP;K−15〜K−120)、ポリクオタニウム−11(polyquaternium−11,Gafquat 755N)、ポリクオタニウム−39(polyquaternium−39,Merquat plus 3330)、カルボキシポリメチレン(Carbomer,Carbopol)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、でん粉、ゼラチン(gelatin)及びアルギン酸(sodium alginate)などを用い得、望ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドンまたはこれらの混合物を用い得る。
【0030】
本発明の実施例による、支持層に含まれる水溶性高分子と水不溶性高分子との含量は、支持層に含まれる水溶性高分子と水不溶性高分子との重量比が1:4〜4:1であり得、望ましくは、1.5:4〜3.5:4の重量比で含まれ得る。
【0031】
水溶性高分子と水不溶性高分子とが前記のような重量比であるとき、パッチの構造を安定的に維持しながらも使用後の除去時にパッチがよく分解される。
【0032】
前記支持層は、薬物層と同様の理由で多様な可塑剤(plasticizer)を添加して使用可能である。前述の可塑剤であるプロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコールの外にも使用する溶媒に応じてさらに多い種類の可塑剤を用いることができ、ヒマシ油(castor oil)、硬化ヒマシ油(hydrogenated castor oil)を用いることもできる。
【0033】
溶媒としては主に、水、エタノール単独またはこれらの混合物、そして他の有機溶媒、例えば、エチルアセテート、メチレンクロリド、イソプロピルアルコール、アセトニトリル単独またはこれらの混合物を、割合を調節して用い得る。
【0034】
本発明の歯牙または歯牙周辺部付着用パッチは、薬物層及び支持層に加え、目的によって選択的に薬物層と支持層との間または各々の外郭にさらなる層(layer)を備え得る。
【0035】
本発明の一実施例によれば、本発明の歯牙または歯牙周辺部付着用パッチは、使用後に別に支持層を取り外さなくても、歯磨きだけで歯牙から容易に除去できる。
【0036】
本発明の一実施例によるパッチを250gの荷重で1分あたり往復90回の速度で3分間ブラッシングして蒸溜水で洗浄しながら洗浄液を集めて確認した結果、網目の大きさが1mmであるメッシュで濾した後、残余物を乾燥して確認した重さが全体重さに対して2重量%未満に過ぎなかった。本発明の歯牙付着用パッチは、使用後のブラッシングだけで容易に除去することができる。
【0037】
本発明の前記薬物層と支持層とを含むパッチは、歯牙に付着させて使用することができる。 また、他の実施例では、パッチの使用目的によって歯牙と歯牙周辺組織に付着させて用い得る。本明細書で用いられた「歯牙周辺部または周辺組織」は、歯牙に接している歯ぐき部分及び歯牙から多少離れていても、歯磨きをする過程で歯ブラシと接触し得る口腔内の部分を全て含み得る。
【0038】
前記「分解」とは、一つの大きい断片がそれよりも小さい断片に分けられるか、または割れることを意味する。本発明において分解された断片は一定の大きさを有し得、外部からの力や圧力によって多様な大きさに分けられ得る。多くの部分に割れるという意味を有する単語であれば、本発明の分解と同一の範囲に含まれる。
【0039】
本明細書で用いられた「パッチ」という用語は、特定成分を含む付着型の剤形を意味し、パッチの形態または構造は特に制限されない。
また、本発明による歯牙付着用パッチは、韓国登録特許第10−0816250号、米国登録特許第6,689,344号、第6,682,721号、第6,780,401号などに記載の方法によって製造できる。
【0040】
また他の実施例によって、パッチの支持層が水不溶性高分子と水溶性高分子のうち、特にヒドロキシプロピルメチルセルロース(Hydroxypropyl methylcellulose,HPMC)を同時に含むことで、使用後のブラッシングのような圧力だけでパッチが容易に分解され、除去できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0041】
特に、本発明の発明者は、前記水溶性高分子がヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である場合、他の水溶性高分子を用いる場合に比べて除去能力に優れており、歯磨き後の異物感が少なく、優れた使用感を提供できるという事実を長期間の研究の結果、確認することができた。
【0042】
本発明は、本発明の一実施例による、歯牙に薬物を伝達する薬物層、及び前記薬物層の歯牙付着面の反対側に位置し、水不溶性高分子及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含む支持層を含み、前記支持層は歯磨きで分解される、歯牙または歯牙周辺部付着用パッチを提供する。
【0043】
本明細書で用いられた「歯磨き」とは、ブラッシングともいい、歯面に残っている残余物や歯牙の間に存在する異物を除去する過程を意味する。
【0044】
業界においてこの間水不溶性のみで製作されて使われてきた薬物支持層を取り外すことなく、歯磨きによって分解されるように製作するために研究し、その結果、本発明の発明者は、特にヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を用いたとき、本発明の目的達成に特に有利であることを確認した。
【0045】
本発明のさらに他の実施例によるパッチの薬物層は、乾燥状態では接着力がないか、強度が弱く、美白剤の作用希望部位で少量の水によって水和しながら接着力が生じるものでえあるか、水和しながら美白剤の放出が始まる乾式型(dry type)のものであるが、それ自体の粘度によって歯牙に付着可能なゲル状のものも使用可能である。前記薬物層で用いられる高分子は、親水性または少なくとも部分的に親水性を有していなくてはならない。高分子として、主に、ポリアルキルビニルエーテル−マレイン酸共重合体(PVM/MA copolymer;Gantrez AN 119,AN 139,S−97)、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポロキサマー407(Poloxamer 407;Pluronic,poly(ethylene oxide)−poly(propylene oxide)−poly(ethylene oxide)triblock copolymer)、ポリエチレンオキシド(Polyox)、ポリビニルピロリドン−ビニルアセテート共重合体(PVP/VA copolymer;Luviskol VA,Plasdone S PVP/VA)、ポリビニルピロリドン(PVP;K−15〜K−120)、ポリクオタニウム−11(polyquaternium−11,Gafquat 755N)、ポリクオタニウム−39(polyquaternium−39,Merquat plus 3330)、カルボキシポリメチレン(Carbomer,Carbopol)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、でん粉、ゼラチン(gelatin)及びアルギン酸(sodium alginate)を単独でまたはこれらの混合物を用い得る。これらの高分子の溶媒としては、主に、水、エタノール単独またはこれらの混合物、そして他の有機溶媒、例えば、エチルアセテート、メチレンクロライド、イソプロピルアルコール、アセトニトリルを単独でまたはこれらの混合物を、割合を調節して用い得る。
【0046】
歯牙付着物は、歯牙に直接付着して歯牙の屈曲に沿ってその形態が作られるべきであるため、充分柔軟でなければならない。高分子によってはこのような柔軟性が足りないものもあるので、適切な可塑剤を添加してもよい。適切な可塑剤は、高分子の種類とその処方によって相違するが、可塑剤として通常使用されるポリプロピレングリコール(polypropylene glycol)、グリセリン(glycerin)またはポリエチレングリコール(polyethylene glycol)が挙げられ、これらのいずれも使用することができる。
【0047】
また、薬物層には、過酸化物の経時安定性を向上させる目的から、キレート剤、例えば、EDTAやクエン酸ナトリウムなどを添加し得る。
【0048】
前記薬物層を、唾液、口腔内接触など、物理的・化学的な接触から保護するか、または製品の形態を維持するために用いられる支持層は、支持層の役割を果たすために通常水不溶性高分子を用いることが望ましく、支持層を使用後に取り外すべきものとして業界では認識されてきた。しかし、本発明の発明者は、このような業界の通常の認識から逸脱して、前記支持層にHPMCを含ませ、取り外すことなく簡単に歯磨きだけで容易に除去して用いる方法を考案した。
【0049】
前述のように、本明細書で用いられた「支持層」とは、前記薬物層が歯牙の他に口腔内における他の皮膚と接触することを防止する役割を果たす層を意味する。
【0050】
本発明の一実施例で、前記支持層は、通常口腔用フィルムに用いられる水不溶性高分子を含み得、例えば、セルロースアセテートフタレート、セラック(Shellac)、ポリビニルアセテート、エチルセルロース、ポリメチルメタクリレート、メタクリロイルエチルベタイン/メタクリレート共重合体(methacryloylethyl betain/methacrylate copolymer;Yukaformer,Mitsubishi社製)、メタクリル酸共重合体(methacrylic acid copolymer;Eudragit L 100,Eudragit L 12,5,Eudragit L 100−55,Eudragit L 30D−55)及びアミノアルキルメタクリレート共重合体(aminoalkyl methacrylate copolymer;Eudragit E 100,Eudragit E 12,5,Eudragit RL 100,Eudragit RL 30D)を用い得る。望ましくは、前記水不溶性高分子は、HPMCとの相容性に優れており、歯磨きの後に最も異物感なく除去できるエチルセルロースが用いられ得る。
【0051】
併せて、本発明の歯牙付着用パッチの支持層は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を共に含む。前記HPMCは、水に入れれば、体積が大きくなる特性があるが、本発明の発明者は、前記HPMCを水不溶性高分子と共に用いる場合、他の水溶性高分子を用いる場合よりも、水不溶性高分子を含む支持層の分解力がさらに大きくなることを確認した。支持層が歯面に付着された状態で歯磨きをする場合、他の水溶性高分子を用いる場合よりも除去能力に優れ、支持層がより微小に分解され、歯磨き過程における異物感が減少し、使用感がさらに優秀であることを実験によって確認した。
【0052】
前記HPMCは、米国薬局方(USP)では、−OCH、−OCHCH(CH)OHの割合によって、HPMC1828、HPMC2208(K)、HPMC2906(F)、HPMC2910(E)と定義しており、本発明の支持層に用いられるHPMCの種類は特に制限されない。
【0053】
本発明の実施例による、前記歯牙または歯牙周辺部付着用パッチの支持層に含まれる水不溶性高分子と HPMCとの混合割合は、水不溶性高分子とHPMCとの重量比が1:0.2〜1:4であり、望ましくは、前記水不溶性高分子とHPMCとの重量比が1:0.5〜1:2であり得る。前記HPMCの重量比が前記範囲未満である場合、水不溶性高分子を歯磨きによって分解するのに過度な圧力または力を加えなければならず、分解されても粒子サイズが大きくて異物感が相対的に大きく感じられ得、前記範囲を超過する場合、薬物層内に含まれた薬物が支持層へ移されて吸収され得るため、支持層の役割をまともに果たせないという問題が発生し得、パッチの使用中にも唾液を吸収しすぎて構造が崩壊し、支持層としての役割が果たせないことがある。
【0054】
前記支持層は、薬物層と同様の理由で多様な可塑剤を添加して使用可能である。前述の可塑剤であるプロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコールに加え、使用する溶媒に応じてさらに多い種類の可塑剤を用いることができ、ヒマシ油(castor oil)、硬化ヒマシ油(hydrogenated castor oil)を用いることもできる。
【0055】
溶媒としては主に、水、エタノール単独またはこれらの混合物、そして他の有機溶媒、例えば、エチルアセテート、メチレンクロリド、イソプロピルアルコール、アセトニトリル単独またはこれらの混合物を、割合を調節して用い得る。
【0056】
本発明の歯牙付着用パッチは、薬物層及び支持層に加え、目的によって選択的に薬物層と支持層との間、または各々の外郭にさらなる層を備え得る。
【0057】
本発明の一実施例によれば、本発明の歯牙付着用パッチは、使用後に別に支持層を取り外さなくても、歯磨きだけで歯牙から容易に取り外される。
支持層に含まれる高分子のうち、水不溶性高分子とHPMCとを混合して用いる場合、水不溶性高分子のみを用いる場合よりも、ブラッシングによる除去が容易となる。また、他の水溶性高分子を用いる場合に比べ、よい小さい粒度に分解される。本発明の一実施例で、250gの荷重で1分あたり往復90回の速度で3分間ブラッシングして蒸溜水で洗浄しながら洗浄液を集めて確認した結果、網目の大きさが500μmであるメッシュで濾した後、残余物を乾燥して確認した重さが全体重さに対して5重量%未満に過ぎず、望ましくは4.5重量%、より望ましくは4重量%未満に過ぎない。
【0058】
本発明の歯牙付着用パッチは、使用後のブラッシングだけで容易に除去できる。
【0059】
本発明の前記薬物層と支持層とを含むパッチ1は、歯牙または歯牙周辺組織と接する薬物層10及び前記薬物層10の一面に配置される支持層20を含み、前記支持層20の一面に破断誘導部30が形成される。
【0060】
前記破断誘導部30は、外部の力によって前記支持層20が予め決められた大きさに分解されるように加工・処理された部分を意味する。破断誘導部30は、前記支持層20が破断する場合であれば、前記破断誘導部30の形態は特に制限されない。例えば、前記破断誘導部30は、前記支持層20の他の部分よりも厚さが薄く、このような部分に沿って前記支持層20が容易に破断されるようにする形態を全て含む。望ましくは、凹凸31のような形態を含み得る。また、他の実施例で、前記破断誘導部30は、前記支持層20が容易に破断するように気泡32が形成され得る。
【0061】
前記破断誘導部30は、前記支持層20の他の部分に比べて厚さが薄いものの、一定の厚さを有する部分を意味し、前記支持層に孔が形成されている場合とは区別される。即ち、パッチの支持層に孔が形成され、薬物層10の薬物成分が支持層の孔を通して移動する構造は、本発明の「破断誘導部」の構造に含まれない。
【0062】
支持層に孔が形成され、薬物層10の成分が前記支持層の孔を通して移動する場合、支持層によって放出する薬物の量が増加し、歯牙または歯牙の周辺組織に伝達される薬物の損失があり得る。前記支持層20の本来の目的を果たすための面で、前記破断誘導部は、前記薬物層10の薬物が支持層を横切って移動できない構造を有することが望ましい。
【0063】
本発明の一実施例によって前記破断誘導部30が気泡32を含み得る。前記凹凸は、凹部311の深さが凸部を基準で0μm超過30μm以下の深さを有し得る。
【0064】
前記破断誘導部30によって分解された断片は、望ましくは横縦の長さが1mm程度の大きさを有し得る。
【0065】
本明細書にて用いられた「破断」という用語は、前記支持層が二つ以上の部分に切り離されることを意味し、本発明のパッチは、前記支持層20に形成されている破断誘導部30に沿って容易に破断できる。本明細書において前記支持層20が破断するという意味は、支持層20が複数の断片に分解されることを含む概念として用いられた。
【0066】
前記「分解」とは、一つの大きい断片がそれよりも小さい断片に分けられるか、または割れることを意味する。本発明において分解された断片は一定の大きさを有し得るが、外部からの力や圧力によって多様なサイズに分けられ得る。
【発明の効果】
【0067】
本発明の歯牙付着用パッチは、歯牙の表面に薬物を選択的に放出しながらも支持層を取り離す必要がない、便利な使用形態の歯牙付着用パッチである。
【0068】
本発明のパッチは、単なるブラッシングだけで分解されて除去できる
【0069】
本発明のパッチは、目的によって多様な薬物を含むことができる。
【0070】
本発明のパッチは、支持層にHPMCを含むことで、歯磨きの後に口内に残るパッチの粒度が小さくなり、異物感が少なくて優れた使用感を提供することができる。
【0071】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施例を例示するものであり、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1図1は、比較例と実施例の除去便利性についてのアンケート結果を示す。図1から分かるように、実施例のパッチを用いた使用者からさらに高い点数を得た。
図2図2は、本発明の歯牙付着用パッチ1を例示的に示した図である。図2の(a)に例示的に示したように、薬物層10と支持層20とを含むパッチであってもよく、図2の(b)に示したように、薬物層10と支持層20との間に目的によって他の層を別に備えていてもよい。
図3図3は、表5及び表6のパッチの除去能力を評価した結果を示したグラフである。
図4図4は、本発明の破断誘導部に凹凸と気泡が含まれたパッチ及び含まれていないパッチの除去能力を評価した結果を示したグラフである。
図5図5は、本発明の破断誘導部30を含むパッチ1を例示的に示した図である。
図6図6は、本発明の破断誘導部30を含むパッチ1において、破断誘導部30が凹凸31を含む実施例を例示的に示した図である。
図7図7は、本発明の破断誘導部30を含むパッチ1において、破断誘導部30が気泡32を含む実施例を例示的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
以下、本発明を具体的な実施例を挙げて説明する。しかし、本発明による実施例は他の多くの形態に変形可能であり、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は、本発明の具体的な理解を助けるために例示的に提供されるものである。一方、特に言及しない限り、本願の明細書に記載の%は、重量%を意味する。
【0074】
[製造例1]
<歯牙美白用パッチの製造>
下記の表1の組成を有する比較例の歯牙美白用パッチ、及び下記の表2の組成を有する実施例の歯牙美白用パッチを製造した。韓国登録特許第10−0816250号における製造例1のbacking層及びreservoir層の製造方法によって製造した。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
【表3】
【0078】
<除去能力アンケート>
使用中に溶けて消える比較例2を除き、使用後の除去過程が必要な比較例 1及び実施例1〜6を対象として除去の便宜性についてのアンケートを行った。30名の回答者は、比較例1及び実施例1〜6の各パッチをグループによって 15分ずつ付着させた後、比較例1または実施例1〜6を歯磨きによって除去した。それから、各グループは、製品を替えて使った後、除去の容易性についてのアンケートに回答した。
− アンケート回答基準 −
5:除去が非常に便利であり、歯ブラシに絡みつかない。
4:除去が便利であるが、歯ブラシに残余物が少し残る。
3:除去が便利でなく、歯ブラシに残余物が残って不便だ。
2:除去が不便であり、歯ブラシに残余物が多い。
1:除去が非常に不便であり、歯ブラシに残余物が非常に多い。
【0079】
図1から確認できるように、比較例1の場合、多くの回答者が歯ブラシに固まる残余物が残って除去が非常に不便だという評価をした。これに対し、本発明の実施例を使った回答者の多くは、歯磨きによる除去が便利であり、残余物が非常に少ないと評価した。
【0080】
本発明の歯牙パッチは、使用後の歯磨きによる除去時、便利に除去され、歯ブラシに固まって絡みつく現象がなくきれいであることを確認した。
【0081】
<歯磨きによる分解評価>
比較例1及び実施例1〜6を2セット準備し、一つのセットは各々蒸溜水で30分間振って(shaking)支持層のみを残した後に乾燥して重さを測定し、他の一つのセットは、スライドガラス(slide glass)に付着させた後、37℃、85%の湿度環境で30分間保持した後、ブラッシング機(brushing machine)を用いて250gの荷重で1分あたり往復90回の速度で3分間ブラシングした。その後、スライドガラス、ブラッシングチャンバー(brushing chamber)と歯ブラシを取り外し、蒸溜水で洗浄しながら洗浄液を集めた。このようにして集めた洗浄液を網目1mmのメッシュで濾した後、残余物を乾燥して重さを計り、支持層の全体重さに対する残余物の割合を求めた。
【0082】
【表4】
【0083】
前記表4から確認できるように、比較例のパッチは、残余物の割合が98%以上であって、歯磨きによってほとんど分解されないことを確認した。一方、本発明の水溶性高分子が混合された支持層を有するパッチの場合、残余率が2%未満であって、ほとんどが歯磨きで分解されることが確認できた。
【0084】
<歯牙美白用パッチの製造>
下記の表5の組成を有する比較例の歯牙美白用パッチ、及び下記の表5及び表6の組成を有する実施例の歯牙美白用パッチを製造した。
【0085】
【表5】
【0086】
【表6】
【0087】
前記表5及び表6の組成を有する歯牙美白用パッチを製造した。前記組成において、韓国登録特許第10−0816250号の製造例1のbacking 層及びdrug reservoir層の製造方法によって製造した。前記実施例9〜11のHPMC(AN6、三星精密化学社製)は2910であり、粘度タイプは6cPsである。
【0088】
<除去能力アンケート>
比較例3及び実施例7〜11を対象として除去の便宜性についてのアンケートを行った。30名の回答者は、比較例3及び実施例7〜11の各パッチをグループによって30分ずつ付着させた後、比較例3または実施例7〜11を歯磨きによって除去した。それから、各グループは、製品を替えて使った後、除去の容易性についてのアンケートに回答した。
−アンケート回答基準−
5:除去が非常に便利であり、歯ブラシに絡みつかない。
4:除去が便利であるが、歯ブラシに残余物が少し残る。
3:除去が便利でなく、歯ブラシに残余物が残って不便だ。
2:除去が不便であり、歯ブラシに残余物が多い。
1:除去が非常に不便であり、歯ブラシに残余物が非常に多い。
【0089】
図3から確認できるように、比較例3を歯牙に付着させた後30分が経過した時点で使用者が歯磨きをする場合、大体除去が不便であるという評価が多く、残余物が残っているという評価が多かった。
【0090】
これに対し、実施例7〜11の場合、大体4点以上を受けており、除去が便利であるという評価がほとんどであった。
【0091】
その中でも、水溶性高分子としてHPMCを用いた実施例9〜11が、特に優れた除去能力を有することが分かる。
【0092】
<歯磨きによる分解評価>
比較例3及び実施例7〜11を2セットを準備し、一つのセットは各々蒸溜水で30分間振って支持層のみを残こした後、乾燥して重さを測定し、他の一つのセットはスライドガラスに付着させた後、37℃、85%の湿度環境で30分間保持した後、ブラッシング機を用いて250gの荷重で1分あたり往復90回の速度で3分間ブラッシングした。その後、スライドガラス、ブラッシングチャンバーと歯ブラシを取り外し、蒸溜水で洗浄しながら洗浄液を集めた。このようにして集めた洗浄液を網目500μmのメッシュで濾した後、残余物を乾燥して重さを計り、支持層の全体重さに対する残余物の割合を求めた。
【0093】
【表7】
【0094】
前記表7から確認できるように、比較例3は、歯磨きによってほとんど分解されず、500μmのメッシュに通過できないことが確認できた。即ち、約98重量%以上がメッシュにそのまま残っていた。
【0095】
これに対し、実施例7及び実施例8は、約15〜20重量%が残っており、その中で実施例9〜11は、ほとんどがメッシュを通過するほど微小に分解され、約5重量%未満がメッシュに残っていた。
【0096】
前記結果から確認できるように、他の水溶性高分子の中でも、特に、HPMCは他の水溶性高分子と違って、歯磨きによって支持層が分解されやすくすることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、歯牙または歯牙周辺部に付着させた後、歯磨きによって容易に除去できるパッチを提供する。
図1
図2(a)】
図2(b)】
図3
図4
図5
図6(a)】
図6(b)】
図7(a)】
図7(b)】
【国際調査報告】