【実施例】
【0136】
実施例1:前臨床AdHER2ECTMベクター発現
自家治療ワクチン接種のためのAdHER2ECTMでトランスフェクションされた樹状細胞(本明細書中で「AdHER2ECTM DC」という)の生成の最適な生成条件を決定するために、前臨床実験を行った。健康な通常のドナー細胞を使用して異なる条件下で樹状細胞を生成し、それによって複数の実験においてFACSまたはELISAによってHER2neu発現を確認した。これらの実験結果のまとめを以下に提供する。
・バッグ条件下またはフラスコ条件下でトランスフェクトしたDCのHER2neu発現は等価であった。本明細書中に開示の研究は、バッグを使用して自家DCワクチンのために解凍した単球からDCを生成した。
・この臨床試験のためのトランスフェクション比としてウイルス粒子(VP):DC比3000:1を選択したが、これは以下の表中のデータに基づいて妥当なMOIで発現レベルが高かったからである。
【表2】
・HER2neu平均蛍光性強度およびHER2neuについて陽性染色された細胞の比率は、以下の試験した2つの最も高い比で許容可能であった:
【表3】
【0137】
実施例2:前臨床HER2樹状細胞プラットフォーム
3人の健康な通常のヒトドナー(11FC00039、11FC00043、および11FC00055)由来の細胞を利用して研究を実施して、最終DCワクチン生成物における最適な生存率およびHER2neu発現のためのAdHER2ECTMベクターのトランスフェクションおよび樹状細胞の成熟化の最良の順序を決定した。VP:DC比3000にてAdHER2ECTMでトランスフェクトしたDCを、以下にまとめた(さらに
図3に概要を示す)条件下で生成した:
−24時間の未成熟樹状細胞(iDC)のトランスフェクション:(24h)ウイルス使用iDC
−ウイルストランスフェクションを用いない未成熟樹状細胞:iDC
−ウイルストランスフェクションを用いない24時間のDCの成熟化:ウイルスなしの(24h)mDC
−20時間目にトランスフェクションを用いた24時間のDCの成熟化:(20h)ウイルス使用(24h)mDC
−4時間のDCのトランスフェクション後のDCの成熟化:(24h)ウイルス使用(20h)mDC
【0138】
図4Aに示すように、成熟DC(mDC)のポストトランスフェクション生存率は、60〜82%(平均70〜75%)の範囲であった。歴史的に、トランスフェクトされたDCワクチン生成物の収量は、通常、開始単球集団の10〜40%である。
図4Bに示すように、DCの成熟化/トランスフェクション後の収量は、ドナーによって変動した。
【0139】
HER2neu発現も、異なる成熟化条件下で査定した。異なる成熟化条件下およびトランスフェクション条件下でのドナー内およびドナー間の発現には変動があり、未成熟DCは、HER2neu発現の変動はより大きかった(すなわち、細胞あたりのHER2発現の平均蛍光性強度は、未成熟DCと成熟DCとを比較するとさらに一致しなかった)。しかし、以下の
図5で実証されるように、トランスフェクション条件と無関係に、トランスフェクトされた未成熟DCおよび成熟DCのHER2neu発現(CD340)は100%であった。
【0140】
これらのDC成熟化/トランスフェクション実験の一部としてさらなる特徴づけおよび査定も行って、以下のように最終HER2neu DCワクチン生成物の定性的な機能的態様をより特徴づけた:
・最終DCワクチン生成物上の分化のクラスター(CD)抗原:CD86、CD83、HLA−DR、CD38、CD54、CD14、およびCCR7
・サイトカインおよびケモカインIL−6、IL−8、IL−12p70、TNF−α、IP10、MDC、およびMIP3βの発現(細胞数について発現を正規化した比として示す)。インターフェロン−α、IL−10、IL−13、およびIL−15は、非常に低濃度であった(通常、5pg/ml未満)。
【0141】
この研究のためのAdHER2ECTM DCワクチンを、最初の4時間のAdHER2ECTMベクターのトランスフェクションおよびその後のDC成熟化カクテルを使用して製造した(前の図中に(24)ウイルス使用(20)mDCと示す)。この決定は、上記のin vitro研究由来の以下の所見に基づいていた:
・一般に、未成熟DC(すなわち、最適な抗原プロセシングを確実にするために成熟化カクテルを添加する前)をトランスフェクトするのはより容易である。
・MFIによって測定した場合の未成熟DCと比較した成熟DCのHER2neu発現はより一貫しており、最終生成物がより均一になる。
【0142】
実施例3:ヒト第I相臨床試験
本実施例は、自家AdHER2ECTM樹状細胞ワクチン接種の安全性および毒性を決定するためのヒト第I相臨床研究について記載する。具体的には、心毒性(生じる場合)を有する患者の割合がその後の試験で確実にさらに高まるのを十分に低下させるかどうかを決定する。心毒性は、LVEFの10%以上の減少または絶対LVEFの50%未満への減少(CTCAEv4.0によるLVEFのグレードIIへの低下に等価)として定義する。また、本研究を、ベースラインと比較して抗HER2/neu抗体濃度(mcg/mlとして測定)の3倍増加または抗体希釈力価の4倍増加によって測定した場合の自家AdHER2ECTM樹状細胞ワクチン接種の免疫原性を決定するために開始した。
【0143】
臨床研究のさらなる目的には、免疫関連奏効基準による安定病態、部分奏効、またはより良好な奏効を有する被験体の割合によって測定される自家AdHER2ECTM樹状細胞ワクチン接種の予備活性の決定;腫瘍成長速度定数および後退速度定数に及ぼす自家AdHER2ECTM樹状細胞ワクチン接種の影響の決定;HER2のECドメイン、TMドメイン、およびICドメインに対する反応性を試験する、HER2ペプチドマイクロアレイを使用したワクチン誘導性抗体プロフィールの特徴付け;ならびに全血、循環腫瘍細胞中の機能関連mRNA、および臨床的奏効の他の潜在的な生物学的/免疫学的相関関係の特徴付けおよび測定が含まれる。AdHER2ECTM DCワクチン接種試験のための研究デザインスキームを、
図6に示す。
【0144】
適格基準
選択基準パートI
利点が知られているが、トラスツズマブが臨床的に適応しない、標準的な治療に失敗したいくつかのHER2/neu発現によって特徴付けられる以下の再発性または進行性の転移性固形腫瘍を有する少なくとも18歳の成人:
【0145】
・IHCによってHER2 1+、2+、または3+であるか、VYSIS(商標)FISHの結果が1.8を超えることが公知の卵巣癌、結腸癌、非小細胞肺癌、腎細胞癌、膀胱癌、および前立腺癌の患者
【表4】
・IHCによってHER2 1+または2+であるか、VYSIS(商標)FISHの結果が1.8〜2.2未満であることが既知の乳癌患者
【表5】
【0146】
アジュバント療法において以下のHER2+膀胱癌を有する少なくとも18歳の成人(アジュバント膀胱癌患者):
・腫瘍ステージT3a、T3b、T4a、T4b、および腫瘍ステージとは無関係の任意のリンパ節陽性疾患。
・IHCによってHER2 1+、2+、または3+であるか、VYSIS(商標)FISHの結果が1.8を超える腫瘍。
・状態−治癒を意図して一次膀胱切除後の状態
・ネオアジュバントシスプラチンベースの多剤併用化学療法を受けている場合または受けていない場合。
・NCCNガイドラインによる病的リスクに基づいたアジュバント照射療法または化学療法を受けている場合または受けていない場合。
・治癒を意図した一次手術後6週間またはそれを超える状態。
−平均余命6ヶ月以上、
−パフォーマンスステータス:ECOGが0〜1。
−トラスツズマブ、ペルツズマブ、およびラパチニブ(lapatnib)、または他の治験中のHER2指向性治療(例えば、T−DM1)に対して未処置
−臨床的に有利であることが公知の事前の標準的な治療に対して再発性または進行性の疾患を有する(アジュバント膀胱癌集団を除く)。
−従来の技術を用いてCTスキャンによって20mm以上の少なくとも1つの寸法(非リンパ節病変について記録された最長径およびリンパ節病変について記録された短軸)を正確に測定することができる少なくとも1つの病変および/または測定可能な臨床的に可視的な皮膚病変として定義される測定可能疾患が存在する、再発性転移性固形腫瘍を有する成人(一次化学療法を完了しており、測定可能疾患を持たないかもしれない転移性膀胱癌患者を除く)。
−二次元心エコー図による55%を超えるベースラインLVEF。
−転移性疾患のための標準的な処置または治験中の処置から1週間またはそれを超える期間経っている。
−ER+状態のためのタモキシフェンまたはアロマターゼインヒビターの安定な同時使用が許容されている。
−血液学的パラメータ:ANCが1000細胞/mm
3以上、ALCが500細胞/mm
3以上、ヘモグロビンが9.0gm/dL以上、WBCが2,500細胞/mm
3以上、血小板数が75,000/mm
3以上、PT/PTTが正常値の上限の1.5倍以下。
−化学パラメータ:SGOTおよびSGPTが正常値の上限の3倍以下および総ビリルビンが1.5mg/dl以下、Alk PO4が正常値の上限の2倍以下(骨への転移性疾患が実証された患者を除く)。
−妊娠可能な女性の場合、血清HCGが陰性であること。
−HIV−1の血清学的検査が陰性であること。
−結果が事前のワクチン接種または完全に回復した事前の感染と一致しない限り、B型肝炎およびC型肝炎の血清学的検査が陰性であること。
−女性および男性の被験体が有効な避妊手段(例えば、経口避妊薬、バリアデバイス、子宮内器具、またはコンドーム)を、研究中および研究用ワクチンの最後の投与後3ヶ月間使用する意思があること。
−インフォームドコンセントを理解し、提出することができること。
【0147】
選択基準パートII
−18歳超
−IHCによって3+HER2/neu発現を有するかVYSIS(商標)FISHの結果が2.2超である乳癌患者
【表6】
−少なくとも1〜2クールの、公知の臨床上の利点を有する標準的治療(すなわち、トラスツズマブまたはラパチニブ)、ado−トラスツズマブ・エムタンシン(TDM1)、または他の治験中のHER2指向性治療(例えば、MGAH22)後に再発性または進行性の転移性疾患を有すること。
−平均余命6ヶ月以上。
−パフォーマンスステータス:ECOGが0〜1。
−従来の技術を用いてCTスキャンによって20mm超の少なくとも1つの寸法(非リンパ節病変について記録された最長径およびリンパ節病変について記録された短軸)を正確に測定することができる少なくとも1つの病変および/または測定可能な臨床的に可視的な皮膚病変として定義される測定可能疾患が存在すること。
−二次元心エコー図による55%を超えるベースラインLVEF。
−転移性または再発性の疾患のための標準的な処置または治験中のHER2指向性治療を受けてから1週間またはそれを超える期間が経っている。
−ER+状態のためのタモキシフェンまたはアロマターゼインヒビターの安定な同時使用が許容されている。
−血液学的パラメータ:ANCが1000細胞/mm
3以上、ALCが500細胞/mm
3以上、絶対ヘモグロビンが9.0gm/dL以上、WBCが2,500細胞/mm
3以上、血小板数が75,000/mm
3以上、PT/PTTが正常値の上限の1.5倍以下。
−化学パラメータ:SGOTおよびSGPTがULNの3倍以下、総ビリルビンがULNの1.5倍以下、およびAlk PO4がULNの2倍以下(骨への転移性疾患が実証された患者を除く)。
−妊娠可能な女性の場合、血清HCGが陰性であること。
−HIV−1の血清学的検査が陰性であること。
−結果が事前のワクチン接種または完全に回復した事前の感染と一致しない限り、B型肝炎およびC型肝炎の血清学的検査が陰性であること。
女性の被験体が有効な避妊手段(例えば、経口避妊薬、バリアデバイス、子宮内器具、またはコンドーム)を、研究中および研究用ワクチンの最後の投与後3ヶ月間使用する意思があること。本発明者らは、被験体は、研究中、および治験AdHER2ECTM DCワクチンの投与後3ヶ月間妊娠しないよう提案する。(FDAの要請)
−インフォームドコンセントを理解し、提出することができること。
【0148】
除外基準
−妊娠中または授乳中の女性。
−積極的にまたは以前に処置されたCNSの腫瘍の転移または軟膜併発を有する患者。
−治験責任医師の意見として急速に進行している疾患を有する患者。
−自家AdHER2ECTM DCワクチン生成物を生成するために必要なアフェレーシスのための両側末梢静脈カテーテルまたは中心静脈カテーテルのアクセスが不適切な患者。
−処置を必要とするか、化学療法の中断を必要とするNYHAクラスIIを超える症状、アンギナ、鬱血性心不全、心筋梗塞、不整脈、または心機能障害の病歴として定義される臨床的に有意な心機能障害。
−トラスツズマブでの事前の処置中にベースラインLVEFの変化が起こった病歴を有すること。
−ドキソルビシンの累積用量が400mg/m
2超であるか、エピルビシンの累積用量が800mg/m
2超であること。
−研究登録の1週間以内に任意の標準的な化学療法または他の治験薬を使用したこと。
−研究登録の2週間以内に全身性コルチコステロイド療法を使用したこと(コルチコステロイド補充療法を受けた患者を含む)。注意:局所、吸入、および鼻腔内のステロイド療法のみは許可する。
−処置を必要とする活性な全身性のウイルス、細菌、または真菌の感染。
【0149】
研究の概要およびデザイン
これは、ワクチンの安全性、免疫原性、および予備活性を決定するためにAdHER2ECTMで形質導入した自家樹状細胞(DC)ワクチンの非盲検、単施設、非ランダム化、2パート、第I相研究である。参加適格性が確認され、インフォームドコンセントを得た時点で、患者に対して逆流洗浄による15〜18L単核球アフェレーシス回収を計画し、約333×10
6細胞/バイアルとなるように少なくとも8つのバイアルに等分し、自家AdHER2ECTM DCワクチン生成物をさらに調製するために凍結保存する。
【0150】
パートIの患者数N=30
研究のパートIでは、いくつかのHER2/neu発現によって特徴付けられるが、トラスツズマブが臨床的に適応しない以下の再発性または進行性の転移性固形腫瘍を有する成人およびアジュバント膀胱癌患者におけるワクチン用量漸増について調査する:
・IHCによってHER2 1+、2+、または3+であるか、VYSIS(商標)FISHの結果が1.8を超えることが公知の卵巣癌、結腸癌、非小細胞肺癌、腎細胞癌、膀胱癌、および前立腺癌の患者
・HER2 2+または3+であるか、VYSIS(商標)FISHの結果が2.2未満であることが公知の乳癌患者
【0151】
アジュバント膀胱癌患者は、AdHER2ECTM DCワクチンの安全性が少なくとも10人の患者において12週間にわたって証明されるまで研究のパートIに登録されない。
【0152】
パートIの目的は、ワクチンの免疫原性および臨床活性の予備査定に加えて、HER2指向性治療に対して未処置のこの患者集団において心毒性に関する有意な安全上の有害シグナルが先立って存在するかどうかを決定することである。許容され得る腫瘍には、乳癌、卵巣癌、結腸癌、非小細胞肺癌、腎細胞癌、膀胱癌、および前立腺癌が含まれる。HER2を発現する広範囲の腫瘍を含めることにより、より短期間に症例を集め、ワクチンの安全性および免疫原性を迅速に決定することが可能である。しかし、種々のHER2発現レベルを有する多発性腫瘍型の被験体を含めることにより、生物学的に活性な至適用量の同定を妨げ得る。
【0153】
投薬量および投与
この研究パートに、以下に概要を示したワクチン用量コホートにおいてコホートあたり6人の患者が参加する:
用量コホート1(患者数N=6):5×10
6生存細胞/ワクチン
用量コホート2(患者数N=6):10×10
6生存細胞/ワクチン
用量コホート3(患者数N=6):20×10
6生存細胞/ワクチン
【0154】
任意の活性が見出された場合、最大許容用量でさらに12人まで患者を拡大する(全部で30人)。
【0155】
自家AdHER2ECTM DCワクチンを、0、4、8、16、および24週目に皮内投与する。免疫関連奏効基準による安定病態、部分奏効、またはより良好な奏効の臨床上の証拠を得るための再病期分類を、8、16、24、36、および48週目の所見において、12、20、28、40、および52週目の確証的調査(irCRまたはirPRを確認するために示す場合)を用いて査定する。アジュバント膀胱癌患者に対して、8、16、24、36、および48週目に疾患再発の証拠を得るための再病期分類(再発が確証された場合に4週間後に確証的調査を用いる)を行う。ワクチン用量漸増は、以下に指定した手順に従う。
【0156】
パートIIの患者数N=30
研究のパートIIを、IHCによる3+HER2/neu発現を有するか、VYSIS(商標)FISHの結果が2.2を超える再発性または進行性の転移性乳癌を有する成人において行う。ワクチン用量漸増を、トラスツズマブ、ペルツズマブ、ラパチニブ、ado−トラスツズマブ・エムタンシン(TDM1)への有意な事前の曝露および他の治験中のHER2指向性治療(例えば、MGAH22)を行った集団において同一の様式で繰り返して、ワクチンの免疫原性および臨床活性の査定に加えて、心毒性に関する安全上の有害シグナルが存在するかどうかを決定する。ワクチン用量MTDをパートIで同定しない限り、ワクチン用量漸増、投与、および再病期分類査定は、パートIで行ったものと同一である。
【0157】
提案投薬量および投与
研究パートIIに、以下に概要を示したワクチン用量コホートにおいてコホートあたり6人の乳癌患者が参加する:
用量コホート1(患者数N=6):5×10
6生存細胞/ワクチン
用量コホート2(患者数N=6):10×10
6生存細胞/ワクチン
用量コホート3(患者数N=6):20×10
6生存細胞/ワクチン
【0158】
任意の活性が見出された場合、最大許容用量でさらに12人まで患者を拡大する(全部で30人)。
【0159】
自家AdHER2ECTM DCワクチンを、0、4、8、16、および24週目に皮内投与する。免疫関連奏効基準による安定病態、部分奏効、またはより良好な奏効の臨床上の証拠を得るための再病期分類を、8、16、24、36、および48週目の所見において、12、20、28、40、および52週目の確証的調査(irCRまたはirPRを確認するために示す場合)を用いて査定する。ワクチン用量漸増は、以下に指定した手順に従う。
【0160】
用量漸増
転移性乳癌のためにトラスツズマブ単剤療法で処置した7%までのHER2/neu発現腫瘍患者が臨床的に有意な心機能障害(鬱血性心不全が含まれる)を発症したと報告された。この研究のために提案された治療AdHER2ECTM DCワクチンは、心毒性を生じるほどのレベルではない場合は許容されると見なされるであろうが、このレベルを超える場合、許容されない。限定数の患者を使用してこれを評価するために、早期中止規則を組み込んでいることが相違点である2パートデザインを実施した。研究のパートIおよびパートIIのそれぞれに30人の評価可能患者を追加し、実験AdHER2ECTM DCワクチンで処置することを目的とする。早期中止規則を発動しない限り、臨床的に有意な心毒性を経験した患者の数を決定して心毒性の頻度を推定する。さらに、毒性が認められる用量レベルも試験する。
【0161】
用量漸増を6人の患者のコホートで進行させる。用量コホート内の6人の患者中0人または6人の患者中1人で毒性が証明されない限り用量漸増を進行させ、コホート内の6人の患者中少なくとも3人が研究12週目に到達した。任意の所与の用量コホートにおける6人の患者中2人が心毒性を発症した場合、その用量コホートへのさらなる追加を締め切り、同程度の用量を調査し、用量拡大のためのさらなる12人の患者を、その次に低い用量のワクチンコホートに参加させて心毒性をさらに査定する。18人の処置患者のうちの0〜1人が心毒性を発症するワクチン用量を、最大許容用量(MTD)と定義する。所与の用量での18人のうちの2人またはそれを超える患者が心毒性を発症した場合、その用量はMTDを超えており、その用量未満の用量レベルをMTDと見なす。コホート3への登録に到達し、且つ6人の患者中0人または6人の患者中1人が毒性を示す場合、この最も高い用量コホートを、パートIにおける最大目標患者数である30人にするために、さらなる12人の患者によって拡大する。
【0162】
パートIの3つ全てのコホートで用量漸増を進め、30人の患者のうちの0〜2人が心毒性を経験する場合、転移性乳癌を有し、且つHER2指向性治療に事前に曝露した患者における研究のパートIIをパートIと同一の様式で進める。あるワクチン用量でパートIにおいて2+/18人が心毒性を示すことが見出された場合、パートI由来のMTDは研究のパートIIで使用されるワクチン用量である。この場合、用量漸増を行わず、最大追加患者数である30人をパートIIに登録する。
【0163】
DLTが認められない場合、パート1およびパートII内の投与コホートを、免疫原性および臨床転帰を有する患者の割合について評価して生物学的に最適なワクチン用量を決定する。このワクチン用量を、各患者集団を含む任意の将来的な第II相研究で使用するであろう。評価不可能患者の可能性を許容するために、追加上限65を使用する。
【0164】
研究の修正:
安全上の有害シグナルの証拠がなかったので、パートI拡大コホート(N=12)を、2000万個生存DC/用量から4000万個生存DC/用量に増加させた。
【0165】
パートII研究コホート登録において、5×10
6および10×10
6の各用量を排除して20×10
6生存DCを投与し、次いで、拡大コホート(N=24)用量である40×10
6生存DC/用量に進めるように修正した。
【0166】
薬物投与
0週目の来院時に全ての患者に対して15〜18Lアフェレーシスを行って、樹状細胞調製物のために末梢血単球を除去し、同様に、フローサイトメトリーおよび免疫学的研究のために末梢血単核球を除去する。その後の樹状細胞成熟化のために使用する細胞は、最初のアフェレーシス中に凍結した単球に由来する。自家AdHER2ECTM樹状細胞ワクチンを、cGMP条件下で製造する。
【0167】
自家AdHER2ECTM DCワクチン調製物を、放出標準(有核細胞の数および濃度、外観、DC検証マーカーのフローサイトメトリーによる検証、生存率60%以上、および生成物の無菌性および安全性試験)およびHER2発現(HER2/neu発現細胞の比率およびアイソタイプコントロールに対するHER2/neu発現の幾何平均蛍光性強度(MFI)の比)について査定する。
【0168】
研究のパートIおよびパートIIの両方の患者について、自家AdHER2ECTM DCワクチン接種を、登録投与コホート(5、10、または20×10
6生存細胞/ワクチン)に従って行い、全部で4回のワクチン接種のために0、4、8、および24週目に2つまでの注射部位に皮内投与する。ワクチンを投与し、患者を、その最初のHER2 DCワクチン投与後に2時間にわたって即時有害事象ワクチン反応(VS、臨床査定)についてモニタリングする。第1のワクチン接種で有害反応が認められない場合、患者を、全てのその後のワクチン接種について30分間モニタリングする。
【0169】
第1のワクチン接種後に有害反応が認められる場合、この反応を特徴付け、この反応が用量制限毒性(DLT)と見なされるかどうかを判断する。この有害反応がDLTではないと判断される場合、その後のワクチン接種のためのワクチン接種後モニタリングの持続時間を、最初のワクチン反応の重症度に応じて臨床的に示されるように決定する。
【0170】
全ての患者にAdHER2ECTM DCワクチンレポートカードを配布し、各AdHER2ECTM DCワクチン投与後の完了方法を説明する。パートIおよびパートIIの両患者についてのその後の投与コホートへの登録を、安全性モニタリングが可能になるように調整する。用量コホート内の6人の患者のうちの0人または6人の患者のうちの1人に毒性の証拠がない限り用量漸増を進め、コホート内の6人の患者のうちの少なくとも3人が研究12週目に到達した後に、次のワクチン用量コホートの登録を開始することができる。最初の3回のワクチン接種を含む12週間の枠内で用量制限毒性が認められない場合、さらなる患者の登録を、上記に概説するように進める。
【0171】
用量の修正および免疫化停止規則
トラスツズマブと異なり、AdHER2ECTMワクチンは、HER2のECドメインおよびTMドメインの両方を標的にする。乳癌の女性におけるトラスツズマブの使用は、小さいが有意な(約7%)心機能障害の発症リスクに関連することが示されている。どのようにしてトラスツズマブが心毒性を引き起こすのかについては正確には知られていない。この生成物を使用したワクチン接種の目的は、HER2を認識する抗体(潜在的にはキラー細胞も)を作製するように患者自身の免疫系を刺激することである。本研究の前に、患者自身の免疫系によって作製された抗体が心機能障害を引き起こすかどうかは知られていなかった。AdHER2ECTM DCワクチン接種を受けた患者において用量の修正は行わない。被験体は、用量制限毒性(DLT)を経験した場合、免疫化を停止する。
【0172】
DLTを経験した患者の補助的管理:
グレード2またはそれを超えるアレルギー性DLTまたは自己免疫性DLTを経験している患者について、DLTがグレード1以下に回復するまで補助的臨床介入を行う。
【0173】
グレード2またはそれを超える心DLTを経験している患者について、DLTがグレード1以下に回復するまで補助的臨床介入を行う。
【0174】
患者はまた、LVEFがベースライン機能に回復するまで、4週間間隔でLVEF測定を繰り返す。その後、心機能を、研究124週目までモニタリングし続ける。
【0175】
グレード2またはそれを超える心DLTを経験しており、且つグレード1以下に回復していない患者に臨床的補助を継続し、研究124週目までモニタリングする。
【0176】
グレード3またはそれを超える器官(皮膚、胃腸、肝臓、肺、腎臓/尿生殖器、または神経)DLTを経験している患者について、DLTがグレード1以下に回復するまで補助的臨床介入を行う。
【0177】
グレード3またはそれを超えるアナフィラキシーDLTを経験している患者について、DLTがグレード2以下に回復するまで補助的臨床介入を行う。
【0178】
グレード3またはそれを超える局所注射部位反応を経験している患者について、DLTがグレード1以下に回復するまで補助的臨床介入を行う。
【0179】
プロトコル治療からの除外基準および研究離脱基準
プロトコル治療からの除外基準:
・32週目の60日間安全性来院を含むプロトコル治療(5回の自家AdHER2ECTM DCワクチン投与)の完了。
・0週目の反復CTスキャンにおいて5週目/4週目と0週目との間で疾患の進行が急速である(すなわち、全身腫瘍組織量(RECIST 1.1)の20%以上の増加)ことが確証されたとき。これらの患者を、研究から除去し、AdHER2ECTM DCワクチン接種を回避する。
・免疫関連奏効基準(irRC)(Wolchokら,Clin Cancer Res 15:7412−7420,2009)による疾患の進行。例外:3週目/2週目ベースラインと比較した全身腫瘍組織量が25%以上増加したirPDを有するか、8、16、または24週目の再病期分類において最低点を有する臨床的に安定した患者は、研究維持が許可される。36週目またはそれ以降の再病期分類においてirPDの基準を満たす患者を、進行性疾患のためのプロトコル治療から除去する。
・患者が用量制限毒性を経験していること。
・患者がおそらく、確実に、または明確にAdHER2ECTM DCワクチン接種と関連すると見なされるグレード3またはそれを超える有害事象/毒性を経験していること。
・患者が、未解決の処置関連毒性を経験していること。
・患者が、DCワクチン製造に関する問題(例えば、必要とされるワクチン用量を生成するための樹状細胞の回収が不十分であること、DC生存率が継続的に減少してワクチン放出基準を満たすことができなくなることなど)のために処置から離れる場合。
・患者が、計画されたAdHER2ECTM DCワクチン投与の目標期日から4週間を超える処置の遅延を経験する場合。
・治験責任医師の意見として、許容不可能に処置リスクが増大する併発性疾病または医療状況(例えば、DVT)。
・患者が研究要件を遵守しないこと。
・患者が著しく健康を損なったためにプロトコル指定の研究来院が不可能である場合。
・患者が研究中に妊娠したこと。
・患者がさらなる治療の停止を要求し、拒否した場合。
・患者が禁止併用薬を必要とすること。
・死亡した場合。
【0180】
プロトコル治療から一旦離脱して潜在的な心毒性を調査するためのモニタリングの継続
・3.5.1節に概要を述べた理由のために患者を治療から除去した場合。
・患者がその後の研究週において指定した心モニタリング研究を受け続ける場合。
・HPE査定およびECOG査定を含む心筋トロポニンレベル(4、8、12、16、20、24、28、32、40、および48週目)および心エコー図(4、12、20、28、32、40、48、76、100、および124週目)についての研究スキーム。
・心モニタリングを行う場合。
【0181】
研究離脱基準
・計画された研究来院を完了した場合。
・患者がさらなる研究の参加の停止を要求し、拒否した場合。
・患者が研究要件を遵守しないこと。
・患者が著しく健康を損なったためにプロトコル指定の研究来院が不可能である場合。
・3.5.1.2で指定した急速進行性疾患に罹患している場合。
・死亡した場合。
【0182】
併用投薬/措置
患者は、ER+腫瘍状態のためのタモキシフェンまたはアロマターゼインヒビターとの併用治療が許容される。患者は、骨量減少を防止するための併用薬(ビスホスホネートおよびデノスマブが含まれる)を服用することができる。研究被験体は、局所注射部位または全身注射部位の反応の症状軽減のためにマルチビタミン、鎮痛薬(NSAIDSまたはアセトアミノフェン)、解熱薬、および抗ヒスタミン薬の服用が許容される。患者は、慢性疾患(例えば、高血圧症、糖尿病、高コレステロール血症など)の処置で臨床的に適応される投薬を継続することが許容される。
除外される治療:研究登録の1週間以内のトラスツズマブ、ペルツズマブ、ラパチニブ、ado−トラスツズマブ・エムタンシン(TDM1)、または他の治験中のHER2指向性治療(MGAH22など)。
化学療法:この試験中は、化学療法の併用は許容されない。
抗癌放射性核種:この試験中は、抗癌放射性核種の併用は許容されない。患者は、新規の放射性核種造影剤(例えば、
111インジウムCHX−A DTPAトラスツズマブ)の研究の同時登録が許容される。
二次ホルモン治療:タモキシフェンまたはアロマターゼ(aromatse)インヒビター以外の補助ホルモン処置の併用は許容されない。
コルチコステロイド:この試験中は、慢性全身性コルチコステロイドの併用(臨床適応症のための緊急使用以外)は許容されない。しかし、コルチコステロイドの吸入、鼻腔内噴霧、および制限された身体部分への局所用クリームの使用は許容される。
【0183】
ビタミンD3(コレカルシフェロール)補給
ビタミンDは、摂取されたときに肝臓内で25−OHビタミンDに代謝される。細胞内で、25−OHビタミンDは1−ヒドロキシラーゼによってさらに代謝され、セコステロイドホルモンに変換される。このホルモンは、体内の多数の重要な細胞機能および免疫機能に重要である。細胞内において第2の酵素は24−ヒドロキシラーゼであり、その機能は、ビタミンDを減少させることであり、それにより、細胞内ビタミンDホメオスタシスを維持する。ビタミンDの古典的な機能は、カルシウムホメオスタシスならびに骨形成および骨吸収を制御することである。しかし、ビタミンDのさらなる機能が証明されており、その機能には、細胞のアポトーシスおよび分化の促進によって免疫応答に影響を及ぼすことが含まれる。前立腺癌、乳房癌、結腸癌、および他の癌におけるビタミンD欠乏症の正確な役割には議論の余地があり、いくつかの研究所による研究ではある役割があることを示唆し、他の疫学的研究では役割がないか、補給を回避すべきである可能性すらあることを示唆している。Marshall and colleaguesによる最近の研究(Marshallら,J Clin Endocrinol Metabl 97:2315−2324,2012)では、4.000IU/日で1年間のビタミンD補給を、積極的サーベイランス下で前立腺癌リスクの低い男性(グリーソンスコア6、12本中陽性コア数1〜6および、PSA10未満)において試験した。1年後の再生検の際に、60%で陽性コア数、グリーソンスコア、またはその両方が低下し、6%でこれらの因子は不変であった。さらに、PSAレベルは上昇しなかった。Viethの研究チームによって報告された別の研究では(Wagnerら,LB−435,AACR Annual Meeting,Chicago,IL,April 3,2012)、根治的前立腺摘除術を受ける予定の66人の男性を、ビタミンDの日用量400、10,000、または40,000IU/日を3〜8週間にわたって手術前に投与するために無作為に割り当てた。前立腺におけるカルシトリオールレベルは、ビタミンDの用量が増加するにつれて漸増し、これは、Ki67レベルがより低いことおよび特異的成長インヒビターmicroRNAレベルがより高いことに対応している。
【0184】
いくつかの研究では、ビタミンDレベルの低い女性は乳癌の発生リスクおよび死亡率が増加することが示されているが、研究はこの患者集団におけるビタミンDレベルおよび予後変数(例えば、ホルモン受容体の状態)、Oncotype DXなどの調査を欠いている。Pepponeの研究チームによって実施された194人の乳癌手術後状態の女性および194人の癌のない対照の症例対照研究では(Pepponeら,Ann Surg Oncol 19(8):2590−2599,2012)、乳癌女性は、対照より25−OHビタミンレベルが有意に低いことが認められた(32.7ng/mL対37.4ng/mL、それぞれ、P=0.02)。
【0185】
25−OHビタミンDレベルが最適以下(<32ng/mL)の女性は、最適25−OH D濃度を有する女性よりER陰性癌(OR=2.59、95%信頼区間[95%CI]=1.08〜6.23)およびトリプルネガティブ癌(OR=3.15、95%CI=1.05〜9.49)を有するオッズが有意に増加した。さらに、基底細胞様表現型を有する女性は、ルミナルA表現型を有する女性よりも25−OHビタミンDレベルが低かった(24.2ng/mL対32.8ng/mL、それぞれ、P=0.04)。要約すれば、侵襲性がより高い乳癌分子表現型(基底細胞様)および予後指標がより悪化した(ER陰性癌およびトリプルネガティブ癌)女性は、平均25−OHビタミンDレベルがより低かった。その免疫機能における重要な役割および癌病態生理学における役割の可能性を考慮すると、全患者の25−OHビタミンDレベルは、ベースラインで得られるレベルであった。健康に最適な25−OHビタミンDの目標レベルについて議論の余地があるが、大多数のビタミンD専門家は、40ng/mLを超えるべきであることに同意している。
【0186】
25−OHビタミンDレベルが40ng/mL未満の全ての患者に、検出されたビタミンD欠乏症の重症度に応じて、2000IUまたは4000IU/日のいずれかのビタミンD3(コレカルシフェロール)の経口補給を開始する。25−OHビタミンDレベルを、研究8、16、28、および52週目に、モニタリングし続ける。
【0187】
奏効基準
腫瘍の測定および奏効の評価を、12週目および16週目、28週目および32週目、ならびに48週目および52週目に行い(示す場合、4週間後に確証的調査を行う)、この測定および評価には、理学的検査、CT画像化、および骨スキャン画像化(28週目および48週目のみ)研究が含まれる。奏効を、免疫関連奏効基準(irRC)(Wolchokら,Clin Cancer Res 15:7412−7420,2009)に基づいて決定する。irRCは、以下で概要を述べるように、WHO基準を修正している。irRCにしたがった全奏効は、以下の時点奏効査定(全身腫瘍組織量に基づく)に由来する:
irCR:実証第1日目から4週間もの反復した連続査定によって確認した全病変の完全な消失(測定可能であるかどうかと無関係、且つ新規の病変なし)。
irPR:最初の実証から少なくとも4週間後の連続査定によって確認されたベースランと比較した50%以上の全身腫瘍組織量の減少。
irSD:irPDの非存在下でirCRまたはirPRの基準を満たさないこと。
irPD:実証第1日目から4週間もの反復した連続査定によって確認した最低点(記録された最小全身腫瘍組織量)と比較した25%以上の全身腫瘍組織量の増加。
【0188】
8、16、または24週目の再病期分類における最低点と比較して全身腫瘍組織量が25%以上増加したirPDを有する臨床的に安定な患者は、前臨床動物研究におけるAdHER2ECTM DCワクチン接種に関連する固有の奏効プロフィール(最初に腫瘍が成長し、その後に後退する)のために、研究への残留が許容される。36週目またはそれ以降の再病期分類においてirPD基準を満たす患者を、進行性疾患の研究から除去する。
【0189】
有効性を査定する。全客観的奏効は、奏効がirRC慣習によって最初に実証されたてから少なくとも4週間後に行った確証的調査を有する。全客観的奏効を再検討し、確認する。
【0190】
奏効の定義
奏効および進行を、前述の新規の免疫関連奏効基準を使用して本研究で評価する。注釈:病変を、以下の6.2.2節で概要を述べた疾患パラメータの基準を使用して、測定可能または測定不能のいずれかに分類する。測定可能性はさらなる意味や正確性を提供する用語ではないので、測定可能性に関する言及には用語「評価可能な」を使用する。
【0191】
疾患パラメータ
測定不能な疾患:測定可能病変を、少なくとも1つの寸法(記録すべき最長径)で正確に測定することができる病変(胸部X線による20mm以上、CTスキャンで10mm以上、またはカリパスで10mm以上(測定可能な、臨床的に可視的な皮膚病変についての臨床検査による))と定義する。全ての腫瘍測定値を、ミリメートル(またはセンチメートルで表した小数)で記録する。以前に照射した領域に存在する腫瘍病変は、進行が実証されない限り、測定可能病変と見なさない。
【0192】
悪性リンパ節:病理学的に拡大され、且つ測定可能であると見なされるためには、CTスキャンによって査定した場合にリンパ節の短軸が15mm以上でなければならない(CTスキャン用切片の厚みは、5mmほどでしかないことが推奨される)。ベースラインおよび追跡において、短軸のみを測定し、追跡する。
【0193】
測定不能疾患:全ての他の病変(または罹患部位)(小病変(最長径10mm未満または短軸が10mm以上から15mm未満の病的リンパ節)が含まれる)を測定不能疾患と見なす。骨病変、軟膜疾患、腹水、胸膜/心膜浸出液、真皮側リンパ管炎/肺炎、乳房の炎症性疾患、および腹部腫瘤(CTまたはMRIによって追跡されない)を、測定不能と見なす。定義によって嚢胞性病変は単純性嚢胞であるので、X線検査で定義された単純性嚢胞の基準を満たす嚢胞性病変を、悪性病変(測定可能でも不能でもない)と見なす。嚢胞性病変が上記の測定可能性の定義を満たす場合、嚢胞転移を示すと考えられる「嚢胞性病変」を、測定可能病変と見なすことができる。しかし、同一患者内に非嚢胞性病変が存在する場合、非嚢胞性病変を標的病変として選択することが好ましい。
【0194】
標的病変:器官あたり最大で2病変までおよび全部で5病変の全ての測定可能病変(全関連器官の代表)を標的病変と定義し、ベースラインで記録および測定する。標的病変を、そのサイズ(最長径を有する病変)に基づいて選択し、標的病変は全関連器官の代表であるが、さらに、再現性のある反復測定に役立つ病変である。最大の病変自体が再現可能な測定に役立たない状況では、再現性よく測定することができる次に大きな病変を選択すべきであることは時折事実かもしれない。全標的病変についての直径(非リンパ節病変については最長径、リンパ節病変については短軸)の合計を計算し、ベースライン合計直径として報告する。リンパ節を合計に含める場合、短軸のみを合計に加える。ベースライン合計直径を参考として使用して、測定可能疾患の寸法で任意の客観的腫瘍退縮をさらに特徴づける。
【0195】
非標的病変:全ての他の病変(または罹患部位)(5つの標的病変に加えて任意の測定可能病変を含む)を非標的病変と定義し、ベースラインで記録する。これらの病変の測定値は必要ないが、それぞれの病変のその存在、非存在、または稀な明確な進行を、追跡調査を通して記述する。
【0196】
測定可能疾患の評価方法
定規またはカリパスを使用して全て採寸し、計量記号で記録する。可能な限り処置開始時に近い時点および処置開始前の4週間を決して超えない時点で、全てのベースライン評価を行う。同一の査定方法および同一の技術を使用して、ベースラインおよび追跡中にそれぞれの同定および報告された病変を特徴づける。追跡している病変を画像化できないが、臨床検査による査定は可能であるという場合を除いて、画像化ベースの評価が臨床検査による評価より好ましい。
従来のCT:このガイドラインは、CT切片の厚さが5mmまたはそれ未満であるという仮定に基づいたCTスキャンでの病変の測定可能性を定義している。CTスキャンが5mmを超える切片の厚さを有する場合、測定可能病変の最小サイズは、切片の厚さの2倍であるべきである。
臨床病変:臨床的に可視的な皮膚病変を、測定可能疾患の評価のために利用する。
胸部X線:胸部X線を、測定可能疾患の評価のために利用しない。
超音波:超音波を測定方法として利用しない。
【0197】
奏効基準
奏効を、免疫関連奏効基準(irRC)に基づいて決定する。irRCは、以下で概要を述べるように、WHO基準を修正している。irRCにしたがった全奏効は、以下の時点奏効査定(全身腫瘍組織量に基づく)に由来する:
irCR:実証第1日目から4週間もの反復した連続査定によって確認した全病変の完全な消失(測定可能であるかどうかと無関係、且つ新規の病変なし)。
irPR:最初の実証から少なくとも4週間後の連続査定によって確認されたベースランと比較した50%以上の全身腫瘍組織量の減少。
irSD:irPDの非存在下でirCRまたはirPRの基準を満たさないこと。
irPD:実証第1日目から4週間もの反復した連続査定によって確認した最低点(記録された最小全身腫瘍組織量)と比較した25%以上の全身腫瘍組織量の増加。
【0198】
8、16、および24週目の再病期分類における最低点と比較して全身腫瘍組織量が25%以上増加したirPDを有する臨床的に安定な患者は、前臨床動物研究におけるAdHER2ECTM DCワクチン接種に関連する固有の奏効プロフィール(最初に腫瘍が成長し、その後に後退する)のために、研究への残留が許容される。36週目またはそれ以降の再病期分類においてirPD基準を満たす患者を、進行性疾患の研究から除去する。
【0199】
最良総合効果の評価
最良総合効果は、処置開始から疾患の進行/再発まで記録した最良の奏効である(進行性疾患の参考として処置開始から記録した最小の測定値を採用する)。患者の最良奏効の割り当ては、測定および確認基準の両方の達成に依存する。この研究の目的のために、最良総合効果をirRCにしたがって定義する。
【0200】
確認測定/奏効期間
確認:irPRまたはirCRの状態を割り当てるために、奏効基準を最初に満たしてから4週間行った反復査定によって腫瘍測定値の変化を確認する。irSDの場合、irSD基準を再度満たすことを確認するための追跡測定のために反復査定を4週間後に行う。進行性疾患(irPD)を、少なくとも4週間後の第2の観察によって確認しなければならない。
【0201】
全奏効期間:全奏効期間を、測定基準がirCRまたはirPRを満たした時間(どちらかが最初に記録された時間)からirPDが客観的に実証された最初の日まで測定する。全irCR期間を、測定基準がirCRを最初に満たした時間から再発性疾患が客観的に実証された最初の日まで測定する。再発性疾患または進行性疾患の発症後にirCR、irPR、およびirSDを有する患者の増殖抑制期間(TTP)も記録する。
【0202】
安定病態期間:安定病態(irSD)を、処置開始から進行についてのirPD基準を満たすまで測定する。
【0203】
無憎悪生存期間および全生存期間
無憎悪生存期間(PFS)を、一次化学療法を完了している測定可能疾患を持たないアジュバント膀胱癌患者および転移性膀胱癌患者のみで査定する。全生存期間(OS)は、この臨床調査の一部として査定しない。
【0204】
奏効の再検討
奏効を再検討する。自家AdHER2ECTM DCワクチン接種の予備抗腫瘍活性の査定は、この第I相、2パート用量漸増研究の二次目的でしかないので、奏効は、研究から独立している専門家によって再検討されない。
【0205】
薬学情報
AD5F35HER2ECTM(ADHER2)
生成物名:Ad5f35HER2ECTM
ベクターの誘導
Ad5f35HER2ECTMベクターを、cGMP条件下で産生した。Ad35のノブおよびファイバーを置換して組換えAd5f35ベクターを得る。このベクターは、ウイルス親和性がより高く、ヒト樹状細胞(DC)への導入効率がより高い。
【0206】
ベクター製造の概要
ベクターを、cGMP条件下で製造した。アデノウイルスベクターを、2ラウンドのプラーク単離によって最初に精製し、その後にヒト胚腎臓細胞(HEK−293)上で連続的に増殖させた。最終増殖アデノウイルスベクターを、二重塩化セシウム勾配を使用した超遠心分離によって精製した。残存塩化セシウムを、処方緩衝液に対するベクター含有溶液の透析によって除去した。
【0207】
Ad5f35HER2ECTMの初期マスターウイルスバンクを生成し(VM1003)、2ラウンドのプラーク精製に供して最終的に精製マスターウイルスバンクバルクベクター(VMB1003)を生成し、その後にこのVMB1003を使用して、第1のベクターの臨床クロットを産生し、次いで、臨床で使用するためにバイアルに入れて保存した。Adf535HER2ECTM臨床用生成物は、ラベリングしたVMC1003であり、1〜10
12ウイルス粒子/mlおよび0.2ml/バイアルを含む。Ad5f35HER2ECTMベクターのマップを
図2に示し、ベクターのヌクレオチド配列を、本明細書中で配列番号1として記載する。
【0208】
毒性
Ad5f35HER2ECTMベクターの毒性は知られていない。このベクターは、形質導入/形質転換するために使用される宿主細胞のゲノムDNAに取り込まれない複製能力のないベクターである。樹状細胞を形質導入すると細胞生存率がいくらか低下する。この細胞生存率の低下は、前臨床研究に基づくとドナー依存性が高い。したがって、この研究において、提案される通常のドナーが使用する形質導入過程が特徴づけられる。
【0209】
実施例4:AB同種血漿の使用
AB同種血漿を、血液型ABの健康な通常のボランティアドナーから得た。この血漿を試験し、感染性病原体(A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、およびヒト免疫不全ウイルス(HIV)など)に対して陰性であることを確認した。AB同種血漿を熱失活させ(HI AB)、この血漿を、治療樹状細胞(DC)ワクチンの生成過程における自家血漿(患者由来の血漿)使用に代わる手段として使用して、単球を成熟樹状細胞に培養する。解凍した単球を、90%RPMI−1640、10%自家HI血漿またはHI AB同種血漿、2000IU/ml IL−4、2000IUmL rGM−CSF、および10mcg/mLゲンタマイシン(初期培養用)を含む培地中に再懸濁した。
【0210】
第I相臨床試験におけるAdHER2ECTM(AdHER2)樹状細胞ワクチンプラットフォームを調査する過程において(上記実施例を参照のこと)、自家血漿の使用に関連する最終樹状細胞ワクチン生成物におけるHER2の形質導入効率の不十分さおよび低発現(それぞれ、CD340%およびCD340 MFIで示される)を熱失活AB同種(無関係)血漿の使用によって改善および克服することができると判断された。全ての被験体が自家血漿の使用による不十分なHER2/CD340発現を示すわけではなく、不十分な発現の程度は、影響を受ける患者によって変動する。
【0211】
最終AdHER2 DCワクチン生成物における不十分なHER2/CD340の形質導入および発現の克服に加えて、HI AB血漿はまた、ADHER2 DCワクチンが皮内に送達された場合に先天免疫を誘発し、このワクチンに対する免疫応答の発生および強度を増強する能力を有する外来の「危険信号」をワクチンプラットフォーム中に提供する。
【0212】
現時点で第1相試験に登録している全ての患者についてのAdHER2 DCワクチン最終生成物のまとめを提供している
図7に述べるように、AB同種血漿の使用により、一般に、試験した全ての患者においてHER2/CD340の形質導入および発現がより高くなった(しばしば、劇的により高くなった)。
【0213】
同時刺激危険物質の送達に加えて最終DCワクチン生成物におけるHER2発現を最大にすることにより、ワクチンの治療効果が増強される。
【0214】
実施例5:第I相臨床研究の結果
本明細書中に開示の2パート第I相研究(NCT01730118)のパートIにおいて、HER2標的療法に対して未処置のHER2+転移固形腫瘍を有する被験体に、5用量までのAdHER2ECTM DCワクチンを0、4、8、16、および24週目に投与した。用量あたりDCで形質導入した5、10、または20×10
6生存AdHER2ECTMを利用して、3コホートの6または7人の患者に用量漸増を行った。コホート1〜3は、用量制限や心毒性を生じずに完了した。40×10
6生存DC/ワクチンへさらに用量漸増させた拡大コホート(N=12)の登録を開始した。2人の膀胱癌患者を登録し、10人を超える処置済み患者において12週間の安全性が実証された後に、アジュバント療法において2000万個のDC用量でワクチン接種を受けさせた。免疫関連奏効基準(irRC)を使用して奏効を査定した。
【0215】
年齢の中央値60歳(36〜72歳の範囲)および事前処置レジメン数の中央値が3の全部で21人の患者(結腸癌患者7人、卵巣癌患者5人、膀胱癌患者3人、および他の癌患者6人)に、2つまたはそれを超えるワクチン用量(中央値4用量、2〜5用量の範囲)を投与した。被験体は、以下のHER2 IHCを有する14人の女性被験体および7人の男性被験体を含んでいた:1+(N=6)、2+(N=8)、または3+(N=7)。コホート1、2、および3において、6人中0人、6人中2人、および6人中4人の被験体に、全部で5回の計画されたワクチンをそれぞれ投与した。
【0216】
患者の奏効は、臨床上の利点および抗腫瘍活性の証拠を示しており、
図8Aにまとめている。パートIの各コホートで以下の奏効が認められた:
コホート1(5×10
6:臨床的奏効なし。
コホート2(10×10
6):胃食道癌患者において1つの部分奏効(PR)(−71%が44週間持続);および2人の結腸癌患者において24週間および28週間持続する安定病態(SD)。
コホート3(20×10
6):卵巣癌患者において1つの完全奏効(CR)(52週間で進行)、および卵巣癌患者においてirRCによる1つのSD(36週間で進行)。
拡大コホート(40×10
6):1人の前立腺癌患者において12週目で臨床的奏効なし;1人の子宮頸癌患者において18週目で臨床的奏効なし(評価進行中)。
【0217】
用量コホート2および3では、11人の転移患者のうちの5人が、病勢コントロール率43%となるCR、PR、またはSDを有していた。全HER2発現範囲の被験体において奏効が認められた。2人のアジュバント膀胱癌患者は、64週目および76週目で疾患が認められないままであった。
【0218】
有害事象は、注射部位反応に制限され(全てG2未満)、心エコー図によるLVEFの連続モニタリングおよび血清トロポニンTレベルを使用した心安全性シグナルは検出されなかった。循環腫瘍細胞(CTC)の減少は、12週目に試験した16人の患者中6人(38%)で認められ、5人の患者中3人が疾患を制御されていた。これらのデータは、AdHER2ECTM DCワクチンが安全で十分な忍容性があり、抗腫瘍活性(循環腫瘍細胞の減少が含まれる)に関連することを示している。
【0219】
パートIIの被験体は、多剤HER2標的療法に失敗していたHER2発現レベルが3+の乳癌患者である。コホート1(患者数5)に、20×10
6生存DC/用量を投与した。5人の患者のうち3人(60%)が、irSDの基準を満たし;他の2人の患者がirPDを有するが、臨床的に安定している。これらの結果を
図8Bにまとめている。
【0220】
まとめると、これらの結果は、AdHER2ECTM DCワクチンが、中央値3回の事前の化学療法レジメンに失敗しているHER2+進行性転移性固形腫瘍患者のうちの46%〜60%で臨床上の利点を有することを証明している。このレベルの臨床上の利点は、第I相研究において予想外に高い。奏効期間が制限された奏効率20〜25%またはそれ未満が、第I相用量漸増研究において、特に、重度の処置を経験した転移性疾患負荷の高い集団で典型的に認められる。
【0221】
実施例6:転移性HER2
+固形腫瘍患者におけるAdHER2ECTM樹状細胞ワクチン接種前および後の、循環腫瘍細胞(CTC)の全生存期間との関連
CTCレベルは、転移性乳癌(Cristofanilliら,N Engl J Med 351:781−791,2004)および前立腺癌(Scherら,J Clin Oncol 33:1−9,2015)における全生存期間(OS)に関連している。本実施例は、AdHER2ECTM自家DCワクチンを投与した被験体におけるCTCとOSとの間の関連について記載する。本研究の被験体は、1〜3+のHER2発現を有する進行性転移性腫瘍を有する成人であった。
【0222】
方法
非盲検、非ランダム化、2パート第I相研究(NCT01730118)において、HER2標的療法に対して未処置の18人の(女性11人、男性7人、年齢の中央値57歳)HER2+固形腫瘍(8人が結腸癌、10人が他の癌;IHC 1+ N=3、2+ N=8、3+ N=7)を有する被験体に関するCTCデータが利用可能であった;16人に、少なくとも2用量の自家AdHER2 DCワクチンを0、4、8、16、および24週目に投与した。5×10
6、10×10
6、および20×10
6生存DC/ワクチンを利用して患者6人のコホートで用量漸増を行った。10ml血液由来の上皮細胞接着分子(EpCAM)+、CD45−CTC、が、事前の磁性富化とフローサイトメトリー分析の組み合わせによって検出された。CTCを、HER2の発現および骨髄ホーミング分子CXCR4についてさらに特徴付けた。
【0223】
結果
分析に利用可能な検体を有する進行性HER2+転移性腫瘍の18人の患者のうち、17人(94%)が、EpCAM+CTCを検出可能であった。HER2 IHC2+または3+発現を有する被験体(N=15)において、10mlの末梢血あたり11またはそれを超えるHER2+EpCAM+CTCを有する被験体の全生存期間はより短かった(P=0.029)(
図9A)。非結腸直腸(CRC)癌被験体(N=11)において、10mlの血液あたり11またはそれを超えるHER2+EpCAM+CTCまたはCXCR4+EpCAM+CTCを有する患者の全生存期間はより短かった(それぞれ、P=0.0046およびP=0.0067)(それぞれ、
図9Bおよび9C)。この同一の非CRCコホートでは、HER2+EpCAM+CTC数は、3用量のAdHER2 DCワクチンを投与した6人の患者において研究12週目で減少に向かう傾向が示された(P=0.063)。処置後にHER2+EpCAM+CTCが安定しているか減少している患者(N=9)はまた、OSがより良好に向かう傾向があった(P=0.058)(
図9D)。
【0224】
これらの結果は、この進行性HER2+転移性固形腫瘍の患者集団において、ベースラインで11を超えるHER2+EpCAM+CTCがHER2 IHC2+/3+腫瘍患者または非CRC腫瘍患者におけるより不良なOSと関連することを証明している。AdHER2ワクチン接種後のHER2+EpCAM+CTCの安定または減少は、生存期間が延長する傾向と関連する。
【0225】
開示の発明の原理を適用することができる実施形態が多数存在する可能性を考慮して、例示の実施形態は本発明の好ましい例であることのみを目的とし、本発明の範囲を制限すると解釈されないと認識すべきである。むしろ、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定義される。したがって、本発明者らは、本発明の全てがこれらの特許請求の範囲の範囲および意図に帰属すると主張する。