特表2018-532816(P2018-532816A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2018-532816酸化グラフェンのin situ還元によってポリマー/還元型酸化グラフェンナノ複合材料を生成するための方法およびシステム
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  • 特表2018532816-酸化グラフェンのin  situ還元によってポリマー/還元型酸化グラフェンナノ複合材料を生成するための方法およびシステム 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-532816(P2018-532816A)
(43)【公表日】2018年11月8日
(54)【発明の名称】酸化グラフェンのin situ還元によってポリマー/還元型酸化グラフェンナノ複合材料を生成するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20181012BHJP
   C01B 32/198 20170101ALI20181012BHJP
   C08K 3/20 20060101ALI20181012BHJP
   B01J 3/04 20060101ALN20181012BHJP
【FI】
   C08L101/00
   C01B32/198
   C08K3/20
   B01J3/04 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-503803(P2018-503803)
(86)(22)【出願日】2016年7月26日
(85)【翻訳文提出日】2018年3月23日
(86)【国際出願番号】EP2016067847
(87)【国際公開番号】WO2017017117
(87)【国際公開日】20170202
(31)【優先権主張番号】1557277
(32)【優先日】2015年7月29日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】505351201
【氏名又は名称】セントレ ナシオナル デ ラ ルシェルシェ シエンティフィーク
(74)【代理人】
【識別番号】100116872
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 和子
(72)【発明者】
【氏名】ポーリン フィリッペ
(72)【発明者】
【氏名】パドマジャン サシカラ スチスラ
(72)【発明者】
【氏名】エーモニエ シリル
【テーマコード(参考)】
4G146
4J002
【Fターム(参考)】
4G146AA01
4G146AA15
4G146AB07
4G146AC20B
4G146AD17
4G146AD22
4G146AD23
4G146BA01
4G146BA13
4G146BA38
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4G146BB07
4G146BC02
4G146BC18
4G146BC19
4G146BC23
4G146BC25
4G146BC26
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4G146BC32A
4G146BC32B
4G146BC38A
4G146BC38B
4G146DA01
4G146DA11
4G146DA40
4G146DA50
4J002AA001
4J002BE021
4J002CH021
4J002DA026
4J002DE016
4J002FD116
4J002GH00
4J002GK01
4J002GQ00
4J002GQ02
(57)【要約】
少なくとも1つの酸化グラフェンと、少なくとも1つのポリマーからなるマトリクスとからなる成分を還元するための方法および装置であって、前記方法は、少なくとも以下の工程:a)ポリマーと酸化グラフェンGOの混合物を、所与の期間、超臨界または亜臨界条件下に流体を配置するのに適した温度T値および圧力P値にさらされるリアクタ(10)内に導入する工程であって、温度Tはポリマーを分解しないのに適している、工程と、b)リアクタ(10)を冷却し、ポリマーおよび還元型酸化グラフェンrGOからなる、得られた生成物Rを回収する工程とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのポリマーマトリクスを含む複合材料成分内の少なくとも1つの酸化グラフェンを還元する方法であって、少なくとも以下の工程:
a)少なくとも1つのポリマーおよび酸化グラフェンGOからなる複合材料を、所与の期間、超臨界または亜臨界条件下に流体を配置するのに適した温度T値および圧力P値にさらされるリアクタ(10)内に導入する工程であって、前記温度Tは前記ポリマーを分解しないのに適している、工程と、
b)前記リアクタ(10)を冷却し、少なくとも1つのポリマーマトリクスおよび還元型酸化グラフェンrGOからなる、得られた生成物Rを回収する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
二酸化炭素が超臨界流体または亜臨界流体として使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
二酸化炭素および水素の混合物が、超臨界流体または亜臨界流体として使用される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
単独で得られたまたは混合された窒素が、超臨界流体または亜臨界流体として使用される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記温度値が間隔[100〜180℃]の範囲内であり、選択された圧力値が間隔[20〜25MPa]の範囲内である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記成分がrGO−PVA複合材料である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記成分がrGO−PEG複合材料である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法の工程を実施することによる、少なくとも1つの酸化グラフェンと、少なくとも1つのポリマーからなるマトリクスとからなる成分の還元によって得られる生成物。
【請求項9】
少なくとも1つのポリマーおよび酸化グラフェンからなる複合材料成分を還元するための装置であって、少なくとも以下の要素:
・ 流体用の注入口(12)、流出口(13)および加熱領域(11)を少なくとも備えるリアクタ(10)と、
・ 臨界点に到達する能力について選択される1つ以上の流体を含有する1つ以上の容器(29、31)であって、前記流体は、前記リアクタにつながるパイプ(22)および調節バルブ(23)によって前記リアクタ内に導入される、容器(29、31)と、
・ 請求項1〜7のいずれか一項に記載の成分内の酸化グラフェンの還元の工程を実施するために前記流体および前記成分を含有する前記リアクタを加熱し、加圧するためのデバイスと、
・ 前記リアクタの作動条件を制御するのに適した圧力Pおよび温度Tセンサ(40)と
を備える、装置。
【請求項10】
前記リアクタの圧力および温度の増加を制御するための制御器を備える、請求項9に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、超臨界および亜臨界条件下で流体を使用することによる、酸化グラフェンのin situ還元によってポリマー/還元型酸化グラフェンナノ複合材料を調製することを可能にする方法およびシステムに関する。本発明は、概して、特に電気伝導性の良好な特性を示す材料を得るためにポリマー成分に存在する酸化グラフェンのin situ還元を目的とする。
【背景技術】
【0002】
グラフェンはポリマーマトリクスに組み込むことが難しい材料である。一般にこの困難性を克服するために利用される1つの手法は単分子層酸化グラフェンを形成するためにグラファイトを酸化することである。グラフェンと対照的に酸化グラフェンGOは、容易に取り扱うことができ、様々な極性溶媒に溶解できる。酸化グラフェンGOのこの迅速な溶解により、繊維、フィルム、導電性インク、電極などの形態のGOナノ複合材料を生成することが可能となる。これらの構造における酸化グラフェンはポリマーマトリクスに分散する。しかしながら、これらの材料は、酸化グラフェンが電気絶縁体であるため、有益な電気特性を示さない。したがって、酸化グラフェンを含有するポリマー複合材料は一般に、高い導電率または誘電率を必要とする用途に使用されない。したがって、導電特性を示す、還元型酸化グラフェン(rGO)を形成するために酸化グラフェンを還元することが望まれる。ナノ複合材料における酸化グラフェンを還元するための公知の方法の1つはナノ複合材料を加熱することである。還元の有効性は処理温度が増加するにつれて増加する。しかしながら、潜在的に適用可能な温度はポリマーマトリクスの起こり得る分解によって制限される。これは、過剰に高い温度が使用される場合、酸化グラフェンは効果的に還元されるが、ポリマーマトリクスは分解するためである。したがって、一般に、良好な電気特性を示す材料を得ることができない適度な温度を選択することが望まれる。その結果、酸化グラフェンの還元は、非常に効果的ではなく、得られる材料の電気および誘電特性はあまり良くなくなる。
【0003】
ポリマーとの複合材料を形成する前に酸化グラフェンの還元を含む「ex situ」還元法を使用することは公知である。酸化グラフェンを還元するための多数の方法が公知である。したがって、ヒドラジンの使用に基づいた化学的方法、電気化学的方法、高温による熱的方法およびまた、超臨界条件下で水を使用するプロセス(超臨界水についてSCW)が存在する。
【0004】
非特許文献1は、酸化グラフェンを安定な還元型酸化グラフェン(rGO)溶液に変換するための水熱脱水法を開示している。
【0005】
化学的方法は、例えば、酸化グラフェンを還元するためにラテックスの粒子およびGOの溶液中に還元剤を利用することである。このような溶液の乾燥により、ポリマー−rGO複合材料を得ることが可能となる。しかしながら、このような方法は還元剤とポリマーとの間の適合性を必要とする。
【0006】
特許文献1は、ポリウレタンラテックスにおける酸化グラフェンの分散から開始し、続いて還元型酸化グラフェンのシートを形成するために化学的還元によってポリマーナノ複合材料を生成するための方法を記載している。この処理は、ポリマー−還元型GO混合物が、ポリマー/rGO複合材料を得るように処理されなければならないので、かなり厄介である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第2678266号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「Hydrothermal Dehydration for the 「Green」 Reduction of Exfoliated Graphene Oxide to Graphene and Demonstration of Tunable Optical Limiting Properties」 Yong Zhouら、Chemistry of Materials、2009、21(13)、2950−2956
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現在、したがって、ポリマーマトリクスとのナノ複合材料における酸化グラフェンのin situ還元のための効率的な方法を利用可能にする必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
説明の続きにおいて以下の定義が使用される:
超臨界領域は、
流体が純粋な物質である場合、流体の臨界圧および臨界温度より大きい圧力および温度によって、
または、2つ以上の構成物質の組成物の集まりの混合物に関して、前記混合物の臨界点の圧力および温度より大きい圧力および温度によって
特徴付けられる。
【0011】
亜臨界状態は、
流体が純粋な物質である場合、流体の臨界圧より大きい圧力および臨界温度より低い温度によって、
または、2つ以上の構成物質の組成物の集まりの混合物に関して、混合物の臨界点の圧力より大きい圧力および前記混合物の臨界点の温度より低い温度によって
特徴付けられる。
【0012】
本発明による方法は、酸化グラフェンのin situ還元を実施するために超臨界流体または亜臨界流体の前記条件下で適度な温度で操作する新規手段に基づく。
【0013】
本発明は、少なくとも1つのポリマーマトリクスを含む複合材料成分内の少なくとも1つの酸化グラフェンを還元する方法であって、少なくとも以下の工程:
a)少なくとも1つのポリマーおよび酸化グラフェンGOからなる複合材料を、所与の期間、超臨界または亜臨界条件下に流体を配置するのに適した温度T値および圧力P値にさらされるリアクタ内に導入する工程であって、前記温度Tはポリマーを分解しないのに適している、工程と、
b)前記リアクタを冷却し、少なくとも1つのポリマーマトリクスおよび還元型酸化グラフェンrGOからなる、得られた生成物Rを回収する工程と
を含む、方法に関する。
【0014】
代替の実施形態によれば、二酸化炭素が超臨界流体または亜臨界流体として使用される。
【0015】
別の代替の形態によれば、二酸化炭素および水素の混合物が超臨界流体または亜臨界流体として使用される。
【0016】
超臨界流体または亜臨界流体として単独で得られたまたは混合された窒素を使用することも可能である。
【0017】
本発明の実施のために使用される温度値は、例えば、間隔[100〜180℃]の範囲内であり、選択された圧力値は間隔[20〜25MPa]の範囲内である。
【0018】
成分は、例えば、rGO−PVA複合材料またはrGO−PEG複合材料である。
【0019】
本発明はまた、本発明による方法の工程を実施することによる、少なくとも1つの酸化グラフェンと、ポリマーマトリクスとからなる成分の還元によって得られる生成物を目的とする。
【0020】
本発明はまた、ポリマーおよび酸化グラフェンからなる複合材料成分を還元するための装置であって、少なくとも以下の要素:
・ 流体用の注入口、流出口および加熱領域を少なくとも備えるリアクタと、
・ 臨界点に到達する能力について選択される1つ以上の流体を含有する1つ以上の容器であって、前記流体は、前記リアクタにつながるパイプおよび調節バルブによって前記リアクタ内に導入される、容器と、
・ 成分内の酸化グラフェンGOを還元するための本発明による方法の工程を実施するために流体および成分を含有するリアクタを加熱し、加圧するためのデバイスと、
・ リアクタの作動条件を制御するのに適した圧力Pおよび温度Tセンサと
を備える、装置に関する。
【0021】
装置は、リアクタの圧力および温度の増加を制御するための制御器を備えてもよい。
【0022】
本発明の他の特徴および利点は、本発明による方法を実施するための装置の図を表す図面によって補足される、例示として与えられ、決して限定するものではない実施例に従う説明を読むことでより明らかになる。
【0023】
本発明による方法を例示するために与えられる例において、従来技術の公知の方法に従って異なる手段で調製され得る酸化グラフェンを含むポリマーナノ複合材料が考慮される。方法の例は限定するものではなく与えられる。
【0024】
一般的な方法は、最初に、容易に変換され得る酸化グラフェンGOとのポリマーナノ複合材料を調製することである。酸化グラフェンは、例えば、当業者に公知のHummers法を使用することによって得られる。第1の工程において、グラファイトが、酸化グラファイトを生成するために酸化され、続いてそれは溶媒を使用して剥離される。この剥離の結果、酸化グラフェンとして知られている単分子層シートが形成する。その後、酸化グラフェンは、「融解」配合のためにポリマーの融点を超える温度条件下でポリマーと混合される。酸化グラフェンおよびポリマーが可溶性である共通の溶媒中で、または酸化グラフェンGOが可溶性であり、ポリマーがラテックス粒子の形態で提供される溶媒中でそれを混合することも可能である。第1の方法に関して、混合物を冷却し、最後の2つの方法に関して、懸濁液を凝固または乾燥させることによって最終的なナノ複合材料が得られる。凝固はフィルムまたはバルク材料の代わりにナノ複合繊維を生成するために実施され得る。このように得られたナノ複合材料における酸化グラフェンGOの量は、第1の方法を使用して0重量%〜20重量%で変化させてもよく、他の2つの方法を使用して0重量%〜100重量%で変化させてもよい。このように得られたナノ複合材料は、必要な場合、融解紡糸、溶融押出、ブロー成型、3D印刷などの所与の用途のために処理されてもよい。
【0025】
このように得られた材料は、フィルム、3D物品、コーティング、繊維などの形態で提供される。本発明による工程を実施することによって超臨界流体または「亜臨界」流体の支援を受けて温度Tおよび圧力P条件下でin situ還元されるこれらの材料は以下に詳細に記載され、これは設定した処理時間で行われる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】酸化グラフェンを含むポリマーナノ複合材料のin situ還元を実施することを可能にする装置の例を表す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
この例において、装置1は加熱および加圧領域11を含むリアクタ10を備え、そのリアクタにおいて、還元されるポリマー−GO(酸化グラフェン)生成物2が配置され;リアクタは、酸化グラフェンを還元するために使用される流体の導入を可能にする注入口12および得られた生成物Rの排出を可能にする流出口13を有する。デバイス14はリアクタの加熱領域の加熱を可能にする。
【0028】
注入口12は流体の通路を制御または調製するためのバルブ23を備えるパイプ22に接続され;この例において、パイプ22は3つのパイプ24、25、26に分けられる。
【0029】
第1のパイプ24は流体の通路を制御するための第1のバルブ27および高圧ポンプ28を備え、それは第1の流体、例えば二酸化炭素COを含有する容器29に接続される。
【0030】
流体の通路を制御するための第2のバルブ30を備える第2のパイプ25は、例えば、リアクタにおいて目標とされる圧力Prより高い圧力Pgに加圧される、二酸化炭素および水素の混合物、CO+Hを含有する第2の容器31に接続される。
【0031】
第3のバルブ32を備える第3のパイプ26は、流体、例えば加圧窒素Nを含む第3の容器33に接続される。
【0032】
CO/HおよびNに関して、例えば、リアクタを加圧するためにこれらの元素を含有するボトルの圧力が使用される。流体の全ては圧力下にある。
【0033】
流出口13は、例えば容器36に保存される反応ガスの通路を制御するためのバルブ35を備えた排出パイプ34に接続される。
【0034】
リアクタは温度Tおよび圧力Pを測定するためのセンサ40を備える。圧力測定および温度測定のための別のセンサを使用することも可能である。本発明による装置はまた、
処理継続時間を制御するためのクロックならびに/または開始材料(ポリマー+GO)の性質に応じて流体の導入、それらの量、それらの性質をプログラムすることを可能にする制御器ならびに反応後に得られた生成物の導入および排出のためのバルブに接続されてもよい。
【0035】
方法の実施に関して、温度範囲[Tmin、Tmax]および圧力間隔[Pmin、Pmax]およびまた、処理時間Dが規定される。
【0036】
最小作動温度Tminは、酸化グラフェンの還元のための動態が有意である値として規定される。最大温度Tmaxは、例えば、ポリマーが分解し始める温度と規定される。
【0037】
リアクタ内の圧力P値は、反応のために使用される流体または流体の混合物の臨界点を上回るように選択される。流体を超臨界状態または亜臨界状態に変化させ、その後、流体をリアクタ内に導入することも可能である。
【0038】
処理時間は、例えば、10分から24時間の間、好ましくは30分から3時間の間で変化させてもよい。処理時間は、特に成分の性質に応じて選択される。
【0039】
in situ還元反応に使用される流体は、二酸化炭素(CO、Tc.31.0℃、Pc.7.38MPa)、アンモニア(Tc.133.0℃、Pc.11.4MPa)または超臨界相のためのパラメーターTおよびPの値がガスの性質に依存する窒素N、アルゴンArまたは水素Hなどのガスを有する亜臨界もしくは超臨界条件下の他の流体混合物であってもよい。例えば、二酸化炭素COの臨界点は、Tc.31.0℃、Pc.7.38MPaにて得られ、アンモニアの臨界点は、Tc.133.0℃、Pc.11.4MPaにて得られる。
【0040】
図1に記載される装置に利用される方法は、例えば、以下に詳細に記載される工程を含む。
【0041】
GO−ポリビニルアルコール(PVA)フィルムは、酸化グラフェンを、1mlの水当たり4mgの濃度で水懸濁液中に分散させることによって事前に調製される。所望の重量パーセントを有する一連のGO−PVA複合材料(PVAに対して0.5〜20wt%のGO)が利用可能であり、その複合材料は酸化グラフェンおよびPVAポリマーを水溶液中で混合することによって得られる。その後、混合物は、均質な分散系を得るために少なくとも5時間、ゆっくりおよび均質に「撹拌される」。このように得られたGO−PVA溶液はレセプタクルに注がれ、GO−PVAフィルムを得るために50℃の温度にて48時間乾燥工程に供される。GO−PVAフィルムは図1のリアクタに配置され、そのリアクタにおいて、超臨界または亜臨界状態にもたらされ得る流体が導入され、リアクタは、流体が超臨界状態で存在するが、ポリマーを分解しないように選択される圧力および温度にさらされる。例えば、流体が空気、窒素N、二酸化炭素CO、CO+N混合物、CO+水素H混合物、またはアンモニアである場合、1時間の間、リアクタの温度は100℃から180℃の間の値および間隔[200〜250bar]内の圧力にもたらされる。反応は、リアクタを水/氷浴に配置し、リアクタの流出バルブを開口することによって停止され、それにより、得られた生成物を回収することが可能となる。
【0042】
GO−PVAフィルムの代わりに、方法を、20重量%の酸化グラフェンを含むGO−PEG(ポリエチレングリコール)フィルムに適用することが可能である。フィルムはリアクタ内に導入され、3時間、150℃のオーダーの温度および20〜25MPaの圧力にて超臨界流体の存在下で還元される。超臨界流体は、例えば、上記に示したように二酸化炭素または窒素である。
【0043】
充填含有量は0.001から99wt%であってもよい。
【0044】
上記に設定される方法の工程はまた、亜臨界状態への変化を可能にする特性を示す流体が使用される場合にも適用される。
【0045】
GO−PVAおよびGO−PEGフィルムについての導電率に対する本発明による処理の効果を表す例を合わせて表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
GO−PVAフィルムは、以下の割合、重量で10:100および20:100のGOおよびPVAから構成される。これらのフィルムのin situ還元のための方法の処理効果を、150℃/200℃の温度にて空気/N/CO/CO+N/CO+Hの存在下、およびCO/CO+N/CO+Hの場合、20MPaのオーダーの圧力下の異なる超臨界および熱条件下で測定する。比較を行うために、フィルムをまた、超臨界流体を使用せずに従来の熱処理によって還元した。これらのフィルムの電気抵抗を当業者に公知の2点法(two−point method)によって測定し、電気伝導率を算出した。結果を表1に与える。表1は、超臨界条件下で流体CO/CO+N/CO+Hを使用することによる本発明によるin situ還元についての処理により、従来技術から公知の熱処理と比較して電気伝導率の増加が生じ、マトリクスは損傷していないことを明確に示す。この改善された電気伝導率は、還元型酸化グラフェンrGOを得るためのGOの還元のより効果的な還元を実証する。
【0048】
150℃および25MPaにて、CO+Nによる処理の時間を増加させることによって得られた結果を合わせて表2に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
処理時間の増加は還元有効性に有意な影響を与え(電気伝導率の増加)、rGO−PVAおよびrGO−PEGフィルムについて得られる生成物の導電率の値に対する本発明による処理の効果が示される。
【0051】
従来の熱還元と比較した、GO−PVAおよびGO−PEGフィルムの導電率に対する亜臨界流体による処理の効果を表3に示す。
【0052】
【表3】
【0053】
本発明は特に以下の複合材料部品に適用される:例えば、帯電防止材料のための導電性ナノ複合材料、電磁気消散のための導電性ナノ複合材料、有機エレクトロニクス、フレキシブルエレクトロニクス、導電性インク、導電繊維および織物、アクチュエータおよびエネルギー回収のための電歪ナノ複合材料。さらに、複合材料はrGOと性質が異なる他の強化因子を含んでもよく、それにより複合材料に他の特性を与える。
【0054】
本発明による方法は、超臨界または亜臨界条件下に配置される流体によって部分的に拡張できる特性を示す任意の種類のポリマーまたはポリマー混合物に適用される。したがって、有機熱可塑性または熱硬化性ポリマーを想定することも可能である。
【0055】
いくつかの場合、本発明による方法は、セラミックまたは金属複合材のために使用することもできる。
【0056】
本発明は特に、従来技術の公知の方法より効果的である酸化グラフェンのin situ還元のための方法を提供する。
【0057】
方法は、流体(複数も含む)および亜臨界または超臨界条件の選択により、ポリマーの任意のファミリーを処理することが可能になるという点で柔軟性がある。さらに、方法は、フィルム、繊維および成形部品に好適に適用されるので、複合材料を産生するための方法に対する変更を必要としない。従来の処理と比較して酸化グラフェンの良好な還元が得られ、これは、マトリクス、特にポリマーマトリクスを保持しながら、材料の電気伝導率のかなりの増加によって表される。
【0058】
本発明による方法は環境に優しい。それは化学薬品を使用しない。
図1
【国際調査報告】