(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-532963(P2018-532963A)
(43)【公表日】2018年11月8日
(54)【発明の名称】薄板クリンチ式ファスナー
(51)【国際特許分類】
F16B 17/00 20060101AFI20181012BHJP
B21J 15/00 20060101ALI20181012BHJP
【FI】
F16B17/00 Z
B21J15/00 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-519798(P2018-519798)
(86)(22)【出願日】2016年10月20日
(85)【翻訳文提出日】2018年6月7日
(86)【国際出願番号】US2016057903
(87)【国際公開番号】WO2017070341
(87)【国際公開日】20170427
(31)【優先権主張番号】62/245,079
(32)【優先日】2015年10月22日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA
(71)【出願人】
【識別番号】518030139
【氏名又は名称】ペン エンジニアリング アンド マニュファクチュアリング コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】PENN ENGINEERING & MANUFACTURING CORP.
(74)【代理人】
【識別番号】100079980
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 伸行
(74)【代理人】
【識別番号】100167139
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】マロニー,マイケル,ジェイ.
【テーマコード(参考)】
3J036
【Fターム(参考)】
3J036AA04
3J036BB09
3J036CA04
3J036EA02
3J036EA03
(57)【要約】
【構成】本発明の個装用金属クリンチ式ファスナーは、最上部ヘッドおよび内向きテーパーをもつショルダーを有し、このショルダーはヘッドから軸線方向下向きに延在し、ヘッドの直下に設けられる。ショルダーは、ファスナーを装着した金属パネルの材料を変形させる外向きの角度付き面を有する。ショルダーの下に外向きに広がるシャンクを設ける。このシャンクの上向き外面がパネルの装着穴の縁部に係合する。シャンクとショルダーとの接合部に縮径ネックを設け、これを装着穴の縁部に係合させ、ファスナーをパネルに取り付ける。パネルの円錐形凹部の中心にパネル装着穴を設け、収斂方向に下向きに角度を付け、装着穴の縁部をシャンクの上向き面に係合する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個装用金属ファスナーであって、
前記ファスナーのうちで最も大きな直径を有する最上部ヘッド、
前記ヘッドから軸線方向下向きに延在し、前記ファスナーを装着する金属パネルの材料を変位させる外向きかつ内向きに収斂する角度付き表面を有するショルダー、
前記ショルダーの下に設けられ、前記ショルダーによって変形されたパネル材料の装着穴の縁部に係合する上向きの外面を有する外向きに広がるシャンク、および
前記シャンクと前記ショルダーの接合部に設けられ、前記ファスナーがパネルに取り付けられるように前記パネルの前記装着穴の縁部を受け取る縮径ネックを有することを特徴とする個装用金属ファスナー。
【請求項2】
さらに、第2対象物の装着穴によって前記ファスナーをこの第2対象物に取り付けるために前記シャンクの下に設けられた取り付け手段を有する請求項1に記載のファスナー。
【請求項3】
前記取り付け手段が、前記第2対象物にクリンチ式で取り付けるアンダーカットを有する請求項2に記載のファスナー。
【請求項4】
前記ヘッドが、円筒形外面を有する円形ヘッドである請求項1に記載のファスナー。
【請求項5】
前記ショルダーの前記外面全体が、前記外向きの角度付き表面である請求項1に記載のファスナー。
【請求項6】
前記取り付け手段が、前記ファスナーの底部まで下向きに延在する、収斂方向にテーパーをもつ底部分を有する請求項2に記載のファスナー。
【請求項7】
板金パネルに対するファスナーのアセンブリーであって、
前記ファスナーのうちで最も大きな直径を有する最上部ヘッド、
前記ヘッドから軸線方向下向きに延在し、前記ファスナーを装着する金属パネルの材料を変位させる外向きかつ下向きに収斂する角度付き表面を有するショルダー、
前記ショルダーの直下に設けられ、前記ショルダーによって変形されたパネル材料の装着穴の縁部に係合する上向きの外面を有する外向きに広がるシャンク、および
前記シャンクと前記ショルダーの接合部に設けられる縮径ネックであって、このネック周囲の領域が前記パネルの前記装着穴の縁部を受け取るアンダーカットを構成するネックを有する個装用金属ファスナーを有し、
前記ファスナーが、前記パネルの円錐形凹部の中心に設けられたこのパネルの前記装着穴を貫通して延在し、前記パネルから前記ネックのアンダーカットに流れる金属の冷間流れによって前記ファスナーを前記パネルに取り付け固定し、これによって前記装着穴を縮径したことを特徴とするアセンブリー。
【請求項8】
前記パネルの厚みがほぼ0.008インチである請求項7に記載のアセンブリー。
【請求項9】
さらに、前記シャンクの下に設けられた前記ファスナーによってこのファスナーに取り付けた第2対象物を有する請求項7に記載のアセンブリー。
【請求項10】
前記パネルの前記装着穴周囲の前記円錐形部の縁部が前記ショルダーに当接し、この円錐形部の角度が下向きで、前記穴の前記縁部が前記シャンクの前記上向き面に係合する請求項7に記載のアセンブリー。
【請求項11】
前記ヘッドの上面の高さが前記パネルの上面と同じである請求項7に記載のアセンブリー。
【請求項12】
前記ファスナーをアンビルに押圧されている前記パネルにプレスすることによってのみ前記パネルの前記材料が変形し、前記ファスナーをこのパネルに取り付ける請求項10に記載のアセンブリー。
【請求項13】
前記アンビルが、前記プレス時に前記パネルの前記円錐形部分を形成する円錐形凹部を有する請求項12に記載のアセンブリー。
【請求項14】
ファスナーの装着方向とは反対方向に前記ファスナーに加えられる力が、主に前記パネルのインライン圧縮抵抗によって打ち消される請求項10に記載のアセンブリー。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、2015年10月22日を出願日とし、“薄板クリンチ式ファスナー”を発明の名称とする米国仮特許出願第62/245,079号の非仮特許出願であり、この優先権を主張する出願である。
【技術分野】
【0002】
本発明は、特に薄板金属パネルの装着および使用に有用なクリンチ式ファスナー(clinch fasteners)に関する。
【背景技術】
【0003】
クリンチ式ファスナーは、堅牢なファスナーを板金プレートに永久固定するためによく知られている。クリンチ式ファスナーの場合、一般的に、ヘッド13、変位部14、アンダーカット15およびシャンク19を有し、これらを例えば
図1に示すように、ファスナーのヘッド端部から順次遠位自由端部まで配置する。板金パネル17の開口に挿入し、プレスすると、変位部が変形し、開口を取り囲む金属を例えば
図2に示すように、アンダーカット内に押し込む。変位部とシャンクとの間に形成したアンダーカットの直径は、シャンクの直径よりも小さい。シャンクの長さに応じて、シャンクをパネルの底部を超えて延在させてもよく、あるいは延在させなくてもよい。シャンクの長さについて、装着後に板金の底部側と高さが同じになるように選択した場合、シャンク、変位部およびアンダーカットが事実上パネルの肉厚内に収まる。トルク耐性が必要な場合には、非円形の変位部を使用する。これを一旦パネルに圧入(プレス)すると、回転しなくなる。
【0004】
クリンチ式ファスナーをパネルに永久装着した後は、ファスナーの引き抜き強度はアンダーカット内の金属の厚みによって支配され、力が不足している場合には、金属がせん断力によって切断するか、押し出されることになる。アンダーカット内の金属の厚みが減少すると、ファスナーとパネルとの間の接続力も小さくなる。
【0005】
パネルがきわめて薄くなると、例えば0.008インチの厚みになると、製造方法が機能しなくなる。というのは、クリンチに必要な作用が一定範囲のトレランスを必要とし、このトレランスを満足し、かつその機能を発揮させることは不可能ではないにせよ、きわめて難しいからである。変位部およびアンダーカットを0.008インチの厚みのシート内に収める必要がある場合には、これらの厚みは0.003〜0.004インチに過ぎず、一般に、ファスナーのシャンクが底部(アンビル)側と同じ高さになる構成にはならない。即ち、きわめて薄いパネルに装着できるクリンチ式ファスナーを提供することが望まれている。また、きわめて薄いパネルへの装着時に強い引き抜き強度を示すクリンチ式ファスナーを提供することも望まれている。
【発明の概要】
【0006】
一つの好適な実施態様では、薄板用の個装用クリンチ式ファスナーは全体として最上部のヘッド、内向きテーパーを設けたショルダー、外向きに広がるシャンクおよび縮径ネックを有する。ヘッドは、直径がファスナーの構成部分の中で最大であり、形状が円形であり、外面が円筒形である。内向きテーパーを設けたショルダーは、ヘッドの基部から軸方向下向きに延在する。ショルダーは、外向きかつ下向きに収斂する角度付き面を有し、これによってファスナーを装着する金属パネルの材料を変形させる。外側に広がるシャンクは、ショルダーの直下に設ける。シャンクの外向き外面が、ショルダーによって変形されたパネルの装着穴の縁部に係合する。シャンクの縮径アンダーカット即ちネックについては、シャンクとショルダーとの接合部に設ける。このネックが、ファスナーがパネルに取り付けられ、固定されるように装着穴の縁部を受け取る。一つの実施態様では、ショルダーの外面全体が外向きの角度付き面を有する。シャンクの下に設けた第2アンダーカットが、第2対象物を取り付ける取り付け手段になる。この取り付け手段の場合、収斂テーパーを設けた底部を有することができ、この底部はファスナーの底部まで延在する。
【0007】
本発明のファスナーは、このファスナーを固定する金属パネルとのアセンブリーの形で使用できる。ファスナーは、パネルの円錐形凹部の中心にある装着穴を貫通延在する。装着穴周囲のパネルの凹部がファスナーのショルダーに当接し、下向きに傾斜し、装着穴の縁部がシャンクの上向き面に係合する。
【0008】
組立プロセス中に、パネルがアンビルによって支持されている状態で、単にファスナーをパネルにプレスするだけでパネルからの材料が変形する。アンビルはショルダーの大きさおよび形状に対応する凹部を有する。プレス時に装着穴の直径が小さくなり、圧印部分(coined portion)がファスナーのネック周囲に迫り、装着穴を栓塞する。プレス後、ファスナーヘッドの上部が、パネルの上面と高さが同じパネル凹部内に位置できる。
【0009】
アセンブリーの形態が引き抜き抵抗を担保し、この抵抗は標準的なクリンチ式ファスナーアセンブリーよりもはるかに高い。引き抜き力、即ちファスナーの装着方向とは反対方向にファスナーに加わる力は、パネルのインライン圧縮抵抗力によって打ち消される。このような構造のために、本発明のクリンチ式ファスナーは例えば0.008インチ程度の厚みのきわめて薄いパネルに使用できる。
【0010】
薄いシートのクリンチ式ファスナーは、従来技術に対して以下の作用効果をもつ。本発明のファスナーは、一般に標準的なクリンチ式ファスナーを装着する金属シートよりもきわめて薄い金属シートに装着できる。また、本発明のファスナーは、標準サイズのクリンチ式ファスナーではきわめて困難な、あるいは不可能なきわめて小さなスケールで装着できる。本発明のファスナーを装着すると、金属パネルに円錐形凹部を形成でき、この凹部はファスナーを取り囲み、新しい保持モードを保証するものである。円錐の逆構成が圧縮保持力を発生し、この保持力は従来のクリンチ式ファスナーのアンダーカットが発生するせん断保持力よりも強い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】装着し、板金パネルに締め付けた状態にある従来のクリンチ式ファスナーを示す横断面図である。
【
図2】装着し、板金パネルに締め付けた状態にある従来のクリンチ式ファスナーを示す横断面図である。
【
図3】薄い板金パネルに装着し、締め付ける前の状態にある本発明の好適な実施態様に従って構成したクリンチ式ファスナーを示す横断面図である。
【
図4】薄い板金パネルに締め付けた後の状態を示す、
図3のクリンチ式ファスナーを示す横断面図である。
【
図5】引き抜き強度を示す、
図4のクリンチ式ファスナーを示す横断面図である。
【
図6a】本発明の別な実施態様に従って構成したクリンチ式ファスナーを示す正面図である。
【
図6b】本発明の別な実施態様に従って構成したクリンチ式ファスナーを示す正面図である。
【
図6c】本発明の別な実施態様に従って構成したクリンチ式ファスナーを示す正面図である。
【
図6d】本発明のさらに別な実施態様に従って構成したクリンチ式ファスナーを示す、一部断面を含む正面図である。
【
図6e】本発明のさらに別な実施態様に従って構成したクリンチ式ファスナーを示す、一部断面を含む正面図である。
【
図6f】本発明の別な実施態様に従って構成したクリンチ式ファスナーを示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の好適な実施態様に従って構成したクリンチ式ファスナーは
図3〜
図5に示す通りであり、参照符号30で示す。このクリンチ式ファスナー30は横断面が円形で、全体としてヘッド42、変位部(displacer)31、アンダーカット33およびシャンク35を有し、これらをヘッド端部30aから順次ファスナーの遠位自由端部30bに向けて配置する。以上の構造部分は従来のクリンチ式ファスナーの構造部分と同じ名称をもつが、本発明のファスナーは、従来のクリンチ式ファスナーとは異なる態様をもつ。
【0013】
ヘッド42は、円形の上部平面42aおよび環状リム42bを有し、この上面は中心の長手軸線に直交する。
図3〜
図5に示す好適な実施態様では、ヘッドの底面は中心軸線に対して斜交し、テーパーショルダー(tapered shoulder)31を形成する。このショルダー31の内向きテーパーは、ヘッド端部30から遠位自由端部30bまで延在する。好適な実施態様では、ショルダーのテーパーは線形であり、このショルダーの形状は円錐台形である。なお、テーパーは別な実施例では、非線形であってもよい。
【0014】
ショルダー31の(ヘッドに対する)遠位端部はシャンク35の縮径部、即ちネックを有するアンダーカット33で終端する。以下に記載するように、アンダーカット33は、ファスナー30をパネル37に取り付ける装着時にパネル37からの金属の冷間流れを受け取る。
図3〜
図5に示す実施態様では、このアンダーカット31は凸状湾曲形状を有するが、
図6a〜
図6fに示すような他の好適な実施態様では、アンダーカットは直線状の形状を有することができる。
【0015】
アンダーカット33の(ヘッドに対する)遠位端部は、外向きに広がるシャンク35にスムーズに移行する。このシャンク35は外向きの外面を有し、パネル37がショルダー31によって変形したさい、この外面が装着穴43に近接するパネル37の縁部37aに係合する。シャンク35の直径は、シャンク35の中間点35aにおいて最大になる。この最大直径は、パネル37の装着穴43の直径に最近似する。中間点を超えるシャンクの遠位部分35bは、好適な実施態様に示すように、あるいは
図6a〜
図6fに示す他の実施態様に示すように、各種の構成および形状を取ることができる。
【0016】
本発明の好適な実施態様に従ってファスナー37の装着方法を
図3および
図4に示す。この実施態様の方法は、特に薄い板金パネルにクリンチ作用によって締め付けるために有効な新規装置を有する。この装着装置は平坦なヘッド32aを有するプレス機32、および上面34aから好ましくはファスナー30の少なくとも同程度の長さに相当する深さまで延在する中心ボア44を備えたアンビル34を有する。ボア44aの上部は、円錐形凹部39を形成するファスナーのショルダー31の大きさおよび形状に対応する円錐台形状および大きさを有する。ボア44bの下部は全体として円筒形である。
【0017】
図3を参照して説明すると、まずアンビル34に支持された薄い板金パネル37の装着穴45にファスナー30を装着する。板金パネル37については、装着穴45がアンビルの中心ボア44に対して同心円を構成するように適正に位置合わせする必要がある。この初期段階では、ファスナーは、ショルダー31とパネル37の縁部との間の接触点によって装着穴45に支持されるが、これら接触点については、パネル37およびファスナー30の相対的なサイズに応じて他の接触点も考えられる。
【0018】
図4を参照して説明を続けると、次に、ファスナー30の上面30aがパネル37の上面と同じ高さになるまで、プレス機32がファスナーを下向きに押し出す。この下向き押し出し時に、ファスナー30が変形し、パネル37に締め付けられる。締め付け時に、装着穴43を取り囲むパネルの部分が変形し、円錐台形状になる。締め付け時に変形する装着穴を取り囲むパネルの部分については、“圧印部分36”と呼ぶ。圧印部分36の変形は、ショルダー31がパネル37にぶつかり、押圧してこれを装着穴45の直下で周囲にあるアンビル34の円錐台形状上部44aに接触させるため生じる。ショルダー31によってパネル37に連続的にプレスされるため、圧印部分36の横断面が小さくなり、この過程で金属がパネルから下向きかつ内向きにアンダーカット33に変位する。パネルからの金属が、アンダーカットの形状に対応する形状に冷間成形(cold formed)し、アンダーカット周囲の装着穴45を閉じる。変形時にファスナー周囲に形成した円錐形によってファスナー30がパネル37に固く取り付けられる。
【0019】
新規なファスナー30、プレス機32およびアンビル34は、締め付け時に従来のクリンチ式ファスナー、プレス機およびアンビルとは異なる機能を発揮し、ファスナーとパネルとの間に良好な接続を構成する。例えば、新規なファスナー30、プレス機32およびアンビル34は、締め付け時に少なくとも以下の新規な工程を行う。即ち、(1)挿入穴45を取り囲むパネル37の部分を変形し、円錐形の圧印部分36を形成する工程、(2)冷間流れ変形によって圧印部分を圧縮し、これを薄くして、圧印部分36を加工硬化する工程、および(3)ファスナー30のネックまたはアンダーカット33の周囲の装着穴45を閉じる工程である。なお、
図4に示す締め付け方法の場合、
図2に示す従来方法よりも金属パネルの変形量はかなり少ない。従来のファスナーおよび方法を使用して薄い板金パネルを締め付けた場合、変形は薄い板金をほぼせん断するほど強い。
【0020】
締め付け後、ファスナーのシャンク35の直径は、アンダーカット33の周囲に閉じられた装着穴45の直径より大きい。この結果、ファスナー30が薄いパネル37内に取り込まれる。
図4について説明すると、当業者ならば理解できるように、パネル37のファスナーの保持機構の形態は、
図2に示す従来の保持機構とは異なる。従来のファスナーの引き抜き抵抗は主に引っ張り力によって発生する一方、新規ファスナー30の引き抜き抵抗は主に圧縮力によって発生する。
【0021】
図5は、プレス機を取り外し、パネルを引き抜きブッシュBによって支持した後に
図4のファスナーに加えられる引き抜き力Pに対する反応機構を示す概略図である。引き抜き力は、ファスナーの装着方向の反対方向に作用する。引き抜き力Pについては、パネルの後側においてファスナーの遠位端部に加わる力として図示してあるが、この引き抜き力はパネル上部側においてファスナーのヘッドに加わる引き抜き力であってもよい。力の作用線は、参照符号Pに隣接する破線によって示す。この引き抜き力Pがファスナーを上向きに押圧するが、シャンク35の遠位部分35bの直径が(締め付け時に締め付けられる)装着穴45の直径よりも大きいため、シャンクが圧印部分36の縁部38に押し付けられ、これを上向きに押圧する。これに応じて、圧印部分36が、参照符号Dに隣接する破線によって示す方向にその元の湾曲点を中心にして開き、即ち回転する。この動作が生じると、圧印部分が回転弧により内向きに移動し、アンダーカット33内のファスナー30のネックを締め付ける。引き抜き力Pが強くなるほど、装着穴がファスナーのネックに迫ることが難しくなるため、第1降伏金属なしではこの取り付け構造にゆるみが発生することはない。圧印部分のインライン圧縮力については、このファスナーの引き抜き故障が発生する前に対処しておく必要がある。当業者ならば容易に理解できるように、本発明のファスナーの構造的一体性(structural integrity)は、
図1および
図2に示す標準的なクリンチ式取り付け構造とは異なっている。
【0022】
図3および
図4に示す好適な実施態様では、ファスナーはさらに第2パネル(図示省略)を取り付ける手段をシャンク35の遠位部分35bに有する。この好適な実施態様では、取り付け手段は第2アンダーカット40およびテーパー底部41を有し、この底部はファスナー30の遠位端部30bに対して遠位方向に延在する。
【0023】
図6a〜
図6fに、本発明の別な好適な実施態様に従って構成したファスナーを示す。これら図にはそれぞれピン130、フラッシュスタッド230、重量のあるヘッドスタッド330、スタンドオフ430、ナット530およびフラッシュタック630を示す。各ファスナー130、230、330、430、530、630は横断面が円形で、全体としてそれぞれがヘッド142、242、342、442、542、642、変位部131、231、331、431、531、631、アンダーカット133、233、333、433、533、633およびシャンク130、230、330、430、530、630を有し、これら部分については、上記ファスナー30と同様なファスナーのヘッド端部から順に遠自由端部まで設ける。
図6a〜
図6fに、本発明の薄型クリンチ式特徴が各種型式のファスナーにおける標準的なクリンチ式構成と置き換えて適用できることを示す。ネジを設けたファスナーと同様に、本発明のファスナーの具体的用途において耐トルク性が必要な場合、変位部に刻みを設けることができる。
【0024】
上記実施態様は、本発明原理の説明のみを目的としている。当業者にとって、各種の一部変更および改変は容易なはずである。即ち、本発明を図示し、説明してきた正確な構成および動作に限定する意図はない。従って、これらの妥当な一部変更および改変はいずれも特許請求の範囲に記載する発明の範囲内に包摂されるものである。
【符号の説明】
【0025】
17:板金パネル
30:クリンチ式ファスナー、ファスナー
30a:ヘッド端部、上面
30b:遠位自由端部、遠位端部
31:テーパーショルダー、ショルダー、変位部、アンダーカット
32:プレス機
34:アンビル
34a:上面
35b:遠位部分
36:圧印部分
37:板金パネル、パネル
37a:縁部
39:円錐形凹部
40:第2アンダーカット
41:テーパー底部
42a:上部平面
42b:環状リム
43:装着穴
44、44b:ボア
44a:円錐台形状上部、ボア
45:装着穴、挿入穴
130:ピン
230:フラッシュスタッド
330:ヘッドスタッド
430:スタンドオフ
530:ナット
630:フラッシュタック
130、230、330、430、530、630:ファスナー
13、32a、42、142、242、342、442、542、642:ヘッド
14、131、231、331、431、531、631:変位部
15、33、133、233、333、433、533、633:アンダーカット
19、35、130、230、330、430、530、630:シャンク
B:引き抜きブッシュ
P:引き抜き力
【手続補正書】
【提出日】2017年5月4日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個装用金属ファスナーであって、
前記ファスナーのうちで最も大きな直径を有する最上部ヘッド、
前記ヘッドから軸線方向下向きに延在し、前記ファスナーを装着する金属パネルの材料を変位させる外向きかつ内向きに収斂する角度付き表面を有するショルダー、
前記ショルダーの直下に設けられ、前記ショルダーによって変形されたパネル材料の受け取り穴の縁部に係合する上向きかつ外向きの外面を有する外向きに広がるシャンク、および
前記シャンクと前記ショルダーの接合部に設けられ、前記ファスナーがパネルに取り付けられるように前記パネルの前記受け取り穴の縁部を受け取る縮径ネックを有することを特徴とする個装用金属ファスナー。
【請求項2】
さらに、第2対象物の受け取り穴によって前記ファスナーをこの第2対象物に取り付けるために前記シャンクの下に設けられた取り付け手段を有する請求項1に記載のファスナー。
【請求項3】
前記取り付け手段が、前記第2対象物にクリンチ式で取り付けるアンダーカットを有する請求項2に記載のファスナー。
【請求項4】
前記ヘッドが、円筒形外面を有する円形ヘッドである請求項1に記載のファスナー。
【請求項5】
前記ショルダーの前記外面全体が、前記外向きの角度付き表面である請求項1に記載のファスナー。
【請求項6】
前記取り付け手段が、前記ファスナーの底部まで下向きに延在する、収斂方向にテーパーをもつ底部分を有する請求項2に記載のファスナー。
【請求項7】
板金パネルに対するファスナーのアセンブリーであって、
前記ファスナーのうちで最も大きな直径を有する最上部ヘッド、
前記ヘッドから軸方向下向きに延在し、前記ファスナーを装着する金属パネルの材料を変位させる外向きかつ下向きに収斂する角度付き表面を有するショルダー、
前記ショルダーの直下に設けられ、前記ショルダーによって変形されたパネル材料の受け取り穴の縁部に係合する上向きかつ外向きの外面を有する外向きに広がるシャンク、および
前記シャンクと前記ショルダーの接合部に設けられるネックであって、このネック周囲の領域が前記パネルの前記受け取り穴の縁部を受け取るアンダーカットを構成する縮径ネックを有する個装用金属ファスナーを有し、
前記ファスナーが、円錐底部側と前記パネルの上部の円錐形凹部の中心に設けられたこのパネルの前記受け取り穴を貫通して延在し、前記パネルから前記ネックのアンダーカットに流れる金属の冷間流れによって前記ファスナーを前記パネルに取り付け固定し、これによって前記受け取り穴を縮径し、かつ前記受け取り穴の縁部全体が前記シャンクに当接することを特徴とするアセンブリー。
【請求項8】
前記パネルの厚みがほぼ0.008インチである請求項7に記載のアセンブリー。
【請求項9】
さらに、前記シャンクの下に設けられた前記ファスナーによってこのファスナーに取り付けた第2対象物を有する請求項7に記載のアセンブリー。
【請求項10】
前記パネルの前記受け取り穴周囲の前記円錐形部の縁部が前記ショルダーに当接し、この円錐形部の角度が下向きで、前記穴の前記縁部が前記シャンクの前記上向き面に係合する請求項7に記載のアセンブリー。
【請求項11】
前記ヘッドの上面の高さが前記パネルの上面と同じである請求項7に記載のアセンブリー。
【請求項12】
前記ファスナーをアンビルに押圧されている前記パネルにプレスすることによってのみ前記パネルの前記材料が変形し、同時に前記ファスナーをこのパネルに取り付ける請求項10に記載のアセンブリー。
【請求項13】
前記アンビルが、前記プレス時に前記パネルの前記円錐形部分を形成する円錐形凹部を有する請求項12に記載のアセンブリー。
【請求項14】
ファスナーの装着方向とは反対方向に前記ファスナーに加えられる力が、主に前記パネルのインライン圧縮抵抗によって打ち消される請求項10に記載のアセンブリー。
【国際調査報告】