(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
本発明は、リンカー、およびリンカーを有するアレイを生成するための方法に関する。本発明はまた、アレイ上の様々なタイプの分子に結合する薬剤を識別し、それらの薬剤に結合するアレイ上の分子の構造要素を画定するための方法にも関する。本明細書において提供されるアレイおよび方法は、エピトープの識別、創薬のため、および分析ツールとして使用することができる。本発明は、がんの検出、診断、再発の監視、および予防において有用である、有用なグリカンおよびエピトープ決定因子を提供する。
複数のG−A−Z炭水化物を含む、基材上に固定された炭水化物部分のアレイであって、各G−A−Z部分は、前記基材上の別々の場所に堆積されており、式中、Gは、1つまたは複数の腫瘍関連炭水化物抗原(TACA)であり、
Aは、アルキル、エステル、またはアミドを含む部分であり、
Zは、1つまたは複数の脂質鎖、脂質鎖を伴う1つまたは複数のスペーサー基である、アレイ。
前記TACAが、Globo H、ステージ特異的胎児抗原3(SSEA−3)、ステージ特異的胎児抗原4(SSEA−4)、Tn、TF、sTn、ポリシアル酸、Gb3、Gb4、Lex、Ley、Lea、sLex、SLea、GD1a、GT1b、A2B5、GD2、GD3、GM1、GM2、GM3、フコシル−GM1、Neu5GcGM3および/またはこれらのn−ペンチルアミン官能化バリアントを含む、請求項1に記載のアレイ。
前記基材が、表面、固体表面、不透明固体、可視光もしくは非可視光の選択された波長に対して透明である固体、粒子、マイクロバブル、またはビーズから選択される、請求項1に記載のアレイ。
前記炭水化物部分が、多糖、オリゴ糖、糖コンジュゲートの炭水化物部、Globo H、SSEA−3、SSEA−4、Tn、TF、sTn、ポリシアル酸、Gb3、Gb4、Lex、Ley、Lea、sLex、SLea、GD1a、GT1b、A2B5、GD2、GD3、GM1、GM2、GM3、フコシル−GM1、Neu5GcGM3および/またはこれらのn−ペンチルアミン官能化バリアントのうちの1つまたは複数を含む、請求項1に記載のアレイ。
請求項8に記載のアレイを特性評価する方法であって、固定された前記G−A−Z部分をTACAに対する標識抗体と接触させる工程と、前記抗体とグリカンとの間で複合体を形成させる工程と、前記抗体と前記グリカンとの間で形成された前記複合体を検出する工程とを含む方法。
抗体が、固定された多糖、オリゴ糖、糖コンジュゲートの炭水化物部、Globo H、SSEA−3、SSEA−4、Tn、TF、sTn、ポリシアル酸、Globo H、SSEA−3、SSEA−4、Gb3、Gb4、Lex、Ley、Lea、sLex、SLea、GD1a、GT1b、A2B5、GD2、GD3、GM1、GM2、GM3、フコシル−GM1または抗原のNeu5GcGM3シリーズを特異的に認識する、請求項9に記載のアレイ。
がん、癌腫、新生物または過形成を有する疑いがある、疾患の診断、処置の監視または再発の監視を必要とする対象の、疾患の診断、処置の監視または再発の監視のための方法であって、
(a)がんを有する疑いがある対象から抗体を含有する試料を用意する工程、
(b)前記試料を接触させて、前記試料中の抗体をG−A−Z部分の1つまたは複数に結合させる工程、
(c)1つまたは複数の結合した抗体の量を検出する工程、および
(d)前記結合した抗体の量に基づいて前記対象の病態を判定する工程であって、前記病態は、疾患を有しない対象のレベルと比較した場合の相対抗体結合レベルに基づいて示される、工程
を含む方法。
前記がんが、肉腫、皮膚がん、白血病、リンパ腫、脳がん、神経膠芽腫、肺がん、乳がん、口腔がん、頭頸部がん、上咽頭がん、食道がん、胃がん、肝臓がん、胆管がん、胆嚢がん、膀胱がん、膵臓がん、腸がん、大腸がん、腎臓がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、卵巣がん、精巣がん、頬側がん、中咽頭がん、喉頭がんおよび前立腺がんからなる群から選択される、請求項24または25に記載の方法。
前記炭水化物抗原またはその免疫原性断片が、Globo H、ステージ特異的胎児抗原3(SSEA−3)、ステージ特異的胎児抗原4(SSEA−4)、Tn、TF、sTn、ポリシアル酸、Globo H、SSEA−3、SSEA−4、Gb3、Gb4、Lex、Ley、Lea、sLex、SLea、GD1a、GT1b、A2B5、GD2、GD3、GM1、GM2、GM3、フコシル−GM1またはNeu5GcGM3を含む、請求項32に記載の方法。
前記担体タンパク質が、KLH(キーホールリンペットヘモシアニン)、DT−CRM 197(ジフテリア毒素交差反応物質197)、ジフテリアトキソイドまたは破傷風トキソイドを含む、請求項32に記載の方法。
前記追加的なアジュバントが、サポニン、フロイントアジュバントまたはα−ガラクトシルセラミド(α−GalCer)アジュバントから選択される、請求項36に記載の方法。
前記がんが、肉腫、皮膚がん、白血病、リンパ腫、脳がん、神経膠芽腫、肺がん、乳がん、口腔がん、頭頸部がん、上咽頭がん、食道がん、胃がん、肝臓がん、胆管がん、胆嚢がん、膀胱がん、膵臓がん、腸がん、大腸がん、腎臓がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、卵巣がん、精巣がん、頬側がん、中咽頭がん、喉頭がんおよび前立腺がんからなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、一態様では、グリカン、例えばグロボシリーズグリカン(グロボシリーズスフィンゴ糖脂質抗原)および/または腫瘍関連炭水化物抗原(TACA)の、効率的な検出および結合を促進することができるリンカー組成物およびその使用方法に関する。例えば、
図1を参照されたい。加えて、「グロボシリーズグリカン経路」という用語は、
図2に記載されているスフィンゴ糖脂質の生合成経路を指す。
【0008】
TACAは、2つのクラス:糖タンパク質抗原および糖脂質抗原に分けることができる。糖タンパク質抗原は、例えば、以下を含んでも除外してもよい。(1)ムチンは、例えばα−2,6−N−アセチルガラクトサミニル(Tn)、トムセン−フリーデンライヒ(TF)、およびシアリル−Tn(sTn)を含んでも除外してもよく、ならびに(2)ポリシアル酸(PSA)。糖脂質抗原は、例えば、以下を含んでも除外してもよい。(1)グロボシリーズ抗原は、例えばGlobo H、SSEA−3(またはGb5)、SSEA−4、Gb3、およびGb4を含んでも除外してもよく、(2)血液型決定因子は、例えばルイス
x(Le
x)、ルイス
y(Le
y)、ルイス
a(Le
a)、シアリルルイス
x(sLe
x)、およびシアリルルイス
a(SLe
a)を含んでも除外してもよく、ならびに(3)ガングリオシドは、例えばGD1a、GT1b、A2B5、GD2、GD3、GM1、GM2、GM3、フコシル−GM1、およびNeu5GcGM3を含んでも除外してもよい。
【0009】
一態様では、本発明は、様々な用途において使用することができるリンカーを提供する。例えば、本発明のリンカーを使用して、表面、固体表面、粒子、アレイ、またはビーズを含んでも除外してもよい、基材に分子を付着させることができる。本リンカーは、一部の態様では、炭水化物と相互作用する第1の部分と、表面と相互作用する第2の部分とを含む。
【0010】
一部の態様では、本開示は、リンカー、およびリンカーとグリカンとのコンジュゲート(これは、リンカー−TACA、例えばリンカー−グロボシリーズグリカンまたは他のTACA、リンカー−グロボシリーズ糖タンパク質コンジュゲートを含んでも除外してもよい)、ならびにその作製方法および使用方法を提供する。例示的なグロボシリーズグリカンは、SSEA−3、SSEA−4、およびGlobo Hを含んでも除外してもよい。例示的なグロボシリーズ糖タンパク質は、ペプチドまたはタンパク質に付着したSSEA−3、SSEA−4、およびGlobo Hを含んでも除外してもよい。追加的なTACAグリカンは、例えばLe
y、SLe
a、およびSLe
xを含んでも除外してもよい。また、TACAは、例示的なグリカンのうちのいずれかのn−ペンチルアミン官能化バリアント、例えばSSEA−3、SSEA−4、Gb3、Gb4、Globo H、Le
y、SLe
a、およびSLe
xのn−ペンチルアミン官能化バリアントも含む。
【0011】
一部の態様では、本開示は、基材に、例えばリンカーを用いてコンジュゲートしたグリカンを提供する。
【0012】
一部の態様では、本開示は、複数のG−A−Z炭水化物を含む、基材上に固定された炭水化物のアレイであって、各G−A−Z部分は、基材上の別々の場所に堆積されており、Gは、1つまたは複数のTACAであり、Aは、アルキル、エステル、またはアミドを含む部分であり、Zは、1つまたは複数の脂質鎖、および1つまたは複数の脂質鎖に連結したスペーサー基から選択される、アレイに関する。
【0013】
また、本発明は、リンカーを有するグリカンアレイ(またはマイクロアレイ)、およびそのようなグリカンアレイまたはマイクロアレイを作製するための方法も提供する。一部の態様では、本発明は、アレイ上の炭水化物と試料からの分子との間における結合複合体を検出するための方法を提供する。一部の態様では、本発明は、そのようなアレイを使用して、様々なタイプのグリカンが他の分子と有する相互作用を識別および分析するための方法を提供する。前記グリカンアレイおよびスクリーニング方法は、炭水化物の結合パートナー、例えばグリカン結合タンパク質、受容体、抗体、抗体断片もしくはナノ粒子、核酸、アプタマー、レクチン、または他の分子もしくは物質がどのグリカンに結合するか識別するのに有用であり得る。したがって、本発明のグリカンライブラリーおよびグリカンアレイは、グリカン結合パートナーの特性評価、受容体リガンド特性評価、結合複合体およびそれらの結合強度の検出、細胞膜上および細胞分画物内の炭水化物の識別、抗体エピトープの識別、酵素の特性評価、ならびにファージディスプレイ法によるライブラリースクリーニングなどのライブラリースクリーニングのために使用することができる。一態様では、本発明は、本明細書において開示されているようなリンカー分子などのリンカー分子によって、グリカンがアレイに付着している、グリカンのアレイを提供する。
【0014】
一部の態様では、本開示は、(a)炭水化物結合部分を含む試料を、基材上に固定された1つまたは複数の腫瘍関連炭水化物のアレイと接触させる工程であって、アレイは、固体基材の表面上の別々の場所において固定された複数の炭水化物を含む、接触させる工程と、(b)1つまたは複数の固定された炭水化物と、炭水化物に特異的に結合する疑いがある少なくとも1つの炭水化物結合部分との間で複合体を形成する工程と、(c)複合体を検出する工程とに関する。この検出は、分子にカップリングさせた検出可能な標識またはレポーター、または第1の結合分子に対して特異的な二次的結合分子を検出することを含み、(任意選択でコーティングされている)固体基材の表面上で生成されるレポーターシグナルの強度は、官能化基材上の場合よりも高い感度で検出可能である。炭水化物結合部分は、試料中の分子、抗体、脱落抗原、分泌タンパク質、細胞、細胞内断片、または他の細胞構成成分を含んでも除外してもよい。一部の態様では、本発明は、固体基材の表面上の別々の場所において固定された複数の炭水化物を含む、基材上に固定された炭水化物のアレイであって、これにより、(a)1つまたは複数の腫瘍関連炭水化物抗原(TACA)を含む固定された炭水化物を、検出方法および/または試薬によってアッセイすることができ、かつ(b)固定された炭水化物と、炭水化物に特異的に結合する疑いがある第1の結合分子との間における結合反応の分析を実施することができ、ここで、この方法は、分子にカップリングさせた検出可能な標識またはレポーター、または第1の結合分子に対して特異的な二次的結合分子を検出する工程を含み、(コーティングされている)固体基材の表面上で生成されるレポーターシグナルの強度は、官能化基材上の場合よりも高い感度で検出可能である、アレイに関し、これが提供される。基材は、一部の態様では、表面、固体表面、不透明固体、可視光もしくは非可視光の選択された波長に対して透明である固体、粒子、アレイ、マイクロバブル、またはビーズであり得る。一部の態様では、基材は、コーティングされていてもよい。ある特定の態様では、アレイは、結合反応を検出することによって、あるいは固定された炭水化物と臨床試料との間における複合体を検出することによってアッセイすることができ、ここで、この方法は、臨床試料に対して特異的な抗体にカップリングさせた画像化タグを検出する工程を含む。一部の態様では、第1の抗体が、レポーター分子に直接的にタグ付けされてもよい。
【0015】
一態様では、TACAは、Globo Hを含む。
【0016】
一態様では、TACAは、SSEA−3を含む。
【0017】
一態様では、TACAは、SSEA−4を含む。
【0018】
一態様では、TACAは、SLe
xを含む。
【0019】
一態様では、TACAは、SLe
aを含む。
【0020】
一態様では、TACAは、Le
yを含む。
【0021】
一態様では、第1の固体基材は、ニトロセルロースである。
【0022】
一態様では、炭水化物はグリカンである。
【0023】
一態様では、炭水化物は、ファンデルワールス相互作用によって基材に接着している。
【0024】
一態様では、炭水化物は、リンカー分子で修飾されている。
【0025】
一態様では、アレイは、以下の一般式:G−A−Z−X
(式1)を有するリンカーを含み、式中、Gはグリカンであり;Aは、エステルまたはアミンを含む部分であり;Xは、表面、固体表面、透明個体、不透明固体、可視光もしくは非可視光の選択された波長に対して透明である固体、粒子、アレイ、マイクロバブル、もしくはビーズ、コーティング基材、コーティング表面、ポリマー表面、ニトロセルロースコーティング表面、もしくはビーズ表面を含んでも除外してもよい基材;基材に付着したスペーサー基、または基材にリンカーを接着させるための基を伴うスペーサー基であり;Zは、脂質鎖または脂質鎖を伴うスペーサー基である。
【0026】
一態様では、本開示の新規G−A−Z−Xアレイは、1つまたは複数の固定された炭水化物と、試料からの1つまたは複数の炭水化物結合部分との間における1つまたは複数の複合体を検出するために使用され、1つまたは複数の、検出可能に標識された複合体結合剤を複合体に結合させることが含まれる。例えば、炭水化物結合部分が抗体である場合、検出可能に標識されたタンパク質Aまたは検出可能に標識された抗ヒト抗体を、1つまたは複数の複合体と接触させてもよい。一部の態様では、検出可能な標識は、酵素、蛍光標識、化学発光標識、ナノ粒子標識、または合成された非天然オリゴヌクレオチドを含む。一部の態様では、標識は、例えば表面プラズモン共鳴法(SPR)、移動度シフトアッセイ、または定量的ポリメラーゼ連鎖反応法(qPCR)によって検出可能であり得る。
【0027】
一態様では、本開示の新規G−A−Z−Xアレイを使用する方法が、1つまたは複数の固定された炭水化物と、試料からの1つまたは複数の炭水化物結合部分との間における1つまたは複数の複合体を検出するために使用され、ELISAアッセイが含まれる。一部の態様では、ELISAアッセイは、二次的な、検出可能に標識された複合体結合剤を使用してもよい。例えば、炭水化物結合部分が抗体である場合、酵素を連結したタンパク質Aまたは酵素を連結した抗ヒト抗体を、複合体のELISA検出のために、1つまたは複数の複合体と接触させてもよい。
【0028】
一部の態様では、炭水化物は、多糖、もしくはオリゴ糖、もしくはグリコールコンジュゲートの炭水化物部、もしくはSSEA−3(もしくはGb5)、SSEA−4、Globo H、Gb3、Gb4、Le
y、Le
x、SLe
a、またはSLe
xのうちの1つまたは複数を含む。
【0029】
一部の態様では、固定された炭水化物間における複合体を検出することは、酵素反応を含む。
【0030】
一態様では、酵素反応は、アレイ表面上の固定された炭水化物において実施され、この酵素は、固定された多糖、もしくはオリゴ糖、もしくは糖コンジュゲートの炭水化物部、もしくはSSEA−3(もしくはGb5)、SSEA−4、Globo H、Gb3、Gb4、Le
y、Le
x、SLe
a、またはSLe
xを検出可能である。
【0031】
一態様では、炭水化物結合部分は、タンパク質である。一部の態様では、アレイ上に固定された炭水化物に結合するタンパク質は、検出可能な標識で標識される。
【0032】
一態様では、タンパク質の標識は、化学発光レポーター分子を含む。
【0033】
一部の態様では、本発明は、疾患の診断、再発の監視、および創薬において使用するための、開示される、基材上に固定された炭水化物の新規アレイに関する。一部の態様では、アレイは、(a)基材を用意する工程、(b)基材をニトロセルロースでコーティングする工程、(c)基材の表面上の別々の場所において、複数のG−A−Z部分を固定する工程を含む方法によって製作される。一部の態様では、本発明は、アレイを特性評価する方法であって、固定されたG−A−Z部分を、TACAに対する標識抗体と接触させる工程と、抗体とグリカンとの間で複合体を形成する工程と、複合体を検出する工程とを含む方法に関する。標識抗体は、酵素を含む標識、蛍光標識、化学発光標識、またはナノ粒子標識を含み得る。抗体標識は、酵素を連結した標識であってもよい。抗体は、固定された多糖、もしくはオリゴ糖、もしくは糖コンジュゲートの炭水化物部、もしくはSSEA−3、SSEA−4、またはGlobo Hを特異的に認識し得る。
【0034】
一態様では、本開示は、疾患の診断、再発の監視、および創薬において使用するための、基材上に固定された炭水化物の新規アレイに関する。一部の態様では、アレイは、(a)基材を用意する工程と、(b)基材をニトロセルロースでコーティングする工程と、(c)基材上の別々の場所において、複数の炭水化物を固定する工程とを含む方法によって製作される。一部の態様では、固定された炭水化物は、例えばELISA放射性同位体標識、化学発光、蛍光標識、ナノ粒子、表面プラズモン共鳴法(SPR)、移動度シフトアッセイ、または定量的ポリメラーゼ連鎖反応法(qPCR)によって特性評価することができる。本明細書において開示されている基材のうちのいずれかを、アレイにおいて使用することができる。
【0035】
一部の態様では、本開示は、疾患の診断、再発の監視、および創薬において使用するためのビーズに関し、このビーズは、(a)各ビーズ上または内の独特の識別子と、(b)リンカー部分を通じてビーズの表面に付着したグリカンとを含む。リンカー部分は、本明細書において開示されているリンカーのうちのいずれかであり得る。
【0036】
一部の態様では、本開示は、グリカン−リンカー−ビーズを作製する方法であって、(a)各ビーズ上または内に独特の識別子を含むビーズを用意する工程と、(b)グリカン−リンカーをビーズと接触させる工程と、(c)グリカン−リンカーとビーズとの間においてコンジュゲートを形成する工程とを含む方法に関する。一部の態様では、このコンジュゲートは、エステルまたはアミド結合の形成を通じて形成される。
【0037】
一部の態様では、本開示は、疾患の診断、再発の監視、および創薬において使用するための複数のビーズに関し、各ビーズは、各ビーズ上または内に独特の識別子を有し、ビーズ−nは、複数のG
1−A−Z部分を含み(G
1は1つのTACAである)、ビーズ−nは、複数のG
n−A−Zを含む(G
nは、G
1 TACAと実質的に同じである第2のTACAである)。
【0038】
一態様では、本開示は、以下の式:G−A−Z−X(式1)の化合物に関し、式中、Gはグリカンであり;Aは、エステルまたはアミドを含む部分であり;Xは、基材、例えば表面、固体表面、透明個体、不透明固体、可視光もしくは非可視光の選択された波長に対して透明である固体、粒子、アレイ、マイクロバブル、もしくはビーズ、コーティング基材、コーティング表面、ポリマー表面、ニトロセルロースコーティング表面、もしくはビーズ表面;基材に付着したスペーサー基、または基材にリンカーを接着させるための基を伴うスペーサー基であり;Zは、1つまたは複数の脂質鎖、脂質鎖を伴う1つまたは複数のスペーサー基である。
【0039】
一態様では、本開示は、以下の式
【化1】
を有する化合物を特徴とする。
【0040】
一態様では、本開示は、以下の式
【化2】
を有する化合物を特徴とする。
【0041】
一態様では、本開示は、以下の式
【化3】
を有する例示的G−A−Z化合物を特徴とし、
式中、Qは、
【化4】
であっても水素であってもよく、C
2は、キラルであっても非キラルであってもよく、C
3は、示されるようなキラリティーを有し、[脂質鎖]は、任意のC
4〜C
16直鎖または分岐鎖アルキルまたはアルコキシ鎖であってもよく、mは、1〜10の範囲の整数値を有してもよく、TACAは、以下:Globo H、SSEA−3(もしくはGb5)、SSEA−4、Gb3、Gb4、Le
y、Le
x、SLe
a、もしくはSLe
x、および/またはこれらのn−ペンチルアミン−官能化バリアントのうちの1つから選択される。上に示されるように、この式は、例示的G−A−Zである。
【0042】
一態様では、例示的G−A−Z化合物は、以下の式を有し、
【化5】
式中、C
2は、キラルであっても非キラルであってもよく、C
3は、示されるようなキラリティーを有し、[脂質鎖1]は、任意のC
4〜C
16直鎖または分岐鎖アルキルまたはアルコキシ鎖であってもよく、[脂質鎖2]は、水素、または少なくとも1つのヒドロキシ部分を含む、任意の不飽和C
4〜C
16アルキル鎖であってもよく、mは、1〜10の範囲の整数値を有してもよく、TACAは、以下:Globo H、SSEA−3(もしくはGb5)、SSEA−4、Gb3、Gb4、Le
y、Le
x、SLe
a、もしくはSLe
x、および/またはこれらのn−ペンチルアミン−官能化バリアントのうちの1つから選択される。
【0043】
一態様では、mは5であってもよく、[脂質鎖1]は、以下の式であってもよく、
【化6】
式中、nは、1〜10の整数、例えば7であり、波線は、[脂質鎖1]に接続されているカルボニル炭素に対する結合を表す。
【0044】
一態様では、以下の式に従う化合物が提供され、
【化7】
式中、C
2は、キラルであっても非キラルであってもよく、C
3は、示されるようなキラリティーを有し、mは、1〜10の範囲の整数値、例えば1を有してもよく、TACAは、以下:Globo H、SSEA−3(もしくはGb5)、SSEA−4、Gb3、Gb4、Le
y、Le
x、SLe
a、もしくはSLe
x、および/またはこれらのn−ペンチルアミン−官能化バリアントのうちの1つから選択される。
【0045】
一態様では、以下の式に従う化合物が提供され、
【化8】
式中、本明細書においては「脂質」とも呼ばれる[脂質鎖]は、任意のC
4〜C
16直鎖または分岐鎖アルキルまたはアルコキシ鎖であってもよく、mは、1〜10の範囲の整数値を有してもよく、TACAは、以下:Globo H、SSEA−3(もしくはGb5)、SSEA−4、Gb3、Gb4、Le
y、Le
x、SLe
a、もしくはSLe
x、および/またはこれらのn−ペンチルアミン−官能化バリアントのうちの1つから選択される。
【0046】
一態様では、以下の式に従う化合物が提供され、
【化9】
式中、キラル炭素原子C
1は、ラセミまたはキラルであり、
R
1およびR
2は、アルキル、アリール、ハロ、ヘテロアリール、ハロアルキル、ベンジル、フェニルであってもよく、R
1およびR
2が環状結合を形成できるに連結されてもよく、
n=4〜9の範囲の整数、例えばn=7であり、かつ
TACAは、Globo H、SSEA−3、Gb3、Gb4、SSEA−4、Le
y、SLe
a、およびSLe
x、ならびに/またはこれらのn−ペンチルアミン−官能化バリアントのうちの1つから選択される。
【0047】
一態様では、以下の式のうちのいずれか1つに従う化合物が提供され、
【化10】
式中、キラル炭素原子C
1は、ラセミまたはキラルであり、
n=4〜9の範囲の整数、例えばn=7であり、かつ
TACAは、Globo H、SSEA−3(もしくはGb5)、Gb3、Gb4、SSEA−4、Le
y、SLe
a、もしくはSLe
x、および/またはこれらのn−ペンチルアミン−官能化バリアントのうちの1つから選択される。
【0048】
一態様では、本発明の化合物を調製する方法が提供され、ここでは、脂質鎖−1または脂質鎖−2を、ペンチルアミン−官能化Globo Hと反応させて、アミド結合を形成する。
【0049】
一態様では、以下の式に従う化合物が提供され、
【化11】
式中、mは、1〜10の範囲の整数値を有してもよく、
Vは、酸素であっても炭素であってもよく、
qは、1〜3の範囲の整数値を有してもよく、
TACAは、以下:Globo H、SSEA−3(もしくはGb5)、SSEA−4、Gb3、Gb4、Le
y、Le
x、SLe
a、もしくはSLe
x、および/またはこれらのn−ペンチルアミン−官能化バリアントのうちの1つから選択される。
【0050】
一態様では、本明細書において開示されているリンカーの使用を含む、アレイにおける感度を向上する方法が提供される。
【0051】
一態様では、本開示は、がん診断方法であって、(a)がんを有する疑いがある対象から、抗体を含有する試料を用意する工程と、(b)試料を、1つまたは複数のTACAを含むアレイと接触させる工程と、(c)1つまたは複数のTACAに結合した、試料中の抗体の複合体を形成する工程と、(d)1つまたは複数のTACAに結合した抗体の量を検出する工程と、(e)前記1つまたは複数のTACAに結合した前記抗体の量に基づいて、前記1つまたは複数のTACAに結合した抗体の正常レベルと比較して、対象の病態を判定する工程とを含む方法に関する。一部の態様では、正常レベルは、例えば、通常の患者または通常の患者の集団からの試料における、TACAに結合した抗体のレベルの測定値に基づく基準値または基準範囲であってもよい。一部の態様では、検出されるTACA結合抗体は、循環抗体である。一部の態様では、検出は、少なくとも1つのTACAに対する少なくとも1つの抗体の判定を含む。一部の態様では、アレイ上のTACAは、Tn、TF、sTn、ポリシアル酸、Globo H、SSEA−3、SSEA−4、Gb3、Gb4、Le
x、Le
y、Le
a、sLe
x、SLe
a、GD1a、GT1b、A2B5、GD2、GD3、GM1、GM2、GM3、フコシル−GM1、またはNeu5GcGM3のうちの1つまたは複数から選択され得る。
【0052】
一態様では、試料は、体液(血清、唾液、リンパ節液、尿、膣スワブ、または頬側スワブ)である。
【0053】
一態様では、本開示は、TACA結合パートナーに対するグリカン結合パートナーのスクリーニングライブラリーに関する。一部の態様では、分子またはライブラリーは、例えば抗体、ナノボディ、抗体断片、アプタマー、レクチン、ペプチド、またはコンビナトリアルライブラリー分子を含んでもよい。一態様では、前記TACA結合パートナーを識別するための前記ライブラリーのスクリーニングは、本明細書において開示されているようなTACAグリカンアレイの使用を含む。
【0054】
一部の態様では、TACA結合パートナーは、様々な用途において使用することができる。例えば、一態様では、本開示は、それを必要とする対象の病態を判定するための方法であって、(a)対象からの試料を用意する工程と、(b)試料を、1つまたは複数のTACA結合パートナーと接触させる工程と、(c)TACAと結合パートナーとの間における結合の特異性を測定する工程と、(d)発現された腫瘍関連炭水化物抗原(TACA)のレベルを検出する工程とを含む方法に関する。
【0055】
TACA結合パートナーは、例えば、それを必要とする患者、例えばTACA発現がん、腫瘍、新生物、または過形成を有する患者を処置するための治療剤として使用することができる。
【0056】
一態様では、検出は、TACAの検出を含む。一態様では、前記TACAの検出は、TACAグリカンアレイの使用を含む。
【0057】
一部の態様において、方法は、肉腫、皮膚がん、白血病、リンパ腫、脳がん、神経膠芽腫、肺がん、乳がん、口腔がん、頭頸部がん、上咽頭がん、食道がん、胃がん、肝臓がん、胆管がん、胆嚢がん、膀胱がん、膵臓がん、腸がん、大腸がん、腎臓がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、卵巣がん、精巣がん、頬側がん、中咽頭がん、喉頭がん、および/または前立腺がんのうちの1つまたは複数から選択される試料をアッセイする工程を含む。一態様では、方法は、乳房、卵巣、肺、膵臓、胃(stomach)(胃(gastric))、大腸、前立腺、肝臓、子宮頸部、食道、脳、口腔、および/または腎臓のがんのうちの1つまたは複数から選択される試料のアッセイを含む。一部の態様では、方法は、乳房、卵巣、肺、膵臓、胃(stomach)(胃(gastric))、大腸、前立腺、肝臓、子宮頸部、膀胱、食道、脳、口腔、および/または腎臓のがんのがん、新生物、過形成のうちの1つまたは複数を検出する工程を含む。
【0058】
一部の態様では、病態のうちの1つまたは複数は、B細胞リンパ腫、メラノーマ、神経芽細胞腫、肉腫、非小細胞肺癌(NSCLC)によって特徴付けられる。
【0059】
一態様では、本開示は、それを必要とする対象の処置における抗新生物剤の治療効果を判定するために、本開示の新規アレイを使用する方法であって、(a)対象からの試料を用意する工程と、(b)試料を、TACAアレイと接触させる工程と、(c)TACAまたは抗体のうちの1つまたは複数の結合をアッセイする工程と、(d)グリカン検出のアッセイ値に基づいて、新生物に対する処置における抗新生物剤の治療効果を判定する工程とを含む方法に関し、これが提供される。
【0060】
一態様では、それを必要とする対象の処置の間の抗新生物剤の治療効果を判定するために、本開示の新規アレイを使用する方法であって、(a)処置の前に対象からの試料を用意する工程と、(b)試料を、TACAアレイと接触させる工程と、(c)処置の前にTACA結合部分の力価をアッセイする工程と、(d)抗新生物剤の投与後に、対象からの1つまたは複数の試料を用意する工程と、(e)1つまたは複数の試料を、TACAアレイと接触させる工程と、(f)1つまたは複数の試料においてTACA力価をアッセイする工程と、(g)TACA力価の変化に基づいて、新生物に対する処置における抗新生物剤の治療効果を判定する工程とを含む方法。一部の態様では、TACA結合部分は、抗体であり得る。
【0061】
一態様では、抗新生物剤は、ワクチンを含む。ワクチンは、担体タンパク質にコンジュゲートした炭水化物抗原または炭水化物の免疫原性断片を含んでもよい。一部の態様では、炭水化物抗原または炭水化物の免疫原性断片は、Globo H、ステージ特異的胎児抗原3(SSEA−3)、ステージ特異的胎児抗原4(SSEA−4)、Tn、TF、sTn、ポリシアル酸、Globo H、SSEA−3、SSEA−4、Gb3、Gb4、Le
x、Le
y、Le
a、sLe
x、SLe
a、GD1a、GT1b、A2B5、GD2、GD3、GM1、GM2、GM3、フコシル−GM1、またはNeu5GcGM3を含んでもよい。一態様では、担体タンパク質は、KLH(キーホールリンペットヘモシアニン)、DT−CRM 197(ジフテリア毒素交差反応物質197)、ジフテリアトキソイド、または破傷風トキソイドを含む。一態様では、ワクチンは、医薬組成物として提供される。一態様では、医薬組成物は、Globo H−KLHおよび追加的なアジュバントを含む。一態様では、追加的なアジュバントは、サポニン、フロイントアジュバント、またはα−ガラクトシルセラミド(α−GalCer)アジュバントから選択される。一態様では、医薬組成物は、本明細書において記載されているように、OBI−822/OBI−821を含む。一態様では、抗新生物剤は、1つまたは複数の炭水化物抗原に結合可能である抗体またはその抗原結合部を含む。
【0062】
一態様では、それを必要とする対象は、がん、癌腫、新生物、または過形成のうちの1つまたは複数を有する疑いがある。一態様では、がんは、肉腫、皮膚がん、白血病、リンパ腫、脳がん、神経膠芽腫、肺がん、乳がん、口腔がん、頭頸部がん、上咽頭がん、食道がん、胃がん、肝臓がん、胆管がん、胆嚢がん、膀胱がん、膵臓がん、腸がん、大腸がん、腎臓がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、卵巣がん、精巣がん、頬側がん、中咽頭がん、喉頭がん、および前立腺がんからなる群から選択される。
【0063】
本発明のアレイ上において使用されるグリカンは、2つまたはそれよりも多くの糖単位を含んでもよい。本発明のグリカンは、直鎖および分岐鎖オリゴ糖、ならびに天然型および合成グリカンを含んでもよい。任意のタイプの糖単位、例えばアロース、アルトロース、アラビノース、グルコース、ガラクトース、グロース、フコース、フルクトース、イドース、リキソース、マンノース、リボース、タロース、キシロース、ノイラミン酸、または他の糖単位が、本発明のグリカン中に存在し得ることが企図される。このような糖単位は、様々な置換基を有してもよい。例えば、糖単位において典型的に存在する置換基の代わりに、あるいはそれに加えて存在し得る置換基には、アミノ、カルボキシ、例えばイオン性カルボキシおよびその塩(例えば、カルボン酸ナトリウム)、チオール、アジド、N−アセチル、N−アセチルノイラミン酸、オキシ(=O)、シアル酸、サルフェート(−SO
4−)、例えばイオン性サルフェートおよびその塩、ホスフェート(−PO
4−)、例えばイオン性ホスフェートおよびその塩、低級アルコキシ、低級アルカノイルオキシ、低級アシル、ならびに/または低級アルカノイルアミノアルキルが含まれる。脂肪酸、脂質、アミノ酸、ペプチド、およびタンパク質も、本発明のグリカンに付着してもよい。一部の態様では、グリカンは、Globo H、SSEA−3、SSEA−4、Le
y、SLe
a、SLe
x、またはこれらの任意の組合せを含んでも除外してもよい。一部の態様では、グリカンは、Globo H、SSEA−3、SSEA−4、Le
y、SLe
a、SLe
xのn−ペンチルアミン官能化バリアント、または官能化グリカンバリアントおよび/もしくは非官能化グリカンの任意の組合せを含むか、あるいは除外する。
【0064】
別の態様では、本発明は、固体基材と、固体支持体上の多数の画定されたグリカンの場所とを含むマイクロアレイであって、各グリカンの場所は、固体支持体に付着した一タイプのグリカン分子の複数のコピーを含む、固体支持体の領域を画定し、グリカンは、本明細書において記載されているようなリンカーによってマイクロアレイに付着している、マイクロアレイを提供する。これらのマイクロアレイは、例えば、約1〜約100,000の異なるグリカンの場所、または約1〜約10,000の異なるグリカンの場所、または約2〜約100の異なるグリカンの場所、または約2〜約5の異なるグリカンの場所を有してもよい。一部の態様では、アレイに付着したグリカンは、グリカンプローブと呼ばれる。
【0065】
別の態様では、本発明は、試験分子または試験物質が、本発明のアレイまたはマイクロアレイ上に存在するグリカンに結合できるかどうかを識別する方法を提供する。方法は、アレイを、試験分子または試験物質と接触させる工程と、試験分子または試験物質が、グリカンライブラリーの、あるいはアレイ上のグリカンに結合しているかどうかを観察する工程とを伴う。一部の態様では、本開示は、本明細書において記載されているように、ライブラリーの試験分子または試験物質に関する。
【0066】
別の態様では、本発明は、試験分子または試験物質が、本発明のアレイ上に存在するどのグリカンに結合できるかを識別する方法を提供する。方法は、アレイを、試験分子または試験物質と接触させる工程と、試験分子または試験物質が、どのグリカンに結合できるかを観察する工程とを伴う。
【0067】
各グリカンの場所におけるグリカンの密度は、誘導体化されるグリカンの場所に適用されるグリカン溶液の濃度を変動させることによってモジュレートすることができる。
【0068】
本発明の別の態様は、リンカー分子を通じてアレイに付着した分子のライブラリーを含んでもよい、分子のアレイに関した。ここで、切断可能なリンカーは、以下の構造を有し、
【化12】
式中、Gはグリカンであり;Aは、エステルまたはアミドを含む部分であり;Xは、基材、例えば表面、固体表面、透明個体、不透明固体、可視光もしくは非可視光の選択された波長に対して透明である固体、粒子、アレイ、マイクロバブル、もしくはビーズ、コーティング基材、コーティング表面、ポリマー表面、ニトロセルロースコーティング表面、もしくはビーズ表面;基材に付着したスペーサー基、または基材にリンカーを接着させるための基を伴うスペーサー基であり;Zは、1つまたは複数のリンカーであり、ここで前記リンカーは、脂質鎖、脂質鎖を伴う1つまたは複数のスペーサー基を含み得る。
【0069】
一部の態様では、アレイは、基材と、固体支持体上の多数の画定されたグリカンプローブの場所とを含み、各グリカンプローブの場所は、固体支持体に付着した一タイプの同様のグリカン分子の複数のコピーを有する、固体支持体の領域を画定する。
【0070】
一部の態様では、AとXとの間の相互作用は、共有結合、ファンデルワールス相互作用、水素結合、イオン結合、または疎水性相互作用であり得る。
【0071】
本発明の別の態様は、試験試料中の分子が、分子のアレイに結合できるかどうかを試験する方法であって、(a)アレイを試験試料と接触させる工程と、(b)試験試料中の分子がアレイに付着した分子に結合するかどうかを観察する工程とを含み得る方法である。
【0072】
本発明の別の態様は、どの分子構造が、試験試料中の生体分子に結合するかを判定する方法であって、分子のアレイを試験試料と接触させる工程と、アレイを洗浄する工程と、切断可能なリンカーを切断して、アレイに付着している分子の分子構造の構造的または機能的分析を可能にする工程とを含み得る方法である。例えば、生体分子は、抗体、受容体、またはタンパク質複合体であり得る。
【0073】
本発明の別の態様は、試験試料におけるがん、例えば乳がんを検出する方法であって、(a)試験試料を、Globo H、SSEA−3、SSEA−4、Le
y、SLe
a、およびSLe
xを含むグリカンに共有結合しているリンカーと接触させる工程と、(b)試験試料中の抗体が、Globo H、SSEA−3、SSEA−4、Le
y、SLe
a、およびSLe
xと会合している分子/決定因子に結合しているかどうかを判定する工程とを含み得る方法である。
【0074】
ここでは、キラル炭素原子、例えばC1は、ラセミまたはキラルであり、nは、5〜9の範囲の整数、例えばn=7であり、TACAは、Globo H、SSEA−3(もしくはGb5)、SSEA−4、Gb3、Gb4、Le
y、Le
x、SLe
a、またはSLe
xのうちの1つから選択される。
【0075】
一態様では、本開示は、以下の式を有する化合物を特徴とする。
【化13-1】
【化13-2】
【図面の簡単な説明】
【0076】
【
図1】グリカンが連結された糖ペプチドを形成するための反応スキーム。
【0077】
【0078】
【
図3】脂質鎖類似体(脂質鎖1〜脂質鎖6、これらはそれぞれ、脂質1〜脂質6とも呼ばれ得る)を合成するための反応スキーム。この反応は、3ステップの脂質−NH
2合成(
図3A)および脂質鎖類似体形成(
図3B)を含んでいる。
【0079】
【
図4AB】Globo H−NH
2および脂質鎖生成物のカップリング反応。
図4Aは、Globo H−脂質1(式2)の合成を示した。
図4Bは、Globo H−脂質2(式3)の合成を示した。
図4Cは、Globo H−脂質3(式16)の合成を示した。
図4Dは、Globo H−脂質4(式17)の合成を示した。
図4Eは、Globo H−脂質6(式18)の合成を示した。
図4Fは、Globo H−脂質1(ラセミ)(式19)の合成を示した。
【
図4CD】Globo H−NH
2および脂質鎖生成物のカップリング反応。
図4Aは、Globo H−脂質1(式2)の合成を示した。
図4Bは、Globo H−脂質2(式3)の合成を示した。
図4Cは、Globo H−脂質3(式16)の合成を示した。
図4Dは、Globo H−脂質4(式17)の合成を示した。
図4Eは、Globo H−脂質6(式18)の合成を示した。
図4Fは、Globo H−脂質1(ラセミ)(式19)の合成を示した。
【
図4EF】Globo H−NH
2および脂質鎖生成物のカップリング反応。
図4Aは、Globo H−脂質1(式2)の合成を示した。
図4Bは、Globo H−脂質2(式3)の合成を示した。
図4Cは、Globo H−脂質3(式16)の合成を示した。
図4Dは、Globo H−脂質4(式17)の合成を示した。
図4Eは、Globo H−脂質6(式18)の合成を示した。
図4Fは、Globo H−脂質1(ラセミ)(式19)の合成を示した。
【0080】
【
図5AB】Globo H−脂質鎖生成物の質量スペクトル。
図5Aは、Globo H−脂質1の質量スペクトルを示した。
図5Bは、Globo H−脂質2の質量スペクトルを示した。
図5Cは、Globo H−脂質3の質量スペクトルを示した。
図5Dは、Globo H−脂質4の質量スペクトルを示した。
図5Eは、Globo H−脂質6の質量スペクトルを示した。
図5Fは、Globo H−脂質1(ラセミ)の質量スペクトルを示した。
【
図5CD】Globo H−脂質鎖生成物の質量スペクトル。
図5Aは、Globo H−脂質1の質量スペクトルを示した。
図5Bは、Globo H−脂質2の質量スペクトルを示した。
図5Cは、Globo H−脂質3の質量スペクトルを示した。
図5Dは、Globo H−脂質4の質量スペクトルを示した。
図5Eは、Globo H−脂質6の質量スペクトルを示した。
図5Fは、Globo H−脂質1(ラセミ)の質量スペクトルを示した。
【
図5EF】Globo H−脂質鎖生成物の質量スペクトル。
図5Aは、Globo H−脂質1の質量スペクトルを示した。
図5Bは、Globo H−脂質2の質量スペクトルを示した。
図5Cは、Globo H−脂質3の質量スペクトルを示した。
図5Dは、Globo H−脂質4の質量スペクトルを示した。
図5Eは、Globo H−脂質6の質量スペクトルを示した。
図5Fは、Globo H−脂質1(ラセミ)の質量スペクトルを示した。
【0081】
【
図6】SSEA−3−NH
2および脂質鎖生成物のカップリング反応。
図6Aは、SSEA−3−脂質1(式20)の合成プロセスを示した。
図6Bは、SSEA−3−脂質1の質量スペクトルを示した。
【0082】
【
図7】SSEA−4−NH
2および脂質鎖生成物のカップリング反応。
図7Aは、SSEA−4−脂質1(式21)の合成プロセスを示した。
図7Bは、SSEA−4−脂質1の質量スペクトルを示した。
【0083】
【
図8】Globo H−セラミドとGlobo H−脂質との間におけるELISA分析の比較。
図8Aは、Globo H−セラミドおよびGlobo H−脂質のELISA結合パターンを示した。
図8Bは、膵臓がんの検出における、Globo H−セラミド、Globo H−脂質1、およびGlobo H−脂質2の結合効率の比較を示した。
【0084】
【
図9】例示的マイクロ流体カートリッジの例示的な構成要素層。
【0085】
【
図10AB】グリカン−セラミドおよびグリカン−脂質のヒトIgM/IgGグリカンスコアの比較。
図10Aは、Globo H−セラミド IgMの結合パターンを図示した。
図10Bは、Globo H−脂質1 IgMの結合パターンを図示した。
図10Cは、SSEA−3−セラミド IgMの結合パターンを図示した。
図10Dは、Globo H−脂質1 IgGの結合パターンを図示した。
図10Eは、SSEA−4−脂質1 IgGの結合パターンを図示した。
【
図10CD】グリカン−セラミドおよびグリカン−脂質のヒトIgM/IgGグリカンスコアの比較。
図10Aは、Globo H−セラミド IgMの結合パターンを図示した。
図10Bは、Globo H−脂質1 IgMの結合パターンを図示した。
図10Cは、SSEA−3−セラミド IgMの結合パターンを図示した。
図10Dは、Globo H−脂質1 IgGの結合パターンを図示した。
図10Eは、SSEA−4−脂質1 IgGの結合パターンを図示した。
【
図10E】グリカン−セラミドおよびグリカン−脂質のヒトIgM/IgGグリカンスコアの比較。
図10Aは、Globo H−セラミド IgMの結合パターンを図示した。
図10Bは、Globo H−脂質1 IgMの結合パターンを図示した。
図10Cは、SSEA−3−セラミド IgMの結合パターンを図示した。
図10Dは、Globo H−脂質1 IgGの結合パターンを図示した。
図10Eは、SSEA−4−脂質1 IgGの結合パターンを図示した。
【0086】
【
図11A】膵臓がんの臨床試料を使用した、グリカン−脂質のヒトIgMレベルの比較。
図11Aは、Globo H−脂質1の結合パターンを図示した。
図11Bは、SSEA−4−脂質1の結合パターンを図示した。
図11Cは、Globo H−脂質1の分類された膵臓がんステージを図示した。
図11Dは、SSEA−4−脂質1の分類された膵臓がんステージを図示した。
【
図11BC】膵臓がんの臨床試料を使用した、グリカン−脂質のヒトIgMレベルの比較。
図11Aは、Globo H−脂質1の結合パターンを図示した。
図11Bは、SSEA−4−脂質1の結合パターンを図示した。
図11Cは、Globo H−脂質1の分類された膵臓がんステージを図示した。
図11Dは、SSEA−4−脂質1の分類された膵臓がんステージを図示した。
【
図11D】膵臓がんの臨床試料を使用した、グリカン−脂質のヒトIgMレベルの比較。
図11Aは、Globo H−脂質1の結合パターンを図示した。
図11Bは、SSEA−4−脂質1の結合パターンを図示した。
図11Cは、Globo H−脂質1の分類された膵臓がんステージを図示した。
図11Dは、SSEA−4−脂質1の分類された膵臓がんステージを図示した。
【0087】
【
図12A】肺がんの臨床試料を使用した、グリカン−脂質のヒトIgMレベルの比較。
図12Aは、Globo H−脂質1の結合パターンを図示した。
図12Bは、SSEA−3−脂質1の結合パターンを図示した。
図12Cは、SSEA−4−脂質1の結合パターンを図示した。
図12Dは、Globo H−脂質1の分類された肺がんステージを図示した。
図12Eは、SSEA−3−脂質1の分類された肺がんステージを図示した。
図12Fは、SSEA−4−脂質1の分類された肺がんステージを図示した。
【
図12BC】肺がんの臨床試料を使用した、グリカン−脂質のヒトIgMレベルの比較。
図12Aは、Globo H−脂質1の結合パターンを図示した。
図12Bは、SSEA−3−脂質1の結合パターンを図示した。
図12Cは、SSEA−4−脂質1の結合パターンを図示した。
図12Dは、Globo H−脂質1の分類された肺がんステージを図示した。
図12Eは、SSEA−3−脂質1の分類された肺がんステージを図示した。
図12Fは、SSEA−4−脂質1の分類された肺がんステージを図示した。
【
図12DE】肺がんの臨床試料を使用した、グリカン−脂質のヒトIgMレベルの比較。
図12Aは、Globo H−脂質1の結合パターンを図示した。
図12Bは、SSEA−3−脂質1の結合パターンを図示した。
図12Cは、SSEA−4−脂質1の結合パターンを図示した。
図12Dは、Globo H−脂質1の分類された肺がんステージを図示した。
図12Eは、SSEA−3−脂質1の分類された肺がんステージを図示した。
図12Fは、SSEA−4−脂質1の分類された肺がんステージを図示した。
【
図12F】肺がんの臨床試料を使用した、グリカン−脂質のヒトIgMレベルの比較。
図12Aは、Globo H−脂質1の結合パターンを図示した。
図12Bは、SSEA−3−脂質1の結合パターンを図示した。
図12Cは、SSEA−4−脂質1の結合パターンを図示した。
図12Dは、Globo H−脂質1の分類された肺がんステージを図示した。
図12Eは、SSEA−3−脂質1の分類された肺がんステージを図示した。
図12Fは、SSEA−4−脂質1の分類された肺がんステージを図示した。
【発明を実施するための形態】
【0088】
本開示は、どのタイプのタンパク質、受容体、抗体、脂質、核酸、炭水化物、ならびに他の分子および物質が、所与のグリカン構造に結合できるかを識別するために使用することができる、グリカンのライブラリーおよびアレイを提供する。
【0089】
本発明のライブラリー、分子、アレイ、および方法は、いくつかの利点を有する。本発明のアレイの特定の利点の1つは、アレイ上のグリカンが、ポリマー基材などの基材に、リンカーによって付着しているという点である。例えば、本発明のリンカーは、ポリマー表面との結合相互作用のタイプにとって安定な長いアルキル鎖に連結されたペプチド結合を有し得る。しかしながら、当業者が選択するならば、付着したグリカンを伴うリンカーをさらに分析したり他の目的のために利用したりできるように、リンカーは、ファンデルワールス相互作用の破壊(例えば、界面活性剤による)を介して切り離すこともできる。
【0090】
また、本発明のアレイおよび方法は、高度に正確な結果をもたらす。本発明のライブラリーおよびアレイは、多数の様々なグリカンを提供する。非限定的例として、本発明のライブラリーおよびアレイは、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも10、または少なくとも100のグリカンを有する。一部の実施形態では、本発明のライブラリーおよびアレイは、アレイ毎に、約1〜約100,000、または約1〜約10,000、または約1〜約1,000、または約1〜約100、または約2〜約100、または約2〜約10、または約1〜約10の異なるグリカンを有する。このような多数のグリカンによって、多数のグリカンタイプを同時にアッセイすることができる。本明細書において記載されているように、本アッセイは、様々なグリカン結合タンパク質を成功裡にスクリーニングするために使用された。本発明のアレイ上のグリカンの組成は、適宜変えることができる。多くの異なる糖コンジュゲート、例えば天然型または合成のグリカン、糖タンパク質、糖ペプチド、糖脂質、細菌および植物の細胞壁のグリカンなどを、本発明のアレイに組み込むことができる。
【0091】
本発明のアレイに異なるグリカンを付着させるための固定手順は、アレイを簡単に構築できるように、容易に制御される。一部の実施形態では、各グリカンは、特定のビーズタイプとのグリカン特異的な会合を形成するように、その特定のビーズタイプに接着し得る。一部の実施形態では、ビーズは、他のビーズタイプからその特定のビーズタイプを区別する、異なるマーカーをさらに含んでもよい。一部の実施形態では、各々が異なるビーズタイプに接着している複数の異なるグリカンが、多重反応で混合されてもよい。
【0092】
アレイ表面の固体支持体上の画定された領域に接着した異なるグリカンの独特のライブラリーを含むアレイは、任意の利用可能な手順によって接着されてもよい。一般に、アレイは、本明細書において記載されているグリカンが連結された糖ペプチド分子のライブラリーを得る工程と、ライブラリーのグリカンが連結された糖ペプチド分子上に存在する特定の連結部分と反応するように修飾された表面を有する基材を得る工程と、グリカンが連結された糖ペプチド分子の連結部分と、基材の修飾された表面との間においてファンデルワールス相互作用を形成することによって、グリカン分子を固体支持体に付着させる工程とによって作製される。
【0093】
修飾試薬は、非限定的例として、シロキサン結合を使用することで(例えば、ガラスまたは酸化ケイ素を固体基材として使用することで)、炭素−炭素結合を介して基材に付着することができる。一部の実施形態では、基材の表面とのシロキサン結合は、モノ、ジもしくはトリクロロシリル、またはモノ、ジもしくはトリアルコキシシリル基を有する誘導体化試薬の反応を介して形成される。シラン上の非脱離(クロロまたはアルコキシ)基は、炭化水素であってもよい。一部の実施形態では、非脱離基は、グリカンが連結された糖ペプチドのペプチド鎖とのファンデルワールス相互作用を形成するように、直鎖または分岐鎖アルキル鎖であってもよい。
【0094】
修飾試薬は、当業者に公知の、コーティングを適用するための他の堆積方法によって基材に適用されてもよい。そのような方法には、化学蒸着、溶液相堆積、ラングミュア・ブロジェット膜形成、反応性の表面分子を曝露するための化学プラズマ処理、スピンコーティング、噴霧乾燥、または電界紡糸が含まれる。一部の実施形態では、修飾試薬はポリマーであってもよい。ポリマーは、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチルイミン、ポリカプロラクチン、修飾ポリカプロラクトン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリ−N,N−アルキルアクリルアミド、ポリアルキルメタクリレート、ポリアルキルアクリレート、または多糖から選択することができる。多糖は、セルロース、ニトロセルロース、キトサン、アミロース、セルロースアセテート、キサンタンガム、デキストラン、ウェランガム、グアーガム、ゲランガム、デュータンガム、またはプルランであってもよい。
【0095】
各タイプのグリカンは、画定されたグリカンプローブの場所において、固体支持体上に接触またはプリントされる。様々なグリカンが連結された糖ペプチドを画定されたグリカンプローブの場所に適用するために、マイクロアレイ遺伝子プリンターを使用することができる。例えば、画定されたグリカンプローブの場所当たり、約0.1nL〜約10nLまたは約0.5nLのグリカン溶液を適用することができる。様々な濃度の、グリカンが連結された糖ペプチドの溶液を、固体支持体上に接触またはプリントしてもよい。例えば、約0.1〜約1000μMのグリカンが連結された糖ペプチド、または約1.0〜約500μMのグリカンが連結された糖ペプチド、または約10〜約100μMのグリカンが連結された糖ペプチドの、グリカンが連結された糖ペプチドの溶液を用いることができる。一般に、いくつか(例えば、3〜6個)の画定されたグリカンプローブの場所の複製に各濃度を適用することが得策であり得る。このような複製によって、グリカンが連結された糖ペプチドと試験分子との間における結合反応が、実際の結合相互作用であるか否かを確認する内部対照が提供される。
【0096】
炭水化物腫瘍抗原Globo H、SSEA−3、SSEA−4、Le
y、SLe
a、およびSLe
xは、がんの診断にとっては不良なバイオマーカーである。これは、炭水化物が生物流体中において、タンパク質または抗体に対して非常に弱い結合強度しか有しないためである。本発明者らは、弱い炭水化物結合抗原の制限によって、このような炭水化物腫瘍抗原が、がんの診断におけるバイオマーカーによる検証のために使用できなくされていることを理解していた。
【0097】
ディテクター分子(detector molecule)のアレイが、試料中の複数の分析物の存在を同時に検出することにとって有用である。ディテクター分子のアレイの要素は、基材、基材上の生理活性分子のコーティングの提示、1つまたは複数の分析物のコーティング基材に対する提示、分析物と基材上の生理活性分子との間における複合体の形成、および検出のメカニズムを含む。本明細書において使用される場合、「生理活性分子」という用語は、当該技術分野におけるその通常の意味を意味し、また生物学または化学において存在するかまたは公知の分子を模倣し、かつ静電気的相互作用、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、共有結合、または水素結合を介して別の分子に結合可能である任意の分子を意味する。
【0098】
本発明の基材は、表面であってもよい。表面は、平坦、フィーチャー化、球形、曲線状、粗面、多孔質、固体、ゼラチン状、ポリマー、オリゴマー、またはビーズであってもよい。基材は、ガラス、ポリマー、またはプラスチックで構成されてもよい。ビーズは、球形、円筒形、卵型、楕円形、略球形、ディスク型、正方形型、六角形型、または任意の多角体型のエンティティであってもよい。一部の実施形態では、基材は、表面において、別の分子に結合可能な反応性基を提示するように、化学的に修飾されてもよい。一部の実施形態では、反応性基は、カルボン酸であってもよい。
【0099】
一部の実施形態では、基材は、表面において、別の分子に結合可能な反応性基を提示できる材料でコーティングされていてもよい。一部の実施形態では、基材をコーティングする材料は、ニトロセルロース膜またはポリマーである。このようなコーティングは、表面積の大きい3次元表面を提示するため、平坦な表面と比較して、より低い検出限界を可能にする。一部の実施形態では、化学的リンカーが、表面に直接的に、あるいは先に表面に提示されたコーティングに提示されてもよい。
【0100】
一部の実施形態では、リンカーは、以下の、選択された、グリカンが連結された糖ペプチド構造(本明細書において、TACAを指すのにGHが使用される場合がある)のうちの1つを含んでもよく、
【化14-1】
【化14-2】
【化14-3】
【化14-4】
式中、キラル炭素C1は、ラセミまたはキラルであり、n=5、6、7、8、または9であり、TACAは、以下のグリカン:Globo H、SSEA−3(もしくはGb5)、SSEA−4、Gb3、Gb4、Le
y、Le
x、SLe
a、またはSLe
xのうちの1つから選択される。
【0101】
グリカンが連結された糖ペプチドは、
図1の反応スキームに従って、ヘキシルアミノ官能化グリカン(アミドの場合)またはヘキシルヒドロキシル官能化グリカン(エステルの場合)と、脂質鎖カルボン酸との間においてアミド結合またはエステル結合を形成することによって合成することができる。グリカン(腫瘍関連炭水化物抗原(TACA)は、任意のアミドまたはエステル形成方法を介して、脂質鎖カルボン酸と反応させることができる。一部の実施形態では、アミドの形成は、当業者に公知の任意の標準的ペプチドカップリング方法を介して起こり得る。一部の実施形態では、アミドの形成は、添加剤を介して、カルボジイミド、トリアゾール、カルボニルジイミダゾール誘導体、ホスホニウム/ウロニウム/ホルムアミジニウム誘導体によるカップリングを介して、あるいは脱水を介して起こり得る。
【0102】
一部の実施形態では、カルボジイミドは、EDC(1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩)、DCC(N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド)、1−tert−ブチル−3−エチルカルボジイミド、1,3−ジ−p−トリルカルボジイミド、およびDIC(N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド)であり得る。
【0103】
一部の実施形態では、脱水は、任意選択で2,2−ジメトキシプロパンの添加を伴う、有機溶媒中における酸触媒カップリングによって達成することができる。一部の実施形態では、脱水は、5−メトキシ−2−ヨードフェニルボロン酸の触媒作用によって達成することができる。一部の実施形態では、アミドの形成は、アミンおよびカルボン酸の反応混合物に、以下の試薬のうちの1つまたは複数を添加することによって達成することができる:4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン、2−エトキシ−1−エトキシカルボニル−1,2−ジヒドロキノリン、2−フルオロ−1−メチルピリジニウムp−トルエンスルホネート、2−ヒドロキシ−1−メチルピリジニウムp−トルエンスルホネート、3−ヒドロキシ−1,2,3−ベンゾトリアジン−4(3H)−オン溶液、イソブチル1,2−ジヒドロ−2−イソブトキシ−1−キノリンカルボキシレート、1−(2−メシチレンスルホニル)−3−ニトロ−1H−1,2,4−トリアゾール、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、3−ニトロ−1H−1,2,4−トリアゾリドスルホニル樹脂、PyOxim、またはウッドワード試薬K、アクリル酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、ビス(4−ニトロフェニル)カーボネート、ビス(ペンタフルオロフェニル)カーボネート、2−ブロモ−1−エチル−ピリジニウムテトラフルオロボレート、N−ブロモスクシンイミド、N,N’−ジスクシンイミジルカーボネート、N,N’−ジスクシンイミジルカーボネート、ジ(N−スクシンイミジル)オキサレート、N,N’−ジスクシンイミジルオキサレート、エチル(ヒドロキシイミノ)シアノアセテート、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物、N−ヒドロキシマレイミド、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸イミド、3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、N−ヒドロキシフタルイミド、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシスクシンイミジルアセトアセテート、N−ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウム塩、ヨード酢酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、4−ニトロフェニルトリフルオロアセテート、K−Oxyma、ペンタフルオロフェノール、ペンタフルオロフェニルトリフルオロアセテート、フェノキシ酢酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、N−スクシンイミジルN−メチルカルバメート、1,1’−オキサリルジイミダゾール、および1,1’−カルボニル−ジ−(1,2,4−トリアゾール)。
【0104】
一部の実施形態では、アミドの形成は、アミンおよびカルボン酸の反応混合物に、以下のホスホニウム/ウロニウム/ホルムアミジニウム誘導体のうちの1つまたは複数を添加することによって達成することができる:1−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール(HOBt)、1−ヒドロキシ−7−アザ−ベンゾトリアゾール(HOAt)、HBTU(N,N,N’,N’−テトラメチル−O−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)ウロニウムヘキサフルオロホスフェート)、(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)、(7−アザベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、O−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−ビス(ペンタメチレン)ウロニウムヘキサフルオロホスフェート、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−ビス(テトラメチレン)ウロニウムヘキサフルオロホスフェート、(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)ジピペリジノカルベニウムヘキサフルオロホスフェート、(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート、ブロモトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、ブロモトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、O−(6−クロロベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート、O−(6−クロロベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート、2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリジニウムヘキサフルオロホスフェート、2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリジニウムテトラフルオロボレート、2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリニウムクロリド、クロロジピロリジノカルベニウムヘキサフルオロホスフェート、クロロ−N,N,N’,N’−テトラメチルホルムアミジニウムヘキサフルオロホスフェート、クロロトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、1−シアノ−2−エトキシ−2−オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノ−モルホリノ−カルベニウムヘキサフルオロホスフェート(COMU)、ジピロリジノ(N−スクシンイミジルオキシ)カルベニウムヘキサフルオロホスフェート、O−[(エトキシカルボニル)シアノメチレンアミノ]−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート、O−[(エトキシカルボニル)シアノメチレンアミノ]−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート、フルオロ−N,N,N’,N’−ビス(テトラメチレン)ホルムアミジニウムヘキサフルオロホスフェート、フルオロ−N,N,N’,N’−テトラメチルホルムアミジニウムヘキサフルオロホスフェート、1−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]−1H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−b]ピリジニウム3−オキシドヘキサフルオロホスフェート(HATU)、N,N,N’,N’−テトラメチル−O−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)ウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、1−[(ジメチルアミノ)(モルホリノ)メチレン]−1H−[1,2,3]トリアゾロ[4,5−b]ピリジン−1−イウム3−オキシドヘキサフルオロホスフェート(HDMA)、O−(5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート、S−(1−オキシド−2−ピリジル)−N,N,N’,N’−テトラメチルチウロニウムヘキサフルオロホスフェート、S−(1−オキシド−2−ピリジル)−N,N,N’,N’−テトラメチルチウロニウムテトラフルオロボレート、O−(2−オキソ−1(2H)ピリジル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート、O−(2−オキソ−1(2H)ピリジル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート、N,N,N’,N’−テトラメチル−O−(N−スクシンイミジル)ウロニウムヘキサフルオロホスフェート、およびN,N,N’,N’−テトラメチル−O−(N−スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオロボレート。
【0105】
本発明の有用なグリカンには、腫瘍関連炭水化物抗原(TACA)が含まれる。細胞表面のスフィンゴ糖脂質Globo Hは、幅広いがん細胞株において高度に発現する抗原性炭水化物のファミリーのメンバーである。本発明において有用な他のGlobo Hスフィンゴ糖脂質類似体は、SSEA−3(もしくはGb5)、SSEA−4、Gb3、またはGb4であり得る。他の本発明のグリカンには、Tn、TF、sTn、ポリシアル酸、Le
x、Le
y、Le
a、sLe
x、SLe
a、GD1a、GT1b、A2B5、GD2、GD3、GM1、GM2、GM3、フコシル−GM1、またはNeu5GcGM3が含まれる。
【0106】
本発明のグリカンは、様々な手順によって得られている。Globo H、SSEA−3、およびSSEA−4の合成は、当該技術分野において公知の方法によって達成することができる(Bosse F.ら、J Org Chem. 67巻(19号):6659〜70頁、2002年;Koeller, K. M.およびWong, C.−H.、Nature、409巻、232〜240頁、2001年;Wymer, N.およびToone, E. J、Curr. Opin. Chem. Biol、4巻、110〜119頁、2000年;Gijsen, H. J. M.; Qiao, L.; Fitz, W.およびWong, C.−H.、Chem. Rev.、96巻、443〜473頁、1996年)。
【0107】
エステルまたはアミンを含む部分であるAは、エステル(−O−(C=O)−R)またはアミド(−NH−(C=O)−R)の化学結合であってもよく、式中、Rは直鎖または分岐鎖のアルキル基、ヘテロアルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基である。
【0108】
基材Xは、上に記載されている基材および表面であり得る。
【0109】
脂質鎖Zは、直鎖または分岐鎖の脂質鎖であり得る。これらの鎖は、飽和であっても不飽和であってもよい。アルキル鎖は、12〜40個の炭素を含み得る。一部の実施形態では、これらの鎖は、分岐飽和アルキル鎖である。一部の実施形態では、脂質鎖は、セラミド鎖であってもよい。
【0110】
結合の検出は、例えば、試験分子に直接的に付着した標識の検出による、直接的なものであってもよい。あるいは、検出は、例えば検出可能に標識された複合体結合剤、例えば標識された二次抗体、またはアレイ上の炭水化物と試験分子との間における複合体に、もしくは試験分子に結合可能である他の標識された分子を検出することによる、間接的なものであってもよい。結合された標識は、任意の利用可能な検出方法を使用して観察することができる。例えば、アレイCCD分析器を用いて、アレイに結合している化学発光標識分子を検出することができる。本明細書において例証される実験では、Agnitio BioIC分析器(BA−G2000、Agnitio Science and Technology Inc.)を使用した。このようなアレイCCD分析器からのデータは、Agnitio LabIT2.3.6画像解析ソフトウェア(Agnitio Science and Technology Inc.)を使用することによって分析することができる。
定義
【0111】
炭水化物抗原Globo H、ステージ特異的胎児抗原3(SSEA−3)、およびステージ特異的胎児抗原4(SSEA−4)は、構造においても機能においても互いと密接に関連している。Globo H、SSEA−3、およびSSEA−4は、グロボシリーズのスフィンゴ糖脂質、1〜3であり、SSEA−3は、Globo Hの非フコシル化五糖前駆体構造であり、SSEA−4は、SSEA−3のガラクトースの非還元末端にシアル酸アルファ2−3結合を有する、シアリル化SSEA−3である。他のグリカンには、Le
y、SLe
a、およびSLe
xが含まれる。
【0112】
本明細書において使用される場合、「画定されたグリカンプローブの場所」とは、すべてが同様のグリカン構造を有する、ある密度のグリカン分子が付着している、固体支持体の所定の領域のことである。「グリカン領域」もしくは「選択された領域」、または単に「領域」という用語は、本明細書において、画定されたグリカンプローブの場所という用語に対して互換的に使用される。画定されたグリカンプローブの場所は、任意の好都合な形状、例えば円形、矩形、楕円形、くさび形などを有し得る。一部の実施形態では、画定されたグリカンプローブの場所、したがって各異なるグリカンタイプまたは構造的に関連するグリカンの異なる群が付着している面積は、約1cm
2よりも小さいか、または1mm
2未満、または0.5mm
2未満である。一部の実施形態では、グリカンプローブの場所は、約10,000μm
2未満または100μm
2未満の面積を有する。各々の画定されたグリカンプローブの場所内に付着しているグリカン分子は、実質的に同一である。加えて、各々の画定されたグリカンプローブの場所内には、各グリカンタイプの複数のコピーが存在する。各々の画定されたグリカンプローブの場所内の、各グリカンタイプのコピーの数は、数千から数百万であり得る。
【0113】
本明細書において使用される場合、本発明のアレイは、各々が「一タイプのグリカン分子」を有する、画定されたグリカンプローブの場所を有する。用いられる「一タイプのグリカン分子」は、実質的に構造的に同一なグリカン分子の群、または構造的に類似するグリカン分子の群であり得る。画定されたグリカンプローブの場所内のすべてのグリカン分子が、同一の構造を有する必要性があるわけではない。一部の実施形態では、単一の画定されたグリカンプローブの場所内のグリカンは、構造異性体であったり、異なる数の糖単位を有したり、あるいはいくぶん異なる方法で分岐していたりする。しかしながら、一般には、画定されたグリカンプローブの場所内のグリカンは、実質的に同じタイプの糖単位を有し、かつ/または各タイプの糖単位をほぼ同じ割合で有する。また、画定されたグリカンプローブの場所内のグリカンの糖単位における置換基のタイプも、実質的に同じである。
【0115】
特定の官能基および化学用語の定義について、下でより詳細に説明する。化学元素は、Periodic Table of the Elements、CAS版、Handbook of Chemistry and Physics、第75編、内表紙に従って識別され、特定の官能基は、一般に、この中に記載されている通りに定義される。加えて、有機化学の一般原則、ならびに特定の官能部分および反応性については、Thomas Sorrell、Organic Chemistry、University Science Books、Sausalito、1999年、SmithおよびMarch、March’s Advanced Organic Chemistry、第5編、John Wiley & Sons, Inc.、New York、2001年;Larock、Comprehensive Organic Transformations、VCH Publishers, Inc.、New York、1989年;およびCarruthers、Some Modern Methods of Organic Synthesis、第3編、Cambridge University Press、Cambridge、1987年に記載されている。
【0116】
本明細書において記載される化合物は、1つまたは複数の不斉中心を含んでもよく、したがって、様々な異性体型、例えばエナンチオマーおよび/またはジアステレオマーとして存在し得る。例えば、本明細書に記載される化合物は、個別のエナンチオマー、ジアステレオマー、または幾何異性体の形態であってもよく、あるいは立体異性体の混合物、例えばラセミ混合物および1つまたは複数の立体異性体に富んだ混合物の形態であってもよい。異性体は、当業者に公知の方法、例えばキラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、ならびにキラル塩の形成および結晶化などによって混合物から単離することができる。あるいは、好ましい異性体を、不斉合成によって調製してもよい。例えば、Jacquesら、Enantiomers, Racemates and Resolutions (Wiley Interscience、New York、1981年);Wilenら、Tetrahedron 33巻:2725頁(1977年);Eliel、Stereochemistry of Carbon Compounds (McGraw−Hill、NY、1962年);およびWilen、Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions、268頁(E.L. Eliel編、Univ. of Notre Dame Press、Notre Dame、IN、1972年)を参照されたい。加えて、本発明は、他の異性体を実質的に含まない個別の異性体として本明細書に記載される化合物を包含し、あるいは、様々な異性体の混合物として本明細書に記載される化合物を包含する。
【0117】
値の範囲が列挙されている場合、その範囲内の各値およびサブ範囲を包含することが意図される。例えば、「C
1〜6」は、C
1、C
2、C
3、C
4、C
5、C
6、C
1〜6、C
1〜5、C
1〜4、C
1〜3、C
1〜2、C
2〜6、C
2〜5、C
2〜4、C
2〜3、C
3〜6、C
3〜5、C
3〜4、C
4〜6、C
4〜5、およびC
5〜6を包含することが意図される。
【0118】
「アルキル」は、1〜20個の炭素原子を有する、直鎖または分岐鎖飽和炭化水素基のラジカル(「C
1〜20アルキル」)を指す。一部の実施形態では、アルキル基は、1から10個の炭素原子を有する(「C
1〜10アルキル」)。一部の実施形態では、アルキル基は、1から9個の炭素原子を有する(「C
1〜9アルキル」)。一部の実施形態では、アルキル基は、1から8個の炭素原子を有する(「C
1〜8アルキル」)。一部の実施形態では、アルキル基は、1から7個の炭素原子を有する(「C
1〜7アルキル」)。一部の実施形態では、アルキル基は、1から6個の炭素原子を有する(「C
1〜6アルキル」)。一部の実施形態では、アルキル基は、1から5個の炭素原子を有する(「C
1〜5アルキル」)。一部の実施形態では、アルキル基は、1から4個の炭素原子を有する(「C
1〜4アルキル」)。一部の実施形態では、アルキル基は、1から3個の炭素原子を有する(「C
1〜3アルキル」)。一部の実施形態では、アルキル基は、1から2個の炭素原子を有する(「C
1〜2アルキル」)。一部の実施形態では、アルキル基は、1個の炭素原子を有する(「C1アルキル」)。一部の実施形態では、アルキル基は、2から6個の炭素原子を有する(「C
2〜6アルキル」)。C
1〜6アルキル基の例には、メチル(C
1)、エチル(C
2)、n−プロピル(C
3)、イソプロピル(C
3)、n−ブチル(C
4)、tert−ブチル(C
4)、sec−ブチル(C
4)、イソブチル(C
4)、n−ペンチル(C
5)、3−ペンタニル(C
5)、アミル(C
5)、ネオペンチル(C
5)、3−メチル−2−ブタニル(C
5)、第3級アミル(C
5)、およびn−ヘキシル(C
6)が含まれる。アルキル基の追加的な例には、n−ヘプチル(C
7)、n−オクチル(C
8)などが含まれる。別途特定されない限り、アルキル基の各事例は、独立して、任意選択で置換されており、すなわち、非置換であるか(「非置換アルキル」)、あるいは1つまたは複数の置換基で置換されている(「置換アルキル」)。ある特定の実施形態では、アルキル基は、非置換C
1〜10アルキル(例えば、−CH
3)である。ある特定の実施形態では、アルキル基は、置換C
1〜10アルキルである。
【0119】
「アルケニル」は、2〜20個の炭素原子、1つまたは複数の炭素−炭素二重結合を有し、三重結合を有しない直鎖または分岐鎖炭化水素基のラジカル(「C
2〜20アルケニル」)を指す。一部の実施形態では、アルケニル基は、2から10個の炭素原子を有する(「C
2〜10アルケニル」)。一部の実施形態では、アルケニル基は、2から9個の炭素原子を有する(「C
2〜9アルケニル」)。一部の実施形態では、アルケニル基は、2から8個の炭素原子を有する(「C
2〜8アルケニル」)。一部の実施形態では、アルケニル基は、2から7個の炭素原子を有する(「C
2〜7アルケニル」)。一部の実施形態では、アルケニル基は、2から6個の炭素原子を有する(「C
2〜6アルケニル」)。一部の実施形態では、アルケニル基は、2から5個の炭素原子を有する(「C
2〜5アルケニル」)。一部の実施形態では、アルケニル基は、2から4個の炭素原子を有する(「C
2〜4アルケニル」)。一部の実施形態では、アルケニル基は、2から3個の炭素原子を有する(「C
2〜3アルケニル」)。一部の実施形態では、アルケニル基は、2個の炭素原子を有する(「C
2アルケニル」)。1つまたは複数の炭素−炭素二重結合は、内部にあってもよく(2−ブテニルの場合など)、あるいは末端にあってもよい(1−ブテニルの場合など)。C
2〜4アルケニル基の例には、エテニル(C
2)、1−プロペニル(C
3)、2−プロペニル(C
3)、1−ブテニル(C
4)、2−ブテニル(C
4)、ブタジエニル(C
4)などが含まれる。C
2〜6アルケニル基の例には、前述のC
2〜4アルケニル基、およびペンテニル(C
5)、ペンタジエニル(C
5)、ヘキセニル(C
6)などが含まれる。アルケニルの追加的な例には、ヘプテニル(C
7)、オクテニル(C
8)、オクタトリエニル(C
8)などが含まれる。別途特定されない限り、アルケニル基の各事例は、独立して、任意選択で置換されており、すなわち、非置換であるか(「非置換アルケニル」)、あるいは1つまたは複数の置換基で置換されている(「置換アルケニル」)。ある特定の実施形態では、アルケニル基は、非置換C
2〜10アルケニルである。ある特定の実施形態では、アルケニル基は、置換C
2〜10アルケニルである。
【0120】
「ヘテロシクリル」または「複素環式」は、環炭素原子と、1〜4個の環ヘテロ原子とを有する3〜10員非芳香族環系のラジカル(「3〜10員ヘテロシクリル」)を指し、ここで、各ヘテロ原子は、独立して、窒素、酸素、硫黄、ホウ素、リン、およびケイ素から選択される。ある特定の実施形態では、ヘテロ原子は、独立して、窒素、硫黄、および酸素から選択される。1つまたは複数の窒素原子を含有するヘテロシクリル基では、付着点は、原子価が許容する場合、炭素または窒素原子であり得る。ヘテロシクリル基は、単環式であってもよく(「単環式ヘテロシクリル」)、あるいは縮合環系、架橋環系、またはスピロ環系、例えば二環系であってもよく(「二環式ヘテロシクリル」)、飽和または部分不飽和であり得る。ヘテロシクリル二環式環系は、一方または両方の環に1つまたは複数のヘテロ原子を含んでもよい。また、「ヘテロシクリル」には、上に定義したような複素環が、1つもしくは複数のカルボシクリル基と縮合しており、その付着点が、カルボシクリルもしくは複素環のいずれかにある環系、または上に定義したような複素環が、1つもしくは複数のアリールもしくはヘテロアリール基と縮合しており、その付着点が、複素環にある環系が含まれ、このような事例では、環員の数は、継続して、複素環系の環員の数を示す。別途特定されない限り、ヘテロシクリルの各事例は、独立して、任意選択で置換されており、すなわち、非置換であるか(「非置換ヘテロシクリル」)、あるいは1つまたは複数の置換基で置換されている(「置換ヘテロシクリル」)。ある特定の実施形態では、ヘテロシクリル基は、非置換3〜10員ヘテロシクリルである。ある特定の実施形態では、ヘテロシクリル基は、置換3〜10員ヘテロシクリルである。
【0121】
「アリール」は、芳香族環系内に6〜14個の環炭素原子と0個のヘテロ原子とを有する、単環式または多環式(例えば、二環式もしくは三環式)の4n+2芳香族環系(例えば、環状アレイにおいて6、10、または14個のπ電子が共有されている)のラジカル(「C
6〜14アリール」)を指す。一部の実施形態では、アリール基は、6個の環炭素原子を有する(「C
6アリール」、例えばフェニル)。また、「アリール」には、上に定義したようなアリール環が、1つまたは複数のカルボシクリルまたはヘテロシクリル基と縮合しており、そのラジカルまたは付着点が、アリール環にある環系が含まれ、このような事例では、炭素原子の数は、継続して、アリール環系の炭素原子の数を示す。別途特定されない限り、アリール基の各事例は、独立して、任意選択で置換されており、すなわち、非置換であるか(「非置換アリール」)、あるいは1つまたは複数の置換基で置換されている(「置換アリール」)。ある特定の実施形態では、アリール基は、非置換C6〜14アリールである。ある特定の実施形態では、アリール基は、置換C6〜14アリールである。
【0122】
二価の架橋基である、本明細書において定義されるようなアルキル、アルケニル、アルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリール基は、さらに、接尾語−エンを使用して、例えばアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、カルボシクリレン、ヘテロシクリレン、アリーレン、およびヘテロアリーレンと呼ばれる。
【0123】
「アルコキシ」または「アルキルオキシ」という用語は、−O−アルキルラジカルを指し、ここで、アルキルは、本明細書において定義されるような、任意選択で置換されているアルキルである。アルコキシの例には、限定されるものではないが、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、およびtert−ブトキシが含まれる。
【0124】
「アリールオキシ」という用語は、−O−アリールを指し、ここで、アリールは、本明細書において定義されるような、任意選択で置換されているアリールである。
【0125】
本明細書において使用される場合、「任意選択で置換されている」という用語は、置換部分または非置換部分を指す。
【0126】
本明細書において定義されるようなアルキル、アルケニル、アルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリール基は、任意選択で置換されている(例えば、「置換」もしくは「非置換」アルキル、「置換」もしくは「非置換」アルケニル、「置換」もしくは「非置換」アルキニル、「置換」もしくは「非置換」カルボシクリル、「置換」もしくは「非置換」ヘテロシクリル、「置換」もしくは「非置換」アリール、または「置換」もしくは「非置換」ヘテロアリール基)。一般に、「置換された」という用語は、「任意選択で」という用語が先行するか否かに関わらず、ある基(例えば、炭素原子または窒素原子)に存在する少なくとも1個の水素が、許容される置換基、例えば、置換すると安定した化合物、例えば転位、環化、脱離、または他の反応などによる変換を自発的に起こさない化合物をもたらす置換基と置き換えられていることを意味する。別途指示のない限り、「置換された」基は、その基の1つまたは複数の置換可能な位置において置換基を有し、任意の所与の構造において1つを超える位置が置換されている場合、置換基は、各位置において同じであるか、または異なっている。「置換された」という用語は、すべての許容される有機化合物の置換基、安定した化合物の形成をもたらす、本明細書に記載される置換基のうちのいずれかとの置換を含むことが企図される。本発明は、安定した化合物に到達するために、あらゆるすべてのこのような組合せを企図する。本発明の目的のためには、窒素などのヘテロ原子は、水素置換基および/またはヘテロ原子の原子価を満たし、安定した部分の形成をもたらす、本明細書に記載されているような任意の好適な置換基を有し得る。
【0127】
「ハロ」または「ハロゲン」は、フッ素(フルオロ、−F)、塩素(クロロ、−Cl)、臭素(ブロモ、−Br)、またはヨウ素(ヨード、−I)を指す。
【0128】
本明細書において使用される場合、「アシル」は、−C(=O)Raa、−CHO、−CO
2Raa、−C(=O)N(Rbb)
2、−C(=NRbb)Raa、−C(=NRbb)ORaa、−C(=NRbb)N(Rbb)
2、−C(=O)NRbbSO
2Raa、−C(=S)N(Rbb)
2、−C(=O)SRaa、および−C(=S)SRaaからなる群から選択される部分を指し、式中、RaaおよびRbbは、本明細書において定義される通りである。
【0129】
窒素原子は、原子価が許容する場合、置換されていても非置換であってもよく、第一級、第二級、第三級、および第四級窒素原子が含まれる。例示的な窒素原子置換基には、限定されるものではないが、水素、−OH、−ORaa、−N(Rcc)
2、−CN、−C(=O)Raa、−C(=O)N(Rcc)
2、−CO
2Raa、−SO
2Raa、−C(=NRbb)Raa、−C(=NRcc)ORaa、−C(=NRcc)N(Rcc)
2、−SO
2N(Rcc)
2、−SO
2Rcc、−SO
2ORcc、−SORaa、−C(=S)N(Rcc)
2、−C(=O)SRcc、−C(=S)SRcc、−P(=O)
2Raa、−P(=O)(Raa)2、−P(=O)2N(Rcc)2、−P(=O)(NRcc)2、C
1〜10アルキル、C
1〜10ペルハロアルキル、C
2〜10アルケニル、C
2〜10アルキニル、C
3〜10カルボシクリル、3〜14員ヘテロシクリル、C
6〜14アリール、および5〜14員ヘテロアリールが含まれ、あるいは窒素原子に付着した2個のRcc基が、接合されて3〜14員ヘテロシクリルまたは5〜14員ヘテロアリール環を形成し、各アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリール、およびヘテロアリールは、独立して、0、1、2、3、4、または5個のRdd基で置換されており、Raa、Rbb、Rcc、およびRddは、上に定義した通りである。
【0130】
ある特定の実施形態では、酸素原子に存在する置換基は、酸素保護基(ヒドロキシル保護基とも呼ばれる)である。酸素保護基には、限定されるものではないが、−Raa、−N(Rbb)
2、−C(=O)SRaa、−C(=O)Raa、−CO
2Raa、−C(=O)N(Rbb)
2、−C(=NRbb)Raa、−C(=NRbb)ORaa、−C(=NRbb)N(Rbb)
2、−S(=O)Raa、−SO
2Raa、−Si(Raa)
3、−P(Rcc)
2、−P(Rcc)
3、−P(=O)
2Raa、−P(=O)(Raa)
2、−P(=O)(ORcc)
2、−P(=O)
2N(Rbb)
2、および−P(=O)(NRbb)
2が含まれ、Raa、Rbb、およびRccは、本明細書において定義される通りである。酸素保護基は、当該技術分野において周知であり、Protecting Groups in Organic Synthesis、T. W. GreeneおよびP. G. M. Wuts、第3編、John Wiley & Sons、1999年に記載されているものが含まれる。この文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0131】
例示的な酸素保護基には、限定されるものではないが、メチル、メトキシルメチル(MOM)、メチルチオメチル(MTM)、t−ブチルチオメチル、(フェニルジメチルシリル)メトキシメチル(SMOM)、ベンジルオキシメチル(BOM)、p−メトキシベンジルオキシメチル(PMBM)、(4−メトキシフェノキシ)メチル(p−AOM)、グアイアコールメチル(GUM)、t−ブトキシメチル、4−ペンテニルオキシメチル(POM)、シロキシメチル、2−メトキシエトキシメチル(MEM)、2,2,2−トリクロロエトキシメチル、ビス(2−クロロエトキシ)メチル、2−(トリメチルシリル)エトキシメチル(SEMOR)、テトラヒドロピラニル(THP)、3−ブロモテトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、1−メトキシシクロヘキシル、4−メトキシテトラヒドロピラニル(MTHP)、4−メトキシテトラヒドロチオピラニル、4−メトキシテトラヒドロチオピラニルS,S−ジオキシド、1−[(2−クロロ−4−メチル)フェニル]−4−メトキシピペリジン−4−イル(CTMP)、1,4−ジオキサン−2−イル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフラニル、2,3,3a,4,5,6,7,7a−オクタヒドロ−7,8,8−トリメチル−4,7−メタノベンゾフラン−2−イル、1−エトキシエチル、1−(2−クロロエトキシ)エチル、1−メチル−1−メトキシエチル、1−メチル−1−ベンジルオキシエチル、1−メチル−1−ベンジルオキシ−2−フルオロエチル、2,2,2−トリクロロエチル、2−トリメチルシリルエチル、2−(フェニルセレニル)エチル、t−ブチル、アリル、p−クロロフェニル、p−メトキシフェニル、2,4−ジニトロフェニル、ベンジル(Bn)、p−メトキシベンジル、3,4−ジメトキシベンジル、o−ニトロベンジル、p−ニトロベンジル、p−ハロベンジル、2,6−ジクロロベンジル、p−シアノベンジル、p−フェニルベンジル、2−ピコリル、4−ピコリル、3−メチル−2−ピコリルN−オキシド、ジフェニルメチル、p,p’−ジニトロベンズヒドリル、5−ジベンゾスベリル、トリフェニルメチル、α−ナフチルジフェニルメチル、p−メトキシフェニルジフェニルメチル、ジ(p−メトキシフェニル)フェニルメチル、トリ(p−メトキシフェニル)メチル、4−(4’−ブロモフェナシルオキシフェニル)ジフェニルメチル、4,4’,4”−トリス(4,5−ジクロロフタルイミドフェニル)メチル、4,4’,4”−トリス(レブリノイルオキシフェニル)メチル、4,4’,4”−トリス(ベンゾイルオキシフェニル)メチル、3−(イミダゾール−1−イル)ビス(4’,4”−ジメトキシフェニル)メチル、1,1−ビス(4−メトキシフェニル)−1’−ピレニルメチル、9−アントリル、9−(9−フェニル)キサンテニル、9−(9−フェニル−10−オキソ)アントリル、1,3−ベンゾジチオラン−2−イル、ベンゾイソチアゾリルS,S−ジオキシド、トリメチルシリル(TMS)、トリエチルシリル(TES)、トリイソプロピルシリル(TIPS)、ジメチルイソプロピルシリル(IPDMS)、ジエチルイソプロピルシリル(DEIPS)、ジメチルテキシルシリル、t−ブチルジメチルシリル(TBDMS)、t−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、トリベンジルシリル、トリ−p−キシリルシリル、トリフェニルシリル、ジフェニルメチルシリル(DPMS)、t−ブチルメトキシフェニルシリル(TBMPS)、ホルメート、ベンゾイルホルメート、アセテート、クロロアセテート、ジクロロアセテート、トリクロロアセテート、トリフルオロアセテート、メトキシアセテート、トリフェニルメトキシアセテート、フェノキシアセテート、p−クロロフェノキシアセテート、3−フェニルプロピオネート、4−オキソペンタノエート(レブリネート)、4,4−(エチレンジチオ)ペンタノエート(レブリノイルジチオアセタール)、ピバロエート、アダマントエート、クロトネート、4−メトキシクロトネート、ベンゾエート、p−フェニルベンゾエート、2,4,6−トリメチルベンゾエート(メシトエート)、炭酸メチル、9−フルオレニルメチルカーボネート(Fmoc)、炭酸エチル、2,2,2−トリクロロエチルカーボネート(Troc)、2−(トリメチルシリル)エチルカーボネート(TMSEC)、2−(フェニルスルホニル)エチルカーボネート(Psec)、2−(トリフェニルホスホニオ)エチルカーボネート(Peoc)、炭酸イソブチル、炭酸ビニル、炭酸アリル、t−ブチルカーボネート(BOC)、p−ニトロフェニルカーボネート、炭酸ベンジル、p−メトキシベンジルカーボネート、3,4−ジメトキシベンジルカーボネート、o−ニトロベンジルカーボネート、p−ニトロベンジルカーボネート、S−ベンジルチオカーボネート、4−エトキシ−1−ナフチル(napththyl)カーボネート、メチルジチオカーボネート、2−ヨードベンゾエート、4−アジドブチレート、4−ニトロ−4−メチルペンタノエート、o−(ジブロモメチル)ベンゾエート、2−ホルミルベンゼンスルホネート、2−(メチルチオメトキシ)エチル、4−(メチルチオメトキシ)ブチレート、2−(メチルチオメトキシメチル)ベンゾエート、2,6−ジクロロ−4−メチルフェノキシアセテート、2,6−ジクロロ−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノキシアセテート、2,4−ビス(1,1−ジメチルプロピル)フェノキシアセテート、クロロジフェニルアセテート、イソブチレート、モノスクシノエート、(E)−2−メチル−2−ブテノエート、o−(メトキシアシル)ベンゾエート、α−ナフトエート、ニトレート、アルキルN,N,N’,N’−テトラメチルホスホロジアミデート、アルキルN−フェニルカルバメート、ボレート、ジメチルホスフィノチオイル、アルキル2,4−ジニトロフェニルスルフェネート、サルフェート、メタンスルホネート(メシレート)、ベンジルスルホネート、およびトシレート(Ts)が含まれる。
【0132】
本発明の実践では、別途指示のない限り、当該技術分野の範囲内にある、分子生物学、微生物学、組換えDNA、および免疫学の従来の技法を用いることになる。このような技法については、文献において十分に説明されている。例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual、第2編、Sambrook、FritschおよびManiatis編(Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989年);DNA Cloning、第I巻および第II巻(D. N. Glover編、1985年);Culture Of Animal Cells (R. I. Freshney、Alan R. Liss, Inc.、1987年);Immobilized Cells And Enzymes (IRL Press、1986年);B. Perbal、A Practical Guide To Molecular Cloning (1984年);学術論文、Methods In Enzymology (Academic Press, Inc.、N.Y.);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells (J. H. MillerおよびM. P. Calos編、1987年、Cold Spring Harbor Laboratory);Methods In Enzymology、第154巻および第155巻(Wuら編)、Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology (MayerおよびWalker編、Academic Press、London、1987年);HarlowおよびLaneによる、Antibodies: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press、1988年);ならびにHandbook Of Experimental Immunology、第I〜IV巻(D. M. WeirおよびC. C. Blackwell編、1986年)を参照されたい。
【0133】
本明細書において使用される場合、「グリカン」という用語は、多糖またはオリゴ糖を指す。また、本明細書では、グリカンは、糖タンパク質、糖脂質、糖ペプチド、糖プロテオーム、ペプチドグリカン、リポ多糖、またはプロテオグリカンなどの糖コンジュゲートの炭水化物部を指すようにも使用される。グリカンは、通常、単糖間のO−グリコシド結合のみからなる。例えば、セルロースは、β−1,4結合D−グルコースで構成されるグリカン(または、より具体的にはグルカン)であり、キチンは、β−1,4結合N−アセチル−D−グルコサミンで構成されるグリカンである。グリカンは、単糖残基のホモポリマーであってもそのヘテロポリマーであってもよく、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。グリカンは、糖タンパク質およびプロテオグリカンの場合と同様に、タンパク質に付着した状態で見出される場合もある。グリカンは、一般に、細胞の外面において見出される。真核生物では、O結合型およびN結合型グリカンが非常に一般的であるが、原核生物でも、それほど一般的ではないが見出され得る。N結合型グリカンは、シークオンのアスパラギンのR基窒素(N)に付着した状態で見出される。シークオンとは、Asn−X−Ser配列またはAsn−X−Thr配列のことであり、Xは、プロリンを除く任意のアミノ酸である。
【0134】
本明細書において使用される場合、「抗原」という用語は、免疫応答を誘発することができる任意の物質として定義される。
【0135】
本明細書において使用される場合、「免疫原性」という用語は、免疫原、抗原、またはワクチンが、免疫応答を刺激する能力を指す。
【0136】
本明細書において使用される場合、「CD1d」という用語は、様々なヒト抗原提示細胞の表面において発現する、糖タンパク質のCD1(表面抗原分類1)ファミリーのメンバーを指す。CD1dを提示する脂質抗原は、ナチュラルキラーT細胞を活性化させる。CD1dは、糖脂質抗原が結合する、深い抗原結合溝を有する。樹状細胞において発現するCD1d分子は、糖脂質、例えばC34などのGalCer類似体に結合し、これらを提示し得る。
【0137】
本明細書において使用される場合、「エピトープ」という用語は、抗体またはT細胞受容体の抗原結合性部位と接触する、抗原分子の一部として定義される。
【0138】
本明細書において使用される場合、「ワクチン」という用語は、全病原生物(死滅させるかまたは弱毒化した)、またはこのような生物の構成成分であって、生物が引き起こす疾患に対する免疫を与えるのに使用される、タンパク質、ペプチド、または多糖などの構成成分からなる抗原を含有する調製物を指す。ワクチン調製物は、天然、合成、または組換えDNA技術によって導出され得る。
【0139】
本明細書において使用される場合、「抗原特異的」という用語は、特定の抗原または抗原の断片を供給すると、特異的な細胞増殖がもたらされるような細胞集団の特性を指す。
【0140】
本明細書において使用される場合、「特異的に結合する」という用語は、結合対(例えば、抗体と抗原)の間の相互作用を指す。様々な事例において、特異的に結合することは、約10
−6モル/リットル、約10
−7モル/リットル、もしくは約10
−8モル/リットル、またはそれ未満の親和定数によって具体化することができる。
【0141】
本明細書において使用される場合、「フローサイトメトリー」または「FACS」という用語は、流体流に懸濁させた粒子または細胞の物理的特性および化学的特性を、光学的および電子的な検出デバイスによって調べるための技法を意味する。
【0142】
本明細書において使用される場合、糖酵素という用語は、少なくとも部分的に、グロボシリーズ生合成経路における酵素を指す。例示的な糖酵素には、アルファ−4GalT、ベータ−4GalNAcT−I、またはベータ−3GalT−V酵素が含まれる。
【0143】
「単離」抗体とは、その天然環境の構成成分から同定および分離、ならびに/または回収された抗体のことである。その天然環境の夾雑構成成分は、抗体の研究的使用、診断的使用、または治療的使用に干渉する物質であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性溶質または非タンパク質性溶質が含まれ得る。一実施形態では、抗体は、(1)例えば、ローリー法によって判定した場合、抗体の95重量%超まで、一部の実施形態では99重量%超まで精製するか、(2)例えば、スピニングカップ型シークエネーターを使用することによって、N末端のアミノ酸配列または内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで精製するか、あるいは(3)例えば、クーマシーブルーもしくは銀染色を使用して、還元条件下もしくは非還元条件下で、SDS−PAGEによって均質性まで精製する。抗体の天然環境の少なくとも1つの構成成分は存在しないため、単離抗体は、組換え細胞内のインサイチュの抗体を含む。しかしながら、通常、単離抗体は、少なくとも1つの精製ステップによって調製される。
【0144】
本明細書において互換的に使用される「支持体」または「基材」という用語は、1つまたは複数の分子と、直接的または間接的に、結合、付着、合成、連結、または別様に会合した1つまたは複数の構成成分を含む材料または材料の群を指す。支持体は、生物的、非生物的、無機、有機、またはこれらの組合せである材料から構築されてもよい。支持体は、特定の実施形態内におけるその使用に基づき、任意の適切なサイズまたは構成であってもよい。
【0145】
本明細書において使用される場合、「標的」という用語は、アッセイ内の目的の種を指す。標的は、天然型であってももしくは合成であってもよく、または組合せであってもよい。標的は、変更されなくてもよく(例えば、生物またはその試料内で直接的に利用されてもよい)、またはアッセイにとって適切な様式で変更されてもよい(例えば、精製、増幅、フィルタリングされてもよい)。標的は、ある特定のアッセイ内では、好適な手段を通じて結合メンバーに結合してもよい。標的の非限定的例には、制限されるものではないが、抗体またはその断片、細胞膜受容体、特定の抗原決定因子(ウイルス、細胞、または他の物質など)と反応性であるモノクローナル抗体および抗血清、薬物、オリゴヌクレオチド、核酸、ペプチド、補因子、糖、レクチン、多糖、細胞、細胞膜、および細胞小器官が含まれる。標的は、アッセイに応じて、任意の好適なサイズであってもよい。
【0146】
本明細書において使用される場合、「実質的に同様」、「実質的に同じ」、「同等」、または「実質的に同等」という語句は、当業者が、その値(例えばKd値、抗ウイルス効果など)によって測定される生物学的特徴の文脈内では、2つの値の間の差違を、生物学的有意性および/または統計学的有意性がほとんどないかまたはないと考慮するような、2つの数値(例えば、一方はある分子と関連し、他方は基準/比較用分子と関連する)の間の、十分に高度の類似性を表す。前記2つの値の間の差違は、例えば、基準/比較用分子についての値の関数として、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、および/または約10%未満である。
【0147】
本明細書において使用される場合、「実質的に低減された」または「実質的に異なる」という語句は、当業者が、その値(例えばKd値)によって測定される生物学的特徴の文脈内では、2つの値の間の差違を、統計学的有意性があると考慮するような、2つの数値(一般に、一方はある分子と関連し、他方は基準/比較用分子と関連する)の間の、十分に高度の差違を表す。前記2つの値の間の差違は、例えば、基準/比較用分子についての値の関数として、約10%超、約20%超、約30%超、約40%超、および/または約50%超である。
【0148】
「結合親和性」は、一般に、ある分子(例えば抗体)の単一の結合性部位と、その結合パートナー(例えば抗原)との間の非共有結合的相互作用の総計の強度を指す。別途指示のない限り、本明細書において使用される場合、「結合親和性」は、結合対のメンバー(例えば、抗体および抗原)の間の1:1の相互作用を反映する、固有の結合親和性を指す。分子Xの、そのパートナーYに対する親和性は、一般に、解離定数(Kd)によって表すことができる。親和性は、本明細書に記載される方法などの、当該技術分野において公知の一般的方法によって測定することができる。低親和性抗体は、一般に、抗原への結合が遅く、容易に解離する傾向があるのに対し、一方で高親和性抗体は、一般に、抗原への結合がより迅速であり、結合を長く維持する傾向がある。当該技術分野では、結合親和性を測定する様々な方法が公知であり、これらのうちのいずれかを、本発明の目的のために使用することができる。具体的な例証的実施形態については、以下で説明する。
【0149】
本明細書において使用される場合、「ベクター」という用語は、それが連結された別の核酸を輸送することが可能な核酸分子を指すことが意図される。ベクターのタイプの1つは、さらなるDNAセグメントをライゲーションし得る、環状の二本鎖DNAループを指す「プラスミド」である。ベクターの別のタイプは、ファージベクターである。ベクターの別のタイプは、さらなるDNAセグメントを、ウイルスゲノムにライゲーションし得る、ウイルスベクターである。ある特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞において自己複製が可能である(例えば、細菌性複製起点を有する細菌ベクター、およびエピソーム性哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム性哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に、宿主細胞のゲノムに組み込まれ、それによって宿主ゲノムとともに複製され得る。また、ある特定のベクターは、それらが作動的に連結された遺伝子の発現へと方向付けることが可能である。本明細書では、このようなベクターを、「組換え発現ベクター」(または単に「組換えベクター」)と呼ぶ。一般に、組換えDNA技法において有用な発現ベクターは、プラスミドの形態であることが多い。プラスミドが、最も一般的に使用されるベクターの形態であるため、本明細書では、「プラスミド」と「ベクター」とを、互換的に使用する場合がある。
【0150】
本明細書において互換的に使用される「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、DNAおよびRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドもしくは修飾塩基、および/またはそれらの類似体、あるいはDNAポリメラーゼもしくはRNAポリメラーゼによって、または合成反応によってポリマーに組み込まれ得る任意の基質であり得る。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびそれらの類似体などの修飾ヌクレオチドを含んでもよい。存在する場合、ヌクレオチド構造に対する修飾は、ポリマーのアセンブリーの前または後で付与することができる。ヌクレオチドの配列は、ヌクレオチド以外の構成成分によって中断されてもよい。ポリヌクレオチドは、標識とのコンジュゲーションなどによって、合成の後でさらに修飾されてもよい。他のタイプの修飾には、例えば、天然型ヌクレオチドのうちの1つまたは複数の、類似体による「キャップ」置換、ヌクレオチド間修飾、例えば非帯電連結(例えばメチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメートなど)を伴うものおよび帯電連結(例えばホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を伴うもの、例えばタンパク質(例えばヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ply−L−リジンなど)などのペンダント部分を含有するもの、インターカレーター(例えばアクリジン、ソラレンなど)を伴うもの、キレート剤(例えば金属、放射性金属、ホウ素、酸化金属など)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾連結(例えばアルファアノマー核酸など)を伴うものなど、ならびにポリヌクレオチドの非修飾形態が含まれる。さらに、通常糖内に存在するヒドロキシル基のうちのいずれかを、例えばホスホネート基、ホスフェート基によって置き換えたり、標準的な保護基によって保護したり、またはさらなるヌクレオチドに対するさらなる連結を調製するために活性化させたりしてもよく、あるいは固体支持体または半固体支持体にコンジュゲートさせてもよい。5’末端および3’末端のOHは、リン酸化するか、あるいはアミンまたは1〜20個の炭素原子の有機キャッピング基部分で置換することができる。他のヒドロキシルもまた、標準的な保護基に誘導体化することができる。また、ポリヌクレオチドは、例えば、2’−O−メチル−、2’−O−アリル、2’−フルオロ−、または2’−アジド−リボース、炭素環式糖類似体、α−アノマー糖、アラビノース、キシロース、またはリキソースなどのエピマー糖、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式類似体、およびメチルリボシドなどの塩基性ヌクレオシド類似体などの、当該技術分野において一般に公知のリボース糖またはデオキシリボース糖の類似形態も含有し得る。1つまたは複数のホスホジエステル連結を、代替的な連結基によって置き換えてもよい。これらの代替的な連結基には、限定されるものではないが、リン酸が、P(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、(O)NR2(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR’、CO、またはCH2(「ホルムアセタール」)によって置き換えられた実例が含まれる[式中、各RまたはR’は、独立して、H、または任意選択でエーテル(−O−)連結を含有する置換もしくは非置換アルキル(1〜20個のC)、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、もしくはアラルジルである]。ポリヌクレオチド内のすべての連結が、同一である必要はない。先行する記載は、RNAおよびDNAを含む、本明細書において言及されるすべてのポリヌクレオチドに当てはまる。
【0151】
本明細書において使用される場合、「オリゴヌクレオチド」は、一般に、短く、一般に一本鎖であり、一般に約200ヌクレオチド未満の長さであるが必ずしもそうではない、一般に合成のポリヌクレオチドを指す。「オリゴヌクレオチド」および「ポリヌクレオチド」という用語は、相互に排他的ではない。ポリヌクレオチドに関する上の記載は、オリゴヌクレオチドに対しても同等かつ完全に適用可能である。
【0152】
「抗体」(Ab)および「免疫グロブリン」(IG)は、同じ構造的特徴を有する糖タンパク質である。抗体が、特異的抗原に対する結合特異性を呈するのに対し、免疫グロブリンは、抗体と、抗原特異性を一般に欠く他の抗体様分子との両方を含む。後者の種類のポリペプチドは、例えば、リンパ系によって産生されるレベルは低く、骨髄腫によって産生されるレベルは高い。
【0153】
「抗体」および「免疫グロブリン」という用語は、最も広い意味で互換的に使用され、モノクローナル抗体(例えば、全長またはインタクトなモノクローナル抗体)、ポリクローナル抗体、一価抗体、多価抗体、多特異性抗体(例えば二特異性抗体、それらが所望される生物学的活性を呈することを条件とする)を含み、また、ある特定の抗体断片も含み得る(本明細書においてより詳細に説明される)。抗体は、キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、および/または親和性成熟抗体であり得る。
【0154】
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。これらのドメインは、一般に、抗体の最も可変的な部分であり、抗原結合性部位を含有する。
【0155】
「可変」という用語は、可変ドメインのある特定の部分が、抗体間で配列が大幅に異なり、各特定の抗体の、その特定の抗原に対する結合および特異性において使用されているという事実を指す。しかしながら、可変性は、抗体の可変ドメイン全体にわたって、均等に分散されているわけではない。可変性は、軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインの両方において、相補性決定領域(CDR)または超可変領域と呼ばれる、3つのセグメントにおいて濃縮されている。可変ドメインのうち、より高度に保存的な部分は、フレームワーク(FR)と呼ばれている。天然の重鎖および軽鎖の可変ドメインは各々、大部分がベータシート構成を採用し、3つのCDRによって接続されている、4つのFR領域を含む。これら3つのCDRは、ベータシート構造を接続し、一部の場合にはベータシート構造の一部を形成するループを形成する。各鎖のCDRは、FR領域によって一緒に近接して保持され、他の鎖に由来するCDRとともに、抗体の抗原結合性部位の形成に寄与する(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5編、National Institute of Health、Bethesda、Md.(1991年)を参照されたい)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に対して直接的には関わらないが、抗体の、抗体依存性細胞毒性への関与など、様々なエフェクター機能を呈する。
【0156】
抗体のパパイン消化によって、「Fab」断片と呼ばれる、各々が単一の抗原結合性部位を有する2つの同一の抗原結合性断片と、残りの「Fc」断片とが産生される。「Fc」断片の名称は、容易に結晶化するというその能力を反映している。ペプシン処理によって、2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原を架橋可能である、F(ab’)2断片がもたらされる。
【0157】
「Fv」は、完全な抗原認識部位および抗原結合性部位を含有する、最小の抗体断片である。2つの鎖によるFv種では、この領域は、緊密な非共有結合的会合下にある、1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインとの二量体からなる。単鎖によるFv種では、1つの重鎖可変ドメインと、1つの軽鎖可変ドメインとが、軽鎖および重鎖が2つの鎖によるFv種における「二量体」構造と類似の「二量体」構造で会合し得るように、フレキシブルペプチドリンカーによって共有結合され得る。この構成において、各可変ドメインの3つのCDRが相互作用して、VH−VL二量体の表面上で抗原結合性部位を画定する。併せて、6つのCDRが、抗原結合特異性を抗体に与える。しかしながら、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのCDRのみ含むFvの半分)でも、結合性部位全体より低い親和性ではあるものの、抗原を認識し、それに結合する能力を有する。
【0158】
Fab断片はまた、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)も含有する。Fab’断片は、重鎖のCH1ドメインのカルボキシ末端において、抗体のヒンジ領域に由来する1つまたは複数のシステインを含むいくつかの残基が付加されている点により、Fab断片と異なる。Fab’−SHとは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を有するFab’のための、本明細書における呼称である。F(ab’)2抗体断片は、元々は、それらの間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として産生された。また、抗体断片の他の化学的カップリングについても公知である。
【0159】
任意の脊椎動物種に由来する抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる、2つの明確に異なるタイプのうちの1つに割り当てることができる。
【0160】
抗体(免疫グロブリン)は、それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンには、5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMが存在し、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2へとさらに分けることができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造および三次元的構成については周知であり、一般に、例えば、Abbasら、Cellular and Mol. Immunology、第4編、(2000年)において説明されている。抗体は、抗体の、1つまたは複数の他のタンパク質またはペプチドとの共有結合的会合または非共有結合的会合によって形成される、より大型の融合分子の一部であり得る。
【0161】
本明細書では、「全長抗体」、「インタクト抗体」、および「全抗体」という用語は、互換的に使用されて、下に定義されるような、抗体断片ではなく、その実質的にインタクトな形態である抗体を指す。この用語は特に、Fc領域を含有する重鎖を伴う抗体を指す。
【0162】
「抗体断片」は、インタクト抗体の一部分のみを含むが、この部分は、インタクト抗体において存在する場合にその部分と通常関連する機能のうちの少なくとも1つ、多ければこれらの大半またはすべてを保持する。一実施形態では、抗体断片は、インタクト抗体の抗原結合性部位を含み、したがって、抗原に結合する能力を保持する。別の実施形態では、抗体断片、例えばFc領域を含む抗体断片は、FcRnへの結合、抗体半減期のモジュレーション、ADCC機能、および補体への結合など、インタクト抗体において存在する場合にFc領域と通常関連する生物学的機能のうちの少なくとも1つを保持する。一実施形態では、抗体断片は、in vivo半減期がインタクト抗体と実質的に同様の一価抗体である。例えば、このような抗体断片は、in vivoにおける安定性を断片に与えることが可能なFc配列に連結された抗原結合性アームを含み得る。
【0163】
本明細書において使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体集団から得られた抗体を指し、すなわち、集団を構成する個別の抗体は、少量で存在し得る天然の突然変異の可能性を除けば、同一である。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、別々の抗体の混合物ではないものとしての抗体の性格を示している。このようなモノクローナル抗体は、典型的には、標的に結合するポリペプチド配列を含む抗体を含み、ここで、標的結合性ポリペプチド配列は、単一の標的結合性ポリペプチド配列を複数のポリペプチド配列から選択することを含むプロセスによって得られたものである。例えば、この選択プロセスは、複数のクローン、例えばハイブリドーマクローン、ファージクローン、または組換えDNAクローンのプールなどからの独特なクローンの選択であり得る。選択された標的結合性配列は、例えば、標的に対する親和性を向上させること、標的結合性配列をヒト化すること、細胞培養物中におけるその産生を向上させること、in vivoにおけるその免疫原性を低減すること、多特異性抗体を作製することなどのために、さらに改変してもよく、改変した標的結合性配列を含む抗体もまた、本発明のモノクローナル抗体であることが理解されるべきである。典型的には、異なる決定因子(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定因子に対するものである。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体調製物は、典型的には他の免疫グロブリンが夾雑していないという点においても有利である。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に同種の抗体集団から得られたものとしての抗体の性格を示しており、任意の特定の方法による抗体の産生を要求するものとして解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、様々な技法によって作製することができ、例えば、ハイブリドーマ法(例えば、Kohlerら、Nature、256巻:495頁(1975年);Harlowら、Antibodies: A Laboratory Manual、(Cold Spring Harbor Laboratory Press、第2編、1988年);Hammerlingら、Monoclonal Antibodies and T−Cell hybridomas、563〜681頁(Elsevier、N.Y.、1981年))、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)、ファージディスプレイ技術(例えば、Clacksonら、Nature、352巻:624〜628頁(1991年);Marksら、J. Mol. Biol.、222巻:581〜597頁(1992年);Sidhuら、J. Mol. Biol.、338巻(2号):299〜310頁(2004年);Leeら、J. Mol. Biol.、340巻(5号):1073〜1093頁(2004年);Fellouse、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、101巻(34号):12467〜12472頁(2004年);およびLeeら、J. Immunol. Methods、284巻(1〜2号):119〜132頁(2004年)を参照されたい)、ならびにヒト免疫グロブリン遺伝子座またはヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子の一部またはすべてを有する動物においてヒト抗体またはヒト様抗体を産生するための技術(例えば、WO98/24893;WO96/34096;WO96/33735;WO91/10741;Jakobovitsら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、90巻:2551頁(1993年);Jakobovitsら、Nature、362巻:255〜258頁(1993年);Bruggemannら、Year in Immunol.、7巻:33頁(1993年);米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,661,016号;Marksら、Bio. Technology、10巻:779〜783頁(1992年);Lonbergら、Nature、368巻:856〜859頁(1994年);Morrison、Nature、368巻:812〜813頁(1994年);Fishwildら、Nature Biotechnol.、14巻:845〜851頁(1996年);Neuberger、Nature Biotechnol.、14巻:826頁(1996年);ならびにLonbergおよびHuszar、Intern. Rev. Immunol.、13巻:65〜93頁(1995年)を参照されたい)が含まれる。
【0164】
本発明におけるモノクローナル抗体は、具体的には、重鎖および/または軽鎖の一部分が、特定の種に由来するかまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一または相同である一方で、鎖の残りの部分は、別の種に由来するかまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一または相同である、「キメラ」抗体、ならびにこのような抗体の断片(それらが所望される生物学的活性を呈することを条件とする)(米国特許第4,816,567号;およびMorrisonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、81巻:6851〜6855頁(1984年))を含む。
【0165】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」形態とは、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有するキメラ抗体である。一実施形態では、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域に由来する残基を、所望の特異性、親和性、および/または能力を有する、マウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域に由来する残基によって置き換えた、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。一部の事例では、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体では見出されない残基を含んでもよい。これらの修飾は、抗体の性能をさらに精緻化するように行われる。一般に、ヒト化抗体は、超可変ループのうちのすべてまたは実質的にすべてが、非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、FRのうちのすべてまたは実質的にすべてが、ヒト免疫グロブリン配列のFRである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含む。ヒト化抗体はまた、任意選択で、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的には、ヒト免疫グロブリンのFcの少なくとも一部分も含む。さらなる詳細については、Jonesら、Nature、321巻:522〜525頁(1986年);Riechmannら、Nature、332巻:323〜329頁(1988年);およびPresta、Curr. Op. Struct. Biol.、2巻:593〜596頁(1992年)を参照されたい。また、以下の総説論文:VaswaniおよびHamilton、Ann. Allergy, Asthma & Immunol.、1巻:105〜115頁(1998年);Harris、Biochem. Soc. Transactions、23巻:1035〜1038頁(1995年);HurleおよびGross、Curr. Op. Biotech.、5巻:428〜433頁(1994年)、ならびにこれらにおいて引用されている参考文献も参照されたい。
【0166】
本明細書において使用される場合、「正常レベル」は、例えば、通常の患者または通常の患者の集団からの試料における、TACAに結合した抗体のレベルの測定値に基づく基準値または基準範囲であってもよい。「正常レベル」はまた、例えば、通常の患者または通常の患者の集団からの試料における、TACAの測定値に基づく基準値または基準範囲であってもよい。
【0167】
本明細書において使用される場合、「対象」は哺乳動物である。このような哺乳動物には、飼育動物、家畜動物、実験で使用される動物、動物園の動物などが含まれる。一部の実施形態では、対象はヒトである。
【0168】
「障害」は、本発明の抗体による処置から利益を得る任意の状態である。これには、哺乳動物を問題の障害に罹らせるような病理学的状態を含む、慢性障害および急性障害または慢性疾患および急性疾患が含まれる。本発明において処置される障害の非限定的例には、がんが含まれる。
【0169】
「細胞増殖性障害」および「増殖性障害」という用語は、ある程度の異常な細胞増殖と関連する障害を指す。一実施形態では、細胞増殖性障害はがんである。
【0170】
本明細書において使用される場合、「腫瘍」は、悪性であるか良性であるかに関わらず、すべての新生物性細胞成長および増殖を指し、すべての前がん性細胞および前がん性組織ならびにがん性細胞およびがん性組織を指す。本明細書において言及される場合、「がん」、「がん性」、「細胞増殖性障害」、「増殖性障害」、および「腫瘍」という用語は、相互に排他的ではない。
【0171】
「がん」および「がん性」という用語は、典型的には、未調節の細胞成長/増殖によって特徴付けられる哺乳動物における生理学的状態を指すか、またはこれについて説明する。がんの例には、限定されるものではないが、癌腫、リンパ腫(例えば、ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫)、芽細胞腫、肉腫、および白血病が含まれる。このようながんのより具体的な例には、扁平上皮がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺腺がん、肺扁平上皮癌、腹膜がん、肝細胞がん、消化器がん、膵臓がん、神経膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、ヘパトーマ、乳がん、結腸がん、大腸がん、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓がん、肝臓がん、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、肝癌、白血病、および他のリンパ増殖性障害、ならびに様々なタイプの頭頸部がんが含まれる。
【0172】
用語「グロボシリーズ関連障害」は、典型的には、経路の異常な機能または提示によって特徴付けられる、またはそれらに起因する障害を指すか、またはこれについて説明する。このような障害の例には、限定されるものではないが、がんなどの過剰増殖疾患が含まれる。
【0173】
本明細書において記載されるグリカンの構造要素の一部は、当業者に理解されるような短縮形で参照される。
【0174】
過剰増殖疾患および/または状態の例には、限定されるものではないが、脳がん、肺がん、乳がん、口腔がん、食道がん、胃がん、肝臓がん、胆管がん、膵臓がん、結腸がん、腎臓がん、子宮頸がん、卵巣がん、および前立腺がんなどの新生物/過形成およびがんが含まれる。一部の実施形態では、がんは、脳がん、肺がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、結腸がん、または膵臓がんである。他の実施形態では、過剰増殖性病態は、乳房、卵巣、肺、膵臓、胃(stomach)(胃(gastric))、大腸、前立腺、肝臓、子宮頸部、食道、脳、口腔、および腎臓と関連する。
【0175】
「化学療法剤」は、がんの処置において有用な化学物質である。化学療法剤の例には、チオテパおよびCYTOXAN(登録商標)シクロホスファミドなどのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン、およびピポスルファンなどのアルキルスルホネート;ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、およびウレドーパなどのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド、およびトリメチローロメラミンなどのエチレンイミンおよびメチルメラミン;アセトゲニン(特にブラタシンおよびブラタシノン);デルタ−9−テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));ベータ−ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトテシン(合成類似体であるトポテカン(HYCAMTIN(登録商標))、CPT−11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレクチン、および9−アミノカンプトテシンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC−1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン、およびビゼレシン合成類似体を含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体であるKW−2189およびCB1−TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンジスタチン;クロランブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノブエンビキン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどの窒素マスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、およびラニムスチンなどのニトロソウレア;エンジイン抗生物質(例えばカリケアマイシン、特にカリケアマイシンガンマ1IおよびカリケアマイシンオメガI1(例えば、Agnew、Chem. Intl. Ed. Engl.、33巻:183〜186頁(1994年)を参照されたい);ジネミシンAを含むジネミシン;エスペラミシン;ならびにネオカルチノスタチン発色団、および関連する色素タンパク質である、エンジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)ドキソルビシン(モルホリノ−ドキソルビシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、2−ピロリノ−ドキソルビシン、およびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシンなどの抗生物質;メトトレキセートおよび5−フルオロウラシル(5−FU)などの代謝拮抗剤;デノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンなどのピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎剤;フォリン酸などの葉酸補充剤;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキセート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジクオン;エルフォルミチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン;メイタンシンおよびアンサミトシンなどのメイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products、Eugene、Oreg.);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’’−トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT−2毒素、ベルクリンA、ロリジンA、およびアングイジン);ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara−C」);チオテパ;タキソイド、例えばTAXOL(登録商標)パクリタキセル(Bristol−Myers Squibb Oncology、Princeton、N.J.)、パクリタキセルのCremophor非含有アルブミン操作ナノ粒子製剤であるABRAXANE(商標)(American Pharmaceutical Partners、Schaumberg、Ill.)、およびTAXOTERE(登録商標)ドセタキセル(Rhone−Poulenc Rorer、Antony、France);クロランブシル;ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標));6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;シスプラチンおよびカルボプラチンなどの白金類似体;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標));白金;エトポシド(VP−16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標));オキサリプラチン;ロイコボリン(leucovovin);ビノレルビン(NAVELBINE(登録商標));ノバントロン;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロネート;トポイソメラーゼ阻害剤であるRFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド;カペシタビン(XELODA(登録商標));上記のうちのいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体;ならびにシクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、およびプレドニゾロンの組合せ療法の略称であるCHOP、ならびにオキサリプラチン(ELOXATIN(商標))を5−FUおよびロイコボリンと組み合わせた処置レジメンの略称であるFOLFOXなどの、上記のうちの2つまたはそれよりも多くの組合せが含まれる。
【0176】
一実施形態では、本開示は、それを必要とする対象の処置における抗新生物剤の治療効果を判定するための方法であって、(a)対象からの試料を用意する工程と、(b)対象から収集した試料を接触させる工程と、(c)腫瘍関連抗原(TACA)または抗体のうちの1つまたは複数の結合をアッセイする工程と、(d)グリカン検出のアッセイ値に基づいて、新生物に対する処置における抗新生物剤の治療効果を判定する工程とを含む方法を提供する。本開示は、がんの検出でのリンカー−糖コンジュゲート(例えばGlobo H)の組合せ使用の、驚くべき相加的および/または相乗的有効性および有用性の証拠を提供する。これは、本発明におけるリンカーおよびコンジュゲートが、グロボシリーズ糖タンパク質と関連する決定因子および分子を標的とする任意の治療剤のための、コンパニオン診断組成物および方法として有用であることの根拠を提供する。コンパニオン診断方法および使用としての、本開示と組み合わせた使用にとって好適な抗新生物剤を含む、例示的な治療方法および治療用組成物については、例えば、特許公開番号WO2015159118、WO2014107652、およびWO2015157629の開示において記載されている(例えば、OBI−822、OBI−833、およびOBI−888)。これらの各々の内容は、参照により組み込まれる。
【0177】
本明細書に記載され、特許請求される本発明は、限定されるものではないが、この発明を実施するための形態において示され、説明され、または参照されたものを含む、多くの属性および実施形態を有する。包括的であることが意図されるわけではなく、本明細書に記載され、特許請求される本発明は、この発明を実施するための形態において特定された特色または実施形態に限定されるものではなく、またはこれらによって限定されるものではない。発明を実施するための形態は、例証のみを目的として含まれており、制限のために含まれているわけではない。
【0178】
本明細書において参照または言及されたすべての特許、刊行物、科学論文、ウェブサイト、および他の文書および資料は、本発明が関する技術分野の当業者のレベルを示すものであり、このような参照された文書および資料は各々、あたかもその全体が個別に参照により組み込まれたか、あるいはその全体が本明細書に示されたのと同程度に、ここに参照により組み込まれる。本出願人は、任意のこのような特許、刊行物、科学論文、ウェブサイト、電子的に利用可能な情報、および他の参照された資料または文書からあらゆるすべての資料および情報を本明細書に物理的に組み込む権利を留保する。
【0179】
本明細書において記載される具体的な方法および組成物は、好ましい実施形態を代表するものであり、かつ例示であり、本発明の範囲に対する限定であることを意図するものではない。他の目的、態様、および実施形態が、本明細書について考慮することで当業者には想起されることになるが、それらは、特許請求の範囲によって画定される本発明の趣旨内に包含される。本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、本明細書において開示される本発明に対して、様々な置換および修正を行い得ることが、当業者には容易に明らかとなるであろう。本明細書において例証的に説明された本発明は、本明細書において必須であるとして具体的に開示されてはいない任意の要素(複数可)または限定(複数可)の非存在下で、好適に実践することができる。したがって、例えば、本明細書における各事例において、本発明の実施形態または実施例では、「含む」、「から本質的になる」、および「からなる」という用語のいずれもが、本明細書では、その他2つの用語のどちらかによって置き換えられ得る。また、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含有する(containing)」などの用語は、限定することなく、開放的に読解されるべきである。本明細書において例証的に説明された方法およびプロセスは、異なる順序のステップで好適に実践されてもよく、これらの方法およびプロセスは、本明細書または特許請求の範囲において示されるステップの順序に必ずしも制限されない。また、本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」という単数形は、文脈が別途明確に規定しない限り、複数の参照物を含む。いかなる状況においても、本特許は、本明細書において具体的に開示された具体的な実施例または実施形態または方法に限定されるとして解釈されてはならない。いかなる状況においても、本特許は、当該陳述が具体的にかつ認定または留保を伴わずに本出願人による答弁書において明示的に採用されない限り、任意の審査官または特許審査局の任意の他の職員もしくは被雇用者によって為された任意の陳述によって限定されるとして解釈されてはならない。
【0180】
用いられている用語および表現は、限定ではなく説明の用語として使用されており、そのような用語および表現の使用によって、示され、記載されている特色のあらゆる均等物またはその一部も除外されることは意図されないが、様々な修正が、特許請求されている本発明の範囲内において可能であることが認識される。したがって、本発明は、好ましい実施形態および任意選択の特色によって具体的に開示されてきたものの、本明細書において開示される概念の修正および変形が、当業者によって講じられ得ること、ならびにそのような修正および変形は、添付の特許請求の範囲によって画定される本発明の範囲内にあると考慮されることが理解されよう。
【0181】
本発明は、本明細書において、広範かつ一般的に説明されてきた。本一般的開示内に入る、より狭い種および亜属の分類の各々もまた、本発明の一部を形成する。これには、削除された物質が本明細書において具体的に引用されていたか否かに関わらず、その属から任意の主題を取り除くという、条件または消極的限定を伴う本発明の一般的記載が含まれる。
【0182】
他の実施形態が、以下の特許請求の範囲内にある。加えて、本発明の特色または態様が、マーカッシュ群の用語で記載されている場合、当業者であれば、それによって、本発明がまた、マーカッシュ群の任意の個別のメンバーまたはメンバーのサブグループに関して説明されることを認識するであろう。他の実施形態が、以下の特許請求の範囲内にある。加えて、本発明の特色または態様が、マーカッシュ群の用語で記載されている場合、当業者であれば、それによって、本発明がまた、マーカッシュ群の任意の個別のメンバーまたはメンバーのサブグループに関して説明されることを認識するであろう。
【実施例】
【0183】
本明細書における本開示および実施例は、本明細書において記載されているようなリンカーの驚くべき有効性の発見、それらのグロボシリーズの糖タンパク質、例えばSSEA−3、SSEA−4、Globo H、Le
y、SLe
a、およびSLe
xとの糖コンジュゲート、ならびに病態(例えばがん)の判定、予測、および/または診断における驚くべき有効性を達成するためにそれらをアレイで使用する方法について記述している。
【0184】
一般的手法
【0185】
すべての出発化学試薬は、得て、さらなる精製無しに使用した。ジクロロメタン(CH
2Cl
2)は、水素化カルシウムで蒸留した。ジエチルエーテル(Et
2O)は、ナトリウムで蒸留した。分子篩(MS、AW−300)は使用前に粉砕し活性化した。反応は、シリカゲル60 F254プレート上での分析的TLCによって監視し、UV(254nm)の下で、かつ/または酸性モリブデン酸セリウムアンモニウムを用いて染色することで可視化した。フラッシュカラムクロマトグラフィーは、シリカゲル(35〜75μm)またはLiChroprep RP18において実施した。
1H−NMRスペクトルは、20℃で、Bruker DRX−500(500MHz)またはDRX−600(600MHZ)分光計において記録した。ケミカルシフト(ppm単位)は、重水素化クロロホルム中のテトラメチルシラン(δ=0ppm)または重水中のアセトン(δ=2.05ppm)のいずれかに対して判定した。Hz単位のカップリング定数を、一次元スペクトルから測定した。
13C結合プロトン試験(
13C−APT)NMRスペクトルを、同じBruker NMR分光計(125または150MHz)を使用することで得て、CDCl
3を用いて較正した(δ=77ppm)。カップリング定数(J)は、Hz単位で報告する。分割パターンは、以下の略称を使用することによって記載する:s、一重線;brs、幅広一重線;d、二重線;t、三重線;q、四重線;m、多重線。1H NMRスペクトルは、以下の順で報告する:ケミカルシフト、重複度、プロトンの数、カップリング定数。
【0186】
(実施例1)
Globo H−脂質、SSEA−3−脂質、およびSSEA−4−脂質の合成
【0187】
新しい脂質鎖の合成:
【0188】
市販されている脂質鎖と比較した後、本発明者らは、1,2−ジ−O−ヘキサデシル−sn−グリセロールが、セラミドと類似のlog Pを有し、他の脂質鎖よりも低い価格で得られることを見出した。アッセイ最適化戦略に基づき、脂質鎖は、TACAとカップリングするには、カルボキシル基を含有する必要がある。市販のグリセロールを、化学プロセスによって修飾しなければならない。グリセロールを、酸化剤としてのTEMPOおよびBAIBで処理して、カルボキシル生成物(脂質鎖1)を収率98%で得た。他方では、グリセロールを、塩基性条件下でグルタル酸無水物と反応させて、6個の炭素単位を伸ばし、収率71%でカルボキシル基を形成した(脂質鎖2)。この合成反応スキームを、
図3に列挙した。
【0189】
加えて、脂質−NH
2を合成するには3つのステップが存在し、これらも
図3に列挙した。
ステップ1。トシル化:1.5mLの無水ピリジン中の、1.0gの1,2−O−ジヘキサデシル−sn−グリセロールの撹拌溶液に、0.6gの4−ニトロベンゼンスルホニルクロリドを室温で添加した。16時間後、100mLの酢酸エチルを溶液に添加して、10mLの1NのHCl(aq)および10mLの飽和NaHCO
3(aq)を用いて洗浄した。有機層をNa
2SO
4で乾燥させ、留去して粗生成物を得た。残留物をSi−ゲルクロマトグラフィー(EtOAc/n−ヘキサン、1:20)によって精製して、トシル化脂質を得た(収率:95%)。
ステップ2。アジド置換:トシル化脂質(0.46g)を、3.5mLのDMF中に溶解させた。次いで、NaN
3(351mg、5mmol)を添加して、混合物を80℃で16時間加熱した。次いで、30mLの水を添加して、20mLのEtOAcを用いて抽出した。この抽出物を、Na
2SO
4で乾燥させ、留去して粗生成物を得た。残留物をSi−ゲルクロマトグラフィー(EtOAc/n−ヘキサン、1:50)によって精製して、アジド−脂質を得た(収率:92%)。
ステップ3。アジド還元:アジド−脂質(0.35g)を3mLのEtOAc中に溶解させ、次いでPd/C(150mgの10%Pd)を添加し、混合物を、水素バルーンの下で夜通し水素化した。セライトを通した濾過によって触媒を取り除いた後、濃縮して、次のステップのための粗生成物を得た。
【0190】
1当量の脂質−NH
2および5当量のDIPEAのCH
2Cl
2撹拌溶液に、1.2当量のグルタル酸無水物誘導体を室温で添加した。水を添加して、CH
2Cl
2を用いて抽出した。この抽出物を、Na
2SO
4で乾燥させ、留去して粗生成物を得た。残留物をLH−20(MeOH/CHCl
3、1:2)によって精製して、脂質類似体を得た。
【0191】
Globo H−NH
2と脂質鎖生成物とのカップリングにより、アミド結合の形成を介して、新しい組成物が得られた:
【0192】
Globo H−NH
2を、個別に、53%、64%、51%、78%、62%、および61%の収率で、脂質鎖1、脂質鎖2、脂質鎖3、脂質鎖4、脂質鎖6、および脂質鎖1(ラセミ)と同じアミド結合形成条件でカップリングさせた。このカップリング反応スキームを、
図4に列挙した。
【0193】
Globo H−脂質1:
【0194】
【化15】
HRMS(ESI、MH+)C
78H
145N
2O
33の計算値1637.9730、実測値1637.9751。質量スペクトルを、
図5Aに示した。
【0195】
脂質鎖1(1.2当量)を、撹拌しながら、1mLの無水DMF中に溶解させた。O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU、1.2当量)を固体として添加して、室温で10分間撹拌した。Globo H−ペンチルアミン(1.0当量)を添加して、結果として得られた溶液を20分間撹拌した後、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、5当量)をシリンジで添加した。混合物を室温で16時間撹拌し、メタノールでクエンチした。混合物を濃縮して、LH−20で精製して、最終生成物を得た(53%)。
【0196】
Globo H−脂質2:
【0197】
【化16】
HRMS(ESI、MH+)C
83H
153N
2O
35の計算値1738.0254、実測値1738.0260。質量スペクトルを、
図5Bに示した。
【0198】
脂質鎖2(1.2当量)を、撹拌しながら、1mLの無水DMF中に溶解させた。O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU、1.2当量)を固体として添加して、室温で10分間撹拌した。Globo H−ペンチルアミン(1.0当量)を添加して、結果として得られた溶液を20分間撹拌した後、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、5当量)をシリンジで添加した。混合物を室温で16時間撹拌し、メタノールでクエンチした。混合物を濃縮して、LH−20で精製して、最終生成物を得た(64%)。
【0199】
Globo H−脂質3:
【0200】
【化17-1】
【化17-2】
HRMS(ESI、M+Na
+)C
83H
153N
3O
34Naの計算値1759.0256、実測値1759.0228。質量スペクトルを、
図5Cに示した。
【0201】
脂質鎖3(1.2当量)を、撹拌しながら、1mLの無水DMF中に溶解させた。O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU、1.2当量)を固体として添加して、室温で10分間撹拌した。Globo H−ペンチルアミン(1.0当量)を添加して、結果として得られた溶液を20分間撹拌した後、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、5当量)をシリンジで添加した。混合物を室温で16時間撹拌し、メタノールでクエンチした。混合物を濃縮して、LH−20で精製して、最終生成物を得た(51%)。
【0202】
Globo H−脂質4:
【0203】
【化18】
HRMS(ESI、M+H
+)C
84H
156N
3O
34の計算値1751.0570、実測値1751.0527。質量スペクトルを、
図5Dに示した。
【0204】
脂質鎖4(1.2当量)を、撹拌しながら、1mLの無水DMF中に溶解させた。O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU、1.2当量)を固体として添加して、室温で10分間撹拌した。Globo H−ペンチルアミン(1.0当量)を添加して、結果として得られた溶液を20分間撹拌した後、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、5当量)をシリンジで添加した。混合物を室温で16時間撹拌し、メタノールでクエンチした。混合物を濃縮して、LH−20で精製して、最終生成物を得た(78%)。
【0205】
Globo H−脂質6:
【0206】
【化19】
HRMS(ESI、M−H−)C
88H
160N
3O
34の計算値1803.0883、実測値1802.9980。質量スペクトルを、
図5Eに示した。
【0207】
脂質鎖6(1.2当量)を、撹拌しながら、1mLの無水DMF中に溶解させた。O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU、1.2当量)を固体として添加して、室温で10分間撹拌した。Globo H−ペンチルアミン(1.0当量)を添加して、結果として得られた溶液を20分間撹拌した後、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、5当量)をシリンジで添加した。混合物を室温で16時間撹拌し、メタノールでクエンチした。混合物を濃縮して、LH−20で精製して、最終生成物を得た(62%)。
【0208】
Globo H−脂質1(ラセミ):
【0209】
【化20】
HRMS(ESI、M+H+)C
78H
145N
2O
33の計算値1637.9730、実測値1637.9819。質量スペクトルを、
図5Fに示した。
【0210】
脂質1(ラセミ)(1.2当量)を、撹拌しながら、1mLの無水DMF中に溶解させた。O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU、1.2当量)を固体として添加して、室温で10分間撹拌した。Globo H−ペンチルアミン(1.0当量)を添加して、結果として得られた溶液を20分間撹拌した後、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、5当量)をシリンジで添加した。混合物を室温で16時間撹拌し、メタノールでクエンチした。混合物を濃縮して、LH−20で精製して、最終生成物を得た(61%)。
【0211】
SSEA−3−NH
2と脂質鎖生成物とのカップリングにより、アミド結合の形成を介して、新しい組成物が得られた:
【0212】
SSEA−3−脂質1:
【0213】
【化21-1】
【化21-2】
HRMS(ESI、MH+)C
72H
135N
2O
29の計算値1491.9151、実測値1491.9172。質量スペクトルを、
図6Bに示した。
【0214】
脂質鎖1(1.2当量)を、撹拌しながら、1mLの無水DMF中に溶解させた。O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU、1.2当量)を固体として添加して、室温で10分間撹拌した。SSEA3−ペンチルアミン(1.0当量)を添加して、結果として得られた溶液を20分間撹拌した後、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、5当量)をシリンジで添加した。混合物を室温で16時間撹拌し、メタノールでクエンチした。混合物を濃縮して、LH−20で精製して、最終生成物を得た(62%)。
【0215】
SSEA−4−NH
2と脂質鎖生成物とのカップリングにより、アミド結合の形成を介して、新しい組成物が得られた:
【0216】
SSEA−4−脂質1:
【0217】
【化22-1】
【化22-2】
HRMS(ESI、MH+)C
83H
152N
3O
37の計算値1783.0105、実測値1783.0159。質量スペクトルを、
図7Bに示した。
【0218】
脂質鎖1(1.2当量)を、撹拌しながら、1mLの無水DMF中に溶解させた。O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU、1.2当量)を固体として添加して、室温で10分間撹拌した。SSEA4−ペンチルアミン(1.0当量)を添加して、結果として得られた溶液を20分間撹拌した後、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、5当量)をシリンジで添加した。混合物を室温で16時間撹拌し、メタノールでクエンチした。混合物を濃縮して、LH−20で精製して、最終生成物を得た(70%)。
【0219】
(実施例2)
Globo H−セラミドおよびGlobo H−脂質を使用するELISA分析
【0220】
酵素結合イムノソルベントアッセイ。クリア平底イムノ未滅菌96ウェルプレート(Thermo Fisher Scientific Inc.、Cat#442404)を、ウェル当たり0.2μg〜50μLのエタノールで、それぞれのグリカンが連結された糖ペプチドでコーティングし、室温で夜通しインキュベートした。次いで、100μLのカゼインブロッキングバッファー(Sigma−Aldrich Co. LLC、Cat#B6429)を各ウェルに添加して、このマイクロタイタープレートを室温で30分間インキュベートした。後続のステップはすべて、室温で実施した。
【0221】
マイクロタイタープレートを、各ウェルに対して50μLのカゼインブロッキングバッファー中のVK9細胞の様々な希釈液で処理して、室温で1時間インキュベートした。その後、ウェルを、リン酸緩衝食塩水(Thermo Fisher Scientific Inc.、Cat#70011)プラス0.05%(vol/vol)のTween 20(J.T.Baker、Cat#JTB−X251−07)で、マイクロプレートウォッシャー(SkanWash 400、Molecular Devices LLC)を使用して3回洗浄した。この時点で、50μLの二次抗体溶液(カゼインブロッキングバッファーで1:1000に希釈した、アルカリホスファターゼコンジュゲート化ヤギ抗マウスIgG抗体(Southern Biotech Associates, Inc.、Cat#1030−04))を各ウェルに添加して、室温で45分間インキュベートした。その後、ウェルを、リン酸緩衝食塩水プラス0.05%(vol/vol)のTween 20で3回洗浄した。
【0222】
マイクロタイタープレートを、100μLのアルカリホスファターゼ(pNPP)イエローELISA用液体基材システム(Sigma−Aldrich Co. LLC、Cat#P7998)を用いて37℃で20分間処理し、さらなる50μLの停止溶液(3NのNaOH)を添加することによって反応を停止した。結合したVK9細胞を可視化して、マイクロプレートリーダー(SpectraMax M2、Molecular Devices LLC)を使用して405nmで監視した。
【0223】
Globo H−セラミドとGlobo H−脂質との結合パターンの比較を、
図8Aに列挙した。Globo H脂質1、Globo H脂質2、およびGlobo H−セラミドを、別個に、0.001〜10μg/mLで、マイクロタイタープレート上で固定した。Globo H−脂質2の405nmでの光学密度(OD
405)は、Globo H−セラミドよりも高い。加えて、糖アレイを使用した、Globo H−セラミド、Globo H−脂質1、およびGlobo H−脂質2のIgM結合パターンの比較を、
図8Bに列挙した。これにより、Globo H脂質リンカーの膵臓患者の臨床試料とのIgM結合有効性は、Globo Hセラミドよりも高いことが示された。最後に、膵臓がんの検出におけるグリカンが連結された表面の比較を表1に列挙した。これにより、異なるグリカン(Globo H、SSEA−3、SSEA−4、Gb3、Gb4、Le
y、Le
x、SLe
a、およびSLe
x)が連結された表面を使用することで、陽性および陰性の臨床試料を区別する分解能がより良好になることが示された。一部の実施形態では、複合体結合剤は、本開示の複合体結合剤または検出可能な標識のうちのいずれかを含み得る。ある特定の例示的実施形態では、Globo HセラミドおよびGlobo H脂質は、アレイ要素であり、IgM抗体は試料に由来する。その後、標識された二次的抗ヒトabが、複合体を検出するために使用される。
【0224】
【表1】
【0225】
(実施例3)
Globo H−セラミドおよびGlobo H−脂質を使用するグリカンアレイ分析
【0226】
この試験プラットフォームでは、マイクロ流体カートリッジ内でELISA反応を自動的に実施するAgnitio BioICシステムを利用した。各カートリッジは、マイクロ流体ポンプおよびバルブのアレイ、チャネルネットワーク、試薬保管リザーバー、グリカンアレイ反応ゾーン、および廃棄物保管リザーバーを収容していた。試験を実施するために、すべての試薬および試験試料が、それぞれのリザーバーから、化学発光による多重化ELISA反応を実行するためにグリカンマイクロアレイを収容する反応ゾーンへと順次ポンピングされた。結果データを同時に捕捉し、データ分析は、Agnitio Science and Technology Inc.が提供するLabITソフトウェアによって実施した。Agnitio BioICシステムの装備リストの仕様を、表2に列挙する。
【0227】
【表2】
【0228】
マイクロ流体カートリッジは、Agnitio Science and Technology Inc.製であった。マイクロ流体カートリッジは、
図9に示されている3つの層で構成されていた。上層は、血清および試薬のリザーバー、マイクロ流体ポンプ、およびELISAチャネルネットワークを収容した。ゴム製の中間層は、コーティングされたニトロセルロース膜を収容した。グリカン抗原(Globo H−セラミドおよびGlobo H−脂質1)を、疎水性相互作用を介して、ニトロセルロース膜上に固定させた。底層は、廃棄物リザーバーに関してタンクを収容した。元々のアレイのレイアウト設計では、120個のスポットが存在した。スポット間での変動係数(CV)が15%より低いことを確保するために、本発明者らは、中心の64個のスポットのみを後続の臨床試料試験のために使用した。
【0229】
グリカンアレイ分析(一次試験)
【0230】
試薬調製物:66マイクロリットルの正常ヒト血清(NHS)または膵臓がん患者の血清を、594μLの試料希釈バッファー(BioCheck Inc.、Cat#MB10175)に添加して、10倍希釈液を形成した。まず、2μLの西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート化ヤギ抗ヒトIgG(KPL Inc.、Cat#474−1002)/IgM(KPL Inc.、Cat#474−1003)を、98μLのコンジュゲートバッファー(SuperBlock(TBS)ブロッキングバッファープラス0.2%のTween 20、Thermo Fisher Scientific Inc.、Cat#37535)に添加して、50倍希釈液を形成することで、二次抗体溶液を実施した。次に、40μLの希釈溶液を、2360μLのコンジュゲートバッファーにポンピングして、二次抗体溶液(3000倍希釈)を形成した。
【0231】
アッセイ手順: 620マイクロリットルの洗浄バッファー(リン酸緩衝食塩水(Thermo Fisher Scientific Inc.、Cat#70011)プラス0.2%(vol/vol)のTween 20(J.T.Baker、Cat#JTB−X251−07))を、アレイの「洗浄」ホールに添加した。次に、120μLのブロッキングバッファー(タンパク質を含まないブロッキングバッファー、Thermo Fisher Scientific Inc.、Cat#37571)を、アレイの「ブロッキング」ホールに添加した。この時点で、120μLの二次抗体溶液と、100μLの血清とを、別個に、アレイの「コンジュゲート」および「血清」ホールに添加した。最後に、120 μLの基材バッファー(SuperSignal ELISA Femto Maximum Sensitivity Substrate、Thermo Fisher Scientific Inc.、Cat#37074)を、10分の間に、アレイの「基材」ホールに添加した。
【0232】
グリカンアレイを、Agnitio BioICポンピングマシンに入れて、30分間加圧した。結合した血清を可視化して、Agnitio BioIC分析器を使用して監視した。アレイの吸光強度を、以下の計算に基づいて、「グリカンスコア」に変換した。ある特定の実施例では、グリカンスコア=(生データ−バックグラウンド)/内部対照×10である。
【0233】
内部対照は、0.5μMの二次抗体溶液のみを使用して実施した。グリカンスコアシステムは、0、1、2、…〜20の整数として定義した。変換されたスコアが20よりも高かった場合には、そのスコアリングは20として画定されることになる。
【0234】
ヒトIgMのグリカンスコア:Globo H−セラミドおよびSSEA−3−セラミド固定アレイを使用して実施した臨床試料の総数は、175であった(98の膵臓がん血清および77の健常血清)。加えて、Globo H−脂質1固定アレイを使用して、さらに91の臨床試料(76の膵臓がん血清および15の健常血清)を実施した。グリカン−セラミドとグリカン−脂質との結合パターンの比較を、
図10に列挙した。Globo H−セラミド IgM試験の中央値は、2.53(膵臓がん)および1.57(健常)であった[
図10A]。陽性の臨床試料と陰性の臨床試料との間で、差異はほとんど存在しないようであった。しかしながら、Globo H−脂質1 IgM試験の中央値は、6.64(膵臓がん)および2.56(健常)であった[
図10B]。これにより、陽性の臨床試料と陰性の臨床試料を区別する分解能がより良好になることが示された。加えて、SSEA−3−セラミド IgMにおける例示的リンカー/アレイの結合有効性を、
図10Cに列挙した。SSEA−3−セラミド IgM試験の中央値は、5.66(膵臓がん)および3.17(健常)であった。
【0235】
ヒトIgGのグリカンスコア:Globo H−脂質1およびSSEA−4−脂質1固定アレイを使用して実施した臨床試料の総数は、93であった(74の膵臓がん血清および19の健常血清)。Globo H−脂質1 IgGにおける例示的リンカー/アレイの結合有効性を、
図10Dに列挙した。Globo H−脂質1 IgG試験の中央値は、0.54(膵臓がん)および0.12(健常)であった。加えて、SSEA−4−脂質1 IgGにおける例示的リンカー/アレイの結合有効性を、
図10Eに列挙した。これにより、Globo H−脂質が、陽性の臨床試料と陰性の臨床試料を区別する有効な診断マーカーであることが示された。
【0236】
また、ロジスティック回帰分析およびROCの手法の下でSPSS統計ソフトウェアを使用した、感度、特異性、および正確さの計算を、表3(1マーカーアッセイ)、表4(2マーカーアッセイ)、および表5(3マーカーアッセイ)において列挙した。これらの結果により、Globo H、SSEA−3、およびSSEA−4は、膵臓がんに関して良好な診断バイオマーカーとして機能し得ることが示された。
【0237】
【表3】
【0238】
【表4】
*GHC: Globo H−セラミド/GHL:Globo H−脂質1/SSEA3C:SSEA3−セラミド/SSEA4L:SSEA4−脂質1
【0239】
【表5-1】
【表5-2】
*GHC:Globo H−セラミド/GHL:Globo H−脂質1/SSEA3C:SSEA3−セラミド/SSEA4L:SSEA4−脂質1
【0240】
グリカンアレイ分析(二次試験)
【0241】
試薬、装備、およびアッセイ手順は、一次試験とまったく同じであった。しかしながら、アレイの強度は、抗ヒトGlobo H IgGに対する以下の計算に基づいて、「Abレベル(μg/mL)」に変換した。
【0242】
各チップの内部曲線を、線形回帰を使用して傾きおよび切片を計算した。ある特定の実施例では、Abレベル(μg/mL)=[(生データ−切片)/傾き]×0.1である。内部曲線は、0.0625、0.125、0.25、0.5、0.75、および1μg/mLのヒトIgMを使用して実施した。
【0243】
(1)膵臓がん
【0244】
相対的抗グリカンヒトIgM:Globo H−脂質1およびSSEA−4−脂質1固定アレイを使用して実施した臨床試料の総数は、277であった(108の膵臓がん血清および169の健常血清)。試料からのIgMの、アレイのグリカン−脂質に対する結合パターンは、
図11において報告した。Globo H−脂質1 IgM試験の中央値は、0.32(膵臓がん)および0.25(健常)であった[
図11A]。SSEA−4−脂質1 IgM試験の中央値は、0.12(膵臓がん)および0.08(健常)であった[
図11B]。加えて、Globo H−脂質1(
図11C)およびSSEA−4−脂質1(
図11D)の固定アレイは両方とも、ステージIおよびステージIIの膵臓がんを検出することができた。
【0245】
(2)肺がん
【0246】
相対的抗グリカンヒトIgM:Globo H−脂質1、SSEA−3−脂質1、およびSSEA−4−脂質1固定アレイを使用して実施した臨床試料の総数は、93であった(73の肺がん血漿および20の健常血漿)。グリカン−脂質の結合パターンは、
図12に列挙した。Globo H−脂質1 IgM試験の中央値は、0.41(肺がん)および0.28(健常)であった[
図12A]。SSEA−3−脂質1 IgM試験の中央値は、1.71(肺がん)および1.37(健常)であった[
図12B]。SSEA−4−脂質1 IgM試験の中央値は、0.12(肺がん)および0.07(健常)であった[
図12C]。加えて、Globo H−脂質1(
図12D)、SSEA−3−脂質1(
図12E)、またはSSEA−4−脂質1(
図12F)の固定アレイはどれでも、ステージI、ステージIIおよびステージIII/IVの肺がんを検出することができた。
【0247】
別途定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語、ならびに任意の頭字語は、本発明の分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書において記載されているものと同様または同等の、任意の組成物、方法、キット、および情報伝達手段が、本発明を実践するために使用できるが、好ましい組成物、方法、キット、および情報伝達手段は、本明細書に記載されている。
【0248】
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