特表2018-533841(P2018-533841A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2018-533841パターン形成された塗膜体を成形品上に作製する方法およびこの方法を実施する装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-533841(P2018-533841A)
(43)【公表日】2018年11月15日
(54)【発明の名称】パターン形成された塗膜体を成形品上に作製する方法およびこの方法を実施する装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/10 20060101AFI20181019BHJP
   H05K 3/04 20060101ALI20181019BHJP
   B24C 1/00 20060101ALI20181019BHJP
   B24C 9/00 20060101ALI20181019BHJP
   B23K 26/342 20140101ALI20181019BHJP
   B23K 26/352 20140101ALI20181019BHJP
   C23C 26/00 20060101ALI20181019BHJP
   C23C 24/08 20060101ALI20181019BHJP
【FI】
   H05K3/10 Z
   H05K3/04 D
   B24C1/00 C
   B24C9/00 Z
   B23K26/342
   B23K26/352
   C23C26/00 E
   C23C24/08 B
【審査請求】有
【予備審査請求】有
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2018-517584(P2018-517584)
(86)(22)【出願日】2016年9月30日
(85)【翻訳文提出日】2018年4月5日
(86)【国際出願番号】EP2016073386
(87)【国際公開番号】WO2017063899
(87)【国際公開日】20170420
(31)【優先権主張番号】102015117558.4
(32)【優先日】2015年10月15日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA
(71)【出願人】
【識別番号】517376056
【氏名又は名称】プラズマ・イノベーションズ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(71)【出願人】
【識別番号】399007154
【氏名又は名称】エル・ピー・ケー・エフ・レーザー・ウント・エレクトロニクス・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(72)【発明者】
【氏名】ビスゲス・ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】オストホルト・ローマン
(72)【発明者】
【氏名】レゼナー・ベルント
(72)【発明者】
【氏名】ドゥンカー・ダーニエール
【テーマコード(参考)】
4E168
4K044
5E339
5E343
【Fターム(参考)】
4E168AB01
4E168BA21
4E168BA32
4E168JA17
4K044AA16
4K044AB02
4K044BA01
4K044BB01
4K044CA07
4K044CA23
4K044CA44
4K044CA53
4K044CA62
5E339AB02
5E339AC02
5E339BC02
5E339BD03
5E339BD11
5E339BE03
5E339DD03
5E339DD10
5E339GG10
5E343AA01
5E343AA16
5E343BB01
5E343BB24
5E343BB34
5E343BB71
5E343BB78
5E343DD02
5E343DD71
5E343EE32
5E343EE36
5E343FF01
5E343FF09
5E343FF23
5E343GG11
(57)【要約】
本発明は、パターン形成された塗膜体を成形品上に作製する方法、特に平面的でない立体回路基板上に金属の回路配線パターンを作製するための方法に関する。金属の回路配線パターンを有するプラスチック製のこの種の立体回路基板を大量かつ割安に製造するサブトラクティブ法を実現するために、以下のステップが提案される:
・第一領域および第二領域を有した表面を持つ成形品を提供し、第一領域における表面と第二領域の表面とが、少なくとも一つの表面特性において異なっており、
・少なくとも第一領域および第二領域を被覆する塗膜体を成形品の表面上に形成し、少なくとも一つの異なる表面特性のゆえに第一領域における塗膜体の接着強度が第二領域のものよりも高くなっており、
・剥膜速度が一定の剥膜法により塗膜体を部分的に除去し、その薄膜速度は、第二領域における塗膜体が、そこでは低くなっている接着強度のゆえに完全に除去される一方、第一領域における塗膜体が、全面的に保持されたままとなるように設定されている。
さらに、この方法を実施するための装置が示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターン形成された塗膜体を成形品上に作製する方法(1)であって:
第一領域(2a,b,c)および第二領域(2d)を有した表面を持つ成形品(1)を提供し、第一領域(2a,b,c)の表面と第二領域(2d)の表面とが、少なくとも一つの表面特性において異なっており、
少なくとも第一領域(2a,b,c)および第二領域(2d)を被覆する塗膜体(4)を成形品(1)の表面上に形成し、少なくとも一つの異なる表面特性のゆえに第一領域(2a,b,c)における塗膜体(4)の接着強度が第二領域(2d)におけるものよりも高くなっており、
剥膜速度が一定の剥膜法により塗膜体(4)を部分的に除去し、その薄膜速度は、第二領域(2d)における塗膜体(4)が、そこでは低くなっている接着強度のゆえに完全に除去される一方、第一領域(2a,b,c)における塗膜体が、全面的に保持されたままとなるように設定されている
ステップを有する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、第一および第二領域(2a,b,c,d)の表面は、一つ又は複数の次の表面特性、すなわち、粗さ、硬さ、表面張力、材料構造、および材料の少なくともいずれかにおいて異なることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、第一領域(2a,b,c)における塗膜体の接着強度が第二領域(2d)におけるものよりも少なくとも5%高くなるように、第一領域(2a,b,c)と第二領域(2d)における表面特性が設定されていることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の方法において、第一領域(2a,b,c)と第二領域(2d)の表面特性は、第一領域(2a,b,c)における塗膜体の接着強度が少なくとも50%高くなるように決められていることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法において、塗膜体(4)の接着強度は、DIN EN ISO 4624:2003に準拠したプルオフ試験により求められることを特徴とすることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の方法において、成形品(1)表面への塗膜体の形成が、次の一群:レーザーコーティング法、プラズマコーティング法、エアロゾルジェットコーティング法、印刷膜形成方法、ディップコーティング法、化学的コーティング法のうち一つの方法により行なわれることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法において、成形品(1)の表面にプラズマコーティング法またはレーザーコーティング法により金属粉末を堆積させることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、金属粉末は、形成された塗膜体(4)が少なくとも3%の多孔度を有するように堆積されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法において、塗膜体の部分的な除去が、次の一群:COスノーブラスト、粒子ブラスト、ブラッシング、洗浄、テープ剥離、超音波洗浄、圧縮ガスまたは圧縮液体による表面のブラスト処理のうち一つの剥膜法により行なわれることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法において、提供された成形品(1)は、プラスチックからなることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法において、成形品の表面の第一領域(2a,b,c)は、いずれの第一領域においても塗膜体(4)の接着強度が100N/cmより大きく、最大500N/cmまでとなるようにレーザーによりパターン形成されることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の方法を実施するように構成された装置において、
複数の成形品(1)を搬送するように構成されたコンベア(21)と、
成形品(1)をコンベア(21)上に受け渡すためのローディングステーション(24)と、
成形品(1)をコンベア(21)から取り出すためのアンローディングステーション(25)と、
ローディングステーション(24)からアンローディングステーション(25)に向かうコンベア(21)の搬送方向(23)と、
ローディングステーション(24)とアンローディングステーション(25)の間に設けられ、各成形品(1)の表面に塗膜体(4)を形成するように構成されている塗膜ステーション(26)と、
塗膜ステーション(26)とアンローディングステーション(25)との間に設けられ、剥膜法により塗膜体(4)を部分的に除去するように構成されている剥膜ステーション(31)と、
を特徴とする装置。
【請求項13】
請求項12に記載の装置において、塗膜ステーション(27)は、コーティングツール(27)および当該コーティングツール(27)のための操作装置(28)を備え、操作装置(28)は、各成形品(1)の塗膜対象の表面とコーティングツール(27)との間の相対的な動きを生じさせるように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項12または13に記載の装置において、剥膜ステーション(31)は、剥膜ツール(32)および当該剥膜ツール(32)のための操作装置(33)を備え、操作装置(33)は、各成形品(1)の部分的に除去すべき塗膜体(4)と剥膜ツール(32)との間の相対的な動きを生じさせるように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項15】
請求項13または14に記載の装置において、コーティングツール(27)は、レーザーコーティング用またはプラズマコーティング用に構成されていることを特徴とする装置。
【請求項16】
請求項13または14に記載の装置において、剥膜ツール(32)は、COスノーブラスト用に構成されていることを特徴とする装置。
【請求項17】
請求項12から16のいずれか一項に記載の装置において、コンベア(21)は、ターンテーブルとして構成されていることを特徴とする装置。
【請求項18】
請求項17に記載の装置において、ターンテーブルの外周には、複数の操作装置(29)が設けられており、各操作装置には、成形品(1)のための受け部(30)が取り付けられており、操作装置(29)は、ターンテーブルの表面に対する受け部(30)の相対的な動きを生み出すように構成されていることを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン形成された塗膜体を成形品上に作製する方法およびこの方法を実施するための装置に関する。成形品は、特には、パターン形成された金属塗膜体とりわけ回路配線パターンが設けられた絶縁材料からなる平面ないし立体的な回路基板である。さらに、本発明は、この方法を実施する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平面回路基板(配線基板)を作製するサブトラクティブ法では、回路配線パターンは、回路基板上に予め形成されている金属被膜を部分的に剥膜することによって出来る。アディティブ法では、回路配線パターンは、求めるものが得られるように回路基板上に金属被膜を堆積させることで形成される。
【0003】
平面回路基板(配線基板)は、多くは電気絶縁材料からなる。絶縁材料としては、繊維強化プラスチック(FR4)が一般的である。回路配線パターンは、特に銅からなる薄い金属被膜層からフォトリソグラフィにより配線基板上に以下のようにして作製される:
【0004】
感光性フォトレジストの薄い層が、全面的に金属被膜処理された回路基板の表面に塗布される。所望のパターンを有するマスクを用いてフォトレジストを露光すると、使用されるフォトレジストに応じてフォトレジストの露光部分または未露光部分のいずれかが現像液に溶解するようになり、除去が行なわれる。このように処理された配線基板を適切なエッチング溶液(例えば、水に塩化鉄(III)または過硫酸ナトリウムが溶解されているもの)に入れると、フォトレジストはエッチング溶液に強いので、金属被膜処理された表面のフォトレジストがない部分だけがエッチング溶液により除去され、フォトレジストによって覆われた部分はそのままになる。
【0005】
このサブトラクティブ法的なウェット化学式の方法は、環境保護的な観点から制約を受ける。しかも、サブトラクティブ法的なウェット化学式の方法は、現実にはFR4材料からなる配線基板とともに用いられるときにしか使用することができない。プラスチックはこの材料としては適さない。というのも、プラスチックに含まれる添加剤が、ウェット化学式の処理工程によって不安定になり、浴中に溶解した添加剤が金属被膜の特性を変化させるからである。加えて、平面的ではなく立体的な回路基板をサブトラクティブ法的なウェット化学式の方法を用いて作製することは経済的に不可能である。
【0006】
これに対して、射出成形された立体回路基板(Molded Interconnect Device,MID)の場合は、プラスチック製の成形品の表面上に回路配線パターンを作製することができる。回路基板は、射出成形プロセスによってその立体的な三次元形状を獲得し、その表面上に多くはアディティブ法的に電気化学的ないし化学的に回路配線パターンが形成される。成形品には、基本的には高温・構造熱可塑性プラスチック(Hochtemperatur− und Konstruktionsthermoplast)が使用される。しかしながら、射出成形された立体回路基板を製造するためのその長い工程期間は、立体回路基板の大量かつ経済的な製造にはあまり適していない。
【0007】
特許文献1より、以下のステップを有する基板上に回路配線パターンを作製する方法が公知である。
・非導電性基板上に第一金属層を形成し、
・目的に適うように第一金属層の一部をレーザーで除去することで、非導電性基板を露出させ、第一金属層を被覆部および非被覆部として形成し、その際に回路配線を形成する二つの部分と少なくとも一つのブリッジ部分とに被覆部を区分する。
・回路配線を形成する部分の一方とブリッジ部分とを電極として使用して被覆部のみを電気めっきすることにより、被覆部上に第二金属層を形成する。
・ブリッジ部及びブリッジ部上に形成された第二金属層を除去する。この除去は、求めるものが得られるように(目的に適うように)レーザーアブレーションすることで行うことができる。これにより、パターン形成された回路配線を作製する方法が終了する。もっとも、除去ステップは、パターン形成された基板を化学浴に浸漬することによって化学的に実行することもできる。回路配線を形成する部分がそれらの部分の間に配置されたブリッジ部分よりも広いので、浸漬時間を調整することにより、回路配線を形成する部分に悪影響を及ぼすことなくブリッジ部分とその上に形成された第二金属層を効果的に除去することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第112012004940号明細書(独語翻訳された国際出願公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この従来技術から出発して、本発明の課題は、塗膜された成形品、それも特には立体的な成形品を大量かつ割安に作製するのに適している、パターン形成された塗膜体を成形品上に作製するためのサブトラクティブ的な方法を提案しようとするものである。特に、金属の回路配線パターンを有するプラスチック製の立体回路基板を大量かつ割安に製造するためのサブトラクティブ法を提案する。最後に、この方法を実施するための装置を示す。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、請求項1の特徴を有する方法と、請求項12の特徴を有する装置とによって解決される。
【0011】
本発明により、成形品の表面の少なくとも一つの第一領域および少なくとも一つの第二領域において塗膜体の接着強度が違うことを、剥膜法による塗膜体の部分的な除去に用いる。剥膜の工程は、剥膜速度(剥膜処理能力)が一定の剥膜プロセスの間に行なわれ、その剥膜速度(剥膜処理能力)は、どの第二領域の塗膜体も、そこでは低くなっている接着強度のゆえに完全に除去される一方、どの第一領域の塗膜体も全面的に保持されたままとなるように設定されている。とはいえ、剥膜のやり方によっては、剥膜の工程を通して各第一領域の塗膜体の層厚が減少することもある。しかしそれでも、その下にある成形品表面の第一領域が顕わにされることはない。
【0012】
成形品は、好ましくは電気絶縁材料、特にプラスチック、例えばポリカーボネートまたはポリカーボネートABSからなる。
【0013】
この成形品は、平面的であってもよいが、任意の幾何学的三次元形状を有していてもよく、平坦な或いは湾曲した面素が組み合わされているものでもよい。
【0014】
成形品の表面において第二領域における塗膜体の接着強度よりも第一領域における塗膜体の接着強度を高くするために、第一領域および第二領域の表面は、以下の表面特性の一つまたは複数において異なるようにすることができる:
・粗さ(粗度)、
・硬さ(硬度)、
・表面張力、
・材料構造、
・材料
の少なくともいずれか。
【0015】
成形品の異なる表面特性は、一つには第一領域と第二領域の少なくともいずれかにおいて求めるものが得られるような(目的に適う)表面処理を行なうか、或いは領域ごとに材料が異なるようにすることで実現できる。表面処理としては、例えば、プラズマ活性化やレーザー処理が考えられる。成形品の表面上の材料は、例えば、部分的な塗布、印刷、多成分射出成形または異なる材料の積層によって異なるようにすることができる。
【0016】
特定の一定剥膜速度による剥膜法によって、第二領域において塗膜体を間違いなく完全に除去するために、第一領域における塗膜体の接着強度は、第二領域におけるものよりも少なくとも5%ほど、好ましくは少なくとも50%ほど高い。プラスチック製の成形品の材料構造を変更することにより、パターン形成された第一領域における接着強度は200〜500N/cmにすることができ、第二領域では10N/cmよりも小さくすることができる。
【0017】
第一および第二領域における塗膜体の接着強度を特定するために、好ましくはDIN EN ISO 4624:2003に準拠したプルオフ試験が用いられる。プルオフ試験は、成形品の表面から垂直に塗膜体を剥離する或いは剥ぎ取るのに必要な最小の引張応力を測定することによって、剥ぎ取りによる単層塗膜体または多層系の結合強度を特定するのに用いられる。
プルオフ試験における試験結果は、試験すべき系の機械的特性だけでなく、成形品表面の性質と形成過程(塗膜体を形成する方法並びに他の環境要因による)を反映したものになる。その点で、プルオフ試験は、本方法における接着強度の測定に特に適している。
【0018】
塗膜材料としては、好ましくは導電性材料、特に金属粉末、特に銅または銅とスズの混合物が用いられる。塗膜体は、成形品の表面に1μm〜500μm、好ましくは5〜50μmの範囲の層厚で形成される。形成される塗膜体は、好ましくは、少なくとも3%の多孔度を有する。多孔度は、形成された塗膜体の空隙体積の塗膜体全体積に対する割合である。総体積は、固体による真の体積と空隙体積とからなる:
【0019】
【数1】
【0020】
成形品の表面への塗膜体の形成は、好ましくは、以下のコーティング方法のうちの一つを用いて行なわれる:
【0021】
1.以下のステップを含むレーザーコーティング法:
・キャリアガスと塗膜材料とを含有するガス混合流を用意するステップ、
・ガス混合流を表面に供給し、ガス混合流が表面にぶつかって、そこに着設された塗膜材料が表面に衝突領域を形成するステップ、
・少なくとも一つのレーザービームをガス混合流に入射し、その際に、どのレーザービームも、表面の上記衝突領域にレーザービームが当たらないようにガス混合流に指向するステップ。
この方法は、成形品の表面にあまり熱的負荷を与えないようにしながら、塗膜材料がまだガス混合流の中にあるうちに塗膜材料を溶融させる点に特徴がある。
【0022】
2.プラズマコーティング法は、特に金属塗膜材料が冷活性化大気圧プラズマ(kalt− aktiven Atmosphaerendruck−Plasma)から自ずと成形品表面に堆積することを可能にする。ガスプラズマは、ガス放電によって生成される。温度が120℃から250℃の間にある冷たい非熱的なプラズマに、周囲条件下で塗膜材料が連続的に供給される。塗膜材料の粒径は、100nm〜20μmであるのが好ましい。プラズマコーティング法により、150m/分までの処理速度で、再現性のある層厚を持った均質な塗膜体を作ることができる。そのため、プラズマコーティング法は、パターン形成された塗膜体を割安で大量に作製するのに特に適している。金属塗膜体、特に回路配線パターンは、1〜1000μmの厚さで形成することができる。
【0023】
3.エアロゾルジェット法は、50μmをかなり下回る領域の微細なパターンを有する塗膜を堆積するのに適している。エアロゾルジェット法の場合、塗膜材料は、噴霧器内の液体材料として存在し、塗布すべきエアロゾルがそこで空気圧または超音波によって生成される。これがノズル付きの塗布ヘッドに搬送される。エアロゾルは、ノズルを通して成形品の表面に塗布される。
【0024】
4.ディップコーティング法では、成形品は、少なくとも(ただしその塗膜すべき)表面がコーティング溶液に浸漬され、その後再び引き出される。引き出されると、あとに液体の薄膜が表面に残る。あるいは、成形品の表面は、コーティング溶液に浸漬することによって塗膜されるのではなく、特殊なプリンターによって塗膜される。このプリンターは、成形品の表面にコーティング溶液をスプレーする。上記の方法は、まず表面を溶液で濡らした後、その膜を固化させる化学溶液堆積法に属する。これらの堆積法は、周囲条件下で実施することができ、そのため化学的ないし物理的気相堆積法と違って真空を必要としない。したがって、これらの方法は、より速く、より高い経済効率で実行することができる。しかも、化学溶液堆積法を用いると、表面欠陥のほとんどない塗膜を施すことができる。そのため、この化学溶液堆積方法は、パターン形成された塗膜体を成形品上に大量かつ割安に作製するのに特に適している。
【0025】
成形品の表面の少なくとも第一および第二領域の塗膜体に続いて、塗膜体の部分的な除去がサブトラクティブ的な剥膜法によって行われるが、中でも以下に詳細に述べる剥膜法が特に適している:
【0026】
1.COスノーブラストでは、ブラスト媒体、すなわち固体の二酸化炭素を用いて表面を剥膜する。COスノーブラストにおける剥膜速度は、多数の操作パラメータ、特にブラスト媒体の質量流量、ブラスト圧力、圧縮空気の体積流量、ブラストと表面との間の相対速度、作業距離、ビーム衝突角、およびブラスト媒体の粒子速度によって正確に調整することができる。塗膜体の剥膜は、COスノーブラストの場合、機械的効果、熱的効果および昇華効果に拠るものである。機械的効果は、固体の二酸化炭素粒子の速い衝突速度に拠るものである。熱的効果は、ブラストの衝突による塗膜体の急激な冷却に拠るものであり、これにより塗膜体と成形品の表面との間に熱的な応力が引き起こされる。昇華効果は、塗膜体に衝突するときの気体状態への移行中の固体二酸化炭素の体積増加に拠るものである。
【0027】
2.粒子ブラストでは、粒子は、塗膜材料をその結合からはじき出す。典型的な方法はサンドブラストであり、マイクロサンドブラストは本発明に特に適している。粒子ブラスト、特にマイクロサンドブラストは、第一領域における塗膜体が(第二領域におけるように)完全に剥膜されるとまではいかない(より高い接着強度のため)ものの、それでも塗膜体の厚さはやはり減少する。
【0028】
3.塗膜体を全ての第二領域でのみ選択的に除去する他の方法は、塗膜体全体に接着フィルムを貼り付け、次いで引き剥がすことである。塗膜体の上面に着設されたフィルムの接着強度は、全ての第二領域の塗膜体の、成形品表面における接着強度よりも大きく、全ての第一領域における塗膜体の、成形品表面における接着強度よりも小さい。これにより、接着フィルムを剥すときに塗膜体が専ら成形品表面の第二領域からは離れるものの、成形品表面の第一領域からは離れないようになる。この方法の利点は、第一領域における塗膜体が全面にわたって完全な層厚で維持されることである。
【0029】
4.塗膜体を剥膜する他の方法は、超音波洗浄、圧縮空気ブラスト、高圧水噴射および洗浄である。
【0030】
金属の回路配線パターンを有するプラスチック製立体回路基板を大量かつ割安に作製するための特に有利な方法は、請求項1,9,10,11および12の特徴の組み合わせによって特徴付けられる。したがって、プラスチック製の成形品が提供されるが、その表面のどの第一領域も、第一領域における接着強度が100N/cmよりも大きくなるようにレーザーによりパターン形成される。金属塗膜体は、レーザーコーティング法またはプラズマコーティング法を用いることで、形成された塗膜体が少なくとも3%の多孔度を有するように形成される。塗膜体のその後の部分的な除去は、塗膜された表面をCOスノーブラストすることによって行われる。COスノーブラストは、特に多孔質塗膜体に対して用いられると、全ての第一領域の境界に沿ってきれいな破断エッジをもたらす。
【0031】
以下に、図面を参照してより本願発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】パターン形成された塗膜体を成形品上に作製するための方法ステップを説明するための概略図である。
図2】パターン形成された塗膜体を成形品上に作製するための方法ステップを説明するための概略図である。
図3】塗膜体の部分的な剥膜を説明するための概略図である。
図4】成形品の表面に塗膜体を形成するレーザーコーティング法を説明するための概略図である。
図5】本発明の方法を実施するための装置の側面図および平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、その上面に複数の第一領域(2a,b,c)および第二領域(2d)を有する面を持つ直方体形状の成形品(1)を示している。第一領域(2a,b,c)の表面は、第二領域(2d)の表面とはその表面特性が異なる。
【0034】
成形品(1)の表面に第一領域(2a)を作製するために、成形品(1)の他の部分とは異なる材料で作られたブロック(1a)が成形品(1)の中に入れられたままになっている。
【0035】
拡大部分(3)から分かるように、表面(2b)を作製するために、成形品(1)の表面が第一領域(2b)において粗面化されており、その結果、隣接した第二領域(2d)の表面よりも粗い表面が出来ている。
【0036】
第一領域(2c)の表面は、成形品(1)が第一領域(2c)に被膜(1b)を有し、その被膜の材料が成形品(1)の残りの材料とは違ったものにすることによって作製される。しかしながら、第一領域(2a又は2c)を形成するための被膜(1b)の材料と、入れられたままにされているブロック(1a)の材料とは一致させてもよい。
【0037】
例示のために、図1には、第一領域(2a,b,c)および第二領域(2d)において異なる表面特性を生じさせるための異なる手段が示されている。ただし、パターン形成された塗膜体を成形品(1)上に多く作製する場合には、上述の手段のうち一つだけが使用されることが好ましい。
【0038】
表面特性が異なるために、成形品(1)の上面に形成する第一領域(2a,b,c)における塗膜体の接着強度は、第二領域(2d)におけるものよりも少なくとも50%ほど高い。
【0039】
図2は、成形品上面上に略全面的に形成された塗膜体(4)を示しており、この塗膜体が、側面図から分かるように成形品上面上の第一領域(2a,b,c)および第二領域(2d)の全てを覆っている。
【0040】
塗膜体(4)は、例えば、図4に基づいて以下に詳しく説明されるレーザーコーティング法によって成形品(1)の表面に形成される。
【0041】
上面に略全面的に形成された塗膜体(4)は、図3に概略的に示すように、パターンを形成するために剥膜法によって再び表面から一部が剥膜される。塗膜体(4)の部分的な除去は、図示の実施例では、COスノーブラストを用いて行われる。固体二酸化炭素を含んだ空気ジェット用の噴射ノズル(5)は、塗膜された成形品(1)の表面に対して矢印方向(6)に相対的に移動可能となるように不図示の操作装置に設けられている。COスノーブラストのパラメータは、第一領域(2a,b,c)の全てにわたって塗膜体(4)が全面的に保持されたままとなる一方で、第二領域(2d)の塗膜体(4)が完全に除去されるように選択される。
【0042】
図4は、レーザーコーティングによる塗膜体(4)の形成を示している。粉末状の金属塗膜材料の堆積は、以下のステップを含む:
【0043】
ガス混合流が導管(7)を通して粉体ノズル(8)に供給される。このとき、ガス混合流(11)は、キャリアガスとしての空気と金属塗膜材料(9)を含有している。塗膜すべき成形品(1)の表面に粉体ノズル(8)の射出口(10)が向けられていることでガス混合流(11)が成形品(1)の表面にぶつかるようになっており、矢印方向(12)に向かう相対移動によりそこに堆積された塗膜材料が表面上に塗膜体(4)を形成する。レーザー(13)を用いてガス混合流(11)にレーザービーム(14)を入射するが、その際にいずれのレーザービーム(14)もガス混合流(11)に指向されていることでレーザービーム(14)が表面上の塗膜体(4)に当たらないようになっている。レーザービーム(14)は、ガス混合流(11)内の塗膜材料(9)を溶融することで、塗膜材料が成形品(1)表面の第一領域(2a,b,c)と第二領域(2d)にしっかりと付着するようにしながら、これらの領域に不要な熱的負荷を与えない。その結果、プラスチック、特にポリカーボネートからなる成形品(1)をレーザーコーティング法で塗膜することができる。
【0044】
図5は、図1乃至3に基づいて先に説明した方法を実施するように構成されている装置を概略的に示している。
【0045】
この装置(20)は、ターンテーブルとして形成されたコンベア(21)を備え、このコンベアが、モータ駆動装置によって回転軸(22)を中心にして反時計回りに、平面図に示された搬送方向(23)の方向に回転可能とされている。この駆動装置は、特に、搬送方向(23)におけるターンテーブルの間欠的な回転を可能にする。
【0046】
装置(20)は、第一および第二領域が設けられた未塗膜の成形品(1)をコンベア(21)上に受け渡すためのローディングステーション(24)と、パターン形成された塗膜体が設けられた成形品(1)をコンベア(21)から取り出すためのアンローディングステーション(25)とを有している。搬送方向(23)におけるローディングステーション(24)とアンローディングステーション(25)との間には、まだ塗膜されていない成形品(1)の搬送経路に沿って塗膜ステーション(26)が設けられている。塗膜ステーション(26)は、コーティングツール(27)としてプラズマコーティングヘッドを有し、このコーティングツール(27)が操作装置(28)に設けられている。操作装置(28)は、例えば多軸的な動きが可能な産業用ロボットとすることができ、これが、塗膜対象の各成形品(1)の表面に対するコーティングツール(27)の相対的な動きを生じさせる。
【0047】
本実施例において、直方体の成形品(1)が一面だけでなく複数の面に塗膜されなければならない場合には、ターンテーブルの外周にさらに他の操作装置(29)を各成形品(1)に対して設けることができる。この場合、各操作装置(29)には、成形品(1)のための受け部(30)が設けられており、操作装置(29)は、ターンテーブルの回転軸(22)に平行な垂直軸周りの受け部(30)の回転運動と、回転軸(22)方向への垂直な持ち上げ運動を生じさせるように構成されている。受け部(30)を回転させることによって、成形品は、塗膜ステーション(26)を用いて全ての面に塗膜することができる。さらに、操作装置(29)を用いることで可能となる持ち上げ運動により、静止したプラズマコーティングヘッドに沿って操作装置が成形品(1)を垂直方向に動かすことで、プラズマコーティングをシート状(ウェブ状)に作製することができる。
【0048】
特に図5の平面図から分かるように、ターンテーブル上の成形品(1)を塗膜している間に、それと時を同じくして既に搬送方向(23)に送られた成形品(1)が塗膜ステーション(26)とアンローディングステーション(25)との間に設けられている剥膜ステーション(31)に供給される。この剥膜ステーション(31)は、固体二酸化炭素用のジェットノズル形態の剥膜ツール(32)を有する。この剥膜ツールは、部分除去すべき各成形品(1)の塗膜体(4)と剥膜ツール(32)との間の相対的な動きを生じさせるように操作装置(33)に装着されている。剥膜ステーション(31)の操作装置(32)も、例えば多軸の産業用ロボットとして構成することができる。
【0049】
塗膜ステーション(26)と剥膜ステーション(31)の本発明の配置により、ターンテーブル上の成形品(1)の搬送路に沿って、成形品(1)を塗膜すること、塗膜された成形品を冷却すること、塗膜されて冷却された成形品から塗膜体を剥膜ステーション(31)において部分的に除去することが同時にできる。コンベア(21)の回転軸(22)に一体化することができる中央の吸引装置(34)を通して余分な塗膜材料およびCOスノージェットの余分な材料が中央で吸引され、コンベア(21)から除去される。
【符号の説明】
【0050】
1 成形品
1a ブロック
1b 被膜
2a,b,c 第一領域
2d 第二領域
3 拡大部分
4 塗膜体
5 ジェットノズル
6 矢印
7 導管
8 粉体ノズル
9 金属塗膜材料
10 射出口
11 ガス混合流
12 矢印
13 レーザー
14 レーザービーム
20 装置
21 コンベア
22 回転軸
23 搬送方向
24 ローディングステーション
25 アンローディングステーション
26 塗膜ステーション
27 コーティングツール
28 操作装置
29 操作装置
30 受け部
31 剥膜ステーション
32 剥膜ツール
33 操作装置
34a,b 吸引装置
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2018年4月17日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン形成された塗膜体を成形品上に作製する方法およびこの方法を実施するための装置に関する。成形品は、特には、パターン形成された金属塗膜体とりわけ回路配線パターンが設けられた絶縁材料からなる平面ないし立体的な回路基板である。さらに、本発明は、この方法を実施する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平面回路基板(配線基板)を作製するサブトラクティブ法では、回路配線パターンは、回路基板上に予め形成されている金属被膜を部分的に剥膜することによって出来る。アディティブ法では、回路配線パターンは、求めるものが得られるように回路基板上に金属被膜を堆積させることで形成される。
【0003】
平面回路基板(配線基板)は、多くは電気絶縁材料からなる。絶縁材料としては、繊維強化プラスチック(FR4)が一般的である。回路配線パターンは、特に銅からなる薄い金属被膜層からフォトリソグラフィにより配線基板上に以下のようにして作製される:
感光性フォトレジストの薄い層が、全面的に金属被膜処理された回路基板の表面に塗布される。所望のパターンを有するマスクを用いてフォトレジストを露光すると、使用されるフォトレジストに応じてフォトレジストの露光部分または未露光部分のいずれかが現像液に溶解するようになり、除去が行なわれる。このように処理された配線基板を適切なエッチング溶液(例えば、水に塩化鉄(III)または過硫酸ナトリウムが溶解されているもの)に入れると、フォトレジストはエッチング溶液に強いので、金属被膜処理された表面のフォトレジストがない部分だけがエッチング溶液により除去され、フォトレジストによって覆われた部分はそのままになる。
【0004】
このサブトラクティブ法的なウェット化学式の方法は、環境保護的な観点から制約を受ける。しかも、サブトラクティブ法的なウェット化学式の方法は、現実にはFR4材料からなる配線基板とともに用いられるときにしか使用することができない。プラスチックはこの材料としては適さない。というのも、プラスチックに含まれる添加剤が、ウェット化学式の処理工程によって不安定になり、浴中に溶解した添加剤が金属被膜の特性を変化させるからである。加えて、平面的ではなく立体的な回路基板をサブトラクティブ法的なウェット化学式の方法を用いて作製することは経済的に不可能である。
【0005】
これに対して、射出成形された立体回路基板(Molded Interconnect Device,MID)の場合は、プラスチック製の成形品の表面上に回路配線パターンを作製することができる。回路基板は、射出成形プロセスによってその立体的な三次元形状を獲得し、その表面上に多くはアディティブ法的に電気化学的ないし化学的に回路配線パターンが形成される。成形品には、基本的には高温・構造熱可塑性プラスチック(Hochtemperatur− und Konstruktionsthermoplast)が使用される。しかしながら、射出成形された立体回路基板を製造するためのその長い工程期間は、立体回路基板の大量かつ経済的な製造にはあまり適していない。
【0006】
特許文献1より、以下のステップを有する基板上に回路配線パターンを作製する方法が公知である。
・非導電性基板上に第一金属層を形成し、
・目的に適うように第一金属層の一部をレーザーで除去することで、非導電性基板を露出させ、第一金属層を被覆部および非被覆部として形成し、その際に回路配線を形成する二つの部分と少なくとも一つのブリッジ部分とに被覆部を区分する。
・回路配線を形成する部分の一方とブリッジ部分とを電極として使用して被覆部のみを電気めっきすることにより、被覆部上に第二金属層を形成する。
・ブリッジ部及びブリッジ部上に形成された第二金属層を除去する。
この除去は、求めるものが得られるように(目的に適うように)レーザーアブレーションすることで行うことができる。これにより、パターン形成された回路配線を作製する方法が終了する。もっとも、除去ステップは、パターン形成された基板を化学浴に浸漬することによって化学的に実行することもできる。回路配線を形成する部分がそれらの部分の間に配置されたブリッジ部分よりも広いので、浸漬時間を調整することにより、回路配線を形成する部分に悪影響を及ぼすことなくブリッジ部分とその上に形成された第二金属層を効果的に除去することができる。
【0007】
特許文献2より、基板上に導電性の塗膜体を作成する方法が公知であり、この方法では、先ず、貼着性の表面を有した硬化されていない有機樹脂組成物が基板上に塗膜体として堆積される。この塗膜体は、次に、所望の回路に関する回路パターンがポジ型とされた回路マスクを介してUV光で露光され、露光された領域において硬化されて基板に付着した塗膜体を形成する。次に、UV露光されない未硬化の領域が導電性材料で被覆される。最後に、未硬化の領域が硬化温度或いはUV光にさらされ、導電性材料が表面上に定着する。緩んでいる導電性材料は、例えばブラシで剥がす、叩いて剥がす或いはエアジェットにより除去する。
【0008】
特許文献3は、導体プレート上にパターン形成された塗膜体を作製する方法を開示し、導体プレートは、プレート面に対して盛り上がった領域を導体パターンを形成するために有している。この盛り上がった領域の上に、ローラを用いて接着剤が塗布される。最後に、このようにして用意された導体プレートがコンベアによってノズルに向けて移送される。このノズルを用いて、銅粒子が導体プレートの表面に全面的に着設される。接着剤が選択的に塗布されているので、銅コーティングの接着強度は、盛り上がった領域ではそれらの間にある領域よりも高い。この接着剤を乾燥させた後、導体プレートをコンベアにより真空ステーションに向けて移送し、この真空ステーションが、接着剤が設けられていない領域の付着していない銅粒子を除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許出願公開第112012004940号明細書(独語翻訳された国際出願公報)
【特許文献2】英国特許出願公開第2089581号明細書
【特許文献3】米国特許第2893150号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この従来技術から出発して、本発明の課題は、塗膜された成形品、それも特には立体的な成形品を大量かつ割安に作製するのに適しており、剥膜法の剥膜速度を正確に調整することができる、パターン形成された塗膜体を成形品上に作製するためのサブトラクティブ的な方法を提案しようとするものである。特に、金属の回路配線パターンを有するプラスチック製の立体回路基板を大量かつ割安に製造するためのサブトラクティブ法を提案する。最後に、この方法を実施するための装置を示す。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、請求項1の特徴を有する方法と、請求項11の特徴を有する装置とによって解決される。
【0012】
本発明により、成形品の表面の少なくとも一つの第一領域および少なくとも一つの第二領域において塗膜体の接着強度が違うことを、剥膜法による塗膜体の部分的な除去に用いる。剥膜の工程は、剥膜速度が一定の剥膜プロセスの間に行なわれ、その剥膜速度は、どの第二領域の塗膜体も、そこで低くなっている接着強度のゆえに完全に除去される一方、どの第一領域の塗膜体も全面的に保持されたままとなるように設定されている。とはいえ、COスノーブラストのパラメータによっては、剥膜の工程を通して各第一領域の塗膜体の層厚が減少することもある。しかしそれでも、その下にある成形品表面の第一領域が顕わにされることはない。
【0013】
成形品は、好ましくは電気絶縁材料、特にプラスチック、例えばポリカーボネートまたはポリカーボネートABSからなる。
【0014】
この成形品は、平面的であってもよいが、任意の幾何学的三次元形状を有していてもよく、平坦な或いは湾曲した面素が組み合わされているものでもよい。
【0015】
成形品の表面において第二領域における塗膜体の接着強度よりも第一領域における塗膜体の接着強度を高くするために、第一領域および第二領域の表面は、以下の表面特性の一つまたは複数において異なるようにすることができる:
・粗さ(粗度)、
・硬さ(硬度)、
・表面張力、
・材料構造、
・材料
の少なくともいずれか。
【0016】
成形品の異なる表面特性は、一つには第一領域と第二領域の少なくともいずれかにおいて求めるものが得られるような(目的に適う)表面処理を行なうか、或いは領域ごとに材料が異なるようにすることで実現できる。表面処理としては、例えば、プラズマ活性化やレーザー処理が考えられる。成形品の表面上の材料は、例えば、部分的な塗布、印刷、多成分射出成形または異なる材料の積層によって異なるようにすることができる。
【0017】
特定の一定剥膜速度による剥膜法によって、第二領域において塗膜体を間違いなく完全に除去するために、第一領域における塗膜体の接着強度は、第二領域におけるものよりも少なくとも5%ほど、好ましくは少なくとも50%ほど高い。プラスチック製の成形品の材料構造を変更することにより、パターン形成された第一領域における接着強度は200〜500N/cmにすることができ、第二領域では10N/cmよりも小さくすることができる。
【0018】
第一および第二領域における塗膜体の接着強度を特定するために、好ましくはDIN EN ISO 4624:2003に準拠したプルオフ試験が用いられる。プルオフ試験は、成形品の表面から垂直に塗膜体を剥離する或いは剥ぎ取るのに必要な最小の引張応力を測定することによって、剥ぎ取りによる単層塗膜体または多層系の結合強度を特定するのに用いられる。
プルオフ試験における試験結果は、試験すべき系の機械的特性だけでなく、成形品表面の性質と形成過程(塗膜体を形成する方法並びに他の環境要因による)を反映したものになる。その点で、プルオフ試験は、本方法における接着強度の測定に特に適している。
【0019】
塗膜材料としては、好ましくは導電性材料、特に金属粉末、特に銅または銅とスズの混合物が用いられる。塗膜体は、成形品の表面に1μm〜500μm、好ましくは5〜50μmの範囲の層厚で形成される。形成される塗膜体は、好ましくは、少なくとも3%の多孔度を有する。多孔度は、形成された塗膜体の空隙体積の塗膜体全体積に対する割合である。総体積は、固体による真の体積と空隙体積とからなる:
【0020】
【数1】
【0021】
成形品の表面への塗膜体の形成は、好ましくは、以下のコーティング方法のうちの一つを用いて行なわれる:
1.以下のステップを含むレーザーコーティング法:
・キャリアガスと塗膜材料とを含有するガス混合流を用意するステップ、
・ガス混合流を表面に供給し、ガス混合流が表面にぶつかって、そこに着設された塗膜材料が表面に衝突領域を形成するステップ、
・少なくとも一つのレーザービームをガス混合流に入射し、その際に、どのレーザービームも、表面の上記衝突領域にレーザービームが当たらないようにガス混合流に指向するステップ。
【0022】
この方法は、成形品の表面にあまり熱的負荷を与えないようにしながら、塗膜材料がまだガス混合流の中にあるうちに塗膜材料を溶融させる点に特徴がある。
2.プラズマコーティング法は、特に金属塗膜材料が冷活性化大気圧プラズマ(kalt− aktiven Atmospharendruck−Plasma)から自ずと成形品表面に堆積することを可能にする。ガスプラズマは、ガス放電によって生成される。温度が120℃から250℃の間にある冷たい非熱的なプラズマに、周囲条件下で塗膜材料が連続的に供給される。塗膜材料の粒径は、100nm〜20μmであるのが好ましい。プラズマコーティング法により、150m/分までの処理速度で、再現性のある層厚を持った均質な塗膜体を作ることができる。そのため、プラズマコーティング法は、パターン形成された塗膜体を割安で大量に作製するのに特に適している。金属塗膜体、特に回路配線パターンは、1〜1000μmの厚さで形成することができる。
3.エアロゾルジェット法は、50μmをかなり下回る領域の微細なパターンを有する塗膜を堆積するのに適している。エアロゾルジェット法の場合、塗膜材料は、噴霧器内の液体材料として存在し、塗布すべきエアロゾルがそこで空気圧または超音波によって生成される。これがノズル付きの塗布ヘッドに搬送される。エアロゾルは、ノズルを通して成形品の表面に塗布される。
4.ディップコーティング法では、成形品は、少なくとも(ただしその塗膜すべき)表面がコーティング溶液に浸漬され、その後再び引き出される。引き出されると、あとに液体の薄膜が表面に残る。あるいは、成形品の表面は、コーティング溶液に浸漬することによって塗膜されるのではなく、特殊なプリンターによって塗膜される。このプリンターは、成形品の表面にコーティング溶液をスプレーする。上記の方法は、まず表面を溶液で濡らした後、その膜を固化させる化学溶液堆積法に属する。これらの堆積法は、周囲条件下で実施することができ、そのため化学的ないし物理的気相堆積法と違って真空を必要としない。したがって、これらの方法は、より速く、より高い経済効率で実行することができる。しかも、化学溶液堆積法を用いると、表面欠陥のほとんどない塗膜を施すことができる。そのため、この化学溶液堆積方法は、パターン形成された塗膜体を成形品上に大量かつ割安に作製するのに特に適している。
【0023】
成形品の表面の少なくとも第一および第二領域の塗膜体に続いて、塗膜体の部分的な除去がサブトラクティブ的な剥膜法としてのCOスノーブラストによって行われる
1.COスノーブラストでは、ブラスト媒体、すなわち固体の二酸化炭素を用いて表面を剥膜する。COスノーブラストにおける剥膜速度は、多数の操作パラメータ、特にブラスト媒体の質量流量、ブラスト圧力、圧縮空気の体積流量、ブラストと表面との間の相対速度、作業距離、ビーム衝突角、およびブラスト媒体の粒子速度によって正確に調整することができる。塗膜体の剥膜は、COスノーブラストの場合、機械的効果、熱的効果および昇華効果に拠るものである。機械的効果は、固体の二酸化炭素粒子の速い衝突速度に拠るものである。熱的効果は、ブラストの衝突による塗膜体の急激な冷却に拠るものであり、これにより塗膜体と成形品の表面との間に熱的な応力が引き起こされる。昇華効果は、塗膜体に衝突するときの気体状態への移行中の固体二酸化炭素の体積増加に拠るものである。
【0024】
金属の回路配線パターンを有するプラスチック製立体回路基板を大量かつ割安に作製するための特に有利な方法は、請求項1,7,8,9および10の特徴の組み合わせによって特徴付けられる。したがって、プラスチック製の成形品が提供されるが、その表面のどの第一領域も、第一領域における接着強度が100N/cmよりも大きくなるようにレーザーによりパターン形成される。金属塗膜体は、レーザーコーティング法またはプラズマコーティング法を用いることで、形成された塗膜体が少なくとも3%の多孔度を有するように形成されるCOスノーブラストは、特に多孔質塗膜体に対して用いられると、全ての第一領域の境界に沿ってきれいな破断エッジをもたらす。
【0025】
以下に、図面を参照してより本願発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】パターン形成された塗膜体を成形品上に作製するための方法ステップを説明するための概略図である。
図2】パターン形成された塗膜体を成形品上に作製するための方法ステップを説明するための概略図である。
図3】塗膜体の部分的な剥膜を説明するための概略図である。
図4】成形品の表面に塗膜体を形成するレーザーコーティング法を説明するための概略図である。
図5】本発明の方法を実施するための装置の側面図および平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、その上面に複数の第一領域(2a,b,c)および第二領域(2d)を有する面を持つ直方体形状の成形品(1)を示している。第一領域(2a,b,c)の表面は、第二領域(2d)の表面とはその表面特性が異なる。
【0028】
成形品(1)の表面に第一領域(2a)を作製するために、成形品(1)の他の部分とは異なる材料で作られたブロック(1a)が成形品(1)の中に入れられたままになっている。
【0029】
拡大部分(3)から分かるように、表面(2b)を作製するために、成形品(1)の表面が第一領域(2b)において粗面化されており、その結果、隣接した第二領域(2d)の表面よりも粗い表面が出来ている。
【0030】
第一領域(2c)の表面は、成形品(1)が第一領域(2c)に被膜(1b)を有し、その被膜の材料が成形品(1)の残りの材料とは違ったものにすることによって作製される。しかしながら、第一領域(2a又は2c)を形成するための被膜(1b)の材料と、入れられたままにされているブロック(1a)の材料とは一致させてもよい。
【0031】
例示のために、図1には、第一領域(2a,b,c)および第二領域(2d)において異なる表面特性を生じさせるための異なる手段が示されている。ただし、パターン形成された塗膜体を成形品(1)上に多く作製する場合には、上述の手段のうち一つだけが使用されることが好ましい。
【0032】
表面特性が異なるために、成形品(1)の上面に形成する第一領域(2a,b,c)における塗膜体の接着強度は、第二領域(2d)におけるものよりも少なくとも50%ほど高い。
【0033】
図2は、成形品上面上に略全面的に形成された塗膜体(4)を示しており、この塗膜体が、側面図から分かるように成形品上面上の第一領域(2a,b,c)および第二領域(2d)の全てを覆っている。
【0034】
塗膜体(4)は、例えば、図4に基づいて以下に詳しく説明されるレーザーコーティング法によって成形品(1)の表面に形成される。
【0035】
上面に略全面的に形成された塗膜体(4)は、図3に概略的に示すように、パターンを形成するために剥膜法によって再び表面から一部が剥膜される。 塗膜体(4)の部分的な除去はCOスノーブラストを用いて行われる。固体二酸化炭素を含んだ空気ジェット用の噴射ノズル(5)は、塗膜された成形品(1)の表面に対して矢印方向(6)に相対的に移動可能となるように不図示の操作装置に設けられている。COスノーブラストのパラメータは、第一領域(2a,b,c)の全てにわたって塗膜体(4)が全面的に保持されたままとなる一方で、第二領域(2d)の塗膜体(4)が完全に除去されるように選択される。
【0036】
図4は、レーザーコーティングによる塗膜体(4)の形成を示している。粉末状の金属塗膜材料の堆積は、以下のステップを含む:
ガス混合流が導管(7)を通して粉体ノズル(8)に供給される。このとき、ガス混合流(11)は、キャリアガスとしての空気と金属塗膜材料(9)を含有している。塗膜すべき成形品(1)の表面に粉体ノズル(8)の射出口(10)が向けられていることでガス混合流(11)が成形品(1)の表面にぶつかるようになっており、矢印方向(12)に向かう相対移動によりそこに堆積された塗膜材料が表面上に塗膜体(4)を形成する。レーザー(13)を用いてガス混合流(11)にレーザービーム(14)を入射するが、その際にいずれのレーザービーム(14)もガス混合流(11)に指向されていることでレーザービーム(14)が表面上の塗膜体(4)に当たらないようになっている。レーザービーム(14)は、ガス混合流(11)内の塗膜材料(9)を溶融することで、塗膜材料が成形品(1)表面の第一領域(2a,b,c)と第二領域(2d)にしっかりと付着するようにしながら、これらの領域に不要な熱的負荷を与えない。その結果、プラスチック、特にポリカーボネートからなる成形品(1)をレーザーコーティング法で塗膜することができる。
【0037】
図5は、図1乃至3に基づいて先に説明した方法を実施するように構成されている装置を概略的に示している。
【0038】
この装置(20)は、ターンテーブルとして形成されたコンベア(21)を備え、このコンベアが、モータ駆動装置によって回転軸(22)を中心にして反時計回りに、平面図に示された搬送方向(23)の方向に回転可能とされている。この駆動装置は、特に、搬送方向(23)におけるターンテーブルの間欠的な回転を可能にする。
【0039】
装置(20)は、第一および第二領域が設けられた未塗膜の成形品(1)をコンベア(21)上に受け渡すためのローディングステーション(24)と、パターン形成された塗膜体が設けられた成形品(1)をコンベア(21)から取り出すためのアンローディングステーション(25)とを有している。搬送方向(23)におけるローディングステーション(24)とアンローディングステーション(25)との間には、まだ塗膜されていない成形品(1)の搬送経路に沿って塗膜ステーション(26)が設けられている。塗膜ステーション(26)は、コーティングツール(27)としてプラズマコーティングヘッドを有し、このコーティングツール(27)が操作装置(28)に設けられている。操作装置(28)は、例えば多軸的な動きが可能な産業用ロボットとすることができ、これが、塗膜対象の各成形品(1)の表面に対するコーティングツール(27)の相対的な動きを生じさせる。
【0040】
本実施例において、直方体の成形品(1)が一面だけでなく複数の面に塗膜されなければならない場合には、ターンテーブルの外周にさらに他の操作装置(29)を各成形品(1)に対して設けることができる。この場合、各操作装置(29)には、成形品(1)のための受け部(30)が設けられており、操作装置(29)は、ターンテーブルの回転軸(22)に平行な垂直軸周りの受け部(30)の回転運動と、回転軸(22)方向への垂直な持ち上げ運動を生じさせるように構成されている。受け部(30)を回転させることによって、成形品は、塗膜ステーション(26)を用いて全ての面に塗膜することができる。さらに、操作装置(29)を用いることで可能となる持ち上げ運動により、静止したプラズマコーティングヘッドに沿って操作装置が成形品(1)を垂直方向に動かすことで、プラズマコーティングをシート状(ウェブ状)に作製することができる。
【0041】
特に図5の平面図から分かるように、ターンテーブル上の成形品(1)を塗膜している間に、それと時を同じくして既に搬送方向(23)に送られた成形品(1)が塗膜ステーション(26)とアンローディングステーション(25)との間に設けられている剥膜ステーション(31)に供給される。この剥膜ステーション(31)は、固体二酸化炭素用のジェットノズル形態の剥膜ツール(32)を有する。この剥膜ツールは、部分除去すべき各成形品(1)の塗膜体(4)と剥膜ツール(32)との間の相対的な動きを生じさせるように操作装置(33)に装着されている。剥膜ステーション(31)の操作装置(32)も、例えば多軸の産業用ロボットとして構成することができる。
【0042】
塗膜ステーション(26)と剥膜ステーション(31)の本発明の配置により、ターンテーブル上の成形品(1)の搬送路に沿って、成形品(1)を塗膜すること、塗膜された成形品を冷却すること、塗膜されて冷却された成形品から塗膜体を剥膜ステーション(31)において部分的に除去することが同時にできる。コンベア(21)の回転軸(22)に一体化することができる中央の吸引装置(34)を通して余分な塗膜材料およびCOスノージェットの余分な材料が中央で吸引され、コンベア(21)から除去される。
【符号の説明】
【0043】
1 成形品
1a ブロック
1b 被膜
2a,b,c 第一領域
2d 第二領域
3 拡大部分
4 塗膜体
5 ジェットノズル
6 矢印
7 導管
8 粉体ノズル
9 金属塗膜材料
10 射出口
11 ガス混合流
12 矢印
13 レーザー
14 レーザービーム
20 装置
21 コンベア
22 回転軸
23 搬送方向
24 ローディングステーション
25 アンローディングステーション
26 塗膜ステーション
27 コーティングツール
28 操作装置
29 操作装置
30 受け部
31 剥膜ステーション
32 剥膜ツール
33 操作装置
34a,b 吸引装置
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターン形成された塗膜体を成形品上に作製する方法(1)であって:
第一領域(2a,b,c)および第二領域(2d)を有した表面を持つ成形品(1)を提供し、第一領域(2a,b,c)の表面と第二領域(2d)の表面とが、少なくとも一つの表面特性において異なっており、
少なくとも第一領域(2a,b,c)および第二領域(2d)を被覆する塗膜体(4)を成形品(1)の表面上に形成し、少なくとも一つの異なる表面特性のゆえに第一領域(2a,b,c)における塗膜体(4)の接着強度が第二領域(2d)におけるものよりも高くなっており、
COスノーブラストにより塗膜体(4)を部分的に除去し、
塗膜体(4)の部分的な除去は、剥膜速度が一定の剥膜法によって行われ、その薄膜速度は、第二領域(2d)における塗膜体(4)が、そこでは低くなっている接着強度のゆえに完全に除去される一方、第一領域(2a,b,c)における塗膜体が、全面的に保持されたままとなるように設定されている
ステップを有する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、第一および第二領域(2a,b,c,d)の表面は、一つ又は複数の次の表面特性、すなわち、粗さ、硬さ、表面張力、材料構造、および材料の少なくともいずれかにおいて異なることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、第一領域(2a,b,c)における塗膜体の接着強度が第二領域(2d)におけるものよりも少なくとも5%高くなるように、第一領域(2a,b,c)と第二領域(2d)における表面特性が設定されていることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の方法において、第一領域(2a,b,c)と第二領域(2d)の表面特性は、第一領域(2a,b,c)における塗膜体の接着強度が少なくとも50%高くなるように決められていることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法において、塗膜体(4)の接着強度は、DIN EN ISO 4624:2003に準拠したプルオフ試験により求められることを特徴とすることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の方法において、成形品(1)表面への塗膜体の形成が、次の一群:レーザーコーティング法、プラズマコーティング法、エアロゾルジェットコーティング法、印刷膜形成方法、ディップコーティング法、化学的コーティング法のうち一つの方法により行なわれることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法において、成形品(1)の表面にプラズマコーティング法またはレーザーコーティング法により金属粉末を堆積させることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、金属粉末は、形成された塗膜体(4)が少なくとも3%の多孔度を有するように堆積されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法において、
提供された成形品(1)は、プラスチックからなることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1からのいずれか一項に記載の方法において、成形品の表面の第一領域(2a,b,c)は、いずれの第一領域においても塗膜体(4)の接着強度が100N/cmより大きく、最大500N/cmまでとなるようにレーザーによりパターン形成されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法を実施するように構成された装置であって、
複数の成形品(1)を搬送するように構成されたコンベア(21)と、
成形品(1)をコンベア(21)上に受け渡すためのローディングステーション(24)と、
成形品(1)をコンベア(21)から取り出すためのアンローディングステーション(25)と、
ローディングステーション(24)からアンローディングステーション(25)に向かうコンベア(21)の搬送方向(23)と、
ローディングステーション(24)とアンローディングステーション(25)の間に設けられ、各成形品(1)の表面に塗膜体(4)を形成するように構成されている塗膜ステーション(26)と、
塗膜ステーション(26)とアンローディングステーション(25)との間に設けられ、剥膜法により塗膜体(4)を部分的に除去するように構成されている剥膜ステーション(31)と、
有する装置において、
剥膜ステーション(31)は、剥膜ツール(32)および当該剥膜ツール(32)のための操作装置(33)を備え、
剥膜ツール(32)は、COスノーブラスト用に構成されており、
操作装置(33)は、各成形品(1)の部分的に除去すべき塗膜体(4)と剥膜ツール(32)との間の相対的な動きを生じさせるように構成されている
ことを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項11に記載の装置において、塗膜ステーション(27)は、コーティングツール(27)および当該コーティングツール(27)のための操作装置(28)を備え、操作装置(28)は、各成形品(1)の塗膜対象の表面とコーティングツール(27)との間の相対的な動きを生じさせるように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項12に記載の装置において、コーティングツール(27)は、レーザーコーティング用またはプラズマコーティング用に構成されていることを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項11から13のいずれか一項に記載の装置において、コンベア(21)は、ターンテーブルとして構成されていることを特徴とする装置。
【請求項15】
請求項14に記載の装置において、ターンテーブルの外周には、複数の操作装置(29)が設けられており、各操作装置には、成形品(1)のための受け部(30)が取り付けられており、操作装置(29)は、ターンテーブルの表面に対する受け部(30)の相対的な動きを生み出すように構成されていることを特徴とする装置。
【国際調査報告】