(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-533967(P2018-533967A)
(43)【公表日】2018年11月22日
(54)【発明の名称】共培養により二酸化炭素からメタンを生成する方法
(51)【国際特許分類】
C12P 7/04 20060101AFI20181026BHJP
C12N 1/20 20060101ALN20181026BHJP
C12N 1/12 20060101ALN20181026BHJP
【FI】
C12P7/04
C12N1/20 A
C12N1/12 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2018-526644(P2018-526644)
(86)(22)【出願日】2016年11月15日
(85)【翻訳文提出日】2018年6月14日
(86)【国際出願番号】EP2016077771
(87)【国際公開番号】WO2017085080
(87)【国際公開日】20170526
(31)【優先権主張番号】102015000073679
(32)【優先日】2015年11月18日
(33)【優先権主張国】IT
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA
(71)【出願人】
【識別番号】518174684
【氏名又は名称】ビオレビール・ソシエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】BIOREWEAL S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レベルソ,リッカルド
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AB03
4B064CA02
4B064CA08
4B064CC06
4B064CC12
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4B065CA03
4B065CA54
4B065CA55
(57)【要約】
二酸化炭素の生物学的変換によってメタンを生成する方法であって、1種以上のメタン産生細菌と(i)1種以上の従属−独立栄養シアノバクテリアおよび/もしくは微小藻類または(ii)1種以上のスルホバクテリウムおよび/もしくはアセトバクテリウムとの共生により実施され、上記従属−独立栄養シアノバクテリアおよび/もしくは微小藻類または上記スルホバクテリウムおよび/もしくはアセトバクテリウムは、上記メタン産生細菌による二酸化炭素からメタンへの変換に必要な水素分子を産生する方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素の生物学的変換によってメタンを生成する方法であって、前記方法は第1の微生物と第2の微生物との共生を使用して実施され、
前記第1の微生物は、Methanothermobacter thermoautotrophicus(ATCC番号29096)、Methanococcus deltae(ATCC番号35294)、Methanococcus vannielii(ATCC番号35089)、Methanococcoides methylutens(ATCC番号33938)、Methanococcus jannaschii(ATCC番号43067D、43067D−5)、Methanococcus maripaludis(ATCC番号43000)、Methanosarcina barkeri Schnellen(ATCC番号43569)、Methanospirillum hungatei(ATCC番号27890)、Methylococcus capsulatus(ATCC番号33009)、Methanobrevibacter arboriphilus(ATCC番号BAA−1958)、Methanosarcina mazei(Barker)Mah and Kuhn(ATCC番号BAA−159)、Methanococcus aeolicus(ATCC番号BAA−1280)からなる群より選択される1種以上のメタン産生細菌であり、かつ
前記第2の微生物は、
(a)Camorosporium robinae(ATCC番号16673)、Acetomicrobium flavidum(ATCC番号43122)、Cochilliobus cynodontis(ATCC番号24938)、Sporotomaculatum hydroxybenzoicum(ATCC番号700645)、Formivibrio citricus(ATCC番号42791)、Rhodococcus rhodochrous(ATCC番号21198)、Moorella thermoacetica(ATCC番号49073、39073)、Lactobacillus helveticus(ATCC番号55163)、Chlorella vulgaris Beijerinck(ATCC番号11468)、Chlorella vulgaris(ATCC番号13482、30581、30821、9765)、Chlorella vulgaris var.viridis(ATCC番号16487)、Chlorella pyrenoidosa(ATCC番号30582)、Euglena gracilis(ATCC番号12716)、Euglena gracilis var.bacillaris(ATCC番号10616)、Euglena gracilis var.saccharophila(ATCC番号12893)、Scenedesmus obliquus(ATCC番号11477)、Pleurochloris commutata(ATCC番号11474)、Anabaena sp.(ATCC番号27899)からなる群より選択される1種以上の従属−独立栄養シアノバクテリアおよび/もしくは微小藻類、または
(b)Rhodobacter sphaeroides(ATCC番号49419、55304)、Bacillus coagulans(ATCC番号10545)、Acetoanaerobium noterae(ATCC番号35199)、Rhodovulum sulfidophilum(ATCC番号35886)、Bacillus smithii(ATCC番号55404)からなる群より選択される1種以上のスルホバクテリウムおよび/もしくはアセトバクテリウムであり、
前記第2の微生物が、1種以上の従属−独立栄養シアノバクテリアおよび/または微小藻類である場合、前記第1の微生物および前記第2の微生物は、相互に連結された別個の発酵反応器中において培養され、
前記第2の微生物が、1種以上のスルホバクテリウムおよび/またはアセトバクテリウムである場合、前記第1の微生物および前記第2の微生物は同一の発酵反応器中において培養され、
前記方法は、
(i)各発酵反応器中に当該発酵反応器の容積に比例する流量で二酸化炭素を通気しながら、前記第1および第2の微生物を定常状態に達するまで増殖させて、共生培養を提供することによって、前記第1の微生物によりメタンを産生させる工程と、
(ii)工程(i)で産生されたメタンを回収し、貯留場所に送る工程とを含む、方法。
【請求項2】
前記第1および第2の微生物の増殖が定常状態に達すると、
(iii)各発酵反応器からデカンタ付き遠心分離機の中に、発酵後のブロスをその体積の約1/3だけ放出する工程と、
(iv)各発酵反応器中に、前記で放出された発酵後のブロスの体積に等しい体積だけ、新しい培養ブロスを加える工程と、
(v)共生培養の増殖を再開し、各発酵反応器中に当該発酵反応器の容積に比例する流量で二酸化炭素を通気しながら定常状態に達するまで続けることによって、前記第1の微生物によってメタンを産生させる工程と、
(vi)工程(v)で産生されたメタンを回収し、貯留場所に送る工程と、
がさらに実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の微生物は1種以上の従属−独立栄養シアノバクテリアおよび/または微小藻類である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記共生培養は、複数回の共生培養を順に使用することにより提供される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記順に使用される複数回の共生培養の回数は3〜5回である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記順に使用される共生培養は発酵反応器中において提供され、各発酵反応器の有効容積はひとつ前の発酵反応器の有効容積より大きい、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の微生物が1種以上の従属−独立栄養シアノバクテリアおよび/または微小藻類である場合、前記第1の微生物の増殖のための各発酵反応器中における二酸化炭素の流量は100〜300g/l/hであり、前記第2の微生物の増殖のための各発酵反応器中における二酸化炭素の流量は50〜200g/l/hである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の微生物が1種以上のスルホバクテリウムおよび/またはアセトバクテリウムである場合、各発酵反応器中における二酸化炭素の流量は250〜500g/l/hである、請求項1〜2および請求項4〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
腐植土または腐植肥料の製造において、前記第1の微生物および前記第2の微生物ならびに/または前記第1の微生物および前記第2の微生物の培養ブロスからなるバイオマスを使用することをさらに含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の微生物からなるバイオマスの増殖をさらに含み、前記第2の微生物は1種以上の従属−独立栄養シアノバクテリアおよび/または微小藻類であり、前記増殖は、前記共生よりも前に前記第2の微生物の培養を提供することにより実施され、前記第2の微生物の前記培養は、各発酵反応器中に当該発酵反応器の容積に比例する流量で二酸化炭素を通気しながら定常状態に達するまで実施される、請求項1〜7および請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の微生物の増殖が定常状態に達すると、
(i)各発酵反応器からデカンタ付き遠心分離機の中に、発酵後のブロスをその体積の約1/3だけ放出する工程と、
(ii)各発酵反応器中に、前記で放出された発酵後のブロスの体積に等しい体積だけ、新しい培養ブロスを加える工程と、
(iii)前記培養物の増殖を再開し、各発酵反応器中に当該発酵反応器の容積に比例する流量で二酸化炭素を通気しながら定常状態に達するまで続ける工程と、
がさらに実施される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の微生物は1種以上の従属−独立栄養シアノバクテリアおよび1種以上の微小藻類である、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記1種以上の従属−独立栄養シアノバクテリアおよび前記1種以上の微小藻類の量は、前記従属−独立栄養シアノバクテリアの量が1/5、前記微小藻類の量が4/5という割合に等しい、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
各発酵反応器中における二酸化炭素の流量は50〜200g/l/hである、請求項10〜13のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素(CO
2)を出発原料としてメタンを生成する方法に関する。したがって、本発明の方法によれば、二酸化炭素を含有する排出ガスを吸収したり廃棄したりできるようになる。
【背景技術】
【0002】
近年、排出ガス、特に二酸化炭素含有量の高い排出ガスの大気中への放出の問題がますます緊急性を持ってきており、一般市民だけでなく、環境問題への対処を預かる行政側もこの問題を強く感じている。二酸化炭素の大気中への放出は、地球規模での気候変動現象(「温室効果」)を引き起こしている主要な原因であり、暖房設備、車の排気、および火力発電所など、多様な二酸化炭素放出源が非常に頻繁に利用されているために、増加の一途をたどっている。欧州経済共同体(EEC)の分析によると、現在大気中に放出されるCO
2の約34.4%が火力発電所から放出されており、この割合は将来的にさらに増加する傾向にある。大気中のCO
2量はこれまで数千年のあいだ実質的に変化していないが、1880年以降は増加し続けていることが知られている。さらに、大規模な森林伐採や、食物連鎖調節能力をもつ生物である動植物プランクトンの減少により、地球が吸収・廃棄できる二酸化炭素の量が減少している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の方法は、大気中への二酸化炭素の排出を低減することと同時に、重要なエネルギー源となる原料を生成することを追及する。
【0004】
メタン産生細菌の作用による生物学的なメタンの生成は従来から知られており、固形廃棄物や廃水を処理する様々な工場施設において既に実施されている。しかし、廃棄物のような、組成が非常に複雑で不均一な材料を発酵させてメタンを生成する際には、並行発酵が例外なく生じるためにメタンの収率が下がり、CO
2、NO
X、SO
2などの好ましくない気体が発生する。こうした気体が発生すると、メタン産生細菌の増殖が遅くなって、このメタン産生法で使用する活性バイオマスの量が減るだけでなく、生成するメタンの電力量価値や発熱量などの品質が落ちる。
【0005】
したがって、本発明は、二酸化炭素の生物学的変換、または燃焼や発酵などの工業プロセスにより放出される二酸化炭素含有排気ガスの生物学的変換によってメタンを生成する方法の提供を目標とする。
【0006】
この目標の範囲内において、本発明の一目的は、高純度のメタンを得ることを可能とする、上述のような方法を提供することであり、この方法は、電力および熱エネルギーの生成に有利に使用できる。
【0007】
特に、本発明の一目的は、好ましくない気体(特にSO
XおよびNO
X)の含有量が低いメタンを得ることを可能とする方法の提供である。
【0008】
本発明の別の一目的は、従来公知の方法より高い収率でメタンを得ることを可能とする、上述のような方法を提供することである。
【0009】
また、本発明の一目的は、二酸化炭素を取り除いてメタンを生成するのと同時に生物材料を得る方法を提供することである。こうした生物材料は腐植土および腐植肥料の製造に使用され、得られた腐植土および腐植肥料は、圃場で有機施肥として使われたり、汚染土の再生に使われたりする。
【0010】
本発明の別の一目的は、信頼性が高く提供が比較的容易で価格が安く処理廃棄物を実質的に出さない二酸化炭素の生物学的変換によりメタンを生成する方法を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記の目標と上記の目的、そして上記の目的以外に、以降の記載で明らかにする他の目的を達成する方法は、二酸化炭素の生物学的変換によるメタンの生成が、以降に詳細に記載する非常に限られた特定の微生物から選択される1種以上のメタン産生細菌と(i)以降に詳細に記載する非常に限られた特定の微生物から選択される1種以上の従属−独立栄養シアノバクテリアおよび/もしくは微小藻類または(ii)以降に詳細に記載する非常に限られた特定の微生物から選択される1種以上のスルホバクテリウムおよび/もしくはアセトバクテリウムとの共生により実施される方法である。メタン産生細菌はメタン産生のために水素分子を使う必要があるが、従属−独立栄養シアノバクテリアおよび/もしくは微小藻類またはスルホバクテリウムおよび/もしくはアセトバクテリウム(水素産生微生物)と共生させることによって、こうした必要な原料を実際的な様式で絶えず得ることが可能となる。
【0012】
上記方法は、(i)発酵反応器中に、この発酵反応器の容積に比例する流量で二酸化炭素を通気しながら、上述した微生物を定常状態に達するまで増殖させて、共生培養を提供することによって、メタンを生成し、(ii)工程(i)で生成したメタンを回収して貯留場所へ送る。
【0013】
本発明の方法において、二酸化炭素(CO
2)が原料として使用される。したがって、二酸化炭素を豊富に含有し他の気体成分も含有する排出ガスは、本明細書中に記載される方法による生物学的変換を受ける前に、前処理に供されなければならない。この前処理は、他の気体成分から二酸化炭素を分離し汚染物質を精製除去するために必要な処理であり、膜分離、いわゆる「圧力変動吸着法」、およびアミンを用いたスクラビング(これらに限定されない)などの公知の多様なCO
2回収技術によって実施できる。
【0014】
本発明の方法において、メタン産生(「メタン化反応」)は二酸化炭素の生物学的変換(または「代謝」)と同時に生じる。
【0015】
メタン化反応はメタン産生細菌の作用によって生じ、メタン産生細菌はCO
2を使って、下記反応によりメタンを産生する。
【0016】
4H
2+CO
2→CH
4+2H
2O、すなわち、
4H
2+HCO
3−+H
+→CH
4+3H
2O
メタン産生細菌は、水素分子(H
2)の連続的除去下において、H
2の酸化、CO
2(最終的な電子受容体)の還元、NADの再酸化を共に行うことによって上記の反応を可能とする。しかし、メタン産生細菌によるCO
2の吸収は、上述した反応によるメタン産生反応で使用するための分に限られる。というのは、メタン産生細菌は、自身の細胞増殖には二酸化炭素を利用できず、代わりに、二酸化炭素よりも複雑な有機物質を必要とするからである。実際、メタン産生細菌はいわゆる「炭素固定」を行うことができない。というのも、カルビン回路の最初の反応を担う酵素であるリブロース−ビスリン酸カルボキシラーゼ(RuBisCo)を有さないためである。
【0017】
メタン産生細菌は還元剤のH
2が連続して供給されることを要すると言われている。この目的から、H
2源はH
2を合成できる特定の微生物からなることが有利だということが分かっている。したがって、本発明のメタン化反応は、特定のメタン産生細菌とH
2を産生する特定の微生物との共生培養を提供することによって実施される。メタン産生細菌がメタンを産生するために必要な水素分子をメタン産生細菌に供給できる微生物としては、2つの群の微生物が同定されており、いずれの群の微生物も、本発明の方法で提供される共生培養において妥当に使用できる。したがって、以下の2つの型の共生が同定されている。
・第1の種類の共生として、下記表1中に列記するものから選択される1種以上のメタン産生細菌と、下記表2中に列記するものから選択される1種以上の従属−独立栄養シアノバクテリアおよび/または下記表3中に列記するものから選択される1種以上の微小藻類との共生。
・第2の種類の共生として、下記表1中に列記するものから選択される1種以上のメタン産生細菌と、下記表4中に列記するものから選択される1種以上のスルホバクテリウムおよび/または1種以上のアセトバクテリウムとの共生。
【0022】
好ましくは、従属栄養微生物(すなわち、表1、表3、および表4中に列記する微生物すべて、および表2中に列記する微生物のうち従属栄養微生物のみ)の培養ブロスに、Saccharomyces cerevisiae(ATCC番号4024938または9896)およびZygosaccharomyces florentius(ATCC番号200584)からなる群より選択される1種以上の酵母の加水分解物を添加できる。実は、これら酵母の加水分解物は、従属栄養微生物の増殖を促進する一連の有機物質を含有している。当業者に知られるように、培養ブロス中に酵母加水分解物を富化する方法には、通例、(共生に関与する微生物とは別に)酵母を培養する工程と、酵母の有機物を回収して溶解する工程と、富化したい培養ブロス中に上記で得られた加水分解物を添加する工程とが含まれる。
【0023】
上述したように、メタン産生細菌は、増殖に必要な炭素源としてCO
2を使うことができず、より複雑な有機化合物を必要とする。上記第1の種類の共生に使用されるシアノバクテリアおよび微小藻類は厳密には光合成的独立栄養微生物であり、CO
2およびN
2を栄養源としているため、二酸化炭素の除去にさらに貢献する。したがって、上記第1の種類の共生は、廃棄される二酸化炭素が相当量である場合に、好ましいものとなる。対照的に、上記第2の種類の共生で使用されるスルホバクテリウムおよびアセトバクテリウムは、窒素の固定はできるが、メタン産生細菌の場合と同様に、増殖に必要な炭素源としてCO
2を使うことができず、より複雑な有機化合物を必要とする。
【0024】
使用する上記微生物の栄養要求について考慮すると、上記第1の種類の共生は2つの別々の環境で、つまりシアノバクテリア/微小藻類のための環境とメタン産生細菌のための環境で実施する必要があり、一方、上記第2の種類の共生は、スルホバクテリウム/アセトバクテリウムとメタン産生細菌とを同一環境で培養して実施できる。
【0025】
いずれの種類の共生とも、複数回の共生培養を順に行うことによって、すなわち複数回連続して行うことによって実施でき、この際、好ましくは発酵反応器のサイズを徐々に大きくする。詳細は以下に説明する。共生培養を単回行う場合には、有機物の生成量は最大となるがメタンの生成量には不都合であり、共生培養を複数回にわたって順に行う場合には、メタンの生成量は最大となるが有機物の生成量には不都合となる。共生培養を2回以上にわたって順に行うと、1回の培養時に上記微生物が産生する有機物が、次の回の培養時に上記微生物が増殖するための基礎栄養分として使用されるため、有機物からメタンへの変換が促進される。共生培養は順に様々な回数にわたって実施できるが、共生培養を順に3〜5回実施することが好ましく、順に5回実施することがより好ましい。順に5回実施すると、メタン生成の観点において最も良好な結果が得られる。
【0026】
メタン産生細菌と従属−独立栄養シアノバクテリアおよび/または微小藻類との共生(上記第1の種類の共生)ならびにメタン産生細菌とスルホバクテリウムおよび/またはアセトバクテリウムとの共生(上記第2の種類の共生)の特徴および条件は、以下に、より詳細に記載される。
【0027】
1.第1の種類の共生
シアノバクテリアおよび/または微小藻類とメタン産生細菌とは、上述のとおり栄養要求が異なるだけでなく、この2つの群の微生物は、培養条件が異なり、かつpH必要条件および好気生活の必要条件が異なるために、共存することができない。シアノバクテリアおよび微小藻類は微好気性環境を必要とし、メタン産生細菌は厳しい嫌気性環境を必要とするのである。したがって、これら2種の培養(ならびに、培養により起こる水素生成反応およびメタン生成反応)は、2種の異なる環境において生じる必要がある。そして、シアノバクテリア/微小藻類が産生した水素をメタン産生細菌の培養環境に移すためには、上記2種の異なる環境同士は互いに連結している必要がある。
【0028】
メタンの生成において、シアノバクテリア/微小藻類の増殖中に発生する水素は、この水素を使用するメタン産生細菌の培養ブロス中に、CO
2と共に通気される。上述のように、上記第1の種類の共生はメタン産生ができるだけでなく、シアノバクテリアおよび微小藻類の増殖のための炭素源としてかつメタン化反応において、相当量の二酸化炭素を使用するので、特に有利である。
【0029】
上記方法で得られる、シアノバクテリアおよび/または微小藻類のバイオマスと、メタン産生細菌のバイオマスとを、新たに発酵を行うためかつ腐植土を製造するための有機物として使用できる。
【0030】
上記第1の種類の共生は1つ以上のユニットで提供でき、好ましくは、上記ユニットの各々は、発酵反応器の対(各対の一方はシアノバクテリア/微小藻類の増殖に、もう一方はメタン産生細菌の増殖に用いる)を特定の対数で、有効容積の小さいものから順に並べたものからなる。ユニットの数、各ユニットにおける発酵反応器の対の数、および各発酵反応器の有効容積は、二酸化炭素の処理量に応じて変更できる。
【0031】
好ましくは、1つ以上のユニットを使用でき、各ユニットは3対の発酵反応器からなる。さらに、各ユニットにおける個々の発酵反応器対の有効容積は、ひとつ前の発酵反応器対の有効容積より一回り大きいことが好ましい。また、上記方法を最適化するためは、上記1種以上のメタン産生細菌のプロセス発酵反応器(process fermentation reactors)の大きさと、上記1種以上のシアノバクテリアおよび/または微小藻類のプロセス発酵反応器の大きさとの割合は、有効容積の観点から、1/20〜1/30であってよい。「プロセス発酵反応器」という表現は、培養を実施する発酵反応器を指し、複数の発酵反応器を順に並べて使用する場合には複数の発酵反応器のうち最後のものを指す。たとえば、1つのユニットが3対の発酵反応器を順に並べて構成されるという好ましい場合において、プロセス発酵反応器は、第3の対の発酵反応器のことである。
【0032】
以下、記載を簡潔とするために、上記第1の型の共生によるメタン化反応を、2種の共生微生物の各々について発酵反応器を3つずつ(すなわち3対の発酵反応器を)有するユニット1つを用いて行うものとして記載する。複数のユニットを用いる場合には、各ユニットについて、下記と同じことが当てはまる。
【0033】
まず、各共生微生物の増殖のための培養ブロスが、各ブロスの液体成分を混合するためのミキサーを用いて調製され、このミキサーの容積は、発酵ユニット全体の総有効容積の約60%に等しい。この培養ブロスは、ATCCの規格に準じて、当業者に公知の方法により、選択された微生物に応じて調製される。上記多様な微生物に用いる培養ブロスについて、典型的な組成を添付別紙Aに示す。
【0034】
続いて、各共生微生物についての播種用液が、インキュベーター(たとえばDubnoff型またはこれと同等の型のもの)中において調製される。播種用液は、選択された微生物とこれに対応する培養ブロスとを含む。上記調製には、典型的には、当該ユニットの第1の対の各発酵反応器の有効容積の約1/100に等しい有効容積を有する播種用フラスコが使用される。各対の発酵反応器について、一方の発酵反応器はシアノバクテリア/微小藻類の増殖に用い、もう一方の発酵反応器はメタン産生細菌の増殖に用いる。
【0035】
シアノバクテリアおよび/または微小藻類の増殖に用いる発酵反応器
シアノバクテリアおよび/または微小藻類の第1の「予備発酵」は、当該ユニットの上記第1の対の発酵反応器のうち一方において生じる。シアノバクテリアまたは微小藻類を含む播種用液(または、複数種の微生物を使用する場合には、必要に応じて複数の播種用液)が、追加の培養ブロスと共に、当該ユニットの上記第1の対の発酵反応器の一方に、当該発酵反応器の有効容積いっぱいまで注がれる。播種が開始されたら、当該発酵反応器の容積に比例する流量で当該発酵反応器中に二酸化炭素が通気される。好ましくは、この流量は、当該発酵反応器の容積に係数をかけて決定でき、この係数は、当該発酵反応器中に存在する上記微生物との相関関係において選択され、50〜200g/l/h(時間あたりのg/l)である。シアノバクテリアおよび微小藻類の増殖に必要な、酸素下でのニトロ化(すなわち、酸素存在下におけるN
2の固定)を可能とするために、N
2とO
2とを49/1の割合で含む混合物も、当該発酵反応器中に通気される。当業者に公知の方法で温度、pH、および微量元素の添加が適切に制御されるなか、増殖が定常状態に達するまで発酵が継続される。定常状態において、シアノバクテリアおよび/または微小藻類の増殖に用いている当該ユニットの上記第1の対の上記発酵反応器には、典型的には、1mlあたり細胞少なくとも35億個が入っている。この濃度に到達するには、通常、30〜36時間必要である。
【0036】
定常状態に達すると、シアノバクテリアまたは微小藻類の増殖に用いている上記第1の対の上記発酵反応器に入っている全量が、第2の対の発酵反応器の一方に移される。上記第2の対の上記発酵反応器の中には、予め、上記第2の対の上記発酵反応器の有効容積と、シアノバクテリアおよび/または微小藻類の上記第1の予備発酵が行われた上記第1の対の上記発酵反応器中に入っている発酵後のブロスの体積と、の差異に等しい量の培養ブロスが入っている。この操作は、たとえば容積ポンプを用いて実施できる。こうして、第2の「予備発酵」が、当該ユニットの上記第2の対の上記発酵反応器中において生じる。移した後、上記発酵反応器の容積に比例する流量で、上記発酵反応器中に二酸化炭素が通気される。好ましくは、この流量は、当該発酵反応器の容積に係数をかけて決定でき、この係数は、当該発酵反応器中に存在する上記微生物との相関関係において選択され、50〜200g/l/h(時間あたりのg/l)である。酸素下でのニトロ化を可能とするために、N
2とO
2とを49/1の割合で含む混合物も、当該発酵反応器中に通気される。当業者に公知の方法で温度、pH、および微量元素の添加が適切に制御されるなか、増殖が定常状態に達するまで発酵が継続される。定常状態において、シアノバクテリアおよび/または微小藻類の増殖に用いている上記第2の対の上記発酵反応器には、典型的には、1mlあたり細胞少なくとも35億個が入っている。この濃度に到達するには、通常、10〜18時間必要である。
【0037】
定常状態に達すると、シアノバクテリアおよび/または微小藻類の増殖に用いている上記第2の対の上記発酵反応器に入っている全量が、第3の対の発酵反応器の一方に移される。上記第3の対の上記発酵反応器の中には、予め、上記第3の対の上記発酵反応器の有効容積と、シアノバクテリアおよび/または微小藻類の上記第2の予備発酵が行われた上記第2の対の上記発酵反応器中に入っている発酵後のブロスの体積と、の差異に等しい量の培養ブロスが入っている。移した後、上記発酵反応器の容積に比例する流量で、上記発酵反応器中に二酸化炭素が通気される。好ましくは、この流量は、当該発酵反応器の容積に係数をかけて決定でき、この係数は、当該発酵反応器中に存在する上記微生物との相関関係において選択され、50〜200g/l/h(時間あたりのg/l)、より好ましくは100〜200g/l/hである。酸素下でのニトロ化を可能とするために、N
2とO
2とを49/1の割合で含む混合物も、当該発酵反応器中に通気される。当業者に公知の方法で温度、pH、および微量元素の添加が適切に制御されるなか、発酵が継続される。こうして、「プロセス発酵」が、シアノバクテリアまたは微小藻類の増殖に用いている当該ユニットの上記第3の対の上記発酵反応器中において生じる。この発酵中において、二酸化炭素の吸収と、通例20〜40g/l/h(時間あたりのg/l)の流量で産生される水素の産生とが双方とも最大となり、継続する。産生した水素は抽出器(または他の同等のシステム)を用いて回収され、気体貯留システムへ送られると、ここから通気によって、メタン産生細菌のプロセス発酵反応器中、すなわち上記第3の対の発酵反応器のうちメタン産生細菌の増殖に用いられている方の発酵反応器の中に導入される。
【0038】
CO
2の吸収とH
2の産生とを両方とも最大としかつ継続させるために、定常状態に達すると(定常状態では、上述のように、微生物の濃度が典型的には1mlあたり細胞少なくとも35億個に等しくなる)、上記プロセス発酵反応器中において、
発酵後のブロスをその体積の約1/3だけ、デカンタ付き遠心分離機の中に移す工程と、
新しい培養ブロスを、上記で移した発酵後のブロスの体積に等しい体積だけ加える工程と、
上記微生物の増殖を再開し、上記発酵反応器の容積と、上記のN
2とO
2とを49/1の割合で含む混合物の容積と、に比例する流量で二酸化炭素を通気しながら、定常状態に再度達するまで増殖させ続ける工程と、
をさらに含むサイクルを繰り返し実施してもよい。
【0039】
上記プロセス発酵の開始後、シアノバクテリアおよび微小藻類の増殖に用いている上記第1の対および上記第2の対の上記発酵反応器は、通例、滅菌に供される。こうすることにより、もし上記プロセス発酵で異常が発生して微生物を入れ替える必要が出た場合でも、上記発酵反応器を再使用できるためである。
【0040】
デカンタ遠心分離機に移した上記発酵後のブロスは、このデカンタ遠心分離機によって、半固体成分と液体成分とに分離される。上記半固体成分の量は上記ブロスの約25重量%であって、バイオマス(すなわち、上記微生物)からなり、このバイオマスは滅菌して腐植土の製造または次の共生培養に使用できる。上記液体成分の量は上記ブロスの約75重量%である。上記液体成分を精製処理することによって水を回収でき、この水は、培養ブロスの調製およびスラッジ(sludge)の製造に再使用され、このスラッジもまた、腐植土の製造または次の共生培養に使用できる。
【0041】
メタン産生細菌の増殖に用いる発酵反応器
メタン産生細菌の第1の「予備発酵」は、当該ユニットの上記第1の対のうち、シアノバクテリアおよび/または微小藻類の増殖に用いられていない方の発酵反応器中において生じる。メタン産生細菌を含む播種用液(または、複数種の微生物を使用する場合には、必要に応じて複数の播種用液)が、追加の培養ブロスと共に、当該ユニットの上記第1の対の上記発酵反応器に、当該発酵反応器の有効容積いっぱいまで注がれる。播種が開始されたら、上記第1の発酵反応器の容積に比例する流量で上記第1の発酵反応器中に二酸化炭素が通気される。好ましくは、この流量は、当該発酵反応器の容積に係数をかけて決定でき、この係数は、当該発酵反応器中に存在する上記微生物との相関関係において選択され、100〜300g/l/h(時間あたりのg/l)である。当業者に公知の方法で温度、pH、ならびに栄養分および微量元素の添加が適切に制御されるなか、増殖が定常状態に達するまで発酵が継続される。定常状態において、メタン産生細菌の増殖に用いている当該ユニットの上記第1の対の上記発酵反応器には、典型的には、1mlあたり細胞少なくとも35億個が入っている。この濃度に到達するには、通常、30〜36時間必要である。
【0042】
定常状態に達すると、上記第1の対の上記発酵反応器に入っている全量が、上記第2の対のうち、メタン産生細菌の増殖に用いられる方の発酵反応器に移される。上記第2の対の上記発酵反応器の中には、予め、上記第2の対の上記発酵反応器の有効容積と、メタン産生細菌の上記第1の予備発酵が行われた上記第1の対の上記発酵反応器中に入っている発酵後のブロスの体積と、の差異に等しい量の培養ブロスが入っている。この操作は、たとえば容積ポンプを用いて実施できる。こうして、第2の「予備発酵」が、当該ユニットの上記第2の対の上記発酵反応器中において生じる。移した後、上記発酵反応器の容積に比例する流量で、上記発酵反応器中に二酸化炭素が通気される。好ましくは、この流量は、当該発酵反応器の容積に係数をかけて決定でき、この係数は、当該発酵反応器中に存在する上記微生物との相関関係において選択され、100〜300g/l/h(時間あたりのg/l)である。当業者に公知の方法で温度、pH、ならびに栄養分および微量元素の添加が適切に制御されるなか、増殖が定常状態に達するまで発酵が継続される。定常状態において、メタン産生細菌の増殖に用いている上記第2の対の上記発酵反応器には、典型的には、1mlあたり細胞少なくとも35億個が入っている。この濃度に到達するには、通常、10〜18時間必要である。
【0043】
定常状態に達すると、上記第2の対の上記発酵反応器に入っている全量が、上記第3の対のうち、メタン産生細菌の増殖に用いられる方の発酵反応器に移される。上記第3の対の上記発酵反応器の中には、予め、上記第3の対の上記発酵反応器の有効容積と、メタン産生細菌の上記第2の予備発酵が行われた上記第2の対の上記発酵反応器中に入っている発酵後のブロスの体積と、の差異に等しい量の培養ブロスが入っている。移した後、上記発酵反応器の容積に比例する流量で、上記発酵反応器中に二酸化炭素が通気される。好ましくは、この流量は、当該発酵反応器の容積に係数をかけて決定でき、この係数は、当該発酵反応器中に存在する上記微生物との相関関係において選択され、100〜300g/l/h(時間あたりのg/l)である。メタンの産生を可能とするために、上記でシアノバクテリアおよび/または微小藻類により産生された水素もまた、上記発酵反応器の容積に比例する流量で当該発酵反応器中に通気される。好ましくは、この流量は、当該発酵反応器の容積に係数をかけて決定でき、この係数は、当該発酵反応器中に存在する上記微生物との相関関係において選択され、400〜1200g/l/h(時間あたりのg/l)である。当業者に公知の方法で温度、pH、ならびに栄養分および微量元素の添加が適切に制御されるなか、発酵が継続される。上記「プロセス発酵」において、二酸化炭素の吸収と、通例110〜150g/l/h(時間あたりのg/l)の流量で産生されるメタンの生成とが双方とも最大となり、継続する。上記プロセス発酵は、当該ユニットの上記第3の対の発酵反応器のうち、メタン産生細菌の増殖に用いている方の上記発酵反応器中において生じる。産生したメタンは抽出器(または他の同等のシステム)を用いて回収され、気体貯留システムへ送られると、ここから、エネルギー変換へと送られたり、天然ガス分配網中に導入されたりしてもよい。
【0044】
CO
2の吸収とメタンの生成とを両方とも最大としかつ継続させるために、定常状態に達すると(定常状態では、上述のように、微生物の濃度が典型的には1mlあたり細胞少なくとも35億個に等しくなる)、上記プロセス発酵反応器中において、
発酵後のブロスをその体積の約1/3だけ、デカンタ付き遠心分離機の中に移す工程と、
新しい培養ブロスを、上記で移した発酵後のブロスの体積に等しい体積だけ加える工程と、
上記微生物の増殖を再開し、上記発酵反応器の容積に比例する流量で二酸化炭素を通気しながら、定常状態に再度達するまで増殖させ続ける工程と、
を追加的に含むサイクルを繰り返し実施してもよい。
【0045】
上記プロセス発酵の開始後、メタン産生細菌の増殖に用いている上記第1の対および上記第2の対の上記発酵反応器は、通例、滅菌に供される。こうすることにより、もし上記プロセス発酵で異常が発生して微生物を入れ替える必要が出た場合でも、上記発酵反応器を再使用できるためである。
【0046】
デカンタ遠心分離機に移した上記発酵後のブロスは、このデカンタ遠心分離機によって、半固体成分と液体成分とに分離される。上記半固体成分の量は上記ブロスの約35重量%であって、バイオマス(すなわち、上記微生物)からなり、このバイオマスは滅菌して腐植土の製造に使用できる。上記液体成分の量は上記ブロスの約65重量%である。上記液体成分を精製処理することによって水を回収でき、この水は、培養ブロスの調製およびスラッジの製造に再使用され、このスラッジもまた、腐植土の製造に使用できる。
【0047】
2.第2の種類の共生
スルホバクテリウムは、培養ブロス中に存在するアンモニウム(NH
4+)を窒素源として使用し、酸素非発生型のニトロ化によってH
2および有機窒素化合物を産生できる。スルホバクテリウムは、自身が産生する水素が連続的に除去されることによってその増殖が刺激され、この水素はメタン産生細菌により吸収され、メタン産生細菌は、この水素を使ってメタンを合成する。
【0048】
アセトバクテリウムは、たとえば酢酸、酪酸、乳酸などの有機化合物を産生し、同時にH
2を産生することができる。この場合にも同様に、産生された水素がメタン産生細菌に吸収されることによって、アセトバクテリウムの増殖が刺激される。
【0049】
上述したとおり、上記第2の型の共生は、関与する2群の微生物(スルホバクテリウムおよび/もしくはアセトバクテリウムならびにメタン産生細菌)の栄養面での要求(細胞増殖に有機基質を必要とする)と培養条件面での要求(厳密な嫌気性環境、pH)とが同じであるため、1つの環境において有利に実施できる。上記第2の種類の共生は、1つ以上のユニットにおいて実施でき、好ましくは、上記ユニットの各々は、特定数の発酵反応器を、有効容積の小さいものから順に並べたものからなる。ユニットの数、各ユニットにおける発酵反応器の数、および各発酵反応器の有効容積は、二酸化炭素の処理量に応じて変更できる。好ましくは、1つ以上のユニットを使用でき、各ユニットは5つの発酵反応器からなる。順に並んだ2対の予備発酵反応器(スルホバクテリウムおよび/もしくはアセトバクテリウムとメタン産生細菌とを別個に培養するもの)と、プロセス発酵反応器が1つと、である。このプロセス発酵反応器の中で、上記2種の微生物が同一環境下に合わされて、共生が実施される。さらに、各ユニットにおける個々の予備発酵反応器対の有効容積は、ひとつ前の予備発酵反応器対の有効容積の少なくとも2倍であることが好ましい。同様に、上記プロセス発酵反応器の有効容積は、最後の予備発酵反応器対の総有効容積の少なくとも2倍であることが好ましい。
【0050】
以下、記載を簡潔とするために、上記第2の型の共生によるメタン化反応を、5つの発酵反応器、すなわち上述したように各々の共生微生物を別々に増殖させるための2対の予備発酵反応器と実際にメタン化反応を提供するためのプロセス発酵反応器1つと、からなるユニット1つを用いて行うものとして記載する。複数のユニットを用いる場合には、各ユニットについて、下記と同じことが当てはまる。
【0051】
まず、各共生微生物の増殖のための培養ブロスが、各ブロスの液体成分を混合するためのミキサーを用いて調製され、このミキサーの容積は、発酵ユニット全体の総有効容積の約60%に等しい。好ましくはミキサーを3つ、つまり、主ミキサー1つと二次ミキサー2つを使用できる。上記主ミキサーの容積は、発酵ユニット全体の総有効容積の少なくとも約60%に等しく、上記2つの二次ミキサーの各々の容積は、上記主ミキサーの有効容積の約半分に等しい。上記培養ブロスは、ATCCの規格に準じて、当業者に公知の方法により、選択された微生物に応じて調製される。上記多様な微生物に用いる培養ブロスについて、典型的な組成を添付別紙Aに示す。上記第2の種類の共生に関与する上記微生物は厳密な嫌気性環境において増殖するため、上記培養ブロスはたとえばプレナム(plenum)および真空ポンプを使って酸素分子を除去した後で上記発酵反応器中に注がなければならない。
【0052】
続いて、選択された微生物とこれに対応する培養ブロスとを含む、各共生微生物についての播種用液が、インキュベーター(たとえばDubnoff型またはこれと同等の型のもの)中において調製される。上記調製には、典型的には、当該ユニットの第1の対の各発酵反応器の有効容積の約1/100に等しい有効容積を有する播種用フラスコが使用される。
【0053】
第1の「予備発酵」は、当該ユニットの上記第1の対の発酵反応器において生じる。上記発酵反応器のうち一方においてスルホバクテリウムおよび/もしくはアセトバクテリウムが培養され、他方においてメタン産生細菌が培養される。スルホバクテリウムおよび/またはアセトバクテリウムを含む播種用液、ならびにメタン産生細菌を含む播種用液(または、複数種の微生物を使用する場合には、必要に応じて複数の播種用液)が、追加の培養ブロスと共に、当該ユニットの上記第1の対の発酵反応器のうち各微生物にとって好適な方の発酵反応器に、当該発酵反応器の有効容積いっぱいまで注がれる。播種により、上記第1の対の発酵反応器の各々における細菌量が典型的には1mlあたり細胞約1千万個に等しくなる。播種が開始されたら、上記第1の対の両発酵反応器中に、各発酵反応器の容積に比例する流量で二酸化炭素が通気される。好ましくは、この流量は、当該発酵反応器の容積に係数をかけて決定でき、この係数は、当該発酵反応器中に存在する上記微生物との相関関係において選択され、250〜500g/l/h(時間あたりのg/l)である。スルホバクテリウムおよびアセトバクテリウムの増殖には二酸化炭素よりも複雑な有機物質が必要であると上述したが、スルホバクテリウムおよびアセトバクテリウムの増殖に用いられている発酵反応器中にもやはりCO
2が通気される。上記発酵反応器の環境を無酸素状態(すなわち、酸素分子がない状態)に保つためである。当業者に公知の方法で温度、pH、ならびに栄養分および微量元素の添加が適切に制御されるなか、増殖が定常状態に達するまで発酵が継続される。定常状態において、上記第1の対の発酵反応器の各々には、典型的には、1mlあたり細胞少なくとも35億個が入っている。この濃度に到達するには、通常、24〜56時間必要である。
【0054】
定常状態に達すると、上記第1の対の各発酵反応器に入っている全量が、それぞれ別々に、第2の対の各発酵反応器に移される。上記第2の対の各発酵反応器の中には、予め、各微生物にとって好適な培養ブロスが、上記第2の対の当該発酵反応器の有効容積と、上記第1の予備発酵が行われた上記第1の対のうち対応する発酵反応器の中に入っている発酵後のブロスの体積との差異に等しい量で入れてある。この操作は、たとえば容積ポンプを用いて実施できる。こうして、第2の「予備発酵」が、当該ユニットの上記第2の対の両発酵反応器中で生じる。これら両発酵反応器の中では、スルホバクテリウムおよび/もしくはアセトバクテリウムならびにメタン産生細菌が別々に培養されている。移した後、上記第2の対の両発酵反応器中に、各発酵反応器の容積に比例する流量で二酸化炭素が通気される。好ましくは、この流量は、当該発酵反応器の容積に係数をかけて決定でき、この係数は、当該発酵反応器中に存在する上記微生物との相関関係において選択され、250〜500g/l/h(時間あたりのg/l)である。当業者に公知の方法で温度、pH、ならびに栄養分および微量元素の添加が適切に制御されるなか、増殖が定常状態に達するまで発酵が継続される。定常状態において、上記第2の対の発酵反応器の各々には、典型的には、1mlあたり細胞少なくとも35億個が入っている。この濃度に到達するには、通常、8〜18時間必要である。
【0055】
定常状態に達すると、上記第2の対の2つの発酵反応器に入っている全量が、第3の発酵反応器に移される。上記第3の発酵反応器の中には、予め、上記第3の発酵反応器の有効容積と、上記第2の対の2つの発酵反応器中に入っている発酵後のブロスの体積の合計と、の差異に等しい量の培養ブロスが入っている。上記第3の発酵反応器の中ではスルホバクテリウム/アセトバクテリウムおよびメタン産生細菌が同一の反応環境下に合せられるため、したがって、上記第3の発酵反応器に添加された上記培養ブロスは、メタン産生細菌を増殖させるためのブロスとスルホバクテリウムおよび/もしくはアセトバクテリウムを増殖させるためのブロスとの混合物でなければならず、この混合物の総重量の30%〜50重量%はスルホバクテリウムおよび/もしくはアセトバクテリウムを増殖させるためのブロスが占める。
【0056】
スルホバクテリウムおよび/もしくはアセトバクテリウムとメタン産生細菌とが同一環境下に存在することにより、共生の開始が可能となり、共生によりメタン生成が生じる。移した後、上記第3の発酵反応器中に、上記発酵反応器の容積に比例する流量で二酸化炭素が通気される。好ましくは、この流量は、当該発酵反応器の容積に係数をかけて決定でき、この係数は、当該発酵反応器中に存在する上記微生物との相関関係において選択され、250〜500g/l/h(時間あたりのg/l)である。当業者に公知の方法で温度、pH、ならびに栄養分および微量元素の添加が適切に制御されるなか、発酵が継続される。こうして、「プロセス発酵」が当該ユニットの上記第3の発酵反応器中において生じ、このプロセス発酵において、二酸化炭素の吸収とメタンの生成とが双方とも最大となり、継続する。上記メタンは、通例、110〜150g/l/h(時間あたりのg/l)の流量で産生される。産生したメタンは抽出器(または他の同等のシステム)を用いて回収され、気体貯留システムへと送られ、続いてエネルギー生成に使用される、または天然ガス分配網中に導入される。
【0057】
CO
2の吸収とメタンの生成とを両方とも最大としかつ継続させるために、定常状態に達すると(定常状態では、上述のように、微生物の濃度が典型的には1mlあたり細胞少なくとも35億個に等しくなる)、上記プロセス発酵反応器中において、
発酵後のブロスをその体積の約1/3だけ、デカンタ付き遠心分離機の中に移す工程と、
新しい培養ブロスを、上記で移した発酵後のブロスの体積に等しい体積だけ加える工程と、
上記微生物の増殖を再開し、上記発酵反応器の容積に比例する流量で二酸化炭素を通気しながら、定常状態に再度達するまで増殖させ続ける工程と、
をさらに含むサイクルを繰り返し実施してもよい。
【0058】
上記プロセス発酵の開始後、上記第1の対および上記第2の対の上記発酵反応器は、通例、滅菌に供される。こうすることにより、もし上記プロセス発酵で異常が発生して微生物を入れ替える必要が出た場合でも、上記発酵反応器を再使用できるためである。
【0059】
デカンタ遠心分離機に移した上記発酵後のブロスは、このデカンタ遠心分離機によって、半固体成分と液体成分とに分離される。上記半固体成分の量は上記ブロスの約25重量%であって、バイオマス(すなわち、上記微生物)からなり、このバイオマスは滅菌して腐植土の製造または次の共生培養に使用できる。上記液体成分の量は上記ブロスの約75重量%である。上記液体成分を精製処理することによって水を回収でき、この水は、培養ブロスの調製およびスラッジの製造に再使用され、このスラッジもまた、腐植土の製造または次の共生培養に使用できる。
【0060】
採用する共生の型にかかわらず、本発明の方法の好ましい一実施形態は、共生に関与するバイオマスが腐植土または腐植肥料の製造に使用されるというさらなる工程の提供を含んでよい。このバイオマスとは、共生した一連の微生物である。上記で使用された培養ブロスは、上記微生物が細胞増殖中に産生した有機物質を豊富に含有しており、好ましくは、腐植土または腐植肥料の製造にも使用できる。バイオマスおよび/または有機物から腐植土および腐植肥料を製造する方法としては様々なものが知られており、背景技術において一般的に用いられている。好ましくは、Riccardo Reversoによるイタリア特許第01298306号に記載の腐植製品の製造方法を使用できる。
【0061】
典型的にはメタン化反応の終わりに腐植土または腐植肥料を製造すると、メタン化反応で生じた処理廃棄物、すなわちバイオマスそのものと有機残渣とを取り除くという点で二重に有利である。つまり、これらの両処理廃棄物を同時に使用して、高付加価値のあるもの(すなわち腐植土)を製造し、これを圃場において天然肥料としてかつ/または土壌調整のために使用するのである。
【0062】
また、採用する共生の型にかかわらず、本発明の方法の別の好ましい一実施形態は、共生を実施する前にさらなる工程を含んでもよく、この工程を以降で「バイオマス生成工程」とよぶ。この工程では、バイオマスを増加させる目的で、表2および表3中に列記するものから選択される1種以上の従属−独立栄養シアノバクテリアおよび1種または1種以上の微小藻類を増殖させる。
【0063】
上記バイオマス生成工程においては、上記の微生物が個々に培養される。というのは、共生は不要なためである。二酸化炭素の代謝によるメタン生成よりも上流に上記バイオマス生成工程を提供することにより、主に2つの利点が提供される。1つめとして、シアノバクテリアおよび微小藻類は二酸化炭素を吸収して自身の増殖のためのエネルギー源として使用できるため、上記工程を提供すると、二酸化炭素の廃棄量を増やすことが可能となる。2つめとして、シアノバクテリアおよび微小藻類が増殖中に産生する有機物は、容易に吸収されることに加え、さらには、メタン化反応で使用される、CO
2よりも複雑な炭素源を必要とする上記細菌(メタン産生細菌、スルホバクテリウム、アセトバクテリウム)の栄養分として使用でき、また、腐植土の製造においても使用できる。
【0064】
上記バイオマス生成工程は、1つ以上のユニットで実施でき、好ましくは、上記ユニットの各々は、特定数の発酵反応器を、有効容積の小さいものから順に並べたものからなる。ユニットの数、各ユニットにおける発酵反応器の数、および各発酵反応器の有効容積は、二酸化炭素の処理量に応じて変更できる。好ましくは、1つ以上のユニットを使用でき、各ユニットは3つの発酵反応器からなる。さらに、各ユニットにおける各発酵反応器の有効容積は、ひとつ前の発酵反応器の有効容積より一回り大きいことが好ましい。
【0065】
上記バイオマス生成工程は、表2および表3中に列記する従属−独立栄養シアノバクテリアまたは微小藻類のクラスに属する微生物のうち1種を用いて実施できるが、少なくとも2種の微生物を使用し、そのうち少なくとも1種が従属−独立栄養シアノバクテリアであり少なくとも1種が微小藻類であることが好ましい。さらに好ましくは、従属−独立栄養シアノバクテリアおよび微小藻類を、従属−独立栄養シアノバクテリアの量が1/5、微小藻類の量が4/5となるように使用してもよい。上記バイオマス生成工程において従属−独立栄養シアノバクテリアを少なくとも1種および微小藻類を少なくとも1種使用することにより、二酸化炭素の吸収と生成されるバイオマスの質との両観点においてより良好な結果が確実に得られることとなる。実は、微小藻類により産生される有機化合物は、シアノバクテリアにより産生される、より複雑なタンパク質に比べて、メタン化反応に対する適合性が高い。
【0066】
以下、記載を簡潔とするために、上記のバイオマス生成の工程を、3つの発酵反応器からなるユニット1つを用いて行うものとして記載する。複数のユニットを用いる場合には、各ユニットについて、下記と同じことが当てはまる。
【0067】
まず、バイオマス生成のために選択された微生物の増殖のための培養ブロスが、液体成分を混合するためのミキサーを用いて調製され、このミキサーの容積は、発酵ユニット全体の総有効容積の約60%に等しい。この培養ブロスは、ATCCの規格に準じて、当業者に公知の方法により、選択された微生物に応じて調製される。上記多様な微生物に用いる培養ブロスについて、典型的な組成を添付別紙Aに示す。微生物を2種以上使用する場合には、使用する各微生物の増殖に好適な培養ブロスを、各微生物の量比と同じ量比で混合したものを、発酵反応器に入れなければならない。
【0068】
続いて、播種用液が、インキュベーター(たとえばDubnoff型またはこれと同等の型のもの)中において調製される。播種用液は、選択された微生物とこれに対応する培養ブロスとを含む。上記調製には、典型的には、当該ユニットの第1の発酵反応器の有効容積の約1/100に等しい有効容積を有する播種用フラスコが使用される。
【0069】
こうして、第1の「予備発酵」が、当該ユニットの上記第1の発酵反応器において生じる。上記微生物を含む播種用液が、追加の培養ブロスと共に、当該ユニットの上記第1の発酵反応器に、当該発酵反応器の有効容積いっぱいまで注がれる。播種により、上記第1の発酵反応器における微生物量が典型的には1mlあたり細胞約1千万個に近くなる。播種が開始されたら、上記発酵反応器中に、上記発酵反応器の容積に比例する流量で二酸化炭素が通気される。好ましくは、この流量は、当該発酵反応器の容積に係数をかけて決定でき、この係数は、当該発酵反応器中に存在する上記微生物との相関関係において選択され、50〜200g/l/h(時間あたりのg/l)、より好ましくは100〜200g/l/hである。当業者に公知の方法で温度、pH、および微量元素の添加が適切に制御されるなか、増殖が定常状態に達するまで発酵が継続される。定常状態において、上記第1の発酵反応器には、典型的には、1mlあたり細胞少なくとも35億個が入っている。この濃度に到達するには、通常、24〜56時間必要である。
【0070】
定常状態に達すると、上記第1の発酵反応器に入っている全量が、第2の発酵反応器に移される。上記第2の発酵反応器の中には、予め、上記第2の発酵反応器の有効容積と、上記第1の発酵反応器中に入っている発酵後のブロスの体積との差異に等しい量の培養ブロスが入れてある。この操作は、たとえば容積ポンプを用いて実施できる。こうして、第2の「予備発酵」が、当該ユニットの上記第2の発酵反応器中で生じる。移した後、上記発酵反応器中に、上記発酵反応器の容積に比例する流量で二酸化炭素が通気される。好ましくは、この流量は、当該発酵反応器の容積に係数をかけて決定でき、この係数は、当該発酵反応器中に存在する上記微生物との相関関係において選択され、50〜200g/l/h(時間あたりのg/l)、より好ましくは100〜200g/l/hである。当業者に公知の方法で温度、pH、および微量元素の添加が適切に制御されるなか、増殖が定常状態に達するまで発酵が継続される。定常状態において、上記第2の発酵反応器には、典型的には、1mlあたり細胞少なくとも35億個が入っている。この濃度に到達するには、通常、8〜18時間必要である。
【0071】
定常状態に達すると、上記第2の発酵反応器に入っている全量が、第3の発酵反応器に移される。上記第3の発酵反応器中には、予め、上記第3の発酵反応器の有効容積と、上記第2の発酵反応器中に入っている発酵後のブロスの体積と、の差異に等しい量の培養ブロスが入っている。移した後、上記発酵反応器中に、上記発酵反応器の容積に比例する流量で二酸化炭素が通気される。好ましくは、この流量は、当該発酵反応器の容積に係数をかけて決定でき、この係数は、当該発酵反応器中に存在する上記微生物との相関関係において選択され、50〜200g/l/h(時間あたりのg/l)、より好ましくは100〜200g/l/hである。当業者に公知の方法で温度、pH、および微量元素の添加が適切に制御されるなか、発酵が継続される。こうして、「プロセス発酵」が当該ユニットの上記第3の発酵反応器中において生じ、このプロセス発酵において、二酸化炭素の吸収とバイオマスの生成とが双方とも最大となり、継続する。これを達成するため、定常状態に達すると(定常状態では、上述のように、微生物の濃度が典型的には1mlあたり細胞少なくとも35億個に等しくなる)、上記プロセス発酵反応器中において、
発酵後のブロスをその体積の約1/3だけ、デカンタ付き遠心分離機の中に移す工程と、
新しい培養ブロスを、上記で移した発酵後のブロスの体積に等しい体積だけ加える工程と、
微生物の増殖を再開し、上記発酵反応器の容積に比例する流量で二酸化炭素を通気しながら、定常状態に再度達するまで増殖させ続ける工程と、
をさらに含むサイクルを繰り返し実施してもよい。
【0072】
上記プロセス発酵の開始後、上記第1および第2の発酵反応器は、通例、滅菌に供される。こうすることにより、もし上記プロセス発酵で異常が発生して微生物を入れ替える必要が出た場合でも、上記発酵反応器を再使用できるためである。
【0073】
デカンタ遠心分離機に移した上記発酵後のブロスは、このデカンタ遠心分離機によって、半固体成分と液体成分とに分離される。上記半固体成分の量は上記ブロスの約25重量%であって、バイオマス(すなわち、上記微生物)からなり、このバイオマスは滅菌してメタン化反応に使用できる。上記液体成分の量は上記ブロスの約75重量%である。上記液体成分を精製処理することによって水を回収でき、この水は、培養ブロスの調製およびスラッジの製造に再使用され、このスラッジもまた、腐植土の製造に使用できる。
【0074】
上記で使用する微生物が微小藻類である場合、上記の炭素固定工程(「暗工程」または「カルビン回路」としても知られる)において光合成を完了させるために、発酵反応器が備えるランプを12〜20時間/日の期間で使用できる。
【0075】
実際のところ、本明細書中に記載の、二酸化炭素の生物学的変換を共生により行ってメタンを生成する方法によって、意図される目標と目的とが十分に達成されることが分かっている。というのは、この方法によれば、高純度のメタンを良好な収率で得ることが可能となるためである。本発明の方法により、排出ガスに含有される二酸化炭素の廃棄を、まずはメタン産生細菌を用いて吸収してメタンに変換し、上記第1の種類の共生を用いる場合にはシアノバクテリアおよび微小藻類が炭素源として使用することによって、実施することも可能となる。また、本発明の方法によれば、容易に吸収され、かつ、以降に連続的に実施される共生において原料として使用できる(これにより、上記方法自体がより優れたものとなり、メタン収率がさらに高まる)、または腐植土の製造に使用できる有機物を得ることが可能となる。
【0076】
本明細書中に記載されると想到される、二酸化炭素をメタンに生物学的に変換する(メタン化反応)方法は、非常に多くの改変および変更をする余地があり、こうした改変および変更はすべて、本発明の発明概念の範囲に含まれる。細かい要素がさらに他の要素に置き換えられてもよく、こうした他の要素の等価物は当業者に公知である。
【0077】
本願はイタリア特許出願第102015000073679号(UB2015A005703)に基づく優先権を主張するものであり、同イタリア特許出願の開示内容を引用により本明細書に援用する。
【国際調査報告】