(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-534105(P2018-534105A)
(43)【公表日】2018年11月22日
(54)【発明の名称】血栓除去のためのシステム
(51)【国際特許分類】
A61F 2/01 20060101AFI20181026BHJP
【FI】
A61F2/01
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】46
(21)【出願番号】特願2018-540238(P2018-540238)
(86)(22)【出願日】2016年10月26日
(85)【翻訳文提出日】2018年6月20日
(86)【国際出願番号】IL2016051153
(87)【国際公開番号】WO2017072761
(87)【国際公開日】20170504
(31)【優先権主張番号】62/246,139
(32)【優先日】2015年10月26日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/257,346
(32)【優先日】2015年11月19日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA
(71)【出願人】
【識別番号】518144676
【氏名又は名称】アムニス セラピューティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】シャメイ,ノアム
(72)【発明者】
【氏名】プリス,ロネン アリエル
(72)【発明者】
【氏名】コーエン,シャハル
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160MM37
(57)【要約】
本開示は、管状器官内に位置する内体の回収及び/又は取り出しのための医療システム、キット、及び方法を提供する。本開示のシステムは、管状器官からの閉塞性内体の除去、例えば、血栓除去のための様々な処置を行うのに適している。
【選択図】
図3C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状器官内に位置する少なくとも1つの内体中に固定するための医療システムであって、処理及び操作装置(HMA)並びに前記HMAによって操作可能な内体固定ユニットを含み、前記HMAが、前記内体固定ユニットを操作して前記内体に係合させるように構成され、
前記内体固定ユニットが、
近位−遠位軸を規定する展開ワイヤと、
前記展開ワイヤに沿って離間される少なくとも2つの略円筒状の細長い本体であって、前記本体のそれぞれが近位端部及び遠位端部を有し、且つ少なくとも1つの巻回されたコイル状スレッドであって、その配備状態にある少なくとも1つの巻回されたコイル状スレッドによって構成され、前記本体のそれぞれが前記近位端部又は前記遠位端部のいずれかに固定端部を有し、且つ少なくとも1つの展開状態に展開するように構成される反対側の自由端部を有し、前記展開状態では、前記スレッドのそれぞれが、展開中に略螺旋状の経路を辿りながら一般的な半径方向に開く、少なくとも2つの略円筒状の細長い本体と、
少なくとも2つの軸方向に移動可能な先端器具であって、それぞれが前記展開ワイヤに取り付けられ、且つ前記先端器具の軸方向の移動により、前記巻回されたコイル状スレッドが前記少なくとも1つの展開状態に開くように前記本体の前記自由端部に関連付けられている、先端器具と、を含み、
前記HMAが、前記展開ワイヤを軸方向に移動させるように構成されている、医療システム。
【請求項2】
前記本体のそれぞれが、前記先端器具の軸方向の移動時に前記本体のそれぞれに加えられる力で開くように構成され、前記力が、他の本体に加えられる力と同じであるか又は異なり得る、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記本体の数が2〜10である、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記本体が、(i)奇数の本体がそれぞれの遠位端部に自由端部を有し、一方で偶数の本体がそれぞれの近位端部に自由端部を有するか、又は(ii)奇数の本体がそれぞれの近位端部に自由端部を有し、一方で偶数の本体がそれぞれの遠位端部に自由端部を有するように構成されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記本体の少なくとも1つが前記展開ワイヤに固定されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記本体の少なくとも1つが浮動状態である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記先端器具の少なくとも1つが前記展開ワイヤに固定されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記先端器具の少なくとも1つの他の先端器具が浮動状態である、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
(i)遠位自由端部を有する本体が前記展開ワイヤに固定され、及び近位自由端部を有する本体が浮動状態であるか、又は(ii)近位自由端部を有する本体が前記展開ワイヤに固定され、及び遠位自由端部を有する本体が浮動状態である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
固定された本体が浮動先端器具に関連付けられ、及び浮動本体が固定先端器具に関連付けられている、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
(i)前記本体の少なくとも1つの前記スレッドが、その対応する先端器具の軸方向の移動時、1つの回転方向において螺旋状に開く運動を可能にするようにコイル状に巻回され、及び(ii)前記近位−遠位軸に沿って連続した本体の前記スレッドが、その対応する先端器具の軸方向の移動時、反対の回転方向において、それらの螺旋状に開く運動を可能にするようにコイル状に巻回されている、請求項1〜10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
管状器官内に位置する少なくとも1つの内体中に固定するための医療システムであって、処理及び操作装置(HMA)並びに前記HMAによって操作可能な内体固定ユニットを含み、前記HMAが、前記内体固定ユニットを操作して前記内体に係合させるように構成され、
前記内体固定ユニットが、
近位−遠位軸を規定する展開ワイヤと、
前記展開ワイヤに沿って離間される少なくとも1対の略円筒状の細長い本体であって、前記本体のそれぞれが近位端部及び遠位端部を有し、且つ少なくとも1つの巻回されたコイル状スレッドであって、その配備状態にある少なくとも1つの巻回されたコイル状スレッドによって構成され、前記対の本体の第1の本体が、近位固定端部及び遠位自由端部を有する近位本体であり、及び前記対の本体の第2の本体が、遠位固定端部及び近位自由端部を有する遠位本体であり、本体のそれぞれの前記自由端部が、展開状態に展開されるように構成され、前記展開状態では、前記スレッドのそれぞれが、展開中に略螺旋状の経路を辿りながら一般的な半径方向に開く、少なくとも1対の略円筒状の細長い本体と、
少なくとも1対の軸方向に移動可能な先端器具であって、それぞれが前記展開ワイヤに取り付けられ、且つ前記先端器具の軸方向の移動により、前記対の本体のそれぞれの前記巻回されたコイル状スレッドが前記少なくとも1つの展開状態に開くように前記本体の自由端部に関連付けられている、少なくとも1対の軸方向に移動可能な先端器具と、を含み、
前記HMAが、前記展開ワイヤを軸方向に移動させるように構成されている、医療システム。
【請求項13】
前記対の本体の前記コイル状スレッドが開くことにより、前記展開状態にある前記本体の1つの前記開いたスレッドが、前記展開状態にある前記対の他の本体の前記開いたスレッドに絡み合う、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記対の本体の前記開いたスレッドがケージ構造を形成する、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
少なくとも2対の本体及びそれに関連付けられた少なくとも2対の先端器具を含む、請求項12〜14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記対の本体の前記第1の本体の長さが、前記対の本体の前記第2の本体の長さよりも大きい、請求項12〜15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記少なくとも1対の本体から離間された前記展開ワイヤ上の少なくとも1つの追加の略円筒状の細長い本体をさらに含み、前記追加の本体が前記追加の本体の近位端部又は遠位端部の追加の先端器具に関連付けられている、請求項12〜16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
(i)前記対の本体の前記近位本体の前記スレッドが、その対応する先端器具の軸方向の移動時、1つの回転方向において螺旋状に開く運動を可能にするようにコイル状に巻回され、及び(ii)前記対の本体の前記遠位本体の前記スレッドが、その対応する先端器具の軸方向の移動時、反対の回転方向において、それらの螺旋状に開く運動を可能にするようにコイル状に巻回されている、請求項12〜17のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
前記本体がスペーサによって離間されている、請求項1〜18のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
それぞれの本体が、他の本体とは独立に、1〜120の巻回されたコイル状スレッドを含む、請求項1〜19のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項21】
前記先端器具が、その関連付けられた本体内の前記巻回されたコイル状スレッドの全てを同時に開くように構成されている、請求項1〜20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項22】
前記巻回されたコイル状スレッドが形状記憶金属又は合金から作られている、請求項1〜21のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項23】
前記スレッドが、管状の解剖学的器官の内面に対して(2mmの直径を有する導管内で)1N以下の半径方向の力を加えるように寸法決めされている、請求項1〜22のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項24】
少なくとも1つの閉じられた管をさらに含む、請求項1〜23のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項25】
前記先端器具の長手方向軸が前記展開ワイヤと一致するように、前記先端器具が楕円形を有する、請求項1〜24のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項26】
前記先端器具の最大直径が、前記関連付けられた本体の内径よりも大きい、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
各先端器具が、前記先端器具の近位端部又は遠位端部の1つに関連付けられた管状要素を含む、請求項25又は26に記載のシステム。
【請求項28】
(i)前記先端器具が、対応する本体の近位端部に関連付けられる場合、前記管状要素が前記先端器具の近位端部にあるか、又は(ii)前記先端器具が、対応する本体の遠位端部に関連付けられる場合、前記管状要素が前記先端器具の遠位端部にある、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記先端器具の少なくとも1つが放射線不透過性マーカー、例えば、白金イリジウム(Pt−Ir)又は金マーカーを含む、請求項1〜28のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項30】
前記本体の少なくとも1つの外面が、前記本体の長さの一部に沿ってポリマー層によって覆われている、請求項1〜29のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項31】
前記ポリマー層が、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はポリウレタンから選択されるポリマー材料から作られている、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
前記ポリマー層が前記コイル状スレッドの開く程度を制限する、請求項30又は31に記載のシステム。
【請求項33】
少なくとも1つの塞栓防止要素をさらに含む、請求項1〜32のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項34】
前記塞栓防止要素が前記内体固定ユニットの前記近位端部又は前記遠位端部のいずれかに配置されている、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
前記塞栓防止要素が、前記内体固定ユニットを覆うように前記展開ワイヤに沿って移動可能である、請求項33又は34に記載のシステム。
【請求項36】
前記塞栓防止要素が保護シートである、請求項35に記載のシステム。
【請求項37】
前記塞栓防止要素が閉塞バルーンである、請求項34〜36のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項38】
前記管状器官が血管、卵管、尿路、尿管、尿道、胆道、胆管、胃腸管、気道、及び任意の他の解剖学的内腔から選択される、請求項1〜37のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項39】
前記円筒本体及び/又は前記先端器具のそれぞれが、独立に、経時的に溶出される物質を含む、請求項1〜38のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項40】
処理及び操作装置(HMA)と、
少なくとも1つの展開ワイヤと、
複数の略円筒状の細長い本体であって、それぞれの本体が、少なくとも1つの形状記憶金属又は合金の巻回されたコイル状スレッドによって構成されている、複数の略円筒状の細長い本体と、
複数の先端器具と
を含み、任意選択により、複数のスペーサ及び/又は塞栓防止要素を含む、請求項1〜39のいずれか一項に記載のシステムを組み立てるためのキット。
【請求項41】
前記展開ワイヤを(i)前記HMA、(ii)前記本体、及び/又は(iii)前記先端器具に関連付ける手段をさらに含む、請求項40に記載のキット。
【請求項42】
請求項1〜39のいずれか一項に記載のシステム及び使用説明書を含むキット。
【請求項43】
管状の解剖学的器官内に位置する内体を除去する方法であって、
(a)内体固定ユニットが前記内体に近接するように、前記内体固定ユニットに関連付けられた処理及び操作装置(HMA)によって前記内体固定ユニットを操作することであって、前記内体固定ユニットが、
近位−遠位軸を規定する展開ワイヤと、
前記展開ワイヤに沿って離間される少なくとも2つの略円筒状の細長い本体であって、それぞれの本体が近位端部及び遠位端部を有し、且つ配備状態にある少なくとも1つの巻回されたコイル状スレッドによって構成され、前記本体のそれぞれが前記近位端部又は前記遠位端部のいずれかに固定端部を有し、且つ少なくとも1つの展開状態に展開するように構成される反対側の自由端部を有し、前記展開状態では、前記スレッドのそれぞれが、展開中に略螺旋状の経路を辿りながら一般的な半径方向に開く、少なくとも2つの略円筒状の細長い本体と、
少なくとも2つの軸方向に移動可能な先端器具であって、それぞれが前記展開ワイヤに取り付けられ、且つ前記本体の前記自由端部に関連付けられている、少なくとも2つの軸方向に移動可能な先端器具と
を含む、操作することと、
(b)前記展開ワイヤを軸方向に移動させて、少なくとも1つの先端器具を軸方向に移動させ、それにより、少なくとも1つのコイル状スレッドをその関連付けられた本体から開いて、配備状態から前記少なくとも1つの展開状態にし、それにより、前記開いたコイル状スレッドを前記内体に固定することと、
(c)前記内体固定ユニットを前記器官から出すように操作することにより、前記固定された内体を前記器官から除去することと
を含む、方法。
【請求項44】
前記本体のそれぞれが、前記先端器具の軸方向の移動時に前記本体のそれぞれに加えられる力で開くように構成され、前記力が、他の本体に加えられる力と同じであるか又は異なり得る、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
管状の解剖学的器官内に位置する内体を除去する方法であって、
(a)内体固定ユニットが前記内体に近接するように、前記内体固定ユニットに関連付けられた処理及び操作装置(HMA)によって前記内体固定ユニットを操作することであって、前記内体固定ユニットが、
近位−遠位軸を規定する展開ワイヤと、
前記展開ワイヤに沿って離間される少なくとも1対の略円筒状の細長い本体であって、それぞれの本体が近位端部及び遠位端部を有し、且つ配備状態にある少なくとも1つの巻回されたコイル状スレッドによって構成され、前記対の本体の第1の本体が、近位固定端部及び遠位自由端部を有する近位本体であり、及び前記対の本体の第2の本体が、遠位固定端部及び近位自由端部を有する遠位本体であり、それぞれの本体の前記自由端部が、展開状態に展開されるように構成され、前記展開状態では、前記スレッドのそれぞれが、展開中に略螺旋状の経路を辿りながら一般的な半径方向に開く、少なくとも1対の略円筒状の細長い本体と、
少なくとも1対の軸方向に移動可能な先端器具であって、それぞれが前記展開ワイヤに取り付けられ、前記対の先端器具の第1の先端器具が、前記対の本体の前記第1の本体の前記遠位自由端部に関連付けられ、及び前記対の先端器具の第2の先端器具が、前記対の本体の前記第2の本体の前記近位自由端部に関連付けられている、少なくとも1対の軸方向に移動可能な先端器具と
を含む、操作することと、
(b)前記展開ワイヤを近位方向に軸方向に移動させて、前記第1の先端器具を前記近位方向に軸方向に移動させ、それにより、少なくとも1つのコイル状スレッドを前記第1の本体から開いて、その配備状態から少なくとも1つの展開状態にし、それにより、前記開いたコイル状スレッドを前記内体内に固定することと、
(c)前記展開ワイヤを前記近位方向に軸方向に移動させて、前記第2の先端器具を前記近位方向に軸方向に移動させ、それにより、少なくとも1つのコイル状スレッドを前記第2の本体から開いて、その配備状態から少なくとも1つの展開状態にし、それにより、前記開いたコイル状スレッドを前記内体内に固定することと、
(d)前記内体固定ユニットを前記器官から出すように操作することにより、前記固定された内体を前記器官から除去することと
を含む、方法。
【請求項46】
前記システムが2対以上の本体を含み、及びステップ(b)〜(c)がそれぞれの前記対に対して繰り返される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
ステップ(c’):
(c’)前記展開ワイヤを軸方向に移動させて、前記第2の展開された本体を前記第1の展開された本体に近接させ、それにより、前記第2の本体の前記開いたコイル状スレッドと前記第1の本体の前記開いたコイル状スレッドとを絡み合わせることによってケージ構造を形成すること
を、ステップ(c)とステップ(d)との間にさらに含む、請求項45又は46に記載の方法。
【請求項48】
(c’’)前記展開ワイヤを軸方向に移動させて、2つの隣接したケージ構造を互いに近接させることを含む、ステップ(c’’)をステップ(c’)とステップ(d)との間にさらに含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
管状器官からの内体の除去に使用される、請求項1〜39のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項50】
前記管状器官が血管、卵管、尿路、尿管、尿道、胆道、胆管、胃腸管、気道、及び任意の他の解剖学的内腔から選択される、請求項49に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、対象の器官、特に小血管のような狭い管状器官における内体(corpus)の固定及び回収に関する。
【背景技術】
【0002】
ここで開示される主題の背景として適切であると見なされる参考文献を以下に列挙する。
[1]Nogueira et al., AJNR 2009, 30, 649-661
[2]Grunwald et al. The American Journal of Neuroradiology 2011, 32, 238-243
[3]Mordasini et al. The eJournal of the European Society of minimally invasive Neurological Therapy, 2012: 1238000077
[4]米国特許第7,766,921号
[5]米国特許第8,715,227号
[6]米国特許第6,685,722号
[7]国際公開第2013/054324号
[8]Gralla et al., Am J Neuroradiol 2006, 27, 1357-1361
[9]国際公開第2011/130256号
[10]Gory et al., Am J Neuroradiol 2013, 34, 2192-2198
[11]Levy et al., Am J Neuroradiol 2006, 27, 2069-2072
【0003】
本明細書中の上記の参考文献の確認は、これらの参考文献が、ここで開示される主題の特許性に多少なりとも関係していることを意味すると推論するべきではない。
【0004】
低侵襲処置の使用による血管からの血塊及びプラークの除去は、現在では十分に確立された処置である。血塊に関連する脳卒中事象は、脳に血液を供給する血管の障害の結果として起こり、脳細胞の突然の死をもたらす。これは、血栓症(脳卒中の約80%)又は出血(脳卒中の約20%)によって引き起こされる虚血(グルコース及び酸素供給の欠如)に起因し得る。脳卒中の年間有病率は、世界で1500万人と推定されており、これは主要な死因(全死亡の約10%)及び長期障害の1つである。さらに、脳卒中は、米国及び西欧で最も費用がかかる健康問題の1つであり、推定される直接費及び間接費は年間386億ドルである。脳卒中によって引き起こされる損傷の大部分は、梗塞コアを取り囲む障害領域の機能を脅かす二次脳卒中損傷:虚血性ペナンブラによるものである。(再開通のための)早期医学的介入は、このプロセスを阻害し、不可逆的な神経損傷のリスクを低減し得る。
【0005】
血栓に起因する脳卒中の処置の目的は、同じままであり、患部組織への酸素化された血流の安全且つ迅速な再確立である。虚血性脳卒中の処置のためのガイドライン及びプロトコルは、例えば、米国神経学会(American Society of Neurology)及び神経外科医学会(American Society of Neurosurgeons)又は欧州脳卒中協会(The European Stroke Organization)(ESO)によって発表されたものである。より具体的には、今日までの虚血性脳卒中患者のケアの薬理学的基準は、静脈内(IV)組織プラスミノーゲン活性化因子(rt−PA)によるものである。大血管(例えば、中大脳動脈)の閉塞を有する患者、又はIV血栓溶解薬の使用が禁忌である患者において、rt−PAが症状の発症から6時間以内に動脈内(IA)に使用される場合、再開通率の改善が達成され得る。しかしながら、この処置は、頭蓋内出血のリスクを増加させる可能性があり、現在、世界中で使用が承認されていない。この処置は、血栓溶解療法の失敗率を上回り、処置の時間枠及び望ましい集団も制限される。従って、IV rt−PA療法に失敗した患者、又はIV rt−PAの使用が不適格である若しくは禁忌である患者、又は医療支援が開始できるときに治療の時間枠を超えている患者では、脳血栓除去装置が血流の再確立に使用される。
【0006】
血餅を破砕又は回収するための様々な機械的アプローチが利用され、臨床文献に報告されている。これらには、とりわけ、血管内(頭蓋内)血栓除去、血管内血栓吸引、機械的血栓破壊、及び血栓閉じ込め装置が含まれる[1−6]。頭蓋内血栓除去は、血餅破砕及び遠位塞栓症の可能性が潜在的により低い迅速な流れの回復をもたらし、化学的血栓溶解薬の使用を軽減し、さらにはその使用を排除することができ、従って神経毒性及び頭蓋内出血のリスクが低下する。化学的血栓溶解薬の使用を回避することにより、処置期間を、8時間を超えて延長することが可能であり得る。加えて、血液脳関門を破壊することなく再開通が起こる。例えば、一部のシステムは、畳まれた状態の装置の展開に基づいており、血管に挿入されると血塊の回収のために拡張される[4]。他は、複数のストランドを含み、収縮及び拡張構造を有する[5−7、9]。
【0007】
血塊の特性の多様性により、当技術分野で記載される多くの装置は、特定のタイプの血餅の取り出しに適している。さらに、ほとんどの場合、装置は、動脈に対する支持を提供し且つ塞栓防止を提供するように設計され、それにより、血管の内面との直接接触が必要である。処置の異なる段階で装置が血管内で操作されて移動される場合、このような接触は、血管にさらなる損傷を引き起こすことがよくある。従って、様々な血管からの様々な血餅の取り出しを可能にし、血餅崩壊のリスクを低減すると共に、より優れた操作柔軟性を提供し、血管の損傷を最小限にする装置が必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、管状器官内に位置する内体の回収及び/又は取り出しのための医療システム、キット、及び方法に関する。従って、本開示のシステムは、管状器官からの閉塞性内体の除去のための様々な処置を行うのに適している。例示的な処置は、典型的には、狭い血管、例えば、限定されるものではないが、脳内に存在する狭い血管での血栓除去術(即ち、血塊の除去)であり得、この血栓除去術は、内体を著しく破壊することも、血管を著しく損傷することもなく血管からの内体の取り出しを可能にするように装置を内体に固定することによって行われる。
【0009】
本開示に関連して、内体という用語は、血塊、プラーク、コレステロール層、血栓、天然に存在する異物(例えば、管状器官内に閉じ込められた又はその内面に付着した組織部分)、及び天然に存在しない異物(例えば、管状器官内に閉じ込められた、管状器官に付着した、又は管状器官を貫通した非生体)などを含む。
【0010】
管状器官という用語は、その中を通る体液の流れを可能にする処置されるべき対象の任意の解剖学的内腔を包含することを意図する。器官は、血管(静脈(vain)、動脈、微小血管など)又は血管ではない解剖学的器官、例えば、卵管、尿路(例えば、尿管、尿道、腎臓)、胆道(胆管)、胃腸管、気道、及び部分的又は完全な閉塞が起こり得る他の任意の解剖学的内腔であり得る。
【0011】
その一態様では、本開示は、管状器官内に位置する少なくとも1つの内体中に固定するための医療システムを提供し、このシステムは、処理及び操作装置(HMA)並びにHMAによって操作可能な内体固定ユニットを含む。HMAは、内体固定ユニットを操作して内体に係合させるように構成され、内体に近接すると、この固定ユニットは、HMAによる操作で操作される。
【0012】
内体固定ユニットは、近位−遠位軸を規定する展開ワイヤと、前記展開ワイヤに沿って離間される少なくとも2つの略円筒状の細長い本体と、少なくとも2つの軸方向に移動可能な先端器具とを含む。それぞれの円筒本体は、円筒本体の円筒構造を形成する少なくとも1つ、典型的には複数の巻回されたコイル状スレッドによって構成され、このような各円筒本体は、近位端部及び遠位端部を有する。少なくとも1つの巻回されたコイル状スレッド(従って円筒本体も)は、配備状態を有し、この配備状態では、スレッドが、コイル状に巻回されて円筒状の円筒本体を形成する(即ち、管の一般的な形状を形成する) − 前記円筒本体のそれぞれは、近位端部又は遠位端部のいずれかに固定端部を有する。コイル状に巻回されたスレッドは、固定された端部でのスレッドの展開を防止するために、円筒本体の固定端部で互いに対して保持されている。円筒本体の反対側の端部は、自由端部であり、巻回されたコイル状スレッド(従って円筒本体も)をそれらの配備状態から少なくとも1つの展開状態に展開するように構成されている。展開状態では、スレッドのそれぞれは、展開中に略螺旋状の経路を辿りながら一般的な半径方向に開く。従って、展開中、開いているコイル状スレッドのそれぞれの自由端部は、一般的なねじ状の運動で移動し、それにより、開いたスレッドを内体に固定する。
【0013】
(前記少なくとも2つの軸方向に移動可能な先端器具の)1つの先端器具は、その対応する円筒本体の近位端部又は遠位端部の1つに関連付けられるように配置されている。即ち、各円筒本体は、円筒本体の近位端部又は遠位端部のいずれかに関連付けられる、関連付けられた先端器具を有する。先端器具の数は、円筒本体の数に対応する。先端器具は、展開ワイヤ上に取り付けられ、それにより軸方向に移動可能である。先端器具は、巻回されたコイル状スレッドがその配備状態から少なくとも1つの展開状態に開くように、先端器具の軸方向の移動時に少なくとも1つのコイル状スレッド、場合により全てのコイル状スレッドがその対応する円筒本体から同時に開くように構成されている。
【0014】
各コイル状スレッドは、スレッドが巻回されて円筒本体を形成している1つの配備状態を有すると共に、スレッドは、円筒本体から徐々に開いていくいくつかの展開状態を有し得る。展開状態間の移行(即ち、円筒本体の展開の程度)は、先端器具の軸方向の移動時、展開ワイヤに沿った先端器具とその関連付けられた円筒本体との相対位置によって生じる。
【0015】
当技術分野で公知の一部の血栓除去装置と異なり、本開示のシステムの固定ユニットは、血管内に物理的障壁を形成する展開されたワイヤのネット又はメッシュを形成して内体の回収を可能にするだけではなく、むしろ、本開示のシステムの内体固定ユニットは、内体の様々な位置で内体を固定する(即ち、進入する)。従って、本明細書でも説明されるように、本開示の内体固定ユニットは、器官の全断面を包含するように寸法決めする必要はない。これにより、ユニットを血管内に導入するときの比較的小さいユニット(小さい体積のインプリントを有する)、及び比較的小さい体積のインプリントの展開されたユニットの両方が可能となる。このような小さい寸法は、内体の捕捉及び回収処置の際に起こり得る血管の損傷のリスクを低減する。
【0016】
従って、ここで開示されているシステムは、回収中の器官の壁の損傷のリスクを最小限にし、しかも管状器官からの閉塞性内体の効果的な除去も提供する。
【0017】
HMAは、軸方向に、場合により(以下にさらに説明されるように)回転方向にも展開ワイヤを移動させ、その結果、先端器具及び/又は円筒本体の少なくとも1つを軸方向及び/又は回転方向に移動させるように構成されている。
【0018】
本開示では、近位−遠位方向が使用されている。本開示のシステムでは、展開ワイヤは、HMAに連結されたワイヤの近位端部と、典型的にはワイヤの遠位自由先端部との間に延在する。近位−遠位軸は、ワイヤの端部間に延在する長手方向軸と定義される。従って、近位及び遠位という用語(又はその任意の変形語)は、近位−遠位軸に沿った様々な要素の位置を指す。従って、軸方向の移動は、近位−遠位方向であるか遠位−近位方向であるかにかかわらず、軸に沿った要素の移動を指すものとする。
【0019】
ワイヤは、典型的には、生体適合性材料、例えば、当技術分野で公知のポリマー又は金属の生体適合性材料から形成される。適切な材料の例には、金属、金属合金、金属−ポリマー複合材料、及びこれらの組み合わせなど、又は他の任意の適切な材料が含まれる。
【0020】
適切な金属及び金属合金の一部の例には、ステンレス鋼、316LVステンレス鋼;軟鋼;ニッケル−チタン合金、例えば、線形弾性及び/又は超弾性ニチノール;他のニッケル合金、例えば、ニッケル−クロム−モリブデン合金、ニッケル−銅合金、ニッケル−コバルト−クロム−モリブデン合金、ニッケル−モリブデン合金、他のニッケル−クロム合金、他のニッケル−モリブデン合金、他のニッケル−コバルト合金、その他のニッケル−鉄合金、他のニッケル−銅合金、及び他のニッケル−タングステン又はタングステン合金など;コバルト−クロム合金;コバルト−クロム−モリブデン合金;白金強化ステンレス鋼;及びこれらの組み合わせなど;又はその他の適切な材料が含まれる。
【0021】
一部の実施形態では、ワイヤは可撓性である。ワイヤは、内体固定ユニットが挿入される管状器官、即ち、血管の直径よりも小さい直径を有する。一部の実施形態によると、展開ワイヤの直径は、約0.0045インチ〜0.018インチである。他の寸法もまた企図されることに留意されたい。
【0022】
内体固定ユニットは、カテーテル、マイクロカテーテル、又は内視鏡を介して器官内に挿入することができる。一部の操作手順では、通常、内体の物理的性質(即ち、ジオメトリ、密度など)によっては、指定の器具を用いて予備段階で内体に先行孔を形成することができる。先行孔は、内体固定ユニットの一部が内体を越えて遠位方向に貫通するように、本開示のシステムの内体固定ユニットの後の挿入を可能にする。
【0023】
内体が適切な硬さを有する場合、本開示のシステムを使用して、このような先行孔を形成することができる。即ち、内体の硬さが適切である場合、ワイヤの先端部を使用して内体を貫通させることができる。このような実施形態では、展開ワイヤの先端部は、内体の貫通を可能にするために、テーパ、傾斜、及び/又は溝付きにすることができる。先端部は、ワイヤと同じ材料又は異なる材料から作ることができる。
【0024】
HMAは、内体固定ユニットが内体に近接するように、展開ワイヤを軸方向(及び/又は回転方向)に移動させるように構成されている。このように近接すると、内体固定ユニットは、HMAによって誘導された展開ワイヤの軸方向の移動によって作動(即ち、展開)される。
【0025】
上記のように、展開ワイヤは、少なくとも2つの略円筒状の細長い本体(本明細書では互換的に管とも呼ばれる)に関連付けられ、典型的には、近位管端部と遠位管端部との間に延在する長手方向軸を有する中空円筒の形態を有し得る。一部の実施形態では、管は、前記展開ワイヤと同軸である。
【0026】
上記のように、円筒本体は、少なくとも1つ、典型的には複数の予め応力が加えられた螺旋形のコイル状スレッドを含み、コイル状スレッドは、しっかりと巻回されて互いに保持され、細長い円筒本体の形状(即ち、管)を形成している。コイル状スレッドが巻回されて、摩擦力によって互いに作用しているため、円筒本体は、スレッドを巻回構造に維持するために外部の構成を必要としない。換言すれば、円筒本体は、それらの配備状態では通常閉じた構造を有するように設計され、展開された(開いた)状態に移行するためには先端器具との能動的係合を必要とする。これにより、本明細書で議論され、例示されるように、内体捕捉プロセス中のスレッドの高度に制御された展開が可能となる。このような通常閉じた構造は、市場で入手可能な一般的な装置、即ち、展開可能なユニットが、通常開いた構造を有するように構成され、外部手段(例えば、外部スリーブ又はマイクロカテーテル)によって畳まれた状態に保持される装置と異なる。このようなユニットは、畳まれた状態で挿入する必要があり、外部手段を取り外すと、追加の要素との相互作用なしで、自動的且つ迅速に元の通常開いた構造に展開される − このような自動展開は、制御されない場合が多く、血管の損傷又は内体の破砕を引き起こし得る。既に述べられたように、このような損傷及び/又は破砕は、本開示のユニットの通常閉じられた管を使用することによって回避することができる。
【0027】
一部の実施形態では、展開されたスレッドは、器官の内面に対して(2mmの直径を有する導管内で)約1N以下の半径方向の力を加えるように寸法決めされている。
【0028】
一部の実施形態では、円筒本体の数(従って、先端器具の数)は2〜10である。他の実施形態では、円筒本体の数は、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、又は10である。
【0029】
一部の実施形態によると、各円筒本体は、他の円筒本体とは独立に、約1〜10mm、より典型的には2〜5mmの長さを有し得る。他の実施形態では、円筒本体は、約0.001インチ〜約0.13インチの内径を有する。
【0030】
各円筒本体は、異なる数のスレッドから独立に構成することができる。従って、一部の実施形態では、各円筒本体は、他の円筒本体とは独立に、1〜120の巻回されたコイル状スレッドを含み得る。他の実施形態では、各円筒本体のスレッドの数は、独立に、1〜80、又は1〜40、又は1〜20、又は1〜10、又はさらには1〜8である。他の実施形態では、固定ユニットの各円筒本体は、同数のスレッドからなる。
【0031】
円筒本体のそれぞれは、他の円筒本体とは独立に、単層の管又は多層の管にすることができる。即ち、巻回されたコイル状スレッドは、単層に配置して単層管を形成することができる。別法では、巻回されたコイル状スレッドのいくつかの層(典型的には、2〜5の層)を積み重ねて多層管を形成することができる。多層管では、1つの層のスレッドが次の層のスレッドと平行になるように層を配置することができる。別の構成では、層は、少なくとも1つの層における巻回されたコイル状スレッドが次の層のスレッドにオフセットされるように配置される。別の構成は、巻回する方向の差異を許容し、全ての層のスレッドを同じ方向に巻回してもよく、又は少なくとも1つの層ではスレッドが時計回りに巻回され、隣接する層ではスレッドが反時計回りに巻回される。このような多層化により、管の可撓性の調整を可能にするだけでなく、スレッドの多段階展開も可能にする。
【0032】
一部の実施形態では、スレッドは、巻回された状態から開いた状態へのそれらの移行(即ち、配備状態から展開状態への移行)が合金の形状記憶特性によって促進されるように、形状記憶金属又は合金、例えば、ニチノール又はステンレス鋼から形成される。他の実施形態では、スレッドは、巻回された配備状態及び開いた展開状態を有し、且つ開いた展開状態に付勢することができる。しかしながら、上記のように、巻回された状態から開いた状態への移行は自動的に起きるではなく、巻回されたスレッド間の摩擦力を上回る機械的係合を必要とする。スレッドは、円筒本体のジオメトリ及びスレッド間の摩擦力に起因する圧縮及び摩擦によって巻回された状態で一緒に保持され、本明細書で説明されるように、先端器具の軸方向の移動時に開いた状態になる。
【0033】
場合により、本明細書で互換的に開口する端部と呼ばれることもある自由端部又は開口端部という用語は、コイル状スレッドを開くことが可能な円筒本体の端部を指す。即ち、開き始めると、開きが自由端部から管の反対側端部に進む。理解できるように、自由端部は、展開ワイヤに固着されていない。一部の実施形態によると、固定端部である管の反対側端部は、スレッドの一部を巻回されたコイル状態に維持するように構成され、それにより、固定端部でのそれらの展開が防止される。このような実施形態では、開くと、管の開口端部に近い部分は開いた状態になるが、反対側(固定)端部に近いスレッドの部分は巻回された状態に維持される。固定端部の巻回された状態の維持は、当技術分野で公知の任意の適切な手段により、例えば、スレッドを局所的に互いに溶接して固定端部を展開ワイヤに固定結合することにより、内部又は外部の開くのを限定する要素との結合などによって可能にすることができる。
【0034】
一部の実施形態によると、円筒本体の少なくとも1つは、開口自由端部を有する。他の実施形態では、各円筒本体において、近位端部又は遠位端部の1つが開口自由端部である。このような実施形態では、遠位端部は、前記開口端部であってもよい。他のこのような実施形態では、近位端部は前記開口端部であってもよい。一部の他の実施形態では、全ての円筒本体(即ち、全ての管)において、近位端部は開口端部であり、他の実施形態によると、全ての管において、遠位端部は開口端部である。
【0035】
一部の実施形態によると、円筒本体は、(i)奇数の円筒本体がそれぞれの遠位端部に自由端部を有し、一方で偶数の円筒本体がそれぞれの近位端部に自由端部を有するか、又は(ii)奇数の円筒本体がそれぞれの近位端部に自由端部を有し、一方で偶数の円筒本体がそれぞれの遠位端部に自由端部を有するように、展開ワイヤに沿って(近位端部から遠位端部まで)配置することができる。
【0036】
一部の実施形態によると、円筒本体の少なくとも1つの外面は、(管の全長にわたってではなく)管の長さの一部に沿って配置されるポリマー層又はポリマーシートによって構成され得る制限層によって覆うことができる。円筒本体の覆われた部分は、典型的には、円筒本体の自由端部から前記展開ワイヤに沿って離間されている。典型的には、このような制限層は、本体の長さの半分以下、場合により3分の1以下を包含する円筒本体の中間部分を覆うように配置される。この制限層は、コイル状スレッドの開く程度を限定する(又は制限する)。このような制限層は、先端器具が円筒本体の制限された部分に係合したときに円筒本体の変形を可能にする可撓性材料から作ることができる。このような材料の非限定的な例には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリウレタンなどから選択され得るポリマー材料であり得る。
【0037】
このような制限層は、円筒本体の異なる部分のスレッドを開くために必要な力を変更することによってスレッドの2段階での展開を可能にするように設計することができる。即ち、展開の第1の段階は、スレッドを第1の長さまで開くのを可能にするために円筒本体の非制限部分に最初の力を必要とし、展開の第2の段階は、円筒体の制限部分でのさらなる展開、従って、スレッドを最終的な望ましい展開長さまで開くためにより大きい加えられる力を必要とする。このような2段階の展開は、所望の展開順序の制御及びタイミングのために使用することができる。制限層は、円筒本体の全てに存在していなくてもよいことを理解されたい。さらに、制限層が存在する場合、制限層は、展開順序を調整するために管ごとに(例えば、材料の種類、厚さ、長さなどが)異なってもよい。
【0038】
本明細書で説明されるように、スレッドが開くと、その開く間のスレッドの螺旋運動(即ち、軸回転又はねじ状運動)により、開いたコイル状スレッドが内体内に固定される。換言すれば、その螺旋状のジオメトリにより、スレッドがその巻回された配備状態からその開いた展開状態に移行する間に、スレッドのそれぞれの先端自由端部が、軸回転式に(即ち、ねじ状運動で)移動し、略螺旋状の経路を辿って内体内に固定される。
【0039】
内体固定ユニットでは、各円筒本体は、先端器具が、典型的には、その対応する円筒本体の自由端部(近位端部又は遠位端部のいずれか)に配置されるように、対応する先端器具に関連付けられている。一部の実施形態では、先端器具は、その対応する円筒本体の自由端部に当接又は接触している。(HMAによって引き起こされる)先端器具の軸方向の移動により、その先端器具に関連付けられた円筒本体のスレッドが開く。
【0040】
先端器具は、典型的には、その先端器具の長手方向軸が展開ワイヤと一致するように、楕円形又は涙滴形状を有する。先端器具は、円筒本体の最大直径と同様の最大直径を有し得る。一部の実施形態では、先端器具の最大直径は、その最大直径が、先端器具の円筒本体の内腔内への部分的な進入のみを許容するように、関連付けられた円筒本体の内径よりも大きい。
【0041】
一部の実施形態では、先端器具は、その近位端部又は遠位端部の1つに関連付けられた管状要素をさらに含む。また、以下に議論され、実証されるように、管状要素は、巻回されたコイル状スレッドの開きをさらに制御するように機能する。先端器具が円筒本体内に移動すると、先端器具の涙滴形状部分の寸法を変更することによって変更することができる、巻回されたスレッドの自由縁と管状要素との衝突角度により、巻回されたスレッドの自由縁に加えられる機械的な力が変動する。従って、先端器具の寸法を変更することにより、管の展開に必要な力を制御する1つの機構を得ることができる。
【0042】
開かせるために加えられる力に対して影響を有し得る別のパラメータは、先端器具の楕円部分の寸法である。例えば、理論に拘束されることを望むものではないが、先端器具は、3軸又は扁平楕円体の形態であり得、その半主軸(semi-principle axis)寸法間の関係は、先端器具の表面がその対応する円筒本体に係合する角度を決定する。様々な角度が異なる荷重(従って、異なる力)を円筒本体に伝達し得る。他の展開制御機構が以下に詳述される。
【0043】
一部の実施形態によると、先端器具は遠位端部に配置される。他の実施形態では、先端器具は近位端部に配置される。一部の他の実施形態によると、先端器具の少なくとも1つは、その対応する円筒本体の近位端部に配置され、少なくとも1つの他の先端器具は、その対応する円筒本体の遠位端部に配置される。
【0044】
一部の実施形態によると、円筒本体の近位端部が開口した自由端部である場合、先端器具を遠位方向に移動させて、少なくとも1つのスレッドを円筒本体から開くことができる。他の実施形態によると、開口した自由端部が円筒本体の遠位端部である場合、先端器具を近位方向に移動させて、少なくとも1つのスレッドを円筒本体から開くことができる。
【0045】
一部の実施形態では、先端器具は、当業者に公知の生体適合性材料から作られる。一部の非限定的な例は、金属、金属合金、はんだ組成物、ポリマー、又はポリマーでコーティングされた金属から形成された先端器具である。他の実施形態では、先端器具は、円筒本体のスレッドの材料と異なる材料から作られてもよい。内体の固定及び取り出しプロセスの監視を支援するために、先端器具の少なくとも1つは、放射線不透過性マーカー、例えば、白金イリジウム(Pt−Ir)又は金マーカーを含み得る。
【0046】
上記のように、先端器具は、HMAの操作により先端器具の軸方向の移動が誘発され、それにより、本明細書で説明されるように最終的にスレッドが管から選択的に開くように展開ワイヤに関連付けられている。
【0047】
このような選択的な開きを可能にするために、一部の実施形態では、各円筒本体は、独立に、先端器具の軸方向の移動時に円筒本体に加えられる力で開くように構成されている。一部の実施形態では、円筒本体のそれぞれは、円筒本体に加えられる異なる力で開く。先端器具の軸方向の移動によって加えられる力は、展開ワイヤを介してHMAによって選択、制御、及び/又は調整することができる。
【0048】
一部の実施形態では、スレッドを開くために必要な力は、円筒本体のコイル状スレッドの巻線ピッチによって決定まる。例として、45度未満のピッチを有するコイル状スレッドは、開きを開始するために必要な力が少なくて済み、45度を超えるピッチを有するコイル状スレッドは、開くためにより大きい加えられる力を必要とする。
【0049】
スレッドを開くために必要な力を制御する別の方法は、スレッドの太さを変更することである。即ち、スレッドが太いほど、開くための抵抗が大きくなり、従って、開くためにより大きい力が必要となる。同様に、管は、異なる弾性率を有する材料から作ることができ、それにより、低弾性率の材料の場合、開く際に、高い弾性率の材料から作られたスレッドの場合よりも加える力が少なくて済む。
【0050】
開く順番を制御するためのさらなる手段は、円筒本体を構成するスレッドの一部を除去することによる、例えば、1つ以上のスレッドが除去された溝付き管を使用することによるものである。理論に拘束されることを望むものではないが、スレッドの数が減少すると、スレッド間の摩擦が小さくなり、スレッド間の摩擦を克服してスレッドを開くために、加える力が少なくても済む。
【0051】
任意の数のスレッドを円筒本体から除去して、例えば、1つのスレッド、2つのスレッド、又は3つのスレッド、又は4つのスレッド、又は5つのスレッド、又は6つのスレッド、又は7つのスレッドなどの溝付き管を得ることができる。削除することができるスレッドの数は、1から円筒本体内のスレッドの総数から1を引いた数(即ち、n−1)である。一部の実施形態では、除去されるスレッドの数は2である。
【0052】
当業者であれば理解するように、必要とされる開く力の差異を可能にする機構は、上記の1つ又はそれらの任意の組み合わせであり得る。
【0053】
上記のように、スレッドの開きは、展開ワイヤに関連付けられた先端器具の軸方向の移動によって引き起こされる。一部の実施形態では、円筒本体の少なくとも1つは、前記展開ワイヤに固定結合されている。他の実施形態では、円筒本体の少なくとも1つは浮動状態である。一部の他の実施形態によると、先端器具の少なくとも1つは、前記展開ワイヤに固定結合されている。さらなる実施形態によると、先端器具の少なくとも1つは浮動状態である。
【0054】
浮動という用語は、要素が展開ワイヤと直接接触していないため、相対的に低い摩擦の軸方向の移動(即ち、滑り)が可能であることを意図する。このような浮動は、例えば、展開ワイヤの少なくとも一部を、低摩擦係数を有する層によってコーティングし、層が、ワイヤとそれに取り付けられた要素(即ち、管及び先端器具)との間に配置されるようすることによって得ることもできる。しかしながら、理解され得るように、当業者に公知の他の可能な手段も適用可能であり得る。
【0055】
一部の実施形態では、遠位円筒本体は、前記展開ワイヤに固定結合され、近位円筒本体は、浮動状態である。他の実施形態では、近位円筒本体は、前記展開ワイヤに固定結合され、遠位円筒本体は、浮動状態である。このような実施形態では、浮動先端器具は、固定結合された円筒本体に関連付けることができ、浮動円筒本体は、固定結合された先端器具に関連付けることができる。
【0056】
一部の実施形態によると、円筒本体は、例えば、規定長さの剛体管によって構成することができるスペーサにより、又はワイヤの残りの部分よりも大きい直径を有する展開ワイヤの部分により離間されている。一部の実施形態では、円筒本体間の間隔は少なくとも2mmである。
【0057】
増加した内体の捕捉を容易にするために、一部の実施形態によると、円筒本体の少なくとも1つを構成するスレッドは、対応する先端器具の軸方向の移動時、1つの回転方向(例えば、時計回り又は反時計回り)でのスレッドの開く螺旋運動を可能にする方向に巻回されている。
【0058】
さらなる実施形態によると、(i)少なくとも1つの円筒本体を構成するスレッドは、その対応する先端器具の軸方向の移動時、1つの回転方向において螺旋状に開くことができるようにコイル状に巻回することができ、且つ(ii)近位−遠位軸に沿ったこれに続く円筒本体を構成するスレッドは、その対応する先端器具の軸方向の移動時、反対の回転方向においてスレッドが螺旋状に開くことができるようにコイル状に巻回することができる。内体固定ユニットが1対の円筒本体から形成されている場合、このような構成は、内体を遠位方向及び近位方向の両方から捕捉する「ケージ」の形成を可能にする。さらに、このような構成では、各管のスレッドは、開いている最中又は開いた後にそれらの絡み合いを可能にするために様々な長さにすることができる。即ち、1対の円筒本体の遠位円筒本体は、より短いスレッドから構成することができ、近位円筒本体は、より長いスレッドから構成することができる(逆も可能である)。
【0059】
本開示のシステムにおける内体固定ユニットの別の変形では、円筒本体は、対向する向きに対に配置され、それにより、円筒本体の展開時に複数のケージ構造が形成される。
【0060】
従って、別の態様では、管状器官内に位置する少なくとも1つの内体中に固定するための医療システムが提供され、このシステムは、処理及び操作装置(HMA)並びにHMAによって操作可能な内体固定ユニットを含み、HMAが、内体固定ユニットを操作して前記内体に係合させるように構成され、
内体固定ユニットが、
近位−遠位軸を規定する展開ワイヤと、
前記展開ワイヤに沿って離間される少なくとも1対の略円筒状の細長い本体であって、前記本体のそれぞれが近位端部及び遠位端部を有し、且つ展開状態にある少なくとも1つの巻回されたコイル状スレッドによって構成され、対の本体の第1の本体が、近位固定端部及び遠位自由端部を有する近位本体であり、及び対の本体の第2の本体が、遠位固定端部及び近位自由端部を有する遠位本体であり、本体のそれぞれの自由端部が、展開状態に展開されるように構成され、展開状態では、スレッドのそれぞれが、展開中に略螺旋状の経路を辿りながら一般的な半径方向に開く、少なくとも1対の略円筒状の細長い本体と、
少なくとも1対の軸方向に移動可能な先端器具であって、それぞれが本体の自由端部で展開ワイヤに取り付けられ、それにより、先端器具の軸方向の移動により、巻回されたコイル状スレッドが前記少なくとも1つの展開状態に開く、少なくとも1対の軸方向に移動可能な先端器具と
を含み、
HMAが、展開ワイヤを軸方向(及び/又は回転方向)に移動させるように構成されている。
【0061】
一部の実施形態では、各対の円筒本体のコイル状スレッドが開くことにより、前記対の1つの本体の開いたスレッドが他方の本体の開いたスレッドに絡まる。即ち、円筒本体の各対の開いたスレッドはケージ構造を形成する。
【0062】
このようなシステムは、少なくとも2対の円筒本体、即ち、4つ、6つ、8つ、又はさらには10の円筒本体(従って、それに関連付けられた4つ、6つ、8つ、又はさらに10の先端器具)を含み得る。一部の実施形態では、各対の円筒本体の第1の円筒本体の長さは、各対の円筒本体の第2の円筒本体の長さよりも大きい。即ち、各対の近位管は、その対応する遠位管よりも長い開いたコイル状スレッドを有するように構成されている。典型的には、回収の方向は、(内体が捕捉されたら)遠位から近位方向への移動、即ち、展開ワイヤの引っ張りであるため、このような構成は、遠位の展開されたコイル状スレッドの自由縁と血管の内面との接触を制限し、場合により防止し、それにより血管のさらなる損傷を最小限にし、且つ防止さえする。
【0063】
円筒本体の対に加えて、このようなシステムは、展開ワイヤ上の前記少なくとも1対の円筒本体から離間された少なくとも1つの追加の(独立型の)円筒本体をさらに含むことができ、追加の円筒本体は、その近位端部又は遠位端部の追加の先端器具に関連付けられる。追加の円筒本体は、内体の端部をさらに固定するように、又は塞栓を捕捉する役割を果たすように使用することができる。
【0064】
典型的には、複数対の円筒本体を含むシステムでは、(i)その対の1つの円筒本体のスレッドは、その対応する先端器具の軸方向の移動時、1つの回転方向において螺旋状に開くことができるようにコイル状に巻回することができ、且つ(ii)前記対の他方の円筒本体のスレッドは、その対応する先端器具の軸方向の移動時、反対の回転方向において螺旋状に開くことができるようにコイル状に巻回することができる。従って、様々な近位−遠位方向での展開に加えて、1対のこのような円筒本体のコイル状スレッドが開くことによっても、開く最中にスレッドの自由端部が反対方向に螺旋状に回転運動し(例えば、1つの円筒本体が時計回りの回転で、他方の円筒状体の反時計回りの回転)、それにより、開いたコイル状スレッドの内体への進入が容易になり、内体にトルク力が加えられ、結果として、固定が強化され、内体が圧縮される。
【0065】
複数対の管が利用される実施形態では、各対がケージ構造(即ち、一次ケージ)を形成し得ることに留意されたい。このような一次ケージを2つ近接させて、大きい二次ケージを形成することができる。従って、各近接ケージでは、このようなケージ間の距離が短くなり、内体がさらに圧縮され、その回収が容易になる。
【0066】
ケージの形成は、内体への安定した固定を可能にし、従って、何らかの理由で展開ワイヤの張力が解放されても(又はワイヤに弛みが生じても)、隣接する2つの展開された円筒本体の開いたスレッドのインターロッキング相互作用により、ケージが内体内に固定されたままであることにさらに留意されたい。
【0067】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるシステムの内体固定ユニットは、少なくとも1つの閉じられた管をさらに含み得る。閉じられた管は、管の近位端部及び遠位端部の両方において、スレッドが互いに固定結合されるように構成された、複数の巻回されたコイル状スレッドから形成された管を意味するものとする。このような閉じられた管のそれぞれは、閉じられた管の近位端部又は遠位端部のいずれかに関連付けられた先端器具に関連付けられ得る。展開ワイヤを引っ張る(又は押し込む)と、先端器具が管の遠位端部(又は近位端部)に力を加え、遠位端部と近位端部とが互いに近接し、スレッドが管の端部で一緒に保持されているため、このような加えられた力により、長さの短縮の結果として管が半径方向に拡張する。このような展開された閉じられた管は、塞栓形成のリスクを低減する又は血管の直径の局所的な制御可能な拡張を可能にする障壁を形成し得る。
【0068】
閉じられた管は、溝を付けることができる、即ち、溝付き管を得るために1つ以上のスレッドを除去することができる。このような構成では、閉じられた管が展開されると、管のいくつかの異なる半径方向に拡張された部分を得ることができる。除去されるスレッドの数及び/又はそれらの位置は、拡張部分間の距離を決定し、場合により管の各部分で可能な最大の径方向の拡張も決定する。
【0069】
血管内再開通処置中の血栓材料の塞栓形成のリスクのさらなる低減を、1つ以上の塞栓防止要素を含めることによって達成することができる。従って、一部の実施形態では、本システムは、内体固定ユニットの近位端部及び/又は遠位端部に配置することができる少なくとも1つの塞栓防止要素をさらに含み得る。
【0070】
このような塞栓防止要素の1つの非限定的な例は、血栓除去処置中に放出される血栓破片を捕捉して吸引するために、血栓の近位のワイヤ上で移動可能な閉塞バルーンを含む。別の非限定的な例は、血栓除去処置中に放出される血栓破片の捕捉及び吸引(又は捕捉及び回収)を可能にする、血栓の遠位のワイヤ上で移動可能な閉塞バルーン又はフィルターであり得る。
【0071】
別の実施形態では、塞栓防止要素は、回収中に血栓を取り囲む閉じた又は部分的に閉じたカバーを形成する保護スリーブであり得る。別の実施形態では、このカバーは、血管壁に対する保護及び支持をさらに提供することができ、回収中の血管壁損傷のリスクを低減する。このカバーは、内体固定ユニットの近位端部の固定部分、及び近位方向に延在する自由部分を有し得る。このカバーは、内体固定ユニットの直径以上の直径を有し得る。カバーの近位への移動に抵抗する、カバーと血管壁との間に摩擦が存在し、それにより、カバーが裏返って内体固定ユニットの上に来て、カバーの自由部分が捕捉ゾーンの遠位に位置することができる。この裏返しは、カバー内の内体固定ユニットの移動によるカバーの裏返りを意味し、カバースリーブが、内体固定ユニットを保護して覆うことになる。
【0072】
一部の実施形態では、塞栓防止要素は、自己拡張構造若しくは作動による拡張(例えば、形状記憶合金、ばね拡張、又は他の作動)により、又は当技術分野で公知のその他の適切な機構を介して拡張可能であり得る。内体固定ユニットの要素と同様に、塞栓防止要素は、蛍光透視撮像下での視認性を向上させるための金や白金などの放射線不透過性マーカーを含み得る。塞栓防止要素は、当技術分野で公知の任意の適切な材料、例えば、生体適合性ポリマーシート、生体適合性金属又は合金などから形成することができる。
【0073】
内体固定ユニットの要素(即ち、展開ワイヤ、円筒本体、先端器具、塞栓防止要素、及び/又は内体固定ユニットの一部であるその他の要素)の少なくとも1つ、任意選択により少なくとも一部、又はさらに全ての要素、並びに身体組織に挿入され、且つ/又は身体組織に接触するHMAの要素は、適切な生体適合性コーティングによってコーティングすることができることに留意されたい。例えば、ポリマーコーティング、親水性コーティングなど。
【0074】
一部の特定の例が、異なるシステムの部品を形成することができる材料に関して上記提供されているが、このような例は非限定的であることに留意されたい。即ち、システムの異なる部分は、独立に、金属、ポリマー、セラミック材料を含むことができ、非生体吸収性及び/又は生体吸収性材料を含むことができ、身体組織と接触する要素の一部又は全ては、所望の物質を徐々に溶出し得る(例えば、薬物、生物製剤、抗血栓剤、凝固剤、抗凝固剤、抗炎症薬、血栓溶解剤、抗増殖剤、治癒促進剤、又は再内皮化促進剤など)。
【0075】
処理及び操作装置(HMA)は、シャフトパイプに関連付けられたアクチュエータを含み得る。本明細書で使用されるシャフトパイプという用語は、長手方向軸に沿った圧縮荷重に耐え得る又は抵抗し得る任意の材料、例えば、ステンレス鋼から形成され得る、典型的には管状の細長い要素を指す。このシャフトパイプは、典型的には、長手方向の内腔を有し、展開ワイヤがこの長手方向の内腔内に通される。このシャフトパイプは、その近位端部で、シャフトパイプハンドルを介してアクチュエータに固定結合し、その遠位端部で、1つ以上の円筒本体に固定結合することができる。アクチュエータ上のシャフトハンドルにより、シャフト管の押し込み又は回転が可能であり、それにより、スレッドの開きに影響を与える又はスレッドのスレッドを開く螺旋(即ち、軸回転)運動を可能にし、巻線のコイルピッチを制御し、且つ円筒本体の外径の増加を可能にする。
【0076】
HMAは、内体固定ユニットがHMAによって操作可能であるよう、内体固定ユニットの展開ワイヤに関連付けられるように構成されている。操作可能という用語は、内体固定ユニットの操作による導管内での内体との係合、先端器具の軸方向の移動、内体に固定するための所望の順序での円筒本体の開き、及び内体の取り出しを意味する。
【0077】
従って、管状器官内に位置する内体を固定して回収するために、アクチュエータを使用して内体固定ユニットを操作することができる。例示的な実施形態では、アクチュエータは、2種類のハンドル:展開ワイヤの近位端部に固定結合された展開ワイヤハンドル、及びHMAのシャフトパイプに固定結合されたシャフトパイプハンドルを含み得る。アクチュエータは、以下の例示的な種類の運動を可能にするように設計されている:
1.展開ワイヤの回転 − 開いたスレッドの回転を可能にし、スレッドのコイルピッチを制御し、且つ円筒本体の外径の増加を可能にする。さらに、展開ワイヤの回転により、装置の挿入中に内体固定ユニットを中心に配置することができ(即ち、内体固定ユニットを血管内壁と血餅との間の位置から血塊内の中心位置に誘導することができ)、それにより、円筒本体の展開中の固定の効率が高まる。
2.展開ワイヤを軸方向に引っ張る/押し込む − 先端器具を軸方向に移動させ、その後にスレッドを開くことができる。
3.シャフト又は展開ワイヤの回転 − ワイヤの先端及び内体固定ユニットの案合を制御し、且つスレッドの開きを容易にする。
【0078】
ワイヤに取り付けられた様々な要素に可変トルクを加えることも企図され、本開示の範囲内である。
【0079】
本開示のシステムは、単一システムとして提供することができる。即ち、別の態様では、本開示は、本明細書に記載されるシステム及び使用説明書を含むキットを提供する。
【0080】
別法では、HMAと内体固定ユニットとは別々に提供することができ、施術者は、利用前にHMAと内体固定ユニットとを接続する。このような別個の内体固定ユニットは、内体固定ユニットを自由に交換することを可能にする。従って、一態様では、本開示は、処理及び操作装置(HMA)、少なくとも1つの内体固定ユニット、並びに組み立て及び/又は使用のための説明書を含むキットを提供する。
【0081】
さらに、内体固定ユニットは、操作可能な要素の数量及び/又は展開ワイヤに沿ったそれらの順番の相異を可能にする、自己組み立てのための別個の要素として提供することもできる。従って、別の態様では、本開示は、処理及び操作装置(HMA);少なくとも1つの展開ワイヤ;それぞれ少なくとも1つの形状記憶金属又は合金の巻回されたコイル状スレッドで構成されている複数の円筒本体;複数の先端器具;組み立てのための説明書を含み、任意選択により複数のスペーサを含む、本明細書に記載されるシステムの組み立てのためのキットを提供する。
【0082】
一部の実施形態では、キットは、展開ワイヤを(i)HMA、(ii)円筒本体、及び/又は(iii)先端器具に関連付ける手段をさらに含む。
【0083】
本開示の別の態様は、管状器官内に位置する内体を除去する方法を提供し、この方法は、
(a)内体固定ユニットが内体に近接するように、内体固定ユニットに関連付けられた処理及び操作装置(HMA)によって内体固定ユニットを操作することであって、内体固定ユニットが、
近位−遠位軸を規定する展開ワイヤと、
前記展開ワイヤに沿って離間される少なくとも2つの略円筒状の細長い本体であって、本体のそれぞれが近位端部及び遠位端部を有し、且つ配備状態にある少なくとも1つの巻回されたコイル状スレッドによって構成され、前記本体のそれぞれが近位端部又は遠位端部のいずれかに固定端部を有し、且つ少なくとも1つの展開状態に展開するように構成される反対側の自由端部を有し、展開状態では、スレッドのそれぞれが、展開中に略螺旋状の経路を辿りながら一般的な半径方向に開く、少なくとも2つの略円筒状の細長い本体と、
少なくとも2つの軸方向に移動可能な先端器具であって、それぞれが展開ワイヤに取り付けられ、且つ本体の自由端部に関連付けられている、少なくとも2つの軸方向に移動可能な先端器具と
を含む、操作することと、
(b)展開ワイヤを軸方向に移動させて、少なくとも1つの先端器具を軸方向に移動させ、それにより、少なくとも1つのコイル状スレッドをその関連付けられた本体から開いて、配備状態から前記少なくとも1つの展開状態にし、それにより、開いたコイル状スレッドを内体に固定することと、
内体固定ユニットを器官から出すように操作することにより、固定された内体を器官から除去することと
を含む。
【0084】
本開示の別の態様は、管状器官内に位置する内体を除去する方法を提供し、この方法は、
(a)内体固定ユニットが内体に近接するように、内体固定ユニットに関連付けられた処理及び操作装置(HMA)によって内体固定ユニットを操作することであって、内体固定ユニットが、
近位−遠位軸を規定する展開ワイヤと、
展開ワイヤに沿って離間される少なくとも1対の略円筒状の細長い本体であって、本体のそれぞれが近位端部及び遠位端部を有し、且つ配備状態にある少なくとも1つの巻回されたコイル状スレッドによって構成され、対の本体の第1の本体が、近位固定端部及び遠位自由端部を有する近位本体であり、及び対の本体の第2の本体が、遠位固定端部及び近位自由端部を有する遠位本体であり、本体のそれぞれの自由端部が、展開状態に展開されるように構成され、展開状態では、スレッドのそれぞれが、展開中に略螺旋状の経路を辿りながら一般的な半径方向に開く、少なくとも1対の略円筒状の細長い本体と、
少なくとも1対の軸方向に移動可能な先端器具であって、それぞれが展開ワイヤに取り付けられ、前記対の先端器具の第1の先端器具が、対の本体の第1の本体の遠位自由端部に関連付けられ、及び前記対の先端器具の第2の先端器具が、対の本体の第2の本体の近位自由端部に関連付けられている、少なくとも1対の軸方向に移動可能な先端器具と
を含む、操作することと、
(b)展開ワイヤを近位方向に軸方向に移動させて、第1の先端器具を近位方向に軸方向に移動させ、それにより、少なくとも1つのコイル状スレッドを第1の本体から開いて、その配備状態から少なくとも1つの展開状態にし、それにより、開いたコイル状スレッドを内体内に固定することと、
(c)展開ワイヤを近位方向に軸方向に移動させて、第2の先端器具を近位方向に軸方向に移動させ、それにより、少なくとも1つのコイル状スレッドを第2の本体から開いて、その配備状態から少なくとも1つの展開状態にし、それにより、開いたコイル状スレッドを内体内に固定することと、
内体固定ユニットを器官から出すように操作することにより、固定された内体を器官から除去することと
を含む。
【0085】
一部の実施形態では、本システムは、2対以上の円筒本体を含み、及びステップ(b)〜(c)が、このような各対に対して繰り返される。即ち、ステップ(b)及び(c)が第1の対に対して行われ、次いでステップ(b)及び(c)が別の対に対して行われ、以下同様に続く。
【0086】
他の実施形態では、本方法は、ステップ(c)とステップ(d)との間で行われるステップ(c’)であって、(c’)展開ワイヤを軸方向に移動させて第2の円筒本体を第1の円筒本体に近接させ、それによりケージ構造を形成することと、任意選択により、第2の円筒本体の開いたコイル状スレッドと第1の円筒本体の開いたコイル状スレッドとを絡み合わせることと含む、ステップ(c’)をさらに含み得る。
【0087】
このような実施形態では、本方法は、ステップ(c’)とステップ(d)との間で行われるステップ(c’’)であって、(c’’)展開ワイヤを軸方向に移動させて、2つの隣接したケージ構造を互いに近接させることを含む、ステップ(c’’)をさらに含み得る。
【0088】
別の態様は、解剖学的導管からの内体の除去に使用される、本明細書に記載されるシステムを提供する。
【0089】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、パラメータ、例えば、長さ、直径、力などの具体的に述べられた値から±10%の偏差を包含することを意図する。
【0090】
数値範囲が本明細書で示される場合には常に、示された範囲内のあらゆる言及された数字(分数又は整数)を含むことを意図する。第1の示された数字及び第2の示された数字「の間」又は「の範囲である/の間の範囲」という語句、並びに第1の示された数字から第2の示された数字「の範囲/までの範囲である」という語句は、本明細書では互換的に使用され、第1の示された数字及び第2の示された数字、及びこれらの間のすべての分数及び整数を含むことを意図する。範囲自体は、単に簡便さ及び簡潔さのために使用されるものであることに留意するべきであり、且つ本発明の範囲に対する妥協の余地のない限定と解釈されるべきではない。従って、範囲の記載は、具体的に開示される全ての可能な部分的な範囲及びその範囲内の個々の数値を含むと見なすべきである。
【0091】
本明細書に開示される主題をより良く理解するため、及びこの主題が実際にどのように行うことができるかを実証するために、添付の図面を参照して、実施形態を単なる非限定的な例として以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【
図2】円筒本体(即ち、管)が配備状態(即ち、非展開状態)にある
図1の装置の拡大図である。
【
図3A】開いたコイル状スレッドの様々な展開構造(即ち、管が展開状態にある)を示す:単一遠位管の展開(
図3A);同じ向きに開口したいくつかの管の展開(
図3B);及び異なる向きに開口したいくつかの管の展開(
図3C)。
【
図3B】開いたコイル状スレッドの様々な展開構造(即ち、管が展開状態にある)を示す:単一遠位管の展開(
図3A);同じ向きに開口したいくつかの管の展開(
図3B);及び異なる向きに開口したいくつかの管の展開(
図3C)。
【
図3C】開いたコイル状スレッドの様々な展開構造(即ち、管が展開状態にある)を示す:単一遠位管の展開(
図3A);同じ向きに開口したいくつかの管の展開(
図3B);及び異なる向きに開口したいくつかの管の展開(
図3C)。
【
図4A】本開示の一実施形態による溝付き管の概略図である。
【
図4B】円筒本体のスレッドの数とスレッドを展開するために必要な力との間の関係を示す。
【
図4C】展開されて閉じられた溝付き管の概略図である。
【
図5A】市販の血管再生装置である、比較の血栓除去装置 − Solitaire(商標)装置を示す。
【
図5B】本開示の装置(この図では「有望」と命名)によって加えられる半径方向の力とSolitaire(商標)によって加えられる半径方向の力との比較を示す。
【
図6A】先端器具と円筒本体との係合の段階的な順序を示す。
【
図6B】先端器具と円筒本体との係合の段階的な順序を示す。
【
図6C】先端器具と円筒本体との係合の段階的な順序を示す。
【
図6D】先端器具と円筒本体との係合の段階的な順序を示す。
【
図6E】先端器具と円筒本体との係合の段階的な順序を示す。
【
図7】反対方向に開口する2つの円筒本体間のケージ構造の形成を示す。
【
図8A】PTFEスリーブによって制限されていない複数の円筒本体によって形成されたケージ構造の形成を示す。
【
図8B】PTFEスリーブによって制限されていない複数の円筒本体によって形成されたケージ構造の形成を示す。
【
図8C】PTFEスリーブによって制限されていない複数の円筒本体によって形成されたケージ構造の形成を示す。
【
図9A】管が2段階で開口を形成するようにPTFEスリーブによって制限された複数の円筒本体によって形成されたケージ構造の形成を示す。
【
図9B】管が2段階で開口を形成するようにPTFEスリーブによって制限された複数の円筒本体によって形成されたケージ構造の形成を示す。
【
図9C】管が2段階で開口を形成するようにPTFEスリーブによって制限された複数の円筒本体によって形成されたケージ構造の形成を示す。
【
図9D】管が2段階で開口を形成するようにPTFEスリーブによって制限された複数の円筒本体によって形成されたケージ構造の形成を示す。
【
図9E】管が2段階で開口を形成するようにPTFEスリーブによって制限された複数の円筒本体によって形成されたケージ構造の形成を示す。
【
図9F】管が2段階で開口を形成するようにPTFEスリーブによって制限された複数の円筒本体によって形成されたケージ構造の形成を示す。
【
図9G】管が2段階で開口を形成するようにPTFEスリーブによって制限された複数の円筒本体によって形成されたケージ構造の形成を示す。
【
図9H】管が2段階で開口を形成するようにPTFEスリーブによって制限された複数の円筒本体によって形成されたケージ構造の形成を示す。
【
図10A】人工血塊の捕捉を示し、血塊内に固定された展開円筒本体、及び捕捉の結果としての取り出し中の血塊の圧縮を示す。
【
図10B】人工血塊の捕捉を示し、血塊内に固定された展開円筒本体、及び捕捉の結果としての取り出し中の血塊の圧縮を示す。
【
図10C】人工血塊の捕捉を示し、血塊内に固定された展開円筒本体、及び捕捉の結果としての取り出し中の血塊の圧縮を示す。
【
図10D】人工血塊の捕捉を示し、血塊内に固定された展開円筒本体、及び捕捉の結果としての取り出し中の血塊の圧縮を示す。
【
図11A】湾曲した人工血管内の装置の操縦性を示す。図面から分かるように、血塊は破砕することなく捕捉され、回収される。
【
図11B】湾曲した人工血管内の装置の操縦性を示す。図面から分かるように、血塊は破砕することなく捕捉され、回収される。
【
図11C】湾曲した人工血管内の装置の操縦性を示す。図面から分かるように、血塊は破砕することなく捕捉され、回収される。
【
図11D】湾曲した人工血管内の装置の操縦性を示す。図面から分かるように、血塊は破砕することなく捕捉され、回収される。
【
図11F】湾曲した人工血管内の装置の操縦性を示す。図面から分かるように、血塊は破砕することなく捕捉され、回収される。
【
図11E】湾曲した人工血管内の装置の操縦性を示す。図面から分かるように、血塊は破砕することなく捕捉され、回収される。
【
図11G】湾曲した人工血管内の装置の操縦性を示す。図面から分かるように、血塊は破砕することなく捕捉され、回収される。
【
図12】本明細書に記載される動物試験に使用される装置の斜視図である。
【
図13A】動物試験1(性能試験1)の最中のX線画像(WC128、WW:256、ズーム117%)を示す。IMA動脈の分岐血管内に延在する閉塞性血栓を示す。
【
図13B】動物試験1(性能試験1)の最中のX線画像(WC128、WW:256、ズーム117%)を示す。閉塞性血栓を通る8Fガイドカテーテル0.014インチワイヤを示す。
【
図13C】動物試験1(性能試験1)の最中のX線画像(WC128、WW:256、ズーム117%)を示す。閉塞性血栓を通る0.014インチワイヤを介して案内される0.017インチマイクロカテーテルを示す。
【
図13D】動物試験1(性能試験1)の最中のX線画像(WC128、WW:256、ズーム117%)を示す。閉塞性血栓を通る装置を示し、3つの遠位放射線不透過性マーカーが血栓の遠位に位置している。
【
図13E】動物試験1(性能試験1)の最中のX線画像(WC128、WW:256、ズーム117%)を示す。装置の使用により閉じ込められて回収された閉塞性血栓を示し、ガイドカテーテル内に引き戻されている。装置の展開中に、展開された管が互いに近接し、互いに対して圧縮され、結果として閉塞性血栓が圧縮されている。
【
図13F】動物試験1(性能試験1)の最中のX線画像(WC128、WW:256、ズーム117%)を示す。動脈の完全な再開通の達成を示す(ズーム:123%)。
【
図14A】動物試験2(性能試験1)の最中のX線画像(WC128、WW:256、ズーム117%)を示す。IMA動脈の分岐血管内に延在する閉塞性血栓を示す。
【
図14B】動物試験2(性能試験1)の最中のX線画像(WC128、WW:256、ズーム117%)を示す。閉塞性血栓を通る装置を示し、3つの遠位放射線不透過性マーカーが血栓の遠位に位置し、展開されている。
【
図14C】動物試験2(性能試験1)の最中のX線画像(WC128、WW:256、ズーム117%)を示す。閉塞性血栓の第1の部分が装置を用いて閉じ込められて回収され、ガイドカテーテル内に引き戻されていることを示す。
【
図14D】動物試験2(性能試験1)の最中のX線画像(WC128、WW:256、ズーム117%)を示す。閉塞性血栓の第2の部分の閉じ込めを示す。
【
図14E】動物試験2(性能試験1)の最中のX線画像(WC128、WW:256、ズーム117%)を示す。動脈の完全な再開通の達成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0093】
上記のように、本開示のシステムは、処理及び操作装置(HMA)並びにこの装置によって操作可能な内体固定ユニットを含む。内体固定ユニットは、典型的には、事前に挿入されたカテーテル又はマイクロカテーテルを介して処置されるべき血管に非展開状態で挿入される。内体に到達して抜き出されると、内体固定ユニットは、この内体に固定するために展開され、この内体の血管からの取り出しが可能となる。
【0094】
まず
図1を参照すると、本開示の一実施形態によるシステム100が示されている。このシステムは、例示的なHMAユニット102、及び全体が104と称される内体固定ユニットを含む。HMAは、様々な設計(不図示)を有することができ、HMAの機能性は、いかなる特定の外部設計によっても限定されるものではないことに留意されたい。
【0095】
内体固定ユニットは、HMAユニット102から内体固定ユニットの可撓性遠位端部108まで延びている展開ワイヤ106を含む。このワイヤは、典型的には、例えば、金属、合金、又はポリマー材料であり得る柔軟な生体適合性材料から作られる。ワイヤ上には、以下に説明されるように、内体固定ユニットの挿入及び血管内での案内を可能にし、且つ血餅の固定、捕捉、及び取り出しのためのユニットの展開を可能にするように、様々な機能的ユニット部品が取り付けられている。
【0096】
HMAは、主管状パイプシャフト110及び可撓性管状パイプシャフト112をさらに含み、両方とも展開ワイヤ上に、典型的には同軸に取り付けられる。即ち、ワイヤ106は、主パイプ110及び可撓性パイプ112内に形成された長手方向の内腔に通され、それにより、パイプ内でワイヤを引っ張ったり押したりすることができる。主パイプは、典型的には、柔軟性が限定された材料、例えば、ニチノールのような生体適合性合金から形成され、挿入時及び抜去時に内体固定ユニットに機械的強度を付与するために使用される。
【0097】
可撓性パイプ112がパイプ110の遠位端部に関連付けられている。パイプ112は、(パイプ110と比較して)柔軟性が高く、内体固定ユニットの展開可能な部分114の改善された位置決めを可能にする。両方のパイプ110及び112は、非展開状態及び閉じ込められた血餅の取り出しのための展開状態の両方において、ワイヤ106及び関連付けられた展開可能な部分114の自由な動きに十分な直径を有する。
【0098】
内体固定ユニットの展開可能な部分114は、可撓性パイプ112の遠位側に配置されている。内体固定ユニットの拡大図を
図2で確認することができる。展開可能な部分114は、少なくとも2つ、この特定の例では5つの展開可能な円筒本体116A〜116E(即ち、5本の管)を含み、各円筒本体はそれぞれ、それぞれの円筒本体の近位端部又は遠位端部のいずれかに配置された開口自由端部118A〜118Eを有する。各円筒本体は、複数の巻回されたコイル状スレッドで構成されており、円筒本体の配備状態では摩擦力によって一緒に保持される。円筒本体は、ワイヤ106上に同軸に取り付けられている。各開口自由端部118A−118Eには、以下でさらに説明されるようにスレッドの展開を可能にする、それぞれの先端器具120A−120Eが関連付けられている。
【0099】
最も遠位側の円筒本体の遠位に、ストッパ122が配置されている。このストッパは、ワイヤ106に固着されている。内体固定ユニットが血管内の血餅に接近すると、システムが作動されて、内体固定ユニットが、配備状態からその展開状態に切り替えられる。いくつかのこのような状態が、
図3A〜
図3Cに示されている。
【0100】
内体固定ユニットが展開される方法が以下に説明される。血管内腔内の内体に十分近接して内体固定ユニットを位置決めしたら、ワイヤ106の移動により円筒本体が配備状態から展開状態に切り替わるように、ワイヤ106がHMA102によって操作される。このような操作には、典型的には、ワイヤ106を押し込むこと及び/又は引っ張ることが含まれる(ワイヤにトルクを加えることも企図される)。ワイヤを引っ張ると、固着されたストッパ122が最も遠位の円筒本体(例示された実施形態では円筒本体116E)に当接する。ワイヤ106に取り付けられた要素の少なくとも一部が、浮動状態である(即ち、ワイヤに固着されていない)ため、ストッパ122によって円筒本体116Eに加えられる引っ張る力により、内体固定ユニットの全ての取り付けられた要素が互いに近接し、及び引っ張る力が取り付けられた要素間で伝達される。
【0101】
図3Aによって具体化された例では、ワイヤ106が引っ張られると、ストッパ122が円筒本体116Eの固定(閉じた)端部に当接し、それにより、円筒本体116Eが近位方向に移動される。このような移動により、円筒本体116Eの開口自由端部が先端器具120Eに係合するか又は接触し、次いで円筒本体116Eの開口端部に反対方向の力が加えられる。円筒本体のコイル状スレッドが、開く状態に付勢されているため、先端器具120Eによって開口端部に加えられる力は、スレッドを巻回された状態から開いた状態に切り換えるのに十分であり、円筒本体116Eが展開することになる。
図3Aから分かるように、スレッドは、円筒本体116Eの反対側の端部(即ち、開口自由端部の反対側の固定端部)で互いに溶接されており、スレッドが完全に開くのを防止している。これにより、円筒本体が展開されると血餅の物理的捕捉を可能にする円錐状又は漏斗状の開いたスレッド構造となり、血餅がさらに血管内を漂うのが防止される。さらに、血餅の物理的閉じ込めでは、開く際のスレッドの開く運動により、スレッドが血餅内に進入して血餅を固定する。
【0102】
図3B及び
図3Cから分かるように、血餅を捕捉するために2つ以上の円筒本体を展開することができる。同じ開口方向(
図3Bに見られる)又は反対方向(
図3Cに見られる)におけるいくつかの円筒本体の展開により、より大きい血餅又は血餅砕片の捕捉及び回収に役立つ捕捉ケージが形成される。いくつかの管の展開は、最も遠位の管を展開した後、ワイヤのさらなる引っ張りにより、ワイヤに取り付けられた要素間で力が線形に伝達されてより近位の管が展開するように展開ワイヤをさらに引っ張って行うことができる。即ち、ワイヤ106が引っ張られて、円筒本体116Eが先端器具120Eによって展開されたら、さらなる引っ張りにより、円筒本体116Dが先端器具120Dに近接し(又は異なって配置されている場合、先端器具120Dが円筒本体116Dに近接し)、それにより円筒本体116Dのスレッドが開いて展開される。従って、ワイヤの漸進的な引っ張りにより、円筒本体を順次展開することができる。
【0103】
異なる力を加えたときに展開するように設計された管を使用することにより、展開順序の別の制御を実現することができる。例えば、
図4Aから分かるように、1つ以上のスレッドを除去することによって管に溝を付けることができる。例えば、
図4Bからはっきりと分かるように、スレッドの数が減少すると、スレッド間の摩擦が少なくなり、これらのスレッド間の摩擦を克服してこれらを開くために加えるべき力が小さくて済む。従って、異なる力でワイヤを引っ張ることにより、異なる管の展開が制御される。
【0104】
円筒形が展開されたら、展開ワイヤを引っ張ることにより血餅が閉じ込められる。一般的に言えば、第1の段階で、コイル状スレッドが開いて内体に固定されるように円筒本体が展開される。展開ワイヤを引っ張ると、展開された円筒本体が互いに近接して、内体の最初の圧縮が行われる。さらに引っ張ると、隣接する円筒本体の開いたスレッドが互いに接触し、場合によりスレッドの絡み合いが起き、従って、捕捉された内体が閉じ込められる。さらなる近接により、圧縮が強まり(従って、装置の長さが短くなり)、内体が破砕するリスクの低い装置の容易な取り出しが可能となる。特定の非限定的な例では、2.5mm及び5mmの非展開長さを有する管の組み合わせでは、展開された管の近接により長さが最終的に1.5〜2倍短縮されることになる。
【0105】
様々な長さの管を使用することによってさらなるバリエーションを得ることができる、即ち、一部の管が、第1の長さのスレッドを有することができ、他の管が、第2の長さのスレッドを有することができる。このような長さのバリエーションは、短いスレッドを有する展開された管を、長いスレッドを有する展開された円筒本体内にコンパクトに配置して、展開された円筒本体間に血餅をコンパクトに閉じ込めることができるため、血餅の閉じ込めの改善にも役立ち得る。このような構成は、展開された円筒本体116Eが短いスレッドを有し、円筒本体116Dが長いスレッドを有する
図3Cで実証されている。図面から分かるように、円筒本体116Dと円筒本体116Eとの互いに対する近接により、血餅を閉じ込めることができる密閉ケージが形成される。これは、
図7B〜
図9Hに関連して以下でもさらに実証される。
【0106】
上記のように、内体固定ユニットは、閉じられた管、即ち、閉じられた管の端部の一方(又は両方)に先端器具によって力が加えられたときに半径方向に拡張することができる閉じた両端部を有する管を含み得る。このような管は、展開された溝付きの閉じられた管130を概略的に示す
図4Cに明示されている。管130は、展開ワイヤ106に関連付けられ、近位端部132及び遠位端部134を有し、このうちの少なくとも1つに先端器具(不図示)が関連付けられている。管130の巻回されたコイル状スレッドは、両端部132及び134で互いに固着され、それにより、(展開ワイヤを押し込む又は引っ張ることによって)先端器具が一方の端部に力を加えたときに、これらの端部132及び134が互いに近接して、管130の長さが短縮され、管の2つの端部間の巻回されたコイル状スレッドが半径方向に拡張する。
図4Cの例では、管から一部のスレッドが除去されて溝140A〜140Dが形成され、管が異なる部分に効果的に分割され、除去されるスレッドの数により、管の拡張された部分の外形間の距離、及び各部分の半径方向の拡張の程度も決まり、例えば、半径方向に拡張された部分138が、半径方向に拡張された部分136と比較してより多くのスレッドが除去されると、半径方向により拡張される。
【0107】
当業者であれば分かるように、本明細書に記載された例の装置の展開は、展開ワイヤを引っ張る(即ち、ワイヤを近位方向に移動させる)ことによって例示されるが、押し込むことによる展開も、同様の線形運動及び移動の力の原理の下で企図される。さらに、ワイヤの回転運動による展開、即ち、ワイヤに取り付けられた異なる要素に可変トルクを加えることも企図され、本開示の範囲内である。
【0108】
上記のように、本開示の装置は、血管の内壁に最小の半径方向の力を加えるように設計されている。これは、円筒本体の寸法及びその制御された展開によって得られる。
図5Bは、Solitaire(商標)装置(その構造は
図5Aに示されている)と比較した、本開示の装置の管が展開されたときに血管に加えられる半径方向の力の比較測定値を示す。はっきりと分かるように、本開示の装置の展開されたスレッドによって加えられる半径方向の力は、Solitaire(商標)装置によって加えられる半径方向の力よりも著しく小さい。本開示のユニットの円筒本体は、通常の閉じた構造で血管内に導入され、制御された展開が、HMA及びその関連付けられた展開ワイヤの適切な操作によって可能になることに留意されたい。これは、比較標準装置(この装置は、マイクロカテーテルによって維持される畳まれた構造で血管内に導入され、マイクロカテーテルが除去されると、装置は自動的且つ即座にその拡張された構成をとる)の通常の開いた構造とは反対である。
【0109】
場合により、本開示の装置は、展開された円筒本体(即ち、開いたコイル状スレッド)と血管の内面との接触を防止する寸法を有するように構成されている。即ち、一部の実施形態では、ユニットの円筒本体は、円筒本体が展開状態であるように寸法が決定され、開いたコイル状スレッドは、血管の内径よりも小さい最大直径を有する円錐形を形成する。
【0110】
先端器具と円筒本体との係合をよりよく理解するために、次に、先端器具と円筒本体との係合の順序を示す
図6A〜
図6Eを参照する。
図6Aは、少なくとも1つの円筒本体202、及びこの円筒本体の遠位自由端部204に配置された少なくとも1つの先端器具206が展開ワイヤ200に関連付けられた例示的なシステムを示す。円筒本体202の中心部分が、ポリマーシート(例えば、PTFEシート)214によって覆われており、その機能については、以下でさらに説明される。先端器具202は、楕円形の主本体208及び遠位管状要素210を含み、その機能は以下に説明される。
【0111】
展開ワイヤが近位方向(矢印212で示されている)に移動すると、即ち、展開ワイヤが引っ張られると、
図6Bから分かるように、先端器具の楕円部分が、円筒本体の遠位自由端部に向かって前進して、この遠位端部に係合する。この係合により、巻回されたスレッドの最初の開きが起き、この巻回されたスレッドの遠位自由端部が互いに僅かに分離する。スレッドは、比較的可撓性のある材料(例えば、可撓性金属)から形成されているため、
図6Cから分かるように、先端器具の楕円部分のさらなる前進により、巻回されたスレッドが弾性変形するが、この巻回されたスレッドはそれ以上開かない。先端器具が近位方向にさらに前進すると、巻回されたスレッドの僅かに分離した縁部が先端器具の管状要素に係合する(
図6C)。
【0112】
楕円部分及び管状要素の寸法は、巻回されたスレッドの自由縁が管状要素に係合すると、
図6Dから分かるように、このような係合により、巻回されたスレッドが開いてラッパ状に広がって展開状態になるように設計されている。先端器具の近位方向へのさらなる前進により、スレッドが円筒本体からさらに開く(
図6E)。従って、先端器具の管状要素を用いて、巻回されたスレッドの縁の衝突角度を制御することにより、円筒本体の制御された展開を達成することができる。
【0113】
また、
図6Eから分かるように、ポリマー層214は、円筒本体の動作可能な部分の長さを制限することにより、この円筒本体の展開の程度を制限するように機能する。装置は、このようなポリマー層を含んでも含まなくてもよいことを理解されたい。
【0114】
図7に、少なくとも1対の反対向きの円筒本体を有するシステムが示されている。
図7のシステムは、その遠位自由端部で第1の先端器具に関連付けられた近位円筒本体、及びその近位自由端部で第2の先端器具に関連付けられた遠位円筒本体を含む。展開ワイヤを矢印の方向(即ち、近位方向)に引っ張ると、第1の先端器具が近位円筒本体の遠位端部に係合し、それによりその展開が起きる。展開ワイヤをさらに引っ張ると、第2の円筒本体が、遠位円筒本体の近位端部で第2の先端器具に係合し、それにより遠位円筒本体の展開が起きる。両方の円筒本体が展開されると、近位方向へのさらなる引っ張りにより、これらが相互に近接してケージを形成する。また、展開された円筒本体の回転運動を引き起こすためにシャフトを回転させ(即ち、トルクを加え)、それにより、これらの円筒本体を互いに近接させ、血塊のよりよい捕捉のためにそれらの開いたコイル状スレッドを同時に絡み合わせることもできることに留意されたい。
【0115】
1対の反対向きの円筒本体における円筒本体の寸法は、展開された円筒本体の1つ(典型的には、対のうちの近位円筒本体)の開いたコイル状スレッドが、他方の展開した円筒本体(典型的には、対のうちの遠位円筒本体)の開いたコイル状スレッドよりも長くなるように調整することができる。血管からの装置の取り出しが、内体固定ユニットを近位方向に引っ張ることによって行われるため、このような設計は、遠位円筒本体の開いたコイル状スレッドと血管の内面との接触を最小限にし、それにより血管の損傷が最小限になる。
【0116】
そのような反対向きの複数の対を含むシステムの展開の順序が、
図8A〜
図9Hに示されている。
図8A〜
図8Cに示されているシステムの円筒本体は、ポリマー層を含まないため、各円筒本体の展開が最大限に行われる。即ち、各円筒本体の巻回されたスレッドのそれぞれは、その対応するその先端器具との係合時にその全動作長さまで展開される(最も近位の管が、最初にその最大程度まで展開され、及び次の一列に並んだ遠位円筒本体がその最大程度まで展開され、及び次の一列に並んだ遠位円筒本体がその最大程度まで開き、と続く)。円筒本体の完全な展開後、展開された本体の近接により、展開された本体のインターロックされた対(即ち、第1のケージ)が形成される。さらに近接すると、隣接するケージがさらなるケージ(即ち、第2のケージ)を形成することができ、と続く。このような各ケージは、血塊の異なる部分に固定され、それらの互いに対する近接により、(以下にさらに説明されるように)血管からの除去を容易にする血塊の圧縮が起こる。
【0117】
図8A〜
図8Hの例示的なシステムでは、各対の本体における各近位円筒本体は、これらの本体の展開の程度を制限するポリマーシートによって部分的に覆われている。従って、装置の展開は2段階で行われる。まず、全ての円筒本体が、展開ワイヤに沿って順番に(ワイヤに沿って最も近位から始まって、最も遠位で終わる)、実質的に同様の開いたコイル状スレッドの長さまで、即ち、制限されていない本体と同様のスレッド長さまで部分的に展開される。しかしながら、第1の展開段階(不図示)において、全ての本体を同時に部分的に展開することも可能である。第1の段階の完了後、展開ワイヤのさらなる軸方向の移動により、制限された本体が、第2の展開段階においてより長い開いたコイル状スレッド長さまでさらに展開される。このような展開の順番により、捕捉中に血塊に加えられる力が分割され、捕捉中の完全性の維持が可能となり、塞栓が最小化される。
【0118】
図10A〜
図10Dは、本開示のシステムによる人工血塊の捕捉及び回収を示す。システムはまず、展開状態で血塊内に完全に進入する(
図10A)。次いで、固定ユニットが操作され、(
図10Dから最もよく分かるように)様々な円筒本体が展開されて血塊内に固定される。
図10A〜
図10Cから明らかなように、また、上記説明されたように、展開及び回収プロセス中の、ユニットの血塊内への固定及び展開された円筒本体の互いに対する近接により、血塊が著しく圧縮され、それにより、その回収がさらに支援され、さらに塞栓の形成が最小限に抑えられる。
【0119】
複雑且つ高度に湾曲した血管での操作中に、捕捉された血塊の完全性を維持するシステムの能力が、
図11A−11Gに示されている。これらの図面では、人工血塊の段階的な回収が実証され、人工血管内で操作されている間の内体捕捉ユニットの柔軟性を示す。人工血塊の破砕又は破裂は、プロセス中に観察されず、血塊は完全に回収された。
【0120】
インビボ試験
全ての手順は、国際的なガイドラインに従って実施され、責任がある地元倫理委員会によって承認された。
【0121】
性能試験1
血管からの血塊の回収を以下のようにインビボで実証した。この試験では、40kgのブタを使用した。ケタミン(35mg/kg)及びキシラジン(5mg/kg)の筋肉内注射によって麻酔を誘導し、1〜2%イソフルランを含む酸素の機械的人工換気で維持した。心拍数、呼吸、酸素飽和度(パルスオキシメトリー)、呼気終末炭酸ガス濃度、及び温度の連続的な監視により、動物の生理学的状態のリアルタイム評価を可能にした。
【0122】
その後、総大腿動脈アクセスを得て、4,000IUのヘパリンを静脈内にボーラス投与した。抗凝固を毎時1,000IUヘパリンの維持投与によって持続させた。
【0123】
血栓の調製及び適用は、既に[8]に記載されているように行った。簡単に述べると、動物の10mLの自己血液を1gの硫酸バリウム(Sigma)及び0.25mLウシトロンビン溶液(Sigma)と混合することによって血塊を形成した。この混合物を内径4mmのシリコーン管に注入し、室温で1時間インキュベートし、及び10mmの長さの血塊に切断し、これを標的血管に注入した。添加された硫酸バリウムによって得られる放射線不透過性のために、血塊は、血管造影中に視覚化された。
【0124】
装置構成:動物実験で使用した装置構成が
図12に明示されている。装置(内体固定ユニット)は、ステンレススチール展開ワイヤ(2000mm、φ0.0045インチ)を含み、その上に5本の12ストランド管(外径0.0136インチ、内径0.009インチ;ストランドφ0.0023インチ)が取り付けられていた。管は、表1に従って(近位−遠位軸に沿って)構成した。管の開口端部は、丸みを帯びた構成(外径0.0082インチ、内径0.0067インチ)を有するスズの先端器具に係合していた。この先端器具は、金色のマーカーバンドを含んでいた。この装置は、関連付けられたHMA(金属ベース又は「ギター」ハンドルに取り付けられたストップコック)によって操作した。
【0126】
実験的設計及び血管造影評価
この実験は、2方向血管造影システムで行った。8Fガイドカテーテルを、0.014インチワイヤを使用して、大腿動脈アクセスを介して標的血管内に挿入した。顎動脈及び舌動脈の選択的閉塞を行い、ヒトの血液循環における中大脳動脈及び脳底動脈の閉塞の解剖学的設定をシミュレーションした。
【0127】
予め形成された血塊をシリンジによってガイドカテーテルに注入して、ブタの顎動脈及び舌動脈の遠位側に塞栓を生じさせた。血塊を10分間定位置で成熟させた。
【0128】
血管閉塞は、血管造影及び0又は1(持続的な閉塞又は細流の流れ)の脳梗塞の血塊溶解(TICI)の流れ等級の評価によって確認した。0.017インチのマイクロカテーテルを、閉塞性血栓を通る0.014インチのワイヤを介して案内した。ワイヤを抜去し、造影剤の注入を行って、閉塞の遠位の管腔内の位置決めを確認した。
【0129】
次いで、
図12の装置をマイクロカテーテル中に進め、この装置の遠位放射線不透過性マーカーがマイクロカテーテルの端部に隣接して観察されるまで閉塞性血栓に案内した。次いで、マイクロカテーテルを回収した。装置の最適な位置決めを保証するために、装置の3つの遠位放射線不透過性マーカーが閉塞性血栓の遠位に位置するように、又は第1の(即ち、近位)放射線不透過性マーカーが閉塞性血栓の近位端部に近接するようにこの装置を再配置した。
【0130】
その後、HMAを作動させ、装置の展開を開始し、血栓に係合させて血栓を閉じ込めた。装置の展開中、装置のワイヤ管は、閉じ込め要素として作用し、血餅を最適に閉じ込めるように設計された閉じた幾何学的ケージ状の形状を形成した。加えて、ワイヤ管を互いに近接させて(この場合には互いに対して圧縮して)、閉塞性血栓を圧縮して閉じ込めた。
【0131】
上記のように、ケージの形成により、血餅への安定した固定が可能になった。各管の対間に第1のケージを形成した後、近接した隣接する2つのケージ間に第2の大きいケージを形成し、血塊をさらに圧縮して、血餅の安全且つ効果的な除去のために装置の固定を強化した。
【0132】
閉塞性血栓が、展開された装置内に閉じ込められた後、マイクロカテーテル及び装置を一般的な方法に従って吸引下でガイドカテーテル内に同時に引き戻した。
【0133】
2例の血管閉塞が得られた。いずれの場合も、閉塞性血栓は、IMA動脈の分岐部まで拡張された。試験1(
図13A〜
図13F)では、単一の再開通の試行が行われ、装置の展開の直後に流れの回復が達成された。試験2(
図14A〜
図14E)では、最初の再開通の試行により、血栓が2つに分割され、閉塞血栓の一部分を回収した。次いで、第2の装置を導入して展開し、閉塞血栓の残りの部分に係合させて、完全な再開通を達成した。
【0134】
標的血管又は罹患していない血管領域における遠位血栓塞栓事象が血栓の通過、装置の展開、及び回収中に起きなかった。対照血管造影では、血管の穿孔、解離の徴候も、血栓の塞栓若しくは破砕、又は装置の破片も認められなかった。
【0135】
性能試験2
この試験では、ブタを評価のためのモデルと見なした。動物試験1の装置は、直径が2〜3.7mmのヒトの示された解剖学的構造に類似した動脈セグメントの機器装備によって性能(即ち、血餅捕捉)について試験した。このセグメントは、表2に詳しく示されているように上腕、鎖骨下、腋窩、内頸動脈、及び外頸動脈を含んでいた。
【0137】
第1の性能評価項目は再開通率とした。再開通率は、血管造影評価によって決定される、血栓の捕捉、閉じ込め、及び回収の成功(例えば、最大3回の試行での血栓回収後のTICIスコア≧2)と定義した。
【0138】
装置の有用性(機械的性能)を、以下のパラメータに対して1〜5(l=不良、5=優良)の尺度で評価した:
・カテーテル案内 − ヒトでの頭蓋内設定を模倣した特定の血管へ案内する能力:挿入、案内、推進性
・装置の引き戻し(引き抜き)
・マーカーバンド及び先端部の可視性
・ハンドルの作動/展開
・一般的に使用されるカテーテル法の器具(ガイドカテーテル、マイクロカテーテルなど)との互換性
・ユーザー体験
【0139】
前処置準備:動物を急性処置の3日前から飼育した。動物には、市販のペレットフードを与え、水は自由に摂れるようにした。各動物を、全血球計算値(CBC)を含むその一般的な状態、体重、及び健康状態について検査した。
【0140】
動物に処置前に一晩の絶食期間を設け、動物実験標準手順に従って麻酔をかけた。誘導:キシラジン(2.2mg/kg)と混合したTelazol(4.4mg/kg)のIM注射によって動物を誘導した。アトロピン(0.05mg/kg)を、誘導後の前投薬として筋肉内に送達した。気管内管(機械的人工換気)を介した1〜3%イソフルランの投与によって維持した。ヘパリンを、250〜300秒の目標活性化凝固時間(ACT)で投与した。全身麻酔の誘導後、生命徴候を監視した;E.C.G.、HR、SpO2、毛細血管再充満時間、及び体温。
【0141】
血栓塞栓プロセスのための血塊を、シリンジに入れた得られた20mlの全血を使用して調製し、緩やかな回転運動で2gの硫酸バリウム粉末と混合した。この混合物を、血液成分とバリウムの多層構造を示すまで、室温において120分間シリンジ内でインキュベートした。沈降後、固体成分を血清成分から分離し、フィブリンが豊富な層及び赤血球が豊富な層の両方を有する上記の固体成分から、直径が約5mm、長さが10〜20mmの血餅の小片を慎重に切除した。最後に、準備した各血栓を、注射までの保存のために生理食塩水が入ったシリコーンチューブに充填した。
【0142】
外科的処置:鼠径部(大腿)に孔を開けて8/9Fシースを挿入した後、バルーンGC 8Fをワイヤ(0.035インチワイヤ)上を前進させた。標的血管床のロードマッピング及び標的血管の選択。予め用意した血餅を予め選択した標的血管に注入し、少なくとも10分間埋め込んでから展開した。血餅の挿入処置によって血管損傷が引き起こされなかったかを確認するために選択的前処置血管造影を行った。TICIスコアを評価して潅流量を測定した。この評価中、血管の解離又は穿孔、血栓塞栓事象、及び血餅破砕を検査した。
【0143】
血栓除去処置:全ての処置された血管セグメントについて以下の処置を行った。
1.8FバルーンGCを、標準的な方法を利用して血栓の位置に可能な限り近接して配置した。
2.0.017インチ又は0.021インチの内径のマイクロカテーテルを、0.014インチ又は0.016インチのガイドワイヤを介して血餅を通って前進させた。
3.ガイドワイヤを回収した。
4.装置をそのパッケージから取り出し、挿入前に検査した。
5.遠位先端がマイクロカテーテル遠位端部で血管造影的に観察されるまで、装置を、マイクロカテーテルを介して前進させた。装置の近位マーカーが血餅の近位縁に来るように装置を血餅に対して配置した。
6.マイクロカテーテルを引き戻した。
7.(必要に応じた)装置の血餅に対する再配置:血餅の近位縁における装置の近位マーカー。
8.ハンドル安全装置を解放した後、ハンドル作動部をスライドさせて装置の展開並びに血餅の係合及び閉じ込めを可能にして、装置の開放(内体固定ユニットの作動)を行った。放射線不透過性マーカーが相互に向かって移動することが確認された。
9.バルーンGCを膨張させて、血管の閉鎖を確認した。
10.1つのユニットとして装置をマイクロカテーテルと共に、バルーンGC内に引き戻し、引き戻しが開始されたときに負圧を加えて吸引した。バルーンGCを収縮させた。
11.回収/捕捉した血餅を観察し、写真撮影し、及び装置の完全性について目視検査を行った。
12.TICI及び血管の完全性(例えば、解離/穿孔)を用いた血管造影評価、血管痙攣スコアリングを行った。
【0144】
それぞれの回収の試行後、血管を、残ったさらなる閉塞(即ち、所定の場所に残っている血餅の一部、遠位塞栓、及び罹患した新しい領域)について検査した。血餅が分岐部に位置し、2つの血管枝が閉塞している場合、主枝のみを処置した。この処置は、主枝が再開通した場合に成功と見なした(TICIスコア≧2)。
【0145】
閉じ込めに失敗した場合、又は血餅の回収に部分的に成功した場合、装置をさらなる展開のために引き抜き、マイクロカテーテルから解放されるようにするために、装置を作動領域の近位の遠位シャフトコイルで切断し、MCの完全性をさらなる使用について確認し、新しい装置を挿入した。閉塞セグメントへの前進、係合/閉じ込め、及び吸引のステップを繰り返した。処置が成功したと見なされるまでに最大3回の試行(3つの装置)が可能であった。
【0146】
動物が全身麻酔下にある間、ペントバルビタールナトリウム(100mg/kg)の過量の静脈内ボーラス注射により、動物の安楽死及び屠殺を行った。
【0147】
結果
血餅及び装置の挿入後、15個の血餅を血管の穿孔又は解離なしで処置した。15個の血餅のうちの14個は、回収に成功し、表3に詳しく示されているように、3回以下の試行で回収された2以上の血栓除去後再開通TICIスコアであった。表4は、14の成功した処置の試行を回数別に要約している。
【0150】
表3から明らかなように、処置の93.3%は、回収の成功(最大3回の試行でTICI≧2の成功基準に基づく)で終わり、良好な再開通スコアであった。
【0151】
試行の回数については、表4に詳しく示されているように、最初の試行で14個のうちの12個の回収の成功(即ち、85.7%)が達成された。遠位の閉塞又は罹患した新たな領域は、この試験では記録されなかった。
【0152】
機械的性能(有用性)評価を、1〜5段階(1−不良、2−やや劣る、3−中位、4−良好、5−極めて良好)のスコア等級で評価した。表6は、機械的性能スコアリングの要約を示す。
【0154】
30倍以上の倍率の光学顕微鏡下での外観検査を、試験に使用された全ての装置に対して行った。全ての装置は、無傷であり、捻じれ/破壊又は他の損傷はいずれの装置でも観察されなかった。
【0155】
安全性
40〜50kg(約3〜4カ月齢)の4匹の交雑種家畜雌ブタを使用した。本装置を、2〜5.5mmの直径及びヒトに類似した解剖学的構造を有する動脈セグメント(試験システムと見なされる)の人工機器装備によって安全性について試験した。次の血管を使用した:鎖骨下、腋窩、総頸動脈、大腿部、及び伏在静脈の血管を使用した。
【0156】
前処置準備:各動物の全身状態、体重、及び全血球計算値(CBC)を含むその健康状態について各動物を検査した。動物は、順化目的のために3日間にわたり隔離し、インデックス手順(index procedure)の前に12時間の絶食期間を設けた。動物実験室標準処置に従って麻酔を行った。適切なレベルの鎮静が生じたら、動物を気管内管(動物の大きさによって決まる)で挿管した。動物を麻酔機に接続し、外科的麻酔レベル(surgical plane of anesthesia)を維持するためにイソフルランガスを使用した。機械的人工換気を提供した。100〜150IU/kgのIVヘパリン投与量を投与し、及び処置を通じてACTを監視した。ACTレベルが≦250秒の場合、ヘパリンをIV投与した。全身麻酔の誘導後、E.C.G.、HR、SpO2、及び温度を監視した。CBC及び化学のために血液を採取した。
【0157】
外科的処置:血管造影を、(直径、血管の角度、側枝、及び蛇行に従った)セグメントの選択並びに処置の最中及び後の評価のために、各人工血栓除去処置の前、最中、及び後に行った。血管の位置合わせを、解剖学的ランドマークに基づいて行い、血管造影で明確にした。
【0158】
カテーテル法は、次の手順に従って行った:血管造影法によるロードマッピングを、一般的な臨床実習:動脈アクセスのための入口動脈(鼠径部)穿刺のように行った。動脈にアクセスするための8F又は9F血管シースの挿入、及びこれに続く0.035インチガイドワイヤ(GW)の挿入。6F/8Fガイドカテーテル(GC)の(ワイヤ上の、OTW(Over the Wire))前進及び標的血管床のロードマッピング。
【0159】
血栓除去処置:血栓除去処置は、TICIでの血管造影評価及び血管痙攣スコアリングを含む、性能試験2で上記のように行った。最終的な血管造影評価は、最終的な血管の解離又は穿孔、血管痙攣、血栓塞栓事象の血管造影評価及びスコアリングを含んでいた。入口鼠径部を閉じて止血し、カテーテル法処置を終了した。
【0160】
追跡評価:動物を全身の健康状態に(例えば、動物の傷害及び目に見える感染、糞便、出血、及び食物摂取の有無)ついて毎日評価した。動物の体重も追跡した。処置後補助療法は、これらの動物処置では示されなかった。手術後5日間は、抗生物質による処置後予防的抗菌療法を行った。
【0161】
屠殺前に、全ての処置された血管を評価するために動物の標準的な診断血管造影を行い、処置日に記録された解剖学的ランドマークに従って動脈を具体的に特定し、TICIスコアリングを評価の結果と考えた。CBC及び生化学のために血液を採取した。動物からの採血は、鎮静後、麻酔及び誘導又は安楽死の前に行った。動物の安楽死は、この動物が全身麻酔下にある間、(効果があるまで加える)過量の塩化カリウムのIVボーラス注射によって行った。
【0162】
採取:機器を備えたセグメントの検出は、予め選択された解剖学的ランドマーク及び血管造影図のハードコピーに基づいて行われた記録に基づいていた。機器を備えた動脈セグメントを採取した。2つの天然の未処置セグメントの採取を、2匹の動物から比較目的で行った。採取したセグメントをさらなる組織学的評価のためにホルマリン溶液に維持した。
【0163】
組織学的分析:パラフィン包埋及びその後の選択された部分のH&E染色により試料を調製した。次いで、試料を組織学的評価のために提出した。
【0164】
本開示の装置で行った全ての処置では、動脈壁損傷、例えば、解離、穿孔、又は血栓形成の血管造影による証拠は観察されなかった。各血管での3回の試行後、TICI−3スコアが6/6(100%)の血管で記録された。
【0165】
血管痙攣は、通常、ガイドカテーテル、ワイヤ、及びマイクロカテーテルの操作中、並びに装置の回収中に血管内処置で起こり得る。実際、ブタモデルは、ヒトと比較して遥かに血管痙攣する傾向にある。血管痙攣は、通常、自己限定的であり、1時間後の血管造影の追跡では、通常、血管痙攣が消失している。処置中、2/6の模擬試行(各血管における最初の試行)のみが血管痙攣を生じさせた。
【0166】
処置の30日後、処理された動脈の組織学的評価は、有意な組織学的所見を示さなかった。30日目の追跡血管造影中に軽度の内皮びらんが認められ、この内皮びらんは、本質的に急性と考えられ、ワイヤ又はカテーテルの通過に関連している。このような所見は、同様の血管内処置の範囲内にある[10,11]。
【国際調査報告】