特表2018-534173(P2018-534173A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2018-534173インクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタを制御する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-534173(P2018-534173A)
(43)【公表日】2018年11月22日
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタを制御する方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20181026BHJP
【FI】
   B41J2/01 213
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-518530(P2018-518530)
(86)(22)【出願日】2016年11月17日
(85)【翻訳文提出日】2018年4月9日
(86)【国際出願番号】JP2016084060
(87)【国際公開番号】WO2017086375
(87)【国際公開日】20170526
(31)【優先権主張番号】14/947,373
(32)【優先日】2015年11月20日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA
(71)【出願人】
【識別番号】000201113
【氏名又は名称】船井電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148460
【弁理士】
【氏名又は名称】小俣 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100168125
【弁理士】
【氏名又は名称】三藤 誠司
(72)【発明者】
【氏名】バークリー・ルーカス ディー.
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA06
2C056EA08
2C056EA11
2C056EC08
2C056EC71
2C056EE10
2C056EE13
2C056FA10
(57)【要約】
印刷媒体(300)を横切ってプリントヘッド(200)を反復的に複数回通過で往復動させるステップと、各通過によって印刷媒体(300)を横切って印刷スワスが印刷されるように、各プリントヘッド(200)通過中に反復的にノズル(121)を発射するステップと、スワスの高さを低減するように、スワス毎に1つ以上のノズルアレイ(202、204、206)の上側部分および下側部分を交互に使用不能にするステップと、各高さ低減スワスについて、高さ低減スワスの前縁部分および後縁部分の印刷密度を、高さ低減スワスの中央部分の印刷密度に比べて低くするステップとを含む、インクジェットプリンタ(40)を制御する方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体にインクパターンを塗布するインクジェットプリンタであって、
1つ以上のノズルアレイにおいて配置されたノズルを含むプリントヘッドと、
コントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記印刷媒体を横切って前記プリントヘッドを反復的に複数回通過で往復動させることと、
各通過によって前記印刷媒体を横切って印刷スワスが印刷されるように、各プリントヘッド通過中に反復的に前記ノズルを発射することと、
スワスの高さを低減するように、スワス毎に前記1つ以上のノズルアレイの上側部分および下側部分を交互に使用不能にすることと、
各高さ低減スワスについて、前記高さ低減スワスの前縁部分および後縁部分の印刷密度を、前記高さ低減スワスの中央部分の印刷密度に比べて低くすることと、を含む方法を実施するように、前記プリントヘッドを作動させるように構成されている
インクジェットプリンタ。
【請求項2】
複数のスワスのうちの2つ以上が互いに重なり合ってインクパターンの各々の行を形成する
請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
各行内において、印刷密度が低減された各高さ低減スワスの前記前縁部分が、直前の高さ低減スワスの前記中央部分を超えて延在しない
請求項2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記高さ低減スワスの前記中央部分の前記印刷密度が100%である
請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記高さ低減スワスの前記前縁部分および前記後縁部分の前記印刷密度が前記中央部分から漸減的に低下する
請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
印刷媒体を横切って印刷スワスを生成するために1つ以上のノズルアレイにおいて配置されたノズルを有するプリントヘッドを備えるインクジェットプリンタを制御する方法であって、
前記印刷媒体を横切って該プリントヘッドを反復的に複数回通過で往復動させるステップと、
各通過によって前記印刷媒体を横切って印刷スワスが印刷されるように、各プリントヘッド通過中に反復的に前記ノズルを発射するステップと、
スワスの高さを低減するように、スワス毎に前記1つ以上のノズルアレイの上側部分および下側部分を交互に使用不能にするステップと、
各高さ低減スワスについて、前記高さ低減スワスの前縁部分および後縁部分の印刷密度を、前記高さ低減スワスの中央部分の印刷密度に比べて低くするステップと、を含む
方法。
【請求項7】
複数のスワスのうちの2つ以上が互いに重なり合ってインクパターンの各々の行を形成する
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
各行内において、印刷密度が低減された各高さ低減スワスの前記前縁部分が、直前の高さ低減スワスの前記中央部分を超えて延在しない
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記高さ低減スワスの前記中央部分の前記印刷密度が100%である
請求項6〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記高さ低減スワスの前記前縁部分および前記後縁部分の前記印刷密度が前記中央部分から漸減的に低下する
請求項6〜8のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリントヘッドに関し、詳しくは、印刷品質を向上させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なインクジェット印刷は、基材が移動する合間での周期的な堆積を必要とする。各スワスの界面の領域は、スワス境界と呼ばれるが、数多くの異なる誤差原因およびプロセス変数に起因する欠陥を含み得る。スワス境界の誤差原因の例は、ほんの数例を挙げると、基材運動誤差、プリントヘッド運動誤差、プリントヘッドのアラインメント、インク滴形成の変動、インク乾燥時間、インク着色剤順序である。
【0003】
基材運動誤差に対する感受性を低減するために一般的に用いられる方法は、スワス縁テーパーである。これは、端部からノズルが数個離れたところでスワスの密度を減少させて、その後、適切な基材運動の後にプリントヘッドの対向端部によって補完的な密度の堆積ができるように移動の大きさを調節することを指す。スワス縁テーパーを利用することの一般的な副次的影響は、それによってインク着色剤順序やインク乾燥時間などに起因する新たな欠陥が生じる可能性があることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、縁テーパー部内でのインク着色剤順序および乾燥時間の影響を軽減することである。これは、前のスワスに関して各テーパー領域を戦略的に配置することによって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の典型的な一実施形態によれば、印刷媒体にインクパターンを塗布するインクジェットプリンタは、1つ以上のノズルアレイにおいて配置されたノズルを含むプリントヘッドを備え、さらに、印刷媒体を横切ってプリントヘッドを反復的に複数回通過で往復動させることと、各通過によって印刷媒体を横切って印刷スワスが印刷されるように、各プリントヘッド通過中に反復的にノズルを発射することと、スワスの高さを低減するように、スワス毎に1つ以上のノズルアレイの上側部分および下側部分を交互に使用不能にすることと、各高さ低減スワスについて、高さ低減スワスの前縁部分および後縁部分の印刷密度を、高さ低減スワスの中央部分の印刷密度に比べて低くすることと、を含む方法を実施するようにプリントヘッドを作動させるように構成されたコントローラを備える。
【0006】
典型的な一実施形態では、複数のスワスのうちの2つ以上が互いに重なり合ってインクパターンの各々の行を形成する。
【0007】
典型的な一実施形態では、各行内において、印刷密度が低減された各高さ低減スワスの前縁部分は、直前の高さ低減スワスの中央部分を超えて延在しない。
【0008】
典型的な一実施形態では、高さ低減スワスの中央部分の印刷密度は100%である。
【0009】
典型的な一実施形態では、高さ低減スワスの前縁部分および後縁部分の印刷密度は中央部分から漸減的に低下する。
【0010】
本発明の実施形態のその他の特徴は以下の詳細な記載、添付の図面および別記の特許請求の範囲からすぐに分かるであろう。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るインクジェットプリンタは、縁テーパー部内でのインク着色剤順序および乾燥時間の影響を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の典型的な実施形態の特徴および利点は、添付図と併せて理解すれば以下の詳細な記載を参照してより十分に理解されよう。
図1図1は、本発明の典型的な一実施形態によるインクジェットプリントヘッドの斜視図である。
図2図2は、本発明の典型的な一実施形態によるインクジェットプリンタの斜視図である。
図3図3は、本発明の典型的な一実施形態によるインクジェットプリントヘッドの配置図である。
図4図4は、本発明の典型的な一実施形態によるインクジェットプリントヘッドの底面図である。
図5図5は、本発明の典型的な一実施形態による、印刷媒体を横切るインクジェットプリントヘッドの移動を示す斜視図である。
図6A図6Aは、本発明の典型的な一実施形態によるプリントヘッドからのインクの吐出を示す側面図である。
図6B図6Bは、本発明の典型的な一実施形態によるプリントヘッドからのインクの吐出を示す側面図である。
図7図7は、縁テーパーのない一般的な印刷体系による、順序だった4つのスワスに跨がる印刷密度の断面、これらのスワスの境界での積層のされ方、および実際の色順序の描写を示す。(a)は、縁テーパーのない一般的な印刷体系による、順序だった4つのスワスに跨がる印刷密度の断面を示す。(b)は、縁テーパーのない一般的な印刷体系による、スワスの境界での積層のされ方を示す。(c)は、縁テーパーのない一般的な印刷体系による実際の色順序の描写を示す。(d)は、縁テーパーのない一般的な印刷体系によって生じる色順序欠陥を示す。
図8図8は、縁テーパーを有する印刷体系による、印刷媒体を横切るインクジェットプリントヘッドの移動、および結果として生じる漸減した縁印刷密度を有するスワスを示す斜視図である。
図9図9は、縁テーパーを有する一般的な印刷体系による、順序だった4つのスワスに跨がる印刷密度の断面、これらのスワスの境界での積層のされ方、および実際の色順序の描写を示す。(a)は、縁テーパーを有する一般的な印刷体系による、順序だった4つのスワスに跨がる印刷密度の断面を示す。(b)は、縁テーパーを有する一般的な印刷体系による、スワスの境界での積層のされ方を示す。(c)は、縁テーパーを有する一般的な印刷体系による実際の色順序の描写を示す。(d)は、縁テーパーを有する一般的な印刷体系によって生じる色順序欠陥を示す。
図10図10は、本発明の典型的な一実施形態の印刷体系による、順序だった4つのスワスに跨がる印刷密度の断面、これらのスワスの境界での積層のされ方、および実際の色順序の描写を示す。(a)は、本発明の典型的な一実施形態の印刷体系による順序だった4つのスワスに跨がる印刷密度の断面を示す。(b)は、本発明の典型的な一実施形態の印刷体系によるスワスの境界での積層のされ方を示す。(c)は、本発明の典型的な一実施形態の印刷体系による実際の色順序の描写を示す。(d)は、本発明の典型的な一実施形態の印刷体系によって生じる色順序欠陥を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書中で使用する見出しは、構成上の目的しかなく、明細書または請求項の範囲を限定するために使用するものではない。本出願全体で使用する「してもよい」および「できる」という言葉は、強制(つまり「ねばならぬ」)の意味ではなく、許容(つまり「可能性がある」)の意味で使用している。同様に、「含む」および「含んでいる」という言葉は、何かを含むが限定的ではないことを意味する。理解しやすいように、可能な場合は、諸図に共通する類似の要素を表すのに類似の番号を付与している。
【0014】
図1を参照して、本発明の典型的な一実施形態によるインクジェットプリントヘッドを全体的に10として示す。プリントヘッド10は、インクを保持するのに適切な任意の材料でできたハウジング12を有する。その形状は様々であり得、プリントヘッドを担持または収容する外部デバイスに依るところが大きい。ハウジングは、初回または補充のインクを保持するための少なくとも1つのコンパートメント16をその内部に有する。ある実施形態では、コンパートメントは単一のチャンバを有し、ブラックインク、フォトインク、シアンインク、マゼンタインクまたはイエローインクのうちの1種類を収容している。他の実施形態では、コンパートメントは、各々が別個のインクを収容している複数のチャンバを有する。好ましくは、それはシアン、マゼンタおよびイエローのインクを含む。さらに他の実施形態では、コンパートメントは、ブラック、フォト、シアン、マゼンタまたはイエローのインクのうちの複数種を収容している。しかし、コンパートメント16はプリントヘッドのハウジング12内に局所的に一体化して示されているが、その代わりに遠隔のインク源に接続して、例えばチューブからインクの供給を受ける場合もあることが理解されよう。
【0015】
ハウジング12の1つの表面18に接着されているのは、フレキシブル回路の、特にはテープ自動接合(TAB)回路20の部分19である。TAB回路20のもうひとつの部分21は、ハウジングの別の表面22に接着されている。この実施形態では、2つの表面18、22は、ハウジングの縁23のところで互いに対して直角に配置されている。
【0016】
TAB回路20上には、使用中にヒーターチップ25をプリンタ、ファックス機、コピー機、写真複写機、プロッター、複合機などの外部デバイスに電気的に接続するための複数の入力/出力(I/O)コネクタ24が支持されている。TAB回路20には複数の導電体26が存在して、I/Oコネクタ24をヒーターチップ25の入力端子(接合パッド28)に電気的に接続したり短絡したりする。当業者であれば、そのような接続を容易に行う種々の技法を心得ている。簡潔にするために、図1には8つのI/Oコネクタ24、8つの導電体26、および8つの接合パッド28のみを示すが、現代のプリントヘッドはそれよりもはるかに多くの数量を有し、本明細書では任意の数が等しく包含される。さらにまた、コネクタ、導電体および結合パッドのそのような個数は互いに等しくなっているが、実際のプリントヘッドは等しい個数を有していない場合があることは当業者であれば理解するはずである。
【0017】
ヒーターチップ25は、使用中にコンパートメント16からインクを吐出する役割を果たす複数の流体噴射素子の列34を収容している。流体発射素子は、ヒーターチップという名前から熱的な技術が暗示されるにもかかわらず、シリコン基板上の薄膜層またはピエゾ素子として形成された熱抵抗ヒーター素子(略してヒーター)を組み込んでいてもよい。簡潔にするために、列34の複数の流体噴射素子は、インクビア32に隣接して一列に並んだ5つのドットとして示しているが、実用では数百個または数千個の流体噴射素子が含まれる場合もある。以下に説明するように、垂直方向に隣接する流体噴射素子は、間に水平方向の間隙があってもなくても、または水平方向に互い違いになっていてもよい。一般に、流体噴射素子は、適宜プリンタの解像度(1インチ当たりのドット数)に合わせて、垂直方向に間隔がとってある。間隔のいくつかの例としては、ビアの長手方向に沿って、1インチの1/300、1/600、1/1200、1/2400などが挙げられる。ビアを形成するには、ヒーターチップを厚さ方向に貫通して切断またはエッチングによりビア32を形成する多くの方法が知られている。いくつかのさらに好ましい方法としては、グリットブラスティングやエッチング、例えばウエット、ドライ、反応性イオンエッチング、深堀り反応性イオンエッチングなどが挙げられる。ノズルプレート(図示せず)には各ヒーターにそろって複数の孔があり、使用中にインクを吐出する。ノズルプレートは、接着剤またはエポキシで接着しても、薄膜層として製造してもよい。
【0018】
メモリユニット27は、例えば製造日、寿命および補充可能回数などの情報に関するデータを格納する。
【0019】
図2を参照すると、外部デバイスが、プリントヘッド10を収容するインクジェットプリンタの形態で全体的に40として示されている。プリンタ40は、1つ以上のプリントヘッド10を収容する複数のスロット44を有するキャリッジ42を備える。キャリッジ42は、当該技術分野においてよく知られているように、ドライブベルト50に供給される推進力によって、シャフト48に沿って(コントローラ57の出力59に従い)印刷ゾーン46の上方で往復動する。キャリッジ42の往復動は、プリンタ40内で給紙トレイ54から用紙搬送路に沿って印刷ゾーン46を通過し排紙トレイ56へと送られる用紙52などの印刷媒体に対して相対的に生じる。
【0020】
印刷ゾーンでは、キャリッジ42は、矢印で示すように、用紙送り方向に送られている用紙52に対して概ね垂直の往復動方向に往復動する。そのようなときに、コンパートメント16(図1)からのインク滴は、プリンタのマイクロプロセッサまたは他のコントローラ57の指令に応じてヒーターチップ25から吐出される。インク滴放出のタイミングは、印刷中の画像のピクセルパターンに対応する。多くの場合、そのようなパターンは、プリンタ外部の、コントローラ57に(外部入力により)電気的に接続されたデバイス、例えば、限定されないが、コンピュータ、スキャナ、カメラ、視覚的表示装置、携帯情報端末などで生成される。
【0021】
インク一滴を印刷または放出するために、流体噴射素子(図1の列34のドット)に少量の電流が個別に流されて、少量のインクを急速に加熱する。それによってインクは局所のインクチャンバ内でヒーターとノズルプレートとの間で気化し、ノズルプレートから印刷媒体に向けて吐出されて発射される。そのようなインク滴を放出するのに必要な噴射パルスは、単一またはスプリット噴射パルスを具現化してもよく、接合パッド28、導電体26、I/Oコネクタ24およびコントローラ57間の接続から入力端子(例えば接合パッド28)のヒーターチップで受信される。入力端子からの噴射パルスは、内部ヒーターチップ配線により、1個または多数の流体噴射素子へと搬送される。
【0022】
コントローラ57への入力62として、ユーザー選択インターフェース60を有するコントロールパネル58も多くのプリンタに付属して、プリンタの追加の性能や堅牢性を提供している。
【0023】
図3は、一例としてのプリントヘッド112におけるノズル121の例示的配置図を示す。プリントヘッド112は、左右に間隔を空けて配置された1つ以上のノズルまたはドットの列(例えばノズルアレイ)を有する。各ノズル121は、様々な垂直位置(この場合、垂直方向は、プリントヘッドの進行方向に直交する印刷媒体の進行方向である)に配置されており、その下に存在する印刷媒体上の各々の画素行に対応する。プリントヘッドのいくつかのスワスでは、全てのノズルが使用されて完全高さスワスが生じる。
【0024】
勿論、多数の異なるプリントヘッド構成が可能であり、本発明は図3に示す単純な例に限定されない。また、プリントヘッドのなかには、冗長性に関わるノズル列を様々な目的で使用するものもある。さらに、カラープリンタは通常、同じ画素行上に異なる色のインク滴を塗布するために配置された3つ以上のノズル組を有する。ノズル組は単一のプリントヘッド内に含まれていてもよいし、3つの異なるプリントヘッドに組み込まれてもよい。本明細書に記載の本発明の原理はどの場合にも当てはまる。
【0025】
一般に、プリントヘッド112は、マイクロプロセッサおよびメモリに実装された制御用論理回路に応答して水平な個々のスワスとして反復的に印刷媒体を横切って通過する。プリントヘッドの個々のノズルは各プリントヘッドスワスの最中に反復的に発射してインクパターンを印刷媒体に塗布する。いくつかのプリンタでは、プリントヘッドが各画素行の上を2回以上通過するようにスワスが互いに重なり合う。
【0026】
図4は、本発明の典型的な一実施形態による、全体的に参照番号200で示されるプリントヘッドの代表図である。プリントヘッドは、ノズルアレイ202、204および206が形成されたヒーターチップ201を備える。インクビア208、210および212はそれぞれノズルアレイ202、204および206にインクを供給するために形成されている。インクビア208、210および212は異なる色のインクを供給し、その結果、ノズルアレイ202、204および206の各々は異なる色のインクを吐出する。例えば、インクビア208はシアンインクを供給し、インクビア210はマゼンタインクを供給し、インクビア212はイエローインクを供給する。本発明のために、X方向は、プリントヘッド200が左右に印刷媒体を横切って移動して有色インクのスワスを印刷する方向に対応しており、Y方向は、印刷媒体とスワスの合間のプリントヘッド200との間での相対移動方向(すなわち用紙送り方向)に対応している。図4に示すように、ノズルアレイ202、204および206はY方向に延びており、プリントヘッド200は印刷媒体に関して左右にX方向に移動する。さらに明確にするために、図5は、複数のスワスにおけるプリントヘッド200の印刷媒体300に対するX方向の移動を示す三次元図である。典型的な実施形態において、印刷媒体300および/またはプリントヘッド200は、スワスが逐次的に印刷され得るようにY方向に移動し得る。
【0027】
プリントヘッド200が印刷媒体を横切って左から右(「LTOR」)および右から左(「RTOL」)に移動するとき、ノズルアレイはインクのスワスが印刷されるようにインクを吐出する。具体的には、図6Aおよび6Bに示すように、プリントヘッド200が印刷媒体300を横切って左から右へ移動するとき、ヒーターチップ201が適切に起動して、シアン、マゼンタおよびイエローのインクが重なり合って印刷媒体300上に印刷されるようにノズルアレイ202、204および206からインクを吐出する。具体的には、左から右へのスワスでは、マゼンタインクがイエローインクに重なり、シアンインクがマゼンタおよびイエローのインクに重なり、また、右から左へのスワスでは、マゼンタインクがシアンインクに重なり、イエローインクがマゼンタおよびイエローのインクに重なる。
【0028】
図7中の(a)は、色順序欠陥および乾燥時間欠陥を最小限に抑えるための縁テーパーを用いない印刷体系の結果として生じる印刷媒体上の逐次的な印刷スワスの概略図である。図7中の(a)において、各水平線は、ノズルアレイが対応するスワスをx方向に印刷するときの印刷媒体上でのy方向の(つまりノズルアレイに沿った)印刷密度の変化を表す。図7中の(a)から明らかなように、プリントヘッドが全スワスにわたって印刷媒体を横切って移動するときに印刷密度はノズルアレイにわたって一定であり続ける。プリントヘッドが2回通過モードにあると想定すると、プリントヘッドは、印刷媒体を横切って左から右への走査と右から左への走査とを交互に行い得る。スワス1およびスワス3は、スワス1の前縁とスワス3の後縁とが整列しているという点で相補的である。スワス2およびスワス4は、スワス2の前縁とスワス4の後縁とが整列しているという点で相補的である。
【0029】
スワス1〜4の水平変位によって示されるように、プリントヘッドまたは媒体はスワス1とスワス2との間で少し移動してノズル堅牢性不足を増大させる。これは色順序欠陥および乾燥時間欠陥を生じさせる。テーパー部が存在しない(つまり、スワス密度がアレイ全体にわたって100%である)ため、少しのy調節誤差によって顕著な明線欠陥または暗線欠陥が生じる可能性がある。例えば、図7中の(b)はスワス積層シーケンスを示しており、図7中の(c)は、結果として生じるスワス積層および色順序を示している。印刷媒体上の、異なる色のスワスが重なり合った部分(この例では、スワス2および3)は、原色順序が逆転しているという点で色順序欠陥をもたらす。これに関して、インク順序に任意の尺度を定義してもよく、この場合、1が原色インク順序の完全な逆転を表し、0が原色インク順序との完全一致を表す。図7中の(d)にはより明確に示されているが、色順序の完全な逆転があるために重複領域全体において欠陥の大きさは最大である。
【0030】
図8に示すように、色順序欠陥および乾燥時間欠陥を最小限に抑えるために縁テーパーが用いられ得る。具体的には、プリントヘッド200がX方向にスワスを印刷するとき、ノズルアレイの印刷密度(すなわち、第1ノズル1から最終ノズルNへのY方向の印刷密度)は前縁(T)および後縁(T’)において漸減する。前縁(T)および後縁(T’)は、一方が他方の反転像であるという点で相補的であり、結果としてそれらは、同じ所に配置されたときに足し合わさって、全ての画素(または滴)の場所を表す完全密度となる。
【0031】
図9中の(a)は、色順序欠陥および乾燥時間欠陥を最小限に抑えるために縁テーパーを用いる印刷体系の結果として生じる印刷媒体上の逐次的な印刷スワスの概略図である。先に説明したとおり、スワス間でのプリントヘッドまたは媒体の少しの移動が色順序欠陥および乾燥時間欠陥を生じさせる。しかしながら、各スワスの縁に印刷密度のテーパー(図9中の(a)で密度プロファイルによって示されており、印刷スワスの縁は図9中の(b)で示される)が存在するので、y誤差に起因する暗線欠陥および明線欠陥は軽減される。これに関して、図9中の(b)はスワス積層シーケンスを示しており、図9中の(c)は、結果として生じるスワス積層および色順序を示している。印刷媒体上の異なる色のスワスが重なり合った部分は、原色順序が逆転しているという点で色順序欠陥をもたらすが、縁テーパーを用いない印刷体系に比べると色順序欠陥は約2倍の量に散開している。図9中の(d)にはより明確に示されているが、重複部分の中心においてのみ色順序の完全な逆転があるため、欠陥の大きさは重複領域全体にわたって最大となってはいない。
【0032】
縁テーパーのプロセスは色順序欠陥を軽減するが、欠陥は完全には排除されない。その上、有効アレイ長が1テーパー幅分だけ減少し、また、全てのスワスの前縁が剥き出しになるために、テーパー部に跨がるインク密度の差分に起因する多少の乾燥時間欠陥が起こる。
【0033】
乾燥時間欠陥および色順序欠陥をさらに最小限に抑えるために、本発明の典型的な一実施形態(図10A〜10Dに示す)では、2回通過印刷モードを実施しかつスワス縁テーパーを用いる場合、第2スワスの前縁テーパー領域は、第1スワスの前縁テーパーの上またはそれを越して配置される代わりに第1スワスの完全密度部分の上に配置される。これによって、乾燥時間縞を改善する次の2つのことが行われる。1.それは、第1スワスの前縁テーパーのいかなる乾燥勾配も平衡(すなわち、仕上乾燥)に達するための追加の時間を与える。2.それは第2スワスの前縁テーパーを、乾燥勾配のない密度一定の領域に配置する。次に、第3スワスは、いまや十分に乾燥した第1スワスの前縁テーパーの補完量を第3スワスの後縁テーパーが充填するように、堆積される。最後に、第4スワスは、いまや十分に乾燥した第2スワスの前縁テーパーの補完量を第3スワスの後縁テーパーが充填するように、堆積される。この後、画像が完全に印刷されるまでそのサイクルが継続される。
【0034】
図10中の(a)は、色順序欠陥および乾燥時間欠陥を最小限に抑えるために下側が張り出た縁テーパーを用いる本発明の典型的な一実施形態による印刷体系の結果として生じる、印刷媒体上の逐次的な印刷スワスの概略図である。図10中の(a)において、各水平線は、ノズルアレイが対応するスワスをx方向に印刷するときの印刷媒体上でのy方向の(つまりノズルアレイに沿った)印刷密度の変化を表す。図10中の(a)から明らかなように、印刷密度は、印刷密度が漸減的に徐々に減少する位置であるアレイの縁部を除けば、ノズルアレイにわたって一定であり続ける。プリントヘッドが2回通過モードにあると想定すると、プリントヘッドは、印刷媒体を横切って左から右への走査と右から左への走査とを交互に行い得る。スワス1とスワス3は、スワス1の底縁部分とスワス3の頂縁部分が完全なスワス境界を形成するという点で相補的であり(つまり、完全なスワス境界の一部のみがスワス1の底縁部分およびスワス3の頂縁部分の各々に印刷され)、スワス2とスワス4は、スワス2の底縁部分とスワス4の頂縁部分が完全なスワス境界を形成するという点で相補的である(つまり、完全なスワス境界の一部のみがスワス2の底縁部分およびスワス4の頂縁部分の各々に印刷される)。
【0035】
プリントヘッドまたは媒体はスワス間で少し移動してノズル堅牢性不足を増大させる。またしてもこれは少しの色順序欠陥および乾燥時間欠陥を生じさせる。しかしながら、各スワスの縁に印刷密度のテーパーが存在するので、y誤差に起因する暗線欠陥および明線欠陥が軽減される。さらに、ノズルはノズルアレイの各端部から交互に不使用にされる。例えば、ノズルアレイの後縁のノズルは、奇数番号の印刷スワスにおいて不使用とされ得、ノズルアレイの前縁のノズルは、偶数番号の印刷スワスにおいて不使用とされ得る。この結果として、偶数番号のスワスの前縁は前のスワスの密度100%の印刷部分の上に後退させられる。
【0036】
図10中の(b)はスワス積層シーケンスを示しており、図10中の(c)は、本発明の典型的な一実施形態によるテーパー印刷体系の結果として生じるスワス積層および色順序を示している。印刷媒体上の異なる色のスワスが重なり合った部分は、原色順序が逆転しているという点で色順序欠陥をもたらすが、縁テーパーしか用いない印刷体系に比べて色順序欠陥はさらに軽減される。図10中の(d)にはより明確に示されているが、テーパーおよび重なりのために、色順序は、縁テーパーのみを用いるかまたは縁テーパーを用いない印刷体系の場合のような完全な逆転となってはいない。テーパーだけを用いる場合に比べて、色順序欠陥面積は50%減少し、その結果、欠陥ピークの大きさも50%減少する。
【0037】
本発明の具体的な実施形態を例示し説明してきたが、当業者にとっては本発明の精神と範囲を逸脱しない様々な他の変化形態および変更形態が明白であろう。したがって、本発明の範囲内のそのような変化形態および変更形態は全て別記の請求項に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0038】
10,112,200 プリントヘッド
12 ハウジング
16 コンパートメント
18,22 表面
19,21 部分
20 TAB回路
23 縁
24 I/Oコネクタ
25 ヒーターチップ
26 導電体
27 メモリユニット
28 接合パッド
32 インクビア
34 列
40 プリンタ
42 キャリッジ
44 スロット
46 印刷ゾーン
48 シャフト
50 ドライブベルト
52 用紙
54 給紙トレイ
56 排紙トレイ
57 コントローラ
58 コントロールパネル
59 出力
60 ユーザー選択インターフェース
62 入力
121 ノズル
201 ヒーターチップ
202,204,206 ノズルアレイ
208,210,212 インクビア
300 印刷媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】