(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-534481(P2018-534481A)
(43)【公表日】2018年11月22日
(54)【発明の名称】内燃エンジン
(51)【国際特許分類】
F02D 41/34 20060101AFI20181026BHJP
F02B 19/12 20060101ALI20181026BHJP
F02B 19/18 20060101ALI20181026BHJP
F02B 19/08 20060101ALI20181026BHJP
F01N 3/20 20060101ALI20181026BHJP
【FI】
F02D41/34 H
F02B19/12 E
F02B19/12 D
F02B19/18 Z
F02B19/08 A
F01N3/20 R
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-526503(P2018-526503)
(86)(22)【出願日】2016年11月4日
(85)【翻訳文提出日】2018年6月11日
(86)【国際出願番号】GB2016000199
(87)【国際公開番号】WO2017085440
(87)【国際公開日】20170526
(31)【優先権主張番号】1520221.1
(32)【優先日】2015年11月17日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】1604930.6
(32)【優先日】2016年3月23日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】1600971.4
(32)【優先日】2016年1月19日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】1613034.6
(32)【優先日】2016年7月28日
(33)【優先権主張国】GB
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA
(71)【出願人】
【識別番号】518172945
【氏名又は名称】モトダン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】特許業務法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メリット,ダン
【テーマコード(参考)】
3G023
3G091
3G301
【Fターム(参考)】
3G023AA02
3G023AA05
3G023AB01
3G023AB02
3G023AB03
3G023AC04
3G023AD03
3G023AD06
3G023AD13
3G023AD21
3G023AE04
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3G091BA14
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3G091CB07
3G091EA34
3G301HA01
3G301HA05
3G301JA01
3G301JA02
3G301JA25
3G301MA19
3G301MA23
3G301MA26
3G301MA27
(57)【要約】
ガソリン燃料直噴プロセスのタイミングを予めプログラミングすることによって、NOx排出ガス規制の完全遵守、ピーク圧力の管理、増加した出力密度、および、高い燃費性能のような新しい利点の全てが可能にされる、WO2005/052335およびWO2007/0830366に記述される層状給気メリットエンジンを動作させる方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのシリンダ(2)と、
一端において前記シリンダを閉じるシリンダヘッドと、
前記シリンダ内における往復運動のために前記シリンダ内に位置するピストン(1)と、
前記ピストンがその圧縮行程の終わりに到達するときに前記ピストン(1)の上側に位置する、前記シリンダ(2)内の不可避のバンプクリアランス容積と、
前記シリンダ(3,10)と連通する空気吸入口手段と、
前記シリンダと連通する排気手段と、
前記シリンダに対して相対的に近端および遠端を有する前記シリンダヘッドの中の燃焼チャンバであって、前記シリンダから離れて配置されているが、その近端において前記シリンダと連通している燃焼チャンバと、
前記ピストン(1)の圧縮行程の間に前記燃焼チャンバ内に接線速度成分を有して空気の噴流を放出するように配置され、前記シリンダ(2)と連通し、そして、前記燃焼チャンバ(5)とその近端において連通するトランスファ・オリフィス(7)と、
前記遠端に向けられた前記燃焼チャンバ内で渦巻く空気の運動へ軸方向速度成分を進める手段(6)と、
前記燃焼チャンバの前記遠端の方へ向けて前記空気の噴流内に液体燃料噴霧を放出するように配置され、前記燃焼チャンバとその近端において連通する燃料噴射手段(8)と、
前記燃焼チャンバの前記遠端の領域における少なくとも1つの点火手段と、
前記燃料噴射のプロセス、前記点火のプロセス、および、空気取り入れのプロセスを制御するコントローラと
を備えてなる内燃エンジンを動作させる方法であって、
前記方法は、前記点火手段(9)が前記燃焼チャンバ内の燃料に点火した後、および/または、前記ピストン(1)がその膨張行程を始めた後に、前記燃料噴射器(8)の出口から前記シリンダ(2)内の前記ピストンの上側の前記容積への燃料の制御された放出を含む、方法。
【請求項2】
前記燃焼チャンバは、その中に放出されるとき、空気の渦巻く流れを誘発するか、強めるように構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記燃焼チャンバがボルテックスチューブのように動作する請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記燃焼チャンバは、円筒形であるか、円錐形であるか、一部円錐形である、請求項1〜3の何れかに記載の方法。
【請求項5】
前記空気吸入口手段の制御された部分的な制限を含む二次的な方法と共に同時に適用される、請求項1〜4の何れかに記載の方法。
【請求項6】
前記燃焼チャンバ(5)から前記シリンダ(2)の方に向かって流れるガスを膨張させることによって前記バンプクリアランス容積への燃料の移動を可能にするために、前記エンジン・コントローラは、前記圧縮行程の間、そして、前記膨張行程の初期の間の両方において燃料を注入することができるようにされる、請求項1〜5の何れかに記載の方法。
【請求項7】
前記シリンダ(2)におけるトランスファ・オリフィス(7)からの出口の領域において、グロープラグのような第2の点火手段が提供される、請求項1〜6の何れかに記載の方法。
【請求項8】
前記空気吸入口手段(3)は、全開から部分的な閉鎖まで操作可能なスロットルバルブ(10)を含む、請求項5〜7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
周期的な量の燃料がエンジン排気ガスにおける受け入れ不可能な量の窒素酸化物を発生させると決定され、触媒コンバータの使用が要求されると、両方の方法が適用される、請求項5〜8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
周期的な量の燃料が点火後に過度のピーク・シリンダ圧を発生させると決定されるときに前記方法が適用される、請求項6〜9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
排気における廃熱量を増やす必要が生じたときに適用される、請求項1〜10の何れかによる方法。
【請求項12】
前記トランスファ・オリフィス(7)の表面が、
例えば、セラミックのような、断熱材料で覆われた熱伝導率の低い材料から形成されるか、或いは、
例えば、プラチナのような触媒材料で覆われている、
これらの1つ以上から選択される、請求項1〜11の何れかに記載の方法。
【請求項13】
前記燃料噴射器(8)は、1つのエンジンサイクルの間に、例えば、2または3パルスのような複数のパルスで燃料を放出するように制御され、1または2つのそのようなパルスは前記シリンダ領域に放出される、請求項1〜12の何れかに記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜13の何れかに従ってその動作を可能にするように適合化されたコントローラを備える、請求項1に記載のエンジン。
【請求項15】
前記コントローラは、そのような動作の方法の一方または両方を選択または選択解除することができる請求項14に記載のエンジン。
【請求項16】
1エンジンサイクルあたりに放出された燃料の量に基づいて、そして、エンジン動作を妨げること無く、前記選択が実行される請求項15に記載のエンジン。
【請求項17】
請求項14〜16の何れか1項に記載されたエンジンに適合された自動車両。
【請求項18】
排気触媒コンバータに適合された、請求項17に記載の自動車両。
【請求項19】
実質的にここに記載されたような、請求項1〜13の何れか1項に記載の、エンジンを動作させる方法。
【請求項20】
実質的にここに記載されたような、請求項1〜13の何れか1項に記載の、エンジンを動作させる方法。
【請求項21】
実質的にここに記述されたような、請求項14〜16の何れか1項に記載のエンジン。
【請求項22】
実質的にここに説明されたような、請求項14〜16の何れか1項に記載のエンジン。
【請求項23】
実質的にここに記述されたような、請求項17または18に記載の自動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃エンジンに関し、特に、汚染物質ガスの排出を減らすか、または、最小にするために内燃エンジンの動作を制御することに関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明者によって発明された層状給気エンジンと分類され得る様々の内燃エンジンは、例えば、国際公開WO2005/0523355およびWO/2007/080366から知られている。それらのエンジンは、現在、文献においてメリットエンジンとして認識されている。
【0003】
メリットエンジンの構造上の主な特徴は、シリンダのピストンの上の領域において燃料を燃焼させることを避けるためにシリンダから離れた燃焼チャンバを使用することにある。オットーエンジンと同様に、メリットエンジンは、燃料としてガソリンまたは他の揮発性の液体炭化水素を使用し、火花点火を使用する。それは、4ストローク、または、2ストローク・エンジンサイクルの何れでも動作することができる。
【0004】
そのような離れた燃焼チャンバの使用は、メリットエンジンが空気/燃料の混合気を層状にすることを許容して、空気取り入れをスロットルで絞ることなく信頼できる火花点火を可能にする。このことは、燃焼ガスからの低い放熱損失、並びに、この燃焼チャンバ内の渦運動に起因する急速燃焼と相まって、オットー・ガソリンエンジンのようなスロットル制御のエンジンと比較して、部分負荷においてより高い熱効率を促進する。スロットル絞り無しで動作するとき、メリットエンジンは部分負荷において完全燃焼に必要とされるより多くの空気を使い、したがって、その排気には遊離酸素が存在する。メリットエンジンは、自動車および自動二輪車への応用において使用されるに適しており、国毎に異なり得る排気物質の法規制に適合する必要がある。
【0005】
本発明は、メリット型エンジンのための2つの新しい動作方法を提供する。これらの方法は、単独または組み合わせて使用され得る。組み合わせて使用されるときには、本方法は、排気ガスが実質的に酸素を含まないようにすることを可能にし、排気ガスから違反となる量の窒素酸化物を除去するために触媒コンバータを使用することを可能にする。窒素酸化物は簡単のためにNOxのように言及されるであろう。NOxは、図示平均有効圧力(IMEP)の値が比較的高いときにのみ、メリットエンジンの排気に現れるので、両方の方法は、そのような動作条件下においてのみ共に使用されることが望ましい。そして、それらの方法は、エンジンが動いている間に、使用されるか、または、外されるように工夫されることが望ましい。過剰な酸素を燃焼チャンバから除去することは、上記の2つの方法のうちの、エンジンの空気取り入れの部分的なスロットル絞りである、1つの方法によって達成され得るが、この方法は、図示平均有効圧力(IMEP)の値が比較的高いときにのみ行われるように設定されることが望ましい。第2の問題は、バンプクリアランス(bump clearance)から遊離酸素を除去することを必要とする。バンプクリアランスは、圧縮行程の終わりにシリンダのピストンの上側に残っている容積である。バンプクリアランスは、最小にされるときでも、高いガス密度のために、かなりの量の酸素を含み、現実的な例としては10パーセントである。メリットエンジンが離れた燃焼チャンバを有するので、この酸素は通常燃焼目的には使えない。メリットエンジンは、離れた燃焼チャンバ内に位置しているGDI(ガソリン・ダイレクト・インジェクタ)燃料噴射器に依存している。そして、その燃料噴霧コーンは、シリンダから離れ、燃焼チャンバの遠端に向けて放出される。
【0006】
本発明のこの態様は、一部変更された燃料噴射プロセスに焦点が置かれた他の1つのエンジン動作方法によって、バンプクリアランス酸素除去問題に有効な解決法を提供する。この方法は、単独で使用されるとき、NOxの減少または除去に加えて、メリットエンジンに他の利点を提供することもできる。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、一部変更された内燃エンジン、その内燃エンジンを動作させる改善された方法、そして、そのようなエンジンに適した自動車両を提供することを目的とする。
【0008】
こうして、本発明は、
シリンダと、
一端においてシリンダを閉じるシリンダヘッドと、
シリンダ内における往復運動のためにシリンダ内に位置するピストンと、
ピストンが圧縮行程の終わりに到達するときにピストンの上側に位置する、シリンダ内の不可避のバンプクリアランス容積と、
エンジン内への空気の取り入れのためにシリンダと連通する空気吸入口手段と、
シリンダと連通する排気手段と、
シリンダに対して相対的に近端および遠端を有するシリンダヘッドの中の燃焼チャンバであって、シリンダから離れて配置されているが、その近端においてシリンダと連通している燃焼チャンバと、
ピストンの圧縮行程の間に燃焼チャンバに接線速度成分を有する空気の噴流を放出するように配置され、シリンダと連通し、燃焼チャンバとその近端において連通するトランスファ・オリフィスと、
燃焼チャンバ内で生成された渦巻く空気の運動へ軸方向速度成分を進める手段と、
チャンバの遠端の方へ向けて空気の噴流内に液体燃料噴霧を放出するよう配置され、その近端において燃焼チャンバと連通する燃料噴射手段と、
燃焼チャンバの遠端の領域における少なくとも1つの点火手段と、
少なくとも燃料噴射のプロセス、点火のプロセス、および、空気取り入れのプロセスを制御するコントローラと、
を備えてなる内燃エンジンを提供する。
ここで、前述のエンジンの一次的な動作方法はコントローラによって起動され得、燃焼チャンバ内の点火手段がその中の燃料に点火した後、制御された量の燃料を、離れた燃焼チャンバにおける燃料噴射器の出口からピストンの上側のシリンダ容積内へ方向転換させることを可能にする。一次的な動作方法は、ピストンがその膨張行程を始めた後まで、そして/または、エンジン動作の二次的な方法がコントローラによって起動された後まで、継続することができる。この二次的な方法は、エンジン内の燃料が燃やされた後、燃焼チャンバ内およびバンプクリアランス内における遊離酸素を最小にするか、または、回避するための、内燃エンジンへの空気取り入れの部分的な制限を含む。
【0009】
好適には、燃焼チャンバは、その中に放出されるとき、空気の渦巻く流れを誘発するか、または、強めるように構成される。燃焼チャンバは、ボルテックスチューブとして機能することができた。燃焼チャンバは、例えば、円筒形、円錐形、または、部分的に円錐形であってもよかった。
【0010】
空気吸入口手段は、前述の二次的な動作方法を実行するために吸気弁の上流側に配置されたスロットルバルブを更に含むことができる。
【0011】
点火手段は、典型的には、スパークプラグを含む。
【0012】
更に、排気手段は、排気弁の下流に配置され窒素酸化物除去ができる触媒コンバータを含むことができる。
【0013】
クリアランス容積との用語は、燃焼チャンバおよびバンプクリアランス容積の範囲内での合計の容積を意味する。
【0014】
TDC(上死点)との用語は、その圧縮行程の終わりにおけるピストンの位置を示す。
【0015】
BDC(下死点)との用語は、その膨張行程の終わりにおけるピストンの位置を示す。
【0016】
押除け量(swept volume)との用語は、TDCおよびBDCのピストン位置の間でシリンダに含まれる容積を示す。
【0017】
NOxとの用語は、排気ガスに典型的に含まれる窒素酸化物ガスを意味する。
【0018】
IMEPとの用語は、シリンダで発生した図示平均有効圧力を示し、エンジンの負荷およびトルク出力を示す。
【0019】
ピーク圧力との用語は、1エンジンサイクルの間に達成される最大シリンダ圧力を示す。
【0020】
定容燃焼との用語は、燃焼プロセス全体がTDCに近い2、3度程度のクランク角の範囲内で起こる非常に急速な燃料燃焼プロセスを示す。
【0021】
熱効率との用語は、同じ数のエンジンサイクルの間における仕事エネルギ出力と熱エネルギ入力との間の比率を示す。
【0022】
層化(stratification)との用語は、燃焼チャンバにおける均質混合気の形成を意図的に回避し、その代わりに、ゾーンに分けられた混合気形成を引き起こす混合気準備プロセスを示す。ここでは、比較的多くの燃料を含んでいる濃いゾーンがスパークプラグの近くに置かれて火花点火を可能にし、比較的少ない燃料を含んでいるか、または、燃料を全く含んでさえいない薄いゾーンがスパークプラグから離れた燃焼チャンバの他の部分に発生する。火花は濃いゾーンで上記の混合気に点火し、そして、炎によって発生されたエネルギは薄いゾーンで燃料に点火するのに十分である。メリットエンジンは、触媒コンバータの使用が必要でないときに完全にスロットル絞り無しでメリットエンジンを動作させることを許容する、非常に効果的な層化システムを作り出す。
【0023】
その全ての態様において本発明が説明され、より容易に理解され、業者によってより容易に実行され得るようにするために、ここでは単に非限定的な複数の例によって、添付する3つの模式図を参照して、複数の実施形態が説明されるであろう。なお、これらの模式図は、一定の比率では描かれておらず、例示目的のみに提示されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、スロットルバルブ全開(スロットルを絞らない)状態における、メリット型内燃エンジンのシリンダおよびシリンダヘッドの構成の一部を通る断面図である。
【
図2】
図2は、部分的にスロットルバルブを閉じる二次的な動作方法を例示する、
図1と同様の図である。
【
図3】
図3は、ピストンがTDCから離れる行程を開始している、一次的および二次的なエンジンの動作方法を例示する、
図1と同様の図である。
【0025】
図1は、エンジンの構成要素を説明するためにも用いられる。図示されるエンジンは、図示されるスロットルバルブおよび図面に示されない触媒コンバータを備えている必要がある。これらの2つの部品は、特定の条件の下でNOx汚染物質を除去するためのみに必要なだけであり、全開のスロットルバルブを用いる無変更のメリットエンジンとして、本発明による新しい方法を利用することなく動作することができるエンジンの動作のためには必須ではない。
図1は、本発明による新しい動作方法を利用しないときのエンジンを示す。全体的な空気燃料比が約60〜1で、その最大IMEPの約25%で動作しているとき、ピストン(1)はシリンダ(2)内ので圧縮行程の半ばに示される。
【0026】
IMEPのこの下限より上では、エンジンは多くのNOx排気を発生することがなく、したがって、スロットル絞り無しで動作することができ、許容NOx排出限度の範囲内で無変更のメリットエンジンとして高い熱効率を達成することができる。スロットルバルブ(10)は全開であることが図示されている。
燃料噴射器(8)は、燃焼チャンバの遠端にあるスパークプラグ(9)の方へ円錐状の液体燃料を放出している様子が図示されている。トランスファ・オリフィス(7)は、燃焼チャンバ(5)に入る空気の流線が激渦型の空気の渦巻き運動を作ることを示し、螺旋傾斜面(herical ramp)(6)が、渦巻くガスに対してスパークプラグに向けられた軸方向の成分を与えることが示されており、その運動は螺旋渦巻(herical swirl)と呼ばれ得る。1つの吸気弁(4)がスロットルバルブ(10)の下流にあって圧縮行程の間は閉位置にあることが示されている、吸気弁(4)は空気吸入口手段である。図示されていないが、3つの図全てによるエンジンの排気管には触媒コンバータが配置されているであろう。これは、スロットルバルブ(10)の可変なポジションを例示するために排気ガスの出口より優先して吸気管(3)が示されるためである。
【0027】
図1がそうであるように、
図2もまた、圧縮行程の間のピストンを図示する。しかし、スロットルバルブ(10)は部分的に閉じたポジションで示されている、そして、燃焼の間に発生したNOxガスの量が許容放出限度を超えたとき、エンジンは、その最大のIMEPの約80%において増加した燃料供給率で動作している。
図3には、ピストンがその膨張行程の間に動き始めたときから短時間の後の
図2のエンジンが示される。
【0028】
メリットエンジンの層状給気燃焼方式は、いかなる量の過剰空気が存在しても、いかなる量の燃料でも燃焼チャンバ内で完全に燃焼させることをメリットエンジンが可能にすることは理解されるべきである。
図面の詳しい説明
【0029】
図1で例示されるエンジンは、アイドリング動作における約120:1から例示される値60:1まで変化する空気燃料比の範囲に亘って、スロットル絞り無しで動作することができる。120:1の比率は完全燃焼のために必要とされるより8倍多くの空気を示し、60:1は4倍より多くの空気を示す。
図1は、排気の法律の下に許される量を超えるに十分な排気中のNOxを生じないIMEPの閾値であると、説明のために仮定される空気燃料比60:1を例示するように選ばれている。
【0030】
単位時間にシリンダから燃焼チャンバに移される空気の量は圧縮行程の間に増加する。噴射器(6)によってトランスファ・オリフィス(7)から出てきた空気の噴流に噴射される燃料の量は、凡そ一定の率で放出される。したがって、結果として生じる空気燃料混合気は、圧縮行程の期間に亘ってリッチで始まりリーン(lean)で終わるであろう。混合気に与えられる渦運動は螺旋の傾斜面(6)によってスパークプラグ(9)の方へ向かう方向にバイアスされるので、初期のリッチな混合気はプラグのまわりを回転することを強制される。渦がより激しくなると、渦は混合気を燃焼チャンバ(5)の周囲に塗りつけるように拡げ(smear)、遠心力はそれを圧縮して薄い圧縮された層にする。その結果、酸素と燃料の分子はより近接し、点火後の火炎伝播は非常に速い。
【0031】
図1に示されるエンジンは、メリットエンジンがどのように働くかを例示するが、本発明による2つの新しい動作方法については何も説明しない。
【0032】
本発明によるエンジンの動作は、
図2の例で説明される。ピストンは、最大値の80%のIMEP値を生じる燃料供給率で、圧縮行程の半ばにあるのが示されている。このIMEPで、排気ガスが触媒コンバータの使用を必要とするであろう量のNOxガスを含むと仮定される。コントローラは、触媒コンバータが機能することを可能にするために排気ガスから全ての遊離酸素を除く必要があるであろう。コントローラは、このIMEPを生じるために放出される周期中の全燃料量を認識することによって、このことがこのIMEP値で起こると認識するようにプログラムされる。
【0033】
排気ガスから遊離酸素を実質的に減らし更に除去さえするために、コントローラは、本発明による動作方法の両方を使用し、且つ、それらを同時に適用する必要がある。
部分的スロットル絞り動作方法
【0034】
この方法は、
図2に例示される。コントローラは、IMEPの範囲の上限において、エンジンに入る空気の量を僅かに減らすように予め定められた部分的に閉じたポジションへスロットルバルブを動かすようにプログラムされる。燃焼チャンバ内の全てまたは実質的に全ての酸素が燃焼によって消費されることを確実にするために、空気取り入れを減らすことにより、利用可能な酸素の量を、燃焼チャンバ内での燃焼のために放出されている燃料の量に一致するように減らす。ここで、メリットエンジンのIMEPが上昇中であるとき、スロットルバルブは閉じつつあるということを指摘する必要がある。それは、従来のオットーエンジンでスロットルバルブに要求されるものと正反対の動作である。
【0035】
コントローラは、スロットルバルブをその部分的に閉じたポジションへ素早く変えるよりはむしろ、NOx排出がまだ法律の制限より下にあるときに、動作のために要求されるときにはそれが正しいポジションに到達できるように、80%より僅かに低いIMEPに対応する燃料レベルにあるときにスロットルバルブを緩やかに閉じ始めることができる。自動車ドライバーが80%を超えてIMEP要求を増やすと、投入された燃料が利用可能な酸素の全てまたは実質的に全てを消費するときである最大のIMEPでスロットルバルブが全開のポジションに到達するまで、スロットルバルブは方向を変える。
【0036】
良く知られたラムダセンサのような酸素センサは、排気ガス中の酸素の存在をモニタすることができ、スロットルバルブのポジションの微調整を行うためにフィードバックをコントローラに提供することができる。
【0037】
触媒コンバータの使用を可能にするために排気ガスから全ての遊離酸素を取り除く要求は、部分的なスロットル絞りのみによっては達成できない。本発明の他の方法を同時に適用することが必要である。
燃料噴射期間が延長された(一次的な)動作方法
【0038】
圧縮行程の終わりにピストンがTDCに到達するとき、損傷を与える接触を避けるためにピストンの頂上とシリンダヘッドとの間に小さいクリアランス容積を残さなければならない。この容積は、しばしば、バンプクリアランス容積と呼ばれている。メリットエンジンのデザインにおいては、全ての燃料が燃焼チャンバ内で燃焼するために放出されるので、燃焼チャンバの容積を最大にするためにバンプクリアランス容積を最小にしようとする。バンプクリアランスから酸素を取り除くために更なる方法が要求される。この更なる方法は、
図3に例示される。
【0039】
燃料噴射器(8)が燃焼チャンバ内部に高圧で、そして、トランスファ・オリフィス(7)と反対方向へ燃料を放出するので、下方のトランスファ・オリフィス内に向けた第2の燃料噴射器を装備することなく燃料をバンプクリアランス容積に放出することは不可能に見える。そのような第2の噴射器は、出力密度を増やす目的で、初期のメリットエンジンの発明において提案された。それは、特許出願公開WO2007/080366の
図8で見られ得る。シリンダ毎に第2の燃料噴射器を必要としないこの問題に、本発明による一次的な方法は一層簡素な解決法を提供する。
【0040】
この方法を行うために、コントローラは、エンジンサイクル毎に必要な全燃料量を管理しつつ、燃料放出のタイミングを修正する。通常メリットエンジンにおいて、燃焼チャンバにおいて層状給気をつくるために、燃料は圧縮行程の間に噴射され、圧縮行程の終わりの前に、そして、火花点火が起こる前に、噴射は止まる。本発明による動作方法は、火花点火イベントの後まで、または、膨張行程の始まりの後まで、或いは、好適には両方のイベントの後まで、燃料噴射を長くすることを要求する。点火後圧力に対抗して燃料を噴射する能力は、GDIと呼ばれる、ガソリン直噴システムによって可能になる。延長した噴射期間は長く続く連続的な最初の噴射期間の継続であり得る。或いは、時間が許容するならば、それは燃料噴射器の2つ以上の異なった動作によって達成され得る。
【0041】
バンプクリアランス容積内でトラップされた酸素を消費する目的で、この動作方法は、燃焼チャンバ(8)における燃料噴射器の出口の位置からシリンダ(2)への燃料の移動を可能にする。膨張行程が始まるとき、或いは、火花点火が起こった後、シリンダの方へ流れ始める濃いガスに燃料の一部を流入させることによって移動は行われ、そして、両方のイベントが発生した後は常に行われる。点火の後、そのような濃い気体は非常に熱く、恐らく更には燃えている。
図3は、トランスファ・オリフィス(7)を通してシリンダ内に、そして、シリンダ(2)内に流れ込む膨張しつつあるガスを例示する。熱い燃焼ガスは燃料を取り込んで、それを気化させ、燃焼チャンバ(5)から方向転換してシリンダ(2)に向ける。この方法の適用がIMEPの上限で起こるであろうことから、恐らく、また、点火してバンプクリアランスの酸素で燃焼する。延長された噴射期間に放出され方向転換された余分の燃料の量は、酸素のない排気ガスの目的を満たすためにシリンダ内のバンプクリアランスにトラップされる全ての遊離酸素を使い果たすに十分である。延長した噴射期間の間に放出された燃料の点火が失敗するならば、混合気がシリンダに入るときに途中で捕らえるために第2の点火手段が用いられ得る。第2の点火手段は図に示されないが、それは連続的にエネルギを与えられ得るグロープラグであり得る。
【0042】
この動作方法は、エンジン・コントローラが、燃焼チャンバ内の第1の燃焼とシリンダ内の第2の燃焼との、2つの燃焼イベントを操作することを効果的に許容する。
【0043】
本発明による2つの新しい方法、すなわち、延長された燃料噴射および部分的なスロットル絞りは、触媒コンバータの使用が排気ガスからNOxを取り除くことを可能にするためにIMEPの上限で共に使用される必要がある。しかし、延長燃料噴射方法は、単独で使用されるとき、更に、エンジン性能を高める他の4つの動作上の能力を提供することができる。
更なる動作上の能力
【0044】
エンジンが動いている間、これらはエンジン・コントローラで適用され得る。
それらの能力の幾つかは、他の内燃エンジンでは普通でない。
1.それは、高いIMEP動作で発生されるピーク圧力をエンジン・コントローラが制限することを許容する。
2.それは、エンジン・コントローラが、バンプクリアランスにトラップされた酸素で燃焼するために燃料を提供することによって、最大のIMEPで動作するときの最大の出力密度を増加させることを許容する。
3.それは、エンジン・コントローラが、そのような余分の熱が車のキャビン暖房のために必要であるならば、排気ガス中に捨てられた熱量を増やすことを選択することを許容する。
4.それは、エンジンが、上記の最初の3つの追加機能を保持しつつ、NOx制限を課さない国々においてスロットルの部分的な使用を放棄することを許容する。或いは、それは、自動車ドライバーの制御に従って最大のIMEPを制限することによって、出力密度の減少という犠牲を払って最大の熱効率と最小限の排気ガス汚染という恩恵を得ながら車が触媒コンバータを使わずに済ますことを許容する。
第1の能力
【0045】
燃焼チャンバにおけるボルテックスチューブ型のガス運動は、燃料および空気分子が遠心力によってその周囲に当たって互いにより近くに圧縮されるように強いる。その結果、メリットエンジンにおける燃焼プロセスは、ディーゼルエンジンや、更に、オットーエンジンの燃焼速度と比較してさえも、非常に速い。穏やかなエンジン速度においては、メリットエンジンは殆ど定積エアサイクルで動作することができる。定積エアサイクルは、一般に使用されているスロットル絞りをしない自動車のエンジンの最も高い熱効率を実現する。しかし、より高いIMEP範囲と低いエンジン速度においては、非常に速い燃焼はシリンダにおいて過度のピーク圧力を引き起こすことがあり得、それはピストンに損傷を与えることさえあり得る。本発明による延長燃料噴射方法は、遅い燃料送出を可能にし、ピストンがTDCから離れて移動して増加したシリンダ容積を曝した後にシリンダ内で燃焼し、ピークの周期的な圧力を減らす。低いエンジン速度においては、シリンダ内でそのような燃焼イベントを2回引き起こすために本方法の態様による燃料噴射器を矢継ぎ早に2回動作させることが望ましい場合がある。或いは、TDCを跨ぐ1つの長い噴射イベントを可能にするために、単位時間あたりの燃料噴射率はコントローラによって減じられ得る。
第2の能力
【0046】
コントローラによって、延長した燃料噴射が高いIMEP動作において実行されるとき、シリンダに流出している非常に熱いガスによる遅い燃料放出の点火は、第2の点火手段を動作させる必要なしでも、起こる可能性が非常に高い。更にこれらの条件の下でもNOxの管理が幾つかの国々でも必要でありそうであるので、スロットルバルブを動作させつつ、上記の第1の能力も機能を果たすことになる。単独で使用されるときには、エンジンがターボ過給されるときでも、その方法の態様は、エンジンが燃焼のために全ての利用可能な酸素を消費することを許容し得るので、パワー出力を最大にする。
第3の能力
【0047】
エンジン排気に棄てられる熱エネルギの意図的な増加は、当然、エンジンの熱効率を下げる。しかし、メリットエンジンのような非常に高い熱効率を有するエンジンは、時々、寒冷な気候においてキャビン暖房を提供するために十分な廃熱を発生することができない。棄てられる熱量は、膨張行程の間に意図的に燃焼している燃料によって増やされ得る。メリットエンジンの層化は、燃焼チャンバ内の過剰空気で燃料を燃焼することを可能にするので、燃焼チャンバから燃料を移動して膨張行程の間にシリンダ内で燃焼させ、排気ガスと共に棄てられる熱量を増やすことが可能である。第3の能力は、少なくとも、遅い燃料放出の点火が第2の点火手段の助けを必要とするかもしれないIMEPの中央領域の値までは必要であり得る。そのような手段は、シリンダヘッド上のトランスファ・オリフィスの出口開口の近くに位置する必要があり得る。グロープラグはそのような第2の点火手段として相応しいものの1つである。何故ならば、グロープラグは、火花点火の前の、または、膨張行程の始まりの前の燃焼チャンバ内に放出された燃料に早期点火することなく、連続的にエネルギを与えられ得るからである。或いは、トランスファ・オリフィス自体は、高温を維持するために、例えば、セラミックの層によって、熱的に絶縁されていることがあり得る。このセラミックの層は、必要に応じて、2回目の点火イベントを助けるために、少量のプラチナ触媒でスパッタリング処理されることさえ可能である。
第4の能力
【0048】
穏やかなIMEPで動作してスタートとアイドリングとを含むとき、メリットエンジンは、排気物質の法規制の制限値より少なくあり得る非常に少ない量のNOxを発生する。そのような範囲のIMEPで動作するとき、本発明による2つの動作方法の使用ができないようにされ得る。その結果、上記エンジンは、非常に高い熱効率と低いNOx排出能力を有する、変更無しでスロットル絞り無しのリーンバーン・メリット型エンジンとして動作するように戻ることができる。本発明は、エンジン・コントローラが、エンジンサイクルあたりに放出される燃料の量をモニタすることによって一方または両方の動作方法を何時使用するかを認識し、エンジンの動作を妨げることの無い自動的な使用と不使用のためにプログラムされた計画に従って作動することを許容する。
【0049】
自動車のドライバーによってスイッチを動かすことによって、または、減ずる車両性能の代価としてであるがNOxおよび二酸化炭素の低排出を確実にするためにエンジン出力IMEPのレーティングを意図的に下げることができる自動車製造業者によって、選択が成され得る。
【国際調査報告】