(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-536496(P2018-536496A)
(43)【公表日】2018年12月13日
(54)【発明の名称】人体用補綴装置及びその製作方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/30 20060101AFI20181116BHJP
【FI】
A61F2/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2018-529599(P2018-529599)
(86)(22)【出願日】2016年12月7日
(85)【翻訳文提出日】2018年7月3日
(86)【国際出願番号】IB2016001730
(87)【国際公開番号】WO2017098316
(87)【国際公開日】20170615
(31)【優先権主張番号】102015000081637
(32)【優先日】2015年12月10日
(33)【優先権主張国】IT
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA
(71)【出願人】
【識別番号】518358147
【氏名又は名称】コッシントン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】マガニョリ、 アウグスト
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA02
4C097AA03
4C097AA06
4C097AA07
4C097BB01
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4C097CC06
4C097DD06
4C097DD07
4C097DD09
4C097DD10
4C097EE02
4C097EE03
4C097EE08
4C097FF05
4C097MM05
(57)【要約】
人体内にインプラントされるように適合され、骨又は関節部位内に生じる可能性がある、且つ/又は生じた感染を予防及び/又は治療するように適合された補綴装置(1、100、200、300)であって、使用中に骨又は関節部位に結合する少なくとも1つの表面と、その結合表面に沿って配置された少なくとも1つの空洞(4、104、204、304)とが設けられた補綴本体(2、102、202、302)を備え、その少なくとも1つの空洞は、少なくとも1つの薬品又は医療物質(4’)を備え、含み、又は収容するように適合された、補綴装置(1、100、200、300)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の骨又は関節座部内にインプラント可能な、補綴本体(2、102、202、302)を備える補綴装置(1、100、200、300)において、前記補綴本体(2、102、202、302)は、使用中に前記骨又は関節座部に接触するのに適した少なくとも1つの結合面(3、103、203、303)を備え、前記少なくとも1つの結合面(3、103、203、303)は、少なくとも1つの薬剤又は医療物質を含む、或いは少なくとも1つの薬品又は医療物質が加えられることが可能な充填材(4’)を備え、含み、又は収容するのに適した少なくとも1つの空洞(4、104、204、304)を備え、或いは、前記少なくとも1つの結合面(3、103、203、303)は、少なくとも1つの薬剤又は医療物質を備える、或いは少なくとも1つの薬品又は医療物質が加えられることが可能な充填材(4’)の少なくとも1つのコーティングを備えることを特徴とし、前記補綴装置(1、100、200、300)は、人体の前記骨又は関節座部内で生じる場合のある感染又は進行中の感染を予防及び/又は治癒するのに適している、補綴装置(1、100、200、300)。
【請求項2】
前記補綴本体(2、102、202、302)の前記結合面(3、103、203、303)は、前記結合面(3、103、203、303)に沿って開放セルの構造(6)を画定するように、互いに隣接した複数の空洞(4、104、204、304)を備える、請求項1に記載の補綴装置(1、100、200、300)。
【請求項3】
前記開放セル(6)又は空洞(4、104、204、304)はリブ(7)によって互いに分離され、且つ/又は少なくとも1つのリブ(7)によって形成された周囲部を有する、請求項2に記載の補綴装置(1、100、200、300)。
【請求項4】
前記リブ(7)は、前記開放セル(6)又は空洞(4、104、204、304)同士の間に配置された、前記開放セル(6)又は空洞(4、104、204、304)の内壁から実質的に垂直に立ち上がる壁を備える、請求項3に記載の補綴装置(1、100、200、300)。
【請求項5】
前記補綴本体(2、102、202、302)は、前記充填材(4’)に存在する又は加えられることができる少なくとも1つの薬品又は医療物質を送達するのに適した穴(F)を含む内部中空の軸(S)を備える、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の補綴装置(1、100、200、300)。
【請求項6】
前記補綴装置(1、100、200、300)は、前記補綴本体(2、102、202、302)に関連付けられ、又は固定されることができる挿入部(3’)を備え、前記挿入部(3’)は低摩擦性プラスチック又はポリマー材料で製作される、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の補綴装置(1、100、200、300)。
【請求項7】
前記挿入部(3’)は少なくとも1つの空洞(4、104、204、304)を備える、請求項6に記載の補綴装置(1、100、200、300)。
【請求項8】
前記充填材(4’)は前記結合面(3、103、203、303)に対して同一面である、又は突き出ている、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の補綴装置(1、100、200、300)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの空洞(4、104、204、304)内に充填材(4’)を備える、請求項1に記載の補綴装置(1、100、200、300)。
【請求項10】
前記補綴本体(2)は、金属、合金、有機金属化合物、セラミック、又はそれらの組み合わせなどの生物学的適合性材料で製作される、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の補綴(1、100、200、300)。
【請求項11】
前記生物学的適合性材料は、アクリル樹脂、プラスチック材料、セラミック材料、高多孔性樹脂、骨セメント、又はポリメチルメタクリレート(PMMA)、熱可塑性ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、熱成形ポリマー、酸化金属、及び/若しくは窒化チタンなどの窒化物、又はそれらの組み合わせ、又は多孔性セラミック、テラコッタ、プラスチック材料、又は硬質性材料を備え、或いはそれらで少なくとも部分的にコーティングされた、請求項10に記載の補綴装置(1、100、200、300)。
【請求項12】
前記充填材(4’)は固体形態又は凝固可能な流体の形態である、請求項1又は請求項9のいずれか一項に記載の補綴装置(1、100、200、300)。
【請求項13】
前記充填材(4’)はアクリル樹脂、リン酸カルシウム又は無機塩を備える複合材料、硫酸カルシウム、バイオガラス、ポリビニルアルコール、又はそれらの混合物、或いは吸収性材料を備える、請求項1、請求項9、又は請求項12のいずれか一項に記載の補綴装置(1、100、200、300)。
【請求項14】
人体の骨又は関節座部内で使用中にインプラントされるのに適しており、人体の前記骨又は関節座部内に生じる場合のある感染又は進行中の感染を予防又は/治癒するのに適した補綴装置(1、100、200、300)の製作方法であって、
補綴本体が使用中に挿入されなければならない骨又は関節座部の形状と実質的に相補的である形状を有する前記補綴本体(2、102,202、302)であって、前記補綴本体には、使用中に前記骨又は関節座部と接触するのに適した少なくとも1つの結合面(3、103、203、303)が設けられる前記補綴本体を得て、
少なくとも1つの薬品又は医療物質を備える、或いは少なくとも1つの薬品又は医療物質が加えられることが可能な充填材(4’)を提供し、
前記充填材(4’)を、前記少なくとも1つの結合面(3、103、203、303)内に存在する少なくとも1つの空洞(4、104、204、304)内に挿入する又は、
前記充填材(4’)を前記少なくとも1つの結合面(3、103、203、303)にコーティングする、方法。
【請求項15】
前記充填材(4’)が前記補綴本体(2、102,202、302)と単一体を形成するように前記充填材(4’)が凝固するのを可能にし、
少なくとも1つの挿入部(3’)を提供し、前記挿入部(3’)を前記補綴本体(2、102、202、302)に結合又は固定し、
前記充填材(4’)を前記少なくとも1つの薬品又は医療物質内に浸漬し、又はそれらが染み込んだ状態にする、のうちの少なくとも1つの工程を備える、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の補綴装置(1、100、200、300)と、少なくとも1つの薬品又は医療物質を備える、或いは少なくとも1つの薬品又は医療物質が加えられることが可能な充填材(4’)とを備えるキットであって、前記補綴装置(1、100、200、300)は、人体の前記骨又は関節座部内に生じる場合のある感染又は進行中の感染を予防及び/又は治癒するのに適している、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の骨病変又は骨折を治療するため、及び骨又は関節部位内に生じる可能性がある又は生じた感染の予防及び/又は治療のための、患者の骨又は関節部位内に恒久的にインプラントされることが可能な補綴装置に関する。
【0002】
さらに本発明は、人体の骨病変又は骨折を治療するため、及び骨又は関節部位内に生じる可能性がある又は生じた感染を予防及び/又は治療するための、患者の骨又は関節部位内に恒久的にインプラントされることが可能な補綴装置を製作する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
現在のところ、人体内部へ補綴具をインプラントした後、術後感染が生じる可能性のあることが知られている。事実、補綴具にはインプラント部位内又は外科治療環境内に存在するバクテリアが達する可能性があり、バクテリアは補綴具の表面にコロニー形成して、補綴装置を骨又は関節部位から引き離してしまう。
【0004】
これらの場合には、そのような感染を打ち負かすために従うべき工程には、感染した補綴具をインプラント部位から取り除くこと、抗生物質が装填された又は抗生物質を放出することが可能なスペーサをインプラントすること、最後に、感染が完全に打ち負かされると新たな補綴具を据え付けることがある。
【0005】
スペーサ装置の使用は、新たな補綴具がインプラントされる骨部位又は関節部位の形状を実質的に無変化に維持するため、並びに抗生物質の放出によって進行中の感染を打ち負かすために必要である。
【0006】
この処置は「二段階」又は「二回式」として知られる再補綴化処置であり、それは感染の治癒と新たな補綴具のインプラントとが2つのインプラント/治療工程を必要とすることによる。
【0007】
「二段階」又は「二回式」処置中にスペーサを使用するには、骨のいくつかの必要条件が揃っていなければならない。即ち、スペーサが一度インプラントされたら安定した状態になるように、靭帯が実質的に一体である関節が必要であり、スペーサ装置のインプラント及び除去工程後に新たな補綴具を正確で安定した位置に固定することが可能となるように、対応する骨部が過度に切除されていない関節が必要である、などである。
【0008】
「一段階」の外科処置もある。これは一回の外科措置で、感染した補綴具の除去と新たな補綴具との単一回の置換えとを提供する。しかしながら、このような技法は、補綴具を再インプラントするために、確認された病原体を打ち負かすことを目的とした特定の抗生物質が混合されたセメントを使用することが可能となるように、病原体が既に確認されていることを前提とする。
【0009】
このような「一段階」処置は迅速に済み、この理由によって患者の肉体的及び心理的ストレスは小さくなる。しかしこれは病原性の低い感染について向いていることである。それは、小さいが、あるパーセンテージの事例で、新たな感染の始まりが発覚したことが分かっているからである。しかしこのような再感染は「二段階」外科処置の場合には稀である。
【0010】
米国特許第5549699号明細書は、支持骨の骨欠損を矯正し、そのようにして寛骨臼カップ自体の移動を予防するために、地盤骨組織が充填される窪みが設けられた補綴具の寛骨臼カップについて述べている。このような特許は、補綴具と骨との界面が改善するように地盤骨組織が中へ圧縮された陥凹部が設けられた人工股関節の大腿骨ステムについても述べている。
【0011】
米国特許第6245111号明細書は、インプラントがなされた患者の体重を支えることが不可能な仮のスペーサ装置について述べている。このような装置は、インプラント部位で進行中の感染を治療するために抗生物質が装填された骨セメントで、例えば適切な型を使用して形成された内部骨格を備える。
【0012】
米国特許出願第2010/0042214号明細書は、中に含まれた少なくとも1つの治療剤を患者の組織に向けて送達することを可能にするタンク及びチャネルが設けられた整形外科用インプラント、特に仮のインプラントについて述べている。この治療剤はインプラント前及び/又は後にタンク内に挿入される。
【0013】
米国特許出願第2007/0016163号明細書は、骨組織の管内又は空間内に挿入されるように適合された装置において、成長促進剤、血管形成促進剤、鎮痛薬、抗生物質、及びそれらの組み合わせの中から選択された薬剤を含む多数のタンク、例えば微小タンクを備える装置について述べている。
【0014】
そのような装置は、一体構造、即ち円筒状などであることができ、又は多数ユニットの形態、即ち複数の球などであることもできる。骨の補綴具もこれらの装置の一部であることができる。
【0015】
したがって、感染の始まりを予防し、且つ/又は存在する感染を治癒するように、したがって「一段階」又は「二段階」式の再補綴手術などの後続インプラントを実施する必要のないように、抗バクテリア力が設けられた又は薬品若しくは医療物質一般を備える、初回インプラント用と再置換用両方の恒久型補綴装置が外科医には必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の課題は、従来技術を改良することである。
【0017】
そのような技術的課題の範囲で、本発明の1つの目的は、人体の骨又は関節部位内に生じる可能性がある又は生じた感染を予防及び/又は治療することが可能な補綴装置を提供することである。
【0018】
本発明のさらなる目的は、少なくとも1つの薬品又は医療物質を長期間にわたって、関連する人体の骨又は関節部位内の特定部分内で放出する補綴装置を提供することである。
【0019】
本発明のさらなる目的は、初回インプラント用又は再置換用のいずれであることもできる補綴装置を提供することである。
【0020】
本発明の他の目的は、骨又は関節部位の術後感染のリスクを明確に縮小し、そのようにして「一段階」又は「二段階」の外科処置によって再補綴化を行う必要をなくす、初回インプラントの抗生剤装填補綴装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の一態様によれば、請求項1に記載の補綴装置が提供される。
【0022】
本発明の他の態様によれば、請求項14に記載の補綴装置の製作方法が提供される。
従属請求項は本発明の好ましく有利な実施形態について述べている。
【0023】
同封の図面で非制限的な実施例によって示された、補綴装置の好ましいが非排他的な実施形態についての詳しい説明から、本発明のさらなる特徴及び実施形態が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明による補綴装置の一バージョンの上面斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に従った補綴装置の下方部分の下面斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に従った補綴装置の下方部分のさらなる実施形態の下面斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明による補綴装置のさらなる実施形態の上面斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明による補綴装置の寛骨臼部分又は寛骨臼バージョンの上面斜視図である。
【
図6】
図6は、
図5に従った補綴装置の寛骨臼部分又は寛骨臼バージョンの断面斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明による補綴装置のさらなる実施形態の斜視図である。
【
図8】
図8は、他の角度による
図7に従った補綴装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明による補綴装置は、初回インプラント用補綴装置としても置換用補綴装置としても使用可能である。このような補綴装置は恒久型である。
【0026】
「置換用補綴装置」という用語によって、そのような補綴装置が、感染した補綴装置の抜き取りに続いて、即ち「一段階」の外科処置において、或いはスペーサの除去後に、即ち「二段階」の処置において、挿入されることができることを意図している。例えば、このような事例は、医師が、スペーサによる部位の衛生化にも関わらず、患者が依然として再感染のリスクを負っていると判断し、そのようにして、本発明によって抗生剤が装填された、或いは薬品又は医療物質が設けられた最終的補綴装置を広範に使用することを決定するときに起こる可能性がある。
【0027】
本発明による補綴装置は、事実、最終的補綴装置である。そのような意味で、補綴装置は人体内に無期限に残ることができ、例外的な状況(偶発的な破損又は患者の健康に関連した他の理由など)においてのみ人体から取り除かれることができる。
【0028】
より詳しく述べると、この補綴装置は標準的な補綴具の機能を実施するが、さらに、骨又は関節部位内の術後感染の始まりを予防すること、及び/又は感染が既に進行中である場合にそのような部位を治療することを可能にする。
【0029】
この予防又は治療作用は、インプラント又は感染したゾーン内に少なくとも1つの薬品又は医療物質が補綴装置によって放出されることによって起こる。
【0030】
本発明による補綴装置は、そのような少なくとも1つの薬品又は医療物質を、例えば超微量、長期間にわたって放出することを可能にする。このようにして、補装具自体のインプラントが起こる骨又は関節部位、又は治療するべき部位は、装置によって日々放出される少なくとも1つの薬品又は医療物質の全粒子を吸収することができ、そのようにして感染に対する予防及び/又は治癒を高める。このようにして、事実としてそのような感染が始まるリスクが大きく制限される。
【0031】
以下で述べるように、補綴装置の構造は、インプラント又は治療するべき骨又は関節部位に接触又は隣接した少なくとも1つの薬品又は医療物質を、おそらくは超微量に放出するのを可能にして、そのような物質の吸収のプロセスが有効であるようにするものである。
【0032】
さらに、本発明による補綴装置の構造は、治療するべき骨又は関節部位の形状と実質的に相補的である。
【0033】
添付の図では、本発明による補綴装置のいくつかの想定される構造を非制限的な実施例によって示している。特に、補綴装置は、膝の補綴具の脛骨部分(
図1〜
図3に示す通り)、膝の補綴具の大腿骨部分(
図4に示す通り)、腰又は肩の補綴具の寛骨臼部分(
図5及び
図6に示す通り)、腰又は肩の補綴具の軸分(
図7及び
図8に示す通り)、又は骨の補綴具全般を含むことができる。
【0034】
本発明による補綴装置は、ヒト組織と生物学的適合性である材料で製作される。例えばそのような材料は、金属、金属合金、有機金属化合物、セラミック、又はそれらの組み合わせであることができる。
【0035】
本発明の一態様では、生物学的適合性材料は、アクリル樹脂、プラスチック材料、セラミック材料、高多孔質樹脂、骨セメント若しくはポリメチルメタクリレート(PMMA)、熱可塑性ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、熱形成ポリマー、又はそれらの組み合わせ、又は他の類似の材料を含むことができ、或いはそれらによって少なくとも部分的に覆われることもできる。
【0036】
コーティングは、本発明の一態様では、補綴装置のいくつかの部分、一般的に擦れに最も晒される部分、又は患者の骨組織に直接接触する部分のみを覆うことができる。
【0037】
さらに、摩耗に最も晒される部分は、より大きな硬度をそれらに与えるコーティングを有することができる。そのようなコーティングは、少なくとも1つの金属酸化物及び/又は窒化物、即ち窒化チタンなどを蒸着又は塗布することによって得ることができる。
【0038】
しかし本発明の代替的態様では、コーティングは、使用中に患者の骨組織と接触するように位置決めされるべく適合された補綴装置の表面全体を覆うことができる。
【0039】
本発明による補綴装置の構造は、インプラントの、又は治療するべき骨又は関節部位の形状と実質的に相補的であることから、想定されるコーティング、例えば以下で述べる充填材4’によって形成されるものは、所定の厚み、即ち均一な厚さなどを有し、骨組織と接触した補綴装置の実質的に表面全体を覆うことになる。このようにして、コーティングは、治療するべき骨又は関節部位の形状に対応した形状を有する表面を覆うことになり、したがってまたコーティングはその厚みで、治療するべき骨又は関節部位の形状に対応した形状を有することになる。
【0040】
それにも関わらず、本発明による補綴装置を製作するために、本発明の保護範囲から逸脱せずに、上述の材料に対して生物学的適合性タイプのさらなる材料が使用可能である。
【0041】
添付の
図1〜
図3を参照すると、膝関節用補綴具の脛骨コンポーネントを備える本発明による補綴装置の全体が参照符号1で示されている。
【0042】
補綴装置1は少なくとも1つの補綴本体2を備える。
【0043】
このような補綴本体2は、インプラントされる、又はいずれの場合も治療するべき骨又は関節部位の形状と実質的に相補的な形状を有する。
【0044】
特に、補綴本体2は、脛骨板コンポーネント及びおそらくは軸コンポーネントSを備える。
【0045】
軸Sは実質的に筒形状を有し、脛骨板コンポーネント20は、人体の横断平面に沿ったその断面を考慮すると、実質的に平坦且つ「C」の形状を有する。
【0046】
そのようにして、骨又は関節部位内への補綴装置1の位置決めが精確となり、得られる性能も最適となる。
【0047】
補綴装置1は、膝関節の脛骨端に拘束されるように適合される。
【0048】
具体的には、軸Sは、膝関節で脛骨髄管内に挿入されるように適合される。
【0049】
そのような軸Sは中空であり、内部に空洞Hを有する。軸Sは穴Fも備え、それらは軸S自体の壁を通過し、軸Sの空洞H内に、或いは空洞H内に含まれた充填材4’に含まれた少なくとも1つの薬品又は医療物質を、補綴装置1のインプラント部位に向けて、又は治療するべき部位又は骨組織に向けて送達するように適合される。
【0050】
このような薬品又は医療物質は、穴Fよりも大きなサイズの、軸自体に配置された開口部Aによってそのような軸Sの中に挿入することができる。このような開口部Aは特に、使用中に膝関節で脛骨髄管内に挿入されるように適合された軸Sの遠端S1内に配置される。補綴本体2には、治療するべき骨又は関節部位と接触するように適合された少なくとも1つの結合面3が設けられる。
【0051】
開口部Aは軸Sの空洞Hと連続するように配置される。
【0052】
そのような結合面3の構造は、補綴装置1の骨又は関節部位での位置決め、及びそれへの連結が正確になるように、患者の骨又は関節部位と実質的に相補的である。
【0053】
さらに、一態様では、結合面3は使用中、骨組織と完全に接触している。
【0054】
図1〜
図3に示す通り、結合面3は、補綴本体2の、膝関節での脛骨端への結合を可能にするように形状化される。補綴本体2、特に結合面3は少なくとも1つの空洞4を有する。
【0055】
本発明の一態様によると、そのような空洞4は溝又はスロットである。
【0056】
本発明の一態様によると、そのような少なくとも1つの空洞は、実質的に多面体、又は平行六面体形状、即ち立方体、若しくは長方形底面を備えた平行六面体、又は直方体などの形状を有し、そのような形状の1面だけが開口部によって区切られるが、以下でそれについてより詳細に述べる。
【0057】
本発明の一態様では、そのような少なくとも1つの空洞4は、補綴装置1の内側にその深さよりも大きな平面寸法又は側面寸法を有する。
【0058】
本発明の一態様によるそのような少なくとも1つの空洞4は、充填材4’を備え、含み、又は収容するように適合される。
【0059】
本発明のさらなる態様によると、結合面3を充填材4’で完全に覆うことができる。そのような場合には、結合面3は充填材4’のコーティングが結合面3自体の全体に配置され、それと接触する。
【0060】
本発明の一態様では、軸Sは充填材4’のコーティングが、軸S自体の表面全体に配置され、それと接触するように備えられ、表面は使用中に患者の骨組織と接触するべく配置されるように適合される。それが軸Sを覆うとき、充填材4’のコーティングは、本発明の一態様では、硬質性及び/又はコンパクト性を有さなくてはならない。例えば、充填材4’のこのようなコーティングを得るには、多孔質セラミック、テラコッタ、プラスチック材料、又は硬質性を備えた材料を使用することが可能である。そのような材料は、一定の強度を保証することが可能である。いずれの場合も、充填材4’及び/又はコーティングは多孔質であり、又は小流路を備えて、補綴装置1は、薬用液剤又は薬品若しくは医療物質を含む液剤内に一度浸漬されると、液剤が染み込んだ状態になることが可能であるようにしている。
【0061】
さらに、孔又は小流路の存在は、補綴装置1が、人体の骨又は関節部位に対する治療、予防、又は治癒のための少なくとも1つの薬品又は医療物質を放出することを可能にする。このような充填材4’は、凝固可能な流体形態又は固体形態であることができる。本発明の一バージョンでは、充填材4’は半固体形態、即ちジェル形態などを有する。
【0062】
このような発明の一態様では、少なくとも1つの空洞4内に配置された充填材4’は硬化されている。
【0063】
さらに、充填材4’は、少なくとも1つの空洞4に対応した空間全体を占め、よってそれを完全に充填する。
【0064】
代替方法として、充填材4’は、使用中に患者の骨組織と接触するべく配置されるように適合された結合面3全体を占める。
【0065】
充填材4’の使用は、従来型の補綴装置の機械的並びに幾何学的な特性の復元を少なくとも部分的に保証する。
【0066】
本発明の一態様では、充填材4’は、少なくとも1つの薬品又は医療物質を備え、又はそれが添加混合されることができる。
【0067】
より詳しく述べると、このような充填材4’は、開始時は薬品又は医療物質の無く、少なくとも1つの薬品又は医療物質が手術段階中に充填材自体に添加混合されることが可能となる状態であることができる(このことは、患者のニーズと遭遇した感染の状態とにも基づいている)。
【0068】
代替方法として、充填材4’は、このような材料4’が感染の治療のために必要な物質を加える必要なく1つの空洞/複数の空洞4の中に挿入されることができるように、少なくとも1つの薬品又は医療物質を備えることができる(おそらくは特定のニーズのために、このような充填材4’には、既にそれに備えられているものに加えて、さらなる物質が添加混合されることができる)。
【0069】
実際、本発明による補綴装置の少なくとも1つの空洞4内に充填材4’が既にあるとき(そのような材料4’を補綴装置の少なくとも1つの空洞内へ配置することが手術室ではなく、メーカーでその製作中に行われる場合など)、少なくとも1つの薬品又は医療物質、即ち抗生剤などが充填材4’(多孔質)内に既に存在することができる。
【0070】
例えば、多孔質充填材4’内に、充填材4’自体に吸収される第1抗生剤(ゲンタマイシンなど)が製作者によって挿入されることができる。補綴装置が一度手術室に到着すると、外科医が、これも患者の特定のニーズに基づいて、抗生剤作用を強化するために第2抗生剤(バンコマイシンなど)を追加するよう決定するのを阻止するものは何もない。これは、補綴装置を、第2抗生剤又はバンコマイシンを含む液剤内に浸漬することによって、或いは同じ液剤の液滴を、さらなる物質を吸収する能力を維持する充填材4’の多孔質エリア上に加えることによって、行うことができる。行った試験の結果によって、事実、第1抗生剤が既に染み込んだ多孔質材料が第2抗生剤の液剤内に浸漬される場合、多孔質材料は両方を捉えて、第1抗生剤の最小限部分しか失わないことが証明されている。
【0071】
したがって、このような充填材4’は少なくとも1つの薬品又は医療物質を備えることができ、或いはそのような物質が添加混合されることができる。
【0072】
本発明の一態様では、このような充填材4’は、以下の材料、即ちアクリル樹脂、リン酸カルシウム若しくは無機塩を備える複合材料、硫酸カルシウム、バイオガラス、ポリビニルアルコール、又はそれらの混合物のうち少なくとも1つを備えることができる。
【0073】
本発明の他の態様では、充填材4’は吸収性材料、例えば、絹糸、綿糸若しくは生物学的適合性植物繊維、又は織物若しくは不織布などを備えることができ、それらは少なくとも1つの薬品又は医療物質、例えば抗生物質などを吸収し、それらが染み込んだ状態になることが可能である。
【0074】
さらなる態様では、このような充填材4’は、抗生物質などの薬品又は医療物質を備える生物学的適合性の半固体材料を備えることができる。
【0075】
上述の場合には、半固体材料は不溶性(骨セメントなど)又は可溶性(動物コラーゲン、糖質、セルロース、等々)であることができる。
【0076】
さらに、このような充填材4’は多孔性であること、又は孔若しくは小流路を備えることができる。そのような孔は、材料自体の中での骨の成長を防止するのに適したサイズを有さなくてはならない。
【0077】
本発明の一態様では、そのような孔隙は無作為に配置される。
【0078】
例えば、事実、このような孔隙は、充填材4’の形成又は製作中に潜在的に製作される。
【0079】
尚さらなる態様によると、充填材4’は補綴本体2を構成する材料と一致することができる。
【0080】
本発明の一態様では、充填材4’は生物分解不可能又は不溶性又は恒久性であり、少なくとも1つの薬品又は医療物質は可溶性であり、又は充填材4’から溶出することができる。
【0081】
少なくとも1つの薬剤又は医療物質は、液体、流動体、及び/又は粘性若しくは固体の形態を有することができる。
【0082】
充填材4’は、実質的にその体積全体に、ミクロメートル程度の寸法(それを、小流路自体の長い方の伸張部の寸法に対して垂直である寸法と考える場合)の複数の小流路を有する。
【0083】
そのような小流路は毛管現象によって液体を吸収及び溶出することができる。
【0084】
想定される1つの構造では、小流路は互いに相互連結している。
【0085】
さらに、一態様では、そのような小流路及び/又はそのような孔は、約100ミクロンの平均断面積サイズを有することができる。
【0086】
吸収性である充填材4’の孔隙の寸法は、その大きな又は小さな毛管力を決定し、それが少なくとも1つの薬品又は医療物質の吸収を決定する。特に、孔が細かい程、毛管作用は大きくなり、よって吸収される薬品又は医療物質又は抗生溶剤の量も大きくなる。
【0087】
したがって、本発明の一バージョンでは、吸収のみを目的として100ミクロン未満の孔隙が理想的となり、その中では骨の移動は有意でない。
【0088】
本発明の好ましい態様では、充填材4’はアクリル樹脂と、無機塩、例えばPMMA(ポリメチルメタクリレート)などと、リン酸カルシウム又はリン酸三カルシウム(TCP)とを備える。
【0089】
本発明の一態様では、補綴装置は関節面をさらに備える。このような関節面は滑らかである。したがってこのような関節面には空洞又はコーティングが無く、よって充填材4’も無い。
【0090】
本発明による補綴装置は、少なくともその一態様では、少なくとも部分的に多孔性でありながら、その多孔性ゾーンに関しても、想定されるその非多孔性ゾーンに関しても、その内部で骨組織が成長するのを防止する。
【0091】
又は、代替的バージョンでは骨組織は、充填材4’の孔隙の中で、補綴装置自体を構成する材料の中で、成長又は移動するままにされることができる。
【0092】
恒久的な補綴具であることから、事実、孔隙内の骨の移動が有益であり、よって望ましいということもあり得る。それが補綴具の安定性に寄与してインプラントの存続期間を向上するからである。
【0093】
尚、さらなる態様では、骨の成長又は移動は、補綴装置を構成する材料の孔隙内では可能にされ、充填材4’内では可能にされず、或いはその反対に充填材4’の孔隙内では可能にされ、補綴具自体を構成する材料の孔隙内では可能にされない。
【0094】
1つの想定される構造では、
図1〜
図3で示すように、補綴装置は結合面3に沿って配置された複数の空洞4を有する。
【0095】
ここに図示していない態様によると、補綴本体2の中の空洞4同士の深さは、同じ装置1の中で互いに対して変化可能であることができる。
【0096】
さらに、空洞4の位置決め、それらの数、及びそれらの形状も一定の必要条件に応じて変化することができる。
【0097】
空洞4のサイズも、いずれの場合も補綴本体2のサイズに応じて変化可能であることができる。
【0098】
各空洞4は、結合面3を通って延在する対応する開口部5を構成する。
【0099】
一実施形態では、
図3に示すように、一部の空洞4は、補綴装置1の骨又は関節部位内の正しい位置決めを確認することを可能にするように適合された要素Cを有することができる。このような場合には、例えば、コリメーションマスク、又は対象の補綴具に特有の計器のテンプレートとの相互作用を行うことが可能である。
【0100】
既述の通り、少なくとも1つの空洞4は充填材4’用のハウジングとして機能する。実際、少なくとも1つの開口部5の中、又は一部の開口部5内のみに、且つ/或いは少なくとも1つの空洞4の内部に、又は補綴本体2内に複数の空洞4が存在する場合には一部の空洞4内のみに、充填材4’は備えられ、含まれ、又は収容される。充填材4’は、患者の人体の内部に放出される少なくとも1つの薬品又は医療物質を備えることができる。
【0101】
本発明の1つの可能な態様では、充填材4’は、補綴装置自体をインプラントする前、即ち手術中に外科医によって準備され、1つの空洞/複数の空洞4内に位置決めされる。
【0102】
もしくは、インプラント前に、外科医が、以前に確立された状況に対してそれが変化したことを認識する場合、外科医は、補綴装置1に充填材4’を追加しないよう決定することもあり得る。それは、その決定が、実際恒久型の補綴具の特徴である支持体としての機械的特性を保証するからである。したがって、本発明はこのさらなる利点を付与し、その利点は、外科医によってインプラント時に初めて、即ち外科医が、外科的開口をした後にインプラント部位の組織の状態、よって患者の本当のニーズを直接検討するときに確認可能である。
【0103】
補綴装置1は、ここで述べるように、充填材4’が治療するべき又はインプラントの骨又は関節組織と接触していることを保証するような構造を有する。その結果、このような充填材4’は、結合面3とぴったり重なるように、又はそのような結合面3に対して突き出るように空洞4を充填する。このようにして、補綴本体2の結合面3と連続した表面が得られる。
【0104】
インプラントの骨又は関節部位内に少なくとも1つの薬品又は医療物質が放出されるのに必要と推定される時間間隔に応じて、少なくとも1つの空洞4が占める総容積は変化することができ、補綴装置1が、選択された時間間隔全体にわたり少なくとも1つの薬品又は医療物質の放出を保証することができるようになる。
【0105】
本発明のさらなる態様では、補綴装置1は、結合面3で、結合面3自体のサイズと実質的に対応するサイズの空洞4を備える。そのような空洞4には充填材4’が充填される。
【0106】
空洞4の構造は、結合面3に沿った開放セル構造6を画定するようなものであることができる。
【0107】
開放セル構造6は、隣同士に配置された複数のセルを備え、それらは夫々空洞4に対応する。
【0108】
開放セル6又は空洞4は、リブ7によって互いに分離される。
【0109】
このようなリブ7は、空洞4自体同士間、又はセル6自体同士間に挟まれた壁であり、そのような空洞4又はセル6によって画定された空間の物理的仕切りを可能にする。
【0110】
本発明の一態様では、リブ7又は少なくとも1つのリブ7は、空洞4又は開放セル6の周囲を決定する。
【0111】
リブ7は、開放セル6の又は空洞4の内壁から実質的に垂直に上向きに突き出る。
【0112】
そのような場合、リブ7は、セル6又は空洞4の周囲側面を構成し、平らな基底部を区切る。そのような平らな基底部の反対側にある基底部は開口部5となる。したがって、セル6は、結合面3でのみ開放した周囲閉鎖型セルである。
【0113】
リブ7は、補綴本体2用の補強要素としても機能することができる。
【0114】
リブ7のこのさらなる機能に基づいて、空洞4は、補綴装置1の、使用中に大きな機械的ストレス、例えば摩耗、湾曲、疲労などに晒される部分にリブ7が存在することを保証するような位置決めを有することができる。
【0115】
さらに、このような空洞4又はセル6は、1つの空洞と他の空洞とで異なった充填材4’を、或いは1つの空洞と他の空洞とで異なった少なくとも1つの薬品又は医療物質を含む充填材4’を含むということが可能である。このようにして、骨又は関節部位の異なったエリアに対して差別化された予防的又は治療的処置を実施することが可能である。
【0116】
添付の図で示していないさらなる態様によると、一部又は全ての空洞4又はセル6が、リブ7に配置された穿孔などによって互いに連通することができる。
【0117】
結合面3の形状に応じて、即ち考慮する補綴装置1のタイプに応じて、単一の空洞4同士間での相互位置決めに伴う間隔は変化することができる。
【0118】
図1で示すように、補綴本体2を挿入部3’に関連付けることができる。
【0119】
このような挿入部3’は、プラスチック又はポリマー材料、即ちポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、及び他の類似の材料などで製作されることができる。
【0120】
特に、挿入部3’は、特定の関節部又はインプラント部位でのさらなる補綴コンポーネントとの、又は患者の骨組織との滑り又は関節動作をし易くすることが可能な材料で製作される。
【0121】
例えば、寛骨臼の挿入部3’を製作するために、ポリエチレンUHMWPEが使用できる。これは低摩擦性材料である。
【0122】
このような挿入部3’は、本発明の一態様では、骨又は関節部位と接触する結合面3に対して反対側の位置で補綴本体2上に位置決めされる。
【0123】
挿入部3’と補綴本体2とは、補綴装置自体の形状に応じて、互いに対して多様な位置決めを有することができる。
【0124】
図に示していない構造によると、挿入部3’は場合により少なくとも1つのさらなる空洞を有してよい。
【0125】
図4では、使用中に膝関節の大腿骨端に拘束することができる補綴装置のさらなる実施形態を示している。このような装置の全体を参照番号100で示す。
【0126】
以下では、既述の実施形態のコンポーネントに相応する同じコンポーネントを、100だけ増やした同じ参照番号で示す。
【0127】
補綴装置100全体は、このような装置100が膝関節で大腿骨下端と関連付けられる補綴具を表すことから、番号1で示した先の補綴装置とはその構造によってのみ異なる。
【0128】
補綴装置100は、本発明の一態様では、使用中に補綴装置1と、又は想定されるその挿入部3’と関節動作されるように適合される。
【0129】
補綴装置100は次いで、使用中に膝関節で大腿骨端に結合する少なくとも1つの表面103を備える補綴本体102を備える。
【0130】
補綴本体102は、人体の矢状面に平行な面に沿ったその断面を考慮して、実質的に「U」形状を有する。
【0131】
特に、結合面103は補綴本体102の陥凹面に対応する。
【0132】
さらに、補綴本体102は、又はできればその結合面103は少なくとも1つの空洞104を備える。
【0133】
少なくとも1つの空洞104は夫々の開口部105を決定し、それは少なくとも1つの表面103に沿って、且つ/又はそれを通って延在する。
【0134】
本発明の1つの態様では、各空洞104、よって各開口部105は充填材4’を備え、含み、又は収容することができる。
【0135】
単一空洞104の形状、容積、及び配置は、例えば補綴本体102の形状に基づいて変化することができる。
【0136】
好ましい実施形態では、各空洞104又は開口部105の構造は開放セル6の構造である。
【0137】
補綴装置100は、結合面103の反対側で関節面103’を備える。
【0138】
関節面103’は補綴本体102の凸面に対応する。
【0139】
このような関節面103’は、膝関節の寛骨臼部分と、又は関節面と、又は補綴装置1の挿入部3’と関節式に関連するように適合される。
【0140】
関節面103’は場合により
図4で示していないさらなる空洞を収容してよい。
【0141】
空洞104の、材料4’の、セル6の、且つ開口部105の特徴は補綴装置1について既に述べた特徴に相応する。
【0142】
図5及び
図6では、本発明のさらなるバージョンを示し、参照番号200で全体を示した補綴装置は、腰又は肩の補綴具の臼状又は寛骨臼状部分を備える。補綴装置200は補綴本体202を備える。
【0143】
このような実施形態は先の実施形態について述べた同じ特徴を有するが、インプラント部位が補綴装置1及び100のインプラント部位とは異なることから、構造に関して変化する。
【0144】
以下では、既述の実施形態のコンポーネントに相応する同じコンポーネントを、100だけ増やした同じ参照番号で示す。
【0145】
補綴本体202はドーム様又は半球様の構造を有する。
【0146】
補綴本体202は空間又は陥凹部Vを包む。
【0147】
空間又は陥凹部Vは半球形状を有し、使用中に腰又は肩の補綴具の頭部、或いは大腿骨又は肩骨の頭部の骨部分を、それらがその半球形状に対して実質的に相補的であることを前提として、収容するように適合される。
【0148】
補綴本体202は、使用中ヒトの骨盤又は肩関節に存在する寛骨臼状又は臼状の空洞内に位置決め、及び/又はそれに固定されるように適合される。
【0149】
補綴本体202は、結合面203と、結合面203の反対側の内部面又は関節面203’とを備える。
【0150】
結合面203は凸状であり、補綴本体202の凸状面に対応し、患者の骨と接触するように適合される。
【0151】
内部面203’は凹状であり、補綴本体202の凹状面に対応し、対応する骨部位の関節動作をなすように適合される。関節面203’の陥凹部は、空間又は陥凹部Vに対応する。
【0152】
図に示していない、様々なタイプの材料、例えばセラミック又はポリエチレンなどで製作された関節挿入部を、関節動作によって生じる摩擦を低減させるように内部面203’と接触して位置決めすることができる。
【0153】
結合面203は1つ又は少なくとも1つの空洞204を備える。少なくとも1つの空洞204は、補綴本体202の幾何学的形状に応じて、且つ必要条件に応じて変化可能な容積、構造、及び/又は配置を有することができる。
【0154】
本発明の一態様では、少なくとも1つの空洞204は少なくとも1つの環状溝の構造をとることができる。
【0155】
そのような溝同士は互いに一定の間隔を置いて配置されることができる。そのような溝同士は同心に、且つ補綴本体202の直径又は基底に平行に位置決めされることができる。
【0156】
そのような場合、空洞204は結合面203に環状開口部205を有する。残りの特徴については、空洞203は、補綴本体202を構成する材料の内部に特定深さだけ延在する溝である。
【0157】
さらなる実施形態では、少なくとも1つの空洞204は、結合面203に沿って不均等な形で配置される。2つ以上の空洞があるとき、それらは互いに異なる形状及び容積を有することができる。
【0158】
各空洞204は、結合面203を通って展開する、対応する開口部205を決定する。
【0159】
開口部205は、充填材4’を内部で収容することが可能な空間に相当する。
【0160】
この場合でも、本発明の一態様で、結合面203は結合面自体のサイズに対して類似サイズの充填材4’のコーティングを備えることができる。
【0161】
図7及び
図8には、本発明のさらなるバージョンを表している。そこでは補綴装置300が軸様形状を有する補綴本体302を備える。
【0162】
補綴本体302は細長い形状を有し、腰又は肩の補綴具の軸を構成するように適合される。
【0163】
補綴装置300は、腰の補綴具に関する場合は、股関節の大腿骨頭部に対応する、患者の寛骨臼と、又は補綴装置200と関節接合されるように適合された頭部を備えることができる。
【0164】
補綴本体又は軸302は端Eを備える。端Eは、存在する場合の補綴具の頭部と結合されるように適合された補綴本体300の近端を表す。
【0165】
さらに補綴本体300は、使用中、端Eに対して反対側にある遠端E’を備える。遠端E’は患者の大腿骨随管の中又は肩骨内にインプラントされるように適合される。
【0166】
図7及び
図8に示す実施形態では、近端Eは切頭円錐形状を有する。しかしそのような形状は本発明を制限するものではなく、端Eは他の形状又は形態も有することができる。
【0167】
補綴本体300は、近端Eに配置された、近端Eを伸長本体302’に連結するように適合された連結部分Rをさらに備える。伸長本体302’は補綴本体302の軸様要素を構成する。
【0168】
軸様要素を構成する補綴本体302又は伸長本体302’は、使用中に骨組織又はインプラントの骨部位と接触するように適合された少なくとも1つの結合面303を備える。
【0169】
このような結合面303に沿って、充填材4’を備え、含み、又は収容するように適合された1つ又は少なくとも1つの空洞304が存在する。
【0170】
本発明の一態様では、少なくとも1つの空洞304は溝様形状を有する。特に、そのような少なくとも1つの溝は、補綴本体302の軸を構成する伸長本体302’の縦軸と平行に縦方向に進行する。
【0171】
各溝又は空洞304は夫々の開口部305を有する。
【0172】
この場合も、少なくとも1つの空洞304は、インプラント部位に応じて、又は必要条件に応じて変化する幾何学形状、容積、及び/又は配置を有する。
【0173】
図7及び
図8に示す態様では、空洞304は、軸様要素又は補綴本体302の連結部分Rから遠端E’までの距離と実質的に等しい延びを有する溝又はスロットとして現れる。
【0174】
図に示していない代替的バージョンでは、そのような空洞304は部分的又は区域的な延びを有する可能性もある。
【0175】
さらに、
図7及び
図8に示した態様では、補綴本体2は、一方両面が他方両面よりも大きい実質的に長方形の断面を備えた軸様要素を有するが、少なくとも1つの空洞304を、大きい方のサイズの面に配置することができる。しかしこのような構造は、本発明の非制限的な実施例にすぎない。
【0176】
尚さらなるバージョンでは、軸要素を構成する伸長本体302’は、軸自体の表面全体に配置され且つ接触した充填材4’のコーティングを備える。表面は使用中に患者の骨組織と接触して配置されるよう適合される。充填材4’のコーティングは、補綴本体302の軸に影響を与えるとき、本発明の一態様では、硬質性及び/又はコンパクト性を有さなくてはならない。例えば、充填材4’のそのようなコーティングを得るために、多孔性セラミック、テラコッタ、プラスチック材料、又は硬質性を備えた材料、即ち一定の強度を保証することが可能な材料を使用することが可能である。いずれの場合もコーティングは多孔性であり、又は小流路を備えて、補綴装置1は一度医療溶剤、又は薬品若しくは医療物質を含む溶剤内に浸漬されると、それらが染み込んだ状態になることが可能となる。
【0177】
さらに、孔又は小流路が存在することは、補綴装置300が、人体の骨又は関節部位への治療、予防、又は治癒のための少なくとも1つの薬品又は医療物質を放出するのを可能にする。
【0178】
このように着想した本発明は技術的利点を得ることを可能にする。
【0179】
第一に、従来型補綴具に対して、一段階又は二段階の治療で介入する必要なく、骨又は関節の感染への予防及び/又は治療を可能にする補綴具を使用することが可能であるという利点である。
【0180】
さらに、充填材が充填された少なくとも1つの空洞が存在するにも関わらず、標準型補綴具の機械的特徴に匹敵する特徴を備えた補綴装置が得られる。
【0181】
さらに、互いに独立することができる空洞が存在することは、複数タイプの薬品又は医療物質を放出することが可能な補綴装置を、治療するべき骨又は関節部位内に配置することを可能にする。
【0182】
次いで本発明は、補綴装置1、100、200、300を製作する方法に関する。
【0183】
そのような方法は、治療するべき骨又はインプラントの関節部位の形状と実質的に相補的な形状を有する、少なくとも1つの空洞4、104、204、304が設けられた補綴本体2、102、202、302を得る工程と、少なくとも1つの薬品又は医療物質を備える、或いは少なくとも1つの薬品又は医療物質と添加混合可能である少なくとも1つの充填材4’を提供する工程と、少なくとも1つの空洞4、104、204、304内に少なくとも1つの充填材4’を挿入する工程とを提供する。
【0184】
本発明の一態様では、本方法は、治療するべき骨又はインプラントの関節部位の形状と実質的に相補的な形状を有する補綴本体2、102、202、302を得る工程と、少なくとも1つの薬品又は医療物質を備える、或いは少なくとも1つの薬品又は医療物質と添加混合可能である少なくとも1つの充填材4’を提供する工程と、補綴本体2、102、202、302の少なくとも1つの結合面3、103、203、303に少なくとも1つの充填材4’をコーティングする工程とを備える。
【0185】
充填材4’は、少なくとも1つの薬品若しくは医療物質を備え、又はそれらと添加混合されることができ、又はそれらを吸収する若しくはそれらが染み込んだ状態になることが可能である。したがって、本発明は、充填材4’を少なくとも1つの薬品又は医療物質内に浸漬し、又はそれらが染み込んだ状態にすることを提供することができる。このようにして、本発明によって、補綴具内に含まれた多孔性材料内の薬品又は医療物質の蓄積量が決定される。蓄積した薬品又は医療物質は、一度補綴具が骨内にインプラントされると、補綴具の材料から退出又は溶出し、補綴具周辺組織の中に進入して、それらに薬を浸透させる。
【0186】
本方法は、凝固可能なタイプ(骨セメントなど)であることができる充填材4’が硬化して、補綴本体2、102、202、302自体と単一体を作るのを待つ工程、又は充填材4’が補綴本体2、102、202、302と単一体を形成するように充填材4’を凝固する工程をさらに備えることができる。
【0187】
本方法は、少なくとも1つの挿入部3’を提供し、挿入部3’を補綴本体2、102、202、302に関連付け又は固定し、且つ/或いは想定される挿入部3’を位置決めし、挿入部3’を補綴本体2、102、202、302に結合し、そのようにして他の補綴コンポーネントとの、又は限定された摩擦しか有さない骨組織との関節面を決定する工程も提供することができる。
【0188】
本発明の一態様では、本方法は、少なくとも1つの薬品又は医療物質を配置する工程と、補綴装置を少なくとも1つの薬品又は医療物質の中に浸漬し、或いはそれらが染み込んだ状態にする工程とを備えることができる。
【0189】
最後に、補綴装置1、100、200、300は使用中、骨又は関節部位にインプラントされる。
【0190】
本発明の一態様では、補綴装置1、100、200、300は、充填材4’でいずれも製作されたコーティングと空洞の両方を備える。
【0191】
いずれの場合も、空洞4、104、204、304は、存在するとき、それらに充填材4’を充填するために、且つそのような材料4’の表面を結合面3、103、203、303と同一面に維持するために鋳型を必要としないような形状を有する。
【0192】
上述のことから明らかであるように、本発明によって、少なくとも1つの空洞及び/又はコーティングは、結合面の少なくとも一部上に、したがって補綴装置の外面上に配置される。
【0193】
使用中にそのような表面が周囲の骨組織と接触しているとすると、コーティング及び/又は充填材及び/又は空洞の開口部は周囲の骨組織と、或いはインプラント中に補綴具自体を定位置に固定するのに使用する骨セメントと接触し、又はそれらによって「閉鎖されている」。
【0194】
したがって、骨組織、及び/又は補綴装置を定位置内に固定するのに使用する骨セメントと、コーティングの充填剤、及び/又は少なくとも1つの空洞の中に収容された充填剤との間で接触が作り出される。
【0195】
一度定位置につくと、補綴装置1、100、200、300はそこに存在する少なくとも1つの薬品又は医療物質を、インプラント部位又は治療するべき部位で徐々に、実質的に均一に放出する。
【0196】
本発明の少なくとも一態様では、補綴装置1、100、200、300は、充填材4’の性質及び/又は形状及び/又は多孔性によって、少なくとも1つの薬品又は医療物質を、それらを放出するための適切な流路又はスリットを作り出す必要なく直接放出することが可能である。
【0197】
補綴装置1、100、200、300は恒久型である。
【0198】
上述の方法は技術的利点を得ることも可能にする。
【0199】
第1に、そのような方法は、いくつかの簡単な工程で、骨又は関節部位の感染の予防と治療の両方を行うことが可能な補綴装置を得ることを可能にする。
【0200】
第2に、上述の方法は、骨又は関節部位の感染の予防及び治療に効果のある補綴装置を配置することを可能にする。このような装置は事実、感染の始まりを予防し、又はそれが既に進行中であるときはそれを打ち負かすように、骨又は関節部位で放出するべき少なくとも1つの薬品又は医療物質を含む。
【0201】
このように着想した本発明は、多数の修正形態及び変化形態を受け入れる余地があり、それらの全てが本発明の概念の範囲に入る。
【0202】
一態様又は一実施形態に存在する特徴は、本発明の保護範囲から逸脱せずに、他の態様又は他の実施形態の特徴と組み合わすことができる。
【0203】
ここで分かるように、本発明による補綴装置は、少なくとも1つの薬品又は医療物質、例えば少なくとも1つの抗生物質を備え、含み、収容し、又はそれらと添加混合可能である。このように、界面又は補綴装置自体の中に蓄積されたこのような薬品又は医療物質は、装置が使用中に一度人体にインプラントされると、補綴装置自体の材料から退出し、又は溶出される。このように補綴装置を取り囲む骨組織への治癒又は投薬が、少なくとも1つの薬品又は医療物質がそのような骨組織と接触するにつれて得られる。
【0204】
本発明の一態様では、本発明による補綴装置と上述のタイプの充填材とを備えるキットが提供される。
【0205】
本発明の一態様では、本発明による補綴装置は予備形成される。そのような態様によると、予備形成という定義によって、充填材4’が既に設けられた補綴装置が意図され、その補綴装置は少なくとも1つの結合面の上、且つ/又は少なくとも1つの空洞の内側に位置決めされる。したがって販売時には、予備形成された補綴装置には既に充填材が設けられており、よって直ぐに使用できる。
【0206】
さらに、全ての詳細部は技術的に同等の要素と置き換えることができる。
実際には、使用する材料並びに付随的な形状及びサイズは、以下の請求項の保護範囲から逸脱せずに、必要条件に応じて任意のタイプであることができる。
【手続補正書】
【提出日】2018年1月10日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の骨又は関節座部内にインプラント可能な、補綴本体(2、102、202、302)を備える補綴装置(1、100、200、300)において、前記補綴本体(2、102、202、302)は、使用中に前記骨又は関節座部に接触するのに適した少なくとも1つの結合面(3、103、203、303)を備え、前記少なくとも1つの結合面(3、103、203、303)は、少なくとも1つの薬剤又は医療物質を含む、或いは少なくとも1つの薬品又は医療物質が加えられることが可能な充填材(4’)を備え、含み、又は収容するのに適した少なくとも1つの空洞(4、104、204、304)を備え、或いは、前記少なくとも1つの結合面(3、103、203、303)は、少なくとも1つの薬剤又は医療物質を備える、或いは少なくとも1つの薬品又は医療物質が加えられることが可能な充填材(4’)の少なくとも1つのコーティングを備えることを特徴とし、前記補綴装置(1、100、200、300)は、人体の前記骨又は関節座部内で生じる場合のある感染又は進行中の感染を予防及び/又は治癒するのに適していると共に、前記少なくとも一つの空洞(4、104、204、304)は、実質的に多面体、又は平行六面体の形状を有し、前記形状の1面だけが開口部によって区切られ、前記補綴装置(1、100、200、300)の内側に前記補綴装置の深さよりも大きな平面寸法又は側面寸法を有する、補綴装置(1、100、200、300)。
【請求項2】
前記補綴本体(2、102、202、302)の前記結合面(3、103、203、303)は、前記結合面(3、103、203、303)に沿って開放セルの構造(6)を画定するように、互いに隣接した複数の空洞(4、104、204、304)を備える、請求項1に記載の補綴装置(1、100、200、300)。
【請求項3】
前記開放セル(6)又は空洞(4、104、204、304)はリブ(7)によって互いに分離され、且つ/又は少なくとも1つのリブ(7)によって形成された周囲部を有する、請求項2に記載の補綴装置(1、100、200、300)。
【請求項4】
前記リブ(7)は、前記開放セル(6)又は空洞(4、104、204、304)同士の間に配置された、前記開放セル(6)又は空洞(4、104、204、304)の内壁から実質的に垂直に立ち上がる壁を備える、請求項3に記載の補綴装置(1、100、200、300)。
【請求項5】
前記補綴本体(2、102、202、302)は、前記充填材(4’)に存在する又は加えられることができる少なくとも1つの薬品又は医療物質を送達するのに適した穴(F)を含む内部中空の軸(S)を備える、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の補綴装置(1、100、200、300)。
【請求項6】
前記補綴装置(1、100、200、300)は、前記補綴本体(2、102、202、302)に関連付けられ、又は固定されることができる挿入部(3’)を備え、前記挿入部(3’)は低摩擦性プラスチック又はポリマー材料で製作される、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の補綴装置(1、100、200、300)。
【請求項7】
前記挿入部(3’)は少なくとも1つの空洞(4、104、204、304)を備える、請求項6に記載の補綴装置(1、100、200、300)。
【請求項8】
前記充填材(4’)は前記結合面(3、103、203、303)に対して同一面である、又は突き出ている、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の補綴装置(1、100、200、300)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの空洞(4、104、204、304)内に充填材(4’)を備える、請求項1に記載の補綴装置(1、100、200、300)。
【請求項10】
前記補綴本体(2)は、金属、合金、有機金属化合物、セラミック、又はそれらの組み合わせなどの生物学的適合性材料で製作される、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の補綴(1、100、200、300)。
【請求項11】
前記生物学的適合性材料は、アクリル樹脂、プラスチック材料、セラミック材料、高多孔性樹脂、骨セメント、又はポリメチルメタクリレート(PMMA)、熱可塑性ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、熱成形ポリマー、酸化金属、及び/若しくは窒化チタンなどの窒化物、又はそれらの組み合わせ、又は多孔性セラミック、テラコッタ、プラスチック材料、又は硬質性材料を備え、或いはそれらで少なくとも部分的にコーティングされた、請求項10に記載の補綴装置(1、100、200、300)。
【請求項12】
前記充填材(4’)はアクリル樹脂、リン酸カルシウム又は無機塩を備える複合材料、硫酸カルシウム、バイオガラス、ポリビニルアルコール、又はそれらの混合物、或いは吸収性材料を備える、請求項1又は請求項9に記載の補綴装置(1、100、200、300)。
【請求項13】
人体の骨又は関節座部内で使用中にインプラントされるのに適しており、人体の前記骨又は関節座部内に生じる場合のある感染又は進行中の感染を予防又は/治癒するのに適した補綴装置(1、100、200、300)の製作方法であって、
補綴本体が使用中に挿入されなければならない骨又は関節座部の形状と実質的に相補的である形状を有する前記補綴本体(2、102,202、302)であって、前記補綴本体には、使用中に前記骨又は関節座部と接触するのに適した少なくとも1つの結合面(3、103、203、303)が設けられる前記補綴本体を得て、
少なくとも1つの薬品又は医療物質を備える、或いは少なくとも1つの薬品又は医療物質が加えられることが可能な充填材(4’)を提供し、
前記充填材(4’)を、前記少なくとも1つの結合面(3、103、203、303)内に存在する少なくとも1つの空洞(4、104、204、304)内に挿入し、前記少なくとも一つの空洞(4、104、204、304)は、実質的に多面体、又は平行六面体の形状を有し、前記形状の1面だけが開口部によって区切られ、前記補綴装置(1、100、200、300)の内側に前記補綴装置の深さよりも大きな平面寸法又は側面寸法を有し、
前記充填材(4’)を前記少なくとも1つの結合面(3、103、203、303)にコーティングする、方法。
【請求項14】
前記充填材(4’)が前記補綴本体(2、102,202、302)と単一体を形成するように前記充填材(4’)が凝固するのを可能にし、
少なくとも1つの挿入部(3’)を提供し、前記挿入部(3’)を前記補綴本体(2、102、202、302)に結合又は固定し、
前記充填材(4’)を前記少なくとも1つの薬品又は医療物質内に浸漬し、又はそれらが染み込んだ状態にする、のうちの少なくとも1つの工程を備える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の補綴装置(1、100、200、300)と、少なくとも1つの薬品又は医療物質を備える、或いは少なくとも1つの薬品又は医療物質が加えられることが可能な充填材(4’)とを備えるキットであって、前記補綴装置(1、100、200、300)は、人体の前記骨又は関節座部内に生じる場合のある感染又は進行中の感染を予防及び/又は治癒するのに適している、キット。
【国際調査報告】