(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
例示的な粒子線治療システムは、スポットサイズを有する粒子ビームを出力するための粒子加速器と、2次元において粒子ビームを照射ターゲットの治療領域の少なくとも一部にわたって走査させる粒子加速器用の走査システムと、走査システムと照射ターゲットとの間の適応開口とを備える。適応開口は、形状を近似して治療領域の一部をトリミングするために、照射ターゲットに対して移動可能である構造体を備える。治療領域の一部は、スポットサイズの領域に基づくサイズを有する。
前記第1の二次キャリッジによって移動可能な前記少なくとも幾つかの構造体は、平らな縁を有し、前記第2の二次キャリッジによって移動可能な前記少なくとも幾つかの構造体は、平らな縁を有し、
前記第1の二次キャリッジは、湾曲したトラック上に取り付けられ、および該トラックに沿って移動可能であり、
前記第2の二次キャリッジは、湾曲した前記トラック上に取り付けられ、および該トラックに沿って移動可能である、請求項12に記載の粒子線治療システム。
前記構造体はリーフを備え、前記リーフのうちの少なくとも幾つかのリーフは前記リーフのうちの他のリーフの幅と異なる幅を有する、請求項1に記載の粒子線治療システム。
前記治療領域にわたる前記粒子ビームの異なる走査について、前記構造体の前記構成は、前記治療領域に対して垂直方向にシフトされる、請求項23に記載の粒子線治療システム。
前記治療領域にわたる前記粒子ビームの異なる走査について、前記構造体の前記構成は、前記治療領域に対して水平方向にシフトされる、請求項23に記載の粒子線治療システム。
前記構造体はリーフを備え、前記リーフのうちの少なくとも幾つかのリーフは、前記リーフのうちの他のリーフと異なる形状を有し、前記リーフのうちの前記少なくとも幾つかのリーフは湾曲した形状を有する、請求項1に記載の粒子線治療システム。
照射ターゲットに対して移動可能であり、前記照射ターゲットの放射線治療領域の一部をトリミングするために形状を近似させる構造体を備え、前記放射線治療領域の前記一部はスポットサイズの領域に基づくサイズを有する、適応開口。
前記第1の二次キャリッジによって移動可能な前記少なくとも幾つかの構造体は、平らな縁を有し、前記第2の二次キャリッジによって移動可能な前記少なくとも幾つかの構造体は、平らな縁を有し、
前記第1の二次キャリッジは、湾曲したトラック上に取り付けられ、および該トラックに沿って移動可能であり、
前記第2の二次キャリッジは、湾曲した前記トラック上に取り付けられ、および該トラックに沿って移動可能である、請求項46に記載の適応開口。
前記構造体の前記移動は、前記放射線治療領域の少なくとも一部にわたる粒子ビームの異なる走査について、前記構造体の構成が変化するように制御可能である、請求項35に記載の適応開口。
【発明を実施するための形態】
【0024】
様々な図面内の類似の参照記号は、類似の要素を示す。
【0025】
本明細書で説明されるのは、陽子またはイオンビームなどの、放射線の範囲を制御するために使用され得る適応開口の例示的な実施例である。この点に関して、適応開口は、放射線の一部が患者に入ることを許容し、放射線の一部が患者に入ることをブロックするように制御可能である構造体である。典型的には、入る放射線は、治療されるべき照射ターゲットに向けられ、ブロックされる放射線は、ブロックされなければ、健常組織に当たり、場合によっては損傷させることになる。動作時に、適応開口は、放射線源と照射ターゲットとの間の放射線経路内に置かれ、適切なサイズおよび形状の開口部を形成して放射線の一部が照射ターゲットの開口部を通過することを可能にし、その一方で、構造体の残りの部分が放射線の一部が隣接する組織に到達するのをブロックするように制御される。適応開口は、任意の適切な放射線治療システムで使用されてよく、特定の種類のシステムとともに使用することに限定されることはない。本明細書では、適応開口が使用され得るシステムの例が説明される。
【0026】
幾つかの実施例において、適応開口は一般的に平らな構造体を含み、これらは「プレート」または「リーフ」と称され、放射線の一部をブロックし、放射線の一部が通ることを許容するように「ビーム」または「治療」領域内に移動するように制御可能である。リーフは、現在の治療に適切なサイズおよび形状の開口部を形成するように制御可能である。幾つかの実施例において、リーフは、2つのキャリッジ上に保持され、互いに、および治療領域に面する。リーフは治療領域内に移動し、および治療領域から外に移動して、患者の領域を治療するために粒子ビームが通過する開口部(または開口)を形成するように制御可能である。開口部を形成するリーフは、また、放射線がリーフによって覆われている開口部に隣接する組織(例えば、健常組織)に入ることをブロックする。この文脈において、覆うステップは、リーフが粒子ビームをブロックするステップを含む。
【0027】
図1は、適応開口内で使用され得るリーフ40の一例を示しているが、適応開口は、この種類のリーフとともに使用することに限定されない。リーフの高さ50は、ビームライン(例えば粒子ビームの方向)に沿っている。リーフの長さ52は、治療領域内への、および治療領域から外への作動方向に沿っており、システムが治療することができる場のサイズ、またはその一部に基づく。場のサイズは、ビームが衝突することができる治療領域に対応する。リーフの幅53は、作動したときに複数のリーフが積み重なる方向である。一般的に、使用されるリーフが多ければ多いほど、湾曲した境界の場合も含めて、形成され得る開口の分解能も高い。
【0028】
図1において、リーフ40はその側部に沿って舌および溝構成部55を含み、これは複数のそのようなリーフが積み重なったときにリーフ間の漏れを低減するように構成されている。この例では、リーフ40の湾曲した端部56は、治療領域内のすべての配置でビームに接する表面を維持するように構成される。しかしながら、本明細書でも説明されているように、各リーフの端部は平らであって、湾曲していないものとしてよい。
【0029】
幾つかの実施例において、適応開口リーフは、少なくとも最大ビームエネルギー(例えば、システムによって出力される粒子ビームの最大エネルギー)をブロックするのに十分な高さを有する。幾つかの実施例において、適応開口リーフは、以下で説明されている理由から、最大ビームエネルギー未満のエネルギーをブロックする高さを有する。幾つかの実施例において、適応開口リーフは、治療領域全体の領域では示されないが、むしろ単一のビームスポットまたは複数のビームスポットの領域で示される長さを有する。この文脈において、「ビームスポット」は、粒子ビームの断面領域である。
【0030】
一例において、粒子線治療システムは、20cm×20cmの面積の正方形領域内に嵌めることができる断面を有する腫瘍を治療するように構成され得る。この例では、適応開口内の各リーフは、約2cmの長さを有するものとしてよく、これは1つのビームスポットの半分の中の粒子をブロックするのにおおよそ十分である。指摘したように、適応開口は、お互いに向き合うリーフのセットを含む。したがって、各セットからのリーフは、必要であれば単一のビームスポット全体を覆い、それによって、放射線が通るのを防ぐように制御され得る。リーフは、また、単一のビームスポットからの放射線の一部または全部が通ることができる開口部を形成するように制御可能であり得る。
【0031】
動作時に、適応開口はビームが放射線ターゲット上を走査するとともに移動し、走査中にビームの移動を辿るように構成される。この例では、適応開口は、約20cm移動して20cm×20cmの領域全体を覆うことを可能にするように構成され得る。上で説明されているように、適応開口は、1つのビームスポット、および幾つかの場合において、少量の余分な領域(extra area)(例えば、5%の余分な領域、10%の余分な領域、15%の余分な領域、または20%の余分な領域)を覆う(または「トリミングする」)のに十分な数のリーフを使用するように構成され得る。
【0032】
図2は、適応開口700の例示的な実施例を示している。適応開口700は、所与のエネルギーの放射線の通過を阻害するか、または防止するのに十分な高さを有し、所与のエネルギーの放射線の通過を阻害するか、または防止するのに十分なニッケル、真鍮、タングステン、または他の金属などの金属から作られているリーフ701を備える。例えば、幾つかのシステムでは、粒子加速器は、100MeVから300MeVの最大エネルギーを有する粒子ビームを発生させるように構成される。したがって、そのようなシステムでは、リーフは、100MeV、150MeV、200MeV、250MeV、300MeVなどのエネルギーを有するビームの通過を防止するように製作されてよい。
【0033】
リーフ701は、患者の腫瘍の断面層などの照射ターゲットの治療領域に対する移動を制御するためにキャリッジ上に取り付けられる。移動は、リーフ701で治療領域704の幾つかの部分を覆い、それによって、治療中に放射線がそれらの部分に当たるのを防止し、その一方で、治療領域の他の部分を放射線に曝されたままにするように制御される。
図2の例示的な実施例において、左に7枚、右に7枚の、合計14枚のリーフがある。幾つかの実施例において、異なる数のリーフがあってよく、例えば、左に5枚、右に5枚の、合計10枚のリーフ、左に6枚、右に6枚の、合計12枚のリーフ、などとしてよい。
【0034】
適応開口は、適切な種類の放射線治療システムとともに使用され得る。例示的な一実施例において、放射線治療システムは、陽子線治療システムである。本明細書で説明されているように、例示的な陽子線治療システムは、照射ターゲットの治療領域にわたって陽子ビームを走査し、悪性組織を破壊する。走査時に、粒子ビームは治療領域の端から端まで移動して治療領域全体を放射線で照射する。例示的な一実施例において、粒子ビームはパルス状である。粒子ビームはパルス状なので、治療領域の影響を受ける部分は、治療領域に当たる各パルスについて1つずつ、一連のスポットを構成する。ビームのサイズに応じて、結果として、幾つかの領域が未治療のままになり得る。その結果、領域全体が治療されることを確実にするために同じ治療領域を複数回走査すると都合がよい場合がある。連続する各走査は、すべての領域に当たるように他の走査からオフセットされ得る。この種類の走査の一例は、ペンシルビーム走査と呼ばれ、繰り返し走査は、治療領域の描画または再描画と称される。
【0035】
照射ターゲットは、典型的には、3次元構造である。したがって、本明細書で説明されているように、照射ターゲットは、断面層(または単に「層」)毎に治療される。すなわち、照射ターゲットの層が治療されると、続いて別の層の別の治療が行われる、というように、ターゲット全体が治療されるまで続く。照射ターゲットの異なる層は、粒子ビームのエネルギー準位を変化させることによって治療される。すなわち、異なるエネルギー準位の粒子ビームが照射ターゲットの異なる層に衝突し、エネルギー準位が高ければ高いほど、粒子ビーム源に対して照射ターゲットの内側のより深い層に影響が及ぶ。したがって、治療時に、照射ターゲットの異なる層に到達させ、それにより治療するために粒子ビームのエネルギー準位を変化させる。
【0036】
図2は、層の一部(例えば、治療領域)に放射線が衝突することを許し、層の他の部分(例えば健常組織)に放射線が衝突することを防ぐように構成されているリーフ701を示している。
図1において、配置707は、治療領域704にわたって陽子ビームを走査中に送達されるべきビームスポットの中心を表す。円708は、送達される放射線が越えないように意図されている治療境界を表す。この境界に近い(例えば、粒子ビームのプロファイルの1つの標準偏差内の)ビームスポットが健常組織に隣接する。これらは、適応開口上でリーフを適切に構成し配置することによってトリミングされる(すなわち、ブロックされる)スポットである。トリミングされるべきビームスポットの一例は、その中心を配置706に置くビームスポット711である。図示されているように、リーフ701は、円708を越えて延在するビームスポット711の部分をブロックするように構成される。
【0037】
例示的な一実施例において、2つの別個のキャリッジの各々に、幅が約5mmである5枚のリーフ、および幅が約20mmである2枚のリーフがある。幾つかの実施例において、2つの別個のキャリッジの各々に、7枚のリーフがあり、そのうち2枚は各々、他の5枚のリーフの各々の幅の3倍またはそれ以上である幅を有する。他の実施例は、異なる数、サイズ、および構成のリーフ、ならびに異なる数および構成のキャリッジを含み得る。例えば、幾つかの実施例は、キャリッジ毎に5枚から50枚までの間のリーフ、キャリッジ毎に5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50枚(またはそれ以上)のリーフを含み得る。
【0038】
キャリッジは、本明細書で説明されているように、水平方向および垂直方向の両方に移動することができる。リーフは、治療領域内へ、および治療領域から外へ各キャリッジに対して水平方向に移動可能でもある。このようにして、リーフは、治療される領域の近くの領域内の治療境界の形状(例えば、この例では円711またはその一部)を近似するように構成可能である。
【0039】
リーフは、ビームが特定の領域に送達されるときにリーフが適切な位置に来るように粒子ビームの異なる走査の間で垂直方向および/または水平方向に移動し得る。リーフは、すべての走査通過について必ずしも移動する必要はないが、その代わりに、領域に対して適切な位置に移動し得る。幾つかの場合において、例えば、治療領域の内部のスポットについて、放射線治療は、適応開口によってもたらされるトリミングなしで進行し得る。
【0040】
図31は、配置1402を中心とする放射線スポット1401をトリミングするように構成されている適応開口の一部であるリーフ1400の別の例を示す。この例では、適応開口の2つの側の各々に7枚のリーフがある(対応するキャリッジによって支持される)。各側のリーフは、他の5枚のリーフよりも広い2枚のリーフを含むが、適応開口は、この構成に限定されない。この場合、スポット1401は、8mmのガウシアン放射スポットを画定する2.5シグマの半径を有する。
【0041】
図3、
図4、および
図5は、治療ターゲットに対して垂直方向と水平方向の両方に、上で説明されているリーフを保持し、移動させるように構成されているキャリッジ713、714、715の例示的な実施例を示している。図示されているように、垂直方向移動は、直交座標Z方向717における移動を含み、水平方向移動は、直交座標X方向718における移動を含む(直交座標Y方向は
図4のページ内に入るか、またはページから外に出る)。
図4および
図5は、ハウジングの内側のコンポーネントを示すためにキャリッジハウジングの一部分を透明であるかのように示しているが、ハウジングは、実際には透明でない。
【0042】
キャリッジ713は、本明細書では一次キャリッジと称され、キャリッジ714および715は、本明細書では二次キャリッジと称される。二次キャリッジ714、715は、
図3から
図5に示されているように、一次キャリッジ713に結合されている。この例では、二次キャリッジ714、715は、各々、対応する部材718、719を介して一次キャリッジ715に固定されているハウジングを備える。この例では、一次キャリッジ713は、照射ターゲットに対して、およびトラック720に沿って粒子加速器に対して、垂直方向に移動可能である。一次キャリッジ713の垂直方向移動は、二次キャリッジも垂直方向に移動させる。幾つかの実施例において、二次キャリッジは一斉に垂直方向に移動する。幾つかの実施例において、各二次キャリッジの垂直方向移動は、他の二次キャリッジの垂直方向から独立している。
【0043】
図3から
図5に示されているように、各二次キャリッジ714、715は、対応するロッド722、723に接続され、それに沿って二次キャリッジが移動する。より具体的には、この例において、モータ725は二次キャリッジ714を駆動して、ロッド722に沿って二次キャリッジ715の方へ移動させるか、または二次キャリッジから遠ざける。同様に、この例において、モータ726は二次キャリッジ715を駆動して、ロッド723に沿って二次キャリッジ714の方へ移動させるか、または二次キャリッジから遠ざける。一次および二次キャリッジの移動に対する制御は、本明細書で説明されているように、照射ターゲットに対してリーフを位置決めするように実装される。それに加えて、リーフそれ自体も、本明細書でも説明されているように、キャリッジの中へ移動し、キャリッジから外に移動するように構成される。
【0044】
図5に示されているように、モータ730は、一次キャリッジ713の垂直方向移動を駆動する。例えば、
図3に示されているように、送りネジ731はハウジング732に結合され、ハウジングは対応する二次キャリッジ714、715を駆動するモータ725、726を保持する。送りネジ731は、モータ730に結合され、モータ730によって垂直方向に駆動させる。すなわち、モータ730は、送りネジ731を垂直方向で、照射ターゲットの方へ、または照射ターゲットから遠ざかる方へのいずれかに駆動する。送りネジ731は、ハウジング732に固定されるので、この移動はまた、ハウジング732およびしたがって二次キャリッジ714、715をトラック720に沿って、照射ターゲットの方へ、または照射ターゲットから遠ざかる方へのいずれかに移動させる。
【0045】
この例示的な実施例において、指摘されているように、7枚のリーフ735、736が各二次キャリッジ714、715上に取り付けられている。各二次キャリッジは、そのリーフを水平方向に治療領域内に、または治療領域から外に移動させるように構成され得る。各二次キャリッジ上の個別のリーフは、同じ二次キャリッジ上の他のリーフに対してX方向に独立して移動可能であるものとしてよい。幾つかの実施例において、リーフは、また、Y方向に移動するようにも構成され得る。さらに、二次キャリッジ714上のリーフは、他の二次キャリッジ715上のリーフから独立して移動可能であり得る。二次キャリッジ上のリーフのこれらの独立した移動は、一次キャリッジによって可能にする垂直方向移動とともに、リーフが様々な構成になるように移動することを可能にする。結果として、リーフは、水平方向および垂直方向の両方で、水平方向および垂直方向の両方にランダムに形作られる治療領域に、形状適合させることができる。リーフのサイズおよび形状は、異なる形状適合をもたらすように変化させることができる。
【0046】
リーフは放射線の透過を防ぐか、または阻止する適切な材料から作られ得る。使用される放射線の種類は、リーフ内でどのような材料が使用されているかを示し得る。例えば、放射線がX線である場合、リーフは鉛から作られるものとしてよい。本明細書で説明されている例において、放射線は陽子またはイオンビームである。したがって、異なる種類の金属または他の材料がこれらのリーフに使用され得る。例えば、リーフは、ニッケル、タングステン、鉛、真鍮、鋼鉄、鉄、またはこれらの適切な組合せから作られ得る。各リーフの高さは、リーフが放射線の透過を阻止する程度を決定し得る。
【0047】
幾つかの実施例において、リーフは同じ高さを有し得るが、他の実施例では、これらのリーフのうちの幾つかのリーフはこれらのリーフのうちの他のリーフの高さと異なる高さを有し得る。例えば、
図2から
図5において、リーフは各々高さが5mmである。しかしながら、任意の適切な高さが使用されてよい。例えば、リーフ735、736は、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、11mm、12mm、13mm、14mm、15mm、16mm、17mm、18mm、19mm、20mm、21mm、22mm、23mm、24mm、25mm、26mm、27mm、28mm、29mmなど(または他の高さ)のうちのどれかを有し得る。リーフは、前述の高さの任意の組合せを有し得る。それに加えて、リーフの各々は、リーフのうちの1つ以上の他のリーフと異なる高さを有していてもよい。
【0048】
同じ高さまたは様々な高さのリーフは、放射線透過を阻止するように積層され得る。幾つかの実施例において、より短いリーフ(例えば高さが小さいリーフ)がより長いリーフと接続して使用されてもよい。幾つかの実施例において、リーフは、最大ビームエネルギーの粒子ビームを完全にブロックするのに十分な高さを有する。幾つかの実施例において、リーフは、最大ビームエネルギー未満の粒子ビームをブロックするのに十分な(そして最大エネルギーの粒子ビームをブロックしない)高さを有する。例えば、陽子線治療システムは、患者体内で32cmの深さまで治療できる230MeVのエネルギーを有するビームを送達する能力を有し得るが、幾つかの実施例では、適応開口は、20cm以下の深さまで治療できるせいぜい175MeVの陽子しかブロックできない。そうした際に、より小さいビーム停止材料、例えば、3.3cmの代わりに2.1cmのタングステン、または5.2cmの代わりに3.3cmのニッケルが使用されてよい。この例では、陽子線治療システムは、それでも、20cmを超える深さで治療することができるが、適応開口は、そのような治療には使用されない。これは、幾つかの状況においては、治療する場所を深くしても、適応開口がもたらす粒子ビームコリメーション(particle beam collimation)の恩恵を受けにくいので、受け入れ可能であるとみなすことができる。すなわち、幾つかの治療シナリオにおいて、浅い低エネルギーの治療は、適応開口が最も効果的である場所であり、リーフにおける材料の量を減らすことに対する工学的利点があり得る。したがって、幾つかの例示的な実施例において、より短いリーフが使用され、適応開口は、浅い最大エネルギー未満の治療を使用するように制限される。
【0049】
図2から
図5の実施例において、リーフは半矩形の形状をしており、側面から見たときにほぼ同じ表面積を有する。幾つかの実施例において、これは必ずしもその場合である必要はない。例えば、リーフは、図示されているものと異なる形状を有し得る。例示的の形状は、限定はしないが、円形、曲面形状、卵形、正方形、および三角形を含む。さらに、個別のリーフは、同じキャリッジまたは異なるキャリッジ内に含まれるリーフのうちの他のリーフと異なる形状を有し得る。例えば、一方のキャリッジは、矩形の形状のリーフと曲面の形状のリーフを両方とも含み得る。
【0050】
幾つかの実施例において、リーフは、最大の予想される陽子エネルギーの粒子ビームを完全に停止するだけでなく(例えば、230MeVでは3.3cmのタングステンまたは例えば5.2cmのニッケル)、リーフの間の陽子透過を妨げる十分な余分の材料も有する十分な高さを有する。この材料は、
図1に示されているような舌および溝構造体、または類似の構成を有し得る。リーフ端部は湾曲した、またはテーパ付きの表面を備え、陽子ビームの様々な発散に対してもたらされる半影を拡張するように構成され得る。
【0051】
幾つかの実施例において、複数の一次キャリッジならびに対応するモータおよびレールがあり得る。例えば、第1の一次キャリッジは、第1の二次キャリッジの垂直方向移動を制御するものとしてよく、第2の一次キャリッジは、第2の二次キャリッジの垂直方向移動を制御するものとしてよい。したがって、そのような実施例において、2つの二次キャリッジは、望ましい場合に、垂直方向に独立して移動させてよい。どのような場合も、一次キャリッジは、コンピュータ制御されてよい。例えば、実行可能な命令は、コンピュータメモリ(例えば、1つ以上の非一時的機械可読記憶媒体)内に記憶され、移動を制御するために1つ以上の処理デバイスによって実行される。制御は、治療時にユーザ入力により、またはユーザ入力なしで実行されてよい。
【0052】
説明されているように、各二次キャリッジ714、715は、上で説明されているように、水平方向キャリッジ移動を制御するための対応するモータを備える。幾つかの実施例において、リーフ毎に1つのモータがあり得るが、他の実施例では、単一のモータがすべてのリーフを制御し得る。モータは、対応する二次キャリッジ上に取り付けられてよい。その結果、モータは、対応する二次キャリッジとともに垂直方向に移動する。指摘されているように、モータは各キャリッジ内のリーフの移動を制御する。リーフは、2つの方向での移動を可能にするアクチュエータ上に取り付けられる。
図2から
図5の例において、リーフは、一体化されたリーフの各部分である。
図6の例を参照すると、メカニズムは、個別のリーフが治療領域内へまたは治療領域から外へ動く各キャリッジを備える一体化されたリーフ内に、または外(X方向)に移動することを可能にする。
【0053】
幾つかの実施例において、単一のキャリッジ上のすべてのリーフは、独立して移動可能である。
図6は、二次キャリッジの一部であるリーフ735aに対する移動メカニズムを示している。各二次キャリッジ内の各リーフは、
図6のリーフおよび移動メカニズムに類似するか、または同一である構成、および移動メカニズムを有し得る。
【0054】
図6の例では、移動メカニズムは、リーフスティック735b、送りネジナット735c、送りネジ735d、スラスト軸受アセンブリ735e、継手735f、モータ735g、軸受ブロック735h、スリーブ軸受ピン735i、スリーブ軸受735j、モータマウントブロック735kを備える。動作中、モータシャフトは、継手を通じて、送りネジを回す。これは、送りネジナットをネジの回転方向に応じて前進または後退させる。送りネジナットは、リーフアセンブリに固定されており、したがって、リーフはモータが回転すると前方または後方に移動する(ビーム経路内に入るか、またはビーム経路から出る)。スリーブ軸受ピンは、リーフに固定され、アセンブリ全体を支持する軸受ブロック内に拘束されているスリーブ軸受に沿って摺動する。この軸受ブロックは、軸受を収納し、キャリッジ上のすべてのリーフに対するモータセンブリのための空間をもたらす。
【0055】
説明されているように、適応開口は、異なる開口形状により走査治療の各層をトリミングするために使用され、それにより積層などの3次元場整形技術を可能にすることができる。しかしながら、適応開口の一実施例は、機械加工された患者特有の構造体または多葉コリメータのいずれかを模倣するように構成され得る。
【0056】
この点に関して、既存の治療計画システム(TPS)は、典型的には、治療体積全体に均一に施されることが意図されている固定された真鍮製開口の形状を計算する機能を備える。TPSは、また、ターゲットに対する適応開口形状を示すか、または構成する命令も含み得る。コンピュータプログラムは、連続的な開口曲線または固定された多葉コリメータリーフ位置のセットのいずれかから、開口形状を解釈し、その形状を送達される放射線治療スポットと関連付けた適応開口に対する一連の動的リーフ位置に変換することができる。したがって、既存のTPS機能が利用されてよく、これにより、適応開口に、既存のTPSソフトウェアへの比較的少ない変更で互換性を持たせることが可能になる。
【0057】
縁等角性を改善し得る、また適応開口によって可能にする別の例示的な技術は、層の同じ治療領域への治療線量が幾つかの通過もしくは描画で送達される可能性を利用する。本明細書で説明されている再描画は、呼吸などの、患者の動作と比較して長いタイムスケールで送達される放射線を均一に分散させるために幾つかの粒子ビーム通過を使用して治療領域に線量が送達される走査陽子線治療で使用される技術である。所与のスポットへの線量がすべて1つのパルスで送達されるわけではない他の理由もある。幾つかの例示的な理由は、動的線量管理が正確な総線量を送達するように各パルスにおいて投入量を調節することができること、1パルスでの投入量に対して安全性限界があること、線量の必要な動的範囲は、粒子加速器の能力を超える可能性があること、を含む。
【0058】
照射体積内のスポットが治療時に(例えば複数の走査において)複数回描画される場合、照射ターゲットの外側縁への適応開口の等角性は、各描画の間に(例えば、同じ治療領域全体にわたる粒子ビームの各走査通過)リーフをわずかに(例えば、ミリメートル未満のレベルで)、垂直方向に、水平方向に、または垂直方向および水平方向の両方にシフトすることによって改善され得る。このようにして、個別のリーフの有限サイズに起因してわずかにギザギザのある縁になっていることもあるものは、意図された開口曲線のより良好な近似が得られるように滑らかにされ得る。
【0059】
回転自由度を追加することで、適応開口が回転ターゲットに形状適合する能力を改善することができる。例えば、
図3から
図5のアセンブリの全体は、ビーム方向に垂直な平面内で、ビーム方向に平行な平面内で、またはそれらの組合せで回転するように構成され得る。幾つかの実施例において、各個別の二次キャリッジ714、715は、同じ平面内で独立して回転するように構成され得る。このようにして、適応開口は、理想的な配向になっていない複雑な形状に形状適合するより高い柔軟性をもたらし得る。幾つかの実施例において、一次キャリッジおよび各二次キャリッジは両方とも回転可能であるものとしてよい。
【0060】
上で説明されている例示的な実施例において、各リーフは、リーフ構成により任意の形状がトレースされ得るように独立して作動させる。しかしながら、許容可能な縁等角性を得るためにそのような柔軟性は必要ない場合がある。リーフは、有限数の構成のみを達成する能力により機械的に制約される可能性がある。例えば、リーフは、垂直線、前方対角形状、後方対角形状、凹形状、凸形状、または他の達成可能な任意の形状にする配置構成に制限される可能性がある。このようにして、柔軟性は機械的な単純さと引き換えになる可能性がある。リーフは、二次キャリッジ上に取り付けられている4つのモータではなく1つの遠隔モータを通じてカムタイミングリーフ(cam timing leaf)を使用して作動させ得る。幾つかの実施例において、リーフの離散的形状は、必要に応じて適所に回転させる輪のセクタから機械加工され得る。モータ、フィードバック、コントローラ、および関連する配線の数を減らすために、離散的リーフ構成を達成する1つのモータを有するアセンブリが使用されてよい。
【0061】
図7は、シャフト751に対して回転可能である湾曲したリーフ750を有する適応開口の例示的な一実施例を示している。
図7の例において、すべてのリーフは、1つのモータによって作動させる。このモータは、垂直シャフト751の頂部にある。リーフカムの形状および配向は、主ドライブシャフトの異なる回転角度に対して異なるリーフ構成を達成するように選択される。
【0062】
適応開口の別の可能な利点は、完全に場の内部にある縁をコリメートすることができる点である。治療計画が保護されるべき体積を完全に囲む体積、例えば、脊髄を完全に囲む腫瘍が治療されることを必要とする場合に、単一の機械加工された構造体は、典型的には治療体積の一部をブロックしなければ保護体積への放射線をブロックすることができない。適応開口は、一連のリーフ位置を使用してそのような場を治療することができる。例えば、適応開口は動的に、および治療時に、治療を必要とする領域上の治療を可能にしながら、保護を必要とする領域を保護するように再構成され得る。
【0063】
幾つかの場合において、粒子ビームがリーフ縁の表面に接しているときに結果としてより良好なビーム性能(半影または縁鮮明さ)が得られる。しかしながら、ビームは効果的に単一の点源から発せられるので、それが適応開口の平面を通過する角度は、ビームが場の中心から遠ざかる方へ移動するときに変化する。このような理由から、
図1に示されているように、リーフは多くの場合に湾曲した縁を有し、したがって、縁は、常に、粒子ビームに接するようにする配置に置かれ得る。適応開口の例示的な実施例において、一次キャリッジと二次キャリッジの両方が移動するトラックは、リーフ縁が湾曲したリーフ縁の代わりに使用され得るように、および平らであるが粒子ビームに接したままになるように湾曲する。
【0064】
図30は、湾曲したトラック1420の例示的な実施例を示している。
図30の例において、粒子ビーム1421は、本明細書で説明されているシンクロサイクロトロンのような粒子加速器であってよい発生源1422から発せられる。粒子ビーム1422は、場1423を走査するものとしてよく、1つの範囲で、配置1425にあってよく、別の範囲で、配置1426にあってよい。リーフ1428および1429を保持するキャリッジは、リーフ1428および1429が互いの方へ、または互いから遠ざかる方へ移動できるように湾曲したトラック1420上に取り付けられる。この例では、リーフは、
図1の湾曲した端部56とは対照的に真っ直ぐな端部(または「前部」)1431、1431を有する。湾曲したトラックを採用することによって、粒子ビームは、走査場1423全体を通して真っ直ぐな端部に接したままであるか、または実質的に接しているものとしてよい。粒子ビームを端部に接したままにすることは、適応開口によってもたらされるトリミングがビーム場の範囲全体にわたって一貫しているようにすることが可能であるという点で有利であり得る。
【0065】
要約すると、幾つかの実施例において、適応開口は、一度に治療領域のごくわずかな部分、例えば治療領域全体未満であり、1スポットサイズ、2スポットサイズ、3スポットサイズ、4スポットサイズ、5スポットサイズ、などにほぼ等しい領域のみをトリミングする。したがって、幾つかの実施例において、適応開口は、一度に単一のスポットをトリミングするのに十分に小さく、移動せずに場全体ではなく1つの位置で幾つかのスポットをトリミングするのに十分大きいものとしてよい。したがって、適応開口は、ビームが走査するときに場の周り、および場の中で移動するように構成され得る。すなわち、幾つかの実施例において、適応開口は走査するときにビームを辿り、その構成および再構成は、走査に同期させ、およびビームによってもたらされるパルスに同期させ得る(例えば、異なるビームパルスおよび/または場所では異なる再構成となる)。治療領域全体をトリミングするのに十分大きいリーフを使用しないことによって、適応開口はより小さくなり、したがって、適応開口は、他のデバイスからの干渉をほとんどまたはまったく受けずに患者に近づけることができる。幾つかの実施例において、適応開口のどのリーフも、最大治療領域全体を跨設する1つの方向も有しない。幾つかの実施例において、各個別のリーフは、治療領域内で2つの方向に移動可能であり、デバイスは、1つ以上の軸上で回転するようにガントリー上に(例えば、本明細書で説明されているような粒子線治療システムの文脈において)取り付けられ、等角点の方へ、および等角点から離れる方へ拡張可能にする。
【0066】
本明細書で説明されているのは、
図1から
図7、
図30、および
図31の適応開口を採用し得る、陽子線またはイオン治療システムなどの、粒子加速器システムの一例である。例示的な粒子線治療システムは、ガントリー上に取り付けられた粒子加速器、この例では、シンクロサイクロトロンを含む。ガントリーは、以下に詳述するように、粒子加速器を患者の位置の周りで回転させることを可能にし、これにより、粒子加速器からの粒子ビームを患者の任意の治療領域に当てることができる。幾つかの実施例では、ガントリーは鋼製であり、患者の両側に配設された2つの軸受それぞれに回転するように取り付けられた2つの脚部を有する。粒子加速器は、患者が横たわる治療領域を跨設するに十分に長い鉄骨トラスによって支持されており、鉄骨トラスは、その両端においてガントリーの回転式脚部に取り付けられている。患者の周りをガントリーが回転する結果、粒子加速器も回転する。
【0067】
例示的な一実施例において、粒子加速器(例えば、シンクロサイクロトロン)は、磁場(B)を発生する電流を各々伝導するための、1つ以上の超電導コイルを保持する低温保持装置を備える。一例では、低温保持装置は、各コイルを超電導温度、例えば、4°ケルビン(K)に維持するために液体ヘリウム(He)を使用する。磁気ヨークまたはより小さい磁極片は、低温保持装置の内側に配置され、粒子が加速される空洞の形状を画成する。磁気シムは、磁気ヨークまたは磁極片を通過し、空洞内の磁場の形状および/または大きさを変化させ得る。
【0068】
この例示的な実施例では、粒子加速器は、電離プラズマ柱を空洞に供給するために粒子源(例えば、ペニングイオンゲージ--PIG源)を備える。水素ガスは電離されてプラズマ柱を生成する。電圧源は、高周波(RF)電圧を空洞に印加して粒子のパルスをプラズマ柱から空洞内へ加速させる。空洞内の磁場は、粒子に空洞内の軌道上を移動させる形状をとる。磁場は、本明細書で説明されているように、例えば、少なくとも4テスラであってよい。
【0069】
指摘されているように、一例では、粒子加速器はシンクロサイクロトロンである。したがって、プラズマ柱から粒子を加速するときに、粒子に対する相対論的効果(例えば、粒子質量が増加する)を考慮してRF電圧が一定範囲の周波数にわたって掃引される。空洞の形状とともに、超電導コイルに電流を流すことによって発生した磁場により、プラズマ柱から加速された粒子は空洞内の軌道上で加速する。他の実施例では、シンクロサイクロトロン以外の粒子加速器が使用され得る。例えば、サイクロトロン、シンクロトロン、直線加速器などは、本明細書で説明されているシンクロサイクロトロンの代替えとなり得る。
【0070】
例示的なシンクロサイクロトロンにおいて、磁場再生器(「再生器」)は、空洞の外側の近く(例えば、その内縁)に位置しており、空洞の内側の既存の磁場を調整し、これにより、プラズマ柱から加速された粒子の連続的な軌道の位置(例えば、ピッチおよび角度)を変更し、最終的に、粒子は低温保持装置を通る引き出しチャネルに出力される。再生器は、空洞内のある地点における磁場を増大し(例えば、空洞のある領域において約2テスラほどの磁場「バンプ」を作り出し)、これにより、その地点の粒子のそれぞれの連続的軌道が引き出しチャネルの入口点の方へ外向きに、引き出しチャネルに到達するまで歳差運動し得る。引き出しチャネルは、プラズマ柱から加速された粒子を空洞から受け、粒子ビームとして受けた粒子を空洞から出力する。
【0071】
超電導(「主」)コイルは、比較的高い磁場を発生することができる。主コイルによって生成される磁場は、4Tから20Tまたはそれ以上の範囲内にあり得る。例えば主コイルは、4.0T、4.1T、4.2T、4.3T、4.4T、4.5T、4.6T、4.7T、4.8T、4.9T、5.0T、5.1T、5.2T、5.3T、5.4T、5.5T、5.6T、5.7T、5.8T、5.9T、6.0T、6.1T、6.2T、6.3T、6.4T、6.5T、6.6T、6.7T、6.8T、6.9T、7.0T、7.1T、7.2T、7.3T、7.4T、7.5T、7.6T、7.7T、7.8T、7.9T、8.0T、8.1T、8.2T、8.3T、8.4T、8.5T、8.6T、8.7T、8.8T、8.9T、9.0T、9.1T、9.2T、9.3T、9.4T、9.5T、9.6T、9.7T、9.8T、9.9T、10.0T、10.1T、10.2T、10.3T、10.4T、10.5T、10.6T、10.7T、10.8T、10.9T、11.0T、11.1T、11.2T、11.3T、11.4T、11.5T、11.6T、11.7T、11.8T、11.9T、12.0T、12.1T、12.2T、12.3T、12.4T、12.5T、12.6T、12.7T、12.8T、12.9T、13.0T、13.1T、13.2T、13.3T、13.4T、13.5T、13.6T、13.7T、13.8T、13.9T、14.0T、14.1T、14.2T、14.3T、14.4T、14.5T、14.6T、14.7T、14.8T、14.9T、15.0T、15.1T、15.2T、15.3T、15.4T、15.5T、15.6T、15.7T、15.8T、15.9T、16.0T、16.1T、16.2T、16.3T、16.4T、16.5T、16.6T、16.7T、16.8T、16.9T、17.0T、17.1T、17.2T、17.3T、17.4T、17.5T、17.6T、17.7T、17.8T、17.9T、18.0T、18.1T、18.2T、18.3T、18.4T、18.5T、18.6T、18.7T、18.8T、18.9T、19.0T、19.1T、19.2T、19.3T、19.4T、19.5T、19.6T、19.7T、19.8T、19.9T、20.0T、20.1T、20.2T、20.3T、20.4T、20.5T、20.6T、20.7T、20.8T、20.9T、もしくはそれ以上のうちの1つ以上の大きさの、またはこれらを超える大きさの磁場を発生するために使用され得る。さらに、主コイルは、上に特には挙げられていない4Tから20T(またはそれ以上、またはそれ以下)の範囲内にある磁場を発生するために使用され得る。
【0072】
図8および
図9に示されている実施例などの、幾つかの実施例では、大型の強磁性磁気ヨークは、超電導コイルによって生成される漂遊磁場に対する帰還として働く。例えば、幾つかの実施例では、超電導磁石は、例えば4Tまたはそれ以上の比較的高い磁場を発生することができ、その結果、かなりの漂遊磁場が生じる。
図8および
図9に示されているような幾つかのシステムでは、比較的大型の強磁性帰還ヨーク100は、超電導コイルによって生成される磁場に対する帰還として使用される。磁気シールドがヨークを囲む。帰還ヨークおよびシールドは、一緒になって漂遊磁場を散逸させ、それによって、漂遊磁場が加速器の動作に悪影響を及ぼす確率を低減する。
【0073】
幾つかの実施例では、帰還ヨークおよびシールドは、能動的帰還システムによって置き換えられるか、または増強され得る。例示的な一能動的帰還システムは、主超電導コイルを通る電流と反対の方向に電流を流す1つ以上の能動的帰還コイルを備える。幾つかの例示的な実施例では、それぞれの超電導コイルに対して能動的帰還コイルがある、例えば、2つの能動的帰還コイル--それぞれの超電導コイルに対して1つ--がある(「主コイル」と称される)。それぞれの能動的帰還コイルは、対応する主超電導コイルの外側を同心円状に囲む超電導コイルであってもよい。
【0074】
電流は、主コイルを通過する電流の方向と反対の方向で能動的帰還コイルを通過する。これにより、能動的帰還コイルを通過する電流は、主コイルによって生成される磁場と極性が反対である磁場を発生する。その結果、能動的帰還コイルによって生成される磁場は、対応する主コイルから結果として生じる比較的強い漂遊磁場の少なくとも一部を散逸することができる。幾つかの実施例では、それぞれの能動的帰還は、2.5Tから12Tまたはそれ以上の磁場を発生するために使用され得る。例えば磁場は、2.5T、2.6T、2.7T、2.8T、2.9T、3.0T、3.1T、3.2T、3.3T、3.4T、3.5T、3.6T、3.7T、3.8T、3.9T、4.0T、4.1T、4.2T、4.3T、4.4T、4.5T、4.6T、4.7T、4.8T、4.9T、5.0T、5.1T、5.2T、5.3T、5.4T、5.5T、5.6T、5.7T、5.8T、5.9T、6.0T、6.1T、6.2T、6.3T、6.4T、6.5T、6.6T、6.7T、6.8T、6.9T、7.0T、7.1T、7.2T、7.3T、7.4T、7.5T、7.6T、7.7T、7.8T、7.9T、8.0T、8.1T、8.2T、8.3T、8.4T、8.5T、8.6T、8.7T、8.8T、8.9T、9.0T、9.1T、9.2T、9.3T、9.4T、9.5T、9.6T、9.7T、9.8T、9.9T、10.0T、10.1T、10.2T、10.3T、10.4T、10.5T、10.6T、10.7T、10.8T、10.9T、11.0T、11.1T、11.2T、11.3T、11.4T、11.5T、11.6T、11.7T、11.8T、11.9T、12.0T、またはそれ以上であってよい。さらに、能動的帰還コイルは、上に特には挙げられていない2.5Tから12T(またはそれ以上、またはそれ未満)の範囲内にある磁場を発生させるために使用され得る。
【0075】
図10に表すように、粒子加速器105(
図8および
図9に示されている構成を有するものとしてよい)の引き出しチャネル102の出力のところに、照射ターゲットの少なくとも一部にわたって粒子ビームを走査するために使用され得る例示的な一走査システム106がある。
図11はまた、走査システムの構成要素の例を示している。これらは、限定はしないが、走査磁石108、電離箱109、およびエネルギーデグレーダ110を含む。走査システム内に組み込まれ得る他の構成要素は、
図11には示されていないが、例えばビームスポットサイズを変えるための1つ以上の散乱体を含む。例示的な走査システムは、そのコンポーネントを含めて、ガントリーに取り付けられ、ガントリーの移動時に粒子加速器とともに移動し得る。
【0076】
例示的な動作において、走査磁石108は、2次元で制御可能であり(例えば直交座標のXY次元)、これにより、粒子ビームを照射ターゲットの治療領域(例えば、断面)に導く。電離箱109では、ビームの線量を検出し、その情報を制御システムにフィードバックしてビーム移動を調整する。エネルギーデグレーダ110は、材料(例えば、1つ以上の個別のプレート)を粒子ビームの経路内におよび経路外に移動させて、粒子ビームのエネルギー、したがって粒子ビームが照射ターゲットを貫通する深さを変化させるように制御可能である。このようにして、エネルギーデグレーダは、2つの方向に走査する照射ターゲットの深さ毎の層を選択する。
【0077】
図12および
図13は、例示的な走査磁石108を示している。この例示的な実施例では、走査磁石108は、X方向の粒子ビーム移動を制御する2つのコイル111と、Y方向の粒子ビーム移動を制御する2つのコイル112と、を備える。制御は、幾つかの実施例では、コイルの一方の組または両方の組を通る電流を変化させ、それによって、発生する磁場を変化させることによって達成される。磁場を適切に変化させることによって、粒子ビームは、照射ターゲット上をXおよび/またはY方向に移動させることができる。幾つかの実施例では、走査磁石は、粒子加速器に対して物理的に移動可能でない。他の実施例では、走査磁石は、粒子加速器に対して移動可能であるものとしてよい(例えば、ガントリーによってもたらされる移動に加えて)。幾つかの実施例では、走査磁石は、粒子ビームを連続的に移動させるように制御可能であるものとしてよく、したがって、走査される照射ターゲットまたはその一部(例えば、治療領域)の層の少なくとも一部、および場合によってはすべての上で粒子ビームが途切れなく移動する。他の実施例では、走査磁石は、間隔を置いて、または特定の時刻に制御可能である。幾つかの実施例では、Xおよび/またはY方向の粒子ビームのすべてのまたは部分的な移動を制御するために異なる走査磁石があり得る。
【0078】
幾つかの実施例において、走査磁石108は空芯を有してよい。他の実施例では、走査磁石108は空強磁性(例えば、鉄)芯を有してよい。一般に、空芯を有する磁石は、空気などの、非強磁性体である芯の周りに磁気コイルを備える。例えば、空芯磁石は、空気を囲む自立コイルを備え得る。幾つかの実施例において、空芯磁石は、空気を含んでいても含んでいなくてもよい、セラミックまたはプラスチックなどの絶縁体の周りに巻き付けられたコイルを備え得る。
【0079】
幾つかの場合において、空芯は、強磁性芯に勝る利点を有し得る。例えば、Xおよび/またはY方向に粒子ビームが移動する(例えば、偏向する)量は、少なくとも一部は、磁石に印加される電流(「磁石電流」と称される)の量に基づき決定される。走査磁石は、典型的には、磁石がビームを移動させる範囲である、移動(または偏向)範囲を有する。縁のところなどの、この範囲の上下限において、比較的高い量のビーム偏向を達成するために走査磁石により大きな量の電流が印加される。強磁性芯を有する幾つかの種類の走査磁石は、これらの上下限で飽和する可能性があり、その結果、電流と磁石の移動との間に非線形の関係が生じる。すなわち、磁石によって引き起こされる偏向の量は、磁石に印加される電流の量に直線的に比例し得ない。この非線形性により、幾つかの場合において、磁石電流を使用して幾つかのビーム配置を決定し、および/または設定することが困難であり得る。したがって、強磁性芯を有する走査磁石が使用されるときに、上で説明されているような非線形性を補正するために実行される何らかの較正および/または補正が必要になり得る。
【0080】
対照的に、空芯を有する走査磁石は、強磁性芯を有する走査磁石と同じように飽和しない場合がある。例えば、空芯磁石は飽和しないか、または強磁性芯を有する磁石よりも飽和度が小さくなり得る。その結果、電流と磁石の移動との間の関係は、特に範囲の上下限のところで、より直線的となり、少なくとも幾つかの場合において、磁石電流に基づくビーム配置の決定をより正確にし得る。このような直線性の増大は、特に範囲の上下限のところで、ビームのより正確な移動を可能にすることもできる。すなわち、電流とビームの移動との間の関係は、一般的に、空芯走査磁石が使用されるときにより大きい範囲にわたってより直線性が高いので、ビームの移動は、空芯走査磁石を使用してより容易に再現可能であり得る。これは、照射ターゲットの深さ毎の層が、各々が総累積放射線量の割合をもたらす複数回の走査を必要とすることがあるので有利であり得る。空芯走査磁石の使用を通じて取得され得るような、同じ領域に複数の線量を送達する精度は、治療の有効性に影響を及ぼし得る。
【0081】
電流と磁石の移動との間の関係は、空芯磁石内でより直線的であり得るが、幾つかの場合において、空芯磁石は、強磁性芯を有する磁石に比べて漂遊磁場の影響を受けやすいことがある。これらの漂遊磁場は、ガントリーによって引き起こされる走査磁石の運動時に走査磁石に影響を及ぼし得る。したがって、空芯を有する走査磁石を使用する幾つかの実施例において、ビームを移動させるために走査磁石に印加される電流は、患者に対する走査磁石の位置を考慮する(または、それに対応して、ガントリーの位置が患者に対する走査磁石の位置に対応するので、ガントリーの位置を考慮する)ように較正され得る。例えば、走査磁石の挙動は、例えば回転位置に基づき何らかの印加される電流を増減させることによって、ガントリーの異なる回転位置(角度)について決定され、必要ならば補正され得る。
【0082】
幾つかの実施例において、走査磁石は、空気と強磁性体(例えば鉄)の両方からなる芯を有し得る。そのような実施例において、芯の中の空気および強磁性体の量および構成は、前述の要因を考慮して決定され得る。
【0083】
幾つかの実施例において、電流センサ118は、走査磁石108に接続されるか、または他の何らかの方法で関連付けられ得る。例えば、電流センサは走査磁石と通信し得るが、接続されなくてもよい。幾つかの実施例において、電流センサは磁石に印加される電流をサンプリングし、これはX方向に走査するビームを制御するためのコイルへの電流および/またはY方向に走査するビームを制御するためのコイルへの電流を含み得る。電流センサは、粒子ビーム内のパルスの発生に対応する回数で、またはパルスが粒子ビーム内で生じる率を超える率で、磁石を通過する電流をサンプリングし得る。後者の場合、磁石電流を識別するサンプルは、以下で説明されている電離箱によるパルスの検出に相関する。例えば、電離箱(以下で説明される)を使用してパルスが検出される回数は、電流センサからのサンプルに時間的に相関し、このパルスの回数で磁石コイル内の電流を識別し得る。したがって、磁石電流を使用することで、各パルス、およびしたがって、粒子の線量が送達された照射ターゲット上の(例えば、照射ターゲットの深さ毎の層上の)配置を決定することが可能であり得る。深さ毎の層の配置は、ビーム経路内のエネルギーデグレーダの位置(例えば、プレートの数)に基づき決定され得る。
【0084】
動作時に、磁石電流の大きさ(例えば値)は、線量(例えば強度)とともに、線量が送達される配置毎に記憶され得る。加速器上または加速器から離れた場所にあり得る、ならびにメモリおよび1つ以上の処理デバイスを含み得るコンピュータシステムは、磁石電流と照射ターゲット内の座標とを相関させるものとしてよく、それらの座標は、線量とともに記憶され得る。例えば、配置は、深さ毎の層の数および直交XY座標によって、または直交XYZ座標(層がZ座標に対応している)によって識別され得る。幾つかの実施例において、磁石電流の大きさおよび座標配置は両方とも、各配置における線量とともに記憶され得る。この情報は加速器上の、または加速器から離れた場所のいずれかの、メモリに記憶されてよい。本明細書においてより詳しく説明されているように、この情報は、同じ配置に複数の線量を印加してターゲット累積線量を達成するために走査時に使用され得る。
【0085】
幾つかの実施例において、電離箱109は、入射放射線によって生じるガス内に形成されるイオン対の数を検出することによって粒子ビームによって照射ターゲット上の位置に印加される線量(例えば、1つ以上の個別の線量)を検出する。イオン対の数は、粒子ビームによってもたらされる線量に対応する。その情報はコンピュータシステムにフィードバックされ、線量が送られる時間とともにメモリに記憶される。この情報は、上で説明されているように、線量が送られた配置および/またはその時の磁石電流の大きさに相関させ、およびそれらに関連して記憶され得る。
【0086】
以下により詳しく説明されているように、幾つかの実施例において、走査システムは開ループで稼動し、その場合、粒子ビームは照射ターゲット上を自由に途切れることなく移動し、実質的にターゲット全体を放射線で照射する。放射線が送達されるとともに、粒子線治療制御システムによって実行される線量測定で、配置毎の放射線の量および放射線が送達された配置に対応する情報を記録(または記憶)する。放射線が送達された配置は、座標として、または1つ以上の磁石電流値として記録されてよく、送達された放射線の量は、グレイ単位の線量として記録され得る。システムは開ループで稼動するので、放射線の送達は、粒子加速器の動作(例えば、そのRFサイクル)に同期しない。しかしながら、線量測定は粒子加速器の動作に同期させてよい。より具体的には、線量測定では、線量が送達されるにつれ(すなわち、技術の限界があっても可能な限り送達時点に近い時点で)送達される各線量およびその配置を記録する。線量は、加速器の動作と同期させて送達される(例えば、RFサイクル毎に1パルスが送達される)ので、幾つかの実施例において、線量および配置を記録する線量測定はターゲットへの放射線量の送達と同期させて、または実質的に同期させて、したがってそのRFサイクルなどの粒子加速器の動作と同期させて、動作する。
【0087】
図14は、エネルギーデグレーダ110の例示的な一実施例である、飛程変調装置115を示している。
図14に示されているような幾つかの実施例では、飛程変調装置は、一連のプレート116を備える。これらのプレートは、炭素、ベリリウム、または低原子番号の他の材料のうちの1つ以上から作ることができる。しかしながら、これらの例示的な材料の代わりに、またはそれに加えて、他の材料も使用され得る。
【0088】
これらのプレートのうちの1つ以上は、ビーム経路内に移動可能であるか、または経路から外に移動可能であり、それによって、粒子ビームのエネルギーに、したがって照射ターゲット内への粒子ビームの浸透深さに影響を及ぼす。例えば、粒子ビームの経路内に移動するプレートが多ければ多いほど、プレートによって吸収されるエネルギーが多くなり、粒子ビームが帯びるエネルギーは少なくなる。逆に、粒子ビームの経路内に移動するプレートが少なければ少ないほど、プレートによって吸収されるエネルギーは少なくなり、粒子ビームが帯びるエネルギーは多くなる。エネルギーが高い粒子ビームは、通常、エネルギーが低い粒子ビームよりも照射ターゲット内により深く浸透する。この文脈において、「より高い」および「より低い」は、相対語としての意味であり、いかなる特定の数値的な含意も有するわけではない。
【0089】
プレートは、粒子ビームの経路内におよび経路外へ物理的に移動される。例えば
図15に示されているように、プレート116aは、粒子ビームの経路内の位置と粒子ビームの経路外の位置との間の矢印117の方向に沿って移動する。プレートはコンピュータ制御される。一般的に、粒子ビームの経路内に移動するプレートの数は、照射ターゲットの走査が行われるべき深さに対応する。例えば、照射ターゲットは、幾つかの断面または深さ毎の層に分割され、それぞれの断面または深さ毎の層は照射深さに対応するものとしてよい。飛程調整装置の1つ以上のプレートは、照射ターゲットへのビーム経路内を出入りすることができ、これにより、照射ターゲットの断面または深さ毎の層のそれぞれを照射する適切なエネルギーを得ることができる。飛程調整装置は、粒子ビームの経路内におよび経路外に移動するプレートを除き、照射ターゲットの一部(例えば断面)の走査中に粒子ビームに対して静止するものであってよい。代替的に、
図14および
図15の飛程調整装置は、少なくとも時には、粒子ビームの移動を辿る飛程調整装置で置き換えられてよく、それによって、より小さいプレートを使用することが可能になる。
【0090】
上で説明されている種類の飛程調整装置を使用する実施例において、ビーム経路内に移動するプレートの数は、走査されるべき照射ターゲットの深さ毎の層を決定/設定する。例えば、2枚のプレートがビーム経路内に移動する場合、層は、ビーム経路内に1枚のプレートが移動するか、またはプレートがいっさい移動しない場合に比べて浅くなる。層は、ビーム経路内に移動するプレートの数に基づき、識別され、メモリに記憶され得る。幾つかの実施例において、プレートは、異なる高さを有し得る。そのような実施例では、様々なプレートの高さは、どの層が走査されるべきか(例えば、粒子ビームがターゲットにどれだけ深く入るか)にも影響を及ぼす。
【0091】
幾つかの実施例では、粒子加速器は、可変エネルギー粒子加速器とされる場合がある。可変エネルギー粒子加速器が使用される例示的なシステムでは、粒子ビームのエネルギー準位が粒子加速器によって制御され得るので、本明細書で説明されている種類のエネルギーデグレーダが必要になることは少ないと思われる。例えば、可変エネルギー粒子加速器を採用する幾つかのシステムでは、エネルギーデグレーダが必要とされない場合がある。可変エネルギー粒子加速器を採用する幾つかのシステムでは、エネルギーデグレーダは、それでも、ビームエネルギー準位を変えるために使用されることがある。
【0092】
幾つかの実施例では、照射ターゲットを治療する前に治療計画が立てられる。治療計画は、粒子線治療システムの動作を制御するコンピュータシステムからアクセス可能であるメモリに記憶されるものとしてよい。治療計画は、放射線治療が粒子線治療システムによってどのように行われるべきかに関する情報を含み得る。例えば、治療計画では、特定の照射ターゲットに対し走査がどのように実行されるべきかを指定し得る。幾つかの実施例では、治療計画では、ラスター走査が実行されるべきであることを指定する。ラスター走査は、照射ターゲット上の粒子ビームの途切れのない移動を引き起こすステップを含む。例えば、走査磁石は絶えず移動して、照射ターゲット上で粒子ビームを走査し(例えば移動させ)、照射ターゲットの層の少なくとも一部の上で粒子ビームの途切れのない移動を引き起こす。移動は、照射ターゲットの層全体にわたって、または層の一部のみにわたって途切れがないものとしてよい。幾つかの実施例において、ビームは、照射ターゲットの層のすべてまたは一部に沿って一定速度で移動し得る。幾つかの実施例において、ビームが照射ターゲットの層のすべてまたは一部に沿って移動する速度は可変であってよい。例えば、粒子ビームは、層の縁のところよりも層の内部でより素早く移動し得る。移動の速度は、治療計画において指定され得る。
【0093】
幾つかの実施例において、治療計画では、照射ターゲットの層上の様々な位置に印加されるべき放射線(粒子線)のターゲット累積線量も指定し得る。線量は、粒子線の1つ以上の線量の印加を通じて達成され得るという意味で累積的である。例えば、照射ターゲット上の同じ配置(例えばXYZ空間)は10回照射を受けるものとしてよく、ターゲット累積線量を達成するために、各回ではターゲット累積線量の10%にする。幾つかの実施例において、治療計画で、各配置に対する線量、配置、または配置が照射を受けるべき回数を指定する必要はない。すなわち、この情報は、幾つかの実施例における治療計画から省かれてもよい。むしろ、幾つかの実施例において、粒子ビームの強度は、照射の事例毎に放射線の特定の線量を供給するために予め設定されてよい。次いで、粒子ビームは、次の配置に移動するためにフィードバックを必要とすることなく、開ループ方式で照射ターゲットの層上で走査され得る。粒子ビームが走査されるときに、ビームの配置が決定され、その配置における対応する線量が決定される。この決定は、走査および送達とほぼ同時に(すなわち、技術の限界があっても可能な限り送達時点に近い時点で)行われてよい。現在の線量さらには現在の治療時にすでに送達されている線量を含む、その配置における累積線量は、治療計画からのターゲット累積線量と比較される。これら2つが一致しない場合、追加の線量が、その後の走査時にその配置に印加されてよい。走査毎に配置に対してどれだけの放射線が送達されるかを必ずしも正確に知られることはないので、配置が走査される回数は、予め設定されなくてよい。同様に、配置に対して走査毎に実際に送達される放射線の量は変動し得るので、走査毎の放射線の正確な量は、必ずしも予め設定されない。したがって、幾つかの実施例において、そのような情報は治療計画に含まれる必要はない。
【0094】
幾つかの実施例において、治療計画は、1つ以上のパターンを含んでいてもよく、その上で粒子ビームが層毎に走査され得る。治療計画は、特定のエネルギー準位/層を達成するためにエネルギーデグレーダのプレートの数も指定し得る。他の実施例は、上で指定されたものに加えた、またはその代わりの情報を含み得る。
【0095】
幾つかの実施例では、照射ターゲットの治療計画全体は、照射ターゲットの異なる断面(層)に対する異なる治療計画を含み得る。異なる断面に対する治療計画は、上で与えられているような、同じ情報または異なる情報を含み得る。
【0096】
走査システムは、粒子ビームの範囲を制限するように照射ターゲットに対して配置可能にし、それによって粒子ビームの範囲を制限する、
図1から
図7、
図30、および
図31(またはその変形形態)の適応開口を含む。例えば、適応開口は、エネルギーデグレーダのビーム下流側の、且つ粒子ビームが照射ターゲットの治療領域に当たる前の、ビーム経路内に配置され得る。適応開口は、粒子ビームがそこを通過し、次いで治療領域の幾つかの部分に当たり、その一方で粒子ビームが患者の他の部分に当たるのを防ぐことを可能にするように制御可能である。例えば、適応開口は、粒子ビームが健常組織に当たるのを防ぐか、または粒子ビームが照射ターゲットの他の部分に当たるのを防ぐ(例えば、ターゲットの幾つかの部分が他の部分よりも放射線を受けることなる)ように制御され得る。
図16は、患者771に対して本明細書において説明されている適応開口の実施例770の配置を示している。ビーム771aの方向も図示されている。
【0097】
上で指摘されているように、幾つかの実施例において、走査は、例えば粒子線治療システムを制御するコンピューティングデバイスなどの、1つ以上の処理デバイスを使用して実装され得る開ループ方式で実行される。この例では、開ループ走査は、粒子ビームを照射ターゲット上で移動させて実質的にターゲット全体を放射線で照射するステップを含む。幾つかの実施例において、移動は、加速器の動作、例えばRF周波数と同期しないが、むしろ加速器が動作しているときに加速器の動作と無関係に行われる。例えば、粒子ビームの移動は、途切れることがないものとしてよく、粒子加速器のRFサイクルに依存しないものとしてよい。途切れることのない移動は、照射ターゲットの層の全部または一部にわたって行われてよい。しかしながら、本明細書で説明されているように、線量測定は、粒子ビームのパルスの照射ターゲットへの送達と同期し得る。線量測定が粒子ビームのパルスの送達と同期している例では、線量測定はまた、加速器の動作(例えば、イオン源プラズマ柱から粒子ビームのパルスを引き出すために使用されるRF周波数)とも同期する。
【0098】
粒子ビーム(例えば、加速器からの個別のパルス)の個別の線量の放射線レベルが予め設定され得る。例えば、各個別の線量はグレイ単位で指定され得る。個別の線量は、照射ターゲット内の配置(例えば、XYZ座標)に印加されるべきターゲット累積線量の割合であるか、または対応するものとしてよい。幾つかの実施例において、個別の線量は、ターゲット累積線量の100%であってよく、その結果、配置毎の放射線(例えば、1つ以上の粒子パルス)の単一の線量を照射ターゲットに送達するために必要な走査は1回のみでよい。幾つかの実施例において、個別の線量は、ターゲット累積線量の100%未満であってよく、その結果、放射線の複数の線量を照射ターゲットに送達するために同じ配置の複数の走査が必要になる。個別の線量は、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはこれらの値の間の任意の割合などの、ターゲット累積線量の適切な割合であってよい。
【0099】
走査磁石電流は、照射ターゲットの深さ毎の層を走査するように、治療計画に従って制御され得る。層は、粒子ビームの経路内の範囲補償器から1つ以上のエネルギーデグレーダを適切に位置決めし、および/または可変エネルギー粒子加速器のエネルギー準位を設定することによって選択される。層が走査されるときに、電流センサは走査磁石に印加される電流をサンプリングする。磁石電流の量は、記録され、例えば、メモリに記憶され得る。複数の磁石または磁石コイルが使用される場合、磁石電流の量は、磁石またはコイルの識別とともに記憶され得る。それに加えて、電流は、照射ターゲット内の座標(例えば直交XYZ座標)に相関するものとしてよく、それらの座標は、対応する磁石電流に加えて、またはその代わりに記憶され得る。上で説明されているように、電流センサは、磁石電流をサンプリングし、サンプリング時間と照射線量(例えばパルス)が送達される時間とを相関させるものとしてよい。
【0100】
この点に関して、電離箱109は、その線量が送達されるときに照射ターゲットに送達される線量の強度を検出し得る。各線量の強度は、送達される各線量の配置とともに記録(例えば、メモリに記憶)される。指摘されているように、送達される各線量の配置は、座標、磁石電流によって、または他の何らかの適切な測定基準を使用することによって記憶され得る。上で述べたように、線量測定、すなわち線量検証は、線量の送達と、したがって加速器の出力(上で説明されているように、RF周波数に対応する)と同期させるものとしてよい。したがって、幾つかの実施例において、線量が送達される毎に、その線量の強度はほとんどすぐに決定され、線量が印加される配置はほとんどすぐに決定される。この情報は、1つ以上のテーブル(例えば、層毎に1つのテーブルもしくは層毎に複数のテーブル)または他の適切なコンピュータ記憶装置に記憶され得る。
【0101】
幾つかの実施例において、テーブルは、追加の線量が送達されるとともに更新され得る。例えば、テーブルは、各配置のところで送達される線量を連続的に記録し得る。したがって、ビーム線量が「X」グレイである場合、第1の走査通過で、テーブルは配置についてXグレイを記録し得る。第2の走査通過で、テーブルは2Xグレイを記録し、というように、ターゲット累積線量に達するまで、続けるものとしてよい。
【0102】
この点で、各配置について、加速器に関連付けられている処理デバイス(例えば、粒子線治療システムを制御するコンピュータシステム)は、上で説明されているようなテーブルからの累積線量をターゲット累積線量と比較し得る。累積線量がターゲット累積線量と一致する場合、その配置(または層)に対する治療は、完了しているとみなされる。累積線量がターゲット累積線量と一致しない場合、追加の治療が実行される。例えば、層または配置は、再びテーブルから取得される、同じ配置で走査される。空芯磁石の使用によって引き起こされる磁石電流とビーム移動との線形相関は、走査時にビームの複数の通過中と同じ配置で繰り返され、および比較的正確で繰り返される走査を円滑にし得る。本明細書で説明されている適応開口のリーフは、上で説明されているように、同じ領域の各走査の間でわずかに(例えば、数分の1ミリメートル、1ミリメートル、または数ミリメートルだけ)移動し得る。
【0103】
走査は、同じ配置で、各配置においてターゲット累積線量に達するまで適切な回数だけ繰り返され得る。この点で、層上の異なる配置に対するターゲット累積線量に応じて、層全体が再走査され得るか、または層の選択部分のみが再走査され得る。幾つかの実施例において、粒子ビームの強度は、走査と走査との間で変化しない。他の実施例では、粒子ビームの強度は、特にターゲット累積線量に達するようにするために累積線量に加える必要がある線量が少ない場合は、走査と走査との間で変化させることができる。線量の強度は、例えばイオン源の動作を変えること(例えば、プラズマイオン化を増大させること)、RF周波数の掃引を変えること、または他の適切な方法によって増減させることができる。
【0104】
指摘されているように、層全体または層の一部のみについて走査が繰り返され得る。幾つかの実施例において、層全体またはその一部は、別の層を治療する前に完全に治療されるものとしてよい。すなわち、走査は、別の層が治療される前に層上の各配置について総累積線量に達するまで繰り返され得る。幾つかの実施例において、各層は、順に部分的に治療され(例えば、一度だけ走査され)、次いで、順に再走査され得る。幾つかの実施例において、7つの指定された層が、他の層が治療される前に完全に治療されるものとしてよい。幾つかの実施例において、ターゲット全体が1回走査され、その後、適切な総累積線量が各配置に送達されるまでターゲット全体の連続的走査がなされるものとしてよい。
【0105】
層と層との間の移動の際に、ビームはオフにされてよい。例えば、層と層との間を移動する際に、イオン源はオフにされてよく、それによってビームの出力を中断させ得る。層と層との間を移動する際に、粒子加速器内のRF掃引はオフにされてよく、それによってビームの引き出し(およびしたがって出力)を中断させ得る。層と層との間の移動の際に、イオン源およびRF掃引を引き起こす回路は、両方とも幾つかの実施例において停止されてよい。幾つかの実施例において、層と層との間の移動の際にイオン源および/またはRF掃引をオフにするのではなく、ビームがキッカー磁石(図示略)または走査磁石を使用してビーム吸収材料へ偏向されてよい。
【0106】
照射ターゲットの異なる断面は、異なる治療計画に従って走査され得る。上で説明されているように、走査深さを制御するためにエネルギーデグレーダが使用される。幾つかの実施例では、粒子ビームは、エネルギーデグレーダの構成時に中断されるか、または向きを変えられ得る。他の実施例では、これは必ずしもその場合である必要はない。
【0107】
本明細書では、照射ターゲットの断面を治療する例が説明されている。これらは、粒子ビームの方向に対しておおよそ垂直な断面であり得る。しかしながら、本明細書で説明されている概念は、粒子ビームの方向に対して垂直である断面ではない照射ターゲットの他の部分を治療するステップにも等しく適用可能である。例えば、照射ターゲットは、球体、立方体、または他の形状の容積部にセグメント分割され、それらの容積部は本明細書で説明されている例示的なプロセス、システム、および/またはデバイスを使用して治療され得る。
【0108】
図17は、本明細書で説明されている走査プロセスの例示的な実施例を示すフローチャートである。
図17のプロセス200は、本明細書で説明されているハードウェアの文脈において説明されているけれども、プロセス200は、任意の適切なハードウェアを使用して実行されてよい。プロセス200で示されている動作は、適切な場合に、示されているのと同じ順序で、または異なる順序で実行されてよい。
【0109】
プロセス200により、治療計画は記憶される(201)。治療計画は、上で説明されているような治療計画であってよい。例えば、治療計画は、走査の種類(例えば、途切れのないラスター走査)および照射ターゲットの各層において各配置に送達されるべき放射線の総累積線量を指定するものとしてよい。治療計画は、例えば個別の配置における各走査について送達されるべき線量およびその強度、さらには各配置に送達されるべき線量の回数および配置の識別を省略してもよい。
【0110】
エネルギーデグレーダは、層を選択する(202)ように設定されてよく、電流は、磁石に印加され、層を走査するために、例えば治療計画において、述べられているパターンに従って粒子ビームを移動させる(203)ように制御され得る。電流制御は、荷電粒子の線量を送達するために照射ターゲットの少なくとも一部にわたってビームの途切れのない移動を引き起こし得る。照射ターゲットの層233上のビーム移動230のパターンの一例が、
図18に示されている。ビームが移動するとともに、ビームの各パルスは放射線の線量をターゲットに送達する。線量は加速器において、予めまたは走査時に設定され得る強度を有し、特定の位置に送達される。線量が送達されるべき正確な位置は、予め設定される必要はないが、むしろ、ビーム移動とパルス出力との組合せによって到達するものとしてよい。
【0111】
線量が送達される位置について、配置およびその配置に送達される線量を識別する情報が記憶される(204)(または他の何らかの形で記録される)。この情報は、典型的には線量が送達された後に記憶される。上で説明されているように、電離箱を使用して粒子ビームの強度(例えば線量)を決定し、走査磁石上の電流センサを使用して線量が送達される配置を決定することで、可能な限り線量の送達に近いような情報が決定され得る。上で説明されているように、幾つかの実施例において、送達と同期させて、照射ターゲットに送達される粒子ビームの線量を識別する情報が、線量が送達された座標または線量が送達された磁石電流のうちの少なくとも一方とともに記憶される。上でも説明されているように、この情報は、照射ターゲットの様々な層上の位置に印加される放射線の累積線量を記憶するために使用され得る、テーブルに記憶されてよい。
【0112】
上で説明されているように、層全体が走査され、それに対する情報が記録され得るか、または層の一部のみが走査され、それに対する情報が記録され得る。適応開口は、適応開口が走査動作中に粒子ビームの移動を辿ることを可能にするように走査システムの適切な配置上に取り付けられる。走査中の一時点において、各位置で送達される累積線量は、その位置に対するターゲット累積線量と比較される。例えばこれは、その位置を含む層の部分が走査された後、層全体が走査された後、一連の層が走査された後、または照射ターゲット内のすべての層が走査された後、に行われ得る。現在の累積線量が特定の位置でターゲット累積線量と一致しているかどうかが決定される(205)。現在の累積線量が特定の位置でターゲット累積線量と一致する場合、走査はそれらの位置について完了している(207)。現在の累積線量が特定の位置でターゲット累積線量と一致しない場合、走査システムは、それらの位置の対応するターゲット累積線量に対して記録されている(例えば現在の累積)線量における欠損を補償するように動作させる。例えば、現在の累積線量が特定の位置でターゲット累積線量と一致しない場合に、走査磁石内の電流は、ビームを移動させて(206)追加の線量を特定の位置に送達するように制御され得る。
【0113】
上で説明されているように、幾つかの実施例において、層の単一の走査(例えば、粒子の単一の送達)時に線量の100%が印加され得る。その場合、1つの層につき複数回の走査は必要でないことがある。他の実施例では、単一の走査で100%未満の線量が印加され得る。その場合、1つの層につき複数回の走査が必要になる。そのために、走査プロセスに従って、線量が印加される位置について、各位置における現在の累積線量が対応する位置におけるターゲット累積線量と一致しない場合、磁石電流は、ビームを移動させて追加の線量を、線量を必要とする位置に送達するように制御される。言い換えると、層は、層のすべての位置についてターゲット累積線量に達するまで適切な回数だけ再走査されてよい。幾つかの実施例において、1回の走査または複数回の走査で、実際の送達される線量は、ターゲット累積線量の100%を超えることがある。どのような線量を送達すべきかは、適切な医療専門家によって指示され得る。
【0114】
上で指摘されているように、層は、適切な時点において、例えば現在の走査で層の一部が完了した後、現在の走査で層全体が完了した後、1回の走査で一連の層が完了した後、または1回の走査ですべての層が完了した後、再走査されてよい。再走査時に、上記のプロセスは、照射ターゲット内の位置のすべて、または一部のサブセットについてターゲット累積線量に達するまで繰り返される。幾つかの実施例において、粒子ビームの強度は、例えば、最後の走査について調整される必要があり得る。例えば、強度がターゲット累積線量の25%に設定されているが、各走査で20%しか送達されない場合、第5の(および場合によっては第6の)線量が、ターゲット累積線量に達するために25%未満の強度を必要とする。
【0115】
本明細書で説明されているプロセスは単一の粒子加速器とともに使用され、本明細書で説明されているこれらの特徴の任意の2つまたはそれ以上は単一の粒子加速器とともに使用され得る。粒子加速器は、任意の種類の医療または非医療用途に使用され得る。使用することができる粒子線治療システムの一例が、以下に提示されている。とりわけ、本明細書で説明されている概念は、特には説明されていない他のシステムでも使用され得る。
【0116】
図19に表すように、荷電粒子線治療システム400の例示的な実施例は、ビーム発生粒子加速器402(例えば
図8および
図9の粒子加速器)を備えており、ビーム発生粒子加速器402の重量および大きさは、ビーム発生粒子加速器402の出力が加速器ハウジングから患者406に向かう直線方向に(すなわち、実質的に直接)方向づけられている状態において、回転式ガントリー404に取り付け可能とされる大きさである。粒子加速器402は、本明細書で説明されている種類の走査システム(例えば
図10から
図18)も備える。
【0117】
幾つかの実施例では、鋼製ガントリーは2つの脚部408、410を有しており、2つの脚部408、410は、患者の両側に配設された2つの軸受412、414それぞれに回転するように取り付けられている。加速器は、患者が横たわる治療領域418を跨設するに十分に長い(患者の所望のターゲット領域をビームライン上に維持した状態で空間内において背の高いヒトを完全に回転させることができるように、例えば当該ヒトの身長の2倍の長さとされる)鉄骨トラス416によって支持されており、その両端においてガントリーの回転式脚部に安定に取り付けられている。
【0118】
幾つかの実施例では、ガントリー404の回転が360°未満の範囲420、例えば約180°に制限され、これにより治療システムを収納するボールト424の壁から患者治療領域内部に至るまで床422を延在させることができる。また、ガントリー404の回転範囲420が制限されることによって、患者治療領域の外側に居る人々を放射線から遮蔽するための壁のうちの幾つかの壁(ビームと直接的には整列されない、例えば、壁430)の必要な厚さを薄くすることができる。ガントリー404の回転範囲420を180°とすれば、すべての治療アプローチ角に対応するのに十分であるが、移動範囲を拡大することは優位である。例えば回転範囲420は、180°〜330°としても、依然として治療のための床面積に対するクリアランスを確保することができる。他の実施例では、回転は、上で説明されているように制限されない。
【0119】
ガントリー404の水平回転軸線432は、患者と療法士とが治療システムをインタラクティブに操作する場所の床より公称1メートル上方に配置されている。この床は、荷電粒子線治療システム400の遮蔽ボールト424の最下床より約3メートル上方に位置決めされている。ビーム発生粒子加速器402は、治療ビームを回転軸線の下方から照射するために高床の下方において旋回可能とされる。患者用カウチは、ガントリー404の回転軸線432に対して略平行とされる水平面内において移動および回転する。カウチは、このような構成によって水平面内において約270°の範囲434にわたって回転可能とされる。ガントリー404および患者の回転範囲420、434と自由度との組合せによって、療法士は、ビームについての任意のアプローチ角を実質的に選択することができる。必要に応じて、患者を反対の向きでカウチに載置することによって、想定し得るすべての角度が利用可能となる。
【0120】
幾つかの実施例では、ビーム発生粒子加速器402は、高磁界超電導電磁構造体を有するシンクロサイクロトロンを利用する。所定の運動エネルギーを具備する荷電粒子の曲率半径は、当該荷電粒子に印加される磁場の増大に正比例して小さくなるので、高磁界磁場超電導磁気構造体を利用することによって、加速器を小型かつ軽量にすることができる。シンクロサイクロトロンは、回転角度が一様とされる磁場であって、半径が大きくなるに従って強度が低下する磁場を利用する。このような磁場形状は、磁場の規模に関係なく実現されるので、シンクロサイクロトロン内で利用可能とされる磁場の強度(ひいては、固定された半径において結果として得られる粒子エネルギー)についての上限は理論上存在しない。
【0121】
シンクロサイクロトロンは、ビームが患者に対して直接生成されるようにガントリーに支持されている。ガントリーは、患者の体内の点または患者の近傍の点(アイソセンター440)を含む水平回転軸線を中心として、シンクロサイクロトロンを回転させることができる。水平回転軸線に対して平行とされる分割式トラスが、シンクロサイクロトロンをその両側で支持している。
【0122】
幾つかの例示的な実施例では、ガントリーの回転範囲は制限されているので、患者支持領域は等角点の周りの広い領域内に収容され得る。アイソセンターを中心として広範囲にわたって床を延在させることができるので、患者支持台は、アイソセンターを通過する垂直軸線442に対して相対的に移動するように、かつ垂直軸線442を中心として回転するように位置決めされ、ガントリーの回転と患者支持台の移動および回転との組合せによって、患者の任意の部位に向けて任意の角度でビームを方向づけることができる。幾つかの実施例では、2つのガントリーアームは、背の高い患者の身長の2倍を超える長さで離隔されているので、高床の上方に位置する水平面内において、患者を乗せたカウチを回転および並進運動させることができる。
【0123】
ガントリーの回転角度を制限することによって、治療室を囲む壁のうちの少なくとも1つの壁の厚さを低減することができる。一般にコンクリートから構成された厚肉の壁によって、治療室の外に居るヒトは放射線から防護される。陽子ビームを阻止するための下流側の壁は、同等のレベルの防護を実現するために、治療室の反対側の壁の約2倍の厚さとされる場合がある。ガントリーの回転を制限することによって、治療室を3つの側面においてアースグレード(earth grade)より低く設定することができる一方、占有領域を最も薄肉の壁に隣接させることができるので、治療室を建築するコストを低減することができる。
【0124】
図19に示されている例示的な実施例では、超電導シンクロサイクロトロン402は、シンクロサイクロトロンの磁極間隙において8.8テスラのピーク磁場で動作する。シンクロサイクロトロンは、250MeVのエネルギーを有する陽子ビームを発生する。幾つかの実施例では、シンクロサイクロトロンは可変エネルギー機械であり、異なるエネルギーを有する陽子ビームを出力することができる。幾つかの実施例では、シンクロサイクロトロンは、固定されたエネルギーを有するビームを発生することができる。幾つかの実施例では、場の強度は4Tから20Tの範囲内とすることが可能であり、陽子エネルギーは、100から300MeVの範囲内とすることが可能である。
【0125】
この例で説明されている放射線治療システムは陽子放射線治療に使用されるが、同じ原理および詳細は、重イオン(イオン)治療システムで使用するための類似のシステムにおいて適用され得る。
【0126】
図8、
図9、
図20、
図21、および
図22に示されているように、例示的なシンクロサイクロトロン10(例えば
図19の402)は、粒子源190を収容する磁石システム122、高周波駆動システム191、およびビーム引き出しシステムを含む。この例では、磁石システムによって確立される磁場は、環状超電導コイル140、142の分割されたペアと成形された強磁性(例えば、低炭素鋼)磁極面144、146のペアとの組合せを使用して、内部に存在する陽子ビームの集束を維持するのに適切な形状を有する。
【0127】
2つの超電導磁気コイルは、共通軸を中心とし、この軸に沿って相隔てて並ぶ。コイルは、撚り合わせたケーブルインチャネル導体形態で配設される直径0.8mmのNb
3Sn系超電導線(最初に、銅シースによって囲まれているニオブスズコアを備える)から形成され得る。7本の個別の線がまとめられてケーブルにされた後、これらは加熱され、ワイヤ状の最終(脆い)超電導体を形成する反応を引き起こす。材料が反応した後、ワイヤは銅チャネル(外径3.18×2.54mmおよび内径2.08×2.08mm)内にハンダ付けされ、絶縁体(この例では、ガラス繊維織布)で覆われる。次いで、ワイヤを収容する銅チャネルコイル状に巻き取られ、これは矩形の断面を有する。次いで、この巻きコイルは、エポキシ化合物で真空含浸される。完成したコイルは、環状ステンレスリバースボビン上に取り付けられる。ヒーターブランケットは間隔をあけて巻線の層内に入れられ、磁石クエンチが生じた場合にアセンブリを保護し得る。
【0128】
次いで、コイル全体を銅板で覆って、熱伝導性および機械的安定性を付与し、次いで、追加エポキシ層内に収容する。コイルの事前圧縮は、ステンレス製リバースボビンを加熱し、コイルをリバースボビン内に嵌め込むことによって行われ得る。リバースボビンの内径は、質量全体が4Kまで冷却されたときに、リバースボビンがコイルと接触したままになり、ある程度の圧縮をもたらすように選択される。ステンレス製のリバースボビンを約50℃に加熱し、コイルを100度のケルビン温度でコイルを嵌合すると、これが達成され得る。
【0129】
コイルの幾何学的形状は、コイルを矩形「リバース」ボビン内に取り付けて、コイルが通電されたときに発生する歪みを起こす力に抗して作用する復元力を与えることによって維持される。
図21に示されているように、幾つかの実施例では、コイル位置は、一組の高温-低温支持ストラップ402、404、406を使用して対応する磁極片および低温保持装置に対して維持される。低温質量を細いストラップで支持することにより、剛体支持システムによって低温質量に与えられる熱漏洩が低減される。ストラップは、磁石が搭載された状態でガントリーを回転するときに、コイルにかかる変化する重力に耐えるように構成される。これらは、重力と、磁気ヨークに対して完全対称位置から摂動したときにコイルによって生じる大きな偏心力と、の複合効果に耐える。それに加えて、リンクは、位置が変わった場合にガントリーが加減速する際にコイルに与えられる動的な力を低減する働きをする。それぞれの高温-低温支持体は、1つのS2ガラス繊維リンクと1つの炭素繊維リンクとを含み得る。炭素繊維リンクは、高温のヨークと中間温度(50〜70K)との間のピン上で支持され、S2ガラス繊維リンク408は、中間温度ピンおよび低温質量に取り付けられたピン上で支持される。それぞれのピンは、高張力ステンレス鋼から作ることができる。
【0130】
図8を参照すると、半径の関数としての場の強度プロファイルは、大部分がコイルの幾何学的形状および磁極面の形状の選択によって決定される。透磁性ヨーク材料の磁極面144、146は、磁場の形状を微調整して加速時に粒子ビームの収束を確実に保つように、起伏が付けられ得る。
【0131】
超電導コイルは、限定された一組の支持点171、173を除き、コイル構造体の周りに自由空間を設ける真空にされた環状アルミニウムまたはステンレス製低温保持槽170(低温保持装置)の内側に、コイルアセンブリ(コイルおよびボビン)を封じ込めることによって絶対零度近くの温度(例えば約4ケルビン)に維持される。代替的バージョン(例えば
図9)において、低温保持装置の外壁は低炭素鋼で作られ、磁場に対する追加の帰還磁路をもたらすことができる。
【0132】
幾つかの実施例では、絶対零度近くの温度は、1つの単段ギフォードマクマホン冷凍機と3つの2段ギフォードマクマホン冷凍機とを使用して達成され、維持される。それぞれの2段冷凍機は、ヘリウム蒸気を液体ヘリウムに再凝縮する凝縮器に取り付けられた第2段低温端部を有する。幾つかの実施例では、液体ヘリウムを収容する冷却チャネル(図示略)を使用して絶対零度に近い温度が達成され、維持されるが、この冷却チャネルは超電導コイル支持構造体(例えばリバースボビン)の内側に形成され、チャネル内の液体ヘリウムと対応する超電導コイルとの間の熱的接続部を含む。
【0133】
幾つかの実施例では、コイルアセンブリおよび低温保持槽は、ピルボックス形状の磁石ヨーク100の2つの半分181、183内に取り付けられ、完全に封じ込められる。ヨーク100は、帰還磁束184のための経路となり、磁極面144、146の間の容積部186を磁気遮蔽して外部からの磁気的影響がその容積部内の磁場の形状を摂動することを防ぐ。ヨークは、加速器の付近の漂遊磁場を減少させる働きもする。他の実施例では、コイルアセンブリおよび低温保持槽は、非磁気エンクロージャ内に取り付けられ、それによって完全に封じ込められ、帰還磁束は能動的帰還システムを使用して実装され、その一例は上で説明されている。
【0134】
図8および
図23に示されているように、シンクロサイクロトロンは、磁気構造体の幾何学的中心192の近くに配置されているペニングイオンゲージ形態の粒子源190を含む。粒子源は、以下に説明されている通りであってよい。
【0135】
粒子源190は、水素の供給部399からガス管路393および気体水素を送達する管394を通して供給される。電気ケーブル294は電流源から電流を運び、磁場の方向に揃えられた陰極392、390からの電子の放出を刺激する。
【0136】
この例では、放出される電子は、管394から小さな穴を通して出て来るガスを電離し、磁石構造体と1つのダミーディープレートとによって囲まれた空間の半分にかかる1つの半円形(ディー(D)形状)高周波プレートによって加速する陽イオン(陽子)の供給部を形成する。遮断された粒子源の場合、プラズマを収容する管の全部(または実質的な部分、例えば大半)が加速領域で取り除かれる。
【0137】
図24に示されているように、ディープレート500は、磁石構造体によって囲まれた空間の周りの回転の半分において、陽子が加速される空間507を囲んだ2つの半円形表面503、505を有する中空金属構造体である。空間507内に開いているダクト509は、エンクロージャ(例えば、ヨークまたは磁極片)を通り、真空ポンプが取り付けられ得る外部の場所に延在し、これにより空間507、および加速が行われる真空槽内の空間の残り部分、を真空にする。ダミーディー502は、ディープレートの露出されている縁の近くに間隔をあけて並ぶ矩形の金属リングを備える。ダミーディーは、真空槽および磁気ヨークに接地される。ディープレート500は、高周波伝送路の終端部に印加される高周波信号によって駆動され、電場を空間507内に発生させる。高周波電場は、加速された粒子ビームが幾何学的中心からの距離を増やすにつれ時間に対して変化させられる。
【0138】
ビームが中央に配置された粒子源から現れて粒子源構造体をクリアし、外向きに螺旋を描き始めると、高い電圧差が高周波プレート上に印加され得る。高周波プレートに20,000Vが印加される。幾つかのバージョンでは、8,000から20,000ボルトが高周波プレートに印加され得る。この高い電圧を駆動するために必要な電力を低減するために、磁石構造体は、高周波プレートと接地との間の静電容量を減らすように構成される。これは、高周波構造から外側ヨークおよび低温保持装置ハウジングまで十分な間隔をあけて穴を形成し、磁極面の間に十分な空間を確保することによって行われ得る。
【0139】
ディープレートを駆動するこの高電圧の交流電位は加速サイクルにおいて、陽子の増大する相対論的質量と減少する磁場とを考慮して、周波数が低くなるように掃引される。ダミーディーは、真空槽壁と共に接地電位にあるので中空半円筒形構造体を必要としない。基本周波数の異なる位相または倍数の周波数で駆動される加速電極の複数のペアなどの、他のプレート構成も使用することが可能である。RF構造は、例えば、互いにかみ合う回転および静止ブレードを有する回転コンデンサを使用することによって、必要な周波数掃引においてQを高く保つように調整することができる。ブレードのかみ合い毎に、静電容量が増加し、したがって、RF構造の共振周波数が下がる。ブレードは、必要な正確な周波数掃引がもたらされる形状に成形され得る。回転コンデンサ用の駆動モータは、正確な制御を行うためにRF発生器に位相固定され得る。一群の粒子が、回転コンデンサのブレードのかみ合い毎に加速され得る。
【0140】
加速が行われる真空槽は、中央が薄く、縁が厚い、一般的に円筒形の容器である。真空槽は、RFプレートおよび粒子源を封じ込め、真空ポンプによって真空にされる。高真空を維持することで、加速するイオンが気体分子との衝突で失われる確率が低減され、アーク地絡を生じることなくRF電圧をより高いレベルに保つことが可能になる。
【0141】
陽子(または他のイオン)は、粒子源から始まる一般的に螺旋状の軌道経路を横断する。螺旋経路のそれぞれのループの半分において、陽子は、RF電場を通過するときにエネルギーを獲得する。陽子がエネルギーを獲得すると、螺旋経路のそれぞれの連続するループの中心軌道の半径は、ループ半径が磁極面の最大半径に達するまで、前のループより大きくなる。その位置で、磁場および電場摂動は陽子を磁場が急速に減少する領域内に導き、陽子は高い磁場の領域から出て、本明細書では引き出しチャネルと称される真空管に通され、シンクロサイクロトロンから出る。磁場摂動を変えて陽子の向きを決めるために磁気再生器が使用され得る。出て来る陽子は、シンクロサイクロトロンの周りの部屋内に存在する、著しく減少する磁場の領域に入ると分散する傾向を有する。引き出しチャネル138(
図21)内のビーム成形要素507、509は、陽子が空間的広がりを制限された真っ直ぐなビーム状態を保つように陽子の向きを変える。
【0142】
ビームが引き出しチャネルから出るときに、ビームは本明細書で説明されている種類の走査システムを備え得る、ビーム形成システム525(
図21)を通過する。ビーム形成システム525は、ビームの印加を制御する内側ガントリーと共に使用され得る。
【0143】
シンクロサイクロトロンから出る漂遊磁場は、磁石ヨーク(シールドとしても働く)と別の磁気シールド514(例えば
図8)の両方によって制限され得る。別の磁気シールドは、空間516によって隔てられる、ピルボックスヨークを囲んだ強磁性体(例えば鋼または鉄)の層517を含む。ヨーク、空間、およびシールドのサンドイッチを含むこの構成は、より低い重量で所定の漏れ磁場に対する適切な遮蔽を形成する。上で説明されているように、幾つかの実施例では、能動的帰還システムが、磁気ヨークおよびシールドの動作の代わりに、または増強するために使用され得る。
【0144】
図19に表すように、ガントリーは、水平回転軸線432を中心としてシンクロサイクロトロンを回転させる。トラス構造体416は、2つの略平行なスパン480、482を有する。シンクロサイクロトロンは、脚部と脚部との間における略中央に且つスパン580、582の間に配設されている。ガントリーは、トラスの反対側に位置する脚部の端部に取り付けられた釣合いおもり622、624を利用することによって軸受を中心として回転するようにバランスされている。
【0145】
ガントリー404は電気モータによって回転駆動され、電気モータはガントリー404の少なくとも1つの脚部に取り付けられており、駆動歯車を介して軸受ハウジングに接続されている。ガントリー404の回転位置は、ガントリー404の駆動モータおよび駆動歯車に組み込まれた軸角エンコーダによって付与される信号から導き出される。
【0146】
イオンビームがシンクロサイクロトロンから出る位置において、ビーム形成システム525はイオンビームに作用し、患者治療に適した特性をそれに与える。例えば、ビームを拡散させ、ビームの貫入深さを変化させることによって、所定の目標体積に対して均一に放射することができる。ビーム形成システムは、本明細書で説明されているような能動的走査要素を備え得る。
【0147】
シンクロサイクロトロンの能動的システムのすべて(例えば電流駆動超電導コイル、RF駆動プレート、真空加速室および超電導コイル冷却室用の真空ポンプ、電流駆動粒子源、水素ガス源、ならびにRFプレート冷却装置)は、例えば非一時的メモリからの命令を実行して制御を行う1つ以上の処理デバイスを含み得る、適切なシンクロサイクロトロン制御電子機器(図示略)によって制御され得る。
【0148】
上で説明されているように、
図25のシステム602に表すように、ビーム発生粒子加速器が、この場合シンクロサイクロトロン604(本明細書で説明されている任意のおよびすべての特徴を含み得る)が回転式ガントリー605に取り付けられ得る。回転式ガントリー605は、本明細書で説明されている種類のものであり、患者支持体606の周りで角度的に回転することができる。この特徴は、シンクロサイクロトロン604が様々な角度から粒子ビームを患者に本質的に直接照射することを可能にする。例えば、
図25に表すように、シンクロサイクロトロン604が患者支持体606の上方に位置している場合には、粒子ビームは患者に向かって下方に方向づけられている。代替的には、シンクロサイクロトロン604が患者支持体606の下方に位置している場合には、粒子ビームは患者に向かって上方に方向づけられている。中間ビーム経路指定機構が必要ないという意味では、粒子ビームは患者に本質的に直接印加される。本発明では、成形またはサイズ決定機構がビームの経路変更をするのではなく、同一且つ一般的なビーム軌道を維持しつつビームのサイズおよび/または形状を決定するという点において、中間ビーム経路指定機構は成形またはサイズ決定機構と相違する。
【0149】
本明細書で説明されている例示的な粒子線治療システムおよび例示的な走査システムにおいて使用される粒子加速器は、可変エネルギー粒子加速器であるものとしてよく、その一例は以下で説明される。
【0150】
引き出される粒子ビーム(加速器から出力される粒子ビーム)のエネルギーは、治療時の粒子ビームの使用に影響を及ぼし得る。幾つかの機械では、粒子ビーム(または粒子ビーム中の粒子)のエネルギーは、引き出し後に増加しない。しかし、エネルギーは、引き出し後と治療前に治療の必要性に基づき低減され得る。
図26に表すように、例示的な治療システム910は、加速器912、例えばシンクロサイクロトロンを備え、そこから可変エネルギーを有する粒子(例えば陽子)ビーム914が引き出され、身体922のターゲット容積部924に照射される。適宜、走査ユニット916もしくは散乱ユニット916、1つ以上の監視ユニット918、およびエネルギーデグレーダ920などの、1つ以上の追加のデバイスが、照射方向928に沿って置かれる。これらのデバイスは、引き出されたビーム914の断面を遮断し、治療用の引き出されたビーム1つ以上の特性を変える。
【0151】
治療のため粒子ビームを照射されるターゲット容積部(照射ターゲット)は、典型的には3次元構成を有する。幾つかの例では、治療を実施するために、ターゲット容積部は、照射が層毎に行われるように粒子ビームの照射方向に沿って幾つかの層に分割される。陽子などの幾つかの種類の粒子について、ターゲット容積部内の貫入深さ(またはビームが到達する層)は、もっぱら粒子ビームのエネルギーによって決定される。所定のエネルギーの粒子ビームは、そのエネルギーに対する対応する貫入深さを実質的に超えて到達することはない。ターゲット容積部の一方の層から他方の層にビーム照射を移動するために、粒子ビームのエネルギーが変えられる。
【0152】
図26に示されている例において、ターゲット容積部924は、照射方向928に沿って9つの層926a〜926iに分割される。例示的なプロセスにおいて、照射は最も深い層926iから始まり、1回に層1つずつ徐々により浅い層に進み、最も浅い層926aで終わる。身体922に印加する前に、粒子ビーム914のエネルギーは、実質的に身体またはターゲット容積部、例えば層926e〜926iの中にさらに、または身体のさらに奥深くまで貫入することなく、粒子ビームが所望の層、例えば層926dで停止できるレベルに制御される。幾つかの例では、粒子ビーム914の所望のエネルギーは、治療層が粒子加速に対して浅くなって行くにつれ減少する。幾つかの例では、ターゲット容積部924の隣接する層を治療するためのビームエネルギーの差は、約3MeVから約100MeV、例えば約10MeVから約80MeVであるが、他の差も、例えば層の厚さおよびビームの特性に応じて可能である。
【0153】
ターゲット容積部924の異なる層を治療するためのエネルギー変化は、幾つかの実施例では、加速器912から粒子ビームが引き出された後に追加のエネルギー変化が不要になるように、加速器912において実行され得る(例えば、加速器側でエネルギーを変化させることができる)。したがって、治療システム10内のオプションのエネルギーデグレーダ920は、システムから排除され得る。幾つかの実施例では、加速器912は、約100MeVから約300MeVまでの間、例えば約115MeVから約250MeVまでの間で変化するエネルギーを有する粒子ビームを出力することができる。変化は、連続的または非連続的、例えば、1回1ステップずつであってよい。幾つかの実施例では、連続的なまたは非連続的な変化は、比較的高い率、例えば毎秒約50MeVまでまたは毎秒約20MeVまでの率で生じ得る。非連続的変化は、約10MeVから約90MeVのステップサイズで1回に1ステップずつ実行され得る。
【0154】
1つの層で照射が完了すると、加速器912は、次の層を照射するために、例えば数秒以内、または1秒未満の間に、粒子ビームのエネルギーを変化させることができる。幾つかの実施例では、ターゲット容積部924の治療は、実質的な中断なしで、またはいかなる中断も伴わずに、継続することができる。幾つかの状況において、非連続的エネルギー変化のステップサイズは、ターゲット容積部924の2つの隣接する層を照射するために必要とされるエネルギーの差に対応するように選択される。例えば、ステップサイズはエネルギーの差と同じであるか、または何分の1かであってよい。
【0155】
幾つかの実施例では、加速器912およびデグレーダ920は、一体となってビーム914のエネルギーを変化させる。例えば、加速器912で粗調整を行い、デグレーダ920で微調整を行う、またはその逆を行う。この例では、加速器912は、約10〜80MeVの変化ステップでエネルギーを変化させる粒子ビームを出力することができ、デグレーダ920は、約2〜10MeVの変化ステップでビームのエネルギーを調整する(例えば、低減する)。
【0156】
飛程変調装置などの、エネルギーデグレーダの使用を減らす(か、または使用しない)ことで、加速器からの出力ビームの特性および品質、例えばビーム強度を維持しやすくできる。粒子ビームの制御は、加速器で実行され得る。副作用、例えば粒子ビームがデグレーダ920を通るときに発生する中性子からの副作用が低減されるか、または排除され得る。
【0157】
粒子ビーム914のエネルギーは、ターゲット容積部924における治療の完了後に、別の身体または身体部分922'内の別のターゲット容積部930を治療するように調整され得る。ターゲット容積部924、930は、同じ身体(もしくは患者)内にあるか、または異なる患者にあってもよい。身体922'の表面からのターゲット容積部930の深さDは、パレット容積部924の深さと異なることがあり得る。デグレーダ920によって何らかのエネルギー調整が実行され得るが、デグレーダ912は、ビームエネルギーを低減するだけであって、ビームエネルギーを増大させることはあり得ない。
【0158】
この点で、幾つかの場合において、ターゲット容積部930を治療するのに必要なビームエネルギーは、ターゲット容積部924を治療するのに必要なビームエネルギーより大きい。このような場合に、加速器912は、ターゲット容積部924を治療した後、ターゲット容積部930を治療する前に、出力ビームエネルギーを増大させることができる。他の場合には、ターゲット容積部930を治療するのに必要なビームエネルギーは、ターゲット容積部924を治療するのに必要なビームエネルギーより小さい。デグレーダ920は、エネルギーを低減し得るけれども、加速器912はデグレーダ920の使用を減らすか、または排除するためにより低いビームエネルギーを出力するように調整することができる。ターゲット容積部924、930の幾つかの層への分割は異なることも、同じであることもあり得る。ターゲット容積部930は、ターゲット容積部924の治療と層毎に類似の仕方で治療され得る。
【0159】
同じ患者の異なるターゲット容積部924、930の治療は、実質的に連続的である、例えば、停止時間を2つの容積部が約30分以内より長くない、例えば25分以内、20分以内、15分以内、10分以内、5分以内、または1分以内となるものとしてよい。本明細書で説明されているように、加速器912は移動可能なガントリー上に取り付けることができ、ガントリーの移動で、加速器を異なるターゲット容積部を目指して移動させることができる。幾つかの状況において、加速器912は、治療システムがターゲット容積部924の治療を完了した後に、およびターゲット容積部930の治療を開始する前に、(ガントリーを移動するなどの)調整を行っているときに出力ビーム914のエネルギー調整を完了することができる。加速器とターゲット容積部930との整列の後、治療は調整された所望のビームエネルギーで開始することができる。異なる患者に対するビームエネルギー調整は、比較的効率よく完了させることもできる。幾つかの例において、ビームエネルギーを増大/低減するステップおよび/またはガントリーを移動するステップを含む、すべての調整は約30分以内、例えば約25分以内、約20分以内、約15分以内、約10分以内、または約5分以内に行われる。
【0160】
容積部の同じ層において、走査ユニット916を使用して、ビームを層の2次元表面の端から端まで移動する(走査ビームとも称される)ことによって照射線量が印加され得る。または、層は、散乱ユニット16の1つ以上の散乱体に引き出されたビーム(散乱ビームとも称される)を通すことによって照射を受けるものとしてよい。
【0161】
エネルギーおよび強度などのビーム特性は、治療前に選択され得るか、または治療中に、加速器912および/または、走査ユニット/散乱体916、デグレーダ920、ならびに図示されていない他のものなどの、他のデバイスを制御することによって調整され得る。例示的な実施例では、システム910は、システム内の1つ以上のデバイスと通信する、コンピュータなどの制御装置932を備える。制御は、1つ以上のモニター918によって実行される監視、例えばビーム強度、線量、ターゲット容積部内のビーム配置、などの監視の結果に基づくものとしてよい。モニター918は、デバイス916とデグレーダ920との間にあるものとして図示されているが、1つ以上のモニターをビーム照射経路に沿った他の適切な配置に置くことができる。制御装置932は、(同じ患者および/または異なる患者の)1つ以上のターゲット容積部に対する治療計画を格納することもできる。治療計画は治療が開始する前に決定され、ターゲット容積部の形状、照射層の数、それぞれの層に対する照射線量、それぞれの層が照射を受ける回数、などのパラメータを含むことができる。システム910内のビーム特性の調整は、治療計画に基づき実行され得る。追加の調整は治療時、例えば治療計画からの逸脱が検出されたときに実行され得る。
【0162】
幾つかの実施例では、加速器912は、粒子ビームが加速される磁場を変化させることによって出力粒子ビームのエネルギーを変化させるように構成される。例示的な一実施例では、1つ以上のコイルセットが変動電流を受けて、空洞内に変動磁場を発生する。幾つかの例では、1つのコイルセットが固定電流を受けるが、1つ以上の他のコイルセットはコイルセットが受ける全電流が変化するように変動電流を受ける。幾つかの実施例では、すべてのコイルセットが超電導である。他の実施例では、固定電流に対するセットなどの幾つかのコイルセットは超電導であるが、変動電流に対する1つ以上のセットなどの他のコイルセットは、非超電導である。幾つかの例では、すべてのコイルセットが非超電導である。
【0163】
一般的に、磁場の大きさは、電流の大きさと共に一定の比率で増減し得る。コイルの全電流を所定の範囲内に調整することで、対応する所定の範囲内で変化する磁場を発生させることができる。幾つかの例では、電流の連続的調整により、磁場の連続的変動および出力ビームエネルギーの連続的変動を引き起こすことができる。または、コイルに印加される電流が非連続的な段階的様式で調整される場合、磁場および出力ビームエネルギーも、それに応じて非連続的な(段階的)様式で変化する。磁場を電流に応じて一定の比率で増減させることにより、ビームエネルギーを比較的正確に変化させることができるが、ときには入力電流以外の微調整を実施することができる。
【0164】
幾つかの実施例では、可変エネルギーを有する粒子ビームを出力するために、加速器912は、それぞれの範囲が異なる出力ビームエネルギーに対応する、異なる周波数範囲にわたって掃引するRF電圧を印加するように構成される。例えば、加速器912が3つの異なる出力ビームエネルギーを発生するように構成されている場合、RF電圧は3つの異なる周波数範囲にわたって掃引することができる。別の例では、連続的ビームエネルギー変化に対応することで、RF電圧は、連続的に変化する周波数範囲にわたって掃引する。異なる周波数範囲は、異なる下限周波数境界および/または上限周波数境界を有することができる。
【0165】
引き出しチャネルは、可変エネルギー粒子加速器によってもたらされる異なるエネルギーの範囲に適応するように構成され得る。例えば、引き出しチャネルは、粒子加速器によって生成される最高および最低のエネルギーを支える十分に大きいものとしてよい。すなわち、引き出しチャネルは、エネルギーのその範囲内で粒子を受け、透過するようなサイズであり得るか、またはそのように他の何らかの形で構成され得る。異なるエネルギーを有する粒子ビームは、単一のエネルギーを有する粒子ビームを引き出すために使用される再生器の特徴を変えることなく、加速器912から引き出され得る。他の実施例では、可変粒子エネルギーに適応するために、再生器を移動して上で説明されている様式で異なる粒子軌道を乱し(例えば変化させて)、および/または鉄製ロッド(磁気シム)を加えるか、または取り外して再生器によってもたらされる磁場バンプを変化させることができる。より具体的には、異なる粒子エネルギーは、典型的には空洞内で異なる粒子軌道にある。再生器を移動することによって、粒子軌道を指定されたエネルギーのところでインターセプトし、それによって指定されたエネルギーにおける粒子が引き出しチャネルに到達するように、その軌道の正しい摂動をもたらすことが可能である。幾つかの実施例では、再生器の移動(および/または磁気シムの追加/取り外し)は、加速器によって出力される粒子ビームエネルギーのリアルタイムの変化とリアルタイムで一致するように実行される。他の実施例では、粒子エネルギーは治療毎に調整され、再生器の移動(および/または磁気シムの追加/取り外し)は治療の前に実行される。いずれの場合も、再生器の移動(および/または磁気シムの追加/取り外し)はコンピュータ制御され得る。例えば、コンピュータは、再生器および/または磁気シムの移動を引き起こす1つ以上のモータを制御することができる。
【0166】
幾つかの実施例では、再生器は、適切な配置に移動するように制御可能である1つ以上の磁気シムを使用して実装される。
【0167】
例えば、表1は、例示的な加速装置912が粒子ビームを出力することができる3つの例示的なエネルギー準位を示している。3つのエネルギー準位を生成するための対応するパラメータも一覧に挙げてある。この点で、磁石電流は、加速器912内の1つ以上のコイルセットに印加される全電流を指しており、最高および最低周波数は、RF電圧が掃引する範囲を定義し、「r」は、場所から粒子が加速される空洞の中心までの径方向距離である。
【0169】
可変エネルギーを有する荷電粒子を生成する例示的な粒子加速器に含まれ得る細部について以下で説明する。加速器はシンクロサイクロトロンであり、粒子は陽子であるものとしてよい。粒子は、パルスビームとして出力され得る。粒子加速器から出力されるビームのエネルギーは、患者体内の一方のターゲット容積部を治療している間、または同じ患者もしくは異なる患者の異なるターゲット容積部の治療から次の治療までの間に、変化させることができる。幾つかの実施例では、加速器のセッティングは、加速器からビーム(または粒子)が出力されないときにビームエネルギーを変化させるように変更される。エネルギー変化は、所望の範囲にわたって連続的または非連続的であってよい。
【0170】
図8に示されている例に表すように、上で説明されている粒子加速器912のような可変エネルギー粒子加速器であってよい、粒子加速器は、可変エネルギーを有する粒子ビームを出力するように構成され得る。可変エネルギーの範囲は、約200MeVから約300MeV以上、例えば200MeV、約205MeV、約210MeV、約215MeV、約220MeV、約225MeV、約230MeV、約235MeV、約240MeV、約245MeV、約250MeV、約255MeV、約260MeV、約265MeV、約270MeV、約275MeV、約280MeV、約285MeV、約290MeV、約295MeV、または約300MeV以上である上限境界を有することができる。この範囲は、約100MeV以下から約200MeVまで、例えば約100MeV以下、約105MeV、約110MeV、約115MeV、約120MeV、約125MeV、約130MeV、約135MeV、約140MeV、約145MeV、約150MeV、約155MeV、約160MeV、約165MeV、約170MeV、約175MeV、約180MeV、約185MeV、約190MeV、約195MeV、約200MeVである下限境界も有することができる。
【0171】
幾つかの例では、この変化は非連続的であり、変化ステップは、約10MeV以下、約15MeV、約20MeV、約25MeV、約30MeV、約35MeV、約40MeV、約45MeV、約50MeV、約55MeV、約60MeV、約65MeV、約70MeV、約75MeV、または約80MeV以上のサイズを有することができる。エネルギーを1ステップサイズだけ変化させるのに要する時間は30分以内、例えば約25分以内、約20分以内、約15分以内、約10分以内、約5分以内、約1分以内、または約30秒以内であり得る。他の例では、この変化は連続的であり、加速器は粒子ビームのエネルギーを比較的高い率、例えば毎秒最大約50MeVまで、毎秒最大約45MeVまで、毎秒最大約40MeVまで、毎秒最大約35MeVまで、毎秒最大約30MeVまで、毎秒最大約25MeVまで、毎秒最大約20MeVまで、毎秒最大約15MeVまで、または毎秒最大約10MeVまでに調整することができる。加速器は、粒子エネルギーを、連続的にも、非連続的にも調整するように構成され得る。例えば、連続的変化と非連続的変化の組合せを、一方のターゲット容積部の治療に、または異なるターゲット容積部の治療に使用することができる。柔軟な治療計画および柔軟な治療が実現され得る。
【0172】
可変エネルギーを有する粒子ビームを出力する粒子加速器は、照射治療を正確にすることができ、また治療に使用される追加のデバイス(加速器以外)の数を減らすことができる。例えば、治療の全部または一部について出力粒子ビームのエネルギーを変化させるためのデグレーダの使用が低減されるか、または使用しないようにできる。強度、集束などの粒子ビームの特性は、粒子加速器側で制御され、粒子ビームは、追加のデバイスからの実質的な妨害を受けることなくターゲット容積部に到達することができる。ビームエネルギーの比較的高い変化率は、治療時間を短縮し、治療システムの効率的な使用を可能にし得る。
【0173】
幾つかの実施例では、
図8のシンクロサイクロトロンなどの加速器は、加速器内の磁場を変化させることによって、粒子または粒子ビームを可変エネルギー準位まで加速するが、これは、磁場を発生させるためにコイルに印加される電流を変化させることによって実現され得る。上で説明されているように、例示的なシンクロサイクロトロン(例えば
図8のシンクロサイクロトロン)は、粒子源を収容する磁石システム、高周波駆動システム、およびビーム引き出しシステムを備える。
図27は、可変エネルギー加速器に使用され得る磁石システムの一例を示している。この例示的な実施例では、磁石システム1012によって確立される磁場は、2つのコイルセット40aと40b、および42aと42bが発生することができる磁場の最大値の約5%から約35%まで変化し得る。磁石システムによって確立される磁場は、2つのコイルセットと成形された強磁性(例えば低炭素鋼)構造体のペアとの組合せを使用して収容されている陽子ビームの集束を維持するのに適切な形状を有し、その例は上に提示されている。
【0174】
それぞれのコイルセットは、電流を受けるための環状コイルの分割ペアであってよい。幾つかの状況において、両方のコイルセットが超電導である。他の状況では、ただ1つのコイルセットのみが超電導であり、他のセットは(以下にさらに説明されているように)非超電導または常電導である。また、両方のコイルセットが非超電導であることも可能である。コイルに使用するのに適した超電導体は、ニオブ3スズ(Nb
3Sn)および/またはニオブチタンを含む。他の常電導体は、銅を含むことができる。コイルセットの作製例について以下でさらに説明する。
【0175】
2つのコイルセットは、直列または並列に電気的に接続され得る。幾つかの実施例では、2つのコイルセットが受ける全電流は、約200万アンペア回数から約1000万アンペア回数、例えば、約250万から約750万アンペア回数、または約375万アンペア回数から約500万アンペア回数までを含み得る。幾つかの例では、一方のコイルセットは、全可変電流の固定(または一定)部分を受けるように構成され、他方のコイルセットは、全電流の可変部分を受けるように構成される。2つのコイルセットの全電流は、一方のコイルセット内の電流の変化と共に変化する。他の状況では、両方のコイルセットに印加される電流は変化し得る。2つのコイルセット内の可変全電流は、変化する大きさを有する磁場を発生することができ、次いで、これは、粒子の加速経路を変化させ、可変エネルギーを有する粒子を発生する。
【0176】
一般的に、コイルによって生成される磁場の大きさは、コイルに印加される全電流の大きさに応じて一定の比率で増減し得る。この一定の比率の増減に基づき、幾つかの実施例では、磁場強度の直線的変化は、コイルセットの全電流を直線的に変化させることによって実現され得る。全電流は比較的高速で調整することができ、これにより磁場およびビームエネルギーが比較的高速で調整される。
【0177】
上記の表1に反映されている例では、コイルリングの幾何学的中心における電流の値と磁場の値との比は、1990:8.7(約228.7:1)、1920:8.4(約228.6:1)、1760:7.9(約222.8:1)である。したがって、超電導コイルに印加される全電流の大きさを調整することで、磁場の大きさを(比に基づき)比例調整することができる。
【0178】
表1の例における全電流に対する磁場の一定の比率の増減も、
図28のプロットに示されており、BZは、Z方向に沿った磁場であり、Rは、Z方向に垂直な方向に沿ったコイルリングの幾何学的中心から測定された径方向距離である。磁場は、幾何学的中心に最高値を有し、距離Rが増大するにつれ減少する。曲線1035、1037は、それぞれ1760アンペアおよび1990アンペアである異なる全電流を受ける同じコイルセットによって生成される磁場を表す。引き出される粒子の対応するエネルギーは、それぞれ211MeVおよび250MeVである。2つの曲線1035、1037は実質的に同じ形状を有し、曲線1035、1037の異なる部分は実質的に平行である。結果として、曲線1035または曲線1037のいずれかが、他方の曲線と実質的に一致するように直線的にシフトされるものとしてよく、これは磁場がコルセットに印加される全電流に応じて一定の比率で増減し得ることを示す。
【0179】
幾つかの実施例では、全電流に対する磁場の一定の比率の増減は、完全でない場合がある。例えば、磁場と表1に示されている例に基づき計算された電流との間の比は一定でない。また、
図28に示されているように、一方の曲線を直線的にシフトさせても、他方の曲線と完全には一致し得ない。幾つかの実施例では、全電流は、一定の比率の増減が完全であるという仮定の下でコイルセットに印加される。ターゲット磁場(一定の比率の増減が完全であるという仮定の下)は、それに加えてコイルの特徴、例えば幾何学的形状を、一定の比率の増減の不完全さを相殺するように変えることによって生成され得る。一例では、強磁性体(例えば鉄)のロッド(磁気シム)を磁気構造体(例えばヨーク、磁極片など)の一方または両方から挿入するか、または取り出すことができる。コイルの特徴は、一定の比率の増減が完全であり電流のみを調整すればよいという状況と比較して磁場調整の速度が実質的な影響を受けないように比較的高速に変えることができる。鉄製ロッドの例では、ロッドは、秒または分の時間尺度、例えば5分以内、1分以内、30秒未満、または1秒未満の時間で追加または取り外しを行うことができる。
【0180】
幾つかの実施例では、コイルセットに印加される電流などの、加速器のセッティングは、コイルセット内の全電流に対する磁場の一定の比率の実質的な増減に基づき選択され得る。
【0181】
一般的に、所望の範囲内で変化する全電流を発生させるために、2つのコイルセットに印加される電流の適切な組合せが使用され得る。一例において、コイルセット42a、42bは、磁場の所望の範囲の下限境界に対応する固定された全電流を受けるように構成され得る。表1に示されている例では、固定された電流は、1760アンペアである。それに加えて、コイルセット40a、40bは、磁場の所望の範囲の上限境界と下限境界との間の差に対応する上限境界を有する可変電流を受けるように構成され得る。表1に示されている例では、コイルセット40a、40bは、0アンペアと230アンペアとの間で変化する電流を受けるように構成される。
【0182】
別の例では、コイルセット42a、42bは、磁場の所望の範囲の上限境界に対応する固定された電流を受けるように構成され得る。表1に示されている例では、固定された電流は、1990アンペアである。それに加えて、コイルセット40a、40bは、磁場の所望の範囲の下限境界と上限境界との間の差に対応する上限境界を有する可変電流を受けるように構成され得る。表1に示されている例では、コイルセット40a、40bは、-230アンペアと0アンペアとの間で変化する電流を受けるように構成される。
【0183】
粒子を加速するための可変全電流によって生成される全可変磁場は、4テスラより大きい、例えば5テスラより大きい、6テスラより大きい、7テスラより大きい、8テスラより大きい、9テスラより大きい、または10テスラより大きく、最大約20テスラまで、例えば最大約18テスラまで、最大約15テスラまで、または最大約12テスラまでの、最大の大きさを有するものとしてよい。幾つかの実施例では、コイルセット内の全電流の変化により、磁場は約0.2テスラから約4.2テスラ以上、例えば約0.2テスラから約1.4テスラまたは約0.6テスラから約4.2テスラだけ変化し得る。幾つかの状況において、磁場の変化量は、最大の大きさに比例し得る。
【0184】
図29は、粒子ビームのそれぞれのエネルギー準位について一定のRF周波数範囲にわたってディープレート500上で電圧を掃引し、粒子ビームエネルギーが変化するときに周波数範囲を変化させるための例示的なRF構造体を示している。ディープレート500の半円形表面503、505は、内部導体1300に接続され、外部導体1302内に収納される。電源を内部導体に結合する電力結合デバイス1304を通して電源(図示略、例えば振動する電圧入力)から高電圧がディープレート500に印加される。幾つかの実施例では、結合デバイス1304は、内部導体1300上に位置し、電源からディープレート500への電力伝送を行う。それに加えて、ディープレート500は可変リアクタンス素子1306、1308に結合されており、それぞれの粒子エネルギー準位についてRF周波数掃引を実行し、異なる粒子エネルギー準位についてRF周波数範囲を変更する。
【0185】
可変リアクタンス素子1306は、モータ(図示略)によって回転可能である複数のブレード1310を有する回転コンデンサであってよい。RF掃引のそれぞれのサイクルにおいてブレード1310をかみ合わせるか、またはかみ合わせを外すことによって、RF構造体のキャパシタンスが変化し、そのため、RF構造体の共振周波数が変化する。幾つかの実施例では、モータの1/4サイクル毎に、ブレード1310は互いにかみ合う。RF構造体のキャパシタンスが大きくなり、共振周波数が下がる。このプロセスは、ブレード1310のかみ合わせが外れるときに逆転する。結果として、ディープレート103に印加される高電圧を発生させるために要求される、またビームを加速するために必要な電力を、大幅に減らすことができる。幾つかの実施例では、ブレード1310の形状を、時間に対する共振周波数の必要な依存性を生じるように機械加工する。
【0186】
RF周波数の発生は、共振器内のRF電圧の位相を感知し、RF空洞の共振周波数の近くでディープレート上の交流電圧を維持することによってブレード回転と同期する。(ダミーディーは、接地されるが、
図29には示されていない。)
【0187】
可変リアクタンス素子1308は、プレート1312と内部導体1300の表面1316とによって形成されるコンデンサであるものとしてよい。プレート1312は表面1316に向かう、または表面1316から遠ざかる方向1314に沿って移動可能である。コンデンサのキャパシタンスは、プレート1312と表面1316との間の距離Dが変化すると変化する。1つの粒子エネルギーについて掃引されるそれぞれの周波数範囲について、距離Dは設定値にあり、周波数範囲を変化させるために、プレート1312は出力ビームのエネルギーの変化に応じて移動される。
【0188】
幾つかの実施例では、内部導体1300および外部導体1302は、銅、アルミニウム、または銀などの、金属材料から形成される。ブレード1310およびプレート1312も、導体1300、1302と同じ、または異なる金属材料から形成され得る。結合デバイス1304は、導電体とすることができる。可変リアクタンス素子1306、1308は他の形態を有することができ、他の方法でディープレート100に結合し、それによりRF周波数掃引および周波数範囲変更を実行することができる。幾つかの実施例では、単一の可変リアクタンス素子は、両方の可変リアクタンス素子1306、1308の機能を実行するように構成され得る。他の実施例では、2つよりも多い可変リアクタンス素子が使用され得る。
【0189】
治療セッションを実行するガントリー、患者支持体、能動的ビーム整形要素、およびシンクロサイクロトロンの制御は、適切な治療制御電子機器(図示略)によって達成される。
【0190】
本明細書で説明されている粒子線治療システムおよびその様々な特徴の制御は、ハードウェアまたはハードウェアとソフトウェアとの組合せを使用して実施され得る。例えば、本明細書で説明されているようなシステムは、様々な地点に配置された様々なコントローラおよび/または処理デバイスを備え得る。中央コンピュータは、様々なコントローラまたは処理デバイスの間の動作を調整することができる。中央コンピュータ、コントローラ、および処理デバイスは、テストおよび較正の制御および調整を行わせるために様々なソフトウェアルーチンを実行し得る。
【0191】
システム動作は、少なくとも一部は、1つ以上のデータ処理装置、例えばプログラム可能なプロセッサ、コンピュータ、複数のコンピュータ、および/またはプログラム可能な論理構成要素による実行のため、またはその動作を制御するために、1つ以上のコンピュータプログラム製品、例えば1つ以上の非一時的機械可読媒体中に明確に具現化された1つ以上のコンピュータプログラムを使用することで制御され得る。
【0192】
コンピュータプログラムは、コンパイル言語またはインタプリタ言語を含む、任意の形態のプログラミング言語で書かれ得、スタンドアロンプログラム、またはモジュール、コンポーネント、サブルーチン、またはコンピューティング環境において使用するのに適している他のユニットを含む、任意の形態で配備され得る。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータ上で、または1つのサイトにあるか、または複数のサイトにまたがって分散され、ネットワークによって相互接続されている複数のコンピュータ上で実行されるように配備され得る。
【0193】
本明細書で説明されている粒子線治療システムの動作の全部または一部を実施するステップに関連するアクションは、1つ以上のコンピュータプログラムを実行して本明細書で説明されている機能を実行する1つ以上のプログラム可能なプロセッサによって実行され得る。これらの動作の全部または一部は、専用論理回路、例えばFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、および/またはASIC(特定用途向け集積回路)を使用して実施され得る。
【0194】
コンピュータプログラムの実行に適しているプロセッサは、例として汎用マイクロプロセッサと専用マイクロプロセッサを共に、および任意の種類のデジタルコンピュータの任意の1つ以上のプロセッサを含む。一般的に、プロセッサは、リードオンリー記憶領域またはランダムアクセス記憶領域もしくはその両方から命令およびデータを受け取る。コンピュータ(サーバを含む)の要素は、命令を実行するための1つ以上のプロセッサならびに命令およびデータを記憶するための1つ以上の記憶領域デバイスを含む。一般的に、コンピュータは、データを記憶するための大容量PCBなどの1つ以上の機械可読記憶媒体、例えば磁気ディスク、磁気光ディスク、または光ディスクも備え、またはこれらからデータを受け取るか、もしくはこれらにデータを転送するか、もしくはその両方を行うように動作可能なように結合される。コンピュータプログラムの命令およびデータを具現化するのに好適な非一時的機械可読記憶媒体は、例として半導体記憶領域デバイス、例えばEPROM、EEPROM、およびフラッシュ記憶領域デバイス、磁気ディスク、例えば、内蔵ハードディスクまたはリムーバブルディスク、光磁気ディスク、ならびにCD-ROMおよびDVD-ROMディスクを含む、あらゆる形態の不揮発性記憶領域を含む。
【0195】
本明細書で使用されているような任意の「電気的接続」は、直接的物理的接続、または介在する構成要素を含むが、それにもかかわらず、電気的信号が接続されている構成要素間を流れることを許容する有線もしくは無線接続を暗示するものとしてよい。本明細書において言及されている電気回路を伴う任意の「接続」は、断りのない限り、電気的接続であり、「電気的」という単語が「接続」を修飾するために使用されているかどうかに関係なく必ずしも直接的物理的接続ではない。
【0196】
前述の実施例のうちのさらに2つが、適切な粒子加速器(例えばシンクロサイクロトロン)において適切な組合せで使用され得る。同様に、前記の実施例のうちのさらに2つの個別の特徴が、適切な組合せで使用され得る。
【0197】
本明細書で説明されている異なる実施例の要素は、特に上で述べていない他の実施例を形成するように組み合わせることもできる。要素は、その動作に悪影響を及ぼすことなく本明細書で説明されているプロセス、システム、装置などから外してもよい。本明細書で説明されている機能を実行するために、様々な別々の要素を1つ以上の個別の要素に組み合わせることができる。
【0198】
本明細書で説明されている例示的な実施例は、粒子線治療システムと共に使用すること、または本明細書で説明されている例示的な粒子線治療システムと共に使用することに限定されない。むしろ、例示的な実施例は、加速された粒子を出力に導く適切なシステム内で使用され得る。
【0199】
本明細書で特に説明されていない他の実装も、以下の請求項の範囲内に収まる。