(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
約3ミリメートル以下(例えば、約1ミリメートル以下)の厚さ(t)を画定する、第1の表面および第1の表面の反対にある第2の表面と、応力プロファイルとを含むガラス系物品であって、約0・t〜最大0.3・tおよび約0.7・t超〜tの厚さ範囲間の応力プロファイルの全ての点は、約0.1MPa/マイクロメートルを超える絶対値を有する傾きを有する接線を含む、ガラス系物品。いくつかの実施形態では、ガラス系物品は、厚さの少なくとも一部(例えば、0・t〜約0.3・t)に沿って変動するゼロではない金属酸化物濃度、および約71.5/√(t)未満の最大中央張力(MPa)を含む。いくつかの実施形態では、金属酸化物またはアルカリ金属酸化物の濃度は、第1の表面から、第1の表面と第2の表面との間の点まで減少し、かつその点から第2の表面まで増加する。金属酸化物の濃度は、厚さ全体にわたって約0.05モル%以上または約0.5モル%以上であり得る。そのようなガラス系物品を形成する方法も開示される。
前記金属酸化物の一価イオンは、前記厚さ範囲に沿って応力を発生させ、前記金属酸化物の前記一価イオンは、前記ガラス系物品中の前記金属酸化物の前記一価イオンの全ての最大イオン直径を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のガラス系物品。
前記金属酸化物の前記濃度は、前記第1の表面から、前記第1の表面と前記第2の表面との間の点における値まで減少し、かつ前記値から前記第2の表面まで増加することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のガラス系物品。
【発明を実施するための形態】
【0028】
ここで、種々の実施形態を詳細に参照し、それらの例が付随する実施例および図面において例示される。
【0029】
以下の説明において、図面に示されるいくつかの図の全体にわたり、同様の参照文字は同様のまたは対応する部分を示す。他に明記されない限り、「上部」、「底部」、「外側」、「内側」などの用語は便宜上の単語であり、限定の用語として解釈すべきではないことも理解される。さらに、群が要素の群およびそれらの組合せの少なくとも1つを含むとして記載される場合には常に、その群は、個別または互いの組合せのいずれかで任意の数の記載の要素を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなることができると理解される。同様に、群が要素の群またはそれらの組合せの少なくとも1つからなると記載される場合には常に、その群は、個別または互いの組合せのいずれかで任意の数の記載の要素からなることができると理解される。他に明記されない限り、ある範囲の値が記載される場合、これは、その範囲の上限および下限と、それらの間のあらゆる範囲との両方を含む。本明細書において使用される場合、名詞は、他に明記されない限り、「少なくとも1つ」または「1つ以上」の対象を指す。本明細書および図面に開示される種々の特徴は、任意のおよびあらゆる組合せで使用できることも理解される。
【0030】
本明細書において使用される場合、「ガラス系物品」および「ガラス系基材」という用語は、全体的または部分的にガラスでできたあらゆる物体を含む最も広い意味で使用される。ガラス系物品としては、ガラスと非ガラス材料との積層体、ガラスと結晶性材料との積層体、およびガラスセラミック(非晶質相および結晶相を含む)が挙げられる。他に明記されない限り、全ての組成は、モルパーセント(モル%)において表される。
【0031】
「実質的に」および「約」という用語は、あらゆる定量的な比較、値、測定、または他の表現に起因し得る固有の不確実性の程度を表すために本明細書において使用できることに留意されたい。これらの用語は、本明細書において、ある定量的表現が、対象となる主題の基本的機能に変化を生じさせることなく記載の基準から変動できる程度を表すためにも使用される。
【0032】
他に明記されない限り、全ての温度は摂氏温度(℃)で表される。本明細書において使用される場合、「軟化点」という用語は、ガラスの粘度が約10
7.6ポアズ(P)(10
6Pa・s)となる温度を意味し、「徐冷点」という用語は、ガラスの粘度が約10
13.2ポアズ(10
12.2Pa・s)となる温度を意味し、「200ポアズ温度(T
200P)」という用語は、ガラスの粘度が約200ポアズ(20Pa・s)となる温度を意味し、「10
11ポアズ温度」という用語は、ガラスの粘度が約10
11ポアズ(10
10Pa・s)となる温度を意味し、「35kP温度(T
35kP)」という用語は、ガラスの粘度が約35キロポアズ(kP)(3.5kPa・s)となる温度を意味し、「160kP温度(T
160kP)」は、ガラスの粘度が約160kP(16kPa・s)となる温度を意味する。
【0033】
一般に図面および特に
図1〜3を参照すると、これらの図は特定の実施形態を示すことを目的とし、本開示またはそれに添付される請求項の限定を意図するものではないことが理解されるであろう。図面は、必ずしも縮尺通りではなく、図面の特定の特徴および特定の図は、縮尺が誇張されて示されるか、または明確さおよび簡潔さのために概略的に示される場合がある。
【0034】
本明細書において使用される場合、DOCは、ガラス系物品内の応力が圧縮応力から引張応力に変化する深さを意味する。DOCにおいて、応力は、正の(圧縮)応力から負の(引張)応力までを横切り(例えば、
図1の130)、したがってゼロの応力値を示す。
【0035】
本明細書において使用される場合、「化学深さ」、「層の化学深さ」、および「化学層深さ」という用語は、同義で使用することができ、金属酸化物またはアルカリ金属酸化物のイオン(例えば、金属イオンまたはアルカリ金属イオン)がガラス系物品中に拡散する深さ、および電子プローブマイクロアナリシス(EPMA)またはグロー放電発光分光法(GD−OES)によって測定されてイオン濃度が最小値に到達する深さを意味する。特に、Na
2O拡散深さまたはNa+イオン濃度の評価は、EPMAおよび表面応力計を用いて決定され得る(以下により詳細に記載する)。
【0036】
当技術分野において一般に使用される慣習によると、他に明記されない限り、圧縮は、負(<0)の応力として表され、張力は、正(>0)の応力として表される。しかし、この説明全体にわたり、圧縮応力CSに関して言及する場合、これは正または負の値とは無関係に示され、すなわち、本明細書において記載される場合、CS=|CS|である。
【0037】
モバイル電子デバイスおよびタッチ可能なディスプレイのカバーガラスとして使用できる、アルカリ含有ガラス、およびガラスセラミックを含むケイ酸塩ガラスなどのガラスを含む薄い化学強化ガラス系物品が本明細書に記載される。ガラス系物品は、ディスプレイ(または表示装置として)(例えば、広告用掲示板、販売時点管理システム(point of sale system)、コンピュータ、ナビゲーションシステムなど)、建築物品(壁、建具、パネル、窓など)、輸送物品(例えば、自動車用途、列車、航空機、航洋船など)、電化製品(例えば、洗濯機、乾燥機、食器洗浄機、冷蔵庫など)、またはある程度の破壊抵抗を必要とするあらゆる物品に使用することもできる。
【0038】
特に、本明細書に記載のガラス系物品は、薄く、典型的には厚いガラス物品(例えば、約2mmまたは3mm以上の厚さを有する)の強化によってのみ実現可能な応力プロファイルを示す。ガラス系物品は、その厚さに沿って独特の応力プロファイルを示す。いくつかの場合、本明細書に記載のガラス系物品は、強化ガラス物品よりも大きい表面CSを示す。1つ以上の実施形態では、ガラス系物品は、ガラス系物品内のより深くまで延在する圧縮応力層を有し(その中で、CSは、周知の化学強化ガラス系物品よりも段階的に減少し増加する)、ガラス系物品またはそれを含むデバイスが硬い表面(例えば、花崗岩)または硬く粗い表面(例えば、アスファルト)上に落下する場合でも、このようなガラス系物品は、実質的に改善された破壊抵抗を示す。1つ以上の実施形態のガラス系物品は、いくつかの周知の化学強化ガラス基材よりも大きい最大CT値を示す。
【0039】
CSおよびカリウムイオン侵入深さ(「カリウムDOL」)は、当技術分野において周知の手段を用いて測定される。イオン交換プロセスの結果としてカリウム侵入深さが示されるため、カリウムDOLは、DOCとは区別される。本明細書に記載の物品の場合、カリウムDOLは、典型的にはDOCよりも小さい。CSおよびカリウムDOLは、有限会社折原製作所(日本)製造のFSM−6000などの市販の機器を用いて表面応力計(FSM)によって測定される。表面応力測定は、ガラスの複屈折に関連する応力光係数(SOC)を正確に測定することに依拠している。このSOCは、その全体の内容が参照により本明細書に援用される“Standard Test Method for Measurement of Glass Stress−Optical Coefficient”という名称のASTM規格C770−98(2013)に記載のProcedure Cの修正版により測定される。この修正版は、5〜10mmの厚さおよび12.7mmの直径を有する試験片としてのガラス円板の使用を含み、この円板は、等方性で均一であり、中心に穴が開けられ、両面は研磨されて平行である。この修正版は、加えられる最大の力Fmaxの計算も含んでいる。この力は20MPa以上の圧縮応力を得るのに十分となるべきである。Fmaxは、以下のように計算される。
Fmax=7.854・D・h
式中、
Fmax=ニュートン単位の力
D=円板の直径
h=光路の厚さ
である。加えられるそれぞれの力の場合、応力は、以下のように計算される。
σ
MPa=8F/(π・D・h)
式中、
F=ニュートン単位の力
D=円板の直径
h=光路の厚さ
である。
【0040】
DOCおよび最大CT値は、散乱光偏光器(SCALP)を用いて測定される。屈折近視野(RNF)法またはSCALPを使用して応力プロファイルを測定することができる。RNF法が使用される場合、SCALPによって得られる最大CT値が利用される。特に、RNF法によって測定される応力プロファイルは、力平衡が形成され、SCALP測定によって得られる最大CT値に対して較正される。RNF法は、“Systems and methods for measuring a profile characteristic of a glass sample”という名称の米国特許第8,854,623号明細書に記載されており、その全体が参照により本明細書に援用される。特に、RNF法は、ガラス系物品を基準ブロックに隣接して配置するステップと、1Hz〜50Hzの速度で直交する偏光間で切り変えられる偏光スイッチされた光ビームを発生させるステップと、偏光スイッチされた光ビームの出力量を測定するステップと、偏光スイッチされた基準信号を発生させるステップとを含み、直交する偏光のそれぞれの測定出力量は、互いの50%の範囲内である。この方法は、ガラス試料中の種々の深さにおいて、偏光スイッチされた光ビームをガラス試料および基準ブロックに透過させるステップと、次に中継光学系を用いて、透過した偏光スイッチされた光ビームを信号光検出器に中継するステップとをさらに含み、信号光検出器は、偏光スイッチされた検出器信号を発生させる。この方法はまた、検出器信号を基準信号で除して、正規化された検出器信号を形成するステップと、正規化された検出器信号からガラス試料のプロファイル特性を求めるステップとを含む。RNFプロファイルは、次に平滑化され、CT領域のために使用される。前述のように、FSM技術は、表面CSおよび表面付近のCS領域中の応力プロファイルの傾きのために使用される。
【0041】
前述したように、本明細書に記載のガラス系物品は、イオン交換によって化学強化され、周知の強化ガラス物品が示すものとは区別される応力プロファイルを示す。本開示において、ガラス系基材は、一般に強化されておらず、ガラス系物品は、一般に、(例えば、イオン交換によって)強化されたガラス系基材を意味する。このプロセスでは、ガラス系物品の表面または表面付近のイオンは、同じ価数または酸化状態を有するより大きいイオンで置換または交換される。ガラス系物品がアルカリアルミノケイ酸塩ガラスを含む実施形態では、ガラスの表面層中のイオンおよびより大きいイオンは、Li
+(ガラス系物品中に存在する場合)、Na
+、K
+、Rb
+、およびCs
+などの一価のアルカリ金属陽イオンである。代替的に、表面層中の一価陽イオンは、Ag
+などのアルカリ金属陽イオン以外の一価陽イオンで置換することができる。このような実施形態では、ガラス系基材中で交換された一価イオン(または陽イオン)により、結果として得られるガラス系物品中に応力が発生する。
【0042】
イオン交換プロセスは、典型的には、ガラス系基材中のより小さいイオンと交換されるより大きいイオンを含有する1つの溶融塩浴(または2つ以上の溶融塩浴)中にガラス系基材を浸漬することによって行われる。水性塩浴も使用できることに留意すべきである。さらに、浴の組成は、2種類以上のより大きいイオン(例えば、Na+およびK+)または1種類のより大きいイオンを含むことができる。限定するものではないが、浴の組成および温度、浸漬時間、ガラス系物品を1つの塩浴(または複数の浴)中に浸漬する回数、複数の塩浴の使用、アニール、洗浄などのさらなるステップなどのイオン交換プロセスのパラメーターが、ガラス系物品の組成(物品の構造および存在するあらゆる結晶相を含む)、ならびに強化によって得られるガラス系物品の所望のDOCおよびCSによって一般に決定されることを当業者は理解するであろう。例として、ガラス系基材のイオン交換は、限定するものではないが、より大きいアルカリ金属イオンの硝酸塩、硫酸塩、および塩化物などの塩を含有する少なくとも1つの溶融浴中にガラス系基材を浸漬することによって行うことができる。典型的な硝酸塩としては、KNO
3、NaNO
3、LiNO
3、NaSO
4、およびそれらの組合せが挙げられる。溶融塩浴の温度は、典型的には約380℃〜最大約450℃の範囲内であり、一方、浸漬時間は、ガラスの厚さ、浴温度、およびガラス(または一価イオン)の拡散率に依存して約15分〜最大約100時間の範囲である。しかし、上記のものと異なる温度および浸漬時間を使用することもできる。
【0043】
1つ以上の実施形態では、ガラス系基材は、約370℃〜約480℃の温度を有する100%NaNO
3の溶融塩浴中に浸漬することができる。いくつかの実施形態では、ガラス系基材は、約5%〜約90%のKNO
3および約10%〜約95%のNaNO
3を含む溶融混合塩浴中に浸漬することができる。いくつかの実施形態では、ガラス系基材は、Na
2SO
4およびNaNO
3を含む溶融混合塩浴中に浸漬することができ、より広い温度範囲(例えば、最大約500℃)を有することができる。1つ以上の実施形態では、ガラス系物品は、第1の浴中に浸漬した後に第2の浴中に浸漬することができる。第2の浴中の浸漬は、100%KNO
3を含む溶融塩浴中への15分〜8時間の浸漬を含むことができる。
【0044】
1つ以上の実施形態では、ガラス系基材は、約420℃未満の温度(例えば、約400℃または約380℃)を有するNaNO
3およびKNO
3(例えば、49%/51%、50%/50%、51%/49%)を含む混合溶融塩浴中に約5時間未満、またはさらには約4時間以下にわたって浸漬することができる。
【0045】
イオン交換条件は、「スパイク」が得られるように、または結果として得られるガラス系物品の表面もしくは表面付近の応力プロファイルの傾きが増加するように調整することができる。このスパイクは、本明細書に記載のガラス系物品中に使用されるガラス組成物の独自の性質のため、浴が1つの組成物または混合組成物を有する1つの浴または複数の浴によって実現することができる。
【0046】
図3に示されるように、1つ以上の実施形態のガラス系物品300は、厚さtを画定する、第1の表面302および第1の表面の反対にある第2の表面304を含む。1つ以上の実施形態では、厚さtは、約3ミリメートル以下(例えば、約0.01ミリメートル〜約3ミリメートル、約0.1ミリメートル〜約3ミリメートル、約0.2ミリメートル〜約3ミリメートル、約0.3ミリメートル〜約3ミリメートル、約0.4ミリメートル〜約3ミリメートル、約0.01ミリメートル〜約2.5ミリメートル、約0.01ミリメートル〜約2ミリメートル、約0.01ミリメートル〜約1.5ミリメートル、約0.01ミリメートル〜約1ミリメートル、約0.01ミリメートル〜約0.9ミリメートル、約0.01ミリメートル〜約0.8ミリメートル、約0.01ミリメートル〜約0.7ミリメートル、約0.01ミリメートル〜約0.6ミリメートル、約0.01ミリメートル〜約0.5ミリメートル、約0.1ミリメートル〜約0.5ミリメートル、または約0.3ミリメートル〜約0.5ミリメートルの範囲内)であり得る。
【0047】
ガラス系物品は、第1の表面302から第2の表面304まで(または厚さtの長さ全体に沿って)延在する応力プロファイルを含む。
図3に示される実施形態では、本明細書に記載のようにSCALPまたはRNFによって測定される応力プロファイル312が示されている。y軸は応力値を表し、x軸はガラス系物品中の厚さまたは深さを表す。
【0048】
図3に示されるように、応力プロファイル312は、CS層315(表面CS310を有する)と、CT層325(最大CT320を有する)と、応力プロファイル312が圧縮から引張に変化するDOC330とを含む。CS層は、表面302、304からDOC330まで延在する関連する深さまたは長さ317を有する。CT層325も、関連する深さまたは長さ327(CT領域または層)を有する。
【0049】
表面CS310は、約150MPa以上または約200MPa以上(例えば、約250MPa以上、約300MPa以上、約400MPa以上、約450MPa以上、約500MPa以上、または約550MPa以上)であり得る。表面CS310は、最大約900MPa、最大約1000MPa、最大約1100MPa、または最大約1200MPaであり得る。本明細書において、表面CS値は、最大CSを含むこともできる。いくつかの実施形態では、表面CSは最大CSよりも小さい。
【0050】
最大CT320は、約71.5/√(t)未満であり得、式中、tは、mm単位の厚さである。1つ以上の実施形態では、最大CT320は約45/√(t)を超え得る。1つ以上の実施形態では、最大CTは、約80MPa以下、約75MPa以下、または約70MPa以下(例えば、約60MPa以下、約55MPa以下、50MPa以下、または約40MPa以下)であり得る。1つ以上の実施形態では、最大CTの下限は、25MPa、40MPa、または50MPaであり得る。いくつかの実施形態では、最大CT320は、約25MPa〜約80MPa(例えば、約25MPa〜約75MPa、約25MPa〜約70MPa、約25MPa〜約65MPa、約40MPa〜約80MPa、約40MPa〜約75MPa、約40MPa〜約70MPa、約40MPa〜約65MPa、約45MPa〜約80MPa、約50MPa〜約80MPa、または約60MPa〜約80MPa)の範囲内であり得る。
【0051】
最大CT320は、約0.3・t〜約0.7・t、約0.4・t〜約0.6・t、または約0.45・t〜約0.55・tの範囲に位置することができる。表面CS310および最大CT320のいずれか1つ以上は、ガラス系物品の厚さによって決定され得ることに留意すべきである。例えば、約0.8mmの厚さを有するガラス系物品は、約75MPa以下の最大CTを有することができる。ガラス系物品の厚さが減少すると、最大CTが増加し得る。換言すると、最大CTは、厚さの減少とともに(すなわちガラス系物品がより薄くなると)増加する。
【0052】
いくつかの実施形態では、表面CS310の絶対値に対する最大CT320の比は、約0.01〜約0.2の範囲内(例えば、約0.01〜約0.18、約0.01〜約0.16、約0.01〜約0.15、約0.01〜約0.14、約0.01〜約0.1、約0.02〜約0.2、約0.04〜約0.2、約0.05〜約0.2、約0.06〜約0.2、約0.08〜約0.2、約0.1〜約0.2、または約0.12〜約0.2の範囲内)である。いくつかの実施形態では、表面CSは、最大CTの1.5倍(または2倍または2.5倍)以上であり得る。いくつかの実施形態では、表面CSは、最大CTの最大約48倍、最大CTの最大40倍、最大CTの最大20倍、最大CTの最大10倍、または最大CTの最大8倍であり得る。表面CSは、最大CTの約5倍〜最大約50倍の範囲内であり得る。
【0053】
1つ以上の実施形態では、応力プロファイル312は、最大CSを含み、典型的には、これは表面CS310であり、第1の表面302および第2の表面304の一方または両方に見出すことができる。1つ以上の実施形態では、CS層または領域315は、厚さ317の一部からDOC330および最大CT320に沿って延在する。1つ以上の実施形態では、DOC330は、約0.1・t以上であり得る。例えば、DOC330は、約0.12・t以上、約0.14・t以上、約0.15・t以上、約0.16・t以上、0.17・t以上、0.18・t以上、0.19・t以上、0.20・t以上、約0.21・t以上、または最大約0.25・tであり得る。いくつかの実施形態では、DOC330は、化学深さ未満である。化学深さは、約0.4・t以上、0.5・t以上、約0.55・t以上、または約0.6・t以上であり得る。
【0054】
1つ以上の実施形態では、ガラス系物品は、約6マイクロメートル〜約20マイクロメートルの範囲内のカリウムDOLを含む。いくつかの実施形態では、カリウムDOLは、ガラス系物品の厚さtの関数として表すことができる。1つ以上の実施形態では、カリウムDOLは、約0.005t〜約0.05tの範囲内であり得る。いくつかの実施形態では、カリウムDOLは、約0.005t〜約0.05t、約0.005t〜約0.045t、約0.005t〜約0.04t、約0.005t〜約0.035t、約0.005t〜約0.03t、約0.005t〜約0.025t、約0.005t〜約0.02t、約0.005t〜約0.015t、約0.005t〜約0.01t、約0.006t〜約0.05t、約0.008t〜約0.05t、約0.01t〜約0.05t、約0.015t〜約0.05t、約0.02t〜約0.05t、約0.025t〜約0.05t、約0.03t〜約0.05t、または約0.01t〜約0.02tの範囲内であり得る。
【0055】
1つ以上の実施形態では、カリウムDOL深さにおける圧縮応力値は、約50MPa〜約300MPaの範囲内であり得る。いくつかの実施形態では、カリウムDOL深さにおける圧縮応力値は、約50MPa〜約280MPa、約50MPa〜約260MPa、約50MPa〜約250MPa、約50MPa〜約240MPa、約50MPa〜約220MPa、約50MPa〜約200MPa、約60MPa〜約300MPa、約70MPa〜約300MPa、約75MPa〜約300MPa、約80MPa〜約300MPa、約90MPa〜約300MPa、約100MPa〜約300MPa、約1100MPa〜約300MPa、約120MPa〜約300MPa、約130MPa〜約300MPa、または約150MPa〜約300MPaの範囲内であり得る。
【0056】
1つ以上の実施形態では、応力プロファイル312は、放物線状の形状で記載することができる。いくつかの実施形態では、引張応力を示すガラス系物品の領域または深さに沿った応力プロファイルは放物線状の形状を示す。1つ以上の特定の実施形態では、応力プロファイル312は、平坦な応力(圧縮または引張のいずれか)の部分、すなわち実質的に一定の応力(圧縮または引張のいずれか)を示す部分を含まない。いくつかの実施形態では、CT領域は、平坦な応力を実質的に含まず、すなわち実質的に一定の応力を含まない応力プロファイルを示す。1つ以上の実施形態では、約0t〜最大約0.2・tおよび0.8・t超〜t(または約0・t〜約0.3・tおよび0.7・t超)の厚さ範囲間の応力プロファイル312の全ての点は、約−0.1MPa/マイクロメートル未満または約0.1MPa/マイクロメートルを超える傾きを有する接線を含む。いくつかの実施形態では、接線の傾きは、約−0.2MPa/マイクロメートル未満、または約0.2MPa/マイクロメートル超であり得る。いくつかのさらなる特定の実施形態では、接線の傾きは、約−0.3MPa/マイクロメートル未満、または約0.3MPa/マイクロメートル超であり得る。さらなる特定の実施形態では、接線の傾きは、約−0.5MPa/マイクロメートル未満、または約0.5MPa/マイクロメートル超であり得る。換言すると、これらの厚さ範囲(すなわち、0・t〜最大約0.2・tおよび0.8t超、または約0t〜約0.3・tおよび0.7・t以上)に沿った1つ以上の実施形態の応力プロファイルは、ゼロの傾き、またはほぼゼロの傾き、または平坦な傾きを有する接線を有する点を含まない。理論によって束縛されるものではないが、周知の誤差関数または準線形応力プロファイルは、これらの厚さ範囲(すなわち、約0・t〜最大約0.2・tおよび0.8・t超、または約0・t〜約0.3・tおよび0.7・t以上)に沿って、ゼロの傾きまたはゼロに近い値の傾き、すなわち約−0.1MPa/マイクロメートル超〜約0.1MPa/マイクロメートル未満の範囲内の傾きを有する接線を有する点を有する(
図2の220に示されるような、このような厚さ範囲に沿った平坦またはゼロの傾きの応力プロファイルを示す)。本開示の1つ以上の実施形態のガラス系物品は、
図3に示されるように、これらの厚さ範囲に沿って平坦またはゼロの傾きの応力プロファイルを有するこのような応力プロファイルを示さない。
【0057】
1つ以上の実施形態では、ガラス系物品は、約0.1・t〜0.3・tおよび約0.7・t〜0.9・tの厚さ範囲内で最大の傾きの接線および最小の傾きの接線を含む応力プロファイルを示す。いくつかの場合、最大の傾きの接線と最小の傾きの接線との間の差は、約3.5MPa/マイクロメートル以下、約3MPa/マイクロメートル以下、約2.5MPa/マイクロメートル以下、または約2MPa/マイクロメートル以下である。
【0058】
1つ以上の実施形態では、ガラス系物品は、深さ方向、またはガラス系物品の厚さtの少なくとも一部に沿って延在する任意の平坦部分を実質的に含まない応力プロファイル312を含む。換言すると、応力プロファイル312は、厚さtに沿って実質的に連続的に増加または減少する。いくつかの実施形態では、応力プロファイルは、約10マイクロメートル以上、約50マイクロメートル以上、または約100マイクロメートル以上、または約200マイクロメートル以上の長さを有する深さ方向において任意の平坦部分を実質的に含まない。本明細書において使用される場合、「平坦」という用語は、平坦部分に沿って約0.5MPa/マイクロメートル未満、または約0.2MPa/マイクロメートル未満の大きさを有する傾きを意味する。いくつかの実施形態では、深さ方向に平坦部分を実質的に含まない応力プロファイルの1つ以上の部分は、第1の表面または第2の表面のいずれかまたは両方から約5マイクロメートル以上(例えば、10マイクロメートル以上、または15マイクロメートル以上)のガラス系物品中の深さで存在する。例えば、第1の表面から約0マイクロメートル〜約5マイクロメートル未満までの深さに沿って、応力プロファイルは直線部分を含むことができるが、第1の表面から約5マイクロメートル以上の深さでは、応力プロファイルは平坦部分を実質的に含まないことができる。本明細書において使用される場合、「直線」は、平坦な傾きを有する線分、および平坦な傾きを有さない線分を含み、後者の例は、表面から約12マイクロメートルの深さの範囲内の
図11に見られる。
【0059】
いくつかの実施形態では、応力プロファイルは、約0t〜最大約0.1tの深さで直線部分を含むことができ、約0.1t〜約0.4tの深さで平坦部分を実質的に含まないことができる。いくつかの実施形態では、約0t〜約0.1tの範囲内の厚さでの応力プロファイルは、傾きであって、その大きさ(絶対値)が約20MPa/マイクロメートル〜約200MPa/マイクロメートルの範囲内である、傾きを有することができる。本明細書に記載されるように、このような実施形態は、浴が2種類以上のアルカリ塩を含むかまたは混合アルカリ塩浴である1つのイオン交換プロセス、または複数(例えば、2つ以上)のイオン交換プロセスを用いて形成することができる。
【0060】
1つ以上の実施形態では、ガラス系物品は、CT領域(
図3の327)に沿った応力プロファイルの形状に関して表すことができる。例えば、いくつかの実施形態では、(応力が張力である)CT領域に沿った応力プロファイルは、式(1):
応力(x)=MaxT−(((CT
n・(n+1))/0.5
n)・|(x/t)−0.5|
n) (1)
によって概算することができる。式(1)中、応力(x)は、位置xにおける応力値である。この場合、応力は、正(張力)である。式(1)中、MaxTは、最大張力値であり、CT
nは、nにおける張力値であり、かつMaxT以下である。MaxTおよびCT
nの両方は、MPa単位の正の値である。値xは、マイクロメートル単位の厚さ(t)に沿った位置であり、0〜tの範囲であり、x=0は、一方の表面(
図3の302)であり、x=0.5tは、ガラス系物品の中央(この位置で応力(x)=MaxT)であり、x=tは、反対の表面(
図3の304)である。式(1)で使用されるMaxTは、最大CTに相当し、約71.5/√(t)未満であり得る。いくつかの実施形態では、式(1)で使用されるMaxTは、約50MPa〜約80MPa(例えば、約60MPa〜約80MPa、約70MPa〜約80MPa、約50MPa〜約75MPa、約50MPa〜約70MPa、または約50MPa〜約65MPa)の範囲内であり得、およびnは、1.5〜5(例えば、2〜4、2〜3、または1.8〜2.2)または約1.5〜約2のフィッティングパラメーターである。1つ以上の実施形態では、n=2では、放物線の応力プロファイルを得ることができ、n=2から逸脱した指数では、放物線に近い応力プロファイルを有する応力プロファイルが得られる。
図4は、フィッティングパラメーターnの変化に基づく、本開示の1つ以上の実施形態による種々の応力プロファイルを示すグラフである。
【0061】
1つ以上の実施形態では、ガラス系物品の一方または両方の主面上に圧縮応力スパイクが存在する場合、CTnは、MaxT未満であり得る。1つ以上の実施形態では、ガラス系物品の一方または両方の主面上に圧縮応力スパイクが存在しない場合、CTnは、MaxTに等しい。
【0062】
いくつかの実施形態では、応力プロファイルは、熱処理によって調整することができる。このような実施形態では、熱処理は、任意のイオン交換プロセスの前、イオン交換プロセスの間または全てのイオン交換プロセス後に行うことができる。いくつかの実施形態では、熱処理により、表面または表面付近の応力プロファイルの傾きの大きさの絶対値を減少させることができる。いくつかの実施形態では、表面においてより急勾配、すなわちより大きい傾きが望ましい場合、「スパイク」を得るため、または表面もしくは表面付近の応力プロファイルの傾きを増加させるために、熱処理後のイオン交換プロセスを利用することができる。
【0063】
1つ以上の実施形態では、厚さの一部に沿って変動する金属酸化物のゼロではない濃度のために、応力プロファイル312が得られる。前述したように、金属酸化物濃度の変動は、本明細書において金属酸化物濃度勾配と記載される場合がある。いくつかの実施形態では、金属酸化物の濃度は、約0・t〜約0.3・tの厚さ範囲に沿ってゼロではなくかつ変動する。いくつかの実施形態では、金属酸化物の濃度は、約0・t〜約0.35・t、約0・t〜約0.4・t、約0・t〜約0.45・t、または約0・t〜約0.48・tの厚さ範囲に沿ってゼロではなくかつ変動する。金属酸化物は、ガラス系物品中に応力を発生させるとして記載することができる。濃度の変動は、上記厚さ範囲に沿って連続であり得る。濃度の変動は、約100マイクロメートルの厚さ部分に沿って約0.2モル%の金属酸化物濃度の変化を含むことができる。この変化は、実施例1に示されるようなマイクロプローブなどの当技術分野において周知の方法によって測定することができる。厚さの一部に沿って濃度がゼロではなくかつ変動する金属酸化物は、ガラス系物品中に応力を発生させるとして記載することができる。
【0064】
濃度の変動は、前述の厚さ範囲に沿って連続であり得る。いくつかの実施形態では、濃度の変動は、約10マイクロメートル〜約30マイクロメートルの範囲内の厚さ部分に沿って連続であり得る。いくつかの実施形態では、金属酸化物の濃度は、第1の表面から第1の表面と第2の表面との間の点まで減少し、かつその点から第2の表面まで増加する。
【0065】
金属酸化物の濃度は、2種類以上の金属酸化物(例えば、Na
2OとK
2Oとの組合せ)を含むことができる。いくつかの実施形態では、2種類の金属酸化物が使用され、イオンの半径がいずれかと異なる場合、浅い深さでは、より大きい半径を有するイオンの濃度が、より小さい半径を有するイオンの濃度よりも高く、一方、より深い深さでは、より小さい半径を有するイオンの濃度が、より大きい半径を有するイオンの濃度よりも高い。例えば、NaおよびKを含有する1つの浴がイオン交換プロセスに使用される場合、より浅い深さでは、ガラス系物品中のK+イオンの濃度がNa+イオンの濃度よりも高く、一方、より深い深さでは、Na+の濃度がK+イオンの濃度よりも高い。これは、部分的には、ガラス中でより小さい一価イオンと交換される一価イオンのサイズのためである。このようなガラス系物品では、表面または表面付近の領域は、表面または表面付近におけるより大きいイオン(すなわち、K+イオン)の量がより多いため、より大きいCSを含む。このより大きいCSは、表面または表面付近においてより急勾配の傾き(すなわち、表面における応力プロファイルのスパイク)を有する応力プロファイルによって示され得る。
【0066】
1つ以上の金属酸化物の濃度勾配または変動は、ガラス系基材中の複数の第1の金属イオンが複数の第2の金属イオンで交換される、本明細書で前述したようなガラス系基材の化学強化によって生じる。第1のイオンは、リチウム、ナトリウム、カリウム、およびルビジウムのイオンであり得る。第2の金属イオンは、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、およびセシウムの1つのイオンであり得、但し、第2のアルカリ金属イオンは、第1のアルカリ金属イオンのイオン半径よりも大きいイオン半径を有する。第2の金属イオンは、その酸化物(例えば、Na
2O、K
2O、Rb
2O、Cs
2O、またはそれらの組合せ)としてガラス系基材中に存在する。
【0067】
1つ以上の実施形態では、金属酸化物の濃度勾配は、CT層327を含むガラス系物品の厚さtの実質的な部分または厚さt全体に延在する。1つ以上の実施形態では、金属酸化物の濃度は、CT層327中で約0.5モル%以上である。いくつかの実施形態では、金属酸化物の濃度は、ガラス系物品の厚さ全体に沿って約0.5モル%以上(例えば、約1モル%以上)であり得、第1の表面302および/または第2の表面304において最も高く、第1の表面302と第2の表面304との間の点まで実質的に減少し続ける。その点において、金属酸化物の濃度は、厚さt全体に沿って最低となるが、その点における濃度もゼロではない。換言すると、その特定の金属酸化物のゼロではない濃度は、(本明細書に記載のような)厚さtの実質的な部分または厚さt全体に沿って延在する。いくつかの実施形態では、特定の金属酸化物の最低濃度は、CT層327において存在する。ガラス系物品中の特定の金属酸化物の全濃度は、約1モル%〜約20モル%の範囲内であり得る。
【0068】
1つ以上の実施形態では、ガラス系物品は、第1の金属酸化物濃度および第2の金属酸化物濃度を含み、第1の金属酸化物濃度は、約0t〜約0.5tの第1の厚さ範囲に沿って約0モル%〜約15モル%の範囲内であり、および第2の金属酸化物濃度は、約0マイクロメートル〜約25マイクロメートル(または約0マイクロメートル〜約12マイクロメートル)の第2の厚さ範囲から約0モル%〜約10モル%の範囲内であるが、しかし、第1の金属酸化物および第2の金属酸化物の一方または両方の濃度は、ガラス系物品の厚さの実質的な部分または厚さ全体に沿ってゼロではない。ガラス系物品は、任意選択的な第3の金属酸化物の濃度を含むことができる。第1の金属酸化物はNa
2Oを含むことができ、一方、第2の金属酸化物はK
2Oを含むことができる。
【0069】
金属酸化物の濃度は、そのような金属酸化物の濃度勾配を含むように調整される前のガラス系物品中の金属酸化物のベースライン量から求めることができる。
【0070】
1つ以上の実施形態では、Z.Tang,et al.Automated Apparatus for Measuring the Frangibility and Fragmentation of Strengthened Glass.Experimental Mechanics(2014)54:903−912に記載されるような「破砕試験」によって測定されるように、ガラス系物品は、それらがどのように破壊されるか、およびそのような破壊の結果得られる破片に関して表すことができる。1つ以上の実施形態では、破壊されると、ガラス系物品は、1平方インチ当たり(すなわち6.4516平方センチメートル当たり)ガラス系物品(破壊前)の2つ以下の破片に破壊され、使用される試料サイズは、5cm×5cm(2インチ×2インチ)の正方形であった。
【0071】
1つ以上の実施形態では、ガラス系物品の化学強化後、結果として得られるガラス系物品の応力プロファイル312により、改善された破壊抵抗が得られる。例えば、いくつかの実施形態では、Z.Tang,et al.Automated Apparatus for Measuring the Frangibility and Fragmentation of Strengthened Glass. Experimental Mechanics(2014)54:903−912に記載されるような「破砕試験」によって測定されるとき、破壊後に、ガラス系物品は、約2・t以下(例えば、1.8・t、1.6・t、1.5・t、1.4・t、1.2・t、または1.・t以下)の平均最大断面寸法を有する破片を含む。破片の数は、試験される試料の面積(平方インチ単位)で除され、使用される試料サイズは、5cm×5cm(2インチ×2インチ)の正方形であった。
【0072】
1つ以上の実施形態では、ガラス系物品は、約0.7MPa・m
1/2以上の破壊靱性(K
1C)を示すことができる。いくつかの場合、破壊靱性は、約0.8MPa・m
1/2以上または約0.9MPa・m
1/2以上であり得る。いくつかの実施形態では、破壊靱性は、約0.7MPa・m
1/2〜約1MPa・m
1/2の範囲内であり得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、基材は、200gの荷重においてビッカース硬度試験によって測定して約500HVN〜約800HVN(kgf/mm
2)の硬度を有するとして特徴付けることもできる。いくつかの実施形態では、ガラス系物品は、約600HVN〜約800HVNの範囲内のビッカース硬度を含むことができる。
【0074】
本明細書に記載のガラス系物品は、0J/m
2超〜約40J/m
2の範囲内の貯蔵引張エネルギーを示すことができる。いくつかの場合、貯蔵引張エネルギーは、約5J/m
2〜約40J/m
2、約10J/m
2〜約40J/m
2、約15J/m
2〜約40J/m
2、約20J/m
2〜約40J/m
2、約1J/m
2〜約35J/m
2、約1J/m
2〜約30J/m
2、約1J/m
2〜約25J/m
2、約1J/m
2〜約20J/m
2、約1J/m
2〜約15J/m
2、約1J/m
2〜約10J/m
2、約10J/m
2〜約30J/m
2、約10J/m
2〜約25J/m
2、約15J/m
2〜約30J/m
2、約15J/m
2〜約25J/m
2、約18J/m
2〜約22J/m
2、約25J/m
2〜約40J/m
2、または約25J/m
2〜約30J/m
2の範囲内であり得る。1つ以上の実施形態の熱および化学強化ガラス系物品は、約6J/m
2以上、約10J/m
2以上、約15J/m
2以上、または約20J/m
2以上の貯蔵引張エネルギーを示すことができる。
【0075】
貯蔵引張エネルギーは、以下の式(2):
貯蔵引張エネルギー(J/m
2)=[(1−ν)/E]∫(σ^2)(dt) (2)
を用いて計算され、式中、νは、ポアソン比であり、Eは、ヤング率(MPa単位)であり、σは、応力(MPa単位)であり、積分は、引張領域のみの厚さ(マイクロメートル単位)にわたって計算される。
【0076】
本明細書に記載のガラス系物品は、一般に、約80GPa未満(例えば、約75GPa以下、約70GPa以下、約65GPa以下、または約60GPa以下)のヤング率を有する。ヤング率の下限は、約65GPaを超え得る。ガラス系物品の組成に固有のものであるヤング率により、外因的性質である所望の高い硬度を、それらから製造される最終的なガラス系物品に付与することができる。
【0077】
いくつかの実施形態では、ガラス系物品は、高精度の表面平滑性を得ることが可能なダウンドロー技術(例えば、フュージョンドロー、スロットドロー、および他の同様の方法)によるガラス系物品の形成を可能にする高い液相線粘度を含む。本明細書において使用される場合、「液相線粘度」という用語は、液相線温度における溶融ガラスの粘度を意味し、ここで、「液相線温度」という用語は、溶融ガラスを溶融温度から冷却したときに結晶が最初に現れる温度(または温度を室温から上昇させるときに最後に結晶が融解する温度)を意味する。液相線粘度は、以下の方法によって求められる。最初に、“Standard Practice for Measurement of Liquidus Temperature of Glass by the Gradient Furnace Method”という名称のASTM C829−81(2015)に準拠してガラスの液相線温度を測定する。次に、“Standard Practice for Measuring Viscosity of Glass Above the Softening Point”という名称のASTM C965−96(2012)に準拠して液相線温度におけるガラスの粘度を測定する。一般に、本明細書に記載のガラス系物品(またはそのような物品の形成に使用される組成物)は、約100キロポアズ(kP)(10kPa・s)以上の液相線粘度を示す。ダウンドロー加工性のためにより高い液相線粘度が望ましい場合、ガラス系物品(またはそのような物品の形成に使用される組成物)は、約200kP(20kPa・s)以上(例えば、約600kP(60kPa・s)以上)の液相線粘度を示す。
【0078】
1つ以上の実施形態では、ガラス系物品は、約4N〜約7N、約4.5N〜約7N、約5N〜約7N、約4N〜約6.5N、約4N〜約6N、または約5N〜約6Nの範囲内のヌープ側方亀裂引っ掻き(Knoop Lateral Cracking Scratch)閾値を示す。本明細書において使用される場合、ヌープ引っ掻き側方亀裂閾値は側方亀裂の開始である(5回の圧入事象のうちの3回以上)。ヌープ側方亀裂引っ掻き閾値試験では、ガラス基材および物品の試料は、最初に、試料群の側方亀裂開始荷重範囲を明らかにするために動的または変化する荷重下でヌープ圧子で引っ掻かれた。加えることができる荷重範囲が明らかとなった後、一連の増加する一定荷重の引っ掻き(各荷重で最低3回以上)が行われて、ヌープ引っ掻き閾値が決定される。ヌープ引っ掻き閾値範囲は、試験片を以下の3つの破壊形式の1つと比較することによって求めることができる:1)溝の幅の2倍を超える持続的側面の亀裂、2)溝内に損傷が含まれるが、溝の幅の2倍未満の側面の亀裂が存在し、肉眼で確認可能な損傷が存在する、または3)溝の幅の2倍を超える大きい表面下の側方亀裂が存在し、および/もしくは引っ掻きの頂点における中央の亀裂が存在する。
【0079】
1つ以上の実施形態では、ガラス系物品は、約10kgf以上、約12kgf以上、または約15kgf以上の範囲内のビッカース圧入破壊閾値を示す。本明細書において使用される場合、ビッカース圧入破壊閾値は、圧入場所の少なくとも1つの角から延在する中央/半径方向の亀裂の開始である(5回の圧入事象のうちの3回以上)。ビッカース圧入破壊閾値試験では、ガラス基材および物品の試料に増加する荷重においてダイヤモンドチップ(136°の角度)を繰り返し圧入した。各圧入により、圧痕のそれぞれの角から1つの4つの放射状の亀裂を生じさせる可能性がある。それぞれの圧入荷重における放射状の亀裂の平均数を数えることにより、亀裂閾値は、圧痕1つ当たり平均で2つの亀裂が存在する荷重となる(または50%亀裂閾値)。
【0080】
1つ以上の実施形態では、本明細書に記載のガラス系物品の引っ掻き抵抗は、本明細書に記載のガラス系基材と同じ組成を有する500マイクロメートルガラス球を滑らせることによって測定することができる。例えば、球の組成は、約64モル%のSiO
2、15.67モル%のAl
2O
3、6.4モル%のLi
2O、10.8モル%のNa
2O、1.2モル%のZnO、0.04モル%のSnO
2、および2.5モル%のP
2O
5を含むことができる。
図5A〜Bは、1つ以上の実施形態のガラス系物品の表面にガラス球が取り付けられるときにガラス球から表面に加えられる最大引張応力(MPa単位)を示す。
図5A〜5Bでは、接触応力(菱形のデータ点)、ならびに摩擦係数0.1(正方形のデータ点)および摩擦係数0.2(三角形のデータ点)を仮定した滑り接触力を、加えられた垂直荷重(N)の関数として示す。
図5Aでは、ガラス系物品は、約500MPaの表面CSを有した。
図5Bでが、ガラス系物品は、約750MPaの表面CSを有した。
【0081】
1つ以上の実施形態では、ガラス系物品は、研磨時リングオンリング(AROR)試験を行った場合に改善された表面強度を示す。材料の強度は、破壊が生じるときの応力である。AROR試験は、平坦なガラス試験片を試験するための表面強度測定であり、“Standard Test Method for Monotonic Equibiaxial Flexural Strength of Advanced Ceramics at Ambient Temperature”という名称のASTM C1499−09(2013)が、本明細書に記載のAROR試験方法の基礎となる。ASTM C1499−09の内容は、その全体が参照により本明細書に援用される。一実施形態では、“Standard Test Methods for Strength of Glass by Flexure(Determination of Modulus of Rupture)”という名称のASTM C158−02(2012)の「abrasion Procedures」という名称のAnnex A2に記載の方法および装置を使用して、ガラス試料に供給される90グリットの炭化ケイ素(SiC)粒子を用いてガラス試験片をリングオンリング試験前に研磨する。ASTM C158−02の内容および特にAnnex 2の内容は、それらの全体が参照により本明細書に援用される。
【0082】
リングオンリング試験前に、ガラス系物品の表面は、ASTM C158−02、Annex 2に記載されるように研磨することで、ASTM C158−02の
図A2.1に示される装置を用いた試料の表面欠陥条件の正規化および/または制御が行われる。典型的には、研磨材料は、304kPa(44psi)の空気圧を用いて15psi(103kPa)の荷重でガラス系物品の表面110上にサンドブラストされるが、以下の実施例では、研磨材料は、別の荷重(例えば、25psi(172kPa)または45psi(310kPa))で表面110上にサンドブラストした。気流が安定した後、5cm
3の研磨材料を漏斗中に投入し、研磨材料導入後に試料のサンドブラストを5秒間行った。
【0083】
AROR試験の場合、
図6に示されるような少なくとも1つの研磨された表面を有するガラス系物品410は、これも
図6に示されるように、等二軸曲げ強度(すなわち、2つの同心円状のリング間で曲げが加えられるときに材料が耐えることができる最大応力)を求めるために異なるサイズの2つの同心円状のリング間に配置される。AROR構成400では、研磨されたガラス系物品410は、直径D2を有する支持リング420によって支持される。直径D1を有する荷重リング430によってガラス系物品の表面にロードセル(図示せず)による力Fが加えられる。
【0084】
荷重リングおよび支持リングの直径の比D1/D2は、約0.2〜約0.5の範囲内であり得る。いくつかの実施形態では、D1/D2は約0.5である。荷重リングおよび支持リング430、420は、支持リング直径D2の0.5%の範囲内で同心円状に配置すべきである。試験に使用されるロードセルは、選択される範囲内の任意の荷重において±1%の範囲内の精度となるべきである。いくつかの実施形態では、試験は、23±2℃の温度および40±10%の相対湿度で行われる。
【0085】
固定具の設計に関して、荷重リング430の突出面の半径rについて、h/2≦r≦3h/2であり、式中、hは、ガラス系物品410の厚さである。荷重リングおよび支持リング430、420は、典型的には、硬度HRc>40を有する硬化鋼でできている。AROR固定具は市販されている。
【0086】
AROR試験の意図される破壊機構は、荷重リング430内の表面430aから生じるガラス系物品410の破壊を観察することである。この領域外、すなわち、荷重リング430と支持リング420との間で生じる破壊は、データ分析から除外される。しかし、ガラス系物品410の薄さおよび高強度のため、場合により試験片厚さhの1/2を超える大きいたわみが観察される。したがって、荷重リング430の下から発生する破壊が高パーセント値で観察されることは珍しくない。リングの内側と下との両方での応力発生(ひずみゲージ分析によって集められる)および各試験片の破壊の起点を知らなければ、応力を正確に計算することはできない。したがって、AROR試験は、測定される応答としての破壊時のピーク荷重に焦点を合わせている。
【0087】
ガラス系物品の強度は、表面の傷の存在に左右される。しかし、ガラスの強度は統計的な性質であるため、特定のサイズの傷が存在する可能性を正確に予測することはできない。したがって、得られたデータの統計的表現として確率分布を一般に使用することができる。
【0088】
いくつかの実施形態では、表面を研磨するために25psi(172kPa)またはさらには45psi(310kPa)の荷重を使用してAROR試験によって測定すると、本明細書に記載のガラス系物品は、20kgf以上および最大約30kgfの表面または等二軸曲げ強度を有する。別の実施形態では、表面強度は25kgf以上であり、さらに別の実施形態では30kgf以上である。
【0089】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のガラス系物品は、研磨紙上反転球(IBoS)試験における性能に関して記載することができる。IBoS試験は、
図7に概略的に示されるように、モバイルまたは手持ち式の電子デバイスに使用されるガラス系物品に典型的に生じる損傷導入および曲げによる破壊の主要な機構を模倣する動的成分レベル試験である。この分野では、損傷導入(
図8のa)は、ガラス系物品の上面上で行われる。ガラス系物品の上面上で破壊が開始し、損傷がガラス系物品(
図8のb)を貫通するか、または上面上の曲げからもしくはガラス系物品の内部部分(
図8のc)から破壊が伝播する。IBoS試験は、ガラスの表面への損傷導入と、動荷重下で曲げを加えることとが同時に行われるように計画される。いくつかの場合、ガラス系物品は、同じガラス系物品が圧縮応力を含まない場合よりも圧縮応力を含む場合に改善された落下性能を示す。
【0090】
IBoS試験装置を
図7に概略的に示す。装置500は、試験スタンド510および球530を含む。球530は、例えば、ステンレス鋼球などの剛性または中実の球である。一実施形態では、球530は、10mmの直径を有する4.2グラムのステンレス鋼球である。球530は、あらかじめ決定された高さhからガラス系物品試料518上に直接落下させる。試験スタンド510は、花崗岩などの硬質剛性材料を含む固体土台512を含む。表面上に研磨材料が配置されたシート514を、研磨材料を有する面が上を向くように固体土台512の上面上に配置する。シート514は、いくつかの実施形態では30グリットの表面、別の実施形態では180グリットの表面を有する研磨紙である。ガラス系物品試料518とシート514との間に空隙516が存在するように、ガラス系物品試料518は、試料ホルダー515によってシート514の上に維持される。シート514とガラス系物品試料518との間の空隙516により、ガラス系物品試料518は、球530による衝撃でシート514の研磨面上まで曲がることができる。一実施形態では、ガラス系物品試料218は、全ての角にわたって固定することで、球が衝突する点でのみ曲げが含まれるように維持され、再現性が保証される。いくつかの実施形態では、試料ホルダー515および試験スタンド510は、最大約2mmの試料厚さを収容するように適合される。空隙516は約50μm〜約100μmの範囲内である。空隙516は、材料の剛性(ヤング率、Emod)の違いに合わせて調節されるように適合されるが、試料のヤング率および厚さも含まれる。ガラス系物品試料の上面を覆って、球530の衝突時のガラス系物品試料518の破壊事象中の破片を収集するために、接着テープ520を使用することができる。
【0091】
研磨面として種々の材料を使用することができる。特定の一実施形態では、研磨面は、研磨紙、例えば炭化ケイ素もしくはアルミナの研磨紙、工業用研磨紙、または同等の硬度および/もしくは鋭さを有するとして当業者に周知のあらゆる研磨材料であり得る。いくつかの実施形態では、コンクリートまたはアスファルトのいずれよりも均一な表面トポロジーを有し、所望のレベルの試験片表面の損傷を生じさせる粒度および鋭さを有するため、30グリットを有する研磨紙を使用することができる。
【0092】
一態様では、本明細書で前述した装置500を使用するIBoS試験を実施する方法600が
図9に示される。ステップ610では、ガラス系物品試料(
図7の518)は、前述の試験スタンド510中に配置され、ガラス系物品試料518と、研磨面を有するシート514との間に空隙516が形成されるように試料ホルダー515中に固定される。方法600は、研磨面を有するシート514が既に試験スタンド510中に配置されていることを想定している。しかし、いくつかの実施形態では、この方法は、研磨材料を有する面が上向きになるようにシート514を試験スタンド510中に配置するステップを含むことができる。いくつかの実施形態では(ステップ610a)、ガラス系物品試料518を試料ホルダー510中に固定する前に、ガラス系物品試料518の上面に接着テープ520が取り付けられる。
【0093】
ステップ620では、球530が上面のほぼ中心(すなわち、中心の1mm以内、または3mm以内、または5mm以内、または10mm以内)で上面(または上面に貼り付けた接着テープ520)に衝突するように、あらかじめ決定された質量およびサイズの中実球530を、あらかじめ決定された高さhからガラス系物品試料518の上面上に落下させる。ステップ520における衝突後、ガラス系物品試料518の損傷の程度を測定する(ステップ630)。本明細書で前述したように、本明細書では、「破壊」という用語は、基材を落下させたときまたは物体を衝突させたときに基材の厚さ全体および/または全表面にわたって亀裂が伝播することを意味する。
【0094】
方法600では、別の種類(例えば、コンクリートまたはアスファルト)の落下試験面を繰り返し使用する際に確認されている「老化」効果を回避するために、各落下後、研磨面を有するシート518を取り替えることができる。
【0095】
典型的には、種々のあらかじめ決定された落下高さhおよび増分が方法600で使用される。この試験は、例えば、開始するために最低落下高さ(例えば、約10〜20cm)を使用することができる。次に、高さは、設定された増分または可変の増分のいずれかだけ、連続する落下のために増加され得る。方法600に記載の試験は、ガラス系物品試料518が破断または破壊されたときに停止される(ステップ631)。代替的に、破壊されることなく、落下高さhが最大落下高さ(例えば、約100cm)に到達した場合、方法600の落下試験を停止することができ、または破壊が起こるまで最大高さでステップ620を繰り返すことができる。
【0096】
いくつかの実施形態では、方法600のIBoS試験は、それぞれのあらかじめ決定された高さhにおいて、それぞれのガラス系物品試料518に対して1回のみ行われる。しかし、別の実施形態では、それぞれの試料は、それぞれの高さで複数の試験を行うことができる。
【0097】
ガラス系物品試料518の破壊が起こった場合(
図9のステップ631)、方法600によるIBoS試験を終了する(ステップ640)。あらかじめ決定された落下高さにおいて球を落下させて破壊が確認されない場合(ステップ632)、例えば5、10、または20cmなど、あらかじめ決定された増分だけ落下高さを増加させ(ステップ634)、試料の破壊が観察される(631)か、または試料が破壊されずに最大試験高さに到達する(636)かのいずれかとなるまで、ステップ620および630を繰り返す。ステップ631または636に到達したときに方法600による試験を終了する。
【0098】
前述の研磨紙上反転球(IBoS)試験を行うと、100cmの高さからガラスの表面上に球を落下させたときに、本明細書に記載のガラス系物品の実施形態は、約60%以上の残存率を有する。例えば、5つの同一(またはほぼ同一)の試料(すなわち、ほぼ同じ組成を有し、本明細書に記載のように、強化した場合、ほぼ同じ圧縮応力および圧縮もしくは圧縮応力層の深さを有する)のうちの3つが規定の高さ(この場合には100cm)から落下させた場合に破壊されずにIBoS落下試験で残存する場合、特定の高さから落下させたときにガラス系物品は60%の残存率を有すると記載される。別の実施形態では、強化されるガラス系物品の100cmIBoS試験における残存率は、約70%以上、別の実施形態では約80%以上、さらに別の実施形態では約90%以上である。別の実施形態では、IBoS試験において100cmの高さから落下させた強化ガラス系物品の残存率は、約60%以上、別の実施形態では約70%以上、さらに別の実施形態では約80%以上、別の実施形態では約90%以上である。1つ以上の実施形態では、IBoS試験において150cmの高さから落下させた強化ガラス系物品の残存率は、約60%以上、別の実施形態では約70%以上、さらに別の実施形態では約80%以上、別の実施形態では約90%以上である。
【0099】
本明細書で前述したIBoS試験方法および装置を用いてあらかじめ決定された高さから落下させた場合のガラス系物品の残存率を求めるために、ガラス系物品の少なくとも5つの同一(またはほぼ同一)の試料(すなわち、ほぼ同じ組成を有し、強化した場合、ほぼ同じ圧縮応力および圧縮もしくは層の深さを有する)が試験されるが、試験結果の信頼水準を高めるためにより多い数(例えば、10、20、30など)の試料の試験を行うことができる。各試料は、あらかじめ決定された高さ(例えば、100cmまたは150cm)から1回落下させるか、または代替的に、あらかじめ決定された高さに到達するまで破壊されることなく徐々により高い高さから落下させ、視覚的に(すなわち肉眼で)破壊(亀裂の形成、ならびに試料の厚さ全体および/または表面全体にわたる伝播)の形跡を調べる。あらかじめ決定された高さから落下させた後に破壊が全く観察されない場合、試料は落下試験に「残存した」と見なされ、あらかじめ決定された高さ以下の高さから試料を落下させたときに破壊が観察される場合、試料は「不合格」(または「残存しなかった」)と見なされる。残存率は、落下試験で残存した試料群のパーセントであると判断される。例えば、10の群から7つの試料があらかじめ決定された高さから落下させたときに破壊されなかった場合、ガラスの残存率は70%となる。
【0100】
本明細書に記載のガラス系物品は透明であり得る。1つ以上の実施形態では、ガラス系物品は、約1ミリメートル以下の厚さを有することができ、約380nm〜約780nmの範囲内の波長にわたって約88%以上の透過率を示すことができる。
【0101】
ガラス系物品は、実質的に白色を示すことができる。例えば、ガラス系物品は、CIE光源F02下において、約88以上のL
*値、約−3〜約+3の範囲内のa
*値、および約−6〜約+6の範囲内のb
*値のCIELAB色空間座標を示すことができる。
【0102】
基材の選択は特に限定されない。いくつかの例では、ガラス系物品は、イオン交換の場合に高い陽イオン拡散率を有するとして記載することができる。1つ以上の実施形態では、ガラスまたはガラスセラミックは、速いイオン交換能力を有し、すなわち拡散率が500μm
2/時を超え、または460℃において450μm
2/時を超えると特徴付けることができる。1つ以上の実施形態では、ガラスまたはガラスセラミックは、460℃において約450μm
2/時以上または460℃において約500μm
2/時以上であるナトリウムイオン拡散率を示す。1つ以上の実施形態では、ガラスまたはガラスセラミックは、460℃において約450μm
2/時以上または460℃において約500μm
2/時以上のカリウムイオン拡散率を示す。
【0103】
ガラス系物品は、非晶質基材、結晶性基材、またはそれらの組合せ(例えば、ガラスセラミック基材)を含むことができる。1つ以上の実施形態では、ガラス系物品基材(本明細書に記載のような化学強化が行われる前)は、モルパーセント(モル%)単位で約40〜約80の範囲内のSiO
2、約10〜約30の範囲内のAl
2O
3、約0〜約10の範囲内のB
2O
3、約0〜約20の範囲内のR
2O、および約0〜約15の範囲内のROを含むガラス組成物を含むことができる。本明細書において使用される場合、R
2Oは、Li
2O、Na
2O、K
2O、Rb
2O、およびCs
2Oなどのアルカリ金属酸化物の総量を意味する。本明細書において使用される場合、ROは、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnOなどのアルカリ土類金属酸化物の総量を意味する。いくつかの場合、組成物は、約0モル%〜約5モル%の範囲内のZrO
2および約0〜約15モル%の範囲内のP
2O
5のいずれか一方または両方を含むことができる。TiO
2は、約0モル%〜約2モル%で存在することができる。
【0104】
いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、モル%単位で約45〜約80、約45〜約75、約45〜約70、約45〜約65、約45〜約60、約45〜約65、約45〜約65、約50〜約70、約55〜約70、約60〜約70、約70〜約75、約70〜約72、約50〜約65、または約60〜約65の範囲内の量のSiO
2を含むことができる。
【0105】
いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、モル%単位で約5〜約28、約5〜約26、約5〜約25、約5〜約24、約5〜約22、約5〜約20、約6〜約30、約8〜約30、約10〜約30、約12〜約30、約14〜約30、15〜約30、または約12〜約18の範囲内の量のAl
2O
3を含むことができる。
【0106】
1つ以上の実施形態では、ガラス組成物は、モル%単位で約0〜約8、約0〜約6、約0〜約4、約0.1〜約8、約0.1〜約6、約0.1〜約4、約1〜約10、約2〜約10、約4〜約10、約2〜約8、約0.1〜約5、または約1〜約3の範囲内の量のB
2O
3を含むことができる。いくつかの場合、ガラス組成物はB
2O
3を実質的に含まなくてよい。本明細書において使用される場合、組成物の成分に関する「実質的に含まない」という語句は、その成分が、初期バッチング中に組成物に積極的または意図的には加えられないが、約0.001モル%未満の量の不純物として存在し得ることを意味する。
【0107】
いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、MgO、CaO、およびZnOなどの1種類以上のアルカリ土類金属酸化物を含むことができる。いくつかの実施形態では、1種類以上のアルカリ土類金属酸化物の総量は、ゼロではない量〜最大約15モル%であり得る。1つ以上の特定の実施形態では、任意のアルカリ土類金属酸化物の総量は、ゼロではない量〜最大約14モル%、最大約12モル%、最大約10モル%、最大約8モル%、最大約6モル%、最大約4モル%、最大約2モル%、または最大約1.5モル%であり得る。いくつかの実施形態では、1種類以上のアルカリ土類金属酸化物の総量は、モル%単位で約0.01〜10、約0.01〜8、約0.01〜6、約0.01〜5、約0.05〜10、約0.05〜2、または約0.05〜1の範囲内であり得る。MgOの量は、約0モル%〜約5モル%(例えば、約0.001〜約1、約0.01〜約2、または約2モル%〜約4モル%)の範囲内であり得る。ZnOの量は、約0〜約2モル%(例えば、約1モル%〜約2モル%)の範囲内であり得る。CaOの量は、約0モル%〜約2モル%であり得る。1つ以上の実施形態では、ガラス組成物は、MgOを含むことができ、CaOおよびZnOを実質的に含まなくてよい。一変形形態では、ガラス組成物は、CaOまたはZnOのいずれか1つを含むことができ、MgO、CaO、およびZnOの別のものを実質的に含まなくてよい。1つ以上の特定の実施形態では、ガラス組成物は、MgO、CaO、およびZnOのアルカリ土類金属酸化物の2種類のみを含むことができ、第3のアルカリ土類金属酸化物を実質的に含まなくてよい。
【0108】
ガラス組成物中のアルカリ金属酸化物R
2Oの総量は、モル%単位で約5〜約20、約5〜約18、約5〜約16、約5〜約15、約5〜約14、約5〜約12、約5〜約10、約5〜約8、約5〜約20、約6〜約20、約7〜約20、約8〜約20、約9〜約20、約10〜約20、約11〜約20、約12〜約18、または約14〜約18の範囲内であり得る。
【0109】
1つ以上の実施形態では、ガラス組成物は、約0モル%〜約18モル%、約0モル%〜約16モル%、または約0モル%〜約14モル%、約0モル%〜約12モル%、約2モル%〜約18モル%、約4モル%〜約18モル%、約6モル%〜約18モル%、約8モル%〜約18モル%、約8モル%〜約14モル%、約8モル%〜約12モル%、または約10モル%〜約12モル%の範囲内の量のNa
2Oを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約4モル%以上のNa
2Oを含むことができる。
【0110】
いくつかの実施形態では、成形性およびイオン交換性のバランスをとるために、Li
2OおよびNa
2Oの量は、特定の量または比に制御される。例えば、Li
2Oの量が増加すると、液相線粘度が減少することがあり、したがって一部の成形方法の使用が妨げられるが、そのようなガラス組成物は、本明細書に記載のようにより深いDOCレベルでイオン交換される。Na
2Oの量により、液相線粘度を変化させることがあるが、より深いDOCレベルでのイオン交換を妨害することがある。
【0111】
1つ以上の実施形態では、ガラス組成物は、約5モル%未満、約4モル%未満、約3モル%未満、約2モル%未満、または約1モル%未満の量のK
2Oを含むことができる。1つ以上の別の実施形態では、ガラス組成物は、本明細書に規定のようにK
2Oを実質的に含まなくてよい。
【0112】
1つ以上の実施形態では、ガラス組成物は、約0モル%〜約18モル%、約0モル%〜約15モル%、または約0モル%〜約10モル%、約0モル%〜約8モル%、約0モル%〜約6モル%、約0モル%〜約4モル%、または約0モル%〜約2モル%の量のLi
2Oを含むことができる。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、約2モル%〜約10モル%、約4モル%〜約10モル%、約6モル%〜約10モル%、または約5モル%〜約8モル%の量のLi
2Oを含むことができる。1つ以上の別の実施形態では、ガラス組成物は、本明細書に規定のようにLi
2Oを実質的に含まなくてよい。
【0113】
1つ以上の実施形態では、ガラス組成物はFe
2O
3を含むことができる。このような実施形態では、Fe
2O
3は、約1モル%未満、約0.9モル%未満、約0.8モル%未満、約0.7モル%未満、約0.6モル%未満、約0.5モル%未満、約0.4モル%未満、約0.3モル%未満、約0.2モル%未満、約0.1モル%未満、ならびにそれらの間の全ての範囲および部分的範囲の量で存在することができる。1つ以上の別の実施形態では、ガラス組成物は、本明細書に規定のようにFe
2O
3を実質的に含まなくてよい。
【0114】
1つ以上の実施形態では、ガラス組成物はZrO
2を含むことができる。このような実施形態では、ZrO
2は、約1モル%未満、約0.9モル%未満、約0.8モル%未満、約0.7モル%未満、約0.6モル%未満、約0.5モル%未満、約0.4モル%未満、約0.3モル%未満、約0.2モル%未満、約0.1モル%未満、ならびにそれらの間の全ての範囲および部分的範囲の量で存在することができる。1つ以上の別の実施形態では、ガラス組成物は、本明細書に規定のようにZrO
2を実質的に含まなくてよい。
【0115】
1つ以上の実施形態では、ガラス組成物は、約0モル%〜約10モル%、約0モル%〜約8モル%、約0モル%〜約6モル%、約0モル%〜約4モル%、約0.1モル%〜約10モル%、約0.1モル%〜約8モル%、約2モル%〜約8モル%、約2モル%〜約6モル%、または約2モル%〜約4モル%の範囲内のP
2O
5を含むことができる。いくつかの場合、ガラス組成物はP
2O
5を実質的に含まなくてよい。
【0116】
1つ以上の実施形態では、ガラス組成物はTiO
2を含むことができる。このような実施形態では、TiO
2は、約6モル%未満、約4モル%未満、約2モル%未満、または約1モル%未満の量で存在することができる。1つ以上の別の実施形態では、ガラス組成物は、本明細書に規定のようにTiO
2を実質的に含まなくてよい。いくつかの実施形態では、TiO
2は、約0.1モル%〜約6モル%、または約0.1モル%〜約4モル%の範囲内の量で存在する。
【0117】
いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、種々の組成関係を含むことができる。例えば、ガラス組成物は、約0〜約1、約0〜約0.5、約0〜約0.4、約0.1〜約0.5、または約0.2〜約0.4の範囲内の、Li
2Oの量(モル%単位)のR
2Oの総量(モル%単位)に対する比を含むことができる。
【0118】
いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、約0〜約5(例えば、約0〜約4、約0〜約3、約0.1〜約4、約0.1〜約3、約0.1〜約2、または約1〜約2)の範囲内の、R
2Oの総量(モル%単位)とAl
2O
3の量(モル%単位)との間の差(R
2O−Al
2O
3)を含むことができる。
いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、約0〜約5(例えば、約0〜約4、約0〜約3、約0.1〜約4、約0.1〜約3、約1〜約3、または約2〜約3)の範囲内の、R
xOの総量(モル%単位)とAl
2O
3の量(モル%単位)との間の差(R
xO−Al
2O
3)を含むことができる。本明細書において使用される場合、RxOは、本明細書に規定されるR
2OおよびROを含む。
【0119】
いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、約0〜約5(例えば、約0〜約4、約0〜約3、約1〜約4、約1〜約3、または約1〜約2)の範囲内の、R
2Oの総量(モル%単位)のAl
2O
3の量(モル%単位)に対する比(R
2O/Al
2O
3)を含むことができる。
【0120】
1つ以上の実施形態では、ガラス組成物は、約15モル%を超える(例えば、18モル%を超え、約20モル%を超え、または約23モル%を超える)Al
2O
3とNa
2Oとの合計量を含む。Al
2O
3とNa
2Oとの合計量は、最大約30モル%、約32モル%、または約35モル%(これらの値を含む)であり得る。
【0121】
1つ以上の実施形態のガラス組成物は、約0〜約2の範囲内のMgOの量(モル%単位)のROの総量(モル%単位)に対する比を示すことができる。
【0122】
いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、核形成剤を実質的に含まなくてよい。典型的な核形成剤の例は、TiO
2、ZrO
2などである。核形成剤は、核形成剤がガラス中の微結晶の形成を開始することができるガラス中の構成要素という機能に関して記載することができる。
【0123】
いくつかの実施形態では、ガラス基材に使用される組成物は、Na
2SO
4、NaCl、NaF、NaBr、K
2SO
4、KCl、KF、KBr、およびSnO
2を含む群から選択される約0モル%〜約2モル%の少なくとも1種類の清澄剤とまとめることができる。1つ以上の実施形態によるガラス組成物は、約0〜約2、約0〜約1、約0.1〜約2、約0.1〜約1、または約1〜約2の範囲内のSnO
2をさらに含むことができる。本明細書に開示されるガラス組成物は、As
2O
3および/またはSb
2O
3を実質的に含まなくてよい。
【0124】
1つ以上の実施形態では、組成物は特に、約62モル%〜75モル%のSiO
2;約10.5モル%〜約17モル%のAl
2O
3;約5モル%〜約13モル%のLi
2O;約0モル%〜約4モル%のZnO;約0モル%〜約8モル%のMgO;約2モル%〜約5モル%のTiO
2;約0モル%〜約4モル%のB
2O
3;約0モル%〜約5モル%のNa
2O;約0モル%〜約4モル%のK
2O;約0モル%〜約2モル%のZrO
2;約0モル%〜約7モル%のP
2O
5;約0モル%〜約0.3モル%のFe
2O
3;約0モル%〜約2モル%のMnOx;および約0.05モル%〜約0.2モル%のSnO
2を含むことができる。
【0125】
1つ以上の実施形態では、組成物は、約67モル%〜約74モル%のSiO
2;約11モル%〜約15モル%のAl
2O
3;約5.5モル%〜約9モル%のLi
2O;約0.5モル%〜約2モル%のZnO;約2モル%〜約4.5モル%のMgO;約3モル%〜約4.5モル%のTiO
2;約0モル%〜約2.2モル%のB
2O
3;約0モル%〜約1モル%のNa
2O;約0モル%〜約1モル%のK
2O;約0モル%〜約1モル%のZrO
2;約0モル%〜約4モル%のP
2O
5;約0モル%〜約0.1モル%のFe
2O
3;約0モル%〜約1.5モル%のMnOx;および約0.08モル%〜約0.16モル%のSnO
2を含むことができる。
【0126】
1つ以上の実施形態では、組成物は、約70モル%〜75モル%のSiO
2;約10モル%〜約15モル%のAl
2O
3;約5モル%〜約13モル%のLi
2O;約0モル%〜約4モル%のZnO;約0.1モル%〜約8モル%のMgO;約0モル%〜約5モル%のTiO
2;約0.1モル%〜約4モル%のB
2O
3;約0.1モル%〜約5モル%のNa
2O;約0モル%〜約4モル%のK
2O;約0モル%〜約2モル%のZrO
2;約0モル%〜約7モル%のP
2O
5;約0モル%〜約0.3モル%のFe
2O
3;約0モル%〜約2モル%のMnOx;および約0.05モル%〜約0.2モル%のSnO
2を含むことができる。
【0127】
1つ以上の実施形態では、組成物は、約52モル%〜約65モル%のSiO
2;約14モル%〜約18モル%のAl
2O
3;約5.5モル%〜約7モル%のLi
2O;約1モル%〜約2モル%のZnO;約0.01モル%〜約2モル%のMgO;約4モル%〜約12モル%のNa
2O;約0.1モル%〜約4モル%のP
2O
5;および約0.01モル%〜約0.16モル%のSnO
2を含むことができる。いくつかの実施形態では、組成物は、B
2O
3、TiO
2、K
2O、およびZrO
2のいずれか1つ以上を実質的に含まなくてよい。
【0128】
1つ以上の実施形態では、組成物は、0.5モル%以上のP
2O
5、Na
2O、および任意選択的にLi
2Oを含むことができ、Li
2O(モル%)/Na
2O(モル%)<1である。さらに、これらの組成物はB
2O
3およびK
2Oを実質的に含まなくてよい。いくつかの実施形態では、組成物は、ZnO、MgO、およびSnO
2を含むことができる。
【0129】
いくつかの実施形態では、組成物は、約58モル%〜約65モル%のSiO
2;約11モル%〜約19モル%のAl
2O
3;約0.5モル%〜約3モル%のP
2O
5;約6モル%〜約18モル%のNa
2O;0モル%〜約6モル%のMgO;および0モル%〜約6モル%のZnOを含むことができる。ある実施形態では、組成物は、約63モル%〜約65モル%のSiO
2;11モル%〜約17モル%のAl
2O
3;約1モル%〜約3モル%のP
2O
5;約9モル%〜約20モル%のNa
2O;0モル%〜約6モル%のMgO;および0モル%〜約6モル%のZnOを含むことができる。
【0130】
いくつかの実施形態では、組成物は、R
2O(モル%)/Al
2O
3(モル%)<2の組成関係を含むことができ、ここで、R
2O=Li
2O+Na
2Oである。いくつかの実施形態では、65モル%<SiO
2(モル%)+P
2O
5(モル%)<67モル%である。ある実施形態では、R
2O(モル%)+R’O(モル%)−Al
2O
3(モル%)+P
2O
5(モル%)>−3モル%であり、ここで、R
2O=Li
2O+Na
2Oであり、R’Oは、組成物中に存在する二価の金属酸化物の総量である。
【0131】
本明細書に記載のような化学強化前のガラス系物品の別の代表的な組成を表1Aに示す。表1Bは、表1Aに列挙される例に関して測定した選択された物理的性質を列挙する。表1Bに列挙される物理的性質は、密度;低温および高温CTE;ひずみ点、徐冷点、および軟化点;10
11ポアズ温度、35k温度P、200kP温度、液相線温度、およびジルコン破壊温度;ジルコン破壊粘度および液相線粘度;ポアソン比;ヤング率;屈折率、ならびに応力光係数を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のガラス系物品およびガラス基材は、30ppm/℃以下の高温CTEおよび/または70GPa以上のヤング率を有し、いくつかの実施形態では最大80GPaのヤング率を有する。
【0145】
ガラス系物品がガラスセラミックを含む場合、その結晶相は、β−スポジュメン、ルチル、ガーナイト、もしくは別の周知の結晶相、およびそれらの組合せを含むことができる。
【0146】
ガラス系物品は、実質的に平坦であり得るが、別の実施形態は、湾曲した基材または別の成形もしくは造形された基材を使用することができる。いくつかの場合、ガラス系物品は、3Dまたは2.5Dの形状を有することができる。ガラス系物品は、実質的に光学的に透明で透過性であり得、かつ光散乱が起こらなくてよい。ガラス系物品は、約1.45〜約1.55の範囲内の屈折率を有することができる。本明細書において使用される場合、屈折率値は550nmの波長に関するものである。
【0147】
さらにまたは代替的に、ガラス系物品の厚さは、1つ以上の寸法に沿って一定であり得、または美的および/もしくは機能的理由でその寸法の1つ以上に沿って変動し得る。例えば、ガラス系物品の端部は、ガラス系物品のより中央の領域よりも厚いことができる。ガラス系物品の長さ、幅、および厚さの寸法は、物品の用途または使用により変更することもできる。
【0148】
ガラス系物品は、形成時の方法によって特徴付けることができる。例えば、ガラス系物品は、フロート成形可能(すなわち、フロート法によって形成される)、ダウンドロー可能、および特にフュージョン成形可能もしくはスロットドロー可能(すなわち、フュージョンドロー法またはスロットドロー法などのダウンドロー法によって形成される)として特徴付けることができる。
【0149】
フロート成形可能なガラス系物品は、滑らかな表面によって特徴付けることができ、均一な厚さは、溶融金属、典型的にはスズの床の上に溶融ガラスを浮遊させることによって形成される。例示的な方法の1つでは、溶融スズ床の表面上に供給される溶融ガラスは、浮遊するガラスリボンを形成する。ガラスリボンがスズ浴に沿って流れるとき、温度が徐々に低下し、ガラスリボンは固化して、スズからローラー上に引き上げ可能な固体ガラス系物品となる。浴を離れた後、ガラス系物品は、さらに冷却し、内部応力を減少させるために徐冷することができる。ガラス系物品がガラスセラミックである場合、フロート法によって形成されたガラス系物品は、1つ以上の結晶相が形成されるセラミック化プロセスを行うことができる。
【0150】
ダウンドロー法では、比較的無垢の表面を有し均一な厚さを有するガラス系物品が製造される。ガラス系物品の平均曲げ強度は、表面の傷の量およびサイズによって制御されるため、接触が最小限であった無垢の表面は、より高い初期強度を有する。この高強度のガラス系物品が次に(例えば、化学的に)さらに強化されると、得られる強度は、ラップ仕上げおよび研磨が行われた表面を有するガラス系物品の強度よりも高くなる場合がある。ダウンドローされたガラス系物品は、約2mm未満の厚さまで延伸することができる。さらに、ダウンドローされたガラス系物品は、費用のかかる研削および研磨を行わずにその最終用途に使用可能な非常に平坦で滑らかな表面を有する。ガラス系物品がガラスセラミックである場合、ダウンドロー法によって形成されたガラス系物品は、1つ以上の結晶相が形成されるセラミック化プロセスを行うことができる。
【0151】
フュージョンドロー法では、例えば、溶融ガラス原材料を受け入れるためのチャネルを有するドロー用タンクが使用される。チャネルは、チャネルの両側面上のチャネルの長さに沿った上部で開放された堰を有する。チャネルが溶融材料で満たされると、溶融ガラスが堰からあふれ出る。重力のために、溶融ガラスは、ドロー用タンクの外面を、2つの流動するガラス膜として流れ落ちる。ドロー用タンクのこれらの外面は、ドロー用タンクの下の端部でつながるように下方および内側に延在している。2つの流動するガラス膜は、この端部で合流して融合し、1つの流動するガラス系物品を形成する。フュージョンドロー法は、チャネルを越えて流れる2つのガラス膜が互いに融合するため、結果として得られるガラス系物品のいずれの外面も、装置のいずれの部分とも接触しないという利点が得られる。したがって、フュージョンドローされたガラス系物品の表面特性は、このような接触による影響を受けない。ガラス系物品がガラスセラミックである場合、フュージョン法によって形成されたガラス系物品は、1つ以上の結晶相が形成されるセラミック化プロセスを行うことができる。
【0152】
スロットドロー法は、フュージョンドロー方法と異なる。スロットドロー法では、溶融原材料ガラスがドロー用タンクに供給される。ドロー用タンクの底部は、開放スロットを有し、これはスロットの長さに沿って延在するノズルを有する。溶融ガラスはスロット/ノズルを通って流れ、連続ガラス系物品として下方に延伸され、徐冷領域中に入る。
【0153】
ガラス系物品は、表面の傷の影響をなくすかまたは軽減するために、酸磨きまたは別の処理を行うことができる。
【0154】
本開示の別の一態様は、本明細書に記載のガラス系物品を含むデバイスに関する。例えば、デバイスは、ディスプレイを含むか、または強化された薄いガラスを必要とするあらゆるデバイスを含むことができる。1つ以上の実施形態では、デバイスは、モバイルデバイス、例えば携帯電話、ラップトップ、タブレット、mp3プレーヤー、ナビゲーション装置、または据え置き型デバイス、例えばコンピュータ、道路情報/娯楽システムにおける電子ディスプレイ、広告用掲示板、販売時点管理システム、ナビゲーションシステムなどを含むことができる電子デバイスである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のガラス系物品は、建築物品(壁、建具、パネル、窓など)、輸送物品(例えば、自動車用途、列車、航空機、航洋船などにおけるグレージングまたは内面)、電化製品(例えば、洗濯機、乾燥機、食器洗浄機、冷蔵庫など)、またはある程度の破壊抵抗を必要とするあらゆる物品に組み込むことができる。
図28に示されるように、電子デバイス1000は、本明細書に記載の1つ以上の実施形態によるガラス系物品100を含むことができる。デバイス100は、前面1040、裏面1060、および側面1080を有するハウジング1020と、少なくとも部分的または完全にハウジング内にあり、かつ少なくともコントローラ、メモリを含む電気部品(図示せず)と、ハウジングの前面におけるまたはそれに隣接するディスプレイ1120とを含む。ガラス系物品100は、ディスプレイ1120を覆うようにハウジングの前面またはその上に配置されるカバーとして示されている。いくつかの実施形態では、ガラス系物品は、裏面カバーとして使用することができる。
【0155】
本開示の別の一態様は、破壊抵抗性ガラス系物品の形成方法に関する。この方法は、約1ミリメートル以下の厚さを画定する、第1の表面および第2の表面を有するガラス系基材を提供するステップと、本明細書に記載のようにガラス系基材中に応力プロファイルを生じさせて、破壊抵抗性ガラス系物品を得るステップとを含む。1つ以上の実施形態では、応力プロファイルを生じさせるステップは、複数のアルカリイオンのイオン交換をガラス系基材中で行って、厚さの実質的な部分に沿って(本明細書に記載のように)または厚さ全体に沿って変動するゼロではないアルカリ金属酸化物濃度を形成するステップを含む。一例では、応力プロファイルを生じさせるステップは、Na+、K+、Rb+、Cs+、またはそれらの組合せの硝酸塩を含み、約350℃以上(例えば、約350℃〜約500℃)の温度を有する溶融塩浴中にガラス系基材を浸漬するステップを含む。一例では、溶融浴は、NaNO
3、KNO
3、またはそれらの組合せを含むことができ、約485℃以下の温度を有することができる。別の一例では、浴は、NaNO
3とKNO
3との混合物を含むことができ、約460℃の温度を有することができる。ガラス系基材は、浴中に約2時間以上、最大約48時間(例えば、約2時間〜約10時間、約2時間〜約8時間、約2時間〜約6時間、約3時間〜約10時間、または約3.5時間〜約10時間)にわたって浸漬することができる。
【0156】
いくつかの実施形態では、方法は、1つの浴中または2つ以上の浴中での連続浸漬ステップを使用する2つ以上のステップにおいて、ガラス系基材の化学強化またはイオン交換を行うステップを含むことができる。例えば、2つ以上の浴を連続して使用することができる。1つ以上の浴の組成は、1種類の金属(例えば、Ag+、Na+、K+、Rb+、またはCs+)または複数の金属の組合せを同じ浴中に含むことができる。2つ以上の浴が利用される場合、浴は、互いに同じまたは異なる組成および/または温度を有することができる。そのような各浴中の浸漬時間は、同じであり得るか、または所望の応力プロファイルを得るために変更され得る。
【0157】
方法の1つ以上の実施形態では、より大きい表面CSを得るために、第2の浴またはそれに続く浴を利用することができる。いくつかの場合、この方法は、ガラス系基材を第2またはそれに続く浴中に浸漬して、層の化学深さおよび/またはDOCに顕著な影響を与えることなく、より大きい表面CSを得るステップを含む。このような実施形態では、第2またはそれに続く浴は、1種類の金属(例えば、KNO
3またはNaNO
3)または金属の混合物(KNO
3およびNaNO
3)を含むことができる。第2またはそれに続く浴の温度は、より大きい表面CSを得るために調節することができる。いくつかの実施形態では、第2またはそれに続く浴中のガラス系基材の浸漬時間も、層の化学深さおよび/またはDOCに影響を与えることなくより大きい表面CSを得るために調節することができる。例えば、第2またはそれに続く浴中の浸漬時間は、10時間未満(例えば、約8時間以下、約5時間以下、約4時間以下、約2時間以下、約1時間以下、約30分以下、約15分以下、または約10分以下)であり得る。
【0158】
1つ以上の別の実施形態では、方法は、本明細書に記載のイオン交換プロセスと組み合わせて使用できる1つ以上の熱処理ステップを含むことができる。熱処理は、所望の応力プロファイルを得るためにガラス系物品の熱処理を行うステップを含む。いくつかの実施形態では、熱処理は、約300℃〜約600℃の範囲内の温度へのガラス系基材の徐冷、強化、または加熱を行うことを含む。熱処理は、1分〜最大約18時間にわたって続けることができる。いくつかの実施形態では、熱処理は、1つ以上のイオン交換プロセス後または複数のイオン交換プロセスで使用することができる。
【0159】
前述の例1〜64および以下の実施例1〜6、ならびに本明細書に記載の一連の組成物などの本明細書に記載のガラス組成物の1つ以上の実施形態は、本明細書に記載されるようなガラス系物品の製造に使用することができる。一実施形態では、ガラス系物品は、厚さ(t)(mm)を画定する、第1の表面および第1の表面の反対にある第2の表面と、ゼロではなく、かつ約0・t〜約0.3・tの厚さ範囲に沿って変動する金属酸化物の濃度と、約71.5/√(t)未満の最大CT(MPa)を含む中央張力(CT)領域とを含み、物品は、物品が曲げられて100MPaの引張応力を付与するときに、500ニュートンを超える閾値破壊衝撃力を示す。1つ以上の特定の実施形態では、ガラス物品は、物品が曲げられて100MPaの引張応力を付与するときに、525、550、575、600、625、650、675、700、725、750、775、800、825、または800ニュートンを超える閾値破壊衝撃力を示す。1つ以上の実施形態によると、上記の閾値破壊衝撃力特性を有するガラス系物品は、0.1〜3mmの範囲内、特に0.2〜2mm、0.2〜1.9mm、0.2〜1.8mm、0.2〜1.7mm、0.2〜1.6mm、0.2〜1.5mm、0.2〜1.4mm、0.2〜1.3mm、0.2〜1.2mm、0.2〜1.1mm、0.3〜1mm、0.3〜0.9mm、0.3〜0.8mm、0.3〜0.7mm、0.3〜0.6mm、0.3〜0.5mm、および0.3〜0.4mmの範囲内の厚さを有する。特定の実施形態では、上記の閾値破壊衝撃力特性を有するガラス系物品は、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1mm、1.1mm、1.2mm、1.3mm、1.4mm、1.5mm、1.6mm、1.7mm、1.8mm、2mm、2.1mm、2.2mm、2.3mm、2.4mm、2.5mm、2.6mm、2.7mm、2.8mm、2.9mm、または3mmの厚さを有する。上記実施形態のいずれにおいても、上記の閾値破壊衝撃力特性および厚さを有するガラス系物品は、約200MPaを超える表面圧縮応力を有する。
【0160】
前述の例1〜64および以下の実施例1〜6、ならびに本明細書に記載の一連の組成物などの本明細書に記載のガラス組成物の1つ以上の実施形態は、本明細書に記載のようなガラス系物品の製造に使用することができる。一実施形態では、ガラス系物品は、厚さ(t)(mm)を画定する、第1の表面および第1の表面の反対にある第2の表面と、ゼロではなく、かつ約0・t〜約0.3・tの厚さ範囲に沿って変動する金属酸化物の濃度と、約71.5/√(t)未満の最大CT(MPa)を含む中央張力(CT)領域とを含み、物品は、物品が曲げられて100MPaの引張応力を付与するときに、800Nの衝撃力によって衝突された後に125MPa以上の残留強度を示す。1つ以上の実施形態では、ガラス系物品は、物品が曲げられて100MPaの引張応力を付与するときに、800Nの衝撃力によって衝突された後に135、145、150、160、170、180、190、または200MPa以上の残留強度を示す。
【0161】
前述の例1〜64および以下の実施例1〜6、ならびに本明細書に記載の一連の組成物などの本明細書に記載のガラス組成物の1つ以上の実施形態は、本明細書に記載のようなガラス系物品の製造に使用することができる。一実施形態では、ガラス系物品は、約3ミリメートル未満の厚さ(t)を画定する、第1の表面および第1の表面の反対にある第2の表面と、厚さに沿って延在する応力プロファイルとを含み、約0・t〜最大0.3・tおよび0.7・t超からの厚さ範囲間の応力プロファイルの全ての点は、約0.1MPa/マイクロメートルを超える絶対値を有する傾きを有する接線を含み、応力プロファイルは、最大CS、DOC、および約71.5/√(t)未満の最大CT(MPa)を含み、最大CSの絶対値に対する最大CTの比は、約0.01〜約0.2の範囲内であり、DOCは、約0.1・t以上であり、物品は、物品が曲げられて100MPaの引張応力を付与するときに、500ニュートンを超える閾値破壊衝撃力を示す。
【0162】
1つ以上の特定の実施形態では、ガラス物品は、物品が曲げられて100MPaの引張応力を付与するときに、525、550、575、600、625、650、675、700、725、750、775、800、825、または800ニュートンを超える閾値破壊衝撃力を示す。1つ以上の実施形態によると、上記の閾値破壊衝撃力特性を有するガラス系物品は、0.1〜3mmの範囲内、特に0.2〜2mm、0.2〜1.9mm、0.2〜1.8mm、0.2〜1.7mm、0.2〜1.6mm、0.2〜1.5mm、0.2〜1.4mm、0.2〜1.3mm、0.2〜1.2mm、0.2〜1.1mm、0.3〜1mm、0.3〜0.9mm、0.3〜0.8mm、0.3〜0.7mm、0.3〜0.6mm、0.3〜0.5mm、および0.3〜0.4mmの範囲内の厚さを有する。特定の実施形態では、上記の閾値破壊衝撃力特性を有するガラス系物品は、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1mm、1.1mm、1.2mm、1.3mm、1.4mm、1.5mm、1.6mm、1.7mm、1.8mm、2mm、2.1mm、2.2mm、2.3mm、2.4mm、2.5mm、2.6mm、2.7mm、2.8mm、2.9mm、または3mmの厚さを有する。上記実施形態のいずれにおいても、上記の閾値破壊衝撃力特性および厚さを有するガラス系物品は、約200MPaを超える表面圧縮応力を有する。
【0163】
前述の例1〜64および以下の実施例1〜6、ならびに本明細書に記載の一連の組成物などの本明細書に記載のガラス組成物の1つ以上の実施形態は、本明細書に記載のようなガラス系物品の製造に使用することができる。一実施形態では、ガラス系物品は、約3ミリメートル未満の厚さ(t)を画定する、第1の表面および第1の表面の反対にある第2の表面と、厚さに沿って延在する応力プロファイルとを含み、約0・t〜最大0.3・tおよび0.7・t超からの厚さ範囲間の応力プロファイルの全ての点は、約0.1MPa/マイクロメートルを超える絶対値を有する傾きを有する接線を含み、応力プロファイルは、最大CS、DOC、および約71.5/√(t)未満の最大CT(MPa)を含み、最大CSの絶対値に対する最大CTの比は、約0.01〜約0.2の範囲内であり、DOCは、約0.1・t以上であり、物品は、物品が曲げられて100MPaの引張応力を付与するときに、800Nの衝撃力によって衝突された後に125MPa以上の残留強度を示す。1つ以上の実施形態では、ガラス系物品は、物品が曲げられて100MPaの引張応力を付与するときに、800Nの衝撃力によって衝突された後に135、145、150、160、170、180、190、または200MPa以上の残留強度を示す。
【0164】
前述の例1〜64および以下の実施例1〜6、ならびに本明細書に記載の一連の組成物などの本明細書に記載のガラス組成物の1つ以上の実施形態は、本明細書に記載のようなガラス系物品の製造に使用することができる。一実施形態では、ガラス系物品は、厚さ(t)(mm)を画定する、第1の表面および第1の表面の反対にある第2の表面と、濃度勾配を形成する金属酸化物とを含み、金属酸化物の濃度は、第1の表面から、第1の表面と第2の表面との間の点まで減少し、かつその点から第2の表面まで増加し、その点における金属酸化物の濃度は、ゼロではなく、物品は、物品が曲げられて100MPaの引張応力を付与するときに、500ニュートンを超える閾値破壊衝撃力を示す。
【0165】
1つ以上の特定の実施形態では、ガラス物品は、物品が曲げられて100MPaの引張応力を付与するときに、525、550、575、600、625、650、675、700、725、750、775、800、825、または800ニュートンを超える閾値破壊衝撃力を示す。1つ以上の実施形態によると、上記の閾値破壊衝撃力特性を有するガラス系物品は、0.1〜3mmの範囲内、特に0.2〜2mm、0.2〜1.9mm、0.2〜1.8mm、0.2〜1.7mm、0.2〜1.6mm、0.2〜1.5mm、0.2〜1.4mm、0.2〜1.3mm、0.2〜1.2mm、0.2〜1.1mm、0.3〜1mm、0.3〜0.9mm、0.3〜0.8mm、0.3〜0.7mm、0.3〜0.6mm、0.3〜0.5mm、および0.3〜0.4mmの範囲内の厚さを有する。特定の実施形態では、上記の閾値破壊衝撃力特性を有するガラス系物品は、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1mm、1.1mm、1.2mm、1.3mm、1.4mm、1.5mm、1.6mm、1.7mm、1.8mm、2mm、2.1mm、2.2mm、2.3mm、2.4mm、2.5mm、2.6mm、2.7mm、2.8mm、2.9mm、または3mmの厚さを有する。上記実施形態のいずれにおいても、上記の閾値破壊衝撃力特性および厚さを有するガラス系物品は、約200MPaを超える表面圧縮応力を有する。
【0166】
前述の例1〜64および以下の実施例1〜6、ならびに本明細書に記載の一連の組成物などの本明細書に記載のガラス組成物の1つ以上の実施形態は、本明細書に記載のようなガラス系物品の製造に使用することができる。一実施形態では、ガラス系物品は、厚さ(t)(mm)を画定する、第1の表面および第1の表面の反対にある第2の表面と、濃度勾配を形成する金属酸化物とを含み、金属酸化物の濃度は、第1の表面から、第1の表面と第2の表面との間の点まで減少し、かつその点から第2の表面まで増加し、その点における金属酸化物の濃度は、ゼロではなく、物品は、物品が曲げられて100MPaの引張応力を付与するときに、800Nの衝撃力によって衝突されした後に125MPa以上の残留強度を示す。1つ以上の実施形態では、ガラス系物品は、物品が曲げられて100MPaの引張応力を付与するときに、800Nの衝撃力によって衝突された後に135、145、150、160、170、180、190、または200MPa以上の残留強度を示す。
【0167】
前述の例1〜64および以下の実施例1〜6、ならびに本明細書に記載の一連の組成物などの本明細書に記載のガラス組成物の1つ以上の実施形態は、本明細書に記載のようなガラス系物品の製造に使用することができる。一実施形態では、ガラス系物品は、CS領域とCT領域とを含む応力プロファイルを含み、CT領域は、応力(x)=MaxT−(((CT
n・(n+1))/0.5
n)・|(x/t)−0.5|
n)の式によって概算され、式中、MaxTは、最大張力値であり、かつMPaの単位の正の値であり、CT
nは、nにおける張力値であり、CT
nは、MaxT以下であり、かつMPaの単位の正の値であり、xは、マイクロメートル単位の厚さ(t)に沿った位置であり、nは、1.5〜5の範囲内であり、物品は、物品が曲げられて100MPaの引張応力を付与するときに、500ニュートンを超える閾値破壊衝撃力を示す。
【0168】
1つ以上の特定の実施形態では、ガラス物品は、物品が曲げられて100MPaの引張応力を付与するときに、525、550、575、600、625、650、675、700、725、750、775、800、825、または800ニュートンを超える閾値破壊衝撃力を示す。1つ以上の実施形態によると、上記の閾値破壊衝撃力特性を有するガラス系物品は、0.1〜3mmの範囲内、特に0.2〜2mm、0.2〜1.9mm、0.2〜1.8mm、0.2〜1.7mm、0.2〜1.6mm、0.2〜1.5mm、0.2〜1.4mm、0.2〜1.3mm、0.2〜1.2mm、0.2〜1.1mm、0.3〜1mm、0.3〜0.9mm、0.3〜0.8mm、0.3〜0.7mm、0.3〜0.6mm、0.3〜0.5mm、および0.3〜0.4mmの範囲内の厚さを有する。特定の実施形態では、上記の閾値破壊衝撃力特性を有するガラス系物品は、0.4mm、0.5、mm、0.6、mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1mm、1.1mm、1.2mm、1.3mm、1.4mm、1.5mm、1.6mm、1.7mm、1.8mm、2mm、2.1mm、2.2mm、2.3mm、2.4mm、2.5mm、2.6mm、2.7mm、2.8mm、2.9mm、または3mmの厚さを有する。上記実施形態のいずれにおいても、上記の閾値破壊衝撃力特性および厚さを有するガラス系物品は、約200MPaを超える表面圧縮応力を有する。
【0169】
前述の例1〜64および以下の実施例1〜6、ならびに本明細書に記載の一連の組成物などの本明細書に記載のガラス組成物の1つ以上の実施形態は、本明細書に記載のようなガラス系物品の製造に使用することができる。一実施形態では、ガラス系物品は、CS領域とCT領域とを含む応力プロファイルを含み、CT領域は、応力(x)=MaxT−(((CT
n・(n+1))/0.5
n)・|(x/t)−0.5|
n)の式によって概算され、式中、MaxTは、最大張力値であり、かつMPaの単位の正の値であり、CT
nは、nにおける張力値であり、CT
nは、MaxT以下であり、かつMPaの単位の正の値であり、xは、マイクロメートル単位の厚さ(t)に沿った位置であり、nは、1.5〜5の範囲内であり、物品は、物品が曲げられて100MPaの引張応力を付与するときに、800Nの衝撃力によって衝突された後に125MPa以上の残留強度を示す。1つ以上の実施形態では、ガラス系物品は、物品が曲げられて100MPaの引張応力を付与するときに、800Nの衝撃力によって衝突された後に135、145、150、160、170、180、190、または200MPa以上の残留強度を示す。
【0170】
物品が曲げられて100MPaの引張応力を付与するときに、物品が、ある力の値よりも大きい閾値破壊衝撃力を示すか、または物品が曲げられて100MPaの引張応力を付与するときに、800Nの衝撃力によって衝突された後、物品が、ある値(以上)の残留強度を示す材料の性質を含む直前に記載の実施形態では、これらの性質は以下のように試験することができる。1つ以上の実施形態によると、「閾値破壊衝撃力」は、
図8に関して前述したような、物品の表面上に観察可能な破壊を生じさせるのに十分な最小衝撃力を意味する。1つ以上の実施形態では、「閾値破壊衝撃力」が試験される物品は、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1mm、1.1mm、1.2mm、1.3mm、1.4mm、1.5mm、1.6mm、1.7mm、1.8mm、1.9mm、または2mmの厚さを有するシートである。
【0171】
残留強度は、(本明細書に記載のような)4点曲げ試験または本明細書に記載のようなAROR試験を使用することによって測定される。「物品が曲げられて100MPaの引張応力を付与するとき」という語句は、曲げの結果としてガラス系物品に外部から加えられた引張応力を意味する。したがって、ガラス系物品が曲げられると、本明細書に記載の試験による接触面である頂点が形成され、曲げられたときのガラス系物品の外面に存在する頂点は、曲げの結果として外部から加えられた引張応力を有する。
【0172】
本開示のさらなる態様は、閾値破壊衝撃力を測定するための装置および方法に関する。デバイスの信頼性試験は、それらの使用寿命中にそれらがどのように機能するかを理解するために不可欠である。デバイス落下試験は、落下事象(例えば、駐車場での電話の落下)が生じた後の手持ち式電子デバイス(例えば、スマートフォン、タブレット、ラップトップなど)の信頼性を理解するために一般に使用され、なぜなら、これらの事象によってデバイスの機能性が損なわれる場合があるからである。デバイスに関する問題の1つは、これらのデバイスに使用されるカバーガラスの信頼性である。手持ち式電子デバイスのカバーガラスの損傷または破壊により、デバイスが使用できなくなり、および/または使用者に対する安全性の問題が生じることがある。カバー材料の制限、およびそれがデバイス設計にどのように関連するかの理解は、カバーガラス性能の改善に不可欠である。
【0173】
典型的には、実際のデバイスに対して、それらの信頼性の理解のための落下試験が行われる。しかし、これは非常に費用がかかる場合があり、デバイス設計が完成しデバイスが製造されている場合にのみ利用可能である。これらの欠点に対処するため、代用の試験手段(デバイスの寸法および重量が類似するデバイスの再利用可能なモックアップ)がカバーガラス性能試験のためのデバイスをシミュレートするために使用される。これらの代用手段は、顧客の要求に適合するガラスの性能の理解に役立ち、カバーガラスの残存性に役立つ設計(例えば、ベベルの設計)のフィードバックを得るのに役立つ。しかし、代用手段の作製および(落下)試験の実施は、時間がかかり、非常に費用がかかる。したがって、ほどんどの分野の破壊形式で見られるような、損傷導入および曲げの概念に関する、あまり時間がかからず費用のかからない試験が提供されることが望ましい。
【0174】
本開示の一態様は、主として応力(曲げ)と損傷導入との組合せである、当技術分野で生じることが確認されている破壊形式を模倣する、ガラス系物品、例えばモバイル電子デバイスのためのカバーガラスの表面を試験するための装置に関する。この周知の破壊形式は、部品レベルに基づく表面衝撃試験を用いて再現される。広範な試験がこの装置を使用して行われており、ある種のガラス組成物およびイオン交換応力プロファイルによってカバーガラスの残存性を改善できることが、この試験によって分かった。
【0175】
1つ以上の実施形態では、装置は、平坦から湾曲までの範囲の表面を有する単純な振子に基づく動的衝撃試験を含み、ここで、ガラス系物品試験試験片は、振子のおもりに搭載され、次にこれが試験片を、平滑または粗い表面であり得る衝突面と接触させるために使用される。1つ以上の実施形態では、試験を行うために、試料はホルダー上に取り付け、次に振子の平衡位置から後方に引っ張り、放すことで、衝突面上に動的衝撃を生じさせる。この試験は落下事象を模倣しており、そのため、ガラス/試験片は可動部品であり、表面は固定部品である。利用可能な曲面は、現場破壊で得られる応力回数を模倣している(曲げ応力)。装置の1つ以上の実施形態によると、ガラス系物品は、固定部品である衝突面に当たるように移動する可動部品であり、特定の高さから表面(固定部品)上に落下するデバイス(可動部品)を模倣している。
【0176】
破壊形式は、損傷導入速度および曲げ速度とともに変化することが知られている。カバーガラス性能の特性決定に使用されるリングオンリング(ROR)、圧入破壊閾値(IFT)、および研磨時リングオンリング(ARoR − これは、損傷導入後に準静的負荷の使用による遅い曲げを含む)などの他の準静的負荷の使用に基づく部品レベル試験と異なり、この試験の性質は動的である。さらに、モバイルデバイス用途の薄いカバー材料への需要の増加が非常に一般的となっているため、異なる薄いカバー材料を評価するための部品レベルに基づく試験を有する必要性がより重要となっている。この試験は、異なる組成およびIOX処理の0.3mmまでの厚さのガラス材料の評価において信頼性が示されているため、この薄いガラスの潜在的な落下性能応答の予測に使用できる。1つ以上の実施形態によると、この試験方法が単純であることで、ガラスの衝撃エネルギーおよび関連する衝撃力をより迅速に評価することができ、これは、システムレベルの落下試験から得られるものと十分に同等である。
【0177】
ここで、
図29〜33を参照すると、ピボット1106に取り付けられたおもり1104を含む振子1102を含むとして、脆性基材の衝撃試験のための装置1100の一実施形態が示されている。振子上のおもりは、ピボットから吊り下げられ、アームによってピボットに接続されているウエイトである。例えば、図に示されるおもり1104は、ひも、または1つの棒、または図示されるような2つの棒などの複数の棒の形態であり得るアーム1108によってピボット1106に接続される。
図33に最も良く示されるように、おもり1104は、角度βがゼロとなるような破線で示される平衡位置1105を有する。換言すると、アーム1108は上昇した位置にはない。
【0178】
おもり1104は、単にアーム1108の下端に取り付けられる脆性基材であり得る。1つ以上の実施形態では、おもり1104は、脆性基材を収容するための台座1110を含む。より詳細に
図34に示されるように、少なくとも2つの末端1114、1116、内面1113、および外面1115を有する、脆性基材1112を収容するための台座1110である。台座1110は、第1の末端1120および第2の末端1122、ならびに第1の末端1120と第2の末端1122との間である曲率半径を画定する曲面1124を有する。台座1110は、衝撃試験のための基材を固定するための台となるのに適切なあらゆる材料であり得、以下にさらに記載される。台座1110に適切な材料としては、木材、金属、セラミック、またはそれらの組合せを挙げることができる。曲面1124は頂点1125を有する。
【0179】
1つ以上の実施形態による装置1100は、脆性基材1112の少なくとも2つの末端1114、1116を保持し、曲面1124に関して脆性基材1112を曲げる力を加え、脆性基材をその曲率半径に適合させるための第1の固定具1130および第2の固定具1132をさらに含む。脆性基材1112を曲げることにより、脆性基材は、曲面1124の頂点1125に適合する頂点1127を有する。1つ以上の特定の実施形態では、曲面1124および脆性基材1112の曲率は、一定の半径または複合的な半径を有することができる。第1の固定具1130および第2の固定具1132のそれぞれは、クランプであり、特定の実施形態では、
図34に示されるようなトグルクランプである。しかし、バークランプ、しゃこ万力、または脆性基材の末端を保持するための別の適切な固定具などの別の種類の固定具を使用することができる。
【0180】
1つ以上の実施形態による装置1100は、粗面をさらに含み、これは、基材1112の外面に接触するように配置される研磨面を有する研磨シートであり得る。研磨シートの研磨面が、基材1112が上に搭載される曲面1124に面するように、研磨シートが(後述の衝突用物体1140の)衝突面1150に両面テープで取り付けられる。別の特定の実施形態では、研磨シートは、30グリット〜400グリット、または100グリット〜300グリットの範囲内、例えば180グリットのグリットサイズを有することができる研磨紙を含む。適切な研磨紙の1つは、Indasa Rhynowet(登録商標)Plus Line P180グリット研磨紙である。1つ以上の実施形態による研磨紙は25mmの正方形の断片に切断され、切断プロセス中に断片が曲がる場合には研磨紙を平らにする。
【0181】
装置1100は、衝突用物体1140であって、おもり1104が、平衡位置1105から、ゼロより大きい角度βにおける位置から放されるときに、おもり1104の曲面1124(または曲面1124上に搭載された基材1112)が衝突用物体1140の衝突面1150(または衝突面1150上に配置された研磨シートの研磨側)と接触するように配置される衝突用物体1140をさらに含む。図示される実施形態では、衝突用物体1140は、台1142に取り付けられるL字型のブラケットであり、衝突用物体1140は、ねじ1144によって台1142に取り付けられる。衝突用物体1140は、ボルト、リベット、クランプなどのあらゆる別の適切な機構によって取り付けることもできる。台1142は、作業台1148の末端に装置1100を保持できるようにするストッパー1146を含む。図示される実施形態では、衝突用物体1140は、固定され、おもり1104が衝突用物体1140の衝突面1150と接触するときに動かない。衝突面1150は、
図32に最も良く示されるようにスロット1152内のx−y面内で移動可能な別個の要素であり得る。代替的に、衝突面1150は、衝突用物体1140に対して移動する必要はない。1つ以上の実施形態では、脆性基材が台座1110に取り付けられ、おもり1104が、平衡位置1105から、ゼロより大きい角度βにおける位置から放される場合、携帯電話またはタブレットデバイスの使用者が携帯電話またはタブレットデバイスを地面に落下させたときの、携帯電話またはタブレットデバイスの化学強化カバーガラスの曲げ半径を模倣する曲げ半径および衝撃力を脆性基材1112が受けるように、おもり1104および台座1110のサイズが決められ成形される。
【0182】
1つ以上の実施形態では、台座1110上の曲面1124の曲率半径は、基材が曲面1124の周囲で曲げられるときに100MPaの曲げ引張力が得られるように選択され、そのため、この引張力は、基材の曲げの応力の結果得られる外部から加えられる引張力である。したがって、基材が曲げられるとき、引張力は脆性基材の頂点1125において存在する。1つ以上の実施形態によると、曲率半径は、0.25m〜1.5mの範囲内、例えば0.5m〜1mの範囲内である。
【0183】
1つ以上の実施形態では、第1の固定具1130および第2の固定具1132は、携帯電話またはタブレットのカバーガラスの長さの距離だけ離して配置される。特定の実施形態では、第1の固定具1130および第2の固定具1132は、50mmおよび500mmの範囲の距離だけ離して配置される。
【0184】
本開示の別の態様は、脆性シートの衝撃試験方法であって、接触面を有する脆性シートを曲げて、ある曲率半径および頂点を接触面上に有する曲がったシートを得るステップと、振子を使用して、曲がったシートの頂点に衝突用物体を衝突させるステップとを含む方法に関する。一実施形態では、曲がったシートは、振子のおもりに取り付けられる。一実施形態では、振子のおもりに取り付けられた曲がったシートは、衝突用物体が接触面の頂点に接触するように配置される。1つ以上の実施形態では、脆性シートは、ガラスであり、曲率半径は、携帯電話またはタブレットデバイスの使用者が携帯電話またはタブレットデバイスを地面に落下させたときの、携帯電話またはタブレットデバイスの化学または熱強化カバーガラスの曲げ半径を模倣する範囲内であり、ここで、落下事象は、デバイスの端部が最初に地面に接触するような落下である(接触面が地面とほぼ平行となるような方向でデバイスが全体的に地面に衝突する面が最初となる落下とは対照的である)。
【0185】
1つ以上の実施形態では、アーム1108のスイング運動によって脆性シートの頂点に接触するような位置で衝突面1150上に研磨シートが配置される。1つ以上の実施形態では、脆性シートは、両面テープで衝突用物体に固定される。
【0186】
別の一実施形態は、脆性シートの衝撃試験方法であって、脆性シート上の接触面が露出するように脆性シートを振子のおもりに取り付けるステップと、振子のおもりに取り付けた脆性シートを有する振子のおもりを動かして、接触面を衝突物体に接触させるステップとを含む方法に関する。一実施形態では、この方法は、脆性シートを曲げて、ある曲率半径および頂点を接触面上に有する曲がったシートを得るステップを含む。一実施形態では、振子のおもりに取り付けられた曲がったシートは、衝突物体が接触面の頂点に接触するように配置される。1つ以上の実施形態では、脆性シートは、ガラスであり、曲率半径は、携帯電話またはタブレットデバイスの使用者が携帯電話またはタブレットデバイスを地面に落下させたときの、携帯電話またはタブレットデバイスの化学または熱強化カバーガラスの曲げ半径を模倣する範囲内であり、ここで、落下事象は、デバイスの端部が最初に地面に接触するような落下である(接触面が地面とほぼ平行となるような方向でデバイスが全体的に地面に衝突する面が最初となる落下とは対照的である)。いくつかの実施形態では、脆性シートは、頂点が衝突用物体に衝突する前に曲面に固定される。
【0187】
ここで、
図29および30を参照すると、装置の特定の非限定的な操作の詳細は、ピボット1106上にポインターノッチ1200を含み、これは、種々の試験位置1202、すなわち、アーム1108が平衡位置1105に対して角度βで配置される位置、および振子の運動が開始する位置を指すことができる。ポインターノッチ1200により、種々の試験位置1202との位置合わせが可能となり、種々の試験位置は、あらゆる適切な数の試験位置であり得、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10などで最大で50以上まで増加することができる。装置1100はロックをさらに含むことができ、これは、台座1110が衝突用物体1140の衝突面1150と直角になるように、その中心の長手方向軸に対する所望の回転方向にアーム1108を固定するためのナット1204の形態であり得る。
【0188】
装置1100は、1つ以上の実施形態により実際の電話の落下事象をシミュレートする。入射衝突エネルギーE、および平均衝撃力
【0191】
の式によって得られる。式中、m=振子1102(スイングアーム1108、おもり1104、および台座1110を含む)の質量、L=アームの長さ、g=重力加速度であり、vfは、初期衝突速度(すなわち、ガラスが最初に衝突用物体1140の衝突面1150に接触するときの速度)であり、viは、最終衝突速度(すなわち、ガラスが衝突用物体1140の衝突面1150を離れる速度、または換言すると、ガラスが最初に衝突用物体1140の衝突面1150から離れるときの速度)であり、Δt=接触相互作用時間(すなわち、ガラスが衝突用物体1140の衝突面1150に接触している間の時間)である。接触相互作用時間は、ガラスが衝突面1150に接触している間のフレーム数を観察し、高速度ビデオカメラが単位時間当たりに撮影するフレーム数を乗じることにより、高速度ビデオカメラで測定される。平均力の式は、依然として破壊されていない試料の場合に有用であり、すなわち、試験前の装置1100中に搭載された試料は、依然として破壊されていない試料である。スイングアームの質量および長さが既知であり、角度βが選択された位置に設定される場合、特定の高さから落下するときのデバイス上の衝撃をシミュレートするために、衝撃力を計算して使用することができる。例えば、130gの携帯電話デバイス上の基材カバーガラスが、1メートルの高さから落下したときに受ける平均力は、800Nと計算されている。質量、アームの長さ、および角度βを使用すると、この力は、
図29〜34に示される装置1110を使用して再現することができる。
【0192】
図35を参照すると、グラフ上の点1500は、
図29〜33に示される装置上で試験した0.5mmの厚さを有する代替のアルミノケイ酸塩ガラス基材の破壊閾値力を表す。
図35は、平均衝撃力と相関させたスイング角度を示す。代替のアルミノケイ酸塩ガラスは、約200ニュートンの破壊閾値力を有した。点1504は、57.5モル%のSiO
2、16.5モル%のAl
2O
3、16.5モル%のNa
2O、2.8モル%のMgO、6.5モル%のP
2O
5、および0.05モル%のSnO
2の公称組成を有する厚さ0.5mmのガラス基材の場合である。この試験からのガラス基材は(点1504において)500ニュートン未満の破壊閾値を有した。本明細書に請求され前述の例1〜64および以下の実施例1〜6により作製されたガラス物品により製造されたガラス基材のデータは、点1506として示され、800Nを超える衝撃力を有する。これらの値を、ALT2として示される別の化学強化ガラスとともに
図36上にプロットしている。
図36に示されるように、全てのガラス基材は、
図29〜34に関して記載した振子装置1100を用いて試験を行い、曲げによりガラス基材の頂点上に100MPaの外部から加えられる引張応力を付与するために、0.4mmの曲げ半径を用いた。
【0193】
振子装置の試験を種々の試料に対して行った後、試料は、
図37上に「残留強度」と記載される強度の試験が行われ、これは、物品が曲げられて100MPaの引張応力を付与するときに、指定される衝撃力によって衝突された後の基材の強度を意味する。残留強度値は、本明細書に記載のような4点曲げ試験を使用して測定した。
図37では、縦の破線は、800Nの衝撃力を表し、試験される試料の衝撃力はx軸上で正規化した。ALT(代替のアルミノケイ酸塩ガラス基材、菱形のデータ点)は、最も悪い残留強度値を有し、全ての部品がはるかに低い衝撃力で破壊されたため、800Nの衝撃力では試験できなかった。800Nの衝撃力で衝突されたALT2(三角形のデータ点)ガラス基材は、125Nを超える残留強度を有さなかった。しかし、本明細書に請求され前述の例1〜64および以下の実施例1〜6により作製されたガラス物品によって製造されたガラス基材は、1506(正方形のデータ点)として示され、全てが125MPaを超える残留強度値を有し、すなわち150MPaを超え、一部は200MPaを超えた。
【実施例】
【0194】
以下の実施例によって種々の実施形態をさらに明らかにする。実施例において、強化前に実施例は「基材」と呼ばれる。強化された後、実施例は「物品」または「ガラス系物品」と呼ばれる。
【0195】
実施例1
実施例1A〜1Gは、約63.46モル%のSiO
2、15.71モル%のAl
2O
3、6.37モル%のLi
2O、10.69モル%のNa
2O、0.06モル%のMgO、1.15モル%のZnO、2.45モル%のP
2O
5、および0.04モル%のSnO
2の公称組成を有するガラス基材を含んだ。ガラス基材は0.8mmの厚さを有した。実施例1A〜1Gのガラス基材は、100%NaNO
3を含み、約390℃の温度を有する溶融塩浴中で表2の条件によりイオン交換した。結果として得られたガラス系物品は、
図10のイオン交換時間の関数としてプロットされる最大CT値を示した。
【0196】
【表2】
【0197】
本明細書に記載のRNF法を用いて、実施例1Eの応力プロファイルを測定した。
図11は、実施例1Eのガラス系物品の表面からガラス系物品中に延在する深さの関数としての測定応力を示す。応力の傾きが急激に変化する深さである「ニー」を含む特定の深さにおける応力を表3に示す。
図11では、正の数が圧縮応力に使用され、負の数は引張応力を示す。この同じ慣習(圧縮応力はy軸上の正の数として示され、引張応力はy軸上の負の値で示される)は、
図1〜3でも使用されている。しかし、残りの図では、圧縮応力はy軸上の負の値として示され、および引張応力はy軸上の正の値として示される。
【0198】
【表3】
【0199】
実施例2
実施例2Aは、実施例1と同じ組成および0.8mmの厚さを有するガラス基材を含んだ。ガラス基材は、51%のKNO3および49%のNaNO
3を含み、約380℃の温度を有する1つの溶融塩浴中で3.75時間のイオン交換を行った。結果として得られたガラス系物品は、表4に記載の応力プロファイルを示した。
【0200】
【表4】
【0201】
実施例2Aによるガラス系物品に対して、本明細書に記載のAROR試験を行った。第1の組のガラス系物品は、5psi(34.5kPa)の荷重または圧力を用いて研磨し、第2の組のガラス系物品は、25psi(172kPa)の荷重または圧力を用いて研磨し、第3の組のガラス系物品は、45psi(310kPa)の荷重または圧力を用いて研磨した。ARORデータを
図12に示す。
図12に示されるように、実施例2Aによる全てのガラス系物品は、約20kgfを超える平均破壊荷重を示した。
【0202】
実施例2Aによるガラス系物品を同一の携帯電話デバイス上に後付けした。20センチメートルから出発して徐々に増加する高さから、これらの電話デバイスを180グリット研磨紙上に落下させた。ガラス系物品がある高さ(例えば、20cm)からの落下に残存した場合、携帯電話を、より高い高さ(例えば、30cm、40cm、50cmなど)で最大225cmの高さから再び落下させた。残存したガラス系物品は、次に30グリット研磨紙上に落下させた(同じ電話デバイス中)。180グリットの研磨紙および30グリットの研磨紙の両方の上でガラス系物品が破壊される高さを
図13にプロットしている。
図13に示されるように、実施例2Aの2つのガラス系物品を除いた全ては、180グリット研磨紙上に最大約225cmの高さからの落下で残存した(約216cmの平均残存落下高さが得られた)。30グリット研磨紙上への平均残存落下高さは66cmであり、一部は100cmを超える落下高さで残存した。
【0203】
実施例2Aによるガラス系物品は、約480mHz〜約3000mHzの周波数範囲にわたって約6.9〜約7.05の誘電率を示した。実施例2Aによるガラス系物品は、約480mHz〜約3000mHzの周波数範囲にわたって約0.012〜約0.015の範囲内の誘電正接を示した。
【0204】
実施例2Aによるガラス系物品の屈折率は、約380nm〜約1550nmの範囲にわたって約1.49〜約1.518の範囲内であり、約380nm〜約800nmの波長範囲にわたって約1.497〜約1.518の範囲内である。
【0205】
実施例2Aによるガラス系物品に対して、表5に示す種々の化学処理を行った。ガラス系物品の耐薬品性を比較例2B、2Cおよび2Dと比較した。比較例2Bは、64.3モル%のSiO
2、7.02モル%のB
2O
3、14モル%のAl
2O
3、14モル%のNa
2O、0.5モル%のK
2O、0.03モル%のFe
2O
3、および0.1モル%のSnO
2の公称組成を有するガラス基材であった。比較例2Cは、64.75モル%のSiO
2、5モル%のB
2O
3、14モル%のAl
2O
3、13.75モル%のNa
2O、2.4モル%のMgO、および0.08モル%のSnO
2の公称組成を有するガラス基材であった。比較例2Dは、57.5モル%のSiO
2、16.5モル%のAl
2O
3、16.71モル%のNa
2O、2.8モル%のMgO、0.05モル%のSnO
2、および6.5モル%のP
2O
5の公称組成を有するガラス基材を含んだ。
【0206】
【表5】
【0207】
実施例3
実施例3Aは、実施例1と同じ組成および0.8mmの厚さを有するガラス基材を含んだ。比較例3Bは、比較例2Dと同じ組成および0.8mmの厚さを有するガラス基材を含んだ。実施例3Aのガラス基材は、表6に記載されるように1つの浴を用いる1ステップで化学強化した。比較例3Bのガラス基材は、表6に記載されるように2ステッププロセスでイオン交換した。
【0208】
【表6】
【0209】
実施例3Aおよび比較例3Bによるガラス系物品を同一の携帯電話デバイス上に後付けした。20センチメートルから出発して徐々に増加する高さから、これらの電話デバイスを30グリット研磨紙上に落下させた。30グリット研磨紙上でガラス系物品が破壊される高さを
図14にプロットしている。
図14に示されるように、実施例3Aのガラス系物品は、比較例3Bの平均残存落下高さ(すなわち、38cm)の2倍を超える平均残存落下高さ(すなわち、91cm)を示した。
【0210】
実施例3Aおよび比較例3Bによるガラス系物品に対して、25psi(172kPa)の荷重または圧力を用いて本明細書に記載のAROR試験を行った。
図15に示されるように、実施例3Aのガラス系基材は約30kgfの平均破壊荷重を示し、一方、比較例3Bのガラス系基材は約27kgfの平均破壊荷重を示した。研磨荷重または圧力を45psi(310kPa)まで増加させると、実施例3Aおよび比較例3Bの平均破壊荷重の差が増加した。特に、45psi(310kPa)の荷重または圧力下では、
図16に示されるように、実施例3Aは約25.9kgfの平均破壊荷重を示し、一方、比較例3Bは約19.6kgfの平均破壊荷重を示した。
【0211】
実施例4
57.5モル%のSiO
2、16.5モル%のAl
2O
3、16.7モル%のNa
2O、2.5モル%のMgO、および6.5モル%のP
2O
5の公称組成、および約0.4mm、0.55mm、または1mmの厚さを有するガラス基材に対して化学強化を行った。厚さおよび化学強化の条件を表7に示す。
【0212】
【表7】
【0213】
実施例4Aは、表7に示される溶融塩浴中に4時間、8時間、16時間、32時間、64時間、および128時間浸漬した(実施例4A−1〜4A−6)。実施例4Bは、表7に示される溶融塩浴中に4時間、8時間、16時間、32時間、64時間、および128時間浸漬した(実施例4B−1〜4B−6)。実施例4Cは、表7に示される溶融塩浴中に1時間、2時間、4時間、8時間、16時間、および32時間浸漬した(実施例4C−1〜4C−6)。実施例4Dは、表7に示される溶融塩浴中に4時間、8時間、16時間、32時間、64時間、および128時間浸漬した(実施例4D−1〜4D−6)。実施例4A−1〜4A−6、4B−1〜4B−6、6C−1〜4C−6、および4D−1〜4D−6の応力プロファイルをそれぞれ
図17、19、21、および23に示す。
図17、19、21、および23では、ガラス物品の深さまたは厚さをx軸上にプロットし、応力をy軸上にプロットしている。正の応力値はCT値であり、負の応力値はCS値である。
【0214】
実施例4A−1〜4A−6、実施例4B−1〜4B−6、実施例4C−1〜4C−6および4D−1〜4D−6の溶融塩浴中に浸漬した時間の関数としてのCT値およびDOC値をそれぞれ
図18、20、22、および24に示す。
【0215】
実施例5
表8に示される公称組成および約0.8mmの厚さを有するガラス基材について、それぞれNaNO
3とNaSO
4との混合物および500℃の温度を含む溶融塩浴中で15分(比較例8A)および16時間(実施例8B)の化学強化を行った。
【0216】
【表8】
【0217】
実施例5Aおよび5Bのガラス系物品の応力プロファイルを
図25に示す。
図25に示されるように、比較例5Aは、周知の応力プロファイルを示し、一方、実施例5Bは、本開示の1つ以上の実施形態による応力プロファイルを示した。実施例5Aおよび5Bのガラス系物品の貯蔵引張エネルギーを、測定SCALP応力プロファイルデータから前述の式(2)を用いて計算した。
図26に示されるように、計算した貯蔵引張エネルギーを測定CT(MPa)の関数としてプロットしている。
【0218】
図26に示されるように、比較例5Aは、特定のCT値の場合、(同じCT値の場合の)実施例5Bよりもはるかに大きい貯蔵引張エネルギー値を示した。この図では、CTは試料中の最大CTである。特に約55MPaのCTにおいて、比較例5Aは約6.5J/m
2の貯蔵引張エネルギーを示し、一方、実施例5Bは約3.5J/m
2の貯蔵引張エネルギーを示した。比較例5Aおよび実施例5Bが破壊されると、実施例5Bは、比較例5Aよりも少ない数の破片に破壊され、比較例5Aは、はるかに多数の破片に破壊された。したがって、理論によって束縛しようとするものではないが、貯蔵引張エネルギーを制御することで、破壊によって生じる断片化パターンまたは破片数を制御または予測する方法を得ることができると考えられる。これらの例では、同じ浴の温度および組成を使用しながら、より長時間イオン交換浴中に試料を維持することによってCTが変化した。
図26では、0,0の点は実験的なものではなく、それが該当する場合、すなわち0CTが存在する場合、貯蔵引張エネルギーが0となると当業者が予測する点である。
【0219】
表8に示す公称組成および約1mmの厚さを有するガラス基材について、それぞれNaNO
3および430℃の温度を含む溶融塩浴中で4時間(比較例5C)および61.5時間(実施例5D)の化学強化を行った。比較例5Cは、周知の応力プロファイルを示し、一方、実施例5Dは、本開示の1つ以上の実施形態による応力プロファイルを示した。実施例5A〜5Bに用いた方法と同じ方法を用いて実施例5Cおよび5Dの貯蔵引張エネルギーを計算し、
図27に示されるように測定CT(MPa)の関数としてプロットしている。
【0220】
図27に示されるように、比較例5Cは、特定のCT(この場合も
図26と同様に、これらは最大CT値であり、この場合もこれらの値は、同じイオン交換浴の温度および組成を使用するがより長い時間を使用することで変化した)値の場合、(同じCT値の場合の)実施例5Dよりもはるかに大きい貯蔵引張エネルギー値を示した。比較例5Cおよび実施例5Dが破壊されると、実施例5Dは、比較例5Cよりも少ない数の破片に破壊され、比較例5Cは、はるかに多数の破片に破壊された。
【0221】
実施例6
表9は、本明細書に記載のガラス基材の代表的な組成物(実施例6A〜6J)を列挙する。表10は、表9に列挙される例について求めた選択された物理的性質を列挙する。表10に列挙される物理的性質は、密度;CTE;ひずみ点、徐冷点、および軟化点;液相線温度;液相線粘度;ヤング率;屈折率、および応力光係数を含む。
【0222】
【表9】
【0223】
【表10】
【0224】
実施例6A〜6Hからガラス物品(シート形態で特定の厚さを有する)を形成し、次に特定の温度を有する溶融塩浴中に指定の時間にわたって浸漬することによって化学強化した。表11は、各ガラス物品の厚さ、化学強化条件、ならびに結果として得られた強化ガラス物品の測定最大CTおよびDOC値を示す。
【0225】
【表11】
【0226】
本発明の意図および範囲から逸脱することなく種々の修正形態および変形形態が可能であることは当業者に明らかであろう。例えば、種々の特徴は、以下の代表的な実施形態により組み合わせることができる。
【0227】
実施形態1。厚さ(t)(mm)を画定する、第1の表面および第1の表面の反対にある第2の表面と、
ゼロではなく、かつ約0・t〜約0.3・tの厚さ範囲に沿って変動する金属酸化物の濃度と、
約71.5/√(t)未満の最大CT(MPa)を含む中央張力(CT)領域と
を含むガラス系物品であって、ガラス系物品が破壊されると、1平方インチ(6.4516cm
2)当たり2つ以下の破片に破壊され、使用される試料サイズは、5cm×5cm(2インチ×2インチ)の正方形であった、ガラス系物品。
【0228】
実施形態2。金属酸化物の濃度は、ゼロではなく、かつ厚さ全体に沿って変動する、実施形態1のガラス系物品。
【0229】
実施形態3。約300MPa以上の表面圧縮応力(CS)を含む、上記実施形態のいずれか1つのガラス系物品。
【0230】
実施形態4。表面CSは、約400MPa以上である、実施形態3のガラス系物品。
【0231】
実施形態5。CT領域は、金属酸化物濃度勾配を含む、上記実施形態のいずれか1つのガラス系物品。
【0232】
実施形態6。第1の金属酸化物濃度および第2の金属酸化物濃度を含み、
第1の金属酸化物濃度は、厚さが約0・t〜約0.5・tの第1の範囲にわたって変動するときに、約15モル%〜約0モル%の範囲内で変動し、
第2の金属酸化物の濃度は、厚さが第1の表面および第2の表面の少なくとも1つから約0マイクロメートル〜約25マイクロメートルの第2の範囲にわたって変動するときに、約0モル%〜約10モル%の範囲内で変動する、上記実施形態のいずれか1つのガラス系物品。
【0233】
実施形態7。第3の金属酸化物を含む、実施形態6のガラス系物品。
【0234】
実施形態8。ガラス系物品であって、厚さ(t)を画定する、第1の表面および第1の表面の反対にある第2の表面と、
ゼロではなく、かつ約0・t〜約0.3・tの厚さ範囲に沿って変動する金属酸化物の濃度と、
約200MPa以上の表面圧縮応力と、
約71.5/√(t)未満の最大CTを有するCT領域と
を含む、ガラス系物品。
【0235】
実施形態9。金属酸化物濃度の厚さ範囲は、約0・t〜約0.4・tである、実施形態8のガラス系物品。
【0236】
実施形態10。金属酸化物濃度の厚さ範囲は、約0・t〜約0.45・tである、実施形態8または実施形態9のガラス系物品。
【0237】
実施形態11。金属酸化物の一価イオンは、厚さ範囲に沿って応力を発生させる、実施形態1〜10のいずれか1つのガラス系物品。
【0238】
実施形態12。金属酸化物の一価イオンは、ガラス系物品中の金属酸化物の一価イオンの全ての最大イオン直径を有する、実施形態11のガラス系物品。
【0239】
実施形態13。金属酸化物の濃度は、第1の表面から、第1の表面と第2の表面との間の点における値まで減少し、かつその値から第2の表面まで増加する、実施形態1〜12のいずれか1つのガラス系物品。
【0240】
実施形態14。約460℃において約450μm
2/時以上のナトリウムまたはカリウムイオン拡散率と、約0.15・tを超えるDOCとを含み、表面CSは、最大CTの1.5倍以上である、実施形態1〜13のいずれか1つのガラス系物品。
【0241】
実施形態15。表面CSの絶対値は、最大CTの絶対値よりも大きい、実施形態8〜14のいずれか1つのガラス系物品。
【0242】
実施形態16。表面CSは、約300MPa以上であり、かつ約2ミリメートル以下の厚さである、実施形態8〜15のいずれか1つのガラス系物品。
【0243】
実施形態17。CT領域は、ゼロではなく、かつ約0・t〜約0.3・tの厚さ範囲に沿って変動する金属酸化物を含む、実施形態8〜16のいずれか1つのガラス系物品。
【0244】
実施形態18。表面CSの絶対値に対する最大CTの比は、約0.1〜約0.2の範囲内である、実施形態1〜17のいずれか1つのガラス系物品。
【0245】
実施形態19。約3ミリメートル未満の厚さ(t)を画定する、第1の表面および第1の表面の反対にある第2の表面と、
厚さに沿って延在する応力プロファイルと
を含むガラス系物品であって、約0・t〜最大0.3・tおよび約0.7・t超〜tの厚さ範囲間の応力プロファイルの全ての点は、約0.1MPa/マイクロメートルを超える絶対値を有する傾きを有する接線を含み、
応力プロファイルは、最大CS、DOC、および約71.5/√(t)未満の最大CT(MPa)を含み、最大CSの絶対値に対する最大CTの比は、約0.01〜約0.2の範囲内であり、DOCは、約0.1・t以上であり、
ガラス系物品が破壊されると、ガラス系物品は、1平方インチ(6.4516cm
2)当たり2つ以下の破片に破壊され、使用される試料サイズは、5cm×5cm(2インチ×2インチ)の正方形であった、ガラス系物品。
【0246】
実施形態20。約200MPa以上の表面CS、および約0.4・t以上の層の化学深さを含む、実施形態1〜7または実施形態19のいずれか1つのガラス系物品。
【0247】
実施形態21。厚さ(t)(mm)を画定する、第1の表面および第1の表面の反対にある第2の表面と、
ゼロではなく、かつ約0・t〜約0.3・tの厚さ範囲に沿って変動する金属酸化物の濃度と、
約71.5/√(t)未満の最大CT(MPa)を含む中央張力(CT)領域と
を含むガラス系物品であって、
(i)物品が曲げられて100MPaの引張応力を付与するときに、500ニュートンを超える閾値破壊衝撃力と、
(ii)物品が曲げられて100MPaの引張応力を付与するときに、800Nの衝撃力によって衝突された後に125MPa以上の残留強度と
の少なくとも1つを示す、ガラス系物品。
【0248】
実施形態22。約200MPaを超える表面圧縮応力を有する、実施形態21のガラス系物品。
【0249】
実施形態23。約3ミリメートル未満の厚さ(t)を画定する、第1の表面および第1の表面の反対にある第2の表面と、
厚さに沿って延在する応力プロファイルと
を含むガラス系物品であって、約0・t〜最大0.3・tおよび約0.7・t超〜tの厚さ範囲間の応力プロファイルの全ての点は、約0.1MPa/マイクロメートルを超える絶対値を有する傾きを有する接線を含み、
応力プロファイルは、最大CS、DOC、および約71.5/√(t)未満の最大CT(MPa)を含み、最大CSの絶対値に対する最大CTの比は、約0.01〜約0.2の範囲内であり、DOCは、約0.1・t以上であり、
物品は、
(i)物品が曲げられて100MPaの引張応力を付与するときに、500ニュートンを超える閾値破壊衝撃力と、
(ii)物品が曲げられて100MPaの引張応力を付与するときに、800Nの衝撃力によって衝突された後に125MPa以上の残留強度と
の少なくとも1つを示す、ガラス系物品。
【0250】
実施形態24。厚さ(t)(mm)を画定する、第1の表面および第1の表面の反対にある第2の表面と、
濃度勾配を形成する金属酸化物と
を含むガラス系物品であって、金属酸化物の濃度は、第1の表面から、第1の表面と第2の表面との間の点における値まで減少し、かつその値から第2の表面まで増加し、
その点における金属酸化物の濃度は、ゼロではなく、
ガラス系物品は、約0J/m
2超〜25J/m
2未満の貯蔵引張エネルギー、および約80GPa未満のヤング率を含む、ガラス系物品。
【0251】
実施形態25。金属酸化物の濃度は、厚さ全体にわたって約0.05モル%以上である、実施形態1〜18または24のいずれか1つのガラス系物品。
【0252】
実施形態26。第1の表面における金属酸化物濃度は、約0.5・tに等しい深さにおける金属酸化物の濃度の約1.5倍以上である、実施形態1〜18、24または25のいずれか1つのガラス系物品。
【0253】
実施形態27。金属酸化物の全濃度は、約1モル%〜約15モル%の範囲内である、実施形態1〜18、20または24〜26のいずれか1つのガラス系物品。
【0254】
実施形態28。金属酸化物は、Li
2O、Na
2O、K
2O、Rb
2O、およびCs
2Oのいずれか1つ以上を含む、実施形態1〜18、20または24〜27のいずれか1つのガラス系物品。
【0255】
実施形態29。第1の表面からDOCまで延在するCS層を含み、DOCは、約0.1・t以上である、実施形態1〜18、20または24〜28のいずれか1つのガラス系物品。
【0256】
実施形態30。CT領域は、最大CTを含み、および表面CSの絶対値に対する最大CTの比は、約0.01〜約0.2の範囲内である、実施形態19、20または24〜29のいずれか1つのガラス系物品。
【0257】
実施形態31。約3ミリメートル未満の厚さ(t)を画定する、第1の表面および第1の表面の反対にある第2の表面と、
厚さに沿って延在する応力プロファイルと
を含むガラス系物品であって、約0t〜最大0.3tおよび約0.7・t超〜tの厚さ範囲間の応力プロファイルの全ての点は、約0.1MPa/マイクロメートルを超える絶対値を有する局所勾配を含み、
応力プロファイルは、最大CS、DOC、および最大CTを含み、最大CSの絶対値に対する最大CTの比は、約0.01〜約0.2の範囲内であり、DOCは、約0.1・t以上であり、
ガラス系物品は、約0J/m
2超〜25J/m
2未満の貯蔵引張エネルギー、および約80GPa未満のヤング率を含む、ガラス系物品。
【0258】
実施形態32。厚さ全体に沿って連続的に変動する金属酸化物のゼロではない濃度を含む、実施形態31のガラス系物品。
【0259】
実施形態33。約10マイクロメートルの厚さ部分に沿って連続的に変動する金属酸化物のゼロではない濃度を含む、実施形態31または実施形態32のガラス系物品。
【0260】
実施形態34。最大CSは、約300MPa以上を含む、実施形態19、20、25または31〜33のいずれか1つのガラス系物品。
【0261】
実施形態35。約0.4・t以上の層の化学深さを含む、実施形態8〜18または31〜34のいずれか1つのガラス系物品。
【0262】
実施形態36。CT領域を含み、CT領域は、金属酸化物濃度勾配を含む、実施形態19、20、24〜29、31〜35のいずれか1つのガラス系物品。
【0263】
実施形態37。最大CTは、約71.5/√(t)(MPa)未満である、実施形態24〜36のいずれか1つのガラス系物品。
【0264】
実施形態38。CS領域とCT領域とを含む応力プロファイルを含むガラス系物品であって、CT領域は、応力(x)=MaxT−(((CT
n・(n+1))/0.5
n)・|(x/t)−0.5|
n)の式によって概算され、
式中、MaxTは、最大張力値であり、かつMPaの単位の正の値であり、
CT
nは、nにおける張力値であり、CT
nは、MaxT以下であり、かつMPaの単位の正の値であり、
xは、マイクロメートル単位の厚さ(t)に沿った位置であり、およびガラス系物品の表面においてx=0であり、
nは、1.5〜5の範囲内である、ガラス系物品。
【0265】
実施形態39。nは、1.5〜2の範囲内である、実施形態38のガラス系物品。
【0266】
実施形態40。CT領域は、約50MPa〜約250MPaの範囲内の最大CT値を含み、および最大CT値は、約0.4t〜約0.6tの範囲内の深さにおけるものである、実施形態38または39のガラス系物品。
【0267】
実施形態41。約0t〜約0.1tの範囲内の厚さの場合、応力プロファイルは、傾きであって、その絶対値の大きさが約20MPa/マイクロメートル〜約200MPa/マイクロメートルの範囲内である、傾きを含む、実施形態38〜40のいずれか1つのガラス系物品。
【0268】
実施形態42。応力プロファイルは、0.5tから表面まで測定された場合の複数の誤差関数の組合せによって概算される、実施形態38〜41のいずれか1つのガラス系物品。
【0269】
実施形態43。CS領域とCT領域とを含む応力プロファイルを含むガラス系物品であって、CT領域は、応力(x)=MaxT−(((CT
n・(n+1))/0.5
n)・|(x/t)−0.5|
n)の式によって概算され、
式中、MaxTは、最大張力値であり、かつMPaの単位の正の値であり、
CT
nは、nにおける張力値であり、CT
nは、MaxT以下であり、かつMPaの単位の正の値であり、
xは、マイクロメートル単位の厚さ(t)に沿った位置であり、およびガラス系物品の表面においてx=0であり、
nは、1.5〜5の範囲内であり、
物品は、
(i)物品が曲げられて100MPaの引張応力を付与するときに、500ニュートンを超える閾値破壊衝撃力と、
(ii)物品が曲げられて100MPaの引張応力を付与するときに、800Nの衝撃力によって衝突された後に125MPa以上の残留強度と
の少なくとも1つを示す、ガラス系物品。
【0270】
実施形態44。厚さ(t)(mm)を画定する、第1の表面および第1の表面の反対にある第2の表面と、
濃度勾配を形成する金属酸化物と
を含むガラス系物品であって、金属酸化物の濃度は、第1の表面から、第1の表面と第2の表面との間の点における値まで減少し、かつその値から第2の表面まで増加し、
その点における金属酸化物の濃度は、ゼロではなく、
物品は、
(i)物品が曲げられて100MPaの引張応力を付与するときに、500ニュートンを超える閾値破壊衝撃力と、
(ii)物品が曲げられて100MPaの引張応力を付与するときに、800Nの衝撃力によって衝突された後に125MPa以上の残留強度と
の少なくとも1つを示す、ガラス系物品。
【0271】
実施形態45。600ニュートンを超える閾値破壊衝撃力を示す、実施形態21〜23、43または44のいずれか1つのガラス系物品。
【0272】
実施形態46。700ニュートンを超える閾値破壊衝撃力を示す、実施形態21〜23、43または44のいずれか1つのガラス系物品。
【0273】
実施形態47。800ニュートンを超える閾値破壊衝撃力を示す、実施形態21〜23、43または44のいずれか1つのガラス系物品。
【0274】
実施形態48。150MPa以上の残留強度を示す、実施形態21〜23、43または44のいずれか1つのガラス系物品。
【0275】
実施形態49。200MPa以上の残留強度を示す、実施形態21〜23、43または44のいずれか1つのガラス系物品。
【0276】
実施形態50。tは、約3ミリメートル以下を含む、上記実施形態のいずれか1つのガラス系物品。
【0277】
実施形態51。非晶質である、上記実施形態のいずれか1つのガラス系物品。
【0278】
実施形態52。結晶性である、上記実施形態のいずれか1つのガラス系物品。
【0279】
実施形態53。約380nm〜約780nmの範囲内の波長にわたって約88%以上の透過率をさらに示す、上記実施形態のいずれか1つのガラス系物品。
【0280】
実施形態54。CIE光源F02下において、約88以上のL
*値、約−3〜約+3の範囲内のa
*値、および約−6〜約+6の範囲内のb
*値のCIELAB色空間座標をさらに示す、上記実施形態のいずれか1つのガラス系物品。
【0281】
実施形態55。約0.65MPa・m
1/2以上の破壊靱性(K
1C)を含む、上記実施形態のいずれか1つのガラス系物品。
【0282】
実施形態56。80GPa未満のヤング率を含む、上記実施形態のいずれか1つのガラス系物品。
【0283】
実施形態57。tは、約1ミリメートル以下を含む、上記実施形態のいずれか1つのガラス系物品。
【0284】
実施形態58。約100kP(10kPa・s)以上の液相線粘度を含む、上記実施形態のいずれか1つのガラス系物品。
【0285】
実施形態59。約17モル%を超えるAl
2O
3とNa
2Oとの合計量を含む組成物と、
約4モル%を超えるNa
2Oを含む組成物と、
B
2O
3、ZnO、またはB
2O
3とZnOとの両方を実質的に含まない組成物と、
ゼロではない量のP
2O
5を含む組成物と
のいずれか1つ以上を含む、上記実施形態のいずれか1つのガラス系物品。
【0286】
実施形態60。前面、背面、および側面を有するハウジングと、
少なくとも部分的にハウジング内部にある電気部品と、
ハウジングの前面におけるまたはそれに隣接するディスプレイと、
ディスプレイの上に配置されるカバー基材と
を含むデバイスであって、カバー基材は、上記実施形態のいずれか1つのガラス系物品を含む、デバイス。
【0287】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0288】
実施形態1
厚さ(t)(mm)を画定する、第1の表面および前記第1の表面の反対にある第2の表面と、
ゼロではなく、かつ約0・t〜約0.3・tの厚さ範囲に沿って変動する金属酸化物の濃度と、
約71.5/√(t)未満の最大CT(MPa)を含む中央張力(CT)領域と
を含むガラス系物品において、前記ガラス系物品が破壊されると、1平方インチ(6.4516cm
2)当たり2つ以下の破片に破壊され、使用される試料サイズは、5cm×5cm(2インチ×2インチ)の正方形であったことを特徴とするガラス系物品。
【0289】
実施形態2
前記金属酸化物の前記濃度は、ゼロではなく、かつ前記厚さ全体に沿って変動することを特徴とする、実施形態1に記載のガラス系物品。
【0290】
実施形態3
約300MPa以上の表面圧縮応力(CS)を含むことを特徴とする、実施形態1または2に記載のガラス系物品。
【0291】
実施形態4
前記表面CSは、約400MPa以上であることを特徴とする、実施形態3に記載のガラス系物品。
【0292】
実施形態5
前記CT領域は、金属酸化物濃度勾配を含むことを特徴とする、実施形態1〜4のいずれか一項に記載のガラス系物品。
【0293】
実施形態6
第1の金属酸化物濃度および第2の金属酸化物濃度を含み、
前記第1の金属酸化物濃度は、厚さが約0・t〜約0.5・tの第1の範囲にわたって変動するときに、約15モル%〜約0モル%の範囲内で変動し、
前記第2の金属酸化物濃度は、厚さが前記第1の表面および前記第2の表面の少なくとも1つから約0マイクロメートル〜約25マイクロメートルの第2の範囲にわたって変動するときに、約0モル%〜約10モル%の範囲内で変動することを特徴とする、実施形態1〜5のいずれか一項に記載のガラス系物品。
【0294】
実施形態7
第3の金属酸化物を含むことを特徴とする、実施形態6に記載のガラス系物品。
【0295】
実施形態8
ガラス系物品において、
厚さ(t)(mm)を画定する、第1の表面および前記第1の表面の反対にある第2の表面と、
ゼロではなく、かつ約0・t〜約0.3・tの厚さ範囲に沿って変動する金属酸化物の濃度と、
約200MPa以上の表面圧縮応力と、
約71.5/√(t)未満の最大CTを有するCT領域と
を含むことを特徴とするガラス系物品。
【0296】
実施形態9
前記金属酸化物濃度の前記厚さ範囲は、約0・t〜約0.4・tであることを特徴とする、実施形態8に記載のガラス系物品。
【0297】
実施形態10
前記金属酸化物濃度の前記厚さ範囲は、約0・t〜約0.45・tであることを特徴とする、実施形態8または9に記載のガラス系物品。
【0298】
実施形態11
前記金属酸化物の一価イオンは、前記厚さ範囲に沿って応力を発生させることを特徴とする、実施形態1〜10のいずれか一項に記載のガラス系物品。
【0299】
実施形態12
前記金属酸化物の前記一価イオンは、前記ガラス系物品中の前記金属酸化物の前記一価イオンの全ての最大イオン直径を有することを特徴とする、実施形態11に記載のガラス系物品。
【0300】
実施形態13
前記金属酸化物の前記濃度は、前記第1の表面から、前記第1の表面と前記第2の表面との間の点における値まで減少し、かつ前記値から前記第2の表面まで増加することを特徴とする、実施形態1〜12のいずれか一項に記載のガラス系物品。
【0301】
実施形態14
約460℃において約450μm
2/時以上のナトリウムまたはカリウムイオン拡散率と、約0.15・tを超えるDOCとを含み、前記表面CSは、前記最大CTの1.5倍以上であることを特徴とする、実施形態1〜13のいずれか一項に記載のガラス系物品。
【0302】
実施形態15
表面CSの絶対値は、最大CTの絶対値よりも大きいことを特徴とする、実施形態8〜14のいずれか一項に記載のガラス系物品。
【0303】
実施形態16
前記表面CSは、約300MPa以上であり、かつ約2ミリメートル以下の厚さであることを特徴とする、実施形態8〜15のいずれか一項に記載のガラス系物品。
【0304】
実施形態17
前記CT領域は、ゼロではなく、かつ約0・t〜約0.3・tの厚さ範囲に沿って変動する前記金属酸化物を含むことを特徴とする、実施形態8〜16のいずれか一項に記載のガラス系物品。
【0305】
実施形態18
表面CSの絶対値に対する最大CTの比は、約0.1〜約0.2の範囲内であることを特徴とする、実施形態1〜17のいずれか一項に記載のガラス系物品。
【0306】
実施形態19
約3ミリメートル未満の厚さ(t)を画定する、第1の表面および前記第1の表面の反対にある第2の表面と、
前記厚さに沿って延在する応力プロファイルと
を含むガラス系物品において、約0・t〜最大0.3・tおよび約0.7・t超〜tの厚さ範囲間の前記応力プロファイルの全ての点は、約0.1MPa/マイクロメートルを超える絶対値を有する傾きを有する接線を含み、
前記応力プロファイルは、最大CS、DOC、および約71.5/√(t)未満の最大CT(MPa)を含み、最大CSの絶対値に対する最大CTの比は、約0.01〜約0.2の範囲内であり、前記DOCは、約0.1・t以上であり、
前記ガラス系物品が破壊されると、前記ガラス系物品は、1平方インチ(6.4516cm
2)当たり2つ以下の破片に破壊され、使用される試料サイズは、5cm×5cm(2インチ×2インチ)の正方形であったことを特徴とするガラス系物品。
【0307】
実施形態20
約200MPa以上の表面CS、および約0.4・t以上の層の化学深さを含むことを特徴とする、実施形態1〜7または19のいずれか一項に記載のガラス系物品。
【0308】
実施形態21
厚さ(t)(mm)を画定する、第1の表面および前記第1の表面の反対にある第2の表面と、
ゼロではなく、かつ約0・t〜約0.3・tの厚さ範囲に沿って変動する金属酸化物の濃度と、
約71.5/√(t)未満の最大CT(MPa)を含む中央張力(CT)領域と
を含むガラス系物品において、
(i)前記物品が曲げられて100MPaの引張応力を付与するときに、500ニュートンを超える閾値破壊衝撃力と、
(ii)前記物品が曲げられて100MPaの引張応力を付与するときに、800Nの衝撃力によって衝突された後に125MPa以上の残留強度と
の少なくとも1つを示すことを特徴とするガラス系物品。
【0309】
実施形態22
約200MPaを超える表面圧縮応力を有することを特徴とする、実施形態21に記載のガラス系物品。
【0310】
実施形態23
約3ミリメートル未満の厚さ(t)を画定する、第1の表面および前記第1の表面の反対にある第2の表面と、
前記厚さに沿って延在する応力プロファイルと
を含むガラス系物品において、約0・t〜最大0.3・tおよび約0.7・t超〜tの厚さ範囲間の前記応力プロファイルの全ての点は、約0.1MPa/マイクロメートルを超える絶対値を有する傾きを有する接線を含み、
前記応力プロファイルは、最大CS、DOC、および約71.5/√(t)未満の最大CT(MPa)を含み、最大CSの絶対値に対する最大CTの比は、約0.01〜約0.2の範囲内であり、前記DOCは、約0.1・t以上であり、
前記物品は、
(i)前記物品が曲げられて100MPaの引張応力を付与するときに、500ニュートンを超える閾値破壊衝撃力と、
(ii)前記物品が曲げられて100MPaの引張応力を付与するときに、800Nの衝撃力によって衝突された後に125MPa以上の残留強度と
の少なくとも1つを示すことを特徴とするガラス系物品。
【0311】
実施形態24
厚さ(t)(mm)を画定する、第1の表面および前記第1の表面の反対にある第2の表面と、
濃度勾配を形成する金属酸化物と
を含むガラス系物品において、前記金属酸化物の濃度は、前記第1の表面から、前記第1の表面と前記第2の表面との間の点における値まで減少し、かつ前記値から前記第2の表面まで増加し、
前記点における前記金属酸化物の前記濃度は、ゼロではなく、
前記ガラス系物品は、約0J/m
2超〜25J/m
2未満の貯蔵引張エネルギー、および約80GPa未満のヤング率を含むことを特徴とするガラス系物品。
【0312】
実施形態25
前記金属酸化物の前記濃度は、前記厚さ全体にわたって約0.05モル%以上であることを特徴とする、実施形態1〜18または24のいずれか一項に記載のガラス系物品。
【0313】
実施形態26
前記第1の表面における前記金属酸化物の前記濃度は、約0.5・tに等しい深さにおける前記金属酸化物の前記濃度の約1.5倍以上であることを特徴とする、実施形態1〜18、24または25のいずれか一項に記載のガラス系物品。
【0314】
実施形態27
前記金属酸化物の全濃度は、約1モル%〜約15モル%の範囲内であることを特徴とする、実施形態1〜18、20または24〜26のいずれか一項に記載のガラス系物品。
【0315】
実施形態28
前記金属酸化物は、Li
2O、Na
2O、K
2O、Rb
2O、およびCs
2Oのいずれか1つ以上を含むことを特徴とする、実施形態1〜18、20または24〜27のいずれか一項に記載のガラス系物品。
【0316】
実施形態29
前記第1の表面からDOCまで延在するCS層を含み、前記DOCは、約0.1・t以上であることを特徴とする、実施形態1〜18、20または24〜28のいずれか一項に記載のガラス系物品。
【0317】
実施形態30
前記CT領域は、最大CTを含み、および表面CSの絶対値に対する最大CTの比は、約0.01〜約0.2の範囲内であることを特徴とする、実施形態19、20または24〜29のいずれか一項に記載のガラス系物品。
【0318】
実施形態31
約3ミリメートル未満の厚さ(t)を画定する、第1の表面および前記第1の表面の反対にある第2の表面と、
前記厚さに沿って延在する応力プロファイルと
を含むガラス系物品において、約0t〜最大0.3tおよび約0.7・t超〜tの厚さ範囲間の全ての点における前記応力プロファイルは、約0.1MPa/マイクロメートルを超える絶対値を有する局所勾配を含み、
前記応力プロファイルは、最大CS、DOC、および最大CTを含み、最大CSの絶対値に対する最大CTの比は、約0.01〜約0.2の範囲内であり、前記DOCは、約0.1・t以上であり、
前記ガラス系物品は、約0J/m
2超〜25J/m
2未満の貯蔵引張エネルギー、および約80GPa未満のヤング率を含むことを特徴とするガラス系物品。
【0319】
実施形態32
前記厚さ全体に沿って連続的に変動する金属酸化物のゼロではない濃度を含むことを特徴とする、実施形態31に記載のガラス系物品。
【0320】
実施形態33
約10マイクロメートルの厚さ部分に沿って連続的に変動する金属酸化物のゼロではない濃度を含むことを特徴とする、実施形態31または32に記載のガラス系物品。
【0321】
実施形態34
前記最大CSは、約300MPa以上を含むことを特徴とする、実施形態19、20、25または31〜33のいずれか一項に記載のガラス系物品。
【0322】
実施形態35
約0.4・t以上の層の化学深さを含むことを特徴とする、実施形態8〜18または31〜34のいずれか一項に記載のガラス系物品。
【0323】
実施形態36
CT領域を含み、前記CT領域は、金属酸化物濃度勾配を含むことを特徴とする、実施形態19、20、24〜29または31〜35のいずれか一項に記載のガラス系物品。
【0324】
実施形態37
前記最大CTは、約71.5/√(t)(MPa)未満であることを特徴とする、実施形態24〜36のいずれか一項に記載のガラス系物品。
【0325】
実施形態38
CS領域とCT領域とを含む応力プロファイルを含むガラス系物品において、前記CT領域は、応力(x)=MaxT−(((CT
n・(n+1))/0.5
n)・|(x/t)−0.5|
n)の式によって概算され、
式中、MaxTは、最大張力値であり、かつMPaの単位の正の値であり、
CT
nは、nにおける張力値であり、CT
nは、MaxT以下であり、かつMPaの単位の正の値であり、
xは、マイクロメートル単位の厚さ(t)に沿った位置であり、および前記ガラス系物品の表面においてx=0であり、
nは、1.5〜5の範囲内であることを特徴とするガラス系物品。
【0326】
実施形態39
nは、1.5〜2の範囲内であることを特徴とする、実施形態38に記載のガラス系物品。
【0327】
実施形態40
前記CT領域は、約50MPa〜約250MPaの範囲内の最大CT値を含み、および前記最大CT値は、約0.4t〜約0.6tの範囲内の深さにおけるものであることを特徴とする、実施形態38または39に記載のガラス系物品。
【0328】
実施形態41
約0t〜約0.1tの範囲内の厚さの場合、前記応力プロファイルは、傾きであって、その絶対値の大きさが約20MPa/マイクロメートル〜約200MPa/マイクロメートルの範囲内である、傾きを含むことを特徴とする、実施形態38〜40のいずれか一項に記載のガラス系物品。
【0329】
実施形態42
前記応力プロファイルは、0.5tから前記表面まで測定された場合の複数の誤差関数の組合せによって概算されることを特徴とする、実施形態38〜41のいずれか一項に記載のガラス系物品。
【0330】
実施形態43
CS領域とCT領域とを含む応力プロファイルを含むガラス系物品において、前記CT領域は、応力(x)=MaxT−(((CT
n・(n+1))/0.5
n)・|(x/t)−0.5|
n)の式によって概算され、
式中、MaxTは、最大張力値であり、かつMPaの単位の正の値であり、
CT
nは、nにおける張力値であり、CT
nは、MaxT以下であり、かつMPaの単位の正の値であり、
xは、マイクロメートル単位の厚さ(t)に沿った位置であり、および前記ガラス系物品の表面においてx=0であり、
nは、1.5〜5の範囲内であり、
前記物品は、
(i)前記物品が曲げられて100MPaの引張応力を付与するときに、500ニュートンを超える閾値破壊衝撃力と、
(ii)前記物品が曲げられて100MPaの引張応力を付与するときに、800Nの衝撃力によって衝突された後に125MPa以上の残留強度と
の少なくとも1つを示すことを特徴とするガラス系物品。
【0331】
実施形態44
厚さ(t)(mm)を画定する、第1の表面および前記第1の表面の反対にある第2の表面と、
濃度勾配を形成する金属酸化物と
を含むガラス系物品において、前記金属酸化物の濃度は、前記第1の表面から、前記第1の表面と前記第2の表面との間の点における値まで減少し、かつ前記値から前記第2の表面まで増加し、
前記点における前記金属酸化物の前記濃度は、ゼロではなく、
前記物品は、
(i)前記物品が曲げられて100MPaの引張応力を付与するときに、500ニュートンを超える閾値破壊衝撃力と、
(ii)前記物品が曲げられて100MPaの引張応力を付与するときに、800Nの衝撃力によって衝突された後に125MPa以上の残留強度と
の少なくとも1つを示すことを特徴とするガラス系物品。
【0332】
実施形態45
600ニュートンを超える閾値破壊衝撃力を示すことを特徴とする、実施形態21〜23、43または44のいずれか一項に記載のガラス系物品。
【0333】
実施形態46
700ニュートンを超える閾値破壊衝撃力を示すことを特徴とする、実施形態21〜23、43または44のいずれか一項に記載のガラス系物品。
【0334】
実施形態47
800ニュートンを超える閾値破壊衝撃力を示すことを特徴とする、実施形態21〜23、43または44のいずれか一項に記載のガラス系物品。
【0335】
実施形態48
150MPa以上の残留強度を示すことを特徴とする、実施形態21〜23、43または44のいずれか一項に記載のガラス系物品。
【0336】
実施形態49
200MPa以上の残留強度を示すことを特徴とする、実施形態21〜23、43または44のいずれか一項に記載のガラス系物品。
【0337】
実施形態50
tは、約3ミリメートル以下を含むことを特徴とする、実施形態1〜49のいずれか一項に記載のガラス系物品。
【0338】
実施形態51
非晶質であることを特徴とする、実施形態1〜50のいずれか一項に記載のガラス系物品。
【0339】
実施形態52
結晶性であることを特徴とする、実施形態1〜51のいずれか一項に記載のガラス系物品。
【0340】
実施形態53
約380nm〜約780nmの範囲内の波長にわたって約88%以上の透過率をさらに示すことを特徴とする、実施形態1〜52のいずれか一項に記載のガラス系物品。
【0341】
実施形態54
CIE光源F02下において、約88以上のL
*値、約−3〜約+3の範囲内のa
*値、および約−6〜約+6の範囲内のb
*値のCIELAB色空間座標をさらに示すことを特徴とする、実施形態1〜53のいずれか一項に記載のガラス系物品。
【0342】
実施形態55
約0.65MPa・m
1/2以上の破壊靱性(K
1C)を含むことを特徴とする、実施形態1〜54のいずれか一項に記載のガラス系物品。
【0343】
実施形態56
80GPa未満のヤング率を含むことを特徴とする、実施形態1〜55のいずれか一項に記載のガラス系物品。
【0344】
実施形態57
tは、約1ミリメートル以下を含むことを特徴とする、実施形態1〜56のいずれか一項に記載のガラス系物品。
【0345】
実施形態58
約100kP(10kPa・s)以上の液相線粘度を含むことを特徴とする、実施形態1〜57のいずれか一項に記載のガラス系物品。
【0346】
実施形態59
約17モル%を超えるAl
2O
3とNa
2Oとの合計量を含む組成物と、
約4モル%を超えるNa
2Oを含む組成物と、
B
2O
3、ZnO、またはB
2O
3とZnOとの両方を実質的に含まない組成物と、
ゼロではない量のP
2O
5を含む組成物と
のいずれか1つ以上を含むことを特徴とする、実施形態1〜58のいずれか一項に記載のガラス系物品。
【0347】
実施形態60
前面、背面、および側面を有するハウジングと、
少なくとも部分的に前記ハウジング内部にある電気部品と、
前記ハウジングの前記前面におけるまたはそれに隣接するディスプレイと、
前記ディスプレイの上に配置されるカバー基材と
を含むデバイスにおいて、前記カバー基材は、実施形態1〜59のいずれか一項に記載のガラス系物品を含むことを特徴とするデバイス。