特表2018-536839(P2018-536839A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特表2018-536839ナノスケール・レベルにおける流体流解析のためのグラフェンベースの磁気ホール・センサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-536839(P2018-536839A)
(43)【公表日】2018年12月13日
(54)【発明の名称】ナノスケール・レベルにおける流体流解析のためのグラフェンベースの磁気ホール・センサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/72 20060101AFI20181116BHJP
   G01P 5/20 20060101ALI20181116BHJP
   H01L 43/06 20060101ALI20181116BHJP
【FI】
   G01N27/72
   G01P5/20 G
   H01L43/06 S
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2018-510398(P2018-510398)
(86)(22)【出願日】2016年9月7日
(85)【翻訳文提出日】2018年2月23日
(86)【国際出願番号】IB2016055329
(87)【国際公開番号】WO2017064578
(87)【国際公開日】20170420
(31)【優先権主張番号】62/241,594
(32)【優先日】2015年10月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/944,766
(32)【優先日】2015年11月18日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108501
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 剛史
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【弁理士】
【氏名又は名称】太佐 種一
(72)【発明者】
【氏名】フェレイラ、ロドリゴ、ニューマン バロス
(72)【発明者】
【氏名】エンジェル、ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】ステイナー、マチアス、バーンハード
【テーマコード(参考)】
2G053
5F092
【Fターム(参考)】
2G053AB11
2G053BA05
2G053BB08
2G053BC02
2G053BC14
2G053CA05
2G053DA10
2G053DB02
5F092AB01
5F092AC02
5F092AD07
5F092BA02
5F092BA22
5F092BA32
(57)【要約】
【課題】ナノスケール・レベルで流体流解析をするための方法および装置を提供する。
【解決手段】粒子を検出する方法は、AC磁場を使って粒子を磁化するステップと、導電性で実質的に二次元の格子構造体を有する感知デバイス中で磁化された粒子からAC電圧を生成するステップと、感知デバイス中でDC磁場を生成されたAC電圧に重畳するステップと、感知デバイスでACホール電圧を測定するステップと、を含む。
【選択図】図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
AC磁場を使って粒子を磁化するステップと、
導電性で実質的に二次元の格子構造体を有する感知デバイス中で、前記磁化された粒子からAC電圧を生成するステップと、
前記感知デバイス中で、DC磁場を前記生成されたAC電圧に重畳するステップと、
前記感知デバイスでACホール電圧を測定するステップと、
を含む、粒子を検出する方法。
【請求項2】
感知デバイス中で前記磁化された粒子からAC電圧を生成するステップが、前記感知デバイス上のACコイルの両端にAC電圧を印加するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記感知デバイス中でDC磁場を前記生成されたAC電圧に重畳するステップが、前記感知デバイス上のDCコイルの両端にDC電圧を印加するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記感知デバイス中でDC磁場を前記生成されたAC電圧に重畳するステップが、DC磁場が重畳されないで前記感知デバイス中の生成されたAC電圧に比べて、前記感知デバイスで測定するための前記ACホール電圧を増大する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記導電性で実質的に二次元の格子構造体の対向する端部の間に電源電圧を印加するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記磁化された粒子から、導電性で実質的に二次元の構造体を有する感知デバイス中にAC電圧を生成するステップが、電圧バイアスされたグラフェン素子中にAC電圧を生成するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
流速場を算定する方法であって、
粒子にAC磁場を印加することによってチャネル中を流れる流体中の前記粒子を磁化するステップと、
前記チャネル中の第一感知デバイスで第一ACホール電圧を測定するステップであって、前記第一感知デバイスが電圧バイアスされた第一グラフェン素子を含む、前記測定するステップと、
前記チャネル中の第二感知デバイスで第二ACホール電圧を測定するステップであって、前記第二感知デバイスが電圧でバイアスされた第二グラフェン素子を含む、前記測定するステップと、
前記第一測定ACホール電圧と前記第二測定ACホール電圧との間の時間シフトを算定するステップと、
前記算定された時間シフトおよび前記第一感知デバイスと前記第二感知デバイスとの間の空間距離に基づいて、前記チャネル中の流体流速を算定するステップと、
を含む方法。
【請求項8】
前記チャネル中の第一感知デバイスで第一ACホール電圧を測定するステップが、
前記第一感知デバイスの導電性で実質的に二次元の格子構造体中で、前記磁化された粒子からAC電圧を生成するステップと、
前記第一感知デバイスの前記導電性で実質的に二次元の格子構造中で、DC磁場を前記生成されたAC電圧に重畳するステップと、
を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第一測定ACホール電圧と前記第二測定ACホール電圧との間の時間シフトを算定するステップが、下記式を使って、前記第一測定ACホール電圧と前記第二測定ACホール電圧とを相互相関させるステップを含み、
【数1】
前記式のVcorrは相関された電圧であり、Vは第一ホール電圧信号であり、Vは第二ホール電圧信号であり、tは時間である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記チャネル中を流れる前記流体の平均流速が、
U=ΔY/Δt
で表され、前式のUは速度であり、Yはチャネル沿いの距離であり、tは時間である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第一感知デバイスおよび前記第二感知デバイスに前記チャネル外部の参照電圧を供給するステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
DC磁場を供給する第一コイルと、
AC磁場を供給する第二コイルと、
前記第一コイルおよび前記第二コイルに近接し、電圧バイアスされた、導電性で実質的に二次元の格子構造体と、
を含む装置であって、
前記第一コイルと、前記第二コイルと、前記導電性で実質的に二次元の格子構造体とは誘電体層で分離される、
装置。
【請求項13】
前記導電性で実質的に二次元の格子構造体に接触して配置された、コンタクトの第一セットをさらに含む、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記第一コイルに接触しているビアの第一セット、および前記第二コイルに接触しているビアの第二セットをさらに含む、請求項12に記載の装置。
【請求項15】
前記導電性で実質的に二次元の格子構造体がグラフェンを含む、請求項12に記載の装置。
【請求項16】
前記導電性で実質的に二次元の格子構造体が、MoS、WSe、黒リン、カーボン・ナノチューブ、Siナノワイヤ、または前述の材料の任意の組み合せを含む、請求項12に記載の装置。
【請求項17】
前記誘電体層の少なくとも1つが、ガラス、水晶、SiC、窒化珪素、プラスチック、または前述の材料の任意の組み合わせの基板の上に配置される、請求項12に記載の装置。
【請求項18】
前記誘電体層の少なくとも1つが、SiO、Al、HfO、または前述の材料の任意の組み合わせを含む、請求項12に記載の装置。
【請求項19】
前記第二コイルが、細長のリニアな素子である、請求項12に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の例示的な諸実施形態は、一般にホール効果センサに関し、さらに具体的には、マイクロスケールまたはナノスケール・レベルでの、流体流の特性識別および解析のためのグラフェンベースのホール効果センサおよびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
流速測定は、流体の速度の測定である。微細粒子画像流速測定(マイクロPIV:Microscopic Particle Image Velocimetry)および微細粒子追跡流速測定(マイクロPTV:Microscopic Particle Tracking Velocimetry)などのマイクロスケール・レベルでの流速測定技法は、光学的(例えばレーザ)検出を用い、したがって、ガラス、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、およびポリメタクリル酸メチル(PMMA)などの透明な材料中にエッチングされたマイクロチャネルに限定される。マイクロPIVおよびマイクロPTV技法の両方とも、強いレーザ光パルスを用いる蛍光マイクロビーズの励起に依存する。また、両方の技法は、ナノスケール・レベルでの流体流にこれらを適用するのに障害となるいくつかの短所を有する。
【0003】
磁性ナノ粒子は、様々な流速測定技法において生物検定のためのマーカ、または流体流の特性識別のためのトレーサとして使用することができる。しかしながら、ナノ粒子は、一般に、直径が約1ナノメートル(nm)〜数百ナノメートルのオーダーである。しかして、それらの小さなサイズ、弱い磁場、大きな表面−体積比、および熱的じょう乱(超常磁性)は、移動している流体での検出性を達成するための難題をもたらす。
【0004】
ナノ粒子を対象に作動するため設計されたマイクロ−/ナノシステムの中に、磁場のセンサおよびジェネレータを作製して組み込むのは複雑で困難な作業となることがある。また、センサおよびジェネレータの使用には、検出方法において、劣弱な信号体ノイズ比を補正するための高度な検出方策が必要となり得る。かかる検出方策は、CMOS適合性のあるプロセス内に実装が可能であるが、これらは同様に任意の基板デバイスに実装することもできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
微小な磁性粒子をホール・センサで検出する従来の試みは、Si−、InSb−、およびグラフェン−ベースのホール・デバイスを用いており、ポリマー母材中に分散された何千ものナノメートルサイズの酸化鉄粒子から成る磁性マイクロビーズの存在を検出することができた。しかしながら、センサがマイクロ−/ナノ流体チャネルの中に組み込まれていなかったので、さらにはこれらマイクロビーズを、高度の複雑な装置(原子間力顕微鏡(AFM:atomic force microscope)、ナノマニピュレータなど)によってセンサの上部に正確に配置する必要があったため、移動するナノ粒子の検出は一般的には不可能であった。さらに、通常、約1平方マイクロメートル(μm)〜約6μmであるセンサ面積によって、かかるセンサを特定のマイクロ−/ナノ流体デバイスの中に組み込むのは困難、または不可能でさえあった。センサをマイクロ−/ナノ流体デバイスの中に組み込むことに関する困難さは別として、直径が数ナノメートルである単一ナノ粒子の検出は実証されていない。さらに、分散された磁性ナノ粒子群の調査に基づく、マイクロ−/ナノ流体チャネルを通る流体のフロー特性を特性識別するための方法も成功裏に実行されたことがない。
【0006】
上記に換えて、Alベースの磁気トンネル接合(MTJ:Magnetic Tunnel Junction)も、磁性マイクロビーズの検出のためのセンサとして使われてきた。このセンサのマイクロ流体チャネルへの組み込みによって、マイクロビーズがMTJの上面を転がる際にそれらの動きの検出が可能になった。しかしながら、単一のナノメートルサイズの磁性粒子の存在を検出するためにこのアプローチをどのように使える可能性があるか、または周囲流体のフローをよりうまく特性識別するために分散粒子群をどのように使える可能性があるかは論証されなかった。さらに、センサの相対的に大きなサイズ(約10μm)が、特定のマイクロ−/ナノ流体デバイス中へのその組み込みの障害となっている。
【0007】
同じように、MgOベースのMTJは、16nmの酸化鉄ナノ粒子で標識された2.5マイクロモル(μM)の標的DNAを検出することができている。その際に、そのDNAストランドはセンサ表面に付着することができた。有効範囲が特定の所定の閾値を上回っていれば、磁気標識(ナノ粒子)の存在を示す信号が検出された。このアプローチでは、単一ナノ粒子を検出することも、それらを使って搬送流体のフローの特性識別をすることもできなかった。また、検出のため磁性粒子をセンサの表面に付着させる必要があったので、動いている磁性粒子を検出することもできなかった。最後に、このセットアップは、各1つが85μmの表面積を有する楕円形のMTJセンサの大きなアレイ(4×10μm)を必要とし、これは特定のマイクロ−/ナノ流体デバイス中への組み込みには適さなかった。
【0008】
また、グラフェン、InSb、InAs/AlSb(二次元電子ガス)を用いたマイクロメートルおよびサブマイクロメートルサイズのホール・センサが極小な磁場の検出に関して特性設定され最適化されてきた。かかるデバイスで複数の磁性ナノ粒子を検出する能力は実証されていない。実際上、これらの試みでは単一のナノ粒子の検出でさえ期待できなかった。さらに、かかる試みの実行は、センサの上面部へのナノ粒子の完全な配置を前提としていて、動いているナノ粒子を検出する方法も、搬送流体のフロー特性を計測する方法も提供することはなかった。
【0009】
単一ナノ粒子の検出への別の試みでは、数十〜数百の16nmの酸化鉄ナノ粒子を検出するため、巨大磁気抵抗効果(GMR:giant magnetoresistance)スピン・バルブ・センサが用いられた。しかしながら、かかる試みでは、同等なサイズの単一のナノ粒子を検出することはできなかった。この検出方法は、これらナノ粒子がセンサに接合されていることを必要とし、このため、周囲流体のフローの特性識別をする方法は提供しなかった。
【0010】
また、数千個のより小さな(4nm)FePtナノ粒子から成る50〜175nmのナノ粒子の例で、サブマイクロメートルの半導体ベースのホール・センサが、単一ナノ粒子の検出を行うことが示された。この化合物のナノ粒子はSi膜の存在を必要とする複雑な操作によって位置設定され、これにより、結局はデバイスの感度が制限された。この方法は、動いているナノ粒子を検出するのには適さず、磁気トレーサを介して周囲流体の特性識別をするのにも適さなかった。かかるデバイスによる、少数のナノメートル(<50nm)しかない単一ナノ粒子の検出は実証されなかった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1つの例示的な態様において、粒子を検出する方法は、AC磁場を使って粒子を磁化するステップと、導電性で実質的に二次元の格子構造体を有する感知デバイスにおいて、磁化された粒子からAC電圧を生成するステップと、感知デバイスにおいてDC磁場を生成されたAC電圧に重畳するステップと、感知デバイスでACホール電圧を測定するステップとを含む。
【0012】
別の例示的な態様において、流速場を算定する方法は、AC磁場を粒子に印加することによってチャネルを流れる流体中の粒子を磁化するステップと、チャネル中の第一感知デバイスで第一ACホール電圧を測定するステップであって、第一感知デバイスは電圧バイアスされた第一グラフェン素子を含む、該測定するステップと、チャネル中の第二感知デバイスで第二ACホール電圧を測定するステップであって、第二感知デバイスは電圧でバイアスされた第二グラフェン素子を含む、該測定するステップと、第一測定ACホール電圧と第二測定ACホール電圧との間の時間シフトを算定するステップと、算定された時間シフトおよび第一感知デバイスと第二感知デバイスとの間の空間距離に基づいてチャネル中の流体の流速を算定するステップと、を含む。
【0013】
別の例示的な態様において、装置は、DC磁場を提供するための第一コイルと、AC磁場を提供するための第二コイルと、第一コイルおよび第二コイルに近接し、電圧バイアスされている導電性で実質的に二次元の格子構造体と、を含む。第一コイルと、第二コイルと、導電性で実質的に二次元の格子構造体とは、誘電体層によって分離されている。
【0014】
例示的な実施形態の前述のおよび他の態様は、以下の詳細な説明を添付の図面と併せ読めばより明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1Aおよび1Bは、それぞれ、グラフェンベースのホール効果センサの1つの例示的な実施形態の側面図および上面図の概略的な表現である。
図2図2Aおよび2Bは、それぞれ、基板部および第一誘電体層によって画定されたウエハの側面図および上面図の概略的な表現であり、このウエハは図1Aおよび1Bのセンサの一部を形成する。
図3図3Aおよび3Bは、それぞれ、ウエハ上に堆積されてパターン取りされたフォトレジスト材料の側面図および上面図の概略的な表現である。
図4図4Aおよび4Bは、それぞれ、ウエハ上に第一オンチップ・コイルを形成する金属薄膜の側面図および上面図の概略的な表現である。
図5図5Aおよび5Bは、それぞれ、第一オンチップ・コイルの上に堆積された第二誘電体層の側面図および上面図の概略的な表現である。
図6図6Aおよび6Bは、それぞれ、第二誘電体層の上に堆積されたフォトレジスト材料の側面図および上面図の概略的な表現であり、このフォトレジスト材料はパターン取りされている。
図7図7Aおよび7Bは、それぞれ、第二誘電体層上に第二オンチップ・コイルを形成する金属薄膜の側面図および上面図の概略的な表現である。
図8図8Aおよび8Bは、それぞれ、第二オンチップ・コイルの上に堆積された第三誘電体層の側面図および上面図の概略的な表現である。
図9図9Aおよび9Bは、それぞれ、第三誘電体層上に堆積されたグラフェン層の側面図および上面図の概略的な表現である。
図10図10Aおよび10Bは、それぞれ、グラフェン層の上に堆積されたフォトレジスト材料の側面図および上面図の概略的な表現であり、このフォトレジスト材料はパターン取りされている。
図11図11Aおよび11Bは、それぞれ、エッチング処理後のグラフェン層の側面図および上面図の概略的な表現である。
図12図12Aおよび12Bは、それぞれ、グラフェン層および第三誘電体層の上に堆積されたフォトレジスト材料の側面図および上面図の概略的な表現であり、このフォトレジスト材料はパターン取りされている。
図13図13Aおよび13Bは、それぞれ、グラフェンに隣接して形成されたコンタクトのセットの側面図および上面図の概略的な表現である。
図14】グラフェンおよびコンタクトのセットを覆って堆積されたフォトレジスト材料の側面図の概略的な表現であり、このフォトレジスト材料はパターン取りされている。
図15】グラフェンベースのホール効果センサの第一オンチップ・コイル、第二オンチップ・コイル、およびグラフェン層のオーバーレイの上面図の概略的な表現であり、各種の電圧が示されている。
図16】グラフェンベースのホール効果センサの1つの例示的な動作原理の概略的な表現である。
図17図17A〜17Cは、各種のグラフェン層幾何形状を用いたセンサの動作のコンピュータ・シミュレーションの所産である。
図18図18Aは、複数のセンサを使う二次元流れ場の1つの例示的な計測の概略的な表現であり、図18Bは、時間経緯シフトにおいて計測された連続的なホール電圧信号のグラフ表現である。
図19】流速場の計測の1つの例示的な図解の概略的な表現である。
図20】流体流解析を提供するための使用に適し得る様々な電子デバイスおよび装置のブロック図である。
図21】流体流解析を提供する或る例示的な実施形態による、1つの例示的な方法のオペレーション、およびコンピュータ可読メモリ上に具現化されたコンピュータ・プログラム命令の実行の結果、を表す論理流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書で説明する例示的な諸実施形態は、マイクロ−/ナノチャネルを流通する搬送流体中に分散された、磁気トレーサとして機能する、直径が約1〜数百ナノメートルの1つ以上の磁性ナノ粒子の検出および特性識別を対象としている。これら例示的な諸実施形態は、ナノ粒子の検出および特性識別に限定されるものでなく、マイクロ粒子(直径が約1マイクロメートルまたはそれより大きい粒子)も同様に検出が可能である。本明細書で説明する例示的な諸実施形態で用いられる装置および方法は、磁気トレーサから抽出された情報を介して搬送流体そのものの特性識別を可能にする。
【0017】
磁性ナノ粒子を検出し特性識別する諸実施形態において、マイクロ−/ナノスコピック寸法の導電性で実質的に二次元の格子構造体(例えば、グラフェン層またはシート)がマイクロ−/ナノチャネルに組み込まれ、電流の流れを促進するために電圧バイアスされる。マイクロ−/ナノチャネル内部を流れる搬送流体中の近在の磁性ナノ粒子は、外部磁場により励起され、グラフェン・シートに磁場を生成する。ホール効果によって、グラフェン・シートに検出可能な横方向ホール電圧が生成される。このホール電圧信号は、該近在の磁性ナノ粒子および搬送流体のフロー特性についての情報を伝達する。これは、流れている流体中に分散された約1ナノメートル〜数百ナノメートルの直径(それより大きいマイクロ粒子はもとより)の単一ナノ粒子の検出、およびマイクロおよびナノチャネル中の流体流の速度を算定するためこの情報を用いることを可能にする。しかして、本明細書で説明する装置および方法は、磁性ナノ粒子の流速測定に関する技法および処理を容易化する。
【0018】
図1Aおよび1Bを参照すると、グラフェンベースの磁気ホール効果センサは、全般に参照符号100で表されており、以降、これを「センサ100」と言う。センサ100は、第一誘電体層110の上に配置され第二誘電体層115に覆われた第一オンチップ・コイル105と、第二誘電体層115の上に配置され第三誘電体層125に覆われた第二オンチップ・コイル120と、第三誘電体層125上に配置された導電性で実質的に二次元の格子構造体130と、第三誘電体層125上に配置され実質的に二次元の格子構造体130に隣接するコンタクトの第一セット135と、第三誘電体層125および第二誘電体層115を通り抜け第一オンチップ・コイル105にまで形成されたビアの第一セット145と、第三誘電体層125を通り抜け第二オンチップ・コイル120にまで形成されたビアの第二セット140と、を含む。第一誘電体層110は、固形のまたはフレキシブルな基板150の上に配置することができる。第一オンチップ・コイル105は直流(DC:direct current)磁場を生成する。第二オンチップ・コイル120は交流(AC:alternating current)磁場を生成する。
【0019】
導電性で実質的に二次元の格子構造体130は、グラフェン、MoS、WSe、黒リンなどの任意の適切な単層または多層の有機もしくは無機の積層材料にすることも、有機もしくは無機のナノチューブ/ナノワイヤ(例えば、カーボン・ナノチューブ、Siナノワイヤ等)などの疑一次元格子構造体で作られた規則的配列構造体またはランダム網状体/薄膜にすることも、前述の材料の任意の組み合せなどにすることも可能である。但し、この実質的に二次元の格子構造体130は、以降では、「グラフェン130」と言うものとする。
【0020】
ここで図2A〜14を参照すると、センサ100の作製が可能な主なプロセス・ステップの例が図示され記載されている。
【0021】
図2Aおよび2Bに示されるように、基板150は、ウエハ155を形成するために第一誘電体層110によってコートされた絶縁化され平坦化された基板であってよい。基板150は、例えば、ガラス、水晶、SiC、Siなどの窒化珪素、プラスチックなどの1つ以上を含んでよい。第一誘電体層110に対し適した誘電体材料には、以下に限らないが、SiO、Al、HfO、前述の組み合せなどが含まれる。かかる誘電体材料は、原子層堆積、熱蒸着、または化学蒸着(CVD:chemical vapor deposition)などの標準的な処理法を使って堆積することが可能である。
【0022】
図3Aおよび3Bに示されるように、ウエハ155には、マスク160を生成するためにポジ型フォトレジスト材料(例えばPMMA)をコートすることができ、次いで、フォトレジストの諸部分を露出するためにeビームまたはフォトリソグラフィ技法を使ってパターン取りし、露出域165を除去するための現像ステップを行えばよい。一般に、マスク160は、光もしくは電子ビーム・リソグラフィ・レジスト(例えば、PMMA、水素シルセスキオキサン(HSQ:hydrogen silsesquioxane)、または(利用可能な供給者からのMICROPOSIT(登録商標) S1818などの)ポリシリコンベースの材料)のようなソフトマスク、あるいは匹敵する堆積法により堆積された酸化物、窒化物、もしくは金属のようなハードマスクであってよい。
【0023】
図4Aおよび4Bに示されるように、露出域165の除去部分の中および第一誘電体層110の上に、標準的な金属堆積処理を使って金属薄膜を堆積することができる。この金属薄膜は、DC磁場を生成するための第一オンチップ・コイル105を形成することになる。第一オンチップ・コイル105を形成する金属薄膜のために適した金属には、以下に限らないが、W、Ti、Pd、Au、Crなどが含まれる。マスク160は、任意の適切なリフト・オフ技法を使って除去すればよい。
【0024】
図5Aおよび5Bに示されるように、第一オンチップ・コイル105は、第一オンチップ・コイル105を画定している金属薄膜が完全に覆われるように、第二誘電体層115によってコートされる。次いで第二誘電体層115を平坦化すればよい。第二誘電体層115に適した誘電体は、以下に限らないが、SiO、Al、HfO、前述の組み合せなどを含み、これらは、原子層堆積、熱蒸着、またはCVDなどの標準的処理を使って堆積することが可能である。
【0025】
図6Aおよび6Bに示されるように、第二マスク170を生成するために第二誘電体層115をポジ型フォトレジスト(例えばPMMA)でコートすることができ、次いで、フォトレジストの諸部分を露出するためにeビームまたはフォトリソグラフィ技法を使ってパターン取りし、露出域175を除去するための現像ステップを行えばよい。一般に、第二マスク170は、光もしくは電子ビーム・リソグラフィ・レジスト(例えば、PMMA、HSQ、もしくはS1818)のようなソフトマスク、あるいは匹敵する堆積法により堆積された酸化物、窒化物、もしくは金属のようなハードマスクであってよい。
【0026】
図7Aおよび7Bに示されるように、露出域175の除去部分の中および第二誘電体層115の上に、標準的な金属堆積処理法を使って金属薄膜を堆積することができる。この金属薄膜は、AC磁場を生成するための第二オンチップ・コイル120を形成する。第二オンチップ・コイル120は、図7Bに示されるように、細長の直線素子とすることができる。第二オンチップ・コイル120を形成する金属薄膜のために適した金属には、以下に限らないが、W、Ti、Pd、Au、Crなどが含まれる。第二マスク170は、任意の適切なリフト・オフ技法を使って除去すればよい。
【0027】
図8Aおよび8Bに示されるように、第二オンチップ・コイル120は、第二オンチップ・コイル120を画定している金属薄膜が完全に覆われるように、第三誘電体層125によってコートされる。次いで第三誘電体層125を平坦化すればよい。第三誘電体層125に適した誘電体は、以下に限らないが、SiO、Al、HfO、前述の組み合せなどを含み、これらは、原子層堆積、熱蒸着、またはCVDなどの標準的処理を使って堆積することが可能である。
【0028】
図9Aおよび9Bに示されるように、グラフェンを第三誘電体層125の平坦化された上部表面の上に堆積して、グラフェン130を層として設けることができる。グラフェンを堆積する1つの適した方法には、以下に限らないが、層を合成するためにCVDを用いて銅フォイル上にグラフェンを堆積し、次いで、銅を分解してグラフェンが水に浮かぶようにし、その後、浮かんだグラフェンを、第三誘電体層125の平坦化された上部表面への移し替えることが含まれる。
【0029】
図10Aおよび10Bに示されるように、次いでグラフェン130は、第三マスク180を生成するためにネガ型フォトレジスト(例えばPMMA)でコートすることができ、次いで、ネガ型フォトレジストの諸部分を露出するためにeビームまたはフォトリソグラフィ技法を使ってパターン取りし、第三マスク180の非露光域を除去するための現像ステップを行えばよい。一般に、第三マスク180は、光もしくは電子ビーム・リソグラフィ・レジスト(例えば、PMMA、HSQ、もしくはS1818)のようなソフトマスク、あるいは匹敵する堆積法により堆積された酸化物、窒化物、もしくは金属のようなハードマスクであってよい。
【0030】
図11Aおよび11Bに示されるように、グラフェン130の露出部分(これらは、第三マスク180の除去された非露光域の下部にあった)は、適切な技法(例えば、酸素反応性イオン・エッチング(RIE:reactive ion etching))によってエッチングすることが可能である。これは、第三誘電体層125の上に、十字型パターンのグラフェン130を残すことを可能にする。
【0031】
図12Aおよび12Bに示されるように、第四マスク190を生成するために、グラフェン130および第三誘電体層125の上部表面はポジ型フォトレジスト(例えばPMMA)によってコートすることができ、次いで、ポジ型フォトレジストの諸部分を露出するためにeビームまたはフォトリソグラフィ技法を使ってパターン取りし、第四マスク190の露出域195を除去するための現像ステップを行えばよい。一般に、第四マスク190は、光もしくは電子ビーム・リソグラフィ・レジスト(例えば、PMMA、HSQ、もしくはS1818)のようなソフトマスク、あるいは匹敵する堆積法により堆積された酸化物、窒化物、もしくは金属のようなハードマスクであってよい。
【0032】
図13Aおよび13Bに示されるように、除去された露出域195の中および第三誘電体層125の上に、標準的な金属堆積処理を使って、グラフェン130に隣接して金属薄膜を堆積することができる。除去された露出域195中に堆積されたこの第三金属膜は、コンタクトの第一セット135を形成する。コンタクトの第一セット135を形成するための第三金属膜に適した金属には、以下に限らないが、W、Ti、Pd、Au、Crなどが含まれる。
【0033】
図14に示されるように、第三誘電体層125、グラフェン130、およびコンタクトの第一セット135の上部表面は、第五マスク210を生成するためにポジ型フォトレジスト(例えばPMMA)でコートすることができ、次いで、ポジ型フォトレジストの諸部分を露出するためにeビームまたはフォトリソグラフィ技法を使ってパターン取りし、第五マスク210の露出域215を除去するための現像ステップを行えばよい。一般に、第五マスク210は、光もしくは電子ビーム・リソグラフィ・レジスト(例えば、PMMA、HSQ、もしくはS1818)のようなソフトマスク、あるいは匹敵する堆積法により堆積された酸化物、窒化物、もしくは金属のようなハードマスクであってよい。
【0034】
第五マスク210の露出域215の下の開口域は、引き続いて、任意の適したエッチング方法(RIEなど)を使って、第三誘電体層125の開口域下方の第二オンチップ・コイル120に至るまで、ならびに第三誘電体層125および第二誘電体層115の開口域下方の第一オンチップ・コイル105に至るまでエッチングすることができる。
【0035】
図1Aおよび1Bに戻って参照すると、第二オンチップ・コイル120および第一オンチップ・コイル105に至るまで下方に開口された領域には、次いで、これらの開口域の中に、標準的な金属堆積処理を使って金属薄膜の堆積を行うことが可能である。金属のこの堆積は、第三誘電体層125および第二誘電体層115を通り抜け第一オンチップ・コイル105に至るビアの第一セット145と、第三誘電体層125を通り抜け第二オンチップ・コイル120に至るビアの第二セット140とを形成する。
【0036】
ここで図15を参照すると、(第一オンチップ・コイル105および第二オンチップ・コイル120を形成している)相異なる金属層およびグラフェン130のオーバーレイが概略的に示されている。グラフェン130の対向する端部の間の電源電圧(Vsource)が示されている。また、他の測定対象電圧も示されている。例えば、センサ100が流体中に配置されたとき、流れの方向のグラフェン130の測定電圧がVdetectで示されている。また、ビアの第一セット140にまたがるAC電圧、およびビアの第二セット145にまたがるDC電圧が、それぞれ、VACおよびVDCとして示されている。
【0037】
図16に示されるように、センサ100を用いて磁性ナノ粒子を検出するための1つの例示的な動作原理が図示されている。センサ100を用いる磁性ナノ粒子250の検出度を向上するために、数百ヘルツ(Hz)の周波数で作動している数ミリテスラ(mT)の小さなAC磁場を使って、ナノ粒子中に同位相のAC磁化が誘導される。ナノ粒子250の誘導された磁化によって、外部AC場がセンサ100のグラフェン130に生成される。この外部AC場に外部DC磁場を重畳することによって、グラフェン130をまたいで測定されるACホール電圧は、センサ100に近在する磁性ナノ粒子250のない同等のシステムに比べて、このナノ粒子250の存在によって大きく増大されることになる。ACホール電圧は、この外部場の周波数で動作するロックインアンプを使って測定することが可能である。この測定されたACホール電圧に基づいて、磁場へのAC寄与分を推測することができる。
【0038】
図示の例示の実施形態において、直径約20nmのγ−Feのナノ粒子250は、幅(L)約1μmおよび長さ(L)約100nmのグラフェン130のシートを使い、これにまたがって100mVのバイアス電圧を印加して、検出することが可能である。ナノ粒子250は、立方メートルあたり12.5キロジュール(kJ/m)のエネルギ密度(K)、およびメートルあたり380キロアンペア(kA/m)の磁場強度(M)を有する。グラフェン130は、ボルト秒あたり1.5平方メートル(m/(Vs))の電子移動度(μ)、および1016個/mのシミュレーションに使われたグラフェン130において想定された電荷キャリア密度(n)を有する。印加されたAC磁場は、250Hzで約5mTである。印加されたAC(TAC)およびDC磁場(T)に対する緩和時間は、それぞれ、0.6msおよび1msである。ナノ粒子250は、グラフェン130から約100nmの距離で検出可能である。図面には具体的な物理的値が付されているが、本明細書で説明する動作原理は、これらの特定の値に限定はされない。
【0039】
図17A〜17Cに図示のように、図16に例示されているが、但し様々な幾何形状のグラフェン層を用いたセンサ100の動作のシミュレーションが、全般的に、300、310、および320に示されている。図17Bおよび17C中の310および320に示されるように、複数十字体の幾何形状体を有するセンサ100は、それぞれ、流体チャネルを横切る相異なるX位置でのホール電圧の別々の測定を可能にする。また、これら十字体は、電圧測定のための電気接触を容易にする。これらのシミュレーションにおいて、磁性ナノ粒子250は、グラフェン130の中央に位置付けられた。中央の十字体以外の他のいずれの場所においても(もとより、例えば、図17A中に示されるように、センサ100を横切るどの場所においても)ホール電圧の測定はゼロ信号をもたらすことになる。この特徴は、ナノ粒子250の検出に関し、X沿いの空間的分解能を可能にする。複数十字の幾何形状は、描かれたような3個だけでなく、任意の数(N)の十字体を有することが可能である。チャネルを横切る検出分解能は、より多数の十字体に対し、それに応じて向上することになる。この検出スキームは、磁性ナノ粒子250の存在の検出を可能にし、これにより、生体イムノアッセイのためにセンサ100を使用できるようにし、抗原の存在を判断するため、磁性ナノ粒子250によって検出抗体を標識することが可能になる。
【0040】
図18Aおよび18Bに示されるように、二次元流速場の算定が一般的に図では400に示されている。各々がグラフェン・シート130を含む複数のセンサ100を、チャネル(410に示されている)沿いに複数の位置に配置することによって、磁性ナノ粒子250がチャネル410沿いに流れる際に、時間シフトされた一連のホール電圧信号を測定することができる。下記式1:
【0041】
【数1】
【0042】
を用い、これら複数のホール電圧信号を相互相関させることによって、電圧信号の間の時間シフトを算定することが可能であり、これは、グラフェン・シートの間の空間距離を併せ用いて、
U=ΔY/Δt (式2)
で表される当該領域における周囲流体の平均流速が得られる。ここで式1のVcorrは相関された電圧であり、Vは第一ホール電圧信号であり、Vは第二ホール電圧信号であり、tは時間である。式2の、Uは速度であり、Yはチャネル沿いの距離であり、tは時間である。図18B中の450にグラフで示されるように、時間シフト(Δt)に亘って引き続くホール電圧信号(V、V)が計測される。しかして、流体の平均流速を、(ナノチャネルまたはマイクロチャネルであり得る)チャネル410沿いに所定の距離(ΔY)で変位された2つのセンサ100を用いていかに算定できるかが例示されている。この流速測定技法では、図示のような2つだけでなく、任意の数(M)のセンサ100を使用してよい。かかる等しく間隔取られたM個のセンサ100の配列によって、時間シフト(Δt)の計測がかかわる相互相関計算の信号対ノイズ比を改善することが可能である。
【0043】
ナノ粒子250の磁場は極めて局所的なので、グラフェン130異なる場所でホール電圧を測定することによって、X(壁の法線)とY(流れ方向)との分解能によりナノ粒子250の位置を算定することができ、ナノ粒子250の存在の二次元情報が提供される。この二次元位置情報と、チャネル410沿いの相異なる位置から受信された時間シフトされた信号の相互相関とを結び付けることによって、トレーサの磁気特性だけを使って周囲流体の二次元の流速場を得ることができる。
【0044】
図19は、チャネル410のそれぞれ壁の法線と流れの方向とへの分解能であるΔXおよびΔYによるN個の十字体とM個のセンサとのマトリックスを使って、どのように流速場の算定を得ることが可能であるかを示す。参照信号Vrefを供給してこの検出スキームの信頼性をさらに向上するため、追加の十字体(500に示されており、チャネル410中の磁性粒子250のフローの外部に配置されている)を含めることができよう。
【0045】
さらに、三次元の流速場の算定を行うことも可能であろう。例えば、磁性ナノ粒子250の特性(サイズおよび材料)の知識を用いて、大きな距離で、交互の磁場の距離的立方体を調べることによって、ナノ粒子250の垂直位置を推定することが可能である。ホール電圧は、ナノ粒子250に関連付けられた磁場の強度に依存するので、ホール信号は、ナノ粒子250とグラフェン130との間の垂直距離によって変調されることになり、ナノ粒子250の三次元位置特定を潜在的に可能にし得る追加の情報源を提供する。このナノ粒子250に関する三次元位置情報と、チャネル410沿いの相異なる位置のセンサ100の配列から得られる時間シフトされた相互相関とを結び付けることによって、周囲流体の三次元の流速場を得ることが可能である。
【0046】
ここで図20を参照すると、本明細書で説明した例示的な諸実施形態を実行するための使用に適した様々な電子デバイスおよび装置の簡単なブロック図が示されている。例えば、コンピュータ2010を使って、前述のプロセスの1つ以上を制御することができる。コンピュータ2010は、コンピュータまたはデータ・プロセッサ(DP:data processor)2014などのコントローラと、コンピュータ命令のプログラム(PROG:program)2018を格納するメモリ(MEM:memory)2016として具現化されたコンピュータ可読メモリ媒体とを含む。
【0047】
PROG2018は、関連するDP2014に実行されると、様々な電子デバイスおよび装置が例示的な諸実施形態のとおりに動作することを可能にするプログラム命令を含む。すなわち、様々の例示的な実施形態は、コンピュータ2010のDP2014によって実行可能なコンピュータ・ソフトウェアによって、またはソフトウェアとハードウェアと(およびファームウェア)の組み合せによって、少なくとも部分的に実装することが可能である。
【0048】
また、コンピュータ2010は、専用のプロセッサ、例えば、ナノ粒子250中の同位相AC磁化の誘起を制御し、センサ100における磁場への生成されたAC寄与分を測定し、外部AC磁場に外部DC磁場を重畳し、および/またはセンサ100のグラフェン部にまたがるACホール電圧を測定する、プロセッサ2015を含むことができる。
【0049】
コンピュータ可読のMEM2016は、ローカルの技術環境に適した任意の種類でよく、例えば、半導体ベースのメモリ・デバイス、フラッシュ・メモリ、磁気メモリ・デバイスおよびシステム、光メモリ・デバイスおよびシステム、固定メモリ、およびリムーバブル・メモリなど、任意の適切なデータ・ストレージ技術を用いて実装すればよい。DP2014は、ローカルの技術環境に適した任意の種類でよく、非限定の例として、汎用コンピュータ、特定用途コンピュータ、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP:digital signal processor)、およびマルチコア・プロセッサ・アーキテクチャに基づいたプロセッサ、の1つ以上を含んでよい。
【0050】
本明細書で説明され、代表的な方法に関連して具体的に述べられた例示的な諸実施形態は、諸オペレーションを遂行するためのマシンによって実行可能な命令のプログラム(例えば、プログラムまたはコンピュータ・プログラム)を有形に具現化している、マシンが可読のプログラム・ストレージ・デバイス(少なくとも1つのメモリ)に一体的に実装することができる。これらのオペレーションは、本明細書で述べた方法の例示的な実施形態を活用することを含む。
【0051】
前述に基づいて、様々の例示的な実施形態が、チャネルを流通する搬送流体中に分散している磁性ナノ粒子の検出および特性識別の方法を提供することが明らかになるはずである。
【0052】
図21は、チャネルを流通する搬送流体中に分散している磁性ナノ粒子の検出および特性識別の方法2100の一例示的な実施形態のオペレーションを表す論理流れ図である。方法2100において、2110で、ナノ粒子中に同位相のAC磁化が誘導される。2120で、磁場に対するAC寄与分が、ホール効果センサで受信される。受信されたAC寄与分が2130で測定され、2140で、外部DC磁場が、磁場へのAC寄与分上に重畳される。2150で、ホール効果センサのグラフェン・シートのACホール電圧が測定される。2160で、測定されたACホール電圧を使って、流体中のナノ粒子の位置、およびナノ粒子の速度の1つ以上が算定される。
【0053】
一例示的な態様において、粒子を検出する方法は、AC磁場を使って粒子を磁化するステップと、導電性で実質的に二次元の格子構造体を有する感知デバイスにおいて、磁化された粒子からAC電圧を生成するステップと、感知デバイスにおいてDC磁場を生成されたAC電圧に重畳するステップと、感知デバイスでACホール電圧を測定するステップとを含む。
【0054】
本方法において、磁化された粒子から感知デバイス中にAC電圧を生成するステップは、感知デバイス上のACコイルの両端にAC電圧を印加するステップを含んでよい。DC磁場を、感知デバイス中の生成されたAC電圧に重畳するステップは、DC磁場が重畳されないで感知デバイス中の生成されたAC電圧に比べて、感知デバイスで測定するためのACホール電圧を増大することができる。DC磁場を、感知デバイス中の生成されたAC電圧に重畳するステップは、感知デバイス上のDCコイルの両端にDC電圧を印加するステップを含んでよい。本方法は、導電性で実質的に二次元の格子構造体の対向する端部の間に電源電圧を印加するステップをさらに含むことができる。磁化された粒子から、導電性で実質的に二次元の構造体を有する感知デバイス中にAC電圧を生成するステップは、電圧バイアスされたグラフェン素子中にAC電圧を生成するステップを含み得る。
【0055】
別の例示的な態様において、流速場を算定する方法は、粒子にAC磁場を印加することによってチャネル中を流れる流体中の粒子を磁化するステップと、チャネル中の第一感知デバイスで第一ACホール電圧を測定するステップであって、第一感知デバイスは電圧バイアスされた第一グラフェン素子を含む、該測定するステップと、チャネル中の第二感知デバイスで第二ACホール電圧を測定するステップであって、第二感知デバイスは電圧でバイアスされた第二グラフェン素子を含む、該測定するステップと、第一測定ACホール電圧と第二測定ACホール電圧との間の時間シフトを算定するステップと、算定された時間シフトおよび第一感知デバイスと第二感知デバイスとの間の空間距離に基づいてチャネル中の流体の流速を算定するステップと、を含む。
【0056】
チャネル中の第一感知デバイスで第一ACホール電圧を測定するステップは、第一感知デバイスの導電性で実質的に二次元の格子構造体中で、磁化された粒子からAC電圧を生成するステップと、第一感知デバイスの導電性で実質的に二次元の格子構造体中で、DC磁場を生成されたAC電圧に重畳するステップとを含んでよい。第一測定ACホール電圧と第二測定ホール電圧との間の時間シフトを算定するステップは、本明細書記載の式(1)を使って、第一測定ACホール電圧と第二測定ACホール電圧とを相互相関させるステップを含み得る。チャネル中を流れる流体の平均流速は、本明細書記載の式(2)によって表すことができる。本方法は、第一感知デバイスおよび第二感知デバイスにチャネルの外部の参照電圧を供給するステップをさらに含むことが可能である。
【0057】
別の例示的な態様において、装置は、DC磁場を供給する第一コイルと、AC磁場を供給する第二コイルと、第一コイルおよび第二コイルに近接し、電圧バイアスされた、導電性で実質的に二次元の格子構造体と、を含む。第一コイルと、第二コイルと、および導電性で実質的に二次元の格子構造体とは誘電体層で分離される。
【0058】
本装置は、導電性で実質的に二次元の格子構造体に接触して配置されたコンタクトの第一セットをさらに含むことができる。本装置は、第一コイルに接触しているビアの第一セット、および第二コイルに接触しているビアの第二セットをさらに含むことが可能である。導電性で実質的に二次元の格子構造体はグラフェンを含むことができる。この導電性で実質的に二次元の格子構造体は、MoS、WSe、黒リン、カーボン・ナノチューブ、Siナノワイヤ、または前述の材料の任意の組み合せを含んでよい。誘電体層の少なくとも1つを、ガラス、水晶、SiC、窒化珪素、プラスチック、または前述の材料の任意の組み合わせの基板の上に配置することができる。これら誘電体層の少なくとも1つは、SiO、Al、HfO、または前述の材料の任意の組み合わせを含んでよい。第二コイルは、細長のリニアな素子にすればよい。
【0059】
前述の説明では、例示のための非限定の例として、様々の例示的な実施形態を実行するため発明人らによって現在考えられた最良の方法および装置の、包括的で情報供与的説明を提供してきた。しかしながら、当業者には、付加の図面および添付の特許請求の範囲に関連させて前述の説明を読めば、様々な変更および適合が自明となろう。しかしながら、全てのかかる、または類似の変更は、これら例示的な実施形態の教示の範囲になお含まれることになる。
【0060】
さらに、好ましい実施形態の特徴の一部を、対応する他の特徴の使用なしに有利に用いることもできよう。しかして、前述の説明は、本原理の単なる例示であってこれを限定するものではないと見なすべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
【国際調査報告】