特表2018-537170(P2018-537170A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2018-537170VEGF阻害薬の液体製剤を含んだプレフィルド薬剤パッケージ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-537170(P2018-537170A)
(43)【公表日】2018年12月20日
(54)【発明の名称】VEGF阻害薬の液体製剤を含んだプレフィルド薬剤パッケージ
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/31 20060101AFI20181122BHJP
   A61F 9/007 20060101ALI20181122BHJP
   C01B 33/18 20060101ALI20181122BHJP
   C01B 33/113 20060101ALI20181122BHJP
   A61M 5/00 20060101ALI20181122BHJP
   A61M 5/28 20060101ALI20181122BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20181122BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20181122BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20181122BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20181122BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20181122BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20181122BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20181122BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20181122BHJP
【FI】
   A61M5/31 530
   A61F9/007 130D
   C01B33/18
   C01B33/113 A
   C01B33/113 Z
   A61M5/00 518
   A61M5/28
   A61K9/08
   A61K39/395 N
   A61K38/16
   A61K47/26
   A61K47/22
   A61K47/14
   A61K47/02
   A61P27/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】80
(21)【出願番号】特願2018-525414(P2018-525414)
(86)(22)【出願日】2016年11月18日
(85)【翻訳文提出日】2018年7月6日
(86)【国際出願番号】US2016062767
(87)【国際公開番号】WO2017087798
(87)【国際公開日】20170526
(31)【優先権主張番号】62/257,210
(32)【優先日】2015年11月18日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA
(71)【出願人】
【識別番号】516338305
【氏名又は名称】フォーマイコン アーゲー
【氏名又は名称原語表記】FORMYCON AG
(71)【出願人】
【識別番号】512082716
【氏名又は名称】エスアイオーツー・メディカル・プロダクツ・インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】518164777
【氏名又は名称】クリンケ・バイオファーマ・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】KLINGE BIOPHARMA GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】カールステン・ブロックメイヤー
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ヴァイカルト
(72)【発明者】
【氏名】マリー・スティーブン・ベネット
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−ピエール・ジロー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ストリュングマン
【テーマコード(参考)】
4C066
4C076
4C084
4C085
4G072
【Fターム(参考)】
4C066AA10
4C066BB01
4C066CC01
4C066EE06
4C066EE14
4C066FF05
4C066GG01
4C076AA12
4C076BB24
4C076CC10
4C076DD23
4C076DD26Z
4C076DD46
4C076DD51
4C076DD67
4C076EE23
4C076FF11
4C076FF36
4C076FF61
4C076FF67
4C076FF68
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA26
4C084MA17
4C084MA58
4C084NA03
4C084NA06
4C084NA10
4C084ZA33
4C085AA14
4C085EE01
4C085GG01
4G072AA25
4G072BB09
4G072FF07
4G072GG02
4G072QQ09
4G072UU30
(57)【要約】
一部又は全部が熱可塑性ポリマーで製造され、タイコート皮膜又は層、バリア皮膜又は層、pH保護皮膜又は層、及び任意選択的に滑性皮膜又は層で内部が被覆された、プレフィルド薬剤パッケージ、例えばシリンジ、カートリッジ、又はバイアル、に入ったVEGF阻害薬、例えば、ラニビズマブ、を含むプレフィルド薬剤パッケージ。ガラスと同等の又はガラスよりも良好な、被覆COP容器にパッケージされたVEGF阻害薬の安定性能が得られた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
VEGF阻害薬の液体製剤を含むプレフィルド薬剤パッケージであって、前記プレフィルド薬剤パッケージが、
●内腔の少なくとも一部を囲む内部表面を有する、熱可塑性材料を含む壁と;
●SiOxyz(式中、xは、X線光電子分光法(XPS)により測定した場合、約0.5〜約2.4であり、yは、XPSにより測定した場合、約0.6〜約3であり、zは、ラザフォード後方散乱分光法(RBS)又は水素前方散乱法(HFS)の少なくとも一方により測定した場合、約2〜約9である)を含む壁の内部表面上のタイコート皮膜又は層と;
●タイコート皮膜又は層と内腔との間に配置される、SiOx(式中、xは、XPSにより測定した場合、約1.5〜約2.9である)のバリア皮膜又は層と;
●前記バリア皮膜又は層と前記内腔との間に配置される、SiOxyz(式中、xは、XPSにより測定した場合、約0.5〜約2.4であり、yは、XPSにより測定した場合、約0.6〜約3であり、zは、RBS又はHFSの少なくとも一方により測定した場合、約2〜約9である)のpH保護皮膜又は層と;
●内腔に入ったVEGF阻害薬の液体製剤と;
●内腔を封止するクロージャと
を含む、プレフィルド薬剤パッケージ。
【請求項2】
前記VEGF阻害薬が、ラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブである、請求項1に記載のプレフィルド薬剤パッケージ。
【請求項3】
前記熱可塑性材料が、ポリオレフィン、ポリプロピレン若しくはポリエステル、又はそれらの任意の組合せ若しくはコポリマーである、請求項1又は2に記載のプレフィルド薬剤パッケージ。
【請求項4】
前記ポリオレフィンが、環状オレフィンポリマー又は環状オレフィンコポリマーである、請求項3に記載のプレフィルド薬剤パッケージ。
【請求項5】
前記pH保護皮膜又は層と前記内腔との間に配置された滑性皮膜又は層を更に含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ。
【請求項6】
前記滑性皮膜又は層がSiOxyzの原子割合を有し、xが、XPSにより測定した場合、約0.5〜約2.4であり、yが、XPSにより測定した場合、約0.6〜約3であり、zが、RBS又はHFSの少なくとも一方により測定した場合、約2〜約9である、請求項5に記載のプレフィルド薬剤パッケージ。
【請求項7】
前記滑性皮膜又は層が、前記有機ケイ素前駆体からプラズマ化学気相成長法(PECVD)によって調製される、請求項5又は6に記載のプレフィルド薬剤パッケージ。
【請求項8】
前記滑性皮膜又は層が、前記有機ケイ素前駆体としてオクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)から、PECVDによって調製される、請求項7に記載のプレフィルド薬剤パッケージ。
【請求項9】
前記クロージャがストッパであり、前記ストッパの前記前面が、フルオロポリマー皮膜又は層で被覆され、前記前面が前記液体製剤に面している、請求項1〜8のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ。
【請求項10】
前記内腔に入ったラニビズマブの液体製剤を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ。
【請求項11】
前記内腔に入ったラニビズマブの液体製剤が、6mg/ml又は10mg/mlの濃度でラニビズマブを含む、請求項10に記載のプレフィルド薬剤パッケージ。
【請求項12】
請求項10又は11に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったVEGF阻害薬の液体製剤であって、前記内腔に入ったラニビズマブの液体製剤が、
●約5〜約7の範囲の前記液体製剤のpHを提供するのに有効な量の緩衝液;
●0.005〜0.02mg/mLの範囲の完全製剤の非イオン性界面活性剤、及び
●注射用水
を更に含む、液体製剤。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったVEGF阻害薬の液体製剤であって、前記内腔に入ったラニビズマブの前記液体製剤が、製剤1mLあたり:
●6mg又は10mgのラニビズマブ;
●100mgのα,α−トレハロース二水和物;
●1.98mgのL−ヒスチジン;
●0.1mgのポリソルベート20;及び
●1mLまでメスアップした注射用水
を含む、液体製剤。
【請求項14】
ラニビズマブの前記液体製剤が、HClでpH5.5に調整された、請求項10に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったVEGF阻害薬の液体製剤。
【請求項15】
請求項10〜12のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったVEGF阻害薬の液体製剤であって、前記内腔に入ったラニビズマブの前記液体製剤が、製剤1mLあたり:
●6mg又は10mgのラニビズマブ;
●100mgのα,α−トレハロース二水和物;
●0.32mgのL−ヒスチジン;
●1.66mgのL−ヒスチジン塩酸塩一水和物;
●0.1mgのポリソルベート20;及び
●1mLまでメスアップした注射用水
を含む、液体製剤。
【請求項16】
前記内腔に入ったアフリベルセプトの液体製剤を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ。
【請求項17】
前記内腔に入ったアフリベルセプトの前記液体製剤が、40mg/mlの濃度でアフリベルセプトを含む、請求項16に記載のプレフィルド薬剤パッケージ。
【請求項18】
請求項16又は17に記載のプレフィルド薬剤パッケージであって、前記内腔に入ったアフリベルセプトの前記液体製剤が、
40mg/mlのアフリベルセプト;
10mMのリン酸ナトリウム緩衝液;
40mMのNaCl;
0.03%のポリソルベート20;
5%のスクロース;及び
注射用水
を含む、プレフィルド薬剤パッケージ。
【請求項19】
アフリベルセプトの前記液体製剤のpHが6.2に調整された、請求項18に記載のプレフィルド薬剤パッケージ。
【請求項20】
請求項16又は17に記載のプレフィルド薬剤パッケージであって、前記内腔に入ったアフリベルセプトの前記液体製剤が、
40mg/mlのアフリベルセプト;
10mMのヒスチジン緩衝液、
40mMのNaCl;
0.03%のポリソルベート20;
5%のスクロース;及び
注射用水
を含む、プレフィルド薬剤パッケージ。
【請求項21】
アフリベルセプトの前記液体製剤のpHが6.2に調整された、請求項20に記載のプレフィルド薬剤パッケージ。
【請求項22】
前記内腔に入ったベバシズマブの液体製剤を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ。
【請求項23】
前記内腔に入ったベバシズマブの前記液体製剤が、25mg/mlの濃度でベバシズマブを含む、請求項22に記載のプレフィルド薬剤パッケージ。
【請求項24】
請求項22又は23に記載のプレフィルド薬剤パッケージであって、前記内腔に入ったベバシズマブの前記液体製剤が、
25mg/mlのベバシズマブ;
240mgのα,α−トレハロース二水和物、
23.2mgのリン酸ナトリウム(一塩基性、一水和物)、
4.8mgのリン酸ナトリウム(二塩基性、無水物)、
1.6mgのポリソルベート20、及び
注射用水(USP)
を含む、プレフィルド薬剤パッケージ。
【請求項25】
追加の薬理学的に活性な薬剤を更に含む、請求項1〜24のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ。
【請求項26】
前記追加の薬理学的に活性な薬剤が、PDGF阻害薬である、請求項25に記載のプレフィルド薬剤パッケージ。
【請求項27】
0.5mL又は1mLの公称最大充填容量を有する、請求項1〜26のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ。
【請求項28】
バイアル又はカートリッジである、請求項1〜27のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ。
【請求項29】
シリンジである、請求項1〜28のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ。
【請求項30】
プランジャを含む、請求項29に記載のプレフィルド薬剤パッケージ。
【請求項31】
前記プランジャが前記壁に沿って摺動可能な側面を含む、請求項30に記載のプレフィルド薬剤パッケージ。
【請求項32】
前記側面の少なくとも一部が、前記壁に接したフルオロポリマー滑性皮膜又は層を含む、請求項31に記載のプレフィルド薬剤パッケージ。
【請求項33】
前記内腔で前記ストッパの移動を開始するために15N以下のブレークアウト力を有する、請求項29〜32のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ。
【請求項34】
前記内腔で前記ストッパを前進させるために15N以下のプランジャ摺動力を有する、請求項29〜32のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ。
【請求項35】
固定針又はルアーコネクタを更に含む、請求項29〜34のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ。
【請求項36】
前記VEGF阻害薬がラニビズマブであって、ラニビズマブの前記液体製剤が、保管寿命の間、顕微鏡検査で測定して、1mLあたり50個以下の直径10μm以上の粒子、1mLあたり5個以下の直径25μm以上の粒子、及び/又は1mLあたり2個以下の直径50μm以上の粒子を含む、請求項1〜15又は25〜35のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ。
【請求項37】
前記プレフィルド薬剤パッケージの製品接触面全ての上にシリコーンオイルを有しない、請求項1〜36のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ。
【請求項38】
焼付シリコーンを有しない、請求項1〜37のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ。
【請求項39】
眼疾患を有する患者へのVEGF阻害薬の液体製剤の投与における使用のための請求項1〜38のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ。
【請求項40】
前記眼疾患が、加齢性黄斑変性症(AMD)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)による視覚障害、網膜静脈閉塞(分岐RVO又は中枢RVO)に続く黄斑浮腫による視覚障害、又は病的近視に続く脈絡膜血管新生(CNV)による視覚障害からなる群から選択される、請求項39に記載の使用のためのプレフィルド薬剤パッケージ。
【請求項41】
前記VEGF阻害薬が、0.05mLの容量で投与されるラニビズマブである、請求項39又は40に記載の使用のためのプレフィルド薬剤パッケージ。
【請求項42】
前記VEGF阻害薬が、0.05mLの容量で投与されるアフリベルセプトである、請求項39又は40に記載の使用のためのプレフィルド薬剤パッケージ。
【請求項43】
前記VEGF阻害薬が、0.05mLの容量で投与されるベバシズマブである、請求項39又は40に記載の使用のためのプレフィルド薬剤パッケージ。
【請求項44】
最終的に滅菌された、請求項1〜38のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ。
【請求項45】
1つ以上の請求項1〜44のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージを含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2015年11月18日出願の米国仮特許出願第62/257,210号明細書の優先権を主張する。
【0002】
開示の連続性を提供するために、以下の特許出願それぞれの明細書全体及び全図面が参照により本明細書に援用される:2013年3月11日出願の米国仮特許出願第61/776,733号明細書;2013年3月15日出願の米国仮特許出願第61/800,746号明細書;米国特許第7,985,188号明細書;2014年3月11日出願のPCT国際出願第PCT/US14/23813号パンフレット;及びPCT国際公開第2014085348(A2)号パンフレット、第2014164928(A1)号パンフレット、第2014/005728A1号パンフレット、及び第2015/071,348号パンフレット。開示の連続性を提供するために、これらの特許出願のそれぞれの明細書全体及び全図面が参照により本明細書に援用される。
【0003】
本発明は、一般に、硝子体内注射(眼の硝子体への薬剤の注射)のための、プレフィルド薬剤パッケージ、例えばプレフィルドシリンジにおけるVEGF阻害薬の液体製剤に関する。そのような薬剤パッケージは、薬物の液体製剤、例えば、VEGF阻害薬、例えばラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブの保管及び硝子体内投与に適している。
【背景技術】
【0004】
加齢性黄斑変性症及び糖尿病性黄斑浮腫などの眼疾患は、眼の血管の成長が制御されないことによって引き起こされる。したがって、これら及び類似の疾患を処置するための1つの選択肢は、眼の血管新生を阻害することである。VEGFは、血管新生の刺激における重要な因子であるため、血管新生を減少させるための魅力的な標的である。これら及び他の眼疾患の多くの処置は、液体医薬製剤の硝子体内注射を必要とする。
【0005】
「硝子体内注射」という用語は、物質が眼に直接注射される医薬組成物の投与を指す。より具体的には、物質は、ヒト及び他の脊椎動物の眼球のレンズと網膜との間の空間を満たす透明なゲルである硝子体液(硝子体(vitreous body)又は単に硝子体(vitreous)とも呼ばれる)に注入される。
【0006】
国際公開第2014/005728A1号パンフレットは、VEGF阻害薬を含有するプレフィルドシリンジを開示する。シリンジは低いシリコーンオイル含量を有する。本文書の開示全体は、ガラスシリンジの使用に焦点を当てており、したがって、少量のシリコーンオイルがシリンジ内に存在しなければならないことを教示する。
【0007】
現在、LUCENTIS(登録商標)(ラニビズマブ注射)は、米国及び欧州で承認された、例えば、糖尿病性黄斑浮腫の処置のための、硝子体内注射のための薬剤である。これは、ガラス製のバイアルにパッケージされた状態で入手可能である。最近では、プレフィルドラニビズマブシリンジが欧州医薬品庁(EMA)によって承認された。シリンジバレルは、シリコン水中油エマルジョンでスプレーコートされ、続いて熱固定された(いわゆる「焼付シリコーン」)ホウケイ酸ガラスからなる(Clunasらによる第5回World Congress on Controversies in Ophthalmologyでのポスター発表、2014年3月20〜23日;ARVO年次総会2014でのMichaudらのポスター発表)。
【0008】
プレフィルドシリンジは、利便性、手頃な価格、精度、無菌性、及び安全性の向上など、バイアル及び別個に提供されるシリンジと比較して多くの利点を有する。プレフィルドシリンジの使用は、より高い用量精度、バイアルから薬剤を引き出す間に起こりうる針刺し事故の可能性の低減、薬剤をシリンジ内へ再構成及び/又は引き出す必要があることで生じる投与エラーを減少させる予め測定された用量、及び薬剤の浪費を最小限に抑えることでコスト削減に役立つ、より少ないシリンジの過充填をもたらす。
【0009】
従来のガラス薬剤パッケージ(プレフィルドシリンジを含む)は、製造、充填作業、発送及び使用中に破損又は劣化しやすく、これはガラス微粒子が薬物に入る可能性があることを意味する。
【0010】
更に、ガラスプレフィルドシリンジは、シリコーン化として一般に知られるプロセスによりシリコーンで処理されて、ガラスバレル内のストッパの正確な移動を可能にし、それによって効果的かつ正確な薬物送達を可能にする。従来のガラス薬剤パッケージのシリコーン化は、ストッパをパッケージ内に挿入すること、又は薬物を分注するためにシリンジを通してプランジャを前進させることを容易にするために使用されてきた。しかしながら、シリコーン化は、シリコーン粒子の薬物への導入をもたらし得る。この問題は、従来のシリコーンオイルの皮膜を用いるか焼付シリコーン皮膜を用いるかにかかわらず観察されてきた。また、認可されたラニビズマブ・プレフィルド・シリンジのようなガラスシリンジは、プラスチックシリンジに比べて比較的大きな重量を有する。
【0011】
硝子体内に薬物を投与する場合、飛蚊症として見えるか、そうでなければ患者の視力を妨げる、眼の硝子体内への粒子の導入を最小限に抑えることが非常に重要である。硝子体内注射のための製剤中の粒子の量及びサイズを制限する基準(例えば、USP789又はPh.Eur 5.7.1)は、厳格である。それにもかかわらず、VEGF阻害薬の硝子体内投与後に硝子体腔にシリコーン液滴が生じることが示され、シリコーンは注射に使用される針及びシリンジに由来すると仮定された(Bakri and Ekdawi(2008)Retina 28:996−1001)。
【0012】
更に、ガラスシリンジにステッチイン針を取り付けるために必要な接着剤は、不純物やタンパク質酸化の増加につながり得る(2011 PDA Europe The Universe of Pre−Filled Syringes and Injection DevicesでのAdlerの発表、バーゼル、2011年11月7日〜11日;PDA Single Use Systems WorkshopでのMarkovicの発表、ベセスダ、2011年6月22日〜23日)。
【0013】
更に、ガラスプレフィラブルシリンジの製造中、通常はタングステンピンが使用される。プレフィルドガラスシリンジ中に見られる可溶性タングステンは、タンパク質凝集及びタンパク質酸化につながることが示されてきた(Liuら(2010)PDA J.Pharm.Sci.Technol.64(1):11−19;Seidlら(2012)Pharm.Res.29:1454−1467)。
【0014】
幾つかの非ガラスプレフィルドシリンジが記載されてきた。国際公開第2011/117878A1号パンフレットは、ポリカーボネートシリンジを開示している。国際公開第2009/099641A2号パンフレットは、環状オレフィンポリマーシリンジを開示している。
【0015】
硝子体内注射のためのプレフィルドシリンジは、通常、目の微生物感染の危険性を低減するために、エチレンオキシドなどの酸化性ガスを使用して最終的に滅菌される。プラスチックは滅菌のために使用されるガスの透過性があるため、プラスチック製のシリンジバレルは、典型的には最終滅菌に適さない。プレフィルドシリンジに入るガスは、シリンジに収容される薬物と化学的に反応して、薬物の安定性を著しく低下させる可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の態様は、プレフィルド薬剤パッケージに入ったVEGFアンタゴニストの液体製剤、例えば、ラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブである。プレフィルド薬剤パッケージは、壁、内腔を画定する内部表面上の皮膜セット、内腔に入ったVEGF阻害薬の液体製剤、及び液体製剤に面するフルオロポリマー滑性皮膜又は層を有する前面を有する内腔を封止するクロージャを含む。
【0017】
本発明の別の態様は、VEGFアンタゴニストの液体製剤、例えば、ラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブを含有するプレフィルド薬剤パッケージである。プレフィルド薬剤パッケージは、壁、内腔を画定する内部表面上の皮膜セット、及び内腔に入ったVEGF阻害薬の液体製剤を含む。
【0018】
壁は、その一部又は全体が、内腔の少なくとも一部を囲む内部表面を有する環状オレフィンポリマー(COP)で作られていてもよい。
【0019】
皮膜セットは、タイコート皮膜又は層、バリア皮膜又は層、pH保護皮膜又は層、及び任意選択的に滑性皮膜又は層を含む。
【0020】
タイコート皮膜又は層は、壁内部表面上に堆積される。タイコート皮膜又は層は、実験式SiOxyz(式中、xは、X線光電子分光法(XPS)により測定した場合、約0.5〜約2.4であり、yは、XPSにより測定した場合、約0.6〜約3であり、zは、ラザフォード後方散乱分光法(RBS)又は水素前方散乱法(HFS)の少なくとも一方により測定した場合、約2〜約9である)を有し得る。
【0021】
バリア皮膜又は層は、実験式SiOx(式中、xは、XPSにより測定した場合、約1.5〜約2.9である)を有し得る。バリア保護皮膜又は層は、タイコート皮膜又は層と内腔との間に配置され得る。
【0022】
pH保護皮膜又は層は、実験式SiOxyz(式中、xは、XPSにより測定した場合、約0.5〜約2.4であり、yは、XPSにより測定した場合、約0.6〜約3であり、zは、RBS又はHFSの少なくとも一方により測定した場合、約2〜約9である)を有し得る。pH保護皮膜又は層は、バリア皮膜又は層と内腔との間に配置され得る。
【0023】
本発明の幾つかの実施形態は、以下の項目のいずれか一項に関し、アラビア数字を用いて表される数は、ここにローマ数字で表される対応する数と任意選択的に置換することができ、同じ意味を有する。
【0024】
項目Iは、プレフィルド薬剤パッケージに入ったラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブの液体製剤であって:内腔の少なくとも一部を囲む内部表面を有する環状オレフィンポリマー(COP)を含む壁と;SiOxyz(式中、xは、X線光電子分光法(XPS)により測定した場合、約0.5〜約2.4であり、yは、XPSにより測定した場合、約0.6〜約3であり、zは、ラザフォード後方散乱分光法(RBS)又は水素前方散乱法(HFS)の少なくとも一方により測定した場合、約2〜約9である)を含む壁の内部表面上のタイコート皮膜又は層と;タイコート皮膜又は層と内腔との間に配置される、SiOx(式中、xは、XPSにより測定した場合、約1.5〜約2.9である)のバリア皮膜又は層と;前記バリア皮膜又は層と前記内腔との間に配置される、SiOxyz(式中、xは、XPSにより測定した場合、約0.5〜約2.4であり、yは、XPSにより測定した場合、約0.6〜約3であり、zは、RBS又はHFSの少なくとも一方により測定した場合、約2〜約9である)のpH保護皮膜又は層と;内腔に入ったラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブの液体製剤と;液体製剤に面したフルオロポリマー滑性皮膜又は層を有する前面を有する、内腔を封止するクロージャとを含む。
【0025】
項目IIは、内腔にラニビズマブの液体製剤を含む、項目Iに記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブの液体製剤である。
【0026】
項目IIIは、項目IIに記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブの液体製剤であって、内腔のラニビズマブの液体製剤は、6mg/ml又は10mg/mlの濃度でラニビズマブを含み、任意選択的に0.05mLの容量で投与される。
【0027】
項目IVは、項目IIIに記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブの液体製剤であって、内腔に入ったラニビズマブの液体製剤が、以下を更に含む:約5〜約7の範囲の液体製剤のpHを提供するのに有効な量の緩衝液;0.005〜0.02mg/mlの範囲の完全製剤の非イオン性界面活性剤、及び注射用水。
【0028】
項目Vは、項目IIIに記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブの液体製剤であって、内腔に入ったラニビズマブの液体製剤が、製剤1mLあたり、以下を含む:
●6mg又は10mgのラニビズマブ;
●100mgのα,α−トレハロース二水和物;
●1.98mgのL−ヒスチジン;
●0.1mgのポリソルベート20;及び
●1mLまでメスアップした注射用水。
【0029】
項目VIは、項目IIIに記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブの液体製剤であって、内腔に入ったラニビズマブの液体製剤が、製剤1mLあたり、以下を含む:
●6mg又は10mgのラニビズマブ;
●100mgのα,α−トレハロース二水和物;
●1.98mgのL−ヒスチジン;
●0.1mgのポリソルベート20;及び
●1mLまでメスアップした注射用水;
●HClでpH5.5に調整。
【0030】
項目VIIは、項目IIIに記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブの液体製剤であって、内腔に入ったラニビズマブの液体製剤が、製剤1mLあたり、以下を含む:
●6mg又は10mgのラニビズマブ;
●100mgのα,α−トレハロース二水和物;
●0.32mgのL−ヒスチジン;
●1.66mgのL−ヒスチジン塩酸塩一水和物;
●mgのポリソルベート20;及び
●1mLまでメスアップした注射用水
【0031】
項目VIIIは、内腔にアフリベルセプトの液体製剤を含む、項目Iに記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブの液体製剤である。
【0032】
項目IXは、項目VIIIに記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブの液体製剤であって、内腔のアフリベルセプトの液体製剤は、40mg/mlの濃度でアフリベルセプトを含み、任意選択的に0.05mLの容量で投与される。
【0033】
項目Xは、内腔にベバシズマブの液体製剤を含む、項目1に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブの液体製剤である。
【0034】
項目XIは、項目Xに記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブの液体製剤であって、内腔のベバシズマブの液体製剤は、25mg/mlの濃度でベバシズマブを含み、任意選択的に0.05mLの容量で投与される。
【0035】
項目XIIは、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブの液体製剤であって、液体製剤は、0.5mL又は1mLの公称最大充填容量を有するプレフィルド薬剤パッケージに含有される。
【0036】
項目XIIIは、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブの液体製剤であって、パッケージは、バイアル又はカートリッジである。
【0037】
項目XIVは、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブの液体製剤であって、パッケージはシリンジであり、ストッパは内容物を送達するため壁に沿って摺動可能なプランジャである。
【0038】
項目XVは、項目XIVに記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブの液体製剤であって、プランジャは、壁に沿って摺動可能な側面を含む。
【0039】
項目XVIは、項目XVに記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブの液体製剤であって、側面の少なくとも一部は、壁に接したフルオロポリマー滑性皮膜又は層を含む。
【0040】
項目XVIIは、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブの液体製剤であって、内腔でストッパの移動を開始するために10N以下のブレークアウト力を有する。
【0041】
項目XVIIIは、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブの液体製剤であって、内腔でストッパを前進させるために10N以下のプランジャ摺動力を有する。
【0042】
項目XIXは、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブの液体製剤であって、内腔に入ったラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブの液体製剤は、5℃で3ヶ月間の薬剤パッケージの保存後、焼付シリコーンで内部被覆された同じ容積のガラス製の薬剤パッケージ以下の、塩基性分解種の面積%を形成する。
【0043】
項目XXは、先の項目I〜VII又はXII〜XIXのいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブの液体製剤であって、VEGF阻害薬はラニビズマブであり、内腔に入ったラニビズマブの液体製剤は、5℃で3ヶ月間の薬剤パッケージの保存後、焼付シリコーンで内部被覆された同じ容積のガラス製の薬剤パッケージ以下の、酸性分解種の面積%を形成する。
【0044】
項目XXIは、先の項目I〜VII又はXII〜XXのいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブの液体製剤であって、VEGF阻害薬はラニビズマブであり、内腔に入ったラニビズマブの液体製剤は、25℃かつ相対湿度60%で3ヶ月間の薬剤パッケージの保存後、焼付シリコーンで内部被覆された同じ容積のガラス製の薬剤パッケージ以下の、塩基性分解種の面積%を形成する。
【0045】
項目XXIIは、先の項目I〜VII又はXII〜XXIのいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブの液体製剤であって、VEGF阻害薬はラニビズマブであり、内腔に入ったラニビズマブの液体製剤は、25℃かつ相対湿度60%で3ヶ月間の薬剤パッケージの保存後、焼付シリコーンで内部被覆された同じ容積のガラス製の薬剤パッケージ以下の、酸性分解種の面積%を形成する。
【0046】
項目XXIIIは、先の項目I〜VII又はXII〜XXIIのいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブの液体製剤であって、VEGF阻害薬はラニビズマブであり、内腔に入ったラニビズマブの液体製剤は、40℃かつ相対湿度75%で3ヶ月間の薬剤パッケージの保存後、焼付シリコーンで内部被覆された同じ容積のガラス製の薬剤パッケージ以下の、塩基性分解種の面積%を形成する。
【0047】
項目XXIVは、先の項目I〜VII又はXII〜XXIのいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブの液体製剤であって、VEGF阻害薬はラニビズマブであり、内腔に入ったラニビズマブの液体製剤は、40℃かつ相対湿度75%で3ヶ月間の薬剤パッケージの保存後、焼付シリコーンで内部被覆された同じ容積のガラス製の薬剤パッケージ以下の、酸性分解種の面積%を形成する。
【0048】
項目XXVは、先の項目I〜VII又はXII〜XXIVのいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブの液体製剤であって、VEGF阻害薬はラニビズマブであり、内腔に入ったラニビズマブの液体製剤は、25℃かつ相対湿度60%で3ヶ月間の薬剤パッケージの保存後、焼付シリコーンで内部被覆された同じ容積のガラス製の薬剤パッケージ以下の、凝集物の面積%を形成する。
【0049】
項目XXVIは、先の項目I〜VII又はXII〜XXVのプレフィルド薬剤パッケージに入ったラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブの液体製剤であって、VEGF阻害薬はラニビズマブであり、内腔に入ったラニビズマブの液体製剤は、40℃かつ相対湿度75%で3ヶ月間の薬剤パッケージの保存後、焼付シリコーンで内部被覆された同じ容積のガラス製の薬剤パッケージ以下の、凝集物の面積%を形成する。
【0050】
項目XXVIIは、先の項目I〜VII又はXII〜XXVIのいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブの液体製剤であって、VEGF阻害薬はラニビズマブであって、ラニビズマブの液体製剤は、保管寿命の間、顕微鏡検査で測定して、1mLあたり50個以下の直径10μm以上の粒子、1mLあたり5個以下の直径25μm以上の粒子、及び1mLあたり2個以下の直径50μm以上の粒子を含む。
【0051】
項目XXVIIIは、先の項目I〜VII又はXII〜XXVIIのいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブの液体製剤であって、VEGF阻害薬はラニビズマブであり、ラニビズマブの液体製剤は、プレフィルド薬剤パッケージを充填する時点で、任意選択的にプレフィルド薬剤パッケージを5℃で3ヶ月間保管後、任意選択的にプレフィルド薬剤パッケージを25℃かつ相対湿度60%で3ヶ月間保管後、任意選択的にプレフィルド薬剤パッケージを40℃かつ相対湿度75%で3ヶ月間保管後、USP789又はPh.Eur.5.7.1又は両方の粒子数の要件を満たす。
【0052】
項目XXIXは、プレフィルド薬剤パッケージの製品接触面全ての上にシリコーンオイルを有しない、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブの液体製剤である。
【0053】
項目XXXは、焼付シリコーンを有しない、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブの液体製剤である。
【0054】
項目XXXIは、壁が固定針又はルアーコネクタを含む、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブの液体製剤である。
【0055】
項目XXXIIは、眼疾患を有する患者にラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブの液体製剤を投与する際に使用するための、先の項目のいずれかに記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブの液体製剤であって、眼疾患は、任意選択的に、加齢性黄斑変性症(AMD)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)による視覚障害、網膜静脈閉塞(分岐RVO又は中枢RVO)に続く黄斑浮腫による視覚障害、又は病的近視に続く脈絡膜血管新生(CNV)による視覚障害からなる群から選択される。
【0056】
項目XXXIIIは、液体製剤の容量30〜100μlが患者に投与される、項目XXXに記載の使用のためのプレフィルド薬剤パッケージに入ったラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブの液体製剤である。
【0057】
項目XXXIVは、滅菌ガス、任意選択的にエチレンオキシドEOガスによる、任意選択的に、16.6インチ(42.2cm)Hgの圧力、120°F(49℃)で10時間での最終滅菌に適した、又は気化過酸化水素(VHP)による最終滅菌に適した、内腔は最終滅菌後に滅菌ガスを含まない、又は実質的に含まない、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブの液体製剤である。
【0058】
項目XXXVは、最終的に滅菌された、先の項目のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブの液体製剤である。
【0059】
項目XXXVIは、以下を含むプレフィルド薬剤パッケージに入ったVEGF阻害薬の液体製剤である:
●熱可塑性材料;任意選択的にポリオレフィン、例えば、環状オレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマー、若しくはポリプロピレン;ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート;ポリカーボネート;又はこれらのうちいずれか2つ以上の任意の組合せ若しくはコポリマー、好ましくは、環状オレフィンポリマー(COP)を含み、内腔の少なくとも一部を囲む内部表面を有する壁と;
●SiOxyz(式中、xは、X線光電子分光法(XPS)により測定した場合、約0.5〜約2.4であり、yは、XPSにより測定した場合、約0.6〜約3であり、zは、ラザフォード後方散乱分光法(RBS)又は水素前方散乱法(HFS)の少なくとも一方により測定した場合、約2〜約9である)を含む壁の内部表面上のタイコート皮膜又は層と;
●タイコート皮膜又は層と内腔との間に配置される、SiOx(式中、xは、XPSにより測定した場合、約1.5〜約2.9である)のバリア皮膜又は層と;
●前記バリア皮膜又は層と前記内腔との間に配置される、SiOxyz(式中、xは、XPSにより測定した場合、約0.5〜約2.4であり、yは、XPSにより測定した場合、約0.6〜約3であり、zは、RBS又はHFSの少なくとも一方により測定した場合、約2〜約9である)のpH保護皮膜又は層と;
●内腔に入ったVEGF阻害薬、任意選択的にラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブの液体製剤と;
●内腔を封止するクロージャ。
【0060】
項目XXXVIIは、pH保護皮膜又は層と内腔との間に配置された滑性皮膜又は層を更に含む、項目XXXVIに記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったVEGF阻害薬の液体製剤である。
【0061】
項目XXXVIIIは、液体製剤前記滑性皮膜又は層がSiOxyzの原子割合を有し、xが、XPSにより測定した場合、約0.5〜約2.4であり、yが、XPSにより測定した場合、約0.6〜約3であり、zが、RBS又はHFSの少なくとも一方により測定した場合、約2〜約9である、先の項目XXXVI〜XXXVIIのいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったVEGF阻害薬の液体製剤である。
【0062】
項目XXXIXは、滑性皮膜又は層が、有機ケイ素前駆体から、PECVDによって調製される、先の項目XXXVI〜XXXVIIIのいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったVEGF阻害薬の液体製剤である。
【0063】
項目XLは、滑性皮膜又は層が、有機ケイ素前駆体としてオクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)から、PECVDによって調製される、項目XXXIXに記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったVEGF阻害薬の液体製剤である。
【0064】
項目XLIは、内腔を封止する前記クロージャの前面が、フルオロポリマー皮膜又は層で被覆され、前面が液体製剤に面している、先の項目XXXVI〜XLのいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入り眼科用薬剤である。
【0065】
項目XLIIは、内腔に入ったラニビズマブの液体製剤を含む、先の項目XXXVI〜XLIのいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったVEGF阻害薬の液体製剤である。
【0066】
項目XLIIIは、項目XLIIに記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったVEGF阻害薬の液体製剤であって、内腔のラニビズマブの液体製剤は、6mg/ml又は10mg/mlの濃度でラニビズマブを含み、任意選択的に0.05mLの容量で投与される。
【0067】
項目XLIVは、項目XLII又はXLIIIに記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったVEGF阻害薬の液体製剤であって、内腔に入ったラニビズマブの液体製剤が、以下を更に含む:
●約5〜約7の範囲の液体製剤のpHを提供するのに有効な量の緩衝液;
●0.005〜0.02mg/mlの範囲の完全製剤の非イオン性界面活性剤、及び
●注射用水。
【0068】
項目XLVは、項目XLII、XLIII、又はXLIVに記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったVEGF阻害薬の液体製剤であって、内腔に入ったラニビズマブの液体製剤が、製剤1mLあたり、以下を含む:
●6mg又は10mgのラニビズマブ;
●100mgのα,α−トレハロース二水和物;
●1.98mgのL−ヒスチジン;
●0.1mgのポリソルベート20;及び
●1mLまでメスアップした注射用水。
【0069】
項目XLVIは、ラニビズマブの液体製剤がHClでpH5.5に調整された、項目XLVに記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったVEGF阻害薬の液体製剤である。
【0070】
項目XLVIIは、先の項目XLII、XLIII、又はXLIVのいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったVEGF阻害薬の液体製剤であって、内腔に入ったラニビズマブの液体製剤が、製剤1mLあたり、以下を含む:
●6mg又は10mgのラニビズマブ;
●100mgのα,α−トレハロース二水和物;
●0.32mgのL−ヒスチジン;
●1.66mgのL−ヒスチジン塩酸塩一水和物;
●0.1mgのポリソルベート20;及び
●1mLまでメスアップした注射用水
【0071】
項目XLVIIIは、内腔に入ったアフリベルセプトの液体製剤を含む、先の項目XXXVI〜XLIのいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったVEGF阻害薬の液体製剤である。
【0072】
項目XLIXは、項目XLVIIIに記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったVEGF阻害薬の液体製剤であって、内腔のアフリベルセプトの液体製剤は、40mg/mlの濃度でアフリベルセプトを含み、任意選択的に0.05mLの容量で投与される。
【0073】
項目Lは、内腔に入ったベバシズマブの液体製剤を含む、先の項目XXXVI〜XLIのいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったVEGF阻害薬の液体製剤である。
【0074】
項目LIは、項目Lに記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったVEGF阻害薬の液体製剤であって、内腔のベバシズマブの液体製剤は、25mg/mlの濃度でベバシズマブを含み、任意選択的に0.05mLの容量で投与される。
【0075】
項目LIIは、先の項目XXXVI〜LIのいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったVEGF阻害薬の液体製剤であって、液体製剤は、0.5mL又は1mLの公称最大充填容量を有するプレフィルド薬剤パッケージに含有される。
【0076】
項目LIIIは、先の項目XXXVI〜LIIのいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったVEGF阻害薬の液体製剤であって、パッケージは、バイアル又はカートリッジである。
【0077】
項目LIVは、先の項目XXXVI〜LIIIのいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったVEGF阻害薬の液体製剤であって、パッケージはシリンジであり、ストッパは内容物を送達するため壁に沿って摺動可能なプランジャである。
【0078】
項目LVは、項目LIVに記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったVEGF阻害薬の液体製剤であって、プランジャは、壁に沿って摺動可能な側面を含む。
【0079】
項目LVIは、項目LVに記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったVEGF阻害薬の液体製剤であって、側面の少なくとも一部は、壁に接したフルオロポリマー滑性皮膜又は層を含む。
【0080】
項目LVIIは、先の項目LIV〜LVIのいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったVEGF阻害薬の液体製剤であって、内腔でストッパの移動を開始するために15N以下、任意選択的に10N以下のブレークアウト力を有する。
【0081】
項目LVIIIは、先の項目LIV〜LVIのいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったVEGF阻害薬の液体製剤であって、内腔でストッパを前進させるために15N以下、任意選択的に10N以下のプランジャ摺動力を有する。
【0082】
項目LIXは、先の項目XXXVI〜LVIIIのいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったVEGF阻害薬の液体製剤であって、内腔に入ったVEGF阻害薬、任意選択的にラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブ、の液体製剤は、5℃で3ヶ月間の薬剤パッケージの保存後、焼付シリコーンで内部被覆された同じ容積のガラス製の薬剤パッケージ以下の、塩基性分解種の面積%を形成する。
【0083】
項目LXは、先の項目XXXVI〜XLVII又はLII〜LVIIIのいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったVEGF阻害薬の液体製剤であって、VEGF阻害薬はラニビズマブであり、内腔に入ったラニビズマブの液体製剤は、5℃で3ヶ月間の薬剤パッケージの保存後、焼付シリコーンで内部被覆された同じ容積のガラス製の薬剤パッケージ以下の、酸性分解種の面積%を形成する。
【0084】
項目LXIは、先の項目XXXVI〜XLVII又はLII〜LVIIIのいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったVEGF阻害薬の液体製剤であって、VEGF阻害薬はラニビズマブであり、内腔に入ったラニビズマブの液体製剤は、25℃かつ相対湿度60%で3ヶ月間の薬剤パッケージの保存後、焼付シリコーンで内部被覆された同じ容積のガラス製の薬剤パッケージ以下の、塩基性分解種の面積%を形成する。
【0085】
項目LXIIは、先の項目XXXVI〜XLVII又はLII〜LVIIIのいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったVEGF阻害薬の液体製剤であって、VEGF阻害薬はラニビズマブであり、内腔に入ったラニビズマブの液体製剤は、25℃かつ相対湿度60%で3ヶ月間の薬剤パッケージの保存後、焼付シリコーンで内部被覆された同じ容積のガラス製の薬剤パッケージ以下の、酸性分解種の面積%を形成する。
【0086】
項目LXIIIは、先の項目XXXVI〜XLVII又はLII〜LVIIIのいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったVEGF阻害薬の液体製剤であって、VEGF阻害薬はラニビズマブであり、内腔に入ったラニビズマブの液体製剤は、40℃かつ相対湿度75%で3ヶ月間の薬剤パッケージの保存後、焼付シリコーンで内部被覆された同じ容積のガラス製の薬剤パッケージ以下の、塩基性分解種の面積%を形成する。
【0087】
項目LXIVは、先の項目XXXVI〜XLVII又はLII〜LVIIIのいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったVEGF阻害薬の液体製剤であって、VEGF阻害薬はラニビズマブであり、内腔に入ったラニビズマブの液体製剤は、40℃かつ相対湿度75%で3ヶ月間の薬剤パッケージの保存後、焼付シリコーンで内部被覆された同じ容積のガラス製の薬剤パッケージ以下の、酸性分解種の面積%を形成する。
【0088】
項目LXVは、先の項目XXXVI〜XLVII又はLII〜LXIVのいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったVEGF阻害薬の液体製剤であって、VEGF阻害薬はラニビズマブであり、内腔に入ったラニビズマブの液体製剤は、25℃かつ相対湿度60%で3ヶ月間の薬剤パッケージの保存後、焼付シリコーンで内部被覆された同じ容積のガラス製の薬剤パッケージ以下の、凝集物の面積%を形成する。
【0089】
項目LXVIは、先の項目XXXVI〜XLVII又はLII〜LXIVのプレフィルド薬剤パッケージに入ったVEGF阻害薬の液体製剤であって、VEGF阻害薬はラニビズマブであり、内腔に入ったラニビズマブの液体製剤は、40℃かつ相対湿度75%で3ヶ月間の薬剤パッケージの保存後、焼付シリコーンで内部被覆された同じ容積のガラス製の薬剤パッケージ以下の、凝集物の面積%を形成する。
【0090】
項目LXVIIは、先の項目XXXVI〜XLVII又はLII〜LXVIのいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったVEGF阻害薬の液体製剤であって、VEGF阻害薬はラニビズマブであって、ラニビズマブの液体製剤は、保管寿命の間、顕微鏡検査で測定して、1mLあたり50個以下の直径10μm以上の粒子、1mLあたり5個以下の直径25μm以上の粒子、及び1mLあたり2個以下の直径50μm以上の粒子を含む。
【0091】
項目LXVIIIは、先の項目XXXVI〜XLVII又はLII〜LXVIIのいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったVEGF阻害薬の液体製剤であって、VEGF阻害薬はラニビズマブであり、ラニビズマブの液体製剤は、プレフィルド薬剤パッケージを充填する時点で、任意選択的にプレフィルド薬剤パッケージを5℃で3ヶ月間保管後、任意選択的にプレフィルド薬剤パッケージを25℃かつ相対湿度60%で3ヶ月間保管後、任意選択的にプレフィルド薬剤パッケージを40℃かつ相対湿度75%で3ヶ月間保管後、USP789又はPh.Eur.5.7.1又は両方の粒子数の要件を満たす。
【0092】
項目LXIXは、プレフィルド薬剤パッケージの製品接触面全ての上にシリコーンオイルを有しない、先の項目XXXVI〜LXVIIIのいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったVEGF阻害薬の液体製剤である。
【0093】
項目LXXは、焼付シリコーンを有しない、先の項目XXXVI〜LXIXのいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったVEGF阻害薬の液体製剤である。
【0094】
項目LXXIは、壁が固定針又はルアーコネクタを含む、先の項目XXXVI〜LXXのいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったVEGF阻害薬の液体製剤である。
【0095】
項目LXXIIは、眼疾患を有する患者にVEGF阻害薬、任意選択的にラニビズマブ、アフリベルセプト、又はベバシズマブの液体製剤、を投与する際に使用するための、先の項目XXXVI〜LXXIのいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったVEGF阻害薬の液体製剤であって、眼疾患は、任意選択的に、加齢性黄斑変性症(AMD)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)による視覚障害、網膜静脈閉塞(分岐RVO又は中枢RVO)に続く黄斑浮腫による視覚障害、又は病的近視に続く脈絡膜血管新生(CNV)による視覚障害からなる群から選択される。
【0096】
項目LXXIIIは、液体製剤の容量30〜100μlが患者に投与される、先の項目XXXVI〜LXXIIのいずれか一項に記載の使用のためのプレフィルド薬剤パッケージに入ったVEGF阻害薬の液体製剤である。
【0097】
項目LXXIVは、滅菌ガス、任意選択的にエチレンオキシドEOガスによる、任意選択的に、16.6インチ(42.2cm)Hgの圧力、120°F(49℃)で10時間での最終滅菌に適した、又は気化過酸化水素(VHP)による最終滅菌に適した、内腔は最終滅菌後に滅菌ガスを含まない、又は実質的に含まない、先の項目XXXVI〜LXXIIIのいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったVEGF阻害薬の液体製剤である。
【0098】
項目LXXVは、最終的に滅菌された、先の項目XXXVI〜LXXIVのいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージに入ったVEGF阻害薬の液体製剤である。
【0099】
項目LXXVIは、ISO7886−1:1993試験を用いてプランジャブレークアウト力が決定される、請求項33、35、37〜45のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージである。
【0100】
項目LXXVIIは、ISO7886−1:1993試験を用いてプランジャブレークアウト力が決定される、本明細書の先の項目XVII、XIX〜XXXVのいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入りVEGF阻害薬の液体製剤である。
【0101】
項目LXXVIIIは、ISO7886−1:1993試験を用いてプランジャ摺動力が決定される、請求項34、35、37〜45のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージである。
【0102】
項目LXXIXは、ISO7886−1:1993試験を用いてプランジャ摺動力が決定される、本明細書の先の項目XVIII〜XXXVのいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入りVEGF阻害薬の液体製剤である。
【0103】
項目LXXXは、本明細書で定義される滑性試験のプロトコルを用いてプランジャのブレークアウト力が決定される、請求項33、35、37〜45のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージである。
【0104】
項目LXXXIは、本明細書で定義される滑性試験のプロトコルを用いてプランジャブレークアウト力が決定される、本明細書の先の項目XVII、XIX〜XXXVのいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入りVEGF阻害薬の液体製剤である。
【0105】
項目LXXXIIは、本明細書で定義される滑性試験のプロトコルを用いてプランジャの摺動力が決定される、請求項34、35、37〜45のいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージである。
【0106】
項目LXXXIIIは、本明細書で定義される滑性試験のプロトコルを用いてプランジャ摺動力が決定される、本明細書の先の項目XVIII〜XXXVのいずれか一項に記載のプレフィルド薬剤パッケージ入りVEGF阻害薬の液体製剤である。
【0107】
本発明の多くの追加の及び代替の態様及び実施形態も考えられ、以下の明細書及び特許請求の範囲に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0108】
図1】詳細を示すためにクロージャを取り除いた、薬剤パッケージの概略断面図である。
図2図1に示された部分の拡大詳細図である。
図3】本開示の一実施形態によるキャップが嵌められた組立品としても知られる、医療用バレル、皮下注射針、及びキャップの、キャップが嵌められた組立品の正面図である。
図4図1のキャップが嵌められた組立品の縦断面図であり、三層PECVDセットを拡大詳細図、図4Aに示す。
図5図3のキャップが嵌められた組立品の拡大部分図である。
図6】化学蒸着被覆台に配置された、図3及び図4のキャップが嵌められた組立品の概略縦断面図である。
図7】回転可能な四極磁石アレイを示す、図6の断面線A−Aに沿った断面図である。
図8図6図8に示す化学蒸着被覆台の更なる詳細を示す概略図である。
図9】製剤40で満たされ、プランジャ先端部、ピストン、ストッパ、又はシールが取り付けられた、図1図5のキャップが嵌められた組立品の図4と同様の図であり、プレフィルドシリンジとして具現化されるプレフィルド薬剤パッケージ210を定義する。示されるオプションでは、プランジャ先端部、ピストン、ストッパ、又はシール及びプランジャロッドが取り付けられている。
図10】クロージャ(セプタム及びクリンプ)が取り付けられ、同じバリア皮膜又は層、不動態化層又はpH保護皮膜、及び他の共通の特徴を有するバイアルとして具現化された薬剤パッケージ210の縦断面図である。
図11】皮膜の化学的性質を特徴付ける実施例A及びCで適用されたタイコート皮膜又は層を表すフーリエ変換赤外スペクトルである。
図12】皮膜の化学的性質を特徴付ける実施例A及びCで適用されたバリア皮膜又は層を表すフーリエ変換赤外スペクトルである。
図13】皮膜の化学的性質を特徴付ける実施例A及びCで適用されたpH保護皮膜又は層を表すフーリエ変換赤外スペクトルである。
図14】実施例Aで適用された皮膜の断面のTEM画像であり、タイコート皮膜又は層、バリア皮膜又は層、及びpH保護皮膜又は層の相対的な厚さ及び明確な遷移を示す。
図15】40℃/相対湿度75%で3ヶ月間インキュベートした実施例D及びEの非還元SDS−PAGE分析である。
【発明を実施するための形態】
【0109】
図面では以下の参照符号を使用する。
【0110】
【表1】
【0111】
【表2】
【0112】
【表3】
【0113】
本発明の文脈においては、以下の定義及び略語を使用する。
【0114】
「プレフィルドシリンジ」は、製造者によって充填された状態で供給される従来のシリンジ又はカートリッジであり、すなわち、投与されるべき薬物の測定された用量は、購入時にすでにシリンジ内に存在し、投与の準備ができた状態である。特に、薬物を含有する医薬組成物は、空のシリンジを使用することによって組成物を含有するバイアルから引き出す必要がない。本発明の意味におけるプレフィルドシリンジという用語は、再パッケージプロセスにおいてその内容物がバイアルから引き出されたものであるシリンジを意味するものではない。「プレフィルド薬剤パッケージ」は、プレフィルドシリンジ又はカートリッジを含むが、より広義には、たとえ投与のために薬物をシリンジ又は他の中間デバイスに移さなければならない場合であっても、充填された状態で製造業者によって供給される、薬剤の1回又は複数回用量を含有するバイアル又は他のタイプの保管容器をも含むよう定義される。
【0115】
用語「少なくとも(at least)」は、本発明の文脈においては、同用語に続く数字と「等しいかそれを超える(equal or more)」ことを意味する。「を含む(comprising)」という語は他の要素又はステップを排除するものではなく、また、不定冠詞「a」又は「an」は別段の定めがなければ複数形を排除するものではない。パラメータ範囲が示される場合、範囲の限界として提供するパラメータ値及び前記範囲内にあるパラメータの全ての値を開示することを意図する。
【0116】
例えば、皮膜又は層に対する「第1の」及び「第2の」又は類似の言及は、存在する最小数の、皮膜又は層などの物を意味するものであり、必ずしも皮膜又は層の順序又は総数を示すものとは限らず、又は記載された数を超える追加の皮膜又は層を要求するものではない。例えば、「第1の」皮膜又は層は、本明細書の文脈においては、限定されることなく、唯一の皮膜若しくは層であっても、又は複数の皮膜若しくは層のいずれか1つであってもよい。換言すれば、「第1の」皮膜又は層という記載は、第2の又は他の皮膜又は層も有する実施形態を可能にするが、必要とするわけではない。
【0117】
本発明の目的においては、「有機ケイ素化合物前駆体」は、酸素原子及び有機炭素原子(有機炭素原子は少なくとも1個の水素原子と結合した炭素原子である)に結合した四価ケイ素原子である、以下の結合の少なくとも1つを有する化合物である。
【化1】
揮発性の有機ケイ素化合物前駆体は、PECVD装置に蒸気として供給されうる前駆体と定義され、任意の有機ケイ素化合物前駆体である。任意選択的に、有機ケイ素化合物前駆体は、直鎖シロキサン、単環シロキサン、多環シロキサン、ポリシルセスキオキサン、アルキルトリメトキシシラン、及びこれら前駆体のいずれか2つ以上の複合体からなる群から選択される。
【0118】
明細書及び特許請求の範囲において、PECVD前駆体、気体反応物又はプロセスガス及びキャリアガスの供給量は「標準体積(standard volumes)」で表される場合がある。チャージガス又は他の一定量のガスの標準体積は、(実際の送達温度及び圧力を考慮しない)標準温度及び圧力において占める一定量のガスの体積である。標準体積は異なる体積の単位を使用して測定することができるが、それでもなお本開示及び特許請求の範囲の範囲内とされうる。例えば、同じ一定量のガスを、標準立方センチメートルの数値、標準立方メートルの数値、又は標準立方フィートの数値として表すことができる。標準体積もまた異なる標準温度及び圧力を使用して定義することができるが、それでもなお本開示及び特許請求の範囲の範囲内とされうる。例えば、標準温度が0℃、標準圧力が760トル(従来のまま)である可能性も、標準温度が20℃、標準圧力が1トルである可能性もある。しかし、特定の場合においてどのような標準を使用したとしても、2つ以上の異なるガスの相対体積を特定のパラメータを明示せずに比較する場合、特に明示しない限りは、各ガスに対して同じ体積、標準温度及び標準圧力の単位が使用される。
【0119】
本明細書においては、PECVD前駆体、気体反応物又はプロセスガス及びキャリアガスの対応する供給速度は単位時間あたりの標準体積で表される。例えば、流量は標準立方センチメートル/分として表され、sccmと略される。他のパラメータと同様、秒又は時間などの他の時間単位を使用できるが、2つ以上のガスの流量を比較する場合、特に明記されない限りは一貫したパラメータが使用される。
【0120】
「容器」は、本発明の文脈においては、薬剤パッケージ又は他の容器とすることができる。薬剤パッケージの幾つかの例としては、バイアル、カートリッジ、又はシリンジが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0121】
実験組成物Siwxyz又は均等な組成物SiOxyz若しくはSiOxyにおいて、この明細書全体を通じて使用されるw、x、y及びzの値は、分子中の原子の数又は種類を限定するものではなく(例えば、皮膜又は層の)比率又は実験式と理解すべきである。例えば、分子組成Si44824を有するオクタメチルシクロテトラシロキサンは、分子式のw、x、y及びzそれぞれを最大公約数である4で割ることにより得た以下の実験式、Si1126、によって記載されうる。w、x、y及びzの値は、また、整数に限定されない。例えば、(非環式)オクタメチルトリシロキサンの分子組成Si32824はSi10.672.678に可約である。
【0122】
また、SiOxyzはSiOxyの均等として記載されるが、SiOxyの存在を示すために任意の割合の水素の存在を示す必要はない。特に明記しない限り、wの値は1に正規化され、その場合、下付き文字wは好都合には省略される。したがって、皮膜又は層は、一態様においては、式Siwxyzを有し得、例えば、式中、wは1であり、xは約0.5〜約2.4であり、yは約0.6〜約3であり、zは約2〜約9である。したがって、w、x及びyの規定が同じである同皮膜又は層は、別の態様において、式SiOxyを有し得、例えば、式中、xは約0.5〜約2.4であり、yは約0.6〜約3であり、w及びzは省略される。
【0123】
ケイ素、酸素、及び炭素の原子比率は、XPSにより求めることができる。H原子の原子比率は、水素を検出しないXPSにより測定することができない。任意選択的に、H原子の割合は、例えば、ラザフォード後方散乱法(RBS)又は水素前方散乱法(HFS)、好ましくは前者により、別々に求めることができる。
【0124】
「シリンジ」という用語は、カートリッジ、「ペン」型注射器、及び他の1つ又は複数の構成要素と共に組み立てられて機能的なシリンジを提供するようになっている他の種類のバレル又はリザーバを含むように広く定義される。「シリンジ」はまた、内容物を分注するための機構を提供する、オートインジェクタなどの関連物品を含むように広く定義される。
【0125】
皮膜若しくは層又は処理は、それが表面のぬれ張力を、対応する非被覆面又は非処理面と比較して低下させる場合、「疎水性」と定義される。したがって、疎水性は非処理基板と処理の両方の機能である。
【0126】
本発明による「滑性層」は、被覆されていない表面よりも低い摩擦抵抗を有する皮膜である。換言すれば、これは、被覆されていない基準面と比較して、被覆された面の摩擦抵抗を低減する。本発明の滑性層は、被覆されていない表面より低い摩擦抵抗及び被覆されていない表面より低い摩擦抵抗を提供するプロセス条件によって主に定義される。
【0127】
「摩擦抵抗」は、静止摩擦抵抗及び/又は運動摩擦抵抗とすることができる。
【0128】
本発明の任意選択的な実施形態の1つは、滑性層で被覆されたシリンジ部、例えば、シリンジバレル又はプランジャである。この企図される実施形態では、本発明の文脈における関連する静止摩擦抵抗は、本明細書で定義されるブレークアウト力であり、本発明の文脈における関連する運動摩擦抵抗は、本明細書で定義されるプランジャ摺動力である。例えば、本明細書で定義及び決定されるプランジャ摺動力は、皮膜が任意のシリンジ又はシリンジ部品、例えば、シリンジバレルの内壁、に適用されるときはいつでも、本発明の文脈における滑性層又は皮膜の存在又は不在及び滑性特性を決定するのに適している。ブレークアウト力は、プレフィルドシリンジ、すなわち被覆後に充填され、プランジャが再び動かされるまで(「ブレークアウト」される必要がある)、しばらくの間、例えば、数ヶ月又は数年でも、保管することができるシリンジ、における被覆効果の評価に特に関連する。
【0129】
「プランジャ摺動力」(「滑動力」、「維持力」、Fmと同義語であり、これらも本明細書で使用される)は、本発明の文脈においては、シリンジバレル内で、例えば吸引又は分注の間に、プランジャの移動を維持するのに必要な力である。これは、当技術分野で知られているISO 7886−1:1993試験を用いて有利に決定することができる。当該技術においてしばしば使用される「プランジャ摺動力」の同義語は、「プランジャ力」又は「押し込み力」である。
【0130】
「プランジャブレークアウト力」(「ブレークアウト力」、「解放(break loose)力」、「開始(initiation)力」、Fiと同義語であり、これらも本明細書で使用される)は、本発明の文脈においては、プランジャをシリンジ内、例えばプレフィルドシリンジ内、で移動させるために必要な初動力である。
【0131】
「プランジャ摺動力」及び「プランジャブレークアウト力」並びにそれらの測定方法は、本明細書でより詳細に記載される。これらの2つの力は、N、lbs又はkgで表すことができ、3つ全ての単位が本明細書で使用される。3つの単位は、以下の通り相関する:1N=0.102kg=0.2248lbs(ポンド)。
【0132】
摺動力及びブレークアウト力は、医療用サンプルチューブ又はバイアルなどの容器内に、ストッパ又は他のクロージャを進め、容器を閉鎖するクロージャを容器内に配置するために必要な力を説明するために、本明細書においてしばしば使用される。その使用は、シリンジ及びそのプランジャの文脈における使用に類似しており、容器及びそのクロージャに対するこれらの力の測定は、少なくともほとんどの場合においてクロージャを配置位置へ前進させるときに液体が容器から排出されないことを除いて、シリンジに対するこれらの力の測定に類似することが企図される。
【0133】
「摺動可能」とは、プランジャ、クロージャ、又は他の取り外し可能な部品がシリンジバレル又は他の容器内で摺動することを可能にすることを意味する。
【0134】
「クロージャ」という用語は、本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、内腔を閉鎖する、薬剤パッケージ若しくは容器の任意の部分若しくはサブ組立品、又は容器内腔を閉鎖するために使用することができ、除去し、移動し、破壊し、再形成し、穿孔することができ、他には、これを操作してパッケージ若しくは容器を開き、その内容物を分注し、若しくは内容物へのアクセスを提供することができる、薬剤パッケージ若しくは容器の任意の部分若しくはサブ組立品を意味する。クロージャは、クリンプ、セプタム、ストッパ、プランジャ、プランジャ先端部、キャップ、ピストン、シール、若しくは針シールドなどの分離可能な部品;又は、内容物を放出するために破壊されるか分断されるアンプル又はフィルムパケットの壁部分、若しくはノズルを通じて内容物を放出するために穿孔される前のチューブのノズルを閉塞するウェブなどの一体化された部分若しくは結合された部分、又は開くことのできる閉じられたバルブとすることができる。用語「クロージャ」は、プランジャ先端、プランジャピストン、プランジャピストンとプランジャ先端との組立品;プランジャロッドと更に組み立てられる、これらのいずれか;又はプランジャロッドが存在しない、これらのいずれかに等しく適用される。
【0135】
プレフィルドシリンジの文脈においては、クロージャは、典型的には、しばしばプランジャストッパ又は単にプランジャとも称される、ストッパである。したがって、プレフィルドシリンジの文脈においては、「ストッパ」、「プランジャストッパ」及び「プランジャ」という用語は本明細書中で交換可能に使用される。プランジャストッパは、プランジャロッドによってシリンジバレル内で移動することができ、プランジャストッパとプランジャロッドは機械的に接続されていてもよい。非格納式ストッパの場合、プランジャロッドはプランジャストッパに機械的に接続されていない。したがって、非格納式ストッパは、プランジャロッドをシリンジバレルに出口に向かって押し込むことによって、シリンジバレル内に押し込むことができるが、プランジャロッドをシリンジバレルの後方に向かって引っ張ることによって格納することができない。
【0136】
「含む(comprising)」という語は他の要素又は工程を排除するものではない。
【0137】
ここで、いくつかの実施形態を示す添付の図面を参照して本発明をより詳細に説明する。しかしながら、本発明は多くの異なる形態で具現化することができ、ここで説明する実施形態に限定されるものと解釈すべきではない。むしろ、これら実施形態は本発明の例であり、特許請求の範囲の文言により示される全範囲を有する。全体にわたり同様の数は同様の要素又は対応する要素を意味する。以下の開示は、特定の実施形態に特に限定されない限りは全実施形態に関連する。
【0138】
硝子体内注射用VEGF阻害眼用薬
「眼内新生血管疾患」は、眼の血管新生を特徴とする疾患である。眼内血管新生疾患の例としては、例えば、増殖性網膜症、脈絡膜血管新生(CNV)、加齢性黄斑変性症(AMD)、糖尿病及び他の虚血関連網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、病的近視、フォン・ヒッペル・リンダウ病、眼のヒストプラスマ症、網膜中心静脈閉塞(CRVO)、網膜分岐静脈閉塞(BRVO)、角膜血管新生、及び網膜血管新生が挙げられるが、これらに限定されるものではない。用語「加齢性黄斑変性症」は、通常、高齢者に影響を及ぼし、網膜の損傷のため、視野の中心の視力を失う(黄斑)病状を意味する。これらの病状の一部又は全ては、VEGF阻害薬の硝子体内注射によって処置することができる。
【0139】
用語「VEGF阻害薬」は、VEGFと特異的に相互作用し、その生物学的活性の1つ以上、例えばその分裂促進性、血管新生性及び/又は血管透過性活性を阻害する分子を意味する。それは、抗VEGF抗体及びその抗原結合フラグメント、並びに非抗体VEGF阻害薬の両方を含むことが意図される。
【0140】
非抗体VEGF阻害薬としては、アフリベルセプト、ペガプタニブ、及び抗体模倣物が挙げられる。Eylea(登録商標)の名称で現在市販されているアフリベルセプト(Aflibercept)は、ヒトVEGF受容体1及び2の細胞外ドメインの一部がヒトIgG1のFc部分に融合した、組換えヒト可溶性VEGF受容体融合タンパク質である(Holashら(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99(17):11393−11398;国際公開第00/75319A1号パンフレット)。Macugen(登録商標)の名称で現在市販されているペガプタニブは、ペグ化抗血管内皮成長因子(VEGF)アプタマーである(Bellら(1999)In Vitro Cell Dev Biol Anim.35(9):533−42)。VEGF阻害薬である抗体模倣物は、VEGFに結合し、DARPin(登録商標)MP0112などの、VEGFの受容体への結合を阻害するアンキリンリピートドメインを含む結合タンパク質を含む(国際公開第2010/060748号パンフレット及び国際公開第2011/135067号パンフレットも参照)。
【0141】
用語「抗VEGF抗体」は、VEGFに特異的に結合し、その生物学的活性の1つ以上、例えばその分裂促進性、血管新生性及び/又は血管透過性活性を阻害する、Fab又はscFVフラグメントなどの抗体又は抗体フラグメントを意味する。抗VEGF抗体は、例えば、VEGFの細胞受容体への結合を妨げること、VEGFが細胞受容体に結合した後の血管内皮細胞の活性化を妨げること、又はVEGFによって活性化される細胞を死滅させることによって作用する。抗VEGF抗体としては、例えば、抗体A4.6.1、ベバシズマブ、ラニビズマブ、G6、B20、2C3、並びに、例えば、国際公開第98/45331号パンフレット、米国特許出願公開第2003/0190317号明細書、米国特許第6,582,959号明細書、米国特許第6,703,020号明細書、国際公開第98/45332号パンフレット、国際公開第96/30046号パンフレット、国際公開第94/10202号パンフレット、国際公開第2005/044853号パンフレット、欧州特許第0666868B1号明細書、国際公開第2009/155724号パンフレット、及びPopkovら(2004)J.Immunol.Meth288:149−64に記載の他のVEGF抗体が挙げられる。好ましくは、本発明の医薬組成物中に存在する抗VEGF抗体又はその抗原結合フラグメントは、ラニビズマブ又はベバシズマブである。最も好ましくは、これはラニビズマブ又はその抗原結合フラグメントである。
【0142】
「ラニビズマブ」は、国際公開第98/45331号パンフレットの配列番号115及び116及びChenら(1999)J.Mol.Biol.293:865−81に記載のY0317の軽鎖及び重鎖可変ドメイン配列を有するVEGF−Aに対するヒト化モノクローナルFabフラグメントである。ラニビズマブのCAS番号は347396−82−1である。ラニビズマブは、内皮細胞の増殖及び血管新生を阻害し、血管新生(湿潤)加齢性黄斑変性症(AMD)の処置、糖尿病性黄斑浮腫(DME)による視覚障害の処置、網膜静脈閉塞(分岐RVO又は中枢RVO)に続く黄斑浮腫による視覚障害の処置、又は病的近視に続く脈絡膜血管新生(CNV)による視覚障害の処置につき承認されてきた。ラニビズマブは、ベバシズマブに関連し、ベバシズマブと同じ親マウス抗体に由来するが、親分子よりもはるかに小さく、親和性が発達してVEGF−Aとのより強い結合を提供する。ラニビズマブは、例えば国際公開第98/45331A2号パンフレットに記載されているように、大腸菌(Escherichia coli)において組換え生産される。本発明の市販のラニビズマブ製剤は、α,α−トレハロース二水和物、ヒスチジン塩酸塩一水和物、ヒスチジン、ポリソルベート20及び注射用水を含有し、10mg/mlの濃度で供給される。特に、これはラニビズマブ6mg又は10mg、α,α−トレハロース二水和物100mg、L−ヒスチジン0.32mg、L−ヒスチジン塩酸塩一水和物1.66mg、0.1mgのポリソルベート20及び1mLにメスアップした注射用水を含有する。現在市販されているラニビズマブ製剤のpHは、pH5.5に調整することができる。
【0143】
「ベバシズマブ」は、VEGFの全てのアイソフォームを認識し、ラニビズマブの親抗体である、全長ヒト化マウスモノクローナル抗体である。ベバシズマブのCAS番号は216974−75−3である。ベバシズマブは、血管新生を阻害し、現在では様々な種類の癌の処置のために承認されている。しかしながら、加齢性黄斑変性症などの眼科疾患では、適応外でも使用されている。本発明の市販のベバシズマブ製剤は、α,α−トレハロース二水和物、リン酸ナトリウム、ポリソルベート20及び注射用水を含有し、濃度25mg/mlの濃縮物として供給される。特に、これは、25mg/mlのベバシズマブ、240mgのα,α−トレハロース二水和物、23.2mgのリン酸ナトリウム(一塩基性、一水和物)、4.8mgのリン酸ナトリウム(二塩基性、無水)、1.6mgのポリソルベート20、及び注射用水を含有する(USP)。
【0144】
本発明のプレフィルドシリンジ内の抗体濃度は、典型的には1〜100mg/ml、好ましくは2〜75mg/ml、より好ましくは3〜50mg/ml、更により好ましくは5〜30mg/ml、最も好ましくは6mg/ml又は10mg/mlである。ラニビズマブが本発明のプレフィルドシリンジ内に含まれる場合、ラニビズマブ濃度は10mg/mlである。
【0145】
アフリベルセプトは、Eylea(登録商標)の名称で市販されており、ヒトIgG1免疫グロブリンのFc部分に融合されたヒトVEGF受容体1及び2の細胞外ドメイン由来のVEGF結合部分からなる組換え融合タンパク質である。これは、湿性黄斑変性症の処置薬として承認されている。アフリベルセプトのCAS番号は862111−32−8である。これは、滲出性加齢性黄斑変性症、糖尿病性黄斑浮腫(DME)に起因する視覚障害、及び糖尿病性黄斑浮腫患者における糖尿病性網膜症の処置のための販売認可を受けている。本発明のアフリベルセプト製剤は、リン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ポリソルベート20、スクロース及び注射用水を含有し、40mg/mlの濃度で供給される。特に、これは、40mg/mlのアフリベルセプト、10mMのリン酸ナトリウム緩衝液、40mMのNaCl、0.03%のポリソルベート20、5%のスクロース;及び注射用水を含有する。別のアフリベルセプト製剤は、ヒスチジン緩衝液、塩化ナトリウム、ポリソルベート20、スクロース及び注射用水を含有してもよく、40mg/mlの濃度で供給される。特に、これは、40mg/mlのアフリベルセプト、10mMヒスチジン緩衝液、40mMのNaCl、0.03%のポリソルベート20、5%のスクロース;及び注射用水を含有する。商業的及び代替的なアフリベルセプト製剤のpHは6.2に調整することができる。
【0146】
ラニビズマブは、Lucentis(登録商標)の名称で市販されており、VEGFに対するヒト化マウスモノクローナル抗体のFab断片であり、加齢性黄斑変性症及び糖尿病性黄斑浮腫などの眼疾患の処置薬として承認されている。
【0147】
更に、眼疾患の処置のためにVEGFに対しても指向されている、全長抗体ベバシズマブ(Avastin(登録商標))の適応外使用は、一般的である。
【0148】
ラニビズマブ及びベバシズマブは、血管新生加齢性黄斑変性症の処置において類似の有効性プロファイルを有するようであるが、稀な有害事象はベバシズマブでより頻繁に生じるようである(Johnson and Sharma(2013)Curr.Opin.Ophthalmol.:24(3):205−12)。
【0149】
本発明のプレフィルドシリンジ、すなわちVEGF阻害薬、好ましくは抗VEGF抗体又はアフリベルセプトに含まれる薬物は、2〜8℃の温度で、少なくとも6ヶ月間、好ましくは少なくとも9ヶ月間、より好ましくは少なくとも1年間、特に好ましくは少なくとも18ヶ月間、最も好ましくは約2年間、安定である。本発明のプレフィルドシリンジ、すなわちVEGF阻害薬、好ましくは抗VEGF抗体又はアフリベルセプト、より好ましくはラニビズマブに含まれる薬物は、室温、すなわち20℃〜25℃の温度で、少なくとも3日間又は1週間、好ましくは少なくとも2週間又は3週間、より好ましくは約4週間及び最も好ましくは少なくとも3ヶ月間、安定である。本発明のプレフィルドシリンジ、すなわちVEGF阻害薬、好ましくは抗VEGF抗体又はVEGF受容体融合タンパク質、より好ましくはラニビズマブ又はアフリベルセプトに含まれる薬物は、約40℃の温度で、少なくとも4時間又は6時間、好ましくは少なくとも10時間又は12時間、より好ましくは少なくとも18時間又は24時間、最も好ましくは1週間又は2週間、安定である。
【0150】
シリンジ内での薬物の安定性は、酸化及び脱アミド化された種などの薬物の修飾を検出することができる、イオン交換クロマトグラフィー、又は薬物の凝集体を検出することができる、サイズ排除クロマトグラフィーによって決定することができる。そのような分析の説明は、実施例のセクションで提供される。
【0151】
凝集物及び化学的に修飾された種を含む全ての不純物の合計が、非修飾、非凝集の薬物の量と比較して、2%未満、好ましくは1.5%未満、より好ましくは1.2%未満、最も好ましくは1%未満である場合、薬物、すなわちVEGF阻害薬、好ましくは抗VEGF抗体又はアフリベルセプトは、安定であるとみなされる。
【0152】
プレフィルドシリンジの構成要素は、当業者に知られており、基本的にシリンジバレル及びプランジャを含む。
【0153】
シリンジバレルは、プランジャがバレル内に押し込まれてバレルに沿って移動するときに、バレルの一端に位置する出口を通ってバレルから排出され得る所定量の液体組成物を含む。シリンジバレルは、典型的には、実質的に円筒状の形状を有する。出口は、出口端からの突起を備え、この突起を介して、シリンジバレルの残りの部分よりも小さな直径を有するチャネルが延びている。出口は、針、又は、バレルを封止することができ、針をシリンジに取り付けられるよう除去することができる、封止デバイスなどの他の付属品、との接続(固定針が使用されていない場合)のために、例えばルアーロック式接続によって適合されてもよい。この封止は、Vetter Pharma International GmbHのOVSTMシステムなどの公知の封止デバイスの使用によって達成することができる。固定針もまた使用可能であり、シリンジバレルの射出成形時に恒久的に組み込まれる成形針、又はシリンジバレルの成形された供給通路に固定される接着針のいずれかである。
【0154】
任意選択的に、プレフィルドシリンジにおいて、シリンジ出口は、固定針と固く接続され、使用前に組み立てる必要はない。この場合、注射前にシリンジを組み立てている間に、針で負傷する危険性が低減される。固定針は、シリンジ内に成形することができるので、接着剤を用いることなく、本発明のプレフィルドプラスチックシリンジに取り付けることができる。対照的に、針をガラスシリンジに取り付けるためには接着剤が必要であり、不純物やタンパク質酸化の増加につながり得る(2011 PDA Europe The Universe of Pre−Filled Syringes and Injection DevicesでのAdlerの発表、バーゼル、2011年11月7日〜11日;PDA Single Use Systems WorkshopでのMarkovicの発表、ベセスダ、2011年6月22日〜23日)。
【0155】
硝子体内投与の場合、針のサイズは、典型的には29、29 1/2又は30ゲージであるが、31、32、33、及び34ゲージの針も使用することができる。プレフィルドシリンジは、注射後に針が刺さる危険性を更に避けるために、パッシブ型の針安全ガードを備えていてもよい。
【0156】
シリンジ製造プロセスにおいてタングステンを使用する必要がないため、シリンジバレルは、好ましくはタングステンを含まない、すなわち、いかなる微量のタングステンも含まない。したがって、タングステン誘導タンパク質凝集の危険性はない。
【0157】
一実施形態では、シリンジバレルは、シリンジバレルに印刷されたラインのようなマークを含み、そのラインは、液体組成物を注入する人が、ストッパの所定の部分(前面の先端など)又はプランジャを、マークによって調節することを可能にする。これにより、余分な液体組成物及び潜在的な気泡がシリンジバレルから除去され、正確な所定の投与量を患者に安全に投与することが可能になる。
【0158】
プランジャはシリンジバレルの内側に押し込まれ、シリンジは液体製剤を出口から排出することができる。
【0159】
プレフィルドシリンジにおいて、ストッパは液体製剤と接触している。ストッパは、典型的には、圧力がプランジャに加えられたときにシリンジから液体製剤を放出するのを容易にする封止を形成するために、シリンジバレルの内面と係合する、天然又は合成ゴムなどのエラストマ材料で作製される。
【0160】
好ましい実施形態では、プランジャストッパは、非格納式ストッパ、すなわち、プランジャロッドに機械的に接続されていないストッパである。用語「非格納式ストッパ」は、ストッパがシリンジ出口の方向にのみ移動することができ、反対方向、すなわち、シリンジの後方には移動することができないことを意味することが意図される。したがって、シリンジ内の液体組成物の汚染の危険性は最小限に抑えられる。典型的には、非格納式ストッパは、プランジャロッドによってシリンジ出口の方向に押されて液体製剤を放出するが、プランジャロッドがシリンジの後端に向かって後退する場合、その位置にとどまる。
【0161】
シリンジは、0.3ml〜1.5ml、好ましくは0.5ml〜1.0ml、最も好ましくは0.5ml又は1.0mlの公称最大充填容量、すなわちシリンジが最大取り込み得る容量を有する。約0.05mlの注入量の場合、公称充填容量が0.5mlのシリンジが好ましい。
【0162】
シリンジに充填される液体組成物の容量は、約0.05ml〜約1ml、好ましくは約0.1ml〜約0.5ml、より好ましくは0.14ml〜0.3ml、最も好ましくは0.15ml〜0.2mlである。
【0163】
シリンジが、通常、シリンジ及び針内の全てのデッドスペース及び注射用シリンジの準備による損失を考慮に入れて、患者に実際に投与される容量よりも大きな容量で充填されることは、当業者に知られている。したがって、実際に患者に投与される容量は、0.01ml〜1ml、好ましくは0.02〜0.5ml、より好ましくは0.025〜0.5ml、最も好ましくは0.03ml〜0.05mlである。
【0164】
ラニビズマブは、典型的には、ラニビズマブ濃度が6mg/ml又は10mg/mlで0.05mlの容量、又はラニビズマブ濃度が10mg/mlで0.03ml又は0.05mlの容量で、送達量は0.3又は0.5mgとなる。アフリベルセプトについて、投与量はアフリベルセプト濃度40mg/mlで典型的に0.05mlであり、送達量は2mgとなる。上記で議論したように、ベバシズマブは、眼疾患の処置のために適応外使用されている。この場合、ベバシズマブの投与量は、ベバシズマブ濃度25mg/mlで0.05mlであり、送達量は1.25mgとなる。
【0165】
したがって、一実施形態では、シリンジは、0.15ml〜0.2mlの容量の液体組成物で充填され、0.03ml〜0.05mlの液体組成物の容量が患者に投与される。
【0166】
本発明のプレフィルドシリンジ、すなわちVEGF阻害薬、好ましくは抗VEGF抗体又はアフリベルセプト、より好ましくはラニビズマブに含まれる薬物は、2〜8℃の温度で、少なくとも6ヶ月間、好ましくは少なくとも9ヶ月間、より好ましくは少なくとも1年間、特に好ましくは少なくとも18ヶ月間、最も好ましくは約2年間保管したとき、その生物学的活性を保持している。本発明のプレフィルドシリンジ、すなわちVEGF阻害薬、好ましくは抗VEGF抗体又はアフリベルセプト、より好ましくはラニビズマブに含まれる薬物は、室温、すなわち20℃〜25℃の温度で、少なくとも1時間、好ましくは少なくとも6時間、より好ましくは少なくとも12時間、最も好ましくは約24時間、保管したとき、その生物学的活性を保持している。
【0167】
VEGF阻害薬、好ましくは抗VEGF抗体又はアフリベルセプト、より好ましくはラニビズマブの生物学的活性は、上記の条件下で保管された阻害薬をヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)及びVEGFと共にインキュベートし、阻害薬の存在下でのVEGF誘発性増殖を測定することによって、すなわち、Promegaから入手可能なCellTiter−Blue(登録商標)細胞生存度アッセイによって、阻害薬とインキュベートされていない細胞と比較して、決定される。VEGF阻害薬はVEGF誘発シグナル伝達を阻害するので、生物学的に活性なVEGF阻害薬がサンプル中に存在する場合、VEGF誘性増殖は減少する。
【0168】
VEGF誘導性増殖が少なくとも50%、好ましくは少なくとも55%又は60%、より好ましくは少なくとも65%、70%、75%又は80%、更により好ましくは少なくとも85%、87%又は90%、最も好ましくは少なくとも92%、94%、96%、98%又は99%阻害される場合、VEGF阻害薬、好ましくは抗VEGF抗体又はアフリベルセプト、より好ましくは、ラニビズマブは、プレフィルドシリンジ中での保管後にその生物学的活性を保持する。
【0169】
プレフィルドシリンジは、VEGF阻害薬に加えて、1つ以上の薬理学的に活性な薬剤を含み得る。薬理学的に活性な薬剤は、対象に投与された場合に薬理学的効果を発揮することができる。好ましくは、更なる薬理学的に活性な薬剤は、PDGF阻害薬又はAng2阻害薬である。より好ましくは、PDGF阻害薬は、リヌクマブ(rinucumab)などの抗PDGF抗体、又はFovista(登録商標)として市販されているE10030などのアプタマーである。最も好ましくは、PDGFアンタゴニストは、Greenら(1996)Biochemistry 35:14413;米国特許第6,207,816号明細書;米国特許第5,731,144号明細書;米国特許第5,731,424号明細書;及び米国特許第6,124,449号明細書に記載されているE10030である。また、より好ましくは、Ang2抗体は抗Ang2抗体であり、最も好ましくはネズバクマブである。
【0170】
本発明のプレフィルドシリンジ内の液体組成物は、低い粒子含有量を有する。特に、シリンジを40℃で5分間回転させた後、1分あたり1℃での+5℃〜−20℃の3回の凍結−解凍サイクルから2週間若しくは4週間後、又は5℃、25℃かつ相対湿度60%、若しくは40℃かつ相対湿度75%で3ヶ月間保管した後、10μm以上のサイズを有する粒子を50個未満含んでいた。代替的に又は追加的に、液体組成物は、シリンジを40℃で5分間回転させた後、又は1分あたり1℃での+5℃〜−20℃の3回の凍結−解凍サイクルから2週間若しくは4週間後、又は5℃、25℃/相対湿度60%、若しくは40℃/相対湿度75%で3ヶ月間保管した後、25μm以上のサイズを有する粒子を5個未満含んでいた。したがって、プレフィルドシリンジは、これらの粒径に関し、眼科用溶液の米国薬局方<789>の要件を満たす。
【0171】
本発明のプレフィルドシリンジは、優れた滑り挙動(ブレークアウト力及びプランジャ摺動力)を更に有する。特に、ブレークアウト力、すなわちプランジャの移動を開始するのに必要な力は、15N未満、10N未満又は9N未満、好ましくは8N未満又は7N未満、より好ましくは6N未満、最も好ましくは5N未満である。シリンジが8週間などの長期間保管された場合、ブレークアウト力は有意に、すなわち10%以上、変化しない。対照的に、シリコーンを含有するシリンジでは、ブレークアウト力は、保管時に少なくとも2倍増加する。
【0172】
更に、プランジャ摺動力、すなわち液体組成物を排出するためにプランジャのシリンジバレルに沿った動きを維持するのに必要な力は、10N未満、好ましくは9N未満、より好ましくは8N未満、最も好ましくは7N未満である。特に好ましい実施形態では、ブレークアウト力とプランジャ摺動力との間に有意差は存在しない。
【0173】
本発明はまた、本発明のプレフィルドシリンジの1つ以上を含むキットを提供する。好ましくは、キットは、ブリスターパックを含む。「ブリスターパック」は、熱成形プラスチック及び板紙の裏張り又はアルミニウム箔若しくはプラスチックの蓋シールから通常作製される、キャビティ又はポケットを有する。プレフィルドシリンジが固定針を含まない場合、キットは更に針を含んでもよい。キットは、使用説明書を更に含み得る。好ましくは、キットは、ブリスターパックなどのパッケージ内の酸素レベルを低下させるために典型的に使用される酸素吸収剤を含まない。酸素吸収剤は、通常、炭酸銅又はアスコルビン酸塩などの物質を含み、この物質は、パッケージ内の酸素と高親和性で反応し、それによってパッケージの酸素含有量を減少させる。
【0174】
図1及び図2を参照すると、ここでは分解された薬剤パッケージ210の形態の容器214が示されている。このような薬剤パッケージ210又はその部品の幾つかの非限定的な例は、シリンジバレル、バイアル、カートリッジ、ボトル、ストッパ、針、プランジャ、又はキャップである。
【0175】
図1及び図2の薬剤パッケージ210は、壁15によって少なくとも部分的に画定される内腔18を有する。壁15の少なくとも一部は、任意選択的に環状オレフィンポリマーである、熱可塑性材料を任意選択的に含む。より一般的には、容器14の壁15に適した材料としては、ポリオレフィン(例えば、環状オレフィン重合体、環状オレフィン共重合体、又はポリプロピレン)、ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、又はこれらのいずれかの任意の組合せ若しくは共重合体が挙げられる。この段落中の材料のいずれか2種以上の組合せを使用することもできる。
【0176】
壁15は、内腔に面する内部表面16と、外面216と、内腔18に面する壁15の少なくとも一部上の容器皮膜セット285とを有する。内部表面16は、タイコート皮膜又は層838、バリア皮膜又は層30、pH保護皮膜又は層34、及び任意選択的に滑性皮膜又は層287を含む。容器皮膜セット285のこの実施形態において、タイコート皮膜又は層838、バリア皮膜又は層30、及びpH保護皮膜又は層34の組合せは、「三層皮膜」として知られることもあり、SiOxのバリア皮膜又は層30は任意選択的に、それぞれ本明細書に定義されるSiOxyの有機層であるpH保護皮膜又は層34とタイコート皮膜又は層838との間に挟設されることにより、さもなければそれを除去するほど十分高いpHを有する内容物から保護される。
【0177】
図1及び図2は、少なくとも1つの開口部を有する容器14を示すが、シリンジバレルなどの2つ以上の開口部を有する容器14も含むものと理解されたい。
【0178】
タイコート皮膜又は層
図1及び図2を参照すると、接着皮膜又は層と称されることもある、タイコート皮膜又は層838が設けられている。タイコート皮膜又は層838は、任意選択的に、プラズマ化学気相成長法(PECVD)又は他の化学蒸着プロセスによって、薬剤パッケージ210、例えば熱可塑性薬剤パッケージ、の容器上に堆積させることができる。
【0179】
タイコート皮膜又は層838は任意選択的に、内部表面16などの基板、特に熱可塑性基板へのバリア皮膜又は層30の接着を改善する機能を果たすが、タイコート皮膜又は層838はガラス基板又は別の皮膜若しくは層への接着を改善するのに使用することもできる。
【0180】
任意選択的に、タイコート皮膜又は層838は、基板又は壁15へのバリア皮膜又は層30への接着を改善する。例えば、タイコート皮膜又は層838を基板に塗布することができ、基板へのバリア皮膜又は層30の接着を改善するタイコート皮膜又は層838にバリア皮膜又は層30を塗布することができる。任意選択的に、タイコート皮膜又は層838はまた、バリア皮膜又は層30にかかる応力を除去し、バリア皮膜又は層30が熱膨張若しくは熱収縮又は機械的衝撃による損傷を受け難くすると考えられる。
【0181】
任意選択的に、バリア皮膜又は層30の下に塗布されるタイコート皮膜又は層838は、バリア皮膜又は層30の上に塗布されるpH保護皮膜又は層34の機能を改善することができる。
【0182】
任意選択的に、タイコート皮膜又は層838はまた、バリア皮膜又は層30と熱可塑性基板、ここでは壁15との間の欠陥を分断すると考えられる。これは、タイコート皮膜又は層838が塗布されるときに形成され得るピンホール又は他の欠陥があっても、バリア皮膜又は層30が塗布されると連続しなくなり、このように1つの皮膜中のピンホール又は他の欠陥は他の皮膜中の欠陥と一列に並ばないため、起こると考えられる。任意選択的に、タイコート皮膜又は層838はバリア皮膜又は層30としての効果が幾らかあり、このように、バリア皮膜又は層30を通って延びる漏れ経路となる欠陥があってもタイコート皮膜又は層838で塞ぐことができる。
【0183】
任意選択的に、タイコート皮膜又は層838は、SiOxyを含み、好ましくはSiOxyで構成されても、それを含んでも、又はそれから本質的になってもよく、式中、xは約0.5〜約2.4であり、yは約0.6〜約3である。タイコート皮膜又は層838中のSi、O、及びCの原子比率は任意選択的に:
Si 100:O 50〜150:C 90〜200(即ち、x=0.5〜1.5、y=0.9〜2);
Si 100:O 70〜130:C 90〜200(即ち、x=0.7〜1.3、y=0.9〜2)
Si 100:O 80〜120:C 90〜150(即ち、x=0.8〜1.2、y=0.9〜1.5)
Si 100:O 90〜120:C 90〜140(即ち、x=0.9〜1.2、y=0.9〜1.4)、又は
Si 100:O 92〜107:C 116〜133(即ち、x=0.92〜1.07、y=1.16〜1.33)、
であってもよい。
【0184】
原子比率は、XPSにより求めることができる。XPSにより測定されないH原子を考慮して、タイコート皮膜又は層838は、従って一態様においては、式Siwxyz(又はその均等のSiOxy)を有してもよく、例えば、式中、wは1であり、xは約0.5〜約2.4であり、yは約0.6〜約3であり、zは約2〜約9である。通常、タイコート皮膜又は層838は、100%の炭素+酸素+ケイ素に対して正規化された場合に36%〜41%の炭素を含有する。
【0185】
任意選択的に、タイコート皮膜又は層838は、本明細書の他の箇所に記載されているpH保護皮膜又は層34と組成が類似していても又は同一であってもよいが、これは必要条件ではない。
【0186】
任意選択的に、タイコート皮膜又は層838は、平均して厚さ5〜200nm(ナノメートル)、任意選択的に5〜100nm、任意選択的に5〜20nmである。これらの厚さは重要ではない。タイコート皮膜又は層838は、その機能が基板の表面特性を変化させることであるため、一般的に比較的薄いが、必ずしもそうとは限らない。
【0187】
タイコート皮膜又は層838は、内腔18に面する内部表面と、壁15の内部表面16に面する外面とを有する。任意選択的に、タイコート皮膜又は層286は、少なくともバリア皮膜又は層と同一の広がりを有する。任意選択的に、タイコート皮膜又は層は、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、又はヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を含む前駆体供給物のPECVDにより塗布される。
【0188】
タイコート皮膜又は層838の厚さは、例えば、透過電子顕微鏡法(TEM)により測定することができ、その組成はX線光電子分光法(XPS)により測定することができる。
【0189】
バリア皮膜又は層
図1及び図2を参照すると、バリア皮膜又は層30を任意選択的に、薬剤パッケージ210、例えば、熱可塑性薬剤パッケージの容器上にプラズマ化学気相成長法(PECVD)又は他の化学蒸着プロセスにより堆積させて、酸素、二酸化炭素、又は他のガスが容器に入ることを防止することができ、バリア皮膜288は任意選択的に、非被覆薬剤パッケージ210と比較して内腔210内への大気ガスの侵入を低減する、及び/又はパッケージ壁内への若しくはパッケージ壁を通した製剤40の浸出を防止する、及び過酸化水素及びエチレンオキシドなどの滅菌流体が熱可塑性の壁に浸透し、そして容器の内腔へ入ることを防止するのに有効である。
【0190】
充填された薬剤パッケージ又は他の容器210内で、バリア皮膜又は層30が壁15の内面又は内部表面16と、保管される製剤40を収容するようになっている内腔18との間に配置されるように、バリア皮膜又は層30は任意選択的に、熱可塑性の壁15に直接又は間接的に塗布することができる(例えば、タイコート皮膜又は層838をそれらの間に介在させることができる)。SiOxのバリア皮膜又は層30は、熱可塑性の壁15により支持される。本明細書の他の箇所に又は米国特許第7,985,188号明細書に記載されているバリア皮膜又は層30を任意の実施形態で使用することができる。
【0191】
バリア皮膜又は層30は任意選択的に、「SiOx」皮膜と特徴付けられ、ケイ素、酸素、及び任意選択的に他の元素を含有し、式中、酸素原子対ケイ素原子の比率であるxは、約1.5〜約2.9、又は1.5〜約2.6、又は約2である。1つの好適なバリア組成物は、例えば、xが2.3のものである。
【0192】
任意選択的に、バリア皮膜又は層30は厚さ2〜1000nmであり、任意選択的に厚さ4nm〜500nmであり、任意選択的に厚さ10〜200nmであり、任意選択的に厚さ20〜200nmであり、任意選択的に厚さ20〜30nmであり、SiOx(式中、xは1.5〜2.9である)を含む。SiOxのバリア皮膜又は層30は、内腔18に面する内部表面220と、タイコート皮膜又は層838の内部表面に面する外面222とを有する。例えば、任意の実施形態のバリア皮膜又は層30は、少なくとも2nm、又は少なくとも4nm、又は少なくとも7nm、又は少なくとも10nm、又は少なくとも20nm、又は少なくとも30nm、又は少なくとも40nm、又は少なくとも50nm、又は少なくとも100nm、又は少なくとも150nm、又は少なくとも200nm、又は少なくとも300nm、又は少なくとも400nm、又は少なくとも500nm、又は少なくとも600nm、又は少なくとも700nm、又は少なくとも800nm、又は少なくとも900nmの厚さで塗布されうる。バリア皮膜又は層30は、1000nm以下、又は最大で900nm、又は最大で800nm、又は最大で700nm、又は最大で600nm、又は最大で500nm、又は最大で400nm、又は最大で300nm、又は最大で200nm、又は最大で100nm、又は最大で90nm、又は最大で80nm、又は最大で70nm、又は最大で60nm、又は最大で50nm、又は最大で40nm、又は最大で30nm、又は最大で20nm、又は最大で10nm、又は最大で5nmの厚さとされうる。
【0193】
厚さ4nm〜500nm、任意選択的に厚さ7nm〜400nm、任意選択的に厚さ10nm〜300nm、任意選択的に厚さ20nm〜200nm、任意選択的に厚さ20〜30nm、任意選択的に厚さ30nm〜100nmの範囲が考えられる。前述の最小厚さのいずれか1つと、前述の最大厚さのいずれかの等しい又はより大きいものとで構成される特定の厚さ範囲が特に考えられる。
【0194】
SiOx又は他のバリア皮膜又は層30の厚さは、例えば、透過電子顕微鏡法(TEM)により測定することができ、その組成はX線光電子分光法(XPS)により測定することができる。
【0195】
pH保護皮膜又は層
本明細書で定義されるSiOxなどの特定のバリア皮膜又は層30は、本明細書の他の箇所に記載されている被覆容器、特にバリア皮膜又は層30が製剤40又は他の内容物に直接接触する被覆容器の特定の比較的高いpHの内容物により攻撃されると、6ヶ月未満でバリア改善率が測定可能な程度低下するという特徴を有することが判明した。本発明者らは、SiOxのバリア皮膜又は層30が一部の流体、例えば、5より高いpHを有する水性組成物により浸食又は溶解されることを見い出した。化学気相成長法により塗布される皮膜は非常に薄く−厚さ数十〜数百ナノメートルになり得るため、浸食速度が比較的遅くても薬剤パッケージ214の所望の保管寿命よりも短い時間でバリア皮膜又は層30の有効性が失われる又は低下するおそれがある。これは、水性製剤40の多くが血液及びヒト又は動物の他の体液のpHと類似のおよそ7のpH、又はより広く4〜8、あるいは5〜9の範囲のpHを有するため、水性流体医薬組成物では特に問題となる。製剤40のpHが高いほどSiOx皮膜の侵食又は溶解が速くなる。任意選択的に、バリア皮膜若しくは層30、又は他のpH感受性材料をpH保護皮膜又は層34で保護することにより、この問題に対処することができる。
【0196】
pH保護皮膜又は層34は任意選択的に、下地バリア皮膜又は層30を、界面活性剤が存在するものを含む4〜8のpHを有する薬剤パッケージ210の内容物から保護する。その製造時から使用時まで内腔212の内容物と接触しているプレフィルド薬剤パッケージ210では、pH保護皮膜又は層34は任意選択的に、プレフィルド薬剤パッケージ210の所期の保管寿命にわたり有効な酸素バリアを維持するのに十分、バリア皮膜又は層30の攻撃を防止又は抑制する。流体が直接接触した場合のpH保護皮膜又は層34の浸食速度、溶解速度又は浸出速度(関連する概念の異なる名称)は、5〜9のpHを有する流体が直接接触した場合のバリア皮膜又は層30の浸食速度より小さい。pH保護皮膜又は層34は、プレフィルド薬剤パッケージ210の保管寿命中、バリア皮膜又は層30がバリアとして機能するのに少なくとも十分な時間、5〜9のpHを有する製剤40をバリア皮膜又は層30から隔離するのに有効である。
【0197】
本発明者らは、pH保護皮膜又は層がかなりの有機成分を有する、ポリシロキサン前駆体から形成されるSiOxyの特定のpH保護皮膜又は層は、流体に曝露されても急速に浸食せず、実際、流体が4〜8又は5〜9の範囲内のpHを有するとき、浸食又は溶解が比較的遅いことを更に見い出した。例えば、pH8では、pH保護皮膜又は層34の溶解速度は非常に遅い。したがって、SiOxyのこれらのpH保護皮膜又は層34を、SiOxのバリア皮膜又は層30を被覆するのに使用することができ、それを薬剤パッケージ210内の製剤40から保護することによりバリア皮膜又は層30の利点を保持する。pH保護皮膜又は層34はSiOxバリア皮膜又は層30の少なくとも一部に塗布され、さもなければ内容物がSiOxのバリア皮膜又は層と接触することになる、薬剤パッケージ210内に保管される内容物からバリア皮膜又は層30を保護する。
【0198】
本開示に記載されるように、浸食を回避するための有効なpH保護皮膜又は層34をシロキサンから作製することができる。SiOxy皮膜は、環状シロキサン前駆体、例えばオクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、又は線状シロキサン前駆体、例えばヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)又はテトラメチルジシロキサン(TMDSO)から堆積させることができる。
【0199】
pH保護皮膜又は層34は任意選択的に、少なくとも6ヶ月間、製剤40により攻撃されても、バリア皮膜又は層30を少なくとも実質的に非溶解状態に保つのに効果的である。
【0200】
pH保護皮膜又は層34は任意選択的に、非被覆面及び/又は前駆体としてHMDSOを用いたバリア被覆面と比較して、pH保護皮膜又は層と接触する化合物又は製剤40(例えば、タンパク質などのポリペプチド、天然又は合成DNAなど)の成分の沈殿を防止又は低減することができる。
【0201】
図1及び図2を参照すると、pH保護皮膜又は層34は、それぞれ前記に定義される、Siwxyz(若しくはその均等のSiOxy)(式中、xは約0.5〜約2.4であり、yは約0.6〜約3である)で構成されてもよい、それを含んでもよい、又はそれから本質的になってもよい。pH保護皮膜又は層34中のSi、O及びCの原子比率は任意選択的に:
Si 100:O 50〜150:C 90〜200(即ち、x=0.5〜1.5、y=0.9〜2);
Si 100:O 70〜130:C 90〜200(即ち、x=0.7〜1.3、y=0.9〜2)
Si 100:O 80〜120:C 90〜150(即ち、x=0.8〜1.2、y=0.9〜1.5)
Si 100:O 90〜120:C 90〜140(即ち、x=0.9〜1.2、y=0.9〜1.4)、又は
Si 100:O 92〜107:C 116〜133(即ち、x=0.92〜1.07、y=1.16〜1.33)、又は
Si 100:O 80〜130:C 90〜150、
であってもよい。
【0202】
あるいは、pH保護皮膜又は層34は、50%未満の炭素及び25%超のケイ素のX線光電子分光(XPS)によって決定される、炭素、酸素及びケイ素の100%に正規化した原子濃度を有しうる。あるいは、原子濃度は、25〜45%炭素、25〜65%ケイ素、及び10〜35%酸素である。あるいは、原子濃度は、30〜40%炭素、32〜52%ケイ素、及び20〜27%酸素である。あるいは、原子濃度は、33〜37%炭素、37〜47%ケイ素、及び22〜26%酸素である。
【0203】
任意選択的に、X線光電子分光(XPS)によって決定される、炭素、酸素及びケイ素の100%に正規化したpH保護被膜又は層34における炭素の原子濃度は、有機ケイ素化合物前駆体の原子式における炭素の原子濃度を超えることができる。例えば、炭素の原子濃度が、1〜80原子百分率、あるいは10〜70原子百分率、あるいは20〜60原子百分率、あるいは30〜50原子百分率、あるいは35〜45原子百分率、あるいは37〜41原子百分率だけ増加する実施形態が企図される。
【0204】
任意選択的に、pH保護皮膜又は層34における炭素対酸素の原子比率は有機ケイ素化合物前駆体と比べて増加させることができる、及び/又は、酸素対ケイ素の原子比率は有機ケイ素化合物前駆体と比べて減少させることができる。
【0205】
任意選択的に、pH保護皮膜又は層34は、X線光電子分光(XPS)によって決定される、炭素、酸素及びケイ素の100%に正規化したケイ素の原子濃度を有することができ、これは、供給ガスの原子式におけるケイ素の原子濃度よりも小さい。例えば、ケイ素の原子濃度が1〜80原子百分率、あるいは10〜70原子百分率、あるいは20〜60原子百分率、あるいは30〜55原子百分率、あるいは40〜50原子百分率、あるいは42〜46原子百分率だけ減少する実施形態が企図される。
【0206】
別のオプションとして、有機ケイ素化合物前駆体の合計式と比べて、原子比率C:Oを増加することができる、及び/又は原子比率Si:Oを減少することができる合計式を特徴としうるpH保護皮膜又は層34がいずれの実施形態においても企図される。
【0207】
Si:O:Cの原子比率は、XPS(X線光電子分光法)により求めることができる。H原子を考慮して、pH保護皮膜又は層34は、したがって一態様においては、式Siwxyz、又はその均等のSiOxyを有してもよく、例えば、式中、wは1であり、xは約0.5〜約2.4であり、yは約0.6〜約3であり、zは約2〜約9である。
【0208】
塗布時のpH保護皮膜又は層34の厚さは任意選択的に、10〜1000nm;あるいは10nm〜900nm;あるいは10nm〜800nm;あるいは10nm〜700nm;あるいは10nm〜600nm;あるいは10nm〜500nm;あるいは10nm〜400nm;あるいは10nm〜300nm;あるいは10nm〜200nm;あるいは10nm〜100nm;あるいは10nm〜50nm;あるいは20nm〜1000nm;あるいは50nm〜1000nm;あるいは50nm〜800nm;任意選択的に50〜500nm;任意選択的に100〜200nm;あるいは100nm〜700nm;あるいは100nm〜200nm;あるいは300〜600nmである。厚さは容器全体にわたり均一である必要はなく、通常、容器の部分により好ましい値と異なる。
【0209】
pH保護皮膜又は層34は、X線反射率(XRR)によって決定されるように、1.25〜1.65g/cm3、あるいは1.35〜1.55g/cm3、あるいは1.4〜1.5g/cm3、あるいは1.4〜1.5g/cm3、あるいは1.44〜1.48g/cm3の密度を有しうる。
【0210】
pH保護皮膜又は層34は、任意選択的に、約5〜約9、任意選択的に約6〜約8、任意選択的に約6.4〜約7.8の(AFMによって測定された)RMS表面粗さ値を有しうる。AFMによって測定されたpH保護皮膜又は層34のRa表面粗さ値は、約4〜約6、任意選択的に、約4.6〜約5.8とされうる。AFMによって測定されたpH保護皮膜又は層34のRmax表面粗さ値は、約70〜約160、任意選択的に、約84〜約142、任意選択的に、約90〜約130とされうる。
【0211】
pH保護の内部表面は任意選択的に、ASTM D7334−08「前進接触角測定による皮膜、基板及び顔料の表面濡れ性に関する標準的技法(Standard Practice for Surface Wettability of Coatings, Substrates and Pigments by Advancing Contact Angle Measurement)」に準拠して、pH保護面上の水滴のゴニオメーター角度測定により測定した場合、90°〜110°、任意選択的に80°〜120°、任意選択的に70°〜130°の(蒸留水との)接触角を有し得る。
【0212】
任意選択的に、任意の実施形態のpH保護皮膜又は層34のFTIR吸光度スペクトルは、通常、約1000〜1040cm−1に位置するSi−O−Si対称伸縮ピークの最大振幅と、通常、約1060〜約1100cm−1に位置するSi−O−Si非対称伸縮ピークの最大振幅との間において0.75を超える比率を有する。あるいは、任意の実施形態においては、この比率は、少なくとも0.8、又は少なくとも0.9、又は少なくとも1.0、又は少なくとも1.1、又は少なくとも1.2とされうる。あるいは、任意の実施形態においては、この比率は、最大で1.7、又は最大で1.6、又は最大で1.5、又は最大で1.4、又は最大で1.3とされうる。図1〜5の本発明の別の実施形態として、ここで記載した任意の最小比率はここで記載した任意の最大比率と組合せることができる。
【0213】
任意選択的に、任意の実施形態においては、薬剤のない状態のpH保護皮膜又は層34は非油性の外観を有する。この外観により、場合によっては、効果的なpH保護皮膜又は層34を、場合によっては油性(すなわち、光沢のある)外観を有することが認められている滑性層と区別されることが認められている。
【0214】
任意選択的に、任意の実施形態におけるpH保護被覆又は層34について、注射用水で希釈され、濃縮硝酸でpH8に調整され、0.2wt.%ポリソルベート80界面活性剤を含有し(溶解試薬の変化を回避するために薬剤のない状態で測定した)、40℃である50mMリン酸カリウム緩衝液によるケイ素溶解速度は170ppb/日未満である。(ポリソルベート80は、一般的な製剤の原料であり、例えば、Tween(登録商標)−80としてUniqema Americas LLC,Wilmington Delawareから入手可能である。)
【0215】
任意選択的に、任意の実施形態におけるpH保護被覆又は層34について、る容器からpH8の試験組成物への溶解時のケイ素溶解速度は、160ppb/日未満、又は140ppb/日未満、又は120ppb/日未満、又は100ppb/日未満、又は90ppb/日未満、又は80ppb/日未満である。任意選択的に、任意の実施形態においては、ケイ素溶解速度は、10ppb/日超、又は20ppb/日超、又は30ppb/日超、又は40ppb/日超、又は50ppb/日超、又は60ppb/日超である。任意の実施形態におけるpH保護被覆又は層286について、ここで記載した任意の最低速度はここで記載した任意の最大速度と組合せることができる。
【0216】
任意選択的に、任意の実施形態における容器からpH8の試験組成物への溶解時のpH保護皮膜又は層34及びバリア皮膜の総ケイ素含有量は、66ppm未満、又は60ppm未満、又は50ppm未満、又は40ppm未満、又は30ppm未満、又は20ppm未満である。
【0217】
pH保護皮膜又は層34は、内腔18に面する内部表面224と、バリア皮膜又は層30の内部表面に面する外面226とを有する。任意選択的に、pH保護皮膜又は層34は、少なくともバリア皮膜又は層30と同一の広がりを有する。あるいは、製剤40が、バリア皮膜又は層30の特定の部分と接触しない、又は稀にしか接触しない場合、pH保護皮膜又は層34はバリア皮膜より範囲が狭くてもよい。あるいは、pH保護皮膜又は層34は、バリア皮膜を設けていない領域を被覆することができる場合、バリア皮膜より広範囲にわたってもよい。
【0218】
pH保護皮膜又は層34は任意選択的に、非環状シロキサン、単環式シロキサン、多環式シロキサン、ポリシルセスキオキサン、シラトラン、シルクアシラトラン、シルプロアトラン、又はこれらの前駆体のいずれか2種以上の組合せを含む前駆体供給物のプラズマ化学気相成長法(PECVD)により塗布することができる。このような用途に考えられる幾つかの特定の非限定的な前駆体としては、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、HMDSO、又はTMDSOが挙げられる。
【0219】
任意選択的に、pH保護皮膜又は層34のFTIR吸光度スペクトルは、約1000〜1040cm-1におけるSi−O−Si対称伸縮ピークの最大振幅と、約1060〜約1100cm-1におけるSi−O−Si非対称伸縮ピークの最大振幅との比率が0.75より大きい。
【0220】
内腔18に収容された、容器中の5〜9のpH、任意選択的に8のpHを有する流体組成物の存在下で、薬剤パッケージ210の計算保管寿命は、4℃の保管温度で6カ月超である。任意選択的に、8のpHを有する流体組成物が直接接触した場合のpH保護皮膜又は層34の浸食速度は、同じ条件下で同じ流体組成物が直接接触した場合のバリア皮膜又は層30の浸食速度の20%未満、任意選択的に15%未満、任意選択的に10%未満、任意選択的に7%未満、任意選択的に5%〜20%、任意選択的に5%〜15%、任意選択的に5%〜10%、任意選択的に5%〜7%である。任意選択的に、流体組成物は、44時間毎の流体組成物との接触でpH保護皮膜又は層34の厚さ1nm以下の割合でpH保護皮膜又は層34を除去する。
【0221】
任意選択的に、注射用水で希釈され、濃縮硝酸でpH8に調整され、0.2wt.%ポリソルベート80界面活性剤を含有する50mMリン酸カリウム緩衝液による容器からのpH保護皮膜又は層34及びバリア皮膜又は層30のケイ素溶解速度は、170ppb(10億分率)/日未満である。
【0222】
任意選択的に、容器から40℃の0.1N水酸化カリウム水溶液に溶解する場合の、pH保護皮膜又は層34及びバリア皮膜又は層30の総ケイ素含有量は、66ppm未満である。
【0223】
任意選択的に、薬剤パッケージ210の計算保管寿命(総Si/Si溶解速度)は2年超である。
【0224】
任意選択的に、pH保護皮膜又は層34は:
【数1】
として測定される、減衰全反射(ATR)FTIRで測定したOパラメータが0.4未満である。
【0225】
Oパラメータは、最も広くは0.4〜0.9のOパラメータ値を請求する米国特許第8,067,070号明細書において定義される。1253cm−1において0.0424の吸光度及び1000〜1100cm−1において0.08の最大吸光度を得るための波数及び吸光度スケールの補間の結果として計算されたOパラメータの0.53を示すために注釈されること以外は、例えば米国特許第8,067,070号明細書の図5に示すプロットにおいて、Oパラメータは、上記式の分子及び分母を見い出すための、FTIR振幅対波数プロットの物理的分析から測定されうる。Oパラメータは、また、デジタル波数対吸光度データから測定されうる。
【0226】
米国特許第8,067,070号明細書では、請求されるOパラメータ範囲が優れた不活性化皮膜を提供すると主張する。驚くべきことに、本発明者は、米国特許第8,067,070号明細書において請求された範囲外のOパラメータが、米国特許第8,067,070号明細書において得られるものよりも更に良好な結果を提供することができることを発見した。あるいは、図1〜5の実施形態においては、Oパラメータは、0.1〜0.39、又は0.15〜0.37、又は0.17〜0.35の値を有する。
【0227】
任意選択的に、pH保護皮膜又は層34は減衰全反射(ATR)によって測定される0.7未満のNパラメータを示し、以下のように測定される。
【数2】
【0228】
Nパラメータもまた米国特許第8,067,070号明細書に記載されており、2つの特定波数(これら波数のどちらも範囲ではない)における強度が使用されること以外はOパラメータと同様に測定される。米国特許第8,067,070号明細書は、0.7〜1.6のNパラメータを有する不活性化層を請求する。同じく、本発明者は、上述のように、0.7を下回るNパラメータを有するpH保護皮膜又は層34を用いてより良好な皮膜を作製した。あるいは、Nパラメータは、少なくとも0.3、又は0.4〜0.6、又は少なくとも0.53の値を有する。
【0229】
Siwxy又はその均等のSiOxyの保護皮膜又は層は、それがpH保護皮膜又は層34としても機能するかどうかに関わらず、疎水性層としての有用性も有し得る。適した疎水性皮膜又は層及びそれらの用途、特性、及び使用については米国特許第7,985,188号明細書に記載されている。本発明の任意の実施形態では、どちらの種類の皮膜又は層の特性も有する二重機能の保護/疎水性皮膜又は層を設けることができる。
【0230】
滑性皮膜又は層
図面を参照すると、薬剤パッケージ210の内部表面16のなどのプラスチック基板上、例えばその壁15上に、滑性皮膜又は層287を作製する方法が示されている。容器14を、PECVDを用いた上記被覆方法で被覆する場合、被覆方法は幾つかの工程を含む。開端、閉端、及び内部表面を有する容器14が提供される。少なくとも1つのガス状反応物が容器14内に導入される。プラズマは、容器14の内部表面上に反応物の反応生成物、すなわち皮膜を形成するのに有効な条件下で容器14内に形成される。
【0231】
この方法を実施するのに適した装置及び一般的な条件は、米国特許第7,985,188号明細書に記載され、これは参照により完全に本明細書に援用される。
【0232】
本方法は、有機ケイ素化合物前駆体、任意選択的に酸化ガス(例えばO2)、及び不活性ガスを含むガスを、基板表面の近傍に供給することを含む。不活性ガスは、任意選択的に、希ガス、例えばアルゴン、ヘリウム、クリプトン、キセノン、ネオン、又はこれらの不活性ガスの2つ以上の組合せである。プラズマは、プラスチック基板に隣接してプラズマ形成エネルギーを提供することによって、ガス中に生成される。その結果、滑性皮膜又は層287が、プラズマ化学気相成長法(PECVD)によって基板表面16等上に形成される。任意選択的に、プラズマ形成エネルギーは、第1の段階において第1のエネルギーレベルで第1のパルスとして印加され、その後、第2の段階において第1のエネルギーレベルより低い第2のエネルギーレベルで更に処理される。任意選択的に、第2の段階は第2のパルスとして適用される。
【0233】
例えば、滑性皮膜が調製される場合:任意選択的に1〜6の標準体積、任意選択的に2〜4の標準体積、任意選択的に6以下の標準体積、任意選択的に2.5以下の標準体積、任意選択的に1.5以下の標準体積、任意選択的に1.25以下の標準体積の前駆体;1〜100の標準体積、任意選択的に5〜100の標準体積、任意選択的に10〜70の標準体積のキャリアガス;0.1〜2の標準体積、任意選択的に0.2〜1.5の標準体積、任意選択的に0.2〜1の標準体積、任意選択的に0.5〜1.5の標準体積、任意選択的に0.8〜1.2の標準体積の酸化剤の標準体積比を有する、ガス反応物又はプロセスガスを用いることができる。
【0234】
プラズマ形成エネルギーの第1の段階
任意の実施形態において、プラズマは、マイクロ波エネルギー又はRFエネルギーで任意選択的に生成され得る。プラズマは、任意選択的に、好ましくは10kHz〜300MHz未満の周波数、より好ましくは1〜50MHz、更により好ましくは10〜15MHz、最も好ましくは13.56MHzの無線周波数で電力供給される電極を用いて、生成することができる。
【0235】
任意の実施形態において、第1のパルスエネルギーは、例えば、21〜100ワット、あるいは25〜75ワット、あるいは40〜60ワットである。
【0236】
任意の実施形態において、第1のパルスにつき、プラズマ容積に対する電極電力の比は、任意選択的に5W/ml以上、好ましくは6W/ml〜150W/ml、より好ましくは7W/ml〜100W/ml、最も好ましくは7W/ml〜20W/mlである。
【0237】
任意の実施形態において、第1のパルスは、任意選択的に、0.1〜5秒、あるいは0.5〜3秒、あるいは0.75〜1.5秒の間、印加することができる。第1の位相エネルギーレベルは、任意選択的に、少なくとも2つのパルスで印加することができる。第2のパルスは、第1のパルスよりも低いエネルギーレベルにある。更なる選択肢として、第1の位相エネルギーレベルは、任意選択的に、少なくとも3つのパルスで印加することができる。第3のパルスは、第2のパルスよりも低いエネルギーレベルであってもよい。
【0238】
プラズマ形成エネルギーの第2の段階
任意の実施形態において、第2の段階のエネルギーレベルは、任意選択的に0.1〜25ワット、あるいは1〜10ワット、あるいは2〜5ワットとすることができる。
【0239】
第1の段階と第2の段階の関係
任意の実施形態において、プラズマ形成エネルギーは、任意選択的に、第1の段階において第1のエネルギーレベルで第1のパルスとして印加され、その後、第2の段階において第2のエネルギーレベルで更に処理される。
【0240】
滑性プロファイル
滑性皮膜は、解放力(Fi)と滑動力(Fm)との間の差を減少させる一貫したプランジャ力を任意選択的に提供する。これら2つの力は、滑性皮膜の有効性のための重要な性能指標である。FiとFmに関し、低いが低すぎない値を持つことが望ましい。低すぎるFiでは、これは低すぎるレベルの抵抗(極端にはゼロである)を意味するが、早期の/意図しない流れが発生する可能性があり、これは、プレフィルドシリンジの内容物の、意図しない早期の、又は制御されない排出につながる。
【0241】
更に有利なFi及びFm値は、実施例の表に見い出すことができる。上記の範囲よりも低いFi値及びFm値を達成することができる。そのような低い値を有する皮膜も、本発明に包含されると考えられる。
【0242】
解放力及び滑動力は、特に自動インジェクタなどの自動化デバイスでは、デバイスの保管寿命全体にわたって重要である。解放力及び/又は滑動力の変化は、自動インジェクタの失火につながる。
【0243】
本発明による滑性皮膜で被覆された容器(例えば、シリンジバレル及び/又はプランジャ)は、非被覆の容器よりも低いFi及び/又はFm(例えば、Fi及び/又はFmの測定によって決定される)を意味する、より高い滑性を有する。それらはまた、外部表面において、本明細書に記載のSiOx皮膜で被覆された容器よりも高い滑性を有する。
【0244】
本発明の別の態様は、単環式シロキサン、単環式シラザン、多環式シロキサン、多環式シラザン、又はこれらの2つ以上の任意の組合せを含む供給ガスから、PECVDによって堆積された滑性層又は皮膜である。皮膜は、X線光電子分光(XPS)によって決定される、炭素、酸素及びケイ素の100%に正規化した炭素の原子濃度を有することができ、これは、供給ガスの原子式における炭素の原子濃度よりも大きい。
【0245】
任意選択的に、炭素の原子濃度が、滑性皮膜が作製されたときの有機ケイ素化合物前駆体における炭素の原子濃度に対して、1〜80原子百分率(欧州特許第2251455号明細書の実施例15のXPS条件を計算し、これに基づいた場合)、あるいは10〜70原子百分率、あるいは20〜60原子百分率、あるいは30〜50原子百分率、あるいは35〜45原子百分率、あるいは37〜41原子百分率だけ増加する。
【0246】
本発明の更なる態様は、単環式シロキサン、単環式シラザン、多環式シロキサン、多環式シラザン、又はこれらの2つ以上の任意の組合せを含む供給ガスから、PECVDによって堆積された滑性層又は皮膜である。皮膜は、X線光電子分光(XPS)によって決定される、炭素、酸素及びケイ素の100%に正規化したケイ素の原子濃度を有することができ、これは、供給ガスの原子式におけるケイ素の原子濃度よりも小さい。欧州特許第2251455号明細書の実施例15を参照。
【0247】
任意選択的に、ケイ素の原子濃度が、1〜80原子百分率(欧州特許第2251455号明細書の実施例15のXPS条件を計算し、これに基づいた場合)、あるいは10〜70原子百分率、あるいは20〜60原子百分率、あるいは30〜55原子百分率、あるいは40〜50原子百分率、あるいは42〜46原子百分率だけ減少する。
【0248】
滑性皮膜は、X線反射率(XRR)により決定した場合、1.25〜1.65g/cm3、あるいは1.35〜1.55g/cm3、あるいは1.4〜1.5g/cm3、あるいは1.4〜1.5g/cm3、あるいは1.44〜1.48g/cm3の密度を有しうる。
【0249】
他のタイプの滑性皮膜又は層287もまた、例示された実施形態で説明したプラズマ印加SiOxyz皮膜又は層の代替物として企図される。1つの例はフッ素化ポリマー、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)皮膜であり、もう1つは架橋フッ素化ポリマー、例えばパーフルオロポリエーテル(PFPE)、又はポリシロキサン皮膜、例えば、架橋シリコーンオイルである。
【0250】
フッ素化ポリマー皮膜は、例えばフッ素化前駆体を使用して、流体受容内部表面の上又はその近傍で前駆体を化学的に修飾することによって、適用することができる。
【0251】
任意選択的に、前駆体は、二量体テトラフルオロパラキシリレン;ジフルオロカルベン;モノマーテトラフルオロエチレン;式F2C=CF(CF2xF(式中、xは1〜100、任意選択的に2〜50、任意選択的に2〜20、任意選択的に2〜10である)を有するオリゴマーテトラフルオロエチレン;クロロジフルオロ酢酸ナトリウム;クロロジフルオロメタン;ブロモジフルオロメタン;ヘキサフルオロプロピレンオキシド;1H、1H、2H、2H−パーフルオロデシルアクリレート(FDA);アルカン部分が1〜6個の炭素原子を有するブロモフルオロアルカン;アルカン部分が1〜6個の炭素原子を有するヨードフルオロアルカン;又はこれらのうちの任意の2つ以上の組合せを含む。
【0252】
フッ素化ポリマーは、任意選択的に少なくとも0.01マイクロメートル〜最大100マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.05マイクロメートル〜最大90マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.1マイクロメートル〜最大80マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.1マイクロメートル〜最大70マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.1マイクロメートル〜最大60マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.1マイクロメートル〜最大50マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.1マイクロメートル〜最大40マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.1マイクロメートル〜最大30マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.1マイクロメートル〜最大20マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.1マイクロメートル〜最大15マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.1マイクロメートル〜最大12マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.1マイクロメートル〜最大10マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.1マイクロメートル〜最大8マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.1マイクロメートル〜最大6マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.1マイクロメートル〜最大4マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.1マイクロメートル〜最大2マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.1マイクロメートル〜最大1マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.1マイクロメートル〜最大0.9マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.1マイクロメートル〜最大0.8マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.1マイクロメートル〜最大0.7マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.1マイクロメートル〜最大0.6マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.1マイクロメートル〜最大0.5マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.5マイクロメートル〜最大5マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.5マイクロメートル〜最大4マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.5マイクロメートル〜最大3マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.5マイクロメートル〜最大2マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に少なくとも0.5マイクロメートル〜最大1マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に約10マイクロメートルの厚さであり;任意選択的に約2マイクロメートルの厚さである。
【0253】
フッ素化ポリマーは、任意選択的に、蒸着、例えば化学蒸着によって適用することができる。任意選択的に、フッ素化ポリマーは、二量体テトラフルオロパラキシリレンの化学蒸着によって適用することができる。好適なフッ素化ポリマーの例は、ポリテトラフルオロパラキシリレンである。任意選択的に、フッ素化ポリマーは、実質的にポリテトラフルオロパラキシリレンからなる。
【0254】
任意選択的に、任意の実施形態において、フッ素化ポリマー皮膜又は層は、ポリテトラフルオロエチレンを含む。任意選択的に、任意の実施形態において、フッ素化ポリマー皮膜又は層は、実質的にポリテトラフルオロエチレンからなる。
【0255】
例えば、任意の実施形態において、フッ素化ポリマー皮膜又は層は、流体受容内部表面上又はその近傍で前駆体を化学的に修飾することによって適用し、流体受容内部表面上にフッ素化ポリマー皮膜又は層を生成することができる。任意選択的に、任意の実施形態において、フッ素化ポリマー皮膜又は層は、化学蒸着によって適用される。一例として、任意の実施形態において、フッ素化ポリマー皮膜又は層は、加熱ワイヤ化学蒸着(HWCVD)によって適用することができる。別の例では、任意の実施形態において、フッ素化ポリマー皮膜又は層は、プラズマ化学気相成長法(PECVD)によって適用することができる。任意の実施形態において、適切な皮膜を施すための混合プロセス又は他のプロセスも企図される。
【0256】
フッ素化ポリマー皮膜を適用するのに適したHWCVDプロセスの別の例は、Hilton G.Pryce Lewis、Neeta P.Bansal、Aleksandr J.White、Erik S.Handy、HWCVD of Polymers:Commercialization and Scale−up、THIN SOLID FILMS 517(2009)3551〜3554;及び2012年1月5日公開の米国特許出願公開第2012/0003497A1号明細書に記載されており、フッ素化ポリマー皮膜及びそれらの用途の説明のためにその全体が参照により本明細書に援用される。
【0257】
任意選択的に、任意の実施形態において、前駆体は、パリレンN又はポリ(パラキシリレン);パリレンC又はポリ(2−クロロパラキシリレン);パリレンD又はポリ(2,5−ジクロロパラキシリレン);パリレンHT(登録商標)又はポリ(テトラフルオロパラキシリレン)、又はこれらの二量体、又はこれらの2つ以上の組合せを含む。パリレンは、Specialty Coating Systems, Inc.によって説明され、例えば、Lonny Wolgemuth、Challenges With Prefilled Syringes:The Parylene Solution、www.ongrugdelivery.com、pp.44−45(Frederick Furness Publishing、2012)で議論されるように、基板に適用することができる。この段落で言及された文書は、ここに参照として援用される。
【0258】
架橋ペルフルオロポリエーテル(PFPE)又はポリシロキサン皮膜287は、例えば、液体パーフルオロポリエーテル(PFPE)又はポリシロキサンを表面に塗布し、その後それをエネルギー源に曝露することにより処理することによって適用することができる。任意の追加の工程は、潤滑剤の適用前に、表面をエネルギー源、具体的には大気圧でイオン化ガスプラズマに曝すことを含む。これらの方法の結果として、潤滑剤は、表面からの移動に抵抗し、それによりブレークアウト力及び摺動摩擦力を減少させ、このように潤滑されたプレフィルドシリンジの内容物への潤滑剤の導入を減少させる。
【0259】
潤滑剤は、当該技術分野において知られている多数の方法のいずれかによって対象の表面に適用することができる。例として、適切な適用方法には、スプレー、噴霧、スピンキャスティング、塗布、浸漬、ワイピング、タンブリング、及び超音波が含まれる。潤滑剤を適用する方法は限定されない。潤滑剤は、フルオロケミカル化合物又はポリシロキサン系化合物であってもよい。
【0260】
エネルギー源は、イオン化ガスプラズマとすることができる。ガスは、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、及びクリプトンを含む希ガスであってもよい。あるいは、ガスは、例えば空気、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素及び水蒸気を含む酸化性ガスであってもよい。更に別の代替では、ガスは、例えば、窒素及び水素を含む非酸化性ガスであってもよい。これらのガスの任意の混合物も使用することができる。
【0261】
イオン化ガスプラズマが生成される正確なパラメータは重要でない。これらのパラメータは、例えば、その中でプラズマが生成されるガス、電極の幾何学的形状、電源の周波数、処理される表面の寸法を含む要因に基づいて選択される。処理時間は、約0.001秒〜約10分の範囲であり、加えて約0.001秒〜約5分の範囲であり、更に約0.01秒〜約1分の範囲である。周波数は、約60ヘルツ〜約2.6ギガヘルツの範囲であり、加えて約1キロヘルツ〜約100キロヘルツの範囲であり、更に約3キロヘルツ〜約10キロヘルツの範囲である。電力設定は、例えば、約10キロワット以下であってもよい。
【0262】
潤滑剤で被覆された表面はまた、又は代わりに、潤滑剤を処理するのに必要なエネルギーを提供する電離放射線に曝露され得る。電離放射線源は、ガンマ線又は電子線放射線であり得る。典型的には、市販のガンマ線照射処理システムは、コバルト60をガンマ線源として使用するが、セシウム137又は他のガンマ線源も使用することができる。市販の電子ビーム放射システムは、電子銃組立品を使用して電源から電子を生成し、電子を加速し、電子をビームに集束させる。この電子ビームは、次に、処理される材料に向けられる。潤滑剤で被覆された表面は、約0.1メガラド〜約20メガラドの範囲、加えて約0.5メガラド〜約15メガラドの範囲、更に約1メガラド〜約10メガラドの範囲の電離放射線量に曝露されてもよい。
【0263】
上記プロセス及び得られる滑性皮膜又は層287に関する上記の及び更なる詳細は、米国特許出願公開第2004/0231926A1号明細書(Sakhraniら)に開示され、これは、参照により本明細書に援用される。
【0264】
段階的複合層(Graded Composite Layer)
バリア皮膜又は層30及び隣接するpH保護皮膜又は層34に関してここで考えられる別の方法は、任意の2つ以上の隣接PECVD層の段階的複合体、例えば、図1に示すように、バリア皮膜又は層30及びpH保護皮膜又は層34及び/又は滑性皮膜又は層287の段階的複合体である。段階的複合物は、それらの間に中間組成物の遷移又は界面を有する別個のpH保護皮膜又は層34及び/又はバリア皮膜又は層30、又は、それらの間に中間組成物の中間にある明確な(intermediate distinct)pH保護皮膜又は層34を有する別個の保護及び/又は疎水性層及びSiOx、又は、バリア皮膜又は層30及び/又は疎水性皮膜又は層から、pH保護皮膜又は層34又は滑性皮膜又は層287に、皮膜セット285への法線方向に連続的に又は段階的に変化させる1つの皮膜又は層とされうる。
【0265】
段階的複合物の段階はどの方向にも進むことができる。例えば、バリア皮膜又は層30は、内部表面16、又はタイコート皮膜若しくは層838などの基板に直接塗布することができ、内部表面16から離れたpH保護皮膜又は層34まで累進することができる。任意選択的に、更に、疎水性皮膜又は層、又は滑性皮膜又は層287などの別の種類の皮膜又は層まで累進することができる。累進的タイコート皮膜又は層838は、ある組成物の層が別の組成物の層に比べて基板に接着するのにより好適である場合に特に企図される。この場合、より良好に接着する組成物は、例えば、基板に直接塗布することができる。段階的タイコート皮膜又は層のより遠い部分は、隣接する段階的タイコート皮膜又は層の部分に比べて基板とあまり融和しないものとなりうることが考えられる。これは、いずれの箇所においてもタイコート皮膜又は層は特性が徐々に変化しうるため、タイコート皮膜又は層のほぼ同じ深さの隣接する部分はほぼ同一の組成物を有し、実質的に異なる深さの物理的により広く分離した部分はより多種多様な特性を有しうることが理由である。また、より劣るバリアを形成する、より離れたタイコート皮膜又は層部分が、バリアによって妨げられるか遮断されることを意図した物質で汚染されることを防止するため、基板への又は基板からの物質の移動に対するより良好なバリアを形成するタイコート皮膜又は層部分を基板に直接設けることができると考えられる。
【0266】
塗布された皮膜又は層は、段階的とされる代わりに、任意選択的に、1つの層と次の層との間における組成物の大きな勾配なしで明確な遷移を有することができる。そのような皮膜又は層は、例えば、層を形成するためのガスを非プラズマ状態における定常状態流として提供し、その後、皮膜又は層を基板上に形成するために短時間のプラズマ放電によりシステムを励起することによって作製することができる。次の皮膜又は層が塗布される場合、前の皮膜又は層用のガスは除去され、次の皮膜又は層用のガスがプラズマを励起する前に定常状態で適用され、再度、基板又はその最も離れた前の皮膜又は層の表面に、存在する場合、界面におけるわずかな徐々の遷移を有して別の層を形成する。
【0267】
一実施形態は、基板上に疎水性pH保護皮膜又は層34を形成するのに有効な条件下で実施することができる。任意選択的に、pH保護皮膜又は層34の疎水性は、気体反応物中のO2対有機ケイ素化合物前駆体の比を設定することにより、及び/又はプラズマを発生させるために使用される電力を設定することにより調整することができる。任意選択的に、pH保護皮膜又は層34は、非被覆面より低いぬれ張力、任意選択的に20〜72ダイン/cm、任意選択的に30〜60ダイン/cm、任意選択的に30〜40ダイン/cm、任意選択的に34ダイン/cmのぬれ張力を有し得る。任意選択的に、pH保護皮膜又は層34は非被覆面より疎水性が高くてもよい。
【0268】
PECVD皮膜又は層を形成するためのPECVD装置
特にタイコート皮膜若しくは層838、バリア皮膜若しくは層30、又はpH保護皮膜若しくは層34を含む、本明細書に記載のPECVD皮膜又は層のいずれかを塗布するのに適したPECVD装置、システム、及び前駆体物質は、PCT出願国際公開第2014085348A2号パンフレット、又は米国特許第7,985,188号明細書に記載されており、この特許は参照により援用される。
【0269】
これらの条件の概要を、このような容器の製造に適合された容器処理システムを示す図6図8に記載する。本発明の目的に適したPECVD装置又は被覆台60は、容器支持体50と、プローブ108によって画定された内側電極と、任意選択的に略円筒状の外側電極160と、電源162とを含む。内側電極108は、PECVD処理中に容器14の内腔内に少なくとも部分的に配置され、外側電極160は、PECVD処理中に容器14の内腔の外側に配置される。容器支持体50上に配置された予めキャップが嵌められた組立品12は、任意選択的に真空チャンバとすることができるプラズマ反応チャンバを画定する容器14を有する。任意選択的に、真空源98、反応ガス源144、ガス供給(プローブ108)、又はこれらの2つ以上の組合せを供給することができる。
【0270】
本発明の任意の実施形態では、PECVD装置は、容器14上、特に内腔を画定する略円筒状の内面(例えば、4〜15mmの範囲の直径を有するが、これらの限界は重要ではない)を有するその壁上に、1つ以上の皮膜のPECVDセットを適用することが企図される。
【0271】
PECVD装置は、大気圧PECVDのために使用することができ、この場合、予めキャップが嵌められた組立品12によって画定されるプラズマ反応チャンバは真空チャンバとして機能する必要はない。
【0272】
図6図8を参照すると、容器支持体50は、ガスを、開口部82上に配置された予めキャップが嵌められた組立品12内にガスを運ぶためのガス入口ポート104を含む。ガス入口ポート104は、例えば、少なくとも1つのOリング106、又は直列の2つのOリング、又は直列の3つのOリングによって提供される摺動封止を有することができ、これは、プローブ108がガス入口ポート104を通して挿入される場合、円筒状のプローブ108に対して配置され得る。プローブ108は、その遠位端110でガス送達口まで延びるガス入口導管とすることができる。図示された実施形態の遠位端110は、1つ以上のPECVD反応物及び他の前駆体供給物又はプロセスガスを提供するために、予めキャップが嵌められた組立品12内に適切な深さで挿入され得る。プローブ108によって画定された内側電極は、内腔内に延在し、略円筒状の内面と同軸かつ(任意選択的に)半径方向に10.2〜6.9mm離間した端部又は遠位部110を含む外面を有する。内側電極108は、ガス状PECVD前駆体を内腔に導入するための少なくとも1つの出口、例えば、任意選択的に1つ以上の穿孔又は送達口110を有する、供給材料を供給するための内部通路又はガス送達口110を有する。電磁エネルギーは、略円筒状の内面上に所望の平均厚さを有するプラズマ化学気相成長法(PECVD)ガスバリア皮膜を形成するのに有効な条件下で、外側電極160に印加することができる。
【0273】
図8は、例えば、図示された全ての実施形態で使用可能な被覆台60の付加的な任意選択的な詳細を示す。被覆台60はまた、その真空ライン576内に、圧力センサ152につながるメイン真空バルブ574を有することもできる。手動バイパスバルブ578をバイパスライン580に設けることができる。ベントバルブ582は、ベント404における流れを制御する。
【0274】
PECVDガス又は前駆体源144からの流れは、主反応物供給ライン586を通る流れを調節する主反応物ガスバルブ584によって制御することができる。ガス源144の1つの成分は、前駆体を含む有機ケイ素液体リザーバ588であってもよい。リザーバ588の内容物は、任意選択的に所望の流量を提供するための適切な長さで提供され得る、有機ケイ素毛細管ライン590を通して引き出すことができる。有機ケイ素蒸気の流れは、有機ケイ素遮断バルブ592によって制御することができる。液体リザーバ588のヘッドスペース614には、大気圧(及びその中の変動)に依存しない反復可能な有機ケイ素液体供給を確立するため、圧力ライン618によって、ヘッドスペース614に接続された加圧空気などの圧力源616から、例えば、0〜15psi(0〜78cmHg)の範囲の圧力を加えることができる。リザーバ588は封止することができ、(ヘッドスペース614からの加圧ガスではない)純粋な有機ケイ素液体のみが毛細管590を通って流れることを確実にするため、毛細管接続部620はリザーバ588の底部にあってもよい。有機ケイ素液体を蒸発させて有機ケイ素蒸気を発生させることが必要又は望ましい場合、有機ケイ素液体は、任意選択的に周囲温度より高い温度で加熱することができる。この加熱を達成するために、装置は、有利には、前駆体リザーバの出口からシリンジへのガス入口に可能な限り近くへの加熱送達ラインを含むことができる。予熱は、例えばOMCTSを供給する場合に、有用であり得る。
【0275】
酸化剤ガスは、マスフローコントローラ598によって制御され、酸化剤遮断バルブ600を備えた酸化剤ガス供給ライン596を介して、酸化剤ガスタンク594から供給され得る。
【0276】
任意選択的に、任意の実施形態において、他の前駆体、酸化剤及び/又は602などの希釈ガスリザーバを設けて、必要に応じて特定の堆積プロセスのために追加の材料を供給することができる。602などの各リザーバは、適切な供給ライン604及び遮断バルブ606を有し得る。
【0277】
特に図6を参照すると、処理台60は、処理中に予めキャップが嵌められた組立品12内にプラズマを生成するための電界を提供するために高周波電源162によって供給される外側電極160を含み得る。この実施形態では、プローブ108は電気的に導電性であり、接地することができ、したがって、予めキャップが嵌められた組立品12内に対向電極を提供することができる。あるいは、任意の実施形態において、外側電極160を接地することができ、プローブ108を電源162に直接接続することができる。
【0278】
図6図8の実施形態では、外側電極160は、図6及び図7に示すように略円筒状であってもよく、略U字形の細長いチャネルであってもよい。図示された各実施形態は、予めキャップが嵌められた組立品12の周りに近接して配置された164及び166などの1つ以上の側壁と、任意選択的に上端168とを有することができる。
【0279】
任意選択的に、任意の実施形態において、外側電極(160)は、有孔材料、例えば金属ワイヤメッシュ材料で作ることができる。あるいは、外側電極(160)は、金属円筒などの連続的な材料(例えば、穿孔されたもの、織られたもの、編まれたもの、又はフェルト化されたものでないことを意味する)で作ることができる。
【0280】
任意選択的に、任意の実施形態において、内側電極(108)は内腔(18)内に軸方向に延びる。
【0281】
任意選択的に、任意の実施形態において、ワークピース(12)の表面(16)のプラズマ改質は、化学蒸着、任意選択的にプラズマ化学気相成長法(PECVD)を含む。
【0282】
前述したように、内側電極(108)は、任意選択的に、ガス状材料を内腔(18)に供給するための材料供給チューブ(104)として二重の役割を果たすことができる。任意選択的に、任意の実施形態において、材料供給チューブ(104)は、内腔(18)内に配置された壁を有する。
【0283】
任意選択的に、任意の実施形態において、壁は、ガス材料を内腔(18)に通すための穿孔を有する。
【0284】
任意選択的に、このシステムにより更なる工程を行うことができる。例えば、被覆容器を、製剤40を流体供給装置から被覆容器の内腔に入れる流体充填装置に搬送することができる。
【0285】
別の例では、充填された容器を、ストッパ、例えば、プランジャ又はクロージャをクロージャ供給装置から取り、それらを被覆容器の内腔に配置するクロージャ取り付け装置に搬送することができる。
【0286】
SiOxバリア皮膜又は層30を形成するための反応条件は、米国特許第7,985,188号明細書に記載されており、この特許は参照により援用される。
【0287】
タイコート又は層(接着皮膜又は層とも呼ぶ)は、例えば、前駆体としてテトラメチルジシロキサン(TMDSO)又はヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を流量0.5〜10sccm、好ましくは1〜5sccm;酸素流量0.25〜5sccm、好ましくは0.5〜2.5sccm;及びアルゴン流量1〜120sccm、好ましくは1mLシリンジではこの範囲の上部、5mlバイアルではこの範囲の下部で用いて、作製することができる。PECVD中の容器内の全圧は、0.01〜10トル、好ましくは0.1〜1.5トルとすることができる。印加される電力レベルは、5〜100ワット、好ましくは1mLシリンジではこの範囲の上部、5mlバイアルではこの範囲の下部とすることができる。堆積時間(即ち、RF電源の「投入」時間)は0.1〜10秒、好ましくは1〜3秒である。電源サイクルを任意選択的に、電源投入時に、2秒などの短時間で0ワットから全出力に直線的に上昇させる又は漸次増加させることができ、それによりプラズマの均一性を改善することができる。しかし、一定時間での出力の直線的上昇は任意選択的である。
【0288】
本明細書に記載のpH保護皮膜又は層34皮膜又は層は、多くの異なる方法で塗布することができる。一例では、米国特許第7,985,188号明細書に記載の低圧PECVD法を使用することができる。別の例では、低圧PECVDを使用する代わりに、大気圧PECVDを用いてpH保護皮膜又は層34を堆積させることができる。別の例では、皮膜を単に蒸発させ、保護されるSiOx層上に堆積させることができる。別の例では、皮膜を、保護されるSiOx層上にスパッタリングすることができる。更に別の例では、pH保護皮膜又は層34を、SiOx層のリンス又は洗浄に使用される液体媒体から塗布することができる。
【0289】
薬剤パッケージ
図1及び図2により最も広く示される薬剤パッケージ210は、任意の実施形態において企図される。
【0290】
図1図5、及び図10は、内腔18を囲む壁15、内腔18内の製剤40、及び容器皮膜セット285を含む、幾つかの例示的な薬剤パッケージ又は他の容器210を示す。製剤40は内腔18に収容されている。任意選択的に、図1図5の実施形態のいずれかに関して、製剤40は、5〜6、任意選択的に6〜7、任意選択的に7〜8、任意選択的に8〜9、任意選択的に6.5〜7.5、任意選択的に7.5〜8.5、任意選択的に8.5〜9のpHを有する水性流体である。任意選択的に、pH保護皮膜又は層34は、製剤40をバリア皮膜288から隔離するのに有効である。任意選択的に、5〜9のpHを有する水性製剤40が直接接触した場合のpH保護皮膜又は層34の浸食速度は、5〜9のpHを有する水性製剤40が直接接触した場合のバリア皮膜288の浸食速度より低い。任意選択的に、図1図5の実施形態のいずれかに関して、薬剤パッケージ210の保管寿命は、薬剤パッケージ210が組み立てられた後、少なくとも1年、あるいは少なくとも2年であってもよい。
【0291】
任意選択的に、図1図5の実施形態のいずれかに関して、保管寿命は、3℃で、あるいは4℃以上で、あるいは20℃以上で、あるいは23℃で、あるいは40℃で測定される。
【0292】
図9を参照すると、シリンジとして具現化される薬剤パッケージ210は任意選択的に、バレル14に挿入されるプランジャとして具現化されるストッパ36と、プランジャロッド38とを含む。プランジャ36は任意選択的に、少なくともバレル内部表面16と接触する表面に滑性皮膜又は層287を備える。プランジャ上の滑性皮膜又は層287は、保管中の「付着摩擦(sticktion)」を防止し、プランジャを前進させるときのプランジャ先端部とバレルとの摩擦を低下させ続けるのに適切な位置にあり、CVDにより塗布されると、従来のシリコンオイル(silicon oil)皮膜又は層と比較して、プランジャ先端部がバレルに及ぼす力による変位を受け難いと考えられ、独立した液滴の場合よりも均一に均一な皮膜として塗布される。
【0293】
プロトコル及び試験方法
原子組成
タイコート皮膜又は層、バリア皮膜又は層30、及びpH保護皮膜又は層34の原子組成は、ケイ素、酸素、及び炭素の測定にはX線光電子分光法(XPS)、並びに水素の測定にはラザフォード後方散乱(RBS)又は水素前方散乱(HFS)分光法のいずれかを用いてキャラクタリゼーションを行う。XPSは水素を検出しないため、水素含有量を求めるには別の分析方法を使用する。特記しない限り、以下の方法を使用する。
【0294】
XPSプロトコル
XPSデータは、比感度係数及び均質な層を前提とするモデルを用いて定量化される。分析体積は、分析面積(スポットサイズ又は開口サイズ)と情報深さとの積である。光電子はX線侵入深さ(通常、何ミクロン(マイクロメートル)もの深さ)内で発生するが、上部の3つの光電子脱出深さ内の光電子だけが検出される。脱出深さは約15〜35Åであり、これにより分析深さは約50〜100Åとなる。通常、信号の95%はこの深さから発生する。
【0295】
以下の分析パラメータを使用する。
・機器:PHI Quantum 2000
・X線源:Monochromated Alka 1486.6eV
・取り込み角 ±23°
・取り出し角 45°
・分析面積 600μm
・電荷補正 C1s 284.8eV
・イオン銃条件 Ar+、1keV、2×2mmラスター
・スパッタ速度 15.6Å/分(SiO2当量)
【0296】
値は、検出される元素を用いて100パーセントに正規化されている。検出限界は、約0.05〜1.0原子パーセントである。
【0297】
ラザフォード後方散乱分光法(RBS)
RBSスペクトルは、後方散乱角160°及び適切なグレージング角(grazing angle)で(試料を入射イオンビームに垂直な向きに配置して)取得する。入射ビームに対してランダムな配置(geometry)を呈するように、試料を小さい角度で回転又は傾斜させる。これは、フィルムと基板の両方でのチャネリングを回避する。2つの検出角度を使用することにより、薄い表面層を分析する必要がある場合、組成の測定精度を著しく改善することができる。
【0298】
薄い(<100nm)非晶質又は多結晶性フィルムが単結晶基板上に存在するとき、「イオンチャネリング」を使用して基板からの後方散信号を低減することができる。この結果、基板信号と重なる元素、通常、酸素及び炭素などの軽元素を含有する層の組成の精度が改善される。
分析パラメータ:RBS
・He++イオンビームエネルギー 2.275MeV
・法線(Normal)検出角度 160°
・グレージング検出角度 約100°
・分析モード CC RR
【0299】
理論層モデルを適用し、理論スペクトルと実験スペクトルとの十分な一致が認められるまで元素濃度と厚さを反復的に調節することにより、スペクトルをフィットさせる。
【0300】
水素前方散乱法分光法(HFS)
HFS実験では、検出器を入射He++イオンビームの前方軌道から30°で配置し、入射ビームが法線から75°で表面に当たるように試料を回転させる。この配置では、プロービングHe++イオンビームとの衝突後に試料から前方に散乱された軽原子、即ち、水素を捕集することが可能である。同様に試料から前方に散乱されるHe++イオンを除去するために、検出器上に薄い吸収箔を配置する。
【0301】
水素濃度は、異なる物質の阻止能により正規化した後、標準試料から得られる水素カウント数を比較することにより求められる。水素注入ケイ素試料及び幾何学的試料、白雲母を標準物質として使用する。水素注入ケイ素試料中の水素濃度は、その表示注入量1.6×1017±0.2×1017atoms/cm2であると測定された。白雲母(MUSC)試料は約6.5±0.5原子パーセントの水素を有することが知られている。
【0302】
試料の分析領域中の水素損失を調べる。これは、異なる取得時間のスペクトルを取得することにより行われる(最初、He++ビームに短時間曝露した後、比較的長時間曝露する)。5μC及び40μCでの電荷蓄積を使用する。40μCスペクトル中の比例信号が比較的低い場合、これは水素損失を示している。そのような場合、スペクトル中のノイズが高くなってしまうが、比較的短い曝露を分析に選択する。残留水分又は炭化水素の吸着による表面水素を明らかにするために、ケイ素対照試料を実際の試料と共に分析し、対照試料からの水素信号を実際の試料から得られる各スペクトルから引く。HFS取得中、後方散スペクトルは160°の角度の検出器(試料は前方散乱の向きに配置する)を用いて取得する。RBSスペクトルを使用して、試料に送出される総電荷を正規化する。
分析パラメータ:HFS
・He++イオンビームエネルギー 2.275MeV
・法線検出角度 160°
・グレージング検出角度 約30°
・試料法線に対するイオンビーム 75°
【0303】
総ケイ素測定のためのプロトコル
このプロトコルは、容器壁全体に存在するケイ素皮膜の総量を決定するために使用される。溶液又は成分とガラスとの間の接触を回避するよう留意し、ある供給量の0.1N水酸化カリウム(KOH)水溶液を用意する。使用される水は精製水で、18MΩ品質である。特に定めのない限りは測定にPerkin Elmer Optima Model 7300DV ICP−OES機器が使用される。
【0304】
試験される各デバイス(バイアル、シリンジ、チューブ等)並びにそのキャップ及びクリンプ(バイアルの場合)又は他のクロージャを空〜0.001gにおいて計量し、その後、KOH溶液で完全に充填し(ヘッドスペースなしで)、キャップを嵌め、クリンプし、0.001g以下において再計量した。温浸ステップにおいては、121℃のオートクレーブオーブン(液体サイクル)中に各バイアルが1時間配置される。温浸ステップはケイ素皮膜を容器壁からKOH溶液中に定量的に除去するために実施される。この温浸ステップ後、バイアルはオートクレーブオーブンから取り出され、室温まで冷却される。バイアルの内容はICPチューブに移動される。各溶液の総Si濃度がICP/OESによってICP/OESの実施手順に従い実行される。
【0305】
総Si濃度はKOH溶液中のSiの10億分率として報告される。この濃度は、温浸ステップが使用されそれが除去される前に容器壁上にあったケイ素皮膜の総量を示す。
【0306】
総Si濃度は、また、SiOxバリア皮膜又は層30が塗布され、SiOxy第2層(例えば、滑性層又はpH保護皮膜若しくは層34)がその後塗布され、SiOxy層だけの総ケイ素濃度を知りたい場合のように、容器上の全ケイ素層よりも少数の層について決定することができる。この決定は、2セットの容器を用意し、その1つのセットにはSiOx層のみを塗布し、そのもう一方のセットには同じSiOx層、続いてSiOxy層又は関心のある他の層を塗布することによって実施される。各セットの容器の総Si濃度は上に記載したのと同じ手法で決定される。2つのSi濃度間の差がSiOxy第2層の総Si濃度である。
【0307】
容器中の溶解したケイ素を測定するためのプロトコル
実施例のいくつかにおいては、例えば、試験溶液の溶解速度を評価するために、試験溶液によって容器の壁から溶解したケイ素の量が10億分率(ppb)で決定される。この溶解したケイ素の決定は、試験条件下でSiOx及び/又はSiOxy皮膜又は層が提供された容器内に試験溶液を保管し、その後、溶液のサンプルを容器から除去し、サンプルのSi濃度を試験することによって実施される。試験は、総ケイ素測定のためのプロトコルと同じ手法で実施されるが、そのプロトコルの温浸ステップの代わりにこのプロトコルに記載されるような容器内における試験溶液の保管が使用される。総Si濃度は試験溶液中のSiの10億分率として報告される。
【0308】
平均溶解速度を決定するためのプロトコル
実施例から分かるように、ケイ素溶解速度は、容器からその内容物中に浸出される総ケイ素を求めることにより測定され、pH保護皮膜若しくは層34、滑性層281、バリア皮膜若しくは層30、又は存在する他の物質に由来するケイ素を区別するものではない。
【0309】
実施例において報告される平均溶解速度は以下のように決定される。既知の総ケイ素測定値を有する一連の試験容器に、総ケイ素測定のためのプロトコルにおいてバイアルにKOH溶液を充填する手法と類似の手法で所望の試験溶液を充填する。(試験溶液は、本実施例で用いられるような生理的に不活性の試験溶液とすることも、薬剤パッケージ210を形成するために容器内に保管されることを意図した生理的に活性な製剤40とすることもできる)。試験溶液は各々の容器内にいくつかの異なる時間量の間保管され、その後、各保管時間おける試験溶液中のSi濃度を10億分率で分析する。各々の保管時間及びSi濃度は、その後、プロットされる。プロットを分析し、最急勾配を有する実質的に線形の点の列を求める。
【0310】
日数に対する溶解量(ppb Si)のプロットでは、Si層が試験溶液によって完全に温浸されているとは思われないものの、時間とともに勾配が減少する。
【0311】
以下、表10のPC194試験データにおいては、最小二乗線形回帰プログラムを使用し、各実験プロットのうち最初の5つの標本値群に合致する線形プロットを求めることにより溶解対時間のデータの線形プロットを作成する。その後、各線形プロットの勾配が決定され、試験に適用可能な平均溶解速度を示すものとして、単位時間あたりの試験溶液中に溶解したSiの10億分率で報告される。
【0312】
皮膜厚さの測定
pH保護皮膜又は層34、バリア皮膜又は層30、滑性皮膜又は層、及び/又はこれら層のいずれか2つ以上の複合体などのPECVD皮膜又は層の厚さは、例えば、透過電子顕微鏡法(TEM)により測定することができる。
【0313】
TEMは、例えば、以下のように実施することができる。2方向で断面を加工する集束イオンビーム(FIB)用に試料を準備することができる。K575X Emitechタイコート皮膜又は層システムを使用して、試料にまず炭素の薄層(厚さ50〜100nm)を被覆した後、白金のスパッタ皮膜又は層(厚さ50〜100nm)を被覆することができる、又は、試料に保護スパッタPt層を直接被覆することができる。被覆された試料をFEI FIB200 FIBシステム内に配置することができる。30kVガリウムイオンビームを対象領域上にラスター走査しながら、有機金属ガスを注入することにより追加の白金皮膜又は層をFIB堆積することができる。各試料の対象領域は、シリンジバレルの長さの半分まで下がった位置になるように選択することができる。長さ約15μm(「マイクロメートル」)、幅2μm及び深さ15μmの薄い断面を、in−situ FIBリフトアウト法を用いてダイ表面から抽出することができる。断面は、FIB堆積白金を用いて200メッシュ銅製TEMグリッドに取り付けることができる。幅約8μmの寸法の、各断面内の1つ又は2つのウィンドウはFEI FIBを、ガリウムイオンビームを用いて電子透過性になるまで薄肉化することができる。
【0314】
準備した試料の断面画像解析は透過電子顕微鏡(TEM)又は走査透過電子顕微鏡(STEM)のいずれか又は両方を利用して実施することができる。全画像化データはデジタル方式で記録することができる。STEM画像化では、薄肉化した箔を有するグリッドをSTEM専用のHitachi HD2300に移すことができる。走査透過電子画像は原子番号コントラストモード(ZC)及び透過電子モード(TE)で、適切な倍率で取得することができる。以下の機器設定を使用することができる。
機器 走査透過電子顕微鏡
製造業者/型式 Hitachi HD2300
加速電圧 200kV
対物絞り 2
コンデンサレンズ1設定 1.672
コンデンサレンズ2設定 1.747
おおよその対物レンズ設定 5.86
ZCモード投影レンズ 1.149
TEモード投影レンズ 0.7
画像取得
画素分解能 1280×960
取得時間 20秒(×4)
【0315】
TEM分析では、試料グリッドをHitachi HF2000透過電子顕微鏡に移すことができる。透過電子画像は適切な倍率で取得することができる。画像取得時に使用される関連機器設定は下記に記載するものとすることができる。
機器 透過電子顕微鏡
製造業者/型式 Hitachi HF2000
加速電圧 200kV
コンデンサレンズ1 0.78
コンデンサレンズ2 0
対物レンズ 6.34
コンデンサレンズ絞り 1
撮影(imaging)用対物レンズ絞り 3
SAD用選択領域絞り N/A
【0316】
SEMの手順
SEMサンプルの調製:各シリンジサンプルをその長さに沿って半分に切断する(内側又は内部表面を露出させるため)。サンプルを小さくするためにシリンジ(ルアー端部)の上部を切り取ってもよい。
【0317】
サンプルを導電性黒鉛接着剤によってサンプルホルダ上に取り付け、その後、Denton Desk IV SEMサンプル調製システム内に配置し、薄い(約50Å)金皮膜をシリンジの内側又は内部表面上にスパッタする。金皮膜は測定中における表面の帯電を除去するのに使用される。
【0318】
サンプルをスパッタシステムから取り出し、Jeol JSM 6390 SEM(走査型電子願徴鏡)のサンプルステージ上に取り付ける。サンプルをサンプル隔室内において少なくとも1x10-6トルまで排気する。サンプルが必要な真空レベルに達したら、スリットバルブを開き、サンプルを分析台に移動させる。
【0319】
サンプルをまずは粗い分解能で画像化し、その後、より高い倍率の画像を蓄積する。SEM画像は、例えば端から端まで(水平及び垂直)が5μmであってもよい。
【0320】
AFM(原子間力顕微鏡法)手順
AFM画像は、NanoScope III Dimension 3000マシン(Digital Instruments,Santa Barbara,California,USA)を使用して収集する。機器はNISTにトレース可能な標準に照らして校正する。エッチングされたシリコン製の走査型プローブ顕微鏡(SPM)チップを使用する。自動平坦化(auto−flattening)、平面フィッティング又は畳み込みを含む画像処理手順を用いる。1つの10μmx10μm面積を画像化する。粗さ分析を実施し、以下において表す。(1)二乗平均粗さ(Root−Mean−Square Roughness)、RMS、2 平均粗さ、Ra、及び(3)最大高さ(山対谷)、Rmax。これらは全てナノメートル(nm)で測定する。粗さ分析のため、各サンプルを10μmx10μm面積上において画像化し、続いて、10μmx10μm画像においてフィーチャを切断する3つの断面を分析者が選択する。フィーチャの垂直深さは断面ツール(cross section tool)を使用して測定する。各断面について、二乗平均粗さ(RMS)をナノメートルで報告する。
【0321】
デジタル機器のNanoscope III AFM/STMは、表面の3次元表示をデジタル形式で取得及び保存する。これら表面は種々の手法で分析されうる。
【0322】
Nanoscope IIIソフトウェアは任意のAFM又はSTM画像の粗さ分析を実行することができる。この分析の産物(product)は選択した画像を上面図で再生する単一ページである。画像は「画像統計」ボックスを含み得、阻止域(それを通過するXを有するボックス)によって除外される任意の面積を差し引いた画像全体の計算した特性を列挙する。画像の選択した部分について類似の更なる統計を計算することができ、これらはページの右下部分の「ボックス統計(Box Statistics)」内に列挙され得る。以下に続くのはこれら統計の記載及び説明である。
【0323】
画像統計:
Z範囲(Rр):画像の最高点と最低点との間の差。この値は画像の平面内の傾きに関して補正されない。したがって、平面フィッティング又はデータの平坦化により値は変化する。
【0324】
平均:画像化された面積内の全Z値の平均。この値は画像の平面内の傾きに関して補正されない。したがって、平面フィッティング又はデータの平坦化によりこの値は変化する。
【0325】
RMS(Rq):これは画像におけるZ値(又はRMS粗さ)の標準偏差である。それは以下の式により計算される。
q={Σ(Z1−Zavg)2/N}
式中、Zavgは画像内の平均Z値であり、Z1はZの現在値であり、Nは画像内における点の数である。この値は画像の平面内の傾きに関して補正されない。したがって、平面フィッティング又はデータの平坦化によりこの値は変化する。
【0326】
平均粗さ(Ra):これは中心平面に対する表面の平均値であり、以下の式を使用して計算される。
a=[1/(Lxy)]∫oyox{f(x,y)}dxdy
式中、f(x,y)は中心平面に対する表面であり、Lx及びLyは表面の寸法である。
【0327】
最大高さ(Rmax):これは平均平面に対する表面の最高点と最低点との間の高さの差である。
【0328】
表面積:(光学的計算):これは画像化された面積の3次元表面の面積である。それは画像全体において3つの隣接する標本値群によって形成された三角形の面積の合計をとることにより計算される。
【0329】
表面積差:(任意の計算)これは表面積が画像化された面積を超過する量である。それは割合として表され、以下の式により計算される。
表面積差=100[(表面積/S1-1
式中、S1は走査された面積から阻止域によって除外された任意の面積を差し引いた長さ(及び幅)である。
【0330】
中心平面:平均平面に平行する平坦平面である。中心平面の上及び下の画像面によって囲まれた体積は等しい。
【0331】
平均平面:画像データはこの平坦平面に関して最小分散を有する。それはZデータに適合する一次最小二乗による結果である。
【0332】
厚さマッピングのための分光反射プロトコル
Filmetrics Thin−Film Analyzer Model 205−0436 F40分光反射率計を使用した。シリンジは、後端が上を向くホルダ内に配置され、後端のインデックスマークは、円周を8つの等しい45度セグメントに分割する。計器カメラは皮膜又は層に焦点を合わせ、シリンジバレル、バイアル、サンプル収集チューブ、又は他の容器のマッピングされた領域の後端から、円周上で0度及び6mmで厚さ測定値を取得する。次いでシリンジを45度シフトさせ、軸方向に6mmのままにし、別の測定値を得る。このプロセスは6mmでシリンジの周囲に45度の間隔で繰り返される。シリンジは、次に、マッピングされた領域の後端から軸方向に11mmまで前進し、その周りで8回の測定が行われる。シリンジは、マップを完成させるため、軸方向に5mm刻み、円周方向に45゜ずつ順次進めた。データは、Filmetricsソフトウェアを使用してマッピングされる。マップされたデータを統計的に分析して、被覆された容器の平均厚さ及び標準偏差値を決定することができる。
【0333】
滑性試験のプロトコル
【0334】
Luer−Lok(登録商標)先端部を有する市販の(BD Hypak
【0335】
COCシリンジバレルを形成するためのプロトコルに従って製造されたC
【0336】
ベクトン・ディッキンソン社、製品番号306507(生理食塩水プレフィルドシリンジとして取得)から得た、エラストマ製先端部を有する市販のプラスチック
【0337】
生理食塩水(ベクトン・ディッキンソン社、製品番号306507のプレ
【0338】
アドバンスト・フォース・ゲージを有するDillonテストスタンド(
【0339】
シリンジホルダ及び排水冶具(Dillonテストスタンドに適合するように製造)
【0340】
この試験では、次の手順が使用される。
【0341】
治具はDillon Test Standに取り付けられている。プラットフォームプローブの動きは6インチ/分(2.5mm/秒)に調整され、上下の停止位置が設定された。停止位置は、空のシリンジ及びバレルを用いて確認した。市販の生理食塩水で充填したシリンジを標識し、プランジャを取り出し、生理食塩水をシリンジバレルの開端から排出して再使用した。余分のプランジャは、COC及びガラスバレルで使用されるのと同じ方法で得られた。
【0342】
シリンジプランジャをCOCシリンジバレルに挿入して、各プランジャの第2の水平成形点がシリンジバレルリップ(先端部から約10mm)で均一になるようにした。別のシリンジ及び針組立品を使用して、試験シリンジを、毛細管末端を介して、毛細管末端を一番上にした状態で、2〜3ミリリットルの生理食塩水で満たした。シリンジの側面をタップして、プランジャ/流体界面において、及び壁に沿って、大きな気泡を除去し、プランジャをその垂直方向に維持したまま、全ての気泡を注意深くシリンジから押し出した。
【0343】
サンプルは、OMCTS滑性層を有するCOCシリンジバレルの内部を皮膜するためのプロトコルに従ってCOCシリンジバレルを皮膜することによって作成された。本発明の技術の別の実施形態では、SiOxなどの別の薄膜皮膜上に滑性層又は皮膜を適用し、例えば、COCシリンジバレルの内部をSiOxで皮膜するためのプロトコルに従って適用される。
【0344】
Dillon Test Stand及び排水治具の代わりに、Genesis Packaging Plunger Force Tester(Model SFT−01 Syringe Force Tester、Genesis Machinery、Lionville、Pa.)も、Fi及びFmを測定するための製造業者の指示に従って使用することができる。Genesisテスターで使用されるパラメータは次の通りである:開始:10mm;速度:100mm/分;範囲:20;単位:ニュートン。
【0345】
実施例A〜C−ガラス対被覆されたCOP薬剤パッケージにおけるラニビズマブ安定性の判定
表1に示されているクロージャを備えたプレフィルドシリンジの形態の3種類の薬剤パッケージを作製し、167μLのラニビズマブ製剤を充填し、以下に記載するように安定性特性について試験した。
【0346】
【表4】
【0347】
試験に使用されたA型及びC型の薬剤パッケージ(固定針を備えたCOPシリンジ)は、以下のように作製された。図3図5に示される、1mLの公称最大充填容積を有する、硝子体内注射に適したシリンジバレルは、COP樹脂から射出成形した。固定された皮下注射針は、接着剤を使用せずに固定された、成形インサートであった。針シールド28はシリンジバレルに取り付けられ、製造プロセス全体を通して適所に保持された。シールドは、針をシールドの材料に埋め込むことによって針を保護し、かつ針を密封するように機能した。滅菌ガス、特にエチレンオキシドは、滅菌中に針シールドに穿孔して、針の外部及びシールド内に捕捉された空気を効果的に滅菌することができる。
【0348】
図6図8及び上記の付随するテキストによって示されるPECVDコーターを使用して、タイプA及びタイプCシリンジバレルの内側に接着性、バリア、及びpH保護皮膜又は層を塗布した。表2〜表4の被覆条件はタイプAのバレルに用いられ、表2〜表6の皮膜条件はタイプBのバレルに用いられた。
【0349】
【表5】
【0350】
【表6】
【0351】
【表7】
【0352】
【表8】
【0353】
【表9】
【0354】
代表的なシリンジのそれぞれの接着性、バリア、及びpH保護皮膜又は層は、以下の特性を有していた。代表的なシリンジの接着性皮膜又は層及びpH保護皮膜又は層はそれぞれ、XPS及びラザフォード後方散乱によって測定された経験的組成がSiO1.30.83.6であった。代表的なシリンジのバリア皮膜又は層は、XPSで測定した経験的組成SiO2.0を有していた。図11図13は、それぞれの接着性皮膜又は層(図11)、バリア皮膜又は層(図12)、及びpH保護皮膜又は層(図13)の代表的なFTIRプロットを示す。
【0355】
代表的な被覆タイプAシリンジバレルの長さの半分の一点においてTEM測定を行い、図14に示す画像を生成した。この測定により、その時点で、接着皮膜又は層が38nmの厚さであり、バリア皮膜又は層が55nmの厚さであり、pH保護皮膜又は層が273nmの厚さであることが示された。皮膜の厚さは、典型的であるように、測定点に依存して変化した。シリンジバレルの全皮膜セットを、Filmetrics Thin−Film Analyzer Model 205−0436F40分光反射分析を用いて測定したところ、厚さ572±89nmであり、これは1mLシリンジバレルで非常に一致している。
【0356】
タイプCシリンジバレルについては、最初の3つの層が形成され、タイプAシリンジバレルについて記載された特性を有し、その後、更なるPECVD滑性皮膜又は層が、表6の特定の皮膜条件を用いて同じ装置に適用された。得られるPECVD滑性皮膜は、滑性が必要とされないシリンジバレルの前面(分注端としても知られている)の近くでの10nm未満から、滑性がプランジャの摺動力を低減するためだけに必要とされるバレルの軸方向長さの約半分の位置での約12nmまで、ブレークアウト力とプランジャ摺動力の両方を低減するために滑性が必要とされるシリンジの背部付近での約80nmまでの、厚さプロファイルを有する。
【0357】
タイプBシリンジバレルは市販のホウケイ酸ガラスシリンジバレルであり、欧州医薬品庁(EMA)によって承認されたプレフィルドラニビズマブシリンジと同様又は同一の1mLの公称最大充填容量を有する。シリンジバレルは、シリコン水中油エマルジョンでスプレーコートされ、続いて熱固定された(いわゆる「焼付シリコーン」)ホウケイ酸ガラスからなっていた(Clunasらによる第5回World Congress on Controversies in Ophthalmologyでのポスター発表、2014年3月20〜23日;ARVO年次総会2014でのMichaudらのポスター発表)。
【0358】
3種類のシリンジバレルを以下のように充填した。10mg/mlの抗体及びヒスチジン緩衝液、トレハロース二水和物、ポリソルベート20を含有する、pH5.5の抗VEGF抗体ラニビズマブの溶液165μlを、表1に挙げたようにシリンジに充填し、次いで、異なる温度で異なる期間インキュベートした。
【0359】
その後、試料は、親水性及び疎水性種の存在につきRP−HPLCによって、抗体の酸性及び塩基性変異体の存在につき陽イオン交換クロマトグラフィーによって、及び凝集物の存在につきサイズ排除クロマトグラフィーによって分析された。
【0360】
a)RP−HPLC分析
シリンジからのタンパク質試料をZORBAX 300SB−C18、4.6×100mm、3.5μmカラムに充填して、親水性及び疎水性不純物を検出した。
【0361】
表7に従い、溶離液A(0.1%トリフルオロ酢酸水溶液)及び溶離液B(70%アセトニトリル、20%1−プロパノール及び10%水中、0.1%トリフルオロ酢酸)の勾配でタンパク質を溶出した。
【0362】
【表10】
【0363】
溶出種を検出し、T0(0日の保管期間)から示された週又は月の期間までにわたる期間における、溶出種の濃度対時間を示すグラフを表示した。溶出プロファイルは、未修飾タンパク質による主ピーク及び主ピークの前後に溶出する幾つかの更なるピークを示し、それぞれ、タンパク質の親水性及び疎水性変異体を表している。全てのピークの総面積及び単一のピークの面積を決定した。表8は、表8に示す条件下でインキュベートした表1のシリンジについて、溶出種の総ピーク面積に対する親水性種のピーク面積のパーセンテージを示す。
【0364】
【表11】
【0365】
b)陽イオン交換分析
シリンジからのタンパク質試料をDionex、BioLCProPac(登録商標)WCX−10、4.0×250mm、10μmカラムに充填して、タンパク質の酸性及び塩基性変異体を検出した。
【0366】
表9に従って、移動相A(20mMリン酸カリウム緩衝液、pH6.0)及び移動相B(250mM KCl、20mMリン酸カリウム緩衝液、pH6.0)の勾配でタンパク質を溶出した。
【0367】
【表12】
【0368】
溶出種を検出し、溶出種の濃度対時間を示すグラフ上に表示した。溶出プロファイルは、未修飾タンパク質による主ピーク及び主ピークの前後に溶出する幾つかの更なるピークを示し、それぞれ、タンパク質の酸性及び塩基性変異体を表している。全てのピークの総面積及び単一のピークの面積を決定した。表10は、表10に示す条件下でインキュベートした表1のシリンジについて、溶出種の総ピーク面積に対する酸性変異体及び塩基性変異体それぞれのピーク面積のパーセンテージを示す。
【0369】
【表13】
【0370】
c)サイズ排除クロマトグラフィー
シリンジからのタンパク質試料をYMC−Pack Diol−200、5μm、20nm(8.0×300mm)カラムに充填して、タンパク質の凝集体を検出した。
【0371】
タンパク質を、0.1Mリン酸カリウム及び0.2M塩化ナトリウムを用いて定組成溶離によって溶出した。溶出種を検出し、溶出種の濃度対時間を示すグラフ上に表示した。溶出プロファイルは、非凝集タンパク質による主ピーク、及びタンパク質の凝集形態を表すタンパク質の幾つかの更なるピークを示した。全てのピークの面積を決定した。表11は、表11に示す条件下でインキュベートした表1のシリンジについて、溶出種の総ピーク面積に対する凝集物のピーク面積のパーセンテージを示す。
【0372】
【表14】
【0373】
表8、10及び11は以下のように解釈される。いずれの場合も、同一の保管条件(単純にランダムな誤差を表すT0を除く)で値が大きいほどより好ましくなく、分解生成物の存在がより多いことを示し、同一の保管条件で値が小さいほど分解生成物がより少ないことを表し、したがって保管安定性がより良好であることを表す。分解生成物は、表8の親水性及び疎水性種、表10の塩基性種又は酸性種、並びに表11の凝集物である。
【0374】
親水性種の試験である表8は、本発明のシリンジタイプA及びCが、3ヶ月間の保管期間の全てを含めて、ほとんど全ての場合にシリンジタイプBより良好に機能することを示す。
【0375】
酸性種の試験である表10は、本発明によるシリンジタイプAが、3ヶ月間の保管期間の全てを含めて、ほとんど全ての場合にシリンジタイプBより良好に機能することを示す。シリンジタイプCは、試験の大部分及び3ヶ月間の保管試験の全てにおいて、シリンジタイプBよりも良好に機能したが、一貫してより良好でなかった。塩基性種の試験である表10は、シリンジタイプAが、試験の大部分及び3ヶ月間の保管試験の全てにおいて、シリンジタイプBよりも良好に機能したことを示す。
【0376】
凝集物の試験である表11は、本発明によるシリンジタイプA及びCがシリンジBと同等又はそれより良好に機能したことを示し、より高温かつ高湿度でのより厳しい3ヶ月の試験において、シリンジタイプBより有意に良好であった。
【0377】
全体的な結果を見ると、本発明によるシリンジタイプA及びCは、商業的に承認されたシリンジタイプBと同等又はそれより良好に機能し、これは非常に驚くべきことである。
【0378】
実施例D及びE−ガラス対被覆されたCOP薬剤パッケージにおけるラニビズマブ安定性の決定
試料の調製:
40mg/mlのVEGF阻害薬アフリベルセプト及び10mMヒスチジン緩衝液、40mM塩化ナトリウム、5%(w/v)スクロース、0.03%(w/v)ポリソルベート20を含む溶液(pH6.2)165μlを、表12に列挙するシリンジに充填した。
【0379】
上記の表12に列挙したシリンジを、5℃、25℃/60%相対湿度及び40℃/75%相対湿度で1ヶ月間及び3ヶ月間インキュベートした。
【0380】
その後、試料を、タンパク質濃度につきUV−Visによって、高分子量種(HMWS)の存在につきサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)及び非対称流フィールドフロー分画(AF4)によって、断片及びHMWSの存在につき非還元ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)によって、脱アミド化の存在につき還元ペプチドマッピングによって、分析した。等電点電気泳動(IEF)を用いて、アフリベルセプトの電荷変異体を生じる化学修飾につき試料を分析した。また、全インキュベーション期間内にpHをモニターした。
【0381】
【表15】
【0382】
全ての試料における完全な安定性プログラムの間、タンパク質濃度(280nmでの分光光度定量;n=3)及びpH(n=2)において有意な変化は検出されなかった。
【0383】
AF4:
非対称流フィールドフロー分画(AF4)は、アフリベルセプトのより高分子量の種を、それらのサイズに基づいて同定及び定量する技術である。この分離は、チャネルを横切る液体流によって誘起される流動場における移動度(拡散係数)の差によって得られる。濃度依存検出器としてMALS(多角度光散乱)及びUV(280nm)と組合せて、アフリベルセプト凝集物を特徴付け、定量することができる。
【0384】
20μgのアフリベルセプトを、W490分離スペーサと組合せた15.5cm分離チャネル15.5cm(短チャネル)(両方Wyatt Technology)及びPLGC 10kD SC−5メンブレン(Millipore)上に充填した。分離中(チャネル流:0.8mL/分)のクロスフロー及びフォーカス流を表す表13に示す溶出条件に従って、0.1Mリン酸ナトリウム(pH6.0)及び0.02%アジ化ナトリウムを使用してタンパク質を溶出させた。
【0385】
溶出種を280nmの波長で検出し、溶出種の濃度対時間を示すグラフ上に表示した。溶出プロファイルは、非凝集タンパク質による主ピーク、及びタンパク質のより高分子量の形態を表す、タンパク質の幾つかの更なるピークを示した。対応する分子量は、MALLS検出器を用いて計算した。
【0386】
【表16】
【0387】
表14は、40℃/相対湿度75%で1ヶ月間及び3ヶ月間インキュベートした表12のシリンジについて、溶出種の総ピーク面積に対する、より高分子量の種のピーク面積のパーセンテージを示す。別段の記載がない限り、各試料は2回の測定で試験した。
【0388】
他の全ての温度(5℃及び25℃/相対湿度60%)では、出発材料と比較して、保管中のより高分子量の種につき有意な増加を示さなかった。
【0389】
【表17】
【0390】
AF4−MALSによって決定されたHMWSの生成は、3ヶ月までの期間で、40℃/相対湿度75でのインキュベーション中において、2つのシリンジE(ガラスシリンジ)及びD(COP)間でかなり同等であった。より高分子量の種の同一性及び温度依存性の動態は、2つの一次包装システム間で同等であった。
【0391】
SEC:
シリンジからのタンパク質試料をTSKgel G3000SWXL(Tosoh、300×7.8mm、5μm)カラムに充填して、サイズ排除クロマトグラフィーによってアフリベルセプトの高分子量種を検出した。
【0392】
タンパク質を、0.02Mリン酸ナトリウム(pH6.0)及び0.8M塩化ナトリウムを用いて、25℃で1.0mL/分の流速で定組成溶離によって溶出した。溶出種を214nmの波長で検出し、溶出種の濃度対時間を示すグラフ上に表示した。溶出プロファイルは、非凝集タンパク質による主ピーク、及びタンパク質のより高分子量の形態を表す、タンパク質の幾つかの更なるピークを示した。全てのピークの面積を決定した。表15は、表12のシリンジについて、溶出種の総ピーク面積に対する凝集物のピーク面積のパーセンテージを示す。各試料は2回の測定で試験した。
【0393】
【表18】
【0394】
SECによって決定されたHMWSの生成は、全てのインキュベーションパラメータ(温度、保管期間)において、2つのシリンジE(ガラスシリンジ)及びD(COP)間でかなり同等であった。より高分子量の種の同一性及び温度依存性の動態は、2つの一次包装システム間で同等であった。
【0395】
非還元SDS−PAGE:
非還元SDS−PAGEにより、表12による異なるシリンジシステムにおけるアフリベルセプトの断片化及びオリゴマー化のような物理的修飾が決定された。
【0396】
SDS−PAGEは、非還元条件下、4〜12%トリス−グリシンゲル中で行った。試料を水で0.4mg/mlに予備希釈し、更にSDSサンプル緩衝液で0.2mg/mlに希釈した。サンプルを95℃で5分間インキュベートした。
実行後、ゲルを100mLの脱イオン水で3回すすぎ、室温で一晩、クーマシーで染色した。変色後、ゲルをスキャンし、QuantityOne Softwareを用いて分析した。
【0397】
実行条件は以下の通りであった:
電圧:125V
電流:35mA
電力:5W
時間:130分
【0398】
3ヶ月間の全インキュベーション期間中、全ての温度で非還元SDS−PAGEを行った。試料を5℃で保存した場合、全ての一次包装システムにおいてバンドパターンの有意な変化を生じず、全インキュベーション期間にわたり、両方のシリンジ材料で新しい不純物バンドの生成又は既存の不純物バンドの有意な増大は検出されなかった。試料を25℃/相対湿度60%で保管すると、不純物のバンドはより強くなり、40℃/相対湿度75%で3ヶ月間インキュベートした試料の非還元SDS PAGE分析の結果は図15に示す。
【0399】
40℃/相対湿度75で3ヶ月間インキュベートした全ての試料の非還元SDS−PAGE分析において、アフリベルセプトの断片及びより高分子量の種を表すバンドが見られた。3ヶ月間のインキュベーション中のフラグメント及びHMWSの生成は、表12に示す両方の一次包装システムにおける動態及び不純物の同一性においても、かなり同等であった。
【0400】
IEF:
等電点電気泳動(IEF)は、アフリベルセプトの異なるアイソフォームを、例えば脱アミド化による、等電点の相違により分離する。既製のIEFゲル(ServaのFocus Gel(pH6〜11)、No.43329.01)は、ゲル内にpH勾配を含む。適用後、タンパク質は、pH勾配中の正味の電荷により、等電点(IEP、IP)に対応するpHに達するまで移動する。
【0401】
アフリベルセプト試料を超純水で0.5mg/mlに希釈した。その10μl(5μgのアフリベルセプトに等しい)をフォーカスゲル上に適用した。各試料は2回分析した。
【0402】
実行の後、タンパク質を12%(w/v)トリクロロ酢酸及び3.5%5−スルホサリチル酸二水和物(w/v)を含有する溶液中で60分間固定し、脱イオン水で3回すすぎ、室温で一晩、クーマシーで染色した。20%エタノールで変色させた後、ゲルをBioRadのGS800濃度計でスキャンし、分析した。
【0403】
表16にフォーカス条件を示す。
【0404】
【表19】
【0405】
IEFでは、全ての温度で、1ヶ月間保管後の全ての一次包装システムにおいて、標準と比較したアフリベルセプトのバンドパターンの変化は検出されなかった。3ヶ月後、5℃及び25℃/60%でインキュベーションした試料のみが標準に適合し、出発物質に変化は見られなかった。40℃/相対湿度75%でインキュベートした試料は、試験した全ての一次包装材料において酸性種と同等のシフトを含んでおり、表12に示される異なる一次包装材料に関して差異はなかった。
【0406】
還元ペプチドマッピング:
還元ペプチドマッピングにより、脱アミド化に関するアフリベルセプトの純度を、トリプシンでの消化及び質量分析に結合した液体クロマトグラフィー(LC−MS)の後に分析した。
還元及びアルキル化の後、タンパク質をトリプシンで酵素的切断に付した。得られたペプチドをRP−UPLC−MSにより分析した。クロマトグラフィーの間、移動相を高極性(水中トリフルオロ酢酸)からより低極性(アセトニトリル中のトリフルオロ酢酸)に変化させることによってペプチドを溶離させ、質量分析(Xevo G2−XS QTOF)によって分析した。ペプチドデータを処理し、酸化及び脱アミド化を検出するため、理論的タンパク質配列及び標準試料と比較した。
【0407】
表12に示すシリンジを、5℃、25℃/相対湿度60%及び40℃/相対湿度75での3ヶ月間のインキュベーション後、単回測定で分析し、T0での充填シリンジにつき対応する値と比較した。
【0408】
試料を変性緩衝液(50mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)でアフリベルセプト濃度1.25mg/mLに希釈した。80μlの希釈試料を、10μlの0.5%RapiGest(Waters社製、50mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンに溶解)と混合し、95℃で5分間インキュベートした。4.5μlの0.02M DTT(50mMトリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタンに溶解)を還元のために添加し、37℃で30分間インキュベートした。アフリベルセプト消化のため、5μlの1mg/mLトリプシン溶液(50mM酢酸に溶解)を添加し、37℃で更に3時間インキュベートした。20μlの2%(v/v)トリフルオロ酢酸で反応を停止させ、37℃で30分間インキュベートした。ペプチドの分析のために、上清を50mMトリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタンで0.125mg/mLに希釈した。
【0409】
UPLCパラメータ:
シリンジからの消化したタンパク質試料をWatersのACQUITY UPLC−CSH C−18カラム(100mm×2.1mm、1.7μm)に充填した。以下の表に従い、0.25μgの消化した試料を、溶離液A(水)、溶離液B(アセトニトリル)、溶離剤C(0.25%トリフルオロ酢酸)及びD(n−プロパノール)の勾配を用いて65℃で溶出した。
【0410】
【表20】
【0411】
【表21】
【0412】
LockSprayプロファイル
基準化合物:ロイシンエンケファリン
MSロック質量:556.2766m/z
スキャン時間:0.5秒
間隔:30秒
【0413】
6つの脱アミド化をペプチド中に同定することができ(1:T10_AS12;1:T11;1:T10_AS12;1:T12_AS3;1:T12_AS3;1:T30_AS12;1:T30_AS?;1:T33_AS14)、これらを総脱アミド化の評価のために合計した(表6参照)。
【0414】
【表22】
【0415】
脱アミド化の増加は温度依存性であった。シリンジシステムD及びEは両方、安定性プログラムにおいて同等の脱アミド化の増加を含んでいた。
【0416】
示された結果から、本発明のプレフィルドプラスチックシリンジ(シリンジD)におけるアフリベルセプトの安定性は、試験した条件下でガラスシリンジ(シリンジE)における安定性と少なくとも同等であることが明らかである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【国際調査報告】