特表2018-537385(P2018-537385A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーニング インコーポレイテッドの特許一覧

特表2018-537385光ファイバの製造方法、及び光ファイバ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-537385(P2018-537385A)
(43)【公表日】2018年12月20日
(54)【発明の名称】光ファイバの製造方法、及び光ファイバ
(51)【国際特許分類】
   C03B 37/027 20060101AFI20181122BHJP
   C03C 13/04 20060101ALI20181122BHJP
   C03C 25/106 20180101ALI20181122BHJP
   C03C 25/26 20180101ALI20181122BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20181122BHJP
   G02B 6/44 20060101ALI20181122BHJP
【FI】
   C03B37/027 A
   C03C13/04
   C03C25/106
   C03C25/26
   G02B6/02 356A
   G02B6/02 376A
   G02B6/44 321
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2018-521985(P2018-521985)
(86)(22)【出願日】2016年10月27日
(85)【翻訳文提出日】2018年6月27日
(86)【国際出願番号】US2016059033
(87)【国際公開番号】WO2017075161
(87)【国際公開日】20170504
(31)【優先権主張番号】62/248,376
(32)【優先日】2015年10月30日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ビリングズ,ケネス デュアン
(72)【発明者】
【氏名】ブックバインダー,ダナ クレイグ
(72)【発明者】
【氏名】クルジンスキー,ポール アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ムーア,ロバート クラーク
(72)【発明者】
【氏名】タンドン,プシュカー
【テーマコード(参考)】
2H150
4G021
4G060
4G062
【Fターム(参考)】
2H150AB05
2H150AB18
2H150AB20
2H150AD03
2H150AD12
2H150AD17
2H150AD32
2H150AD36
2H150AE25
2H150AE28
2H150AH50
2H150BA32
2H150BB02
4G021HA05
4G060AA01
4G060AD22
4G060CB00
4G062AA06
4G062AA07
4G062LA03
4G062LA10
4G062LB03
4G062LB10
(57)【要約】
幾つかの実施形態によれば、光ファイバの処理方法は、(i)ファイバを、少なくとも30m/秒の延伸速度で延伸する工程、及び、(ii)該延伸されたファイバを、ファイバの温度が1500℃〜1700℃の範囲の入口温度から1200℃〜1400℃の範囲の別の温度へと低下するように、5000℃/秒未満の平均冷却速度においてガス内で冷却する工程であって、該ガスが800℃〜1500℃の温度にあり、かつ、ガスの熱伝導率κが、1atm(気圧)の絶対圧力において、800℃〜1500℃の範囲内の少なくとも1つの温度について、1.5×10−4cal/cm・s・K以下である、工程を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバの処理方法であって、
(i)前記ファイバを、少なくとも30m/秒の延伸速度で延伸する工程、及び
(ii)前記ファイバを、該ファイバの温度が、1500℃〜1700℃の範囲の入口温度から1200℃〜1400℃の範囲の別の温度へと低下するように、5000℃/秒未満の平均冷却速度においてガス内で冷却する工程であって、前記ガスが800℃〜1500℃の温度にあり、かつ、前記ガスの熱伝導率κが、1atmの絶対圧力で、800℃〜1500℃の範囲内の少なくとも1つの温度について、1.5×10−4cal/cm・s・K以下である、工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記ガスの平均熱伝導率κが、1atmの絶対圧力で、800℃〜1500℃の温度範囲内において、1.5×10−4cal/cm・s・K以下であり、
好ましくは、1atmの絶対圧力で、800℃〜1500℃の範囲内のすべての温度について、1.6×10−4cal/cm・s・K以下であるか、あるいは、800℃〜1450℃の範囲内のすべての温度について、1.5×10−4cal/cm・s・K以下である
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ガスが、(i)1000℃〜1300℃の温度、及び、(ii)0.025〜1atmの絶対圧力にあることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
(i)前記ガスが、Ar、Kr、Xe、又はそれらの混合物であり、前記延伸速度が30m/秒〜100m/秒である、あるいは、(ii)前記ガスが、Ar、Kr、Xe、又はそれらの混合物であり、前記延伸速度が40m/秒〜100m/秒であり、かつ、前記ガス内で冷却する工程が、0.025〜1atmの絶対圧力において、1000℃/秒〜4000℃/秒の平均冷却速度で行われることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
(i)前記入口温度が、前記別の温度より少なくとも100℃、好ましくは少なくとも≧200℃高い、及び/又は
(ii)前記ファイバを前記入口温度と前記別の温度との間で冷却する工程が、0.1秒を超える時間、好ましくは0.2秒を超える時間にわたって行われる、及び/又は
(iii)前記平均冷却速度が1400℃/秒〜3000℃/秒である
ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記延伸速度が40m/秒〜100m/秒であり、前記平均冷却速度が1400℃/秒〜3000℃/秒であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ファイバを冷却する工程が、前記ファイバを、800℃〜1300℃の温度を有する処理領域に通す工程を含むことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ファイバを、5000℃/秒を超える第1の冷却速度で冷却する工程をさらに含み、該第1の冷却速度で冷却する工程が、T<Tになり、第1の温度Tが1800℃〜2100℃の範囲になり、第2の温度Tが1600℃〜1800℃の範囲になり、かつ、入口温度≦Tになるように、前記ファイバ温度を第1の温度Tから第2の温度Tへと低下させることを特徴とする、請求項1〜2又は6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
光ファイバの処理方法であって、
(i)30m/秒を超える延伸速度で延伸される前記ファイバを提供する工程、
(ii)前記ファイバを、5000℃/秒を超える第1の冷却速度で冷却する工程であって、該第1の冷却速度で冷却する工程が、T<Tになり、第1の温度Tが1800℃〜2100℃の範囲になり、第2の温度Tが1600℃〜1800℃の範囲になるように、ファイバ温度を第1の温度Tから第2の温度Tへと低下させる、工程、及び
(iii)前記ファイバを、800℃〜1500℃のガス温度において、5000℃/秒未満の第2の冷却速度で、ガス内で冷却する工程であって、該第2の冷却速度で冷却する工程が、前記ファイバの温度を第3の温度Tから第4の温度Tへと低下させ、ここで、T≦Tであり、前記第3の温度Tが1500℃〜1700℃の範囲であり、前記第4の温度Tが1200℃〜1400℃の範囲であり、かつ、前記ガスの熱伝導率κが、1atmの絶対圧力において、800℃〜1500℃のすべての温度について、1.6×10−4cal/cm・s・K以下である、工程
を含む、方法。
【請求項10】
光ファイバの製造方法であって、
(i)ファイバプリフォームを、その軟化点を上回る温度へと加熱する工程、
(ii)前記加熱されたプリフォームから前記光ファイバを少なくとも30m/秒の延伸速度で延伸する工程、及び
(iii)前記光ファイバを2つの処理ステージに通す工程であって、
a.前記ファイバが、1800℃〜2100℃の温度で第1の処理ステージに入り、前記第1の処理ステージにおいて5000℃/秒を超える平均冷却速度を被り、
b.前記光ファイバが、1600℃〜1800℃の温度で前記第1の処理ステージから出て、
c.前記光ファイバが、1500℃〜1700℃の温度で前記第1の処理ステージの下流の第2の処理ステージに入り、
i.800℃〜1500℃の温度と、
ii.1atmの絶対圧力において、800℃〜1500℃の範囲内のすべての温度について、1.6×10−4cal/cm・s・K以下の熱伝導率κと
を有するガス又はガス混合物内で、前記第2の処理ステージにおいて5000℃/秒未満の平均冷却速度を被り、かつ、
d.前記光ファイバが、1200℃〜1400℃の温度で前記第2の処理ステージから出る
ように、2つの処理ステージに通す工程
を含む、方法。
【請求項11】
請求項1又は8〜10のいずれか一項に記載の方法によって製造された光ファイバにおいて、
(i)GeO、Cl、KOのうちの少なくとも1つを含む、シリカをベースとしたガラスコアであって、0.1%〜0.45%のシリカに対する相対屈折率差を有し、0MPa〜15MPaの値の引張応力である残留応力を有する、ガラスコア、及び
(ii)前記コアを取り囲む、シリカをベースとしたガラスクラッド、並びに前記クラッドを取り囲むポリマーコーティング
を備えていることを特徴とする、光ファイバ。
【請求項12】
前記ファイバが、8.2μm〜9.5μmの1310nmにおけるモードフィールド径、1260nm未満のケーブルカットオフ、及び0.18dB/km未満の1550nmにおける減衰を有することを特徴とする、請求項11に記載の光ファイバ。
【請求項13】
GeO、Cl、KOのうちの少なくとも1つを含み、かつ、シリカをベースとしたクラッドで取り囲まれたガラスコアを備えた光ファイバであって、該光ファイバが、1450℃未満の仮想温度を有し、かつ、0.18dB/km未満の1550nmにおける減衰を有し、前記コアが、0.1%〜0.45%のシリカに対する相対屈折率差を有し、前記ファイバが、前記クラッドを取り囲む少なくとも1つのポリマーコーティングを有する、光ファイバ。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、その全体がここに参照することによって本願に援用される、2015年10月30日出願の米国仮特許出願第62/248,376号の米国法典第35編特許法119条に基づく優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、概して、光ファイバの製造方法、及び光ファイバに関する。
【背景技術】
【0003】
光ファイバを生産するための製造方法は、典型的には、延伸加熱炉内で加熱されたガラスプリフォームから光ファイバを延伸する工程、該延伸されたファイバを冷却する工程、及びファイバが十分に冷却された後に該ファイバを被覆する工程を含む。ファイバ製造プロセスで使用されるプロセスパラメータは、延伸されたファイバの結果的に得られる性能特性に大きな影響を与える可能性がある。ガラス光ファイバの製造において、光学プリフォームは、ガラスの軟化点をはるかに上回る温度へと加熱され、次に、大きい延伸比(draw down ratios)で延伸されて、直径約125μmのガラス光ファイバを形成する。高い延伸温度、大きい延伸比、及び速い延伸速度は、ファイバ直径の変動、ガラスマトリクス内の欠陥、レイリー散乱の増大、及び減衰の増加を生じうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
よって、ファイバの直径変動を最小限に抑え、ファイバの減衰を改善しつつ、高い延伸速度をもたらす光ファイバの製造方法を開発することは重要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、光ファイバの製造方法を提供する。
【0006】
幾つかの実施形態によれば、光ファイバを処理する方法は、
(i)ファイバを、少なくとも30m/秒の延伸速度で延伸する工程、及び
(ii)該延伸されたファイバを、該ファイバの温度が1500℃〜1700℃の範囲の入口温度から1200℃〜1400℃の範囲の別の温度へと低下するように、5000℃/秒未満の平均冷却速度においてガス内で冷却する工程であって、ガスが800℃〜1500℃の温度にあり、ガスの熱伝導率κが、1atm(気圧)の絶対圧力において、800℃〜1500℃の範囲内の少なくとも1つの温度について、1.5×10−4cal/cm・s・K以下である、工程を含む。本明細書に開示される少なくとも幾つかの実施形態によれば、ガスは、800℃〜1500℃の温度範囲内において、1.5×10−4cal/cm・s・K以下の平均熱伝導率κ(すなわち、κ平均=κ最大+κ最小)/2)を有する。本明細書に開示される少なくとも幾つかの実施形態によれば、ガスは、800℃〜1500℃の温度範囲内のすべての温度について、1atmの絶対圧力において、1.6×10−4cal/cm・s・K以下(例えば、1.5×10−4cal/cm・s・K以下)の熱伝導率κを有する。幾つかの実施形態によれば、ガスの熱伝導率κは、1atmの絶対圧力で、800℃〜1450℃の範囲内のすべての温度について、1.5×10−4cal/cm・s・K以下である。幾つかの例示的な実施形態によれば、平均冷却速度は、1000℃/秒〜4000℃/秒である。幾つかの例示的な実施形態によれば、平均冷却速度は、1400℃/秒〜3000℃/秒である。幾つかの例示的な実施形態によれば、ガスは、(i)1000℃〜1300℃の温度、及び(ii)0.025atm〜1atmの絶対圧力にある。本明細書に記載される例示的な実施形態によれば、ファイバの延伸速度は30m/秒〜100m/秒である。
【0007】
幾つかの実施形態によれば、光ファイバの処理方法は、
(i)ファイバを、少なくとも30m/秒の延伸速度で延伸する工程、及び
(ii)該延伸されたファイバを、該ファイバの温度が1500℃〜1700℃の範囲の入口温度から1200℃〜1400℃の範囲の別の温度へと低下するように、5000℃/秒未満(例えば、>6000℃/秒、又はさらには>6500℃/秒)の平均冷却速度において、ガス内で冷却する工程であって、ガスが800℃〜1500℃の温度にあり、ガスの熱伝導率κが、1atmの絶対圧力において、800℃〜1500℃の範囲内のすべての温度について、1.6×10−4cal/cm・s・K以下である、工程
を含む。幾つかの例示的な実施形態によれば、平均冷却速度は、1000℃/秒〜4000℃/秒である。幾つかの例示的な実施形態によれば、平均冷却速度は、1400℃/秒〜3000℃/秒である。
【0008】
少なくとも幾つかの実施形態によれば、本方法は、延伸されたファイバを、5000℃/秒を超える第1の冷却速度で冷却する工程であって、T<Tになり、第1の温度Tが1800℃〜2100℃の範囲になり、第2の温度Tが1600℃〜1800℃の範囲になるように、ファイバ温度を第1の温度Tから第2の温度Tへと低下させる、工程と、次いで、それに続いて、延伸されたファイバを、上記ガス内において、5000℃/秒未満の平均冷却速度で冷却する工程であって、上記入口温度がT以下である、工程とをさらに含む。
【0009】
幾つかの実施形態によれば、ガスは、Ar、Kr、Xe、及び/又はRn、若しくはそれらの混合物であり、延伸速度は30m/秒〜100m/秒(例えば、30〜80m/秒、又は40〜80m/秒、又はそれらの間)である。幾つかの実施形態によれば、ガス内での冷却は、ファイバの温度を少なくとも100℃低下させる(すなわち、少なくとも幾つかの実施形態によれば、入口温度から上記別の温度を減算すると≧100℃である)。幾つかの実施形態によれば、ガス内において冷却する工程は、ファイバの温度を少なくとも200℃低下させる。
【0010】
本明細書に記載される少なくとも幾つかの例示的な実施形態によれば、ガスの熱伝導率κは、800℃〜1500℃の範囲内のすべての温度において、1.6×10−4cal/cm・s・K以下であり、延伸されたファイバの冷却の間のガスの温度は、800℃〜1500℃(例えば、800℃〜1300℃、又は1000℃〜1250℃、又は1100℃〜1250℃)である。幾つかの実施形態では、延伸されたファイバの冷却の間のガス又はガス混合物の温度は、1000℃〜1300℃である。幾つかの実施形態では、ガスの平均熱伝導率は、800℃〜1450℃の範囲内のすべての温度において、1.5×10−4cal/cm・s・K以下であり、延伸されたファイバの冷却の間のガスの温度は、800℃〜1500℃(例えば、800℃〜1300℃、又は1000℃〜1250℃、又は1100℃〜1250℃)である。
【0011】
本明細書に記載される少なくとも幾つかの例示的な実施形態によれば、
光ファイバの処理方法は、
(i)第1の温度Tの温度を有するファイバを提供する工程、
(ii)該ファイバを、5000℃/秒を超える第1の冷却速度で冷却する工程であって、T<Tになり、第1の温度Tが1800℃〜2100℃の範囲になり、第2の温度Tが1600℃〜1800℃の範囲になるように、第1の温度Tから第2の温度Tへとファイバ温度を低下させる、工程、及び
(iii)前記ファイバを、800℃〜1500℃のガス温度において、5000℃/秒未満の第2の冷却速度において、ガス内で冷却する工程であって、該ファイバの温度を第3の温度Tから第4の温度Tへと低下させ、ここで、T≦Tであり、第3の温度Tが1500℃〜1700℃の範囲であり、第4の温度Tが1200℃〜1400℃の範囲であり、かつ、ガスの熱伝導率κが、800℃〜1500℃の範囲内のすべての温度について、1.6×10−4cal/cm・s・K以下である、工程
を含む。
【0012】
幾つかの実施形態によれば、光ファイバは、ガラスコア及びガラスクラッドを備えている。少なくとも幾つかの実施形態によれば、コアは、Ge、Cl、KOのうちの少なくとも1つをドープされた、シリカをベースとしたコアである。少なくとも幾つかの実施形態によれば、ファイバは、8.2μm〜9.5μmの1310nmにおけるモードフィールド径MFD、1260nm未満のケーブルカットオフ、及び0.18dB/km未満の1550nmにおける減衰を有する。少なくとも幾つかの実施形態によれば、コアは、シリカに対してアップドープされ、かつ、0.1%〜0.45%(例えば、0.25%〜0.45%)のシリカに対する相対屈折率差を有する。少なくとも幾つかの実施形態によれば、ファイバコアは、約10MPa〜約40MPaの値の引張応力である残留応力を有する。少なくとも幾つかの実施形態によれば、光ファイバは、シリカをベースとしたクラッドで取り囲まれた、GeOを含むガラスコアを備えており、該ファイバは、1450℃未満の仮想温度、及び0.18dB/km未満の1550nmにおける減衰を有する。幾つかの実施形態によれば、ファイバの仮想温度は、1300℃未満、又はさらには1200℃未満である。
【0013】
少なくとも幾つかの実施形態によれば、本方法は、ファイバを少なくとも30m/秒の速度で延伸する工程、及び、該ファイバを5000℃/秒未満の平均冷却速度で冷却する工程を含んでよく、ここで、該冷却する工程は、例えば、0.25atm、0.5atm、又は0.75atmの絶対圧力など、0.025atm〜1atmの絶対圧力の範囲内にある圧力において、1.6×10−4cal/cm・s・K未満の800℃〜1500℃の全温度範囲にわたる熱伝導率を有するガス内において、1500℃〜1700℃の範囲の入口温度から1200℃〜1400℃の範囲の別の温度へとファイバの温度を低下させる。少なくとも幾つかの実施形態によれば、本方法は、ファイバを少なくとも30m/秒の速度で延伸する工程、及び、ファイバを5000℃/秒未満の平均冷却速度で冷却する工程を含んでよく、ここで、該冷却は、1atmの絶対圧力で、1.5×10−4cal/cm・s・K未満の800℃〜1450℃の全温度範囲にわたる熱伝導率を有するガス内において、1500℃〜1700℃の範囲の入口温度から1200℃〜1400℃の範囲の別の温度へとファイバの温度を低下させる。
【0014】
少なくとも幾つかの実施形態によれば、本方法は、ファイバを少なくとも30m/秒の速度で延伸する工程、及び、該ファイバを5000℃/秒未満の平均冷却速度で冷却する工程を含んでよく、ここで、該冷却する工程は、1.5×10−4cal/cm・s・K未満の800℃〜1500℃の温度範囲にわたる平均熱伝導率を有するガス内において、1500℃〜1700℃の範囲の入口温度から1200℃〜1400℃の範囲の別の温度へとファイバの温度を低下させる。幾つかの実施形態では、ガスは、0.25×10−4cal/cm・s・K〜1.5×10−4cal/cm・s・Kの800℃〜1500℃の温度範囲にわたる平均熱伝導率を有する。
【0015】
少なくとも幾つかの実施形態によれば、本方法は、ファイバを少なくとも30m/秒の速度で延伸する工程、及び、該ファイバを5000℃/秒未満の平均冷却速度で冷却する工程を含んでよく、ここで、該冷却する工程は、1atmの絶対圧力で測定した場合に、1.6×10−4cal/cm・s・K未満の800℃〜1500℃の温度範囲にわたる最大熱伝導率を有するガス内において、1500℃〜1700℃の範囲の入口温度から1200℃〜1400℃の範囲の別の温度へとファイバの温度を低下させる。幾つかの実施形態では、ガスは、1atmの絶対圧力で測定した場合に、0.25×10−4cal/cm・s・K〜1.6×10−4cal/cm・s・K(例えば、0.25×10−4cal/cm・s・K〜1.55×10−4cal/cm・s・K、又は0.5×10−4cal/cm・s・K〜1.55×10−4cal/cm・s・K)の、800℃〜1500℃の温度範囲にわたる最大熱伝導率を有する。
【0016】
幾つかの実施形態によれば、ガスは、Ar、Kr、Xe、及び/又はRn、若しくはそれらの混合物である。幾つかの実施形態によれば、ファイバ延伸速度は、30m/秒〜100m/秒(例えば、30m/秒〜80m/秒)である。幾つかの実施形態によれば、ガス内でのファイバの冷却は、ファイバの温度を少なくとも100℃低下させる。少なくとも幾つかの実施形態によれば、ガス内でのファイバの冷却は、ファイバの温度を少なくとも200℃低下させる。幾つかの実施形態によれば、ファイバの冷却の間のガスの温度は、800℃〜1500℃(例えば、800℃〜1300℃、又は1000℃〜1250℃、又は1100℃〜1250℃)である。幾つかの実施形態では、ファイバの冷却の間のガス又はガス混合物の温度は、1000℃〜1300℃である。
【0017】
幾つかの実施形態によれば、光ファイバの処理方法は、
(i)ファイバを少なくとも30m/秒の速度で延伸する工程、及び、(ii)該延伸されたファイバを、0.5×10−4cal/cm・s・K〜1.5×10−4cal/cm・s・Kである、800℃〜1500℃の温度範囲にわたる平均熱伝導率を有するガス又はガス混合物内において、ファイバの温度が1500℃〜1700℃の範囲の温度から1200℃〜1400℃の範囲の温度へと低下するように、5000℃/秒未満の平均冷却速度で冷却する工程を含む。幾つかの実施形態によれば、ガスは、Ar、Kr、Xe、及び/又はRn、若しくはそれらの混合物であり、延伸速度は30m/秒〜100m/秒(例えば、40m/秒〜100m/秒、又は40m/秒〜80m/秒)である。幾つかの実施形態によれば、上記ガス内での冷却は、例えば1400℃/秒〜3000℃/秒、又は1450℃/秒〜2500℃/秒、又は1450℃/秒〜2300℃/秒、又は1625℃/秒〜2500℃/秒など、1200℃/秒〜5000℃/秒、又は1300℃/秒〜5000℃/秒の冷却速度で行われる。
【0018】
幾つかの実施形態によれば、ファイバの冷却は、0.08秒〜1秒にわたって行われる。幾つかの他の実施形態によれば、ファイバの冷却は、0.1秒を超える時間にわたって行われる。幾つかの他の実施形態によれば、ファイバの冷却は、0.2秒を超える時間にわたって行われる。幾つかの他の実施形態によれば、ファイバの冷却は、0.3秒を超える時間にわたって行われる。
【0019】
本方法は、ファイバプリフォームを、その軟化点を上回る温度へと加熱する工程、該加熱されたプリフォームからファイバを延伸する工程、及びファイバを2つの処理ステージに通す工程を含みうる。ファイバは、1800℃〜2100℃の温度で第1の処理ステージに入ってよく、該第1の処理ステージにおいて5000℃/秒を超える平均冷却速度を被り、1600℃〜1800℃の温度で第1の処理ステージから出てよく、第2の処理ステージにおいて5000℃/秒未満の平均冷却速度を被りうる。ファイバは、1500℃〜1700℃の温度で第1の処理ステージの下流の第2の処理ステージに入ってよく、1200℃〜1400℃の温度で第2の処理ステージから出てよい。本明細書に記載される例示的な実施形態によれば、第2のステージにおける平均ガス温度は、800℃〜1500℃(例えば、800℃〜1300℃、又は1000℃〜1250℃)である。本明細書に記載される他の例示的な実施形態によれば、第2のステージにおける平均ガス温度は1000℃〜1300℃である。
【0020】
幾つかの実施形態によれば、光ファイバの製造方法は、
(i)ファイバプリフォームを、その軟化点を上回る温度へと加熱する工程、
(ii)該加熱されたプリフォームから光ファイバを、少なくとも30m/秒の延伸速度で延伸する工程、及び
(iii)光ファイバを少なくとも2つの処理ステージに通す工程であって、
(a)該ファイバが、1800℃〜2100℃の温度で第1の処理ステージに入り、該第1の処理ステージにおいて5000℃/秒を超える平均冷却速度を被り、
(b)該光ファイバが、1600℃〜1800℃の温度で第1の処理ステージから出て、
(c)該光ファイバが、1500℃〜1700℃の温度で、第1の処理ステージの下流の第2の処理ステージに入り、
a.800℃〜1500℃の温度、及び
b.1atmの絶対圧力において、800℃〜1500℃の範囲内のすべての温度について、1.6×10−4cal/cm・s・K以下である熱伝導率κ
を有するガス又はガス混合物内で、第2の処理ステージにおいて5000℃/秒未満の平均冷却速度を被り、かつ
(d)該光ファイバが、1200℃〜1400℃の温度で、第2の処理ステージから出る
ように、少なくとも2つの処理ステージに通す工程
を含む。
【0021】
本方法はまた、流体軸受装置又はエアターン装置を用いてファイバを方向転換する工程も含みうる。方向変換は、略垂直方向から略水平方向へとファイバを方向変換することができる。別の実施形態では、方向変換は、垂直方向から反対の垂直方向へとファイバを方向変換することができる。方向変換は、ファイバが第2の処理ステージから出た後、又はファイバの表面温度が1000℃未満へと冷却された後に、行われうる。
【0022】
本開示の実施形態は、光ファイバを延伸する工程、及び該光ファイバを本明細書に開示されるように冷却する工程をさらに含み、ここで、光ファイバは、
(i)GeO、Cl、Kのうちの少なくとも1つを含む、シリカをベースとしたガラスコアであって、0.1%〜0.45%のシリカに対する相対屈折率差を有し、0MPa〜15MPaの値の引張応力である残留応力を有する、コア、
(ii)該コアを取り囲む、シリカをベースとしたガラスクラッド、及び
(iii)該クラッドを取り囲む、ポリマーコーティング
を備えている、シリカをベースとしたガラスファイバである。
【0023】
幾つかの実施形態によれば、コアは、0.1MPa〜15MPa(例えば、1〜10MPa、又は2〜10MPa)の値の残留引張応力を有する少なくとも1つの領域を有する。幾つかの実施形態によれば、クラッドは、幾つかの実施形態では、例えば、10MPa〜40MPa、5〜20MPa、10〜20MPa、又は8〜20MPaなど、5MPa〜40MPaの値の引張応力である、残留応力を有する少なくとも1つの領域を有する。
【0024】
幾つかの実施形態によれば、コアは、0.1%〜0.45%、例えば0.25%〜0.45%のシリカに対する相対屈折率差を有する。
【0025】
さらなる特徴及び利点は、以下の詳細な説明に記載され、一部には、その説明から当業者に容易に明らかとなり、あるいは、本明細書及びその特許請求の範囲、並びに添付の図面に記載される実施形態を実践することによって認識されよう。
【0026】
前述の概要及び後述する詳細な説明は、いずれも単なる例示であって、特許請求の範囲の本質及び特徴を理解するための概観又は枠組みを提供することが意図されていることが理解されるべきである。
【0027】
添付の図面は、さらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に取り込まれてその一部を構成する。図面は、本開示の選択された態様の例証であり、その説明と併せて、本開示が採用する方法、生成物、及び組成物の原理及び動作を説明する役割を担う。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】ガラス加熱源及び2つの離間された処理ステージを有する、光ファイバ生産システムを示す図
図2】ガラス加熱源及び2つの隣接した処理ステージを有する、光ファイバ生産システムを示す図
図3】ガラス加熱源、2つの処理ステージ、幾つかのファイバ方向変換装置、コーティング装置、及び延伸機構を有する、光ファイバ生産システムを示す図
図4】温度に対する幾つかのガスの動粘度を示すグラフ
図5】大気圧における温度(℃)に対する幾つかのガスのガス熱伝導率κ(cal/cm・s・K)を示すグラフ
図6】1100℃及び42m/秒のファイバ延伸速度におけるさまざまなガスについての計算した対流熱伝達率h(cal/cm・s・K)を示すグラフ
図7A】延伸加熱炉の出口開口からの時間の関数としての計算したファイバ冷却プロファイルを示すグラフ
図7B】時間の関数(秒)としての例示的なファイバ温度プロファイル(℃)
図7C図7Bに対応し、かつ、時間の関数(秒)としての例示的なファイバの冷却速度を示すグラフ
図7D】延伸加熱炉のファイバの出口から開始する時間の関数としての幾つかの例示的な温度プロファイルを示すグラフ
図7E図7Dのファイバに対応し、かつ、延伸加熱炉の出口開口からの時間の関数としての例示的なファイバ冷却速度(dT/dt)を示すグラフ
図8】異なるガス流(slpm)についての第2の処理ステージから出た後のファイバ温度を測定したグラフ。これらは、第2の処理ステージ内における42m/秒の延伸速度及び1100℃の平均動作温度についてのデータである。
図9】1310nmで測定するファイバ減衰における、第2の処理ステージでのアルゴンの使用の影響を示すグラフ
図10A】本明細書に記載される幾つかの例示的なファイバの実施形態についての概略的な断面図
図10B】本明細書に記載される例示的な光ファイバの実施形態についての幾つかの屈折率プロファイルを概略的に示すグラフ
図10C図10Bと同じ
図10D図10Bと同じ
図10E図10Bと同じ
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示はまた、光ファイバの製造及び処理方法についても記載する。ガスの熱伝導率κの単位は、本明細書に記載される特定の温度で提供されており、cal/cm・秒・ケルビン(cal/cm・s・Kとも称される)単位のものであることに留意されたい。
【0030】
ファイバが1700℃〜1200℃の温度範囲にある場合のファイバのより遅い冷却は、ガラス転移領域におけるガラス緩和の増大、ファイバの平均仮想温度の低下、及びファイバ減衰の低下を生じる。しかしながら、ファイバの延伸速度が>30m/秒に増加するときに同じ長さLのファイバ冷却ゾーンが与えられる場合(例えば、所与の長さの第2の加熱炉113′について)、この温度範囲内のファイバの冷却速度は大幅に増加し、それによって仮想温度が上昇し、ファイバ減衰が増加してしまう。これに対抗する1つの方法は、冷却装置の動作温度を上昇させることによってファイバの冷却速度を低下させることであるが、しかしながら、この選択肢は必ずしも実現可能とは限らない。我々は、ファイバを約1700℃から約1200〜1400℃に冷却する間のファイバの冷却の遅延(ファイバの冷却速度の低下)が、後述するように、冷却の間にファイバを取り囲むガス又はガス混合物を適切に選択することによって達成することができることを見出したが、これは、有利には、ファイバ減衰の改善をもたらすことができる。本明細書に開示される例示的な光ファイバの実施形態は、有利には、例えば、1550nmの波長において、0.178dB/km〜0.184dB/km、又は0.179dB/km〜0.181dB/kmなど、1550nmにおける<0.184dB/kmの低減衰の光信号を有する。幾つかの実施形態では、光ファイバは、0.18dB/km未満(例えば、0.15dB/km〜0.18dB/km、又は0.15dB/km〜0.17dB/km)の1550nmにおける減衰を有する。
【0031】
幾つかの実施形態によれば、ファイバは、1310nmにおいて0.324dB/km未満の減衰、又はさらには1310nmにおいて0.31dB/km未満の減衰を有する。例えば、幾つかの実施形態については、減衰は、例えば、1310nmにおいて0.28dB/km〜0.324dB/km、又は1310nmにおいて0.29dB/km〜0.31dB/km、又は1310nmにおいて0.30dB/km〜0.324dB/km、又は1310nmにおいて0.30dB/km〜0.32dB/km、又は1310nmにおいて0.31dB/km〜0.324dB/kmである。
【0032】
本方法は、加熱されたガラス源からファイバを延伸する工程、及び、ファイバを、加熱されたガラス源の下流に位置付けられた2つの処理領域(例えば、2つの処理ステージ)における異なる速度での冷却に供する工程を含みうる。加熱されたガラス源は、延伸加熱炉内で加熱された光ファイバプリフォームでありうる。
【0033】
本明細書に記載される幾つかの実施形態によれば、ファイバは、1800℃〜2100℃の範囲の温度Tで第1の処理領域(速い冷却領域)に入ってよく、例えば1675℃〜1800℃の範囲など、1600℃〜1800℃の範囲のファイバ温度Tで第1の処理領域から出ることができる。第1の処理領域におけるファイバの滞留時間(第1の処理領域の長さL1を、ファイバの延伸速度で除算した商として決定される)は、例えば、少なくとも0.005秒、又は0.005秒〜0.05秒でありうる。本明細書で用いられる場合、特に明記しない限り、冷却速度とは、平均冷却速度のことを指し、これは、処理領域の入口及び出口におけるファイバ温度間の差異を、処理領域におけるファイバの滞留時間で除算した商として定められる。第1の処理領域の平均冷却速度は、例えば5000℃/秒〜20000℃/秒など、5000℃/秒を超え、幾つかの実施形態では、5000℃/秒〜15000℃/秒である。例えば、幾つかの実施形態では、第1の処理領域の平均冷却速度は、12000℃/秒〜18000℃/秒、又は14000℃/秒〜16000℃/秒(例えば、約15000℃/秒)である。幾つかの例示的な実施形態によれば、第1の処理領域におけるファイバを取り囲むガス又はガス混合物は、空気又はHeである。第1の処理領域におけるファイバを取り囲むガス又はガス混合物の平均温度(第1の処理領域における動作可能温度)は、例えば、175℃〜500℃、又は200℃〜500℃、又は例えば約300℃である。
【0034】
第1の処理領域から出た後、ファイバは、1500℃〜1700℃の範囲の温度Tで第2の処理領域に入り、1100℃〜1400℃の範囲、又は幾つかの実施形態では1200℃〜1400℃、例えば1200℃〜1300℃の範囲のファイバ温度Tで第2の処理領域から出る。すなわち、第2の処理領域の入り口におけるファイバの温度は、1500℃〜1700℃の範囲であってよく、第2の処理領域の出口におけるファイバの温度は、1400℃以下であり、又は1300℃未満であってよく、又は約1200℃〜1300℃であってもよい。
【0035】
第2の処理領域におけるファイバの滞留時間(第2の処理領域の長さL2をファイバ延伸速度で除算した商として決定される)は、少なくとも0.08秒、又は少なくとも0.1秒、又は少なくとも0.2秒、又はさらには少なくとも0.3秒であってよく、例えば、幾つかの実施形態では、0.08秒〜1秒でありうる。幾つかの実施形態によれば、ファイバ延伸速度は、30m/秒〜80m/秒の範囲である。
【0036】
第2の処理領域(遅い冷却領域)におけるファイバの平均冷却速度は、5000℃/秒未満、又は4000℃/秒未満、又は3000℃/秒未満、又は2000℃/秒未満、又は1000℃/秒〜4000℃/秒、又は1000℃/秒〜3000℃/秒である。例えば、幾つかの実施形態によれば、第2の処理領域におけるファイバの平均冷却速度は、1000℃/秒〜4000℃/秒、又は1000℃/秒〜3000℃/秒、又は1400℃/秒〜3000℃/秒、又は1000℃/秒〜2000℃/秒、若しくは、例えば、1300℃/秒〜1700℃/秒、又は1400℃/秒〜1600℃/秒である。第2の処理領域における冷却の間にファイバを取り囲むガスの平均温度(本明細書では第2の処理領域の動作可能な温度範囲、又は動作温度範囲とも称される)は、例えば900℃〜1300℃、又は1000℃〜1250℃など、800℃〜1500℃でありうる。例えば、第2の処理領域は、加熱された加熱炉(本明細書では第2の加熱炉とも称される)の内部、又は徐冷装置(SCD)であってよく、ファイバを取り囲むガスの平均温度は、加熱炉又はSCD内のガスの平均温度、又は第2の加熱炉又はSCDの動作温度である。幾つかの実施形態によれば、第2の処理領域における冷却の間にファイバを取り囲むガスの平均温度は、800℃〜1300℃であり、好ましくは1000℃〜1300℃であり、幾つかの実施形態については、好ましくは1100℃〜1250℃である。例示的な実施形態によれば、ファイバの延伸速度(本明細書では延伸速度とも称される)は、≧30m/秒であり、例えば30〜100m/秒、40〜80m/秒、又は50〜80m/秒である。
【0037】
第1及び第2の処理領域は、ファイバをガス雰囲気内で冷却する工程を含みうる。例えば、第2の領域のガス雰囲気は、第2の処理領域の動作可能温度範囲にわたり、1.5×10−4cal/cm・s・°K未満(すなわち、κ平均<1.5×10−4cal/cm・秒・ケルビン)である平均熱伝導率κ平均を有するガス又はガス混合物を含んでもよく、あるいは、実質的にそれらで構成されていてもよい。この温度範囲におけるガスの伝導率は、1気圧の絶対圧力において測定することができる(第2の処理領域の動作可能温度は、第2の処理領域で用いられるガス又はガス混合物の温度に対応する)。
【0038】
第2の処理領域から出る際に、ファイバは、第1又は第2の処理領域の平均冷却速度とは異なる平均冷却速度において、さらに冷却されてもよい。第2の処理領域から出る際のファイバの冷却は、第2の処理領域の出口におけるファイバの温度から、1200℃未満の温度、好ましくは、1000℃未満の温度、又は800℃未満の温度、又は600℃未満の温度、又は400℃未満の温度、又は温度200℃未満の温度、又は50℃以下の温度へとファイバの温度をさらに低下させることができる。
【0039】
本方法を実施するためのシステムが、図1及び2に概略的に示されている。生産システム104は、加熱炉112を備えたガラス加熱源と、光ファイバプリフォーム110とを含む。プリフォーム110は、加熱炉112内で、その軟化点を上回る温度へと加熱され、延伸されて、ファイバ105を形成し、これが、上述の入口ファイバ温度Tで第1の処理領域111(幾つかの実施形態では、例えば加熱炉である、処理ステージ111′に対応する)へと方向づけられ、上述の速度で冷却されて、上述の第1の処理領域111から出口温度Tを有するファイバ107を生成する。ファイバ107は、上述の入口ファイバ温度Tで第2の処理領域113(例えば管状加熱炉である、処理ステージ113′に対応する)に入り、上述の速度で冷却されて、上述の第2の処理領域113から出口温度Tを有するファイバ109を生成する。互いに対しての、及び加熱炉112(プリフォーム加熱用の加熱炉)に対する処理領域111及び113の位置、並びに、該処理領域111及び113のサイズ又は通路の長さ(L1、L2)は、上述の入口温度、出口温度、滞留時間、及び/又は冷却速度に適合するように調整することができる。図2は、図1の変形であり、処理領域111及び113が、介在するスペースなしに互いに直接隣接している。
【0040】
ファイバは、第1の経路に沿って第1の処理領域内を通過してよく、第1の処理領域におけるファイバの冷却は、第1の経路に沿って生じうる。第1の経路は直線的でありうる。ファイバは、第2の経路に沿って第2の処理領域内を通過してよく、第2の処理領域でのファイバの冷却は、第2の経路に沿って生じうる。第2の経路は直線的でありうる。第2の経路は、第1の経路と同一直線上になくてもよい。
【0041】
ファイバは、任意選択的に、第2の処理領域から出た後に、15000℃/秒を超える速度で冷却されうる。ファイバは、第1の経路に沿って第1の処理領域及び第2の処理領域内を通過してよく、第1及び第2の処理領域におけるファイバの冷却は、第1の経路に沿って生じうる。ファイバは、第2の処理領域から出た後に1100℃未満に冷却された後、第2の経路に沿って通過しうる。第2の経路は直線でありうる。第2の経路は、第1の経路と同一直線上でありうる。あるいは、第2の経路は、第1の経路と同一直線上になくてもよい。
【0042】
本開示に従う、処理領域111又は113に対応する処理ステージ111′又は113′は、例えば、予め選択されたファイバ延伸速度についての本開示に従う冷却速度及び滞留時間をもたらすように、温度、サイズ、並びに環境が調整された加熱炉又は加熱ゾーンでありうる。しかしながら、第1の処理領域111は、加熱炉を利用しなくてもよく、ファイバは、第2の処理領域113(例えば、加熱された加熱炉、若しくは、800℃〜1500℃の選択された温度範囲内の加熱されたガス又はガス混合物を含むことができる別の筐体)に入る前に、空気中で冷却されてもよい。光ファイバは、固体表面に接触することなく処理領域111、113内を通過することができ、かつ、放射又は導電プロセスを介して冷却することができる。ガスの特定は、ファイバからの熱伝達の速度又は効率に影響を与えるように、熱伝導率に基づいて選択することができる。第1の処理領域111で用いられるガスは、例えば、本明細書に記載される目的を達成するように、第2の処理領域113で用いられるガスよりも高い熱伝導率を有するように選択される。第1の処理領域111で用いられるガス又はガス混合物は、例えば、第1の処理領域111の動作可能温度範囲にわたり、空気の平均熱伝導率以上、又は空気の平均熱伝導率未満の平均熱伝導率を有しうる。上述のように、第2の処理領域113で用いられるガス又はガス混合物は、好ましくは、第2の処理領域113の動作可能温度範囲にわたり、空気の平均熱伝導率未満の平均熱伝導率κ平均を有する。
【0043】
より速いファイバ延伸速度(>30mm/秒)では、ファイバが処理ステージ113′(より遅い冷却ステージ)において約1700℃から約1200℃へと冷却される場合、冷却速度の低下は、結果的に、より低いファイバ仮想温度及びより低いファイバ減衰をもたらす。我々は、ファイバ冷却の必要とされる遅延、及び/又は、ファイバ減衰の改善が、本明細書に記載されるように、第2の処理領域(処理ステージ113′)で用いられるガス又はガス混合物環境を適切に選択することによって達成することができることを見出した。
【0044】
>30m/秒(例えば、30〜80m/秒)の延伸速度における、約1700〜約1200℃の光ファイバの冷却速度(dT/dL)は、熱伝達の強制対流機構によって支配される。数学的には、これは、下記等式(1)で表され、3つのパラメータ:(i)対流熱伝達率h、(ii)ファイバの熱含量、及び(iii)ファイバとその取り囲むガス環境との温度差、の積である。
【0045】
【数1】
【0046】
式中、Tはファイバ温度であり、Tはガス温度であり、Lは距離であり、hは対流熱伝達率であり、Vはファイバの延伸速度であり、pはファイバ密度であり、Cpfはファイバ熱容量であり、rはファイバ半径(すなわち、コーティングされていないファイバの外径)である。
【0047】
ファイバ冷却速度は、前段落で述べたこれら個々のパラメータ(i)〜(iii)のいずれか1つを低下させることによって、低下させることができる。しかしながら、ファイバの熱含量の低減は、延伸速度の低下を必要とし、生産コストを増加させる。ファイバの延伸速度は、低下させるよりも、増加させることが望ましい。温度差の縮小は、処理ステージ113′(例えば、加熱炉)の温度設定点を、加熱炉に熱を供給するために用いられる抵抗素子の寿命が損なわれる限界値を上回る温度へと増加させることを必要としうる。この寿命の短縮により、装置の運転及び保守費用が跳ね上がる。よって、適切な熱伝達率を有するガス又はガス混合物を選択することは、第2の処理領域113におけるファイバ冷却速度を低下させるための最良の実践的な方法である。
【0048】
一定の延伸条件では、動粘度のガス特性及び、さらに重要なことには熱伝導率によって、熱伝達率が決定する。第2の処理領域113については、これらの特性は、室温ではなく、第2の処理領域113で用いられる動作温度で、若しくは、ファイバ温度Tと第2の処理領域113の温度Tとの間の平均境界層温度で、評価されるべきである。一例として、ファイバ温度Tが1200℃であり(第2の処理領域からの出口において)、第2の処理領域113の平均動作温度が1100℃であるならば、平均境界層温度は約1150℃である。したがって、この例示的な実施形態では、ガス特性に関連する温度は約1150℃である。ファイバ温度はファイバの表面の温度であり、例えば赤外線パイロメータなどの市販の装置で測定することができることに留意されたい。
【0049】
図4に示されるように、ヘリウムを除き、異なるガスの動粘度には、第2の処理領域113で用いられる温度範囲にわたり(又は平均境界層温度において)、ほんのわずかな差異しかない。すなわち、第2の処理領域113で用いられる温度範囲にわたり、ガス(Heを除く)の動粘度は空気のものに近く(図4)、よって、第2の処理領域113における遅いファイバ冷却のためのガスの選択についての主要な考慮事項ではない。我々は、第2の処理領域113で用いられる動作温度にわたる(若しくは、ファイバ温度Tと第2の処理領域113の温度Tとの間の平均境界層温度における)熱伝導率が、He以外のガスについての熱伝達率の主要な決定要因であることを見出した。
【0050】
図5は、ある範囲の温度にわたるガス熱伝導率κを示している。遅いファイバの冷却にとって最良のガスは、800℃〜1500℃の範囲内の第2の処理領域113の動作温度範囲において(例えば、一又は複数の温度について)、最低の熱伝導率を有する。好ましくは、幾つかの実施形態では、ガラスを十分に速い速度で緩和することができると同時に、実質的に大量の緩和を生じさせることができるようにして、結果的により低いファイバ減衰を生じるように、第2の処理領域113における一又は複数の動作温度は、例えば1000℃〜1300℃など、800℃〜1300℃内に位置づけられる。好ましくは、動作温度は1000℃〜1250℃である。我々は、1500℃より高い温度では、ファイバの平均仮想ガラス温度が高くなり、結果的に、より高いファイバ減衰を生じることを見出した。第2の処理領域の動作温度は、結果的に得られるファイバが、非常に低い減衰(例えば、1550nmで≦0.18dB/km、及び1310nmで≦0.32dB/kmなど)を有することから、1300℃以下であることが好ましい。幾つかの実施形態では、結果的に生じるファイバ減衰は、1310nmで≦0.31dB/km、又は1310nmで≦0.30dB/km、又はさらには、1310nmで≦0.29dB/km(例えば、1310nmにおいて0.28〜0.29dB/km)である。第2の処理領域113で用いられる例示的なガスは、アルゴン、クリプトン、キセノン、及びラドンなど、800℃〜1500℃の温度において1.5×10−4cal/cm・s・K未満の平均熱伝導率(1気圧の絶対圧力において)を有する単原子「貴ガス」である。しかしながら、第2の処理領域における圧力は、例えば、0.25〜1atmの絶対圧力でありうる。第2の処理ゾーンでの使用の候補となりうる別のガスは、SFである。熱伝導率は、ガス分子の断面直径及び分子質量の平方根に反比例し、また、ガスの比熱に比例する。さらには、所与の温度において、低熱伝導率のガスは、小さい比熱、大きい断面直径、及び大きい質量を有する。単原子分子であることから、貴ガスは、すべての温度にわたって一定の比熱値を有する。対照的に、空気、二酸化炭素、四塩化炭素、クロロベンゼン、及び六フッ化硫黄などの多原子ガスは、温度とともに増加する比熱を有する。比熱は、多原子ガスがエネルギーを分子内の原子間振動として貯蔵することから、増加する。この比熱の増加は、多原子の熱伝導率が、単原子ガスよりも温度とともに増加する理由を説明する。図5に示されるように、単原子ガスは、第2の処理領域113で用いられる動作温度において、多原子ガスをはるかに下回る熱伝導率を有する。
【0051】
第2の処理領域113内におけるガス熱伝導率の低下の影響が図6〜8に示されている。図6は、第2の処理領域113の42m/秒の延伸速度及び1100℃の温度における、熱伝達率の約40%の低下を示している。図8は、ファイバが空気の代わりにAr中で冷却されると、第2の処理領域113からの出口ファイバ温度において、約100℃の増加が測定されたことを示している。すなわち、ファイバは、第2の処理領域において空気の代わりにArを使用すると、より遅く冷却された。
【0052】
第2の処理領域113において、より遅い冷却速度を適用する有益性が図9に示されている。図9は、1310nmの減衰分布を示す実験データを示しており、対応する数値データは、空気の代わりにAr中で冷却した場合に、50m/秒の延伸速度で延伸されたファイバについて、約0.0016dB/kmの平均減衰低下を示した(これらのファイバ実施形態については、第2の処理ステージ内の動作温度は1165℃であり、空気冷却されたファイバについての1310nmにおけるメジアン減衰は約0.32192dB/kmであり、一方、Ar中で冷却されたファイバについては、メジアン減衰は約0.32037dB/kmであった)。図9に示されるように、1.6×10−4cal/cm・s・K以下のガス熱伝導率κ平均でのこの遅い冷却は、低損失ファイバの製造のための統計的分布に大きな利益をもたらしうる。加えて、このより遅い冷却能力を利用して、延伸速度を効果的に増加させ、さらには製造コストを削減することができる。
【0053】
本明細書に開示される実施形態によれば、第2の処理領域における冷却の間にファイバを取り囲むガス又はガス混合物は、800℃〜1500℃の温度範囲内の温度について、1.5×10−4cal/cm・s・K以下の平均熱伝導率κ平均を有する。本明細書で論じられるように、所与の温度範囲にわたる平均熱伝導率κ平均は、0.5×(所与の温度範囲にわたる最大熱伝導率−同一の所与の温度範囲にわたる最小熱伝導率)として定義される。幾つかの実施形態では、第2の処理領域における冷却の間にファイバを取り囲むガス又はガス混合物は、800℃〜1500℃の温度範囲内において、1.3×10−4cal/cm・s・K以下、又は1.2×10−4cal/cm・s・K以下、又は1.0×10−4cal/cm・s・K以下、又は0.9×10−4cal/cm・s・K以下の平均熱伝導率κ平均を有する。幾つかの実施形態では、第2の処理領域における冷却の間にファイバを取り囲むガス又はガス混合物は、800℃〜1500℃の温度範囲内の温度において、0.3×10−4cal/cm・s・K〜1.4×10−4cal/cm・s・Kの平均熱伝導率κ平均を有する。
【0054】
幾つかの実施形態によれば、第2の処理領域における冷却の間にファイバを取り囲むガス又はガス混合物は、第2の処理領域の動作可能な温度範囲において、例えば、2.5×10−5cal/cm・s・K≦κ≦1.6×10−4cal/cm・s・K、又は0.5×10−4cal/cm・s・K≦κ≦1.6×10−4cal/cm・s・K、又は0.6×10−4cal/cm・s・K≦κ≦1.6×10−4cal/cm・s・Kなど、1.6×10−4cal/cm・s・K以下の最大熱伝導率κを有することが好ましい。第2の処理領域で用いられるガス又はガス混合物は、好ましくは、例えば1300℃未満の温度(例えば、900℃〜1300℃、又は1000℃〜1300℃、又は1100℃〜1275℃)など、800℃〜1500℃の温度であるべきである。これは、より低いファイバ減衰を結果的に生じる、高い延伸速度(>30m/秒、例えば>40m/秒)でのガラスの急速な緩和の利点を提供する。幾つかの実施形態によれば、第2の処理領域における冷却の間にファイバを取り囲むガス又はガス混合物は、第2の処理領域の動作可能な温度範囲において、例えば、
2.5×10−5cal/cm・s・K≦κ平均≦1.5×10−4cal/cm・s・K、又は
0.5×10−4cal/cm・s・K≦κ平均≦1.5×10−4cal/cm・s・K、又は
0.6×10−4cal/cm・s・K≦κ平均≦1.5×10−4cal/cm・s・K
など、1.6×10−4cal/cm・s・K以下の平均熱伝導率(κ平均=第2の処理領域の動作可能な温度範囲における(最大熱伝導率+最小熱伝導率)/2)を有することが好ましい。
【0055】
例示的な実施形態の幾つかによれば、800℃〜1500℃の範囲内のすべての温度について、第2の処理領域における冷却の間にファイバを取り囲むガス又はガス混合物の1atmの絶対圧力における熱伝導率κは、0.25×10−4cal/cm・s・K≦κa≦1.6×10−4cal/cm・s・K、又は≦κa≦1.6×10−4cal/cm・s・Kである。
【0056】
幾つかの実施形態によれば、第2の処理領域における冷却の間にファイバを取り囲むガス又はガス混合物は、800℃〜1500℃、又は900℃〜1300℃、又は1000℃〜1250℃、例えば約1200℃である、平均境界層温度において、1.5×10−4cal/cm・s・K以下の熱伝導率κを有する。よって、幾つかの例示的な実施形態によれば、平均境界層温度が約1200℃の場合、第2の処理領域における冷却の間にファイバを取り囲むガス又はガス混合物は、1200℃において、0.5×10−4cal/cm・s・K〜約1.5×10−4cal/cm・s・Kの熱伝導率κを有する。同様に、例示的な実施形態において、平均境界層温度が約1100℃の場合、第2の処理領域における冷却の間にファイバを取り囲むガス又はガス混合物は、好ましくは、1100℃において、0.5×10−4cal/cm・s・K〜約1.5×10−4cal/cm・s・Kの熱伝導率κを有する。別の例として、平均境界層温度が約1000℃の実施形態では、第2の処理領域における冷却の間にファイバを取り囲むガス又はガス混合物は、好ましくは、1000℃において、約0.5×10−4cal/cm・s・K〜約1.5×10−4cal/cm・s・Kの熱伝導率κを有する。
【0057】
例示的な実施形態の幾つかによれば(平均境界層温度が800〜1500℃の範囲にある場合)、第2の処理領域113における冷却の間にファイバを取り囲むガス又はガス混合物の熱伝導率κは、例えば、0.5×10−4cal/cm・s・K〜約1.5×10−4cal/cm・s・Kなど、約0.5×10−4cal/cm・s・K〜約1.6×10−4cal/cm・s・Kである(すなわち、これらの実施形態によれば、ガス又はガス混合物は、800℃〜1500℃の温度範囲内の平均境界層温度において、0.5×10−4cal/cm・s・K≦κ≦1.6×10−4cal/cm・s・K、又は0.5×10−4cal/cm・s・K≦κ≦1.5×10−4cal/cm・s・Kの熱伝導率値κを有する)。
【0058】
少なくとも幾つかの実施形態によれば、本方法は、ファイバを、少なくとも30m/秒(例えば40〜80m/秒)の速度で延伸する工程、及び該ファイバを、(第2の処理領域において)5000℃/秒未満の平均冷却速度で冷却する工程を含み、該冷却する工程は、1.5×10−4cal/cm・s・K未満の800℃〜1500℃の温度範囲にわたる平均熱伝導率を有するガス内において、1500℃〜1700℃の範囲の入口温度から1200℃〜1400℃の範囲の別の温度へとファイバの温度を低下させる。幾つかの実施形態では、ガスは、0.25×10−4cal/cm・s・K〜1.5×10−4cal/cm・s・Kの800℃〜1500℃の温度範囲にわたる平均熱伝導率を有する。幾つかの実施形態によれば、ガスは、Ar、Kr、Xe、及び/又はRn、若しくはそれらの混合物である。幾つかの実施形態によれば、ファイバ延伸速度は30m/秒〜80m/秒である。幾つかの実施形態によれば、ガス内でのファイバの冷却は、ファイバの温度を少なくとも100℃低下させる。少なくとも幾つかの実施形態によれば、ガス内でのファイバの冷却は、ファイバの温度を少なくとも200℃低下させる。幾つかの実施形態によれば、ファイバの冷却の間のガスの温度は、800℃〜1500℃(例えば、800℃〜1300℃、又は900℃〜1250℃、又は1000℃〜1250℃、又は1100℃〜1250℃)である。幾つかの実施形態では、第2の処理領域におけるファイバの冷却の間のガス又はガス混合物の温度は、1000℃〜1300℃である。
【0059】
ファイバを5000℃/秒未満の平均冷却速度で冷却する工程は、第2の冷却領域で行われることが好ましい。これらの実施形態では、第2の冷却領域に入る際のファイバの温度(入口温度T)は、1500℃〜1700℃の範囲であり、第2の冷却領域における冷却は、ファイバの温度を入口温度Tから別の温度Tへと低下させ、ここで、1.5×10−4cal/cm・s・K未満の800℃〜1500℃の温度範囲にわたる平均熱伝導率κ平均を有するガス内において、1200℃≦T≦1400℃である。幾つかの実施形態では、ガスは、0.25×10−4cal/cm・s・K〜1.5×10−4cal/cm・s・Kの800℃〜1500℃の温度範囲にわたる平均熱伝導率κ平均を有し、該ガスの温度は800℃〜1500℃である。
【0060】
図5は、大気圧における幾つかのガスについての温度におけるガス熱伝導率(k)の依存性を示している。
【0061】
図6は、1100℃(第2の処理領域113の例示的な動作温度)及び42m/秒のファイバ延伸速度における、さまざまなガスについての計算された対流熱伝達率hを示している。値hは、第2の処理領域113に入る入口からの距離(すなわち、図6の実施形態では、例えば加熱炉2と称される、処理ステージ113′(本明細書では徐冷装置(SCD)とも称される)に入る入口からの第2の処理領域内の距離(cm))に対してプロットされている。よって、第2の処理領域113は、例えば、ニクロムをベースとした加熱要素を備えた加熱炉(1275℃以下の好ましい動作温度範囲を有する)、若しくは、二ケイ化モリブデン加熱要素を有する(かつ、例えば>1300℃の温度で動作する)保持オーブン又は加熱炉でありうる、処理ステージ113′によってもたらされる。
【0062】
この例示的な実施形態では、第2の処理領域113の長さL2は800cmである。アルゴンについてのh値は、空気及び二酸化炭素のものよりも著しく低いことに留意されたい。第2の処理領域113の例示的な平均動作温度(一又は複数のガス温度)は、900℃〜1500℃(例えば、1000℃〜1400℃、又は1100℃〜1300℃、又は1100℃〜1250℃)でありうることに留意されたい。少なくとも幾つかの実施形態によれば、第2の処理領域113の動作温度における第2の処理領域113の中心(すなわち長さの中間)におけるガス又はガス混合物の熱伝達率hは、例えば6.0×10−3cal/cm・s・K未満、又は5.0×10−3cal/cm・s・K未満など、6.5×10−3cal/cm・s・K未満である。少なくとも幾つかの実施形態によれば、第2の処理領域113の動作温度における第2の処理領域113の中心(すなわち、長さの中間)におけるガス又はガス混合物の熱伝達率hは、3.0×10−3cal/cm・s・K〜6.5×10−3cal/cm・s・K、又は3.0×10−3cal/cm・s・K〜6.0×10−3cal/cm・s・K、又は3.0×10−3cal/cm・s・K〜5.0×10−3cal/cm・s・Kである。
【0063】
図7Aは、延伸加熱炉の出口開口からの第2の処理領域113内(処理ステージ113′内)における計算されたファイバ冷却プロファイル(時間に対するファイバ温度)を示している。グラフの第1の部分(時間0〜約0.03秒)は、第1の処理領域におけるファイバ温度に対応し、グラフの第2の部分(約0.03秒〜約0.23秒の時間)は、第2の処理領域におけるファイバ温度に対応し、グラフの第3のセクション(時間>0.23秒)は、第2の処理領域を出た後のファイバ温度に対応することに留意されたい。この実施形態では、第2の処理領域113内の動作温度は1100℃であり、ファイバ延伸速度は42m/秒であった。計算では、空気(層流)と比較して、アルゴン雰囲気内では、より遅い冷却速度が予測されることに留意されたい。アルゴン(Ar)が用いられる場合、図7Aに示されるように、この実施形態では、遅い冷却領域(すなわち、第2の処理領域)における平均冷却速度は、およそ1800℃/秒である。幾つかの実施形態によれば、第2の処理領域113におけるファイバの平均冷却速度は、例えば、1450℃/秒〜2300℃/秒、又は1625℃/秒〜2500℃/秒など、1450℃/秒〜2500℃/秒でありうる。例えば、図7Aに示されるものと同様にArで冷却する実施形態(Arが第2の処理領域113で用いられる場合)では、42m/秒、及び第2の処理領域113内への1670℃の初期(入口)温度、及び第2の処理領域113内の0.1095秒の滞留時間で延伸されるファイバについて、冷却の平均速度(ΔT/Δt)は、約1474℃/秒である。これは、第2の処理領域113がArを使用する場合と、代わりに空気を使用する比較例との同様の条件下での計算されたファイバの冷却速度を比較する、以下の表1に要約されている。
【0064】
【表1】
【0065】
表1のファイバの延伸速度は42m/秒である。
【0066】
図7Aはまた、800℃〜1500℃の温度において、空気の熱伝導率の0.8倍及び0.4倍の第2の処理領域におけるガスの熱伝導率κを有するファイバについての計算された冷却プロファイルも示している。図7から分かるように、空気の対応する熱伝導率に対して20%及び60%のガスの熱伝導率の低下によって、ガラス緩和が生じる、対象とするファイバ温度範囲において、冷却速度の大幅な低下が生じる。
【0067】
図7Bは、実施形態(d)についての加熱炉出口からの経過した時間の関数としてのファイバ温度プロファイルを示している:延伸速度50m/秒、第2の処理領域の温度=1200℃、第2の処理領域の位置が延伸加熱炉の126cm下流(加熱炉の出口開口から)にある。光ファイバは、約1680℃の温度で第2の処理領域113に入り、1380℃の温度で第2の処理領域から出るように計算される。これらの条件に付いての対応する冷却速度が図7Cに示されている。第2の処理領域における冷却速度は、1000℃/秒〜4000℃/秒である。
【0068】
図7Dは、図7Bに似ているが、異なる延伸速度(35m/秒〜80m/秒)で延伸された幾つかの例示的なファイバについての時間(加熱炉出口から経過した)の関数としての温度プロファイルを示している。第2の処理領域の入口もまた、延伸加熱炉の出口開口の126cm下流にある。第2の処理領域におけるモデル化された動作温度は、図に示されるように、1100℃及び1200℃であった。図7Dは、これらの例示的な実施形態において、ファイバがAr中で冷却された場合、ファイバ温度は、約1600℃〜約1750℃(入口温度T)、及び約1300℃〜1400℃(出口温度T)であり、これらの実施形態では、第2の処理領域の中間部分におけるファイバ温度は約1400℃〜1550℃であったことを示している。
【0069】
図7Eは、図7Dのファイバに対応しており、図7Dでは曲線のフラット部分で示される、第2の処理領域113内におけるファイバ冷却速度(dT/dt)を示している(冷却は負のdT/dt値で示されている)。より詳細には、図7Dのファイバの実施形態について、dT/dtの絶対値範囲は、第2の処理領域にちょうど入ったファイバでは4000℃/秒未満(すなわち、3000℃/秒〜4000℃/秒)であり、第2の処理領域の中間では500℃/秒〜2000℃/秒である。図7Eから、これらの実施形態において、ファイバは、第2の処理領域に入ると、より速い速度で冷えることがさらに示唆された。図7Eの例示的な実施形態における第2の処理領域(遅い冷却領域)の動作温度は1200℃であり(すなわち、ガス温度は1200℃であった)、ファイバ延伸速度は35m/秒〜80m/秒であった。
【0070】
図8は、ファイバが、処理ステージ113′内における異なるガス流に対する第2の処理領域113(すなわち、処理ステージ113′の出口開口)から出た後の測定されたファイバ温度を示している。これらのデータは、処理領域113内の42m/秒の延伸速度及び1100℃の動作温度についてのものであり、プロットは、アルゴン及び比較例(空気)についてのデータを示している。アルゴンガス環境についてのファイバ温度データは、同じ処理ステージ113′内を同じ延伸速度で延伸されたファイバが、空気環境に供されたファイバよりも約100℃熱いことを示しており、これは図7に示される計算データに合致していることに留意されたい。
【0071】
図9は、例示的なファイバの1310nmの減衰における、第2の処理領域113(加熱炉又はステージ113′に対応する)内へのアルゴンの導入の影響を示している。より詳細には、データは、SMF(シングルモードファイバ)についての、第2の処理ステージ113′の1165℃の動作温度、3/4インチ(約1.91cm)の入口開口(ノズル開口直径)、及び加熱炉の出口の182cm下方の第2の処理ゾーンへの入口を伴う、50m/秒の延伸速度における、1回のランのものである。グラフの左側は、空気中で冷却されたファイバに対応し、グラフの右側は、アルゴン雰囲気下で冷却されたファイバについての減衰を示している(いずれも、同じ温度で保持された加熱炉ステージ113′内で冷却した)。ファイバデータはすべて、延伸の「牽引速度適格」条件下で生産された、点欠陥のない、19kmを超えるスプール長についてのものである。我々は、第2の処理領域113内においてアルゴン中で冷却された図9の光ファイバの実施形態が、それ以外は同様の条件下で、空気中で冷却された対照ファイバと比較して、1310nmにおける減衰の約0.0012dB/kmの低下を示すことを見出した。
【0072】
上述のように、第1の処理領域111で用いられる平均ガス又はガス混合物の温度は、第2の処理領域113で用いられる平均ガス温度よりも低いことが好ましい。処理領域の温度がファイバの温度に近づくほど、冷却速度は遅くなる。例えば、第1の処理領域111は、200℃〜500℃の動作可能温度を有する処理ゾーンを備えた加熱炉111′を含みうるのに対し、第2の処理領域113は、800℃〜1500℃、好ましくは900℃〜1300℃、例えば1000℃〜1300℃の平均動作温度を有する処理ゾーンを備えた加熱炉113′を含みうる。
【0073】
第2の処理領域113における処理は、例えば30〜80m/秒(例えば、40m/秒、50m/秒、60m/秒、70m/秒、80m/秒、又はそれらの間)など、30m/秒を超える延伸速度で、ファイバをガス雰囲気内に通す工程を含む。第2の処理領域113は、例えば、800℃〜1500℃、より好ましくは800℃〜1300℃の温度を有する加熱ゾーンを有する加熱炉を含みうる。ガス雰囲気は、第2の処理領域113の動作温度において、例えば1.25×10−4cal/cm・s・K未満、又はさらには1.0×10−4cal/cm・s・K未満など、1.5×10−4cal/cm・s・K未満(例えば、第2の処理領域113の動作温度において、0.5×10−4cal/cm・s・K〜1.5×10−4cal/cm・s・K)の熱伝導率を有するガスを含む、又は、実質的にそれらで構成されうる。本開示に従う冷却速度を達成するために、ガス雰囲気の温度を変動させて、第2の処理領域における冷却速度に影響を与えてもよい。第2の処理領域113におけるファイバの滞留時間は、1200〜1400℃の範囲、又は上述の他の範囲の出口温度をもたらすように調整してもよい。
【0074】
本方法は、第2の処理領域から出た後に光ファイバを方向転換する工程をさらに含みうる。方向変換は、ファイバを1つの処理経路から別の処理経路へと転向させる工程を含みうる。加熱されたガラス源(例えば、延伸加熱炉内の光ファイバプリフォーム)からのファイバの延伸は、垂直下方向に生じてもよく、ファイバは、第1の処理領域及び第2の処理領域を通じて略垂直方向に導かれうる。第2の処理領域の出口におけるファイバの方向変換は、水平方向などの非垂直方向におけるさらなる冷却又は処理を可能にしうる。第2の処理領域の出口におけるファイバの方向変換は、ファイバの方向を、そのファイバ通路に沿って複数回、変更する工程を包含してもよい。ファイバの方向変換は、生産設備の垂直スペースを増大する必要なしに有効処理経路長を増加させることから、有利である。ファイバの方向は、略水平から略垂直へと変更することもできる。
【0075】
ファイバの方向変換は、1つ以上の方向変換装置によって達成されうる。方向変換装置には、流体軸受装置及びエアターン装置が含まれる。流体軸受装置及びエアターン装置は、ファイバと物理的に接触することなくファイバの方向変換を達成することによって、ファイバの完全性を保つ。代わりに、方向変換は、加圧流体の力で達成される。ファイバは、流体軸受又はエアターン装置内に含まれた支持チャネルを通過する。流体軸受又はエアターン装置は円形であってよく、ファイバ支持チャネルは、装置の円周に沿って又は円周内に形成されうる。ファイバ支持チャネルの底部の溝又はオリフィスから供給される加圧流体は、物理的接触を防ぐためにチャネルの表面からファイバを遠ざける力を提供する。流体又は空気がファイバの周りを通過し、ファイバ支持チャネルから出ることから、それは、当技術分野で知られている原理に従うベルヌーイ効果によって、支持チャネルの中心にファイバを保持するように動作する圧力分布を生じる。結果として、ファイバは、ファイバ支持チャネルに適合し、ファイバ支持チャネルによって画成されたアーチ状の方向に案内されて、方向変換が達成される。ファイバの方向は、略垂直から略水平へと変更されうる。ファイバの方向は、90°未満の角度、又は90°の角度、又は90°〜180°の角度、又は180°の角度で変更されうる。例示的な方向変換装置は、ここに参照することによって本明細書に取り込まれる、米国特許第7,737,971号及び同第8,074,474号、並びに米国特許出願公開第2009/0158779号の各明細書に記載されている。
【0076】
本方法においてファイバ方向変換を実行する場合、上述の2つの処理領域は、方向変換装置の上流、又は一連の方向変換装置の最初のものの上流に配置されうる。処理領域の上流配置により、制御された温度範囲内かつ上述の制御された冷却速度でのファイバの冷却が可能となる。
【0077】
ファイバの方向変換を達成するための装置が図3に概略的に示されている。光ファイバ生産システム108は、光ファイバプリフォーム110をその軟化点を上回る温度へと加熱するための加熱炉112を備えており、該光ファイバプリフォームは、延伸されてファイバ105を形成し、これが第1の処理領域111及び第2の処理領域113へと導かれて、図1に関して上述したファイバ109を形成する。第1の処理領域111及び第2の処理領域113は、上述の範囲に従ってファイバの温度を低下させるように構成される。第1の処理領域111を通るファイバの経路は直線的であり、第2の処理領域113を通るファイバの経路もまた直線的である。第1の処理領域111を通るファイバの直線的な経路は、第2の処理領域113を通るファイバの直線的な経路と同一直線上にある。ファイバ109は、一連118の方向変換装置116を通してさらに導かれ、垂直な経路からより水平に近い経路へと方向変換され、ファイバをコーティングユニット120に送給するためにより垂直に近い経路へと戻されて、コーティングされたファイバ121を形成する。ファイバを引っ張る力は、図1及び図2の生産システムにも存在しうる、延伸機構128によって供給される。方向変換装置116は、流体軸受装置又はエアターン装置でありうる。製造されたファイバは、必要な長さに切断されて、ファイバから分離され、さらに延伸されて、光ファイバ10を形成する。
【実施例】
【0078】
上述の方法を利用して、幾つかの光ファイバを製造し、評価した。ファイバの仮想温度は低下し、光ファイバは改善された減衰を有する。
【0079】
本明細書に開示される実施形態のガラス光ファイバ10は、Ge、Cl、及び/又はKをドープされ、かつシリカ(SiO)をベースとしたクラッド12で取り囲まれた、シリカをベースとしたコア1を備えている。例えば、コアは、Geをドープされたシリカ、Clをドープされたシリカであってよく、あるいは、Ge及びClの両方を含んでいてもよい。クラッド12は、Flを含んでいても含んでいなくてもよく、Clを含んでいてもよい。幾つかの実施形態によれば、ファイバは、1475℃未満の平均仮想温度を有する。
【0080】
ファイバはコーティングされていてもよく、該コーティングされたファイバは、一次及び二次コーティング層で構成されていてもよい、クラッドを取り囲む、ポリマーをベースとしたコーティング13(図示せず)を含む。
【0081】
幾つかの実施形態によれば、光ファイバ10は、
(i)GeO、Cl、KO又はそれらの混合物を含む、シリカをベースとしたガラスコア1であって、0.1%〜0.45%のシリカに対する相対屈折率差を有し、0MPa〜15MPa(例えば、コアの少なくとも1つの領域において、0.1MPa〜15MPa、又は1MPa〜15MPa)の値の引張応力である残留応力を有する、ガラスコア1、
(ii)コアを取り囲む、シリカをベースとしたガラスクラッド12、及び
(iii)クラッドを取り囲む、少なくとも1つのポリマーコーティング13
を含みうる。
【0082】
幾つかの実施形態によれば、ファイバクラッドの少なくとも一部は、ファイバ減衰をさらに改善するように、5MPa〜40MPaの値、好ましくは35MPa未満、さらに好ましくは、例えば5MPa〜25MPa、又は5MPa〜20MPaなど、5MPa〜30MPaの値の引張応力である残留応力を有する。
【0083】
幾つかの実施形態によれば、光ファイバ10は、
(i)GeOを含む、シリカをベースとしたガラスコア1であって、0.25%〜0.45%のシリカに対する相対屈折率差を有し、0MPa〜15MPaの値の引張応力である残留応力を有する、ガラスコア1、
(ii)コア1を取り囲む、シリカをベースとしたガラスクラッド12、及び
(iii)クラッド12を取り囲む、ポリマーコーティング13
を備えている。
【0084】
幾つかの実施形態では、クラッド12は、シリカをベースとした内側クラッド部分(例えば、外側クラッド部分で取り囲まれた屈折率が低下した部分(depressed refractive index portion)2)を含む。内側クラッド部分は、例えば、Flをドープされたシリカでありうる。
【0085】
図10Aは、例示的な光ファイバ10の一部の断面を概略的に示している。図10Aの実施形態に示されるように、ファイバ10は、外径rを有するコア1、並びに、外径rを有する環状クラッド部分2と、該クラッド部分2を取り囲む外径rを有する外側クラッド部分3とを含むクラッド12を備えている。図10B〜Eは、図10Aに対応する4つの例示的な光ファイバの実施形態についての幾つかの屈折率プロファイルを概略的に示している。図10B〜10Eに示されるように、コアは最大相対屈折率Δ1max(純粋なシリカに対する)を有し、環状クラッド部分2は相対屈折率Δ(純粋なシリカに対する)を有し、外側クラッド部分は相対屈折率Δ(純粋なシリカに対する)を有している。図10B〜10Eに示される実施形態では、Δ1max>Δ及びΔ<Δ、並びに、環状クラッド部分2(クラッドの屈折率が低下した部分又はモート)は、ファイバ減衰をさらに改善するように、5MPa〜40MPaの値、好ましくは35MPa未満、さらに好ましくは5MPa〜30MPaの値の引張応力である残留応力を有する。
【0086】
例えば、ファイバ10は、0MPa〜15MPaの値の引張応力下に保たれるコアと、5MPa〜40MPa、又は10MPa〜40MPaの値の引張応力を有しうる内側クラッド2とを有しうる。幾つかの実施形態では、内側クラッド2は、5MPa〜35MPa、又は10MPa〜35MPa、又は5MPa〜25MPa、5MPa〜20MPaの引張応力を有しうる。
【0087】
例えば、幾つかの例示的な実施形態によれば、ファイバコアの引張応力は、0MPa〜13MPa、又は0MPa〜10MPa、又は0MPa〜7MPa、又は0〜5MPaでありうる。少なくとも幾つかの実施形態では、コアは、コアの領域の大部分を包含する、少なくとも、コアの外側(半径方向)半分の部分において、約0.1MPa〜約13MPaの引張応力下にある。少なくとも幾つかの実施形態では、ファイバの内側クラッド部分(環状クラッド部分2)は、35MPa以下の値(例えば、5MPa〜30MPa、又は5MPa〜25MPa、又は10MPa〜20MPa)の引張応力である、最大残留応力を有する。我々は、内側クラッド部分が5〜20MPaの引張応力下にある場合に、ファイバ減衰がさらに改善されることを見出した。
【0088】
本明細書に従って調製されたシリカファイバの仮想温度は、1450℃未満、又は1400℃未満、又は1350℃未満、又は1300℃未満、又は1250℃未満、又は1200℃未満、又は1150℃未満、又は1100℃未満でありうる。
【0089】
仮想温度は、ガラス構造が平衡状態にある温度である。それは、例えば、D.L. Kim and M. Tomozawa, “Fictive Temperature of Silica Glass Fiber”に記載される方法を使用して、IR(赤外線)ビーム測定法によって測定することができる。本明細書で用いられる場合、光ファイバの仮想温度は、ファイバの径方向断面全体にわたるバルク仮想温度である(ファイバの断面は小さいため、ガラスファイバの断面の1回の測定で十分である)。
【0090】
1550nmにおける、本明細書に従って調製されたシリカファイバ10の減衰は、0.18dB/km未満、又は0.17dB/km未満、又は0.16dB/km未満、又は0.15dB/km未満、又は0.14dB/km未満、又は0.13dB/km未満、又は0.12dB/km未満でありうる。ファイバの仮想温度は、第2の処理領域内を通過するファイバの冷却速度が増加するにつれて低下し、ファイバ減衰は、ファイバの仮想温度が低下するにつれて低下することに留意されたい。これは、より遅い冷却によって、ファイバのより完全な構造緩和が促進され、より低い仮想温度を有するファイバの生産につながることを理由とする。
【0091】
幾つかの実施形態によれば、光ファイバ10は、1310nmの波長における8.2μm<MFD<9.5μmのモードフィールド径(MFD)、<1260nmの22メートルケーブルカットオフ、及び、1550nmにおける<0.183dB/kmの減衰を有する。少なくとも幾つかの実施形態によれば、光ファイバは、シリカをベースとしたクラッドで取り囲まれたGeOを含むガラスコアを備えており、該ファイバは、1450℃未満の仮想温度、及び0.18dB/km未満の1550nmにおける減衰を有する。幾つかの実施形態によれば、ファイバの仮想温度は1300℃未満、又はさらには1200℃未満である。例えば、幾つかの実施形態によれば、ファイバの仮想温度は、900℃〜1400℃、又は900℃〜1300℃、又は900℃〜1250℃でありうる。一実施形態において、ファイバは、1250℃未満の仮想温度、及び0.13dB/km未満の1550nmにおける減衰を有する。例えば、一実施形態において、ファイバ10は、1350℃未満の仮想温度、及び約0.13dB/kmの1550nmにおける減衰を有する。例えば、一実施形態において、ファイバは、1250℃未満の仮想温度、及び約0.13dB/kmの1550nmにおける減衰を有する。
【0092】
幾つかの実施形態によれば、光ファイバは、1310nmの波長における8.2μm<MFD<9.5μmのモードフィールド径(MFD)、<1260nmの22メートルケーブルカットオフ、及び1550nmにおける<0.183dB/kmの減衰を有する。少なくとも幾つかの実施形態によれば、光ファイバは、シリカをベースとしたクラッドで取り囲まれたGeOを含むガラスコアを備えており、該ファイバは、1450℃未満の仮想温度及び0.18dB/km未満の1550nmにおける減衰を有する。幾つかの実施形態によれば、ファイバの仮想温度は、1300℃未満、又はさらには1200℃未満である。例えば、幾つかの実施形態によれば、ファイバの仮想温度は、900℃〜1400℃、又は900℃〜1300℃、又は900℃〜1250℃でありうる。一実施形態において、ファイバは、1250℃未満の仮想温度、及び0.13dB/km未満の1550nmにおける減衰を有する。例えば、一実施形態において、ファイバは、1350℃未満の仮想温度、及び約0.13dB/kmの1550nmにおける減衰を有する。例えば、一実施形態において、ファイバは、1250℃未満の仮想温度、及び約0.13dB/kmの1550nmにおける減衰を有する。
【0093】
本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、さまざまな修正及び変形がなされうることは、当業者にとって明白であろう。本発明の精神及び本質を取り込む、開示される実施形態の修正、組合せ、部分組合せ、及び変形が当業者に想起されうることから、本発明は、添付の特許請求の範囲及びその等価物の範囲内のすべてを包含すると解釈されるべきである。
【0094】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0095】
実施形態1
光ファイバの処理方法であって、
(i)前記ファイバを、少なくとも30m/秒の延伸速度で延伸する工程、及び
(ii)前記ファイバを、該ファイバの温度が1500℃〜1700℃の範囲の入口温度から1200℃〜1400℃の範囲の別の温度へと低下するように、5000℃/秒未満の平均冷却速度においてガス内で冷却する工程であって、前記ガスが800℃〜1500℃の温度にあり、かつ、前記ガスの熱伝導率κが、1atmの絶対圧力において、800℃〜1500℃の範囲内の少なくとも1つの温度について、1.5×10−4cal/cm・s・K以下である、工程
を含む、方法。
【0096】
実施形態2
前記ガスの平均熱伝導率が、1atmの絶対圧力で、800℃〜1500℃の温度範囲内において、1.5×10−4cal/cm・s・K以下である
ことを特徴とする、実施形態1に記載の方法。
【0097】
実施形態3
前記ガスの熱伝導率κが、1atmの絶対圧力で、800℃〜1500℃の範囲内のすべての温度について、1.6×10−4cal/cm・s・K以下である
ことを特徴とする、実施形態1に記載の方法。
【0098】
実施形態4
1atmの絶対圧力における前記ガスの熱伝導率κが、800℃〜1450℃の範囲内のすべての温度について、1.5×10−4cal/cm・s・K以下であることを特徴とする、実施形態3に記載の方法。
【0099】
実施形態5
前記ガスが、(i)1000℃〜1300℃の温度、及び、(ii)0.025〜1atmの絶対圧力にあることを特徴とする、実施形態1に記載の方法。
【0100】
実施形態6
前記ガスが、Ar、Kr、Xe、又はそれらの混合物であり、前記延伸速度が30m/秒〜100m/秒であることを特徴とする、実施形態1に記載の方法。
【0101】
実施形態7
前記ガスが、Ar、Kr、Xe、又はそれらの混合物であり、前記延伸速度が40m/秒〜100m/秒であり、かつ、前記ガス内における前記冷却が、0.025〜1atmの絶対圧力において、1000℃/秒〜4000℃/秒の平均冷却速度で行われることを特徴とする、実施形態1に記載の方法。
【0102】
実施形態8
前記入口温度が、別の温度より少なくとも100℃高いことを特徴とする、実施形態1に記載の方法。
【0103】
実施形態9
前記入口温度が、別の温度より少なくとも≧200℃高いことを特徴とする、実施形態1に記載の方法。
【0104】
実施形態10
前記延伸速度が40m/秒〜100m/秒であることを特徴とする、実施形態1に記載の方法。
【0105】
実施形態11
前記ファイバを前記入口温度と前記別の温度との間で冷却する工程が、0.1秒を超える時間にわたって行われることを特徴とする、実施形態1に記載の方法。
【0106】
実施形態12
前記ファイバを前記入口温度と前記別の温度との間で冷却する工程が、0.2秒を超える時間にわたって行われることを特徴とする、実施形態1に記載の方法。
【0107】
実施形態13
前記ファイバを前記入口温度と前記別の温度との間で冷却する工程が、0.3秒を超える時間にわたって行われることを特徴とする、実施形態1に記載の方法。
【0108】
実施形態14
前記平均冷却速度が1400℃/秒〜3000℃/秒であることを特徴とする、実施形態1に記載の方法。
【0109】
実施形態15
前記ファイバを冷却する工程が、前記ファイバを、800℃〜1300℃の温度を有する処理領域に通す工程を含むことを特徴とする、実施形態1に記載の方法。
【0110】
実施形態16
前記ファイバを、5000℃/秒を超える第1の冷却速度で冷却する工程をさらに含み、該第1の冷却速度で冷却する工程が、T<Tになり、第1の温度Tが1800℃〜2100℃の範囲にあり、第2の温度Tが1600℃〜1800℃の範囲にあり、かつ、前記入口温度≦Tになるように、前記ファイバ温度を第1の温度Tから第2の温度Tへと低下させることを特徴とする、実施形態1に記載の方法。
【0111】
実施形態17
光ファイバの処理方法であって、
(i)30m/秒を超える延伸速度で延伸される前記ファイバを提供する工程;
(ii)前記ファイバを、5000℃/秒を超える第1の冷却速度で冷却する工程であって、該第1の冷却速度で冷却する工程が、T<Tになり、第1の温度Tが1800℃〜2100℃の範囲になり、第2の温度Tが1600℃〜1800℃の範囲になるように、ファイバ温度を第1の温度Tから第2の温度Tへと低下させる、工程、及び
(iii)前記ファイバを、800℃〜1500℃のガス温度で、5000℃/秒未満の第2の冷却速度において、ガス内で冷却する工程であって、該第2の冷却速度における冷却工程が、前記ファイバの温度を、第3の温度Tから第4の温度Tへと低下させ、ここで、T≦Tであり、前記第3の温度Tが1500℃〜1700℃の範囲であり、前記第4の温度Tが1200℃〜1400℃の範囲であり、かつ、前記ガスの熱伝導率κが、1atmの絶対圧力において、800℃〜1500℃のすべての温度について、1.6×10−4cal/cm・s・K以下である、工程
を含む、方法。
【0112】
実施形態18
光ファイバの製造方法であって、
(i)ファイバプリフォームを、その軟化点を上回る温度へと加熱する工程、
(ii)前記加熱されたプリフォームから前記光ファイバを少なくとも30m/秒の延伸速度で延伸する工程、及び
(iii)前記光ファイバを2つの処理ステージに通す工程であって、
a.前記ファイバが、1800℃〜2100℃の温度で第1の処理ステージに入り、前記第1の処理ステージにおいて5000℃/秒を超える平均冷却速度を被り、
b.前記光ファイバが、1600℃〜1800℃の温度で前記第1の処理ステージから出て、
c.前記光ファイバが、1500℃〜1700℃の温度で前記第1の処理ステージの下流の第2の処理ステージに入り、
i.800℃〜1500℃の温度と、
ii.1atmの絶対圧力において、800℃〜1500℃の範囲内のすべての温度について、1.6×10−4cal/cm・s・K以下である熱伝導率κと
を有するガス又はガス混合物内で、前記第2の処理ステージにおいて5000℃/秒未満の平均冷却速度を被り、かつ
d.前記光ファイバが、1200℃〜1400℃の温度で前記第2の処理ステージから出る
ように、2つの処理ステージに通す工程
を含む、方法。
【0113】
実施形態19
流体軸受装置又はエアターン装置を用いて、前記ファイバが第2の処理ステージから出た後に、前記ファイバを方向転換する工程をさらに含むことを特徴とする、実施形態18に記載の方法。
【0114】
実施形態20
前記ファイバが、
(i)GeO、Cl、KOのうちの少なくとも1つを含む、シリカをベースとしたガラスコアであって、0.1%〜0.45%のシリカに対する相対屈折率差を有し、0MPa〜15MPaの値の引張応力である残留応力を有する、ガラスコア、及び
(ii)前記コアを取り囲む、シリカをベースとしたガラスクラッド、並びに前記クラッドを取り囲むポリマーコーティング
を備えていることを特徴とする、実施形態18に記載の方法。
【0115】
実施形態21
前記クラッドが、5MPa〜40MPaの値の引張応力である残留応力を有する少なくとも1つの領域を有することを特徴とする、実施形態18に記載の方法。
【0116】
実施形態22
実施形態18に記載の方法によって製造された光ファイバにおいて、
(i)GeO、Cl、KOのうちの少なくとも1つを含む、シリカをベースとしたガラスコアであって、0.1%〜0.45%のシリカに対する相対屈折率差を有し、0〜15MPaの値の引張応力である残留応力を有する、ガラスコア、
(ii)前記コアを取り囲む、シリカをベースとしたガラスクラッドであって、5MPa〜40MPaの値の引張応力である残留応力を有する少なくとも1つの領域を有する、ガラスクラッド、及び
(iii)前記クラッドを取り囲むポリマーコーティング
を備えている、光ファイバ。
【0117】
実施形態23
8.2μm〜9.5μmの1310nmにおけるモードフィールド径、1260nm未満のケーブルカットオフ、及び0.18dB/km未満の1550nmにおける減衰を有することを特徴とする、実施形態18に記載の光ファイバ。
【0118】
実施形態24
GeO、Cl、KOのうちの少なくとも1つを含み、かつ、シリカをベースとしたクラッドで取り囲まれたガラスコアを備えている光ファイバであって、1450℃未満の仮想温度を有し、かつ、0.18dB/km未満の1550nmにおける減衰を有する、光ファイバ。
【0119】
実施形態25
前記コアが、0.1%〜0.45%のシリカに対する相対屈折率差と、前記クラッドを取り囲む少なくとも1つのポリマーコーティングとを有することを特徴とする、実施形態24に記載の光ファイバ。
【符号の説明】
【0120】
1 コア
2 環状クラッド部分
3 外側クラッド部分
10 光ファイバ
104 生産システム
105,107,109 ファイバ
108 光ファイバ生産システム
110 光ファイバプリフォーム
111 第1の処理領域
112 加熱炉
113 第2の処理領域
116 方向変換装置
118 一連の方向変換装置
120 コーティングユニット
121 コーティングされたファイバ
128 延伸機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
【国際調査報告】