特表2018-537392(P2018-537392A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2018-537392鋭いUVカットオフを有するフォトクロミックガラス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-537392(P2018-537392A)
(43)【公表日】2018年12月20日
(54)【発明の名称】鋭いUVカットオフを有するフォトクロミックガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 10/16 20060101AFI20181122BHJP
【FI】
   C03C10/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2018-531340(P2018-531340)
(86)(22)【出願日】2016年12月13日
(85)【翻訳文提出日】2018年8月15日
(86)【国際出願番号】US2016066247
(87)【国際公開番号】WO2017106114
(87)【国際公開日】20170622
(31)【優先権主張番号】62/269,285
(32)【優先日】2015年12月18日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】アロージョ,ロジャー ジェローム
(72)【発明者】
【氏名】ボレッリ,ニコラス フランシス
(72)【発明者】
【氏名】リョンロス,ナジャ テレジア
(72)【発明者】
【氏名】モース,デイヴィッド ラスロップ
(72)【発明者】
【氏名】シワード,トーマス フィリップ ザ サード
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA11
4G062BB01
4G062DA05
4G062DA06
4G062DB02
4G062DB03
4G062DB04
4G062DC04
4G062DC05
4G062DD01
4G062DE01
4G062DF01
4G062EA01
4G062EA02
4G062EA03
4G062EA04
4G062EB01
4G062EB02
4G062EB03
4G062EB04
4G062EC01
4G062EC02
4G062EC03
4G062EC04
4G062ED01
4G062EE01
4G062EF01
4G062EG01
4G062FA01
4G062FB01
4G062FC01
4G062FD01
4G062FE02
4G062FF01
4G062FG01
4G062FH01
4G062FJ01
4G062FK01
4G062FL01
4G062GA01
4G062GB01
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4G062GD01
4G062GE01
4G062GE02
4G062HH01
4G062HH03
4G062HH04
4G062HH05
4G062HH07
4G062HH09
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4G062HH13
4G062HH15
4G062HH17
4G062JJ01
4G062JJ03
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4G062JJ06
4G062JJ07
4G062JJ08
4G062KK01
4G062KK03
4G062KK05
4G062KK07
4G062KK10
4G062MM03
4G062NN13
4G062NN18
4G062QQ18
(57)【要約】
ベースガラスとフォトクロミック剤とを含むフォトクロミックガラスが記載される。ベースガラスは改質されたボロアルミノシリケートガラスであり、フォトクロミック剤はナノ結晶ハロゲン化銅相である。フォトクロミックガラスは、可視光線のより長い波長における吸収バンドとともに、スペクトルのUV又は短波長可視部分における鋭いカットオフを示す。ナノ結晶ハロゲン化銅相は、Cu2+を含み、これがハロゲン化銅のバンドギャップ内にガラスに可視光線を吸収させる状態をもたらす。可視光の吸収は、鋭いカットオフを損なうことなく、フォトクロミック遷移を推進する。ナノ結晶ハロゲン化銅相は、任意選択的に、Agを含んでいてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトクロミックガラスであって、
19質量%〜39質量%のB、0.5質量%〜15質量%のAl、46質量%〜65質量%のSiO、3.5質量%〜12.5質量%のアルカリ金属酸化物、及び0.005質量%〜0.40質量%のSnOを含むベースガラスと、
0.56質量%〜1.28質量%の銅と、
0.1質量%〜0.7質量%のハライドと、
前記ベースガラス内にナノ結晶ハロゲン化銅相を含むフォトクロミック剤であって、該ナノ結晶ハロゲン化銅相が、前記銅の少なくとも一部を含む銅成分と、前記ハライドの少なくとも一部を含むハライド成分とを含み、前記銅の少なくとも一部が、Cu及びCuを含む、フォトクロミック剤と、
を含み、
410nm未満のカットオフ波長を有する、
フォトクロミックガラス。
【請求項2】
前記ハライドが、0.01質量%〜0.60質量%のCl及び0.01質量%〜0.70質量%のBrを含むことを特徴とする、請求項1に記載のフォトクロミックガラス。
【請求項3】
前記ナノ結晶ハロゲン化銅相が、450nm〜525nmの波長範囲にわたる光を吸収することを特徴とする、請求項1又は2に記載のフォトクロミックガラス。
【請求項4】
前記ガラスが、390nm〜405nmの範囲のカットオフ波長を有する吸収端を示すことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のフォトクロミックガラス。
【請求項5】
前記ガラスが、銀をさらに含み、前記ナノ結晶ハロゲン化銅相が、前記銀の少なくとも一部をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のフォトクロミックガラス。
【請求項6】
2mmの厚さを有する前記ガラスの試料が、前記カットオフ波長から該カットオフ波長を50nm上回る波長までの波長範囲にわたる各波長において、99%以上の透過率を有し、かつ、前記カットオフ波長から該カットオフ波長を50nm下回る波長までの波長範囲にわたる各波長において、1%以下の透過率を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のフォトクロミックガラス。
【請求項7】
2mmの厚さを有する前記ガラスの試料が、前記カットオフ波長から該カットオフ波長を100nm上回る波長までの波長範囲にわたる各波長において、99%以上の透過率を有し、かつ、前記カットオフ波長から該カットオフ波長を75nm下回る波長までの波長範囲にわたる各波長において、1%以下の透過率を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のフォトクロミックガラス。
【請求項8】
フォトクロミックガラスを製造する方法であって、
19質量%〜39質量%のB、0.5質量%〜15質量%のAl、46質量%〜65質量%のSiO、3.5質量%〜12.5質量%のアルカリ金属酸化物、0.40質量%〜2.5質量%のCuO、及び0.01質量%〜1.3質量%のハライドを含むバッチ組成物を溶融する工程
を含む、方法。
【請求項9】
前記バッチ組成物を冷却する工程をさらに含み、該冷却する工程が前記溶融する工程の後に起こり、前記冷却する工程が、前記バッチ組成物を、480℃〜550℃の範囲の温度で少なくとも1時間、維持する工程を含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
フォトクロミックガラスであって、
19質量%〜39質量%のB、0.5質量%〜15質量%のAl、46質量%〜65質量%のSiO、3.5質量%〜12.5質量%のアルカリ金属酸化物、及び0.005質量%〜0.40質量%のSnOを含むベースガラスと、
0.64質量%〜1.12質量%の銅と、
0.1質量%〜0.7質量%のハライドと、
該ベースガラス内にナノ結晶ハロゲン化銅相を含むフォトクロミック剤であって、該ナノ結晶ハロゲン化銅相が、前記銅の少なくとも一部を含む銅成分と、前記ハライドの少なくとも一部を含むハライド成分とを含み、前記銅の少なくとも一部が、Cu及びCuを含む、フォトクロミック剤と、
0.005質量%〜0.05質量%のAgと、
0.05質量%〜0.50質量%のWOと、
を含む、フォトクロミックガラス。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、その全体がここに参照することによって本願に援用される、2015年12月18日出願の米国仮特許出願第62/269,285号の米国法典第35編特許法119条に基づく優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本明細書は、フォトクロミック材料に関する。より詳細には、本明細書は、スペクトルのUV又は短波長可視部分の光の強い吸収を有するフォトクロミックガラスに関する。最も詳細には、本明細書は、400nm近辺に鋭い吸収特徴を有し、可視光線によって開始可能なフォトクロミック応答を有する、フォトクロミックガラスに関する。
【背景技術】
【0003】
フォトクロミックガラスは、サングラスへの用途に重点を置いた眼用レンズの分野で幅広く用いられている。化学線に曝露されると、フォトクロミックガラスは、ダークニング並びに特定のスペクトル範囲の光の透過率の低下を生じる、光化学又は光構造の変換を被る。サングラスの場合には、化学線は日光でありえ、フォトクロミック応答は、可視光線の透過性の低下につながり、眼に到達する光の強度を低減しうる。フォトクロミック応答は、安全でない強度レベルから眼を保護し、装着者に快適さを提供する。
【0004】
最も初期の商業的に成功したフォトクロミックガラスは、フォトクロミック剤としてハロゲン化銀結晶を使用した。ハロゲン化銀は、さまざまなベースガラスに取り込まれて、眼科用途に適したフォトクロミックガラスを提供することができる。典型的なベースガラスは、アルカリをドープしたシリカ又は改質したシリカガラスである。特許文献1(Armistead及びStookey)及び特許文献2(Eppler及びStookey)には、例えば、アルカリをドープしたボロアルミノシリケートガラス中にハロゲン化銀を含むフォトクロミックガラスが記載されている。ハロゲン化銀フォトクロミックガラスは、実施可能な商品のまま保たれ、PHOTOGRAY(登録商標)及びPHOTOBROWN(登録商標)の製品ラインのもと、Corning,Inc.社から販売されている。
【0005】
ハロゲン化銀は、フォトクロミック剤として、ある特定の欠点を有する。第1に、ハロゲン化銀は、化学線に対し高い感受性を有し、低レベルの化学線に曝露されると、強いフォトダークニング応答を与える。結果として、ハロゲン化銀フォトクロミックガラスでできたサングラスを装着する観察者は、低レベル(例えば、夜明け)及び高レベル(例えば、日中)の照明において観察されるダークニングのレベルにはほとんど差がないと知覚する。日常活動で通常遭遇する照明強度の範囲にわたって、観察者が知覚するように、より均一なフォトダークニング応答を示すフォトクロミックガラスを開発することは望ましいであろう。第2に、ハロゲン化銀ガラスのフォトダークニング応答は、周囲温度に対して敏感である。所与の照明レベルでは、フォトダークニングは、高温よりも低温において、より顕著である。これは、多くの消費者にとって望ましくないかもしれない、フォトクロミック応答の季節的変化を生じる。第3に、銀は、ガラスにとって比較的高価な添加剤であり、ハロゲン化銀フォトクロミックガラスのコストによって、商業的用途の範囲は制限される。
【0006】
ハロゲン化銀ガラスにおける性能の欠陥及びコストは、商業的用途のための銀を含まないフォトクロミックガラスの開発に対する関心を動機付けしている。特許文献3(Araujo);特許文献4(Seward及びTick);及び特許文献5(Araujo及びTick)には、フォトクロミック剤としてハロゲン化銅−カドミウムを使用する一連のフォトクロミックガラスが記載されている。ハロゲン化銅−カドミウムは、良好なフォトクロミック応答を示し、ハロゲン化銀に関する多くの欠陥を克服する:(1)銀を排除することによってバッチコストが削減される、(2)フォトクロミック応答が周囲温度に対してあまり敏感ではない、及び(3)照度によってより徐々に変化するフォトダークニング応答。銅−カドミウムフォトクロミックガラスの利点にもかかわらず、毒性及びカドミウムの廃棄に対する懸念のために、商業的な可能性は限定される。
【0007】
特許文献3(Araujo)には、フォトクロミック剤としてハロゲン化銅を有するガラスも開示されている。該ガラスは、カドミウムを含まない。しかしながら、組成物は、処理が困難であることが判明し、また、ほとんどの商業的用途に不適な濁った外観を示した。フォトクロミック剤としてハロゲン化銅を使用する、ヘイズのないフォトクロミックガラス組成物が、特許文献6(Morse及びSeward)に提示された。ベースガラス組成物は、銅及びハライドに加えてアルカリドーパントを有する、B−Al−SiOガラスであった。好ましい組成物は、ハロゲン化銅のフォトクロミック応答を改善するために、低濃度(約1質量%)のWO又はMoOを含んでいた。良好なフォトクロミック応答(ダークニング及び退色)がガラスに観察された。
【0008】
眼科用ガラスの市場が拡大するにつれて、フォトクロミックガラスの性能に対する要求が高まっている。1つの懸念はUV光への目の過度の曝露が有害であるという認識である。この懸念により、可視光線の透過性を損なうことなくUV光を効果的にフィルタリングするフォトクロミックガラスの開発に関心が高まっている。先に論じたハロゲン化銀、ハロゲン化銅−カドミウム、及びハロゲン化銅のフォトクロミックガラスは、UV光に吸収バンドを有するが、該吸収バンドは鋭いUVカットオフを欠き、ガラスはかなりの量のUV光を透過させる。特許文献7(Araujo及びMorgan)には、400nm近辺に鋭いUVカットオフを有するハロゲン化銅ガラスが開示されている。この特許は、UV吸収バンドの形状及び強度がガラス中の銅の濃度に応じて決まることを実証した。鋭いUVカットオフを有する一連の組成物が開示された。しかしながら、特許文献7(Araujo)に記載されるガラスは、フォトクロミックではなく、眼科及び他の消費者用途に所望される可逆的なフォトダークニング応答を欠いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第3,208,860号明細書
【特許文献2】米国特許第3,197,296号明細書
【特許文献3】米国特許第3,325,299号明細書
【特許文献4】米国特許第3,954,485号明細書
【特許文献5】米国特許第4,166,745号明細書
【特許文献6】米国特許第4,222,781号明細書
【特許文献7】米国特許第5,281,562号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
鋭いUVカットオフ及びフォトクロミック応答を有するガラスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ナノ結晶相を有するガラスを含むフォトクロミック材料が記載される。ガラスは、ナノ結晶ハロゲン化銅相を含む、改質されたボロアルミノシリケートガラスである。フォトクロミック材料は、可視光線のより長い波長における吸収バンドとともに、スペクトルのUV又は短波長可視部分に鋭いカットオフを示す。ナノ結晶ハロゲン化銅相は、Cu2+を含み、これは、材料に可視光線を吸収させる状態をハロゲン化銅のバンドギャップ内にもたらす。可視光の吸収は、鋭いカットオフを損なうことなく、フォトクロミック遷移を推進する。ナノ結晶ハロゲン化銅相は、任意選択的に、Agを含んでいてもよい。
【0012】
本開示は、
フォトクロミックガラスであって、
19質量%〜39質量%のB、0.5質量%〜15質量%のAl、46質量%〜65質量%のSiO、3.5質量%〜12.5質量%のアルカリ金属酸化物、及び0.005質量%〜0.40質量%のSnOを含むベースガラスと、
0.56質量%〜1.28質量%の銅と、
0.1質量%〜0.7質量%のハライドと、
該ベースガラス内にナノ結晶ハロゲン化銅相を含むフォトクロミック剤であって、該ナノ結晶ハロゲン化銅相が、前記銅の少なくとも一部を含む銅成分と、前記ハライドの少なくとも一部を含むハライド成分とを含み、前記銅の少なくとも一部がCu及びCu2+を含む、フォトクロミック剤と、
を含み、
410nm未満のカットオフ波長を有する、
フォトクロミックガラスに及ぶ。
【0013】
本開示は、
フォトクロミックガラスを製造する方法であって、
19質量%〜39質量%のB、0.5質量%〜15質量%のAl、46質量%〜65質量%のSiO、3.5質量%〜12.5質量%のアルカリ金属酸化物、0.40質量%〜2.5質量%のCuO、及び0.01質量%〜1.3質量%のハライドを含むバッチ組成物を溶融する工程
を含む、方法に及ぶ。
【0014】
本開示は、
フォトクロミックガラスであって、
19質量%〜39質量%のB、0.5質量%〜15質量%のAl、46質量%〜65質量%のSiO、3.5質量%〜12.5質量%のアルカリ金属酸化物、及び0.005質量%〜0.40質量%のSnOを含むベースガラスと、
0.64質量%〜1.12質量%の銅と、
0.1質量%〜0.7質量%のハライドと、
前記ベースガラス内にナノ結晶ハロゲン化銅相を含むフォトクロミック剤であって、該ナノ結晶ハロゲン化銅相が、前記銅の少なくとも一部を含む銅成分と、前記ハライドの少なくとも一部を含むハライド成分とを含み、前記銅の少なくとも一部がCu及びCu2+を含む、フォトクロミック剤と、
0.005質量%〜0.05質量%のAgと、
0.05質量%〜0.50質量%のWOと、
を含む、フォトクロミックガラスに及ぶ。
【0015】
さらなる特徴及び利点は、以下の詳細な説明に記載されており、一部には、その記載から当業者に容易に明らかになり、あるいは、本明細書及びその特許請求の範囲、並びに添付の図面に記載される実施形態を実施することによって認識されよう。
【0016】
前述の概要及び以下の詳細な説明はいずれも単なる例示であり、特許請求の範囲の本質及び特徴を理解するための外観又は枠組みを提供することが意図されていることが理解されるべきである。
【0017】
添付の図面は、さらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に取り込まれてその一部を構成する。図面は、本明細書の選択された態様の例示であり、本明細書とともに、本明細書に包含される方法、生成物、及び組成物の原理及び動作を説明する役割を担う。図面に示される特徴は、本明細書の選択された実施形態の例示であり、必ずしも適切な縮尺で描かれていない。
【0018】
本明細書は、本明細書の主題を特に指摘し明確に主張する請求項で締めくくられているが、本明細書は、添付の添付の図面と併せて読む場合に、以下の記述からよりよく理解されると考えられる。
【0019】
図面に記載される実施形態は、本来、例示であって、詳細な説明又は特許請求の範囲を限定することは意図されていない。可能な場合には常に、同一又は同様の特徴についての言及には、図面全体にわたって、同じ参照番号が用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ハロゲン化銅ナノ結晶相に関する励起子吸収を示す、非フォトクロミックガラスの吸収スペクトル、励起子吸収特徴を欠く、非フォトクロミックな銅含有ガラスの吸収スペクトル、及び励起子吸収特徴を欠く、銅を有しない非フォトクロミックガラスの吸収スペクトルを示すグラフ
図2】励起子吸収及びハロゲン化銅ナノ結晶相中のCu2+の存在に起因する吸収を示す、2つのガラスの吸光度スペクトルのグラフ(一方のガラス(破線)は組成物中にWOを含み、他方のガラス(実線)は含まない)
図3(a)】400nmのロングパスフィルタを用いた及び用いない、500℃で2時間の加熱処理に供されたハロゲン化銅ナノ結晶を含むフォトクロミックガラスを通る、広域帯源からの光の透過率を示すグラフ
図3(b)】400nmのロングパスフィルタを用いた及び用いない、500℃で12時間の加熱処理に供されたハロゲン化銅ナノ結晶を含むフォトクロミックガラスを通る、広域帯源からの光の透過率を示すグラフ
図3(c)】400nmのロングパスフィルタを用いた及び用いない、500℃で24時間の加熱処理に供されたハロゲン化銅ナノ結晶を含むフォトクロミックガラスを通る、広域帯源からの光の透過率を示すグラフ
図4】銅及びハライドを含む、2つのガラスの吸収スペクトルを示すグラフ(そのうちの一方のみがハロゲン化銅ナノ結晶相の安定化に適したベースガラス組成を有する)
図5】励起子吸収特徴の近くに約200μmの厚さを有するハロゲン化銅フォトクロミックガラスの吸収スペクトルを示すグラフ
図6(a)】さまざまな相対的な割合のCl及びBrでハロゲン化銅ナノ結晶相を有する、一連のフォトクロミックガラスの吸収スペクトルを示すグラフ
図6(b)】カットオフ波長の近辺の図6(a)に示されるスペクトルの拡大図
図7】フォトクロミックガラスのハロゲン化銅ナノ結晶相中のBr及びClの相対的な量の関数としてのUVカットオフ波長の変動を示すグラフ
図8(a)】Agを含むハロゲン化銅ナノ結晶相を有するフォトクロミックガラスのフォトダークニング応答の比較を示すグラフ
図8(b)】Agを含まないハロゲン化銅ナノ結晶相を有するフォトクロミックガラスのフォトダークニング応答の比較を示すグラフ
図9(a)】72°F(約22.22℃)における、ハロゲン化銅ナノ結晶相を有するフォトクロミックガラスのフォトダークニング応答を示すグラフ
図9(b)】122°F(約50.00℃)における、ハロゲン化銅ナノ結晶相を有するフォトクロミックガラスのフォトダークニング応答を示すグラフ
図9(c)】160°F(約71.11℃)における、ハロゲン化銅ナノ結晶相を有するフォトクロミックガラスのフォトダークニング応答を示すグラフ
図9(d)】フォトダークニング応答に関連する吸収のアレニウスプロットを示すグラフ
図10(a)】ハロゲン化銅ナノ結晶相中にAgを含む、フォトダークニングクラスの退色反応を示すグラフ
図10(b)】ハロゲン化銅ナノ結晶相中にAgを含まない、フォトダークニングクラスの退色反応を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0021】
これより、本明細書の例示的な実施形態について詳細に説明する。
【0022】
本明細書は、さまざまな組成物を有するフォトクロミックガラスについて記載する。ガラス組成物は、さまざまな濃度で存在するさまざまな成分を含む。ガラスは、該ガラスの成分を含むバッチ組成物を溶融及び冷却することによって形成される。本明細書で用いられる場合、濃度とは、バッチ組成物中の成分の濃度のことを指す。異なる成分の揮発性の違いに起因して、バッチ組成物の溶融及び冷却の後に形成されるガラス中の成分の濃度は、バッチ組成物中の成分の濃度とはわずかに異なる場合がある。
【0023】
本明細書は、良好なフォトクロミック応答、並びにUV波長又は短波長の可視波長における鋭いカットオフを示す、フォトクロミックガラスについて記載する。フォトクロミック応答は、広範囲の波長で開始することができ、好ましいダークニング及び退色特徴を示す。フォトクロミック応答が開始され、現れるとき、ガラスは、フォトクロミック又はダークニング状態にあると称されうる。フォトクロミック応答が退色しているか又は現れない場合には、ガラスは、非フォトクロミック又は退色状態にあると称されうる。フォトクロミック応答は、ガラスを、その非フォトクロミック状態からフォトクロミック状態へと変換する。フォトクロミック応答はまた、本明細書では、フォトダークニング応答又はダークニング応答とも称されうる。
【0024】
フォトクロミックガラスは、ベースガラス及びフォトクロミック剤を含む。ベースガラスは、アルカリで改質されたボロアルミノシリケートガラスである。ベースガラスは、任意選択的に、酸化還元剤を含む。フォトクロミック剤は、銅及びハライドを含む。フォトクロミック剤は、任意選択的に、銀、タングステン、及び/又はモリブデンを含む。
【0025】
ベースガラスは、アルカリ金属酸化物改質剤を有する、B−Al−SiOガラスである。B濃度は、18質量%〜41質量%の範囲、又は19質量%〜39質量%の範囲、又は20質量%〜37質量%の範囲、又は22質量%〜35質量%の範囲、又は24質量%〜33質量%の範囲、又は26質量%〜31質量%の範囲である。Al濃度は、0.7質量%〜15質量%の範囲、又は1.0質量%〜13質量%の範囲、又は2.0質量%〜11質量%の範囲、又は3.5質量%〜10質量%の範囲、又は5.0質量%〜9.0質量%の範囲、又は6.0質量%〜8.0質量%の範囲である。SiO濃度は、46質量%〜65質量%の範囲、又は48質量%〜63質量%の範囲、又は50質量%〜61質量%の範囲、又は52質量%〜59質量%の範囲である。アルカリ金属酸化物含量は、3.5質量%〜12.5質量%の範囲、又は4.0質量%〜11.5質量%の範囲、又は4.5質量%〜10.5質量%の範囲、又は5.0質量%〜9.5質量%の範囲、又は6.0質量%〜8.5質量%の範囲である。アルカリ金属酸化物には、LiO、NaO、又はKOのうちの1つ以上が含まれうる。一実施形態では、NaOは、ガラス中の唯一のアルカリ金属酸化物である。
【0026】
ベースガラスは、ガラス中の元素の酸化状態に影響を及ぼすように、任意選択的に、酸化還元剤を含みうる。酸化還元剤は、2つ以上の酸化状態の間で変換可能な元素の酸化物である。代表的な酸化還元剤として、As、As、Sb、SnO、及びSnOが挙げられる。一実施形態では、酸化還元剤は、SnO、SnO、又はそれらの組合せであり、ガラス組成物は、As及びSbを含まない。酸化還元剤の濃度は、0質量%〜1質量%の範囲、又は0質量%〜0.80質量%の範囲、又は0質量%〜0.60質量%の範囲、又は0質量%〜0.40質量%の範囲、又は0.005質量%〜0.60質量%の範囲、又は0.005質量%〜0.40質量%の範囲、又は0.005質量%〜0.25質量%の範囲、又は0.01質量%〜0.50質量%の範囲、又は0.01質量%〜0.40質量%の範囲、又は0.01質量%〜0.25質量%の範囲、又は0.05質量%〜0.30質量%の範囲でありうる。
【0027】
フォトクロミック剤は、銅成分及びハライド成分を含む、ナノ結晶ハロゲン化銅相を含む。銅成分は、Cu及びCu2+の組合せを含む。ハライド成分は、ハライドF、Cl、Br、及びIのうちの1つ以上を含む。ナノ結晶ハロゲン化銅相は、2つ以上のハライドを含みうる。2つ以上のハライドは、Cl及びBrを含みうる。銅成分は、ガラス中にCuOを含め、該ガラスを加熱処理してナノ結晶ハロゲン化銅相を形成することによって、取り込むことができる。ガラス中のCuOの濃度は、0.40質量%〜2.5質量%の範囲、又は0.50質量%〜2.0質量%の範囲、又は0.60質量%〜1.8質量%の範囲、又は0.70質量%〜1.6質量%の範囲、又は0.80質量%〜1.4質量%の範囲、又は0.90質量%〜1.2質量%の範囲でありうる。
【0028】
ガラス中の銅(Cu(すべての酸化状態))の濃度は、ガラス中のCuOの濃度に、Cuの分子量(63.55g/モル)のCuOの分子量(79.55g/モル)に対する比を掛けることによって計算することができる。銅の濃度は、0.32質量%〜2.00質量%の範囲、又は0.40質量%〜1.60質量%の範囲、又は0.48質量%〜1.44質量%の範囲、又は0.56質量%〜1.28質量%の範囲、又は0.64質量%〜1.12質量%の範囲、又は0.72質量%〜0.96質量%の範囲でありうる。ガラス中のCu及びCu2+の相対的な割合は、溶融条件及び周囲、並びに酸化還元剤の存在及び濃度に応じて決まる。
【0029】
フォトクロミック材料の総銅(Cu)含量の少なくとも一部は、ナノ結晶ハロゲン化銅相に存在する。一部の銅(Cu)は、フォトクロミック材料のガラス部分にも存在する。
【0030】
ハライドは、ガラスの形成に用いられるバッチ組成物中にハロゲン化アルカリを含めることによって、フォトクロミックガラスに取り込まれうる。代表的なハロゲン化アルカリとしては、NaCl及びNaBrが挙げられる。ガラス中の総ハライド濃度は、0.01質量%〜1.3質量%の範囲、又は0.01質量%〜1.2質量%の範囲、又は0.02質量%〜1.0質量%の範囲、又は0.05質量%〜0.80質量%の範囲、又は0.10質量%〜0.70質量%の範囲、又は0.15質量%〜0.60質量%の範囲、又は0.20質量%〜0.50質量%の範囲でありうる。
【0031】
一実施形態では、Clは、ガラス中に存在する唯一のハライドである。ガラス中に存在する唯一のハライドとしてのClの濃度は、0.01質量%〜0.80質量%の範囲、又は0.01質量%〜0.60質量%の範囲、又は0.01質量%〜0.50質量%の範囲、又は0.05質量%〜0.50質量%の範囲でありうる。
【0032】
別の実施形態では、Cl及びBrのみが、ハライドとしてガラス中に存在する。ガラス中のClの濃度は、0.01質量%〜0.60質量%の範囲であってよく、Brの濃度は、0.01質量%〜0.70質量%の範囲であってよい、あるいは、ガラス中のClの濃度は、0.01質量%〜0.50質量%の範囲であってよく、Brの濃度は、0.01質量%〜0.60質量%の範囲であってよい、あるいは、ガラス中のClの濃度は、0.01質量%〜0.40質量%の範囲であってよく、Brの濃度は、0.01質量%〜0.50質量%の範囲であってよい。
【0033】
ナノ結晶ハロゲン化銅相は、任意選択的に、銀(Ag)を含んでいてもよい。ガラス中のAgの濃度は、0.01質量%〜0.20質量%の範囲、又は0.01質量%〜0.15質量%の範囲、又は0.01質量%〜0.10質量%の範囲、又は0.005質量%〜0.05質量%の範囲、又は0.005質量%〜0.025質量%の範囲、又は0.005質量%〜0.015質量%の範囲でありうる。フォトクロミック材料の総銀含量の少なくとも一部は、ナノ結晶ハロゲン化銅相に存在する。一部の銀は、フォトクロミック材料のガラス部分に存在しうる。一実施形態では、実質的にすべての銀がナノ結晶ハロゲン化銅相に存在する。銀は、バッチ組成物中に酸化銀(AgO又はAgO)又は硝酸銀(AgNO)を含めることによってフォトクロミック材料中に取り込むことができ、主にAgとしてガラス中に存在する。
【0034】
フォトクロミック剤は、任意選択的に、タングステン及び/又はモリブデンを含む。タングステンは、バッチ組成物中に酸化タングステン(例えば、WO)を含めることによって取り込むことができる。モリブデンは、バッチ組成物中に酸化モリブデン(例えば、MoO)を含めることによって取り込むことができる。フォトクロミックガラス中のWOの濃度は、0質量%〜1.0質量%の範囲、又は0.01質量%〜0.5質量%の範囲、又は0.01質量%〜0.3質量%の範囲、又は0.05質量%〜0.5質量%の範囲、又は0.10質量%〜0.25質量%の範囲でありうる。フォトクロミックガラス中のMoOの濃度は、0質量%〜1.0質量%の範囲、又は0.01質量%〜0.5質量%の範囲、又は0.01質量%〜0.3質量%の範囲、又は0.05質量%〜0.5質量%の範囲、又は0.10質量%〜0.25質量%の範囲でありうる。フォトクロミックガラス中のWOとMoOを合わせた濃度は、0質量%〜1.0質量%の範囲、又は0.05質量%〜0.5質量%の範囲、又は0.10質量%〜0.25質量%の範囲でありうる。
【0035】
フォトクロミック剤は、鋭いカットオフをもたらす。鋭いカットオフは、UV波長又はスペクトルの可視部分の短波長部分の波長に生じうる。以下に記載する処理条件下では、銅及びハライド成分の少なくとも一部が、ガラス中でナノ結晶の形態で沈殿する。ナノ結晶は、銅イオン(Cu)の形態の銅とハロゲン化物イオンとを含む。鋭いカットオフは、結晶ハロゲン化銅に関連した励起子吸収バンドに起因する。励起子吸収バンドは、ハロゲン化銅ナノ結晶のバンド端又はその近くにあり、400nm近辺の鋭い吸収端を特徴とする。吸収端の波長より短い波長は強く吸収される一方、吸収端の波長より長い波長は高効率で透過される。
【0036】
鋭いカットオフは、可視光線からUV光線へと波長を低下させる方向における、吸収の急な上昇として特徴付けられる。急な上昇は、波長(nm単位で表される)に対する吸収係数(cm−1単位で表される)の変化の速度に対応する、吸収端の傾斜として定量することができる。本ガラスの吸収端の傾斜は、少なくとも0.10cm−1/nm、又は少なくとも0.20cm−1/nm、少なくとも0.30cm−1/nm、少なくとも0.40cm−1/nm、又は0.10cm−1/nm〜1.0cm−1/nmの範囲、又は0.15cm−1/nm〜0.80cm−1/nmの範囲、又は0.20cm−1/nm〜0.70cm−1/nmの範囲、又は0.30cm−1/nm〜0.60cm−1/nmの範囲でありうる。吸収端の傾斜は、本明細書では、選択された波長における吸収端の傾斜として表されうる。選択された波長は、420nm未満、又は410nm未満、又は400nm未満、又は390nm未満、又は370nm〜420nmの範囲、又は380nm〜410nmの範囲、又は390nm〜405nmの範囲の波長でありうる。
【0037】
カットオフ波長は、本明細書では、ガラスの2mm厚の試料を通る透過率が1%である波長として定義される。カットオフ波長は、UV又は可視光線の短波長部分における波長である。カットオフ波長は、420nm以下、又は415nm以下、又は410nm以下、又は405nm以下、又は400nm以下、又は395nm以下、又は390nm以下、又は370nm〜420nmの範囲、又は380nm〜410nmの範囲、又は390nm〜405nmの範囲の波長でありうる。
【0038】
カットオフ波長より長い波長は、ガラスを高効率で透過し、カットオフ波長より短い波長は、ガラスを低効率で透過する。カットオフ波長より長い波長は、本明細書では、カットオフ波長を上回る波長と称されうる。カットオフ波長より短い波長は、カットオフ波長を下回る波長と称されうる。
【0039】
ガラスの2mm厚の試料を通る透過率は、カットオフ波長から該カットオフ波長の25nm上にまで及ぶ波長範囲について、99%以上でありうる。ガラスの2mm厚の試料を通る透過率は、カットオフ波長から該カットオフ波長の50nm上にまで及ぶ波長範囲について、99%以上でありうる。ガラスの2mm厚の試料を通る透過率は、カットオフ波長から該カットオフ波長の100nm上にまで及ぶ波長範囲について、99%以上でありうる。ガラスの2mm厚の試料を通る透過率は、カットオフ波長から該カットオフ波長の200nm上にまで及ぶ波長範囲について、99%以上でありうる。
【0040】
ガラスの2mm厚の試料を通る透過率は、カットオフ波長から該カットオフ波長の25nm下にまで及ぶ波長範囲について、1%以下でありうる。ガラスの2mm厚の試料を通る透過率は、カットオフ波長から該カットオフ波長の50nm下にまで及ぶ波長範囲について、1%以下でありうる。ガラスの2mm厚の試料を通る透過率は、カットオフ波長から該カットオフ波長の75nm下にまで及ぶ波長範囲について、1%以下でありうる。ガラスの2mm厚の試料を通る透過率は、カットオフ波長から該カットオフ波長の100nm下にまで及ぶ波長範囲について、1%以下でありうる。
【0041】
一実施形態では、フォトクロミックガラスは、フォトクロミック応答の不存在下では無着色である。本明細書で用いられる場合、無着色とは、平均的な視力を有する観察者が2mmの厚さを有するガラスの試料(その非フォトクロミック状態における)を通して見たときに、色を知覚しないことを意味する。この実施形態では、カットオフ波長は、可視波長はガラス(その非フォトクロミック状態における)を高効率(≧99%の透過率)で透過するが、UV波長はガラス(その非フォトクロミック状態における)を抵抗率(≦1%の透過率)で透過するように、位置付けられる。
【0042】
以下にさらに十分に記載されるように、吸収端のスペクトル位置は、ハロゲン化銅ナノ結晶の組成を調節することによって変動させることができる。例えば、ハライド成分の選択は、吸収端のスペクトル位置に影響を与える。塩化第一銅ナノ結晶の吸収端は、臭化第一銅ナノ結晶の吸収端よりも短い波長において生じる。吸収端の中間の位置は、ハロゲン化銅ナノ結晶中に塩化物と臭化物との組み合わせを含むことによって得ることができ、ここで、該吸収端は、ナノ結晶の臭化物含量がナノ結晶の塩化物含量に対して増加するにつれて、より長い波長へとシフトする。
【0043】
理論に縛られることは望まないが、本ガラスのハロゲン化銅ナノ結晶はCu2+を含むと考えられる。さらには、ハロゲン化銅ナノ結晶中のCu2+の存在により、可視光への曝露の際にハロゲン化銅ナノ結晶からのフォトクロミック応答の開始を可能にする、吸収特徴がもたらされると考えられる。吸収特徴は、励起子吸収に関する吸収端のエネルギー未満のエネルギーで、スペクトルの可視部分に生じる。吸収特徴は、米国特許第5,281,562号明細書に記載される非フォトクロミックハロゲン化銅ガラスには存在しない。本ガラスは、ガラス中の銅の酸化状態、及びガラスの全体的な酸化状態の適切な制御が、ハロゲン化銅ナノ結晶におけるCu2+の取り込みを可能にすること、及び、ハロゲン化銅ナノ結晶中のCu2+の存在によって、Cu2+を欠くハロゲン化銅ナノ結晶に関するスペクトルのUV又は短波長可視部分における鋭いカットオフを保持しつつ、ハロゲン化銅ナノ結晶がフォトクロミック応答を示すことができるようにすることを実証する。
【0044】
図1は、ハロゲン化銅ナノ結晶を有するガラス、及びハロゲン化銅ナノ結晶を欠いている同様の組成のガラスについての吸収スペクトルを示している。スペクトル10は、77.05質量%のSiO、2.16質量%のAl、14.6質量%のB、4.5質量%のNaO、0.44質量%のSnO、0.28質量%のCuO、0.14質量%のCl、及び0.057質量%のBrの組成を有するガラスの2mm厚の試料のスペクトルを示している。スペクトル10は、可視光線における高い透過性及び400nm近辺における急勾配の吸収端の存在を示している。急勾配の吸収端は、ガラス中のハロゲン化銅ナノ結晶の存在を示唆しており、ハロゲン化銅ナノ結晶における励起子吸収プロセスに対応する。スペクトル20は、ハロゲン化銅ナノ結晶を欠いた2mm厚のガラス試料のスペクトルを示している。ガラスは、54.35質量%のSiO、6.87質量%のAl、28.6質量%のB、7.77質量%のNaO、0.10質量%のSnO、1.20質量%のCuO、0.18質量%のWO、及び0.023質量%のAgの組成を有していた。組成物はCuを含んでいたが、ハライドを欠いていた。スペクトル20は、可視光線における高い透過性及びUVにおける徐々に増加する吸収を示している。スペクトル20に観察される幅広いUV吸収バンドは、ガラスのバンドギャップ吸収に対応する。ガラス中にハロゲン化銅ナノ結晶が存在しないことから、スペクトル10で観られた鋭い励起子吸収特徴の観察は不可能である。スペクトル10を示すガラスは、スペクトル20を示すガラスと比較して優れたカットオフ性能をもたらす。スペクトル20を示すガラスは、紫外線を吸収するが、それは非常に不完全であり、かなりの量のUV強度がガラスを通過する。
【0045】
スペクトル30は、代表的なベースガラスの2mm厚のガラス試料のスペクトルを示している。ガラスは、56.14質量%のSiO、6.01質量%のAl、29.9質量%のB、8.38質量%のNaO、及び0.12質量%のSnOの組成を有していた。ガラスは、Cuを欠いており、かつ、ハライドを欠いている。スペクトル30は、ガラスが鋭いUVカットオフを示さず、UVスペクトルのかなりの部分を透過させてしまうことを示している。バンド端吸収は、スペクトル10及びスペクトル20で記述されるガラスと比較して、かなり短い波長へとシフトする。結果は、Cuを包含することによって、吸収端がより長い波長へとシフトすること、及び、ある特定の組成及び調製条件内で、さらにハライドを包含することによって、鋭いカットオフ波長がもたらされることを示している。
【0046】
スペクトル10を示すガラスは鋭いカットオフを示しているが、それはフォトクロミックではない。本明細書のガラスは、鋭いカットオフ及びフォトクロミック応答の両方を特徴とする。図2は、本開示に従う代表的なガラスのスペクトルを示している。スペクトル40は、54.58質量%のSiO、6.91質量%のAl、27.70質量%のB、7.8質量%のNaO、0.11質量%のSnO、1.12質量%のCuO、0.02質量%のAg、0.132質量%のCl、及び0.321質量%のBrの組成を有するガラスの2mm厚の試料のスペクトルを示している。ガラスは、ハロゲン化銅ナノ結晶を含み、そのスペクトルは、400nm近辺に鋭い励起子吸収端を示す。スペクトル40に関するガラスは、励起子吸収バンドを超えて可視光線(最大で約500nmまで)に及ぶ波長に、追加的な吸収特徴も示す。追加的な吸収特徴は、ガラスのハロゲン化銅ナノ結晶相中のCu2+の存在に起因すると考えられる。Cu2+の存在は、ガラスのわずかな緑色の色合い、及び、Cu2+の知られている結晶場遷移と一致する800nm近辺の吸収バンドの存在(図示せず)によって証明される。
【0047】
スペクトル50は、54.43質量%のSiO、6.90質量%のAl、28.0質量%のB、7.74質量%のNaO、0.10質量%のSnO、1.12質量%のCuO、0.17質量%のWO、0.019質量%のAg、0.132質量%のCl、及び0.325質量%のBrの組成を有するガラスの2mm厚の試料のスペクトルを示している。WOを含むほかは、スペクトル50を示すガラスは、スペクトル40を示すガラスと組成的に同様である。ガラス中にWOを包含することは、ハロゲン化銅ナノ結晶中のCu2+の存在に起因する吸収に加えて、スペクトルの可視部分における吸収の増強につながる。400nm近辺の鋭いUVカットオフは保持される。
【0048】
理論に縛られることは望まずに、ハロゲン化銅ナノ結晶相中のCu2+の存在は、ハロゲン化銅のバンドギャップナノ結晶内に欠陥状態を取り込むと考えられる。バンドギャップにおける欠陥状態の存在は、吸収遷移が起こりうる、追加的な状態をもたらす。このような吸収遷移は、バンドギャップエネルギー未満のエネルギーにおいて、したがって、バンド端の吸収又は励起子吸収に関する吸収遷移よりも長い波長において、生じうる。図2に見られるCu2+に関連する欠陥吸収バンドは、ハロゲン化銅ナノ結晶のバンドギャップに存在する欠陥状態に由来すると考えられる。Cu2+がハロゲン化銅ナノ結晶内に取り込まれると、それは、Cu部位を占拠する。電荷の中立性を保つために、1つのCu2+イオンが構造内に入り、2つのCuイオンが取り除かれる。Cu2+イオンはCu部位の一方を占拠し、他方のCu部位は空位となる。空位及びCu2+イオンは、ハロゲン化銅ナノ結晶の構造における摂動を示す。この摂動は、周期性を中断し、バンドギャップに状態を生成する。失われたCuイオンに関連する空位は、カチオン空位である。Cuイオンの不存在によって、空位に隣接するClイオンの電子の結合エネルギーが低下し、ハロゲン化銅ナノ結晶の価電子帯端をわずかに上回るエネルギーに位置付けられた、欠陥に関連するエネルギー状態を生成すると考えられる。同様に、Cu2+は、Cuイオンと置き換わり、近隣のClイオンに強い引力を発揮して、ハロゲン化銅ナノ結晶の伝導帯端をわずかに下回るエネルギーに位置付けられた、欠陥に関連するエネルギー状態を生成する、Cuイオンに対する電子欠損である。
【0049】
ハロゲン化銅ナノ結晶中のCu2+の取り込みの正味の効果は、ハロゲン化銅のバンドギャップにおける、1つ以上の欠陥関連エネルギー状態の取り込みである。欠陥に関連するエネルギー状態は、伝導帯端及び/又は価電子帯端近辺のバンドギャップに位置づけられうる。欠陥状態間、価電子帯の状態と欠陥状態との間、又は欠陥状態と伝導帯との間の光学遷移は、バンドギャップのエネルギーを下回るエネルギー、及び励起子吸収のエネルギーを下回るエネルギーにおいて起こる。これらのタイプの1つ以上の遷移は、本フォトクロミックガラスにおいて、可視光線に見られる、Cu2+に関連する欠陥吸収に寄与する。
【0050】
ハロゲン化銅ナノ結晶相は、550nm未満、又は525nm未満、又は500nm未満、又は475nm未満、又は450nm未満、又は400nm〜575nmの範囲、又は400nm〜550nmの範囲、又は400nm〜525nmの範囲の波長において、可視光線を吸収しうる。
【0051】
可視光線におけるCu2+に関連する欠陥吸収特徴の存在が、本ガラスにおけるフォトクロミック応答を可能にすると考えられる。フォトクロミック応答の機構は、CuのCuへの還元、並びに、ハロゲン化銅ナノ結晶内及びその表面においてCuイオンが凝集してCuナノ相を形成することを含む。Cuナノ相は、可視光線を幅広く吸収してフォトダークニング効果をもたらす、表面プラズモンを有する。可視光線におけるCu2+に関連する欠陥吸収は、CuのCuへの光還元を生じさせるのに必要とされるエネルギーを提供することによって、ハロゲン化銅ナノ結晶にフォトクロミック応答を誘起するのに必要とされるエネルギーを取り込むための機構を提供する。フォトクロミック応答を欠くハロゲン化銅ナノ結晶を有するガラスでは、Cu2+に関連する欠陥特徴は観察されず、それによって可視光がCuのCuへの光還元を推進するのに必要なエネルギーを取り込むことができる機構は存在しない。非フォトクロミックハロゲン化銅ガラスは、Cu2+を含んでいても含んでいなくてもよい。しかしながら、存在する場合には、非フォトクロミックハロゲン化銅ガラス中のCu2+は、ガラス相に存在し、ナノ結晶ハロゲン化銅相には存在しない。
【0052】
本ガラスは、本明細書に記載される組成物と一致する割合で、構成物質である酸化物及びハライド化合物バッチ溶融することによって調製することができる。構成成分を合わせてバッチ組成物を形成し、溶融させる。溶融工程は、るつぼ又は他の適切な容器内で行うことができ、溶融ガラスは、ドロー、スピニング、プレス、モールディング、冷却等の従来の成形方法によってガラスへと成形されうる。ガラスは、任意選択的にアニーリングされてもよい。
【0053】
ガラスにスペクトルのUV又は短波長可視部分における鋭いカットオフを与えるためには、ガラス中にハロゲン化銅ナノ結晶相を確立することが必要である。可視光励起時にフォトクロミック応答をさらに確実にするためには、一実施形態では、ハロゲン化銅ナノ結晶相に有効量のCu2+を含めることが必要である。本ガラス組成物及び加熱処理条件によって、適切な濃度のCu2+を有するハロゲン化銅ナノ結晶相を形成可能にするガラスの酸化状態が確立される。
【0054】
ハロゲン化銅ナノ結晶の形成に好ましい加熱処理条件は、周囲空気中で480℃〜550℃に加熱する工程、及び、少なくとも1分、又は少なくとも10分、又は少なくとも20分、又は少なくとも30分、又は少なくとも1時間、又は少なくとも2時間、又は少なくとも4時間、又は少なくとも8時間、又は少なくとも12時間、又は少なくとも16時間、又は1分〜24時間の範囲の時間、又は1分〜12時間の範囲の時間、又は5分〜24時間の範囲の時間、又は30分〜20時間の範囲の時間、又は1時間〜16時間の範囲の時間、又は1時間〜10時間の範囲の時間,保持する工程を含む。
【0055】
加熱処理は、バッチ組成物の溶融後に行われる。バッチ組成物は冷却され、凝固されうる。本明細書に開示される加熱処理は、室温に達する前に、溶融条件から室温へとバッチ組成物が冷却される際に、バッチ組成物の冷却の間に行われうる。あるいは、加熱処理は、凝固したバッチ組成物を本明細書で開示される加熱処理条件に再加熱することによって、バッチ組成物が凝固した後又は室温まで冷却された後に行われうる。
【0056】
図3(a)〜(c)は、異なる加熱処理条件における、代表的なガラスのフォトダークニング応答を示している。ガラス組成は、54.44質量%のSiO、6.98質量%のAl、28.68質量%のB、7.70質量%のNaO、0.93質量%のCuO、0.83質量%のAs、0.168質量%のCl、及び0.19質量%のBrであった。ガラスの厚さは2mmであった。ガラスは、空気中、500℃で2時間(図3(a))、12時間(図3(b))、及び24時間(図3(c))、加熱処理された。グラフは、広帯域光源(1kWのHgXeランプ)に対する曝露時間の関数としての透過率を示している。図3(a)〜(c)において破線によって画定された時間までの曝露時間については、光源は、400nmのロングパスフィルタを用いてフィルタリングされ、ガラスは、400nmよりも長い波長を有する光にのみ曝露された。図3(a)〜(c)において破線によって画定された時間よりも長い曝露時間については、ロングパスフィルタは取り外され、試料は光源の全スペクトルに曝露された。
【0057】
フォトダークニング応答は、試料を通るグリーンレーザビームの透過率を測定することによって特徴付けられた。グリーンレーザビームの強度は、グリーンレーザが、広帯域光源によって生成されるフォトダークニング効果を変化させるのを防ぐために低く保たれた。加熱処理の前に、ガラスは、400nmにおいて高い透過性を示した。加熱処理の際に、ハロゲン化銅ナノ結晶の形成に起因して、強い吸収端が形成される。吸収端は、短時間の加熱時に顕著である(例えば、図3(a))。吸収端の波長は、ハロゲン化銅ナノ結晶中のClのBrに対する比によって制御される。ガラスを400nmより大きい光の波長で照射したときに見られる透過率の低下からも分かるように、さらなる加熱処理の際に(例えば、図3(b)及び3(c))、ハロゲン化銅相の存在によって、フォトクロミズムが誘起される。
【0058】
図4は、銅及びハライドを含む、2つのガラスの吸収スペクトルを示している。スペクトル60は、53.89質量%のSiO、8.65質量%のAl、26.60質量%のB、8.64質量%のNaO、0.96質量%のCuO、0.71質量%のAs、0.218質量%のCl、及び0.121質量%のBrの組成を有する2mm厚のガラスについて測定された。スペクトル70は、51.22質量%のSiO、21.02質量%のAl、10.40質量%のB、14.02質量%のNaO、0.85質量%のCuO、0.66質量%のAs、0.286質量%のCl、及び0.121質量%のBrの組成を有する2mm厚のガラスについて測定された。図4のスペクトルは、両方のガラスが銅及びハライドを含んでいるが、スペクトル60を有するガラスのみが、400nm近辺に鋭いカットオフをもたらす励起吸収特徴を示したことを示している。スペクトル70を示すガラスのベースガラスは、加熱処理の際にハロゲン化銅ナノ結晶の形成を可能にする範囲外にある。スペクトル70における励起子吸収特徴の欠如は、ガラス中のハロゲン化銅ナノ結晶の不存在を原因とする。図4の結果は、銅及びハライド成分を含むガラスに由来するハロゲン化銅ナノ結晶の安定化には、適切な組成を有するベースガラスが必要とされることを示唆している。ガラス中の銅及びハライドの単なる存在では、ハロゲン化銅ナノ結晶相の安定化を可能にするには不十分である。
【0059】
図5は、励起子吸収を示す2つのガラスの吸収スペクトルを示している。スペクトル80は、54.21質量%のSiO、6.89質量%のAl、28.73質量%のB、7.76質量%のNaO、1.04質量%のCuO、0.10質量%のSnO、0.17のWO質量%、0.021質量%のAg、0.132質量%のCl、及び0.316質量%のBrの組成を有する248μm厚のガラスについて測定された。スペクトル90は、54.26質量%のSiO、6.90質量%のAl、28.73質量%のB、7.86質量%のNaO、0.94質量%のCuO、0.10質量%のSnO、0.17のWO質量%、0.019質量%のAg、0.077質量%のCo、0.134質量%のCl、及び0.321質量%のBrの組成を有する268μm厚のガラスについて測定された。両ガラスは、銅、ハライド、Ag、及びWOを含んでいる。スペクトル90を有するガラスはまた、低濃度のCoも含んでいる。結果は、適切なベースガラス組成を有するガラスについては、Ag、WO及び着色剤の取り込みによって、ハロゲン化銅ナノ結晶の形成が妨げられないことを示唆している。励起子吸収特徴は、両ガラスに観察される。
【0060】
図6(a)及び6(b)は、ハロゲン化銅ナノ結晶相のハライド組成の点で異なる、一連の試料についての吸収スペクトルを示している。ガラスは、下記表1に列挙された組成92〜97を有し、図6(a)及び6(b)にトレース92〜97としてそれぞれ示されるスペクトルを有している。組成92、93、及び94についてのスペクトルは、図6(a)に示されるスケールでは似ており、図6(b)に示される拡大図では、より容易に区別される。
【0061】
【表1】
【0062】
ベースガラス組成は、組成92〜97について同様である。目的とする差異はハライド含量である。Cl濃度は、一連の組成92〜97にわたって減少し、Br濃度は、一連の組成92〜97わたって増加している。各スペクトルは、ハロゲン化銅ナノ結晶相の存在と一致する、励起子吸収特徴を示している。結果は、Br濃度が増加するにつれて、励起子吸収特徴に関連するカットオフ波長は、より長い波長へとシフトすることを示唆している。最も短いカットオフ波長は、組成92で観察され、Br濃度が増加するにつれて、次第に長くなるカットオフ波長が観察された。図6(b)は、カットオフ波長付近のスペクトルの拡大図を示している。傾向は、ガラス中のBr含量(Brの分子量(79.9g/モル)に対して正規化された質量%)の全ハライド含量(Br+Cl)(Brの分子量(79.9g/モル)に対して正規化された質量%Brと、Clの分子量(35.5g/モル)に対して正規化された質量%Clとの合計)に対する比の関数としてのUVカットオフ波長を示す、図7において定量化されている。図7におけるデータ点は、表1並びに図6(a)及び6(b)に示す組成に従って標識されている。データは、ハロゲン化銅ナノ結晶相のハライド組成を変化させることによる、カットオフ波長を制御する能力を実証している。
【0063】
さらなる実施形態では、本明細書は、銀を含むハロゲン化銅ナノ結晶相を有する、鋭いUVカットオフを有するフォトクロミックガラスに及ぶ。銀含有ハロゲン化銅ナノ結晶相はまた、Cu2+も含む。銀は、バッチ組成物中に酸化銀(AgO又はAgO)又は硝酸銀(AgNO)などの銀前駆体を含めることによって、ガラス組成物中に取り込まれうる。銀は、ガラス中に主にAgとして存在し、フォトクロミック遷移の間に光還元によってAgへと還元される。
【0064】
ハロゲン化銅ナノ結晶内へのAgの取り込みは、フォトクロミック性能を高めることが観察されている。図8(a)及び8(b)は、2つのフォトクロミックガラスのフォトダークニング応答を示している。フォトダークニング応答は、図3(a)〜3(c)に関連して上述したように測定された。図8(a)に示すガラスは、2mmの厚さ、及び、54.21質量%のSiO、6.89質量%のAl、28.73質量%のB、7.76質量%のNaO、1.04質量%のCuO、0.10質量%のSnO、0.17のWO質量%、0.021質量%のAg、0.132質量%のCl、及び0.316質量%のBrの組成を有しており、ハロゲン化銅ナノ結晶相中にAgを含んでいた。図8(b)に示すガラスは、2mmの厚さ、及び54.53質量%のSiO、6.93質量%のAl、28.78質量%のB、7.91質量%のNaO、1.07質量%のCuO、0.11質量%のSnO、0.149質量%のCl、及び0.33質量%のBrの組成を有しており、ハロゲン化銅ナノ結晶相中にAgを欠いていた。結果は、Agが組成物に含まれていた場合に、ガラスのフォトダークニングの速度が顕著に改善したことを示している。組成物中のWOの存在もまた、フォトダークニングプロセスを促進した。図8(b)における2.5分付近のピークは、照明ランプを30秒間覆ったときの退色を示している。
【0065】
図9(a)〜(c)は、Agを有するハロゲン化銅ナノ結晶相を含むフォトクロミックガラスのフォトダークニング応答における温度の影響を示している。ガラス組成は、54.21質量%のSiO、6.88質量%のAl、28.73質量%のB、7.73質量%のNaO、1.14質量%のCuO、0.10質量%のSnO、0.18のWO質量%、0.022質量%のAg、0.131質量%のCl、及び0.34質量%のBrであった。ガラスの厚さは2mmであった。フォトダークニング応答は、図3(a)〜3(c)に関して上述したように測定された。図9(a)、9(b)、及び9(c)は、それぞれ、72°F(約22.22℃)、122°F(約50.00℃)、及び160°F(約71.11℃)における応答を示している。温度が上昇するにつれて、フォトダークニング応答は弱まる。1000/T(K−1単位で表される)の関数としてのフォトダークニング応答に関連した吸収(mm−1単位で表される)の温度依存のアレニウスプロットが、図9(d)に提示されている。報告される吸収は、ガラスを白色光に5分間曝露した後の吸収である。アレニウスプロットは、フォトダークニング応答の基礎となる機構の拡散制御プロセスと一致する、逆数温度に対する線形依存性を示している。
【0066】
図10(a)及び10(b)は、それぞれ、Agを有する及び有しない、ナノ結晶ハロゲン化銅相を有するガラスについてのフォトダークニングに関連した差分吸光度スペクトルを示している。図10(a)に示されるスペクトルを示すガラスは、54.22質量%のSiO、6.93質量%のAl、28.69質量%のB、7.76質量%のNaO、0.94質量%のCuO、0.87質量%のAs、0.021質量%のAg、0.235質量%のCl、及び0.12質量%のBrの組成を有し、図10(b)に示されるスペクトルを示すガラスは、54.01質量%のSiO、6.90質量%のAl、28.66質量%のB、7.76質量%のNaO、0.97質量%のCuO、0.80質量%のAs、0.18のWO質量%、0.242質量%のCl、及び0.134質量%のBrの組成を有していた。ガラス試料の厚さは2mmであった。
【0067】
図10(a)及び10(b)に示される差分吸光度バンドに関連した吸光度は、可視光への曝露時にガラスに観察されるダークニングの原因となる。ガラスを分光光度計に入れ、それらをブルーレーザ(405nm)に曝露することによってフォトダークニングさせた。ガラスにダークスポットが現れるまで、ガラス試料をブルーレーザに曝露した。次に、ブルーレーザを除去し、ブルーレーザの除去の時間に対し、時間の関数として一連の差分スペクトルを得た。差分スペクトルは、フォトダークニングに関連した吸収遷移の退色応答を示している。図10(a)及び10(b)に示される差分スペクトルの横座標、Δ(吸収)は、その本来の(非フォトダークニング)状態のガラスに対する、フォトダークニング状態におけるガラスの吸光度変化に対応する。図10(a)及び10(b)の最大強度を有する差分スペクトルは、ブルーレーザの除去後の最初の測定スキャンにおける、その非ダークニング状態に対するガラスの吸収の差分に対応する。残りのスペクトルは、ガラスがその本来の非ダークニング状態へと戻るときの光誘起された吸収の退色を示している。光源の除去後の連続的なスペクトルスキャンとして、一連のスペクトルを得た。図10(a)及び10(b)の凡例に記載されている時間(時間:分:秒として表される)は、連続的なスペクトルスキャンの開始時間に対応する。スキャンには限られた量の時間が必要であり、差分スペクトルがスキャンの測定時間全体にわたる平均に対応しうるように、スキャン中にある程度の退色が起こりうることが理解される。ブルーレーザを除去した後の時間の経過においてスペクトルを順序付けた(高強度から低強度まで)。時間が増加するにつれて、フォトダークニング応答が逆転し、ガラスがそれらの本来の非ダークニング状態へと戻るときに、吸収強度のより多くの退色が観察される。
【0068】
図10(a)及び10(b)に提示されるスペクトルの特筆すべき特徴は、ナノ結晶ハロゲン化銅相中にAgを有するガラス及びナノ結晶ハロゲン化銅相中にAgを有しないガラスについての吸収特徴の波長の差異である。ナノ結晶ハロゲン化銅相中にAgを有しないガラス(図10(b))は、ナノ結晶ハロゲン化銅相中にAgを有するガラス(図10(a))のスペクトルには見られない、強い吸収ピークを600nm付近に示す。600nm付近に観察されるスペクトル特徴は、ダークニング状態へのフォトクロミック遷移の間のCuへのCuの光還元と一致しており、ハロゲン化銅ナノ結晶又はその表面近くにおける凝集したCuナノ相に関連したプラズモン吸収に対応する。ナノ結晶ハロゲン化銅相中にAgを有するガラスの主な吸収特徴は、500nm近辺に生じる。この特徴は、古典的なハロゲン化銀フォトクロミックガラスにおける、凝集したAgナノ相に関連した、知られているプラズモン吸収バンドと一致している。結果は、Ag含有ハロゲン化銅ナノ結晶相の光励起の際に、Agの優先的な還元が起こることを示唆している。Agプラズモン吸収遷移の吸光係数は、Cuプラズモン吸収遷移の吸光係数よりも高く、これは、図8(a)及び8(b)に記載される増強されたフォトダークニング効果と一致する。
【0069】
Agを含むナノ結晶ハロゲン化銅相を有するフォトクロミックガラスは、390nm〜540nmの範囲、又は450nm〜530nmの範囲、又は460nm〜520nmの範囲の波長にピーク吸収を有しうる。Ag及びCu2+を含むナノ結晶ハロゲン化銅相を有するフォトクロミックガラスは、390nm〜540nmの範囲、又は450nm〜530nmの範囲、又は460nm〜520nmの範囲の波長にピーク吸収を有しうる。
【0070】
他に明記されない限り、本明細書に記載される方法はいずれも、その工程が特定の順序で行われると解釈されることは決して意図されていない。したがって、方法の請求項がその工程が従うべき順序を実際に記載していない場合、あるいは、その工程が特定の順序に制限されるべきであることが特許請求の範囲又は明細書に特に記載されていない場合には、特定の順序が推測されることは決して意図されていない。
【0071】
例示された実施形態の精神又は範囲から逸脱することなく、さまざまな修正及び変形がなされうることは、当業者にとって明白であろう。例示される実施形態の精神及び実体を取り込む、開示される実施形態の修正、組合せ、部分組合せ、及び変形は、当業者に想起されうることから、本明細書は、添付の特許請求の範囲及びその等価物の範囲内のすべてを含むと解釈されるべきである。
【0072】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0073】
実施形態1
フォトクロミックガラスであって、
19質量%〜39質量%のB、0.5質量%〜15質量%のAl、46質量%〜65質量%のSiO、3.5質量%〜12.5質量%のアルカリ金属酸化物、及び0.005質量%〜0.40質量%のSnOを含むベースガラスと、
0.56質量%〜1.28質量%の銅と、
0.1質量%〜0.7質量%のハライドと、
前記ベースガラス内にナノ結晶ハロゲン化銅相を含むフォトクロミック剤であって、該ナノ結晶ハロゲン化銅相が、前記銅の少なくとも一部を含む銅成分と、前記ハライドの少なくとも一部を含むハライド成分とを含み、前記銅の該少なくとも一部がCu及びCuを含む、フォトクロミック剤と
を含み、
410nm未満のカットオフ波長を有する、
フォトクロミックガラス。
【0074】
実施形態2
前記ベースガラスが、22質量%〜35質量%のB、1.0質量%〜11質量%のAl、50質量%〜61質量%のSiO、及び4.5質量%〜10.5質量%のアルカリ金属酸化物を含むことを特徴とする、実施形態1に記載のフォトクロミックガラス。
【0075】
実施形態3
前記ベースガラスが、24質量%〜33質量%のB、1.5質量%〜9質量%のAl、52質量%〜59質量%のSiO、及び5.0質量%〜9.5質量%のアルカリ金属酸化物を含むことを特徴とする、実施形態1に記載のフォトクロミックガラス。
【0076】
実施形態4
前記アルカリ金属酸化物がNaOであることを特徴とする、実施形態1〜3のいずれかに記載のフォトクロミックガラス。
【0077】
実施形態5
前記ガラスが、前記銅を0.64質量%〜1.12質量%含むことを特徴とする、実施形態1〜4のいずれかに記載のフォトクロミックガラス。
【0078】
実施形態6
前記ガラスが、前記銅を0.72質量%〜0.96質量%含むことを特徴とする、実施形態1〜4のいずれかに記載のフォトクロミックガラス。
【0079】
実施形態7
前記ガラスが、前記ハライドを0.01質量%〜1.20質量%含むことを特徴とする、実施形態1〜6のいずれかに記載のフォトクロミックガラス。
【0080】
実施形態8
前記ガラスが、前記ハライドを0.10質量%〜0.60質量%含むことを特徴とする、実施形態1〜6のいずれかに記載のフォトクロミックガラス。
【0081】
実施形態9
前記ハライドがClであることを特徴とする、実施形態1〜8のいずれかに記載のフォトクロミックガラス。
【0082】
実施形態10
前記ガラスが、前記ハライドを0.01質量%〜0.80質量%含むことを特徴とする、実施形態9に記載のフォトクロミックガラス。
【0083】
実施形態11
前記ガラスが、前記ハライドを0.05質量%〜0.50質量%含むことを特徴とする、実施形態9に記載のフォトクロミックガラス。
【0084】
実施形態12
前記ハライドが、ClとBrとの組合せであることを特徴とする、実施形態1〜8のいずれかに記載のフォトクロミックガラス。
【0085】
実施形態13
前記ガラスが、前記Clを0.01質量%〜0.60質量%、及び前記Brを0.01質量%〜0.70質量%含むことを特徴とする、実施形態12に記載のフォトクロミックガラス。
【0086】
実施形態14
前記ガラスが、前記Clを0.01質量%〜0.40質量%、及び前記Brを0.01質量%〜0.50質量%含むことを特徴とする、実施形態12に記載のフォトクロミックガラス。
【0087】
実施形態15
前記ナノ結晶ハロゲン化銅相が、400nm〜575nmの波長範囲にわたる光を吸収することを特徴とする、実施形態1〜14のいずれかに記載のフォトクロミックガラス。
【0088】
実施形態16
前記ナノ結晶ハロゲン化銅相が、450nm〜525nmの波長範囲にわたる光を吸収することを特徴とする、実施形態1〜14のいずれかに記載のフォトクロミックガラス。
【0089】
実施形態17
前記ガラスが、420nm未満のカットオフ波長を有する吸収端を示すことを特徴とする、実施形態1〜16のいずれかに記載のフォトクロミックガラス。
【0090】
実施形態18
前記ガラスが、400nm未満のカットオフ波長を有する吸収端を示すことを特徴とする、実施形態1〜16のいずれかに記載のフォトクロミックガラス。
【0091】
実施形態19
前記ガラスが、370nm〜420nmの範囲のカットオフ波長を有する吸収端を示すことを特徴とする、実施形態1〜16のいずれかに記載のフォトクロミックガラス。
【0092】
実施形態20
前記ガラスが、390nm〜405nmの範囲のカットオフ波長を有する吸収端を示すことを特徴とする、実施形態1〜16のいずれかに記載のフォトクロミックガラス。
【0093】
実施形態21
前記ガラスが、少なくとも0.20cm−1/nmの傾斜を有する吸収端を示すことを特徴とする、実施形態1〜20のいずれかに記載のフォトクロミックガラス。
【0094】
実施形態22
前記傾斜が、370nm〜420nmの範囲の波長において生じることを特徴とする、実施形態21に記載のフォトクロミックガラス。
【0095】
実施形態23
前記ガラスが、少なくとも0.40cm−1/nmの傾斜を有する吸収端を示すことを特徴とする、実施形態1〜20のいずれかに記載のフォトクロミックガラス。
【0096】
実施形態24
前記傾斜が、370nm〜420nmの範囲の波長において生じることを特徴とする、実施形態23に記載のフォトクロミックガラス。
【0097】
実施形態25
前記ガラスが銀をさらに含み、前記ナノ結晶ハロゲン化銅相が、前記銀の少なくとも一部をさらに含むことを特徴とする、実施形態1〜24のいずれかに記載のフォトクロミックガラス。
【0098】
実施形態26
前記ナノ結晶ハロゲン化銅相が、440nm〜540nmの範囲のピーク波長を有する吸収バンドを示すことを特徴とする、実施形態25に記載のフォトクロミックガラス。
【0099】
実施形態27
前記ガラスが、405nm以下のカットオフ波長を有することを特徴とする、実施形態1〜26のいずれかに記載のフォトクロミックガラス。
【0100】
実施形態28
前記ガラスが、400nm以下のカットオフ波長を有することを特徴とする、実施形態1〜26のいずれかに記載のフォトクロミックガラス。
【0101】
実施形態29
前記ガラスが、395nm以下のカットオフ波長を有することを特徴とする、実施形態1〜26のいずれかに記載のフォトクロミックガラス。
【0102】
実施形態30
前記ガラスが無着色であることを特徴とする、実施形態1〜29のいずれかに記載のフォトクロミックガラス。
【0103】
実施形態31
2mmの厚さを有する前記ガラスの試料が、前記カットオフ波長から該カットオフ波長を25nm上回る波長までの波長範囲にわたる各波長において、99%以上の透過率を有することを特徴とする、実施形態1〜30のいずれかに記載のフォトクロミックガラス。
【0104】
実施形態32
前記試料が、前記カットオフ波長から該カットオフ波長を25nm下回る波長までの波長範囲にわたる各波長において、1%以下の透過率を有することを特徴とする、実施形態31に記載のフォトクロミックガラス。
【0105】
実施形態33
2mmの厚さを有する前記ガラスの試料が、前記カットオフ波長から該カットオフ波長を50nm上回る波長までの波長範囲にわたる各波長において、99%以上の透過率を有することを特徴とする、実施形態1〜30のいずれかに記載のフォトクロミックガラス。
【0106】
実施形態34
前記試料が、前記カットオフ波長から該カットオフ波長を50nm下回る波長までの波長範囲にわたる各波長において、1%以下の透過率を有することを特徴とする、実施形態33に記載のフォトクロミックガラス。
【0107】
実施形態35
2mmの厚さを有する前記ガラスの試料が、前記カットオフ波長から該カットオフ波長を100nm上回る波長までの波長範囲にわたる各波長において、99%以上の透過率を有することを特徴とする、実施形態1〜30のいずれかに記載のフォトクロミックガラス。
【0108】
実施形態36
前記試料が、前記カットオフ波長から該カットオフ波長を75nm下回る波長までの波長範囲にわたる各波長において、1%以下の透過率を有することを特徴とする、実施形態35に記載のフォトクロミックガラス。
【0109】
実施形態37
2mmの厚さを有する前記ガラスの試料が、前記カットオフ波長から該カットオフ波長を200nm上回る波長までの波長範囲にわたる各波長において、99%以上の透過率を有することを特徴とする、実施形態1〜30のいずれかに記載のフォトクロミックガラス。
【0110】
実施形態38
前記試料が、前記カットオフ波長から該カットオフ波長を25nm下回る波長までの波長範囲にわたる各波長において、1%以下の透過率を有することを特徴とする、実施形態37に記載のフォトクロミックガラス。
【0111】
実施形態39
フォトクロミックガラスを製造する方法であって、
19質量%〜39質量%のB、0.5質量%〜15質量%のAl、46質量%〜65質量%のSiO、3.5質量%〜12.5質量%のアルカリ金属酸化物、0.40質量%〜2.5質量%のCuO、及び0.01質量%〜1.3質量%のハライドを含むバッチ組成物を溶融する工程
を含む、方法。
【0112】
実施形態40
前記バッチ組成物が、22質量%〜35質量%のB、1.0質量%〜11質量%のAl、50質量%〜61質量%のSiO、4.5質量%〜10.5質量%のアルカリ金属酸化物、0.60質量%〜1.8質量%のCuO、及び0.10質量%〜0.60質量%のハライドを含むことを特徴とする、実施形態39に記載の方法。
【0113】
実施形態41
前記ハライドがClを含むことを特徴とする、実施形態38又は39に記載の方法。
【0114】
実施形態42
前記バッチ組成物が、前記ハライドを0.01質量%〜0.80質量%含むことを特徴とする、実施形態39〜41のいずれかに記載の方法。
【0115】
実施形態43
前記バッチ組成物が、前記ハライドを0.05質量%〜0.50質量%含むことを特徴とする、実施形態39〜41のいずれかに記載の方法。
【0116】
実施形態44
前記ハライドがCl及びBrを含むことを特徴とする、実施形態38又は39に記載の方法。
【0117】
実施形態45
前記バッチ組成物が、前記Clを0.01質量%〜0.60質量%、及び前記Brを0.01質量%〜0.70質量%含むことを特徴とする、実施形態44に記載の方法。
【0118】
実施形態46
前記バッチ組成物が、前記Clを0.01質量%〜0.40質量%、及び前記Brを0.01質量%〜0.50質量%含むことを特徴とする、実施形態44に記載の方法。
【0119】
実施形態47
前記バッチ組成物が、酸化還元剤をさらに含むことを特徴とする、実施形態39〜46のいずれかに記載の方法。
【0120】
実施形態48
前記酸化還元剤が、Snを含むことを特徴とする、実施形態47に記載の方法。
【0121】
実施形態49
前記バッチ組成物が、前記酸化還元剤を最大で0.80質量%まで含むことを特徴とする、実施形態48に記載の方法。
【0122】
実施形態50
前記バッチ組成物が、酸化銀をさらに含むことを特徴とする、実施形態39〜49のいずれかに記載の方法。
【0123】
実施形態51
前記バッチ組成物を冷却する工程をさらに含み、該冷却する工程が前記溶融する工程の後に起こることを特徴とする、実施形態39〜50のいずれかに記載の方法。
【0124】
実施形態52
前記冷却する工程が、前記バッチ組成物を、480℃〜550℃の範囲の温度で少なくとも1時間、維持する工程を含むことを特徴とする、実施形態51に記載の方法。
【0125】
実施形態53
前記冷却する工程が、前記バッチ組成物を、480℃〜550℃の範囲の温度で少なくとも4時間、維持する工程を含むことを特徴とする、実施形態51に記載の方法。
【0126】
実施形態54
前記冷却する工程が、前記バッチ組成物を、480℃〜550℃の範囲の温度で少なくとも8時間、維持する工程を含むことを特徴とする、実施形態51に記載の方法。
【0127】
実施形態55
前記冷却する工程が、前記バッチ組成物を凝固させてガラスを形成することを特徴とする、実施形態51に記載の方法。
【0128】
実施形態56
前記ガラスを加熱する工程をさらに含み、該加熱する工程が、480℃〜550℃の範囲の温度で1分〜24時間の範囲の時間、前記ガラスを維持する工程を含むことを特徴とする、実施形態55に記載の方法。
【0129】
実施形態57
前記加熱する工程が、前記ガラスを、480℃〜550℃の範囲の温度で1分〜12時間の範囲の時間、維持する工程を含むことを特徴とする、実施形態56に記載の方法。
【0130】
実施形態58
前記加熱する工程が、前記ガラスを、480℃〜550℃の範囲の温度で1時間〜10時間の範囲の時間、維持する工程を含むことを特徴とする、実施形態56に記載の方法。
【0131】
実施形態59
フォトクロミックガラスであって、
19質量%〜39質量%のB、0.5質量%〜15質量%のAl、46質量%〜65質量%のSiO、3.5質量%〜12.5質量%のアルカリ金属酸化物、及び0.005質量%〜0.40質量%のSnOを含むベースガラスと、
0.64質量%〜1.12質量%の銅と、
0.1質量%〜0.7質量%のハライドと、
前記ベースガラス内にナノ結晶ハロゲン化銅相を含むフォトクロミック剤であって、該ナノ結晶ハロゲン化銅相が、前記銅の少なくとも一部を含む銅成分と、前記ハライドの少なくとも一部を含むハライド成分とを含み、前記銅の少なくとも一部が、Cu及びCuを含む、フォトクロミック剤と、
0.005質量%〜0.05質量%のAgと、
0.05質量%〜0.50質量%のWOと、
を含む、フォトクロミックガラス。
図1
図2
図3(a)】
図3(b)】
図3(c)】
図4
図5
図6(a)】
図6(b)】
図7
図8(a)】
図8(b)】
図9(a)】
図9(b)】
図9(c)】
図9(d)】
図10(a)】
図10(b)】
【国際調査報告】