(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-537733(P2018-537733A)
(43)【公表日】2018年12月20日
(54)【発明の名称】交換可能なアイテムの認証
(51)【国際特許分類】
G06F 21/44 20130101AFI20181122BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20181122BHJP
G06F 21/45 20130101ALI20181122BHJP
【FI】
G06F21/44
G03G21/00 388
G06F21/45
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-513762(P2017-513762)
(86)(22)【出願日】2016年10月27日
(85)【翻訳文提出日】2017年3月10日
(86)【国際出願番号】US2016059118
(87)【国際公開番号】WO2018080497
(87)【国際公開日】20180503
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA
(71)【出願人】
【識別番号】511076424
【氏名又は名称】ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 清春
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】パンシン,ステファン,ディー
(72)【発明者】
【氏名】ワード,ジェファーソン,ピー
(72)【発明者】
【氏名】ネス,エリック,ディー
【テーマコード(参考)】
2H270
【Fターム(参考)】
2H270LA85
2H270LA90
2H270LA98
2H270LD05
2H270MF14
2H270MF22
2H270NB03
2H270NB05
2H270NB07
2H270NB08
2H270NB09
2H270NC01
2H270NC07
2H270NC14
2H270NE16
2H270ZC03
2H270ZC04
(57)【要約】
ホスト装置の交換可能なアイテムは、不揮発性メモリ及び論理回路を備えている。該不揮発性メモリは、パスワードすなわち認証値、及び/又は暗号鍵を格納している。該論理回路は、該ホスト装置内の交換可能なアイテムを認証するために、許容された最大の回数だけパスワードに対する要求に満足に応答する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ実行可能コードを格納している非一時的なコンピュータ可読データ記憶媒体であって、
前記コンピュータ実行可能コードは、
交換可能なアイテムの複数の認証値のうちのある認証値に対する要求を、該交換可能なアイテムが接続されているホスト装置から受け取ったことに応答して、該交換可能なアイテムが、許容された最大回数だけ認証値要求に対してすでに満足に応答したか否かを判定するステップと、
前記交換可能なアイテムが、前記許容された最大回数だけ認証値要求に対してすでに満足に応答したと判定されたことに応答して、要求された認証値を前記ホスト装置に送ることを拒否するステップと、
前記交換可能なアイテムが、前記許容された最大回数だけ認証値要求に対してまだ満足に応答していないと判定されたことに応答して、要求された認証値を前記ホスト装置に送るステップ
を含む方法を実行するために、前記交換可能なアイテムによって実行可能であることかなる、コンピュータ可読データ記憶媒体。
【請求項2】
交換可能なアイテムが、許容された最大回数だけ認証値要求に対してすでに満足に応答したか否かを判定する前記ステップが、
前記認証値のうちのどれが前記認証値要求において要求されたか否かには関係なく、前記交換可能なアイテムが、前記許容された最大回数だけ認証値要求に対してすでに満足に応答したか否かを判定するステップ
を含むことからなる、請求項1のコンピュータ可読データ記憶媒体。
【請求項3】
交換可能なアイテムが、許容された最大回数だけ認証値要求に対してすでに満足に応答したか否かを判定する前記ステップが、
前記交換可能なアイテムが、前記許容された最大回数だけ前記要求された認証値に対する認証値要求にすでに満足に応答したか否かを判定するステップ
を含むことからなる、請求項1のコンピュータ可読データ記憶媒体。
【請求項4】
交換可能なアイテムが、許容された最大回数だけ認証値要求に対してすでに満足に応答したか否かを判定する前記ステップが、
前記交換可能なアイテムが、前記許容された最大回数だけ認証値要求に対してすでに満足に応答したか否かを、どのホスト装置が前記認証値要求を送ったかには関係なく判定するステップ
を含むことからなる、請求項1のコンピュータ可読データ記憶媒体。
【請求項5】
交換可能なアイテムが、許容された最大回数だけ認証値要求に対してすでに満足に応答したか否かを判定する前記ステップが、
前記交換可能なアイテムが、前記許容された最大回数だけ前記ホスト装置からの認証値要求に対してすでに満足に応答したか否かを判定するステップ
を含むことからなる、請求項1のコンピュータ可読データ記憶媒体。
【請求項6】
交換可能なアイテムが、許容された最大回数だけ認証値要求に対してすでに満足に応答したか否かを判定する前記ステップが、
前記交換可能なアイテムが、前記許容された最大回数だけ認証値要求に対してすでに満足に応答したか否かを、前記認証値のうちのどれが前記認証値要求において要求されたかには関係なく、及び、どのホスト装置が前記認証値要求を送ったかには関係なく判定するステップ
を含むことからなる、請求項1のコンピュータ可読データ記憶媒体。
【請求項7】
交換可能なアイテムが、許容された最大回数だけ認証値要求に対してすでに満足に応答したか否かを判定する前記ステップが、
前記交換可能なアイテムが、前記許容された最大回数だけ前記ホスト装置からの前記要求された認証値に対する認証値要求に対してすでに満足に応答したか否かを判定するステップ
を含むことからなる、請求項1のコンピュータ可読データ記憶媒体。
【請求項8】
交換可能なアイテムが、許容された最大回数だけ認証値要求に対してすでに満足に応答したか否かを判定する前記ステップが、
前記交換可能なアイテムが認証値要求に対してすでに満足に応答した回数のカウンタが、前記許容された最大回数に等しいか否かを判定するステップ
を含み、
前記方法がさらに、
前記交換可能なアイテムが前記許容された最大回数だけ認証値要求に対してまだ応答していないと判定されたことに応答して、前記カウンタをインクリメントするステップ
を含むことからなる、請求項1のコンピュータ可読データ記憶媒体。
【請求項9】
交換可能なアイテムが、許容された最大回数だけ認証値要求に対してすでに満足に応答したか否かを判定する前記ステップが、
前記交換可能なアイテムが前記許容された最大回数だけ認証値要求に対してすでに応答したことに対応するフラグがセットされているか否かを判定するステップ
を含み、
前記方法がさらに、
前記交換可能なアイテムが前記許容された最大回数だけ認証値要求に対してまだ応答していないと判定されたことに応答して、
前記交換可能なアイテムが前記許容された最大回数だけ認証値要求に対して現時点で応答しているかもしくはすぐに応答することになるかを判定するステップと、
前記交換可能なアイテムが前記許容された最大回数だけ認証値要求に対して現時点で応答しているかもしくはすぐに応答することになると判定されたことに応答して、前記フラグをセットするステップ
とを含むことからなる、請求項1のコンピュータ可読データ記憶媒体。
【請求項10】
認証値を送る前記ステップが、前記交換可能なアイテムに格納されている認証値のテーブルから前記要求された認証値を取り出すステップを含み、
前記方法がさらに、
前記交換可能なアイテムが前記許容された最大回数だけ認証値要求に対してまだ応答していないと判定されたことに応答して、
前記交換可能なアイテムが前記許容された最大回数だけ認証値要求に対して現時点で応答しているかもしくはすぐに応答することになるかを判定するステップと、
前記交換可能なアイテムが前記許容された最大回数だけ認証値要求に対して現時点で応答しているかもしくはすぐに応答することになると判定されたことに応答して、前記認証値を前記交換可能なアイテムから機能的に消去するステップ
とを含むことからなる、請求項1のコンピュータ可読データ記憶媒体。
【請求項11】
認証値を送る前記ステップが、前記交換可能なアイテムに格納されている暗号鍵から前記要求された認証値を生成するステップを含み、
前記方法がさらに、
前記交換可能なアイテムが前記許容された最大回数だけ認証値要求に対してまだ応答していないと判定されたことに応答して、
前記交換可能なアイテムが前記許容された最大回数だけ認証値要求に対して現時点で応答しているかもしくはすぐに応答することになるかを判定するステップと、
前記交換可能なアイテムが前記許容された最大回数だけ認証値要求に対して現時点で応答しているかかもしくはすぐに応答することになると判定されたことに応答して、前記暗号化鍵を前記交換可能なアイテムから機能的に消去するステップ
とを含むことからなる、請求項1のコンピュータ可読データ記憶媒体。
【請求項12】
前記要求が第1の要求であり、
前記方法がさらに、
前記認証値の一方向性ハッシュ値に対する第2の要求を、前記ホスト装置から受け取るステップと、
前記一方向性ハッシュ値を前記ホスト装置に送るステップ
を含み、
前記第2の要求が受け取られる前に、または該第2の要求が受け取られた後で、前記第1の要求が受け取られることからなる、請求項1のコンピュータ可読データ記憶媒体。
【請求項13】
要求された認証値をホスト装置に送る前記ステップが、
前記交換可能なアイテムが前記要求された認証値を以前に送ったか否かを判定するステップと、
前記要求された認証値が以前に送られたという判定に応答して、前記要求された認証値を前記ホスト装置に送るステップと、
前記要求された認証値が以前には送られていないという判定に応答して、前記交換可能なアイテムが、前記認証値のうちの最大数の固有の認証値をすでに送ったか否かを判定するステップであって、前記最大数の固有の認証値は、前記認証値の総数よりも少ない、ステップと、
前記最大数の固有の認証値がまだ送られていないという判定に応答して、前記要求された認証値を前記ホスト装置に送るステップと、
前記最大数の固有の認証値が送られたという判定に応答して、前記要求された認証値を前記ホスト装置に送ることを拒否するステップ
を含むことからなる、請求項1のコンピュータ可読データ記憶媒体。
【請求項14】
前記ホスト装置が印刷装置であり、前記交換可能なアイテムが、該印刷装置用の印刷材カートリッジである、請求項1のコンピュータ可読データ記憶媒体。
【請求項15】
印刷装置用の印刷材カートリッジであって、
前記印刷装置用の印刷材の供給源と、
複数のパスワード及び/又は暗号鍵を格納している不揮発性メモリであって、該パスワードは該暗号鍵から生成されることができる、不揮発性メモリと、
前記印刷装置内の前記印刷材カートリッジを認証するために前記パスワードに対する許容された最大数の要求に満足に応答するための論理回路
を備える印刷材カートリッジ。
【請求項16】
前記不揮発性メモリは前記パスワードを格納しており、
前記論理回路はさらに、前記許容された最大数の要求が受け取られた後に、前記パスワードを機能的に消去する、請求項15の印刷材カートリッジ。
【請求項17】
前記不揮発性メモリは前記暗号鍵を格納しており、
前記論理回路はさらに、
前記暗号鍵から前記パスワードを生成し、
前記最大数の要求が受け取られた後に、前記暗号鍵を機能的に消去する、請求項15の印刷材カートリッジ。
【請求項18】
前記論理回路はさらに、前記パスワードの総数よりも少ない所定の最大数の前記パスワードに対する前記許容された最大数の要求に応答する、請求項15の印刷材カートリッジ。
【請求項19】
前記パスワードの複数のハッシュ値を格納している不揮発性メモリをさらに備える請求項15の印刷材カートリッジであって、
前記論理回路は、前記パスワードの前記ハッシュ値に対する要求に応答する、印刷材カートリッジ。
【請求項20】
前記印刷材は、インク、トナー、2次元(2D)着色剤、3次元(3D)印刷剤、及び3D印刷造形材料のうちの1つ以上である、請求項15の印刷材カートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
交換可能なアイテム(交換可能な構成要素や消耗品など)を使用する装置には印刷装置が含まれ、該印刷装置には、独立型のプリンター、複写機、及び、印刷、コピー、スキャン、及び/又はファックス送信などの複数の機能を実行することができるオールインワン(AIO:一体型)装置が含まれる。そのような印刷装置用の交換可能なアイテムの例には、インク、トナー、及び/又は、2次元(2D)着色剤を含む他のタイプの着色剤が含まれる。特に3次元(3D)印刷装置用の他の交換可能なアイテムの例には、3D印刷剤及び3D印刷造形材料が含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】(補充可能性あり)
【図面の簡単な説明】
【0003】
【
図1】印刷装置用の例示的な印刷材カートリッジを示す。
【
図2】装置用の印刷材カートリッジまたは他の交換可能なアイテムが実行することができる例示的な方法のフローチャートである。
【
図3】装置用の印刷材カートリッジまたは他の交換可能なアイテムが、
図2の方法の一部を実施するために実行することができる例示的な方法のフローチャートである。
【
図4】装置用の印刷材カートリッジまたは他の交換可能なアイテムが、
図2の方法の一部を実施するために実行することができる別の例示的な方法のフローチャートである。
【
図5】装置用の印刷材カートリッジまたは他の交換可能なアイテムが、
図2の方法の一部を実施するために実行することができる例示的な方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0004】
背景技術の項で述べたように、交換可能なアイテムを使用する装置として印刷装置がある。着色剤または他のタイプの印刷材(または印刷物質。以下同じ)などの印刷材の供給源は、印刷装置に挿入することができるカートリッジに蓄えられている。供給源(の印刷材)が使い果たされたときは、そのカートリッジを、対象としている印刷材の新しい供給源を備えているカートリッジに交換することができる。所望に応じて、異なるタイプの印刷材を有するいくつかのカートリッジを交換することもできる。1例として、所望に応じて、汎用インクを有するカートリッジを、インクジェット印刷装置内の写真品質インクを有するカートリッジと交換することができる。
【0005】
印刷装置のメーカーはまた、一般的に、印刷装置で使用される印刷材を製造しているかまたは他のやり方で供給している。エンドユーザーの視点からは、メーカーが供給しているかまたはメーカーが認可した印刷材カートリッジは、印刷装置による所望の(印刷)出力を容易にすることができ、及び/又は、印刷装置が損傷するのを防止することができる。相手先商標製品製造会社(OEM)にとっては、印刷装置がサードパーティーのカートリッジを使用している場合には、印刷装置の出力または印刷装置の機能を保証するのが難しい場合がある。サードパーティーの印刷材は、OEMの管理外にある。たとえば、サードパーティーの印刷材は、異なる印刷出力をもたらす可能性があり、または、印刷装置の寿命を短くするリスクを伴っている可能性がある。3Dプリンターなどのいくつかの例では、印刷材が認可されていない印刷材であるときには、ユーザーに安全面でのリスクが存在することさえもありうる。いくつかの例では、認可されていない印刷材の使用は、印刷装置に関連する保証に影響を与えうる。
【0006】
したがって、メーカーは、カートリッジに認証セキュリティ機能を組み込むことができる。印刷装置は、カートリッジが認証されているものか否かを判定するためにカートリッジに質問することができる。カートリッジが認証されていない(たとえば、OEMによって認可されていない)場合には、印刷装置は、たとえば、該カートリッジが取り付けられた直後またはすぐ後などにエンドユーザーにそのことを知らせるなどの所定の手順を開始することができる。
【0007】
本明細書に開示されている技術は、印刷装置の印刷材カートリッジ用の、より一般的には、(ホスト)装置に取り付けることができる(より一般的には、該装置に接続することができる)、該装置の交換可能なアイテム用の新規で革新的な認証方式を提供する。印刷材カートリッジは、複数の認証値すなわちパスワードを格納している。該カートリッジは、それらの認証値の要求に対して所定の最大回数だけ満足に応答するために、(プロセッサなどの回路、プロセッサが実行するコードを格納しているメモリ(記憶装置)、及びファームウェアなどの)論理回路を備えている。尚、本明細書で、「最大数のパスワード」、「最大数の要求」、「最大数の認証値」、「最大数の認証値要求」、「最大数の固有の認証値」は、それぞれ、「最大個数のパスワード」、「最大回数もしくは最大個数の要求」、「最大個数の認証値」、「最大回数もしくは最大個数の認証値要求」、「最大個数の固有の認証値」を意味する。
【0008】
本明細書では、認証値に対する要求(すなわち認証値を要求する要求)に対する応答は、該応答が要求された認証値を含んでいる場合に「満足な」応答である。すなわち、認証値の要求に対する応答は、該応答が、要求された認証値を含むことによって該要求を満たす場合に、「満足な」応答である。したがって、そのような要求に対する「不満足な」応答は、要求された認証値を含んでいない応答である。それゆえ、ある要求に対する「不満足な」応答は、該要求を満たしていない応答である。なぜなら、該応答は、要求された認証値を含んでいないからである。
【0009】
カートリッジが認証値要求(認証値の要求)に満足に応答する所定の最大回数を、該カートリッジが受け取る認証値要求の第1の所定の最大回数とみなすことができる。これは、該カートリッジは、認証値要求を受け取ったときには、該最大数のかかる要求が満たされるまでは、該認証値要求を満たす(すなわち該要求に応える)からである。該最大数の認証値要求が満たされると、カートリッジは、さらなる認証値要求には応じない。
【0010】
カートリッジが認証値要求に満足に応答する所定の最大回数を、認証値に固有のものとすることができる。たとえば、カートリッジが64個の異なる認証値を格納している場合には、それぞれの認証値を該所定の最大回数だけ返すことができる。カートリッジが認証値要求に満足に応答する所定の最大回数を、要求をしている印刷装置に固有のものとすることができる。たとえば、カートリッジは、該カートリッジが挿入されている第1の印刷装置からの要求に対して該所定の最大回数だけ満足に応答することができる。該カートリッジがこの印刷装置から取り外されて、第2の(別の)印刷装置に取り付けられる場合には、該カートリッジは、該第2の印刷装置からの要求に対して、同様に該所定の最大回数だけ満足に応答することができる。
【0011】
カートリッジが、認証値要求に満足に応答する所定の最大回数を、認証値、及び要求をしている印刷装置の両方に固有のものとすることができる。たとえば、カートリッジが64個の異なる認証値を格納している場合には、それぞれの認証値を、該カートリッジが挿入されている第1の印刷装置に該所定の最大回数だけ返すことができる。該カートリッジがこの印刷装置から取り外されて、第2の(別の)印刷装置に取り付けられる場合には、該カートリッジはまた、それぞれの認証値を、該第2の印刷装置に該所定の最大回数だけ返すことができる。
【0012】
カートリッジが、認証値要求に満足に応答する所定の最大回数は、認証値、または要求をしている印刷装置に固有のものでなくてもよい。換言すれば、カートリッジは、要求をしている印刷装置または要求されている認証値には関係なく単に所定の最大数の要求に満足に応答することができる。カートリッジが、所定の最大数の要求に応答して認証値を返すと、該カートリッジは、もはや、次の要求(それが、前に要求されたことがない認証値に対する要求であっても、また、前に認証値を要求したことがない印刷装置からの要求であっても)に応答して認証値を返すことはしない。
【0013】
印刷材カートリッジはまた、認証値すなわちパスワードのハッシュ値を格納することもできる。該ハッシュ値は、該カートリッジが提供した所与の認証値が正しいか否かを決定するための1手段を提供する。そのような印刷材カートリッジを使用する認証方式は、該カートリッジに格納されている4つの異なるパスワードすなわち認証値を要求することができるホスト印刷装置を含むことができる。異なる印刷装置は、所与の1つのカートリッジから異なるパスワードを要求することができ、また、おそらく該異なるパスワードを要求するだろう。同様に、所与の1つの印刷装置は、異なるそれぞれのカートリッジからそれぞれに異なるパスワードを要求することができ、また、おそらく該異なるパスワードを要求するだろう。
【0014】
図1は、印刷装置用の例示的な印刷材カートリッジ100を示している。カートリッジ100は、印刷材供給源102を備えている。カートリッジ100は、数ミリリットル〜数十リットルなどの任意の体積の印刷材を含むことができる。印刷材の異なる例には、インクジェット印刷装置用のインク、及びレーザー印刷装置用の液体もしくは粉末トナーが含まれる。かかるインク及びトナーは、それら自体が、二次元(2D)着色剤の例であり、これは、画像が形成されている紙などの媒体の表面の平面を画定する2次元に垂直な第3の次元の方向に(延びるとしても)最小限に延びる画像を該媒体上に形成する適切な印刷装置によって使用される着色剤である。印刷材の他の例には、任意の(基材などの)サブストレート(該サブストレート上に3D物体が作製される)から一般に除去可能である該3D物体を形成するのに適切な3D印刷装置によって使用される3次元(3D)印刷剤及び3次元(3D)印刷造形材料が含まれる。インクなどのいくつかの印刷材を、2D印刷と3D印刷の両方に使用することができる。
【0015】
印刷材カートリッジ100は、論理回路104を備えている。論理回路104を、カートリッジ100内の回路として実施することができる。たとえば、論理回路104は、プロセッサ、及び、該プロセッサが実行するコンピュータ実行可能コードを格納している不揮発性(の)コンピュータ可読データ記憶媒体を備えることができる。これに関して、1実施例では、論理回路104は、マイクロプロセッサ、及び、該マイクロプロセッサに格納されている組み込みソフトウェアを含むことができ、この場合、該不揮発性コンピュータ可読データ記憶媒体は該マイクロプロセッサに組み込まれる。別の実施例では、論理回路104は、マイクロプロセッサ、及び、該マイクロプロセッサとは別個の不揮発性媒体に組み込まれたソフトウェアを含むことができる。
【0016】
別の例として、論理回路104を、特定用途向け集積回路(ASIC)またはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)とすることができ、または、論理回路104は、該ASICまたは該FPGAを含むことができる。これに関してより一般的には、論理回路104を論理ゲートを用いて実施することができる。第3の例として、論理回路104を、プロセッサとプロセッサ内に格納されているか該プロセッサとは別個の媒体に格納されているソフトウェアと論理ゲートとの任意の組み合わせとして実施することができる。
【0017】
印刷材カートリッジ100は、不揮発性メモリ106を備えている。メモリ106を半導体メモリとすることができ、該メモリ106は、電力がカートリッジ100に供給されていないときでも、依然としてその内容を保持するという点で不揮発性である。メモリ106は、本明細書では認証値とも呼ばれるパスワード108を格納している。メモリ106は、パスワード108のハッシュ値110を格納することができ、該ハッシュ値を、パスワード108に個別に対応付けることができる。メモリ106は、暗号鍵112を格納することができ、該暗号鍵からパスワード108を生成することが可能である。
【0018】
メモリ106は、パスワード108の数(これは、パスワード108の総数と呼ばれる)を格納している(または、総数のパスワード108と呼ばれる複数のパスワード108を格納している)。パスワード108すなわち認証値は、カートリッジ100が認証されていることを該カートリッジがホスト印刷装置に証明することができるように、カートリッジ100に格納されている(またはカートリッジ100によって格納されている)。換言すれば、パスワード108は、印刷装置内のカートリッジ100を認証するために使用される。本明細書で説明されているアプローチ以外のやり方ではパスワード108を基本的にカートリッジ100から取り出す(または回復する。以下同じ)ことができないように、暗号化された暗号方式でパスワード108を(セキュリティ上)安全にすることができる。パスワード108の各々を、256ビットなどの一連のビットとすることができる。
【0019】
メモリ106は、それぞれのパスワード108について1つのハッシュ値110を格納することができる。ハッシュ値110は、パスワード108が正しいことをカートリッジ100がホスト印刷装置に証明することができるように、カートリッジ100に格納されている(またはカートリッジ100によって格納されている)。換言すれば、ハッシュ値110は、印刷装置内のカートリッジ100によって提供されるパスワード108が正しいことを確かめる(すなわち検証する)ために使用される。ハッシュ値110は、カートリッジ100から自由に取り出す(または回復する。以下同じ)ことができるという点では暗号論的に安全ではないかもしれないが、ハッシュ値110を変更できないという点では暗号論的に安全でありうる。ハッシュ値110を、パスワード108の一方向性ハッシュ値110とすることができるが、これは、パスワード108に対応するハッシュ値110を知るだけでは(パスワード108からハッシュ値110を生成するために使用される一方向性ハッシュ関数がわかっている場合であっても)パスワード108を決定することができないということを意味している。
【0020】
1実施例では、ホスト装置が信頼しているエンティティ(すなわちカートリッジ100のメーカーやサプライヤー(供給業者))によってハッシュ値110が生成されたものであることを、該ホスト装置が検証ないし確認することができるようなやり方で、カートリッジ100によってハッシュ値110を提供することができる。1例として、ハッシュ値110をカートリッジ100に格納する前に、ハッシュ値110に秘密暗号鍵で暗号化署名(暗号による署名)をすることができる。ホスト装置は、ハッシュ値110を検証ないし確認するために対応する公開暗号鍵を使用することができる。秘密鍵をカートリッジ100に格納しなくてもよく、該秘密鍵は公開されない。
【0021】
論理回路104は、所定の最大回数だけパスワードの取り出し(または回復。以下同じ)を可能にする。論理回路104は、不揮発性メモリ106に格納されているパスワード108の総数より少ない所定の最大数のパスワード108の取り出しを可能にすることができる。そのような実施例では、論理回路104は、メモリ106からの、該所定の最大数のパスワード以外の任意のパスワード108の取り出しを(たとえ1回であっても)禁止する。そのような実施例は、特許出願番号PCT/US2016/38211が付与された2016年6月16日付け提出の同時係属特許出願に記載されている(当該特許出願は参照により本明細書に組み込まれるものとする)。
【0022】
論理回路104は、要求されるパスワード108に関係なく、所定の最大回数だけパスワード108の取り出しを可能にすることができる。すなわち、論理回路104は、パスワード108に対する第1の所定の最大数の要求に対して、それらの要求内のパスワード108に関係なく、満足に応答し、及び、その後に受け取ったパスワード108の要求に応答してパスワード108を返すことはしない。論理回路104が満足に応答するパスワード108に対する要求の所定の最大数を、パスワード108の数よりも少ないか、もしくはそれと同じか、もしくはそれより多いものとすることができる。要求の該所定の最大数がパスワード108の数より少ない場合には、論理回路104は、1以上のパスワード108を返さない。該所定の最大数が、パスワード108の数に等しいかそれより多い場合には、論理回路104は、全てのパスワード108を返すことができる場合もあるが、該第1の所定の最大数の要求中で要求されたパスワード108に依存して、1以上のパスワード108を返さない場合もある。
【0023】
論理回路104は、パスワード1つにつき、所定の最大回数だけパスワード108の取り出しを可能にすることができる。すなわち、論理回路104は、それぞれのパスワード108に対する第1の所定の最大数の要求に満足に応答する。たとえば、64個のパスワード108がある場合には、論理回路104は、該所定の最大回数だけ第1のパスワード108を返し、該所定の最大数回数だけ第2のパスワード108を返し、以下同様である。
【0024】
論理回路104は、要求をしたホスト印刷装置に関係なく、所定の最大回数だけのパスワード108の取り出しを可能にすることができる。すなわち、論理回路104は、ホスト印刷装置に関係なく、パスワード108に対する第1の所定の最大数の要求(該要求の各々は該ホスト印刷装置から受け取ったものである)に満足に応答し、その後受け取ったパスワード108の要求に応答してパスワード108を返すことはしない。たとえば、論理回路104がパスワード108を返す所定の最大回数を100回とすることができる。論理回路104が、第1のホスト印刷装置(該ホスト印刷装置から100個の要求が受け取られる)に実装されている場合には、論理回路104は、該印刷装置から受け取ったさらなる要求に対して満足に応答しない。さらに、カートリッジ100がその後第1の印刷装置から取り外されて、別の第2のホスト印刷装置に取り付けられる場合には、論理回路104は、該第2の印刷装置から受け取った要求に対しては依然として満足に応答しないことになる。
【0025】
論理回路104は、ホスト印刷装置1つにつき、所定の最大回数だけパスワードの取り出しを可能にすることができる。すなわち、論理回路104は、それぞれの印刷装置から該論理回路が受け取る第1の所定の最大数の要求に満足に応答する。たとえば、論理回路104がパスワード108を返す所定の最大回数を100回とすることができる。論理回路104を第1のホスト印刷装置に実装することができ、この場合、論理回路104は、該ホスト印刷装置から50個の要求を受け取って、それらの要求に対して満足に応答する。カートリッジ100がその後第1の印刷装置から取り外されて、別の第2のホスト印刷装置に取り付けられる場合には、論理回路104は、該第2の印刷装置から受け取った最初の100個の要求に対して依然として満足に応答することになる。
【0026】
論理回路104は、要求されているパスワード108及び要求をしたホスト印刷装置には関係なく、所定の最大回数だけパスワード108の取り出しを可能にすることができる。すなわち、ある要求においてどのパスワード108が要求されたか、及び、どのホスト印刷装置が該要求をしたかは、論理回路104が該要求に対して満足に応答するか否かに関して問題とはならない。論理回路104が、所定の最大回数のそのような要求に満足に応答した場合には、次の要求をするホスト印刷装置にもその要求において要求されたパスワード108にも関係なく、論理回路104は、要求されたパスワード108をその要求をしている印刷装置に返さない。
【0027】
論理回路104は、1つのホスト印刷装置及び1つのパスワードの両方につき、所定の最大回数だけパスワード108の取り出しを可能にすることができる。論理回路104は、全ての印刷装置にそれぞれのパスワード108を所定の最大回数だけ返すことができる。ホスト印刷装置が所与のパスワード108を所定の最大回数だけ受け取った場合には(または受け取った場合でも)、該印刷装置は、論理回路104から他のパスワード108を依然として受け取ることができ、別のホスト印刷装置は、該所与のパスワードを依然として受け取ることができる。
【0028】
パスワード108の格納のために使用される不揮発性メモリ106を、追記型の(1回だけ書き込める)読み出し制限メモリとすることができる。パスワード108は、(セキュリティ上)安全な製造プロセス中などにメモリ106に1回だけ書き込まれる。一旦所定の最大回数に達すると、パスワード108を少なくとも機能的に消去することができる。それらのパスワードを、たとえば、消去されたパスワード108の「復活(unerasing)」すなわち回復が不可能と考えられるやり方で、論理回路104によってメモリ106から完全かつ永久に消去することができる。対象としているパスワード108はメモリ108に格納されたままであるが取り出すことができないという点で、それらのパスワード108を機能的に消去することができる。たとえば、対象としているパスワード108が格納されているメモリ106の物理的部分へのヒューズリンクを切断して、該パスワード108を取り出すことができないようにし、これによって、該パスワード108はメモリ内に実際には存在するけれども、該パスワード108を機能的に消去することができる。
【0029】
メモリ106は、カートリッジ100を製造するときに、パスワード108の代わりに暗号鍵112を格納することができる。この実施例では、カートリッジ100を最初に使用する前には、パスワード108をカートリッジ100に格納しないことができる。この場合、カートリッジ100は、パスワード108が要求されたときに、パスワード108を「オンザフライ」で(たとえば要求されたらすぐに)生成する。論理回路104が、所定の最大数の要求に満足に応答した場合には、暗号鍵112を、前の段落で説明したやり方で、少なくとも機能的に消去することができる。
【0030】
図2は、印刷装置の印刷材カートリッジ100などの、装置の交換可能なアイテムが実行することができる例示的な方法200を示している。方法200を、非一時的なコンピュータ可読データ記憶媒体に格納された、プロセッサが実行するコンピュータ可読コードとして実施することができる。そのため、たとえば、カートリッジ100の論理回路104は、方法200を実行することができる。交換可能なアイテムは、方法200がホスト装置にインストールされると、該方法200を実行する。
【0031】
交換可能なアイテムは、ホスト装置から、該アイテムが格納している(または格納している可能性がある)複数の認証値のうちの特定の認証値に対する要求(すなわち該特定の認証値を要求する要求)を受け取る(202)。該要求を、デジタル暗号鍵で署名することができ、または、別のやり方で(真正なものであることを)認証することができる。該交換可能なアイテムは、該アイテムが、認証値に対する所定の最大回数の要求(の全て)をすでに満たしたか否かを判定する(204)。該交換可能なアイテムが満足に応答する該所定の最大数の要求を、認証値毎及び/又はホスト装置毎のものとすることができ、または、認証値毎のものでもホスト装置毎のものでもないものとすることができる。
【0032】
該所定の最大数の要求(の全て)がすでに満たされている(206)場合には、該交換可能なアイテムは、要求された認証値を、該アイテムが取り付けられている該ホスト装置には送らない(208)。しかしながら、該交換可能なアイテムが該所定の最大数の要求にまだ満足に応答していない場合には、該アイテムは、要求された認証値を該ホスト装置に送る(210)。たとえば、該交換可能なアイテムは、該交換可能なアイテムの不揮発性メモリに格納されている認証値のテーブルから要求された認証値を取り出すことができる。別の例として、該交換可能なアイテムは、該交換可能なアイテムの不揮発性メモリに格納されている(受け取った要求を署名しているのとは異なる)シード値を取り出して、該暗号鍵から要求された認証値を生成することができる。
【0033】
該交換可能なアイテムは、該アイテムが、該最大数の要求(の全て)(部分(ブロック)202で受け取ったすでに満たされている要求を含む)にこの時点で(すでに)満足に応答しているか否かを再度判定することができる(212)。該所定の最大数の要求が現時点で満たされている(214)場合には、該交換可能なアイテムは、該アイテムが格納している認証値を少なくとも機能的に消去することができる(216)。要求の所定の最大数が認証値毎にある(すなわち1つの認証値毎に設けられている)が、ホスト装置毎にはない(すなわち1つのホスト装置毎には設けられていない)場合には、部分210で送られた認証値だけが消去され、他の認証値は消去されない。要求の所定の最大数が認証値毎にあるか否か(すなわち1つの認証値毎に設けられているか否か)には関係なく、該所定の最大数がホスト装置毎にある(すなわち1つのホスト装置毎に設けられている)場合には、認証値を消去しないようにすることができる。なぜなら、他のホスト装置が、それと同じ(または別の)認証値を要求する場合があるからである。
【0034】
交換可能なアイテムが、暗号鍵から認証値を生成する実施例では、部分212における認証値の消去は、この鍵の消去を意味するかまたは該鍵の消去を含む。要求の所定の最大数が認証値毎にはあるがホスト装置毎にはない場合には、該所定の最大数の要求が全ての認証値について受け取られるまで暗号鍵は発生しない。要求の所定の最大数が認証値毎にあるか否かには関係なく、該所定の最大数がホスト装置毎にある場合には、暗号鍵を消去しないようにすることができる。なぜなら、認証値を他のホスト装置のために生成する必要がありうるからである。
【0035】
1実施例では、消去を実行するか否かが決定されるまで、認証値を送らないようにすることができ、及び、さらに、認証値の消去を実行することが決定された場合には、該認証値を送る前までに、該認証値を不揮発性メモリから消去することができる。すなわち、部分206において、交換可能なアイテムが、該最大数の要求がまだ満たされていないと判定すると、該交換可能なアイテムは、部分202で受け取った要求を満たすことによって該最大数の要求が満たされる(ことになる)か否かを判定する。該最大数の要求が、該受け取った要求を満たすことによっても依然として満たされない場合には、該交換可能なアイテムは、該認証値を送って処理を続行する。該受け取った要求を満たすことによって該最大数の要求が満たされることになる場合には、該交換可能なアイテムは、少なくとも要求された認証値を不揮発性メモリから消去する前に、該要求された認証値を不揮発性メモリからコピーし、その後、該コピーした認証値をホスト装置に送る。
【0036】
交換可能なアイテムは、部分208及び216から、また、該最大数の要求がまだ満たされていないときには部分214から、または、方法200のエントリーポイントとして、ホスト装置から、1以上の認証値に対応する1以上のハッシュ値に対する要求(すなわち、該1以上のハッシュ値を要求する要求)を受け取ることができる(218)。たとえば、交換可能なアイテムは、全ての認証値に対応する全てのハッシュ値や認証値のうちの1つだけに対応するハッシュ値のうちの1つだけなどに対する要求を受け取ることができる。交換可能なアイテムは、部分216において認証値が消去された後でも、1以上のハッシュ値に対する要求を受け取ることができる。すなわち、交換可能なアイテムは、たとえば、該アイテムが消去する認証値に対する(すなわち対応する)ハッシュ値を消去しないようにすることができる。部分218を、認証値に対する要求を受け取る前に、ハッシュ値に対する要求を受け取ることができるという点において、方法200のエントリーポイントとみなすことができる。
【0037】
図3は、方法200の部分202〜216の特定の実施例である例示的な方法300を示している。
図2と
図3において番号が同じ部分は、方法200に関して上述したのと少なくとも実質的に同様に方法300において実行される。括弧内の番号は、方法300の所与の部分が、方法200の対応する部分を実施ないし実現していることを示している。すなわち、
図3のY(X)は、方法300の部分Yが方法200の部分Xを実施ないし実現していることを意味している。
【0038】
交換可能なアイテムは、該アイテムが取り付けられているホスト装置から認証値に対する要求を受け取る(202)。該交換可能なアイテムは、満たされた認証値要求の数のカウンタ(またはカウンタのカウンタ値(計数値)。以下同じ)を保持する。すなわち、該交換可能なアイテムは、該アイテムが満足に応答した認証値要求の数のカウンタを保持する。該カウンタを、インクリメントできるがデクリメントはできないインクリメントオンリーカウンタとすることができる。該カウンタは、不揮発性メモリ106などの不揮発性メモリに格納され、(セキュリティ上)安全にされることができる。
【0039】
該交換可能なアイテムは、該カウンタが、該アイテムが要求を満たすために満足に応答した該要求の所定の最大数に等しいか否かを判定する(302)。認証値毎に及び/又はホスト装置毎にカウンタを設けることができ、または、認証値毎にもホスト装置毎にもカウンタを設けないようにすることができる。該カウンタがこの所定の最大数に等しい場合(304)には、該交換可能なアイテムは、該要求された認証値を送るのを拒否する(208)。
【0040】
しかしながら、該カウンタが、該交換可能なアイテムが満足に応答した要求の所定の最大数に等しくない場合(304)には、該交換可能なアイテムは、該要求に応答してホスト装置に該認証値を送って該要求を満たす(210)。該交換可能なアイテムは、該カウンタをインクリメント(増分)して(306)、現時点で、該カウンタが、該アイテムが満たす要求の所定の最大数に等しいか否かを判定する(308)。該カウンタがまだこの最大数に等しくない場合には(310)、方法300は終了する(312)。しかしながら、現時点で、該カウンタがこの最大数に等しい場合には(310)、該交換可能なアイテムは、該認証値を消去することができる(216)。
【0041】
別の実施例では、カウンタは、認証値を送る前にインクリメントされる。すなわち、この実施例では、ある1つの認証値を送ることによって最大数の認証値が送られることになるか否かが判定され、もし、最大数の認証値が送られることになれば、該カウンタはインクリメントされ、そして、該カウンタがインクリメントされた後で、該認証値が送られる。この実施例では、(認証値がもしあれば)認証値の消去を、対象とされている認証値を送る前に行うことができる。より一般的には、該交換可能なアイテムによって提供される最後の固有の認証値の送信に起因して実行される任意のアクションを、この最後の固有の認証値を送る前に実行することができる。この点に関して、さらに一般的には、(該最後の認証値ではない)認証値の送信と共に(または該送信に関連して)実行される任意のそのようなアクションを、該認証値を実際に送る前に実行できることに留意されたい。
【0042】
図4は、方法200の部分202〜216の別の特定の実施例である例示的な方法400を示している。
図2と
図4において番号が同じ部分は、方法200に関して上述したのと少なくとも実質的に同様に方法400において実行される。括弧内の番号は、方法400の所与の部分が、方法200の対応する部分を実施ないし実現していることを示している。すなわち、
図4のY(X)は、方法400の部分Yが方法200の部分Xを実施ないし実現していることを意味している。
【0043】
交換可能なアイテムは、該アイテムが取り付けられているホスト装置から認証値に対する要求(すなわち認証値を要求する要求)を受け取る(202)。該交換可能なアイテムは、所定の最大数の認証値要求が、該要求に満足に応答する該交換可能なアイテムによって満たされたか否かに対応するフラグを保持する。該フラグを、設定(セット)することはできるがクリアすることはできない「設定(セット)のみ可能な」フラグとすることができる。該フラグは、不揮発性メモリ106などの不揮発性メモリに格納され、(セキュリティ上)安全にされることができる。
【0044】
該交換可能なアイテムは、フラグが設定(セット)されているか否かを判定する(402)。認証値毎に及び/又はホスト装置毎にフラグを設けることができ、または、認証値毎にもホスト装置毎にもフラグを設けないようにすることができる。フラグが設定(セット)されている場合には(404)、該交換可能なアイテムは、該要求された認証値を送るのを拒否する(208)。
【0045】
しかしながら、フラグが設定(セット)されていない場合には(404)、該交換可能なアイテムは、該要求に応答してホスト装置に該認証値を送って該要求を満たす(210)。該交換可能なアイテムは、該アイテムが満足に応答する最大数の要求が現時点で満たされているか否かを判定する(212)。該交換可能なアイテムがまだ該最大数の認証値要求に満足に応答していない場合には(214)、該方法400は終了する(406)。しかしながら、該交換可能なアイテムが該最大数のそのような要求を満たしている場合には(214)、該交換可能なアイテムはフラグを設定(セット)して(408)、該認証値を消去することができる(216)。
【0046】
別の実施例では、フラグは、認証値を送る前に設定(セット)される。すなわち、この実施例では、認証値を送ることによって最大数の認証値が送られることになるか否かが判定され、もし、最大数の認証値が送られることになる場合には、該フラグは設定(セット)され、そして、該フラグが設定(セット)された後で、該認証値が送られる。この実施例では、(認証値がもしあれば)認証値の消去を、対象とされている認証値を送る前に行うことができる。より一般的には、該交換可能なアイテムによって提供される最後の固有の認証値の送信に起因して実行される任意のアクションを、この最後の固有の認証値を送る前に実行することができる。この点に関して、さらに一般的には、(該最後の認証値ではない)認証値の送信と共に(または該送信に関連して)実行される任意のそのようなアクションを、該認証値を実際に送る前に実行できることに留意されたい。
【0047】
図5は、方法200の部分210の1実施例である例示的な方法500を示している。すなわち、交換可能なアイテムは、方法200の部分210において認証値を自動的に送る代わりに、方法500を実行する。該交換可能なアイテムは、該交換可能アイテムがホスト装置から受け取った要求において該ホスト装置によって要求された認証値を、該アイテムが現在取り付けられているホスト装置及び他の任意のホスト装置を含む任意のホスト装置に該アイテムが以前に送ったか否かを判定する(502)。該交換可能なアイテムが該要求された認証値を以前に送っている場合には(504)、該アイテムは、該要求された値をホスト装置に返す(506)。
【0048】
しかしながら、該交換可能なアイテムが該要求された認証値を以前に送っていない場合には(504)、該アイテムは、該アイテムが最大数の固有の認証値をすでに送ったか否かを判定する(508)。たとえば、該交換可能なアイテムが格納することができる64個の認証値のうち、該アイテムが送ることができるのは、16個以下の認証値である。該交換可能なアイテムが最大数の固有の認証値をすでに送っている場合には(510)、該アイテムは、該アイテムが取り付けられているホスト装置が要求した認証値を送らない(512)。方法500は、該交換可能なアイテムが満足に応答する要求の最大数にまだ達していない場合でも、該交換可能なアイテムが要求された認証値を送らないようにして終了する。
【0049】
しかしながら、該交換可能なアイテムが最大数の固有の認証値をまだ送っていない場合には、該アイテムは、要求された認証値をホスト装置に送る(514)。その後、該交換可能なアイテムは、現時点で最大数の認証値(該アイテムが部分514でたった今送った認証値を含む)が送られたか否かを再度判定することができる(516)。たとえば、該アイテムが、64個の認証値のうちの16個だけを送ることができるようにされており、かつ、部分514の実行の前に15個の値が送られた場合には、別の16番目の認証値が部分514で送られ、これによって、今や、最大数である16個の異なる認証値が送られたことになる。
【0050】
現時点で最大数の固有の認証値がすでに送られている場合には(518)、該交換可能なアイテムは、該アイテムが格納している認証値であってまだ送られていない認証値を少なくとも機能的に消去することができる(520)。このように、今の例では、16個の異なる認証値が送られると、他の48個の認証値は消去される。
図5の方法500が実行されるたびに、該交換可能なアイテムは、該アイテムが認証値要求に対して満足に応答することになる許容された最大回数まで、該アイテムが以前送った任意の認証値を送ることができることに留意されたい。さらに、方法500が実行されるたびに、該交換可能なアイテムは、該アイテムが送る異なる認証値の最大数にまだ達していない限り、該アイテムが認証値要求に対して満足に応答することになる許容された最大回数まで、該アイテムが以前送っていない任意の認証値を送ることができる。方法500は、部分506及び520から、また、送った固有の認証値がまだ最大数に達していないときには部分518から、
図2の方法200の部分212に進む(524)。
【0051】
方法300、400及び500に関して説明した方法200の部分の異なる実施を、異なるいろいろなやり方で組み合わせることができまたは変更することができる。たとえば、方法300のカウンタを、方法400のフラグと共に(ないし組み合わせて)使用することができる。さらに、方法500を、方法300及び/又は方法400と共に(ないし組み合わせて)使用することができる。
【0052】
本明細書に開示されている技術は、印刷装置の印刷供給カートリッジなどの、装置の交換可能なアイテムの暗号化によるセキュリティを改善することができ、または、該セキュリティに対する別の方式を提供することができる。交換可能なアイテムは、所定の最大数の認証値要求に満足に応答する。該最大数の認証値要求が受け取られると、追加的に受け取られた要求は、それらの要求に対応する認証値が該交換可能なアイテムに格納されたままである場合であっても、受け付けられない。該交換可能なアイテムが満足に応答する要求の所定の最大数を、認証値毎及び/又はホスト装置毎に設けることができ、または、認証値毎にもホスト装置毎にも設けないようにすることができる。
【国際調査報告】