特表2018-537973(P2018-537973A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2018-537973生物学的実在を増殖させるための照明容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-537973(P2018-537973A)
(43)【公表日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】生物学的実在を増殖させるための照明容器
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20181130BHJP
   C12M 3/00 20060101ALI20181130BHJP
【FI】
   C12M1/00 C
   C12M3/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2018-526098(P2018-526098)
(86)(22)【出願日】2016年11月18日
(85)【翻訳文提出日】2018年7月17日
(86)【国際出願番号】US2016062751
(87)【国際公開番号】WO2017087790
(87)【国際公開日】20170526
(31)【優先権主張番号】62/257,913
(32)【優先日】2015年11月20日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/275,342
(32)【優先日】2016年1月6日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/303,032
(32)【優先日】2016年3月3日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/303,044
(32)【優先日】2016年3月3日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】フュークス,エドワード ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ログノフ,スティーヴン ルヴォヴィッチ
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA01
4B029AA08
4B029BB01
4B029CC01
4B029CC02
4B029CC08
4B029DF10
4B029GA01
4B029GA02
4B029GA03
4B029GB09
4B029GB10
(57)【要約】
生物学的実在を増殖させるための照明容器が提供される。その容器は、可撓性光拡散ファイバにより照明される。その光拡散ファイバは、シリカ系ガラスから形成されたコア、およびそのコアと直接接触したクラッドを備える。その光拡散ファイバは、そのクラッドを取り囲む外側高分子コーティング層であって、散乱材料および発光団を含む液体高分子ブレンドの硬化生成物である外側高分子コーティング層も備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的実在を増殖させるための照明容器において、
少なくとも1つの壁およびポートを有する容器と、
光拡散ファイバであって、
シリカ系ガラスから形成されたコア、
前記コアと直接接触したクラッド、および
前記光拡散ファイバを取り囲む外側高分子コーティング層であって、散乱組成物および発光団を含む液体高分子ブレンドの硬化生成物である外側高分子コーティング層、
を含む光拡散ファイバと、
を備えた容器。
【請求項2】
前記容器が、ウェル、フラスコ、皿、袋、タンク、多層フラスコ、生物反応器、または使い捨て生物反応器である、請求項1記載の容器。
【請求項3】
前記光拡散ファイバが、430nmと662nmの間の範囲の波長を有する光を送達するように構成されている、請求項1または2記載の容器。
【請求項4】
前記光拡散ファイバが、200nmから280nmの範囲の波長を有する光を送達するように構成されている、請求項1から3いずれか1項記載の容器。
【請求項5】
前記光拡散ファイバが前記容器内に収容されている、請求項1から4いずれか1項記載の容器。
【請求項6】
前記光拡散ファイバが前記容器の外面上にある、請求項1から4いずれか1項記載の容器。
【請求項7】
前記光拡散ファイバが前記容器の壁に埋め込まれている、請求項1から4いずれか1項記載の容器。
【請求項8】
前記散乱組成物が高屈折率材料を含む、請求項1から7いずれか1項記載の容器。
【請求項9】
前記発光団が、蛍光材料、リン光材料、およびその混合物からなる群より選択される、請求項1から8いずれか1項記載の容器。
【請求項10】
前記光拡散ファイバのコアがナノサイズ構造を含む、請求項1から9いずれか1項記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、ここに全て含まれる、2015年11月20日に出願された米国仮特許出願第62/257913号、2016年1月6日に出願された米国仮特許出願第62/257342号、2016年3月3日に出願された米国仮特許出願第62/303032号、および2016年3月3日に出願された米国仮特許出願第62/303044号の優先権の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は、広く、生物学的実在の増殖などの照明用途に使用するための光拡散光ファイバに関し、より詳しくは、色変換コーティングを有する光拡散光ファイバに関する。
【背景技術】
【0003】
光ファイバであって、光をそのファイバの長手方向に沿って半径方向外側に放出し、それによってそのファイバを照明する光ファイバが、特殊照明、光化学などの幅広い用途に、また電子機器や表示装置における使用に特に有用である。そのような光拡散ファイバ(ここに、「LDF」と称される)は、様々な色の光の放出をうまく実証するために使用されてきた。可視光の波長範囲にある電磁放射線を放出できる光源をLDFに結合させて、様々な色を有する光をLDFに導入してもよい。そのような着色光は、次に、LDFの長手方向に沿って放出される。しかしながら、特定の色の光を放出できる光源は、高価であり得、多くのLDFの用途に使用するには法外な費用がかかり得る。
【0004】
代替案として、発光団(ルミネセンスを示し、様々な蛍光団および蛍光体を含む原子または化学化合物)をLDFの表面上に配置させてもよい。発光団を含むコーティング層が、1つ以上の他のコーティング層を取り囲むLDFの表面上に配置されることが多い。第1の波長で光源から放出される電磁放射線は、その発光団と相互作用し、可視光の波長範囲にある第2の波長に変換されることがある。先の議論と同様に、光源は、その光源から放出される光の波長に基づいて選択することができる。その上、発光団はLDFの長手方向に沿って放出される光の目的波長に基づいて選択することができる。このようにして、規定の色を有する光を、LDFの長手方向に沿って放出させることができる。しかしながら、この目的に使用される発光団材料は、高濃度でコーティング高分子と混合するのが難しくなり得る。その結果、発光団材料を有するコーティングは、適切な光変換を可能にするのに十分に厚いことが従来必要である。例えば、従来のLDFの外径が約250μmである場合、発光団を含むコーティングにより加わる厚さによりLDFの外径が約500μm以上に増すことがある。そのような発光団材料は従来高価であり、適切な光変換を可能にするのに十分に厚くコーティングを形成することには、低コストが期待されるLDFの用途において、法外な費用がかかり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
細胞を増殖させるために、生物反応器が使用される。多量の細胞、タンパク質または他の産物を生成するために、哺乳類細胞が生物反応器内で増殖される。ある場合には、アルコールおよびバイオ燃料を含む産物を生成するために、非哺乳類細胞が生物反応器内で増殖される。ある場合には、非哺乳類細胞は、その増殖および培養の一部として光を必要とする。生物反応器内で効率的、経済的、かつ信頼性のある光源が望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある実施の形態によれば、生物学的実在を増殖させるための容器内に、シリカ系ガラスから形成されたコア、およびそのコアと直接接触したクラッドを有する光拡散ファイバが提供される。例えば、光拡散ファイバは、ウェル、フラスコ、皿、袋、タンク、多層フラスコ、生物反応器、使い捨ての生物反応器、または類似の容器などの生物用容器に使用できる。その光拡散ファイバは、そのクラッドを取り囲む外側高分子コーティング層であって、散乱材料および発光団を含む液体高分子ブレンドの硬化生成物である外側高分子コーティング層も備える。
【0007】
別の実施の形態によれば、生物学的実在を増殖させるために容器内に設けられた前記光拡散ファイバは、所望の波長の光を与えるように調整できるファイバであることがある。実施の形態において、その光の波長は、その容器内で培養される細胞の生物学的過程を最大限に高めるように調整される。
【0008】
別の実施の形態において、前記光は、生物学的実在を増殖させるために容器内に収容された水性培地に直接送達されることがある。
【0009】
本開示の別の実施の形態によれば、光拡散ファイバを形成する方法が提供される。その方法は、シリカ系ガラスプリフォームコアを有する光ファイバプリフォームを形成する工程、およびその光ファイバプリフォームを線引きして、光ファイバを形成する工程を有してなる。その方法は、その光ファイバを、散乱材料および発光団を含む液体高分子ブレンドで被覆する工程、およびその液体高分子ブレンドを硬化させて、外側高分子コーティング層を形成する工程をさらに含む。
【0010】
追加の特徴および利点は、以下の詳細な説明に述べられており、一部は、その説明から当業者に容易に明白となるか、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲、並びに添付図面を含む実施の形態を、ここに記載したように実施することによって認識されるであろう。
【0011】
先の一般的説明および以下の詳細な説明の両方とも、例示に過ぎず、請求項の性質および特徴を理解するための概要または骨子を提供する目的であることが理解されよう。添付図面は、さらなる理解を与えるために含まれ、本明細書に包含され、その一部を構成する。図面は、1つ以上の実施の形態を示しており、その説明と共に、様々な実施の形態の原理および作動を説明する働きをする。
【0012】
本開示は、純粋に非限定的例として与えられた、以下の説明および添付図面からより明白に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】従来のLDFの断面図
図2】本開示によるLDFの断面図
図3】本開示によるLDFの平行断面図
図4】本開示の実施の形態による光拡散ファイバ中の散乱材料の濃度に対する蛍光体コーティング層中の励起光子の経路長の改善比の関係を示すグラフ
図5】最も外側のコーティング層中の散乱材料の濃度(質量%)に対する光拡散ファイバから放出された光の色のCIE 1931色空間値のx色度における変化/CIE 1931色空間値のy色度における変化の比の関係を示すグラフ
図6】2つの光拡散ファイバにおける発光団含有コーティング層中の発光団の濃度およびクラッド層の外径の関係を示すグラフ
図7A】生物学的実在を増殖させるために容器の内部にLDFを配設した実施の形態を示す説明図
図7B】生物学的実在を増殖させるために容器の内部にLDFを配設した実施の形態を示す説明図
図7C】生物学的実在を増殖させるために容器の周りにLDFを配設した実施の形態を示す説明図
図8A】生物学的実在を増殖させるための容器を形成する、高分子の層内のLDFの積層を示す説明図
図8B】生物学的実在を増殖させるための容器を形成する、高分子の層内のLDFの積層を示す説明図
図8C】生物学的実在を増殖させるための容器を形成する、高分子の層内のLDFの積層を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0014】
ここで、その例が添付図面に示された本開示の実施の形態を詳しく参照する。できるときはいつでも、同じまたは同様の部品を指すために、図面に亘り同じ参照番号が使用される。
【0015】
名詞は、特に明記のない限り、複数の対象を含む。同じ特徴を列挙する全ての範囲の端点は、独立して組み合わせることができ、列挙された端点を含む。全ての引用はここに含まれる。
【0016】
本開示は、最初に広く、次に、いくつかの例示の実施の形態に基づいて詳しく、下記に記載されている。個々の例示の実施の形態において互いに組み合わされて示された特徴は、全てが実現される必要はない。具体的には、個々の特徴は、同じ例示の実施の形態に示された他の特徴または他の例示の実施の形態の特徴と他の様式で組み合わされても、もしくは省略されてもよい。
【0017】
「光拡散ファイバ」(LDF)という用語は、光が導波路のコアから離れて、導波路の外面を通って案内されて照明を提供するように、ファイバの側面から光を出すように散乱または拡散させるために使用されるナノサイズ構造を用いる、光ファイバなどの可撓性光導波路を称する。請求項の主題の基本原理に関する概念が、ここに全てが引用される米国特許出願公開第2011/0122646A1号明細書に開示されている。
【0018】
ここに用いたように、「ナノ構造ファイバ領域」という用語は、多数のガス入り空隙、または他のナノサイズ構造を有するファイバの領域または区域を表す。その領域または区域は、例えば、ファイバの断面に50超の空隙、または100超の空隙、またさらには200超の空隙を有することがある。ガス入り空隙は、例えば、SO2、Kr、Ar、CO2、N2、O2、またはその混合物を収容することがある。ここに記載されたようなナノサイズ構造(例えば、空隙)の断面サイズ(例えば、直径)は、約10nmから約1.0μm(例えば、約50nmから約500nm)まで様々であってよく、その長さは、約1.0ミリメートルから約50メートル(例えば、約2.0mmから約5.0メートル、または約5.0mmから約1.0メートル)まで様々であってよい。
【0019】
記載されたようなLDFは、良好な角散乱特性(ファイバの軸から離れる光の均一な消散)およびファイバの屈曲部での輝点を避けるための良好な曲げ性能を有する。ここに記載された実施の形態の少なくともいくつかの所望の属性は、ファイバの長手方向沿って均一な高い照度である。光ファイバは可撓性であるので、幅広い形状を展開することができる。ここに記載されたLDFは、ファイバの曲げ地点で輝点(高い曲げ損失による)がなく、よって、そのファイバに与えられる照度は、約40%を超えて変動しない。そのファイバにより与えられる照度の変動は、約30%未満、または約20%未満、またさらには約10%未満であることがある。例えば、少なくともいくつかの実施の形態において、そのファイバの平均散乱損失は約50dB/km超であり、その散乱損失は、約0.2メートルの長さを有する任意の所定のファイバセグメントに亘り約40%を超えて変動しない(すなわち、散乱損失は、平均散乱損失の±40%以内である)。そのファイバの平均散乱損失は約50dB/km超であることがあり、その散乱損失は、約0.05メートル未満の長さを有するファイバセグメントに亘り、約40%未満しか変動しない。そのファイバの平均散乱損失は約50dB/km超であることがあり、その散乱損失は、約0.01メートルの長さを有するファイバセグメントに亘り、約40%未満しか変動しない。そのファイバの平均散乱損失は約50dB/km超であることがあり、その散乱損失は、約0.01メートルの長さを有するファイバセグメントに亘り、約30%未満、または20%未満、またさらには約10%未満しか変動しない。
【0020】
本開示の実施の形態によれば、照明波長でファイバの側面を通じて拡散される積分光強度の強度変化は、ファイバの目標長さについて、約40%未満であり、その長さは、例えば、約0.02メートルから約100メートルの間にあり得る。ここに記載された光拡散ファイバは、ファイバの全長に沿って均一な照明を、またはファイバの全長未満のファイバのセグメントに沿って均一な照明を生じることがある。ここに用いたように、「均一な照明」という用語は、光拡散ファイバから放出された光の強度が、規定の長さに亘り25%を超えて変動しないことを意味する。
【0021】
ここに記載されたLDF設計は、ファイバのコア区域に、またはコアに非常に近くに配置されたナノ構造ファイバ領域(ナノサイズ構造を有する領域)を含む。そのLDFの散乱損失は、約50dB/kmを超える、例えば、約100dB/km超、約200dB/km超、約300dB/km超、約325dB/km超、約500dB/km超、約1000dB/km超、約3000dB/km超、またさらには約5000dB/km超である。その散乱損失、およびそれゆえ照明、またはファイバにより放射される光は、角度空間で均一である。
【0022】
ファイバの屈曲部での輝点を減少させるまたはなくすために、ファイバの90°の屈曲部での減衰の増加は、曲げ直径が約50mm未満である場合、約5.0dB/turn未満、例えば、約3.0dB/turn未満、約2.0dB/turn未満、またさらには約1.0dB/turn未満であることが望ましい。例示の実施の形態において、これらの低曲げ損失は、さらに小さい曲げ直径で、例えば、約20mm未満、約10mm未満、またさらには約5.0mm未満の曲げ直径で達成される。減衰の全増加は、約5.0mmの曲げ半径で90度の巻き当たり約1.0dB未満であることがある。
【0023】
その曲げ損失は、直線ファイバのコアからの固有散乱損失と等しいか、またはそれより小さい。その固有散乱は主にナノサイズ構造からの散乱による。それゆえ、光ファイバの少なくとも曲げに非感受性の実施の形態によれば、曲げ損失はファイバの固有散乱を超えない。しかしながら、散乱レベルは曲げ直径の関数なので、ファイバの曲げ配置は、その散乱レベルに依存する。例えば、そのファイバは、約3.0dB/turn未満、またさらには約2.0dB/turn未満の曲げ損失を有することがあり、そのファイバは、輝点を形成せずに、約5.0mmほど小さい半径を有する弧に曲げることができる。
【0024】
図1は、従来の光拡散ファイバの例を示している。図から分かるように、LDF10は、コア部分11およびコア部分11を取り囲み、それと直接接触したクラッド12を備える。LDF10は、クラッド12を取り囲み、それと直接接触した散乱コーティング層13および散乱コーティング層13を取り囲む別の蛍光体コーティング層14も備える。そのような従来の被覆された光拡散LDFは、別々の複数のコーティング層のために、約250μm超の外径を有することがあり、通常、約500μm以上の外径を有する。
【0025】
図2は、例示の光拡散ファイバを示している。LDF100は、約10μm超かつ約250μm未満、例えば、約25μmと約200μmの間、または約30μmと約100μmの間の外径を有するコア部分110を備える。本開示の実施の形態によれば、コア部分110は、光がコア部分110から半径方向外向きに向けられ、それによって、LDFおよびそのLDFを取り囲む空間を照明するように、コア部分110内を伝搬する光を散乱させる空隙を含む。散乱誘起減衰は、空隙の濃度の増加、ファイバ全体に亘る空隙の配置により増加することがあり、または、空隙が環状リングに制限されている場合、空隙含有リングの幅を増加させても、同じ密度の空隙について、散乱誘起減衰が増加する。その上、空隙が螺旋形である構成において、散乱誘起減衰は、ファイバの長さに亘り螺旋形空隙のピッチを変えることによっても増加するであろう。
【0026】
さらに図2を参照すると、LDF100は、コア部分110を取り囲み、それと直接接触したクラッド120をさらに備えることがある。クラッド120は、LDF100の開口数(NA)を増加させるために、比較的低い屈折率を有する材料から形成されることがある。そのファイバの開口数は、約0.3より大きい、いくつかの実施の形態において、約0.4より大きいことがある。クラッド120は、韓国、Kyunggi、Ansan、Moknae、403−2所在のSSCP Co.Ltdから入手できるPC452などのUVまたは熱硬化性フルオロアクリレートのような低屈折率高分子材料、またはシリコーンを含むことがある。そのような低屈折率高分子クラッドは、純粋な未ドープシリカに対して負である相対屈折率を有することがある。例えば、その低屈折率高分子クラッドの相対屈折率は、約−0.5%未満、またさらには約−1.0%未満であることがある。また、クラッド120は高弾性コーティングを含むことがある。あるいは、クラッド120はシリカガラスを含むことがある。本開示の実施の形態によれば、クラッド中のシリカガラスは、例えば、フッ素などのダウン・ドーパントでダウン・ドープされることがある。ここに用いたように、「ダウン・ドーパント」という用語は、純粋な未ドープシリカに対して屈折率を低下させる傾向があるドーパントを称する。クラッド120は、一般に、コア部分110の屈折率より低い屈折率を有する。
【0027】
クラッド120は、概して、コア部分110の外径から延在する。クラッド120の半径方向の幅は約1.0μm超であることがある。例えば、クラッド120の半径方向の幅は、約200μm未満などの約5.0μmと約300μmとの間であることがある。クラッド120の半径方向の幅は、例えば、約2.0μmと約100μmとの間、約2.0μmと約50μmとの間、少なくとも2.0μmと約20μmとの間、またさらには約2.0μmと約12μmとの間であることがある。クラッド120の半径方向の幅は、例えば、少なくとも約7.0μmであることがある。
【0028】
再び図2を参照すると、LDF100は、クラッド120を取り囲み、それと直接接触した外側高分子コーティング層130をさらに備える。ここに用いたように、「外側高分子コーティング層」という用語は、その高分子コーティング層の位置を光拡散装置に関連付けることだけを意味し、その高分子コーティング層が、被覆された光拡散装置の最も外側のコーティング層であると指定することを意味しない。本開示の実施の形態は、外側高分子コーティング層130を取り囲む1つ以上の追加のコーティング、例えば、保護コーティングを有する、被覆された光拡散装置を意図することを理解すべきである。LDF100は、クラッド120と外側高分子コーティング層130との間に随意的なコーティングを備えることもある。その随意的なコーティングは、光拡散ファイバに外力が施されたときに、外側高分子コーティング層130を通じて伝送される機械的擾乱を消散させることによって、光拡散ファイバのガラス部分をよりよく保護するために含まれることがある低弾性材料である。その随意的なコーティングは、存在する場合、クラッド120を取り囲み、それと接触する。1つの実施の形態において、その随意的なコーティングは、硬化性架橋剤、硬化性希釈剤、および重合開始剤を含む組成物の硬化生成物である。その組成物は、1種類以上の硬化性架橋剤、1種類以上の硬化性希釈剤、および/または1種類以上の重合開始剤を含むことがある。1つの実施の形態において、その硬化性架橋剤は、ウレタンおよび尿素官能基を実質的に含まない。その随意的なコーティングは、存在する場合、外側高分子コーティング層よりも低い屈折率を有する。
【0029】
外側高分子コーティング層130は散乱材料および発光団を含む。外側高分子コーティング層130は、散乱組成物(散乱材料を含む)および発光団を中に添加できるどのような液体高分子またはプレポリマー材料であってもよい高分子材料を含むことがあり、そのブレンドは、液体としてファイバに施し、次いで、ファイバに施した後に固体に転化させることができる。いくつかの実施の形態において、外側高分子コーティング層130は、アクリレート系高分子またはシリコーン系高分子などの高分子材料から形成される。
【0030】
その散乱組成物は、例えば、散乱材料を含み、液体高分子ブレンドに添加される分散体であることがある。外側高分子コーティング層の液体高分子ブレンド中の散乱組成物の濃度は、約5.0質量%と約80質量%の間にあることがある。例えば、外側高分子コーティング層の液体高分子ブレンド中の散乱組成物の濃度は、約10質量%と約70質量%の間、または約20質量%と約60質量%の間、またさらには約30質量%と約60質量%の間にあることがある。
【0031】
前記散乱材料は、約200nmから約10μmの平均直径を有するナノまたはマイクロ粒子を含むことがある。例えば、その粒子の平均直径は、約400nmと約8.0μmとの間、またさらには約100nmと約6.0μmとの間にあることがある。そのナノまたはマイクロ粒子は、以下に限られないが、TiO2、ZnO、SiO2、BaS、MgO、Al23、またはZrなどの金属酸化物または他の高屈折率材料の粒子であることがある。その散乱材料はTiO2系粒子を含むことがあり、その散乱組成物は、例えば、白色インク分散体であることがあり、この分散体は、光拡散光ファイバ100のコア部分110から散乱される光の角度に依存しない分布を与える。その散乱材料の粒子の濃度は、ファイバの長手方向に沿って変動しても、一定であってもよく、全体の減衰を制限しつつ、光の均一な散乱を与えるのに十分な質量パーセントであることがある。その散乱材料の粒子の濃度は、約0.5質量%超であることがある。例えば、その散乱材料の粒子の濃度は、約1.0質量%超、または約1.25質量%超、または約1.5質量%超、または約2.0質量%超、または約2.5質量%超、または約3.0質量%超、または約3.5質量%超、またさらには約4.0質量%超であることがある。その散乱材料の粒子の濃度は、約0.5質量%と約10質量%の間、または約1.0質量%と約10質量%の間、または約1.25質量%と約7.5質量%の間、または約1.25質量%と約6.0質量%の間、または約1.5質量%と約10質量%の間、または約1.5質量%と約7.5質量%の間、または約1.5質量%と約6.0質量%の間、または約2.0質量%と約10質量%の間、または約2.0質量%と約7.5質量%の間、またさらには約2.0質量%と約6.0質量%の間にあることがある。その散乱材料は、ナノまたはマイクロサイズの粒子、もしくは気泡などの低屈折率の空隙も含むことがある。
【0032】
前記発光団は、任意の有機または無機蛍光またはリン光材料、もしくは任意の有機または無機蛍光またはリン光材料の混合物であってもよい蛍光またはリン光材料を含むことがある。例えば、その発光団としては、以下に限られないが、CeドープYAG、NdドープYAG、希土類酸化物材料、CdS、CdS/ZnS、InPなどの量子ドット、ナノ粒子、蛍光が金属増強された有機蛍光団などが挙げられるであろう。外側高分子コーティング層の液体高分子ブレンド中の発光団の濃度は、CIE色空間図における所望の色座標xおよびyを与えるように制御されることがある。外側高分子コーティング層の液体高分子ブレンド中の発光団の濃度は、約10質量%と約50質量%の間にあることがある。例えば、外側高分子コーティング層の液体高分子ブレンド中の発光団の濃度は、約15質量%と約45質量%の間、または約25質量%と約40質量%の間、またさらには約30質量%と約35質量%の間にあることがある。
【0033】
外側高分子コーティング層130は、概して、クラッド120の外径から延在する。外側高分子コーティング層130の半径方向の幅は、約1.0μmと約450μmの間、例えば、約20μmと約300μmの間、またさらには約40μmと約90μmの間にあることがある。本開示の実施の形態によるLDF設計の半径方向の幅は、LDFの外径が、約500μm以下、または約400μm以下、またさらには約300μm以下であるように制限されることがある。
【0034】
外側高分子コーティング層130は散乱材料および発光団の両方を含むので、外側高分子コーティング層130は、コア部分110から放射状に放出される光の分布および/または性質を向上させ、コア部分110から放射状に放出される光をより長い波長の光に変換する。発光団の光を変換する効率は、発光団の濃度およびその発光団含有材料の量(すなわち、その材料の厚さまたは体積)に関連することが知られている。一般に、電子のより高いエネルギーレベルへの昇進、すなわち励起は、光子(「励起光子」)の吸収の際に生じ、適切な光変換が、その励起光子が発光団と相互作用する期間(すなわち、励起光子と発光団との間の相互作用の数)に関連付けられる。このように、励起光子と発光団との間の相互作用の数は、発光団の濃度および発光団含有材料の厚さに比例する。一回の相互作用の典型的な変換効率は約90%超である。従来、光拡散光ファイバにおいて適切な光変換を可能にするために、発光団の濃度および/または発光団含有コーティングの厚さが増やされる。しかしながら、高濃度の発光団をコーティング高分子と混合することは難しくなり得るので、適切な光変換を可能にすることは、ファイバ上の発光団含有コーティングの厚さを増加させることによって、従来行われてきた。どの特定の理論によっても制限する意図はないが、散乱材料および発光団の両方を同じコーティング層中に含ませると、コーティングの厚さとは関係なく、励起光子の経路長が増し、これにより、転じて、そのコーティング層の厚さが効果的に減少すると考えられる。外側高分子コーティング層130中に約0質量%超の散乱材料を有するLDFは、高分子コーティング層130の実際の厚さよりも大きい励起光子の経路長を示した。具体的に、外側高分子コーティング層130中に約0.50質量%以上の散乱材料を有するLDFは、高分子コーティング層130の実際の厚さの約2.0倍より大きい励起光子の経路長を示した。
【0035】
図3は、図2に示されたLDF100の平行断面を示す。図から分かるように、非散乱光は、矢印150により示される方向に光源からLDF100の長さを伝搬する。矢印160により示される散乱光は、角度170でLDF100から出る。ここで、角度170は、ファイバの方向と、散乱光がLDF100から出るときの散乱光の方向との間の角度差を表現する。LDF100の紫外・可視スペクトルは、角度170とは関係ないであろう。あるいは、角度170が約20°と約150°の間にあるスペクトルの強度は、ピーク波長で測定した場合の±40%以内である。例えば、角度170が約20°と約150°の間であるスペクトルの強度は、ピーク波長で測定した場合の、±30%、または±20%、または±15%、または±10%、またさらには±5%以内であることがある。
【0036】
本開示による外側高分子コーティング層130を有するLDF100を、405nmまたは445nmで発光する光源などの高エネルギー(短波長)光源と結合させることによって、そのLDF100から着色光を放出することができる。その光源は、約300nmと約550nmの間の波長を有する光を放出するように構成されることがある。その光源は、例えば、ダイオードレーザであることがある。その光源からの光は、コア部分110から放出され、LDF100から放出される光の波長が所定の色に対応するように、蛍光団に蛍光またはリン光を生じさせる。その発光団が蛍光またはリン光材料の混合物を含む場合、その混合物は、LDF100から放出される光の波長が所定の色に対応するように、変更され、制御されることがある。
【0037】
実施の形態において、光合成において植物が使用する光の波長に対応する着色光を、LDFから放出させることができる。例えば、クロロフィルaは430nmと662nmの間の光を使用する。クロロフィルbは453nmと642nmの間の光を使用する。カロテノイドは449nmと475nmの間の光を使用する。実施の形態において、光源およびLDFは、LDFが430nmと662nmの間の波長で光を放出するように構成されている。前記容器内の液体または液体培地(着色顔料を含有することがある)の存在が、その容器を通る光の通過に影響するであろう。したがって、使用者は、容器内の培養条件に応じて、容器に送達される光の波長を調節して、所望の細胞増殖結果に至るように、容器内で増殖する細胞に適切な波長での光の送達を最適化する必要があるであろう。
【0038】
追加の実施の形態において、そのLDFおよび光源は、容器を殺菌するのに有用な光を放出するように構成することができる。200nmから280nmの範囲の紫外線が、LDFを通じて容器に送達されることがある。これらの実施の形態において、光源は、例えば、紫外線レーザであることがある。そのような実施の形態において、紫外線光源を提供するために、より太い直径の光源が必要なことがある。
【0039】
実施の形態において、前記LDFは、可撓性であっても、剛性であってもよい。例えば、実施の形態において、LDFは、束にして与えられることがある。そのLDFは、レーザまたはLED光源に連結できる小さい可撓性の光源を提供する。この小さい可撓性のファイバは、既存の生物反応器システムに適合しているべきである。そのようなシステムまたは容器は、垂直(例えば、図7A参照)、水平(例えば、図7B参照)、剛性または可撓性であることがある。赤、緑および青の光源を一緒に結合して、ほとんどどの波長の組合せの光も与えられるであろう。利用される光源は、ファイバから離れていてもよく、伝送ファイバを使用して、さらに移動させても差し支えない。これにより、ファイバが光を、容器内に収容されている水性細胞培養培地に直接送達することが可能になる。その光源は、唯一の熱源であり、容器から離れさせられるので、ファイバは冷たいままであり、容器の内容物の温度に影響せずに、そのファイバをその容器内に置くことができる。これにより、ファイバを容器の壁に置いたり、容器の周りに巻き付けたりすることも可能になる。
【0040】
実施の形態において、前記ファイバは、細胞増殖をモニタするために、伝送の変化(光学密度の変化)を測定する検出器に結合させてもよい。実施の形態において、多数のファイバを使用して、容器を照明しても差し支えない。追加の実施の形態において、容器全体を照明するのに十分に多数のファイバを使用してもよい。
【0041】
ここに記載されたファイバは、様々な技術を使用して形成してよい。例えば、コア部分110は、ガラスファイバに空隙または粒子を含ませるいくつの方法によって製造しても差し支えない。例えば、空隙を有する光ファイバプリフォームを形成する方法が、例えば、ここに全て引用される、米国特許出願公開第2007/0104437A1号明細書に記載されている。空隙を形成する追加の方法が、例えば、ここに全て引用される、米国特許出願公開第2011/0122646A1号、米国特許出願公開第2012/0275180A1号、および米国特許出願公開第2013/0088888A1号の各明細書に見つかるであろう。
【0042】
本開示の実施の形態によれば、光拡散ファイバを形成する方法は、プリフォームコア部分を有する光ファイバプリフォームを形成する工程を有してなる。この方法は、その光ファイバプリフォームを線引きして光ファイバを形成する工程、およびその光ファイバを、散乱材料および発光団を含む外側高分子コーティング層で被覆する工程をさらに含むことがある。
【0043】
この方法は、その光ファイバを、コアを取り囲み、それと直接接触した高分子クラッド層で被覆する工程をさらに含むことがある。その光ファイバが高分子クラッド層で被覆される場合、光ファイバを外側高分子コーティング層で被覆する工程は、そのクラッド層をその外側高分子コーティング層で被覆する工程を含む。あるいは、その光ファイバプリフォームは、プリフォームコア部分を取り囲み、それと直接接触したシリカ系ガラスクラッド部分をさらに含むことがある。そのような光ファイバプリフォームを線引きして、シリカ系ガラスクラッドを有する光ファイバを形成することがあり、その光ファイバを外側高分子コーティング層で被覆する工程は、そのシリカ系ガラスクラッドを外側高分子コーティング層で被覆する工程を含む。
【0044】
一般に、前記光ファイバは、光ファイバプリフォームからファイバ巻き取りシステムにより線引きされ、実質的に垂直な経路に沿って線引き炉から出る。そのファイバは、ファイバの長軸に沿って螺旋形空隙を生成するために、線引きされるときに回転させられることがある。その光ファイバが線引き炉から出るときに、非接触探傷装置を使用して、光ファイバの製造中に生じたかもしれない破損および/または傷について光ファイバを調べることがある。その後、光ファイバの直径を非接触センサで測定することがある。光ファイバが垂直経路に沿って線引きされているときに、その光ファイバを、必要に応じて、冷却システムに通して線引きしてもよく、その冷却システムは、光ファイバにコーティングを施す前に、光ファイバを冷却する。光ファイバが線引き炉または随意的な冷却システムから出た後、光ファイバは少なくとも1つの被覆システムに入り、そこで、1つ以上の高分子層が光ファイバに施される。光ファイバが被覆システムから出るときに、光ファイバの直径が非接触センサで測定されることがある。その後、非接触探傷装置を使用して、光ファイバの製造中に生じたかもしれないコーティングの破損および/または傷について、光ファイバを調べる。
【実施例】
【0045】
本開示の実施の形態を、説明に過ぎず、制限することが意図されていない、ある例示の実施の形態および特定の実施の形態について、下記にさらに記載する。
【0046】
表Iは、本開示の実施の形態による様々な外側高分子コーティング層の特徴および性能を示す。光拡散光ファイバ1〜5は、図3に示された外側高分子コーティング層130による外側高分子コーティング層を備えた。ファイバ1〜5の各々における外側高分子コーティング層を、コア部分、クラッド部分および高分子材料の硬化生成物であるコーティング層を備えたLDFに施した。比較として、光拡散光ファイバ6〜8は、最も外側のコーティングが蛍光体コーティング層14である、図2に示されたLDFとして、様々なガラス部分および高分子層を備えた従来のLDFであった。ファイバの各々の最も外側のコーティング層について、表Iは、液体高分子ブレンド中の、散乱組成物の濃度(質量%)、散乱材料の濃度(質量%)、および発光団の濃度(質量%)を示している。表Iは、散乱組成物中の高分子材料の濃度(質量%)、および硬化したコーティング層のコーティング厚(μm)も示している。表Iは、ファイバの各々から放出された光の色に関するCIE 1931のx、y色度空間値も示している。
【0047】
【表1】
【0048】
表Iのデータから、最も外側のコーティング層中の励起光子の経路長を推測し、最も外側のコーティング層の実際の厚さと比べた。図4は、本開示の実施の形態による光拡散ファイバ中の散乱材料の濃度(質量%)に対する最も外側のコーティング層中の励起光子の経路長の改善比の関係を示すグラフである。図から分かるように、最も外側のコーティング層が約0.50質量%以上の濃度の散乱材料を有する場合、励起光子の経路長が、最も外側のコーティング層の実際の厚さより2.0倍超大きい。
【0049】
本開示の実施の形態は、従来のLDFと同じ色および同じまたはより良好な均一性を有する光を放出する、コーティング中の発光団の濃度が減少したLDFを提供する。異なる視角で光拡散ファイバから放出された光の色に関するCIE 1931のx、y色度空間値における差を観察し、測定した。図5は、最も外側のコーティング層中の散乱材料の濃度(質量%)に対する、光拡散ファイバから放出された光の色のCIE 1931色空間値のx色度の変化/CIE 1931色空間値のy色度の変化の比の関係を示すグラフである。その比が低いほど、放出された光の色の均一性が良好である。図から分かるように、最も外側のコーティング層が、約0.50質量%以上の散乱材料の濃度を有する場合、光拡散ファイバから放出された光の色の均一性は、最も外側のコーティング層に散乱材料を全く含まない従来のLDFと同じかまたはそれより良好である。
【0050】
ここに記載されたようなLDFの外側高分子コーティング層中により少ない発光団しか必要ないので、LDFの全費用が低下する。図6は、2つの光拡散ファイバ610および620における発光団含有コーティング層中の発光団の濃度(コーティングの面積を乗じたコーティング層中の発光団の濃度の結果である値で示されている)およびLDFの外径の関係を示すグラフである。2つのファイバ610および620は、CIE 1931のx、y色度空間値を使用して、0.31:0.31として定義できる色を有する光を放出するように設計された。ファイバ610は、120μmの厚さを有する蛍光体コーティング層14を有する、図1に示されたような従来のLDFであった。ファイバ620は、図2に示されたLDFにより形成され、40μmの厚さを有する外側高分子コーティング層130を有した。図から分かるように、190μmと260μmの間の全てのクラッドの外径について、ファイバ620は、減少した発光団の濃度で、ファイバ610と同じ色を有する光を放出した。具体的には、ファイバ610の発光団濃度は、ファイバ620の発光団濃度の約3.5倍と約5.0倍の間の倍率の大きさであった。
【0051】
図7A〜Cは、生物学的実在を増殖させるための照明された容器の実施の形態の説明図である。実施の形態において、その容器は、剛性であっても、可撓性であってもよく、単一ウェル、マルチウェルプレートの1つのウェル、フラスコ、皿、袋、タンク、多層フラスコ、生物反応器、または生物反応器の形態にあることがある。その容器は、再利用可能であっても、使い捨てであってもよい。実施の形態において、その容器は、少なくとも1つの壁220を有することがある。その少なくとも1つの壁220は、剛性であっても、可撓性であってもよい。すなわち、壁220は、袋の側面、または例えば、図7Aに示されるように、円筒容器の単一壁220であることがある。その容器は、複数の壁220を備えて、正方形、立方形、ピラミッド形、または任意の他の形状を含むどの適切な形状を形成してもよい。成形に適しており、実験機器の製造に通常使用されるどの高分子(ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリル、ポリスチレン、またはポリエステルなど)を使用してよい。いくつかの実施の形態において、ポリスチレンが使用される。多数の壁を含む別の部品を、容器の内部表面の一体部分となるように、下に限られないが、接着または溶剤結合、ヒートシールまたは熱溶接、圧縮、超音波溶接、レーザ溶接および/または部品間のシールを生成するために一般に使用される任意の他の方法を含むいくつの方法により組み立ててもよい。
【0052】
実施の形態において、その容器は、生物学的実在(必要に応じて、生物学的実在を増殖させるときに使用される培地または水または他の材料を含む)を容器に送達するための、または生物学的実在を容器から取り出すための、少なくとも1つのポート、または1つのアクセス特徴を有することがある。
【0053】
図7Aにおいて、LDF201が円筒容器200中にその容器のポート203を通じて挿入された、容器200が示されている。LDF201は、容器の外部では実線として、容器の内部では点線として示されている。実施の形態において、その容器は、どのサイズまたは形状のものであってもよい。その容器は、細胞および培地が出入りするための追加のポートを有してもよく、剛性であっても、可撓性であってもよい。図7Bは、可撓性袋205の内部にLDF201を有する、生物学的実在を増殖させるための袋205の説明図である。図7Cは、可撓性袋205の外面に巻き付けられたLDF201を有する袋205の実施の形態の説明図である。図7Aおよび7Bに示された実施の形態ではそうではないが、図7Cに示された実施の形態において、その袋は、ファイバから拡散している光が袋の内部の細胞に到達するために、透明である必要があるであろう。実施の形態において、袋205、または可撓性容器は、高分子材料から製造されることがある。実施の形態において、その袋は、高分子材料の層から製造される。例えば、袋の内容物と接触する層である内層は、低浸出性および抽出性、低細胞毒性、低細胞結合特徴、耐化学損傷性、および良好な水密特徴を有する材料から製造されることがある。例示の材料に、低密度ポリエチレン(LDPE)またはポリプロピレン(PP)がある。第2の層は、ガス透過性および可撓性を与える。例示の材料に、ポリビニルアルコール(PVA)またはポリ塩化ビニル(PVC)がある。機械的強度を与えるために、外層が使用されることがある。例示の材料に、低密度ポリエチレン(LDPE)またはポリエチレンテレフタレート(PET)がある。例えば、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニルがある。これらの材料の例が与えられているが、当業者には、どの適切な材料を使用してもよいことが認識されるであろう。
【0054】
図7A〜Cに示された実施の形態において、ただ1つのファイバが示されているが、実施の形態において、容器の内部またはその上に、多数のファイバが設けられてもよい。
【0055】
図8A〜Cは、光拡散ファイバが容器の壁220に埋め込まれた容器の実施の形態を示している。図8Aにおいて、LDF201が高分子210のシート上に置かれている。図8Bにおいて、その高分子のシートは、LDFの周りに折り畳まれ、互いに溶融または溶接されている。図8Cにおいて、埋め込まれたLDF201を含む高分子210から製造された容器、この場合には、可撓性袋が示されている。追加の実施の形態において、高分子の追加の層が、LDFが埋め込まれた高分子と一緒に溶融圧縮または溶接されて、多層容器を形成することがある。
【0056】
光が、LDFの遠位端から漏れるかもしれない。実施の形態において、この放出された光を検出器に結合して、容器内の培地を通じた伝送中の光の損失を測定し、それゆえ、容器内の細胞増殖を決定するための光学密度を測定しても差し支えない。
【0057】
本開示の態様(1)によれば、生物学的実在を増殖させるための照明容器が提供される。その照明容器は、少なくとも1つの壁およびポートを有する容器と、光拡散ファイバであって、シリカ系ガラスから形成されたコア、そのコアと直接接触したクラッド、およびその光拡散ファイバを取り囲む外側高分子コーティング層であって、散乱組成物および発光団を含む液体高分子ブレンドの硬化生成物である外側高分子コーティング層を含む光拡散ファイバとを備える。
【0058】
本開示の別の態様(2)によれば、その光拡散ファイバが可撓性である、態様(1)の容器が提供される。
【0059】
本開示の別の態様(3)によれば、その容器が、ウェル、フラスコ、皿、袋、タンク、多層フラスコ、生物反応器、または使い捨て生物反応器である、態様(1)〜(2)のいずれかの容器が提供される。
【0060】
本開示の別の態様(4)によれば、その光拡散ファイバが、430nmと662nmの間の範囲の波長を有する光を送達するように構成されている、態様(1)〜(3)のいずれかの容器が提供される。
【0061】
本開示の別の態様(5)によれば、その光拡散ファイバが、200nmから280nmの範囲の波長を有する光を送達するように構成されている、態様(1)〜(4)のいずれかの容器が提供される。
【0062】
本開示の別の態様(6)によれば、その光拡散ファイバがその容器内に収容されている、態様(1)〜(5)のいずれかの容器が提供される。
【0063】
本開示の別の態様(7)によれば、その光拡散ファイバが、その容器内に収容された水性細胞培養培地中に浸漬されている、態様(6)の容器が提供される。
【0064】
本開示の別の態様(8)によれば、その光拡散ファイバがその容器の外面上にある、態様(1)〜(4)のいずれかの容器が提供される。
【0065】
本開示の別の態様(9)によれば、その光拡散ファイバがその容器の壁に埋め込まれている、態様(1)〜(4)のいずれかの容器が提供される。
【0066】
本開示の別の態様(10)によれば、その光拡散ファイバの外側高分子コーティング層が、約1.0μmと約450μmの間の半径方向の幅を有する、態様(1)〜(9)のいずれかの容器が提供される。
【0067】
本開示の別の態様(11)によれば、その光拡散ファイバの外径が約250μm以下である、態様(1)〜(10)のいずれかの容器が提供される。
【0068】
本開示の別の態様(12)によれば、その散乱組成物が高屈折率材料を含む、態様(1)〜(11)のいずれかの容器が提供される。
【0069】
本開示の別の態様(13)によれば、その高屈折率材料が金属酸化物粒子を含む、態様(12)の容器が提供される。
【0070】
本開示の別の態様(14)によれば、その金属酸化物粒子が、TiO2、ZnO、SiO2、BaS、MgO、Al23、およびZrの粒子からなる群より選択される、態様(13)の容器が提供される。
【0071】
本開示の別の態様(15)によれば、その金属酸化物粒子がTiO2の粒子を含む、態様(13)の容器が提供される。
【0072】
本開示の別の態様(16)によれば、その液体高分子ブレンドが、約0.5質量%と約10質量%の間の散乱材料を含む、態様(1)〜(15)のいずれかの容器が提供される。
【0073】
本開示の別の態様(17)によれば、その発光団が、蛍光材料、リン光材料、およびその混合物からなる群より選択される、態様(1)〜(16)のいずれかの容器が提供される。
【0074】
本開示の別の態様(18)によれば、その発光団が、CeドープYAG、NdドープYAG、希土類酸化物材料、量子ドット、ナノ粒子、および蛍光が金属増強された有機蛍光団からなる群より選択される、態様(1)〜(17)のいずれかの容器が提供される。
【0075】
本開示の別の態様(19)によれば、その液体高分子ブレンドが、約10質量%と約50質量%の間の発光団を含む、態様(1)〜(18)のいずれかの容器が提供される。
【0076】
本開示の別の態様(20)によれば、その光拡散ファイバのコアがナノサイズ構造を含む、態様(1)〜(19)のいずれかの容器が提供される。
【0077】
本開示の別の態様(21)によれば、そのナノサイズ構造がガス入り空隙を含む、態様(20)の容器が提供される。
【0078】
本開示の別の態様(22)によれば、そのガス入り空隙に、SO2、Kr、Ar、CO2、N2、O2、およびその混合物からなる群より選択されるガスが充填されている、態様(21)の容器が提供される。
【0079】
本開示の別の態様(23)によれば、そのナノサイズ構造の直径が約10nmから約1.0μmである、態様(20)の容器が提供される。
【0080】
本開示の精神または範囲から逸脱せずに、様々な改変および変更が行えることが、当業者に明白であろう。
【0081】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0082】
実施形態1
生物学的実在を増殖させるための照明容器において、
少なくとも1つの壁およびポートを有する容器と、
光拡散ファイバであって、
シリカ系ガラスから形成されたコア、
前記コアと直接接触したクラッド、および
前記光拡散ファイバを取り囲む外側高分子コーティング層であって、散乱組成物および発光団を含む液体高分子ブレンドの硬化生成物である外側高分子コーティング層、
を含む光拡散ファイバと、
を備えた容器。
【0083】
実施形態2
前記光拡散ファイバが可撓性である、実施形態1に記載の容器。
【0084】
実施形態3
前記容器が、ウェル、フラスコ、皿、袋、タンク、多層フラスコ、生物反応器、または使い捨て生物反応器である、実施形態1または2に記載の容器。
【0085】
実施形態4
前記光拡散ファイバが、430nmと662nmの間の範囲の波長を有する光を送達するように構成されている、実施形態1から3いずれか1つに記載の容器。
【0086】
実施形態5
前記光拡散ファイバが、200nmから280nmの範囲の波長を有する光を送達するように構成されている、実施形態1から4いずれか1つに記載の容器。
【0087】
実施形態6
前記光拡散ファイバが前記容器内に収容されている、実施形態1から5いずれか1つに記載の容器。
【0088】
実施形態7
前記光拡散ファイバが、前記容器内に収容された水性細胞培養培地中に浸漬されている、実施形態6に記載の容器。
【0089】
実施形態8
前記光拡散ファイバが前記容器の外面上にある、実施形態1から4いずれか1つに記載の容器。
【0090】
実施形態9
前記光拡散ファイバが前記容器の壁に埋め込まれている、実施形態1から4いずれか1つに記載の容器。
【0091】
実施形態10
前記光拡散ファイバの前記外側高分子コーティング層が、約1.0μmと約450μmの間の半径方向の幅を有する、実施形態1から9いずれか1つに記載の容器。
【0092】
実施形態11
前記光拡散ファイバの外径が約250μm以下である、実施形態1から10いずれか1つに記載の容器。
【0093】
実施形態12
前記散乱組成物が高屈折率材料を含む、実施形態1から11いずれか1つに記載の容器。
【0094】
実施形態13
前記高屈折率材料が金属酸化物粒子を含む、実施形態12に記載の容器。
【0095】
実施形態14
前記金属酸化物粒子が、TiO2、ZnO、SiO2、BaS、MgO、Al23、およびZrの粒子からなる群より選択される、実施形態13に記載の容器。
【0096】
実施形態15
前記金属酸化物粒子がTiO2の粒子を含む、実施形態13に記載の容器。
【0097】
実施形態16
前記液体高分子ブレンドが、約0.5質量%と約10質量%の間の散乱材料を含む、実施形態1から15いずれか1つに記載の容器。
【0098】
実施形態17
前記発光団が、蛍光材料、リン光材料、およびその混合物からなる群より選択される、実施形態1から16いずれか1つに記載の容器。
【0099】
実施形態18
前記発光団が、CeドープYAG、NdドープYAG、希土類酸化物材料、量子ドット、ナノ粒子、および蛍光が金属増強された有機蛍光団からなる群より選択される、実施形態1から17いずれか1つに記載の容器。
【0100】
実施形態19
前記液体高分子ブレンドが、約10質量%と約50質量%の間の発光団を含む、実施形態1から18いずれか1つに記載の容器。
【0101】
実施形態20
前記光拡散ファイバのコアがナノサイズ構造を含む、実施形態1から19いずれか1つに記載の容器。
【0102】
実施形態21
前記ナノサイズ構造がガス入り空隙を含む、実施形態20に記載の容器。
【0103】
実施形態22
前記ガス入り空隙に、SO2、Kr、Ar、CO2、N2、O2、およびその混合物からなる群より選択されるガスが充填されている、実施形態21に記載の容器。
【0104】
実施形態23
前記ナノサイズ構造の直径が約10nmから約1.0μmである、実施形態20に記載の容器。
【符号の説明】
【0105】
10、100 LDF
11、110 コア部分
12、120 クラッド
13 散乱コーティング層
14 蛍光体コーティング層
130 外側高分子コーティング層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
【国際調査報告】