特表2018-538082(P2018-538082A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-538082(P2018-538082A)
(43)【公表日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】被膜血管ステント
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/82 20130101AFI20181130BHJP
   A61F 2/07 20130101ALI20181130BHJP
【FI】
   A61F2/82
   A61F2/07
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-532293(P2018-532293)
(86)(22)【出願日】2016年10月19日
(85)【翻訳文提出日】2018年8月2日
(86)【国際出願番号】CN2016102623
(87)【国際公開番号】WO2017101582
(87)【国際公開日】20170622
(31)【優先権主張番号】201510929040.9
(32)【優先日】2015年12月14日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA
(71)【出願人】
【識別番号】518332480
【氏名又は名称】埃文斯科技(北京)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 雷
【テーマコード(参考)】
4C097
4C167
【Fターム(参考)】
4C097AA15
4C097BB01
4C097CC03
4C097DD02
4C097DD10
4C097EE02
4C097EE06
4C167AA50
4C167BB06
4C167BB12
4C167CC08
4C167GG04
4C167GG06
4C167GG24
4C167GG42
(57)【要約】
被膜血管ステントを提供する。前記被膜血管ステントは、主に、血管形状を模した第一層目の被膜と、前記第一層目の被膜の外側に取り付けたステント骨組と、このステント骨組の少なくとも外側表面の一部に被覆した第二層目の被膜とを有する。第一層目の被膜は第二層目の被膜と結合し、ステント骨組の少なくとも一部は、第一層目の被膜と第二層目の被覆膜との間に包み込まれる。ここで、第一層目の被膜および/または第二層目の被膜は、ポリフッ化ビニリデン樹脂被膜である。当該被膜血管ステントにポリフッ化ビニリデン樹樹脂被膜を用いることで、コストを削減することができる。且つ、前記被膜は良好な力学的性能および生物的性能を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被膜血管ステントであって、前記被膜血管ステントは、
血管形状を模した第一層目の被膜と、
前記第一層目の被膜の外側に取り付けたステント骨組と、
前記ステント骨組の少なくとも外側表面の一部に被覆された第二層目の被膜と、を有し、
前記第一層目の被膜は前記第二層目の被膜と結合し、前記ステント骨組の少なくとも一部が前記第一層目の被膜と前記第二層目の被膜との間に包み込まれ、並びに、前記第一層目の被膜および/または前記第二層目の被膜はポリフッ化ビニリデン樹脂被膜である、ことを特徴とする被膜血管ステント。
【請求項2】
前記第一層目の被膜の厚さが0.01mm〜0.1mmであり、前記第二層目の被膜の厚さが0.01mm〜0.1mmである、ことを特徴とする請求項1に記載の被膜血管ステント。
【請求項3】
前記ステント骨組は金属ステント骨組および/または高分子ステント骨組である、ことを特徴とする請求項1に記載の被膜血管ステント。
【請求項4】
前記金属ステント骨組の中の金属はステンレスおよび/またはニッケル・チタン合金を含む、ことを特徴とする請求項3に記載の被膜血管ステント。
【請求項5】
前記第一層目の被膜および/または前記第二層目の被膜は、ポリフッ化ビニリデン樹脂溶液で成膜処理した後に得られるものである、ことを特徴とする請求項1に記載の被膜血管ステント。
【請求項6】
前記ポリフッ化ビニリデン樹脂溶液中、ポリフッ化ビニリデン樹脂と溶剤の重量比が1:(4〜100)である、ことを特徴とする請求項5に記載の被膜血管ステント。
【請求項7】
前記ポリフッ化ビニリデン樹脂のメルトマスフローレートは、1〜20g/10minである、ことを特徴とする請求項6に記載の被膜血管ステント。
【請求項8】
前記溶剤はジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、およびメチルエチルケトンのうちの少なくとも1種である、ことを特徴とする請求項6に記載の被膜血管ステント。
【請求項9】
前記成膜処理は、流延成膜処理、制御堆積成膜処理、およびスプレーコーティング成膜処理を含む、ことを特徴とする請求項5に記載の被膜血管ステント。
【請求項10】
前記スプレーコーティング成膜処理の温度は、10〜90℃である、ことを特徴とする請求項9に記載の被膜血管ステント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像下治療の医療機器分野に関し、具体的には被膜血管ステントに関する。
【背景技術】
【0002】
血管ステントの画像下治療は、血管閉塞などの心・脳血管疾患の治療において幅広く応用されている。例えば、大動脈などの大血管の中に、よく被膜ステント、およびその他の小血管用の金属ステントなどを埋め込む必要がある。被膜ステントは、一般型ステントの支持機能を保持するだけではなく、病変のある血管の動力学的血流異常を有効に改善することもできる。
【0003】
従来の被膜ステントでは、一般的にポリテトラフルオロエチレン樹脂材料を使用して成膜し、次に、高温を用いてポリテトラフルオロエチレン樹脂材料を溶融させた後、圧力をかけて被膜とステント基板とを接着させる。このとき、熱により、被膜中央に懸濁部分が形成し易いため、被膜の不均一化をまねき、且つ、全過程におけるエネルギー消費がさらに増大するため、現在ある被膜ステントの高コスト化をもたらしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、従来のポリテトラフルオロエチレン樹脂被膜を高温処理することで生じる成膜不均一化の欠点を克服した被膜血管ステントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した目的を達成するため、本発明によって被膜血管ステントを提供する。前記被膜血管ステントは、血管形状を模した第一層目の被膜と、前記第一層目の被膜の外側に取り付けたステント骨組と、前記ステント骨組の少なくとも外側表面の一部に被覆した第二層目の被膜と、を有する。
前記第一層目の被膜は前記第二層目の被膜と結合し、前記ステント骨組の少なくとも一部が前記第一層目の被膜と前記第二層目の被膜との間に包み込まれる。ここで、前記第一層目の被膜および/または前記第二層目の被膜はポリフッ化ビニリデン樹脂被膜である。
【0006】
好ましくは、前記一層目の被膜の厚さは0.01〜0.1mmであり、前記第二層目の被膜の厚さは0.01〜0.1mmである。
好ましくは、前記ステント骨組は、金属ステント骨組および/または高分子ステント骨組である。
好ましくは、前記金属ステント骨組中の金属は、ステンレスおよび/またはニッケル・チタン合金を含む。
好ましくは、前記第一層目の被膜と前記第二層目の被膜は、ポリフッ化ビニリデン樹脂溶液を用いる成膜処理により得られる。
また、好適には、前記ポリフッ化ビニリデン樹脂溶液において、ポリフッ化ビニリデン樹脂と溶剤の重量比が1:(4〜100)である。
【0007】
また、好適には、前記ポリフッ化ビニリデン樹脂のメルトマスフローレートは、1〜20g/10minである。
また、好適には、前記溶剤はジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、およびメチルエチルケトンのうちの少なくとも1種である。
また、好適には、前記成膜処理は、流延成膜処理、制御堆積成膜処理、およびスプレーコーティング成膜処理を含む。
また、好適には、前記スプレーコーティング成膜処理の温度は、10〜90℃である。
【発明の効果】
【0008】
上述技術方案によって、本発明は、ポリフッ化ビニリデン樹脂をジメチルホルムアミドなどの溶剤に溶解させることを介して、被膜を生成することができる。また、本発明は、従来のポリテトラフルオロエチレン樹脂被膜を高温処理することで生じる成膜不均一化の欠点を克服でき、操作が簡単で、コストを削減すことができる。本発明の被膜血管ステントは、良好な力学的性能および生物的性能を有する。
本発明の他の特徴および利点は、以下の発明を実施するための形態の部分にて詳しく説明する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための具体的な形態について詳しく説明する。なお、前記した具体的な実施形態は、本発明を説明し解釈するためのものであり、本発明を限定するものではないことを理解すべきである。
【0010】
本発明は被膜血管ステントを提供する。前記被膜血管ステントは、血管形状を模した第一層目の被膜と、前記第一層目の被膜の外側に取り付けたステント骨組と、前記ステント骨組の少なくとも外側表面の一部に被覆した第二層目の被膜と、を有する。
前記第一層目の被膜は前記第二層目の被膜と結合し、前記ステント骨組の少なくとも一部が前記第一層目の被膜と前記第二層目の被膜との間に包み込まれるようにする。ここで、前記第一層目の被膜および/または前記第二層目の被膜は、ポリフッ化ビニリデン樹脂被膜である。
【0011】
本発明の好ましい実施形態では、まず、ステントが埋め込まれる血管構造に基づいて、金型コアを設計・加工する。続いて、金型コア上で被膜ステントを加工し、金型コアと被膜ステントを分離して本発明の被膜血管ステントを得る。ここで、血管構造と合致した金型コアを精確且つ容易に得るために、好ましくは、3Dプリント技術を用いて金型コアを加工する。具体的には、金型コアを設計する時、造影などの医学手段を用いて、ステント部分が埋め込まれる血管構造を測定することができる。
【0012】
例えば、CT造影を用い、ステント部分が埋め込まれる血管構造に基づいて、コンピュータに当該血管構造に合致させた三次元モデルを作成する。その後、3Dプリンターを用いて金型コアを加工して製造する。なお、最終的に得られる血管ステントは血管の内壁にぴったり適合する必要があるために、当該金型コアの外側表面の構造が血管の内壁構造に一致するよう担保しつつ、医師が要する誤差精度に応じて、金型コアの寸法を設計できることに留意すべきである。
【0013】
ここで、異なる誤差精度に要する加工方法は、いずれも本発明の保護範囲に含まれる。即ち、被膜血管ステントは金型コアの外側表面に基づいて製造され、血管の内壁に接して埋め込まれる必要がある。このため、金型コアを製造する時、医師の要求に応じた必要誤差ゆえに、金型コアの外表面の寸法・外径が血管内壁の寸法・内径よりも小さくなるように金属コアを設計し、最終的に得られた被膜血管ステントを血管内壁にぴったり一致させる必要がある。
【0014】
ここで、金型コアは中空構造と中実構造のどちらでもよく、本発明はこれに限定されるものではない。他方、加工し易さを考慮した場合、中実構造の金型コアが好ましい。前記金型コアはステントが埋め込まれるヒト血管の構造に基づいて設計・加工されるものであり、当該金型コア上で被膜ステントを加工した後、当該金型コアと被膜ステントを分離して、空洞構造を有する被膜血管ステントを得る。
【0015】
また、被膜血管ステントの加工を完成させるため、金型コア上でステント骨組と被膜とを相互に結合させる必要がある。両者をうまく結合させるため、まず、金型コア上に第一層目の被膜を加工し、その後、ステント骨組を第一層目の被膜が加工された前記金型コアに取り付け、続いて、ステント骨組上に第二層目の被膜を加工する。こうして、当該第二層目の被膜を前記第一層目の被膜と結合させて、前記被膜材料と前記ステント骨組との結合を達成する。即ち、前後二層の被膜の間に、ステント骨組をしっかりと挟み込み、両者の安定な結合を達成する。
【0016】
また、金型コアの加工を容易にするため、可溶性材料を用いて金型コアを加工することができる。例えば、水溶性材料を用いて金型コアを加工してもよい。より具体的には、糖類材料を用いて金型コアを加工し、固体状態の金型コアを容易に得ることができる。好ましくは、前記糖類材料は、単糖、二糖、および水溶性多糖のうちの少なくとも1種である。ここで重要なのは、可溶性材料を用いて金型コアを加工することによって、金型コアと製造済の被覆血管ステントとの相互の分離を更にうまく達成できることである。つまり、金型コアと被膜血管ステントを簡単に分離するため、前記金型コアを溶解できる液体を用いて前記金型コアを除去し、金型コアと被膜血管ステントを分離する。一方、その他の実施形態では、金型コアの加工には融解性材料を使用してもよい。金型コアを分離する時、加熱設備を用いて金型コアを融解すればよい。この変形例も本発明の保護範囲に含まれる。
【0017】
本発明によれば、前記第一層目の被膜および/または前記第二層目の被膜はポリフッ化ビニリデン樹脂被膜である。ポリフッ化ビニリデン樹脂被膜の厚さが薄すぎると、被膜の強度を低下させるため、被膜が破裂しやすくなる。本発明の前記第一層目の被膜の厚さは、好ましくは、0.01〜0.1mmであり、前記第二層目の被膜の厚さは、好ましくは、0.01〜0.1mmである。
【0018】
本発明によれば、前記ステント骨組には、本分野の一般的に使用される骨組材料を採用してもよい。例えば、金属ステント骨組および/または高分子ステント骨組を使用してもよい。前記金属ステント骨組の中の金属は、ステンレスおよび/またはニッケル・チタン合金を含むことができる。前記ステント骨組は、単コイルのリングでもよい。金型コアの仕様に基づき異なる仕様のステントリングを選んで使用し、金型コアに取り付けた後、被膜と結合せる。また、ステント骨組は全体が絹糸でもよい、巻き付けて被覆することで、金型コアの外側表面に取り付けて、適当なステント骨組を得る。
【0019】
本発明によれば、前記第一層目の被膜および/または前記第二層目の被膜は、ポリフッ化ビニリデン樹脂溶液で成膜処理した後、得ることができる。前記ポリフッ化ビニリデン樹脂溶液中の溶剤に対するポリフッ化ビニリデン樹脂の重量比を変えることで、より広い範囲においてポリフッ化ビニリデン樹脂を溶解させることができる。例えば、溶剤に対する前記ポリフッ化ビニリデン樹脂の重量比は、1:(4〜100)でよい。
【0020】
本発明によれば、前記ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)は主としてフッ化ビニリデンホモポリマー、またはフッ化ビニリデンとその他少量のフッ素含有ビニルモノマーとの共重合体を指す。同類の高重合体に対し、メルトマスフローレート(MFR)を用い、分子量を比較することができる。重合度が高いほど、分子量は大きくなり、メルトマスフローレートは小さくなる。それに対して、分子量が小さければ小さいほど、メルトマスフローレートは大きくなる。本発明の前記ポリフッ化ビニリデン樹脂のメルトマスフローレートは、1〜20g/10minでよい。
【0021】
溶剤中におけるポリフッ化ビニリデン樹脂の溶解性は、ポリフッ化ビニリデン樹脂の重合プロセス及び調合法によって変化する。一般的に使用される溶剤は、アセトン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素、ジメチルスルホキシド、トリメチルホスフェート、N-メチル-2-ピロリドン、ブチロラクトン、イソホロン、酢酸カルビトールエステル、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチル、シクロヘキサノン、ジイソブチルケトン、アセト酢酸エチル、トリエチルホスフェートなどがある。本発明によれば、前記溶剤はジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、およびメチルエチルケトンのうちの少なくとも1種である。
【0022】
本発明によれば、前記成膜処理は、本分野でよく使われるポリマー成膜処理方法、例えば、流延法、エレクトロスピニング法、制御堆積法またはスプレーコーティング法などを使用して行うことができる。流延法は、ポリマー溶液を、乾燥した滑らかで且つ清浄な基板の上に均一に流延させ、恒温乾燥器の中で乾燥させて成膜する方法である。また、エレクトロスピニング法は、ポリマー溶液が高圧静電場において表面張力を印加され、電荷をもった溶射流を生成し、この溶射流を細分化、分裂させ、最終的に硬化したポリマーの繊維を基板に降りかけて、繊維膜を形成する方法である。
【0023】
また、制御堆積法は、成膜材料を担体に堆積し、条件を制御して被膜を形成する方法である。スプレーコーティング法は、エアスプレーガンを採用し、高圧空気を利用して溶液を霧化し、霧滴を担体気体で押し出して基板に堆積させ、且つ乾燥して成膜する方法である。スプレーコーティング法を用いて本発明の前記成膜処理を行う時、より低い温度で金型コア上にスプレーすることで被膜を形成できる。好ましくは、前記スプレーコーティング法成膜処理の温度は10〜90℃である。
【0024】
以下、実施例を通して本発明の説明を行うが、これら実施例によって本発明は限定されるものではない。
【実施例1】
【0025】
CT造影によって、ステント部分が埋め込まれる血管構造を測定した。続いて、当該ステント部分が埋め込まれる血管構造に基づき、コンピュータにおいて当該血管構造に合致した三次元モデルを作成した。次に、3Dプリンターを用いて金型コアの加工及び製造を行った。金型コアは、マルトース、蔗糖、果糖を1:1:1の重量比で混合して得た。
ポリフッ化ビニリデン樹脂FR901(上海三愛富から購入し、メルトマスフローレートは16g/10分)とジメチルホルムアミドを1:10の重量比で混合し、4時間攪拌後、気泡が消えるまで静止した状態で放置し、ポリフッ化ビニリデン樹脂溶液を得た。
【0026】
気圧0.3MPa、温度30℃の環境下、エアスプレーガンを用い、ノズルを金型コアの表面より150mm離して、先に調製したポリフッ化ビニリデンン樹脂溶液を金型コアの表面にスプレーし、連続する第一層の厚さが0.05mmのステント被膜を形成した。
ステンレスステント骨組を、第一層目のステント被膜がスプレーされた金型コアに取り付け、その後、エアスプレーガンで同じ上記作業条件にてポリフッ化ビニリデン樹脂溶液をステンレスステント骨組の表面に沿って再度スプレーし、非連続的な第二層の厚さが0.05mmのステント被膜を形成した。第二層目のステント被膜と第一層目のステント被膜とを結合し、ステンレスステント骨組をその中に包み込んだ。 最後に、水で金型コアを溶解し、本発明の被膜血管ステントを得た。
【0027】
得られた被膜血管ステントを実験動物(ウサギ)の大動脈内に埋め込み、4週間、12週間、24週間後に、それぞれ動脈血管造影検査を行った。被膜血管ステントを埋め込んだ後の血行状況、ステントの血管壁への付着性能、及び、ステント位置の移動の有無などを観察した。
動物への埋め込み実験では、全ての実験動物(ウサギ)は追跡調査期間において良好に生存し、ステント埋め込み部位の血管は血行良好であり、血栓を形成していなかった。また、被膜には縮れ、破裂などの所見はなく、合併症、血液漏れ、ステント位置の移動もなく、被膜血管ステントが壁に良好に付着し、且つ良好な生体適合性を備えることを示した。
【実施例2】
【0028】
CT造影を用い、ステント部分が埋め込まれる血管構造を測定した。次に、当該ステント部分が埋め込まれる血管構造に基づき、コンピュータにおいて当該血管構造に合致した三次元モデルを作成し、続いて、3Dプリンターを用いて金型コアを加工及び製造した。金型コアには、マルトース、蔗糖、果糖を1:2:5の重量比で混合して用いた。
ポリフッ化ビニリデン樹脂FR921(上海三愛富から購入し、メルトマスフローレートが2g/10分)とジメチルアセトアミドを1:80の重量比で混合し、4時間攪拌した。その後、気泡が消えるまで静止した状態で放置し、ポリフッ化ビニリデン樹脂溶液を得た。
【0029】
得られたポリフッ化ビニリデン樹脂溶液を金型コアの金型内に流し込み、ポリフッ化ビニリデン樹脂溶液を金型コア表面に流延させた。こうして、連続する第一層目の厚さが0.1mmのステント被膜を形成した。
次に、ニッケル・チタン合金ステント骨組を、第一層目のステント被膜を流延成膜した金型コアに取り付け、続いて、再度金型内に、ポリフッ化ビニリデン樹脂溶液を流延して、第二層目の厚さが0.1mmのステント被膜を形成した。第二層目のステント被膜と第一層目のステント被膜を結合し、ニッケル・チタン合金ステント骨組をその中に包み込んだ。
最後に、水で金型コアを溶解し、本発明の被膜血管ステントを得た。
【0030】
得られた被膜血管ステントを実験動物(ウサギ)の大動脈内に埋め込み、4週間、12週間、24週間後に、それぞれ動脈血管造影検査を行った。こうして、被膜血管ステントを埋め込んだ後の血行状況、ステントの血管壁への付着性能、ステント位置の移動の有無などを観察した。
動物への埋め込み実験では、全ての実験動物(ウサギ)は追跡調査期間において良好に生存し、ステント埋め込み部位の血管は血行良好であり、血栓を形成していなかった。また、被膜には縮れ、破裂などの所見はなく、合併症、血液漏れ、ステント位置の移動も見られなかった。このように、被膜血管ステントは壁に良好に付着し、且つ良好な生体適合性を備えることが示された。
【国際調査報告】