(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2018-538233(P2018-538233A)
(43)【公表日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】口腔止血及び創傷保護フィルム
(51)【国際特許分類】
A61K 9/70 20060101AFI20181130BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20181130BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20181130BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20181130BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20181130BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20181130BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20181130BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20181130BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20181130BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20181130BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20181130BHJP
A61P 5/00 20060101ALI20181130BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20181130BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20181130BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20181130BHJP
A61P 11/08 20060101ALI20181130BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20181130BHJP
A61L 15/58 20060101ALI20181130BHJP
A61L 15/44 20060101ALI20181130BHJP
A61L 15/48 20060101ALI20181130BHJP
A61L 15/62 20060101ALI20181130BHJP
A61L 15/22 20060101ALI20181130BHJP
A61L 15/64 20060101ALI20181130BHJP
【FI】
A61K9/70
A61K47/10
A61K47/26
A61K47/14
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/12
A61K45/00
A61P29/00
A61P1/02
A61P43/00 113
A61P5/00
A61P9/12
A61P31/00
A61P17/02
A61P11/08
A61P7/04
A61L15/58 100
A61L15/44 100
A61L15/48 100
A61L15/62 100
A61L15/22 310
A61L15/64 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-533518(P2017-533518)
(86)(22)【出願日】2016年10月28日
(85)【翻訳文提出日】2017年6月15日
(86)【国際出願番号】KR2016012271
(87)【国際公開番号】WO2017090902
(87)【国際公開日】20170601
(31)【優先権主張番号】10-2015-0165396
(32)【優先日】2015年11月25日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0141695
(32)【優先日】2016年10月28日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG
(71)【出願人】
【識別番号】517212880
【氏名又は名称】ティービーエム カンパニー
【氏名又は名称原語表記】TBM COMPANY
(71)【出願人】
【識別番号】517212891
【氏名又は名称】グッド シンキング カンパニー
【氏名又は名称原語表記】GOOD THINKING CO
(74)【代理人】
【識別番号】100105131
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 満
(74)【代理人】
【識別番号】100105795
【弁理士】
【氏名又は名称】名塚 聡
(72)【発明者】
【氏名】ユン,セイヨン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA72
4C076BB22
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4C084ZC031
4C084ZC131
4C084ZC441
4C084ZC451
(57)【要約】
本発明は、口腔の創傷部位に付着して微細な出血を遅延または防止し、薬効成分放出を制御することができる口腔止血及び創傷保護フィルムに関連している。本発明は、ポリオール、アルコール及び生分解性ポリマー(biodegradable polymer)を部分膨張状態で含んで、局所部位の血液や膿瘍を吸収し、止血することができる。また、本発明のフィルムは、伸び率が大きくて、口腔内の血液、唾液及び膿瘍を吸収しても付着力を維持することができ、屈曲が多い局所部位に応じて形態の変形が容易になって、局所部位に長時間付着しても異物感が低い。また、本発明のフィルムは、血液と反応する時に溶解放出され、薬物放出通路となる微細なチャンネルを形成する崩壊剤を含んで、上記チャンネルの量と大きさを調節して、薬物排出量を制御することができる。本発明は、粘着層と支持体層が時間の経過に応じて、すべて消失して除去されるため、患者が手で口腔内に付着した伝達体フィルムを脱着する必要がない。
【選択図】
図1【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤、オイル及び可塑剤のいずれか1つ以上、親水性高分子、および崩壊剤を備えて、創傷部位に付着して微細な出血を遅延または防止する粘着層;及び
水不溶性高分子を含み、前記粘着層上に位置して口腔内で舌、唾液または食べ物から上記粘着層を保護する支持体層を含み、
上記崩壊剤は、血液と反応する時溶解放出され、粘着層内に微細なチャンネルを形成することを特徴的する口腔止血及び創傷保護フィルム。
【請求項2】
前記崩壊剤は、グリコール、グリセリン、ソルビトールまたはPEG、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、結晶性セルロース及びクロスポビドンの中から選択されるいずれか1つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の口腔止血及び創傷保護フィルム。
【請求項3】
前記粘着層は、親水性高分子100重量部に対して、
上記界面活性剤、オイルまたは可塑剤を0.1〜60重量部;及び
上記崩壊剤を0.1〜30重量部含むこと特徴的する請求項1に記載の口腔止血及び創傷保護フィルム。
【請求項4】
前記粘着層は、0.1〜30重量%の水をを含み、部分膨張(swollen)状態で口腔粘膜に付着されていることを特徴的する請求項1に記載の口腔止血及び創傷保護フィルム。
【請求項5】
前記粘着層は、上記親水性高分子100重量部に対して、0.1〜30重量部の親油性軟化剤を含み、
口腔内で上記粘着層が消失されることによって、上記軟化剤が上記支持体層に浸透して、上記支持体層を軟化させ、上記軟化された支持体層が唾液によってゆっくり消失されることを特徴的する請求項1に記載の口腔止血及び創傷保護フィルム。
【請求項6】
前記軟化剤は、トリエチルシトレート、ジブチルセバケート、アセチルトリエチルシートレート、及びトリアセチンの中から選択されたいずれか1つであることを特徴的する請求項5に記載の口腔止血及び創傷保護フィルム。
【請求項7】
前記フィルムは、上記親水性高分子100重量部に対して、薬物0.01〜20重量部を含み、薬物は抗炎症、口腔疾患溶剤、抗ヒスタミン剤、ホルモン剤、高血圧治療薬、抗生物質または気管支拡張剤であることを特徴的する請求項1に記載の口腔止血及び創傷保護フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔止血及び創傷保護フィルムにに関し、より詳細には、口腔の創傷部位に付着して微細な出血を遅延または防止し、薬効成分の放出を制御することができる口腔止血及び創傷保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
口腔粘膜による薬物の伝達は、経口投与の時代謝を簡単に受ける薬物、生体利用率が低い薬物、及び胃腸管障害がある薬物に対して非常に有用であり、薬物の適用と除去が容易で、他の粘膜に比べて刺激や損傷により少なく敏感であるため新しい薬物の投与経路として注目されている。したがって、単純な口腔内疾患の治療だけでなく、少量で全身伝達が可能な複数薬物も口腔粘膜に適用することができる。
【0003】
口腔粘膜に適用される製剤は、液剤、トローチ剤及び軟膏剤などが主従をなしているが、これらの製剤は、1回投与量が一定でなく、適用された薬物が唾液によって簡単に消失されて一定の薬効を期待することができなかった。
【0004】
大韓民国公開特許10−2005−0055898号には、液状またはジェル状の薬物製剤表面に唾液などの水分浸透を阻む保護フィルムを形成して、薬物が簡単に損失されることを防止する技術を開示している。しかし、ジェルの表面にこのような保護フィルムを形成しても長期間使いにくく、高分子の種類や層厚によって薬物放出をむしろ妨害する問題点があった。
【0005】
最近には、軟膏やジェルタイプ製剤の問題を解決しようと口腔粘膜付着型フィルムが開発された(例えば、RAPIDFILM、tesa Labtec GmbH)。しかし、これらの付着型フィルムは、1回投与量及びその薬効を一定に示すことができる一方、短い時間(約3分程度)にフィルムがすべて溶けて、口腔内で局所的にまたは消化器官で一時的に主成分がすべて放出される問題があった。
【0006】
大韓民国公開特許10−2005−0119914号には、長期間付着することができる歯と歯茎付着型シートが開示されているが、上記シートは、4つの層で構成されており、相対的に大きな厚さを維持しているため口腔粘膜に付着した後、異物感があって患者のコンプライアンスを低下させるだけでなく、唾液による膨潤で口腔粘膜から簡単に脱離される問題点があった。また、水不溶性の付着層を含んでいて、患者が手で口腔内に付着したシートを脱着しなければならないので、清潔問題に加えて使用上の不便さが提起された。国内外の市場で速放性で高速に溶ける製剤に対する発明はあるが、口腔内に付着しながら薬効物質を制御放出する粘膜付着型製剤はない。実際の例で米国などで販売されているリステリン社のブレスストリップのような製品は口腔内で約3分以内に溶けるフィルム形態である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、口腔粘膜に付着して血液や膿瘍を吸収または乳化させることができる口腔止血及び創傷保護フィルムを提供する。
【0008】
本発明は、口腔内に10分以上長時間付着され、薬効物質の放出を制御することができる口腔止血と創傷保護フィルムを提供する。
【0009】
本発明は、患者が異物感を感じないながらも口腔内で簡単に分離されない薄膜の口腔止血及び創傷保護フィルムを提供する。
【0010】
本発明は、患者が手で口腔内に付着されたシートを脱着しなくてもよい口腔止血及び創傷保護フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一様態は、
界面活性剤、オイルおよび可塑剤のいずれか1つ以上、親水性高分子、および崩壊剤を備えて創傷部位に付着して微細な出血を遅延または防止する粘着層と、
水不溶性高分子を含み、前記粘着層上に位置して口腔内で舌、唾液または食べ物から上記粘着層を保護する支持体層と、を含み、
上記崩壊剤は、血液と反応の時に溶解放出され、粘着層内に微細なチャンネルを形成するを特徴的する口腔止血及び創傷保護フィルムに関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、ポリオール、アルコール及び生分解性ポリマ(biodegradable polymer)を部分膨潤状態で含んで、局所部位の血液や膿瘍を吸収し、止血することができる。また、本発明のフィルムは、伸び率が大きくて、口腔内の血液、唾液及び膿瘍を吸収しても付着力を維持することができ、屈曲が多い局所部位に応じて形態の変形が容易になって、局所部位に長時間付着しても異物感が低い。また、本発明のフィルムは、血液と反応する時に溶解放出され、薬物放出通路となる微細なチャンネルを形成する崩壊剤を含んで、上記チャンネルの量と大きさを調節して、薬物排出量を制御することができる。
【0013】
本発明は、粘着層と支持体層が時間の経過に応じて、すべて消失して除去されるため、患者が手で口腔内に付着した伝達体フィルムを脱着する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の口腔止血及び創傷保護フィルムの概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、下記の説明によって全部達成されることができる。下記の説明は、本発明の好ましい具体例を記述することで理解されるべきであり、本発明が必ずしもこれに限定されるものではない。
【0016】
図1は、本発明の口腔止血及び創傷保護フィルムの概念図である。
図1を参考にすれば、上記フィルムは粘着層10及び支持体層20を含んでいる。
【0017】
上記粘着層10は、一面が口腔内の硬組織または軟組織に直接接触して付着され、前記支持体層20は、上記粘着層10の他の面に形成されて粘着層が舌や唾液によって容易に溶解されないようにする。
【0018】
上記粘着層10は、界面活性剤、オイル及び可塑剤のいずれか1つ以上、親水性高分子及び崩壊剤を含んでいる。上記粘着層は、薬物をさらに含むことができる。
【0019】
上記親水性高分子は、上記粘着層のベース材料として機能するが、上記親水性高分子は、水和された時接着力が生じるポリマーを使用する。例えば、上記親水性高分子としては、セルロース系としてカルボキシメチルセルロース、カルボキシプロピルセルロースまたはその塩になったポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースオス、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ガム系のポリマーとしてジェランガム(gelangum)、キサンタンガム(xanthan gum)、グアーガム(guargum)、カラギーナンガム(carrageenan gum)、カラヤンガム(karayan gum)、アラビアガム(arabic gum)、アルギナートガム(alginate gum)またはその塩誘導体は、ゼラチン、合成ポリマーとしてポリビニルアルコール、ポロクサマー(poloxamer)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン−ビニルアセテート共重合体、ポリアクリル酸、カーボポール(carbopol)、ポリクォータニウム−11、39(polyquaternium−11、39)、ポリアルキルビニルエーテル−マレイン酸共重合体(PVM/MA copolymer:Gantgrez AN 119、139、S−97)、およびポリオックス(polyox)からなる群から選択される1種または2種以上を使用することができる。
【0020】
上記粘着層は、界面活性剤、オイル及び可塑剤のいずれか1つ以上を含んでいる。上記界面活性剤は、上記崩壊剤や後述する親油性の軟化剤を親水性溶媒中で安定した状態に維持させることができる。
【0021】
上記界面活性剤は、薬剤学的に許容さるアニオン系、カチオン系、非イオン系または両性界面活性剤を含んで各種の界面活性剤が使用されることができる。一例としては、上記界面活性剤は、ポリオキシエチレングリコール化された天然または水素化ヒマシ油、モノまたはトリラウリル、パルミチル、ステアリルまたはオレイルエステル、ポリオキシエチレンステアリン酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムまたはラウリルスルホン酸ナトリウム、リン脂質類、プロピレングリコールデジカプリレート、プロピレングリコールジラウレート、プロピレングリコールイソステアレート、プロピレングリコールラウレート、プロピレングリコールリシノレエートまたはプロピレングリコールカプリル−カプリン酸ジエステル、天然植物油トリグリセリドとポリアルキレンポリオールのトランス−エステル化反応生成物、カプリル/カプリン酸モノ−またはジ−グリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル類、ソルビタンモノラウリル、ソルビタンモノパルミチルまたはソルビタンモノステアリル、コレステロール、ピトステロル及びシトステロールからなる群から選択される少なくとも1種以上であることができる。
上記オイルとしては、シリコンオイル、液体パラフィン、ロジンワックス液、大豆油、オリーブ油、ゴマ油、カストルオイル、脂溶性ビタミン、脂溶性ビタミンアセテートなどが使用されることができる。上記オイルは、可塑剤としての役割も遂行可能である。
【0022】
上記フィルムに柔軟性と弾力を付与するために使用される可塑剤としては、アセチルトリエチルシトラート、シトラートエステル、トリアセチン及びトリエチルシトラートからなる群から選択されることができる。
【0023】
上記崩壊剤は、血液と反応時溶解放出され、粘着層内に微細なチャンネルを形成し、前記チャンネルを通じて上記薬物が放出されることができる。崩壊剤の含有量を調節すると、チャンネルのサイズと分布を制御することができるので、薬物の排出量を調節することができる。
【0024】
上記崩壊剤は、グリコール、グリセリン、ソルビトール、PEGなどのポリオールと、キシリトールラクトース、ステアリン酸マグネシウム、結晶性セルロース及びクロスポビドンから選択されるいずれか1つ以上であってもよい。
【0025】
上記薬物、口腔粘膜からの吸収に適したすべての薬物を含んでおり、また、公知の口腔用の治療剤、歯周創傷被覆材なども該当することができる。例えば、本発明に使用可能な薬物は、抗炎症剤、殺菌剤などの口腔疾患溶剤、抗ヒスタミン剤、組織修復剤、止血剤、ホルモン剤、高血圧治療薬、抗生物質、気管支拡張剤などがある。
【0026】
抗炎症剤としては、トラネキサム酸、塩化リゾチーム、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム・グリチルリチン酸アンモニウム・グリチルレチン酸、ブロメライン、セラペプターゼ、プラノプロフェン、イブプロフェンピコノール、プレステロン、シコンエキス、エピジヒドロコレステリン、ブフェキサマク、ウフェナマート、ミルラチンキ、サイコ、ブクリョウ、オウバク、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸プレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、トリアムシノロンアセトニド等が挙げられる。
【0027】
殺菌剤としては、ヨウ素・ヨウ化カリウム、液状フェノール・フェノール、塩化セチルピリジニウム、グルコン酸クロルヘキシジン・塩酸クロルヘキシジン、塩化デカリニウム、クレオソート、チモール、トリクロカルバン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、アクリノール、オキシドール、エタノール、イソプロパノール、マーキュロクロム、クレゾール、イソプロピルメチルフェノール、サリチル酸フェニル、スルファジアジン、ホモスルファミン、ケイヒ油等が挙げられる。
【0028】
抗ヒスタミン剤としては、マレイン酸クロルフェニラミン、サリチル酸ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェニルピラリン、メキダジン、塩酸トリプロリジン、マレイン酸カルビノキサミン、塩酸ジフェンヒドラミン、タンニン酸ジフェンヒドラミン、ジメンヒドリナート、塩酸プロメタシン、テオクル酸プロメタジン、塩酸メクリジン、塩酸イソペンチル等が挙げられる。
【0029】
組織修復剤としては、銅クロロフィリンナトリウム、アラントイン、アルジオキサ、メチルメチオニンスルホニウムクロリド、スクラルファート、アジアチコサイド、塩酸セトラキサート、ソファルコン、ゲファルナート、マレイン酸トリメブチン、テプレノン、ヘパリン類似物質等が挙げられる。
【0030】
局所麻酔剤としては、塩酸ジブカイン、ジブカイン、塩酸リドカイン、リドカイン、アミノ安息香酸エチル、オキゼサゼイン、テーカイン等が挙げられる。
【0031】
ケイヒ・ケイヒ油、ミルラチンキ、サイコ、ブクリョウ、オウバク、チョウジ成分、カミツレチンキ、ラタニアチンキ、エンゴサク、ショウマ、キキョウ、ベニバナ等が挙げられる。その他成分としては、グリセリン・濃グリセリン等の局所保護剤、l−メントール、ハッカ油、dl−メントール等の局所刺激剤、ヒノキチオール等の組織収斂・殺菌剤、カルバゾクロム等の止血剤、アスコルビン酸、アスコルビン酸カルシウム、酢酸トコフェロール・コハク酸トコフェロールカルシウム、パントテノール、塩酸ピリドキシン等のビタミン剤、ニコチン酸ベンジル等の血行促進剤、ポリエチレンスルホン酸ナトリウム等の血行促進剤、塩酸ミノサイクリン等の抗生物質等が挙げられる。
【0032】
上記粘着層は、親水性高分子100重量部に対して、上記界面活性剤、オイルまたは可塑剤0.1〜60重量部、及び上記崩壊剤0.1〜30重量部を含むことができる。
【0033】
上記粘着層は、親水性高分子100重量部に対して、上記界面活性剤またはオイルを0.1〜60重量部、好ましくは1〜40重量部、より好ましくは1〜30重量部含むことができる。
【0034】
上記粘着層は、親水性高分子100重量部に対して、上記可塑剤を0.1〜60重量部、好ましくは1〜40重量部、より好ましくは1〜20重量部、さらに好ましくは1〜15重量部含むことができる。
【0035】
上記崩壊剤は、親水性高分子100重量部に対して、0.1〜30重量部、好ましくは1〜25重量部、より好ましくは1〜20重量部用いられることができる。
【0036】
上記粘着層は、親水性高分子100重量部に対して、薬物を0.01〜20重量部含むことができる。
【0037】
上記粘着層は、粘着層全体の重量部に対して、0.1〜30重量%の水を含んで、部分膨張(swollen)状態で口腔粘膜に対して付着することができる。上記粘着層が上記範囲の水を含んでいる場合、膨張状態が長期間維持されて、血液や膿瘍の吸収をより迅速に行うことができる。ここで、部分膨張とは、上記粘着層が最大に膨張された状態(fully swollen)ではないことを意味する。
【0038】
上記粘着層は、上記親水性高分子100重量部に対して、0.1〜30重量部の親油性軟化剤をさらに含むことができる。
【0039】
粘着層を形成する親水性高分子と薬物は唾液によって溶解して徐々に失われますが、親油性である軟化剤は、唾液によって溶解されないため時間の経過に応じて粘着層での相対含有量が増加することになる。粘着層で相対含有量が増加された親油性の軟化剤は、隣接する支持体層に徐々に浸透して上記支持体層20を軟化させることになり、結果的に唾液によって上記支持体層が失われる。
【0040】
すなわち、本発明の上記軟化剤は、時間の経過に応じて上記粘着層10で支持体層20に物質移動して、水不溶層である支持体層を軟化及び消失させる役割を果たしている。その結果、本発明の薬物伝達システムは、上記支持体層が徐々に失われることにより、上記粘着層が急速に分解されることを防止して徐放性薬物放出が可能である。
【0041】
上記軟化剤の含有量及び支持体層の厚さに応じて薬物伝達体(フィルム)の薬物放出時間と含有量を制御することができる。
【0042】
上記軟化剤は、トリエチルシトラート、ジブチルセバケート、アセチルトリエチルシトラート及びトリアセチンの中から選択されるいずれか1つであることができる。
上記粘着層は、上記成分を溶媒に溶解させた後乾燥して形成することができる。上記溶媒は、水、メタノール、エタノール、アセトン、イソプロパノール、エチルアセテートなどを使用することができ、好ましくは、水を使用する。
【0043】
上記粘着層は、その厚さを50〜1,500μm、好ましくは100〜1200μm、最も好ましくは600〜1,200μmにすることができる。
【0044】
上記支持体層20は、水不溶性高分子を溶媒に混合して製造することができる。上記支持体層は、上記粘着層上に位置して口腔内で舌と食べ物から上記粘着層を保護する役割をする。また、本発明の支持体層20は、前述したように、粘着層の軟化剤によって軟化されて失われる消失さことができる。
【0045】
上記支持体層20の厚さは5〜300μm、好ましくは10〜150μm、最も好ましくは、10〜80μmであってもよい。
【0046】
上記水不溶性高分子は、ポリビニルアセテート、エチルセルロース、ポリメチルメタクリレート、メタグリル酸共重合体、例えば、メタクリロイルエチルベタイン/メタクリレート共重合体(yukaformer)、メタアクリル共重合体、アミノアルキルメタアクリレート共重合体(Eudragit E、RL)、セルロースアセテートフタレート、スェルラク(shellac)、ポリエチレン、PVC、ポリウレタン、ポリエチレン単独またはこれらの混合物であってもよい。
【0047】
上記支持体層は、界面活性剤、可塑剤、またはオイル、軟化剤をさらに溶媒に溶かして使用することができる。
【0048】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものであり、本発明がこれに限定されるものではない。
【0049】
実施例1〜7、比較例1〜4
下記表1と表2に示した成分を利用して粘着層溶液と支持体層溶液を製造した。まず、粘着層溶液を剥離層上に塗布した後、乾燥させて粘着層フィルムを製造した。続いて、支持体層溶液を付着層フィルム上に塗布して乾燥させた。このように製造された二層のフィルムを所定の大きさに切断した。
【0052】
実験1:溶出率試験
実施例1〜3と比較例1で製造した口腔止血及び創傷保護フィルム(以下、止血フィルム)を溶出率実験試料として使用した。大韓藥典の一般試験法中の溶出試験第2法(パドル法)に従った。具体的には、溶出液は900Ml(pH6.8液)、温度は37±0.5℃、パドルの回転速度は50rpmにして溶出した。実験を開始して10分間隔で溶出液を取り始めて5分から1時間まで評価した。溶出された物質としては、Blue#1色素を使用し、放出程度を5段階に分けて肉眼で評価し、その結果を表3に示した。
【0054】
表3は、比較例1に比べて実施例1〜3がより速い時間に色素を放出することを示す。また、実施例1に比べて崩壊剤をより多く含有した実施例2と3の色素放出時間が早かった。つまり、表1は、崩壊剤をより多く含有するほど、より速い放出を示す。崩壊剤を調節して放出速度を調節ことができる。
【0055】
実験2:創傷治療程度の評価
実施例4〜6及び比較例2、4で製造した口腔止血及び創傷保護フィルム(以下、止血フィルム)で創傷治癒程度を評価した。Male Sprague−Dawley rats(16 to 18 weeks old)72個を3つの群に分けて、標準飼育ケースに保存した。5%isofluraneとketaminehydrochlorideそしてxylaizneを使用し、局所的にはlidocaineを活用して麻酔させた。外科的創傷(Surgical defects)を5mmにtrephine burを活用した。calvarial defect procedureで傷を作った部位に実験群と対照群を処置し、縫合した後、4、8週間後傷の治癒の程度を比較して表4に示した。
【0057】
表4を参考すると、実施例3は、実施例4に比べて殺菌成分であるCPC作用によって効果がより優れていることが分かった。実施例4と5は、効果が類似していたが、実施例5が少しより効果が示されたのは、崩壊剤及び水分含有量が高くなものと見られる。本成分で乾燥された肌を優先的に保護することができる。
【0058】
比較例2のReso−Pac(登録商標)は軟膏の形態の製剤である。本製剤は、創傷部位に塗布する時、時間の経過にしたがって失われるため、創傷保護に効果が低い。比較例4は、界面活性剤が使用されていなかった。これにより屈曲と油性成分が残存する屈曲が多くの創傷部位に密着感を持って傷を保護しにくく、また、アルコールを過量使用による刺激が逆相乗効果を作り出したと判断する。
【0059】
実験3:止血防止程度の評価
上記実施例4〜6及び比較例1〜3で製造した口腔止血及び創傷保護フィルム(以下、止血フィルム)で止血防止程度を評価し表5に示した。評価方法として吸収率(ASTM D570)を応用した。止血フィルムを10×10(mm)のサイズにして、メッシュの中に閉じ込める。スプレー容器に生理食塩水(Nomal saline 0.9% 水溶液)を充填し、メッシュ内の止血フィルムに10回噴射する。その後、不織布に上げ、余分の水分を除去する。そして、約10gの重量で1分間圧縮、圧迫して表面的に結ばれている水分を除去する。メッシュの重量を引いた残りの試料重量を求め、下式によって吸水性を測定した。粘着層内部の精製水の含有量に応じて血液や膿瘍の吸収をより迅速に反応させることができるかどうかを評価した。
A(吸収率)=(Wa−Wo)/Wo*100
A:吸収率Wo:吸収前初期フィルム重量 Wa:噴射後のフィルム重量
【0061】
実施例4〜6は、比較例1〜3に比べて、全体的に吸収率が高かった。比較例2のReso−Pac(登録商標)は吸収率が最も低かった。比較例3のガーゼは、スプレーで噴射する時には、ある程度の水分を吸収したが、10gの重量で圧迫際には再び吐出されることと見て、口腔内で舌などによって物理的に接触があった場合、簡単に落ちるものと一致すると見ることができる。止血成分を防止するためには、水分含有量が低いことが有利である。粘着層の内部に水分含有量に応じて膨張状態の程度が違く、水分含有量が低いほど、血液や膿瘍の吸収をより迅速に行うことができることが分かる。
【0062】
実験4:使用性の評価
上記実施例5,6、および比較例2〜4で製造した口腔止血及び創傷保護フィルム(以下、止血フィルム)で使用性を評価し表6に示した。使用性は、口腔内に付着時、快適度による満足感として判断した。30人の対象にし評価を行った。
【0064】
実施例5と6が比較例2〜4に比べて高いスコアを受けた。スコアが高かった実施例6の場合、界面活性剤、可塑剤と軟化剤の相乗効果によるものと判断される。しかし、軟化剤なしに界面活性剤と可塑剤/オイルでもある程度以上の効能を発揮する。上記の成分の機能は、製剤の高分子が持つなどの分子レベルで柔軟になり、口腔粘膜の微細な表面と製剤の高分子官能基がよく結合することができる条件を提供するとに見られる。一方、比較例2は、軟膏の形態の異物感が大きく、比較例3は、ガーゼの特性上、流体吸収は可能であるが、止血などの意味が低くて満足度が最も低かった。比較例4は、軟化剤のみを単独使用し、使用性の効果が高くなかった。
【0065】
本発明の単純な変形ないし変更はすべて本発明の範囲に属するもので、本発明の具体的な保護範囲は、添付された特許請求の範囲によって明確になるだろう。
【符号の説明】
【0066】
10:粘着層
20:支持体層 本考案のブロック
【国際調査報告】