特表2019-500085(P2019-500085A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-500085(P2019-500085A)
(43)【公表日】2019年1月10日
(54)【発明の名称】生体吸収性固定釘
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/86 20060101AFI20181207BHJP
   A61L 31/02 20060101ALI20181207BHJP
【FI】
   A61B17/86
   A61L31/02
【審査請求】有
【予備審査請求】有
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-526048(P2018-526048)
(86)(22)【出願日】2016年11月23日
(85)【翻訳文提出日】2018年7月10日
(86)【国際出願番号】EP2016078531
(87)【国際公開番号】WO2017089381
(87)【国際公開日】20170601
(31)【優先権主張番号】102015120514.9
(32)【優先日】2015年11月26日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG
(71)【出願人】
【識別番号】514054236
【氏名又は名称】シンテリックス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】ザイツ,ヤン−マルテン
【テーマコード(参考)】
4C081
4C160
【Fターム(参考)】
4C081AC03
4C081BA12
4C081CG07
4C081CG08
4C081DA01
4C160LL22
4C160LL42
(57)【要約】
本発明は、カバーを使用して移植可能組織、骨部分、および骨置換物質を一時的に付着させ、または天然または人工の骨置換部品を骨に付着させるための固定釘に関する。固定釘は、直径0.50〜6.0mmの丸い平らな釘頭を有し、釘頭の厚さは0.10〜2.0mmである。固定釘は、先端が鋭利に形成されている釘ピンを有し、ピンの長さは釘頭の直径の0.5倍〜2倍であり、太さは釘頭の直径の0.15倍〜0.5倍である。固定釘は、少なくとも90重量%の金属マグネシウムから構成され、生理学的に望ましくない不純物としての0.1重量%未満のアルミニウム、0.1重量%未満の銅、0.1重量%未満の鉄および0.1重量%未満のニッケルを含む、生体適合性のある生物腐食性のマグネシウム合金からなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆によって移植可能な組織、骨部分および骨置換物質を一時的に付着させ、または天然および人工の骨置換部品を骨に付着させるための固定釘であって、
前記固定釘は、直径0.50〜6.0mmの丸い平らな釘頭を有し、
前記釘頭の厚さは0.10〜2.0mmであり、
前記固定釘は、先端が鋭利に設計されている釘ピンを有し、前記釘ピンの長さは前記釘頭の直径の0.5倍〜2倍であり、前記釘ピンのピン太さは前記釘頭の直径の0.15倍〜0.5倍であり、前記固定釘は、少なくとも90重量%の金属マグネシウム、ならびに、生理学的に望ましくない不純物としての0.1重量%未満のアルミニウム、0.1重量%未満の銅、0.1重量%未満の鉄および0.1重量%未満のニッケルから構成される、生体適合性のある生物腐食性のマグネシウム合金からなることを特徴とする、固定釘。
【請求項2】
前記釘頭の直径は1.5〜4.0mmであり、前記鋭利な釘ピンの長さは0.75〜8.0mmであり、前記釘頭の厚さは0.4〜1.0mmであり、前記釘ピンの太さは0.22〜2.0mmであることを特徴とする、請求項1に記載の固定釘。
【請求項3】
前記釘頭の直径が好ましくは2.5mmであること、前記鋭利な釘ピンの長さが好ましくは2.4mmであること、前記釘頭の厚さが好ましくは0.6mmであること、および、前記釘ピンの太さが最大0.8mmであることを特徴とする、請求項1に記載の固定釘。
【請求項4】
前記釘ピンは少なくとも1つの返しを有することを特徴とする、請求項1または2に記載の固定釘。
【請求項5】
前記釘ピンは、前記ピンの長さの下側半分の領域内に1つまたは2つの返しを有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の固定釘。
【請求項6】
前記固定釘は、少なくとも80重量%の金属マグネシウム、0.1〜3.0重量%の割合の亜鉛、0.1〜3.0重量%の割合のジルコニウム、合計0.1〜10.0重量%の割合の希土類金属、ならびに、生理学的に望ましくない不純物としての0.1重量%未満のアルミニウム、0.1重量%未満の銅、0.1重量%未満の鉄および0.1重量%未満のニッケルから構成される生物腐食性マグネシウム合金から作成され、残りは100重量%のマグネシウムであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の固定釘。
【請求項7】
前記釘ピンは、前記固定ピンの下側3分の1の領域内に少なくとも1つの、0.1〜0.3mmの隆起部を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の固定釘。
【請求項8】
前記釘ピンは、少なくとも1つ、好ましくは2つ〜5つの、0.1〜0.2mmの溝状のくびれ部分または溝状の切削部分を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の固定釘。
【請求項9】
前記釘頭はフード付きであるように設計されていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の固定釘。
【請求項10】
前記釘ピンの前記先端は銛形状であるように設計されていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の固定釘。
【請求項11】
前記釘ピンの前記先端は槍状であるように設計されていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の固定釘。
【請求項12】
骨補強中に安定化組織を一時的に付着させるための、請求項1〜11のいずれか一項に記載の固定釘の使用。
【請求項13】
歯科移植中に吸収性および非吸収性の被覆膜を一時的に付着させるための、請求項1〜12のいずれか一項に記載の固定釘の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨欠損を被覆し、天然および人工の骨交換部分を骨に付着させるために使用される膜の固定のための生体吸収性釘に関する。
【背景技術】
【0002】
歯の損失、歯周炎および義歯の保持圧力は、顎骨の骨吸収を発生させる可能性がある。それゆえ、義歯を埋め込むとき、最初に顎骨補強を実行する必要がある可能性がある。この場合、歯科インプラントは、人工歯根の機能を有する、顎骨内に固定される支持柱のタイプのものである。利用可能な骨量が少なすぎる場合、インプラントの永続的で安定した埋入を保証することができない。
【0003】
十分な骨が利用可能でない場合、骨補強(骨形成)は、2つの段階において、すなわち、実際の埋め込みの前に、または、義歯の実際の埋め込みと同時にも、行われ得る。骨形成の場合、同じ個人に由来する自家骨、これは最初に適切なロケーションにおいて患者から取り除かれなければならない、または、外部材料のいずれかが使用される。外部材料は、例えば提供者の骨など、天然起源のものであってもよく、または、合成によって生成されてもよい。顎骨を構築および再生するために、骨内の欠損が、自家移植または外部材料によって充填される。ヒドロキシアパタイトおよびリン酸カルシウムのような合成代用骨が、通常、チッピングまたは顆粒の形態で使用される。自家骨材料は通常、くり粉の形態で使用される。
【0004】
骨形成材料は移動するまたは押し流すことができないため、また、軟組織細胞が充填された骨欠損部位(ゆっくりと再生している硬組織)へと侵入または内方成長することを防止するために、これは、被覆膜によってシールされる(誘導骨再生GBRの原則)。
【0005】
被覆膜は従来技術から既知である。従来技術からの定評のある被覆膜は、滑りを防止するために、通常、チタンのような金属から作成される釘またはねじにより骨に固定される。ここでは、被覆膜を締結または縫い付けるだけでは十分ではない。治癒のための期間は一般的に12〜20週間である。
【0006】
米国特許第5957690号明細書は、可撓性プラスチック材料のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から作成される被覆膜を開示している。
【0007】
独国特許第4302709号明細書は、強化層を有する被覆膜を開示している。この膜は、固定釘によって顎骨に固定される。
【0008】
非弾性的な応力のない、永続的に変形可能なチタンから成型される被覆フィルム、および、位置固定のための対応する釘が、欧州特許出願公開第0809979号明細書に開示されている。
【0009】
コラーゲン繊維または同様の材料から作成され、身体によって吸収可能である被覆膜も既知である。
【0010】
チタン釘またはねじなどの非吸収性固定手段、および、非吸収性被覆膜には、非吸収性付着手段および被覆膜は、代用骨材料の挿入および創傷の治癒後、実際の歯科インプラントを使用できるようになる前に、外科的介入によって再び取り除かなければならないという欠点がある。これによって、影響を受ける領域の多大な刺激が継続する。
【0011】
身体の他の部分における骨欠損の場合、天然または人工の骨弛緩部品が、様々な固定補助具によって隣接する骨に固定されなければならない。この場合も、非吸収性固定手段は通常、骨が治癒すると直ちに、再び身体から外科的に取り除かなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5957690号明細書
【特許文献2】独国特許第4302709号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0809979号明細書
【特許文献4】国際公開第2015/133963号パンフレット
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Switzer, E.N., Resorbierbares metallisches Osteosynthesematerial. Untersuchungen zum Resorptionsverhalten im Meerschweinchen−Modell, Dissertation, Tierarztliche Hochschule Hannover, 2005
【非特許文献2】Schrenk, Sebastian, “Abbauverhalten degradierbarer Magnesiumlegierungen in korperahnlichen Flussigkeiten”, Dissertation, Medizinische Fakultat der Friedrich−Alexander−Universitat Erlangen−Nurnberg 2011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
それゆえ、本発明の目的は、従来技術からの既知の欠点を回避する代替的な付着手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的は、請求項1に記載の固定釘によって解決される。
【0016】
被覆によって移植可能な組織、骨部分および骨置換物質を一時的に付着させ、天然および人工の骨置換部品を付着させるための固定釘は、直径0.50〜6.0mmの丸い平らな釘頭を有し、釘頭の厚さは0.10〜2.0mmであり、固定釘は、先端が鋭利に設計されている釘ピンを有し、上記釘ピンの長さは釘頭の直径の0.5倍〜2倍であり、上記釘ピンのピン太さは釘頭の直径の0.15倍〜0.5倍であり、固定釘は、少なくとも90重量%の金属マグネシウム、ならびに、生理学的に望ましくない不純物としての0.1重量%未満のアルミニウム、0.1重量%未満の銅、0.1重量%未満の鉄および0.1重量%未満のニッケルから構成される、生体適合性のある生物腐食性のマグネシウム合金からなる。
【0017】
生体適合性のある生物腐食性の固定釘とともに、分解可能な被覆膜が顎手術に使用される場合、創傷被覆膜と固定補助具、すなわち、本発明による固定釘の両方の完全な吸収が、一般的に12〜20週間かかる創傷治癒の過程にわたって発生する。終了時には、健常な歯肉に包囲されている強化された骨が存在する。外科医は、最初に膜、補助具またはチタンピンの残留物を取り除く必要なしに、歯科インプラントを位置決めすることができる。
【0018】
本発明によるマグネシウム固定釘を使用するとき、身体の他の部分における骨欠損の事例においては、非吸収性固定手段の外科的除去も不要である。
【0019】
チタンまたはステンレス鋼から作成される同等の固定ピンまたは固定釘にまさる利点は、本発明によるマグネシウム釘は、コラーゲン膜のような、通常同様に分解可能な被覆物とともに、治癒の間に身体によって完全に吸収され、実際の歯科インプラントの位置決めの前または間にさらなる外科的介入によって取り除かれる必要がないことである。マグネシウムには、骨形成促進効果もある(Switzer, E.N., Resorbierbares metallisches Osteosynthesematerial. Untersuchungen zum Resorptionsverhalten im Meerschweinchen−Modell, Dissertation, Tierarztliche Hochschule Hannover, 2005)。吸収中に放出されるマグネシウム鉄が骨形成を刺激することも知られている(国際公開第2015/133963号パンフレット)。
【0020】
好ましい実施形態において、釘頭の直径は1.5〜4.0mmであり、鋭利な釘ピンの長さは0.75〜8.0mmであり、釘頭の厚さは0.4〜1.0mmであり、釘ピンの太さは0.22〜2.0mmである。それゆえ、釘頭は好ましくは、押しピンの形態で設計される。
【0021】
さらに、釘頭の直径が好ましくは2.5mmであること、鋭利な釘ピンの長さが好ましくは2.4mmであること、釘頭の厚さが好ましくは0.6mmであること、および、釘ピンの太さが最大0.8mmであることが好ましい。
【0022】
被覆膜を堅固に固定することは、本発明によるマグネシウム釘を顎骨に押し込むまたは打ち込むことによって達成される。
【0023】
固定釘は、下顎および上顎の領域のような、アクセスが困難な移植部位において使用される。外科医は、その過程において、クランプとともに釘の頭部を含み、適切な部位における位置決めを容易にする、細いペン形状のアプリケータを使用する。釘はその後、アプリケータを使用して圧入され、または外科ハンマーを用いて骨に打ち込まれる。この目的のために、釘ピンは一定の機械的安定性を有しなければならず、この安定性は主に、ピンの材料太さ、ならびに、合金の化学組成および製造工程によって与えられる。釘の頭部が広くなっていることによって、釘が被覆膜を完全に通り抜けることが防止される。
【0024】
ほぼ中央の下の、釘ピンの下側領域内に、1つまたは2つの返しが設けられることが、釘の固定にとって有利である。返しは、固定の強度を増大し、釘を外れにくくする。それゆえ、本発明の一実施形態において、釘ピンは少なくとも1つの返しを有する。
【0025】
釘ピンが、ピン長さの下半分の領域内に1つまたは2つの返しを有することがさらに好ましい。
【0026】
1つまたは複数の返しは好ましくは、釘ピンを半径方向に0.1〜0.4mmだけねじることによって生成される。
【0027】
マグネシウム釘は、挿入された骨材料を被覆する膜、または、移植された骨片の堅固な固定を特定の期間にわたって保証しなければならない。マグネシウム釘の吸収の速度は、主に、合金の化学組成およびその製造によって規定される。マグネシウムピンの機械的安定性と、その吸収速度は両方とも、特定の合金要素、具体的には亜鉛、ジルコニウム、希土類金属(イットリウム、ランタン、ネオジム、ジスプロシウムなどの合金)の添加によって影響を受ける。これらの合金の組成物の言及されている最小閾値および最大閾値は、骨移植または骨形成の治癒時間枠内での吸収が完全に保証されるように選択される。
【0028】
マグネシウム釘の生理学的安全性は、主に、不可避の不純物の含有量によって規定される。それゆえ、生理学的に有害な微量元素の最大量に言及する。アルミニウム、鉄、ニッケルおよび銅によって発生する不純物は各々、具体的には、本発明によるマグネシウム釘においては0.1重量%未満の値に制限される。一般的に、不純物の実際の量は好ましくは0.01重量%未満である。
【0029】
生物腐食性金属としてのマグネシウムの生理学的安全性は、他の研究からも知られている(Schrenk, Sebastian, “Abbauverhalten degradierbarer Magnesiumlegierungen in korperahnlichen Flussigkeiten”, Dissertation, Medizinische Fakultat der Friedrich−Alexander−Universitat Erlangen−Nurnberg 2011)。
【0030】
固定釘は好ましくは、マグネシウム、イットリウム、ジルコニウムおよび他の希土類金属から構成される生物腐食性のあるマグネシウムベースの合金からなる。
【0031】
本発明のさらなる態様によれば、固定釘は、少なくとも80重量%の金属マグネシウム、0.1〜3.0重量%の割合の亜鉛、0.1〜3.0重量%の割合のジルコニウム、合計0.1〜10.0重量%の割合の希土類金属、ならびに、生理学的に望ましくない不純物としての0.1重量%未満のアルミニウム、0.1重量%未満の銅、0.1重量%未満の鉄および0.1重量%未満のニッケルから構成される生物腐食性マグネシウム合金から作成され、残りは100重量%のマグネシウムである。
【0032】
イットリウムの割合は、合計0.1〜10.0重量%の割合の希土類金属のうち、1.5〜5重量%であることが好ましい。
【0033】
マグネシウムベースの合金は好ましくは、0.10〜2.00重量%のジルコニウム、0.01〜0.80重量%の亜鉛、1.50〜5.00重量%のイットリウムおよび2.50〜5.00重量%の他の希土類金属を含む。
【0034】
これに関連して、マグネシウムベースの合金は、当該合金に対して、各々が0.02重量%未満の鉄、銅、ニッケルおよびアルミニウムの金属の生理学的に望ましくない不純物の総含有量を有することが好ましい。特に、マグネシウムベースの合金は、0.01重量%未満のアルミニウム、0.20重量%未満の鉄、0.20重量%未満のマンガン、ならびに、各々0.02重量%未満の銅およびニッケルを含む。
【0035】
さらに、マグネシウムベースの合金は、0.01重量%のアルミニウム、0.20重量%未満の亜鉛、0.15重量%未満のマンガン、0.20重量%未満のリチウム、0.01重量%未満のケイ素、0.01重量%未満の鉄、0.03重量%未満の銅、および、0.005重量%未満のニッケルを含むことが好ましい。
【0036】
返しの代わりに、釘の先端が銛形状または槍状に設計されることで十分である場合がある。
【0037】
それゆえ、釘ピンの先端が銛形状であるように設計されることがさらに好ましい。
【0038】
釘ピンの先端が槍状に設計されることも好ましい。
【0039】
さらなる実施形態において、釘頭は、フード付きであるように設計される。
【0040】
特に、骨内への初期固定を改善し、任意の望ましくない抜去を防止するために、釘ピンにはまた、その全長またはその長さの一部分にわたって溝を設けることもできる。
【0041】
それゆえ、さらなる好ましい実施形態において、釘ピンは、固定ピンの下側3分の1の領域内に、少なくとも1つ、好ましくは2つ〜5つの、0.1〜0.2mmの溝状のくびれ部分を有する。
【0042】
一実施形態において、釘ピンは、固定ピンの下側3分の1の領域内に、少なくとも1つの0.1〜0.3mmの隆起部を有する。
【0043】
さらなる利点は、骨補強中に安定化組織を一時的に付着させるための、本発明による固定釘の使用からもたらされる。それゆえ、本発明による固定釘の使用は、顎顔面外科手術の分野のみに制限されず、天然および人工の安定化組織ならびに天然および人工の骨材料を身体自体の骨に固定するために使用することもできる。
【0044】
加えて、本発明による固定釘の使用は、歯科インプラントの吸収性および非吸収性の被覆膜を一時的に付着させるために提供される。これは好ましくは、コラーゲン含有および骨形成組織を一時的に付着させるための使用に関する。
【0045】
本発明を、添付の図面によってより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】釘ピンの先端が銛形状になっている、本発明による固定釘を示す図である。
【0047】
図2】釘ピンの先端が槍状になっている、本発明による固定釘を示す図である。
【0048】
図3】釘ピン内に溝がある、本発明による固定釘を示す図である。
【0049】
図4】釘頭がフード付きになっている、本発明による固定釘を示す図である。
【0050】
図5】歯科において使用するための本発明によるマグネシウム釘の詳細図である。
【0051】
図6図5による、本発明によるマグネシウム釘の三次元図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1図6は各々、本発明による固定釘(1)の実施形態を示す。これは、釘頭(2)および釘ピン(3)からなる。釘ピン(3)の先端は、骨における安定した固定を保証するために、銛形状(4)(図1)または槍状(5)(図2)になっていてもよい。
【0053】
特に、骨内への初期固定を改善し、任意の望ましくない抜去を防止するために、釘ピン(3)にはまた、その全長またはその長さの一部分にわたって溝(6)を設けることもできる(図3)。
【0054】
ピンの長さに対して広い釘頭によって、固定された被覆膜を通じた釘頭の「裂開」が防止される。釘頭はまた、十分な機械的安定性を有しなければならず、釘が打ち込まれるときに屈曲してはならない。釘頭はフード付き(7)にすることができる(図4)。
【0055】
図5および図6は、診療所内で試験されている、本発明によるマグネシウム釘の一般的な実施形態を示す。本発明の特に適した実施形態が、図5に示されている。図5においてCAD描画で輪郭を描かれているマグネシウム釘は、釘頭の直径が2.5mmであり、材料の厚さが0.7mmであることを特徴とする。釘ピンは、長さが2.4mmであり、材料の太さが0.7mmであることを特徴とする。釘ピンは、返しのようなものを形成するために、中央に0.1mmの切削部分を有する。釘頭は、アプリケータによってピンを把持することをより容易にする傾斜面を、縁部に有する。図6は、本発明によるマグネシウム釘の三次元図を示す。このマグネシウム釘は、歯科移植の過程における骨補強に使用するのに特に適している。
【0056】
本発明によるマグネシウム釘、特に図5および図6による釘を使用するとき、すべての臨床要件が満たされる。生物腐食性金属としてのマグネシウムの生理学的安全性は、他の研究からも知られている(Schrenk, Sebastian, “Abbauverhalten degradierbarer Magnesiumlegierungen in korperahnlichen Flussigkeiten”, Dissertation, Medizinische Fakultat der Friedrich−Alexander−Universitat Erlangen−Nurnberg 2011)。
【符号の説明】
【0057】
1 固定釘
2 釘頭
3 釘ピン
4 釘ピンの銛形状先端
5 釘ピンの槍状先端
6 溝
7 フード付き釘頭
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2018年7月10日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆によって移植可能な組織、骨部分および骨置換物質を一時的に付着させ、または天然および人工の骨置換部品を骨に付着させるための固定釘(1)であって、
前記固定釘は、直径1.5〜4.0mmの丸い平らな釘頭(2)を有し、前記釘頭(2)の厚さは0.4〜1.0mmであり、
ここで前記固定釘(1)は、先端が鋭利に設計されている釘ピン(3)を有し、前記釘ピンの長さは前記釘頭の直径の0.5倍〜2倍であり、前記釘ピンのピン太さは前記釘頭の直径の0.15倍〜0.5倍であり、前記固定釘(1)は、少なくとも90重量%の金属マグネシウム、ならびに、生理学的に望ましくない不純物としての0.1重量%未満のアルミニウム、0.1重量%未満の銅、0.1重量%未満の鉄および0.1重量%未満のニッケルから構成される、生体適合性のある生物腐食性のマグネシウム合金からなることを特徴とする、固定釘。
【請求項2】
前記釘頭(2)の直径が2.5mmであること、前記鋭利な釘ピン(3)の長さが2.4mmであること、前記釘頭(2)の厚さが0.6mmであること、および、前記釘ピン(3)の太さが最大0.8mmであることを特徴とする、請求項1に記載の固定釘。
【請求項3】
前記釘ピン(3)は少なくとも1つの返しを有することを特徴とする、請求項1または2に記載の固定釘。
【請求項4】
前記釘ピン(3)は、前記ピンの長さの下側半分の領域内に1つまたは2つの返しを有することを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の固定釘。
【請求項5】
前記固定釘は、少なくとも80重量%の金属マグネシウム、0.1〜3.0重量%の割合の亜鉛、0.1〜3.0重量%の割合のジルコニウム、合計0.1〜10.0重量%の割合の希土類金属、ならびに、生理学的に望ましくない不純物としての0.1重量%未満のアルミニウム、0.1重量%未満の銅、0.1重量%未満の鉄および0.1重量%未満のニッケルと、残りは100重量%のマグネシウムと、のみから構成される生物腐食性マグネシウム合金から作成されることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の固定釘(1)
【請求項6】
前記釘ピン(3)は、前記固定ピンの下側3分の1の領域内に少なくとも1つの、0.1〜0.3mmの隆起部を有することを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の固定釘(1)
【請求項7】
前記釘ピン(3)は、少なくとも1つの、0.1〜0.2mmの溝状のくびれ部分または溝状の切削部分を有することを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の固定釘(1)
【請求項8】
前記釘頭(2)はフード付きであるように設計されていることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の固定釘(1)
【請求項9】
前記釘ピン(3)の前記先端は銛形状(4)であるように設計されていることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の固定釘(1)
【請求項10】
前記釘ピン(3)の前記先端は槍状(5)であるように設計されていることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の固定釘(1)
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
チタンまたはステンレス鋼から作成される同等の固定ピンまたは固定釘にまさる利点は、本発明によるマグネシウム釘は、コラーゲン膜のような、通常同様に分解可能な被覆物とともに、治癒の間に身体によって完全に吸収され、実際の歯科インプラントの位置決めの前または間にさらなる外科的介入によって取り除かれる必要がないことである。マグネシウムには、骨形成促進効果もある(Switzer, E.N., Resorbierbares metallisches Osteosynthesematerial. Untersuchungen zum Resorptionsverhalten im Meerschweinchen−Modell, Dissertation, Tierarztliche Hochschule Hannover, 2005)。吸収中に放出されるマグネシウム鉄が骨形成を刺激することも知られている(国際公開第2015/133963号パンフレット)。ドイツ特許公報第10 2011 082 210 A1号広報は、適切なマグネシウム合金からなるねじ、釘、ピンの形態の医療用インプラントが開示されている。しかし、押圧等による固定の際に、特に下顎や上顎の補綴領域で問題が生じていた。このような理由から、釘等は一方で十分な強度を必要とし、他方でこれらが骨の組織に深く入れられすぎることを防ぐ必要があった。係る問題は釘やねじが一方で十分に広い頭部を有するとともに、他方で長く厚いピンを有することで解決しうる。また、釘が返しを有すれば骨の組織への固定がより有効となる。
【国際調査報告】