特表2019-501285(P2019-501285A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-501285(P2019-501285A)
(43)【公表日】2019年1月17日
(54)【発明の名称】リチウム膜を生成するための方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 1/04 20060101AFI20181214BHJP
   H01M 4/40 20060101ALI20181214BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20181214BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20181214BHJP
   H01M 4/1395 20100101ALI20181214BHJP
   C25D 5/26 20060101ALI20181214BHJP
   C25D 5/34 20060101ALI20181214BHJP
   C25D 5/30 20060101ALI20181214BHJP
   C25D 5/54 20060101ALI20181214BHJP
【FI】
   C25D1/04
   H01M4/40
   H01M4/66
   H01M4/134
   H01M4/1395
   C25D5/26 Q
   C25D5/34
   C25D5/30
   C25D5/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-526941(P2018-526941)
(86)(22)【出願日】2016年12月1日
(85)【翻訳文提出日】2018年7月23日
(86)【国際出願番号】US2016064328
(87)【国際公開番号】WO2017095989
(87)【国際公開日】20170608
(31)【優先権主張番号】62/262,438
(32)【優先日】2015年12月3日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA
(71)【出願人】
【識別番号】517007253
【氏名又は名称】クリーン リチウム コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】506311909
【氏名又は名称】リサーチ ファウンデーション オブ ザ シティー ユニバーシティ オブ ニューヨーク
【氏名又は名称原語表記】RESEARCH FOUNDATION OF THE CITY UNIVERSITY OF NEW YORK
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(72)【発明者】
【氏名】ボドワン, エミリー
(72)【発明者】
【氏名】スウォンガー, ラリー
(72)【発明者】
【氏名】マシュタリール, オルハ
(72)【発明者】
【氏名】グュエン, ミン
(72)【発明者】
【氏名】オブライアン, スティーヴン
【テーマコード(参考)】
4K024
5H017
5H050
【Fターム(参考)】
4K024AA01
4K024AB01
4K024BA01
4K024BA04
4K024BA05
4K024BA06
4K024BA08
4K024BA09
4K024BA11
4K024BB09
4K024CA01
4K024CA03
4K024CA06
4K024DA07
4K024GA02
4K024GA16
5H017AA03
5H017BB16
5H017CC01
5H017EE01
5H017EE04
5H017EE06
5H017HH00
5H017HH03
5H017HH10
5H050AA07
5H050AA15
5H050BA16
5H050CB12
5H050GA24
5H050HA00
5H050HA04
5H050HA17
(57)【要約】
高純度リチウム金属薄膜、及び高純度リチウム金属薄膜の形態を制御するためのプロセスを提供する。一般的な実施形態では、本開示は、制御された厚さ及び形態を有する高純度リチウム金属薄膜を提供する。高純度リチウム金属薄膜は、選択的なリチウムイオン伝導層を用いたリチウムの電解析出によって生成される。リチウム金属薄膜の形態は、析出に使用する電流率を変えることによって制御することができる。本発明のリチウム金属膜は、有利なことに、所望の用途によって膜の厚さ及び/又は形態を変化させることができる純度リチウム金属膜を提供する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹枝状結晶を含まず、光学的に平滑である、リチウム金属膜。
【請求項2】
選択的なリチウムイオン伝導層を用いて形成される、請求項1に記載のリチウム金属膜。
【請求項3】
約1nm〜約1000μmの厚さを有する、請求項1に記載のリチウム金属膜。
【請求項4】
前記厚さが、約1nm以上〜約40μm未満である、請求項3に記載のリチウム金属膜。
【請求項5】
前記厚さが約25μmである、請求項3に記載のリチウム金属膜。
【請求項6】
平滑な表面形態を有する、請求項1に記載のリチウム金属膜。
【請求項7】
球状構造を含む、請求項1に記載のリチウム金属膜。
【請求項8】
ナノロッド構造を含む、請求項1に記載のリチウム金属膜。
【請求項9】
光学的に平滑であり、d<λ/(8 cos θ)であり、式中、dは表面粗さであり、λは入射照明の波長であり、θは入射照明の入射角である、リチウム金属膜。
【請求項10】
前記表面粗さが、基準面から測定した2乗平均平方根粗さの高さである、請求項9に記載のリチウム金属膜。
【請求項11】
基板;及び
前記基板上に生成されたリチウム金属膜
を備える電極であって、
前記リチウム金属膜は、樹枝状結晶を含まず、光学的に平滑である、電極。
【請求項12】
前記リチウム金属膜が、約1nm〜約1000μmの厚さを有する、請求項11に記載の電極。
【請求項13】
前記基板がリチウムと合金を作らない材料を含む、請求項11に記載の電極。
【請求項14】
前記基板が、銅及びステンレス鋼からなる群から選択される材料を含む、請求項11に記載の電極。
【請求項15】
濃硫酸(98wt%)中で前記基板を2秒間エッチングし、前記基板を脱イオン水ですすぎ、前記基板を空気乾燥することによって前記基板を前処理してから、その上に前記リチウム金属膜を生成する、請求項11に記載の電極。
【請求項16】
前記リチウム金属膜が、選択的なリチウムイオン伝導層を用いて形成される、請求項11に記載の電極。
【請求項17】
基板;及び
前記基板上に生成されたリチウム金属膜
を含むリチウム合金であって、
前記リチウム金属膜は樹枝状結晶を含まず、光学的に平滑であり、且つ
前記基板はリチウムと合金を作る材料を含む、リチウム合金。
【請求項18】
前記基板がアルミニウムを含む、請求項17に記載のリチウム合金。
【請求項19】
前記基板が、ケイ素及びスズからなる群から選択される材料を含む、請求項17に記載のリチウム合金。
【請求項20】
前記基板が、炭素、チタン、マグネシウム及びビスマスからなる群から選択される材料を含む、請求項17に記載のリチウム合金。
【請求項21】
前記リチウム金属膜が、選択的なリチウムイオン伝導層を用いて形成される、請求項17に記載のリチウム合金。
【請求項22】
カソード;
アノード;及び
電解質
を備える電池であって、
リチウム金属膜は、前記カソード及びアノードの少なくとも一方上に設けられ、且つ
前記リチウム金属膜は、樹枝状結晶を含まず、光学的に平滑である、電池。
【請求項23】
リチウム一次電池、二次電池、及びマイクロ電池からなる群から選択される、請求項22に記載の電池。
【請求項24】
前記リチウム金属膜が、約1nm〜約1000μmの厚さを有する、請求項22に記載の電池。
【請求項25】
前記リチウム金属膜が、選択的なリチウムイオン伝導層を用いて形成される、請求項22に記載の電池。
【請求項26】
所望の形態のリチウム金属膜を得る方法であって、
選択的なリチウムイオン伝導層を用いてリチウム金属を電解析出させるステップ、及び前記電解析出の電流率を制御して所望の形態を得るステップを含む、方法。
【請求項27】
前記電流率が、−1mA/cm〜−10mA/cmの範囲内に制御される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記電流率が、−1mA/cm〜−4.5mA/cmの範囲内に制御される、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[背景]
[0001]本開示は、一般には特定の特性を有する高純度リチウム金属膜に関する。より詳細には、本開示は、制御された厚さ及び形態を有する高純度リチウム金属膜に関する。高純度リチウム金属膜は、10nm〜数百ミクロンの厚さ、並びに、平滑な膜、ナノ粒子及びナノロッドから選択される形態を有する。
【0002】
[0002]リチウム金属は、リチウム金属の高い理論比容量(theoretical specific capacity)(3860mAh/g)、低密度(0.59g/cm)、及び低い負の還元電位(−3.040V vs. SHE)のために、有望な高エネルギー密度電池アノード材料である。リチウム金属は、従来、一次電池に使用されてきたが、二次電池は、通常リチウムインターカレーテッドグラファイトアノードを使用する。リチウム金属はグラファイトの10倍高い理論容量を有するので、かかるグラファイトアノードをリチウム金属に置き換えることにより、電池のエネルギー密度がかなり増加する可能性がある。
【0003】
[0003]しかしながら、安全性の懸念、乏しいサイクル性及び短い寿命は、アノードのサイクリングが必要な現在の二次電池用途においてリチウム金属の使用を制限している。これらの問題は、主としてリチウム金属の純度が不十分なこと(卑金属含有量、空気中でリチウムと反応して窒化物及び酸化物を形成すること、並びに不純物に関連する他の問題に関して)及びリチウム金属の表面上の樹枝状結晶形成が原因である。これらの問題は、樹枝状結晶及び非リチウム介在物を含まない平滑で均一な表面を有する高純度リチウム金属を使用することによって対処することができる。
【0004】
[0004]電池用途では、リチウム金属は、主に箔の形態で使用される。リチウム箔は、従来より、前駆体として塩化リチウムを用いた電気分解プロセスを使用して炭酸リチウムから生成されている。例えば、Brownらの米国特許第4,274,834号に記載されている電気分解プロセスでは、炭酸リチウムを、塩酸との反応によって塩化リチウムに変換し、続いて共晶塩化リチウム及び塩化カリウム複合体を高温(380℃〜400℃)で還元して、通常インゴットとして回収されるバルクのリチウム金属を形成する。
【0005】
[0005]リチウム箔を生成するための別の電気分解プロセスは、Le Rouxらの米国特許第4,724,055号に記載されている。米国特許第4,724,055号は、溶融塩の混合物中に含有されている塩化リチウムの電気分解によってリチウムを調製するための連続的なプロセスを対象とする。プロセスは、大量のエネルギーを消費し、副産物として極めて腐食性で有毒な大気汚染物質である塩素ガスを発生させ、追加の精製ステップ/安全ステップを必要とすることが望ましくない。
【0006】
[0006]厚さが50μm〜200μmのリチウム箔を形成するために、リチウム金属インゴットは、空気中(通常リチウム金属と反応する窒素/酸素中の低湿度の環境)での押出し又は圧延によって機械的に加工される。しかしながら、機械的加工によって、より多くの不純物が最終生成物に取り込まれることが望ましくない。生成された箔は、所望のサイズ及び形状に切断され、集電体(通常銅箔)に取り付けられて、一次リチウム金属電池のアノードとしてさらに使用される。
【0007】
[0007]リチウム箔又は薄膜を形成する従来の方法は、前駆体として高純度リチウム金属を使用し、減圧下で行なわれるか又はリチウム析出の速度を制限する追加の添加剤を必要とする。例えば、高い金属純度の平滑なリチウム薄膜は、Kugaiらの欧州特許第1,174,936号及びChoらの米国特許第7,629,083号に記載されているように、スパッタリング、真空蒸着、レーザーアブレーション、及びイオンプレーティングとも呼ばれる、物理蒸着(PVD)によって作製される。PVD技術は、1〜200ミクロンの範囲で高純度リチウム金属の薄膜を生成できるが、低真空中では、水分によるアルカリ金属薄膜の酸化又はアルカリ金属薄膜の劣化が起こり得るので、かかる方法は、1.33×10−4Pa(1×10−6Torr)以下の圧力を必要とする。
【0008】
[0008]本開示は、制御された厚さ及び形態を有する樹枝状結晶を含まないリチウム金属膜を生成できるプロセスを提供する。上記樹枝状結晶を含まないリチウム金属膜は、平滑であり、炭酸リチウム供給源から直接生成することができる。
【0009】
[概要]
[0009]本開示は、導電性基板上に析出させた、制御された厚さ及び形態を有する高純度リチウム金属薄膜を製造するための方法を提供する。本開示はまた、追加の加工をせずに一次リチウム金属電池及び二次リチウム金属電池の両方に使用でき、したがって電池製造プロセスを合理化する、高純度の樹枝状結晶を含まないリチウム金属膜系電極を製造するための方法を提供する。
【0010】
[0010]一般的な実施形態では、本開示は、樹枝状結晶を含まない、光学的に平滑なリチウム金属膜を提供する。上記リチウム金属膜は、選択的なリチウムイオン伝導層を用いてカソード上にリチウムを電解析出させることによって得られる。リチウム金属膜の形態は、析出に用いられる電流率を変えることによって制御することができる。
【0011】
[0011]一実施形態では、リチウム金属膜は、約1nm〜約1000μmの厚さを有する。リチウム金属膜は、約1nm以上〜約40μm未満の厚さを有していてもよい。特に、リチウム金属膜は、約25μmを有していてもよい。
【0012】
[0012]一実施形態では、リチウム金属膜は、平滑な表面形態を有している。
【0013】
[0013]別の実施形態では、リチウム金属膜は、球状構造を含む。
【0014】
[0014]一実施形態では、リチウム金属膜は、緻密に自己配列されたナノロッド構造を含む。ナノロッド形態の利点は、緻密で均一なナノロッドが、現在のリチウムの供給材料と比較して、リチウムアノードの実表面積を著しく減少させることができることである。これは、電池中のリチウムと電解質の間の化学的反応及び電気化学的反応のために、アノードの表面積の減少によってリチウムの減少が低下するので、有益である。この特定の形態は、従来の電極と比較して、容量、サイクル性を高め、インピーダンスを低減することができる。
【0015】
[0015]一実施形態では、本開示は、d<λ/(8 cosθ)で光学的に平滑なリチウム金属膜を提供し、ここで、dは、表面粗さ(例えば、基準面から測定した2乗平均平方根粗さの高さ(roughness height))であり、λは、入射照明の波長(200〜1000nm)であり、θは、入射照明の入射角である。
【0016】
[0016]一実施形態では、本開示は、基板及び基板上に生成されたリチウム金属膜を備える電極を提供する。上記リチウム金属膜は、樹枝状結晶を含まず、光学的に平滑である。
【0017】
[0017]一実施形態では、基板は、リチウムと合金を作らない材料を含む。上記基板は、銅及びステンレス鋼からなる群から選択される材料を含んでいてもよい。
【0018】
[0018]一実施形態では、基板は、濃硫酸(98wt%)中で基板を2秒間エッチングし、基板を脱イオン水ですすぎ、基板を空気乾燥することによって前処理されてから、基板上にリチウム金属膜が生成される。
【0019】
[0019]一実施形態では、リチウム合金が提供される。リチウム合金は、基板と基板上に生成されたリチウム金属膜を含む。上記リチウム金属膜は、樹枝状結晶を含まず、光学的に平滑であり、基板は、リチウムと合金を作る材料を含む。
【0020】
[0020]一実施形態では、基板は、リチウムと合金を作る材料を含む。上記基板は、アルミニウム、スズ、ケイ素、又はリチウムと合金を作る任意の他の金属を含んでいてもよい。
【0021】
[0021]一実施形態では、電池が提供され、カソード、アノード、及び電解質を含む。上記リチウム金属膜は、カソード及びアノードの少なくとも一方上に設けられる。リチウム金属膜は、樹枝状結晶を含まず、光学的に平滑である。
【0022】
[0022]一実施形態では、電池は、リチウム一次電池、再充電可能なリチウム金属電池、又はマイクロ電池である。
【0023】
[0023]一実施形態では、本開示は、所望の形態のリチウム金属膜を得る方法を提供する。上記方法は、選択的なリチウムイオン伝導層を用いてリチウム金属を電解析出させるステップ、及び電解析出の電流率を制御して所望の形態を得るステップが含む。
【0024】
[0024]一実施形態では、電流率が1mA/cm〜10mA/cmの範囲内に制御される。
【0025】
[0025]本開示の利点は、制御された厚さ及び形態を有する高純度リチウム金属膜を提供することである。リチウム金属膜は、選択的なリチウムイオン伝導層を用いることによって得られる。厚さ及び形態が所望の範囲内となるように制御することによって、リチウム膜は、特定の用途のために簡単に設計することができる。
【0026】
[0026]本開示の別の利点は、電解析出させた高純度リチウム金属膜の形態を制御するための方法を提供することである。上記高純度リチウム金属膜は、光学的に平滑であり、樹枝状結晶を含まず、したがって、高純度の平滑なリチウム金属膜を必要とする電池及び他の用途に使用することができる。
【0027】
[0027]さらなる特徴及び利点は、本明細書に記載されており、以下の詳細な説明及び図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】[0028]図1は、米国特許出願公開第2015/0014184号に開示されているリチウム生成セル構造の概略的な正面図を示す。
図2】[0029]図2は、図1のリチウム生成セル構造の概略的な詳細を示す。
図3】[0030]図3は、米国特許出願公開第2015/0014184号のリチウム生成セルの概略的な分解詳細を示す。
図4】[0031]図4は、電解析出されたリチウム膜のSEM像を示す。
図5】[0032]図5は、銅基板上に−1、−3、−5、−10、及び−15mA/cmの異なる電流率で電解析出させたリチウム膜の写真を示す。
図6】[0033]図6は、4時間45分にわたって研磨された銅円板電極(1 3/8”直径)上のリチウム析出を示す。
【0029】
[詳細な説明]
[0034]Swongerの米国特許出願公開第2015/0014184号は、酸電解質中で解離し、供給原料の非リチウム部分をガスとして放出する、炭酸リチウム又は他のリチウム塩からリチウム金属を連続的に生成するための電解プロセスについて記載している。Swonger電解プロセスは、水性酸電解質及びリチウム生成セル構造を用いてリチウム塩からリチウム金属を連続的に生成する。リチウム生成セル構造は、セル本体、カソード、リチウムイオン及び陰イオンを含有する水性電解液、並びにカソードと電解質水溶液の間にインターカレートされた複合層を含む。上記複合層は、リチウムイオン伝導性ガラスセラミック(LIC−GC)と、カソード形成リチウムを電解質水溶液から単離するリチウムイオン伝導性バリア膜(LI−BF)とを含む。LIC−GC−BF複合体は、リチウム金属を溶液から直接生成し、追加の抽出プロセスを必要とせずに、清浄なカソードにリチウム金属を直接析出させることができる。
【0030】
[0035]図1及び図2は、リチウムリッチ電解質が抽出セルを通って流れる、米国特許出願公開第2015/0014184号のリチウム生成プロセスを示す。電位がシステムに加えられると、インターカレートされた複合層の下にある移動カソード上にリチウム金属が蓄積する。図1は、リチウム生成セル構造の概略的な正面図を示し、図2は、図1のセル構造の概略的な詳細である。
【0031】
[0036]図1及び図2では、電解セル10は、上部セクション12及び下部セクション14を含む。セル10は、セルの断面を横切る可動性のカソード16を特徴とする。カソード16の上の電解質18中で電気分解反応が生じるにつれて、カソード16は、LIC−GC−BF複合層を通って前進し、セル10の軸を移す。アノード20は、セルの上部セクション12に設けられている。カソード16の上のセルセクション12は、入口22を介して電解質18が充填され、電気分解が進み、使用済みの電解質が出口24を介して排出される。カソード16は、カソード16と電解質18の間にインターカレートされた複合層28を介して電解質18と接触している。複合層28は、電解質18に隣接するリチウムイオン伝導性ガラスセラミック層(LI−GC)30、及びセラミック層30とカソード16の間に介在したリチウムイオン伝導性バリア膜(LI−BF)32を含む。バリア層32及びガラスセラミック層30を含む複合体28は、カソード16で形成しているリチウムを電解質18から分離する。シャフト26はカソード16及び複合体28を前進させ、当該前進は、リチウム金属が形成され、複合層28を通って前進するカソード16上に析出されるにつれて、なされる。固体のカソード16で生成されたリチウム金属は、純金属相として取り出すことができる。
【0032】
[0037]適当な電解質18の成分には、LiCO及びLiClを含むがそれだけには限定されない水溶性リチウム塩が含まれる。溶解性を改善するために、リチウム塩は、硫酸などの水和酸に溶解され、電解セル10内で電解質18として使用される。炭酸リチウム(LiCO)は、最も容易に入手可能なリチウム塩であり、セル10の初期の試験で供給原料として使用された。
【0033】
[0038]米国特許出願公開第2015/0014184号では、炭酸リチウムは水及び有機溶媒に本質的に不溶性であるが、炭酸リチウムは硫酸溶液においてははるかに高い溶解度を有するので、硫酸の使用が、炭酸リチウムからリチウム金属を効率的に生成するために重要であることを教示している。炭酸リチウムを解離させ、リチウムイオンを溶液に入れることのみによって、電解液は安定したままであり、供給原料の非リチウムイオン部分の濃度を増大させない。電気分解セルの外部のタンクには炭酸リチウムを連続的に供給することができ、硫酸電解質によって放出されたCOガスを排出し、カソードからリチウム金属を回収することができる。これは、連続的に操作でき、又はバッチプロセスとして行なうことができる。
【0034】
[0039]米国特許出願公開第2015/0014184号は、その電解セル10のいくつかの適当な構成要素が、米国特許出願公開第2013/0004852号に記載されていることを開示している。
【0035】
[0040]カソード16は、インターカレートされた複合体(Li−GC/Li−BF)28を特徴とし、複合体28がカソード16と電解質18の間に挿入されているか又は介在していることを表す。カソード16は、セル10の軸に沿って前進して、複合体28を通って生成されたリチウムを放出し、カソードに析出したリチウムを単離する。カソード16は、リチウム金属及び複合層と非反応性である適当な材料を含む。Li−GC/Li−BF複合層28は、アノードコンパートメントとカソード上に形成されるリチウム金属との間の固定バリアである。カソードは、カソード上で連続的に厚くなるリチウム金属の層を収容するために移動する。
【0036】
[0041]米国特許出願公開第2015/0014184号に開示されているように、複合層(Li−GC/Li−BF)28は、リチウムイオン伝導性ガラスセラミック層(LI−GC)30及びリチウムイオン伝導性バリア膜(LI−BF)32を含む。実質的な不浸透性層(LI−GC)30は、活性金属イオン伝導性ガラス又はガラスセラミック(例えば、高活性金属イオン伝導率及びリチウム金属と強烈に反応する攻撃的な電解質に対する安定性を有するリチウムイオン伝導性ガラスセラミック)であり得る。適当な材料は、実質的に不浸透性であり、イオン伝導性であり、水性電解質若しくは他の電解質(カソード液)及び/又は他の場合にはリチウム金属と逆に反応するであろうカソード材料と化学的に適合する。かかるガラス又はガラスセラミック材料は、実質的にギャップがなく、非膨潤性であり、ガラス又はガラスセラミック材料のイオン伝導特性に関して液体電解質又は他の剤の存在に依存しない。それらはまた、少なくとも10−7S/cm、一般に少なくとも10−6S/cm、例えば少なくとも10−5S/cm〜10−4S/cm、及び10−3S/cm以上まで高いイオン伝導率を有し、それにより多層保護構造の全体的なイオン伝導率は、少なくとも10−7S/cmであり、10−3S/cm以上まで高いである。上記層の厚さは、好ましくは約0.1〜1000ミクロンであり、又は、上記層のイオン伝導率が約10−7S/cmの場合、約0.25〜1ミクロンであり、又は、上記層のイオン伝導率が約10−4〜約10−3S/cmの場合、約10〜1000ミクロンであり、好ましくは1〜500ミクロンであり、より好ましくは50〜250ミクロン、例えば、約150ミクロンである。
【0037】
[0042]ガラスセラミック層(LiC−GC)30の例には、ガラス質又は非晶質金属イオン伝導体、例えばリン系ガラス、酸化物系ガラス、リン酸窒化物系ガラス、硫黄系ガラス、酸化物/硫化物系ガラス、セレン化物系ガラス、ガリウム系ガラス、ゲルマニウム系ガラス又はボラサイトガラス(D.P.Buttonら、Solid State Ionics、Vols.9〜10、Part 1、585〜592(1983年12月)に記載されるような);セラミック活性金属イオン伝導体、例えばリチウムβ−アルミナ、ナトリウムβ−アルミナ、Li超イオン伝導体(LISICON)、Na超イオン伝導体(NASICON)など;或いはガラスセラミック活性金属イオン伝導体が含まれる。具体例には、LiPON、LiPO、LiS、SiS、LiS、GeS、Ga及びLiOが含まれる。
【0038】
[0043]適当なLiC−GC材料は、モルパーセントで以下の組成を有するリチウムイオン伝導性ガラスセラミックを含む:P 26〜55%;SiO 0〜15%;GeO+TiO 25〜50%;その内、GeO 0〜50%;TiO 0〜50%;ZrO 0〜10%;M 0〜10%;Al 0〜15%;Ga 0〜15%;LiO 3〜25%を有し、Li1+x(M,Al,Ga)(Ge1−yTi2−x(PO(ここで、X≦0.8且つ0≦Y≦1.0であり、Mは、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm及びYbからなる群から選択される元素である)、及び/又はLi1+x+yTi2−xSi3−y12(ここで、0<X≦0.4且つ0<Y≦0.6であり、Qは、Al又はGaである)を含む主結晶相を含有する。他の例には、11Al、Na11Al、(Na,Li)i+xTi2−xAl(PO(0.6≦x≦0.9)並びに結晶学的関連構造、NaZrSiPO12、LiZrSiPO、NaZrP12、NaTiP12、NaFe12、NaNbP12、LiZrP12、LiTiP12、LiFe12及びLiNbP12並びにその組合せが含まれ、任意選択で焼結又は溶融される。適当なセラミックイオン活性金属イオン伝導体は、例えば、Adachiらの米国特許第4,985,317号に記載されている。
【0039】
[0044]米国特許出願公開第2015/0014184号は、適当なLiC−GC材料には、Ohara,Inc.(神奈川、JP)の製品、商標LIC−GC(商標)、LISICON、LiO−−Al−−SiO−−P−−TiO(LATP)、並びにOharaなどによって製造されるもののような、同様に高いリチウム金属イオン伝導率及び耐環境性/耐薬品性を備える他の材料も含まれることを開示している。例えば、米国特許第8,476,174号を参照のこと。米国特許第8,476,174号は、少なくともLiTi12構造を有する結晶を含むガラスセラミックを開示しており、上記結晶は、1<IA113/IA104≦2を満たし、ここで、IA104は、X線回折法によって決定され、面指数104(2θ=20〜21°)に割り当てられたピーク強度であり、IA113は、面指数113(2θ=24〜25°)に割り当てられたピーク強度である。
【0040】
[0045]米国特許出願公開第2015/0014184号のリチウムイオン伝導性バリア膜32(Li−BF)は、通常1.0mS/cm〜100mS/cmである高いリチウム金属イオン伝導率を有する、リチウム金属イオン伝導性膜又はコーティングである。高いリチウムイオン輸率(t)が好ましい。低tLi電解質は、セル内でイオン濃度勾配を可能にすることによって性能を妨げ、セル寿命を制限し還元速度を制限し得る高い内部抵抗をもたらすことになる。t=0.70〜t=1.0の輸率が好ましい。リチウムイオン伝導性バリア膜は、リチウム金属及びLI−GC材料の両方に対して非反応性である。
【0041】
[0046]LI−BF膜32は、活性金属複合体を含み、ここで「活性金属」は、電池の活性材料として使用されるリチウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、及びアルミニウムである。適当なLI−BF材料には、活性金属とCuNの複合反応生成物、活性金属窒化物、活性金属リン化物、活性金属ハロゲン化物、活性金属リン硫化物ガラス、及び、活性金属リン・酸窒化物ガラス(CuN、LN、LiP、LiI、LiF、LiBr、LiCl及びLiPON)が含まれる。米国特許出願公開第2015/0014184号は、カソード上に形成される樹枝状結晶がLI−GC材料と接触することから、LI−BF材料を保護しなければならないことも教示している。これは、カソードとLI−GCの間に物理的な距離を作ること、及び/又は樹枝状結晶が容易に侵入しない物理的バリアを提供することによって達成することができる。1つの好ましいLI−BF膜は、Scientific Reports(article number:1917 doi:10.1038/srep01917)においてKimらによって記載されたように、その場での熱不可逆的ゲル化及び単一イオン優勢伝導(single ion-predominant conduction)によって生成された物理的なオルガノゲル電解質である。この電解質は、室温でt=0.84及び8.63mS/cmの伝導率を有する。このオルガノゲル電解質は、多孔質膜内に設置して、樹枝状結晶の侵入に対する付加的な構造及び抵抗性を提供することができる。通常の多孔質膜の厚さは、1μm〜500μm、例えば20μmである。許容できる多孔質膜は、Asahi Kasei E−materials CorporationによるHIPOREポリオレフィンフラットフィルム膜を含む。
【0042】
[0047]米国特許出願公開第2015/0014184号の連続的なリチウム金属生成プロセスは、安価な炭酸リチウム又は同等のリチウムイオンの供給源を利用して、リチア輝石鉱石又は他の天然リチウム供給源からリチウム金属を浸出させるために使用される酸性溶液から直接リチウム金属を生成することができる。
【0043】
[0048]米国特許出願公開第2015/0014184号のプロセス例は、図3に概略的に示されたセルを利用する。セル110は、セルカバー116、リテーナー118、Ptアノード112、カソード124及びLiC−GC伝導性ガラス114を、多孔質ポリオレフィンフラットフィルム膜122に組み込まれたリチウムイオン伝導性バリア膜120とともに、含む。支持されたLiC−GC−BF多層は、カソード124とリチウムイオンリッチ電解質18の間にインターカレートされている(図1及び図2に示すとおり)。上記セルは、ガスケット128を備えたテフロン(Teflon)(登録商標)スリーブ構造126を支持することをさらに含む。あるガスケットが、LiC−GCとハウジングの間を密封して、アノードコンパートメントからカソードコンパートメントへの電解質の漏れを防止する。他のガスケットは、LiC−GCプレートの破損を防止するために、テフロンスリーブによるLiC−GCの均一な圧縮を可能にする。
【0044】
[0049]セル110は、1”×4”ロジウム及びパラジウム宝石用めっきである、白金めっきしたチタンアノードであるアノード112を含む。カソードは、1.4インチの円形の、自社製パラジウムカソードディスクである。LiC−GC114材料は、Ohara Corporation、23141 Arroyo Vista、Rancho Santa Margarita、California 92688製のLICGC(登録商標)G71−3 N33:DIA 2 IN×150μmテープ成形、厚さ150μm、2インチの円形である。
【0045】
[0050]リチウムイオン伝導性ゲル電解質120は以下のものから製造される:Alfa Aesar、stock number H61502から調達され、Ulsan National Institute of Science and Technology in Ulsan South Korea、Dr. Hyun−Kon Songから提供されたPVA−CNポリマー;LiPF(ヘキサフルオロリン酸リチウム)、98%;Sigma Aldrich製の、product number 754935のEMC(炭酸エチルメチル)、99%;Sigma Aldrich製の、product number 676802のEC(炭酸エチレン)、無水物;及びAsahi Corp製の、ND420ポリオレフィンフラットフィルム膜である多孔質膜。
【0046】
[0051]Li−BFバリア層120は、アルゴンパージされたグローブバッグ内で製造される。グローブバッグに、全ての材料、精密スケール、シリンジ、及び他のセル構成要素を装入し、その後、電解質製造プロセスの開始前に、グローブバッグを4回充填し、排気させる。
【0047】
[0052]オルガノゲル電解質は、以下のように混合する:EMC 4.0mlを約140°Fまで加熱することによって液化し、バイアルに入れる。次いで、EMC 2.0mlをバイアルに加え、PVA−CNポリマー0.133g(2重量%)をバイアルに加え、混合物を1時間撹拌してPVA−CNを溶解させる。次いで、SEI形成添加剤としてFEC 0.133g(2重量%)を添加し、その後LiPF 0.972g(1M)を添加し、混合してオルガノゲル電解質混合物を完成させる。次いで、電気分解セルは、グローブバッグの内部で組み立てられる。LiC−GC及びガスケットを配置し、アノードコンパートメント及びカソードコンパートメントを互いに密封する。オルガノゲル電解質混合物を用いて、LiC−GCのカソード側を濡らし、HIPORE膜をLiC−GCのカソード側に配置し、オルガノゲル電解質混合物で再度濡らす。次いでカソードディスクをオルガノゲル混合物の上に配置する。セルをマイラー(Mylar)(登録商標)バッグに入れ、アルゴンパージ下の間に密封する。組み立てられたセルを含む密封されたマイラー(登録商標)バッグは、その後60℃のオーブン内に24時間置かれて、電解液をゲル化させる。
【0048】
[0053]電気分解セル110をオーブンから取り出し、アルゴンパージされたグローブバッグに入れ、室温まで冷ます。透明なポリプロテープを使用して、カソードディスクの上の空きスペースを密封し、電極ワイヤーを固定する。電気分解セル110は、使用準備が整い、グローブバッグから取り出され、電解質循環システムに接続されている。
【0049】
[0054]脱イオン水200ml及び20重量%硫酸500ml中で炭酸化したリチウム120gを用いて電解質18を調製する。硫酸を炭酸リチウム懸濁液にゆっくり加え、よく混合する。溶解していない炭酸リチウムを沈殿させる。上清を、18重量%のリチウム保存溶液である保存溶液から回収する。18重量%リチウム溶液は、測定されたpH9を有する。溶液のpHは、20重量%硫酸の添加によって低下する。再度硫酸をゆっくり加えて、発泡を最小限にする。18重量%リチウム保存溶液をpH4.5に調整する。好ましいpHは、pH3.0〜pH4.5であり、最も好ましいのはpH3.0〜pH4.0であるが、このプロセスはpH7.0以下で行なうことができる。pHが7.0を超えると、溶液中に炭酸塩が生じることになる。
【0050】
[0055]次に、電解質混合物を循環システムに注ぎ込む。循環ポンプを用意し、溶液を30分間循環させて漏れをチェックする。
【0051】
[0056]リチウムイオンリッチ電解質18は、LiC−GC−BF多層114/120の上にあるセル110の上半分を通って、アノード112を越えて流れる。電位がシステムに加えられると、LiC−GC−BF多層114/120システムの下の移動カソード上にリチウム金属が蓄積する。
【0052】
[0057]Gamry Reference 3000 Potentiostat/Galvanostat/ZRAがセル110に取り付けられている。−3〜−6ボルトの電圧では、有意な活性はない。電圧が−10Vに上げられると、システムが応答する。電圧を11vdcに上げると、消費電流(amperage draw)が増加する。上記セルのアノード側でのガス発生は、11vdcでは認められなかった。Gamry Reference 3000は、−11vdcを下回らない。−11vdcでガス発生が起こらなかったので、電圧が増加すると還元速度がはるかに高くなる可能性が最も高い。アノードで無視できるほどの酸素生成が達成されたならば、さらに高い電圧及び還元速度が好ましい。時間ゼロにおける電解質のpHは4.46である。上記溶液のpHは35分後に4.29に低下し、実験の最後では4.05である。pHの低下は、電解質からのリチウムイオンの除去を示す。
【0053】
[0058]実験の開始時には、−20mAの消費電流が示されている。消費電流は、30分後に−60mAまで徐々に増加する。アンペア数は、さらに30分間この値でかなり安定した状態を保っている。実験用タイマー及びグラフを30分間中断して、実験を延長する(電圧は−11vdcで保持)。約65分の運転時間後に、大きな電流スパイク及び突然の活発なガス発生がセルのアノード側で認められた。これは、LiC−GC−BF114/120膜の不具合の指標である。
【0054】
[0059]セル110が開かれ、カソード124側がLiC−GC−BF114/120を通って漏れる電解質に曝されると、急速なガス発生及び明るい白炎が観察され、上記セルが、LiC−GC−BF114/120膜システムを介して、硫酸水溶液中のリチウムイオンの電気分解によってリチウム金属を生成することを証明する。
【0055】
[0060]本開示は、米国特許出願公開第2015/0014184号のプロセスを改変して、制御された厚さ及び形態を有する高純度で平滑なリチウム金属薄膜を生成する。特に、本開示は、米国特許出願公開第2015/0014184号のセルに使用された電気パラメーター、及び材料の使用、最適化及び変更に基づいている。
【0056】
[0061]本開示は、アルゴンパージされたグローブボックスと、アルゴンパージされたグローブボックスの外側に配置され、油圧ポンプ及びバルブを備えたプラスチックチューブによってセルに接続された水性電解質供給容器内で組み立てられる、米国特許出願公開第2015/0014184号に基づくリチウム生成電解セルを提供する。
【0057】
[0062]本開示は、加えられた電位を制御するために対照電極と一緒にセルに取り付けられたGamry Reference 3000 Potentiostat/Galvanostat/ZRAを利用する。米国特許出願第62/168,770号に記載されているように、上記セルは、スリーブ及びセル本体を含む。可動性カソードは、上記セルの断面を横切る。上記カソードは、上記セルの軸を移し、LIC−GC膜の上のカソード液に配置してもよい。アノードは、下部のセル本体に設けられている。LIC−GC膜の下のセル本体の部分は、入口を介してリチウムイオン含有電解質が充填され、電気分解が進み、使用済みの電解質が出口を介して排出される。リチウムイオンは、リチウムイオン含有電解質からLIC−GC膜及びカソード液を通ってカソードに伝導される。カソードは、カソードと電解質の間にインターカレートされたLIC−GC膜から離間されている。LIC−GC膜は、リチウムイオン含有電解質とリチウムイオン伝導性カソード液の間に介在するリチウムイオン伝導ガラスセラミック層(LIC−GC)を含む。サーボモーターによって駆動されるカソード支持体は、カソード上に形成されたリチウム金属とLIC−GC膜の間の間隔を維持するために、またリチウム金属除去のためにカソードを引き出すために、必要に応じてカソードを前進させる。カソードで生成されたリチウム金属は、純金属相として取り出すことができる。
【0058】
[0063]対照電極は、飽和塩化銀(Ag/AgCl)水性電極、自立型リチウム金属箔及び銅基板上のリチウム金属膜の群から選択される。Ag/AgCl電極は、水性電解質供給容器内の対照電極として使用される。自立型リチウム金属箔及び銅基板上のリチウム金属膜は、セルの有機電解質コンパートメント内の対照電極として使用される。リチウム金属の電解析出は、3.3V vs Ag/AgCl及び0V vs Liの電圧で起こる。
【0059】
[0064]本開示は、無機膜によって分離された電解質混合物から室温又は室温近くでリチウムを電解析出させる方法を提供する。無機膜は、リチウムイオンに対してのみ伝導性であり、水並びに他の一般的な卑金属の陽イオン、例えばFe、Ca、Na、K、Cu、Ba、及びMgに対して不浸透性である。リチウム陽イオンは、硫酸及びリチウム塩(例えば炭酸リチウム、LiCl、LiF、又はLiNO)を含有する水溶液から、炭酸ジメチル(「DMC」)中1.0Mヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)の有機電解液に、膜(Ohara製のLiSICON膜)を横切って輸送される。有機電解質は、カソードと接触している。カソードは、銅又はステンレス鋼などのリチウムと合金を作らない任意の材料からなっていてもよい。膜を横切って輸送されるリチウムイオンは、カソード上に析出して、リチウム金属膜を形成する。
【0060】
[0065]リチウム金属膜の形態は、図5に示す電解析出に使用される電流率によって制御することができる。図5の画像は、−1mA/cm、−3mA/cm、−5mA/cm、−10mA/cm、及び−15mA/cmで銅基板上に析出させたリチウム膜のSEM写真を示す。
【0061】
[0066]図5(A)に示すとおり、−1mA/cmの低い電流率は、平滑な表面膜の析出をもたらす。対照的に、−3mA/cm図5(B)に示すとおり)及び−5mA/cm図5(C)に示すとおり)のより高い電流率により、それぞれ球状構造膜及び棒状構造膜が生成する。
【0062】
[0067]図5は、樹枝状結晶を含まない及び光学的に平滑なリチウム膜が、1mA/cm〜15mA/cmの範囲の電流率で銅基板上に生成されたことを示す。図5の銅基板は、濃硫酸(98wt%)中で上記基板を2秒間エッチングし、上記基板を脱イオン水ですすぎ、上記基板を空気乾燥することによって前処理して、表面から不純物を除去し、及び平滑なリチウム膜を生成したものである。
【0063】
[0068]図5(E)に示すとおり、樹枝状結晶の成長は、前処理した銅基板を使用した場合、−15mA/cmの電流率で起こる。
【0064】
[0069]図6は、研磨された銅円板電極(1 3/8”直径)上の4時間45分の間のリチウム析出の進行を示す。析出は、−1mA/cmの電流密度で、DMC中のLiPFの1.0M電解液中で行なった。上記電極をDMCですすぎ、アルゴン流下で5分間乾燥させた後、「乾燥」画像を撮った。縁部のマーキングは、有機電解液中に上記電極を保持し、それがLiSICON膜と接触するのを防止するテフロン(登録商標)ペグからのものである。図6に示すとおり、リチウム膜の平滑性は、全析出プロセスの間、4時間45分まで維持することができ、厚さ25μmの析出物に相当する。これらの結果は、本方法を用いて、はるかに厚い樹枝状結晶を含まないリチウム膜を生成することができることを示唆している。
【0065】
[0070]高純度で平滑なリチウム金属薄膜は、超薄型、高品質のリチウム膜を必要とする任意の用途に使用することができる。例えば、高純度で平滑なリチウム金属薄膜は、厚さが40μm未満の薄い高純度のリチウム膜を必要とするマイクロ電池又は低出力デバイスに使用することができる。高純度で平滑なリチウム金属薄膜を含むマイクロ電池は、ピエゾエレクトロニクスや太陽光発電などの環境発電技術(energy harvesting electronics)につなぐこと、並びにマイクロエレクトロニクス及びナノセンサーに組み込むことができる。高純度で平滑なリチウム金属薄膜はまた、電池のリチウム金属アノードに使用することもできる。
【0066】
[0071]本プロセスは、リチウム膜を、1〜50nm、50〜100nm、及び100〜1000nm、並びに1〜10μm、10〜100μm、及び100〜1000μmの範囲で析出させることができる。これらの膜はまた、電気化学キャパシタ、メタキャパシタ、パナソニックのTH−42AS700A LEDテレビなどのLEDテレビスクリーン、及びLED懐中電灯中の電極としても使用することができる。
【0067】
[0072]本プロセスはまた、室温でリチウム−金属合金(リチウムとAl、Ni、Mg、Sn、又はSiとの合金)を形成するために使用することもできる。リチウムと合金を作ることが知られている金属をカソードとして使用した場合、リチウムは、金属の表面上に析出する代わりに金属の結晶構造と合金を作ることになる。Li−Al合金の場合には、Na不純物又はK不純物の存在が、室温での靭性及び延性を直線的に減少させることを示している。本プロセスは、卑金属含有量を0ppmまで効果的に減少させることができる。特に、本プロセスは、Na、K、Fe、Ca、Mg及び他の一般的な金属の含有量を除去し、それによって高強度Li−Al合金材料を形成するための新しい低温経路が可能になる。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5
図6
【国際調査報告】