特表2019-501811(P2019-501811A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2019-501811動力車両用のドライバー・アシスタント・システムのために周辺モデリングを実施するための装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-501811(P2019-501811A)
(43)【公表日】2019年1月24日
(54)【発明の名称】動力車両用のドライバー・アシスタント・システムのために周辺モデリングを実施するための装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/06 20060101AFI20181221BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20181221BHJP
   G06F 9/50 20060101ALI20181221BHJP
【FI】
   B60W50/06
   G08G1/16 C
   G06F9/50 150Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-515564(P2018-515564)
(86)(22)【出願日】2016年10月10日
(85)【翻訳文提出日】2018年3月23日
(86)【国際出願番号】DE2016200468
(87)【国際公開番号】WO2017076405
(87)【国際公開日】20170511
(31)【優先権主張番号】102015221481.8
(32)【優先日】2015年11月3日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Linux
2.WINDOWS
3.UNIX
(71)【出願人】
【識別番号】399023800
【氏名又は名称】コンティネンタル・テーベス・アクチエンゲゼルシヤフト・ウント・コンパニー・オッフェネ・ハンデルスゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(72)【発明者】
【氏名】グレーヴェ・ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】シャーク・シュテフェン
(72)【発明者】
【氏名】リューケ・シュテファン
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA11
3D241BA31
3D241BA57
3D241BA62
3D241BB16
3D241CD27
3D241DB02Z
3D241DC03Z
5H181AA01
5H181AA05
5H181AA06
5H181AA15
5H181AA25
5H181AA26
5H181CC14
5H181LL06
5H181LL09
(57)【要約】
本発明は、動力車両用のドライバー・アシスタント・システムのために周辺モデリングを実施するための装置(100)であって、以下を包含する装置(100)に関する:計算される総合・車両周辺モデルを、第一予測幅に基づいた静的な車両周辺モデルと第二予測幅に基づいた動的な車両周辺モデルへの分配を提供できるように構成された分配手段(10);最長応答時間内において第一予測幅に基づいた動的な車両周辺モデルを計算することができるように構成されている第一リアルタイム計算手段(20);特徴的応答時間内において第二予測幅に基づいた静的な車両周辺モデルを計算することができるように構成されている第二リアルタイム計算手段(30);並びに、総合車両周辺モデルの分析に基づいた分配を変更する事ができるように構成されている状況分析手段(40)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力車両用のドライバー・アシスタント・システムのために周辺モデリングを実施するための装置であって、以下を包含することを特徴とする装置(100):
計算される総合・車両周辺モデルを、第一予測幅に基づいた静的な車両周辺モデルと第二予測幅に基づいた動的な車両周辺モデルへの分配を提供できるように構成された分配手段(10);
最長応答時間内において第一予測幅に基づいた動的な車両周辺モデルを計算することができるように構成されている第一リアルタイム計算手段(20);
特徴的応答時間内において第二予測幅に基づいた静的な車両周辺モデルを計算することができるように構成されている第二リアルタイム計算手段(30);並びに、
総合車両周辺モデルの分析に基づいた分配を変更する事ができるように構成されている状況分析手段(40)。
【請求項2】
状況分析手段(40)が、該分配を、第一リアルタイム計算手段(20)の予め計算されている第一応答時間と最長応答時間用の第一閾値との比較に基づいて、及び/或いは、第二リアルタイム計算手段(30)の予め計算されている第二応答時間と特徴的応答時間用の第二閾値との比較に基づいて、変更することができるように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の装置(100)。
【請求項3】
第一リアルタイム計算手段(20)が、複数の帰還制御ブロックを有している;及び/或いは、第二リアルタイム計算手段(30)が、複数の帰還制御ブロックを有している
ことを特徴とする先行請求項のうち何れか一項に記載の装置(100)。
【請求項4】
第一リアルタイム計算手段(20)の該複数の回帰制御ブロックがチェーンとして構成されている;及び/或いは、第二リアルタイム計算手段(30)の該複数の回帰制御ブロックが、チェーンとして構成されている
ことを特徴とする請求項3に記載の装置(100)。
【請求項5】
第一リアルタイム計算手段(20)が、3s以内、乃至、5s以内、乃至、10s以内の最長応答時間内において、50m以内、乃至、100m以内、乃至、200m以内の第一予測幅に基づいて、動的な車両周辺モデルを算出できるように構成されている
ことを特徴とする先行請求項のうち何れか一項に記載の装置(100)。
【請求項6】
第一リアルタイム計算手段(20)が、1s以内の、乃至、2.5s以内の、乃至、5s以内の第一計算サイクルを有する動的な車両周辺モデルを基にして、算出された総合・周辺モデル、及び/或いは、算出された軌道計画を出力できるように構成されている
ことを特徴とする先行請求項のうち何れか一項に記載の装置(100)。
【請求項7】
第二リアルタイム計算手段(30)が、3s以内の、乃至、6s以内の、乃至、10s以内の第二計算サイクルと200m以内、乃至、500m以内、乃至、1000m以内の到達距離を有する静的な車両周辺モデルを基にして、算出された総合・周辺モデル、及び/或いは、算出された軌道計画を出力できるように構成されている
ことを特徴とする先行請求項のうち何れか一項に記載の装置(100)。
【請求項8】
第一リアルタイム計算手段(20)が、動的な車両周辺モデルを、第一整合性レベルにおいて、算出できるように構成されていること、並びに、第二リアルタイム計算手段(30)が、静的な車両周辺モデルを第二整合性レベルにおいて、算出できるように構成されていること
を特徴とする先行請求項のうち何れか一項に記載の装置(100)。
【請求項9】
第一整合性レベルが、第二整合性レベルよりもより高い
ことを特徴とする請求項8に記載の装置(100)。
【請求項10】
動力車両用のドライバー・アシスタント・システムのために周辺モデリングを実施するための方法であって、以下の方法ステップを包含していることを特徴とする方法:
計算される総合・車両周辺モデルを、第一予測幅に基づいた静的な車両周辺モデルと第二予測幅に基づいた動的な車両周辺モデルへの分配手段(10)を用いた分配を提供するステップ(S1);
最長応答時間内において、第一予測幅に基づいた動的な車両周辺モデルを、第一リアルタイム計算手段(20)を用いて計算するステップ(S2);並びに、
特徴的応答時間内において、第二予測幅に基づいた静的な車両周辺モデルを、第二リアルタイム計算手段(30)を用いて計算するステップ(S3);並びに、
状況分析手段(40)を用いた総合・車両周辺モデルの分析を基に、計算する総合・車両周辺モデルの分配を変更するステップ(S4)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力車両用のドライバー・アシスタント・システムに関する。
【0002】
特に、本発明は、動力車両用のドライバー・アシスタント・システムのために周辺モデリングを実施するための装置と方法に関する。
【背景技術】
【0003】
リアルタイム・システムは、「ハードな」リアルタイム・システムと「ソフトな」リアルタイム・システムに区別されている。ハードなリアルタイム・システムは、予め定められている最長応答時間内に、正しい結果の出力を保証し、これを供給する。
【0004】
そのため、システムのベース、例えば、オペレーティングシステム等に対して、リアルタイム対応に関連する高い要求が課せられる。
【0005】
しかしこれには、特別なリアルタイム・オペレーティングシステムが必須であり、著名な例としては、OSEK(独「Offene Systeme und deren Schnittstellen fuer die Elektronik im Kraftfahrzeug」 = 車載電子機器用のオープン・システムとインターフェース)やOSEK−OS(車載システム用のリアルタイム・オペレーティングシステムのOSEKコンソーシアムで採用された仕様)などが、挙げられる。
【0006】
他のリアルタイム・オペレーティングシステムとしては、QNX(固有ポータブルインタフェースUNIX標準規格のリアルタイム・オペレーティングシステム)、或いは、vxWorks(これも、リアルタイム対応のオペレーティングシステム)なども、使用することができる。
【0007】
一方、ソフトなリアルタイム・システムでは、平均的に許容できる応答時間を達成できるが、必ずしも保障はできない。これにより、オペレーティングシステムに課せられる要求は、有意に低減するため、普及しているシステム、例えば、Linuxなどや、Windowsですらも採用することが可能になる。
【0008】
ハードなリアルタイム・オペレーティングシステムと比較して、ソフトなリアルタイム・システムは、通常、非常に多くのAPIを提供しており、例えば、ライブラリや抽象化規格、例えば、OpenCV,Eigen,OpenGL,OpenCLなどのサポートも優れている。
【0009】
これにより、効率的かつ迅速なアルゴリズムやフレームワーク・ソフトウェアの開発が可能であり、現在では、例えば、ラピッド・プロトタイピング用の研究プロジェクトなどにおいて採用されている。
【0010】
高度なドライバー・アシスタント・システム(独「Fahrerassistenzsysteme」=FAS、英「Advanced Driver Assistance Systems」=ADAS)は、特定の走行シチュエーションにおいてドライバーをサポートするために、動力車両内に付加的に搭載される電子装置類である。
【0011】
今日のADASシステムは、通常、ハードなリアルタイム・システム仕様になっている。例えば、緊急ブレーキ・アシスタントなどのシステムでは、このような仕様は、タイムリーに、即ち、システムの限界内において、起こっている走行シチュエーションの変化に反応できることを保障するために、必要不可欠である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
よって、本発明の課題は、改善された、動力車両用のドライバー・アシスタント・システムのために周辺モデリングを実施するための装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題は、独立特許請求項に記載されている対象によって達成される。尚、実施形態、並びに、発展形態は、従属特許請求項、明細書、並びに、図面によって示される。
【0014】
本発明の第一アスペクトは、動力車両用のドライバー・アシスタント・システムのために周辺モデリングを実施するための装置に関するものであるが、該装置は、算出する総合・車両周辺モデルを、第一予測幅に基づいた静的な車両周辺モデルと第二予測幅に基づいた動的な車両周辺モデルへの分配を準備できるように構成された分配手段を包含している。
【0015】
該装置は、更に、最長応答時間内において第一予測幅に基づいた動的な車両周辺モデルを計算することができるように構成された第一リアルタイム計算手段も包含している。
【0016】
該装置は、更に、特徴的応答時間において第二予測幅に基づいた静的な車両周辺モデルを計算することができるように構成された第二リアルタイム計算手段も包含している。
【0017】
該装置は、更に、総合車両周辺モデルの分析に基づいた分配を変更する事ができるように構成された状況分析手段も包含している。
【0018】
言い換えれば、これにより、冗長性にとって必要な安全パスとメイン・パス、並びに、対応する機能形成を、周辺モデルの大部分、並びに、軌道計画に対するリアルタイム要件を、ソフトなリアルタイム要件のシステムを用いても可能になる程に削減するために分離することが、有利に達成できる。
【0019】
尚、ソフトなリアルタイム要件は、例えば、予め定められている偏差内において超えることが許される特徴的応答時間によって定義され、ハードなリアルタイム要件は、例えば、厳守されなければならない最長応答時間によって定義されている。
【0020】
本発明は、車両周辺モデルの一部を、ハード・リアルタイム対応において計算する必要を無くしたにもかかわらず、保証されたシステムの応答時間を確実なものとすることを、有利に可能にしている。
【0021】
本発明は、ハード・リアルタイム対応部分を監視し、且つ、必要に応じて、保証されている応答時間を、クリティカルな状況においても確実なものとするために訂正する状況分析が使用されることを有利に可能にしている。
【0022】
言い換えれば、低い周波数において作動している周辺把握アルゴリズム及び処理アルゴリズムからのデータの処理と補正のための方法を、少なくとも(非常に)動的な周辺把握部分、状況分析部分並びに帰還制御部分における保証される最長応答時間無しに提供することを、有利に達成している。
【0023】
これにより、システム全体の高い周波数と保証された応答時間を、例え、低い周波数の処理部分内のデータの処理が遅延したとしても、確実なものとすることを有利に可能にしている。
【0024】
本件発明において用いられる「低い周波数」と言う概念は、保証されない応答時間の判断条件に関する、即ち、結果を提供する際に周期的な変動がある。
【0025】
本発明では、決して絶対的な「低い周波数」を意味する訳ではないが、ハード・リアルタイム対応ではないシステムは、それ以下では応答時間が、アルゴリズム・ランタイムにではなく、どちらかと言えば「システム効果」によって定められる特徴的な下限を有している。
【0026】
これは、Windowsシステムでは、特徴的に、例えば10msであり、これから、最大の確定的な「帰還制御周波数」は、安全率無しに、100Hz以下と求められる。一方、Linuxシステムでは、この本発明において低い周波数とされる周波数は、特徴的に、少しだけ高く、例えば、200Hzである。
【0027】
本件発明において用いられる「高い周波数」と言う概念は、例えば、500Hz以上の周波数を指すものである。
【0028】
本発明は、例えば、特に、多くのリソースと開発の手間を必要とする、静的周辺部を捕捉するためのアルゴリズムと、広い到達範囲のパス計画をするためのアルゴリズムを、並行して低周波部分において実行できることを有利に可能にしている。
【0029】
この低周波部分へのシフトは、例えば、静的周辺モデルは、特徴的な期間乃至時間枠内において変化せず、システムから見てそれに対して「動的な」応答を必要としないため、可能となっている。
【0030】
これとは対照的に、高周波部分では、例えば、動いているオブジェクトのトラッキング、歩行者認識、或いは、信号認識など動的な車両周辺部を捕捉するアルゴリズムにおいて、例えば、前車両の緊急ブレーキの必要性を捕捉できることを保証するために、保証された最長応答時間が、厳守されなければならない。
【0031】
通常は並行する低周波部分からの軌道を、追走するが、例えば、状況分析と帰還制御は、高周波部分において実行され、更に、例えば、縦方向誘導は、より大きな予測幅の静的な周辺モデルからのデータを考慮しながら、全て高周波部分において実行されると言う構成によって、動的な交通参加者に対するシステムの保証された最長応答時間が得られている。
【0032】
これは、例えば、突然の車線変更や緊急ブレーキの際に実施される。この静的な周辺モデルを有効利用した場合、緊急ブレーキ、及び/或いは、緊急回避を実施すべきか否かが決断できる。
【0033】
その際、例えば、周辺モデルの計算は実施されず、その代わりに、例えば、低周波部分からの最新のデータセット、即ち、例えば、レーン推移や周辺建造物が、分析中、考慮される。
【0034】
本発明は、例えば、高周波部分における状況分析においても、更に、予め定められているパスに、並行して、修正を、オーバーレイできることを有利に可能にしている。
【0035】
該修正は、これによって、例えば、隣の車両の隣車線への「蛇行」に対して、保証された最長応答時間内に応答できるようにするために、動的な交通シチュエーションの分析から、低周波部分からの静的な周辺モデル、即ち、例えば、レーンマークなどを考慮しながら、得ることができる。
【0036】
言い換えれば、これによって、該部分を、低いASILレベルの、乃至、機能的安全に対する要件が低いソフト・リアルタイム対応システムによっても計算できるようにするために、静的な車両周辺部と動的な車両周辺部への分配を、提供し、且つ、静的な周辺部に対するより高度な予測を用いることが、有利に達成されている。
【0037】
即ち、例えば、静的な車両周辺部と動的な車両周辺部への、言い換えれば、ソフトとハードなリアルタイム対応のシステムへの分配、要するに、ドライバー・アシスタント・システムのために、二つの異なるタイプのリアルタイム対応システムによる、いわばハイブリッド的な計算が実施される。
【0038】
これが、より大きな予測幅と冗長的システムによる安全コンセプトの提供を有利に可能にしている。
【0039】
ここで言う、より大きな予測幅とは、例えば、10s程度にも至り得る数秒間の軌道を、前もって計画し、その上を帰還制御によって追走できると言う意味である。
【0040】
軌道計画とその追走を可能にするため、静的な車両周辺モデルに関する、例えば、車両周辺部における走行レーンの推移や該走行レーンに帰属し、そこにおいて有効である信号などの多くの情報が存在している。
【0041】
この情報を、周辺部センサー類と、例えば、地図など周辺データの融合から信頼性高く、且つ、堅牢に得ると共に、該地図に基づいて軌道を計画するためには、多大なアルゴリズム的コストが、必要である。
【0042】
本発明の更なる第二のアスペクトは、動力車両用のドライバー・アシスタント・システムのために周辺モデリングを実施するための方法に関する。
【0043】
該方法は、以下の方法ステップを包含している:
【0044】
計算される総合・車両周辺モデルを、第一予測幅に基づいた静的な車両周辺モデルと第二予測幅に基づいた動的な車両周辺モデルへの分配手段を用いた分配を提供するステップ;
【0045】
最長応答時間内において、第一予測幅に基づいた動的な車両周辺モデルを、第一リアルタイム計算手段を用いて計算するステップ;
【0046】
特徴的応答時間内において、第二予測幅に基づいた静的な車両周辺モデルを、第二リアルタイム計算手段を用いて計算するステップ;並びに、
【0047】
状況分析手段を用いた総合・車両周辺モデルの分析を基に、計算する総合・車両周辺モデルの分配を変更するステップ。
【0048】
この際、該方法は、更に、軌道計画を、大きな − 例えば、100mや200mにも及ぶ − 予測幅のハードではないリアルタイム対応部分と、ハード・リアルタイム対応部分に、分配することもできる。
【0049】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0050】
本発明のある好ましい実施形態においては、該状況分析手段が、第一リアルタイム計算手段の予め計算した応答時間と最長応答時間用の閾値との比較、及び/或いは、第二リアルタイム計算手段の予め計算した応答時間と特徴的応答時間用の閾値との比較に基づいて分配を変更することができるように構成されていることが想定されている。これにより、発生する負荷ピークに対応し、予め定められている応答時間を守ることが有利に可能になっている。
【0051】
言い換えれば、該状況分析手段は、例えば、該分配を、第一リアルタイム計算手段の予め計算されている第一応答時間と最長応答時間用の第一閾値との比較に基づいて、及び/或いは、第二リアルタイム計算手段の予め計算されている第二応答時間と特徴的応答時間用の第二閾値との比較に基づいて、変更することができるように構成されている。
【0052】
本発明のある更なる好ましい実施形態においては、第一リアルタイム計算手段が、複数の帰還制御ブロックを有している、及び/或いは、第二リアルタイム計算手段が、複数の帰還制御ブロックを有していることが想定されている。これにより、該装置のモジュール的構成の実現が、有利に可能になっている。
【0053】
本発明のある更なる好ましい実施形態においては、第一リアルタイム計算手段の該複数の回帰制御ブロックがチェーンとして構成される、及び/或いは、場合によっては、第二リアルタイム計算手段の該複数の回帰制御ブロックが、チェーンとして構成されることが想定されている。これにより、該装置のモジュール的構成の実現が、有利に可能になっている。
【0054】
本発明のある更なる好ましい実施形態においては、該第一リアルタイム計算手段が、3s以内、乃至、5s以内、乃至、10s以内の最長応答時間内において、50m以内、乃至、100m以内、乃至、200m以内の第一予測幅に基づいて、200m以内、乃至、500m以内、乃至、1000m以内の到達距離を有する動的な車両周辺モデルを算出できるように構成されていることが想定されている。
【0055】
本発明のある更なる好ましい実施形態においては、該第一リアルタイム計算手段が、1s以内の、乃至、2.5s以内の、乃至、5s以内の第一計算サイクルを有する動的な車両周辺モデルを基にして、算出された総合・周辺モデル、及び/或いは、算出された軌道計画を出力できるように構成されていることが想定されている。
【0056】
本発明のある更なる好ましい実施形態においては、該第二リアルタイム計算手段が、3s以内の、乃至、6s以内の、乃至、10s以内の第二計算サイクルを有する静的な車両周辺モデルを基にして、算出された総合・周辺モデル、及び/或いは、算出された軌道計画を出力できるように構成されていることが想定されている。
【0057】
本発明のある更なる好ましい実施形態においては、該第一リアルタイム計算手段が、動的な車両周辺モデルを、第一整合性レベルにおいて、算出できるように構成され、他方では、第二リアルタイム計算手段が、静的な車両周辺モデルを第二整合性レベルにおいて、算出できるように構成されていることが想定されている。
【0058】
これが、異なる整合性レベルへのシステム機能の適応された分配、並びに、十分な予測の使用によって、ソフト・リアルタイム対応システムを、少なくとも、残りの部分と比較して、機能的安全性に課せられる要求が低い帰還制御チェーン部分用に、採用することを有利に可能にしている。
【0059】
本発明のある更なる好ましい実施形態においては、第一整合性レベルが、第二整合性レベルよりもより高い想定になっている。
【0060】
上記の実施形態やその発展形態は、互いに自由に組み合わせることが可能である。
【0061】
更なる可能な形態や発展形態、並びに、本発明の実施形態には、上記の本発明に係る特徴や以下に実施形態と関連して述べる本発明に係る特徴の具体的には記述されない組み合わせも包含される。
【0062】
添付した図面は、本発明の実施形態の更なる理解を提供することを意図している。添付した図面は、実施形態を説明し、明細書との組合せによって、本発明のコンセプトを説明する役割を担っている。
【0063】
他の実施形態と上記の多くの利点は、図面の描写を参照すれば、明らかになるであろう。図面の描写に描かれているエレメントは、必ずしも、それぞれ同じ縮尺で描かれているものではない。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1】本発明のある実施例に係る動力車両用のドライバー・アシスタント・システムのために周辺モデリングを実施するための装置の模式的な図である。
図2】本発明のある実施例に係る動力車両用のドライバー・アシスタント・システムのために周辺モデリングを実施するための装置の模式的な図である。
図3】本発明のある実施例に係る動力車両用のドライバー・アシスタント・システムのために周辺モデリングを実施するための方法のフローチャートの概略的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
図面の描写では、同じ符号が、同じ、乃至、機能的に同じエレメント、部品、コンポーネント、或いは、方法ステップを、これと異なる記載がない限り、示している。
【0066】
ここで言う、動力車両、乃至、車両とは、例えば、動力車両、乃至、ハイブリッド動力車両、二輪車、自動車、バス、乃至、貨物自動車、或いは、鉄道車両、船舶、ヘリコプターや飛行機など航空機、或いは、例えば、自転車のことである。
【0067】
図1は、本発明のある実施例に係る動力車両用のドライバー・アシスタント・システムのために周辺モデリングを実施するための装置の模式的な描写を示している。
【0068】
動力車両用のドライバー・アシスタント・システムのために周辺モデリングを実施するための装置100は、分配手段10、第一リアルタイム計算手段20、第二リアルタイム計算手段30、並びに、状況分析手段40を包含している。
【0069】
該分配手段10は、計算される総合・車両周辺モデルを、第一予測幅に基づいた静的な車両周辺モデルと第二予測幅に基づいた動的な車両周辺モデルへの分配を提供できるように構成されている。
【0070】
該第一リアルタイム計算手段20は、最長応答時間内において第一予測幅に基づいた動的な車両周辺モデルを計算することができるように構成されている。
【0071】
該第二リアルタイム計算手段30は、特徴的応答時間内において第二予測幅に基づいた静的な車両周辺モデルを計算することができるように構成されている。
【0072】
該状況分析手段40は、総合車両周辺モデルの分析に基づいた分配を変更する事ができるように構成されている。
【0073】
図2は、本発明のある実施例に係る動力車両用のドライバー・アシスタント・システムのために周辺モデリングを実施するための装置の模式的な描写を示している。
【0074】
図2は、装置1の模式的概要を示している。点線によって示されているものは、ハードなリアルタイム要求のブロックを、実線によって示されているものは、ソフトなリアルタイム要求のブロックである。装置1は、二つの異なるリアルタイム計算手段を用いていることから、ドライバー・アシスタント・システム用のハイブリッド計算システムであると言える。
【0075】
該ブロック、乃至、帰還制御ブロックは、この際、例えば、以下の機能を有している:
【0076】
周辺部センサー1は、算出される総合・車両周辺モデル用のデータ、例えば、センサーデータを捕捉し、提供する。
【0077】
計算される総合・車両周辺モデルは、早い安全パスにおいては、最低限の周辺モデル3を有していることができる。
【0078】
ブロック4として示されている状況分析手段は、総合車両周辺モデルの分析に基づいた分配を変更する事ができるように構成されている。
【0079】
ブロック5として示されている帰還制御ブロックは、ブロック4として示されている状況分析手段40とカップリングされることができ、計算される総合・車両周辺モデルの、静的車両周辺モデルと動的車両周辺モデルへの分配に関与できるように構成されていることができる。
【0080】
要するに、状況分析手段40は、ハードなリアルタイム・システムの最長応答時間を厳守するために、計算される分担分をどのようにリアルタイム計算手段に分配するかをシフトする、或いは、変更することができるように構成されている。
【0081】
言い換えれば、手間暇をかけて計算されるハードなリアルタイム対応ではない第二リアルタイム計算手段30の包括的な結果の代わりに、ハードなリアルタイム対応ではない第二リアルタイム計算手段30において算出可能な結果、乃至、第一リアルタイム計算手段20に保存されている結果が、用いられる。
【0082】
ブロック6として示されている監視ブロックは、この変更を監視できる。
【0083】
該状況分析ブロック9は、より大きな予測幅の軌道の動的な帰還制御を提供できる様に構成されていることができる。
【0084】
今日のADASシステム用の機能チェーン、例えば、動的オブジェクトのみを基にしたEBA機能などは、全てがハード・リアルタイム要求を満たさなければならないブロック1,3,4,5,及び6から構成され、これらの計算は、最長応答時間内において実施されなければならないため、第一リアルタイム計算手段20に帰属されている。
【0085】
この際、変更されたブロックの組合せを使うこと、乃至、第二パスの、乃至、第二チェーンの静的な周辺情報に逃れることも可能である。
【0086】
高い自動化率を有する機能用には、ブロック1,2,7,8,9,6の標準パスが構成される。
【0087】
ブロック1,2,7,8からは、数秒間の時間的予測、乃至、数100mの空間的予測を有する軌道が計算される、乃至、計画される。
【0088】
この軌道は、例えば、その後、状況分析ブロック9として示されているハードなリアルタイム要求を有する帰還制御によって追走される。
【0089】
この機能チェーンの目的は、例えば、快適な緊急走行機能を提供することである。この際、例えば、多くのケースにおいては、快適な起動は、縦方向と横方向の双方に、例えば、10s、或いは、1000mの大きな予測幅において計画できるということを前提としている。
【0090】
そのために、他の交通参加者の挙動が、例えば、予測され、低い加速度による、即ち、大きな安全リザーブを有する車両応答が、算出される。この挙動は、例えば、人間のドライバーに、中でも例えば、快適さ、及び/或いは、経済性を重視する人間のドライバーに相当する。
【0091】
ブロック3と7では、例えば、周辺モデルの範囲が、異なっている。ブロック3の周辺モデルは、例えば、最小限に抑えられており、ADAS機能の他に、緊急作動のみを可能にするが、対する大きな範囲と予測幅のブロック7は、例えば、車線変更を含む、全機能セットアップをサポートしている。
【0092】
ブロック8から出力された軌道は、予測が広範囲であるため、通常、時間的問題を有している。帰還制御ブロック9において、特に、付加的にハードなリアルタイム対応のブロック3からの動的なオブジェクトも受け取ることが想定されている場合、ハイブリッドではないドライバー・アシスタント・システムではなし得ない特別なシステム・コンスタレーションを実現できる:
【0093】
周辺モデル7と軌道計画8の双方とも、例えば、広範囲な予測と、主に静的な内容に基づき、帰還制御9のような一つのブロックにおいて、良好に予測でき、そのため、例えば、EBA介入と比較して、時間的問題が少ない。
【0094】
例えば、5sの予測では、軌道計画の軌道は、1sサイクルで出力され、この様な構成では、50ms遅れた出力も問題とはならない。
【0095】
この場合、帰還制御手段用の更新は、例えば、4000msではなく、3950msだけの予測とはなるが、帰還制御手段の入力データが空になることに対しては、十分な安全間隔が得られている。
【0096】
通常の状況では、例えば、ブロック9は、得られた軌道を、単に調節する。例えば、突然ブレーキをかけた車両に対してなど、動的な状況に対応できるようにするために、ブロック9は、付加的に動的なオブジェクト用の状況分析も包含している。
【0097】
これは、例えば、ブロック3を介したハードなリアルタイム対応のパスから提供されるため、例えば、他の車両の急ブレーキや突然の車線変更など、走行状況の動的な変化に十分に迅速に反応できることが、確実なものとされている。
【0098】
ブロック6は、例えば、システムの監視と、メイン・パスにおいて誤動作があった場合や想定外の事象が発生した場合の緊急パスへの切り替えを担っている。そのため、ブロック9からブロック6は、制御値の他、例えば、帰還制御基準値の基になっている軌道の現在の長さも受け取る。
【0099】
軌道の長さが、第一閾値、例えば、3.5sを下回った場合、監視手段が、警告を発する。これは、例えば、ドライバーにHMIを介して、引き継ぎを要請する。軌道が、第二閾値を下回った場合、例えば、監視手段ブロック6は、2s間後に、安全パスに切り替える。
【0100】
ブロック4とブロック5による安全パスは、例えば − 場合によっては、その作動中ずっと − アクティブな状態にされ、これは、「ホット・スタンバイ」とも呼ばれる。更に、ブロック6である監視手段による安全パスは、ブロック9から得られた軌道の長さが、ある閾値を下回った場合に、作動されるが、閾値としては、例えば、3.5sが用いられる。
【0101】
これにより、ブロック2,7と8が、ソフトなリアルタイム対応のシステムによっても実施できるようになり、その結果、例えば、「embedded Linux」などのオペレーティングシステムも用いることが可能になる。
【0102】
これは、開発コスト面や、例えば、ネットワーク・スタックやコミュニケーション・スタック、永続的データストレージ用のファイルシステム、自動アップデートの方法など、使用可能なオペレーティングシステムの機能範囲に基づく長所を提供する。
【0103】
ブロック2,7と8の計算は、特徴的応答時間内に実施されさえすればよいため、ブロック2,7と8は、例えば、第二リアルタイム計算手段30に帰属される。
【0104】
機能的安全性に対する要求は、ソフトなリアルタイム対応チェーンでは、ハードなリアルタイム対応のチェーン1,3,4,5,6を、場合によっては快適ではない帰還制御を我慢し事故を確実に回避できるように構成することによって、低くすることができる。
【0105】
周辺モデル7の静的な情報は、その際、状況分析4に付加的に提供されることができる。周辺モデル7が、作動停止した場合であっても、状況分析4は、比較的大きな予測幅のデータを使用することができる。
【0106】
例えば、装置100が、例えば、200ms以上遅れてデータを、受け取った場合、周辺モデル7が、作動停止したと判断することができる。この様なケースでは、緊急パスが、チェーン1,3,4,5,6を引き継ぐ。
【0107】
残っている予測幅、例えば、3800msは、車両速度を、残っているパスの僅かな予測幅において、ドライバーによる引継ぎが終了するまで、或いは、安全な状態に到達するまで、安全な車両制御が可能になる速度まで減速するために使用される。
【0108】
図3は、本発明のある実施例に係る動力車両用のドライバー・アシスタント・システムのために周辺モデリングを実施するための方法のフローチャートの概略的な描写を示している。
【0109】
該方法は、動力車両用のドライバー・アシスタント・システムのために周辺モデリングを実施するための方法であって、以下の方法ステップを包含している:
【0110】
該方法の第一ステップとしては、計算される総合・車両周辺モデルを、第一予測幅に基づいた静的な車両周辺モデルと第二予測幅に基づいた動的な車両周辺モデルへの分配手段10を用いた分配を提供するステップS1が、実施される。
【0111】
該方法の第二ステップとしては、最長応答時間内において、第一予測幅に基づいた動的な車両周辺モデルを、第一リアルタイム計算手段20を用いて計算するステップS2が、実施される。
【0112】
該方法の第三ステップとしては、特徴的応答時間内において、第二予測幅に基づいた静的な車両周辺モデルを、第二リアルタイム計算手段30を用いて計算するステップS3が実施される。
【0113】
該方法の第四ステップとしては、状況分析手段40を用いた総合・車両周辺モデルの分析を基に、計算する総合・車両周辺モデルの分配を変更するステップS4が実施される。
【0114】
好ましい実施例によって上記のごとく説明されはしたが、本発明は、これらに制限されるものではなく、多種多様な方法や構成によって変更することが可能である。特に、本発明は、本発明の趣旨から逸脱することなく、多種多様に変更や修正することが可能である。
【0115】
尚、ここで使われている用語「包含する(原文=“umfassend”)」と「有する(原文=“aufweisend”)」は、他のエレメントや他のステップが含まれないと言う意味で使われているのではなく、また、原文における“eine”や“ein”(対訳=「ひとつの」)によって、複数が排除されるものではないことを、捕捉として指摘しておく。
【0116】
更に、ひとつの、或いは、上述の実施例への参照と共に記述されている特徴やステップは、他の上述の実施例の他の特徴やステップとの組み合わせで使用されてもよいことも指摘しておく。請求項内の符号は、制限をかけるものではない。
図1
図2
図3
【国際調査報告】