特表2019-502004(P2019-502004A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アーケマ・インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特表2019502004-ポリマー粉体の製造方法 図000003
  • 特表2019502004-ポリマー粉体の製造方法 図000004
  • 特表2019502004-ポリマー粉体の製造方法 図000005
  • 特表2019502004-ポリマー粉体の製造方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-502004(P2019-502004A)
(43)【公表日】2019年1月24日
(54)【発明の名称】ポリマー粉体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20181221BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20181221BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20181221BHJP
   B33Y 40/00 20150101ALI20181221BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20181221BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20181221BHJP
【FI】
   C08J3/12 ACEZ
   B33Y10/00
   B33Y80/00
   B33Y40/00
   B29C64/153
   B29C64/314
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-533751(P2018-533751)
(86)(22)【出願日】2016年12月21日
(85)【翻訳文提出日】2018年8月10日
(86)【国際出願番号】US2016067922
(87)【国際公開番号】WO2017116885
(87)【国際公開日】20170706
(31)【優先権主張番号】62/271,449
(32)【優先日】2015年12月28日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】500307340
【氏名又は名称】アーケマ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】アンジェロ・ペディチーニ
(72)【発明者】
【氏名】ブルース・クレイ
(72)【発明者】
【氏名】ブノワ・ブリュレ
【テーマコード(参考)】
4F070
4F213
【Fターム(参考)】
4F070AA52
4F070AB12
4F070AB23
4F070BA02
4F070BA03
4F070BB06
4F070DA46
4F070DB01
4F070DC07
4F070DC08
4F213AA32
4F213AB06
4F213AB07
4F213AB18
4F213AC04
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL13
4F213WL23
4F213WL25
4F213WL26
(57)【要約】
本開示は、レーザー焼結で用いるための改良型ポリ(アリーレンエーテルケトン)粉体に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PEKKペレットを160℃〜300℃の範囲の温度、好ましくは180℃〜290℃の範囲の温度に、少なくとも10%の結晶度を有する半晶質PEKKペレットを製造するのに足りる時間、加熱し;
前記半晶質PEKKペレットを粉砕して約10ミクロン〜約150ミクロンの範囲の中位粒子直径を有するPEKK粉体を製造し;そして
前記PEKK粉体を約275℃〜約290℃、好ましくは280℃〜290℃の範囲の温度に加熱して被熱処理PEKK粉体を製造する:
ことを含む、方法。
【請求項2】
前記PEKKペレットが5%以下の結晶度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記PEKKペレットが非晶質である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記PEKKペレットのT:I異性体比が50:50〜90:10、好ましくは60:40〜80:20の範囲、より一層好ましくは60:40である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記PEKKペレットを約180℃〜約250℃の温度に加熱する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記PEKKペレットが約1mm〜約10mm、好ましくは2mm〜5mmの中位粒子直径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記PEKKペレットを少なくとも5分間加熱する、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記PEKKペレットを5〜30分間加熱する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記非晶質PEKKペレットがさらに1種以上の添加剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記添加剤が酸化防止剤、流動促進剤、カーボンナノチューブ、カーボンブラック又はそれらの組合せである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記非晶質PEKKペレットが1種以上の添加剤を10重量%まで含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記非晶質PEKKペレットが実質的に添加剤フリーである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記粉砕をハンマーミル、アトリションミル、ピン留めディスクミル又はジェットミルで実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記粉砕を周囲条件下又は冷却条件下で実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記PEKK粉体が約30ミクロン〜約100ミクロン、好ましくは約50ミクロンの中位粒子直径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記被熱処理PEKK粉体が0.35g/cm3〜0.90g/cm3の範囲の嵩密度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記被熱処理PEKK粉体が0.4g/cm3〜0.5g/cm3の範囲の嵩密度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
30ミクロン〜約100ミクロンの範囲の中位粒子直径、0.40g/cm3〜0.50g/cm3の範囲の嵩密度を有する被熱処理PEKK粉体であって、該粉体の粒子が実質的に規則的な形状である、前記粉体。
【請求項19】
請求項1に従って製造された被熱処理PEKK粉体をレーザー焼結して物品を製造することを含む、方法。
【請求項20】
請求項19の方法に従って製造された物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、ポリマー粉体の製造方法なるタイトルの2015年12月28日付け米国仮出願第62/271449号の恩恵を主張するものであり、言及することによってその内容の全体をすべての目的のために本明細書に取り入れる。
【0002】
本開示は、レーザー焼結で用いるための改良型ポリ(アリーレンエーテルケトン)粉体に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリ(アリーレンエーテルケトン)(PAEK)ポリマー、例えばポリエーテルケトンケトン(PEKK)ポリマーは、高い熱機械的特性を有する高性能材料である。これらのポリマーは、高温、機械的応力、及び化学的応力に耐えることができ、航空、海洋掘削、自動車及び医療用インプラントの分野において有用である。これらのポリマーの粉体は、型成形、押出成形、圧縮成形、紡糸又はレーザー焼結によって加工することができる。
【0004】
レーザー焼結は、物体を形成させるための付加的な製造方法であり、粉体の層が物体の断面に相当する位置において選択的にレーザーによって焼結される。レーザー焼結プロセスを用いて物体を調製するために、PEKK粉体が研究されてきたが、得られる物体は粗い外観及び肌理を有する傾向がある。さらに、得られる物体は、高性能用途に必要とされる機械的特性を有していない。より強く且つより滑らかな外観及び肌理を有するPEKKベース物品を形成させる方法が望まれている。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)ペレットを、160℃〜300℃の範囲、好ましくは180℃〜290℃の範囲の温度に、少なくとも10%の結晶度を有する半晶質PEKKペレットを製造するのに充分な時間加熱し;この半晶質PEKKペレットを粉砕して約10ミクロン〜約150ミクロンの範囲の中位粒子直径を有するPEKK粉体を製造し;そしてこのPEKK粉体を約275℃〜約290℃、好ましくは280℃〜290℃の範囲の温度に加熱して被熱処理PEKK粉体を製造する:ことを含む方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、本開示のある粉体の粒子寸法分布を示すグラフである。
図2図2は、本開示の被熱処理PEKK粉体のDSCを示すグラフである。
図3A図3Aは、本開示に従って調製した被熱処理PEKK粉体の顕微鏡写真である(倍率100倍)。
図3B図3Bは、例3に従って調製した被熱処理PEKK粉体の顕微鏡写真である(倍率200倍)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
開示される組成物及び方法は、下記の詳細な説明を参照することによってより一層よく理解できる。開示される組成物及び方法は本明細書に記載され/示された特定の組成物及び方法に限定されないということ、並びに本明細書で用いられる用語類は特定の実施形態を単に一例として説明するためのものであり、特許請求される組成物及び方法を限定することを意図したものではないことを、理解されたい。
【0008】
特定の数値への言及は、少なくともその特定の数値を包含するものとする(文脈から明らかにそうではない場合を除く)。値の範囲が表される場合、別の実施形態は1つの特定の値から及び/又は別の特定の値までを包含する。さらに、範囲で述べられた値への言及は、その範囲内のそれぞれのすべての値を包含する。すべての範囲は境界を含み、組合せ可能である。
【0009】
値がその前に「約」が用いられることによって概算で表された場合、その特定値は別の実施形態を形成することが理解されるだろう。
【0010】
用語「約」は、数値範囲、限界点又は特定の値に対して用いられた時、記載された値が挙げられた値から10%程度まで変化し得ることを示すために用いられる。本明細書において用いられる数値の多くは実験によって決定されたものであるため、このような決定は様々な実験の間で変化することがあり、しばしば変化するであろうということを、当業者であれば理解すべきである。本明細書において用いられる値はこの固有の変動によって不当に限定されるとみなすべきではない、従って、用語「約」は、特定された値から±10%以下の変動、±5%以下の変動、±1%以下の変動、±0.5%以下の変動又は±0.1%以下の変動を包含するために用いられる。
【0011】
開示された組成物及び方法のある種の特徴群であって明瞭化のために別々の実施形態に関して本明細書において記載されたものは、単一の実施形態において組み合わせて提供することもできるということを認識されたい。逆に、開示された組成物及び方法の様々な特徴であって簡潔化のために単一の実施形態に関して記載されたものは、別々に又は任意のサブコンビネーションで提供することもできる。本明細書に挙げられたすべての刊行物、特許出願、特許及びその他の文献は、それらの全体が参考用に取り入れられる。
【0012】
本開示は、付加的製造用途に用いるのに特によく適したPEKK粉体の製造方法に関する。記載される粉体を用いて調製された物体は、記載される方法に従って製造されたものではないPEKK粉体を用いて調製された物体と比較して、例えば例3に従って製造されたPEKK粉体と比較して、優れた物理的及び機械的特性を有する。
【0013】
記載される方法は、PEKKポリマーを使用する。PEKKポリマーは、商用供給元から購入することもでき、当技術分野において周知の任意の方法、例えば米国特許第3065205号、同第3441538号、同第3442857号、同第3516966号、同第4704448号、同第4816556号及び同第6177518号の各明細書に記載された方法に従って製造することができる。本開示において用いるための好適なポリマーは、Arkema社から供給される。
【0014】
本開示において用いるためのPEKKポリマーは、繰返し単位として2つの異なる異性体形態のケトン−ケトンを含むことができる。これらの繰返し単位は、次の式I及びIIで表すことができる。
−A−C(=O)−B−C(=O)− I
−A−C(=O)−D−C(=O)− II
ここで、Aはp,p’−Ph−O−Ph基であり、Phはフェニレン基であり、Bはp−フェニレンであり、Dはm−フェニレンである。ポリマー中の式I:式IIの異性体比(通常T:I比と称される)は、ポリマーの全体結晶度を変化させるように選択することができる。T:I比は通常50:50〜90:10の範囲であり、ある実施形態においては60:40〜80:20の範囲である。例えば80:20のような高いT:I比は、例えば60:40のような低いT:I比と比較して高い結晶度を提供する。好ましいT:I比には80:20、70:30及び60:40が含まれ、60:40が特に好ましい。また、T:I比が異なるPEKKポリマーの混合物も本開示の範囲内である。
【0015】
出発PEKKペレットは、適宜に、1種以上の添加剤、例えばフィラー、特に無機フィラー、例えばカーボンブラック、カーボン若しくは非カーボンナノチューブ、粉砕若しくは非粉砕ファイバー、安定剤(光安定剤、特にUV安定剤、及び酸化防止剤を含む熱安定剤)、流動促進剤、例えばシリカ、又は蛍光増白剤、染料若しくは顔料、或はこれらのフィラー及び/又は添加剤の組合せを含むことができる。添加剤の好ましい例は、粉砕カーボン若しくはグラスファイバー、無機ナノ粒子、又は有機ホスフェート、ホスファイト、ジホスファイト等の、酸化防止剤としての働きをし、付加的製造において記載した粉体のリサイクル使用可能性を改善するものである。ある実施形態において、PEKK粉体は20重量%まで、好ましくは10重量%までの添加剤を含むことができる。ペレットを製造するための粒状フレークの溶融加工が、最終製品中に組み込まれるであろう添加剤の添加を可能にする。
【0016】
ある実施形態において、PEKK粉体は実質的に添加剤フリーである。例えば、このような実施形態において、PEKK粉体は、5重量%以下、好ましくは4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下又は1重量%以下の添加剤を含む。
【0017】
好ましくは、記載される方法で用いるためのPEKKポリマーは、ペレット(これはグラニュール(粒体)と称されることもある)の形にある。本明細書で定義された時、ペレットには、押出成形された形のPEKK(焼鈍されて粉砕されていることができる)も包含され、例えばファイバー、フィラメント、ロッド、チューブ、パイプ、シート、フィルム、ビーズ等を包含する。出発PEKKペレットは、当技術分野において周知のレーザー光散乱回折法を用いて測定して、20mmまで、例えば0.25、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は約20mmの中位粒子直径を有することができる。好ましい局面において、PEKKペレットは、約1mm〜約10mmの中位粒子直径を有する。別の局面において、PEKKペレットは、約2mm〜約5mmの中位粒子直径を有する。中位粒子直径の測定に用いるための好ましいレーザー光散乱回折装置は、Malvern Mastersizer 1000である。
【0018】
ある局面において、出発PEKKペレットは非晶質であり、即ち出発PEKKペレットは、示差走査熱量分析(DSC)やX線回折技術によって測定した時に測定可能な量の結晶度を持たない。別の局面において、出発PEKKペレットは、5%以下の結晶度、例えば5%未満の結晶度、4%未満の結晶度、3%未満の結晶度、2%未満の結晶度、又は1%未満の結晶度を有する。
【0019】
本開示の方法に従えば、出発PEKKペレットは、出発PEKKペレットの結晶度を高めるのに足りる時間・温度で加熱される。好ましい局面において、出発PEKKペレットは、約160℃〜約300℃の範囲の温度、好ましくは160℃〜300℃の範囲の温度に加熱される。例えば、出発PEKKペレットは、約160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290又は約300℃に加熱することができる。ある局面において、出発PEKKペレットは、180℃〜290℃の範囲の温度に加熱される。別の局面において、出発PEKKペレットは、180℃〜250℃の範囲の温度に加熱される。
【0020】
出発PEKKペレットの結晶度を高めるために出発PEKKペレットを加熱すべき時間の長さは、当業者であれば突き止めることができるだろう。ある局面においては、出発PEKKペレットを少なくとも5分間加熱する。別の局面においては、出発PEKKペレットを5〜60分間加熱する。さらに別の局面においては、出発PEKKペレット5〜30分間加熱する。
【0021】
本開示に従えば、出発PEKKペレットは、半晶質PEKKペレットを製造するのに足りる時間・温度で加熱される。ある局面において、半晶質PEKKペレットは、少なくとも10%の結晶度を有する。別の局面において、半晶質PEKKペレットは、10%〜65%の範囲の結晶度を有する。例えば、半晶質PEKKペレットは、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60又は65%の結晶度を有する。
【0022】
本開示に従えば、半晶質PEKKペレットは、PEKK粉体を製造するために粉砕される。粉砕は、PEKKペレットを粉砕するのに有用であると当技術分野において知られた任意の粉砕技術を用いて達成することができる。例えば、ハンマーミル、アトリションミル又はピン留めディスクミルによって粉砕を実行することができる。また、ジェットミルによって粉砕を実行することもできる。また、これらの粉砕方法を組み合わせて用いることもできる。ある局面においては、周囲条件下で、即ち追加的に冷却することなく、粉砕を実行することができる。粉砕プロセスにおいて熱が発生するので、この文脈において「周囲」とは、約20〜25℃より高い温度を意味することもある。別の局面においては、追加的に冷却しながら粉砕を実行する。
【0023】
半晶質PEKKペレットは、当技術分野において周知のレーザー光散乱法を用いて乾燥粉末に対して測定した中位粒子直径が約10ミクロン〜約150ミクロンの範囲であるPEKK粉体を製造するために、粉砕される。本明細書において用いた時、「粉体」とは、PEKKの小さい粒子から成る物質を指す。PEKK粉体は、約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140又は約150ミクロンの中位粒子直径を有することができる。好ましい局面において、PEKK粉体は、約30ミクロン〜約100ミクロンの中位粒子直径を有する。別の好ましい局面において、PEKK粉体は、約50ミクロンの中位粒子直径を有する。
【0024】
本開示に従えば、PEKK粉体は、被熱処理PEKK粉体を製造するために、加熱される。好ましい局面において、PEKK粉体は、約275℃〜約290℃の温度、例えば275、280、285又は約290℃の温度に加熱される。好ましい局面において、PEKK粉体は280℃〜290℃の範囲に加熱される。
【0025】
本開示に従って調製された被熱処理PEKK粉体は、他の方法に従って製造されたPEKK粉体と比較して、例えば例3に従って製造されたPEKK粉体と比較して、改善された物理的特性及び機械的特性を有する。例えば、記載される被熱処理PEKK粉体は、改善された嵩密度を有する。本明細書に記載された被熱処理PEKK粉体は、0.35g/cm3〜0.90g/cm3の範囲、例えば0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85又は約0.90g/cm3の嵩密度を有する。好ましい局面において、この被熱処理PEKK粉体は、0.40〜0.50g/cm3の範囲の嵩密度を有する。本明細書で用いた時、「嵩密度」(当技術分野において「見掛け密度」とも称される)は、本開示の出願時点において実施されている最新の標準法であるASTM法D1895を用いて測定することができる。
【0026】
本明細書に記載される被熱処理PEKK粉体は、記載される方法に従って製造されたものではないPEKK粉体と比較して、例えば例3に従って製造されたPEKK粉体と比較して、望まれる流動性を有する。例えば、本開示の被熱処理PEKK粉体は、対照用粉体と比較して、例えば例3に従って製造されたPEKK粉体と比較して、改善された注入特性、低い基本流動エネルギー、より良好な流動性、及び/又はより高い耐ケーキング(固化)性を有する。各種粉体流動特性(粉体レオロジーとも称される)は、FT4(商品名)Powder Rheometer(米国ニュージャージー州メッドフォード所在のFreeman Technology社)のようなレオメーターを用いて分析することができる。
【0027】
被熱処理PEKK粉体は、レーザー焼結用途に用いるのに特によく適している。レーザー焼結用途は、付加的な製造方法において有用である。これらの方法は、当技術分野において周知である。例えばO.G. Ghita et al., J. Materials Processing Tech. 214 (2014) 969-978、米国特許第8299208号、同第7847057号、同第8313087号、米国特許出願公開第2012/0114848号、同第2008/258330号、同第2009/017220号、同第2009/312454号、同第2005/0207931号、同第2007/0267766号、同第2008/0152910号の各明細書を参照されたい。参考用にこれらを本明細書に取り入れるものとする。特に有用な被熱処理PEKK粉体には、中位粒子直径が30〜100ミクロン、40〜75ミクロン又は45〜55ミクロンのものが包含され、約50ミクロンのものが特に好ましい。これらの粉体は、本明細書に記載されたように、嵩密度が0.30g/cm3以上、例えば0.40g/cm3〜0.50g/cm3であろう。
【0028】
被熱処理PEKK粉体の粒子はまた、他の方法に従って製造された粉体と比較して、例えば例3に従って製造されたPEKK粉体と比較して、より規則的な形状でもある。例えば、記載された方法に従って製造された被熱処理PEKK粉体は、他の方法を用いて製造されたPEKK粉体の粒子より丸い。粒子の形態は、当技術分野において周知の技術を用いて電子顕微鏡によって決定できる。粒子の丸さは、当技術分野において周知の粒子寸法分析及び技術を用いて決定できる。
【0029】
本開示の粉体をレーザー焼結することによって調製される物品は、改善された表面粗さ特性を有する。「表面粗さ」は、当技術分野において周知の表面粗さ試験装置、例えばMITUTOYO SURFTEST SJ-201を用いて決定することができるRa(μm)によって定量化することができる。表面粗さの改善はまた、視覚的に確認することもできる。
【0030】
本開示の焼結していない粉体は、付加的製造において高性能材料のためのその後の付加的構築にリサイクル使用/再使用することができるので、100%未使用粉体を用いた部品構築と比較して一定の特性を維持しつつ、無駄を減らす。
【0031】
本開示は、他にもあるが、以下の局面に向けられる。
【0032】
局面1.以下を含む方法:
PEKKペレットを160℃〜300℃の範囲の温度、好ましくは180℃〜290℃の範囲の温度に、少なくとも10%の結晶度を有する半晶質PEKKペレットを製造するのに足りる時間、加熱し;
前記半晶質PEKKペレットを粉砕して約10ミクロン〜約150ミクロンの範囲の中位粒子直径を有するPEKK粉体を製造し;そして
前記PEKK粉体を約275℃〜約290℃、好ましくは280℃〜290℃の範囲の温度に加熱して被熱処理PEKK粉体を製造する。
【0033】
局面2.前記PEKKペレットが5%以下の結晶度を有する、局面1の方法。
【0034】
局面3.前記PEKKペレットが非晶質である、局面2の方法。
【0035】
局面4.前記PEKKペレットのT:I異性体比が50:50〜90:10、好ましくは60:40〜80:20の範囲、より一層好ましくは60:40である、局面1の方法。
【0036】
局面5.前記PEKKペレットを約180℃〜約250℃の温度に加熱する、局面1又は局面2の方法。
【0037】
局面6.前記PEKKペレットが約1mm〜約10mm、好ましくは2mm〜5mmの中位粒子直径を有する、局面1〜5のいずれかの方法。
【0038】
局面7.前記PEKKペレットを少なくとも5分間加熱する、局面1〜6のいずれかの方法。
【0039】
局面8.前記PEKKペレットを5〜30分間加熱する、局面1〜7のいずれかの方法。
【0040】
局面9.前記非晶質PEKKペレットがさらに1種以上の添加剤を含む、局面1〜8のいずれかの方法。
【0041】
局面10.前記添加剤が酸化防止剤、流動促進剤、カーボンナノチューブ、カーボンブラック又はそれらの組合せである、局面9の方法。
【0042】
局面11.前記非晶質PEKKペレットが1種以上の添加剤を10重量%まで含む、局面9又は10の方法。
【0043】
局面12.前記非晶質PEKKペレットが実質的に添加剤フリーである、局面1〜11のいずれかの方法。
【0044】
局面13.前記粉砕をハンマーミル、アトリションミル、ピン留めディスクミル又はジェットミルで実施する、局面1〜12のいずれかの方法。
【0045】
局面14.前記粉砕を周囲条件下又は冷却条件下で実施する、局面1〜13のいずれかの方法。
【0046】
局面15.前記PEKK粉体が約30ミクロン〜約100ミクロン、好ましくは約50ミクロンの中位粒子直径を有する、局面1〜14のいずれかの方法。
【0047】
局面16.前記被熱処理PEKK粉体が0.35g/cm3〜0.90g/cm3の範囲の嵩密度を有する、局面1〜15のいずれかの方法。
【0048】
局面17.前記被熱処理PEKK粉体が0.4g/cm3〜0.5g/cm3の範囲の嵩密度を有する、局面1〜16のいずれかの方法。
【0049】
局面18.30ミクロン〜約100ミクロンの範囲の中位粒子直径、0.40g/cm3〜0.50g/cm3の範囲の嵩密度を有する被熱処理PEKK粉体であって、該粉体の粒子が実質的に規則的な形状である、前記粉体。
【0050】
局面19.局面1〜17のいずれかに従って製造された被熱処理PEKK粉体をレーザー焼結して物品を製造することを含む、方法。
【0051】
局面20.局面19の方法に従って製造された物品。
【0052】
本明細書内では明確且つ簡潔な仕様を書くことができる方法で実施形態を説明したが、実施形態は本発明から逸脱することなく様々に組み合わせたり分けたりすることができることが意図され、理解されるだろう。例えば、本明細書に記載したすべての好ましい特徴は、本明細書に記載した本発明のすべての局面に適用可能であることが認識されるであろう。
【0053】
以下の実施例は、本明細書に記載した組成物、方法及び特性を例示するために提供されたものである。これら実施例は単に例示であり、本開示をここに記載された材料や条件、方法に限定することを意図したものではない。
【実施例】
【0054】
例1:一般的手順
PEKK反応器フレークを押出機で溶融加工し、この押出物を細断することによって、2〜10mmの直径のペレットにする。押出加工温度は一般的に300〜400℃、好ましくは320〜350℃だった。製造されたペレットは、微細構造において非晶質、即ち結晶度0〜5%だった。
【0055】
この非晶質PEKKペレットを、ガラス転移温度(160℃)以上融点(300℃)以下の温度において結晶化させた。ペレットの結晶化は、バッチタイププロセスで、ペレットを金属製のトレーに載せて対流オーブン中に入れて行うこともでき、また、結晶化の間ペレットを溶融状態に保つためにオーブン内で回転することができる容器中でバッチタイププロセスで行うこともできる。また、ペレットをコンベアベルト上で移動させて一連の加熱チャンバーに通す連続システムでペレットを結晶化させることもできる。ペレットは、5分以上の時間、少なくとも160℃の内部温度にするべきである。
【0056】
ペレットを結晶化させた後に、それらをハンマーミル、アトリションミル、ピン留めディスクミル若しくはジェットミルによって又は3〜5mmのペレットの粒子寸法を小さくして微細粉体にするのに足りるエネルギーを持つ任意の機械式粉砕技術によって粉砕して、平均粒子寸法(D50)が35〜90ミクロンである微細粉体にする。粉砕プロセスは、周囲条件下又は極低温条件下で実施することができる。何らかの特定の理論に縛られるものではないが、ペレットの結晶化はペレットの脆性を高めるものと思われる。非晶質ペレットの延性及び靭性は、ペレットが所望の平均粒子寸法に粉砕されるのを妨げる。図1を参照されたい。
【0057】
微細粉体が製造された後に、これを275〜290℃の範囲の温度において熱処理する。
【0058】
例2
【0059】
64/40PEKK反応器フレークを溶融加工することによってペレットにした。このPEKKペレットを280〜285℃において焼鈍した。焼鈍されたペレットを極低温条件下で粉砕して所望の粒子寸法にした。粉砕された粉体を285〜290℃において熱処理した。熱処理された粉体のDSCを図2に示す(1回目の加熱。横軸は温度、縦軸は熱流。)。この例に従って調製された粉体のNikon Eclipse ME600型光学顕微鏡で撮影した電子顕微鏡写真を図3Aに示す(倍率100倍)。
【0060】
この方法に従って作られた粉体の嵩密度は、Freeman Technology FT-4 Powder Rheometerで測定して、0.47〜0.52g/mLである。
【0061】
例3:比較例
【0062】
比較例用のPEKK粉体は、半晶質PEKKフレークを粉砕して粉体にし、次いでこの粉体を、前記半晶質PEKKフレークの最高融点結晶形の融点より低い温度であって前記半晶質PEKKフレークの他の結晶形態の融点又はそれより高い温度において、前記他の結晶形態と比較した前記最高融点結晶形の含有率を高める時間の間、熱処理することによって、調製することができる。この比較例の方法に従って製造された粉体のNikon Eclipse ME600型光学顕微鏡で撮影した電子顕微鏡写真を図3Bに示す(倍率200倍)。
【0063】
この方法に従って作られた比較用粉体の嵩密度は、Freeman Technology FT-4 Powder Rheometerで測定して、0.26〜0.29g/mLである。
図1
図2
図3A
図3B
【手続補正書】
【提出日】2018年9月11日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PEKKペレットを160℃〜300℃の範囲の温度に、少なくとも10%の結晶度を有する半晶質PEKKペレットを製造するのに足りる時間、加熱し;
前記半晶質PEKKペレットを粉砕して約10ミクロン〜約150ミクロンの範囲の中位粒子直径を有するPEKK粉体を製造し;そして
前記PEKK粉体を約275℃〜約290℃の範囲の温度に加熱して被熱処理PEKK粉体を製造する:
ことを含む、方法。
【請求項2】
前記PEKKペレットが5%以下の結晶度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記PEKKペレットが非晶質である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記PEKKペレットのT:I異性体比が50:50〜90:10の囲である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記PEKKペレットを約180℃〜約250℃の温度に加熱する、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記PEKKペレットが約1mm〜約10mmの中位粒子直径を有する、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記PEKKペレットを少なくとも5分間加熱する、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記PEKKペレットを5〜30分間加熱する、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記非晶質PEKKペレットがさらに1種以上の添加剤を含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記添加剤が酸化防止剤、流動促進剤、カーボンナノチューブ、カーボンブラック又はそれらの組合せである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記非晶質PEKKペレットが1種以上の添加剤を10重量%まで含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記非晶質PEKKペレットが実質的に添加剤フリーである、請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記粉砕をハンマーミル、アトリションミル、ピン留めディスクミル又はジェットミルで実施する、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記粉砕を周囲条件下又は冷却条件下で実施する、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記PEKK粉体が約30ミクロン〜約100ミクロンの中位粒子直径を有する、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記被熱処理PEKK粉体が0.35g/cm3〜0.90g/cm3の範囲の嵩密度を有する、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記被熱処理PEKK粉体が0.4g/cm3〜0.5g/cm3の範囲の嵩密度を有する、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
30ミクロン〜約100ミクロンの範囲の中位粒子直径、0.40g/cm3〜0.50g/cm3の範囲の嵩密度を有する被熱処理PEKK粉体であって、該粉体の粒子が実質的に規則的な形状である、前記粉体。
【請求項19】
請求項1〜17のいずれかに従って製造された被熱処理PEKK粉体をレーザー焼結して物品を製造することを含む、方法。
【請求項20】
請求項19の方法に従って製造された物品。
【国際調査報告】