(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-502134(P2019-502134A)
(43)【公表日】2019年1月24日
(54)【発明の名称】回転カウンタによって把握可能な回転数を決定するための磁気回転カウンタ及び方法
(51)【国際特許分類】
G01D 5/244 20060101AFI20181221BHJP
G01D 5/245 20060101ALI20181221BHJP
G01R 33/09 20060101ALI20181221BHJP
G01R 33/02 20060101ALI20181221BHJP
【FI】
G01D5/244 J
G01D5/245 110A
G01R33/09
G01R33/02 N
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2018-548268(P2018-548268)
(86)(22)【出願日】2016年12月7日
(85)【翻訳文提出日】2018年6月6日
(86)【国際出願番号】DE2016000434
(87)【国際公開番号】WO2017097285
(87)【国際公開日】20170615
(31)【優先権主張番号】102015016163.6
(32)【優先日】2015年12月11日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA
(71)【出願人】
【識別番号】316018133
【氏名又は名称】ライプニッツ−インスティテュート フュア フォトニサ テヒノロギエン イー.ファウ.
(71)【出願人】
【識別番号】516126780
【氏名又は名称】ホルスト シードル ゲーエムベーハー ウント コー.カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002169
【氏名又は名称】彩雲国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】マッテイス, ローランド
(72)【発明者】
【氏名】ディエゼル, マルコ
【テーマコード(参考)】
2F077
2G017
【Fターム(参考)】
2F077AA28
2F077CC02
2F077NN03
2F077NN05
2F077NN17
2F077PP14
2F077QQ17
2F077TT16
2G017AA10
2G017AD55
2G017AD65
2G017BA09
(57)【要約】
外部磁界の設定可能な特定すべき回転数nを決定するための磁気回転カウンタ及び方法であって前記外部磁界は回転要素(4)、又は回転磁極ホイールの通過移動可能なn個の磁極、又は通過移動可能なリニア磁気スケールによって発生される。オープンスパイラル又は多巻きクローズドループからなる磁壁伝導路を含む回転センサ(2)を備え、オープンスパイラル又は多巻きクローズドループはGMR層スタック又は局所的に存在するTMR層スタックを有する軟磁性層によって形成され、それらに180度磁壁を導入でき、設定可能なスパイラル部分又はループ部分の電気抵抗を測定することによって探し出すことができる。磁壁伝導路には単一の磁壁又は少なくとも2個の磁壁が導入され、その際に少なくとも2個の磁壁が−外部磁界が360度を超える角度で回転する際にそれらの第1のポジションから第2のポジションへの位置変化を基準として−互いに360度を超える所定の間隔にもたらされ、永続的に互いに離間しているようにされる。磁壁伝導路上に電気接点が所定の配置で設けられており、これらの電気接点は、これらによって覆われた磁壁伝導路の関連する部分と共に、分離しているが協同して読み出し可能なホイートストンハーフブリッジを形成し、ホイートストンハーフブリッジで測定された抵抗比が信号レベルとして全てメモリ(9)に表形式で記憶され、現在の回転数を把握するために、各許容回転i(0<i<n)について別のメモリ(10)に記憶された表形式の目標値パターンと連続的に比較でき、特定すべき回転数iについて、測定された抵抗比がメモリ(10)内の目標値パターンと一致する回転数が出力され、対応する処理ユニット(11)によって把握される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部磁界の設定可能な特定すべき回転数nを決定するための磁気回転カウンタであって、前記外部磁界は回転要素(4)、又は回転磁極ホイール(5a)の通過移動可能なn個の磁極、又は通過移動可能なリニア磁気スケール(5b)によって発生され、オープンスパイラル(20)又は多巻きクローズドループ(27)からなる磁壁伝導路を含む回転センサ(2)を備え、前記オープンスパイラル(20)又は多巻きクローズドループ(27)はGMR層スタック又は局所的に存在するTMR層スタックを有する軟磁性層によって形成され、これらに180度磁壁が導入でき、及び−設定可能なスパイラル部分又はループ部分の電気抵抗を測定することによって探し出すことができるものにおいて、
−磁壁伝導路に単一の磁壁(111a)又は少なくとも2個の磁壁が導入され、その際に少なくとも2個の磁壁(111、112)が磁壁の発生、ピニング又は所定の消去を行うための手段(25、26)によって−外部磁界が360度を超える角度で回転する際にそれらの第1のポジションから第2のポジションへの位置変化を基準として−互いに360度を超える所定の間隔にもたらされて、永続的に互いに離間するようにされ、及び
−磁壁伝導路上に電気接点が設けられ、その際に磁壁伝導路は、対角線状に相対してそれぞれ1個のgnd接点(70、71、72)とVcc接点(80、81、82)により協同して、又は多重読出しの場合はVcc接点群及びgnd接点群において覆われており、専ら片側で前記gnd接点(70、71、72)とVcc接点(80、81、82)との間の実質的に中央に分離した接点(91、93、95、97、99)が個々の磁壁伝導路部分に設けられ、又は多重読出しの場合はホィートストン・(ハーフブリッジ)中間接点として複数の巻きと接触する接点群に設けられ、及び
−前記接点は、それらによって覆われた磁壁伝導路の関連する部分と共に、分離しているが協同して読み出し可能なホイートストンハーフブリッジを形成して、ホイートストンハーフブリッジによって把握された抵抗比が信号レベルとして全てメモリ(9)に表(9a)の形式で記憶され、現在の回転数を把握するために、各許容回転i(0?i?n)について別のメモリ(10)に記憶された表形式の目標値パターン(10a、10b、10c及び10d)と連続的に比較でき、及び
−特定すべき回転数iについて、表(9a)内の測定された抵抗比がメモリ(10)内の目標値パターンと一致する回転数が出力されて、対応する処理ユニット(11)によって把握されることを特徴とする磁気回転カウンタ。
【請求項2】
外部磁界の設定可能な数の特定すべき回転nを決定するための磁気回転カウンタであって、前記外部磁界は回転要素(4)、又は回転磁極ホイール(5a)の通過移動可能なn個の磁極、又は通過移動可能なリニア磁気スケール(5b)によって発生され、オープンスパイラル(20)又は多巻きクローズドループ(27)からなる磁壁伝導路を含む回転センサ(2)を備え、前記オープンスパイラル(20)又は多巻きクローズドループ(27)はGMR層スタック又は局所的に存在するTMR層スタックを有する軟磁性層によって形成され、これらに180度磁壁が導入でき、及び−設定可能なスパイラル部分又はループ部分の電気抵抗を測定することによって探し出すことができるものにおいて、
−磁壁伝導路に単一の磁壁(111a)又は少なくとも2個の磁壁が導入され、その際に少なくとも2個の磁壁(111、112)が、磁壁の発生、ピニング又は所定の消去を行うための手段(25、26)によって−外部磁界が360度を超える角度で回転する際にそれらの第1のポジションから第2のポジションへの位置変化を基準として−互いに360度を超える所定の間隔にもたらされて、永続的に互いに離間するようにされ、及び
−磁壁伝導路上に電気接点が設けられ、その際に磁壁伝導路が、対角線状に相対して巻き当りそれぞれ1個のgnd接点とそれぞれ1個のVcc接点により、又は多重読出しの場合は1個の共通のgnd接点(70)と、巻き当りそれぞれ1個のVcc接点(81,82,83,84)により、又は1個の共通のVcc接点と巻き当りそれぞれ1個のgnd接点により覆われており、及び
−これらの接点を通して把握された抵抗比が信号レベルとして全てメモリ(9)に表(9a)の形式で記憶されており、現在の回転数を把握するために、各許容回転i(0?i?n)について別のメモリ(10)に記憶された表形式の目標値パターン(10a、10b、10c及び10d)と連続的に比較でき、及び
−特定すべき回転数iについて、表(9a)内の測定された抵抗比がメモリ(10)内の目標値パターンと一致する回転数が出力されて、対応する処理ユニット(11)によって把握されることを特徴とする磁気回転カウンタ。
【請求項3】
回転角度センサ(3)、若しくは象限センサの信号(8a)が、表(9a)内の測定された抵抗比と比較されるサブテーブル(10a、10b、10c又は10d)を決定することを特徴とする、回転角度センサ(3)、若しくは象限センサを含む、請求項1又は2に記載の磁気回転カウンタ。
【請求項4】
磁壁伝導路をなすオープンスパイラル又は多巻きクローズドループは実質的に菱形に形成されており、前記接点(70、71、72;80、81、82;91、93、95、97、99)は菱形の角領域を覆っていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の磁気回転カウンタ。
【請求項5】
少なくとも2個の隣接する磁壁(111、112)の所定の間隔は540度に規定されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の磁気回転カウンタ。
【請求項6】
磁壁伝導路は両側に尖端部(21、22)を有するオープンスパイラルによって形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の磁気回転カウンタ。
【請求項7】
磁壁の発生、ピニング又は所定の消去を行うための手段は、磁壁伝導路の少なくとも1巻きを覆って磁壁伝導路を橋絡する接点部(26)で細く形成された追加の伝導路(25)によって作られており、電流が負荷されると十分大きいエルステッド磁界の発生を保証することを特徴とする、請求項1又は2に記載の磁気回転カウンタ。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の磁気回転カウンタによって把握可能な完全な回転数を決定するための方法において、
−磁壁伝導路に最初に単一の磁壁(111a)又は磁壁の所定の間隔を含む磁化パターンが記録され、少なくとも2個の隣接する磁壁(111、112)の間隔は−回転要素(4)が360度を超える角度だけ回転する際にそれらの第1のポジションから第2のポジションへの位置変化を基準として−360度より大きく規定され、及び
−この目標値メモリ(10)内の設定される記録された磁壁パターンに対応して、磁気回転カウンタによって把握できる全ての可能性のある完全な360度回転i(0≦i≦n)、及びそれに伴って変化した全ての磁壁位置について、ホイートストンハーフブリッジ又は磁壁伝導路に予想される全ての信号レベル目標値が表形式でメモリ(10)に一回記憶され、及び
−第2のメモリ(9)に、現在の計数中にホイートストンハーフブリッジ又は磁壁伝導路の全ての瞬間値から回転センサ(2)の関連する値が表(9a)として記憶され、及び
−これらの測定値(9a)が目標値メモリ(10)内のそれぞれの信号レベル目標値と連続的に比較され、及び
−両メモリ(9、10)において一致する表の値が把握された回転数iとして出力されることを特徴とする方法。
【請求項9】
−目標値メモリ(10)には、回転カウンタで計数可能な個々の回転iについて、信号レベル目標値が4個の磁界角度象限に対する少なくとも4個のサブテーブル(10a、10b、10c及び10d)に記憶され、
−角度センサ(3)、若しくは象限センサの測定値(W8(8a))が関連するサブテーブルを決定し、
−これと回転センサ(2)の測定値(9a)が連続的に比較されて、関連する回転数を把握することを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転カウンタによって把握可能な回転数を決定するための磁気回転カウンタ及び方法に関するものである。そのような回転カウンタは小型化して構成でき、無電流で動作できるので、技術の多様な分野で、特に自動車製造及び伝動機製造において有利に応用できる。
【背景技術】
【0002】
基本的に磁壁(DW)を利用して回転を無接触及び無電流で計数するための回転カウンタは自体公知であり、例えばDE102008063226A1、DE102010022611A1、DE102011075306A1及びDE102013018680A1に詳述されている。
【0003】
上の文献で開示されている回転カウンタに共通しているのは、次の点である。使用されるセンサシステムは、少なくとも1個のセンサ要素と少なくとも1個の外部磁界からなり、センサ要素は磁界において、若しくは磁界はセンサ要素において無接触に通過移動又は回転する。
【0004】
センサ要素は、少なくとも部分的に、非磁性層によって分離された、少なくとも1個の硬磁性層と少なくとも1個の軟磁性層からなる層構造を有している。センサシステムの動作時に磁界がセンサ要素において(又はその逆に)回転又は通過移動することによって、軟磁性層の磁化のみ変化させることができ、硬磁性層の磁化は変化しない。これにより軟磁性層の磁化はセンサ要素内で全部又は一部を硬磁性層の磁化に対してむしろ平行に、或いはむしろ逆平行に配向できる。この磁化の異なる向きは、種々の経路部分に電気抵抗の差を生じさせ、その差はGMR効果又はTMR効果によって読出し可能である。
【0005】
軟磁性層の内部では、2種類の磁化された領域が磁壁(DW)によって互いに分離されている。
【0006】
センサシステムの動作時に、センサ要素内における、例えば回転による外部磁界の位置変化が、センサ要素内に存在する磁壁の無電流の運動を引き起こす。
【0007】
読み出されたDWポジションは、具体的な回転カウンタで把握可能な一対一で対応して決定された回転(回転数)に割り当てられており、電子評価装置において把握される。好適な実施形態において、複数のセンサ要素又はセンサ要素の複数の部分はホイートストンブリッジ又はホイートストンハーフブリッジで電気的に相互に接続されており、そうすることにより温度が磁気抵抗信号に与える影響が抑制される。
【0008】
DE102008063226A1による回転カウンタは、幾何学的に一方の端部が大きい面で終わる菱形スパイラルによって形成されている。この大きい、好ましくは円形の面は、磁壁生成器(DWG)として働き、スパイラルと同じ材料から作られている。磁界が180度回転するごとに、又はセンサ要素が180度回転するごとに、この磁壁生成器において面−スパイラル移行部にいわゆる180度磁壁が生成される。この180度DWはスパイラル内に進入する。生成された180度DWは磁界の回転方向でスパイラル端部に向かってスパイラル回転方向に輸送され、若しくはスパイラル回転方向と反対の回転方向で磁壁がDWGに向かって輸送される。その際にスパイラルから最初にDWGに到着する180度DWは、同時にDWG内で生成される180度DWと対消滅する。従ってスパイラルは磁界が連続的に回転することにより順次磁壁を消去できる。固定したセンサ要素における磁界の回転と同等に、定置された磁石システムに対してセンサ要素の回転が行なわれる。
【0009】
DE102011075306A1による回転カウンタは、一方の端部に回転方向が反対に向けられたそれぞれ1個のDWGを有する2個の菱形スパイラルから、若しくは一方の端部又は中央に1個のみのDWGを有するこれら2個のスパイラルの組み合わせからなる。
【0010】
DE102008063226A1及びDE102011075306A1によるこれらの回転カウンタに共通しているのは、半回転ごとに各スパイラルにおける180度磁壁の数が1ずつ変化することである。
【0011】
これは、少なくとも1個の交点を備えた少なくとも1個のクローズドループ(DE102013018680A1)、又は少なくとも1個のブリッジを備えた少なくとも1個のクローズドループ(DE102010022611A1)を有する回転カウンタでは異なる。これらの回転カウンタでは1個のスパイラルの両端部が互いにクローズドループに接続されている。n巻きでは直接接続は(n−1)巻きと交差する。従って2巻きスパイラルは1個の交点を備えたループとなり、3巻きスパイラルは2個の交点を備えたループとなる。各巻きは最大2個の磁壁を受容できるので、n巻きのループでは最大2n個の磁壁が存在できる。
【0012】
クローズドループでは通常の計数動作時にDWは生成又は消去されない。磁壁の消去又は生成は計数エラーを招く結果となり、排除されなければならない。少なくとも1個のクローズドループを有する回転カウンタは、初期化プロセスにおいて正確な数の磁壁がセンサ要素に書き込まれることを要求する。
【0013】
DWGを有するオープンスパイラルを備えた回転カウンタの幾つかの実施形態は、機械的に初期化できる。これは例えばn巻きのスパイラルにおいて、スパイラルを完全に磁壁で満たすために、センサ要素若しくはセンサシステムの外側の磁石が少なくともn回転動くことによって起こる。続いて反対方向にn回転すると、スパイラルは磁壁が空になる。回転を右から左に計数する応用に対しては、初期化のために中央位置でスパイラルは最大n回転後にDWで満たされ、それから反対の回転方向にn/2回転すると最大でn/2DWまで空になる。
【0014】
クローズドループを有する回転カウンタでは初期化は、例えば強度がループの核生成磁界強度H
Nukを上回る磁界パルスを用いてクローズドループを磁壁で完全に満たし、続いて磁壁を消去することによって起こる。磁壁の消去は、それぞれ2個の磁壁の対消滅によって行なわれる。このために磁界が回転する間にDWが伝導路の下で電流により誘導された磁界、いわゆるエルステッド磁界H
oerstedtによって固持(ピニング)され、磁界の回転により別のDWがピニングされたDWに輸送されて、両磁壁が対消滅する。例えばDWが左方向に向いた磁界によって伝導路に輸送される場合、電流により誘導された磁界は右方向に向いてDW運動に対向されなければならない。反対磁界が十分に大きいと、DW運動は伝導路で停止してDWはピニングされている。エルステッド磁界が磁界回転の次の少なくとも180度に対して維持されると、これにより第2のDWが伝導路に輸送される。この第2のDWは第1のピニングされたDWと対消滅する。このようにして作用する磁界の連続的回転と電流により誘導されるDWピニングにより、センサシステムの動作のために所望される設定可能な数の磁壁に達するまで、順次常に2個のDWをクローズドループから消去することができる。
【0015】
前述した全ての回転カウンタで共通しているのは、回転の計数が、クローズドループ内で磁壁を輸送することにより、若しくはオープンスパイラル内で磁壁を輸送して生成又は消去することにより、無電流で行われる点である。計数された回転を一対一で対応するDWポジション及び/又はDW数によりセンサ要素に記憶することも無電流で行われる。
【0016】
これに対してセンサ要素を読み出すために電力が必要とされる。このために好適な実施形態において、巨大磁気抵抗効果(GMR)又はトンネル磁気抵抗効果(TMR)が利用されて、複数のセンサ要素又は1個のセンサ要素の複数の部分が公知の先行技術によりホイートストンハーフブリッジ又はホイートストンブリッジに接続されている。
【0017】
磁化に応じてセンサ要素は種々の部分に異なる電気抵抗若しくは異なる電位を有し、これらはセンサ要素又はセンサ要素の一部がホイートストンハーフブリッジ又はホイートストンブリッジに接続されている場合は読出し可能である。磁化状態を呼び出すために、測定電流がセンサ要素(若しくはホイートストン(ハーフ)ブリッジ)に通されて、測定結果が所定の閾値と比較される。閾値を下回るか又は上回るかによって、測定結果が例えば「このハーフブリッジにDWが存在する」状態に相当するか否かを決定できる。
【0018】
DE102008063226A1による回転カウンタにおいて、初めて半巻きの個別接点接触を有する菱形がホイートストンハーフブリッジに導入された。この特に有利な構成は正方形を用い、巻き当り互いに90度の角度で4個のウェブを使用する。それぞれ2個のウェブは四分円又は四分円状の多角線と互いに接続されている。四分円は電気接点で覆われており、更にこれらの電気接点は境を接するウェブの部分を、電気接点の間で全てのウェブの接触されない部分が好ましくは同じ長さになるように覆っている。各巻きの4個のウェブは、2個のホイートストンハーフブリッジに接続されている。基準方向は菱形若しくは正方形の対角で、Vcc接点とgnd接点との間の線に対して垂直に位置している。これにより各磁界角度について、1個の正方形(菱形)スパイラルのみで回転数に対する常に一対一で対応する割当てが可能である。このことは、刊行物「IEEE磁気学会議45巻10号3792−3795頁、2009年」に記載されているように、センサで計数可能な全ての回転について計数された回転による磁化の一対一で対応する割当てを許す。
【0019】
このジオメトリにより、n>10の回転数を測定できる回転カウンタが可能になる。ノヴォテヒニーク社のセンサシステム「RSM2800」において、16回転までの計数のための正方形スパイラル技術的に実現されている。
【0020】
これら全ての回転カウンタに共通しているのは、センサシステムの磁石の磁界Hは動作時にH
minとH
maxの間の「磁界窓」の内部になければならないことであり、ここでHminは最大デピニング磁界H
depinnより大きく、H
maxはセンサ要素の核生成磁界H
Nukより小さくなければならない。即ち
H
depinn<H
min≦H≦H
max<H
Nuk
最大磁界H
max及び最小磁界H
minは応用によって設定される。これら全ての回転カウンタで更に共通しているのは、センサ要素は応用の最大磁界H
max及び最小磁界H
minにおいて、例えば10−7より小さい或るエラー確率に関して適切にテストされていることである。この磁界窓の内部では磁壁は確実に輸送される。全ての磁界角度において計数された回転数に対する信号の一対一で対応する割当てを保証するために、DWGを有する菱形スパイラルでは全てのホイートストンハーフブリッジが読み出されない。ここではスパイラルの尖端から、最初にスパイラルに輸送されたDWが局在している巻きに達するまで、順次全てのホイートストンハーフブリッジを読み出せば十分である。このことはレベルジャンプによって認識される。しかしながらここで強制的に必要なのは、読み出されたホイートストンハーフブリッジにそれぞれ後続する半巻きが読み出されること、即ち先行技術により常に180度の解像度によって読み出されることである。このセンサ要素は半回転を出力できる点が利点である。しかし問題点は、これは全てのハーフブリッジの接点接触を必要とし、そのため大きいチップ面積が必要とされることであり、その大きさは実質的にボンディング接点の所要スペースによって決まるが、各ボンディング接点はそれ自体が本来のセンサ要素とほぼ同程度の所要スペースを必要とする。
【0021】
スパイラル又はループの内部で磁壁が最も長時間局在している幾何学的領域を、以下に磁壁位置(DW位置)と表記する。正方形又は菱形スパイラルにおいて、これはそれぞれ2個の直線ウェブを互いに接続している四分円又は四分円状の多角線である。DWが四分円を通過するには、外部磁界は90度プラス通常5度〜20度のヒステリシス角度だけ回転しなければならない。DWが四分円−ウェブ移行部に輸送されて、そこにある磁界がDWをデピニングするとすぐに、DWはウェブを数100m/secの速度で100ns以内に通過する。この非常に短い時間の内部では、磁界の回転は無視できるほど小さい。
【0022】
正方形スパイラル(若しくは正方形ループ)において巻き当り4個の四分円、従って4個のDW位置があり、これらは2個のホイートストンハーフブリッジの電気接点で覆われている。1個のDW位置上にはVcc接点があり、これと相対するDW位置上にはgnd接点があり、これらの間にある2個のDW位置はそれぞれ1個の中間接点で覆われている。
【0023】
前述した全ての公知の先行技術による回転カウンタにおいて、ホイートストンハーフブリッジ中間接点と接触しているDW位置は180度の角度間隔を有している。
【0024】
GMR層スタックにおける基準磁化の方向を選択することにより、DWがDW位置で中間接点下に配置されている場合は、ホイートストンハーフブリッジは中央電位にあり、DWがDW位置でVcc接点又はgnd接点下に配置されている場合は、ホイートストンハーフブリッジは高電位又は低電位にあるTMR層スタックに対して、これはより可変に選択できる。
【0025】
各180度の磁界回転に対して、センサ要素に記憶されている磁壁はエラーのない動作においては隣接のホイートストンハーフブリッジに輸送される。DW数が一定の回転カウンタではその際にDW配置はセンサ要素内で180度の角度間隔だけ移動し、1個のDWGを有するスパイラルでは更にスパイラル内の磁壁の数はDWだけ変化する。この運動の証明は、ホイートストンブリッジ若しくはホイートストンハーフブリッジの電気的読出しによって行われる。
【0026】
それぞれの中間接点で隣接する2個のホイートストンハーフブリッジのDW位置は、180度の角度間隔を有するので、電子読出し装置は「180度読出しアルゴリズム」を使用する。これは電子読出し装置が整数の回転数のみ出力するか、又は半整数の回転数も出力するかにかかわりなく、180度解像度で回転を分析する。全てのホイートストンハーフブリッジの読出しは、全ての中間接点がボンディング接点に結合されていることを必要とする。この接点接触方式を、以下に「180度接点接触」と表記する。180度接点接触は、DE102010022611A1及びDE102013018680A1による互いに素のセンサ要素も使用する。この180度接点接触の決定的な問題点は、必要なボンディング接点を収容するために、センサ要素当り必要とされるチップ面積が大きいことであり、特に回転数が10を超える回転カウンタではボンディング接点の数がチップ面積、ひいてはチップ当りの費用を決定的に決める。ボンド接点の数は多重電圧供給源によって減らすことができる。磁壁生成器(DWG)と16巻きを有するスパイラルの場合、全16巻きに1個の共通電圧供給源だと合計34接点、即ちVcc接点、gnd接点及び32ホイートストンハーフブリッジのための16x2中間接点が必要とされる。これに対して4重化においては、合計16接点、即ち4対のVcc接点及びgnd接点と4x2中間接点が必要とされるだけであり、この場合各接点はそれぞれ4巻きと接触する。従って4対のVcc−gndを高速に相次いで遮断することにより、中間接点で接触している4巻きの電位が次々と読み出される。多重電圧供給源を有する構成では、全てのホイートストンハーフブリッジは同じ電位にないので、ホイートストンハーフブリッジを測定する際に並列電位(ここでは3巻き若しくはホイートストンハーフブリッジの電位)が測定結果に影響し得る。DE102010010893B4では回転カウンタが、並列電位により発生する効果を基準ブリッジによって補償する電気回路と組み合わされた。基準ブリッジを使用する有利な回路は、DWGと16巻きを有するスパイラルでは、追加で17個目の接点が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】DE102008063226A1
【特許文献2】DE102010022611A1
【特許文献3】DE102011075306A1
【特許文献4】DE102013018680A1
【非特許文献】
【0028】
【非特許文献1】刊行物「IEEE磁気学会議45巻10号3792−3795頁、2009年」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
本発明の課題は、ボンディング接点の数を大幅に減らすことを可能にし、それによって回転カウンタを小さいチップ面積で廉価に作製できる、回転カウンタによって把握可能な回転数を決定するための磁気回転カウンタ及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
この課題は請求項1、請求項2及び請求項8の特徴部の特徴によって解決される。本発明の有利な構成が、それぞれ従属請求項に記載されている。
【0031】
本発明の本質は、まず回転要素若しくは磁極ホイール若しくはリニア磁気スケールによって生成される外部磁界の設定可能な特定すべき回転数を決定するための磁気回転カウンタが設けられていることにあり、この磁気回転カウンタは、
● オープンスパイラル又は多巻きクローズドループからなる磁壁伝導路を含み、これらの磁壁伝導路はGMR層スタック又は局所的に存在するTMR層スタックを有する軟磁性層によって形成されており、及び
● それらに180度磁壁を導入でき、設定可能なスパイラル部分又はループ部分の電気抵抗を測定することにより公知の先行技術に従って探し出すことができ、
● しかしながら本発明により、ここで磁壁伝導路に単一の磁壁又は少なくとも2個の磁壁が導入され、その際に磁壁の発生、ピニング又は所定の消去を行うための手段によって磁壁が−回転磁界が360度を超える角度で回転する際にそれらの第1のポジションから第2のポジションへの位置変化を基準として−互いに360度を超える所定の間隔にもたらされ、及び
● 磁壁伝導路上に電気接点が設けられ、その際に磁壁伝導路が対角線状に相対してそれぞれ1個のVcc接点及びgnd接点により協同して、又は多重読出しに対しては複数のVcc接点及びgnd接点の群において覆われるようにされ、及び
● Vcc接点及びgnd接点上にある対角線を基準にして専ら片側に電気接点が設けられており、
● 上記のVcc接点とgnd接点との間の実質的に中央にそれぞれ1巻きと接触し、又は多重読出しの場合はこれらの間にある各磁壁伝導路部分の複数の巻きと接触し、
● 上記の接点は、分離した、好ましくは並行に読み出し可能な、又は多重読出しの場合は高速に相次いで、いわば同時に読み出し可能なホイートストンハーフブリッジを形成し、
● ホイートストンハーフブリッジによって把握された抵抗比は信号レベルとしてことごとくメモリに表形式で記憶され、現在の回転数を把握するために、別のメモリに記憶されている具体的な回転数に対応する表形式の目標値パターンと連続的に比較される。
【0032】
ホイートストンハーフブリッジによる回路で電位測定によってセンサ要素を読み出す代替として、本発明は全ての巻きの(TMR)抵抗の測定によりセンサ要素を読み出すことも設けている。このために各個々の巻きがそれぞれ1個のgnd接点及びそれぞれ1個のVcc接点と接触するか、又は多重読出しを用いる好適な実施形態において、1個の共通のgnd接点及び各巻き上のそれぞれ1個のVcc接点と、若しくは1個の共通のVcc接点及び各巻き上のそれぞれ1個のgnd接点と接触する。gnd接点とVcc接点は好ましくは対角線状に相対して配置されている。
図14は、この回路の実施形態を示す。ここでは把握された抵抗は、ホイートストンハーフブリッジによる回路におけるように信号レベルとしてことごとくメモリに表形式で記憶され、現在の回転数を把握するために、別のメモリに記憶されている、具体的な回転数に対応する表形式の目標値パターンと連続的に比較される。
【0033】
好適な実施形態は、公知技術に従い、回転角度センサ(若しくは象限センサ)を有しており、磁界角度象限を予め選択することにより、測定値を測定された磁界角度象限と結び付いている目標値パターンとのみ比較するようにした。これにより最大限必要な比較の数は、4分の1に減少し、それにより回転数決定が加速される。
【0034】
回転数を決定するために最大限必要な比較の数は更に、通常の計数動作においてDW数は一定のままであることによって少なく抑えられる。そうすることによって回転ごと及び磁界角度象限ごとに正確にそれぞれ1個の信号パターンが存在し、それによってまたそれぞれ1個の目標値パターンのみ比較のために記憶されていればよい。
【0035】
本発明により、磁壁伝導路をなすオープンスパイラル又は多巻きクローズドループは実質的に菱形に形成されており、上記の接点は菱形の角領域を覆っている。更に、2個の隣接する磁壁を使用する場合は、所定の離間は540度に規定されている。
【0036】
GMR層スタックを使用する代りに、本発明により磁壁伝導路を軟磁性材料−例えばパーマロイ−から作製し、Vcc接点及びgnd接点を磁壁伝導路の例えば中央に設けられているTMR層スタック上に配置することも可能である。これに対して電気的中間接点は、ここでも直接菱形の角領域で特設軟磁性磁壁伝導路と接触する。
【0037】
回転数を決定するために使用される方法の本質は、計数された回転の決定が電子評価装置によって行なわれることにあり、電子評価装置は全ての読み出されたホイートストンハーフブリッジ(又は抵抗測定の場合は全ての巻きの抵抗)の信号と、各計数可能な回転に対してホイートストンハーフブリッジ(若しくは全ての巻きの抵抗)のそれぞれの信号を保存して記憶されている表との比較を実行する。即ち電子評価装置は、オープンスパイラル又は多巻きクローズドループの巻き1〜巻きnの測定された信号電圧から形成されるパターンが、巻き1〜巻きnについて記憶された信号パターンと一致するものを計数された回転として出力する。正方形スパイラル又は正方形クローズドループを用いる好適な実施形態における90度の角度に基づいて、電位はそれぞれ90度の磁界回転後に変化するので、少なくとも各90度の磁界角度範囲(磁界角度象限)について対応する目標値パターンが記憶されて、角度センサ(若しくは象限センサ)の測定値を回転カウンタ信号と比較するために選択される。
【0038】
ループ又はスパイラルに記録された磁化パターンは、それにより±45度の許容ヒステリシスにおいても計数された回転の一対一で対応する決定を可能にする。動作安定性の理由から、実際のヒステリシスが±30度より著しく小さい磁界強度(例えばH
minの120%)が常に選択されよう。
【0039】
本発明により菱形センサ要素の一方の側、若しくはVcc接点とgnd接点を結んでいる対角線を基準にして一方の側に電気的中間接点を配置することを、以下に360度接点接触と表記する。なぜならセンサ要素で計数されてセンサ要素に記憶される回転数は360度解像度で読み出されるからである。本発明によりスパイラル状センサ要素又はループ状センサ要素において、同じ磁化パターン(MM)を初期化できる。この場合、360度接点接触にとって好ましいMMは、互いに540度の角度間隔で2個の磁壁を有する。このMMは、計数された回転数の一対一で対応する決定を可能にするとともに、以下に具体的な説明で詳しく述べるように容易に初期化できる。別の本発明によるMMは単一のDWからなり、これは2個の先の尖った開いた端部を有する同様に本発明によるスパイラルに書き込まれる。このスパイラルも同様に上記の360度接点接触を備えており、この実施形態については以下に具体的な説明でより詳しく述べる。
【0040】
以下好ましい実施形態及び図面を用いで本発明を詳述するが、本発明はこれらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】
図1は、本発明による回転カウンタの本質的な構成要素を示す。
【
図2】
図2は、本発明による接点配置を有する必要なセンサ要素の第1の原理的な構成例を示す。
【
図3a】
図3aは、本発明により好適に設けられた磁化パターンの書込みを
図2に基づいて示す。
【
図3b】
図3bは、単一の磁壁からなり本発明により同様に可能な磁化パターンの書込みを
図2に基づいて示す。
【
図4】
図4は、本発明による接点配置を有する必要なセンサ要素の第2の原理的な構成例を示す。
【
図5】
図5は、達成されたボンディング接点削減の例を
図4に基づいて回転センサのチップのより完全な表現で示す。
【
図6】
図6は、ホイートストンブリッジを形成するために本発明により設けられ回転センサ上に配置された接点の回路を
図4の例によって示す。
【
図7】
図7は、本発明による接点配置と出力磁壁位置を有する必要なセンサ要素の第3の原理的な構成例を示す。
【
図8】
図8は、外部磁界が3回転した後の
図7による磁壁位置を示す。
【
図9】
図9は、
図7と
図8による4個の例示的な象限に対して設けられた360度ホイートストン接点から得られた信号レベルシーケンスを示す。
【
図10】
図10は、付属のアセンブリと相関して回転を決定する手順のフローチャートである。
【
図14】
図14は、抵抗測定のための本発明による接点配置を有する、
図13aのセンサ要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下に、各磁界角度で完全な回転数の一対一で対応する読出しを可能にする、本発明による360度接点接触を有する回転カウンタの本発明による構成を、添付の図に基づいて説明する。
【0043】
最初に
図1は、本発明による回転カウンタ1aと、回転シャフト5に取り付けたN極(N)及びS極(S)を備える磁石システム4とを有する回転カウンタシステム1の本質的な構成要素を示す。回転カウンタ1aは、主要コンポーネントである回転センサUS2、360度角度センサWS3及び電子装置6からなる。センサ2及び3は定置されていて、回転磁界の角度位置と回転数を検知する。電子装置6は、センサ2及び3及び測定値の処理に対する電圧供給源7、角度センサ3の測定値用のメモリ8、回転センサ2の測定値用のメモリ9、表形式で記憶された回転センサ2の目標値用のメモリ10、及び処理ユニット11を含む。この処理ユニット11は、メモリ8及び9からの測定値をメモリ10からの表の値と比較して、各測定の結果を出力する。
【0044】
本発明の第1の特殊性は、回転センサ2の本発明による構成にあり、これについて
図2の例示的な簡略化した表現に基づいて説明する。ここでは特に本発明による構成を、新しい種類の接点結合に関して示す。この例では、センサ要素2は端部が尖った3巻き正方形スパイラル20によって形成されている。一方の尖端21は外側の巻きの端であり、他方の尖端22は最も内側の巻きの端である。スパイラルは、この例では公知の先行技術に従いGMR効果を示す磁性層スタックからなる。基準方向28は正方形の巻きに対して対角線状である。第1の最も外側の巻きは、ウェブ3l、32、33及び34からなり、第2の中央の巻きはウェブ41、42、43及び44からなり、第3の最も内側の巻きはウェブ51、52、53及び54からなる。上記のウェブの各々は、それぞれ隣接する後続のウェブに対して90度の角度をなしている。実際の状況を分かりやすくするために、ウェブの間の接続部は、四分円又は四分円状の多角線302(拡大した円301内に示す)であることが示されており、これらはウェブと同じ層スタックからなる。この多角線は正方形スパイラルの「角」であると同時に、磁壁位置(DW位置)である。DW位置では磁壁が、
図1で磁石システム4によって発生された外側の回転磁界の大きい磁界角度範囲にわたって留まる。DWが四分円を通過するには、外部磁界は90度プラス通常5度〜20度のヒステリシス角度だけ回転しなければならない。ウェブを通過する際に磁界は事実上回転しない。なぜならDWはウェブを数100m/secで通過するからである。その結果、DWは100ns以内に1つの四分円から次の四分円に到達する。従って時間的に見ると磁壁は事実上常時DW位置に留まっている。第1の最も外側の巻きはDW位置35、36、37及び38を含み、第2巻きはDW位置45、46、47及び48を含み、第3巻きはDW位置55、56、57及び58を含む。例示的なスパイラルは電気接点を備えており、左上に1個の共通のgnd接点70、右下に1個の共通のVcc接点80、及び本発明により専ら
図2の右上に3個の中間接点91、93及び95がある。即ち、Vcc接点とgnd接点を通る仮想対角線によって形成されたスパイラル半部である。更に
図2は、センサ要素を初期化するための狭隘部26を有する伝導路25を示す。センサ要素2の磁化状態は、電位測定と3個のホイートストンハーフブリッジの形成によって読み出される。
ホイートストンハーフブリッジW1は、中間接点91、gnd接点70及びVcc接点80を有するウェブ33及び34を形成する。
ホイートストンハーフブリッジW2は、中間接点93、gnd接点70及びVcc接点80を有するウェブ43及び44を形成する。
ホイートストンハーフブリッジW3は、中間接点95、gnd接点70及びVcc接点80を有するウェブ53及び54を形成する。
図2によるセンサ要素2は最初に、例えば基準方向28の磁化方向で核生成磁界強度を上回る磁界強度を有する磁界パルスによって発生された6個の磁壁(黒い円)で、次のように完全に満たされている。
第1の最も外側の巻きにおいて、DW111はDW位置36に局在し、DW112はDW位置38に局在している。
第2の中央の巻きにおいて、DW113はDW位置46に局在し、DW114はDW位置48に局在している。
第3の最も内側の巻きにおいて、DW115はDW位置56に局在し、DW116はDW位置58に局在している。
上記の3個のハーフブリッジはこれらのDWポジションと基準方向28の位置により中央電位にある。cw方向における磁化方向は濃灰色、ccw方向における磁化方向は淡灰色で表現されている。更に各ウェブにおいて磁化方向は矢印で表示されている。GMR層スタックの基準方向28は正方形スパイラルに対して対角線状であり、この例では左下から右上を指している。
本発明の基礎に置かれた、2個の隣接する磁壁を360度より大きい所定の角度で離間させるという条件を実現するためには、更に少なくとも2個のDWが消去されなければならない。これについては以下に
図3に基づいて説明する。見やすさの理由から、
図2に示されているスパイラルは3巻きしか有していない。実際のセンサ要素は選択されるスパイラル構造に応じてそのような巻きを典型的には10巻き〜30巻き有している。
【0045】
図2に基づき、
図3aは、2個の隣接する磁壁の間の角度間隔が540度の磁化パターンが初期化されたセンサ要素2を示しており、これは
図2による一対一で対応する回転計数のための360度接点接触を可能にする。スパイラルが磁壁によって完全に占められることは、想定された構成においては一対一で対応する回転計数に適していないので、本発明により必要な磁化パターンを初期化する可能性について、
図3aに基づいてやや詳しく説明する。これは次の6段階で行われる。
1. n回転(この例では3回転)を計数するためのセンサシステムを組み込む前に、ここでは図示されない機械的エンドストップのロックが解除されて、外部磁界がccw方向にn+1回転(ここでは4回転)し、それによって万一存在する全ての磁壁若しくは
図2に示された6個の磁壁が尖端21を通ってスパイラルから出る。続いてセンサ要素が所望のゼロ位置(ここではcw方向のn/2回転及びccw方向のn/2回転を計数するための中央位置)に回転されてエンドストップがロックされる。
2. 狭隘部26の下で巻き内の伝導路25を電流が流れることによって2個の磁壁の核生成が行われる。電流により誘導されたエルステッド磁界は、センサ要素2の核生成磁界強度を上回る。核生成された2個の磁壁は、基準方向28を指す磁石4の磁界(
図1に対応)によってDW位置46及びDW位置48に輸送される。
3. 伝導路25を流れる電流を遮断すると、外部磁界はccw方向に360度回転し、それによって2個の核生成されたDWはDW位置46からDW位置36及びDW位置48からDW位置38に輸送される。
4. 狭隘部26の下で巻き内の伝導路25を電流が流れることによって新たに2個の磁壁の核生成が行われる。電流により誘導されたエルステッド磁界は、センサ要素2の核生成磁界強度を上回る。基準方向28を指す磁石4の磁界(
図1に対応)によって、一方のDWはDW位置46に、及び他方のDWはDW位置48に輸送される。
5. 狭隘部26の下で生じるセンサシステムの磁界及びエルステッド磁界(ウェブ42に並行してDW位置46を指す)がセンサ要素の最小運動磁界強度を下回るまで、伝導路25を流れる電流を減らす。270度cw回転によりDWはDW位置46から、及びDWはDW位置38から狭隘部26まで輸送され、そこで対消滅する。同時にDWはDW位置36からDW位置45に、及びDWはDW位置48からDW位置57に輸送される。
6. エルステッド磁界の遮断後に90度ccw回転が行われ、それによってDWがDW位置45からDW位置38に、及びDWがDW位置57からDW位置56に輸送される。この磁壁は
図3でDW111(DW位置38)及びDW112(DW位置56)と表記されている。発生したDWギャップDWL221及びDWL222は、十字で表示されている。
本発明の請求の範囲にあるように、この例で設けられている2個の磁壁111及び112は、外部磁界のcw回転を基準にして互いに540度の間隔を有している。
【0046】
本発明の別の構成において
図3bは、単一の磁壁を含む磁化パターンを有する
図2によるセンサ要素を示している。
図3bに示されているスパイラル20の磁壁伝導路は
図3aに示された磁壁伝導路と同一である。
図3bに示されているgnd接点70、Vcc接点80及び中間接点91、93及び95を有する360度接点接触は、
図2に示されたものによる360度接点接触と同一である。
図2及び
図3aによる構成形態と異なり、
図3bによる例では、単一のDWを含む磁化パターンMMを初期化するための狭隘部26を有する伝導路25は必要ない。この例では初期化は、例えば4段階で行われる。
1. n回転(この例では3回転)を計数するためのセンサシステムを組み込む前に、センサ要素は、核生成磁界強度より高く、例えば基準磁化28の方向を指す磁界に曝露される。これにより各巻きに左下から右上を指す対角線上にあるDW位置を占める2個のDWが生成する。これらの(ここでは6個の)DWポジションは既に
図2に示されている。
2. 続いてここでは図示されない機械的エンドストップのロックが解除されて、外部磁界(
図1に示された磁石4)がcw方向に270度回転する。それによって
図2に示されているDW位置58に配置されたDW116は尖端22を通ってスパイラルから出る。同時に
図2に示されているDW115がDW位置56からDW位置65に輸送され、尖端22を有する最後の直線セグメントの前に配置されている。
3. 3ccw回転によりDWはDW位置65からDW位置35に配置され、この輸送中にこのDWの前に配置されている全ての磁壁スパイラルが連続して尖端21を通って出る。DWがDW位置35に配置されている場合、これはスパイラル内に残された唯一のDWである。このDWは
図3bではDW111aと表記する。
4. このDW111aは続いてセンサ要素のゼロ位置に輸送される。ゼロ位置が(3cw回転を計数するための)DW位置35である場合は、初期化はエンドストップをロックして完了する。ゼロ位置がcw方向における1.5回転、及びccw方向における1.5回転を計数するためのDW位置47である場合は、DW111aは1.5cw回転でDW位置35からDW位置47に輸送されてエンドストップがロックされる。3ccw回転を計数するために、DW111aは3cw回転でDW位置35からDW位置65に輸送される。
【0047】
図3bによる構成の利点は、伝導路25を、従ってまた関連する2個のボンディング接点を不要にできることである。しかし問題点は純粋に機械的な初期化は高精度の角度で行わなければならないことである。スパイラルのDW核生成及び/又は消去回転の際の誤配置により、全てのDWがスパイラルから出て回転計数が不可能になり、または1個のDWの代わりに互いに180度の角度間隔を有する2個の磁壁がスパイラル内に残って、一対一で対応する回転計数が不可能になることが容易に起こり得る。しかし基本的には、この例で実施されているより多い巻き数が想定されている場合でも、
図3bによる構成が可能である。本発明の枠内で設けられる磁壁の発生又は所定の消去のための手段は、この実施形態では、DW発生時に核生成磁界強度より高い磁界強度を有する外部磁界と、所望されない磁壁を両側が開いたスパイラルから追い出す機械的手段とによって形成されている。
【0048】
本発明の請求の範囲内で使用される回転センサ2の構成の多用途性を、使用される磁壁伝導路に関して具体的に説明するために、
図4による第2の原理的実施例を用いる。
図4は、ここでは4巻きクローズドループ27からなる回転センサ2の、本発明による別の原理的な構成を示す。2個のDW111及びDW112を540度の角度間隔で含む磁化パターンが、狭隘部26を有する伝導路25で初期化された。ループ27を形成するGMR層スタックの基準方向28は、正方形スパイラルに対して対角線状であり、左下から右上を指している。このループは
図2におけるスパイラルと同様に、1個の共通のgnd接点70、1個の共通のVcc接点80、及びVcc接点からgnd接点まで結ぶ線の右半分に局在している4個の中間接点91、93、95及び97と電気的に接触する。
センサ要素の磁化状態は、ここでも4個のホイートストンハーフブリッジによる電位測定によって読み出される。
ホイートストンハーフブリッジWHB1は、中間接点91、gnd接点70及びVcc接点80を有するウェブ33及び34を形成する。
ホイートストンハーフブリッジWHB2は、中間接点93、gnd接点70及びVcc接点80を有するウェブ43及び44を形成する。
ホイートストンハーフブリッジWHB3は、中間接点95、gnd接点70及びVcc接点80を有するウェブ53及び54を形成する。
ホイートストンハーフブリッジWHB4は、中間接点97、gnd接点70及びVcc接点80を有するウェブ63及び64を形成する。
各巻きは1個のホイートストンハーフブリッジと配線接続されている。
この例でも2個の隣接する磁壁DW111とDW112との間隔は、cw方向に見て540度である。
【0049】
図5は、本発明の課題を達成するボンド接点削減の例を
図4に基づいて、回転センサのチップをより完全な表現で示す。
図5は、ボンディング接点を有するチップ202上にある
図4による回転センサ2を示している。GMR層スタックの基準方向28は正方形スパイラルに対して対角線状で、左下から右上を指している。ボンディング接点270はgnd接点70と結合し、ボンディング接点291は中間接点91と結合し、ボンディング接点293は中間接点93と結合し、ボンディング接点295は中間接点95と結合し、ボンディング接点297は中間接点97と結合し、ボンディング接点280はVcc接点80と結合し、ボンディング接点225a及び225bは狭隘部26を有する伝導路25の端部と結合している。ボンディング接点の大きさと数が実質的にチップの大きさを決定する。この例では本発明による360度接点接触により4個のボンディング接点が削減された。この効果は、より大きい回転数を計数するためにセンサ2により高い巻き数を備えると一層顕著になる。30回転用の回転カウンタにおいて、新しい方式の接点接触、即ち本発明による「360度接点接触」では、従来先行技術により必要とされた62個のボンディング接点(即ちVcc+gnd+60中間接点)の代わりに最大32個(Vcc+gnd+30中間接点)のボンディング接点しか必要なく、或いは5重化の場合は22個のボンディング接点(即ち5Vcc+5gnd+12中間接点)の代わりに16個のボンディング接点(即ち5Vcc+5gnd+6中間接点)しか必要とされない。ここでは詳述しないホイートストンハーフブリッジ信号の多重読出しはMHz範囲のクロック周波数で相次いで、いわば同時に行なわれ、測定間隔はkHz範囲にある。これに伴いボンディング接点は48%若しくは27%に減少する。チップ面積は実質的にスパイラル接点と結合しているボンディング接点の大きさと数によって決まり、これによりセンサ要素当りのチップ面積は、レイアウトシミュレーションに基づいて例示的に把握されたように25%若しくは10%減少する。
【0050】
図6は、
図4及び
図5による4個のホイートストンブリッジWB1〜WB4で形成された回転センサ2の回路を示す。ウェブ抵抗器は
図2で使用されたウェブ番号に従いRij番号を付けた。ウェブ抵抗器が1個のホイートストンハーフブリッジを形成する。ホイートストンフルブリッジを形成するために、これらのウェブ抵抗器は、例えばセンサ要素内に含まれない外部の2個の追加の非磁気抵抗型の固定抵抗器と接続される。これらの抵抗器は、
図6で番号の前に基準抵抗器を表す“ref”を付けている。ホイートストンブリッジWB1は抵抗器133(R33)、134(R34)、233(Rref33)及び234(Rref34)からなる。抵抗器133及び134は、ループ27の第1の最も外側の巻きからなるウェブである。基準抵抗器233及び234は、センサ要素の外部にある固定抵抗器である。
ホイートストンブリッジWB2は、抵抗器143(R43)、144(R44)、243(Rref43)及び244(Rref44)からなる。抵抗器143及び144は、ループ27の第2巻きからなるウェブである。基準抵抗器243及び244は、センサ要素の外部にある固定抵抗器である。
ホイートストンブリッジWB3は、抵抗器153(R53)、154(R54)、253(Rref53)及び254(Rref54)からなる。抵抗器153及び154は、ループ27の第3巻きからなるウェブである。基準抵抗器253及び254は、センサ要素の外部にある固定抵抗器である。
ホイートストンブリッジWB4は、抵抗器163(R63)、164(R64)、263(Rref63)及び264(Rref64)からなる。抵抗器163及び164は、ループ27の第4の最も内側の巻きからなるウェブである。基準抵抗器263及び264は、センサ要素の外部にある固定抵抗器である。
さて、本発明の枠内で、他の全ての例におけるように、全てのホイートストンブリッジの信号レベルはいわば同時に把捉されて、表形式でメモリ9に連続的に記憶され、そうして後続の象限別にメモリ10に記憶された目標値との比較に提供される。
【0051】
本発明の第3の原理的実施例が、
図7に図示されている。
図7は、回転方向が等しい2個のほぼ同じ大きさの部分スパイラルから形成されたスパイラル20からなる回転センサ2を示している。この例ではスパイラルの端部は、尖端21及び22をなしている。GMR層スタックの基準方向28は正方形スパイラルに対して対角線状に向けられており、左下から右上を指している(スパイラル中央の矢印参照)。この例ではスパイラルは次の5個のホイートストンハーフブリッジWHB1〜WHB5によって電気的に読み出される。
● WHB1:gnd接点71と中間接点91とVcc接点81との間のウェブ(巻き1)
● WHB2:gnd接点71と中間接点93とVcc接点81との間のウェブ(巻き2)
● WHB3:gnd接点72と中間接点95とVcc接点82との間のウェブ(巻き3)
● WHB4:gnd接点72と中間接点97とVcc接点82との間のウェブ(巻き4)
● WHB5:gnd接点72と中間接点99とVcc接点82との間のウェブ(巻き5)。
【0052】
この例では狭隘部26を有する電気接点25によって、既述の通り2個の磁壁を540度の角度間隔で含む磁化パターンが初期化される。磁壁DW111及びDW112のポジションは、この例では回転数ゼロを表す。DW111とDW112の間には、2個の磁壁の対消滅によって生じた2個のDWギャップDWL221及びDWL222があり、隣接する磁壁DW111とDW112の間隔はcw方向で>360度、ここでは再び540度に調整されている。
【0053】
WHB1及びWHB2におけるウェブの磁化方向はccwであり、WHB3、WHB4及びWHB5におけるウェブの磁化方向はcwである。この例では5個のホイートストンハーフブリッジの信号レベルは、GMR層スタックの基準方向28に基づき次の通りである。
● WHB1(巻き1): L
● WHB2(巻き2): L
● WHB3(巻き3): H
● WHB4(巻き4): H
● WHB5(巻き5): H
【0054】
電子読出し装置は、5個のハーフブリッジの全ての測定された信号レベルを、例えば巻き1から巻き5までの信号レベルシーケンス(SPF)として同時に処理し、これらをメモリ10に記憶された目標値と比較する。図示された例では
図7に対するSPFは、L/L/H/H/Hである。計数された回転の検知にとって決定的なのは、磁化パターンMM、即ちDW111及びDW112のポジションと相関しているSPFの部分である。この部分は以下にSPF−MMと表記し、2個の信号レベルL/Lを有している。回転が行われてMMがスパイラル内を移動すると、SPF−MMもSPFの内部で新たに一対一で対応して位置決めされる(
図9参照)。
図7に図示された例に従うセンサ要素により、3回転が一対一で対応して計数できる。
【0055】
分かりやすくするために、
図8は3cw回転後の磁壁位置を示す。DW111とDW112及びこれらの間にあるDWギャップDWL221及びDWL222は、12個のDW位置、即ち3巻きだけ更に輸送されて
図8に示されたポジションに行く。従ってDW111及びDW112のポジションは回転数3を表している。WHB4及びWHB5におけるウェブの磁化方向はccwであり、WHB1、WHB2及びWHB3におけるウェブの磁化方向はcw、であり、ここでも再び磁壁伝導路上の矢印によって暗示されている。3回の360度回転後のホイートストンハーフブリッジの信号レベルは、次の通りである。
● WHB1(巻き1): H
● WHB2(巻き2): H
● WHB3(巻き3): H
● WHB4(巻き4): L
● WHB5(巻き5): L
【0056】
従って3回転後のSPFは、H/H/H/L/Lである。
図7のSPF(L/L/H/H/H)と比較すると、レベルL/LのSPF−MMは、SPFの内部で回転を計数するごとに1ポジション更に右に輸送されている。これは回転を計数するごとに磁壁DW111及びDW112が次の巻きに更に輸送されることと相関している。センサ要素2を巻き方向が等しい2個の部分スパイラルとして構成する利点は、例えば
図3による構成と比べて全スパイラルをより小さく構成でき、それにより必要なチップ面積を削減できることである。
【0057】
計数中に各象限について把握され記憶された信号レベルシーケンスを記録されている磁壁パターンに従って評価及び判定する方法を分かりやすくするために、本発明による評価方法の本質的な部分を
図7及び
図8による例に基づいてより詳しく示した
図9を用いる。
図9は、
図7及び
図8のセンサ要素について、象限センサ又は角度センサ3によって設定された磁界角度象限1(
図9a)、磁界角度象限2(
図9b)、磁界角度象限3(
図9c)及び磁界角度象限4(
図9d)に関して、それぞれ
図7に従い巻きW1〜W5における回転0、1、2及び3に対する目標値信号レベルシーケンスを表形式で示す。これにより使用される具体的なセンサについて、常に一対一で対応するパターンが存在する。各象限について固有の有意なSPF−MMが存在し、各回転について固有の一対一で対応するSPFが存在する。象限Q1に対する有意なSPF−MMはL/L、Q2はM/L、Q3はL及びQ4はL/Mであり、ホイートストンハーフブリッジ信号レベルについてHは高レベル、Mは中レベル、及びLは低レベルを表す。上記の有意なSPF−MMは、
図9の表ではそれぞれ中灰色−又は濃灰色で際立たせてある。その結果として、本発明により各個々の象限について全ての許容可能な(即ち計数可能な)回転に対する全てのSPFを含んだ少なくとも1個のサブテーブルが保持され、これらが
図9a〜
図9dに例示的に記載されている。電子読出し装置11は最初に、システムが現在入っている磁界角度象限、即ち(例えば
図1に従う)回転要素4の位置を決定する。この決定後、電子読出し装置11は選択された象限に関連するサブテーブルを探し、その後で測定されたSPFと、対応する象限のSPF目標値とを比較する。この対応する象限はこの例では象限1(
図9a)であろう。電子評価装置11はその後直ちにこのサブテーブルに基づきメモリ9内の測定値とメモリ10内に保持されている目標値信号レベルシーケンスとの比較により、関連する回転数(SPFとの一致)を把握し、次にこれを出力/表示にもたらすことができる。この例では、
図7による信号レベルシーケンスが回転数ゼロに対応し、
図8による信号レベルシーケンスが回転数3と対応していることは、上記の説明と比較対照することによって容易に見て取れる。他の磁界角度象限に関連するサブテーブルを設定する場合も、同様に処理される。
【0058】
図10は、回転カウンタシステム1が任意ではあるが未知の回転数を把握する場合の、回転数の決定を手順
図400で模式的に示している。
● 測定サイクルの開始後に、
● 電子装置6が第1ステップで角度センサ(WS)2及び回転数センサ(US)3を読み出し、それらの値をメモリ8および9に値W8(8a)及び表T9(9a)として記憶し、
● 第2ステップで、処理ユニット11により角度センサ測定値W8(8a)から関連する磁界角度象限Q1、Q2、Q3又はQ4が把握され、
● 第3ステップで、把握された象限(例えばQ1)に対して、目標値SPFを含むメモリ10から把握された象限に対するサブテーブル(例えばS1Q1(10a))が許容回転i(0≦i≦n)についてロードされ、
● 第4ステップで処理ユニット11により回転インデックスiは0に設定され、
● 第5ステップは回転iについて処理ユニット11による表T9(9a)内の測定されたSPFと目標値SPF(例えばサブテーブルS1Q1(10a))との反復比較であり、
○ それらの値が一致すれば、処理ユニット11は第6ステップで回転数iを出力し、又は
○ それらの値が一致しなければ、第6ステップで回転インデックスiは1だけ高められ、及び
○ 第7ステップでi>nであるかチェックされ、
■ i>nであれば、処理ユニット11は第8ステップでエラー値を出力し、
■ そうでない場合は、回転i+1について第5ステップが繰り返される。
測定サイクルは回転数又はエラー値の出力をもって終了する。測定された信号レベルシーケンスと目標値として記憶されている信号レベルシーケンスとの間で全く一致が認められない場合は、エラー値のみが出力される。これは回転センサに記録された磁壁パターン外部の影響、例えば過度に強い極端な妨害磁界などによって変化したことを意味する。そのような極端に稀な場合には、所望される磁化パターンが新たに回転センサ2に書き込まれなければならないであろう。前述した電子コンポーネントによって計数可能な回転数を決定する全手順は、回転センサ2に作用する外部磁界が変化する時間を実質的に下回る時間内に起こる。典型的にSPFの測定及び評価はMHzクロック周波数(即ち1μs以内)に行なわれるのに対し、磁界は最大1KHzで回転する。従って1μs以内に磁界の方向は最大0.3度回転する。この高い評価速度により、無電流動作においてセンサ2内で磁化パターンを移動させて把握された回転数を数10nsないし最大1μsで表示することも可能である。
【0059】
図1では1aで示した本来の回転カウンタの本発明にとって本質的なすべてのアセンブリが枠の中に入っているのに対し、以下の図は本発明による解決の広い用途を明らかにするものである。
【0060】
図11は、
図1によるシャフト5上の磁石4の代わりに、磁極4a〜4lを有する磁極ホイール5aと組み合わせた
図1の回転カウンタ1aを示す。磁極ホイール5aが回転すると、角度センサWS3及び回転センサUS2の場所に回転磁界が形成されて、磁化パターンの磁壁をセンサ要素2内で動かす。従って各磁極ホイールポジションは角度センサ測定値と回転カウンタ測定値に対応している。回転カウンタは通過移動する磁極対の数を計数する。これは
図1による磁石4の回転の計数と同様である。
【0061】
図12は、
図1によるシャフト5上の磁石4の代わりに、磁極4a〜4lを有するリニアスケール5bと組み合わせた
図1の回転カウンタ1aを示す。この例では12個の磁極(6N極と交互に6S極)4a〜4lを有するリニアスケール5bは、磁極がこれより多い又は少ない他のリニアスケールをも代表している。スケール5bが回転カウンタ1aに対して相対的に通過移動すると、角度センサWS3及び回転センサUS2の場所に回転磁界が形成されて、記録された磁化パターンの磁壁をセンサ要素2内で動かす。従って各リニアスケールポジションは角度センサ測定値と回転カウンタ−測定値に対応している。回転カウンタは通過移動する磁極対の数を計数する。これは
図1による磁石4の回転の計数と同様である。
【0062】
最後に、
図13a+bは、例示的に本発明による「360度接点接触」を形成するTMR接点を有するセンサ要素2の使用を示す。この場合にスパイラル27は軟磁性材料、例えばパーマロイからなる。
図13aは、例示的な4巻きクローズドループ27を平面図で示す。センサ要素2は、4個のホイートストンハーフブリッジWHB1〜WHB4による電位測定によって読み出される。
● WHB1は、gndトンネル接点71を有するウェブ33、Vccトンネル接点81を有するウェブ34、並びにウェブ33とウェブ34の間の四分円状の角及びこれらのウェブの部分を覆う中間接点91からなる。
● WHB2は、gndトンネル接点72を有するウェブ43、Vccトンネル接点82を有するウェブ44、並びにウェブ43とウェブ44の間の四分円状の角及びこれらのウェブの部分を覆う中間接点93からなる。
● WHB3は、gndトンネル接点73を有するウェブ53、Vccトンネル接点83を有するウェブ54、並びにウェブ53とウェブ54の間の四分円状の角及びこれらのウェブの部分を覆う中間接点95からなる。
● WHB4は、gndトンネル接点74を有するウェブ63、Vccトンネル接点84を有するウェブ64、並びにウェブ63とウェブ64の間の四分円状の角及びこれらのウェブの部分を覆う中間接点97からなる。(
図13aに記されていない参照符号は
図14から見て取れる。)
【0063】
図13bは、トンネル接点を有する全てのウェブを代表して、ウェブ33を
図13aの横断面図で示す。ウェブ33は軟磁性材料501、例えばパーマロイからなり、酸化物層504a及び504bによって保護されている。ウェブ中央ではgndトンネル接点71が配置されている。トンネル接点は、パーマロイ層501、トンネルバリア502(例えばAl
2O
3又はMgO)、基準方向(
図13aの28)が書き込まれた硬磁性層スタック503、及び金電極505からなる。ウェブ33の右側には直接パーマロイ501上に金製中間接点91が載っている。トンネル接点における電流は、電極505から硬磁性層スタックとバリア502を通ってパーマロイ501に流れる。典型的なTMR接点は、TMR接点内の軟磁性層及び硬磁性層の並行磁化と逆並行磁化の間で、即ち磁壁111、112のそれぞれのポジションに依存して>100%の抵抗変化を達成する。この例では本発明による磁壁パターンの初期化、並びに現在の回転数の評価及び決定は、
図5以下で既に説明されたのと同様の条件で行なわれるため、ここでは繰り返さない。
【0064】
図14は、抵抗が読み出される接点接触を変化させた
図13aの回転センサを示す。gnd接点71、72、73及び74、並びにVcc接点、81、82、83及び84を有するこのループは、それぞれ1巻き上のgnd接点およびVcc接点と電気的に接触する。TMR効果が利用されるようにするために、例えばVcc接点はそれぞれ軟磁性層と接触し、gnd接点はそれぞれ硬磁性層と接触しなければならず(
図13bで中間接点91が軟磁性層501と接触し、gndトンネル接点71が硬磁性層と接触するのと同様)、又はその逆でなければならない。接点は
図14から逸脱してウェブ上の角に配置する代わりに、好ましくは相対するウェブ上に配置できる。例えばウェブ3l、41、51及び61上のVcc接点81、82、83及び84と、ウェブ33、43、53及び63上のgnd接点71、72、73及び74である。
【0065】
センサ要素の磁化状態は、ここでは各個々の巻きの抵抗測定によって読み出される。
外側の第1巻きW1は、gnd接点71及びVcc接点81を有するウェブ3l、32、33及び34を形成する。
第2巻きW2は、gnd接点72及びVcc接点82を有するウェブ41、42、43及び44を形成する。
第3巻きW3は、gnd接点73及びVcc接点83を有するウェブ51、52、53及び54を形成する。
最も内側の第4巻きW4は、gnd接点74及びVcc接点84を有するウェブ61、62、63及び64を形成する。
この例でも2個の隣接する磁壁DW111とDW112の間の間隔は、cw方向に見て540度である。
【0066】
詳細な説明、実施例及び/又は以下の図面から認識される全ての特徴は、単独でも、互いに任意に組み合わせても本発明にとって本質的である。
【符号の説明】
【0067】
1 回転カウンタシステム
1a 回転カウンタ
2 回転センサUS
3 角度センサWS
4 磁石システム
4a、4c、4e、4g、4i、4k N極
4b、4d、4f、4h、4j、4l S極
5 回転シャフト
5a 磁極ホイール
5b リニアスケール
6 電子装置
7 電圧供給源
8 角度センサ測定値用メモリ
8a 角度センサ測定値W8
9 回転センサ測定値用メモリ
9a 回転センサ測定値の表T9
10 回転センサの表形式で記憶された目標値SPF(信号レベルシーケンス)のメモリ
10a−10d 第1〜第4磁界角度象限に対する目標値のサブテーブル
11 処理ユニット
20 スパイラル
21、22 スパイラルの尖端
25 磁化パターンを初期化するための伝導路
26 伝導路25内の狭隘部
27 多巻きクローズドループ
28 基準磁化の方向
3l、32、33、34 最も外側の第1巻きのウェブ
35、36、37、38 最も外側の第1巻き内のDW位置
41、42、43、44 第2巻きのウェブ
45、46、47、48 第2巻き内のDW位置
51、52、53、54 第3巻きのウェブ
55、56、57、58 第3巻き内のDW位置
63、64 第4巻きのウェブ
65 第4巻き内のDW位置
70、71、72、73、74 gnd接点
80、81、82、83、84 Vcc接点
91、93、95、97、99 種々の巻きの中間接点
111a 1磁壁を含むMM内における第1DW
111 2又は6磁壁を含むMM内における第1DW
112 2又は6磁壁を含むMM内における第2DW
113 6磁壁を含むMM内における第3DW
114 6磁壁を含むMM内における第4DW
115 6磁壁を含むMM内における第5DW
116 6磁壁を含むMM内における第6DW
133 第1巻き内の抵抗R33(ウェブ33)
134 第1巻き内の抵抗R34(ウェブ34)
143 第2巻き内の抵抗R43(ウェブ43)
134 第2巻き内の抵抗R44(ウェブ44)
153 第3巻き内の抵抗R53(ウェブ53)
154 第3巻き内の抵抗R54(ウェブ54)
163 第4巻き内の抵抗R63(ウェブ63)
164 第4巻き内の抵抗R64(ウェブ64)
202 センサ要素2を有するチップ
221、222 DWギャップ
225a 接点25と結合した第1のボンディング接点
225b 接点25と結合した第2のボンディング接点
233 第1巻きに対する外部抵抗器Rref33
234 第1巻きに対する外部抵抗器Rref34
243 第2巻きに対する外部抵抗器Rref43
244 第2巻きに対する外部抵抗器Rref44
253 第3巻きに対する外部抵抗器Rref53
254 第3巻きに対する外部抵抗器Rref54
263 第4巻きに対する外部抵抗器Rref63
264 第4巻きに対する外部抵抗器Rref64
270 gnd接点70と結合したボンディング接点
280 Vcc接点80と結合したボンディング接点
291 中間接点91と結合したボンディング接点
293 中間接点93と結合したボンディング接点
295 中間接点95と結合したボンディング接点
297 中間接点97と結合したボンディング接点
301 ウェブ51とウェブ44の間の拡大した角
302 四分円状の多角線
400 手順図
501 軟磁性層
502 トンネルバリア
503 硬磁性層スタック
504a 絶縁層
504b 絶縁層
505 トンネル接点上の金電極
【国際調査報告】