特表2019-502707(P2019-502707A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2019-502707癌をアピリモドで処置するためのバイオマーカー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-502707(P2019-502707A)
(43)【公表日】2019年1月31日
(54)【発明の名称】癌をアピリモドで処置するためのバイオマーカー
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/5377 20060101AFI20190104BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20190104BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20190104BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20190104BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20190104BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20190104BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20190104BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20190104BHJP
【FI】
   A61K31/5377
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61P13/12
   A61P17/00
   A61P9/00
   A61K45/00
   A61P35/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2018-535015(P2018-535015)
(86)(22)【出願日】2017年1月20日
(85)【翻訳文提出日】2018年7月17日
(86)【国際出願番号】US2017014308
(87)【国際公開番号】WO2017127661
(87)【国際公開日】20170727
(31)【優先権主張番号】62/281,341
(32)【優先日】2016年1月21日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】516104157
【氏名又は名称】ラム・セラピューティクス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】ゲイル,ソフィア
(72)【発明者】
【氏名】ビーハリー,ニール
(72)【発明者】
【氏名】ランドレット,ショーン
(72)【発明者】
【氏名】コンラッド,クリス
(72)【発明者】
【氏名】ベケット,ポール
(72)【発明者】
【氏名】ヘルナンデス,メアリーレンズ
(72)【発明者】
【氏名】シュイ,ティエン
(72)【発明者】
【氏名】ロスバーグ,ジョナサン・エム
(72)【発明者】
【氏名】リチェンステイン,ヘンリ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084AA23
4C084MA52
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA06
4C084ZB092
4C084ZB262
4C084ZC202
4C084ZC412
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC73
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA09
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA36
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZB26
4C086ZB27
(57)【要約】
本開示は、小眼球症(MiT)転写因子を過剰発現している癌細胞を有する対象においてアピリモドで癌を処置するための組成物および方法、ならびに関連の組成物および方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
小眼球症(MiT)転写因子を過剰発現している癌細胞を有する対象において癌を処置するための組成物であって、療法有効量のアピリモドまたはその医薬的に許容できる塩を含む前記組成物。
【請求項2】
アピリモドがアピリモド・ジメシレートである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
MiT転写因子が、TFEB、TFE3、TFEC、およびMITFからなる群から選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
MiT転写因子がTFEBまたはTFE3である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
癌が非ホジキンB細胞リンパ腫、腎細胞癌、メラノーマ、甲状腺癌、淡明細胞肉腫、胞巣状軟部肉腫、または血管周囲類上皮細胞腫瘍である、請求項3または4に記載の組成物。
【請求項6】
癌が腎細胞癌である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
腎細胞癌がTFEBトランスロケーションを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
TFEBトランスロケーションがt(6;11)(p21;q12)トランスロケーションである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
腎細胞癌が、乳頭状I型またはII型、色素嫌性、ハイブリッド、膨大細胞腫、トランスロケーション、血管筋脂肪腫、膨大細胞癌、髄様癌、および集合管癌からなる群から選択される、請求項6、7または8に記載の組成物。
【請求項10】
腎細胞癌が、淡明細胞型腎癌、移行上皮細胞癌、ウィルムス腫瘍(腎芽細胞腫)、腎肉腫、および良性(非癌性)腎腫瘍、腎腺腫、膨大細胞腫、および血管筋脂肪腫から選択される、請求項6、7または8に記載の組成物。
【請求項11】
腎癌がフォン・ヒッペル・リンドウ(VHL)遺伝子における変異を有する、請求項6に記載の組成物。
【請求項12】
さらに少なくとも1種類の追加の活性薬剤を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
少なくとも1種類の追加の活性薬剤が療法剤もしくは非療法剤、または療法剤と非療法剤の組合わせである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
少なくとも1種類の追加の活性薬剤が、プロテインキナーゼ阻害剤、PD−1/PDL−1経路阻害剤、チェックポイント阻害剤、白金ベースの抗新生物剤、トポイソメラーゼ阻害剤、ヌクレオシド代謝阻害剤、アルキル化剤、インターカレート剤、チューブリン結合剤、およびその組合わせからなる群から選択される療法剤である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
療法剤が血管内皮細胞増殖因子(VEGF)阻害剤である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
VEGF阻害剤が、スニチニブ、パゾパニブ、ベバシズマブ、ソラフェニブ、カボザンチニブおよびアキシチニブからなる群から選択される、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
療法剤がmTOR阻害剤である、請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
mTOR阻害剤がエベロリムスまたはテムシロリムスである、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
療法剤がプロテインキナーゼ阻害剤である、請求項14に記載の組成物。
【請求項20】
プロテインキナーゼ阻害剤がパゾパニブもしくはソラフェニブ、またはその組合わせである、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
療法剤がPD−1/PDL−1経路阻害剤である、請求項14に記載の組成物。
【請求項22】
療法剤が、ペンブロリズマブ(Keytruda)、アベルマブ、アテゾリズマブ(MPDL3280A)、ニボルマブ(BMS−936558)、ピジリズマブ(CT−011)、MSB0010718C、およびMEDI4736から選択される、請求項14に記載の組成物。
【請求項23】
さらに、アピリモドの1以上の副作用を改善するように選択された非療法剤を含む、請求項1〜22のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
少なくとも1種類の追加の活性薬剤が非療法剤である、請求項13に記載の組成物。
【請求項25】
非療法剤が、オンダンセトロン、グラニセトロン、ドラセトロン、およびパロノセトロンからなる群から選択される、請求項23または24に記載の組成物。
【請求項26】
非療法剤が、ピンドロールおよびリスペリドンからなる群から選択される、請求項23または24に記載の組成物。
【請求項27】
組成物が、対象の癌細胞においてPIKfyveキナーゼ活性を阻害するのに有効な量のアピリモド・ジメシレートを含む、請求項1〜26のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
癌が標準治療に対して治療抵抗性であるか、あるいは転移性である、請求項1〜27のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項29】
組成物が、経口または静脈内投与に適した剤形である、請求項1〜17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項30】
1種類以上の小眼球症(MiT)転写因子を過剰発現している癌細胞を有する対象において癌を処置するための方法であって、アピリモドまたはその医薬的に許容できる塩を含む療法有効量の組成物を対象に投与することを含む前記方法。
【請求項31】
さらに、癌細胞の試料を1種類以上のMiT転写因子の過剰発現についてアッセイする前処理工程を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
アッセイが、TFEB、TFE3、TFEC、およびMITFのうち1種類以上の検出を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
アッセイが、TFEBまたはTFE3の検出を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
アッセイが免疫組織化学を用いて実施される、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
アピリモドがアピリモド・ジメシレートである、請求項30〜34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
療法有効量のアピリモドが、対象の癌細胞においてPIKfyveキナーゼ活性を阻害するのに有効な量である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
癌細胞の増殖を阻害するための方法であって、癌細胞を、細胞の増殖を阻害するのに有効な量のアピリモドまたはその医薬的に許容できる塩と接触させることを含む前記方法。
【請求項38】
癌細胞の生存を阻害するための方法であって、癌細胞を、癌細胞においてPIKfyveキナーゼ活性を阻害するのに有効な量のアピリモドまたはその医薬的に許容できる塩と接触させることを含む前記方法。
【請求項39】
癌細胞がMiT転写因子を過剰発現している、請求項37または38に記載の方法。
【請求項40】
MiT転写因子が、TFEB、TFE3、TFEC、およびMITFから選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
MiT転写因子がTFEBまたはTFE3である、請求項40に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
[01] 本出願は、U.S. Provisional Patent Application Serial No. 62/281,341, 2016年1月21日出願に基づく優先権を主張し、その内容全体を本明細書に援用する。
【0002】
開示の分野
[02] 本開示は、アピリモド(apilimod)の組成物、およびそれを癌の処置に使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[03] アピリモド(STA−5326とも呼ばれる,以下、“アピリモド”)はIL−12およびIL−23の有効な転写阻害剤として認識されている。参照:たとえば、Wada et al. Blood 109 (2007): 1156-1164参照:。IL−12およびIL−23は、免疫細胞、たとえばB細胞およびマクロファージが抗原刺激に応答して正常に産生する炎症性サイトカインである。自己免疫障害、および慢性炎症を特徴とする他の障害は、一部はこれらのサイトカインの不適正な産生を特徴とする。免疫細胞において、アピリモドによるIL−12/IL−23転写の選択的阻害はホスファチジルイノシトール−3−ホスフェート 5−キナーゼ(PIKfyve)へのアピリモドの直接結合により仲介されることが最近示された。参照:たとえば、Cai et al. Chemistry and Biol. 20 (2013):912-921。PIKfyveは、自然免疫において重要であるToll様受容体シグナル伝達に際して役割を果たす。
【0004】
[04] アピリモドは、免疫調節剤およびIL−12/IL−23の特異的阻害剤としてのそれの活性に基づいて、自己免疫性および炎症性の疾患および障害を治療するのに有用なものとして提唱された。参照:たとえば、US 6,858,606および6,660,733(IL−12またはIL−23の過剰産生を特徴とする疾患および障害、たとえば関節リウマチ、敗血症、クローン病、多発性硬化症、乾癬、またはインスリン依存性糖尿病を治療するのに有用とされるアピリモドを含めた一群のピリミジン化合物を記載)。同様に、アピリモドは、c−RelまたはIL−12/23を阻害するそれの活性に基づいて特定の癌を治療するために、特にこれらのサイトカインが異常な細胞増殖を促進する役割を果たすと考えられる癌において有用であると示唆された。参照:たとえば、WO 2006/128129、およびBaird et al., Frontiers in Oncology 3:1 (それぞれ2013)。
【0005】
[05] アピリモドの3つの臨床試験がそれぞれ、自己免疫疾患および炎症性疾患におけるそれの潜在効力に注目した。それらの試験は、乾癬、関節リウマチ、およびクローン病を伴う患者において実施された。乾癬を伴う患者におけるオープンラベル臨床試験は、アピリモドの経口投与がTH1−およびTH17−仲介炎症性疾患の治療のためのIL−12/IL−23合成阻害を支持する免疫調節活性を示すと結論づけた。Wada et al., PLosOne 7:e35069 (April 2012)。しかし、関節リウマチ、およびクローン病における対照付き試験の結果は、アピリモドによるIL−12/IL−23阻害が臨床改善になるという考えをこれらの適応症のいずれにおいても支持しなかった。関節リウマチを伴う患者におけるアピリモドのランダム化二重盲検プラセボ対照付き第II相臨床試験において、アピリモドは滑膜のIL−12およびIL−23発現を変化させることができなかった。Krauz et al., Arthritis & Rheumatism 64:1750-1755 (2012)。その著者らは、“結果は、アピリモドによるIL−12/IL−23阻害がRAにおける確固たる臨床改善を誘導できるという見解を支持しない”と結論づけた。同様に、活動性クローン病の治療についてのアピリモドのランダム化二重盲検プラセボ対照付き試験は、アピリモドは良好に耐容されたけれどもプラセボを上回る有効性を示さなかったと結論づけた。Sands et al Inflamm Bowel Dis. 2010 Jul;16(7):1209-18。
【0006】
[06] 哺乳類ラパマイシン標的(mammalian target of rapamycin)(mTOR)経路は、細胞成長、細胞増殖、代謝、タンパク質合成、およびオートファジーを含めた多数の生理的機能に関与する重要な細胞シグナル伝達経路である(La Plante et al Cell 2012, (149 (2), pp.274-293)。mTORは、アミノ酸、ストレス、酸素、エネルギー、および成長因子のレベルを伝達する細胞内と細胞外の情報(cue)を統合し、これらの環境情報に対する細胞応答を調節する、キナーゼである。癌、肥満症、糖尿病、および神経変性を含めた広範な障害および疾患においてmTOR脱調節の関与が指摘されている。これらの疾患のうちあるものを治療するための薬物ターゲットとして、mTOR経路の特定の成分が探査された。しかし、療法効力はたとえばある種の癌の治療に限定され、あるmTOR阻害剤は代謝に対する有害作用をもつことが示された。結節性硬化症複合体腫瘍抑制遺伝子(tuberous sclerosis complex tumor suppressor gene)TSC1およびTSC2はmTORの負の調節物質である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US 6,858,606
【特許文献2】US 6,660,733
【特許文献3】WO 2006/128129
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Wada et al. Blood 109 (2007): 1156-1164
【非特許文献2】Cai et al. Chemistry and Biol. 20 (2013):912-921
【非特許文献3】Baird et al., Frontiers in Oncology 3:1 (2013)
【非特許文献4】Wada et al., PLosOne 7:e35069 (April 2012)
【非特許文献5】Krauz et al., Arthritis & Rheumatism 64:1750-1755 (2012)
【非特許文献6】Sands et al Inflamm Bowel Dis. 2010 Jul;16(7):1209-18
【非特許文献7】La Plante et al Cell 2012, (149 (2), pp.274-293
【発明の概要】
【0009】
[07] 本発明者らは、mTOR経路が構成性活性であるTSCヌル細胞においてアピリモドが細胞毒性の高い薬剤であることを先に示した。参照:WO 2015/112888、その内容全体を本明細書に援用する。本発明者らは、本発明者らの知見を拡大して、多くの癌細胞系がアピリモド誘導による細胞毒性に対して感受性であることを示した。B細胞性リンパ腫はアピリモドに対して最も感受性であったが、その感受性は予想外にc−Rel発現、IL−12発現、またはIL−23発現と相関していなかった。以前の研究は、異常な細胞増殖の促進においてc−Relおよび/またはIL−12/23発現が重要である癌に対してアピリモドは有用であろうと示唆していたので、これは予想外であった。さらなる研究において本発明者らは、そうではなく、アピリモドの細胞毒性は、それが細胞内トラフィッキングを阻害し、その結果アポトーシスが増大することから生じたことを示した。この活性は、IL−12/23産生を阻害することによるアピリモドの免疫調節活性に基づいて予測することはできなかった。
【0010】
[08] 本開示は、一部は、転写因子TFEBがアピリモドに対する感受性を増強するという意外な知見に基づく。TFEBは小眼球症(microphthalmia)(MiT)転写因子ファミリーのメンバーであり、よって高レベルの1種類以上のMiT転写因子を伴うと同定された癌はアピリモドによる処置に対する良い候補であることになる。したがって、本開示はアピリモドに対して感受性である癌を同定するための方法を提供し、その方法は癌に由来する癌細胞試料を1種類以上のMiT転写因子の発現についてアッセイすることを含む。複数の態様において、MiT転写因子はTFEB、TFE3、TFEC、およびMITFから選択される。複数の態様において、MiT転写因子はTFEBおよびTFE3、または両方から選択される。
【0011】
[09] 一側面において、本開示は1種類以上のMiT転写因子を過剰発現している癌細胞を有する対象において癌を処置するための組成物も提供し、その組成物は療法有効量のアピリモドまたはその医薬的に許容できる塩を含む。複数の態様において、アピリモドはアピリモド・ジメシレートである。複数の態様において、組成物は経口または静脈内投与に適した剤形である。複数の態様において、組成物はさらに少なくとも1種類の追加の活性薬剤を含み、それは療法剤もしくは非療法剤、または療法剤と非療法剤の組合わせから選択できる。複数の態様において、少なくとも1種類の追加の活性薬剤は、プロテインキナーゼ阻害剤、白金ベースの抗新生物剤、トポイソメラーゼ阻害剤、ヌクレオシド代謝阻害剤、アルキル化剤、インターカレート剤、チューブリン結合剤、およびその組合わせからなる群から選択される療法剤である。複数の態様において、療法剤はプロテインキナーゼ阻害剤である。複数の態様において、プロテインキナーゼ阻害剤はパゾパニブ(pazopanib)もしくはソラフェニブ(sorafenib)、またはその組合わせである。組成物はさらに、アピリモドの1以上の副作用を改善するように選択された非療法剤を含むことができる。複数の態様において、非療法剤はオンダンセトロン、グラニセトロン、ドラセトロン、およびパロノセトロンからなる群から選択される。複数の態様において、非療法剤はピンドロール(pindolol)およびリスペリドン(risperidone)からなる群から選択される
[10] 複数の態様において、処置される癌は標準治療に対して治療抵抗性であるか、あるいは転移性である。
【0012】
[11] 複数の態様において、癌は非ホジキンB細胞リンパ腫、腎細胞癌、メラノーマ、淡明細胞肉腫(clear cell sarcoma)、胞巣状軟部肉腫(alveolar soft part sarcoma)、または血管周囲類上皮細胞腫瘍(perivascular epitheloid tumor)から選択される。複数の態様において、癌は腎癌である。複数の態様において、腎癌は淡明細胞型腎癌、移行上皮細胞癌(transitional cell carcinoma)、ウィルムス腫瘍(Wilms tumor)(腎芽細胞腫)、腎肉腫、および良性(非癌性)腎腫瘍、腎腺腫、膨大細胞腫(oncocytoma)、および血管筋脂肪腫(angiomyolipoma)から選択される。複数の態様において、腎細胞癌は乳頭状I型またはII型、色素嫌性(chromophobe)、ハイブリッド、膨大細胞腫、トランスロケーション、血管筋脂肪腫、膨大細胞(oncocytic)癌、髄様癌、および集合管癌から選択される。複数の態様において、腎癌はTFEBトランスロケーションを含む。複数の態様において、TFEBトランスロケーションはt(6;11)(p21;q12)トランスロケーションである。複数の態様において、腎癌はフォン・ヒッペル・リンドウ(von Hippel-Lindau)(VHL)遺伝子における変異をもつ。
【0013】
[12] 一側面において、本開示は1種類以上のMiT転写因子を過剰発現している癌細胞を有する対象において癌を処置するための方法を提供し、その方法は、対象に療法有効量のアピリモド、またはアピリモドを含む組成物を投与することを含み、その際、アピリモドはアピリモドそのもの(すなわち、アピリモド遊離塩基)、その医薬的に許容できる塩、溶媒和物、包接化合物、水和物、多型、プロドラッグ、アナログまたは誘導体である。一態様において、アピリモドはアピリモド遊離塩基またはアピリモド・ジメシレートである。複数の態様において、本方法はさらに、対象からの生体試料、すなわち癌細胞を含有する生体試料において、1種類以上のMiT転写因子の発現をアッセイする前処理工程を含む。MiT転写因子はTFEB、TFE3、TFEC、およびMITFから選択できる。複数の態様において、MiT転写因子はTFEBおよびTFE3、または両方から選択できる。
【0014】
[13] 複数の態様において、本方法はさらに、少なくとも1種類の追加の活性薬剤を対象に投与することを含む。少なくとも1種類の追加の活性薬剤は療法剤または非療法剤であってよい。少なくとも1種類の追加の活性薬剤は、アピリモドを含む単一剤形で、またはアピリモドとは別個の剤形で投与できる。複数の態様において、少なくとも1種類の追加の活性薬剤はプロテインキナーゼ阻害剤、白金ベースの抗新生物剤、トポイソメラーゼ阻害剤、ヌクレオシド代謝阻害剤、アルキル化剤、インターカレート剤、チューブリン結合剤、PD−1/PDL−1経路阻害剤およびその組合わせからなる群から選択される療法剤である。複数の態様において、療法剤はプロテインキナーゼ阻害剤である。複数の態様において、プロテインキナーゼ阻害剤はパゾパニブもしくはソラフェニブ、またはその組合わせである。複数の態様において、少なくとも1種類の追加の活性薬剤は、ソラフェニブ(Nexavar(登録商標))、スニチニブ(sunitinib)(Sutent(登録商標))、テムシロリムス(temsirolimus)(Torisel(登録商標))、エベロリムス(everolimus)(Afinitor(登録商標))、ベバシズマブ(bevacizumab)(Avastin(登録商標))、パゾパニブ(Votrient(登録商標))、アキシチニブ(axitinib)(Inlya(登録商標))およびその組合わせからなる群から選択される療法剤である。複数の態様において、療法剤はPD−1/PDL−1経路阻害剤である。複数の態様において、PD−1/PDL−1経路阻害剤はペンブロリズマブ(pembrolizumab)(Keytruda)、アベルマブ(avelumab)、アテゾリズマブ(atezolizumab)(MPDL3280A)、ニボルマブ(nivolumab)(BMS−936558)、ピジリズマブ(pidilizumab)(CT−011)、MSB0010718C、およびMEDI4736から選択される。
【0015】
[14] 複数の態様において、少なくとも1種類の活性薬剤はアピリモドの1以上の副作用を改善するように選択された非療法剤である。複数の態様において、非療法剤はオンダンセトロン、グラニセトロン、ドラセトロン、およびパロノセトロンからなる群から選択される。一態様において、非療法剤はピンドロールおよびリスペリドンからなる群から選択される。一態様において、アピリモド組成物の剤形は経口投与剤形である。他の態様において、アピリモド組成物の剤形は静脈内投与に適したものであり、投与は単回注射または点滴バッグによる。
【0016】
[15] 一態様において、対象はヒト癌患者である。一態様において、アピリモドによる処置を必要とするヒト癌患者は、その癌が標準化学療法計画に対して治療抵抗性であるものである。一態様において、アピリモドによる処置を必要とするヒト癌患者は、標準化学療法計画で処置した後にその癌が再発した者である。一態様において、癌は腎癌である。一態様において、腎癌は移行上皮細胞癌、ウィルムス腫瘍(腎芽細胞腫)、腎肉腫、および良性(非癌性)腎腫瘍、腎腺腫、膨大細胞腫、および血管筋脂肪腫から選択される。一態様において、腎癌は淡明細胞型腎癌である。
【0017】
[16] 一態様において、標準化学療法計画はイブルチニブ(ibrutinib)、リツキシマブ(rituximab)、ドキソルビシン(doxorubicin)、プロドニゾロン(prednisolone)、ビンクリスチンン(vincristine)、ベルケード(velcade)、シクロホスファミド(cyclophosphamide)、デキサメタゾン(dexamethasone)およびエベロリムスからなる群から選択される1種類以上の療法剤を含む。
【0018】
[17] 一態様において、本方法はアピリモドおよび腎癌の処置のための化学療法計画を含む併用療法を用いて腎癌を処置するための方法である。複数の態様において、化学療法計画はPD−1/PDL−1経路阻害剤を含む。複数の態様において、PD−1/PDL−1経路阻害剤はペンブロリズマブ(Keytruda、MK−3475)、アベルマブ、アテゾリズマブ(MPDL3280A)、ニボルマブ(BMS−936558)、ピジリズマブ(CT−011)、MSB0010718C、およびMEDI4736から選択される。
【0019】
[18] 他の態様において、本方法はアピリモドおよび腎癌の処置のための免疫療法計画を含む併用療法を用いて腎癌を処置するための方法である。一態様において、免疫療法計画はインターロイキン−2(IL−2)計画またはアルファ−インターフェロン計画である。一態様において、免疫療法計画はPD−1/PDL−1経路阻害剤を含む。複数の態様において、PD−1/PDL−1経路阻害剤はペンブロリズマブ(Keytruda,MK−3475)、アベルマブ、アテゾリズマブ(MPDL3280A)、ニボルマブ(BMS−936558)、ピジリズマブ(CT−011)、MSB0010718C、およびMEDI4736から選択される。
【0020】
[19] ある態様において、本方法はアピリモドおよび腎癌の処置のためのプロテインキナーゼ阻害剤計画を含む併用療法を用いて腎癌を処置するための方法である。一態様において、プロテインキナーゼ阻害剤計画はソラフェニブ、スニチニブ、ベバシズマブ、レンバチニブ(lenvatinib)、エベロリムスである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】[20] 図1:アピリモド処置に際してのSU−DHL−10およびWSU−DLCL2 B−NHL株における遺伝子発現変化のヒートマップ図。赤色はアップレギュレートされた遺伝子を表わし、一方、青色はダウンレギュレートされた遺伝子を表わす。
図2】[21] 図2図1からの共通してアップレギュレートされた遺伝子の遺伝子オントロジー解析は、リソソーム関連遺伝子のエンリッチメントを明らかに示す。
図3】[22] 図3:200nM(青)アピリモドで処理した24および48時間後のSU−DHL−6およびSU−DHL−10におけるLysoTracker染色を、DMSO処理対照(赤)と比較したもの。
図4】[23] 図4:アピリモド(63nM)で2時間処理したSU−DHL−6細胞においてイムノブロッティングによりアッセイしたTFEBタンパク質の核および細胞質レベル。
図5】[24] 図5:CCLE(Barretina et al., 2012)から抽出した腫瘍タイプにわたる相対TFEB mRNAレベルを示すボックスプロット;遺伝子中心ロバストマルチアレイ解析(gene centric robust multi-array analysis)で正規化したmRNA発現データを含む。
図6】[25] 図6:GFP対照またはTFEBのいずれかを過剰発現している安定CA46(TFEB欠損B−NHL)プールを、10ポイントアピリモド用量応答で72時間処理した。
図7A】[26] 図7A:5日間のアッセイにおけるアピリモドに対する種々の癌細胞株の感受性。
図7B】[27] 図7B:5日間のアッセイにおけるアピリモドに対する腎細胞株RCC−ERおよび正常結腸細胞株CCD841CoNの用量応答例。
図8】[28] 図8:淡明細胞RCC細胞株(n=5)において5日間のアッセイにおけるアピリモドの抗増殖活性を標準治療薬と対比したもの。値は幾何平均を表わす。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[29] 本開示は、癌の処置を必要とする対象、好ましくはヒト対象において癌を処置するためのアピリモドの使用に関する組成物および方法を提供する。本開示は、一般に、アピリモド誘導による細胞毒性に対して特に感受性であることが本発明において示された1種類以上のMiT転写因子、たとえばTFEB、TFE3、TFEC、およびMITFの過剰発現を特徴とする癌を処置するためのアピリモドの使用に関する。MiT転写因子を過剰発現していると特徴づけることができる癌の、限定ではない例には、非ホジキンB細胞リンパ腫、腎細胞癌、メラノーマ、淡明細胞肉腫、胞巣状軟部肉腫、および血管周囲類上皮細胞腫瘍が含まれる。本開示は、癌をアピリモドに対して感受性であると同定するための方法も提供し、その方法はTFEB、TFE3、TFEC、およびMITFから選択される1種類以上のMiT転写因子をアッセイすることを含む。
【0023】
[30] さらに、本開示はアピリモドおよび少なくとも1種類の追加の療法剤を用いる併用療法に基づく癌処置のための新規療法を提供する。本明細書に記載する併用療法は、他の抗癌剤と組み合わせた際に相乗効果をもたらすことが示されたアピリモドのユニークな細胞毒性を利用する。
【0024】
[31] 本明細書中で用いる用語“アピリモド”は、アピリモドそのもの(すなわち、アピリモド遊離塩基)を表わすことができ、あるいは後記のようにアピリモドの医薬的に許容できる塩類、溶媒和物、包接化合物、水和物、多型、代謝産物、プロドラッグ、アナログまたは誘導体を包含することができる。アピリモドの構造を式Iに示す:
【0025】
【化1】
【0026】
[32] アピリモドの化学名は、2−[2−ピリジン−2−イル)−エトキシ]−4−N’−(3−メチル−ベンジリデン)−ヒドラジノ]−6−(モルホリン−4−イル)−ピリミジン(IUPAC名:(E)−4−(6−(2−(3−メチルベンジリデン)ヒドラジニル)−2−(2−(ピリジン−2−イル)エトキシ)ピリミジン−4−イル)モルホリン)であり、CAS番号は541550−19−0である。
【0027】
[33] アピリモドは、たとえばU.S. Patent No. 7,923,557および7,863,270、ならびにWO 2006/128129に記載された方法に従って製造できる。
[34] 本明細書中で用いる用語“医薬的に許容できる塩”は、たとえばアピリモド組成物の酸性基および塩基性基から形成される塩である。具体的な塩類には下記のものが含まれるが、それらに限定されない:硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、クロリド、ブロミド、ヨージド、硝酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ベシル酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロネート(glucaronate)、サッカレート、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、およびパモ酸塩(たとえば、1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエート))。
【0028】
[35] 用語“医薬的に許容できる塩”は、酸性官能基、たとえばカルボン酸官能基をもつアピリモド組成物と医薬的に許容できる無機塩基または有機塩基から製造される塩をも表わす。
【0029】
[36] 用語“医薬的に許容できる塩”は、塩基性官能基、たとえばアミノ官能基をもつアピリモドと、医薬的に許容できる無機酸または有機酸から製造される塩をも表わす。
[37] 本明細書に記載する化合物の塩類は、親化合物から、一般的な化学的方法、たとえば下記に記載された方法により合成できる:Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use, P. Hemrich Stalil (Editor), Camille G. Wermuth (Editor), ISBN: 3-90639-026-8, August 2002。一般に、そのような塩類は、親化合物(たとえば、2−[2−ピリジン−2−イル)−エトキシ]−4−N’−(3−メチル−ベンジリデン)−ヒドラジノ]−6−(モルホリン−4−イル)−ピリミジン)と適宜な酸を水中もしくは有機溶媒中または両者の混合物中で反応させることにより製造できる。
【0030】
[38] 本明細書に記載する化合物のある塩形態を、当業者に周知の方法により遊離塩基に、また場合により他の塩形態に変換できる。たとえば、遊離塩基はアミン固定相を収容したカラム(たとえば、Strata−NHカラム)に塩溶液を通すことにより形成できる。あるいは、水中の塩溶液を炭酸水素ナトリウムで処理して塩を分解し、遊離塩基を析出させることができる。次いでその遊離塩基を常法により他の酸と結合させることができる。
【0031】
[39] 本明細書中で用いる用語“多型”は、本開示の化合物(たとえば、2−[2−ピリジン−2−イル)−エトキシ]−4−N’−(3−メチル−ベンジリデン)−ヒドラジノ]−6−(モルホリン−4−イル)−ピリミジン)またはその複合体の固体結晶形態を意味する。同一化合物の異なる多型は、異なる物理的、化学的および/または分光分析特性を示す可能性がある。異なる物理的特性には、安定性(たとえば、熱または光に対するもの)、圧縮適性および密度(配合および製品製造において重要)、および溶解速度(それは生物学的利用能に影響を及ぼす可能性がある)が含まれるが、これらに限定されない。安定性の相異は下記の変化から生じる可能性がある:化学反応性(たとえば、酸化較差;それによって、剤形はある多型から構成された場合に他の多型から構成された場合より急速に変色する)もしくは機械的特性(たとえば、動力学的に好ましい多型がより熱力学的に安定な多型に変換するのに伴なって、錠剤は貯蔵に際して崩壊する)または両者(たとえば、ある多型の錠剤は高湿度ではより分解しやすい)。多型の異なる物理的特性は、それらの加工に影響を及ぼす可能性がある。たとえば、ある多型は、たとえばそれの粒子の形状または粒度分布のため、他の多型より溶媒和物を形成する傾向がより大きく、あるいは濾過または洗浄して不純物を除くのがより困難である可能性がある。
【0032】
[40] 本明細書中で用いる用語“水和物”は、本開示の化合物(たとえば、2−[2−ピリジン−2−イル)−エトキシ]−4−N’−(3−メチル−ベンジリデン)−ヒドラジノ]−6−(モルホリン−4−イル)−ピリミジン)またはその塩が、非共有結合分子間力により結合した化学量論的量または非−化学量論的量の水を含むものを意味する。
【0033】
[41] 本明細書中で用いる用語“包接化合物”は、空間(たとえば、チャネル)を含む結晶格子の形態の本開示の化合物(たとえば、2−[2−ピリジン−2−イル)−エトキシ]−4−N’−(3−メチル−ベンジリデン)−ヒドラジノ]−6−(モルホリン−4−イル)−ピリミジン)またはその塩が、内部にトラップされたゲスト分子(たとえば、溶媒または水)をもつものを意味する。
【0034】
[42] 本明細書中で用いる用語“プロドラッグ”は、本明細書に記載する化合物(たとえば、2−[2−ピリジン−2−イル)−エトキシ]−4−N’−(3−メチル−ベンジリデン)−ヒドラジノ]−6−(モルホリン−4−イル)−ピリミジン)の誘導体であって、生物学的条件下で(インビトロまたはインビボで)加水分解され、酸化され、または他の様式で反応して、本開示の化合物を供給できるものを意味する。プロドラッグは生物学的条件下でのそのような反応に際して初めて活性になる場合があり、あるいはそれらはそれらの未反応形態で活性をもつ場合がある。本開示において考慮されるプロドラッグの例には、本明細書に記載する化合物(たとえば、2−[2−ピリジン−2−イル)−エトキシ]−4−N’−(3−メチル−ベンジリデン)−ヒドラジノ]−6−(モルホリン−4−イル)−ピリミジン)のアナログまたは誘導体であって、生加水分解性(biohydrolyzable)部分を含むもの、たとえば生加水分解性アミド、生加水分解性エステル、生加水分解性カルバメート、生加水分解性カーボネート、生加水分解性ウレイド、および生加水分解性ホスフェートアナログが含まれるが、これらに限定されない。プロドラッグの他の例には、本明細書に開示するいずれかの式の化合物の誘導体であって、−NO、−NO、−ONO、または−ONO部分を含むものが含まれる。プロドラッグは、一般に、周知の方法、たとえばBurger’s Medicinal Chemistry and Drug Discovery (1995) 172-178, 949-982 (Manfred E. Wolff ed., 5th ed)に記載された方法を用いて製造できる。
【0035】
[43] 本明細書中で用いる用語“溶媒和物”または“医薬的に許容できる溶媒和物”は、本明細書に開示する化合物の1つ(たとえば、2−[2−ピリジン−2−イル)−エトキシ]−4−N’−(3−メチル−ベンジリデン)−ヒドラジノ]−6−(モルホリン−4−イル)−ピリミジン)への1個以上の溶媒分子の会合から形成された溶媒和物である。溶媒和物という用語には、水和物(たとえば、半−水和物、1水和物、2水和物、3水和物、4水和物など)が含まれる。
【0036】
[44] 本明細書中で用いる用語“アナログ”は、構造的には他のものに類似するけれども組成においてわずかに異なる化学物質を表わす(1個の原子が異なる元素の原子により置き換えられた場合、または特定の官能基が存在する場合、または1つの官能基が他の官能基により置き換えられた場合のように)。よって、アナログは、機能および外観においては基準化合物と類似または同等であるけれども構造または起源においてはそうでない化合物である。本明細書中で用いる用語“誘導体”は、共通のコア構造をもち、本明細書に記載する種々の基で置換された化合物を表わす。
【0037】
処置方法および診断方法
[45] 本開示は、小眼球症(MiT)転写因子を過剰発現している癌細胞をもつ対象において癌を処置するための方法を提供する。複数の態様において、本方法は療法有効量のアピリモド、その医薬的に許容できる塩、溶媒和物、包接化合物、水和物、多型、プロドラッグ、アナログまたは誘導体を対象に投与することを含む。複数の態様において、癌はTFEB、TFE3、TFEC、およびMITFから選択されるMiT転写因子を過剰発現している。複数の態様において、MiT転写因子はTFEBおよびTFE3、または両方から選択される。
【0038】
[46] 複数の態様において、本開示は、アピリモド処置に対して感受性である癌を同定するための診断方法も提供し、その方法は癌の試料を1種類以上のMiT転写因子の発現についてアッセイする工程を含み、その際、1種類以上のMiT転写因子の過剰発現はその癌がアピリモドに対して感受性であることの指標となる。
【0039】
[47] 複数の態様において、癌は脳の癌、神経膠腫、肉腫、乳癌、肺癌、非小細胞肺癌、中皮腫、虫垂癌、尿生殖器癌、腎細胞癌、前立腺癌、膀胱癌、精巣癌、陰茎癌、子宮頚癌、卵巣癌、フォン・ヒッペル・リンドウ病(von Hippel Lindau disease)、頭頚部癌、消化器癌、肝細胞癌、胆嚢癌、食道癌、胃癌、結腸直腸癌、膵臓癌、神経内分泌腫瘍、甲状腺腫瘍、下垂体腫瘍、副腎腫瘍、血液悪性腫瘍、または白血病である。
【0040】
[48] 複数の態様において、癌はTFE3トランスロケーションを伴う腎癌、胞巣状軟部肉腫または血管周囲類上皮細胞新生物である。
[49] 複数の態様において、癌はFLCN不活性化変異を伴う腎癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、または胃癌である。
【0041】
[50] 一態様において、腎癌は腎細胞癌(renal cell carcinoma)(RCC)である。 一態様において、腎細胞癌は、淡明細胞型腎細胞癌、乳頭状腎細胞癌、色素嫌性腎細胞癌、他の稀なタイプの腎細胞癌(たとえば、集合管RCC、多房性嚢胞性RCC、髄様癌、粘液管状紡錘細胞癌(mucinous tubular and spindle cell carcinoma)、神経芽細胞腫関連RCC、未分類の腎細胞癌)、および転移性RCCからなる群から選択される。一態様において、腎癌は移行上皮細胞癌、ウィルムス腫瘍(腎芽細胞腫)、腎肉腫、および良性(非癌性)腎腫瘍、腎腺腫、膨大細胞腫、および血管筋脂肪腫からなる群から選択される。複数の態様において、RCCは乳頭状I型およびII型、色素嫌性、ハイブリッド、膨大細胞腫、トランスロケーション、血管筋脂肪腫、膨大細胞癌、髄様癌、および集合管癌から選択されるサブタイプである。
【0042】
[51] 一態様において、癌はリンパ腫である。一態様において、リンパ腫はB細胞リンパ腫である。一態様において、B細胞リンパ腫はホジキンB細胞リンパ腫および非ホジキンB細胞リンパ腫からなる群から選択される。一態様において、B細胞リンパ腫はDLBCL、濾胞性リンパ腫、辺縁帯リンパ腫(marginal zone lymphoma)(MZL)または粘膜関連リンパ組織型リンパ腫(mucosa associated lymphatic tissue lymphoma)(MALT)、小リンパ球性リンパ腫(small cell lymphocytic lymphoma)(慢性リンパ球性白血病と重なる)およびマントル細胞リンパ腫からなる群から選択される非ホジキンB細胞リンパ腫である。一態様において、B細胞リンパ腫は、バーキットリンパ腫、原発性縦隔(胸腺)大細胞型B細胞性リンパ腫(Primary mediastinal (thymic) large B-cell lymphoma)、リンパ形質細胞性リンパ腫(Lymphoplasmacytic lymphoma)(ワルデンシュトレームマクログロブリン血症(Waldenstroem macroglobulinemia)として発現する可能性がある)、節性辺縁帯B細胞性リンパ腫(Nodal marginal zone B-cell lymphoma)(NMZL)、脾辺縁帯リンパ腫(Splenic marginal zone lymphoma)(SMZL)、血管内大細胞型B細胞性リンパ腫(Intravascular large B-cell lymphoma)、原発性滲出性リンパ腫、リンパ腫様肉芽腫症(Lymphomatoid granulomatosis)、T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞性リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、足型原発性皮膚びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(足型原発性皮膚型DLBCL)、高齢者のEBV陽性びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、炎症関連びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、血管内大細胞型B細胞性リンパ腫、ALK陽性大細胞型B細胞性リンパ腫、および形質芽細胞性リンパ腫からなる群から選択される非ホジキンB細胞リンパ腫である。
【0043】
[52] 一態様において、癌はメラノーマである。メラノーマはあるタイプの皮膚癌であり、皮膚の表皮にあるメラニン細胞(皮膚の色素含有細胞)から形成される。表皮は皮膚を構成する2つの主な層のうちの上側または外側の層であり、基底膜によって皮膚のより深部の層から分離されている。メラノーマなどの皮膚癌がより進行した状態になると、それは一般に表皮を透過し、基底膜を通過して皮膚のより深部の層内へ増殖して、血液供給部に達し、それによって腫瘍は転移可能になる。
【0044】
[53] 4つの基本的タイプのメラノーマがある。それらのうち3つは良性インサイチュであり −これはそれらが皮膚の上層のみを占めることを意味する −、時に侵襲性になる;4つ目は最初から侵襲性である。侵襲性メラノーマは皮膚のより深部へ透過して身体の他の領域へ拡散している可能性があるので、より重大である。
【0045】
[54] 表在拡散性メラノーマ(superficial spreading melanoma)は最も一般的タイプであり、全症例の約70パーセントを占める。これは若者に最もよくみられるものである。その名称が示唆するように、このメラノーマはより深く透過する前にかなり長期間、皮膚の上層に沿って増殖する。
【0046】
[55] 悪性黒子(lentigo maligna)もかなりの期間、皮膚の表面近くに留まるので、表在拡散タイプと類似し、通常は平坦または中等度に隆起したまだらな淡褐色、褐色または暗褐色の変色として出現する。このタイプのインサイチュメラノーマは高齢者に最もよくみられ、顔、耳、腕および上体の慢性的に日光に曝露されていて損傷のある皮膚に出現する。この癌が侵襲性になると、悪性黒子メラノーマと呼ばれる。
【0047】
[56] 肢端黒子型メラノーマ(acral lentiginous melanoma)も、より深く透過する前に表在拡散する。ただし、それは爪の下または足底もしくは手のひらの黒色または褐色の変色として出現するので、他のものとかなり異なる。このタイプのメラノーマは、濃色の皮膚の人々に時折みられ、しばしば表在拡散性メラノーマおよび悪性黒子より速やかに進行する可能性がある。それはアフリカ系アメリカ人およびアジア人に最も一般的であり、白人に最も少ないメラノーマである。
【0048】
[57] 結節性メラノーマ(nodal melanoma)は、通常はそれが最初に診断された時点で侵襲性である。それが隆起すると悪性と認識される。それは通常は黒色であるが、時には青色、灰色、白色、褐色、淡褐色、赤色または肌色である。
【0049】
[58] 一態様において、癌は結腸直腸癌である。結腸直腸癌(結腸癌、直腸癌、または大腸癌としても知られる)は結腸または直腸における発癌である。結腸癌はTNM病期分類システムに従って病期分類される。TNMシステムは最も広く用いられている癌病期分類システムの1つであり、国際対癌連合(Union for International Cancer Control)(UICC)および米国癌合同委員会(American Joint Committee on Cancer)(AJCC)が採用している。TNMシステムは、原発性腫瘍(T)のサイズおよび/または拡がり(範囲)、近接リンパ節(N)への拡散の程度、ならびに身体の他の箇所への癌細胞の拡散により形成された転移(M)または二次腫瘍の存在に基づく。原発性腫瘍のサイズおよび/または拡がり、ならびに癌の拡散の程度を指示するために、それぞれの文字に数字が付け加えられる。
【0050】
[59] 本開示は、癌の処置のための併用療法を含む方法も提供する。本明細書中で用いる“併用療法(combination therapy)”または“共同療法(co-therapy)”には、アピリモドと追加の活性薬剤の共同作用からの有益な効果を得ることを意図して、療法有効量のアピリモドを特定の治療計画の一部として投与することが含まれる。少なくとも1種類の追加の薬剤は、療法剤または非療法剤であってよい。併用の有益な効果には、療法化合物の併用から得られる薬物動態的または薬力学的な共同作用が含まれるが、これらに限定されない。併用の有益な効果は、組合わせ中の他の薬剤に関連する毒性、副作用または有害事象の緩和にも関係する。“併用療法”は、2以上のこれらの療法化合物を別個の単剤療法計画の一部として投与した結果、意図または予測しなかった有益な効果が偶然または恣意的に生じることを含まないものとする。
【0051】
[60] 少なくとも1種類の追加の活性薬剤は、療法剤、たとえば抗癌剤もしくは癌の化学療法剤、または非療法剤、およびその組合わせであってもよい。療法剤に関して、併用の有益な効果には療法有効化合物の併用から得られる薬物動態的または薬力学的な共同作用が含まれるが、これらに限定されない。非療法剤に関して、併用の有益な効果は、組合わせ中の療法活性薬剤に関連する毒性、副作用または有害事象の緩和に関係する可能性がある。
【0052】
[61] 一態様において、少なくとも1種類の追加の薬剤は、アピリモド組成物の1以上の副作用を緩和する非療法剤であり、その1以上の副作用は吐き気、嘔吐、頭痛、めまい(dizziness)、立ちくらみ(lightheadedness)、眠気(drowsiness)およびストレスのいずれかから選択される。この態様の一側面において、非療法剤はセロトニン受容体(5−ヒドロキシトリプタミン受容体または5−HT受容体としても知られる)のアンタゴニストである。一側面において、非療法剤は5−HTまたは5−HT1a受容体のアンタゴニストである。一側面において、非療法剤はオンダンセトロン(ondanesetron)、グラニセトロン(granisetron)、ドラセトロン(dolasetron)、およびパロノセトロン(palonosetron)からなる群から選択される。他の側面において、非療法剤はピンドロールおよびリスペリドンからなる群から選択される。
【0053】
[62] 複数の態様において、少なくとも1種類の追加の薬剤は療法剤である。一態様において、療法剤はより詳細に下記に述べる抗癌剤である。
[63] 併用療法に関して、アピリモド、その医薬的に許容できる塩、溶媒和物、包接化合物、水和物、多型、代謝産物、プロドラッグ、アナログまたは誘導体の投与は、1種類以上の追加の活性薬剤の投与と同時または逐次であってよい。他の態様において、併用療法の異なる成分の投与は異なる頻度であってもよい。1種類以上の追加の薬剤を、本開示の化合物の投与の前(たとえば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週、2週、3週、4週、5週、6週、8週、または12週前)、投与と同時、または投与の後(たとえば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週、2週、3週、4週、5週、6週、8週、または12週後)に投与することができる。
【0054】
[64] 1種類以上の追加の活性薬剤を、アピリモドとの共投与のために、より詳細に本明細書に記載するように単一剤形中に配合することができる。1種類以上の追加の活性薬剤は、アピリモドを含む剤形とは別個に投与することができる。追加の活性薬剤をアピリモドと別個に投与する場合、それはアピリモドと同一または異なる投与経路によることができる。
【0055】
[65] 好ましくは、アピリモドを1種類以上の追加の活性薬剤と組み合わせて含む組成物の投与により、処置される対象において相乗的応答が得られる。これに関して、用語“相乗的”は、組合わせの有効性がいずれかの単剤療法のみの相加効果より有効であることを表わす。本開示による併用療法の相乗効果によって、少なくとも1種類の薬剤を、組合わせ以外のそれの用量および/または頻度と比較してより低い投与量および/またはより少ない投与頻度で使用することが可能になる。組合わせのさらに他の有益な効果は、組合わせのうちいずれか一方の療法のみ(単剤療法とも呼ばれる)の使用に関連する有害または目的外の副作用の回避または低減に現われる可能性がある。
【0056】
[66] “併用療法”は、本開示の化合物を非薬物療法(たとえば、外科処置または放射線処置)とのさらなる組合わせで投与することをも包含する。併用療法がさらに非薬物処置を含む場合、その非薬物処置は、療法化合物と非薬物処置の共同作用からの有益な効果が達成される限り、いずれか適切な時点で実施できる。たとえば、適切な場合、非薬物処置を療法化合物の投与から一時的に除いた場合(おそらく、数日間または数週間)ですら有益な効果はなお達成される。
【0057】
[67] 非薬物処置は、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、抗エストロゲン療法、遺伝子療法、外科処置(たとえば、根治的腎切除、部分的腎切除、腹腔鏡およびロボットによる外科処置)、高周波アブレーション、および凍結アブレーションから選択できる。たとえば、非薬物療法は卵巣摘除(たとえば、体内のエストロゲンのレベルを低下させるために)、胸郭穿刺術(thoracentesis)(たとえば、胸部から体液を除去するための)、穿刺術(paracentesis)(たとえば、腹部から体液を除去するための)、血管筋脂肪腫を摘除または縮小するための外科処置、肺移植(場合により、移植による感染を阻止するために抗生物質と共に)、または酸素療法(たとえば、両鼻腔内に配置する2つの細いプラスチックチューブまたはプロング(prong)を収容した鼻カニューレを通して、あるいは鼻と口の上にフィットするマスクを通して、あるいは首の前から気管に挿入した細いチューブを通して(経気管酸素療法とも呼ばれる))である。
【0058】
[68] 一態様において、少なくとも1種類の追加の薬剤は、吐き気、嘔吐、頭痛、めまい、立ちくらみ、眠気およびストレスのいずれかから選択されるアピリモド組成物の1以上の副作用を緩和する薬剤である。この態様の一側面において、追加の薬剤はセロトニン受容体(5−ヒドロキシトリプタミン受容体または5−HT受容体としても知られる)のアンタゴニストである。一側面において、追加の薬剤は5−HTまたは5−HT1a受容体のアンタゴニストである。一側面において、薬剤はオンダンセトロン、グラニセトロン、ドラセトロンおよびパロノセトロンからなる群から選択される。他の側面において、薬剤はピンドロールおよびリスペリドンからなる群から選択される。
【0059】
[69] 複数の態様において、少なくとも1種類の追加の薬剤は抗癌剤である。癌が腎癌である複数の態様において、抗癌剤はVEGF阻害剤、たとえばスニチニブ、パゾパニブ、ベバシズマブ、ソラフェニブ、カボザンチニブおよびアキシチニブ、またはmTOR阻害剤、たとえばエベロリムスもしくはテムシロリムスから選択できる。
【0060】
[70] 一態様において、抗癌剤はタキソール(taxol)、ビンクリスチンン、ドキソルビシン、テムシロリムス、カルボプラスチン(carboplatin)、オファツムマブ(ofatumumab)、リツキシマブ、およびその組合わせから選択される。
【0061】
[71] 一態様において、少なくとも1種類の追加の薬剤はクロラムブシル(chlorambucil)、イホスファミド(ifosphamide)、ドキソルビシン、メサラジン(mesalazine)、サリドマイド(thalidomide)、レナリドミド(lenalidomide)、テムシロリムス、エベロリムス、フルダラビン(fludarabine)、ホスタマチニブ(fostamatinib)、パクリタキセル(paclitaxel)、ドセタキセル(docetaxel)、オファツムマブ、リツキシマブ、デキサメタゾン、プレドニゾン(prednisone)、CAL−101、イブリツモマブ(ibritumomab)、トシツモマブ(tositumomab)、ボルテゾミブ(bortezomib)、ペントスタチン(pentostatin)、エンドスタチン(endostatin)、またはその組合わせから選択される。
【0062】
[72] 一態様において、少なくとも1種類の追加の薬剤は、Afinitor(エベロリムス)、アルデスロイキン(Aldesleukin)、Avastin(ベバシズマブ)、アキシチニブ、ベバシズマブ、エベロリムス、IL−2(アルデスロイキン)、Inlyta(アキシチニブ)、インターロイキン−2(アルデスロイキン)、Nexavar(トシル酸ソラフェニブ)、塩酸パゾパニブ、Proleukin(アルデスロイキン)、トシル酸ソラフェニブ、リンゴ酸スニチニブ、Sutent(リンゴ酸スニチニブ)、テムシロリムス、Torisel(テムシロリムス)、Votrient(塩酸パゾパニブ)、またはその組合わせから選択される。
【0063】
[73] 一態様において、少なくとも1種類の追加の薬剤は標的療法のためのものであり、その処置は、癌特異的な遺伝子、タンパク質、または癌の増殖および生存に関与する組織環境をターゲットとする。このタイプの処置は癌細胞の増殖および拡散をブロックし、一方、健康な細胞に対する損傷を制限する。
【0064】
[74] 一態様において、少なくとも1種類の追加の薬剤は抗血管新生療法のためのものであり、その処置は、新たな血管を作成するプロセスである血管新生を停止させることに注目する。腫瘍は増殖および拡散するために血管により送達される栄養素を必要とするので、抗血管新生療法の目標は腫瘍を“餓死させる”ことである。抗血管新生の1つであるベバシズマブ(Avastin)は、転移性腎癌を伴う者について腫瘍増殖速度を低下させることが示された。ベバシズマブをインターフェロンと組み合わせたものは腫瘍の増殖および拡散の速度を低下させる。
【0065】
[75] 一態様において、少なくとも1種類の追加の薬剤は免疫療法(生物学的療法とも呼ばれる)のためのものであり、癌と戦うための身体の自然防御を増強するようにデザインされる。それは、免疫系機能を改善、ターゲッティングまたは再建するために、身体により、または実験室で作成された物質を使用する。たとえば、インターロイキン−2(IL−2)は、AM0010およびインターロイキン−15と同様に腎癌をターゲティングするために用いられている薬物である。それらは白血球が産生するサイトカインと呼ばれる細胞ホルモンであり、腫瘍細胞の破壊を含めた免疫系機能に重要である。アルファ−インターフェロンは、拡散した腎癌を処置するために用いられる他のタイプの免疫療法薬である。インターフェロンは、癌細胞の表面のタンパク質を変化させてそれらの増殖速度を低下させると思われる。進行した腎癌を伴う患者に対するIL−2およびアルファ−インターフェロンを化学療法と組み合わせた多くの併用療法は、IL−2またはインターフェロン単独より有効である。
【0066】
[76] 複数の態様において、少なくとも1種類の追加の薬剤はPD−1/PDL−1経路阻害剤である。複数の態様において、PD−1/PDL−1経路阻害剤はペンブロリズマブ(Keytruda、MK−3475)、アベルマブ、アテゾリズマブ(MPDL3280A)、ニボルマブ(BMS−936558)、ピジリズマブ(CT−011)、MSB0010718C、およびMEDI4736から選択される。
【0067】
[77] 複数の態様において、少なくとも1種類の追加の薬剤はチェックポイント阻害剤である。これらの化合物による処置は、免疫応答に対するチェック因子およびバランス因子として作用する分子をターゲティングすることにより作動する。これらの処置は、これらの阻害性分子をブロックするか、あるいは刺激性分子を活性化することにより、既存の抗癌免疫応答を解放または増強するようにデザインされる。複数の態様において、チェックポイント阻害剤は、抗体、たとえばPD−1、抗−CD27、B7−H3、KIR、LAG−3、4−1BB/CD137、GITR、ペンブロリズマブ(Keytruda,PD−1抗体)、MPDL3280A(PD−L1抗体)、バリルマブ(varlilumab)(CDX−1127、抗−CD27抗体)、MGA217(B7−H3をターゲティングする抗体)、リリルマブ(lirilumab)(KIR抗体)、BMS−986016(LAG−3抗体)、ウレルマブ(urelumab)(4−1BB/CD137抗体)、抗−TIM3(TIM3抗体)、MEDI−0562(OX40抗体)、SEA−CD40(CD40抗体)、TRX518(GITR抗体)、およびMK−4166(GITR抗体)から選択できる。
【0068】
[78] 複数の態様において、少なくとも1種類の追加の薬剤は、腫瘍特異的または腫瘍関連の抗原に対する免疫応答を誘発してこれらの抗原を保有する癌細胞を攻撃する免疫系を助成するようにデザインされた、癌ワクチンである。複数の態様において、癌ワクチンはAGS−003、DCVax、およびNY−ESO−1から選択できる。
【0069】
[79] 複数の態様において、少なくとも1種類の追加の薬剤は免疫刺激剤、たとえば免疫系を活性化して癌細胞を攻撃させるために用いられる組換えタンパク質である。複数の態様において、免疫刺激剤はデネニコキン(denenicokin)(組換えIL−21)である。
【0070】
[80] 複数の態様において、少なくとも1種類の追加の薬剤は、癌細胞の排除を助成するように免疫系を調節する低分子である。複数の態様において、低分子はエパカドスタット(epacadostat)(IDO阻害剤)およびPLX3397(CSF−1Rの阻害剤)から選択できる。
【0071】
[81] 複数の態様において、少なくとも1種類の追加の薬剤は患者から分離した患者自身の免疫細胞であってもよく、免疫系の抗癌応答を改善することを目標として、それらを遺伝子修飾または化学薬品処理してそれらの活性を増強し、次いで患者に再導入する。
【0072】
[82] 本明細書に記載する方法に関して、対象に投与するアピリモドの量は療法有効量である。用語“療法有効量”は、対象において、処置される疾患または障害を処置し、その症状を改善し、重症度を低減し、または持続期間を短縮するのに十分な、あるいは他の療法の療法効果を増強または改善するのに十分な、あるいは検知できる療法効果を示すのに十分な量を表わす。一態様において、アピリモド組成物の療法有効量はPIKfyveキナーゼ活性を阻害するのに十分な量である。
【0073】
[83] アピリモドの有効量は、約0.001mg/kgから約1000mg/kgまで、約0.01mg/kgから約100mg/kgまで、約10mg/kgから約250mg/kgまで、約0.1mg/kgから約15mg/kgまでの範囲;あるいは範囲の下限が0.001mg/kg〜900mg/kgのいずれかの量であり、範囲の上限が0.1mg/kg〜1000mg/kgのいずれかの量である、いずれの範囲であってもよい(たとえば、0.005mg/kg〜200mg/kg、0.5mg/kg〜20mg/kg)。当業者が認識するように、有効量は処置される疾患、投与経路、用いる賦形剤、および他の療法処置との併用、たとえば他の薬剤の使用の可能性によっても変動するであろう。参照:たとえばU.S. Patent No. 7,863,270, 本明細書に援用する。
【0074】
[84] より具体的な側面において、アピリモドを30〜1000mg/日(たとえば、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、200、225、250、275、または300mg/日)で少なくとも1週間(たとえば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、36、48週間、またはそれ以上)の投与計画で投与する。好ましくは、アピリモドを100〜1000mg/日で4または16週間の投与計画で投与する。あるいはまたはその後、アピリモドを100〜300mgで1日2回、8週間、または場合により52週間の投与計画で投与する。あるいはまたはその後、アピリモド組成物を50mg〜1000mgで1日2回、8週間、または場合により52週間の投与計画で投与する。
【0075】
[85] 有効量のアピリモド組成物を1日1回、1日2回から5回まで、1日に最大2回もしくは最大3回、または1日に最大8回、投与することができる。一態様において、アピリモド組成物を1日3回、1日2回、1日1回、14日間のオン(1日4回、1日3回または1日2回または1日1回)および7日間のオフで3週間のサイクル、最大5もしくは7日間のオン(1日4回、1日3回または1日2回または1日1回)および14〜16日間のオフで3週間のサイクル、または2日毎に1回、または週1回、または2週毎に1回、または3週毎に1回、投与する。
【0076】
[86] 本明細書に記載する方法によれば、“処置する必要がある対象”は、ある腎癌を伴う対象、または一般集団と対比して腎癌を発現するリスクが高い対象である。処置する必要がある対象は、その癌に現在利用できる療法に対して“不応答”または“治療抵抗性”である対象であってもよい。これに関して、用語“不応答”および“治療抵抗性”は、療法に対する対象の応答がその疾患または障害に関連する1以上の症状を軽減するのに臨床的に適切でないものを表わす。本明細書に記載する方法の一側面において、処置する必要がある対象は、癌を伴っており、その癌が標準療法に対して治療抵抗性であるか、あるいはその癌が標準処置後に再発した対象である。
【0077】
[87] “対象”には哺乳類が含まれる。哺乳類は、たとえばいずれかの哺乳類、たとえばヒト、霊長類、脊椎動物、鳥類、マウス、ラット、ニワトリ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヤギ、ラクダ、ヒツジまたはブタであってもよい。好ましくは、哺乳類はヒトである。用語“患者”はヒト対象を表わす。
【0078】
[88] 本開示は、本明細書に記載する腎癌の処置のための単剤療法も提供する。本明細書中で用いる“単剤療法”は、処置する必要がある対象に単一の有効化合物または療法化合物を投与することを表わす。
【0079】
[89] 本明細書中で用いる“治療(処置)(treatment)”、“治療(処置)すること(treating)”または“治療(処置)する(treat)”は、疾患、状態または障害に対処する目的のための患者の管理およびケアを表わし、その疾患、状態または障害の1以上の症状または合併症を軽減するために、あるいは疾患、状態または障害を排除するために、アピリモド組成物を投与することを含む。
【0080】
[90] 本明細書中で用いる“予防(prevention)”、“予防すること(preventing)”または“予防する(prevent))”は、疾患、状態または障害の症状または合併症の発症を軽減または排除することを表わし、その疾患、状態または障害の症状または合併症の発症、発現または再発を低減するために、アピリモド組成物を投与することを含む。
【0081】
[91] 一態様において、アピリモド組成物の投与は処置される癌の症状または合併症の排除をもたらすが、癌の排除は要求されない。一態様において、症状の重症度が低減する。癌に関して、そのような症状には重症度または進行度の臨床マーカーを含めることができ、それには、腫瘍が増殖因子を分泌し、細胞外マトリックスを分解し、血管形成し、近位組織への接着性を喪失し、または転移する程度、ならびに転移数が含まれる。
【0082】
[92] 本明細書に記載する方法に従った癌の処置は、腫瘍サイズの低減をもたらすことができる。腫瘍サイズの低減は“腫瘍退縮”とも呼ぶこともできる。好ましくは、処置後に腫瘍サイズが処置前のそれのサイズと対比して5%以上、低減する;より好ましくは、腫瘍サイズが10%以上、低減する;より好ましくは、20%以上、低減する;より好ましくは、30%以上、低減する;より好ましくは、40%以上、低減する;よりさらに好ましくは、50%以上、低減する;最も好ましくは、75%以上またはそれ以上、低減する。腫瘍のサイズはいずれか再現性のある測定手段で測定できる。腫瘍のサイズは腫瘍の直径として測定できる。
【0083】
[93] 本明細書に記載する方法に従った癌の処置は、腫瘍体積の低減をもたらすことができる。好ましくは、処置後に腫瘍体積が処置前のそれのサイズと対比して5%以上、低減する;より好ましくは、腫瘍体積が10%以上、低減する;より好ましくは、20%以上、低減する;より好ましくは、30%以上、低減する;より好ましくは、40%以上、低減する;よりさらに好ましくは、50%以上、低減する;最も好ましくは、75%以上またはそれ以上、低減する。腫瘍体積はいずれか再現性のある測定手段で測定できる。
【0084】
[94] 本明細書に記載する方法に従った癌の処置は、腫瘍数の低減をもたらすことができる。好ましくは、処置後に腫瘍数が処置前の数と対比して5%以上、低減する;より好ましくは、腫瘍数が10%以上、低減する;より好ましくは、20%以上、低減する;より好ましくは、30%以上、低減する;より好ましくは、40%以上、低減する;よりさらに好ましくは、50%以上、低減する;最も好ましくは、75%以上、低減する。腫瘍の数はいずれか再現性のある測定手段で測定できる。腫瘍の数は肉眼または特定倍率で見える腫瘍を計数することにより測定できる。好ましくは、特定倍率は2×、3×、4×、5×、10×、または50×である。
【0085】
[95] 本明細書に記載する方法に従った癌の処置は、原発腫瘍部位から離れた他の組織または臓器における転移病巣の数の低減をもたらすことができる。好ましくは、処置後に転移病巣の数が処置前の数と対比して5%以上、低減する;より好ましくは、転移病巣の数が10%以上、低減する;より好ましくは、20%以上、低減する;より好ましくは、30%以上、低減する;より好ましくは、40%以上、低減する;よりさらに好ましくは、50%以上、低減する;最も好ましくは、75%以上、低減する。転移病巣の数はいずれか再現性のある測定手段で測定できる。転移病巣の数は肉眼または特定倍率で見える転移病巣を計数することにより測定できる。好ましくは、特定倍率は2×、3×、4×、5×、10×、または50×である。
【0086】
[96] 本明細書に記載する方法による癌の処置は、キャリヤーのみを投与した集団と比較して、処置した対象集団の平均生存時間の延長をもたらすことができる。好ましくは、平均生存時間は30日以上;より好ましくは60日以上;より好ましくは90日以上;最も好ましくは120日以上、延長される。集団の平均生存時間の延長はいずれか再現性のある手段により測定できる。集団の平均生存時間の延長は、たとえばある集団について有効化合物による処置の開始後の平均生存長さを計算することにより測定できる。集団の平均生存時間の延長は、たとえばある集団について有効化合物による第1ラウンドの処置が完了した後の平均生存長さを計算することによっても測定できる。
【0087】
[97] 本明細書に記載する方法による癌の処置は、非処置対象集団と比較して、処置した対象集団の平均生存時間の延長をもたらすことができる。好ましくは、平均生存時間は30日以上;より好ましくは60日以上;より好ましくは90日以上;最も好ましくは120日以上、延長される。集団の平均生存時間の延長はいずれか再現性のある手段により測定できる。集団の平均生存時間の延長は、たとえばある集団について有効化合物による処置の開始後の平均生存長さを計算することにより測定できる。集団の平均生存時間の延長は、たとえばある集団について有効化合物による第1ラウンドの処置が完了した後の平均生存長さを計算することによっても測定できる。
【0088】
[98] 本明細書に記載する方法による癌の処置は、アピリモドではない薬物による単剤療法を受けた集団と比較して、処置した対象集団の平均生存時間の延長をもたらすことができる。好ましくは、平均生存時間は30日以上;より好ましくは60日以上;より好ましくは90日以上;最も好ましくは120日以上、延長される。集団の平均生存時間の延長はいずれか再現性のある手段により測定できる。集団の平均生存時間の延長は、たとえばある集団について有効化合物による処置の開始後の平均生存長さを計算することにより測定できる。集団の平均生存時間の延長は、たとえばある集団について有効化合物による第1ラウンドの処置が完了した後の平均生存長さを計算することによっても測定できる。
【0089】
[99] 本明細書に記載する方法による癌の処置は、キャリヤーのみを投与した集団と比較して、処置した対象集団の死亡率の低下をもたらすことができる。本明細書に記載する方法による障害、疾患または状態の処置により、非処置集団と比較して、処置した対象集団の死亡率の低下をもたらすことができる。本明細書に記載する方法による障害、疾患または状態の処置により、アピリモドではない薬物による単剤療法を受けた集団と比較して、処置した対象集団の死亡率の低下をもたらすことができる。好ましくは、死亡率は2%以上;より好ましくは5%以上;より好ましくは10%以上;最も好ましくは25%以上、低下する。処置した対象集団の死亡率の低下は、いずれか再現性のある手段により測定できる。ある集団の死亡率の低下は、たとえばある集団について有効化合物による処置の開始後の単位時間当たりの疾患関連死の平均数を計算することにより測定できる。集団の死亡率の低下は、たとえばある集団について有効化合物による第1ラウンドの処置が完了した後の単位時間当たりの疾患関連死の平均数を計算することによっても測定できる。
【0090】
[100] 本明細書に記載する方法による癌の処置は、腫瘍増殖速度の低下をもたらすことができる。好ましくは、処置後に、腫瘍増殖速度は処置前の数と対比して少なくとも5%低下する;より好ましくは、腫瘍増殖速度は少なくとも10%低下する;より好ましくは少なくとも20%低下する;より好ましくは少なくとも30%低下する;より好ましくは少なくとも40%低下する;より好ましくは少なくとも50%低下する;よりさらに好ましくは少なくとも50%低下する;最も好ましくは少なくとも75%低下する。腫瘍増殖速度は、いずれか再現性のある測定手段により測定できる。腫瘍増殖速度は、単位時間当たりの腫瘍直径の変化によって測定できる。一態様において、処置後に腫瘍増殖速度はほぼゼロの可能性があり、同じサイズを維持しており、たとえば腫瘍が増殖を停止したと判定される。
【0091】
[101] 本明細書に記載する方法による癌の処置は、腫瘍の再増殖の低減をもたらすことができる。好ましくは、処置後に、腫瘍の再増殖は5%未満である;より好ましくは、腫瘍の再増殖は10%未満;より好ましくは20%未満;より好ましくは30%未満;より好ましくは40%未満;より好ましくは50%未満;よりさらに好ましくは50%未満;最も好ましくは75%未満である。腫瘍の再増殖は、いずれか再現性のある測定手段により測定できる。腫瘍の再増殖は、たとえば処置に伴って先に腫瘍が縮小した後の直径の増大を測定することによって測定される。腫瘍の再増殖の低減は、処置の停止後に腫瘍の再発がないことが指標となる。
【0092】
[102] 本明細書に記載する方法による細胞増殖性傷害の治療または予防は、細胞増殖速度の低下をもたらすことができる。好ましくは、処置後に、細胞増殖速度が少なくとも5%;より好ましくは少なくとも10%;より好ましくは少なくとも20%;より好ましくは少なくとも30%;より好ましくは少なくとも40%;より好ましくは少なくとも50%;よりさらに好ましくは少なくとも50%;最も好ましくは少なくとも75%低下する。細胞増殖速度はいずれか再現性のある測定手段により測定できる。細胞増殖速度は、たとえば組織試料における単位時間当たりの細胞分裂回数を測定することにより測定される。
【0093】
[103] 本明細書に記載する方法による細胞増殖性傷害の治療または予防は、増殖している細胞の割合の低減をもたらすことができる。好ましくは、処置後に、増殖している細胞の割合が少なくとも5%;より好ましくは少なくとも10%;より好ましくは少なくとも20%;より好ましくは少なくとも30%;より好ましくは少なくとも40%;より好ましくは少なくとも50%;よりさらに好ましくは少なくとも50%;最も好ましくは少なくとも75%低下する。増殖している細胞の割合は再現性のある測定手段により測定できる。好ましくは、増殖している細胞の割合は、たとえば組織試料における分裂していない細胞の数に対比した分裂している細胞の数を定量することにより測定される。増殖している細胞の割合は、分裂指数と等しい可能性がある。
【0094】
[104] 本明細書に記載する方法による細胞増殖性傷害の治療または予防は、細胞増殖の領域または帯域のサイズの低減をもたらすことができる。好ましくは、処置後に、細胞増殖の領域または帯域のサイズが処置前のそれのサイズと対比して少なくとも5%低減する;より好ましくは、腫瘍増殖速度は少なくとも10%低減する;より好ましくは少なくとも20%低減する;より好ましくは少なくとも30%低減する;より好ましくは少なくとも40%低減する;より好ましくは少なくとも50%低減する;よりさらに好ましくは少なくとも50%低減する;最も好ましくは少なくとも75%低減する。細胞増殖の領域または帯域のサイズは再現性のある測定手段により測定できる。細胞増殖の領域または帯域のサイズは、細胞増殖の領域または帯域の直径または幅として測定できる。
【0095】
[105] 本明細書に記載する方法による細胞増殖性傷害の治療または予防は、異常な外観または形態をもつ細胞の数または割合の低減をもたらすことができる。好ましくは、処置後に、異常な外観または形態をもつ細胞の数または割合が処置前のそれのサイズと対比して少なくとも5%低減する;より好ましくは、腫瘍増殖速度は少なくとも10%低減する;より好ましくは少なくとも20%低減する;より好ましくは少なくとも30%低減する;より好ましくは少なくとも40%低減する;より好ましくは少なくとも50%低減する;よりさらに好ましくは少なくとも50%低減する;最も好ましくは少なくとも75%低減する。細胞の異常な外観または形態は再現性のある測定手段により測定できる。異常な細胞形態は顕微鏡により、たとえば倒立型の組織培養顕微鏡を用いて測定できる。異常な細胞形態は核多形態(nuclear pleiomorphism)の形をとる可能性がある。
【0096】
[106] 本明細書中で用いる用語“選択的に”は、ある集団において他の集団より高い頻度で起きる傾向があることを意味する。比較する集団は細胞集団であってもよい。好ましくは、本明細書に記載するアピリモド組成物は正常細胞と比較して過剰増殖している細胞または異常増殖している細胞に選択的に作用する。本明細書中で用いる“正常細胞”は、“細胞増殖性障害”の一部として分類できない細胞である。正常細胞は、不都合な状態または疾患の発現をもたらす可能性のある、無制御な増殖もしくは異常な増殖または両者を示さない。好ましくは、正常細胞は正常に機能している細胞周期チェックポイント制御機序を備えている。好ましくは、アピリモド組成物は、ある分子ターゲット(たとえば、ターゲットキナーゼ)を調節するけれども他の分子ターゲット(たとえば、非ターゲットキナーゼ)を有意には調節しないように選択的に作用する。本開示は、酵素、たとえばキナーゼの活性を選択的に阻害する方法も提供する。好ましくは、ある事象が集団Bと比較して集団Aにおいて2倍を超える頻度で起きれば、それは集団Bと対比して集団Aにおいて選択的に起きる。ある事象が集団Aにおいて5倍を超える頻度で起きれば、それは選択的に起きる。ある事象が集団Aにおいて10倍を超える頻度;より好ましくは50倍を超える頻度;よりさらに好ましくは100倍を超える頻度;最も好ましくは1000倍を超える頻度で起きれば、それは集団Bと対比して集団Aにおいて選択的に起きる。たとえば、罹患している細胞または過剰増殖している細胞において正常細胞と比較して2倍を超える頻度で細胞死が起きれば、それは罹患している細胞または過剰増殖している細胞において選択的に起きると言われるであろう。
【0097】
医薬組成物および配合物
[107] 本開示は、ある量のアピリモド、その医薬的に許容できる塩、溶媒和物、包接化合物、水和物、多型、代謝産物、プロドラッグ、アナログまたは誘導体を、少なくとも1種類の医薬的に許容できる賦形剤またはキャリヤーと合わせて含む医薬組成物を提供し、その量は本明細書に記載する癌の処置のために有効であり、および/または癌を伴う対象の癌細胞においてPIKfyveを阻害するのに有効である。
【0098】
[108] 一態様において、アピリモドはアピリモド遊離塩基である。一態様において、アピリモドはアピリモド・ジメシレートである。
[109] 一態様において、アピリモドを少なくとも1種類の追加の活性薬剤と単一剤形中において組み合わせる。一態様において、組成物はさらに抗酸化剤を含む。
【0099】
[110] 複数の態様において、少なくとも1種類の追加の活性薬剤はアルキル化剤、インターカレート剤、チューブリン結合剤、コルチコステロイド、およびその組合わせからなる群から選択される。一態様において、少なくとも1種類の追加の活性薬剤はイブルチニブ、リツキシマブ、ドキソルビシン、プロドニゾロン、ビンクリスチンン、ベルケード、およびエベロリムス、ならびにその組合わせからなる群から選択される療法剤である。一態様において、少なくとも1種類の追加の活性薬剤はシクロホスファミド、ヒドロキシダウノルビシン(hydroxydaunorubicin)(ドキソルビシンまたはAdriamycin(商標)とも呼ばれる)、ビンクリスチンン(Oncovin(商標)とも呼ばれる)、プレドニゾン、プロドニゾロン、およびその組合わせからなる群から選択される療法剤である。
【0100】
[111] 複数の態様において、少なくとも1種類の追加の活性薬剤はアピリモド組成物の1以上の副作用を改善するように選択された非療法剤である。一態様において、非療法剤はオンダンセトロン、グラニセトロン、ドラセトロンおよびパロノセトロンからなる群から選択される。一態様において、非療法剤はピンドロールおよびリスペリドンからなる群から選択される。
【0101】
[112] 複数の態様において、少なくとも1種類の追加の薬剤はPD−1/PDL−1経路阻害剤である。複数の態様において、PD−1/PDL−1経路阻害剤はペンブロリズマブ(Keytruda)、アベルマブ、アテゾリズマブ(MPDL3280A)、ニボルマブ(BMS−936558)、ピジリズマブ(CT−011)、MSB0010718C、およびMEDI4736からなる群から選択される。
【0102】
[113] 複数の態様において、少なくとも1種類の追加の活性薬剤は、mTOR経路の阻害剤、TKI阻害剤、PI3K阻害剤、二重PI3K/mTOR阻害剤、SRC阻害剤、VEGF阻害剤、ヤヌスキナーゼ(Janus kinase)(JAK)阻害剤、Raf阻害剤、Erk阻害剤、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、c−MET阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、抗有糸分裂剤、多剤耐性エフラックス(efflux)阻害剤、抗生物質、およびサイトカインから選択される。一態様において、第2療法剤は療法用サイトカインである。一態様において、第2療法剤はインターロイキン−2である。他の態様において、第2療法剤はチロシンキナーゼ阻害剤(たとえば、エベロリムス、ベバシズマブ)から選択される。
【0103】
[114] 複数の態様において、mTOR阻害剤はラパマイシン(シロリムスとも呼ばれる)、エベロリムス、テムシロリムス、リダホロリムス(ridaforolimus)、ウミロリムス(umirolimus)、ゾタロリムス(zotarolimus)、AZD8055、INK128、WYE−132、Torin−1、ピラゾロピリミジンアナログPP242、PP30、PP487、PP121、KU0063794、KU−BMCL−200908069−1、Wyeth−BMCL−200910075−9b、INK−128、XL388、AZD8055、P2281、およびP529からなる群から選択される。参照:たとえばLiu et al. Drug Disc. Today Ther. Strateg., 6(2): 47-55 (2009)。
【0104】
[115] 複数の態様において、mTOR阻害剤は、trans−4−[4−アミノ−5−(7−メトキシ−1H−インドール−2−イル)イミダゾ[5,1−f][1,2,4]トリアジン−7−イル]シクロヘキサンカルボン酸(OSI−027としても知られる)、ならびにそのいずれかの塩類、溶媒和物、水和物、および他の物理的形態、結晶質、非晶質である。参照:US 2007/0112005。OSI−027はUS 2007/0112005に従って製造できる;これを本明細書に援用する。一態様において、mTOR阻害剤はOXA−01である。参照:たとえばWO 2013152342 A1。
【0105】
[116] 複数の態様において、PI3K阻害剤は、GS−1101(イデラリシブ(Idelalisib))、GDC0941(ピクチリシブ(Pictilisib))、LY294002、BKM120(ブパルリシブ(Buparlisib))、PI−103、TGX−221、IC−87114、XL 147、ZSTK474、BYL719、AS−605240、PIK−75、3−メチルアデニン、A66、PIK−93、PIK−90、AZD6482、IPI−145(デュベリシブ(Duvelisib))、TG100−115、AS−252424、PIK294、AS−604850、GSK2636771、BAY 80−6946(コパンリシブ(Copanlisib))、CH5132799、CAY10505、PIK−293、TG100713、CZC24832およびHS−173からなる群から選択される。
【0106】
[117] 複数の態様において、二重PI3K/mTOR阻害剤は、GDC−094、WAY−001、WYE−354、WAY−600、WYE−687、Wyeth−BMCL−200910075−16b、Wyeth−BMCL−200910096−27、KU0063794およびKUBMCL−200908069−5、NVP−BEZ235、XL−765、PF−04691502、GDC−0980(アピトリシブ(Apitolisib))、GSK1059615、PF−05212384、BGT226、PKI−402、VS−558およびGSK2126458からなる群から選択される。参照:たとえばLiu et al. Drug Disc. Today Ther. Strateg., 6(2): 47-55 (2009), 本明細書に援用する。
【0107】
[118] 複数の態様において、mTOR経路阻害剤は、ポリペプチド(たとえば、抗体またはそのフラグメント)または核酸(たとえば、二本鎖低分子干渉RNA、ショートヘアピンRNA、マイクロRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、ロックト核酸、またはアプタマー)であって、mTOR経路のタンパク質(またはそのタンパク質をコードする核酸)に結合してその発現レベルまたは活性を阻害するものである。たとえば、それらのポリペプチドまたは核酸は下記のものを阻害する:mTOR複合体1(mTORC1)、mTOR調節関連タンパク質(regulatory-associated protein of mTOR)(Raptor)、哺乳類致死性SEC13タンパク質8(mammalian lethal with SEC13 protein 8)(MLST8)、40kDaのプロリンリッチAkt基質(proline-rich Akt substrate of 40 kDa)(PRAS40)、DEPドメイン含有mTOR相互作用タンパク質(DEP domain-containing mTOR-interacting protein)(DEPTOR)、mTOR複合体2(mTOR Complex 2)(mTORC2)、ラパマイシン非感受性mTORコンパニオン(rapamycin-insensitive companion of mTOR)(RICTOR)、Gタンパク質ベータサブユニット様(G protein beta subunit-like)(GβL)、哺乳類ストレス活性化プロテインキナーゼ相互作用タンパク質1(mammalian stress-activated protein kinase interacting protein 1)(mSIN1)、パキシリン(paxillin)、RhoA、Ras関連C3ボツリヌストキシン基質1(Ras-related C3 botulinum toxin substrate 1)(Rac1)、細胞分裂制御タンパク質42ホモログ(Cell division control protein 42 homolog)(Cdc42)、プロテインキナーゼCα(protein kinase C α)(PKCα)、セリン/トレオニンプロテインキナーゼAkt、ホスホイノシチド3−キナーゼ(phosphoinositide 3-kinase)(PI3K)、p70S6K、Ras、および/または真核細胞転写開始因子4E(eIF4E)結合タンパク質(eukaryotic translation initiation factor 4E(eIF4E)-binding protein)(4EBPs)、またはこれらのタンパク質のうちの1つをコードする核酸。
【0108】
[119] 複数の態様において、SRC阻害剤は、ボスチニブ(bosutinib)、サラカチニブ(saracatinib)、ダサチニブ(dasatinib)、ポナチニブ(ponatinib)、KX2−391、XL−228、TG100435/TG100855、およびDCC2036からなる群から選択される。参照:たとえばPuls et al. Oncologist. 2011 May; 16(5): 566-578。一態様において、SRC阻害剤は、ポリペプチド(たとえば、抗体またはそのフラグメント)または核酸(たとえば、二本鎖低分子干渉RNA、ショートヘアピンRNA、マイクロRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、ロックト核酸、またはアプタマー)であって、SRCタンパク質、またはSRCタンパク質をコードする核酸に結合してその活性または発現レベルを阻害するものである。
【0109】
[120] 複数の態様において、VEGF阻害剤は、ベバシズマブ、スニチニブ、パゾパニブ、アキシチニブ、ソラフェニブ、レゴラフェニブ(regorafenib), レンバチニブ、およびモテサニブ(motesanib)から選択される。一態様において、VEGF阻害剤は、ポリペプチド(たとえば、抗体またはそのフラグメント)または核酸(たとえば、二本鎖低分子干渉RNA、ショートヘアピンRNA、マイクロRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、モルホリノ、ロックト核酸、またはアプタマー)であって、VEGFタンパク質、VEGF受容体タンパク質、またはこれらのタンパク質のうちの1つをコードする核酸に結合してその発現レベルまたは活性を阻害するものである。たとえば、VEGF阻害剤は可溶性VEGF受容体(たとえば、可溶性VEGF−C/D受容体(sVEGFR−3))である。
【0110】
[121] 複数の態様において、JAK阻害剤は、ファシチニブ(facitinib)、ルキソリチニブ(ruxolitinib)、バリシチニブ(baricitinib)、CYT387(CAS番号1056634−68−4)、レスタウルチニブ(lestaurtinib)、パクリチニブ(pacritinib)、およびTG101348(CAS番号936091−26−8)から選択される。一態様において、JAK阻害剤は、ポリペプチド(たとえば、抗体またはそのフラグメント)または核酸(たとえば、二本鎖低分子干渉RNA、ショートヘアピンRNA、マイクロRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、モルホリノ、ロックト核酸、またはアプタマー)であって、JAK(たとえば、JAK1、JAK2、JAK3、またはTYK2)またはJAKタンパク質をコードする核酸に結合してその発現レベルまたは活性を阻害するものである。
【0111】
[122] 複数の態様において、Raf阻害剤は、PLX4032(ベムラフェニブ(vemurafenib))、ソラフェニブ、PLX−4720、GSK2118436(ダフラフェニブ(dabrafenib))、GDC−0879、RAF265、AZ 628、NVP−BHG712、SB90885、ZM 336372、GW5074、TAK−632、CEP−32496および LGX818(エンコラフェニブ(Encorafenib))から選択される。一態様において、Raf阻害剤は、ポリペプチド(たとえば、抗体またはそのフラグメント)または核酸(たとえば、二本鎖低分子干渉RNA、ショートヘアピンRNA、マイクロRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、モルホリノ、ロックト核酸、またはアプタマー)であって、Raf(たとえば、A−Raf、B−Raf、C−Raf)またはRafタンパク質をコードする核酸に結合してその発現レベルまたは活性を阻害するものである。一態様において、MEK阻害剤は、AZD6244(セルメチニブ(Selumetinib))、PD0325901、GSK1120212(トラメチニブ(Trametinib))、U0126−EtOH、PD184352、RDEA119(ラファメチニブ(Rafametinib))、PD98059、BIX 02189、MEK162(ビニメチニブ(Binimetinib))、AS−703026(ピマセルチブ(Pimasertib))、SL−327、BIX02188、AZD8330、TAK−733およびPD318088から選択される。一態様において、MEK阻害剤は、ポリペプチド(たとえば、抗体またはそのフラグメント)または核酸(たとえば、二本鎖低分子干渉RNA、ショートヘアピンRNA、マイクロRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、モルホリノ、ロックト核酸、またはアプタマー)であって、MEK(たとえば、MEK−1、MEK−2)またはMEKタンパク質をコードする核酸に結合してその発現レベルまたは活性を阻害するものである。
【0112】
[123] 複数の態様において、Akt阻害剤は、MK−2206、KRX−0401(ペリホシン(perifosine))、GSK690693、GDC−0068(イパタセルチブ(Ipatasertib))、AZD5363、CCT128930、A−674563、PHT−427から選択される。一態様において、Akt阻害剤は、ポリペプチド(たとえば、抗体またはそのフラグメント)または核酸(たとえば、二本鎖低分子干渉RNA、ショートヘアピンRNA、マイクロRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、モルホリノ、ロックト核酸、またはアプタマー)であって、Akt(たとえば、Akt−1、Akt−2、Akt−3)またはAktタンパク質をコードする核酸に結合してその発現レベルまたは活性を阻害するものである。
【0113】
[124] 複数の態様において、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤は、LB42708またはティピファルニブ(tipifarnib)から選択される。一態様において、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤は、ポリペプチド(たとえば、抗体またはそのフラグメント)または核酸(たとえば、二本鎖低分子干渉RNA、ショートヘアピンRNA、マイクロRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、モルホリノ、ロックト核酸、またはアプタマー)であって、ファルネシルトランスフェラーゼまたはファルネシルトランスフェラーゼタンパク質をコードする核酸結合してその発現レベルまたは活性を阻害するものである。
【0114】
[125] 一態様において、c−MET阻害剤は、クリゾチニブ(crizotinib)、チバンチニブ(tivantinib)、カボザンチニブ(cabozantinib)、フォレチニブ(foretinib)から選択される。一態様において、c−MET阻害剤は、ポリペプチド(たとえば、抗体またはそのフラグメント)または核酸(たとえば、二本鎖低分子干渉RNA、ショートヘアピンRNA、マイクロRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、ロックト核酸、またはアプタマー)であって、c−MET、またはc−METタンパク質もしくはHGFリガンドをコードする核酸に結合してその発現レベルまたは活性を阻害するもの、たとえばフィクラツヅマブ(ficlatuzumab)もしくはリロツムマブ(rilotumumab)である。
【0115】
[126] 一態様において、ヒストン調節阻害剤は、アナカルド酸(anacardic acid)、C646、MG149(ヒストンアセチルトランスフェラーゼ)、GSK J4 Hcl(ヒストンデメチラーゼ)、GSK343(EZH2に対して活性)、BIX 01294(ヒストンメチルトランスフェラーゼ)、MK0683(ボリノスタット(Vorinostat))、MS275(エンチノスタット(Entinostat))、LBH589(パノビノスタット(Panobinostat))、トリコスタチンA(Trichostatin A)、MGCD0103(モセチノスタット(Mocetinostat))、タスキニモド(Tasquinimod)、TMP269、ネクスチュラスタットA(Nexturastat A)、RG2833、PDX101(ベリノスタット(Belinostat))から選択される。
【0116】
[127] 複数の態様において、抗有糸分裂剤は、グリセオフルビン(Griseofulvin)、酒石酸ビノレルビン(vinorelbine tartrate)、パクリタキセル(paclitaxel)、ドセタキセル(docetaxel)、ビンクリスチンン, ビンブラスチン(vinblastine)、エポチロン(Epothilone)A、エポチロンB、ABT−751、CYT997(レキシブリン(Lexibulin)), 酒石酸ビンフルニン(vinflunine tartrate)、ホスブレタブリン(Fosbretabulin)、GSK461364、ON−01910(リゴセルチブ(Rigosertib))、Ro3280、BI2536、NMS−P937、BI 6727(ボラセルチブ(Volasertib))、HMN−214およびMLN0905から選択される。
【0117】
[128] 複数の態様において、チロシンキナーゼ阻害剤は、ボトリエント(Votrient)、アキシチニブ(Axitinib)、ボルテゾミブ(Bortezomib)、ボスチニブ(Bosutinib)、カルフィルゾミブ(Carfilzomib)、クリゾチニブ(Crizotinib)、ダブラフェニブ(Dabrafenib)、ダサチニブ(Dasatinib)、エルロチニブ(Erlotinib)、ゲフィチニブ(Gefitinib)、イブルチニブ(Ibrutinib)、イマチニブ(Imatinib)、ラパチニブ(Lapatinib)、ニロチニブ(Nilotinib)、ペガプタニブ(Pegaptanib)、ポナチニブ(Ponatinib)、レゴラフェニブ(Regorafenib)、ルキソリチニブ(Ruxolitinib)、ソラフェニブ(Sorafenib)、スニチニブ(Sunitinib)、トレメチニブ(Trametinib)、バンデタニブ(Vandetanib)、ベムラフェニブ(Vemurafenib)、およびビスモデギブ(Vismodegib)から選択される。
【0118】
[129] 一態様において、ポリエーテル系抗生物質はナトリウムモネンシン(sodium monensin)、ニゲリシン(nigericin)、バリノマイシン(valinomycin)、サリノマイシン(salinomycin)から選択される。
【0119】
[130] “医薬組成物”は、本明細書に記載する化合物を、対象に投与するのに適した医薬的に許容できる剤形中に含有する配合物である。本明細書中で用いる“医薬的に許容できる”という句は、堅実な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症なしに、妥当なリスク・ベネフィット比に相応して、ヒトおよび動物の組織と接触させて使用するのに適した化合物、物質、組成物、キャリヤー、および/または剤形を表わす。
【0120】
[131] “医薬的に許容できる賦形剤”は、医薬組成物を調製するのに有用な、一般的に安全、無毒性であり、かつ生物学的にも他の点でも不都合でない賦形剤を意味し、動物医療用にもヒトの医療用にも許容できる賦形剤を含む。医薬的に許容できる賦形剤の例には、限定ではなく、無菌の液体である水、緩衝塩類溶液、エタノール、ポリオール(たとえば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、油類、界面活性剤、懸濁化剤、炭水化物(たとえば、グルコース、ラクトース、スクロースまたはデキストラン)、抗酸化剤(たとえば、アスコルビン酸またはグルタチオン)、キレート化剤、低分子量タンパク質、またはその適切な混合物が含まれる。
【0121】
[132] 医薬組成物はバルクまたは単位剤形で供給できる。投与の容易さおよび投与量の均一性のために、医薬組成物を単位剤形で配合することが特に有利である。本明細書中で用いる用語“単位剤形”は、処置される対象のための単位投与量として適した物理的に分離した単位を表わす;各単位は、目的とする療法効果を生じるように計算された前決定量の有効化合物を必要な医薬用キャリヤーと共に含有する。本開示の単位剤形についての詳細は、有効化合物の独自の特性および達成すべき特定の療法効果によって支配され、それらに直接依存する。単位剤形は、アンプル、バイアル、坐剤、糖衣丸、錠剤、カプセル剤、IVバッグ、またはエアゾールインヘラーにおける1回の圧出であってもよい。
【0122】
[133] 療法適用に際して、投与量は、選択した投与量に影響を及ぼす他の要因のうち、特に薬剤、レシピエント患者の年齢、体重、および臨床状態、ならびにその療法を施す臨床医または専門医の経験および判断に応じて変動する。一般に、用量は療法有効量であるべきである。投与量はmg/kg/日の測定単位で提示できる(その用量は患者の体重kg、体表面積m、および年齢に合わせることができる)。医薬組成物の有効量は、臨床医または資格をもつ他の観察者が認めるような客観的に同定できる改善をもたらすものである。たとえば、障害、疾患または状態の症状の軽減。本明細書中で用いる用語“有効投与量”は、対象または細胞において目的とする生物学的効果を生じる医薬組成物の量を表わす。
【0123】
[134] たとえば、単位剤形は1ナノグラム〜2ミリグラム、もしくは0.1ミリグラム〜2グラム;または10ミリグラムから1グラムまで、もしくは50ミリグラムから500ミリグラムまで、もしくは1マイクログラムから20ミリグラムまで;または1マイクログラムから10ミリグラムまで;または0.1ミリグラムから2ミリグラムまでを含むことができる。
【0124】
[135] 医薬組成物は、いずれか希望する経路(たとえば、肺、吸入、鼻内、経口、口腔、舌下、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸膜腔内、クモ膜下、経皮、経粘膜、直腸など)による投与のためのいずれか適切な形態をとることができる(たとえば、液体、エアゾール剤、液剤、吸入剤、ミスト剤(mist)、スプレー剤;または固体、散剤、軟膏剤、パスタ剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、パッチ剤など)。たとえば、本開示の医薬組成物は、吸入または吹入によるエアゾール投与(口または鼻を通して)のための水溶液または粉末の形態;経口投与のための錠剤またはカプセル剤の形態;直接注射によるかまたは静脈内注入用の無菌注入液への添加による投与に適した無菌水性液剤または分散液剤の形態;あるいは経皮または経粘膜投与のためのローション剤、クリーム剤、発泡製剤、パッチ剤、懸濁液剤、液剤、または坐剤の形態であってもよい。
【0125】
[136] 医薬組成物は経口用として許容できる剤形の形態であってもよく、それにはカプセル剤、錠剤、口腔剤形、トローチ剤、ロゼンジ、および乳剤、水性懸濁液剤、分散液剤または液剤の形態の経口液体が含まれるが、これらに限定されない。カプセル剤は、本開示の化合物と、不活性な増量剤および/または希釈剤、たとえば医薬的に許容できるデンプン(たとえば、トウモロコシ、バレイショまたはタピオカのデンプン)、糖類、人工甘味料、粉末状のセルロース、たとえば結晶質および微結晶質セルロース、穀粉、ゼラチン、ガムなどとの混合物を収容することができる。経口用錠剤の場合、慣用されるキャリヤーには、ラクトースおよびトウモロコシデンプンが含まれる。滑沢剤、たとえばステアリン酸マグネシウムも添加できる。カプセル剤の形態での経口投与のために、有用な希釈剤にはラクトースおよび乾燥トウモロコシデンプンが含まれる。水性懸濁液剤および/また乳剤を経口投与する場合、乳化剤および/または懸濁化剤と混和した油相に本開示の化合物を懸濁または溶解することができる。所望により、ある甘味料および/または矯味矯臭剤および/または着色剤を添加してもよい。
【0126】
[137] 医薬組成物は錠剤の形態であってもよい。錠剤は、単位量の本開示の化合物を、不活性な希釈剤またはキャリヤー、たとえば糖または糖アルコール、たとえばラクトース、スクロース、ソルビトールまたはマンニトールと一緒に含むことができる。錠剤はさらに非糖由来の希釈剤、たとえば炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、またはセルロースもしくはその誘導体、たとえばメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびデンプン、たとえばトウモロコシデンプンを含むことができる。錠剤はさらに、結合剤および造粒剤、たとえばポリビニルピロリドン、崩壊剤(たとえば膨潤性の架橋ポリマー、たとえば架橋カルボキシメチルセルロース)、滑沢剤(たとえば、ステアレート)、保存剤(たとえば、パラベン類)、抗酸化剤(たとえば、BHT)、緩衝剤(たとえば、リン酸緩衝液またはクエン酸緩衝液)、および発泡剤、たとえばシトレート/バイカーボネート混合物を含むことができる。
【0127】
[138] 錠剤はコーティング錠であってもよい。コーティングは、保護膜コーティング(たとえば、ろうまたはワニス)、または活性薬剤の放出を制御するためにデザインされた、たとえば遅延放出(摂取後の前決定した遅滞時間後に活性薬剤を放出)もしくは消化管内の特定位置での放出のためのコーティングであってもよい。後者は、たとえば腸溶膜コーティング、たとえば商品名Eudragit(登録商標)で販売されているものを用いて達成できる。
【0128】
[139] 錠剤配合物は一般的な圧縮法、湿式造粒法または乾式造粒法により製造でき、医薬的に許容できる希釈剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、表面改質剤(界面活性剤を含む)、懸濁化剤または安定剤を使用し、それにはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、アルギン酸、アラビアゴム、キサンタンガム、クエン酸ナトリウム、複合ケイ酸塩、炭酸カルシウム、グリシン、デキストリン、スクロース、ソルビトール、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、タルク、乾燥デンプンおよび粉末糖が含まれるが、これらに限定されない。好ましい表面改質剤には、非イオンおよびアニオン表面改質剤が含まれる。表面改質剤の代表例には、ポロキサマー188、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール(cetomacrogol)系乳化ろう、ソルビタンエステル、コロイド二酸化ケイ素、ホスフェート、ドデシル硫酸ナトリウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、およびトリエタノールアミンが含まれるが、これらに限定されない。
【0129】
[140] 医薬組成物はハードまたはソフトゼラチンカプセル剤の形態であってもよい。この配合によれば、本開示の化合物は固体、半固体または液体の形態であってもよい。
[141] 医薬組成物は、非経口投与に適した無菌の水性液剤または分散液剤であってもよい。本明細書中で用いる非経口という用語は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液包内、胸骨内、クモ膜下、病巣内および頭蓋内への注射法または注入法を含む。
【0130】
[142] 医薬組成物は、直接注射による投与または静脈内注入用の無菌注入液への添加による投与のいずれかに適した、無菌の水性液剤または分散液剤の形態であってもよく、水、エタノール、ポリオール(たとえば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール)、その適切な混合物、または1種類以上の植物油を含有する溶媒または分散媒を含む。遊離塩基または医薬的に許容できる塩としての本開示の化合物の液剤または懸濁液剤は、適切に界面活性剤と混合した水中に調製できる。適切な界面活性剤の例を後記に挙げる。分散液剤も、たとえばグリセロール、液体ポリエチレングリコール、および油中におけるそれの混合物中に調製できる。
【0131】
[143] 本開示の方法に使用するための医薬組成物は、配合物中に存在するいずれかのキャリヤーまたは希釈剤(たとえば、ラクトースまたはマンニトール)のほかに、さらに1種類以上の添加剤を含むことができる。この1種類以上の添加剤は、1種類以上の界面活性剤を含むかまたはそれからなることができる。界面活性剤は一般に1以上の長い脂肪族鎖、たとえば脂肪酸をもち、それによりそれらは細胞の脂質構造体中へ直接挿入されて薬物の透過および吸収を増強することができる。界面活性剤の相対的な親水性および疎水性を特徴づけるために一般に用いられる経験的パラメーターは、親水性−疎水性バランス(“HLB”値)である。より低いHLB値をもつ界面活性剤はより疎水性であって油中においてより大きな溶解度をもち、一方、より高いHLB値をもつ界面活性剤はより親水性であって水溶液中においてより大きな溶解度をもつ。よって、親水性界面活性剤は一般に約10より大きいHLB値をもつ化合物であるとみなされ、疎水性界面活性剤は一般に約10より小さいHLB値をもつものである。しかし、多くの界面活性剤についてHLB値はHLB値を決定するために選択する経験的方法に応じて約8HLB単位も異なる可能性があるので、これらのHLB値は指標にすぎない。
【0132】
[144] 本開示の組成物中に使用する界面活性剤には、下記のものが含まれる:ポリエチレングリコール(PEG)−脂肪酸ならびにPEG−脂肪酸モノおよびジエステル、PEGグリセロールエステル、アルコール−油エステル交換生成物、ポリグリセリル脂肪酸、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステロールおよびステロール誘導体、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、糖およびそれの誘導体、ポリエチレングリコールアルキルフェノール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン(POE−POP)ブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、イオン性界面活性剤、脂溶性ビタミンおよびそれらの塩類、水溶性ビタミンおよびそれらの両親媒性誘導体、アミノ酸およびそれらの塩類、ならびに有機酸およびそれらのエステルおよび無水物。
【0133】
[145] 本開示は、本開示の方法に使用するための医薬組成物を含むパッケージングおよびキットも提供する。キットは、ボトル、バイアル、アンプル、ブリスターパック、および注射器からなる群から選択される1以上の容器を含むこともできる。キットはさらに、本開示の疾患、状態または障害を治療および/または防止する際に使用するための1以上の指示、1以上の注射器、1以上のアプリケーター、または本開示の医薬組成物を再構成するのに適した無菌溶液を含むことができる。
【0134】
[146] 本明細書中で用いるすべてのパーセントおよび比率は、別に指示しない限り重量による。本開示の他の特徴および利点は種々の例から明らかである。提示した例は、本開示を実施するのに有用な種々の成分および方法を示す。それらの例は特許請求の範囲の開示内容を限定しない。本開示に基づいて、当業者は本開示を実施するのに有用な他の成分および方法を同定および利用できる。
【実施例】
【0135】
実施例1:TFEBはアピリモドに活性を付与する
[147] 本発明者らは、アピリモドがTSCヌル細胞において細胞毒性の高い薬剤であることを先に示した。これらの細胞において、多数の癌においてそうであるようにmTOR経路は構成性活性である。100を超える癌細胞株のスクリーニングにより、アピリモドは多様なタイプの癌において細胞毒性であることが示された。本発明者らの結果はさらに、アピリモドの細胞毒性が細胞内トラフィッキングの阻害ならびにそれに対応するアポトーシスおよび/またはオートファジーの増大によるものであることを示した。
【0136】
[148] アピリモドの細胞作用機序をさらに理解するために、本発明者らは2つの非ホジキンB細胞リンパ腫(B−NHL)腫瘍細胞株SU−DHL−10およびWSU−DLCL2をアピリモド処理した後に起きる変化の包括的な遺伝子発現解析を行なった。図1は、遺伝子発現変化のヒートマップ図を示す。アップレギュレートされた遺伝子は赤で表わされ、ヒートマップの頂部へ向かってクラスタリングし、一方、ダウンレギュレートされた遺伝子は青で表わされ、ヒートマップの底部へ向かってクラスタリングしている。本発明者らは次いで遺伝子オントロジー解析を行なった。図2に示すように、アピリモドにより誘導されたリソソーム遺伝子の明瞭なエンリッチメントがみられた。本発明者らは次いでLysoTracker染色を用いて細胞の酸性化されたコンパートメントを調べた。図3は、酸性化されたコンパートメントが拡大したことを示し、これは遺伝子発現所見と一致してリソソーム生物発生がアピリモドによってアップレギュレートされることを示唆する。
【0137】
[149] TFEBはリソソーム遺伝子発現のマスターレギュレーターであり、脱リン酸によって活性化された後、核内トランスロケーションする(Roczniak-Ferguson et al., 2012; Settembre et al., 2012)。したがって、本発明者らは次にアピリモド処理後のTFEBのリン酸化状態および細胞内局在状態を調べた。図4は、2時間以内の処理でTFEBが脱リン酸され(電気泳動移動度の増大が指標となる)、他の細胞タイプにおいて観察されたように(Wang et al., 2015)核内へトランスロケーションすることを示す。まとめると、これらの結果は、アピリモドがTFEB脱リン酸および核内トランスロケーションを誘導し、続いてリソソーム遺伝子発現を増強することを指摘する。
【0138】
[150] アピリモドに対する細胞応答におけるTFEBの役割をさらに探索するために、種々の細胞株にわたるTFEBの発現レベルをCancer Cell Line Encyclopedia(CCLE)データベース(Barretina et al., 2012)から抽出および調査して、TFEB発現とアピリモドに対する細胞株の感受性との間に相関性があるかどうかを判定した。図5は、多数の細胞株におけるTFEBの発現レベルを示す。図5に示すように、TFEBは他のすべての腫瘍タイプと比較してB−NHLに高度に発現する。増大したTFEB発現レベルがB−NHLにおいて観察されたアピリモド感受性に寄与するかどうかを試験するために、本発明者らはTFEBをTFEB欠損B−NHL細胞株CA46において過剰発現させた。図6に示すように、TFEBの過剰発現はアピリモド感受性を50倍以上増大させた。
【0139】
[151] まとめると、ここに提示するデータは高レベルのTFEB発現はアピリモドに対する感受性を付与することを立証する。
実施例2:癌における小眼球症(MiT)転写因子
[152] TFEBは、MiTファミリー、すなわち相同性の高い遺伝子MITF、TFE3、およびTFECも含まれるファミリーのベーシックヘリックス−ループ−ヘリックス ロイシンジッパー転写因子のメンバーである(Fisher et al. 1991)。MITFはこのファミリーの最も良く解明されたメンバーであり、メラニン細胞の生物発生のマスターレギュレーターであり、かつメラノーマおよび淡明細胞肉腫の樹立されたドライバーである(Steingrimsson et al. 2004; Garraway et al. 2005; Davis et al. 2006)。染色体トランスロケーションによるTFEBおよびTFE3の過剰発現は腎細胞癌発症における関与が示唆されており、TFE3過剰発現はさらに胞巣状軟部肉腫および血管周囲類上皮細胞腫瘍における関与が示唆されている(総説:Haq et al. 2011; Kauffman et al. 2014)。TFEC過剰発現はマクロファージに限定され、最も研究の少ないMiTファミリーメンバーであり、それの機能についてはほとんど分かっていない(Rehli et al. 1999)。MiTファミリーのメンバーはエンドリソソームおよびオートファゴソームの生物発生ならびにオートファジーを調節することが知られており、TFEBは特にリソソームのマスターレギュレーターとして注目されている(Sardiello et al. 2009; Settembre et al. 2012; Martina et al. 2014; Ploper et al. 2015)。高レベルのTFEBはB−NHLにおいてアピリモドに対する感受性を付与するので、本発明者らは、1種類以上のMiTファミリーまたは転写因子の発現および/または活性の増大を特徴とする他の癌もアピリモドに対して感受性であろうと提唱する。これらには腎細胞癌、メラノーマ、淡明細胞肉腫、胞巣状軟部肉腫、および血管周囲類上皮細胞腫瘍が含まれる可能性があるが、これらに限定されない。
【0140】
実施例3:腎細胞癌
[153] TFEB、TFE3およびMITFはそれぞれ、腎細胞癌(RCC)においてしばしば変異する他の遺伝子、たとえばVHL、MET、FLCN、フマル酸ヒドラターゼ、コハク酸デヒドロゲナーゼ、TSC1およびTSC2と共同して、腎細胞代謝を変化させることにより腎癌発症に関与することが示唆されている(Linehan 2012)。機能性転写因子の過剰発現および核局在をもたらすTFEBおよびTFE3のトランスロケーションは、トランスロケーション癌、すなわち散発性RCCの1〜5%を占める稀なRCCサブタイプにおいて起きる(Shuch et al. 2015)。さらに、新規な発癌性MITF融合遺伝子であるACTG1−MITFがRCCにおいて同定された(Durinck et al, 2015)。最後に、転写活性の増大をもたらすMITFの生殖細胞ミスセンス変異が、メラノーマおよびRCCの両方においてレポートされた(Bertolotto et al. 2011)。
【0141】
[154] RCCは、成人において最も一般的なタイプの腎癌であり、成人悪性疾患の2〜3%および腎起源の新生物の90〜95%を占める(Cancer Facts and Figures 2015)。米国で毎年おおよそ65,000の新たなRCC症例があり、年間約13,500人がRCCで死亡し、65歳がこれらの疾患の発症時の中央年齢とされる(Siegel et al. 2012)。進行したRCCは、腎切除とVEGF阻害剤(スニチニブ、パゾパニブ、ベバシズマブ、ソラフェニブ、カボザンチニブおよびアキシチニブ)およびmTOR阻害剤(エベロリムスおよびテムシロリムス)を含む標的療法との組合わせで処置される(Cancer Facts and Figures 2015)。
【0142】
[155] 淡明細胞RCCは主な組織学的サブタイプのRCCであり、全RCCのおおよそ75%を占める(Shuch et al. 2015)。これらの腫瘍は、脂質およびグリコーゲンの沈積によるそれらの多量の透明な細胞質にちなんで名づけられた(Shuch et al. 2015)。淡明細胞RCCはより高いグレードの予後不良な転移性疾患をもたらす傾向がある(Shuch et al. 2015)。フォン・ヒッペル・リンドウ遺伝子VHLにおける変異は淡明細胞RCCの最大90%に起きるとレポートされている(Nickerson et al. 2008)。ユビキチンリガーゼとしてのVHL機能の異常は、転写因子HIFアルファの蓄積、ならびにVEGFおよびPDGFを含めた低酸素応答遺伝子のアップレギュレーション、続いてシグナル伝達経路、たとえばRAF−MEK−ERKおよびPI3K−Akt−mTORの誘導を生じる(Clarke 2009)。
【0143】
[156] 本発明者らは、次いで、多数の淡明細胞RCC細胞株が、5日間のアッセイで200nM未満のEC50として定められる感受性でアピリモドに対してインビトロ感受性を示すことを立証した(7および下記の表1)。本発明者らは、アピリモドが5日間のアッセイで、標準治療であるアキシチニブ、ソラフェニブ、パゾパニブ、スニチニブ、およびラパマイシンと対比して淡明細胞RCCに対する卓越した活性をもつことも立証した(図8)。
【0144】
【表1】
【0145】
[157] 本発明者らのデータは、表2に示すようにVHL変異をもつRCCにおいてアピリモドが優先的に細胞毒性であることをも示唆する。
【0146】
【表2】
【0147】
[158] 淡明細胞RCCはアピリモドに対する感受性を示すので、本発明者らは、他のRCCサブタイプもアピリモドに対して感受性であろうと提唱する;それには乳頭状I型およびII型、色素嫌性、ハイブリッド、膨大細胞腫,トランスロケーション、血管筋脂肪腫、膨大細胞癌、髄様癌、ならびに集合管癌が含まれるが、これらに限定されない。
【0148】
実施例4:TFEBトランスロケーション腎細胞癌
[159] TFEBトランスロケーションRCCは稀であり、現在までにレポートされているのはおおよそ50の症例である(Argani 2015)。確立された臨床特徴が無い結果としての誤診のため、この数は過小評価されている可能性がある。50の症例のうち4例は転移を伴っており、結果的にこれらの症例のうち3例が死亡した(Argani, 2015)。TFEBトランスロケーションRCC発症の中央年齢は31歳であり、少数の症例において小児の細胞毒化学療法が原因として指摘された(Argani, 2015)。
【0149】
[160] TFEBトランスロケーションRCCには特異的なt(6;11)(p21;q12)トランスロケーションがあり、それによりTFEB遺伝子座がアルファ(MALAT1)、すなわち機能未知のノンコーディングRNAに融合し、その結果、全長TFEBが過剰発現する(Davis et al. 2003; Kuiper et al. 2003; 総説:Kauffman et al. 2014)。アルファ−TFEB融合遺伝子はRT−PCR、DNA PCR、またはFISHにより検出できる(Argani et al. 2005; Argani et al. 2012)。さらに、CLCTC−TFEB融合遺伝子がトランスロケーションRCC腫瘍において最近同定され、それはアルファ−TFEB融合遺伝子のような機能をもつと推定される(Durinck et al., 2015)。TFEBトランスロケーションRCCは、qRT−PCRによればTFEB転写体の30〜60倍アップレギュレーションを示し、その結果、ウェスタンブロットにより査定して正常な腎組織に対比してTFEBタンパク質が高発現し(Kuiper et al. 2003)、強い核TFEB染色がIHCにより検出される(Argani et al. 2005)。
【0150】
[161] 臨床的にはTFEBトランスロケーションRCCは明瞭な外観をもたず、高グレード未分類RCCという幅広い鑑別診断が与えられる可能性がある(Argani, 2015)。しかし、これらの腫瘍はIHCにより核TFEB免疫反応性が立証され、かつメラノーママーカーであるMelan AおよびHMB45についてシステインプロテアーゼカテプシンKと共に陽性染色される(Argani et al. 2005; Martignoni et al. 2009)。TFEBブレイクアパートFISHアッセイ(TFEB breakapart FISH assay)は変動しやすい固定による影響がより少ないので、それはホルマリン固定およびパラフィン包埋材料におけるTFEBトランスロケーションRCCのための好ましい診断検査である(Argani et al. 2012)。
【0151】
[162] TFEBトランスロケーションRCCの臨床関連性は確立されたが、進行したトランスロケーションRCCに対して有効な療法薬は現在は無い。高レベルのTFEBがアピリモドに対する感受性に関与していることをB−NHLにおいて本発明者らが立証したので、TFEBトランスロケーションRCCもアピリモドに対して強い感受性を示すであろうと推定される。
【0152】
実施例5:TFE3トランスロケーション腎細胞癌
[163] TFE3トランスロケーションRCCは小児RCCの40%および成人RCCの5%未満を占め、米国で毎年おおよそ10の新たな小児症例および1,260の新たな成人症例が生じている(Magers et al. 2015)。TFEBトランスロケーションRCCの場合と同様に、小児の細胞毒化学療法がTFE3トランスロケーションRCCの原因として指摘され、それは曝露後2〜14年で起きる傾向がある。小児のTFE3 RCC症例は緩慢な傾向があるが、成人の症例はしばしば初期の結節波及、攻撃的な転移および淡明細胞RCCのものと類似の予後を伴う(Magers et al. 2015, Geller et al. 2008)。さらに、これらの腫瘍は完全な腫瘍切除の数十年後に制御不能な腫瘍として再出現する可能性がある(Dal Cin P et al, 1998; Rais-Bhahrami S, et al, 2007)。
【0153】
[164] 臨床的には、TFE3トランスロケーションRCCは淡明細胞RCCに類似し、乳頭状構造物および類上皮淡明細胞を伴う。形態学的に変動性であって他のRCCサブタイプに類似する可能性があり、分類を困難にしている(Argani, 2015)。適切には、これらの腫瘍はIHCによって強い核TFE3免疫活性を示し、CD10およびRCC抗原についても陽性染色され、しばしばカテプシンKについて陽性染色される(Argani et al. 2003; Argani et al. 2005; Martignoni et al. 2009)。
【0154】
[165] Xp11上のTFE3遺伝子座が関係する5タイプのトランスロケーションが現在までに文献中に記載されている:PRCC−TFE3、ASPSCR1−TFE3、SFPQ−TFE3、NONO−TFE3、およびCLTC−TFE3(Kauffman et al. 2014)。PRCC−TFE3、ASPSCR1−TFE3、およびSFPQ−TFE3トランスロケーションは複数の患者において反復変異として確認され、一方、NONO−TFE3およびCLTC−TFE3融合遺伝子は現在までに一人の患者において同定された(Kauffman et al. 2014)。特に、ASPSCR1−TFE3融合遺伝子は稀な肺癌タイプである胞巣状軟部肉腫においても反復変異として同定され、SFPQ−TFE3融合遺伝子は血管周囲類上皮細胞新生物において同定された(Landanyi et al. 2001; Tanaka et al. 2009)。これらの融合遺伝子の破断点部位は多様であるが、各融合パートナーのN末端部分が、ある範囲のC末端TFE3エキソンに連結した融合生成物が生じる。すべての融合パートナーが構成性活性プロモーターをもち、その結果、機能性TFE3タンパク質が過剰発現する(Kauffman et al. 2014)。TFE3トランスロケーションは、TFE3 C末端に対する抗体による強い核染色によって、またはブレイクアパートFISHアッセイによって検出できる(Argani 2015)。
【0155】
[166] 幾つかの細胞株がTFE3トランスロケーションRCCから誘導された;PRCC−TFE3融合遺伝子は細胞株UOK120、UOK124、およびUOK146に存在する;SFPQ−TFE3融合遺伝子はUOK145細胞株に存在する;ASPSCR1−TFE3融合遺伝子はFU−UR1細胞株に存在する;NONO−TFE3融合遺伝子はUOK109細胞株に存在する(Kauffman et al. 2014)。
【0156】
[167] 本発明者らは、TFE3トランスロケーション細胞株もアピリモドに対する感受性を示す可能性があると考える;これにはTFE3トランスロケーションRCC、胞巣状軟部肉腫および血管周囲類上皮細胞新生物が含まれるが、これらに限定されない。
【0157】
胞巣状軟部肉腫
[168] 胞巣状軟部肉腫(alveolar soft part sarcoma)(ASPS)は、起源細胞が分かっていない増殖速度の遅い稀な新生物である。ASPSは米国で毎年診断される12,000の新たな軟組織肉腫の症例の1%未満を占め(Jaber and Kirby 2014; National Cancer Institute 2014)、成人の大腿または殿部および小児の頭頸部の軟組織に罹患する傾向がある(Jaber and Kirby 2014)。肺、骨、脳および/または肝臓への転移が79%に及ぶ患者において起きる(Lieberman et al. 1989; Portera et al. 2001)。転移性ASPSは、通常は一般的な放射線療法および化学療法に対して抵抗性である(Jaber and Kirby 2014)。
【0158】
[169] ASPSは特異的なトランスロケーションder(17)t(X;17)(p11;25)を特徴とし、それはTFE3をASPSCR1に融合させて機能性TFE3の過剰発現および核局在化を生じる (Jaber and Kirby 2014)。腫瘍内の細胞は明瞭な細胞小器官(organoid)である胞巣様の増殖パターンをもち、細胞は過ヨウ素酸−シッフ(periodic acid-Schiff)、すなわちジスターゼ抵抗性の細胞質内結晶を含む(Jaber and Kirby 2014)。腫瘍は、IHCによる強い核TFE3染色およびカテプシンKについて一貫して陽性である。現在までにASPS腫瘍から1つの細胞株が得られたにすぎない:細胞株ASPS−1(Kenney et al. 2011)。
【0159】
[170] TFEB過剰発現はアピリモドに対する感受性に関与するので、他のMITFファミリーメンバー、たとえばTFE3の過剰発現を含む癌および細胞株もアピリモドに対して感受性であろうと本発明者らは考える;これにはASPSおよび細胞株ASPS−1が含まれるが、これらに限定されない。
【0160】
バート−ホッグ−デュベ症候群
[171] バート−ホッグ−デュベ(Birt-Hogg-Dube)(BHD)症候群は常染色体優性疾患(autosomal dominant genetic disease)であり(Birt et al., 1977)、BHDについて知られている唯一の感受性遺伝子である17番染色体(17p11.2)上のフォリクリン(folliculin)(FLCN)遺伝子における変異から生じる(Schmidt et al, 2005)。FCLN BHD変異は多様であり、53のユニーク生殖細胞変異が同定されている(総説:Wei et al. 2009)。BHDを伴う患者は、濾胞性過誤腫、肺嚢胞症および腎新生物を含めた多様な増殖性疾患の素因をもつ(BHDsyndrome.org)。
【0161】
[172] メカニズム的には、FLCNはフォリクリン相互作用タンパク質−1(folliculin-interacting protein -1)(FNIP1)および−2(FNIP2)ならびに5’−AMP−活性化プロテインキナーゼ(AMPK)と錯体形成して、それをmTORの調節に関連づけ、それにより細胞増殖を調節する(Baba et al 2010)。さらに、UOK257細胞、すなわちFLCNが変異したBHD患者由来の淡明細胞型腎腫瘍細胞株(Yang et al)においてFLCN発現を調節することにより、FLCNはTFE3の核局在化を負に調節することが示された(Hong et al 2010)。この所見と一致して、FLCNを枯渇させたARPE−19細胞はTFE3の核蓄積を示した(Martina et al. 2014)。UOK257異種移植体の分析は核TFE3について陽性染色される腫瘍を示し、一方、正常な隣接腎組織は弱い細胞質染色を示した。これらの所見をさらに確証するものとして、Flcnヌル−MEFは核に局在化したTFE3を示した。最後に、BHD患者に由来する腫瘍組織におけるIHC染色は核染色または核/細胞質染色を明らかに示した。TFE3転移活性の増大をもたらしたFLCN不活性化を確認するために、TFE3ターゲットであるGPNMBをサロゲートマーカーとして用い、正常な腎組織と対比してBHD患者からの腫瘍において増大していることがウェスタンブロット分析により示された。IHCはさらに、腫瘍においてはGPNMBが発現しているが正常組織では発現していないことをBHD患者およびFlcn+/−ヘテロ接合体マウス腎腫瘍からの切片において確証した(Hong et al 2010)。まとめると、これらの所見は、BHD患者にみられたFLCNの機能不活性化を核TFE3局在化および転写活性の増大と関連づける。
【0162】
[173] アピリモドは高レベルの核TFE3を伴う腫瘍に有効であろうという本発明者らの推定からみて、Flcnに変異を伴う腫瘍もアピリモドに対して感受性であると予想され、これには腎癌(Paulovich et al 2002)、結腸直腸癌(Kahnoski et al 2003)、子宮内膜癌(Fujii et al 2006)、胃癌(Jiang et al 2007)が含まれるが、これらに限定されない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
【国際調査報告】