特表2019-504465(P2019-504465A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2019-504465半導体ナノ構造体のための平坦な自由接触面を製造するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-504465(P2019-504465A)
(43)【公表日】2019年2月14日
(54)【発明の名称】半導体ナノ構造体のための平坦な自由接触面を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/06 20060101AFI20190118BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20190118BHJP
   B32B 7/06 20190101ALI20190118BHJP
【FI】
   H01L29/06 601N
   B82Y40/00
   B32B7/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2018-521068(P2018-521068)
(86)(22)【出願日】2016年10月22日
(85)【翻訳文提出日】2018年4月23日
(86)【国際出願番号】DE2016000379
(87)【国際公開番号】WO2017092723
(87)【国際公開日】20170608
(31)【優先権主張番号】102015015452.4
(32)【優先日】2015年12月2日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG
(71)【出願人】
【識別番号】390035448
【氏名又は名称】フォルシュングスツェントルム・ユーリッヒ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】ヘート・ゼバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ゲルハルツ・ユリアン
(72)【発明者】
【氏名】シェーパース・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】グリュッツマッハー・デトレフ
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK25C
4F100AK52D
4F100AR00B
4F100AT00A
4F100AT00C
4F100AT00D
4F100AT00E
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100DD00
4F100DG01B
4F100EC04
4F100EJ01
4F100EJ15
4F100EJ91A
4F100JK15B
(57)【要約】
本発明は、半導体ナノ構造体のための平坦な自由接触面を製造するための方法において、転写基材(1)の表面上に少なくとも一つのナノ構造体(2)が配置され、前記少なくとも一つのナノ構造体(2)を埋設する第一の層(3)が前記転写基材(1)の同じ表面上に施与され、及び前記第一の層(3)上に、第二の基材(5)が施与される方法であって、この際、次いで、前記転写基材(1)が前記第一の層(3)から、その中に埋設される少なくとも一つのナノ構造体(2)が平坦な自由表面を有するように分離される方法に関する。本発明では、前記転写基材(1)上への前記少なくとも一つのナノ構造体(2)の施与の前に、溶剤によって溶解可能な追加的な層(6)が、前記転写基材(1)の表面上に施与され、及び前記転写基材(1)が前記第一の層(3)から溶剤を用いて剥離される。
このようにして、ナノ構造体の平坦化/積層化、及び後続の容易化された電気接触が可能になる。該プロセスステップを反復して使用することにより、例えば水平に配向されたナノワイヤネットワークからなる多層設計を有利に構築できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ構造体の平坦化のための方法において、
−出発基材(1)の表面上に少なくとも一つのナノ構造体(2)を配置し、
−前記出発基材(1)の同じ表面上に、前記少なくとも一つのナノ構造体(2)を埋設する第一の層(3)を施与し、
−及び、前記第一の層(3)の上に、標的基材(5)を施与し、
−この際、それに次いで、出発基材(1)を第一の層(3)から、それに埋設されている前記少なくとも一つのナノ構造体(2)が平坦な自由表面を有するように分離する、
方法であって、
−前記出発基材(1)上への前記少なくとも一つのナノ構造体(2)の施与の前に、追加的な層(6)を、前記出発基材(1)の表面上に施与すること、
−及び、溶剤を用いて、前記第一の層(3)からの出発基材(1)の剥離を行う、
ことを特徴とする前記方法。
【請求項2】
第四化学主族の元素半導体、第三及び第五化学主族の化合物半導体、または第二及び第六化学主族の化合物半導体を含むナノ構造体(2)が使用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記標的基材(5)が、第二の層(4)を介して上記第一の層(3)上に施与される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第二の層(4)が水素−シルセスキオキサン(HSQ)を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記追加的な層(6)が、溶剤中に溶解可能な材料を含む、請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
前記追加的な層(6)が、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メチルメタクリレートとメタクリル酸とのポリマー(コポリマーPMMA/MA)、または光学的フォトレジストを含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
前記追加的な層(6)が、複数のステップで、前記転写基材(1)の表面上に施与される、請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
前記追加的な層(6)が先ず温度処理され、その後に前記少なくとも一つのナノ構造体(2)が施与される、請求項1〜7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも一つのナノ構造体(2)を埋設する前記第一の層(3)が、スピンコート可能なガラスまたは流動性酸化物、特に水素−シルセスキオキサン(HSQ)を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
前記ナノ構造体(2)を埋設する前記第一の層(3)が、先ず構造化され、その後に前記構造化された層上に前記第二の基材(5)が施与される、請求項1〜9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
前記第一の層(3)からの前記転写基材(1)の剥離が、含アセトン溶剤またはシクロペンタノンまたはジメチルスルホキシドを用いて行われる、請求項1〜10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
前記ナノ構造体がエピタキシャル的に生成される、請求項1〜11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
前記出発基材上への前記ナノ構造体の配置が、前記ナノ構造体を含む分散物を用いてまたはマイクロマニピュレータにより行われる、請求項1〜12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
ナノ構造体として、ナノワイヤがまたは結合されたナノワイヤからなるネットワークが配置される、請求項1〜13のいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
前記第一の層(3)及びその中に埋設された前記少なくとも一つのナノ構造体(2)を備えた生じた前記の第二の基材(5)が、次いで、請求項1に記載の方法において標的基材として使用され、そうして、埋設されたナノ構造体を含む複数の互いに重ねて配置された層の系を生成でき、この際、これらのナノ構造体を垂直なスルーホール接触によって接続できる、請求項1〜14のいずれか一つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電気接触の前に、ナノ構造体、特にナノワイヤを平坦化するための新規方法に関する。更に本発明は、複数のナノ構造体を垂直に積層する方法、すなわち、電気接触可能な埋設されたナノワイヤもしくはナノワイヤネットワークもしくは他のナノ構造体を含む一つまたは複数のレイヤーを生成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ここ数年集中的研究の対象であった自己集合ナノ構造体、特に半導体ナノワイヤは、コンピュータチップ中の構成素子としての用途が直ぐ見出された。これは、一方では、慣用のケイ素CMOS技術と比べて、III/V族半導体ナノワイヤにおける明らかに優れた電子易動度の故である。更に、光電子的機能性の可能性、並びにスピントロニクスの領域における新規の電気的に制御可能な磁気的機能性の利用、並びに多くの研究グループが目指す量子コンピューティングの領域におけるナノワイヤの利用がある。スピントロニクスの領域における用途は特に重要である。なぜならば、第III/V族半導体ナノワイヤは、電荷の電子的特性の他に、トランジスターにおける電子のスピン、すなわち電子の固有角運動量を制御する可能性もしばしば提供するからである。
【0003】
スピントロニクスの領域では、ナノワイヤの活用は特別な課題を結果としてもたらす。というのも、磁化可能な電極との電気接触は、ナノ構造体の事前の平坦化を必要とするからである(図1)。
【0004】
これまでナノワイヤの電気的接触のために使用された薄い金属層は、形状を原因として(配向蒸着の場合の陰効果によって)途切れることがある(図1a)。スピン偏極電流の電気注入のために使用される強磁性材料では、局所的磁化の望ましくない不均一な配向を招く虞がある(図1b)。このようなドメイン形成は、この素子をスピントロニクスの領域での用途で役に立たないものとしてしまう。
【0005】
スピンコート可能な酸化物(例えば、Dow Corning(登録商標)製の水素−シルセスキオキサン、以下、HSQとも称する)は、文献では既に何度もナノワイヤの平坦化のために使用された(図2)。スピンコートの後、HSQ層は、ナノワイヤ上面が再び露出されるまで反応性イオンエッチングによって除去される[非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3]。
【0006】
上記の方法は、個々のナノワイヤを、酸化物層中への埋設によって平坦化し得るという利点を持つ(図2)。しかし、各々のナノワイヤについて、ナノワイヤ直径及び局所的な酸化物層厚に依存して、エッチング時間を正確に適合させる必要があり、及び複数のエッチングステップの間でエッチングの進展を原子間力顕微鏡を用いて手間をかけて制御する必要がある。一方で、そのために、一つの試料につき、同じ直径を持ったナノ構造体/ナノワイヤしか同時に最適に平坦化することができない。他方で、反応性イオンエッチング/プラズマエッチングは場合によってはナノ構造体/ナノワイヤ(特にそれの表面特性)に悪影響を与える場合がある。
【0007】
更に、水平に配向されたナノワイヤからまたはナノワイヤネットワークからの垂直な集積化は、用途では大きなプロセス技術上の困難さに会う。コンピュータチップ製造の中心的な構成要素の一つはCMP(化学的機械的平坦化)である。これは、近代のコンピュータチップにおいて通例の垂直な集積化にとって決定的な意味を持つ。というのも、伝導経路、トランジスタもしくは論理素子からの複数の層は、常にナノメータ精度で互いに重ねて配置されるためである。CMPはナノワイヤ及び他のナノ構造体のためには使用できないかまたはそれらの構造的な完全性を損なわせるために、CMPまたはエッチングステップ無しで、垂直なスルーホール接触(いわゆるビア;英語:vertical interconnect access)によって接続できる複数のナノワイヤ層を互いに重ねて施与できる反復可能な方法が必要である。
【0008】
HSQは、既に層転写のために使用された[非特許文献4、非特許文献5]。この方法は、二枚のウェハをウェハボンディングで接合するためにHSQを使用する。ここで、HSQは、ナノ構造体を転写または平坦化する目的には役立たつものではなく、単に、ケイ素ウェハとGaNでできた層との間の接合を可能とするために役立つだけである。出発基材も、接触層(例えばPMMAでできた接触層)を溶剤中に溶解することによっては取り除かれるのではなく、転写ウェハ全体(すなわち出発基材)は反応性イオンエッチングによって除去される。
【0009】
Shengら[非特許文献6]は、ナノワイヤの転写のための方法を提供した。この場合の目的は、ZnOナノワイヤによって、軸方向の代わりに横方向に電流を伝導させることである。このためには、ナノワイヤにアルミニウムを蒸着し、そして接着剤を用いて、このアルミニウム層を持つ転写ウェハを他のSiウェハ上に接着する。アルミニウムとケイ素との間の結合は弱いために、アルミニウム層及びそれの中に埋設されたナノワイヤを持つ接着されたこのウェハは、機械的な剪断力によって剥がすことができる。これらのナノワイヤはアルミニウム層中に存在し、そしてその層の表面はフラットである。というのも、この層はそもそもケイ素に対する境界面を形成したものであるからである。この方法も、ナノワイヤの平坦化をもたらす。しかし、この場合、ナノワイヤは金属製電極中に埋設される。ナノワイヤをそれの成長軸に沿って短絡的に接続し、そのため本発明の意味での用途を可能にするものではない。
【0010】
特に、上記の方法では、ナノ構造体/ナノワイヤからなる平坦に集積化された回路の垂直な集積化は可能ではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Zimmler et al.,Nano Lett.8,1695,2008
【非特許文献2】Heedt et al.,Nano Lett.12,4437,2012
【非特許文献3】Cui et al.,Appl.Phys.Express 7,085001,2014
【非特許文献4】Chung et al.,IEEE Electron Device Lett.30,2,2009
【非特許文献5】Chung et al.,IEEE Electron Device Lett.30,10,2009
【非特許文献6】Sheng et al.,Nanotechnology 24,0252014,2013
【非特許文献7】Floehr et al.,Rev.Sci.Instrum.82,113705,2011
【非特許文献8】Ferry,Science 319,579−580,2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、従来技術の従来の欠点を克服する、ナノ構造体、特にナノワイヤを平坦化するための方法を提供することである。特に、層内での電子的機能性が保証されるべきである。
【0013】
更に、反復して繰り返すことができかつ異なる層中の埋設されたナノ構造体間の接続を簡単な方法で可能にする、層中にナノ構造体を埋設する方法を提供することも本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題は、主請求項の特徴を持つ方法によって解消される。有利な態様は、前記主請求項を引用する請求項に記載される。
【0015】
本発明は、ナノ構造体、特にナノワイヤの平坦化のための方法に関する。このような方法は、ナノ構造体の電気接触のための前段階として有利に使用でき、加えて、ナノ構造体、特にナノワイヤまたはナノワイヤネットワークの垂直な集積化を可能とする。
【0016】
本発明は、Shengら[非特許文献6]とは異なり、後の時点でナノ構造体から機械的に分離する必要のある転写基材(出発基材)上にナノ構造体を直接施与しないというコンセプトに基づくものである。
【0017】
このためには、本発明の有利な形態の一つでは、後でナノワイヤ/ナノ構造体の位置決めをするために、先ず、電子線リソグラフィを用いて確定され及び次いで出発基材中にエッチングされた位置マーカー(散乱マーカー)を基材中に生成する。例えばネガティブマーカーとして実現されるこのような散乱マーカーを図3に示す。
【0018】
この際、コーティング層の施与は、既に既知の方法、例えばスピンコート法、散布法またはスプレッド法により行うことができる。
【0019】
本発明の好ましい形態の一つでは、場合によって存在する溶剤、例えば酢酸エチルをコーティング層から脱ガスすることを可能とするために、施与されたコーティングを転写基材と一緒に先ず十分に加熱する。このためには、例えば、約180℃への温度上昇を行うことができる。脱ガスのための時間は、コーティング層の層厚に応じて通常は5分間と30分間との間であるが、一般的には臨界的ではない。200℃を大きく超える温度は、コーティングの硬化を不利に招く虞がある。例えば、コーティング厚が120nmである場合は、最大温度180℃での10分間の脱ガスが全く十分である。
【0020】
本発明の他の有利な形態の一つでは、コーティングは複数のステップで、すなわち複数のレイヤーで施与することもでき、これは、場合によっては、異なるタイプのコーティングも含むことができる。この際、場合により存在する溶剤の脱ガスのための加熱は、典型的には、個々の施与された層に応じて行われる。
【0021】
加えて、必須ではないものの、任意選択的に、コーティング層(複数可)の脱ガスの後に及びナノ構造体の施与の前または後に、追加的な付着仲介層をコーティング上に施与することも企図し得る。このような適当な付着仲介層には、例えばヘキサメチルジシラザン(HMDS)を挙げ得る。
【0022】
該付着仲介層は、場合により、後で溶剤で処理する時に、同様に溶解または一部溶解することができる。しかし、これは必ずしも必要ではない。
【0023】
一般的に、施与された付着仲介層は、非常に薄い層厚を有し、特にこれは有利には単層としてコーティング層上に形成される。この際、この任意選択的な付着仲介層の施与は、例えばHDMSの化学気相堆積法などの既に既知の方法により行うことができる。
【0024】
次のプロセスステップでは、ナノ構造体(複数可)が、コーティング層または付着仲介層上に施与される。これは、文献から既知のように通常の方法で行うことができる。このような方法には、例えば、クリーンルームワイプを用いた機械的転写法、または(PPMA)コーティング層を備えた出発基材としてのウェハを先ず、ナノ構造体がエピタキシャルに生成される成長基材と接触させる方法による機械的転写法、並びにイソプロパノールなどの溶剤を用いてナノ構造体を出発基材上に施与し、次いでこの溶剤を蒸発させる方法などがある。また、マイクロマニピュレータを用いた標的転写法または類似の方法も考え得る[非特許文献7]。
【0025】
更に別のプロセスステップの一つでは、ナノ構造体/ナノワイヤを埋設するために、スピンコート可能なガラス(英語:spin−on glass、SOG)または流動可能な酸化物を、配置されたナノ構造体を有するコーティング層もしくは付着仲介層上に、ナノ構造体が完全にまたは部分的にキャリアマトリックス中に埋設されるように施与する。この目的のためには、例えばHSQコーティングまたは類似物を使用することができる。ナノ構造体の埋設のためのキャリアマトリックスとしては、酸化物の他に更に別の流動性誘電体、例えば窒化物が考えられそして適している。
【0026】
この際、施与すべきキャリアマトリックスの必要な層厚は、中でも、使用するナノ構造体の断面積に依存する。ナノ構造体の厚さが必要とする場合には、コーティング材のスピンコート及びベークを、ナノ構造体がHSQまたはSOGによって最適に封入されるまで反復して繰り返すことができる。
【0027】
本発明による方法の有利な形態の一つでは、ウェハボンディングの前に、事前の構造化を行うことができ、この際、例えばタイル形状の構造が、電子線リソグラフィもしくはEUVリソグラフィを用いてHSQ層中に描画される(図3参照)。現像剤としては、例えば、ナノ構造体の下のコーティング層を攻撃または現像しないMF(登録商標)CD−26、MF(登録商標)−24A、AZ326MIFまたはAZ400Kがある。特に、この観点のためには、ナノ構造体の下のコーティング層が電子線リソグラフィのためのポジ型レジストとして(例えばPMMA)、及びキャリアマトリックスが、電子線リソグラフィのためのネガ型レジストとして(例えばHSQ)設計されていることを活用することができる。構造化されたHSQ層によって、一方では、PMMAとの接触面を有利に減少することができ、これは後段の剥離を容易化する、というのも、溶剤がPMMAをより良好に侵すことができるようになるからである。他方で、これらの構造体は、続くウェハボンディングにおいて、ウェハ間の水素及び場合によっては存在する溶剤残渣をより良好に逃がすことができるようする。同様に、ウェハボンディングの前に、スルーホール接触、いわゆるビアをリソグラフィにより画定することができる。
【0028】
本発明による方法の有利な形態の一つでは、HSQ層の現像の後に、下にある(有機系)コーティング層のその時に露出した領域を酸素プラズマを用いて除去することができる。これは、HSQ層の上記の構造化と類似して、コーティング層を溶解するための両ウェハ間への溶剤の容易化された侵入を可能とし得る。ウェハボンディングの際に、存在し得るガス状の反応生成物も逃がしやすくなる。
【0029】
ウェハボンディングまたはナノインプリントリソグラフィ(英語:nanoimprint lithography)を用いて、埋設されたナノ構造体を有する転写層としてのHSQ層が次いで第二の基材(標的基材)と接合される。この際、両基材は互いに対しプレスされ、そして200℃を超える温度で加熱される。この際、使用したNanonex NX−2000ルフトドルックナノプリンターにおいて、これらの基材を約1.38MPaの過剰圧で約10分間一種に圧縮した。
【0030】
キャリアマトリックスを二つの基材と接合することを可能とするためには様々な形態が可能である。例えば、直接接合させる他、接着接合または陽極接合も利用することができる。ウェハボンディングに対する簡単な代替法は、「急速熱処理(RTP)」であることもでき、この方法では、両方の基材を互いに重ねるかまたはプレスし、そしてRTP炉中で加熱する。この際、両基材は、例えば、この場合理論化学的に転化する予め施与したHSQ層によって接合する。
【0031】
本発明による方法の任意選択的な形態の一つでは、標的基材は、両ウェハを一緒に圧縮する前に、同様に薄いHSQ層でコーティングされ、そして数分間90℃で加熱する。
【0032】
ウェハボンディングの後、二つのウェハ間のHSQ層の品質は、HSQ層の化学的転化を完了させるためにRTP炉中での「急速熱処理」(RTP)を用いることで更に向上することができる。溶解可能な(PMMA)コーティング層がこの際完全に硬化しないことが重要である。しかし、HSQ層の完全な転化は多くの用途にとって有利ではない。というのも、このステップがないと、HSQまたはSOGは、多層設計の層間の非常に低い電気容量を保証できるからである。
【0033】
埋設されたナノ構造体を含む層の下にあるコーティング層または付着仲介層は、次いで有利には、適当な溶剤、例えばアセトンの作用下に簡単に剥離または溶解することができる。それ故、コーティング層もしくは付着仲介剤とキャリアマトリックスとの間の境界面に事前に正確に配置されているナノ構造体またはナノワイヤは、必然的に、第二の基材の新しい表面に直接接して(平坦に)存在する。
【0034】
元々は溶剤中に可溶性のHSQコーティングは、剥離の前のプロセスステップ、例えば電子線リソグラフィもしくはEUVリソグラフィ及び/または例えばRTP炉中での熱処理によって、このコーティングが、剥離プロセスの時に溶剤によってはもはや一部溶解することももしくは溶解することもできないように変性される。
【0035】
任意選択的に、互いに接合している二つの基材であって、それらの間にコーティング層を備えるものを、コーティング層の溶解の前に、等方性の酸素プラズマ中で処理することができる。層の上記の一部溶解によって、溶剤中でのコーティング層の溶解が容易化され得る。
【0036】
有利なことに、本発明においては、コーティング層は適切な溶剤を用いて溶解でき、このようにして基材が、HSQマトリックスを侵すことなく、予め配置されたナノ構造体から穏やかに除去され得る。この場合、「穏やかに」とは、特に、機械的影響がないこと及び高い温度負荷が無いことを意味する。コーティング層の一部溶解または溶解のための適切な溶剤としては、例えばアセトン及びアセトン含有溶剤、並びにシクロペンタノン及びジメチルスルホキシド(DMSO)またはこれらの混合物が挙げられる。上記の穏やかな除去によって、ナノ構造体/ナノワイヤ(特にそれらの表面特性)がマイナスの影響を受けないことが保証され得る。ナノ構造体は、該プロセスの後に、先だってコーティング層との界面を形成していたHSQ層の平坦な表面上に存在する。HSQ層の表面が平坦であるので、その上に配置されたナノ構造体は、(それの大きさまたはそれの横断面に依存せずに)自動的にその平面上に平坦に配向されるようになる。
【0037】
この本発明による方法を用いることで、ナノ構造体を(特に異なる厚さ及び/または形状を持つナノ構造体でも)、コーティングの除去の後に形成された、ナノ構造体を埋設している転写層の表面上に平坦に配置できる。
【0038】
中間層としてコーティングを用いる場合の更なる利点の一つは、該方法の特別な形態の一つにおいてナノ構造体を、部分的にコーティング中に埋設した状態でも配置できる点にある。これは、ナノ構造体の施与及び再度の加熱によって行うことができ、この際、ナノ構造体がコーティング中に部分的に沈み込む(図6参照)。これは、場合によっては機械的な圧力によっても行うことができる。コーティング層を後段で溶解する時に、ナノ構造体はもはやその表面で閉じられておらず、その表面から少なくとも部分的に突出している。このような配置は、円形のナノワイヤの電気的接触または金属化が十分な接触面を必要とする場合に、特に有利であり得る(図2参照)。より厳密な意味では平坦化とは言えないかもしれないが、この特殊な形態はなおも本発明に含まれるべきものである。
【0039】
平坦化のための本発明による方法は、特に、異なる大きさ及び/または形状を有するナノ構造体にも機能する。エッチングの進行を手間をかけて調査する必要のある既知の方法[非特許文献1、非特許文献2]の場合とは異なり、溶剤を用いた基材の除去は全く問題がない、というのも、溶解するべきコーティング層もしくは任意選択的な付着仲介層は除いて、残りの材料のいずれも、すなわち基材も、ナノ構造体またはHSQ層もしくはガラス層も、溶剤によって侵されないからである。加えて、ナノワイヤは、非伝導性キャリアマトリックス中では短絡しない[非特許文献6]。
【0040】
本発明による方法は、ナノ構造体の平坦化/積層、及びその後の容易化された電気接触を簡単な方法で可能とする。
【0041】
本発明による平坦化方法の各ステップは、ナノ構造体またはナノワイヤの垂直な集積を達成するために、有利に反復して繰り替えすことができる。レイヤー毎に、水平に配向したナノワイヤネットワークからなる多層設計を構築することができる。
【0042】
更に、本発明による方法は、使用した転写基材が除去もしくは破壊されず、溶剤を用いた剥離の後に完全に無傷で存在し、そして複数のナノ構造体層もしくはナノワイヤ層を垂直に積層する場合の更なる平坦化もしくは更なる反復に利用されるという利点を有する。
【0043】
それ故、本発明による方法は、ナノワイヤベースの論理素子、特に新規の再構成可能な論理素子[非特許文献8]のためのナノワイヤ部材の製造に特に適している。
【0044】
スピン偏極電流の電気注入のためのナノワイヤ部材の製造のためには、強磁性金属接点、例えばCo、Niもしくはパーマロイからなる強磁性金属接点を、例えば分子線エピタキシ−法を用いて平らな面上に蒸着する必要がある。その平面は可能限り平坦である必要がある。なぜならば、そうしないと、強磁性体の磁化を、二つの別個の配向の間への外部磁場の印加によってオン/オフできることが妨げられるからである(図1b参照)。加えて、約1ナノメータ厚の酸化物層をナノワイヤと強磁性体との間の境界面にトンネルバリアとして設けることがしばしば物理的に必要である。これは、途切れが無いことが必要であり、随所で均一な厚さを有する必要がある。
【0045】
スピントロニクスの領域での用途の他、本発明による方法は、慣用のマイクロ及びナノエレクトロニクスの領域でも使用できる。ここでは、例えば、コンピュータチップ加工における半導体ナノ構造体の垂直な集積が重要である(図11参照)。本発明による方法は、簡単にスケールアップでき、かつより大きな基材に転用可能である。
【0046】
更には、方向付けされた蒸着を用いても、非常に薄い厚さの誘電体をナノ構造体上に施与できることが本発明を介して可能となり、これは、電界効果トランジスタの特に効率の良い制御性を可能とする。
【0047】
電子線リソグラフィ及び現像によってHSQを選択的にのみ酸化物マトリックスに転換できることにより、転写によって、端部でのみ基材と接触している宙に浮いたナノ構造体も生成される。これは、ガスセンサーでの使用にとって大きな意味を有し得る。というのも、そうすると、ナノワイヤ表面全体が、検出すべきガスと接触できるようになるからである。
【0048】
同様に、水分解の領域における部材は、化学反応に利用可能な全ワイヤ表面から利益を受け、そして同時に、ワイヤ末端での電気的接触を可能とするであろう。
【0049】
化学センサーでの使用のためには、部分的にのみ露出したナノワイヤまたは一方の面でのみ露出しているナノ構造体も意味があり得る。
【0050】
ナノワイヤまたは交差したナノワイヤのネットワークでさえも、本発明の方法の後に例えば湿式化学的に選択的に溶解すると、発生するチャネルが、マイクロ−及びナノ流体工学の領域において重要であり得る。これは、例えば、一次元電気誘導または血液分析のための用途であり得る。更に、このような酸化物マトリックスの表面の下にあるナノスケールのチューブ及びチャネルは、DNA分析(すなわち、DNAクロマトグラフィ)のために使用できる。また、マイクロ−及びナノスケールの印字ヘッドも実現できる。
【0051】
フォトニクスもしくはナノオプティクスの領域における用途も同様に考え得る。ナノワイヤ/ナノ構造体が埋設されている該酸化物マトリックスは透明であることができるので(例えばHSQ)、境界面上の整列されたナノ構造体を用途に活用できる。
【0052】
転写されたナノワイヤがpn半導体接合からなる場合は、酸化物マトリックス中に埋設されたナノワイヤはダイオード装置として使用できる。酸化物マトリックス中に統合された金属製ナノワイヤは、アンテナ装置としても使用できるであろう。
【0053】
埋められたナノワイヤは、当該平坦化された表面上に敷設されたグラフェン層または類似の二次元層を静電気的に制御するゲート電極としても機能し得るであろう。ここで、埋められ、接触させたナノワイヤは、グラフェン層が堆積された制御電極としても機能するであろう。次いで、制御電極を接触するために更なるリソグラフィステップは不要であろう。このことは、グラフェン層が汚染され得ることを有利に防止し、そして(例えば高速トランジスタ用途のための)非常に高い電子易動度を持つグラフィン部材を可能とする。
【0054】
酸化物マトリックスがナノワイヤを保護するために、中空のナノワイヤ、すなわちナノチューブも転写でき、そして例えば生体細胞(例えば本発明の方法に従いナノワイヤと一緒にキャリアマトリックス中に転写された生体細胞)を電気接触及び接続できる。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、本発明を、幾つかの図面及び実施例に基づいてより詳しく説明するが、それによって保護範囲が限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1a】(a)陰効果のために電気接触が遮断されている、慣用の蒸着法により薄い金属層を蒸着したナノワイヤの走査電子顕微鏡写真。
図1b】(b)これに見込まれるコバルト接点に沿った断面の局所的な磁化。
図2】平坦化され及び接触させた窒化インジウムナノワイヤの走査電子顕微鏡写真[非特許文献2]
図3】慣用の出発基材の例示的レイアウト。
図4】慣用の標的基材の例示的レイアウト。
図5】本発明による方法の一実施例の図示。上部:ナノ構造体の平坦化のための本発明のよるプロセスステップ。下部:複数のナノ構造体層の垂直な集積のための任意選択的な追加のプロセスステップ。
図6】ポリメチルアクリレート(PMMA)コーティング上に敷設した後の窒化インジウムナノワイヤの走査電子顕微鏡写真。
図7】ウェハボンディング前の、1.44mmの典型的な枠長を有し及びPMMA層上に施与された、本発明に従い選択的に現像されたタイル状HSQ構造体の光学顕微鏡写真。
図8】出発基材から標的基材上に転写されたHSQタイルの光学顕微鏡写真。
図9】酸化物マトリックス中に埋設された状態の、首尾良く標的基材上に転写されたナノワイヤの例の図。
図10】異なる大きさのナノ構造体の平坦化のための本発明による方法の利点の図解。
図11】スルーホール接触を備えた状態のナノ構造体の垂直な集積のための本発明による方法の利点の図解。
【0057】
図1(a)では、ナノワイヤに薄い金属層を慣用の方法により蒸着する時にしばしば発生する、陰効果により電気接触の遮断が生じるという不利な結果が分かる。特に、例えばコバルトからなる強磁性接点は、磁化の均一性の明らかな乱れを有し、このような乱れは、スピントロニクスの多くの部材にとって必然であり、図1(b)に示すものである。
【0058】
図1(b)には、見込まれる局所的磁化をコバルト接点に沿った断面で示したものであり、このコバルト接点は、この場合は円形のナノワイヤ断面の周りに慣用の蒸着法(ナノワイヤの事前の平坦化無し)で敷設したものである。この際、表示の外部磁場は、コバルトストリップの主軸に沿って、すなわちナノワイヤに対して垂直でかつ基材に対して並行にかけられている。
【0059】
コバルト接点内部の矢印: 磁気モーメントの局所的配向
図2は、[非特許文献2]に記載の方法に従い平坦化及び接触された、窒化インジウムナノワイヤの写真を示す。この際、このナノワイヤはHSQ中に完全に埋設され、次いで反応性ドライエッチングを用いて再び暴露され、そうして上側で電気接触できるようにされたものである。その結果、コバルトからなるこの金属ストリップは小さな湾曲しか持たず、例えば図1(a)のような遮断は示さない。そうして、図1(b)に示すように、ナノワイヤに対する接触箇所での中間的なドメイン形成を伴わない、二つの別個の状態間での磁化方向の直接のスイッチングが可能となる。
【0060】
図3及び4には、出発基材(図3)及び標的基材(図4)のための例示的な設計図が示されている。示されているものは、HSQタイル、位置決めマーカー及び電子線リソグラフィのためのマーカー(この場合、ネガティブマーカー)を有する領域である。
【0061】
図5では、項目A下の上側の領域中に、本発明による方法の一実施例のプロセスステップを図解して示してある。2インチケイ素ウェハ、すなわち出発基材AS(1)を先ず、アセトン、イソプロパノール、ピラニア(Piranha)(1:1の比率で水で希釈)及び1%フッ化水素酸で洗浄する。光学的リソグラフィ及び反応性イオンエッチングを用いて、電子線リソグラフィのためのネガティブマーカーを生成する。電子線リソグラフィを用いて、構造を画定し、次いで反応性イオンエッチングによってウェハ中に転写し、これが、後でナノ構造体/ナノワイヤを置くべき領域を画定する(図3参照)。次いで、このウェハをPMMA649.04でコーティングする(PMMA(6))。6000rpmのスピンコート速度は、120nmの層厚を与える。
【0062】
次いで、このウェハを、コーティングが後続のステップにおいて溶剤を更にガス放出しないように、180℃で少なくとも10分間ベークする。
【0063】
更なるステップにおいて、ナノワイヤ(ナノ構造体(2))を機械的にPMMA層上に転写する。
【0064】
このためには、例えば、出発基材を、表面上でナノ構造体をエピタキシャルに生成した成長基材と接触させることができる。代替的に、ナノ構造体を、溶液状態で、例えばイソプロパノール中の溶液として出発基材上に施与することができる。この溶剤は次いで蒸発し、他方、ナノ構造体はそこに残る。ここで使用される溶剤は、後で他の溶剤中に溶解するべき溶解可能なコーティング層(6)が侵されないように選択するべきである。また、マイクロマニピュレータを用いた標的転写法または類似の方法も可能である。ここでは、転写は、クリーンルームワイプを用いて機械的に行った。転写されたナノワイヤは、図5中に例示的に断面が球形のものとして図解している。
【0065】
次いで、スピンコート可能なガラスまたは流動性酸化物(HSQ(3))を、スピンコータ−を用いて塗布して、ナノワイヤを完全に閉じ込める。
【0066】
加えて、図5には、電子線リソグラフィを用いてHSQ中に描画された構造を見ることができる。電子線を用いて描画されたこのような領域は化学理論的に変化し、そうして、ナノワイヤまたはナノ構造体が埋設された酸化物マトリックスが生じる。変換されたHSQは、有利なことに、PMMAを侵すことなく、(現像剤MF(登録商標)CD−26を用いて)選択的に現像することができる。反応性イオンエッチングを用いて、選択的に現像された領域を酸素酸素プラズマによってPMMA中に転写できる。このような処置は、ウェハボンディングの時のより良好な脱ガスと、向上した剥離を可能にする、というのも、溶剤が、接合されたウェハ間により簡単に侵入できるからである。
【0067】
最後に、電子線リソグラフィによって電極を画定し、これを次いで金属化することによって、今や平坦化されたナノワイヤを電気接触することができる。
【0068】
図5の下部セクションBには、更なる任意選択のプロセスステップを示している。この際、HSQ(3)層中に埋設されたナノ構造体(2)及びその上に配置された電極を備えた予め作成した標的基材が再びコーティングされる(HSQ(7))。
【0069】
項目Aに示したプロセスステップに類似して、更なる出発基材(AS(1))をPMMAでコーティングし(PMMA(9))、そしてその上に更なるナノ構造体(8)を施与する。これらは、更に別のスピンコート可能なガラスまたは流動性酸化物(HSQ(10))によって完全に閉じ込められ、そしてこの層を、場合により電子線リソグラフィにより構造化する。こうして生成した基材の両方を、ウェハボンディングにより接合し、次いで出発基材を、項目Aに示すように除去する。
【0070】
項目Bに示すプロセスステップは、任意に繰り返すことができ、そうして、各々電気接触可能な、埋設されたナノ構造体を備えるレイヤーが得られる。この際、ナノ構造体の配向は、いずれの面でも異なることができる。
【0071】
図6は、PMMAコーティング層の上の窒化インジウムナノワイヤの走査電子顕微鏡写真を示す。この際、このナノワイヤは、クリーンルームワイプを用いてコーティング層に転写したものである。ナノワイヤがごく僅かにPMMA層中に沈み込んでいることが良好に分かる。
【0072】
標的基材上に転写されそしてナノワイヤが埋設されているHSQタイルを、添付の図8に示す。図7は、PMMA層上の選択的に現像されたHSQタイルの光学顕微鏡写真を示す。図7のHSQタイルでは、窒化インジウムからなる埋設されたナノワイヤは見えない。写し出されたタイルの枠長は1.44mmである。
【0073】
再び清浄した後に、出発基材は、ナノ構造体/ナノワイヤが埋設された更なる酸化物層を転写するために、更なるプロセスステップのために有利に使用できる。
【0074】
図9は、予め本発明による方法を用いて首尾良く出発基材から標的基材へと転写された酸化物マトリックス(暗い灰色の部分)中にそれぞれナノワイヤ(明るい部分)が埋設されていることが認められる走査電子顕微鏡写真を示す。
【0075】
図10及び11は、ナノ構造体が本発明により平坦化された後にどのように電気接触できるかを図示するものである。
【0076】
図10には、様々なサイズの埋設されたナノ構造体の様子が示されている。全てのナノ構造体について、電気接触及び特に磁気電極の機能が陰効果によって損なわれないような最適な平坦化がサイズがどうであれ行われる。
【0077】
図11によれば、本発明による方法は、スルーホール接触を備えた垂直な集積を有利に可能にする。結合されたナノワイヤトランジスタ部材では、酸化物マトリックス中に埋設されたナノ構造体の転写を反復して繰り返すことができる。このような垂直の集積の際、スルーホール接触、いわゆるビアを、HSQ層のリソグラフィ構造化の時に考慮することができ、そうして自動的に所望の部位に生成できる。レイヤー毎に、ナノワイヤネットワークからなる多層設計を反復して構築することができる。選択的に、ビアを層中に通すためには、(本発明による方法の具体的な形態に依存して)二つの層の間に、コーティングマスクを用いた選択的なエッチングステップを行うことができるまたは行う必要がある。
[1]Zimmler et al.,Nano Lett.8,1695,2008
[2]Heedt et al.,Nano Lett.12,4437,2012
[3]Cui et al.,Appl.Phys.Express 7,085001,2014
[4]Chung et al.,IEEE Electron Device Lett.30,2,2009
[5]Chung et al.,IEEE Electron Device Lett.30,10,2009
[6]Sheng et al.,Nanotechnology 24,0252014,2013
[7]Floehr et al.,Rev.Sci.Instrum.82,113705,2011
[8]Ferry,Science 319,579−580,2008
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2017年9月28日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋設された接触可能なナノ構造体を使用した平坦な自由表面の製造のための方法において、
−出発基材(1)の表面上に少なくとも一つのナノ構造体(2)を配置し、
−前記出発基材(1)の同じ表面上に、前記少なくとも一つのナノ構造体(2)を埋設する第一の層(3)を施与し、
−及び、前記第一の層(3)の上に、標的基材(5)を施与し、
−この際、それに次いで、出発基材(1)を第一の層(3)から、それに埋設されている前記少なくとも一つのナノ構造体(2)が平坦な自由表面を有するように分離する、
方法であって、
−前記出発基材(1)上への前記少なくとも一つのナノ構造体(2)の施与の前に、追加的な層(6)を、前記出発基材(1)の表面上に施与すること、
−及び、溶剤を用いて、前記第一の層(3)からの出発基材(1)の剥離を行う、
ことを特徴とする前記方法。
【請求項2】
第四化学主族の元素半導体、第三及び第五化学主族の化合物半導体、または第二及び第六化学主族の化合物半導体を含むナノ構造体(2)が使用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記標的基材(5)が、第二の層(4)を介して上記第一の層(3)上に施与される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第二の層(4)が水素−シルセスキオキサン(HSQ)を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記追加的な層(6)が、溶剤中に溶解可能な材料を含む、請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
前記追加的な層(6)が、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メチルメタクリレートとメタクリル酸とのポリマー(コポリマーPMMA/MA)、または光学的フォトレジストを含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
前記追加的な層(6)が、複数のステップで、前記転写基材(1)の表面上に施与される、請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
前記追加的な層(6)が先ず温度処理され、その後に前記少なくとも一つのナノ構造体(2)が施与される、請求項1〜7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも一つのナノ構造体(2)を埋設する前記第一の層(3)が、スピンコート可能なガラスまたは流動性酸化物、特に水素−シルセスキオキサン(HSQ)を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
前記ナノ構造体(2)を埋設する前記第一の層(3)が、先ずリソグラフィを用いて選択的に現像及び構造化され、その後に前記構造化された層上に前記第二の基材(5)が施与される、請求項1〜9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
前記第一の層(3)からの前記転写基材(1)の剥離が、含アセトン溶剤またはシクロペンタノンまたはジメチルスルホキシドを用いて行われる、請求項1〜10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
前記ナノ構造体がエピタキシャル的に生成される、請求項1〜11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
前記出発基材上への前記ナノ構造体の配置が、前記ナノ構造体を含む分散物を用いてまたはマイクロマニピュレータにより行われる、請求項1〜12のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
ナノ構造体として、ナノワイヤがまたは結合されたナノワイヤからなるネットワークが配置される、請求項1〜13のいずれか一つに記載の方法。
【請求項15】
前記第一の層(3)及びその中に埋設された前記少なくとも一つのナノ構造体(2)を備えた生じた前記の第二の基材(5)が、次いで、請求項1に記載の方法において標的基材として使用され、そうして、埋設されたナノ構造体を含む複数の互いに重ねて配置された層の系を生成でき、この際、これらのナノ構造体を垂直なスルーホール接触によって接続できる、請求項1〜14のいずれか一つに記載の方法。
【国際調査報告】