特表2019-504466(P2019-504466A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特表2019-504466電流−スピン変換及びスピン偏極の増幅のための非線形スピン軌道相互作用デバイス及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-504466(P2019-504466A)
(43)【公表日】2019年2月14日
(54)【発明の名称】電流−スピン変換及びスピン偏極の増幅のための非線形スピン軌道相互作用デバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/82 20060101AFI20190118BHJP
   H01L 29/66 20060101ALI20190118BHJP
【FI】
   H01L29/82 Z
   H01L29/66 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2018-522938(P2018-522938)
(86)(22)【出願日】2016年11月18日
(85)【翻訳文提出日】2018年5月7日
(86)【国際出願番号】IB2016056946
(87)【国際公開番号】WO2017098363
(87)【国際公開日】20170615
(31)【優先権主張番号】14/966,411
(32)【優先日】2015年12月11日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA
(71)【出願人】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108501
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 剛史
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【弁理士】
【氏名又は名称】太佐 種一
(72)【発明者】
【氏名】アルトマン、パトリック、ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】サリス、ギアン、アール
【テーマコード(参考)】
5F092
【Fターム(参考)】
5F092AB10
5F092AC21
5F092BD02
5F092BD15
(57)【要約】
【課題】 非線形スピン軌道相互作用に依拠して電流−スピン変換及びスピン偏極の増幅等の機能を可能するデバイス及び方法を提供すること。
【解決手段】 本発明は、特にスピン軌道結合デバイスに向けられる。このデバイスは、閉じ込め部分を含む。これは、閉じ込め部分の入力領域において電荷担体にスピン偏極を注入するように作動可能な入力デバイスを有する回路をさらに含む。回路は、閉じ込め部分の出力領域において電荷担体のスピン偏極を検出するのに使用可能な出力デバイスをさらに含む。閉じ込め部分は、その内部でドリフトしている電荷担体が非線形スピン軌道相互作用を受けるように構成することができ、これは、ドリフトしている電荷担体のスピン偏極を、かかる電荷担体の運動量に非線形的に依存する角度だけ回転させる。回路は、入力領域にスピン偏極を注入すると同時に、閉じ込め部分の内部でドリフトしている電荷担体の運動量を変化させることを可能にするように構成することができる。運動量を変化させることは、ドリフトしている電荷担体のスピン偏極を非線形スピン軌道相互作用に起因して回転させることを可能にする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピン軌道結合デバイスであって、
閉じ込め部分と、
回路と
を含み、前記回路は、
前記閉じ込め部分の入力領域において電荷担体にスピン偏極を注入するように作動可能な入力デバイスと、
前記閉じ込め部分の出力領域において電荷担体のスピン偏極を検出するように構成された出力デバイスと、
を含み、
ここで、
前記閉じ込め部分は、その内部でドリフトしている電荷担体が非線形スピン軌道相互作用を受けるように構成され、これは、ドリフトしている電荷担体のスピン偏極を、かかる電荷担体の運動量に非線形的に依存する角度だけ回転させるものであり、
前記回路は、前記入力領域にスピン偏極を注入すると同時に、前記閉じ込め部分の内部でドリフトしている電荷担体の運動量を変化させることを可能にするように構成され、その結果、前記閉じ込め部分の内部でドリフトしている電荷担体のスピン偏極を前記非線形スピン軌道相互作用に起因して回転させる、
スピン軌道結合デバイス。
【請求項2】
前記閉じ込め部分は、その内部でドリフトしている電荷担体が立方スピン軌道相互作用を経験するように構成され、これにより相互作用のエネルギーが前記電荷担体の運動量の3乗に依存する、請求項1に記載のスピン軌道結合デバイス。
【請求項3】
前記入力デバイスは、前記閉じ込め部分と電気通信する強磁性コンタクトを含む、請求項1〜請求項2のいずれかに記載のスピン軌道結合デバイス。
【請求項4】
前記回路は、前記閉じ込め部分にわたって電圧を印加するように構成され、前記閉じ込め部分の内部でドリフトしている電荷担体の運動量に関連付けられた電流は、前記回路に印加された電圧に従って変化するようになっている、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のスピン軌道結合デバイス。
【請求項5】
前記入力デバイスは、前記閉じ込め部分と電気通信する強磁性コンタクトを含み、
前記出力デバイスは、前記閉じ込め部分と電気通信するドレインコンタクトを含み、前記回路は、前記ドレインコンタクト及び前記強磁性コンタクトを介して前記閉じ込め部分にわたって電圧を印加するように構成された、
請求項1〜請求項4のいずれかに記載のスピン軌道結合デバイス。
【請求項6】
前記閉じ込め部分は、閉じ込め層を含み、前記閉じ込め層は、電荷担体を本質的に二次元領域内に閉じ込めるように構成された、請求項1〜請求項5のいずれかに記載のスピン軌道結合デバイス。
【請求項7】
前記閉じ込め部分は、非磁性半導体層を含む、請求項1〜請求項6のいずれかに記載のスピン軌道結合デバイス。
【請求項8】
スピン増幅システムであって、
請求項1〜請求項7に記載の前記スピン軌道結合デバイスと、
その出力領域において所与のスピン偏極を有する電荷担体を得るように構成されたスピントロニックデバイスと、
を含み、
ここで、
前記回路は、前記スピントロニックデバイスを前記スピン軌道結合デバイスの前記入力領域に結合するスピン−電流変換器を含み、その結果、前記スピントロニックデバイスの前記出力領域において得ることができる電荷担体のスピン偏極に基づいて前記スピン−電流変換器によって生成された電流に従って、スピン偏極を前記入力領域に注入することができるようになっており、
前記回路は、前記出力領域において検出可能なスピン偏極を、前記スピントロニックデバイスの前記出力領域において得ることができる電荷担体のスピン偏極に対して増幅するようにさらに構成された、
スピン増幅システム。
【請求項9】
前記スピン−電流変換器は、前記スピントロニックデバイスの前記出力領域において得ることができる電荷担体のスピン偏極を前記スピン−電流変換器が電流に変換するように配置された、スピン感受性抵抗を含む、請求項8に記載のスピン増幅システム。
【請求項10】
前記スピン−電流変換器は、半導体層及び強磁性コンタクト層を含み、前記スピン感受性抵抗は、前記半導体層と前記強磁性コンタクト層との間の界面によって形成される、請求項9に記載のスピン増幅システム。
【請求項11】
前記スピン軌道結合デバイスは、前記スピン軌道結合デバイスの前記出力領域において検出可能な電荷担体のスピン偏極が、前記閉じ込め部分の内部でドリフトしている電荷担体の運動量に関連付けられた電流の振動関数であるように構成され、
前記回路は、前記スピントロニックデバイスの前記出力領域からのスピン偏極を前記振動関数の線形領域において増幅するように構成され、その結果得られた増幅されたスピン偏極は、前記電流に対して本質的に線形依存するようになっている、
請求項8〜請求項10のいずれかに記載のスピン増幅システム。
【請求項12】
前記スピントロニックデバイスは、スピンに基づく多数決論理デバイスであって、前記多数決論理デバイスの入力として注入されたスピン偏極の論理演算に従って、所与のスピン偏極を有する電荷担体を出力として得るように構成されたものである、請求項8〜請求項11のいずれかに記載のスピン増幅システム。
【請求項13】
前記スピン軌道結合デバイスは、前記スピン軌道結合デバイスの前記出力領域において検出可能な電荷担体のスピン偏極が、前記閉じ込め部分の内部でドリフトしている電荷担体の運動量に関連付けられた電流の振動関数であるように構成され、
前記回路は、前記スピントロニックデバイスの出力において得ることができるスピン偏極を前記振動関数の非線形領域において増幅するように構成され、その結果、前記スピントロニックデバイスの出力において得ることができるスピン偏極の相異なる値が、前記振幅関数によって、前記スピン軌道結合デバイスの前記出力領域において検出可能なスピン偏極の、本質的に同じ増幅値をもたらすようになっている、
請求項8〜請求項12のいずれかに記載のスピン増幅システム。
【請求項14】
前記回路は、前記スピントロニックデバイスの出力において得ることができるスピン偏極の2組の値を増幅するように構成され、前記2組の各々において、スピン偏極の値は、相異なりかつ同じ符号のものであり、他方、前記2組のうちの一方のスピン偏極の値は、前記2組のうちのもう一方のスピン偏極の値の符号とは反対の符号を有しており、その結果、前記2組の各々について、前記スピントロニックデバイスの出力において得ることができるスピン偏極の相異なる値が、前記振動関数によって、前記スピン軌道結合デバイスの前記出力領域において検出可能なスピン偏極の、本質的に同じ増幅値をもたらすようになっている、請求項8〜請求項13のいずれかに記載のスピン増幅システム。
【請求項15】
前記スピントロニックデバイスが、論理ゲートとして構成された、請求項8〜請求項14のいずれかに記載のスピン増幅システム。
【請求項16】
前記スピン軌道結合デバイスの前記出力デバイスを介して前記スピン軌道結合デバイスに結合された、さらなるスピントロニックデバイスをさらに含む、請求項8〜請求項15のいずれかに記載のスピン増幅システム。
【請求項17】
前記さらなるスピントロニックデバイスが、論理ゲートとして構成された、請求項16に記載のスピン増幅システム。
【請求項18】
スピン軌道結合デバイス内でスピン偏極を回転させるための方法であって、
スピン軌道結合デバイスを提供すること
を含み、前記スピン軌道結合デバイスは、
その内部でドリフトする可能性がある電荷担体を閉じ込めるように構成されるとともに、その内部でドリフトしている電荷担体が非線形スピン軌道相互作用を受けるように構成された閉じ込め部分であって、前記非線形スピン軌道相互作用は、ドリフトしている電荷担体のスピン偏極を、かかる電荷担体の運動量に非線形的に依存する角度だけ回転させるものである、閉じ込め部分と、
回路と、
を含み、前記回路は、
前記閉じ込め部分の入力領域において電荷担体にスピン偏極を注入するように作動可能な入力デバイスと、
前記閉じ込め部分の出力領域において電荷担体のスピン偏極を検出するように使用可能な出力デバイスと、
を含み、
前記方法は、スピン偏極を前記入力領域に注入すると同時に、前記回路を介して、前記閉じ込め部分の内部でドリフトしている電荷担体の運動量を変化させて、ドリフトしている電荷担体のスピン偏極を前記非線形スピン軌道相互作用に起因して回転させること
を含む、方法。
【請求項19】
前記出力領域においてスピン偏極を検出することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
電荷担体の前記運動量を変化させることは、前記閉じ込め部分にわたって電圧を印加することを含む、請求項18〜請求項19のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にスピントロニクスの分野に関する。具体的には、これは、非線形スピン軌道相互作用に依拠して電流−スピン変換及びスピン偏極の増幅等の機能を可能する、デバイス及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スピントロニクスは、電荷担体の電荷に加えて、そのスピン運動量を使用して信号を生成し又は処理する、エレクトロニクスの一分野である。信号は、通信、ストレージ、センシング又は論理の用途の観点で処理することができる。
【0003】
電子スピンに基づく多くの概念が提示されている。具体的には、基板の上にスピン輸送層(又はSTL)を含むスピンデバイスが提案されている。STLには、入力電極及び出力電極が接続される。入力電極は、スピン注入コンタクトとして作用し、2つの可能な方向(スピン・アップ/ダウン)のうちの一方に磁化された磁性材料から成る。入力電極とSTLとの間に電流を通すことにより、スピン偏極された電子を入力電極とSTLとの間の界面においてSTL内に蓄積させることができる。STL内のその位置における電子のスピン偏極は、入力電極の磁化に直接関連するものであり、すなわちSTL内のスピンもまたアップ又はダウンのいずれかである。出力電極は、STLと出力電極との間の界面において局所スピン偏極を変換する。スピン偏極は、例えば電気信号に変換することができる。スピン注入コンタクト及びスピン検出コンタクトとしてとして作用する入力電極及び出力電極の概念は、周知である。入力電極と出力電極との間で、入力電極によってインプリントされたスピン偏極は、拡散又はドリフトによって伝播する。
【0004】
加えて、多数決論理概念を使用し、いくつかの入力電極がSTL内の電子スピンを偏極し、出力電極は、入力電極から出力電極へ拡散した平均スピン偏極を検出する、論理ゲートが公知である。
【0005】
認識できる通り、電荷担体のスピンは、強磁性材料、及び、スピン軌道相互作用を可能にする材料、これら両材料において操作することができる。強磁性材料に基づくデバイスは現在の技術状況において確立されているが、スピン軌道結合システムは、いまだ一部の基本機能が不足している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、非線形スピン軌道相互作用に依拠して電流−スピン変換及びスピン偏極の増幅等の機能を可能するデバイス及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の局面によれば、スピン軌道結合デバイスのための実施形態が提供される。このデバイスは、その内部でドリフトしている電荷担体(電子又は正孔)を閉じ込めるように設計された閉じ込め部分を含む。これはさらに回路を備え、該回路は、閉じ込め部分の入力領域において電荷担体にスピン偏極を注入するように作動可能な入力デバイスを含む。回路は、閉じ込め部分の出力領域において電荷担体のスピン偏極を検出するのに使用可能な出力デバイスをさらに含む。一実施形態において、閉じ込め部分は、その内部でドリフトしている電荷担体が非線形スピン軌道相互作用を受けるように構成され、これは、ドリフトしている電荷担体のスピン偏極を、かかる電荷担体の運動量に非線形的に依存する角度だけ回転させる。他の実施形態において、回路は、入力領域にスピン偏極を注入すると同時に、閉じ込め部分の内部でドリフトしている電荷担体の運動量を変化させることを可能にするように構成される。移動する担体の運動量を変化させることは、それらのスピン偏極を非線形スピン軌道相互作用に起因して回転させることを可能にする。実施形態は、電流(すなわち移動している電荷担体の運動量に関連付けられた電流)を所望のスピン偏極に変換することを提供する。
【0008】
一実施形態において、立方スピン軌道相互作用が企図され、これにより、非線形スピン軌道相互作用に関連付けられるエネルギーは、電荷担体の運動量の3乗に依存することになる。
【0009】
一実施形態において、閉じ込め部分にわたって電圧が印加され、電荷担体の運動量に関連付けられた電流は、この電圧に従って変化することになる。電圧は、例えば、各々が閉じ込め部分と電気通信するドレインコンタクト及び強磁性コンタクトを介して、閉じ込め部分にわたって印加される。
【0010】
別の態様によれば、スピン増幅システムのための実施形態が提供される。上記システムは、上述のスピン軌道結合デバイスと、スピントロニックデバイスとを含む。スピントロニックデバイスは、その出力領域において所与のスピン偏極を有する電荷担体を得るように構成される。スピン軌道結合デバイスの回路は、スピントロニックデバイスをスピン軌道結合デバイスの入力領域に結合するスピン−電流変換器をさらに含むことができ、その結果、スピントロニックデバイスの出力領域において得ることができる電荷担体のスピン偏極に基づいてスピン−電流変換器によって生成された電流に従って、スピン偏極を入力領域に注入することができるようになっている。実施形態は、出力領域において検出可能なスピン偏極を、スピントロニックデバイスの出力領域において得ることができる電荷担体のスピン偏極に対して増幅するための回路を提供する。
【0011】
一実施形態において、スピン軌道結合デバイスは、電荷担体のスピン偏極が、閉じ込め部分の内部でドリフトしている電荷担体の運動量に関連付けられた電流の振動関数であるように設けることができる。関数の線形領域(linear regime)を利用することによって、増幅されたスピン偏極は、ドリフトしている電荷担体に関連付けられた電流に線形依存することができる。
【0012】
他の実施形態において、上記振動関数の非線形領域の利用が提供される。この実施形態において、スピントロニックデバイスの出力領域におけるスピン偏極の相異なる値が、スピン偏極の、本質的に同じ増幅値をもたらす。これは、多数決論理デバイス等のいくつかの実施形態における改善を提供する。
【0013】
別の実施形態によれば、スピン軌道結合デバイス内でスピン偏極を回転させるための方法が提供される。これは、上述のようなシステムを使用して、スピン偏極を増幅するための方法としてさらに具体化することができる。(デバイスの入力領域にスピン偏極を注入すると同時に)閉じ込め部分の内部でドリフトしている電荷担体の運動量を変化させて、ドリフトしている電荷のスピン偏極を非線形スピン軌道相互作用に起因して回転させるようになっている。このような方法は、上で説明した通り、電流−スピン変換、又はスピン増幅を提供する。
【0014】
さらなる特徴及び利点が、本発明の技術を通じて実現される。本発明のその他の実施形態及び態様は、本明細書において詳細に説明され、特許請求される発明の一部とみなされる。本発明を利点及び特徴と共により良く理解するために、説明及び図面を参照されたい。
【0015】
本発明とみなされる主題は、本明細書の結論部にある特許請求の範囲において明確に指摘され、特許請求される。上記及びその他の特徴、並びに本発明の利点は、添付の図面と共に解釈される以下の詳細な説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態による電流−スピン変換のためのスピン軌道結合デバイスの3D表示を示す。
図2】実施形態による、図1のデバイスの2D断面図を示す(このデバイスの閉じ込め部分についてのより詳細を示す)。
図3】実施形態による、スピントロニクスデバイスを図1のようなスピン軌道結合デバイスに結合してスピン増幅を可能にしたシステムの3D表示を示す。
図4】実施形態による、スピン軌道結合デバイスの出力に結合された別のスピントロニクスデバイスを含む、別のシステムの3D表示を示す。
図5】いくつかの実施形態による、ドリフト速度に対するスピン偏極の振幅(デバイスの主方向に沿った射影)の理論的依存性を、理想的場合(実線、拡散無しと仮定)及びスピン拡散を考慮に入れた場合(点線)の両方について例証したプロットを示す。
図6】いくつかの実施形態による、ドリフトしている電荷担体に関連付けられた電流に対するスピン偏極の振幅の理論的依存性を示す。
図7】いくつかの実施形態による、スピン軌道結合デバイスの出力領域において検出可能なスピン偏極の振幅と、(線形増幅を可能にするために図3のシステムのように)それに結合されたスピントロニックデバイスの出力において得ることができるスピン偏極の振幅との間のほぼ線形の依存性を例証するプロットを示す。
図8】抵抗に対するスピン偏極の振幅の理論的依存性、及び、かかる関数の非線形挙動を多数決論理用途に利用する方式を例証するプロットを示す。点線は、いくつかの実施形態による、(図3の構成のように)スピン軌道結合デバイスに結合された多数決論理デバイスによって可能な多数決論理演算の4つの可能な結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の説明は、下記の通り構成する。最初に全般的な実施形態及び上位の変形を説明する。次の記述は、より具体的な実施形態及び技術的実装の詳細に関する。
【0018】
全般的な実施形態及び高位の変形
図1図4を参照して、スピン軌道結合デバイス100に関連した実施形態を最初に説明する。「スピン軌道結合デバイス(spin−orbit coupled device)」は、「スピン軌道相互作用デバイス」と同義語であり、すなわちスピン軌道相互作用を可能にするデバイスであることに留意されたい。
【0019】
このデバイス100は、閉じ込め部分8を含み、この部分は、その内部でドリフトする可能性がある電荷担体を閉じ込めるように設計されている。本デバイスは、電子の動力学に依拠することができる。非線形スピン軌道相互作用は正孔系においても生じることが知られているので、他の実施形態においては、電荷担体を正孔とすることができる。
【0020】
閉じ込め部分8は、回路1、4をさらに含む。この回路は、特に入力デバイス1を含み、これは、閉じ込め部分8の入力領域10内の電荷担体にスピン偏極2を注入するように作動させることができる。回路1、4はまた、出力デバイス4も含み、これは特に閉じ込め部分8の出力領域40において電荷担体のスピン偏極を検出するのに使用することができる。出力デバイス4は、典型的には平均スピン偏極6を検出するように設けられる。典型的には、検出されるのは、ドレインコンタクト4の磁化ベクトル(z軸)上へのスピン偏極の射影(「Sout」)である。
【0021】
ここで注目すべきは、閉じ込め部分8は、その内部でドリフトしている電荷担体が非線形スピン軌道相互作用を受けるように構成されることである。本明細書で説明するように、非線形スピン軌道相互作用は、ドリフトしている電荷担体のスピン偏極を、電荷担体の運動量に非線形的に依存する角度だけ回転させる。加えて、回路1、4は、スピン偏極を入力領域10に注入すると同時に付随して、閉じ込め部分8内でドリフトしている電荷担体の運動量を変化させることを可能にするように構成される。
【0022】
結果として、ドリフトしている電荷担体のスピン偏極を、変化させた運動量に従って回転させることができ、そしてこれは非線形スピン軌道相互作用によるものである。したがって、上記デバイスは、電流(ドリフトしている電荷担体の運動量に関連付けられる)を、方向zに沿って、電荷担体の所望のスピン偏極方向、例えば正のスピン偏極又は負のスピン偏極に変換することを可能にする。スピン軌道結合デバイス100の出力領域40のレベルにおけるスピン偏極状態の大きさは、担体の運動量を適宜変化させることによって、変化させることができる。換言すれば、本手法は、非線形(例えば立方)スピン軌道結合システムにおいてドリフトしている電荷担体に依拠して、ドリフトしている電荷担体に起因して生じる電流を所望のスピン偏極状態へと変換し、それにより出力スピンの方向及び大きさを変化させることができる。
【0023】
例えば、スピン偏極は、単に閉じ込め部分8にわたって電圧を印加して、閉じ込め部分が受ける電位を変える(例えば電圧は0Vから±45mVまで変えることができる)ようにすることよって変化させることができる。必要な電圧は、上記回路1、4を介して印加することができる。閉じ込め部分8の内部でドリフトしている電荷担体の運動量に関連付けられた電流は、このように回路1、4を介して印加された電圧Vに従って変化することになる。
【0024】
実施形態において、回路は、固定された動作点、すなわち電圧が(ひとたび印加されると)一定に保たれるところに設定される。変形において、回路は、動作点を適合する/最適化することができるように、印加電圧を変化させることを可能にするようにさらに構成される。これらの場合の各々において、電荷担体が経験する電圧は、変化することになる。その点に関して、一般に、出力におけるスピン偏極を変化させるためには、電圧(したがってチャネルを通る電流)を変化させる必要があることが注目される。しかしながら、スピン増幅器に関連した他の実施形態(本明細書において図3及び図7を参照して説明する)においては、電圧は(ひとたび印加されると)さらに変化させる必要はない。それでもなお、チャネル8を通って流れる電流は、スピン依存性抵抗が変化するので効果的に変化する。上記実施形態はすべて、閉じ込め部分8の内部でドリフトしている電荷担体の運動量を変化させることができるという事実を利用したものである。
【0025】
スピン偏極を電流信号に変換することを可能にするデバイスは、導入部で記したように既に公知であることに留意されたい。しかしながら、本デバイスは、今まで実証されていなかった反対方向の変換概念(すなわち電流−スピン変換)を可能にするものである。本明細書における実施形態の基礎をなす主な物理的効果(担体運動量に対するスピン偏極の非線形依存性)を、電流に比例したスピン偏極を(電流を担うチャネルの横側において)発生させるが電流に対するスピン偏極の非線形依存性をなんら伴わないスピンホール効果と混同すべきではない。
【0026】
スピン軌道結合デバイスを製作するには、特に閉じ込め部分8のための適切な材料を選択する必要がある。非線形スピン軌道相互作用は、特にバルク反転非対称性を有する半導体結晶、例えば閃亜鉛鉱型構造を有する結晶のような、例えばGaAs、InAs、InSb、GaSb及びAlAsのようなIII−V族半導体において存在する。加えて、その他の材料クラスが、ペロブスカイト及び遷移金属ジカルコゲナイドのように、非線形の例えば立方スピン軌道相互作用を示すことが知られている。さらに、期せずして強い立方スピン軌道相互作用を有する材料を利用した正孔系が知られている。したがって、スピン軌道結合デバイスは、このような材料、又は、より一般的には実質的に非線形のスピン軌道相互作用を示す任意の材料に基づいて有利に設計することができる。
【0027】
加えて、その他の考慮事項が効き始める。まず、入力コンタクト1及び出力コンタクト4は、好ましくは、選択された材料8におけるスピン軌道長と比べて小さく(例えば、スピン軌道長の1/4以下に)設計される。スピン軌道長は、スピン偏極された電荷担体のスピンが180度回転されるまでにその電荷担体がドリフトする必要がある長さである。加えて、拡散が出力スピン偏極の振幅を小さくするので、拡散をできるだけ減らすようにデバイス100を設ける。これは、例えば、電荷密度(例えば電子シート密度)、温度、散乱機構及び準1Dワイヤ(スピン軌道長より短い幅の横方向チャネル)内での閉じ込めを調整することによって達成することができる。
【0028】
実施形態において、閉じ込め部分8は、その内部でドリフトしている電荷担体が立方スピン軌道相互作用を経験するように構成される。すなわち、スピン軌道相互作用エネルギーは、定数項及び線形項に加えて、電荷担体の運動量の3乗に有意に依存する。例えば、スピン軌道相互作用ゆえに、運動している電子は、有効磁場を経験し、その周りで電子のスピンが歳差運動する。線形スピン軌道相互作用の場合、相互作用エネルギーは、電子の運動量に線形依存する。結果として、ドリフト速度vでAからB(図1参照)へ移動するスピンの歳差角度φは、AとBとの間の分離距離l(図1参照)にのみ依存することになる。すなわち、二次元領域を仮定し、その中に担体が閉じ込められるとすると、
【数1】

であり、ここで、βは、線形スピン軌道相互作用の強さであり、mは、有効質量であり、tは、距離lを移動するのに必要な時間であり、
【数2】

は、換算プランク定数である。歳差角度φは、スピン軌道相互作用エネルギーESOを換算プランク定数で除し、これに時間tを乗じることによって得ることができ、すなわち線形スピン軌道相互作用の場合、
【数3】

である。
【0029】
もし、代わりに、スピン軌道相互作用エネルギーが立方である(すなわち相互作用は電子の運動量の立方に依存する)とすると、スピンの歳差角度は、移動距離のみならず、速度にも依存することになる。(再び)二次元システムを仮定すると、歳差角度φは、この場合、
【数4】

と記述することができ、ここで、nは、二次元担体ガスのシート密度であり、γは、立方スピン軌道相互作用の強さである。
【0030】
いくつかのパラメータがスピン軌道結合デバイス100に影響を与える。上式からわかるように、かかるパラメータは、以下を含み得る:(i)閉じ込めのために使用される材料(これは特にn及びγを決定し、ドリフト速度vに影響を与える);(ii)デバイス100の設計(これは特にlを決定する);及び(iii)印加電圧V(これはドリフト速度vに影響を与える)。ひとたび材料が選択されると、電圧範囲に関していくらかの余地があり、それがドリフト速度vに影響を与え、ひいては歳差角度φに対する非線形的寄与に影響を与えることに留意されたい。それでもなお、立方項が実質的な寄与を与えるために、フェルミ運動量の実質的な分率(例えば10%以上)となる電荷担体のドリフト運動量を達成することができるように、上記パラメータすべてを(閉じ込め部分8用の材料の選択から始めて)規定することができる。
【0031】
実施形態において、スピン軌道結合デバイス100の入力デバイス1は、図1図4に示すように、閉じ込め部分8と電気通信する(例えば接触している)強磁性コンタクト1を含む。適切なスピン注入は、光励起によって、又は例えばスピン依存トンネリングの場合のように任意のスピン依存輸送プロセスによって、特に強磁性層1から閉じ込め部分8へのスピン移動を通じて起こり得る。とはいえ、好ましい注入機構は、強磁性層からのトンネリングに依拠したものである。
【0032】
スピン軌道結合デバイス100の出力デバイス4は、閉じ込め部分8と電気通信するドレインコンタクト4を含むことができる。回路1、4は、それに応じて、閉じ込め部分8にわたって印加される電圧Vをドレインコンタクト4及び強磁性層1を介して印加する(場合によっては変化させる)ように構成することができる。ドレインコンタクト4は、図1図3に示すように、好ましくは強磁性コンタクト1の反対側に、例えば閉じ込め部分8の反対端に配置される。
【0033】
図1図3及び図4の3D表示は、簡明にするために簡略化されていることに留意されたい。他の実施形態において、デバイスは、ここでは図示していない付加的な特徴及び構成要素を伴うことができる。具体的には、図2を参照すると、閉じ込め部分8は、基板(図示せず)に加えて、電荷担体を本質的に二次元領域に閉じ込めるように設計された1つ又は複数の層8、87、89を含むことができる。担体は、例えば電子とすることができ、これは、このような二次元領域内の2D電子ガス、すなわち本質的に二次元領域(方向y及びzによって定められ、zはデバイス100の主[長手]方向である)内に閉じ込められた電子ガスとして説明することができる。閉じ込め部分8は、例えば半導体材料の3層以上の層7、8、9を含むことができる。電子ガスは、例えば、半導体材料の単一層8内、又は2つの連続した層7と8との間若しくは8と9との間の界面87、89に閉じ込めることができる。付加的な層を含めることができる。層7、8、9それ自体が必要に応じて分解してサブ層になり、2D電子ガスを達成することができる。他の実施形態において、電子閉じ込め層は、半導体層と、より詳細に後述するような半導体材料、金属材料又は絶縁材料の付加的な層との間の界面に形成することができる。
【0034】
一実施形態において、閉じ込め部分8は、1つ又は複数の非磁性半導体層を含む。例えば、図2の実施形態は、非磁性半導体層7、8及び9のみが関与していると考えることができる。
【0035】
実施形態において、(例えば図1図3における層8のための)閉じ込め材料は、スピンを担い、電場下でドリフトを受けることができる、電荷担体が存在するように選択される。加えて、担体は、ドリフトしているときにスピン回転を受けるべきである。スピン回転は、散乱事象間の電荷担体の伝播によって決定され得るものであって散乱事象自体によって決定されるものではなく、その結果、散乱事象間のスピン回転はドリフト速度に非線形的に依存するようになっている。閃亜鉛鉱型構造を有する大部分の非磁性半導体は、かかる要件を満たす。前述のようなその他の材料もまたこれらの要件を満たす。
【0036】
また、非磁性半導体層以外の、非線形スピン軌道相互作用を示すその他の材料を企図することができる。効率的なスピン注入及び検出機構は公知であるので、本手法は、実質的に非線形のスピン軌道相互作用を示す任意の適切な材料を使用することができる。
【0037】
さらに別の実施形態において、(準)一次元デバイスを企図することができ、ここで電荷担体は、所与の方向(すなわち一次元)に沿ってドリフトすることが可能なっており、他方、その方向に対して垂直な面内の、電荷担体をホストする材料の寸法は、その材料のスピン軌道長よりも小さい。換言すれば、(準)一次元系は、2つの次元に関して閉じ込められており、他方、例えば(準)二次元電子ガスは、二次元領域に対して垂直な方向に関して閉じ込められている。
【0038】
図1及び図2を参照して上で説明したようなデバイス100は、電流を所望のスピン偏極に変換するために提供することができる。付加的な考慮事項及び実装の詳細は、本明細書で論じる。
【0039】
加えて、今から図3及び図4を参照して説明するように、上記デバイスは、スピントロニックデバイスの出力において得られたスピン偏極を増幅するために使用することができる。その点に関して、スピン増幅システム200のための実施形態を提供することができ、システム200は、上述のようなスピン軌道結合デバイス100を含む。加えて、システム200は、スピン軌道結合デバイス100に結合したスピントロニックデバイス110を含む。スピントロニックデバイス110は、その出力領域140において所与のスピン偏極Sinを有する電荷担体を得るために構成される。図1図2を参照して前述した回路1、4は、ここではスピントロニックデバイス110をスピン軌道結合デバイス100の入力領域10に結合するスピン−電流変換器114、1を含むように修正することができる。
【0040】
このようにして、スピン偏極2は、スピン−電流変換器114、1によって生成された電流に従って、しかし、結合されたスピントロニックデバイス110の出力140において得られた電荷担体のスピン偏極「Sin」に基づいて、入力領域10に注入することができる。加えて、スピン軌道結合デバイス100の回路1、4、114は、スピン偏極Sinを増幅するように設定することができる。例えば、スピン軌道結合デバイス100の出力領域40において検出可能であるスピン偏極「Sout」を、相応に、スピントロニックデバイス110の出力140において得られる電荷担体のスピン偏極Sinに対して増幅することができる。
【0041】
本明細書で使用されるとき、「増幅される」という用語は、方向zに沿って射影されたスピン偏極の成分Soutが、同じ(又は、さらには異なる)方向に沿って射影されたスピン偏極の成分Sinよりも(特定の増幅係数だけ)大きいことを意味する。このような増幅を達成するために、領域10に注入されるスピン偏極Sinjの大きさは、増幅される成分Sinに対して所望される最大よりも大きいものである必要がある。本明細書で使用されるとき、「振幅」という用語もまた、特定方向に沿って射影されたスピン偏極の成分を表す。
【0042】
inの増幅は、例えば、最初に、スピントロニックデバイス110の出力140において得られる電荷担体のSinをスピン−電流変換器114、1を用いて電流に変換することによって動作することができる。次いで、この電流を用いて、入力コンタクト1を介してスピン偏極Sinjをスピン軌道結合デバイス100の領域10に注入する。最後に、スピン軌道結合デバイス100の特性を用いて、注入されたスピン偏極Sinjを領域40まで伝播することができ、そこで最初にSinから変換された電流が最終的にSoutに変換される。
【0043】
線形スピン増幅が所望される場合には(図3との関連での図7)、Sin=0のとき、Sout=0となるように回路を(例えば、設計によって、又は電圧Vを印加することによって)較正することができる。スピン−電流変換器114を介して得られる電流振幅は、領域140におけるスピン偏極に依存するのみならず、印加される電圧V(コンタクト116における接地に対して)にも依存することに留意されたい。
【0044】
ここでSinがゼロでない場合、電流振幅は、それに応じて変化するので、非線形スピン軌道相互作用に起因して、Soutにおけるスピン偏極の回転角度を変化させる。結果として、Sout(出力領域40のレベルにおいて検出可能)を、Sin(スピントロニックデバイス110の出力140において得られる)に対して増幅することができる。領域40におけるスピン偏極が典型的には領域10における偏極よりも小さい場合であっても、新たな大きいスピン偏極が変換器114、1を介して領域10に繰り返し注入されるので、増幅が起こり得ることに留意されたい。
【0045】
ここでより詳細に図3を参照すると、実施形態において、スピン−電流変換器114、1は、スピントロニックデバイス110の出力140において得られたSinを電流振幅に変換するためのスピン感受性抵抗114を含むことができる。スピン感受性抵抗114、1は、例えば強磁性層により、特に半導体層と強磁性コンタクト層との間の界面に形成することができる。図3に示す実施形態において、スピン−電流変換器は、デバイス110の半導体層118を再使用する。例えば、スピン感受性抵抗114は、効率上、デバイス110の半導体層118と強磁性コンタクト層1との間の界面に形成される。
【0046】
本明細書において説明するように、いくつかの実施形態において、ある特定の方向に沿ったスピン振幅の射影のみが関連する。この方向は、例えば、強磁性コンタクト1の磁化軸によって定めることができ、これは図1図4において仮定された長手方向zと一致することができる。
【0047】
図6に示すように、スピン軌道結合デバイス100の出力領域40において検出可能な電荷担体のスピン偏極Soutは、典型的には閉じ込め部分8の内部でドリフトしている電荷担体の運動量に関連づけられた電流の振動関数である。これは、Sout=Sinjcos(φ)が、例えば前掲のφの式に従って、vに依存するという事実に起因して生じる。量Sinjは、点Aに注入されたスピン偏極の度合いを指す。同じ理由で、出力領域40において検出可能なスピン偏極Soutは、vの振動関数(図5)であり、又は、さらに関連付けられた抵抗値の振動関数(図8)であり、ここで抵抗値の変化は、例えばスピン選択的コンタクト114から本質的に生じる。抵抗値は、実際、スピン依存抵抗114及びドレインコンタクト40までのすべての他の抵抗である、一連の抵抗に関連付けられる。
【0048】
さらに、回路1、4、114は、この振動関数の線形領域を利用するように設定することができる。結果として、スピントロニックデバイス110の出力領域140からのスピン偏極Sinを、得られる増幅されたスピン偏極Soutがvに関連付けられた電流Iに本質的に線形依存するように、増幅することができる(図6)。これを本明細書においてより詳細に論じる。
【0049】
実施形態において、システム200(図3)におけるスピントロニックデバイス110は、スピンに基づく多数決論理デバイスである。スピンに基づく多数決論理デバイスは、典型的には、所与のスピン偏極を有する電荷担体を、多数決論理デバイスの入力として注入されたスピン偏極の論理演算に従って、出力として得るように構成され、それ自体公知である。認識できる通り、スピン偏極Soutの振動挙動を有利に利用することができ、この関数の非線形性を利用して、スピン偏極の相異なる値(スピントロニックデバイスの出力140において得られる)が、スピン軌道結合デバイス100の出力領域40において検出可能な本質的に同じスピン偏極の増幅値をもたらすようにすることができる。
【0050】
例えば、図8を参照して、スピン増幅システムを提供することができ、ここで回路1、4は、スピントロニックデバイス110の出力140において得ることができるスピン偏極の値の相異なる組(すなわち[−αS/3,−αS]及び[αS/3,αS])を増幅するように設定され、ここでαはスピン偏極減衰係数である。2つの組の各々において、スピン偏極の値(±αS/3,±αS)は相異なり、かつ同じ符号であり、他方、第1の組の値(−αS/3,−αS)は、第2の組の値(αS/3,αS)とは反対の符号を有することに留意されたい。それでもなお、2つの組の各々について、この振動関数により、スピン偏極の相異なる値(スピントロニックデバイス110の出力において得られる)が、本質的に同じスピン偏極の増幅値±S(デバイス100の出力領域40において検出可能)をもたらすことができる。すなわち、図8において、αS/3及びαSは各々、Sまで増幅され、他方−αS/3及び−αSは各々、−Sまで増幅される。これを本明細書においてより詳細に論じる。
【0051】
実施形態において、スピン増幅システム200のスピントロニックデバイス110は、論理ゲートとして構成することができる。この点に関して、論理ゲートのカスケード(より一般的には多数決論理デバイスのカスケード)を得ることが所望される場合があり、その場合、中間のスピン偏極を増幅する必要があり、それこそが本発明の実施形態により可能なことである。
【0052】
この点に関して、図4に示すように、図3のスピン増幅システム200は、スピン軌道結合デバイス100にその出力デバイス4を介して結合される付加的なスピントロニックデバイス120によって補強することができる。付加的なスピントロニックデバイス120もまた、スピンに基づく多数決論理デバイスとすることができ、スピン偏極信号の中間再増幅を伴う多数決論理デバイスのカスケードが得られる。付加的なスピントロニックデバイス120は、例えば論理ゲートとして構成することができ、論理ゲートのカスケードが得られる。
【0053】
他の態様によれば、本発明は、スピン偏極を回転させる(及び場合によっては増幅する)ための方法として具体化することができる。この方法は、図1及び図2を参照して前述したようなスピン軌道結合デバイス100を利用する。このような方法のステップは、対応するデバイス100及びシステム200を参照して既に暗黙的に説明したので、ここでは簡単に論じる。本質的に、本方法は、閉じ込め部分8の内部でドリフトしている電荷担体の運動量を(例えば前述のように回路1、4を介して)変化させるステップであって、同時に、デバイス100の入力領域10にスピン偏極を注入するステップを中心に展開する。
【0054】
これは、閉じ込め部分8にわたって電圧Vを印加して、閉じ込め部分8を支配する電位の値を変化させ、したがって電子を加速することによって、達成することができる。それでもなお、前述のように、印加電圧は、図3及び図7を参照して上で論じたような一部の特定の実施形態においては、一定に保持することができる(その場合であってもチャネル8を流れる電流は変化する)。
【0055】
以前に説明した通り、ドリフトしている担体の変化する運動量は、上記の非線形スピン軌道相互作用により、入力領域10から出力領域40へ移動する電荷担体のスピン偏極を回転させることになる。担体の運動量は、スピン注入に付随して変化する。実施形態において、本方法は、出力領域40のレベルにおける電荷担体のスピン偏極の検出のステップを含むことができる。検出は、出力デバイス4を介して行うことができる。この実施形態の技術的実装の態様を、本明細書においてより詳細に説明する。
【0056】
既に図3及び図4を参照して論じたように、本方法の実施形態は、スピントロニックデバイス110がスピン軌道結合デバイス100の入力領域10に結合されたシステム200を使用する。スピン偏極は、スピン−電流変換器114、1によって生成された電流に従って、それでもなおスピントロニックデバイス110の出力140において得られた電荷担体のスピン偏極Sinに基づいて、相応にスピン軌道結合デバイス100の入力領域10に注入することができる。加えて、回路1、4、114は、デバイス100の出力40において検出可能なスピン偏極Soutをスピン偏極Sinに対して増幅するように設定することができる。
【0057】
具体的には、振動するスピン偏極の線形領域を利用することによって、増幅されたスピン偏極は、ドリフトしている担体に関連付けられた電流に対して本質的に線形依存することになる(図7参照)。
【0058】
反対に、この関数の非線形領域を利用することを所望することができ、その結果、入力デバイス1を介して注入されたスピン偏極の相異なる値が、スピン軌道結合デバイス100の出力領域40において本質的に同じスピン偏極の増幅値Soutをもたらす。これを本明細書においてより詳細に論じる。
【0059】
上記実施形態は、添付の図面を参照して簡潔に説明したものであり、多数の変形に適応し得る。上記特徴のいくつかの組合せを企図することができる。次の記述において例を示す。
【0060】
電流−スピン変換の実施形態
ここで論じる実施形態は、電流のサイズに依存して、電流を正又は負のスピン偏極に変換することを可能にする。当業者は理解できる通り、このような機能は、スピンに基づくエレクトロニクス回路用に所望される。さらに、この機能を本明細書で論じる実施形態において有利に利用することができる。
【0061】
基礎となるデバイス100(図1図2)は、二次元電荷担体系を含む。このような系において、電荷担体(以後、電子と仮定する)は、立方スピン軌道相互作用を経験し、すなわちスピン軌道相互作用は電子の運動量の3乗に依存する。例えば、III−V族電子系、ケイ素及びIII−V族正孔系、ペロブスカイト、及び遷移金属ジカルコゲナイド等の材料を使用した実施形態の場合などである。
【0062】
スピン軌道相互作用が実質的に立方項に依存するような実施形態を提供する。この立方相互作用が小さい場合には、コンタクト10と40との間の距離を大きくする必要がある。換言すれば、立方スピン軌道相互作用は、所与の何らかのデバイス寸法に対して、所望の効果を達成するのに十分に強くすることができる。逆に、所与の立方スピン軌道相互作用に対して、デバイスの寸法を適合させる必要があり得る。
【0063】
このようなデバイス100において、位置Bにおけるスピン配向は、電子が定められたスピン偏極を有する点Aから、点Bへ流れる電流に依存する。点Aと点Bとの間の距離をlとする。
【0064】
スピン軌道相互作用ゆえに、運動している電子は有効磁場を経験し、その周りで電子のスピンが歳差運動する。線形スピン軌道相互作用の場合、ドリフト速度vでAからBへ移動するスピンの歳差角度は、上の記述で示した通り、lのみに依存する。しかしながら、非線形スピン軌道相互作用の場合(例えば相互作用エネルギーが電子の運動量の立方に依存する場合)、スピンの歳差角度は移動距離のみならず速度にも依存するので、デバイスは電流−スピン変換器として機能する。
【0065】
結果として、振幅Soutは、ドリフト速度に依存した振動関数になる。図5はこれを、理想的な場合(実線)、及び振幅を低減させるスピン拡散を考慮に入れた場合(点線、数値計算したもの)の両方で示す。
【0066】
より詳細には、実線の曲線(図5図6及び図8)は、上の記述で示した解析式によって得たものであり、他方、点線は、スピンの拡散的広幅化を考慮に入れた、振幅Sの複雑な数値計算の結果から得られる。拡散ゆえに、AからBへの距離を移動する時間は、個々のスピン毎に異なる。平均スピン振幅を距離lにおいて測定したとき、振幅は、異なるドリフト速度のスピンを平均することにより小さくなる。図5から分かるように、この効果は、ドリフト速度が速くなるほど、顕著になる。論理的に、同じ傾向がドリフトしている電子に関連付けられた電流Iに対する振幅Soutの依存性を示す図6において見られる。
【0067】
歳差角度φについての前出の式を書き直して、系内を流れる電流I(I=venb)に対する依存性を示すことができ、すなわち、
【数5】

ここで、bは輸送チャネルの幅であり、eは単一電子の電荷である。
【0068】
図6において、Soutを電流に対してプロットする。図6から分かるように、スピン偏極の配向は、Sout=Sinjcos(φ)に起因して、電流の振動関数でもある。したがって、電流を変化させることによって反対配向のスピンを生成することができる。
【0069】
上記の依存性は、スピンに基づくデバイスの機能の設計についての豊富な可能性を提供する。例えば、Soutのゼロ遷移における作用点は、ほぼ線形のスピン−電流変換特性を提供し、スピン増幅に使用することができるであろう(図7)。さらに、非線形性もまた、例えば多数決論理のための用途において活用することができる(図8)。
【0070】
図1は、デバイス100の可能な実現を示し、ここではスピン偏極は、領域10に(すなわち位置Aにおいて)注入される。スピン注入は、例えば、強磁性コンタクト1を場合によってはトンネル障壁と組み合わせて使用して、達成することができる。所与のn、l及びbに対する電流は、ドレインコンタクト4及び強磁性コンタクト1を介して閉じ込め部分にわたって印加される電圧Vに依存する。
【0071】
ドレインコンタクトにおけるスピンの配向は、デバイスを通って流れる電流についての尺度である。したがって、デバイス100は、電流−スピン変換器として作用する。
【0072】
電流−スピン変換器に基づくスピン増幅器の実施形態
いくつかの実施形態において、スピン減衰が、スピンに基づくデバイスに関して問題になることがある。具体的には、依存性論理ユニットのカスケードの実現は、スピン偏極がユニットからユニットへと劣化するので未だ困難である。
【0073】
本明細書で提供する1つの手法は、スピン増幅を以下のステップに従って可能にする:スピントロニックデバイスの出力において得られたスピン偏極を電流にコード化する;この情報を電流に変換して電流を介して(場合によっては長距離にわたって)通し、次いでこれを、本明細書で開示したような電流−スピン変換器によって変換して、増幅された振幅を有するスピン偏極に戻す。
【0074】
図3は、スピン偏極を増幅するために、スピンに基づく論理処理ユニット(又はスピン偏極を出力するその他の任意のデバイス)に結合された、(図1に示すような)電流−スピン変換器の模式図を示す。ここで再び、例えば強磁性コンタクト1の磁化軸によって定めることができる長(主)軸zに対するスピン偏極の射影Sを考える。
【0075】
図3に示すシステム200は、入力スピン偏極射影Sinをスピン−電流変換器114、1によって電流に変換し、得られた電流を電流−スピン変換器100に送り込むことを可能にする。
【0076】
スピン−電流変換を達成する1つの可能な方式は、半導体118と強磁性コンタクト1との間のスピン依存界面抵抗114を使用することである。変形において、例えば逆スピンホール効果に依拠する、その他のスピン−電流変換方法を企図することができる。
【0077】
図3のシステム200において、スピンデバイス110の出力140において得られるスピン振幅Sinを増幅する必要がある。この目的のため、これはスピン選択的コンタクト114によって電流に変換される。得られた電流は、次に(必要に応じて長距離にわたって)電気接続を介して、図1を参照して前述したような電流−スピン変換器100まで輸送される。図3において、電流は、強磁性コンタクト1を通して直接輸送される。しかしながら、構成ブロック110、100の大きい空間的分離を可能にする他の実施形態を企図することができる。
【0078】
次いで、スピン注入コンタクト1は、先に変換した電流に従ってスピン2を位置Aにおいて電流−スピン変換器100に注入する。位置Aにおけるスピン偏極Sinjは、特にスピン注入コンタクト1の効率によって影響を受ける。
【0079】
界面114における抵抗は、入力スピンのスピン振幅Sinに依存する。例証のため、スピン−電流変換器114、1は以下の特性を有すると仮定することができる:R=R(1−Sel Sin)、ここでRは非偏極スピンに対するデバイスの基本抵抗であり、Selはコンタクト114のスピン選択性を表す(Selの最大値は1である)。したがって、スピン−電流変換器114、1は、非偏極スピンに対しては抵抗R、Sin=−1に対しては抵抗R+Sel、Sin=+1に対しては抵抗R−Selを有する。
【0080】
電流−スピン変換器は、前述の通り、位置Aにおけるスピン偏極を、スピンが位置Bに移動するときに角度
【数6】

だけ回転させる。なぜなら、RはSinに依存し、SoutはSinに依存するからである。
【0081】
材料パラメータの適切な選択に対して、デバイスを、電流−スピン変換器の特性のゼロ遷移に近い作用点まで調整することができる(図6参照)。デバイスは、このとき、ほぼ線形の入力−出力特性に起因してスピン増幅器として機能する。
【0082】
例えば、以下のパラメータ(表I)は、図7にプロットしたような特性をもたらす。
【表1】
【0083】
パラメータを調整することによってより急峻な勾配、したがってより高い増幅係数を実現することができる。より強い立方スピン軌道相互作用を有する、すなわちγの値がより大きい材料は、より大きい増幅係数をもたらす。
【0084】
非線形スピン増幅器及び多数決論理におけるスピン増幅の実施形態
多数決論理に基づく概念は、1つの出力電極のスピン偏極に対する複数の入力電極のスピン偏極に関連したものであり、出力スピン偏極は、個々の入力電極のスピン偏極の論理演算である。多数決論理概念において、出力は、入力偏極の平均を表す出力偏極の符号によって定められる。スピン偏極の全体としての大きさは、入力電極のスピン偏極のレベルに比べて出力電極において小さくなることがある。論理ゲートをカスケード化するためには、ゲートnの出力スピン偏極を、ゲートn+1のための入力スピン偏極としての役割を果たすことができるようになる前に増幅する必要がある。
【0085】
このようなスピン増幅器のための概念が提案されており、これは、弱いスピン偏極を使用して、強磁性材料の偏極を不安定な平衡において反対磁化の2つの安定位置のうちの一方に調製された磁化に対して配向させることに依拠したものである。
【0086】
この記述におけるシステムは、このような概念に対する代案を提供する。これは、上述のような電流−スピン変換器100の非線形性を利用して、スピンに基づく多数決論理を可能にする。
【0087】
再び、図3の強磁性コンタクト1の磁化軸によって定められる主軸zに対するスピン偏極の射影Sを考える。
【0088】
多数決論理デバイス110は、少なくとも3つの別個の入力チャネルと1つの出力チャネルとからなる(図示せず)。多数決論理ゲートの入力におけるSの値は、+S又は−Sのいずれかである。多数決論理の出力は、平均化の間のスピン偏極の減衰を考慮に入れた係数αだけ低減された、入力チャネルの平均である。
【0089】
3つの入力チャネルの場合、1つの多数決論理ゲートの出力は、以下の可能な値:+αS、−αS、+αS/3又は−αS/3を有する。最後の2つの結果の場合、スピン偏極は、係数2/3だけ小さくなっている。したがって、多数決論理ゲートの最大出力振幅はαSで与えられる。
【0090】
多数決論理においてゲートのカスケード化を可能にするためには、1つのゲートの出力を次のゲートに渡す前に増幅して、値αS及びαS/3の各々がSに増幅され、値−αS及び−αS/3が各々−Sに増幅されるようにすべきである(多数決)。
【0091】
それゆえ、図3のシステムと同様のシステムであって、結合されたデバイス110がスピンに基づく多数決論理デバイスであるものを使用することができる。したがって、多数決論理演算の出力は、上の記述で説明したようなスピン増幅システムの入力Sinに接続される。
【0092】
前の記述で説明したように、スピン増幅器の抵抗は、R=R(1−Sel Sin)で与えられると仮定することができる。それゆえ、デバイス抵抗は、以下の表で与えられるように多数決論理演算の結果に依存する。
【表2】
【0093】
点Aにおいて、スピン注入コンタクトは、スピン偏極Sinjを有するスピンを注入する。システム200(図3)及び材料パラメータは、多数決が達成されるように選択される。これは、図8に示すように、スピン増幅器の入力−出力特性を非線形領域まで拡張することによって可能である。
【0094】
例えば、適切なパラメータの組は、抵抗Rが(アップ、アップ、アップ)の場合に800Ωに等しいと仮定されること以外は、表Iに示されたものである。図8は、対応するデバイス特性をプロットする(点線は多数決論理演算の4つの可能な結果を示す)。
【0095】
以下の表(表III)は、この特定のパラメータの組についての論理演算の概略を示す。このようなパラメータ及び/又はGaAs以外の材料を調整することで、多数決の基準を満たすのみならず、Soutの大きさの観点で演算の質を強化することができる。
【表3】
【0096】
outは、増幅器の出力であると同時に、それに続く多数決ゲート120(これについてはS=Sout)の入力であり、以下同様であり、その結果、論理ゲートのカスケードが得られるようになっていることに留意されたい。
【0097】
上記の例は、4つの可能な入力状態を用いた多数決を実証する。多数決論理ゲートでは4つの入力状態のうちの3つのみが生じることが多い。以下の論理表(表IV)は、論理ORゲートを例証するものであり、3つの入力のうちの1つは常に1に設定される。出力偏極αS、αS/3及び−αS/3のみが生じる。これは、多数決を実装するための適切なパラメータを見いだすことをより容易にする。
【表4】
【0098】
図1図3を参照すると、閉じ込め部分8は、基板の上にスピン輸送層(又はSTL)を含む。STLは、2D電子ガスをホストする半導体層7、8及び9によって得ることができる。2D電子ガスは、例えば、量子井戸に、例えば電子が周囲の層7及び9よりも低いエネルギー状態にある半導体層8に閉じ込めることができる。変形において、2D電子ガスは、界面、すなわち層8と層7又は層9との間に位置することができる。2D電子ガス中の電子は、典型的には層7、8及び/又は9内のドーパントによってもたらされる。このような半導体層の材料は、III−V族材料(例えば、GaAs、AlAs、InAs、InP又はInSb)、又は、さらにはII−VI族材料(例えばCdSe、CdTe又はZnSe)の合金及び3元合金とすることができる。
【0099】
いくつかの実施形態において、2D電子ガスは、連続的な絶縁層又は金属層との界面において単一の半導体層内に形成することができ、電子は、電場を用いた電界効果によってもたらされる。加えて、必要に応じて、層に対して垂直に印加される電場を用いてシステムをコンディショニングすることができる。
【0100】
前述のように、2D電子ガスに、入力電極1及び出力4電極が接続される。入力電極は、スピン注入コンタクトとして作用し、図1図2の中の符号2で表されるように2方向(すなわちスピン・アップ又はスピン・ダウン)のうちの一方に磁化された磁性材料から成る。図1の例において、注入方向は、方向zに沿っている。入力電極と2D電子ガスとの間に電流を通すことによって、スピン偏極された電子は、所与の注入領域10において、例えば入力電極と2D電子ガスとの間の界面において、2D電子ガス内に蓄積することができる。2D電子ガス内のその位置における電子のスピン偏極は、入力電極の磁化に直接関係するものであり、すなわち2D電子ガス内のスピンもまたアップ又はダウンのいずれかである。出力電極4を用いて、出力領域における(典型的には2D電子ガスと出力電極との間の界面における)局所スピン偏極を電気信号又は別の入力電極の磁化状態のいずれかに変換することができる。後者の別の入力電極は、その出力電極、又は、界面における2D電子ガスのスピン偏極を引き継ぐ、すぐ近くの別の電極とすることができる。
【0101】
入力電極と出力電極との間で、入力電極によってインプリントされたスピン偏極は、2D電子ガス内をドリフトによって(そしてまた拡散によっても)伝播する。
【0102】
半導体へテロ構造内にホストされた2D電子ガス内の電子のスピンは、スピン軌道相互作用(SOI)を受ける。SOIに対する2つの別々の寄与が存在する。1つの寄与は、例えばIII−V族及びII−VI族半導体材料の、バルク反転非対称性(BIA)に由来するものである。第2の寄与は、構造反転非対称性(SIA)に由来するものであり、これは図1における層7、8、9に対して異なる材料を選択すること、又は2D電子ガスの2つの側部7及び9で異なるドーピング濃度を選択することによって操作することができる。
【0103】
スピン振動の周期は、SOIの強さ及び電子の質量によって決定される、スピン軌道長lによって決定される。スピン軌道長は、典型的なIII−V族及びII−VI族材料については、10nmから10μmまでの範囲とすることができる。これは、ある程度まで、2D電子ガスの上及び/又は下のゲート電極によって調整することができる。
【0104】
例えば分子線エピタキシによって成長する、半導体層の加工シーケンスは、以下の通りである(底部から上部へ):
−基板:GaAs(001)ウェハ;
−層9は、連続的に、
・ 500nmのAl0.3Ga0.7As
・ デルタ層中のSiドーピング〜6 1011cm−2
・ 20nmのAl0.3Ga0.7As
を含むことができる。
−中央層8は、12nmのGaAsを含むことができる;
−層7は、最終的に、
・ 90nmのAl0.3Ga0.7As;及び
・ 5nmのGaAs
に分解することができる。
【0105】
電極を「作動」させるのに使用される典型的な電流強度/電圧は、スピン注入コンタクトの特定の具現に依存するであろう。本明細書において使用するとき、電極を「作動」させるという用語は、典型的には以下を伴う:
−電流を強磁性電極1と2D電子ガスとの間に通すこと(場合によっては2D電子ガス及び強磁性コンタクトの下の第2のコンタクトを伴う)。電流の方向がスピンの偏極方向を決定する(電極の磁化に沿った方向又は対抗する方向)。あるいは、電極の磁化は、局所磁場によって又はスピン移動トルクによって逆転することができる;
−円偏光された光子を使用して、スピン偏極された電子を伝導帯に励起すること
円偏光のヘリシティ(右回り円偏光又は左回り円偏光)が、励起されたスピン偏極の方向を決定する;又は
−局所スピン偏極を作り出すことを可能にする他のいずれかの技術、すなわち電流誘導スピン偏極、スピン依存トンネリングなど。
【0106】
出力におけるスピンの読出しは、例えば2D電子ガスと強磁性層1との間の電流を測定することによって行われる。所与の電圧において、電流は、出力電極の下の2D電子ガス内のスピン偏極の方向に依存して、強磁性層の磁化に対して高く又は低くなる。
【0107】
実施形態において、スピン軌道結合デバイス内でスピン偏極を回転させる方法が提供される。この方法は、スピン軌道結合デバイスを提供することを含み、上記スピン軌道結合デバイスは、その内部でドリフトする可能性がある電荷担体を閉じ込めるように構成されるとともに、その内部でドリフトしている電荷担体が非線形スピン軌道相互作用を受けるように構成された閉じ込め部分であって、上記非線形スピン軌道相互作用は、ドリフトしている電荷担体のスピン偏極を、かかる電荷担体の運動量に非線形的に依存する角度だけ回転させるものである、閉じ込め部分と、回路と、を含み、上記回路は、上記閉じ込め部分の入力領域において電荷担体にスピン偏極を注入するように作動可能な入力デバイスと、上記閉じ込め部分の出力領域において電荷担体のスピン偏極を検出するように使用可能な出力デバイスと、を含み、上記方法は、スピン偏極を前記入力領域に注入すると同時に、上記回路を介して、上記閉じ込め部分の内部でドリフトしている電荷担体の運動量を変化させて、ドリフトしている電荷担体のスピン偏極を上記非線形スピン軌道相互作用に起因して回転させることを含む。
【0108】
実施形態において、上記方法は、出力領域においてスピン偏極を検出することをさらに含む。実施形態において、電荷担体の運動量を、閉じ込め部分にわたって電圧を印加することによって変化させる。
【0109】
実施形態において、上記方法は、その出力領域において所与のスピン偏極を有する電荷担体を得るように構成されたスピントロニックデバイスを提供することをさらに含み、ここで上記回路は、スピントロニックデバイスをスピン軌道結合デバイスの入力領域に結合するスピン−電流変換器を含み、スピン偏極をスピン軌道結合デバイスの入力領域に注入することは、スピントロニックデバイスの出力領域において得られる電荷担体の所与のスピン分極に基づいてスピン−電流変換器によって生成された電流に従って、スピン偏極を注入することを含む。
【0110】
実施形態において、上記方法は、スピン軌道結合デバイスの出力領域において検出可能なスピン偏極を、スピントロニックデバイスの出力領域における電荷担体のスピン偏極に対して増幅するように、上記回路を設定することをさらに含む。
【0111】
実施形態において、スピン軌道結合デバイスの出力領域において検出可能な電荷担体のスピン偏極が、閉じ込め部分の内部でドリフトしている電荷担体の運動量に関連付けられた電流の振動関数であるように構成されたスピン軌道結合デバイスが提供され、ここで上記回路の設定は、スピントロニックデバイスの出力領域からのスピン偏極を振動関数の線形領域において増幅するように行われ、その結果得られた増幅されたスピン偏極は、電流に対して本質的に線形依存するようになっている。
【0112】
実施形態において、スピントロニックデバイスは、スピンに基づく多数決論理デバイスであって、多数決論理デバイスの入力として注入されたスピン偏極の論理演算に従って、所与のスピン偏極を有する電荷担体を出力として得るように構成されたものであり、提供されるスピン軌道結合デバイスは、スピン軌道結合デバイスの出力において検出可能な電荷担体のスピン偏極が、閉じ込め部分の内部でドリフトしている電荷担体、及びスピン−電流変換器に関連付けられた電流の振動関数であるように構成され、回路の設定は、スピントロニックデバイスの出力において得られるスピン偏極を上記振動関数の非線形領域において増幅するように行われ、その結果、入力デバイスを介して注入されたスピン偏極の相異なる値が、上記振幅関数によって、スピン軌道結合デバイスの出力領域おけるスピン偏極の本質的に同じ増幅値をもたらすようになっている。
【0113】
実施形態において、回路の設定は、スピントロニックデバイスの出力において得られるスピン偏極の2組の値を増幅するように行われ、2組の各々において、スピン偏極の値は、相異なりかつ同じ符号のものであり、他方、2組のうちの一方のスピン偏極の値は、2組のうちのもう一方のスピン偏極の値の符号とは反対の符号を有しており、その結果、2組の各々について、スピントロニックデバイスの出力において得られるスピン偏極の相異なる値が、前記振動関数によって、スピン軌道結合デバイスの出力領域において検出可能な、スピン偏極の本質的に同じ増幅値をもたらすようになっている。
【0114】
いくつかの実施形態の技術的効果及び利益は、電流を所望のスピン偏極に変換することを提供することを含む。他の実施形態は、関数の線形領域を利用して、増幅されたスピン偏極がドリフトしている担体に関連付けられた電流に線形依存することができるようにする。さらに他の実施形態は、電流−スピン変換、又はスピン増幅についての利点を提供する。
【0115】
本明細書で用いられる用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としたものであり、本発明を限定することを意図したものではない。本明細書で使用される単数形「a」、「an」及び「the」は、前後関係から明らかに別の意味を示さない限り、複数形態も含むことを意図する。更に、本明細書内で使用する場合に、「備える、含む」及び/又は「備えている、含んでいる」という用語は、そこに述べた特徴、整数、ステップ、動作、要素及び/又はコンポーネントの存在を明示しているが、1つ又は複数のその他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、コンポーネント及び/又はそれらの群の存在又は付加を排除するものではないことは理解されるであろう。
【0116】
以下の特許請求の範囲における全ての「手段又はステップと機能との組み合わせ(ミーンズ又はステップ・プラス・ファンクション)」要素の対応する構造、材料、動作、及び均等物は、その機能を、明確に特許請求された他の請求要素との組み合わせで実行するためのあらゆる構造、材料、又は動作を含むことが意図されている。本発明の説明は、例証及び説明を目的として提示されたものであるが、網羅的であること又は本発明を開示された形態に限定することを意図したものではない。本発明の範囲及び思想から逸脱しない多くの修正及び変形が当業者には明らかであろう。実施形態は、本発明の原理及び実際の用途を最も良く説明するようにまた企図される特定の用途に適するような種々の修正を伴う種々の実施形態に関して本発明を当業者が理解するのを可能にするように、選択しかつ説明したものである。
【0117】
本発明の種々の実施形態の説明は、例証の目的で提示したものであるが、網羅的であることも、又は開示された実施形態に限定することも意図しない。説明した実施形態の範囲から逸脱することなく、多くの修正及び変形が当業者には明らかであろう。本明細書で用いる用語は、実施形態の原理、実際的な用途、若しくは市場において見いだされる技術に優る技術的改善を最も良く説明するように、又は当業者が本明細書で開示される実施形態を理解することを可能にするように、選択されたものである。
【符号の説明】
【0118】
1:入力デバイス、強磁性コンタクト
1、4:回路
2:スピン偏極
4:出力デバイス、ドレインコンタクト
6:平均スピン偏極
7、8、9:層
8:閉じ込め部分
10:入力領域
40:出力領域
87、89:界面
100:スピン軌道結合デバイス
110、120:スピントロニックデバイス
114:スピン感受性抵抗
114、1:スピン−電流変換器
116:コンタクト
118:半導体層
140:スピントロニックデバイスの出力
200:スピン増幅システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】