特表2019-505506(P2019-505506A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ガルデルマ エス.エー.の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-505506(P2019-505506A)
(43)【公表日】2019年2月28日
(54)【発明の名称】アミド結合を切断するための方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 217/28 20060101AFI20190201BHJP
   C07H 15/04 20060101ALI20190201BHJP
   C07C 213/02 20060101ALI20190201BHJP
   C07C 271/28 20060101ALI20190201BHJP
   C07C 269/06 20060101ALI20190201BHJP
   C07F 7/10 20060101ALI20190201BHJP
【FI】
   C07C217/28
   C07H15/04 E
   C07C213/02
   C07C271/28
   C07C269/06
   C07F7/10 L
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2018-534153(P2018-534153)
(86)(22)【出願日】2016年12月28日
(85)【翻訳文提出日】2018年8月27日
(86)【国際出願番号】EP2016082770
(87)【国際公開番号】WO2017114859
(87)【国際公開日】20170706
(31)【優先権主張番号】15202944.3
(32)【優先日】2015年12月29日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】16172254.1
(32)【優先日】2016年5月31日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】16172225.1
(32)【優先日】2016年5月31日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】16172241.8
(32)【優先日】2016年5月31日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】505143927
【氏名又は名称】ガルデルマ エス.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クレイグ・スティーヴン・ハリス
(72)【発明者】
【氏名】ローラ・ジン・ジン
【テーマコード(参考)】
4C057
4H006
4H049
【Fターム(参考)】
4C057AA30
4C057BB04
4C057CC04
4C057DD01
4C057JJ09
4H006AA02
4H006AC52
4H006AC80
4H006BB14
4H006BB31
4H006BC10
4H006BC16
4H006BC19
4H006BE90
4H006BJ50
4H006BU32
4H006RA38
4H006RB34
4H049VN01
4H049VP01
4H049VQ02
4H049VQ07
4H049VQ35
4H049VQ38
4H049VR24
4H049VS02
4H049VS07
4H049VS37
4H049VS38
4H049VV05
4H049VV20
4H049VW01
4H049VW02
(57)【要約】
アミド結合を切断する方法であって、
a)アミド基を含む分子を提供する工程;
b)アミド基を含む分子をヒドロキシルアミン(NH2OH)またはその塩と反応させて、アミド基のアミド結合を切断する工程、を含む方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミド結合を切断する方法であって、
a)アミド基を含む分子を提供する工程;
b)前記アミド基を含む分子をヒドロキシルアミン(NH2OH)またはその塩と反応させて、アミド基のアミド結合を切断する工程、
を含む方法。
【請求項2】
c)工程b)の反応により形成された生成物を回収する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アミド基が、第一級、第二級または第三級アミド基、好ましくは第二級アミド基である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記アミド基がN-アシルアミド基、好ましくはN-アセチルアミド基である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記アミド基を含む分子が、pH感受性キラル中心をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記アミド基を含む分子が、pH感受性保護基をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程b)が、前記アミド基を含む分子を、100℃以下の温度でヒドロキシルアミンまたはその塩と反応させる工程を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程b)が、10~90℃、好ましくは20~80℃、好ましくは30~70℃、好ましくは30~50℃の範囲の温度で、前記アミド基を含む分子をヒドロキシルアミンまたはその塩と反応させることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程b)が、前記アミド基を含む分子をヒドロキシルアミンまたはその塩と2~200時間反応させる工程を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程b)が、前記アミド基を含む分子をヒドロキシルアミンまたはその塩と2~150時間、好ましくは5~150時間、好ましくは5~100時間反応させる工程を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程b)が、前記アミド基を含む分子をヒドロキシルアミンと水中で反応させる工程を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程b)におけるヒドロキシルアミンのモル濃度が5~20Mの範囲にある、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程b)が、前記アミド基を含む分子をヒドロキシルアミン塩と反応させる工程を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ヒドロキシルアミン塩が、ヒドロキシルアミンとヨウ化水素酸またはトリフルオロ酢酸との塩である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
工程b)におけるヒドロキシルアミン塩の濃度が、0.1~5Mの範囲にある、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
工程b)における前記反応が、少なくとも、ヒドロキシルアミン塩を少なくとも部分的に溶解することができる溶媒中で実施される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
工程b)における前記反応が4~12の範囲にあるpH値で行われる、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
工程b)における前記反応が、9~11の範囲にあるpH値で行われる、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
工程b)における前記反応が、4~9の範囲、好ましくは6~8の範囲にあるpH値で行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記反応のpHが、pH低下剤の添加により、4~9の範囲の値、好ましくは6~8の範囲の値に低下する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記pH低下剤が、鉱酸、有機酸およびpHを低下させる塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記pH低下剤が鉱酸である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記pH低下剤が、硫酸、塩酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸およびリン酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記pH低下剤が有機酸である、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記pH低下剤が、酢酸、プロピオン酸、ピバリン酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、乳酸、安息香酸、およびハロゲン化カルボン酸、トリフルオロ酢酸およびトリクロロ酢酸などのハロゲン化カルボン酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記pH低下剤が、ハロゲン化カルボン酸、好ましくはトリフルオロ酢酸である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記pH低下剤は、pHを低下させる塩である、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記pH低下剤が、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウム、ヒドロキシルアミン塩酸塩およびヒドロキシルアミン硫酸塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記pH低下剤が、ヒドロキシルアミン塩酸塩またはヒドロキシルアミン硫酸塩からなる群から選択され、好ましくはヒドロキシルアミン塩酸塩である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
アミド基を含む分子中のアミド結合を切断するためのヒドロキシルアミンまたはその塩の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミド基を含む有機分子中のアミド結合を切断する方法に関する。このような方法は、脱アセチル化のため等の様々な有機合成用途における使用を見出す。
【背景技術】
【0002】
鹸化または加水分解によってアミド結合を切断させる従来の方法は、長時間高温で強い塩基性条件(すなわち濃NaOHなど)または強酸性条件(すなわち濃HClなど)を必要とする過酷なプロセスである。必要とされる過酷な条件のため、これらの方法は、保護基および反応中のキラル中心の保存に関して主要な化学的適合性(compatability)の問題を有する。
【0003】
より最近の方法の中で引用されたヒドラジン分解(hydrazinolysis)がある。ヒドラジンは、ほぼ無水の条件下でアミド結合の切断を可能にする。ヒドラジンはアルファ効果により強力な求核性物質であり、NaOHと比較して低下したその塩基性により、他の保護基の存在下でのアミド結合の切断および特定のキラル中心の保存が可能になる。これは最近、Ohshima等の著名な2つの論文(Angew. Chem. Int. Ed. 2012, 51, 8564―8567及びChem. Commun., 2014, 50, 12623-12625)で強調された。この2つのコミュニケーションでは、Ohshimaは、他の敏感な保護基およびキラル中心を維持しながら、アミド結合を切断するために、マイクロ波照射下で、それぞれアンモニウム塩の存在下でエチレンジアミンおよびヒドラジンを使用した。
【0004】
Ohshima等の最近の知見に照らしても、この分野の保護基およびキラル中心を維持しながらアミド結合の切断を可能にする改良された方法は、依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Angew. Chem. Int. Ed. 2012, 51, 8564 ―8567
【非特許文献2】Chem. Commun., 2014, 50, 12623-12625
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、先行技術の問題の少なくともいくつかを緩和することができるアミド結合を切断する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、保護基および/またはキラル中心を維持しながらアミド結合の切断を可能にするアミド結合を切断する方法を提供することである。
【0008】
本発明のさらなる目的は、強塩基性条件(すなわち濃NaOHなど)または強酸性条件(すなわち、濃HClなど)を必要としないアミド結合を高温で長時間にわたって切断する方法を提供することである。
【0009】
本明細書に示す側面によれば、アミド結合を切断する方法であって、
a)アミド基を含む分子を提供する工程;
b)アミド基を含む分子をヒドロキシルアミン(NH2OH)またはその塩と反応させて、アミド基のアミド結合を切断する工程、を含む方法を提供する。
【0010】
本明細書でいう「アミド基」とは、官能基RnE(O)xNR'2(RおよびR'はHまたは有機基を指す)を有する化合物である。最も一般的なものはカルボキサミド(有機アミド)(n = 1、E = C、x = 1)であるが、ホスホラミド(n = 2、E = P、x = 1および多くの関連する式)およびスルホンアミド(E = S、x = 2)(IUPAC, Compendium of Chemical Terminology, 2nd ed. (the "Gold Book") (1997))を含む他の重要なタイプのアミドが知られている。用語「アミド」は、化合物のクラスおよびそれらの化合物内の官能基RnE(O)xNR'2の両方を指す。アミド基における窒素原子とヘテロ原子との間の結合は、本明細書において「アミド結合」と呼ばれる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
したがって、いくつかの実施形態において、「アミド基」は、カルボキサミド基、スルホンアミド基またはホスホラミド基である。本発明の方法は、カルボキシアミドまたはスルホンアミドのような、典型的には切断がより難しいアミドを切断するのに特に有用であることが判明している。したがって、いくつかの実施形態において、「アミド基」は、カルボキサミド基またはスルホンアミド基である。好ましい実施形態では、「アミド基」はカルボキサミド基である。 カルボキサミドは、カルボン酸およびアミンから誘導される。
【0012】
本発明は、穏やかな反応条件下でアミド基を含む分子中のアミド結合の切断にヒドロキシルアミン(NH2OH)およびその塩を有利に用いることができるという本発明の実現に基づいている。これは、分子の望ましくない分解を防ぎ、保護基および/またはキラル中心を保存しながら、アミド結合の切断を可能にする。反応は一般に反応式Iにより示される。
【化1】
【0013】
例えば、多糖類、特にヒアルロン酸、コンドロイチンおよびコンドロイチン硫酸のようなグリコサミノグリカンは、しばしば過酷な反応条件(例えば、非常に高いまたは低いpH、または高温)下で主鎖の分解を受けやすい。したがって、本発明の方法は、そのような多糖類中のアミド結合の切断に特に有用である。本発明の方法は、例えば、出発物質の分子量のかなりの部分が保持されている少なくとも部分的に脱アセチル化されたグリコサミノグリカンを得るために有用である。脱アセチル化のためにヒドロキシルアミンまたはその塩を使用することは、ヒアルロン酸のポリマー主鎖のわずかな分解のみをもたらす穏やかな条件下でのN-脱アセチル化を可能にすることが見出されている。脱アセチル化にヒドロキシルアミンまたはその塩を使用することにより、保持された高分子量の脱アセチル化ヒアルロン酸の生成が可能になる。これは脱アセチル化剤としてヒドラジンまたはNaOHを使用する脱アセチル化などの以前に知られた方法とは対照的であり、高い脱アセチル化は不可避的にポリマー主鎖の重大な分解を伴う。
【0014】
本発明の方法は、第一級、第二級および第三級アミド基のアミド結合を切断するのに有用である。第一級アミドは、アミド窒素が1つの炭素原子に結合しているアミドを指す。第二級アミドは、アミド窒素が2つの炭素原子に結合しているアミドを指す。第三級アミドは、アミド窒素が3つの炭素原子に結合しているアミドを指す。この方法は、より妨害されたアミド、すなわち第二級および第三級アミド基中のアミド結合を切断させるのに特に有利である。なぜなら、そのような結合は、通常、従来の方法を用いて切断することがより困難であるからである。したがって、実施形態によれば、アミド基は、第一級、第二級または第三級アミド基、好ましくは第二級アミド基である。
【0015】
本発明の方法はまた、アシルまたはアセチル基を含む分子の脱アシル化、特に脱アセチル化に特に有用であり得る。したがって、実施形態によれば、アミド基はN-アシルアミド基、好ましくはN-アセチルアミド基である。
【0016】
実施形態によれば、アミド基を含む分子は、pH感受性キラル中心をさらに含む。アミド基を含み、さらにpH感受性キラル中心を含む分子の例には、ある種のオリゴ糖、多糖類、およびアミノ酸が含まれるが、これらに限定されない。
【0017】
添付の実施例により証明されるように、分子中に存在する共通の保護基を切断させることなく、ヒドロキシルアミンまたはその塩を使用する分子中のアミド結合の切断も達成することができる。
【0018】
実施形態によれば、アミド基を含む分子は、pH感受性保護基をさらに含む。「pH感受性保護基」とは、高pH条件または低pH条件下で切断する保護基を意味する。この明細書における高いpHでは、一般にpHが12以上の条件(例えば、濃NaOHなど)を意味する。この明細書における低いpHでは、一般に、2以下のpH(例えば、濃HClなど)を意味する。pH感受性保護基の例には、Boc(tert-ブチルオキシカルボニル)、Fmoc(9-フルオレニルメチルオキシカルボニル)、Cbz(カルボベンジルオキシ)、i-PrCO、t-BuCOおよびTr(トリフェニルメチル)が含まれるが、これらに限定されない。
【0019】
いくつかの実施形態によれば、アミド基を含む分子は、アセチル基を含む生体高分子である。いくつかの実施形態によれば、アセチル基を含むバイオポリマーは、グリコサミノグリカンである。いくつかの実施形態によれば、アセチル基を含むバイオポリマーは、ヒアルロナン、コンドロイチン、硫酸コンドロイチン、ヘパラン硫酸、ヘパロサン、ヘパリン、デルマタン硫酸およびケラタン硫酸、好ましくはヒアルロン酸、コンドロイチンおよびコンドロイチン硫酸、並びにそれらの混合物などの硫酸化または非硫酸化グリコサミノグリカンからからなる群から選択される。いくつかの実施形態によれば、アセチル基を含むバイオポリマーは、ヒアルロン酸である。いくつかの実施形態では、生体高分子はヒアルロン酸ゲルである。いくつかの実施形態では、バイオポリマーは、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)によって架橋されたヒアルロン酸ゲルである。
【0020】
ヒアルロン酸は、医療用に最も広く使用されている生体適合性ポリマーの1つである。ヒアルロン酸および他のGAGsは、多量の水を吸収する能力を有する負に帯電したヘテロ多糖鎖である。ヒアルロン酸およびヒアルロン酸由来の製品は、例えば、外科手術中および皮膚充填材として、生物医学および化粧品分野で広く使用されている。
【0021】
実施形態によれば、工程b)のアミド結合の切断により形成される生成物は、アミンである。
【0022】
実施形態によれば、この方法は、
c)工程b)の反応によって生成した生成物、好ましくはアミンを回収する工程をさらに含む。
【0023】
工程c)における回収は、任意の適切な有機合成ワークアップ技術または精製技術または技術の組み合わせを含み得る。
【0024】
工程b)における反応温度は、好ましくは、分子の過度の分解を引き起こさないように、および保護基および/またはキラル中心を保存するように選択される。反応は、一般に200℃以下の温度、例えば150℃以下の温度で行うことができる。実施形態によれば、工程b)における反応は、アミド基を含む分子を、100℃以下の温度でヒドロキシルアミンまたはその塩と反応させる工程を含む。実施形態によれば、工程b)における反応は、10~100℃、好ましくは20~90℃、好ましくは30~70℃、好ましくは30~50℃の範囲の温度で、アミド基を含む分子をヒドロキシルアミンまたはその塩と反応させることを含む。温度は、例えば、約80℃などの70~90℃の範囲、または約40℃などの30~50℃の範囲であり得る。
【0025】
工程b)における反応時間は、所望のアミド切断の程度に依存する。反応時間は、好ましくは、分子の過度の分解を引き起こさないように、並びに保護基および/またはキラル中心を保存するように選択され、温度およびpHにも依存する。反応時間は、一般に、5分~200時間またはそれ以上の任意の時間であり得る。いくつかの実施形態によれば、工程b)における反応は、アミド基を含む分子をヒドロキシルアミンまたはその塩と2~200時間反応させることを含む。いくつかの実施形態によれば、工程b)における反応は、アミド基を含む分子をヒドロキシルアミンまたはその塩と2~150時間、好ましくは5~150時間、好ましくは5~100時間反応させることを含む。他の実施形態では、例えば、より高い温度またはpHが使用される場合、反応時間は、5分~2時間の範囲、30分~2時間の範囲、または1~2時間の範囲など、はるかに短くてよい。同様に、そうでなければ穏やかな反応条件下では、反応時間は200時間をはるかに長くすることができる。
【0026】
アミド結合の切断は、ヒドロキシルアミンまたはその塩を用いて達成することができる。ヒドロキシルアミン塩は、ヒドロキシルアミンと酸とによって形成される塩を指す。ヒドロキシルアミン塩は、例えば、ヒドロキシルアミンと、鉱酸、有機酸およびそれらの混合物からなる群から選択される酸とによって形成される塩であり得る。
【0027】
実施形態によれば、ヒドロキシルアミン塩は、ヒドロキシルアミンおよび鉱酸によって形成される塩である。実施形態によれば、酸は、硫酸、塩酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、リン酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。好ましい鉱酸としては、塩酸、ヨウ化水素酸および臭化水素酸が挙げられる。 特に好ましくは、鉱酸はヨウ化水素酸である。
【0028】
実施形態によれば、ヒドロキシルアミン塩は、ヒドロキシルアミンおよび有機酸によって形成される塩である。実施形態によれば、酸は、酢酸、プロピオン酸、ピバル酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、乳酸、安息香酸、並びにトリフルオロ酢酸(TFA)、トリクロロ酢酸、およびそれらの組み合わせなどのハロゲン化カルボン酸からなる群から選択される。
【0029】
実施形態によれば、酸は、酢酸、プロピオン酸、ピバル酸、およびハロゲン化カルボン酸、好ましくはトリフルオロ酢酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。実施形態によれば、酸はハロゲン化カルボン酸、好ましくはトリフルオロ酢酸である。
【0030】
実施形態によれば、ヒドロキシルアミン塩は、ヒドロキシルアミンおよび塩酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、プロピオン酸、ピバル酸およびトリフルオロ酢酸からなる群から選択される酸によって形成される塩である。
【0031】
工程b)における反応は、好ましくは、アミド基を含む分子およびヒドロキシルアミンまたはその塩の両方を少なくとも部分的に溶解することができる溶媒中で行われる。溶媒は、例えば、水または有機溶媒またはそれらの混合物であり得る。好ましい溶媒の非限定的な例としては、水或いは水とエタノールなどの低級アルコールとの混合物を含む。しかし、切断されるべきアミド基を含む特定の分子およびヒドロキシルアミンまたはその塩の選択に依存して、他の溶媒が有用であり得る。有用な有機溶媒の一例は、テトラヒドロフラン(THF)である。
【0032】
実施形態によれば、工程b)における反応は、アミド基を含む分子をヒドロキシルアミンと水中で反応させることを含む。
【0033】
この方法は、好ましくは水または水溶液中で行い、必要に応じてエタノールなどの別の溶媒をさらに含む。したがって、いくつかの実施形態によれば、工程b)は、アミド基を含む分子を水中でヒドロキシルアミンと接触させて、分子およびヒドロキシルアミンの水性混合物または溶液が形成される工程を含む。
【0034】
実施形態によれば、工程b)におけるヒドロキシルアミンの濃度は、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも30重量%である。より高い濃度のヒドロキシルアミンは、反応速度を増加させる可能性がある。
【0035】
ヒドロキシルアミンは、しばしば水溶液の形態で、典型的には50重量%の濃度で提供される。いくつかの実施形態では、アミド基を含む分子は、必要に応じて希釈されたヒドロキシルアミンの水溶液に混合され、直接溶解されてもよい。あるいは、ヒドロキシルアミンの固体塩、例えばヒドロキシルアミン塩酸塩またはヒドロキシルアミン硫酸塩は、アミド基を含む分子の水溶液に溶解することができる。ヒドロキシルアミンの塩を添加し、その塩をヒドロキシルアミンに変換することは、ヒドロキシルアミンの水溶液中にアミド基を含む分子を溶解するための代替物または補足物として行うことができる。
【0036】
反応混合物中のヒドロキシルアミンのモル濃度は、好ましくは5~20Mの範囲である。例えば、50重量%のヒドロキシルアミンの濃度は、およそ16Mのモル濃度に相当する。
【0037】
本発明者らは、驚くべきことに、ヒドロキシルアミン自体の代わりにヒドロキシルアミン塩を使用する場合、著しく低いモル濃度で同じ反応速度を達成できることを見出した。したがって、反応混合物中のヒドロキシルアミン塩のモル濃度は、好ましくは0.01~10M、好ましくは0.1~5Mの範囲である。
【0038】
いくつかの実施形態によれば、アミド基を含む分子は、工程a)において、ヒドロキシルアミンまたはその塩の水溶液に溶解される。いくつかの実施形態によれば、ヒドロキシルアミンの塩は、工程a)においてアミド基を含む分子の水溶液に溶解される。いくつかの実施形態によれば、アミド基を含む分子は、ヒドロキシルアミンの水溶液に溶解され、ヒドロキシルアミンの塩は、ヒドロキシルアミン中のアミド基を含む分子の水溶液に溶解される。
【0039】
反応工程b)におけるpHは、好ましくは、分子の過度の分解を引き起こさないように、並びに保護基および/またはキラル中心を保存するように選択される。水中のヒドロキシルアミンの50%v / v溶液のpHは10.2である。いくつかの実施形態によれば、工程b)における反応は、4~12の範囲のpH値で行われる。いくつかの実施形態によれば、工程b)における反応は、9~11の範囲のpH値で行われる。 いくつかの実施形態によれば、工程b)における反応は、4~9の範囲、好ましくは6~8の範囲のpH値で行われる。
【0040】
本発明者らは、広範な実験を通じて、 pH低下剤の添加は、特にヒドロキシルアミンが使用される場合、工程b)における反応の反応速度を有意に増加させることができることを見出した。この効果は驚くべきことであり、非常に有利である。 対応するpH低下剤のヒドラジンアミド切断反応への添加は、反応速度の増加をもたらさなかったことに留意されたい。反応中のより低いpH値も、分子の過度の分解を避けるため、および保護基および/またはキラル中心を保存するために、好ましい。
【0041】
したがって、いくつかの実施形態によれば、反応のpHは、pH低下剤の添加によって低下する。いくつかの実施形態によれば、反応のpHは、pH低下剤の添加によって、4~9の範囲、好ましくは6~8の範囲の値に低下する。pH低下剤は、例えば、鉱酸、有機酸およびpHを低下させる塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0042】
実施形態によれば、pH低下剤は、鉱酸、有機酸およびpHを低下させる塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0043】
実施形態によれば、pH低下剤は鉱酸である。実施形態によれば、pH低下剤は、硫酸、塩酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸およびリン酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0044】
実施形態によれば、pH低下剤は有機酸である。実施形態によれば、pH低下剤は、酢酸、プロピオン酸、ピバル酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、乳酸、安息香酸、トリフルオロ酢酸およびトリクロロ酢酸などのハロゲン化カルボン酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。実施形態によれば、pH低下剤は、酢酸、プロピオン酸、ピバル酸、およびハロゲン化カルボン酸、好ましくはトリフルオロ酢酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。実施形態によれば、pH低下剤はハロゲン化カルボン酸、好ましくはトリフルオロ酢酸である。
【0045】
実施形態によれば、pH低下剤はpHを低下させる塩である。実施形態によれば、pH低下剤は、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウム、塩酸ヒドロキシルアミンおよび硫酸ヒドロキシルアミン、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される。実施形態によれば、pH低下剤は、塩酸ヒドロキシルアミンまたは硫酸ヒドロキシルアミンからなる群から選択され、好ましくは塩酸ヒドロキシルアミンである。
【0046】
いくつかの実施形態によれば、工程b)における反応は、不活性雰囲気および/または暗中で行われる。
【0047】
本発明は、ヒドロキシルアミン(NH2OH)およびその塩が、温和な反応条件下でアミド基を含む分子中のアミド結合を切断するために有利に使用され得るという本発明の実現に基づく。従って、本明細書に示される他の態様によれば、アミド基を含む分子中のアミド結合を切断するためのヒドロキシルアミンまたはその塩の使用が提供される。
【0048】
この使用法は、本方法を参照して上述したようにさらに特徴づけることができる。
【0049】
本発明の他の態様および好ましい実施形態は、以下の実施例および添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0050】
本明細書では、様々なポリマー、「ポリマー」に関連して使用される「分子量」という用語は、例えば、多糖類は、ポリマーの重量平均分子量Mwを指し、これは科学文献で十分に定義されている。重量平均分子量は、例えば、静的光散乱、小角中性子散乱、X線散乱、および沈降速度によって決定することができる。 分子量の単位はDaまたはg / molである。
【0051】
当業者であれば、本発明は決してここに記載された好ましい実施形態に限定されないことを理解する。逆に、添付の特許請求の範囲の範囲内で多くの修正および変形が可能である。加えて、開示された実施形態に対する変形は、図面、開示、および添付の特許請求の範囲の研究から、特許請求の範囲における発明を実施する際に当業者によって理解され、達成され得る。特許請求の範囲において、「含む(comprising)」という単語は他の要素またはステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」または「an」は複数を除外しない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用できないことを示すものではない。
【実施例】
【0052】
これに限定されることなく、以下の実施例により本発明を説明する。
【0053】
分析方法
1H NMRスペクトルは、BRUKER Biospin AVANCE 400分光計で記録した。 化学シフトは、適切な有機溶液中の内部TMSからδ値ダウンフィールドとして報告される。生成物の純度および構造は、以下の条件を使用するWaters 2690フォトダイオードアレイ検出器システムでのLCMS(254nm)によって確認した:Column, Symmetry C-18; 溶媒A、水0.1%ギ酸; 溶媒B、CH3CN; 流速、2.5ml/分; 実行時間、4.5分; 勾配、0~100%溶媒B; 質量検出器、マイクロマスZMD。精製は、質量トリガー分取LCMS Waters X-Terra逆相カラム(C-18,5ミクロンシリカ、直径19mm、長さ100mm、流速40ml /分)および水の極性が減少する混合物 (0.1%ギ酸を含有する)およびアセトニトリルで溶出する。所望の化合物を含む画分を蒸発乾固させて、通常は固体として最終化合物を得た。
【0054】
実施例1- N - ((2R、3R、4S)-1,3,4,5-テトラヒドロキシ-6-(トリチルオキシ)ヘキサン-2-イル)アセトアミドの製造
【化2】
N - ((2R、3S、5S)-2,4,5-トリヒドロキシ-6-トリチルオキシメチル - テトラヒドロ - ピラン-3-イル) - アセトアミド(556mg、1.20mol、1.00当量)の室温のTHF-H2Oの混合物の(20ml、4:1)溶液を固体の水素化ホウ素ナトリウム(49.92mg、1.32mol、1.10当量)で処理した[ガス発生]。反応混合物を室温で2時間撹拌して、濃縮乾固し、白色固体としてN - ((2R、3R、4S)-1,3,4,5-テトラヒドロキシ-6-(トリチルオキシ)ヘキサン-2-イル)アセトアミド(500mg、89.54%)を、さらに精製することなく使用した白色固体として得た。LCMS: tR = 1.01分、純度= 100%。 ES +、464.26(M-H)。
【0055】
実施例2- N - ((2R、3R、4S)-1,3,4,5-テトラヒドロキシ-6-(トリチルオキシ)ヘキサン-2-イル)アセトアミドの脱アセチル化
ヒドロキシルアミン(10倍容量)中のN - ((2R、3R、4S)-1,3,4,5-テトラヒドロキシ-6-(トリチルオキシ)ヘキサン-2-イル)アセトアミド(1当量)の懸濁液を、pHを7または表1の実施例1~10に示されていない数値に低下させる酸添加剤で処理した。脱アセチル化の完全な変換に達するまで混合物を80℃で加熱した。 ヒドラジン(pH 13)によるN - ((2R、3R、4S)-1,3,4,5-テトラヒドロキシ-6-(トリチルオキシ)ヘキサン-2-イル)アセトアミドの脱アセチル化は、実施例2-1と同様の条件で、実施例2-10としても含まれている。
【0056】
結果を表1に示す。脱アセチル化のプロセスはヒドラジンよりもヒドロキシルアミンでかなり速く進行し、pH低下剤を添加することによって顕著であることが結果により示される。
【0057】
【表1】
【0058】
反応混合物を分取LCMSで直接精製して、(2R、3R、4S)-2-アミノ-6-(トリチルオキシ)ヘキサン-1,3,4,5-テトラオールを白色固体として得た。
LCMS:tR = 0.88分、純度= 99%; ; ES+, 422.11 (M-H)-.1H NMR (DMSO-d6) δ: 7.47 ― 7.37 (m, 6H), 7.30 (dd, J = 8.3, 6.7 Hz, 6H), 7.26 ― 7.15 (m, 3H), 3.92 (m, 1H), 3.83 ― 3.74 (m, 1H), 3.62 ― 3.53 (m, 1H), 3.52 ― 3.41 (m, 1H), 3.34 ― 3.27 (m, 1H), 3.22 ― 3.16 (m, 1H), 3.13 ― 3.04 (m, 1H), 3.01 ― 2.91 (m, 1H)
【0059】
実施例3- N-(4-アミノフェネチル)アセトアミドの調製
【化3】
ニート(neat)p-クレジルアセテート(1.65g、11.0mmol、1.00当量)を4-(2-アミノエチル)アニリン(1.50g; 11.01mmol; 1.00当量)に加え、反応混合物を室温で30時間撹拌した 。得られたオレンジ色の溶液をシリカゲルに直接吸収させ、フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、DCM / MeOH 0-5%)で精製してN-(4-アミノフェネチル)アセトアミド(1.76g、収率89.7%)を得た。
LCMS:tR = 0.58分、純度= 99.5%。 ES +、179.5(M + H)+。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 1.78 (s, 3H), 2.50 (m, 2H DMSOシグナルによって隠されている) 3.14 (m, 2H), 4.83 (s, 2H), 6.49 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 6.84 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 7.82 (s, 1H).
【0060】
実施例4- tert-ブチル(4-(2-アセトアミドエチル)フェニル)カルバメートの調製
【化4】
室温でDCM(20ml)中のN- [2-(4-アミノ - フェニル) - エチル] - アセトアミド(500mg、2.81mmol、1.00当量)の攪拌溶液に、トリエチルアミン(0.51ml、3.65 mmol、1.30当量)、続いてジ-tert-ブチルジカーボネート(673.48mg、3.09mmol、1.10当量)を加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌する。水(5ml)、NaHSO4(aq)(5ml)の飽和溶液および水(3×5ml)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濃縮乾固して、tert-ブチル(4-(2-アセトアミドエチル)フェニル)カルバメート(496mg、収率63%)を淡橙色の固体として得た。
LCMS: tR = 1.11 分、純度 = 100%; ES+, 279.5 (M+H).
1H-NMR (DMSO-d6) δ 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 1.57 (s, 9H), 1.87 (s, 3H), 2.75 ― 2.64 (m, 2H), 3.36 ― 3.20 (m, 2H), 7.27 ― 7.07 (m, 2H), 7.45 (d, J = 8.3 Hz, 2H), 7.94 (t, J = 5.6 Hz, 1H), 9.31 (s, 1H).
【0061】
実施例5- NH2OH.Hlの調製
0℃で50%NH2OH(aq)(9.28ml、0.15mol、1.00当量)の攪拌溶液に、57%HI(aq)をpH7になるまで5分間かけて注意深く滴下した。 形成された緻密な白色結晶性固体を濾過により集め、氷冷水で注意深く洗浄して、ヨウ化水素ヒドロキシルアミン(6.80g、28%)を得た。
【0062】
実施例6- NH2OH.TFAの調製
0℃で50%NH 2 OH(aq)(9.28ml、0.15mol、1.00当量)の攪拌溶液に、pHが7になるまでTFAを注意深く5分間かけて滴下した。 反応混合物を窒素スパージング下で濃縮して、透明な無色油状物としてヒドロキシルアミントリフルオロアセテート(11.0g、98%)を得た。
【0063】
実施例7- NH2NH2.H2OおよびNaOHなどの一般に使用されているアミド交換剤に対するNH2OHおよびその塩の比較研究
【化5】
選択した溶媒(5倍容量)中のtert-ブチル(4-(2-アセトアミドエチル)フェニル)カルバメート(50mg、0.18mmol)の撹拌溶液/懸濁液に塩(5当量)を加え、得られた混合物を80℃で加熱し、反応を完了するのに必要な時間インキュベートする。結果を表2に示す。結果は、たとえ塩中のヒドロキシルアミンの相対濃度がヒドロキシルアミン単独の濃度よりもはるかに低い場合でも、脱ヒドロキシル化手順が例えばヒドロキシルアミンヨウ化水素(実施例7-3)またはヒドロキシルアミントリフルオロアセテート(実施例7-9)で迅速に進行することを示す。結果を表2に示す。結果は、たとえ実施例7-1において、塩中のヒドロキシルアミンの相対濃度がヒドロキシルアミン単独の濃度よりもはるかに低い場合でも、脱ヒドロキシル化手順が例えばヒドロキシルアミンヨウ化水素(実施例7-3)またはヒドロキシルアミントリフルオロアセテート(実施例7-9)で迅速に進行することを示す。
LCMS: tR = 0.81 分., 純度 = 100%; ES+, 237.51(M+H)+.
1H-NMR (DMSO-d6) δ 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 9.26 (s, 1H), 8.40 (s, 1H), 7.38 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.11 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 2.89 (m, 2H), 2.80 ― 2.63 (m, 2H), 1.47 (s, 9H) (ギ酸塩として単離された).
【0064】
【表2】
【0065】
実施例8-ヒドロキシルアミンによる還元HA-4の調製および脱アセチル化
ジアミノテトラヒドロ-HA(DA-4HA)を以下のスキームに従って合成した:
【化6】
【0066】
ステップ1
室温で水(5ml)中のHA-4(500mg、0.61mmol)の溶液をナトリウムボロヒドリド(23.05mg、0.61mmol)で処理し、得られた溶液を3時間撹拌し、濃縮乾固して、 還元された生成物1(532mg、想定100%)を白色泡状物として得た。
LCMS (tr = 0.28 min., ES+ = 779.4 (M-2 Na + 2H)
【0067】
ステップ2
還元された生成物1(532mg)を水性NH2OH(5ml、50%v/v/)に溶解し、固体NH4I(100mg)を添加した。得られた懸濁液を70℃で48時間加熱し、室温に冷却し、濃縮乾固して残渣を得た。残留物を純粋なEtOH中で沈殿させ、得られた沈殿物を濾過により回収し、恒量まで乾燥して、ジアミン2とモノアミン3の1:1混合物を定量的収率で得た。
【0068】
2: LCMS (tr = 0.16 分., ES+ = 695.36 (M-2 Na + 2H)
3: LCMS (tr = 0.19 分., ES+ = 737.47 (M-2 Na + 2H)
【0069】
実施例9- 還元されたHA-4のNH2OH.HIによる脱アセチル化
実施例26のステップ1に記載したように調製した還元HA-4(532mg)をEtOH-H2O(2.5ml、1:1)に溶解し、固体NH2OH.HI(491mg、3.05mmol)を加える。得られた懸濁液を80℃で6時間加熱し、室温に冷却し、反応混合物を分取HILICクロマトグラフィーで精製して脱アセチル化HA-4を白色固体として得る。
脱アセチル化 HA-4 : LCMS (tr = 0.16 分, ES+ = 695.36 (M-2 Na + 2H)
【0070】
実施例10-ヒドロキシルアミンによるヒアルロン酸の脱アセチル化
ヒドロキシルアミン(Sigma-Aldrich 50 vol%溶液)、または表3に示すヒドロキシルアミン/水の混合物に0.2gまたは20gのHA(Mw2 500kDa、DoA100%)を可溶化した。溶液を暗所で、アルゴン下、30~70℃で5~353時間インキュベートした。 インキュベーション後、混合物をエタノールで沈殿させた。 得られた沈殿物を濾過し、エタノールで洗浄し、次いで水に再溶解した。溶液を限外濾過により精製し、続いて凍結乾燥して、脱アセチル化HA(de-Ac HA)を白色固体として得た。 実施例10-1~10-14は、 HA約20gを用いて実施例10-15~10-16を実施した。結果を表3に示す。ヒドラジン分解(実施例11)およびアルカリ法(実施例12~13)と比較して、ヒドロキシルアミノ分解による脱アセチル化がより効率的であり、HAの骨格のMwをより良好に保存する。
【0071】
【表3】
【0072】
実施例11-ヒドラジン分解によるヒアルロン酸の脱アセチル化 - 比較例
0.2gのHA(Mw2 500kDa、DoA100%)を、ヒドラジン一水和物中のヒドラジン硫酸塩の1%溶液10mLに可溶化した。反応は、暗所およびアルゴン下、30~55℃で24~120時間行った。混合物をエタノールで沈殿させた。得られた沈殿物を濾過し、エタノールで洗浄し、次いで水に再溶解した。最終脱アセチル化HA生成物を限外濾過後に得て、凍結乾燥させた。 結果を表4に示す。ヒドラジン分解による脱アセチル化は、ヒドロキシルアミノ分解と比較して、HA骨格のより多くの分解、すなわち脱アセチル化生成物のより低いMwを与える(実施例10-1~10-16)。
【0073】
【表4】
【0074】
実施例12-均質なアルカリ加水分解によるヒアルロン酸の脱アセチル化 - 比較例
HA(1000kDa)を反応容器に秤量し、NaOH溶液を添加し、均一な溶液が得られるまで反応物を混合した。混合物を攪拌せずにインキュベートし、続いて水およびEtOHで希釈した。 混合物を1.2MのHClを加えることによって中和し、EtOHを添加することによって沈殿させた。沈殿物をエタノール(70w / w%)、続いてエタノールで洗浄し、一晩真空乾燥して固体を得た。結果を表5に示す。
【0075】
均質なアルカリ加水分解による脱アセチル化は、ヒドロキシルアミノ分解と比較してHA骨格のより多くの分解、すなわち脱アセチル化生成物のより低いMwを与える(実施例10-1~10-16)。
【0076】
【表5】
【0077】
実施例13-異種アルカリ加水分解によるヒアルロン酸の脱アセチル化 - 比較例
HA(1000kDa)を反応容器に秤量し、EtOH中のNaOH(70%w / w%)を添加した。不均一混合物をインキュベートし、続いて1.2M HClを添加して中和した。沈殿物をエタノール(75w / w%)、続いてエタノールで洗浄し、一晩真空乾燥して固体を得た。結果を表6に示す。
【0078】
不均一アルカリ加水分解による脱アセチル化は、HA骨格のより多くの分解、すなわち、ヒドロキシル化分解(実施例10-1~10-16)と比較して脱アセチル化生成物のMwがより低くなる。
【0079】
【表6】
【0080】
実施例14- ベンジル(4-(2-アセトアミドエチル)フェニル) - カルバメートの調製および脱アセチル化
【化7】
0℃のN-(4-アミノフェネチル)アセトアミド(200mg、1.12mmol、1当量)およびTEA(DCM(10ml)中)の撹拌溶液に、クロロギ酸ベンジル(173mg、1.01mmol)を 5分かけて加えた。反応混合物を室温で一晩撹拌し、DCM 10mlで希釈し、NaHSO4の飽和水溶液(5ml)、水(3×5ml)で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濃縮乾固して、白色固体として得た。
【0081】
EtOH-H2O(4:1、5倍容量)中のベンジル(4-(2-アセトアミドエチル)フェニル)カルバメート(1当量)の撹拌溶液に、NH2OH.HI(5当量)を加え、懸濁液を80℃ 5時間室温で冷却し、Mass Triggered Preparative LCMSで精製した。
【0082】
実施例15- アリル(4-(2-アセトアミドエチル)フェニル) - カルバメートの調製および脱アセチル化
【化8】
0℃でN-(4-アミノフェネチル)アセトアミド(200mg、1.12mmol、1当量)およびTEA(DCM(10ml)中)の撹拌溶液に、アリルクロロホルメート(122mg、1.01mmol)を 5分かけて加えた。反応混合物を室温で一晩撹拌し、DCM 10mlで希釈し、NaHSO 4の飽和水溶液(5ml)、水(3×5ml)で洗浄し、NaHSO4で乾燥し、濃縮乾固して、 白色固体として得た。EtOH-H2O(4:1、5倍容量)中のアリル(4-(2-アセトアミドエチル)フェニル)カルバメート(1当量)の撹拌溶液に、NH2OH.HI(5当量)を加え、懸濁液を80℃ 5時間室温で冷却し、Mass Triggered Preparative LCMSで精製した。
【0083】
実施例16- (9H-フルオレン-9-イル)メチル(4-(2-アセトアミドエチル)フェニル)カルバメートの調製および脱アセチル化
【化9】
0℃でN-(4-アミノフェネチル)アセトアミド(200mg、1.12mmol、1当量)およびTEA(DCM(10ml)中)の撹拌溶液に、9-フルオレニルメチルクロロホルメート(261mg、1.01mmol) 5分かけて加えた。反応混合物を室温で一晩撹拌し、DCM 10mlで希釈し、NaHSO4の飽和水溶液(5ml)、水(3×5ml)で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濃縮乾固して、表題化合物を白色固体として得た。
【0084】
EtOH-H2O(4:1、5倍容量)中の(9H-フルオレン-9-イル)メチル(4-(2-アセトアミドエチル)フェニル) - カルバメート(1当量)の攪拌溶液に、NH2OH.HI(5当量)を加え、懸濁液を80℃で5時間加熱し、室温に冷却し、Mass Triggered Preparative LCMSで精製する。
【0085】
実施例17-2-(トリメチルシリル)エチル(4-(2-アセトアミドエチル)フェニル)カルバメートの調製および脱アセチル化
【化10】
0℃のN-(4-アミノフェネチル)アセトアミド(200mg、1.12mmol、1当量)およびTEA(DCM(10ml)中)の撹拌溶液に、4-ニトロフェニル2-(トリメチルシリル)エチルカーボネート(286mg、1.01mmol)を5分かけて加えた。反応混合物を室温で一晩撹拌し、DCM(10ml)で希釈し、飽和NaHSO4水溶液(5ml)、飽和NaHCO3水溶液(5ml)、水(3×5ml) )で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濃縮乾固させて、表題の化合物を白色固体として得た。
【0086】
EtOH-H2O(4:1、5倍容量)中の2-(トリメチルシリル)エチル(4-(2-アセトアミドエチル)フェニル) - カルバメート(1当量)の撹拌溶液に、NH2OH.HI(5当量)および 懸濁液を80℃で5時間加熱し、室温に冷却し、Mass Triggered Preparative LCMSで精製する。
【手続補正書】
【提出日】2018年8月29日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミド結合を切断する方法であって、
a)第一級、第二級または第三級アミド基であるアミド基を含む分子を提供する工程;
b)前記アミド基を含む分子をヒドロキシルアミン(NH2OH)またはその塩と反応させて、アミド基のアミド結合を切断する工程、
を含む方法。
【請求項2】
c)工程b)の反応により形成された生成物を回収する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アミド基がN-アシルアミド基、好ましくはN-アセチルアミド基である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記アミド基を含む分子が、pH感受性キラル中心をさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記アミド基を含む分子が、pH感受性保護基をさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程b)が、前記アミド基を含む分子を、100℃以下の温度でヒドロキシルアミンまたはその塩と反応させる工程を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程b)が、前記アミド基を含む分子をヒドロキシルアミンまたはその塩と2~200時間反応させる工程を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程b)が、前記アミド基を含む分子をヒドロキシルアミンと水中で反応させる工程を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程b)におけるヒドロキシルアミンのモル濃度が5~20Mの範囲にある、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程b)が、前記アミド基を含む分子をヒドロキシルアミン塩と反応させる工程を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ヒドロキシルアミン塩が、ヒドロキシルアミンとヨウ化水素酸またはトリフルオロ酢酸との塩である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程b)におけるヒドロキシルアミン塩の濃度が、0.1~5Mの範囲にある、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程b)における前記反応が、少なくとも、ヒドロキシルアミン塩を少なくとも部分的に溶解することができる溶媒中で実施される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程b)における前記反応が4~12の範囲にあるpH値~で行われる、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
工程b)における前記反応が、pH値9~11の範囲にあるpH値で行われる、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記反応のpHが、pH低下剤の添加により、4~9の範囲の値に低下し、前記pH低下剤が、鉱酸、有機酸およびpHを低下させる塩、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記pH低下剤は、pHを低下させる塩である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
アミド基を含む分子中のアミド結合を切断するためのヒドロキシルアミンまたはその塩の使用。
【国際調査報告】