(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA
B細胞成熟抗原(BCMA)に特異的に結合し、免疫学的に認識するポリペプチド及びタンパク質が開示される。該ポリペプチド及びタンパク質に関連する、キメラ抗原受容体 (CAR)、抗BCMA結合部分、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、医薬組成物及び複合体がまた開示される。がんの存在を検出する方法、及びがんを治療又は予防する方法がまた開示される。
請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項4若しくは5に記載のタンパク質、又は請求項6〜8のいずれか一項に記載の結合部分を含む、キメラ抗原受容体(CAR)。
(a)請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項4若しくは5に記載のタンパク質、請求項6〜8のいずれか一項に記載の抗BCMA結合部分、又は請求項9に記載のCARを含む複合体であって、(b)エフェクター分子に結合又は融合した、複合体。
前記エフェクター分子が、(i)シュードモナス外毒素A(PE)、(ii)PEの細胞傷害性フラグメント、又は(iii)(i)若しくは(ii)の細胞傷害性変異体である、請求項10又は11に記載の複合体。
前記エフェクター分子が、PE―LR、PE−LO10R456A、PE−T20、PE−T20−KDEL、PE4E、PE40、PE38、PE24、PE25、PE38QQR、PE38KDEL及びPE35からなる群から選択される、請求項10〜12のいずれか一項に記載の複合体。
前記エフェクター分子が、ポリペプチド、タンパク質又は抗BCMA結合部分に、リンカーを介して結合又は融合している、請求項10〜13のいずれか一項に記載の複合体。
請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項4若しくは5に記載のタンパク質、請求項6〜8のいずれか一項に記載の抗BCMA結合部分、請求項9に記載のCAR、又は請求項10〜15のいずれか一項に記載の複合体をコードする核酸。
請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項4若しくは5に記載のタンパク質、請求項6〜8のいずれか一項に記載の抗BCMA結合部分、請求項9に記載のCAR、請求項10〜15のいずれか一項に記載の複合体、請求項16に記載の核酸、請求項17に記載の組換え発現ベクター、請求項18に記載の宿主細胞又は請求項19に記載の宿主細胞集団、及び医薬的に許容される担体を含む、医薬組成物。
哺乳動物における、がんを治療又は予防することにおける使用のための、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項4若しくは5に記載のタンパク質、請求項6〜8のいずれか一項に記載の抗BCMA結合部分、請求項9に記載のCAR、請求項10〜15のいずれか一項に記載の複合体、請求項16に記載の核酸、請求項17に記載の組換え発現ベクター、請求項18に記載の宿主細胞、請求項19に記載の宿主細胞集団又は請求項20に記載の医薬組成物。
前記がんが、バーキットリンパ腫、DLBCLリンパ腫、ALLリンパ腫、ホジキンリンパ腫又は多発性骨髄腫である、請求項23に記載の使用のための、ポリペプチド、タンパク質、抗BCMA結合部分、複合体、核酸、組換え発現ベクター、単離された宿主細胞、細胞集団又は医薬組成物。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の詳細な説明
本発明の一実施形態は、抗B細胞成熟抗原 (BCMA)抗体の抗原結合ドメインを含むポリペプチド及びタンパク質を提供する。該ポリペプチド及びタンパク質は、高いアフィニティーで有利にBCMA (CD269としてもまた参照する)を特異的に認識し、それに結合する。BCMAは、腫瘍壊死因子受容体 (TNFR)スーパーファミリーのメンバーである。BCMAは、B細胞活性化因子(BAFF)及び増殖誘導リガンド (APRIL)に結合する。非悪性細胞間で、BCMAは主として形質細胞及び成熟B細胞のサブセットにおいて発現することが報告されている。BCMA RNAは、多発性骨髄腫細胞において検出されており、BCMAタンパク質は多発性骨髄腫患者由来の形質細胞の表面上で検出されている。
【0010】
BCMAは、様々なヒトのがんによって、発現又は過剰発現される。BCMAを発現又は過剰発現するがんの例としては、それらに限定されないが、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 (DLBCL)リンパ腫、急性リンパ球性白血病 (ALL)リンパ腫、ホジキンリンパ腫及び多発性骨髄腫が挙げられる。特定の理論又は機構に拘束されることはないが、BCMAを特異的に認識し、それに結合することによって、本発明のポリペプチド及びタンパク質は、有利にBCMA発現がん細胞を標的とし得ると考えられる。本発明の一実施形態においては、本発明のポリペプチド及びタンパク質は、BCMAに対して抗原特異的な応答を誘発し得る。従って、特定の理論又は機構に拘束されることはないが、BCMAを特異的に認識し、それに結合すること(recognizing and binding BCMA)によって、本発明のタンパク質及びポリペプチドは、1以上の以下:BCMA発現がん細胞を検出すること、BCMA発現がん細胞を標的とし破壊すること、がん細胞を低減又は除去すること、腫瘍部位(複数可)への免疫細胞及び/又はエフェクター分子の浸潤を促進すること、並びに抗がん応答を促進/延長すること、を提供し得ると考えられる。
【0011】
本明細書において用いられる場合、用語「ポリペプチド」は、オリゴペプチドを含み、1以上のペプチド結合によって結合したアミノ酸の一本鎖を指す。ポリペプチドは、抗BCMA抗体の抗原結合ドメインの1以上の可変領域 (例、2の可変領域)であって、相補性決定領域 (CDR)1、CDR2及びCDR3を含む、各可変領域を含み得る。本発明の一実施形態においては、ポリペプチドは抗体BM24又はBM306のCDR配列を含む。CDR結合配列は、例えば、例、国際ImMunoGeneTics情報システム(IMGT)又はKabatの方法論(Wu and Kabat、J. Exp. Med., 132: 211-250 (1970))等の当該技術分野において公知である方法によって決定され得る。
【0012】
好ましくは、第一の可変領域は、配列番号1又は7のアミノ酸配列を含むCDR1(第一の可変領域のCDR1)、配列番号2又は8のアミノ酸配列を含むCDR2(第一の可変領域のCDR2)及び配列番号3又は9のアミノ酸配列を含むCDR3(第一の可変領域のCDR3)を含み、第二の可変領域は、配列番号4又は10のアミノ酸配列を含むCDR1(第二の可変領域のCDR1)、配列番号5又は11のアミノ酸配列を含むCDR2(第二の可変領域のCDR2)及び配列番号6又は12のアミノ酸配列を含むCDR3(第二の可変領域のCDR3)を含む。これに関して、本発明のポリペプチドは、配列番号(a)1〜3、(b)配列番号4〜6、(c)配列番号7〜9、(d)配列番号10〜12、(e)配列番号1〜6又は(f)配列番号7〜12のアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、本発明の一実施形態は、(i)配列番号1〜6又は(ii)配列番号7〜12のアミノ酸配列を含むポリペプチドを提供する。
【0013】
一実施形態においては、ポリペプチドは、上記のCDRをそれぞれ含む、抗BCMA 抗体の抗原結合ドメインの1以上の可変領域(例、第一及び第二の可変領域)をそれぞれ含む。例えば、ポリペプチドは、抗体BM24又はBM306の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み得る。第一の可変領域は、配列番号13又は15のアミノ酸配列を含み得る。第二の可変領域は、配列番号14又は16のアミノ酸配列を含み得る。従って、本発明の一実施形態においては、ポリペプチドは、(a)配列番号13、(b)配列番号14、(c)配列番号15、(d)配列番号16、(e)配列番号13及び14、又は(f)配列番号15及び16のアミノ酸配列を含む。好ましくは、ポリペプチドは(i)配列番号13及び14、又は(ii)配列番号15及び16のアミノ酸配列を含む。本発明の一実施形態においては、第一の可変領域は抗BCMA抗体の重鎖であり、第二の可変領域は抗BCMA抗体の軽鎖である。
【0014】
本発明の一実施形態においては、ポリペプチドの可変領域はリンカーによって連結され得る。リンカーは任意の好適なアミノ酸配列を含み得る。本発明の一実施形態においては、リンカーは、約1〜約100、約3〜約20、約5〜約30、約5〜約18、又は約3〜約8 アミノ酸の長さで、グリシン及び/又はセリン残基からなる配列のGly/Serリンカーである。従って、Gly/Serリンカーはグリシン及び/又はセリン残基からなる場合がある。幾つかの実施形態においては、Gly/Serリンカーは、式:(Xaa1)
nのペプチドであり、各アミノ酸残基Xaa1はグリシン及びセリンから独立して選択され、nは3〜15の整数である。好ましくは、Gly/Serリンカーは、配列番号17又は18のアミノ酸配列を含む。
【0015】
本発明は、本明細書に記載された少なくとも1のポリペプチドを含むタンパク質を、更に提供する。「タンパク質」は、1以上のポリペプチド鎖を含む分子を意味する。
【0016】
本発明のタンパク質は、(i)配列番号1〜3又は(ii)配列番号7〜9のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖、及び(i)配列番号4〜6、(ii)配列番号10〜12のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖を含み得る。これに関して、タンパク質は、(i)配列番号1〜3のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖、及び配列番号4〜6のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖、又は(ii)配列番号7〜9のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖、及び配列番号10〜12のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖、を含み得る。本発明のタンパク質は、例えば、配列番号13又は15のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖、及び配列番号14又は16のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖を含み得る。これに関して、タンパク質は、(i)配列番号13のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖、及び配列番号14のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖、又は(ii)配列番号15のアミノ酸配列を含む第一のポリペプチド鎖、及び配列番号16のアミノ酸配列を含む第二のポリペプチド鎖、を含み得る。
【0017】
本発明の他の態様に関して明細書に記載されたように、タンパク質はリンカーを更に含み得る。
【0018】
本発明のタンパク質は、例えば、融合タンパク質であり得る。例えば、タンパク質が(i)配列番号13又は15、及び(ii)配列番号14又は16を含む、単一のポリペプチド鎖を含む場合、又はタンパク質の第一及び/又は第二のポリペプチド鎖(複数可)が他のアミノ酸配列、例、免疫グロブリン又はその部分をコードするアミノ酸配列を更に含む場合、本発明のタンパク質は融合タンパク質であり得る。これに関して、本発明はまた、少なくとも1の他のポリペプチドと共に、本明細書に記載された少なくとも1の本発明のポリペプチドを含む、融合タンパク質を提供する。他のポリペプチドは、融合タンパク質の別のポリペプチドとして存在し得るか、又は本明細書に記載された本発明のポリペプチドの1とインフレームで(タンデムで)で発現するポリペプチドとして存在し得る。他のポリペプチドは、免疫グロブリン、CD3、CD4、CD8、MHC分子、CD1分子、例、CD1a、CD1b、CD1c、CD1d等を含むが、それらに限定されない、任意のペプチド性若しくはタンパク質性分子、又はその部分をコードし得る。
【0019】
融合タンパク質は、本発明のポリペプチドの1以上のコピー及び/又は他のポリペプチドの1以上のコピーを含み得る。例えば、融合タンパク質は、本発明のポリペプチド及び/又は他のポリペプチドの1、2、3、4、5コピー以上を含み得る。融合タンパク質を作製する好適な方法は、当該技術分野において公知であり、例えば、組換えによる方法が挙げられる。
【0020】
本発明のポリペプチド及びタンパク質は、抗BCMA結合部分として有用であり得ると考えられる。これに関して、本発明の一実施形態は、本明細書に記載されたポリペプチド又はタンパク質のいずれかを含む、抗BCMA結合部分を提供する。本発明の一実施形態においては、抗BCMA結合部分は、本明細書に記載されたポリペプチド又はタンパク質のいずれかの抗原結合部分を含む。抗原結合部分は、少なくとも1の抗原結合部位を有する、任意の部分であり得る。一実施形態においては、抗BCMA結合部分は、抗体、Fabフラグメント (Fab)、F(ab')
2フラグメント、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、一本鎖可変領域フラグメント (scFv)又はジスルフィド安定化可変領域フラグメント (dsFv)である。好ましくは、抗BCMA結合部分は、Fabフラグメント又はdsFvである。
【0021】
一実施形態においては、抗BCMA結合部分は抗体である。抗体は、BCMAのみに対する抗原特異性を有する一重特異性抗体、又はBCMA及びBCMA以外の第二の抗原に対する抗原特異性を有する二重特異性抗体であり得る。抗体は、例えば、本明細書に記載された本発明のポリペプチドの少なくとも1を含む組換え抗体であり得る。本明細書において用いられる場合、「組換え抗体」は、本発明のポリペプチド又はタンパク質の少なくとも1、及び抗体又はその部分の1以上のポリペプチド鎖を含む、組換え(例、遺伝的に改変された)タンパク質を指す。抗体のポリペプチド又はその部分は、例えば、重鎖若しくは軽鎖の定常領域、又は抗体のFcフラグメント等であり得る。抗体のポリペプチド鎖又はその部分は、組換え抗体の別のポリペプチドとして存在し得る。代替的に、抗体のポリペプチド鎖又はその部分は、本発明のポリペプチド又はタンパク質とインフレームで(タンデムで)で発現されるポリペプチドとして存在し得る。抗体のポリペプチド又はその部分は、任意の抗体又は任意の抗体 フラグメントのポリペプチドであり得る。
【0022】
本発明の抗体は、当該技術分野において公知である任意の型の免疫グロブリンであり得る。例えば、抗BCMA結合部分は、任意のアイソタイプ、例、IgA、IgD、IgE、IgG (例、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4)、IgM等の抗体であり得る。抗体は、モノクローナル又はポリクローナルであり得る。抗体は、天然で生じた抗体、例、哺乳動物、例、マウス、ウサギ、ヤギ、ウマ、ニワトリ、ハムスター、ヒト等から単離及び/又は精製された抗体であり得る。代替的に、抗体は遺伝的に改変された抗体、例、ヒト化抗体又はキメラ抗体であり得る。抗体は、単量体又は多量体の形態であり得る。また、抗体は、BCMAに対して任意のレベルのアフィニティー又はアビディティーを有し得る。
【0023】
抗体がBCMAに結合する能力をテストする方法は当該技術分野において公知であり、例えば、例、ラジオムノアッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着アッセイ (ELISA)、ウェスタンブロット、免疫沈降及び競合阻害アッセイ等の、任意の抗体-抗原結合アッセイが挙げられる。
【0024】
抗体を作製する好適な方法は当該技術分野において公知であり、例えば、標準的なハイブリドーマ法、Epstein-Barrウイルス (EBV)ハイブリドーマ法及びバクテリオファージベクター発現システムが挙げられる。抗体は、非ヒト動物内で産生され得る。
【0025】
好ましい実施形態においては、抗BCMA結合部分は一本鎖可変領域フラグメント (scFv)である。合成ペプチドを介して抗体軽鎖の可変(V)ドメインに連結した抗体重鎖のVドメインを含む、トランケートFabフラグメントである、一本鎖可変領域フラグメント (scFv)抗体フラグメントは、通常のDNA組換え技術を用いて生成し得る。同様に、ジスルフィド安定化可変領域フラグメント(dsFv)は、DNA組換え技術によって調製され得る。しかしながら、本発明の抗BCMA結合部分は、抗体フラグメントのこれらの例示的な型に限定されない。
【0026】
また、抗BCMA結合部分は、例えば、例、放射性同位元素、フルオロフォア (例、フルオレセインイソチオシアネート (FITC)、フィコエリトリン (PE))、酵素 (例、アルカリフォスファターゼ、セイヨウワサビ・ペルオキシダーゼ)及び元素粒子(例、金粒子)等の検出可能な標識を含むよう改変され得る。
【0027】
本発明の別の実施形態は:(a)本明細書に記載されたポリペプチド、タンパク質又は抗BCMA結合部分のいずれかを含む抗原結合ドメイン、(b)膜貫通(TM)ドメイン、及び(c)細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含む、キメラ抗原受容体 (CAR)を提供する。
【0028】
キメラ抗原受容体 (CAR)は、T細胞シグナル伝達ドメインに連結した、抗体の抗原結合ドメイン(例、一本鎖可変フラグメント (scFv))を含む、人工的に構築されたハイブリッドタンパク質又はポリペプチドである。CARの特徴としては、モノクローナル抗体の抗原結合特性を利用して、MHC非拘束性の様式で、T細胞特異性及び反応性を選択した標的に向けなおす能力が挙げられる。MHC非拘束性抗原認識によって、抗原プロセッシングから独立して抗原を認識する能力が、CARを発現する細胞に付与され、それゆえ主な腫瘍回避機構をバイパスする。更に、T細胞中において発現する場合、CARは有利に、内在的なT細胞受容体(TCR)α及びβ鎖と二量体化しない。
【0029】
本明細書において用いられる場合、「抗原特異性を有する」及び「抗原特異的な応答を誘発する」という表現は、抗原に対するCARの結合が免疫応答を誘発するように、CARが抗原に特異的に結合し得、それを免疫学的に認識し得ることを意味する。
【0030】
本発明のCARは、BCMAに対する抗原特異性を有する。特定の理論又は機構に拘束されることはないが、BCMAに対する抗原特異的な応答を誘発することによって、本発明のCARは以下:BCMA発現がん細胞を目的とし破壊すること、がん細胞を低減又は除去すること、腫瘍部位(複数可)に対する免疫細胞の浸潤を促進すること、及び抗がん応答を促進/延長することの1以上、を提供する。
【0031】
本発明の一実施形態は、抗BCMA抗体の抗原結合ドメインを含むCARを提供する。抗BCMA抗体の抗原結合ドメインは、BCMAに特異的に結合する。CARの抗原結合ドメインは、本明細書に記載されたポリペプチド、タンパク質又は抗BCMA結合部分のいずれかを含み得る。本発明の一実施形態においては、CARは、抗BCMA一本鎖可変フラグメント (scFv)を含む。これに関して、本発明の好ましい実施形態は、本明細書に記載されたポリペプチド又はタンパク質のいずれかを含む、一本鎖可変フラグメント (scFv)を含む、抗原結合ドメインを含むCARを提供する。
【0032】
本発明の好ましい実施形態においては、CARは相補性決定領域(CDR)1、CDR2及びCDR3を含む、可変領域をそれぞれ含む、重鎖及び軽鎖を含む。好ましくは、重鎖は、配列番号1又は7のアミノ酸配列を含むCDR1(重鎖のCDR1)、配列番号2又は8のアミノ酸配列を含むCDR2(重鎖のCDR2)及び配列番号3又は9のアミノ酸配列を含むCDR3(重鎖のCDR3)を含み、軽鎖は、配列番号4又は10のアミノ酸配列を含むCDR1(軽鎖のCDR1)、配列番号5又は11のアミノ酸配列を含むCDR2(軽鎖のCDR2)及び配列番号6又は12のアミノ酸配列を含むCDR3(軽鎖のCDR3)を含む。これに関して、本発明のCARは、配列番号(a)1〜3、(b)配列番号4〜6、(c)配列番号1〜6、(d)配列番号7〜9、(e)配列番号10〜12、又は(f)配列番号7〜12のアミノ酸配列を含み得る。好ましくは、CARは配列番号1〜6又は配列番号7〜12のアミノ酸配列を含む。
【0033】
本発明の一実施形態においては、CARの抗原結合ドメインは、それぞれ軽鎖及び重鎖を含む。軽鎖は、配列番号14又は16を含み得る。重鎖は、配列番号13又は15を含み得る。従って、本発明の一実施形態においては、抗原結合ドメインは、(a)配列番号13、(b)配列番号14、(c)配列番号15、(d)配列番号16、(e)配列番号13及び14、又は(f)配列番号15及び16のアミノ酸配列を含む。好ましくは、CARは、(i)配列番号13〜14又は(ii)配列番号15〜16のアミノ酸配列を含む。
【0034】
一実施形態においては、CARの抗原結合ドメインはリーダー配列を含む。本発明の一実施形態においては、リーダー配列が細胞の表面上でのCARの発現を促進し得る一方、発現されたCARにおいてリーダー配列が存在することは、CARが機能するためには必要でない。本発明の一実施形態においては、細胞の表面上でのCARが発現した場合、リーダー配列はCARから切り離され得る。従って、本発明の一実施形態においては、CARはリーダー配列を欠く。
【0035】
一実施形態においては、CARは免疫グロブリン定常ドメインを含む。好ましくは、免疫グロブリンドメインはヒト免疫グロブリン配列である。一実施形態においては、免疫グロブリン定常ドメインは、免疫グロブリンCH2及びCH3免疫グロブリンG (IgG1)ドメイン配列 (CH2CH3)を含む。特定の理論に拘束されることはないが、CH2CH3ドメインは、CAR発現細胞の、膜から離れる方にscFvの結合モチーフを拡張し、ネイティブTCRのサイズ及びドメイン構造をより正確に模倣し得ると考えられる。幾つかの実施形態においては、CARは、免疫グロブリン定常ドメインを欠き得る。
【0036】
本発明の一実施形態においては、CARはTMドメインを含む。本発明の一実施形態においては、TMドメインはCD8又はCD28のTMドメインを含む。好ましい実施形態においては、CD8及びCD28はヒトのである。
【0037】
本発明の一実施形態においては、CARは、i)CD28、ii)CD137及びiii)CD3ゼータ (ζ)の1以上の細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含む、細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含む。好ましい実施形態においては、CD28、CD137及びCD3ゼータはヒトのである。CD28はT細胞の共刺激において重要なT細胞マーカーである。4-1BBとしても知られるCD137はT細胞に強力な共刺激シグナルを送り、Tリンパ球の分化を促進し、長期間の生存を促進する。CD3ζはTCRと会合してシグナルを生成し、免疫受容体チロシン活性化モチーフ (ITAM)を含む。
【0038】
本発明の一実施形態においては、CARは、CD28のTMドメインを含むTMドメイン、並びにCD28及びCD3ゼータの細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含む細胞内T細胞シグナル伝達ドメイン、を含む。
【0039】
本発明の一実施形態においては、CARは、CD8のTMドメインを含むTMドメイン、並びにCD28、CD137及びCD3ゼータの細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含む細胞内T細胞シグナル伝達ドメイン、を含む。
【0040】
本発明の一実施形態においては、CARは、CD8のTMドメインを含むTMドメイン、並びにCD137及びCD3ゼータの細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含む細胞内T細胞シグナル伝達ドメイン、を含む。
【0041】
本発明の範囲には、本明細書に記載された本発明のポリペプチド、タンパク質及びCARの機能的部分が含まれる。ポリペプチド、タンパク質又はCARに言及する際に用いられる場合、用語「機能的部分」は、部分又はフラグメントが、それが部分であるポリペプチド、タンパク質又はCAR(親のポリペプチド、タンパク質又はCAR)の生物学的活性を保持する、本発明のポリペプチド、タンパク質又はCARの任意の部分又はフラグメントを指す。機能的部分は、例えば、親のポリペプチド、タンパク質若しくはCARと類似する程度、同じ程度、又はより高い程度に、標的細胞を認識する能力を保持する能力、又はがんを検出、治療若しくは予防する能力、を保持するポリペプチド、タンパク質又はCARの部分を包含する。親のポリペプチド、タンパク質又はCARに関して、機能的部分は、例えば、親のポリペプチド、タンパク質又はCARの約10%、25%、30%、50%、68%、80%、90%、95%以上を含み得る。
【0042】
機能的部分は、部分のアミノ末端若しくはカルボキシ末端、又はその両方の末端に、追加的なアミノ酸を含み得、その追加的なアミノ酸は親のポリペプチド、タンパク質又はCARのアミノ酸配列には見られない。望ましくは、追加のアミノ酸は、機能的部分の生物学的機能、例、標的細胞を認識し、がんを検出し、がんを治療又は予防する等、と干渉しない。より望ましくは、追加のアミノ酸は、親のポリペプチド、タンパク質又はCARの生物学的活性と比較して、その生物学的活性を増強する。
【0043】
本発明の範囲には、本明細書に記載された本発明のポリペプチド、タンパク質又はCARの機能的変異体が含まれる。本明細書において用いられる場合、用語「機能的変異体」は、機能的変異体が、ポリペプチド、タンパク質又はCAR(該機能的変異体はその変異体である)の生物学的活性を保持する、親のポリペプチド、タンパク質又はCARと実質的又は有意な配列同一性若しくは類似性を有する、ポリペプチド、タンパク質又はCARを指す。機能的変異体は、例えば、親のポリペプチド、タンパク質若しくはCARと類似する程度、同じ程度、又はより高い程度に標的細胞を認識する能力を保持する、本明細書に記載されたポリペプチド、タンパク質又はCAR(親のポリペプチド、タンパク質又はCAR)の変異体を包含する。親のポリペプチド、タンパク質又はCARに関して、機能的変異体は、例えば、親のポリペプチド、タンパク質又はCARに対し、アミノ酸配列で、少なくとも約30%、約50%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%以上同一であり得る。
【0044】
機能的変異体は、例えば、少なくとも1の保存的なアミノ酸置換を有する、親のポリペプチド、タンパク質又はCARのアミノ酸配列を含み得る。代替的に又は追加的に、機能的変異体は、少なくとも1の非保存的なアミノ酸置換を有する、親のポリペプチド、タンパク質又はCARのアミノ酸配列を含み得る。この場合においては、非保存的なアミノ酸置換が、機能的変異体の生物学的活性と干渉しないか、又はそれを阻害しないことが好ましい。非保存的なアミノ酸置換は、該機能的変異体の生物学的活性が、親のポリペプチド、タンパク質又はCARと比べて増強するよう、機能的変異体の生物学的活性を促進し得る。
【0045】
本発明のポリペプチド、タンパク質又はCARのアミノ酸置換は、好ましくは保存的なアミノ酸置換である。保存的なアミノ酸置換は、当該技術分野において公知であり、ある物理的及び/又は化学的性質を有する1つのアミノ酸が、同じ又は類似の化学的又は物理的性質を有する別のアミノ酸と交換されるアミノ酸置換が挙げられる。例えば、保存的アミノ酸置換は、酸性/負電荷の極性アミノ酸を別の酸性/負電荷の極性アミノ酸(例、Asp又はGlu)に置換、非極性側鎖を有するアミノ酸を別の非極性側鎖を有するアミノ酸(例、Ala、Gly、Val、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Trp、Cys、Val等)に置換、塩基性/正電荷の極性アミノ酸を別の塩基性/正電荷の極性アミノ酸(例、Lys、His、Arg等)に置換、極性側鎖を有する電荷を持たないアミノ酸を別の極性側鎖を有する電荷を持たないアミノ酸(例、Asn、Gln、Ser、Thr、Tyr等)に置換、β分枝側鎖を有するアミノ酸を別のβ分枝側鎖を有するアミノ酸(例、Ile、Thr及びVal)に置換、芳香族側鎖を有するアミノ酸を別の芳香族側鎖を有するアミノ酸(例、His、Phe、Trp及びTyr)に置換等であり得る。
【0046】
ポリペプチド、タンパク質又はCARは、他の構成要素、例、他のアミノ酸が該ポリペプチド、タンパク質、CAR、機能的部分又は機能的変異体の生物学的活性を実質的に変更しないよう、特定のアミノ酸配列又は本明細書に記載された配列から本質的になり得る。
【0047】
本発明の実施形態のポリペプチド、タンパク質又はCAR(機能的部分及び機能的変異体を含む)は任意の長さであり得、即ち、ポリペプチド、タンパク質若しくはCAR(又はそれらの機能的部分若しくは機能的変異体)が、例、抗原に特異的に結合する能力、哺乳動物内で疾患細胞を検出する能力、又は哺乳動物において疾患を治療若しくは予防する能力、等、生物学的活性を保持するという条件で、任意の数のアミノ酸を含み得る。例えば、ポリペプチド、タンパク質又はCARは、約50〜約5000アミノ酸長であり、例えば50、70、75、100、125、150、175、200、300、400、500、600、700、800、900、1000以上のアミノ酸長であり得る。
【0048】
本発明の実施形態のポリペプチド、タンパク質又はCAR(本発明の機能的部分及び機能的変異体を含む)は、1以上の天然で生じたアミノ酸の代わりに、合成アミノ酸を含み得る。そのような合成アミノ酸は当該技術分野において公知であり、例えばアミノシクロヘキサンカルボン酸、ノルロイシン、α-アミノ-n-デカン酸、ホモセリン、S-アセチルアミノメチル-システイン、トランス-3-及びトランス-4-ヒドロキシプロリン、4-アミノフェニルアラニン、4-ニトロフェニルアラニン、4-クロロフェニルアラニン、4-カルボキシフェニルアラニン、β-フェニルセリン β-ヒドロキシフェニルアラニン、フェニルグリシン、α-ナフチルアラニン、シクロヘキシルアラニン、シクロヘキシルグリシン、インドリン-2-カルボン酸、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、アミノマロン酸、アミノマロン酸モノアミド、N'-ベンジル-N'-メチル-リジン、N',N'-ジベンジル-リジン、6-ヒドロキシリジン、オルニチン、α-アミノシクロペンタンカルボン酸、α-アミノシクロヘキサンカルボン酸、α-アミノシクロヘプタンカルボン酸、α-(2-アミノ-2-ノルボルナン)-カルボン酸、α,γ-ジアミノ酪酸、α,β-ジアミノプロピオン酸、ホモフェニルアラニン及びα-tert-ブチルグリシンが挙げられる。
【0049】
本発明の実施形態のポリペプチド、タンパク質又はCAR(機能的部分及び機能的変異体を含む)は、グリコシル化、アミド化、カルボキシル化、リン酸化、エステル化、N-アシル化、環化(例えばジスルフィド架橋を介した)、又は酸付加塩へ変換及び/又は任意で二量体化若しくは重合化し得る。
【0050】
本発明の実施形態のポリペプチド、タンパク質又はCAR(それらの機能的部分及び機能的変異体を含む)は、当該技術分野において公知である方法によって取得され得る。ポリペプチド、タンパク質又はCARは、ポリペプチド又はタンパク質を作製する任意の好適な方法によって作製され得る。ポリペプチド及びタンパク質をデノボ(de novo)合成する好適な方法は、当該技術分野において公知である。また、ポリペプチド及びタンパク質は、核酸及び標準的な組換え方法を用いて、組換え的に産生され得る。更に、本発明のポリペプチド、タンパク質又はCAR(それらの機能的部分及び機能的変異体を含む)の幾つかは、例えば、植物、細菌、昆虫、哺乳動物、例、ラット、ヒト等の材料から単離及び/又は精製され得る。単離及び精製の方法は、当該技術分野において周知である。代替的に、本明細書に記載されたポリペプチド、タンパク質又はCAR(それらの機能的部分及び機能的変異体を含む)は、例えばSynpep (Dublin, CA)、Peptide Technologies Corp. (Gaithersburg, MD)及びMultiple Peptide システム (San Diego, CA)等の企業によって商業的に合成され得る。これに関連して、本発明のポリペプチド、タンパク質又はCARは、合成、組換え、単離及び/又は精製され得る。
【0051】
本発明の範囲には、本発明のポリペプチド、タンパク質、CAR、抗BCMA結合部分又はそれらの機能的部分若しくは機能的変異体のいずれかを含む、複合体、例、バイオコンジュゲートが含まれる。これに関して、本発明の一実施形態は、(a)本明細書に記載されたポリペプチド、タンパク質、CAR又は抗BCMA結合部分のいずれかを含む複合体であって、(b)エフェクター分子に結合又は融合した複合体を提供する。エフェクター分子は、任意の治療用の分子、複合体の検出を手助けする分子であり得る。エフェクター分子は限定されず、任意の好適なエフェクター分子であり得る。例えば、エフェクター分子は、任意の1以上の薬剤、毒素、標識(例、本明細書に記載された検出可能な標識のいずれか)、小分子、又は他の抗体であり得る。例えば、毒素は、参照によりそれぞれが本明細書に取り込まれる、例、米国特許番号第4,892,827号;第5,512,658号;第5,602,095号;第5,608,039号;第5,821,238号;第5,854,044号;第8,871,906号;第8,907,060号;第8,936,792号;第9,346,859号;第9,206,240号;及び第9,388,222号に記載された、(i)シュードモナス(Pseudomonas)外毒素A (「PE」)、(ii)PEの細胞傷害性フラグメント(例、PEのドメインIII)、又は例えば、例、PE-LR、PE-LO10R456A、PE-T20、PE-T20-KDEL、PE4E、PE40、PE38、PE24、PE25、PE38QQR、PE38KDEL及びPE35のいずれか等の(i)又は(ii)の細胞傷害性変異体、であり得る。本発明の複合体において好適であり得る薬剤の例としては、ピロロベンゾジアゼピン(pyrrolobenzodiazepine)(PBD)ダイマー、例えば、例、ドラスタチン(dolastatin)10、モノメチルドラスタチン(monomethyl dolastatin)10、オーリスタイン(auristain)E、モノメチルオーリスタイン(monomethyl auristain)E (MMAE)、オーリスタインF、モノメチルオーリスタインF、HTI-286、チューブリシン(tubulysin)M、メイタンシノイド(maytansinoid)AP-3、クリプトフィシン(cryptophycin)、Boc-Val-Dil-Dap-OH、チューブリシンIM-1、Boc-Val-Dil-Dap-Phe-OMe、チューブリシンIM-2、Boc-Nme-Val-Val-Dil-Dap-OH、チューブリシンIM-3及びコルヒチン(colchicine)DA等のチューブリン結合剤;例えば、例、デュオカルマイシン(duocarmycin)SA、デュオカルマイシンCN、デュオカルマイシンDMG、デュオカルマイシンDMA、デュオカルマイシンMA、デュオカルマイシンTM、デュオカルマイシンMB、デュオカルマイシンGA等のDNAアルキル化剤(デュオカルマイシン類似体);トマイマイシン(tomaymycin)DM;SJG-136;イリューディン(illudin)S;イロフルベン(irofulven);アパジクオン(apaziquone);トリプトライド(triptolide);スタウロスポリン(staurosporine);カンプトテシン(camptothecin);メトトレキセート(methotrexate);並びに例えば、例、キナーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、プロテアソーム阻害剤、及びマトリクス・メタロプロテアーゼ(MMP)阻害剤等の他の抗がん剤が挙げられるが、それらに限定されない。
【0052】
本明細書に記載されたポリペプチド、タンパク質、CAR又は抗BCMA結合部分は、直接的又は間接的に、例、リンカーを介して、(b)エフェクター分子に結合又は融合され得る。リンカーは当該技術分野において公知である任意の好適なリンカーであり得る。一実施形態においては、リンカーは、哺乳動物に該複合体を投与した場合に、切除され得る、切断可能なリンカーである。本発明の複合体における使用のために好適であり得るリンカーの例としては、本発明の他の態様に関して本明細書に記載されたリンカーのいずれかが挙げられるが、それらに限定されない。
【0053】
本発明の一実施形態によって、ポリペプチド、タンパク質、CAR、抗BCMA結合部分、複合体、又はそれらの機能的部分若しくは機能的変異体のいずれかをコードするヌクレオチド配列を含む核酸が、更に提供される。本発明の核酸は、本明細書に記載されたリンカー、抗原結合ドメイン、免疫グロブリンドメイン、TMドメイン及び/又は細胞内T細胞シグナル伝達ドメインのいずれかをコードするヌクレオチド配列を含み得る。
【0054】
本発明の一実施形態は、本明細書に記載されたポリペプチド、タンパク質又は抗BCMA結合部分のいずれかをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。これに関して、核酸は、(i)それぞれ配列番号13及び14である、第一及び第二の可変領域、又は(ii)それぞれ配列番号15及び16である、第一及び第二の可変領域、をコードするヌクレオチド配列を含む。本発明の別の実施形態は、本明細書に記載されたCDR領域のいずれかをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。これに関して、核酸は、配列番号(a)1〜3、(b)配列番号4〜6、(c)配列番号7〜9、(d)配列番号10〜12、(e)配列番号1〜6、又は(f)配列番号7〜12のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含む。本発明の別の実施形態は、本明細書に記載されたCDRのいずれかをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。
【0055】
本明細書において用いられる場合、「核酸」としては「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」及び「核酸分子」が挙げられ、一般的にDNA又はRNAのポリマーを意味し、一本鎖又は二本鎖であり得、天然の材料から合成又は取得され(例、単離及び/又は精製され)得、天然、非天然又は改変ヌクレオチドを含み得、並びに天然の結合、非天然の結合又は未修飾オリゴヌクレオチドのヌクレオチド間で見いだされるホスホジエステルの代わりに、例えば、ホスホロアミダイト結合若しくはホスホロチオエート結合等の改変されたヌクレオチド間結合を含み得る。幾つかの実施形態においては、核酸は挿入、欠失、逆位及び/又は置換を何ら含まない。しかしながら、本明細書において検討されるように、幾つかの例においては、核酸が1以上の挿入、欠失、逆位及び/又は置換を含むことが好適であり得る。幾つかの実施形態においては、核酸は、ポリペプチド、タンパク質又はCARの機能に影響しない追加的なアミノ酸配列をコードし得、宿主細胞によって核酸が発現する場合、翻訳される場合も、されない場合もある(例、AAA)。本発明の一実施形態においては、核酸は、相補的DNA (cDNA)である。本発明の一実施形態においては、核酸はコドンを最適化したヌクレオチド配列を含む。
【0056】
本発明の一実施形態の核酸は、組換え体であり得る。本明細書において用いられる場合、用語「組換え体」は、(i)生細胞内で複製され得る核酸分子に、天然又は合成の核酸セグメントを生細胞外で連結することによって構築される分子、又は(ii)上記(i)に記載されるものの複製によって生じる分子、を指す。本明細書の目的のためには、複製はin vitro複製又はin vivo複製であり得る。
【0057】
核酸は、他の構成要素、例、他のヌクレオチドが、コードされたCAR、ポリペプチド、タンパク質、抗BCMA結合部分、機能的部分又は機能的変異体の生物学的活性を実質的に変化させないように、特定のヌクレオチド配列又は本明細書に記載された配列から本質的になり得る。
【0058】
組換え核酸は、天然で生じない配列を有するか、又は組換えでなければ2つの配列が分離したセグメントの人工的な組合せによって作製される配列を有するものであり得る。この人工的な組合せは、化学的な合成によってか、又はより一般的には、例えば、例、Green and Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press、第4版(2012)に記載されたもの等の遺伝子工学技術による、核酸の単離されたセグメントの人工的な操作によって、しばしば達成される。核酸は、当技術分野で公知の手順を用いて、化学合成及び/又は酵素的ライゲーション反応に基づいて構築され得る。例えば、Greenら、上記を参照。例えば、核酸は、天然で生じたヌクレオチド、又は分子の生物学的安定性を増加するよう、若しくはハイブリダイゼーション時に形成される二本鎖の物理的安定性を高めるように設計された様々な修飾ヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート誘導体及びアクリジン置換ヌクレオチド)を用いて化学的に合成され得る。核酸を生成するために使用され得る、修飾ヌクレオチドの例としては、5-フルオロウラシル(fluorouracil)、5-ブロモウラシル(5-bromouracil)、5-クロロウラシル(5-chlorouracil)、5-ヨードウラシル(5-iodouracil)、ヒポキサンチン(hypoxanthine)、キサンチン(xanthine)、4-アセチルシトシン(4-acetylcytosine)、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル(5-(carboxyhydroxymethyl) uracil)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン(5-carboxymethylaminomethyl-2-thiouridine)、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル(5-carboxymethylaminomethyluracil)、ジヒドロウラシル(dihydrouracil)、β-D-ガラクトシルキューオシン(beta-D-galactosylqueosine)、イノシン(inosine)、N
6-イソペンテニルアデニン(N
6-isopentenyladenine)、1-メチルグアニン(1-methylguanine)、1-メチルイノシン(1-methylinosine)、2,2-ジメチルグアニン(2,2-dimethylguanine)、2-メチルアデニン(2-methyladenine)、2-メチルグアニン(2-methylguanine)、3-メチルシトシン(3-methylcytosine)、5-メチルシトシン(5-methylcytosine)、N
6-置換アデニン(N
6-substituted adenine)、7-メチルグアニン(7-methylguanine)、5-メチルアミノメチルウラシル(5-methylaminomethyluracil)、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル(5-methoxyaminomethyl-2-thiouracil)、β-D-マンノシルキューオシン(beta-D-mannosylqueosine)、5'-メトキシカルボキシメチルウラシル(5'-methoxycarboxymethyluracil)、5-メトキシウラシル(5-methoxyuracil)、2-メチルチオ-N
6-イソペンテニルアデニン(2-methylthio-N
6-isopentenyladenine)、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)(uracil-5-oxyacetic acid (v))、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、シュードウラシル(pseudouracil)、キューオシン(queosine)、2-チオシトシン(2-thiocytosine)、5-メチル-2-チオウラシル(5-methyl-2-thiouracil)、2-チオウラシル(2-thiouracil)、4-チオウラシル(4-thiouracil)、5-メチルウラシル(5-methyluracil)、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル(uracil-5-oxyacetic acid methylester)、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル(3-(3-amino-3-N-2-carboxypropyl)uracil)及び2,6-ジアミノプリン(2,6-diaminopurine)が挙げられるが、それらに限定されない。代替的に、1以上の本発明の核酸は、例えば、Macromolecular Resources (Fort Collins、CO)及びSynthegen (Houston、TX)等の企業から購入され得る。
【0059】
核酸は、ポリペプチド、タンパク質、CAR、抗BCMA結合部分、複合体、又はそれらの機能的部分若しくは機能的変異体のいずれかをコードする、任意の単離又は精製されたヌクレオチド配列を含み得る。代替的に、ヌクレオチド配列は、該配列のいずれかに縮退した(is degenerate to)ヌクレオチド配列、又は縮退配列の組合せを含み得る。
【0060】
本発明の一実施形態はまた、本明細書に記載された核酸のいずれかのヌクレオチド配列に相補的であるヌクレオチド配列、又は本明細書に記載された核酸のいずれかのヌクレオチド配列にストリンジェント条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列、を含む単離又は精製された核酸を提供する。
【0061】
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列は、高ストリンジェンシーな条件下でハイブリダイズし得る。「高ストリンジェンシーな条件」とは、ヌクレオチド配列が、非特異的なハイブリダイゼーションよりも強く検出できる量で、標的配列(本明細書に記載の核酸のいずれかのヌクレオチド配列)に特異的にハイブリダイズすることを意味する。高ストリンジェンシーな条件には、ヌクレオチド配列と一致するほんの僅かな小さな領域(例えば、3〜10塩基)を偶然有するランダム配列から、正確に相補的な配列を有するポリヌクレオチド又は散在する僅かなミスマッチを含むに過ぎないポリヌクレオチドを区別する条件が含まれる。そのような相補性の小領域は、14〜17塩基又はそれ以上の完全長の相補体よりも容易に融解し、高ストリンジェンシーなハイブリダイゼーションによりそれらが容易に区別され得る。比較的に高ストリンジェンシーな条件には、例えば、例、約50〜70℃の温度での、約0.02〜0.1MのNaCl又はそれと同等なものによって提供される等の、低塩条件及び/又は高温条件が含まれる。そのような高ストリンジェンシーな条件は、ヌクレオチド配列と鋳型又は標的鎖との間のミスマッチがあれば、殆んど許容せず、本発明の本発明のポリペプチド、タンパク質、CAR、抗BCMA結合部分、複合体、又はそれらの機能的部分若しくは機能的変異体のいずれかの発現を検出するのに特に適している。ホルムアミド添加量を増加することにより、条件をよりストリンジェントにし得ることは一般的に理解されている。
【0062】
本発明はまた、本明細書に記載された核酸のいずれかに対して、少なくとも約70%以上、例、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。
【0063】
一実施形態においては、本発明の核酸は、組換え発現ベクターに組み込むことができる。これに関して、本発明の一実施形態は、本発明の核酸のいずれかを含む組換え発現ベクターを提供する。本明細書の目的のためには、用語「組換え発現ベクター」は、コンストラクトがmRNA、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、細胞内でmRNA、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドを発現させるために十分な条件下でベクターを細胞と接触させるとき、宿主細胞によって、mRNA、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドの発現を可能にする、遺伝的に改変されたオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドのコンストラクトを意味する。本発明のベクターは全体として天然で生じるものではない。しかしながら、ベクターの部分は天然に生じ得る。本発明の組換え発現ベクターは、一本鎖又は二本鎖であり得、天然のソースから部分的に合成又は取得され得、天然、非天然又は改変されたヌクレオチドを含み得る、DNA及びRNAを含むが、それらに限定されない任意の型のヌクレオチドを含み得る。該組換え発現ベクターは、天然で生じるヌクレオチド間結合、天然で生じないヌクレオチド間結合、又はその両方の型の結合を含み得る。好ましくは、非天然で生じた又は改変された、ヌクレオチド又はヌクレオチド間結合は、ベクターの転写又は複製を妨害しない。
【0064】
一実施形態においては、本発明の組換え発現ベクターは、任意の好適な組換え発現ベクターであり得、任意の好適な宿主細胞を形質転換又はトランスフェクトするために用い得る。好適なベクターとしては、例えばプラスミド及びウイルス等の増殖及び増幅(expansion)のため若しくは発現のため、又はその両方のために設計されたものが挙げられる。該ベクターは、pUCシリーズ(Fermentas Life Sciences, Glen Burine, MD)、pBluescriptシリーズ(Stratagene, LaJolla, CA)、pETシリーズ(Novagen, Madison, WI)、pGEXシリーズ(Pharmacia Biotech, Uppsala, Sweden)及びpEXシリーズ(Clonetech, Palo Alto, CA)からなる群から選択され得る。バクテリオファージベクター、例えば、λGT10、λGT11、λZapII(Stratagene)、λEMBL4及びλNM1149等もまた使用され得る。植物発現ベクターの例としては、pBI01、pBI101.2、pBI101.3、pBI121及びpBIN19(Clonetech)が挙げられる。動物発現ベクターの例としては、pEUK-C1、pMAM及びpMAMneo(Clonetech)が挙げられる。組換え発現ベクターはウイルスベクター、例、レトロウイルスベクターであり得る。
【0065】
一般的に多くのトランスフェクション技術が、当該技術分野において公知である。トランスフェクション方法としては、リン酸カルシウム共沈殿、培養細胞への直接的なマイクロインジェクション、電気穿孔法、リポソーム媒介遺伝子導入、脂質媒介形質導入及び高速マイクロプロジェクタイルを用いた核酸送達が挙げられる。
【0066】
一実施形態においては、本発明の組換え発現ベクターは、例えばGreen(上記)に記載されている標準的な組換えDNA技術を用いて調製され得る。環状又は線状である発現ベクターのコンストラクトは、原核又は真核宿主細胞において機能的である複製システムを含むように調製され得る。複製システムは、例えばColE1、2μプラスミド、λ、SV40、ウシパピローマウイルス等に由来し得る。
【0067】
組換え発現ベクターは、適宜、ベクターがDNAベースであるか、又はRNAベースであるかを考慮して、ベクターが導入される宿主細胞(例、細菌、真菌、植物又は動物)の型に特異的な、例えば転写の、並びに翻訳の開始及び終止コドン等の、制御配列を含み得る。組換え発現ベクターは、クローニングを促進するために制限酵素認識部位を含み得る。
【0068】
組換え発現ベクターは、形質転換又はトランスフェクトした宿主細胞の選択を可能にする1以上のマーカー遺伝子を含み得る。マーカー遺伝子としては、殺生物剤耐性、例、抗生物質、重金属等に対する耐性、原栄養性を提供するための栄養要求性宿主における相補等が挙げられる。本発明の発現ベクターにとって好適なマーカー遺伝子としては、例えばネオマイシン/G418耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ヒスチジノール耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子及びアンピシリン耐性遺伝子が挙げられる。
【0069】
組換え発現ベクターは、ポリペプチド、タンパク質、CAR、抗BCMA結合部分、複合体、又はそれらの機能的部分若しくは機能的変異体をコードするヌクレオチド配列、或いは本発明のポリペプチド、タンパク質、CAR、抗BCMA結合部分、複合体、又はそれらの機能的部分若しくは機能的変異体をコードするヌクレオチド配列、に相補的であるか又はハイブリダイズするヌクレオチド配列に作動可能に連結した、ネイティブ又は非ネイティブのプロモーターを含み得る。プロモーターの選択、例、強、弱、誘導性、組織特異性及び発生段階特異性は、当業者の通常の技術の範囲内である。同様に、ヌクレオチド配列とプロモーターとの組み合わせも当業者の通常の技術の範囲内である。プロモーターは、非ウイルスプロモーター又はウイルスプロモーター、例、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40プロモーター、RSVプロモーター、又はマウス幹細胞ウイルスの長い末端反復に見出されるプロモーターであり得る。
【0070】
本発明の組換え発現ベクターは、一過性の発現のため、安定した発現のためのいずれか、又はその両方のために、設計され得る。また、組換え発現ベクターは構成的発現のため又は誘導的発現のために作製され得る。
【0071】
更に、組換え発現ベクターは自殺遺伝子を含むよう作製され得る。本明細書において用いられる場合、用語「自殺遺伝子」は、自殺遺伝子を発現する細胞を死滅させる遺伝子を指す。自殺遺伝子は、遺伝子を発現する細胞に、試薬、例えば、薬剤、に対する感受性を付与し、細胞がその試薬と接触若しくはそれに対して曝露される場合に細胞を死滅させる遺伝子であり得る。自殺遺伝子は、当該技術分野で公知であり、例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、シトシンデアミナーゼ(cytosine daminase)、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ及びニトロレダクターゼが挙げられる。
【0072】
本発明の一実施形態は、本明細書に記載された組換え発現ベクターのいずれかを含む宿主細胞をさらに提供する。本明細書において用いられる場合、用語「宿主細胞」は、本発明の組換え発現ベクターを含み得る任意の型の細胞を指す。宿主細胞は、真核細胞、例、植物、動物、菌類若しくは藻類であり得、又は原核細胞、例、バクテリア又は原生動物であり得る。宿主細胞は、培養細胞又は初代細胞、すなわち生物、例、ヒトから直接単離し得る。宿主細胞は、付着細胞又は懸濁細胞、すなわち懸濁液中で増殖する細胞であり得る。好適な宿主細胞は当該技術分野で公知であり、例、DH5α大腸菌細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、サルVERO細胞、COS細胞、HEK293細胞等が挙げられる。組換え発現ベクターを増幅又は複製する目的のために、宿主細胞は原核細胞、例、DH5α細胞であり得る。組換えポリペプチド、タンパク質、CAR、抗BCMA結合部分、複合体、又はそれらの機能的部分若しくは機能的変異体を産生する目的のために、宿主細胞は哺乳動物細胞であり得る。宿主細胞はヒト細胞であり得る。宿主細胞は任意の細胞型であり得、任意の型の組織に由来し得、任意の発生段階であり得る一方、宿主細胞は末梢血リンパ球(PBL)又は末梢血単核細胞(PBMC)であり得る。宿主細胞はB細胞又はT細胞であり得る。
【0073】
本明細書の目的のために、T細胞は、例えば培養T細胞、例、初代T細胞、又は培養T細胞株由来のT細胞、例、Jurkat、SupT1等、又は哺乳動物から得られたT細胞等の任意のT細胞であり得る。哺乳動物から得られる場合、T細胞は、血液、骨髄、リンパ節、胸腺又は他の組織若しくは体液を含むが、これらに限定されない多数のソースから得ることができる。T細胞はまた、濃縮又は精製され得る。T細胞はヒトT細胞であり得る。T細胞はヒトから単離されたT細胞であり得る。T細胞は、CD4
+/CD8
+二重陽性T細胞、CD4
+ヘルパーT細胞、例、Th
1及びTh
2細胞、CD8
+T細胞(例、細胞傷害性T細胞)、腫瘍浸潤細胞、記憶T細胞、ナイーブT細胞等を含むが、これらに限定されない、任意の型のT細胞であり得、任意の発生段階のT細胞であり得る。T細胞はCD8
+T細胞又はCD4
+T細胞であり得る。
【0074】
本発明の一実施形態によって、本明細書に記載された少なくとも1の宿主細胞を含む細胞集団がまた提供される。細胞集団は、少なくとも1の他の細胞、例、組換え発現ベクターのいずれも含まない宿主細胞(例、T細胞)、又はT細胞以外の細胞、例、B細胞、マクロファージ、好中球、赤血球、肝細胞、内皮細胞、上皮細胞、筋肉細胞、脳細胞等に加え、記載された組換え発現ベクターのいずれかを含む宿主細胞を含む、不均一な集団であり得る。代替的に、細胞集団は、集団が組換え発現ベクターを含む宿主細胞を主に含む(例、本質的にそれからなる)、実質的に均質な集団であり得る。集団はまた、集団の全ての細胞が組換え発現ベクターを含むように、集団の全ての細胞が組換え発現ベクターを含む単一の宿主細胞のクローンである、細胞のクローン集団であり得る。本発明の一実施形態においては、細胞集団は、本明細書に記載された組換え発現ベクターを含む宿主細胞を含むクローン集団である。
【0075】
ポリペプチド、タンパク質、CAR (それらの機能的部分及び変異体を含む)、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞 (その集団を含む)、抗BCMA結合部分及び複合体(これらの全ては、以後、「本発明の抗BCMA材料」として集合的に言及される)は、単離及び/又は精製され得る。本明細書において用いられる場合、用語「単離された」は天然環境から取り出されていることを意味する。用語「精製された」又は「単離された」は絶対的な純度又は単離を必要としない;むしろ相対的な用語として意図される。従って、例えば、精製された(又は単離された)宿主細胞の調整物は、宿主細胞が、体内における自然な環境での細胞よりも純度が高いものである。そのような宿主細胞は、例えば、標準的な精製技術によって生成され得る。幾つかの実施形態においては、宿主細胞が、調整物の総細胞含有量の少なくとも約50%、例えば、少なくとも約70%となるように、宿主細胞の調整物が精製される。例えば、純度は少なくとも約50%であり得、約60%、約70%若しくは約80%より高いものであり得、又は約100%であり得る。
【0076】
本発明の抗BCMA材料は、例えば医薬組成物等の組成物に製剤化され得る。これに関して、本発明の一実施形態は、本明細書に記載された本発明の抗BCMA材料のいずれか、及び医薬的に許容される担体を含む、医薬組成物を提供する。本発明の抗BCMA材料のいずれかを含む本発明の医薬組成物は、1超の本発明の抗BCMA材料、例、複合体及び核酸、又は2以上の異なる複合体を含み得る。代替的に、医薬組成物は、例えば、化学療法剤、例、アスパラギナーゼ(asparaginase)、ボルテゾミブ(bortezomib) (例、VELCADEボルテゾミブ(VELCADE bortezomib))、ブスルファン(busulfan)、カルボプラチン(carboplatin)、シスプラチン(cisplatin)、ダウノルビシン(daunorubicin)、デキサメタゾン(dexamethasone)、ドキソルビシン(doxorubicin)、フルオロウラシル(fluorouracil)、ゲムシタビン(gemcitabine)、ヒドロキシウレア(hydroxyurea)、レナリドマイド(lenalidomide)、メルファラン(melphalan)、メトトレキセート(methotrexate)、パクリタキセル(paclitaxel)(例、アブラキサンパクリタキセル(ABRAXANE paclitaxel))、リツキシマブ(rituximab)、ビンブラスチン(vinblastine)、ビンクリスチン(vincristine)等の他の医薬的に活性な剤又は薬剤と組合せた、本発明の抗BCMA材料を含み得る。好ましい実施形態においては、医薬組成物は本発明の複合体を含む。好ましくは、他の医薬的に活性な剤又は薬剤は、メルファラン、ボルテゾミブ、レナリドマイド、デキサメタゾン又はパクリタキセルである。
【0077】
本発明の抗BCMA材料は、塩、例、医薬的に許容される塩の形態で提供され得る。好適な医薬的に許容される酸付加塩としては、例えば塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸及び硫酸等の鉱酸、並びに例えば、酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸及びアリールスルホン酸、例えば、p-トルエンスルホン酸等の有機酸に由来するものが挙げられる。
【0078】
医薬組成物に関して、医薬的に許容される担体は従来から使用されるもののいずれかであり得、例えば溶解性及び活性剤(複数可)との反応性の欠如等の化学物理的考察、並びに投与の経路によってのみ制限される。本明細書に記載された医薬的に許容される担体、例えば、ビヒクル、アジュバント、賦形剤及び希釈剤は、当業者に周知であり、一般に容易に入手可能である。医薬的に許容される担体は、活性剤(複数可)に対して化学的に不活性なもの及び使用の条件下で有害な副作用又は毒性を有さないものであることが好ましい。
【0079】
担体の選択は、特定の本発明の抗BCMA材料によって、及び本発明の抗BCMA材料を投与するために用いられる特定の方法によって、ある程度決定される。従って、本発明の医薬組成物の様々な好適な製剤がある。防腐剤が使用され得る。好適な防腐剤としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム及び塩化ベンザルコニウムが挙げられ得る。2以上の防腐剤の混合物が、任意で使用され得る。防腐剤又はその混合物は、典型的には、組成物全体の約0.0001重量%〜約2重量%の量で存在する。
【0080】
好適な緩衝剤としては、例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸、リン酸カリウム、並びに様々な他の酸及び塩が挙げられ得る。2以上の緩衝剤の混合物が、任意で使用され得る。緩衝剤又はその混合物は、典型的には、組成物全体の約0.001重量%〜約4重量%の量で存在する。
【0081】
医薬製剤中の本発明の抗BCMA材料の濃度は、選択した特定の投与様式に従って、例、約1重量%未満から、通常、約10重量%、又は少なくとも約10重量%で、例えば、約20重量%〜約50重量%以上までで変動し得、主に液体の量や粘性によって選択され得る。
【0082】
投与可能な(例、非経口的に投与可能な)組成物を調製するための方法は、公知であるか、又は当業者にとって明らかなものであり、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Pharmaceutical Press;第22版 (2012)においてより詳細に記載されているものである。
【0083】
経口、エアロゾル、非経口(例、皮下、静脈内、動脈内、筋肉内、皮内、腹腔内及びくも膜下腔内)並びに局所投与のための以下の製剤は単なる例示的なものであり、決して限定的ではない。本発明の抗BCMA材料を投与するために、1超の経路が使用され得、ある場合においては、特定の経路が、別の経路よりも迅速で、効果的な応答を提供し得る。
【0084】
経口投与に好適な製剤は、(a)例えば水、生理食塩水若しくはオレンジジュース等の希釈剤に溶解した、例えば有効量の本発明の抗BCMA材料等の液体溶液;(b)所定量の有効成分を固体又は顆粒としてそれぞれ含むカプセル、サシェ(sachets)、錠剤、薬用キャンディー及びトローチ;(c)粉末;(d)適切な液体中の懸濁液;並びに(e)好適な乳濁液、を含み得るか、又はそれからなり得る。液体製剤としては、医薬的に許容される界面活性剤の添加あり又はなしのいずれかの、例えば水及びアルコール類、例、エタノール、ベンジルアルコール、及びポリエチレンアルコール類等の希釈剤、が挙げられ得る。カプセル形態は、例えば、界面活性剤、滑沢剤、並びに例えばラクトース、スクロース、リン酸カルシウム及びトウモロコシデンプン等の不活性充填剤を含む、通常のハード又はソフトシェルゼラチンタイプのものであり得る。錠剤形態は、ラクトース、スクロース、マンニトール、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸、微晶質のセルロース、アカシア、ゼラチン、グアーガム、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、及び他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、崩壊剤、湿潤剤、防腐剤、香味剤、並びに他の医薬学的に適合する賦形剤の1以上を含み得る。薬用キャンディー形態は、例えばゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアカシア等の、本発明の抗BCMA材料を不活性基剤中に含むトローチ剤と同様、香味剤、通常はスクロース及びアカシア又はトラガカント、中の本発明の抗BCMA材料に加えて、当該技術分野で公知の賦形剤を含有する乳濁液及びゲル等を含み得る。
【0085】
非経口投与に好適な製剤としては、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤及び製剤を意図されたレシピエントの血液と等張にする溶質を含み得る、水性及び非水性の等張滅菌注射溶液、並びに懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤及び防腐剤を含み得る水性及び非水性の滅菌懸濁液が挙げられる。本発明の抗BCMA材料は、医薬的に許容される、例えば石鹸若しくは洗剤等の界面活性剤、例えばペクチン、カルボマー、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース若しくはカルボキシメチルセルロース等の懸濁化剤、又は乳化剤及び他の医薬的アジュバントの添加あり又はなしで、例えば水、生理食塩水、水性デキストロース及び関連する糖溶液を含む滅菌液又は混合液、例えばエタノール、若しくはヘキサデシルアルコール等のアルコール、例えばプロピレングリコール若しくはポリエチレングリコール等のグリコール、ジメチルスルホキシド、グリセロール、例えば2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノール等のケタール、エーテル、ポリ(エチレングリコール)400、油、脂肪酸、脂肪酸エステル若しくはグリセリド、又はアセチル化された脂肪酸グリセリド等の医薬担体中の生理学的に許容される希釈剤中で投与され得る。
【0086】
非経口製剤において使用され得る油としては、石油、動物油、植物油又は合成油が挙げられる。油の具体的な例としては、ピーナッツ、大豆、ゴマ、綿実、トウモロコシ、オリーブ、ペトロラタム(petrolatum)及びミネラルが挙げられる。非経口製剤中での使用のために好適な脂肪酸としては、オレイン酸、ステアリン酸及びイソステアリン酸が挙げられる。オレイン酸エチル及びミリスチン酸イソプロピルは、好適な脂肪酸エステルの例である。
【0087】
非経口製剤中での使用のために好適な石鹸としては、脂肪族アルカリ金属塩、アンモニウム塩及びトリエタノールアミン塩が挙げられ、好適な界面活性剤としては、(a)陽イオン性界面活性剤、例えば、例、ジメチルジアルキルアンモニウムハライド及びアルキルピリジニウムハライド等、(b)陰イオン性界面活性剤、例えば、例、アルキル、アリール、及びオレフィンスルホン酸塩、アルキル、オレフィン、エーテル、及びモノグリセリド硫酸塩、及びスルホコハク酸塩等、(c)非イオン性界面活性剤、例えば、例、脂肪族アミンオキシド、脂肪酸アルカノールアミド、及びポリオキシエチレンポリプロピレン・コポリマー等、(d)両性界面活性剤、例えば、例、アルキル-β-アミノプロピオン酸塩、及び2-アルキル-イミダゾリン第4級アンモニウム塩等、並びに(e)それらの混合物が挙げられる。
【0088】
典型的には、非経口製剤は、例えば溶液中に約0.5重量%〜約25重量%の本発明の抗BCMA材料を含む。防腐剤及び緩衝剤が使用され得る。注射部位での炎症を最小限に抑えるか、又は排除するために、そのような組成物は、例えば約12〜約17の親水性-親油性バランス (HLB)を有する、1以上の非イオン性界面活性剤を含み得る。そのような製剤における界面活性剤の量は、典型的には、、例えば約5重量%〜約15重量%の範囲である。好適な界面活性剤としては、例えばソルビタンモノオレエート、及びプロピレンオキシド及びプロピレングリコールの縮合によって形成される疎水性塩基との、エチレンオキシドの高分子量付加物等のポリエチレングリコール・ソルビタン脂肪酸エステルが挙げられる。非経口製剤は、単位用量又は複数用量で、例えばアンプル及びバイアル等の密封容器中に存在し得、注射用として使用の直前に、滅菌液体賦形剤、例えば水の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥された)状態で保管され得る。即時注射溶液及び懸濁液は、以前に記載された種類の滅菌粉末、顆粒及び錠剤から調製され得る。
【0089】
注射可能な製剤は、本発明の一実施形態に従う。注射可能な組成物のための効果的な医薬的な担体の必要条件は当業者に周知である(例、A Practical Guide to Contemporary Pharmacy Practice、第3版、Lippincott Williams and Wilkins, Philadelphia, PA, Thompson and Davidow編集 (2009)、及びHandbook on Injectable Drugs, Trissel、第16版(2010)を参照)。
【0090】
経皮薬剤放出に有用であるものを含む、局所製剤は当業者に周知であり、発明の実施形態の文脈において、皮膚への適用のために好適である。本発明の抗BCMA材料単独で、又は他の好適な構成要素と組合せて、吸入により投与されるエアロゾル製剤を作製し得る。これらのエアロゾル製剤は、例えば、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素等の、加圧された許容可能な推進剤中に詰められ得る。それらはまた、例えばネブライザー(nebulizer)又はアトマイザー(atomizer)等の中で、非加圧製剤用医薬品として製剤化され得る。そのようなスプレー製剤はまた、粘膜に噴霧するために使用され得る。
【0091】
「有効量の」又は「治療有効量の」は、個体におけるがんを予防又は治療するために十分な用量を指す。治療又は予防用途に有効である量は、例えば、治療されている疾患又は病気のステージや深刻度、患者の年齢、体重及び一般的健康状態、並びに処方医師の判断に依存する。用量のサイズはまた、選択された活性、投与方法、投与のタイミングと頻度、特定の活性の投与に伴って起こり得る有害な任意の副作用の存在、性質及び程度、並びに所望の生理学的効果によって決定される。様々な疾患又は病気が、本発明の抗BCMA材料を使用した投与の各々のラウンド又は様々なラウンドにおいて、恐らく複数回の投与を含む延長した治療が必要となる場合があることは、当業者によって理解される。例として、発明を限定することを意図することなく、本発明の抗BCMA材料の用量は、1日につき、治療する対象の体重1kgあたり約0.001〜約1000 mg、約0.01〜約10 mg/kg体重/日、約0.01 mg〜約1 mg/kg体重/日であり得る。
【0092】
本発明の目的のために、投与される本発明の抗BCMA材料の量又は用量は、合理的な時間枠に亘り、対象又は動物における治療的又は予防的応答をもたらすために十分であるべきである。例えば、本発明の抗BCMA材料の用量は、投与した時間から、約2時間以上、例、約12〜約24時間以上の期間で、抗原に結合するか、又は疾患を検出、治療若しくは予防するために十分であるべきである。ある実施形態においては、期間は更に長くなる場合がある。用量は、特定の本発明の抗BCMA材料の効能及び動物(例、ヒト)の状態、並びに治療される動物(例、ヒト)の体重によって決定される。
【0093】
本発明の目的のために、例えば、本発明の抗BCMA材料の様々な用量がそれぞれ与えられた1組の哺乳動物間で、哺乳動物に対する本発明の抗BCMA材料のある特定の用量が投与された場合に、標的細胞が殺される程度を比較することを含むアッセイが、哺乳動物に投与する開始用量を決定するために使用され得る。ある用量が投与された場合に標的細胞が殺される程度は、当該技術分野において公知の方法によって評価され得る。
【0094】
上記(aforedescribed)の医薬組成物に加え、本発明の抗BCMA材料は、例えばシクロデキストリン包接錯体等の包接錯体、又はリポソームとして製剤化され得る。リポソームは、本発明の抗BCMA材料を特定の組織に向かわせるように働き得る。リポソームはまた、本発明の抗BCMA材料の半減期を増加させるために使用し得る。リポソームを調製するための、多くの方法が利用可能である。
【0095】
本発明の実施形態の文脈において有用である送達システムとしては、本発明の組成物の送達が、治療される部位の感作の前に起こり、感作を起こすのに十分な時間であるように、徐放性、遅延放出性及び持続放出性送達系が挙げられ得る。本発明の組成物は、他の治療剤又は治療と共に使用され得る。そのようなシステムによって、本発明の組成物を繰り返し投与することを避けることができ、それにより対象及び医師に対する利便性が上昇し、本発明の実施形態のある組成物にとって特に好適であり得る。
【0096】
多くの種類の放出送達システムが利用でき、当業者に公知である。それらとしては、例えばポリ(ラクチド−グリコリド)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシ酪酸及びポリ無水物等のポリマーベースのシステムが挙げられる。送達システムとしては、例えばコレステロール等のステロール、コレステロールエステル、並びに例えばモノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリド等の脂肪酸又は中性脂肪を含む脂質である非ポリマーシステム;ヒドロゲル放出システム;シラスティック(sylastic)システム;ペプチドベースのシステム;ワックスコーティング;従来の結合剤及び賦形剤を使用した圧縮錠;部分的に融合したインプラント;等がまた挙げられる。特定の例としては:(a)活性組成物がマトリクス内部の形態で含まれる浸食システム、及び(b)活性のある構成要素がポリマーから調節された速度で浸透する拡散システムが挙げられるが、それらに限定されない。加えて、ポンプベースのハードウェアでの送達システムが使用され得、それらの幾つかは注入するために適合している。
【0097】
本発明の抗BCMA材料の治療又は予防効能が改変によって上昇するよう、本発明の抗BCMA材料(the inventive anti-BCMA materials of the invention)を任意の数の方法で改変し得ることを、当業者は容易に理解する。例えば、本発明の抗BCMA材料が、投与された身体に放出される様式が、時間及び体内の位置に関して調節されるよう、本発明の抗BCMA材料はデポ(depot)形態に改変され得る。本発明の抗BCMA材料のデポ形態は、例えば、本発明の抗BCMA材料と、例えばポリマー等の多孔質又は非多孔質材料とを含む、注入可能な組成物であり得、本発明の抗BCMA材料は封入されているか、又は材料及び/若しくは非多孔質材料の分解によって拡散する。次いで、デポは体内の所望の位置に注入され、本発明の抗BCMA材料は所定の速度でインプラントから放出される。
【0098】
本発明の抗BCMA材料が、1以上の追加的な治療剤と共に投与される場合、1以上の追加的な治療剤が哺乳動物に共投与され得る。「共投与」は、本発明の抗BCMA材料が1以上の追加的な治療剤の効果を促進し得るように、又はその逆であるように、十分に近い時間で、1以上の追加的な治療剤と本発明の抗BCMA材料とを投与すること意味する。これに関して、本発明の抗BCMA材料が最初に投与され得、1以上の追加的な治療剤が二番目に投与され得るか、又はその逆である。代替的に、本発明の抗BCMA材料と1以上の追加的な治療剤とが、同時に投与され得る。抗BCMA材料と共に共投与され得る例示的な治療剤としては、本発明の他の態様に関して本明細書に記載された化学療法剤が挙げられる。本発明の方法の目的のために、宿主細胞又は細胞集団が哺乳動物に投与され、該細胞は哺乳動物に対して同種異系又は自己である細胞であり得る。
【0099】
本発明の抗BCMA材料及び医薬組成物は、哺乳動物におけるがんを治療又は予防する方法において使用され得ると考えられる。特定の理論又は機構に拘束されることはないが、抗BCMA材料が標的細胞又は標的組織にエフェクター分子を向かわせ得るように、本発明の抗BCMA材料は、生物学的活性、例、抗原、例、BCMAを認識する能力を有する。これに関して、本発明の一実施形態は、哺乳動物におけるがんを治療又は予防する方法であって、哺乳動物におけるがんを治療又は予防するために有効な量で、本発明のポリペプチド、タンパク質、CAR、機能的部分、機能的変異体、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、抗BCMA結合部分、複合体及び/又は医薬組成物のいずれかを哺乳動物に投与することを含む、方法を提供する。
【0100】
本発明の一実施形態は、本発明の抗BCMA材料(複数可)を投与することに先立って、哺乳動物においてリンパ枯渇させることを更に含む。リンパ枯渇の例としては、非骨髄抑制性リンパ枯渇化学療法、骨髄抑制性リンパ枯渇化学療法、全身放射線照射等が挙げられるが、それらに限定されない。
【0101】
本発明の方法の目的のために、宿主細胞又は細胞集団が投与され、該細胞は、哺乳動物に対して同種異系又は自己である細胞であり得る。好ましくは、該細胞は哺乳動物に対して自己である。
【0102】
本明細書で言及した哺乳動物は、任意の哺乳動物であり得る。本明細書において用いられる場合、用語「哺乳動物」は、例えばマウス及びハムスター等のネズミ目の哺乳動物、並びに例えばウサギ等のウサギ目の哺乳動物を含むが、これらに限定されない任意の哺乳動物を指す。哺乳動物はネコ科(ネコ)及びイヌ科(イヌ科)を含むネコ目由来であり得る。哺乳動物はウシ科(ウシ)及びイノシシ科(ブタ)を含むウシ目、又はウマ科(ウマ)を含むウマ目由来であり得る。哺乳動物は霊長目、セボイド目若しくはシモイド目(サル)又は類人目(ヒト及び類人猿)であり得る。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0103】
本発明の方法に関して、がんは、急性リンパ球性がん、急性骨髄性白血病、横紋筋肉腫、膀胱がん(例、膀胱がん)、骨がん、脳がん(例、髄芽細胞種、神経芽細胞腫及び神経膠芽細胞腫)、乳がん、肛門、肛門管又は肛門直腸のがん、目のがん、肝内胆管のがん、関節のがん、首、胆嚢又は胸膜のがん、鼻、鼻腔又は中耳のがん、口腔のがん、外陰部のがん、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄がん、結腸がん、DLBCLリンパ腫、ユーイング肉腫、食道がん、子宮頚がん、線維肉腫、胃腸カルチノイド腫瘍、頭部及び頸部のがん (例、頭部と頸部扁平上皮がん)、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、腎臓がん、喉頭がん、白血病、液性腫瘍、肝臓がん、肺がん(例、 非小細胞性肺がん)、リンパ腫、悪性中皮腫、肥満細胞腫、メラノーマ、多発性骨髄腫、鼻咽頭がん、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、Bリンパ球性慢性白血病、毛様細胞白血病、急性リンパ球性白血病 (ALL)リンパ腫、及びバーキットリンパ腫、卵巣がん、膵臓がん、腹膜、大網及び腸間膜のがん、咽頭がん、前立腺がん、直腸がん、腎臓がん、皮膚がん、小腸がん、軟組織がん、固形腫瘍、胃がん、精巣がん、甲状腺がん、及び子宮がんのいずれかを含む、任意のがんであり得る。好ましくは、がんは、バーキットリンパ腫、DLBCLリンパ腫、ALLリンパ腫、ホジキンリンパ腫又は多発性骨髄腫である。一実施形態においては、がんは、BCMAの発現又は過剰発現によって特徴付けられる。
【0104】
本明細書において用いられる場合、用語「治療」及び「予防」、並びにそれに由来する用語は、必ずしも100%又は完全な治療若しくは予防を意味しない。むしろ、当業者が潜在的な利益又は治療効果を有すると認識する、治療又は予防の様々な程度がある。これに関して、本発明の方法は、哺乳動物における、任意の量又は任意のレベル(any amount of any level)のがんの治療又は予防を提供し得る。更には、本発明の方法によって提供される治療又は予防は、治療又は予防されている、疾患、例、がんの1以上の状態又は症状の治療又は予防を含み得る。また、本明細書の目的のために、「予防」は、がん、又はその症状若しくは状態の発症を遅延させること、或いは、がんの再発を遅延又は予防することを含み得る。
【0105】
本発明の別の実施形態は、哺乳動物における、がんの治療又は予防のための、本発明のポリペプチド、タンパク質、CAR、機能的部分、機能的変異体、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、抗BCMA結合部分、複合体又は医薬組成物のいずれかの使用を提供する。
【0106】
本発明の別の実施形態は、哺乳動物におけるがんの存在を検出する方法であって、以下:(a)哺乳動物に由来する1以上の細胞を含む試料と、本発明のポリペプチド、タンパク質、CAR、機能的部分、機能的変異体、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、抗BCMA結合部分又は複合体のいずれかとを接触させ、それにより複合体を形成すること、及び(b)該複合体の検出が哺乳動物におけるがんの存在を示す、複合体を検出すること、を含む方法を提供する。
【0107】
試料は、任意の好適な方法、例、生検又は剖検によって取得し得る。生検は、個体から組織及び/又は細胞を回収することである。そのような回収は、回収された組織及び/又は細胞に対して実験を行うために、個体から組織及び/又は細胞を集収することであり得る。この実験は、個体がある状態又は疾患状態を有するか、及び/又はそれらを患っているかどうかを決定するための実験を含み得る。状態又は疾患は、例、がんであり得る。
【0108】
哺乳動物におけるがんの存在を検出する本発明の方法の一実施形態に関して、哺乳動物の細胞を含む試料は、全細胞、その溶解物、又は全細胞の溶解物の画分、例、核若しくは細胞質の画分、全タンパク質の画分、又は核酸の画分を含む試料であり得る。試料が全細胞を含む場合、該細胞は、哺乳動物の任意の細胞、例、血液細胞又は内皮細胞を含む、任意の器官又は組織の細胞であり得る。
【0109】
本発明の検出方法の目的のために、接触は、哺乳動物に関して、in vitro又はin vivoで行われ得る。好ましくは、接触はin vitroである。
【0110】
また、複合体の検出は、当該技術分野において公知である任意の数の方法によっておこり得る。例えば、本明細書に記載された本発明のCAR、ポリペプチド、タンパク質、機能的部分、機能的変異体、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、抗BCMA結合部分又は複合体は、例えば、例、放射性同位元素、フルオロフォア (例、フルオレセインイソチオシアネート (FITC)、フィコエリトリン (PE))、酵素 (例、アルカリフォスファターゼ、セイヨウワサビ・ペルオキシダーゼ)及び元素粒子(例、金粒子)等の検出可能な標識を用いて標識され得る。
【0111】
以下の実施例は本発明について更に説明するが、もちろん、決して発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0112】
実施例1〜11に記載された実験において、以下の材料及び方法を使用した。
【0113】
プラスミド
BCMA (TNFRSF17)cDNAをクローニングし、一組の発現ベクターを構築した。一方のベクターは、完全長ヒトBCMAをコードし、他方は、ウサギIgG重鎖のFc領域(CH2及びCH3ドメイン)に融合したヒトBCMAの細胞外ドメイン(残基1〜54)、並びにヒンジ領域をコードした。最初に、ヒトBCMAの完全長cDNAを、サイトメガロウイルスプロモーターの制御下にある哺乳動物発現ベクターであるpcDNA6 (Invitrogen, Carlsbad, CA)にクローニングし、pcDNA6/BCMAを生成した。Fc-融合タンパク質について、ヒトBCMAの細胞外ドメインをコードするDNAフラグメントをPCRにより増幅し、EcoRI及びBglIIにより消化し、pFUSE-rFc1発現ベクター (InvivoGen, San Diego, CA)にクローニングし、pFUSE/BCMA-rFcを生成した。
【0114】
細胞
10%ウシ胎児血清 (FBS)を補充したDMEM中で、293T細胞を増殖させた。P3U1骨髄腫細胞を、ハイブリドーマ形成のための融合パートナーとして使用し、15%ウシ胎児血清 (FBS)を含むIscove's Modified Dulbecco's培地 (IMDM, Invitrogen)中で維持した。
【0115】
組換えBCMA-rFc融合タンパク質の産生
BCMA-rFc融合タンパク質を発現する、安定な細胞株を樹立するために、製造業者の指示に従って、Plus試薬(Invitrogen)を含むLipofectamine LTXによって、pFUSE/BCMA-rFcで293T細胞をトランスフェクトした。200 mg/ml Zeocin抗生物質(Invitrogen)を含む培養培地中で、数回の限界希釈により、トランスフェクトした細胞を選択した。高い細胞密度を促進する2区画バイオリアクター、CELLINE AD 1000 (Wheaton, Millville, NJ)中で、ラージスケールでの産生のために、最高のBCMA-rFc発現を有する安定な細胞株を使用した。プロテインG-セファロース(Sepahrose)カラム(GE healthcare, Pittsburgh, PA)を用いて、BCMA-rFc融合タンパク質を精製した。
【0116】
免疫
雌性のBALB/cマウス(6週齢)を、最初の免疫のために、腹腔内に、TiterMax Goldアジュバント溶液 (Sigma-Aldrich, St Louis, MO)中の25μgの組換えBCMA-rFc融合タンパク質を用いて免疫し、続けてBCMA-rFc(アジュバントなし)を用いて5回免疫した。マウス血清の抗体価を細胞融合前にテストした。BCMAで免疫したマウスを追加免疫するために、100μgのBCMA-rFc(アジュバントあり)を、マウス腹腔内に注射した。細胞融合のために、最後の追加免疫後72時間(h)で脾臓を回収した。全ての動物を、施設のガイドラインに従って維持した。
【0117】
細胞融合及びハイブリドーマ培養
脾細胞及びP3U1細胞を、血清フリーのIMDMを用いて、それぞれ3回と2回洗浄した。脾細胞を計数し、P3U1と4:1の比で混合した。混合細胞を遠心分離し、細胞ペレットを、旋回させながら1分超の時間で一滴ずつ添加した、1mlの40%ポリエチレングリコール (PEG4000, EMD Millipore, Billerica, MA)中で再懸濁した。更に1分間旋回した後、懸濁液を、予熱した(37℃)IMDMを用いて、ゆっくり希釈した。得られた懸濁液を遠心分離し、細胞ペレットを、20%のFBS、1 mMピルビン酸ナトリウム、2 mM L-グルタミン、50μM 2-メルカプトエタノール、10μg/mlゲンタマイシン、8μg/mlウシインスリン、1μg/mlウシトランスフェリン、1 U/mlのヒトIL-6を補充したIMDM中で、2.5×10
6/mlで再懸濁した。細胞懸濁液を、1ウェル当たり2.5×10
5 細胞で、96ウェルプレート(pates)に播種し、CO
2インキュベーター内で培養した。融合の翌日に、100μlの新鮮なHAT培地を添加した。4及び7日目に、使用済みの培地の半分を新鮮なHAT培地で置換した。以下に記載のように、蛍光活性化細胞選別(FACS)スクリーニングによって、培養上清中の抗体産生を、10又は11日目にアッセイした。
【0118】
FACSスクリーニング
トランスフェクション実験のために、293T細胞を100 mmディッシュ(BD Biosciences, Bedford, MA)中に播種し、サブコンフルエントの密度で増殖させた。製造業者の指示に従って、Lipofectamine LX及びPlus試薬によって、ディッシュ毎に、pcDNA6/BCMA、pcDNA/TACI又はpcDNA6/BAFFR (6μg)をトランスフェクトした。24時間後、一時的にトランスフェクトした細胞を回収し、FACSスクリーニングのために使用した。細胞 (1〜5×10
5)を、FACSバッファー (5%FBS及び0.1%アジ化ナトリウムを含むPBS)中、ハイブリドーマ上清の段階希釈液と共に、氷上で1時間インキュベートした。FACSバッファーを用いて2回洗浄後、細胞を、1:200希釈したR-フィコエリトリン (PE)標識ヤギ抗マウスIgG F(ab')2 (Jackson Immuno Research Laboratories, West Grove, PA)と共に、30分間インキュベートした。2回洗浄後、細胞を、10 nM TO-PRO-3染色剤 (Invitrogen)を含む、180μlのFACSバッファー中で再懸濁し、BD Accuri C6フローサイトメーター (BD Biosciences)を使用して、生細胞と関連する蛍光を測定した。陽性ハイブリドーマクローンを24ウェルプレート(pates)に移した。最初のスクリーニングにおける偽陽性を除外するために、24ウェルの培養上清を移した2日後に再アッセイした。数ラウンドの限界希釈によって、特定のハイブリドーマをクローニングし、CELLINEフラスコ中で増殖させて、培養上清中のMabを回収した。樹立したモノクローナル抗体 (MAb)のアイソタイプを、マウスMAbアイソタイピング試薬 (Sigma-Aldrich)によって決定した。培養上清中の免疫グロブリン濃度を、サンドウィッチELISAによって決定した。
【0119】
ELISA
MaxiSorp 96ウェルELISAプレート (Nalge Nunc, Rochester, NY)を、1ウェル当たりPBS中の100 ngのヤギ抗ウサギIgG (Jackson Immuno Research Laboratories)を用いて、終夜4℃でコーティングした。ブロッキング後、1ウェル当たり5 ngのBCMA-rFc、TACI-rFC又はBAFFR-rFcをプレートに添加し、室温で2時間インキュベートした。洗浄後、4μg/mlのハイブリドーマ上清をプレートに添加し、室温で2時間インキュベートした。洗浄後、結合したMabを、アルカリフォスファターゼ (ALP)標識ヤギ抗マウスIgG (Jackson Immuno Research Laboratories)と1時間インキュベーションし、pニトロフェニルリン酸 (pNPP, Fisher Scientific, Pittsburgh, PA)と続けることによって、検出した。
【0120】
アフィニティーの決定
BCMAに対するMAbの結合キネティックスを、BLITZ (ForteBio, Menlo Park, CA)装置を用いたバイオレイヤー干渉法によって測定した。製造業者の指示に従って、BCMA-rFcを、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)及びN-エチル-N-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)を用いてセンサー表面を活性化したことに続けて、アミンカップリングによりアミン反応性第二世代バイオセンサーに対して固定した。MAbの段階希釈を、PBS(pH7.4)中における5つの異なる濃度で、センサー表面を流した。センサーグラムデータセットを、内臓のBLITZソフトウェアを用いて全体近似し(globally fit)、会合速度定数(K
a)、解離速度定数(Kd)及びアフィニティー定数(K
D)を決定した。
【0121】
実施例1
本実施例は、抗BCMA mAbを分泌するハイブリドーマの生成について実証する。
【0122】
最初の免疫のために、アジュバント中のBCMA-rFc融合タンパク質を用いて、マウスの腹腔内に免疫し、その後、アジュバントなしでBCMA-rFcを用いて、5回免疫した。BCMA-rFcで免疫したマウス由来の血清において、BCMA発現293T細胞に対する高い抗体力価(1:10,000)が検出された。高い力価を有するマウスに対して、アジュバントと共にBCMA-rFcを腹腔内に注射することによって最後の追加免疫を行い、3日後、その脾臓をP3U1骨髄腫と融合した。FACS分析によって、特異的なmAbの産生について、ハイブリドーマの培養上清をスクリーニングした。FACSスクリーニング後、11の陽性クローンを選択した。11のクローンの中では、BM303が、ネイティブの立体構造のBCMAに対して、最も高いアフィニティーを示した。アイソタイピング試験によって、選択したmAbの全てがκ軽鎖を有するIgG1であることが明らかになった。
【0123】
実施例2
本実施例は、BM24及びBM306抗体がBCMAに対して特異的に結合することについて実証する。
【0124】
抗BCMA mAbと、他のTNFRスーパーファミリーのメンバーとの交差反応性を試験するために、トランスフェクトした293T細胞によって発現したネイティブTNFR (BCMA、TACI又はBAFFR)に対する、各mAbの反応性を、飽和濃度で(4μg/ml)、FACSによってテストした。各mAbのTNFR-rFc融合タンパク質に対する反応性を、ELISAによってテストした。これらの結果は、両方のアッセイにおいて、5のmAb (BM101、BM226、BM303、BM309及びBM313)が、様々な程度で、TACIと交差反応性を示すが、BM14、BM24、BM201、BM219、BM222及びBM306の各々の結合は、BCMAに対して特異的であることを示した。
【0125】
実施例3
本実施例は、BM24及びBM306の結合キネティックスについて実証する。
【0126】
BM24及びBM306は、高いアフィニティー及び特異性をもって、細胞表面上のBCMA抗原に対して選択的に結合する。BCMA-rFcタンパク質に対する、これらの2の抗BCMA mAbの結合キネティックスを、バイオレイヤー干渉法によって測定した。BCMA-rFcを固定したセンサーに、段階希釈した抗BCMA MAb (20、10、5、2.5、1.25μg/ml)をアプライし、検出した。BLITZソフトウェアを用いて、リアルタイム生体分子相互作用解析を行った。結果を表1に示す。BM306は、BM24に比較して、高い会合速度定数(K
a)を示した。両方のmAbの解離定数(K
D)は1×10
-12より小さかった(検出限界を超えた)。
【0127】
【表1】
【0128】
実施例4
本実施例は、BM24及びBM306ハイブリドーマに由来するFvフラグメントのクローニングについて実証する。
【0129】
BM24及びBM306 mAbの両方は、IgG1アイソタイプのものである。IgG1アイソタイプ特異的オリゴプライマーを用いて、BM24及びBM306を発現するハイブリドーマから、該重鎖及び軽鎖をクローニングした。該アミノ酸配列の配列番号を表2に示す。
【0130】
【表2】
【0131】
実施例5
本実施例は、BM24及びBM306に由来するFvを使用した、PEベースの抗毒素の開発について実証する。
【0132】
Fab又はdsFvフラグメントのいずれかがPEのドメインIIIの変異体に連結した抗毒素を調製した。結果として得られた抗BCMA抗毒素を以下に列記する:
・LMB34:BM24-Fab-LO10R456A;
・LMB38:BM24-Fab-LR-GGS;
・LMB63:BM24-Fab-LR-GGS-T20;
・LMB64:BM24-Fab-LR-GGS-T20-KDEL;
・LMB70:BM306-Fab-LR-GGS;
・LMB75:BM306-dsFv-LR-GGS;
・LMB92:BM306-Fab-LO10R456A;
・LMB94:BM306-dsFv-GGSx4-PE24 (フリン部位なし);
・LMB103:BM306-Fab-LR-GGS-T20;及び
・LMB107:BM306-dsFv-PE38。
【0133】
実施例6
本実施例は、細胞株に対する抗BCMA抗毒素 (IT)の活性について実証する。
【0134】
BCMA発現細胞株及び4人の多発性骨髄腫患者に由来する細胞に対する抗BCMA抗毒素の活性を、WSTアッセイによってテストした。各抗毒素に対するIC
50値を表3にまとめる。野生型PE24-GGSを有するLMB38及びLMB70が、1.0〜1.5 ng/mlのIC
50で、BCMA発現H929細胞株に対して最も高い活性ITであった。
【0135】
【表3】
【0136】
実施例7
本実施例は、固定した用量での抗BCMA抗毒素の細胞傷害性について実証する。
【0137】
LMB38及びLMB70が実際に、単に増殖を阻害するというよりもむしろ細胞を殺傷するかをテストするために、BCMA陽性H929細胞を、毒素なしで(対照 (Ctrl))、又は100 ng/mlのLMB38若しくはLMB70と共に、2時間、4時間、6時間又は24時間インキュベートし、その後、洗浄し、新鮮な培地上でのインキュベートを続けた。抗毒素に曝露した後、様々な時点(日)で取得した細胞をトリパンブルー染色することによって、細胞殺傷活性を測定した。表4A及び4Bに示すように、細胞は100 ng/mlのLMB38に2時間曝露した後でさえ、全て死んだ(トリパンブルー陽性)。細胞が21日後にも回復しなかったことは、100 ng/mlのLMB38に曝露することで、細胞が全て死んだことを示している。
【0138】
【表4-1】
【0139】
【表4-2】
【0140】
BCMA陽性のH929、U266及びRPMI細胞株を、3mlの容積中、1ml当たり10
6で播種した。0日目(D-0)に、LMB38 (BM24-Fab-LRggs)を100 ng/mlで添加した。別の日に細胞 (10μl)を取得し、トリパンブルー染色後に計数した。D-3後、細胞を洗浄し、毒素を含まない培地を用いてプレーティングした。6時間の群に対しては、6時間後に細胞を洗浄し、通常の毒素を含まない培地中にプレーティングした。シクロヘキサミド(Chxm)及び205を陽性対照として使用した;メソセリン(mesothelin)を標的とするSS1-Fab-抗毒素を陰性対照 (Ctrl)として使用した。
【0141】
表5に示すように、高用量ではLMB38によって3細胞株の全てが死んだ。
【0142】
【表5】
【0143】
実施例8
本実施例は、H929異種移植腫瘍を有するマウスにおける、LMB38の抗腫瘍活性について実証する。
【0144】
in vivoにおけるLMB38及びLMB70の効能をテストするために、最も感受性がある細胞株H929を用いて、腫瘍をSCIDマウス中で増殖させた。以前の毒性データに基づいて、各群5匹のマウスに対して、1.5 mg/kg QODX5用量を使用した。
図1A及び1Bに示すように、対照のリン酸緩衝生理食塩水 (PBS)で処理したマウスと比較して、抗毒素で処理した群における腫瘍の増殖は、遅くなった。しかしながら、処理が終わった途端、腫瘍の増殖が回復した。
【0145】
実施例9
本実施例は、H929異種移植腫瘍を有するマウスにおける、LMB70及びアブラキサンの組合せの抗腫瘍活性について実証する。
【0146】
in vitroにおいて、アブラキサン及びボルテゾミブ(bortezumib)(BTZ)に対するH929及びU266B細胞の感受性を測定した。結果を表6に示す。
【0147】
【表6】
【0148】
細胞株H929を用いて、マウス中で腫瘍を増殖させた。腫瘍が約100 mm
3の体積に到達したときに、マウスに対照 (ビヒクル)、LMB70のみ、アブラキサンのみ又はアブラキサン (Abrx)とLMB70との組合せを投与した。用量は、LMB70 (BM306-Fab-LR-ggs):1 mg/kg QODX5;Abrx:40 mg/kg X1であった。
【0149】
腫瘍体積を測定した。結果を
図2に示す。
図2に示すように、アブラキサンとLMB70との組合せを用いて処理したマウスにおいて、腫瘍の増殖が阻害された。
【0150】
実施例10
本実施例は、H929細胞を殺傷するために必要な、LMB70に曝露する期間について実証する。本実施例はまた、LMB70に曝露後に、H929細胞がどれ位速く死ぬかについても実証する。
【0151】
in vivoにおける取り込みの測定のために、AF647を用いてLMB70を標識した。AF647標識キット(Life Technologies)を使用して、LMB70をAF647で2回標識した。WST-8アッセイ及びアフィニティー測定によって、標識効率及び活性を測定した。最初の標識後のWST-8分析によって、未標識LMB70については1.532のIC
50、標識LMB70については6.082のIC
50であることが明らかになった。2回目の標識後のWST-8分析によって、未標識LMB70については2.758のIC
50、標識LMB70については10.69のIC
50であることが明らかになった。最初の標識後のアフィニティー測定によって、未標識LMB70については2220のBmax、標識LMB70については1131のBmaxであること、及び未標識LMB70については4078のKd、標識LMB70については3673のKdであることが明らかになった。標識毒素は、未標識毒素よりも約4倍活性が低いことを決定した。
【0152】
H929細胞の表面上のBCMA分子を定量するために、H929細胞を、FLOWバッファー中、様々な濃度の標識したLMB70と共に、氷上で1時間インキュベートした。細胞を洗浄し、AF647定量ビーズと共に、フローサイトメトリーによって分析した。結果によって、最初の標識後、細胞当たりのBmaxが150,000分子であり、Kdが710 ng/ml (9.5 nM)であることが示された。2回目の標識後、細胞当たりのBmaxは230,000分子であり、Kdは1600 ng/ml (21 nM)であった。
【0153】
H929細胞を、様々な期間、LMB70に曝露した。3日後、細胞生存率をフローサイトメトリーによって分析した(Annexin V/7AAD染色)。結果によって、高用量のLMB70 (100 ng/ml)では、極めて短時間 (例、10分程)の曝露で、細胞を殺傷するのに十分であることが示された。
【0154】
H929細胞を、100 ng/ml LMB70に20分間曝露した。トリパンブルー染色を用いて、細胞生存率を分析した。結果によって、H929細胞が曝露の24時間後に死にはじめ、全ての細胞が3日後に死ぬことが示された。
【0155】
10分から72時間までの様々な長さの時間、H929細胞を2 ng/ml LMB70に曝露した。3日後、細胞生存率をフローサイトメトリーによって分析した(Annexin V/7AAD染色)。結果によって、2 ng/ml LMB70では、細胞は曝露の24時間後でさえ死なないことが示された。
【0156】
実施例11
本実施例は、H929細胞の生存率及び増殖に対する様々な濃度のLMB70の影響について実証する。
【0157】
H929細胞を、2時間又は6時間、2、10及び100 ng/mlのLMB70に曝露した。細胞生存率及び細胞密度を分析した。結果を
図3A〜3Dに示す。結果によって、2 ng/ml LMB70のみでは、僅かな増殖阻害をもたらされるが、細胞は殺傷されないことが示された。10 ng/ml LMB70は、全ての細胞を殺傷するのに十分でなかった;生存細胞は、暫くした後に増殖した。
【0158】
0、2、6又は10 ng/mlのLMB70と、0、1、3又は6 nMのボルテゾミブとの組合せに、H929細胞を4時間曝露した。トリパンブルー染色を用いて、細胞生存率及び細胞密度を分析した。結果を
図4A〜4D及び5A〜5Dに示す。
【0159】
本明細書において引用した刊行物、特許出願及び特許を含む全ての参考文献は、各参考文献が個別に、具体的に、参照によって取り込まれることが示されているのと同程度に、かつ全体が本明細書に記載されているのと同程度まで、参照することによって本明細書に取り込まれる。
【0160】
本発明を記載する文脈(特に、以下の特許請求の範囲の文脈)における用語「a」及び「an」及び「the」及び同様の指示対象の使用は、本明細書中で別段の指示がない限り、又は文脈によって明確に矛盾しない限り、単数及び複数形の両方を含むものとして解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含む(containing)」は、別段の記載がない限り、制限のない用語(open-ended terms)(すなわち、「含むが、これに限定されない(including, but not limited to)」を意味する)として解釈されるべきである。本明細書中の値の範囲の列挙は、本明細書中に別段の指示がない限り、単に範囲内の各別個の値を個別に指す簡略方法として役立つことを意図しており、本明細書において個々の値は個別に列挙されているかのように、個々の値は明細書に取り込まれる。本明細書中に記載された全ての方法は、本明細書中で別段の指示がない限り、又は特に文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施し得る。本明細書で提供される任意の及び全ての例、又は例示的な言語(例えば「例えば〜など(such as)」)の使用は、単に本発明をよりよく説明することを意図しており、特段特許請求されない限り、本発明の範囲に限定を課すものではない。本明細書中のいかなる言葉も、本発明の実施に不可欠であるとして、特許請求されていない任意の要素を示すものと解釈されるべきではない。
【0161】
本発明を実施するための発明者が知るベストモードを含む、本発明の好ましい実施形態は、本明細書に記載される。これらの好ましい実施形態の変形は、前述の記載を読むことで当業者に明らかになり得る。本発明者らは、当業者がこのような変形を適宜使用することを予測し、本発明者らは本発明が本明細書に具体的に記載されたものとは別の方法で実施されることを意図する。従って、本発明は適用法によって許容されるように、本明細書に添付した特許請求の範囲に記載された主題の全ての改変及び均等物を含む。更に、本明細書中で別段の指示がない限り、又は特に文脈によって明らかに矛盾しない限り、それらの全ての可能な変形における上記要素の任意の組合せが本発明に包含される。