特表2019-506323(P2019-506323A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-506323(P2019-506323A)
(43)【公表日】2019年3月7日
(54)【発明の名称】Bピラー中心梁と製造方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/04 20060101AFI20190208BHJP
   B21D 22/26 20060101ALI20190208BHJP
   B21D 22/20 20060101ALI20190208BHJP
   B21D 53/88 20060101ALI20190208BHJP
   C21D 9/00 20060101ALI20190208BHJP
   C21D 1/18 20060101ALI20190208BHJP
【FI】
   B62D25/04 B
   B21D22/26 D
   B21D22/20 H
   B21D22/20 Z
   B21D53/88 Z
   C21D9/00 A
   C21D1/18 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-521526(P2018-521526)
(86)(22)【出願日】2016年12月16日
(85)【翻訳文提出日】2018年6月8日
(86)【国際出願番号】EP2016081473
(87)【国際公開番号】WO2017103138
(87)【国際公開日】20170622
(31)【優先権主張番号】15382640.9
(32)【優先日】2015年12月18日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】517098527
【氏名又は名称】オートテック・エンジニアリング・アグルパシオン・デ・インテレス・エコノミコ
【氏名又は名称原語表記】Autotech Engineering A.I.E.
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】セルジ・マルケス・ドゥラン
【テーマコード(参考)】
3D203
4K042
【Fターム(参考)】
3D203BB12
3D203BB55
3D203BB59
3D203CA02
3D203CA22
3D203CA52
3D203CA60
3D203CA64
3D203CA73
4K042AA25
4K042BA01
4K042BA06
4K042CA15
4K042DA01
4K042DB01
4K042DB04
4K042DD01
(57)【要約】
【課題】
【解決手段】
第1態様において、鋼製のBピラー中心梁は、硬い領域と柔らかい領域とを有する。柔らかい領域は、硬い領域より小さい機械強度を有する。Bピラー中心梁はさらに、ルーフ部材に固定するための固定部を有する上側領域と下枠に固定するための固定部を有する下側領域とを備える。Bピラー中心梁は2つの柔らかい領域を含む。下側柔らかい領域は、下側固定部とBピラー中心梁の50%の高さとの間に配置されており、上側柔らかい領域は、上側固定部とBピラー中心梁の50%の高さとの間に配置されている。上側柔らかい領域は、下側柔らかい領域より強い機械強度を有する。そのようなBピラー中心梁を製造する方法もまた提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬い領域と、
柔らかい領域と、
ルーフ部材に固定するための上側固定部を有する上側領域と、
下枠部材に固定するための下側固定部を有する下側領域と、
前記下側固定部とBピラー中心梁の50%の高さとの間の下側柔らかい領域と、
前記上側固定部とBピラー中心梁の50%の高さとの間の上側柔らかい領域と、を有しており、
前記柔らかい領域は、前記硬い領域より小さい降伏強度及び/又は引張り強度を有しており、
前記上側柔らかい領域は、前記下側柔らかい領域より大きい降伏強度及び/又は引張り強度を有しており、
前記上側固定部と前記下側固定部は主に硬い領域である、
鋼製のBピラー中心梁。
【請求項2】
前記下側柔らかい領域は、400〜700MPaの間の降伏強度を有する、請求項1に記載のBピラー中心梁。
【請求項3】
前記上側柔らかい領域は、550〜800MPaの間の降伏強度を有する、請求項1又は2に記載のBピラー中心梁。
【請求項4】
前記下側柔らかい領域は、前記Bピラー中心梁の3〜50%の高さの間、望ましくは前記Bピラー中心梁の3〜25%の高さの間に配置されている請求項1〜3のいずれか1つに記載のBピラー中心梁。
【請求項5】
前記上側柔らかい領域は、前記Bピラー中心梁の80〜95%の高さの間、望ましくは前記Bピラー中心梁の85〜95%の高さの間に配置される、請求項1〜4のいずれか1つに記載のBピラー中心梁。
【請求項6】
前記下側柔らかい領域の高さは、10〜300mmであり、望ましくは30〜300mmであり、より望ましくは30〜200mmである、請求項1〜5のいずれか1つに記載のBピラー中心梁。
【請求項7】
前記上側柔らかい領域の高さは、10〜150mmであり、望ましくは10〜100mmであり、より望ましくは30〜100mmである、請求項1〜6のいずれか1つに記載のBピラー中心梁。
【請求項8】
前記上側柔らかい領域を有する前記Bピラーの一部は略U字形状断面図を有しており、
前記U字形状は、1つの底部と、2つの側壁と、前記側壁のそれぞれの端部で外向きに突出する横向きのフランジと、を有する、請求項1〜7のいずれか1つに記載のBピラー中心梁。
【請求項9】
前記上側柔らかい領域は、前記底部と前記側壁の少なくとも一部を含む、請求項8に記載のBピラー中心梁。
【請求項10】
前記上側柔らかい領域は、前記底部と前記側壁の略全部とを含む、請求項9に記載のBピラー中心梁。
【請求項11】
前記上側柔らかい領域は、1つ以上の前記横向きフランジを有する、請求項8〜10のいずれか1つに記載のBピラー中心梁。
【請求項12】
略一様な厚みを有する請求項1〜11のいずれか1つに記載のBピラー中心梁。
【請求項13】
下側固定部と上側固定部とを有する高さのあるBピラー中心梁を形成する工程と、
前記下側固定部と前記Bピラー中心梁の50%の高さとの間に下側柔らかい領域を生成する工程と、
前記上側固定部と前記Bピラー中心梁の50%の高さとの間に上側柔らかい領域を生成する工程と、を有する製造方法であって、
前記上側柔らかい領域は、前記下側柔らかい領域より強い機械強度を有しており、
前記上側固定部と前記下側固定部は主に硬い領域である、Bピラー中心梁の製造方法。
【請求項14】
前記下側柔らかい領域は、ホットスタンピングと金型内の制御された冷却を含む、前記Bピラー中心梁の形成中に生成される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記下側柔らかい領域は、ホットスタンピングによる前記Bピラー中心梁の形成後の加熱によって生成される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記上側柔らかい領域は、ホットスタンピングによる前記Bピラー中心梁の形成後の加熱によって生成される、請求項13〜15のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2015年12月18日に出願されたEP 15382640.9の効果と優先権を主張する。本開示は、Bピラー、特に、柔らかい領域を有するBピラー中心梁に関する。
【背景技術】
【0002】
車のような乗り物は、該乗り物が耐用期間の間に積載され得るあらゆる荷重に耐えるように構成された構造体を具体化する。その構造体はさらに、例えば、他の車又は障害物と衝突した場合の衝撃に耐え、その衝撃を吸収するように構成されている。
【0003】
このため、乗り物、例えば、車の構造体は、例えば、バンパ、ピラー(Aピラー、Bピラー、Cピラー)、サイドインパクトビーム、ロッカーパネル及び緩衝部材を有し得る。車の構造体又はその多数の構成部材のうちの少なくとも1つに対して、いわゆる超高強度鋼(UHSS)を使用することは、自動車産業において常識となっている。超高強度鋼は、単位重量ごとに最適化された最大強度と有利な成型特性を示す。UHSSは、少なくとも1000MPa、好ましくはおよそ1500MPa又は2000MPa以上に至る最大引張強度を有し得る。
【0004】
自動車産業で使用される鋼の一例は、22MnB5鋼である。以下に、22MnB5の成分を重量パーセントでまとめる(残りは鉄(Fe)と不純物である)。
【表1】
【0005】
同一の化学成分を有する様々な22MnB5鋼が商業的に利用可能である。しかしながら、22MnB5鋼の各成分の正確な量は、製造業者ごとにやや異なっているかもしれない。別の例において、22MnB5鋼は、Cを約0.23%、Siを約0.22%、Crを約0.16%含み得る。材料はさらに、Mn、Al、Ti、B、N、Niを様々な比率で含み得る。
【0006】
商業的にアルセロールミッタルから利用できるUsibor(商標登録)1500Pは、テーラードブランクやパッチワークブランクにおいて用いられている商業的に利用可能な鋼の一例である。テーラー(溶接)ブランクとパッチワークブランクは、例えばホットスタンピングといった変形工程に先行して、様々な厚さを有するブランク又は異なる材料性能を有するブランクを提供する。テーラードブランクにおける厚さの変化は、(部分的な)補強材と混同されるべきではない。この意味における補強材は、代わりに、変形工程後に構成部材に付加される。
【0007】
Usibor(商標登録)1500Pは、フェライトパーライト相で供給される。それ(フェライトパーライト相)は、均一パターンに分布されている微細粒組織である。機械的特性は、この構造と関係している。加熱、ホットスタンピング工程及び続く焼き入れの後、マルテンサイトミクロ構造が形成される。結果として、最大引張強度と降伏強度が著しく増加する。
【0008】
Usibor(商標登録)の成分は、以下に重量パーセントでまとめられている(残りは鉄(Fe)と不純物である)。
【表2】
【0009】
腐食や酸化によるダメージを防ぐため、これらの成分がいずれである鋼(通常、22MnB5鋼、特にUsibor(商標登録))でも、コーティングが施され得る。このコーティングは、例えば、アルミニウムシリコン(AlSi)コーティング又は主に亜鉛又は亜鉛合金を含むコーティングである。
【0010】
ホットスタンピングと続いて行われる焼き入れ後の(つまり、マルテンサイトミクロ構造の)Usibor(商標登録)の最大引張強度は1.550MPa±150であり、降伏強度は約1.150MPa±150である。
【0011】
侵入は乗り物に乗っている人にダメージを与え得るので、中間領域において変形が生じない又はほとんど生じないことを保証することがBピラーにおける重要な問題である。ある解決策は、異なる厚さの領域を有するBピラーを備えることである。前述の侵入を避けるために、特に、中心領域(Bピラーの高さの半分付近)がより強度がある(厚い)とよいが、それにより総重量は増加する。
【0012】
別の解決策は、例えば、スポット溶接による溶接補強材を有し、構造体を強化する。このような補強材は通常、鋼から作られており、材料がBピラーの材料ほど硬くなくても、連結後の最終構造体は、追加材料によって強化される。しかしながら、追加材料が構造体に付加されるので、補強材の利用もまた、重量増加を伴う。
【0013】
より大型の乗り物は、製造コストが高いだけでなく、消費燃料も増加し、質量が大きいので慣性が強くなり、加速、ブレーキ及び又は若しくは曲がる時の困難性が増すため、自動車会社が重量を最大限に減らそうとするように、構造体の各構成部材の重量を制御することが重要である。
【0014】
構成部材の重要な領域、例えば、Bピラーの低い部分においてその困難性とエネルギ吸収を改善するために、同一構成部材内に柔らかい領域を取り入れることが知られている。柔らかい領域は、全体にわたって、必要な高強度を維持しながら部分的な柔軟性を改善する。さらに、そのような柔らかい領域を含むことによって、衝撃又は衝突時における変形の運動力学を適切に設計できる。
【0015】
乗り物の構造部材に柔軟性が増した領域(柔らかい領域)を生成する有名な方法は、一対の補足的な上部と下部の金型ユニットを備える工具を提供することを含んでおり、各ユニットは分離した金型部材(鋼塊)を有する。焼き入れ工程の間に形成される部分の異なる領域において異なる冷却比を有するために、金型部材は、異なる温度で作用するように構成されており、それより結果的に、最終製造物における異なる材料特性(柔らかい領域)となる。そのような方法は、金型内の制御された冷却工程として知られている。
【0016】
例えば、Bピラーの低い位置に配置されている上述の柔らかい領域は、大きい荷重に耐えきれず、ピラーはBピラーの中心領域の侵入に至る変形を受け得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
結論として、衝突事故時のBピラーの機械的挙動を最適化/改善し、同時に該ピラーの重量を可能な限り減らす必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
第1態様において、硬い領域と柔らかい領域を有する鋼で作られたBピラー中心梁が設けられており、柔らかい領域は、硬い領域と、ルーフ部材に固定するための固定部を有する上側領域と、下枠部材に固定するための固定部を有する下側領域とより低い降伏強度及び/又は引張り強度を有する。Bピラー中心梁は、2つの柔らかい領域を含む。下側柔らかい領域は、下側固定部とBピラー中心梁の50%の高さとの間に生成され、上側柔らかい領域は、上側固定部とBピラー中心梁の50%の高さとの間に形成される。上側柔らかい領域は、下側柔らかい領域より高い降伏強度及び/又は引張り強度を有する。上側固定部と下側固定部は主に硬い領域である。
【0019】
2つの柔らかい領域のうち一方の領域は中心梁の上側半分にあり、もう一方の領域は中心梁の下側半分にあり、該2つの柔らかい領域の使用することで、Bピラー中心梁の中心領域(高さの30%と70%の間)の侵入を回避し得る。残りの硬い領域、つまり中央、上側固定部及び下側固定部と連結する2つの柔らかい領域の組み合わせにより、1つの下側領域が使用される場合にBピラーが内側へ傾斜して変位することよりもむしろ、Bピラーが内側へ略真っ直ぐに変位することを可能にする。これにより乗り物に乗っている人に対するけがを減らすことができる。
【0020】
下側柔らかい領域に対する重要な必要事項はエネルギ吸収であるが、上側柔らかい領域に対しては、変形誘因がより重要である。従って、上側柔らかい領域は、高い機械強度を有する。高い機械強度とは、同一重量の材料があるとすると、より重い荷重に耐えられることを意味する。従って、Bピラーの重量は、上側柔らかい領域に対してより高いグレード又はより強い強度を有することにより最適化され得る。
【0021】
この点に関して、上側柔らかい領域の機械強度がより大きいということは、上側柔らかい領域は下側柔らかい領域よりもより大きな降伏強度を有する、及び/又はより大きな最大引張強度を有する、と考えるべきである。しかしながら、上側柔らかい領域の降伏強度及び/又は最大引張強度は、Bピラーの残り、つまりマルテンサイトのミクロ構造を有する「硬い領域」に対する相当する強度より小さい。
【0022】
本明細書では、「硬い領域」は、マルテンサイトミクロ構造とおよそ1.400MPa以上の最大引張強度とを主に有するBピラー中心梁の領域と理解される。
【0023】
「柔らかい領域」は、鋼が硬い領域より少ないマルテンサイトミクロ構造とおよそ1.050MPa以下の最大引張強度とを有するBピラー中心梁の領域としてみなされる。柔らかい領域のマイクロ構造は、品質、例えばベナイトとマルテンサイトとの結合、ベナイト、マルテンサイト及びフェライトの結合、フェライトとパーライトとの結合に依拠し得る。
【0024】
「柔らかい領域」と「硬い領域」を使用すると、Bピラー中心梁の厚さは、高さに沿って一様である又は略一様に維持され得る。テーラー溶接ブランク又はテーラーロールドブランクの使用を避けることができる又は減らすことができる。
【0025】
ある実施例において、下側柔らかい領域は、Bピラー中心梁高さの3〜50%の間、望ましくは3〜25%の間に配置される。そのような配置によって、エネルギ消散と、乗り物に乗っている人から安全な距離での変形とが可能になる。この態様において、下枠部材(又は「ロッカー」)に接するBピラーの部分は、高い機械強度を維持する。Bピラーの高さの3〜25%の間の高さで、通常、中心Bピラーの幅は広くなる。この領域における柔らかい領域により、高いエネルギ吸収が可能になる。
【0026】
さらなる実施例によると、上側柔らかい領域はBピラー中心梁高さの80〜95%、望ましくは85〜95%の間に配置されている。この範囲における上側柔らかい領域の配置は、乗客の方へ向かう侵入を可能な限り減らすものである。
【0027】
ある実施例において、下側柔らかい領域は、400〜700MPaの間の降伏強度を有する。ある実施例では、上側柔らかい領域は、550〜800MPaの間の降伏強度を有する。
【0028】
ある実施例では、下側柔らかい領域の高さは、10〜300mm、望ましくは30〜300mm、より望ましくは30〜200mmである。ある実施例では、上側柔らかい領域の高さは、10〜150mm、望ましくは10〜100mm、より望ましくは30〜100mmである。
【0029】
ある実施例では、上側柔らかい領域を有するBピラーの一部は、略U字形状の断面を有しており、U字形状は底壁、2つの側壁、各側壁の端部で外向きに突出する横向きのフランジを有する。ある実施例では、上側柔らかい領域は、底部と側壁の少なくとも一部を含む。
【0030】
ある実施例では、上側柔らかい領域は、底部と略全側壁を含む。ある実施例では、上側柔らかい領域は1つ以上の横向きフランジを有する。
【0031】
ある実施例では、Bピラー中心梁は略一様な厚さを有する。
【0032】
第2態様におけるBピラー中心梁を製造する方法。まず、下側固定部と上側固定部とを有する高さのあるBピラー中心梁が形成される。次に、本明細書に開示されているいずれの実施例にも係る下側柔らかい領域と上側柔らかい領域は、Bピラー中心梁において生成される。そしてその上側固定部と下側固定部は、主に硬い領域である。
【0033】
ある実施例では、下側柔らかい領域は、ホットスタンピングと金型内の制御された冷却とを含むBピラー中心梁の形成中に生成される。代替実施例において、下側柔らかい領域は、ホットスタンピングによってBピラーの中心梁の形成後、加熱によって生成される。
【0034】
ある実施例において、上側柔らかい領域は、ホットスタンピングによってBピラーの中心梁の形成後、加熱により生成される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
添付図面を参照して、本開示の非限定実施例を以下に記載する。
図1図1は、一般的なBピラー中心梁を示す。
図2a図2aは、2つの柔らかい領域を有するBピラー中心梁の実施例を示す。
図2b図2bは、2つの柔らかい領域を有するBピラー中心梁の実施例を示す。
図3図3は、Bピラーの全幅を覆わない柔らかい領域を有するBピラー中心梁を示す。
図4a図4aは、実施例に従って柔らかい領域に対して異なる構成を有するBピラーの部分のU字形状断面図を示す。
図4b図4bは、実施例に従って柔らかい領域に対して異なる構成を有するBピラーの部分のU字形状断面図を示す。
図4c図4cは、実施例に従って柔らかい領域に対して異なる構成を有するBピラーの部分のU字形状断面図を示す。
図4d図4dは、実施例に従って柔らかい領域に対して異なる構成を有するBピラーの部分のU字形状断面図を示す。
図5a図5aは、実施例に従って衝突事故前のBピラー中心梁の側面図を示す。
図5b図5bは、実施例に従って衝突事故後のBピラー中心梁の側面図を示す。
図6図6は、先行技術の配置に従って衝突事故前のBピラー中心梁の側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、通常、下側固定位置105でロッカーに溶接されており、上側固定部101において、乗り物、例えば、車のルーフパネルにB溶接されているピラー中心梁100を示している。Bピラーは乗り物の前席と後席との間に配置されており、他の目的にも有用である。既述したように、乗り物の骨組みに構造的支持を与え、乗り物の衝突時にセキュリティバリヤを提供する。
【0037】
ある実施例におけるBピラーは、中心梁、外側プレート、内側プレート、さらに任意ではあるが中心補強材を有する(本明細書において中心とは、外側プレートと内側プレートとの間を意味する)。内側プレートは、乗り物、例えば車の内側に接する部分を提供し得る。外側プレートは特に、車のドアに補足的な形状を提供するために役立ち得る。内側プレートと外側プレートは、具体的な実施形態では、最終的なBピラーの構造強度と剛性とに寄与し得る。
【0038】
さらに、Bピラー中心梁はまた、それぞれの目的のために設けられたホールに固定された多数の部材用の係止としても利用され得る。図1のBピラー中心梁100は、シートベルトのアンカを備えるためのホールと、ドアロックが配置される別のホールとを備え得る。Bピラー中心梁はさらに、例えば、内側乗り物構造体のプラスチック製取り付け具又は裏ばりを取り付けるために、異なる形状と大きさの留め具穴を有し得る。図1はさらに外側に突出するフランジ106を示す。
【0039】
Bピラーの高さ30〜70%の間のBピラー中心梁100の中心領域103は、乗り物の横向きの衝突において重要な役割を果たす。衝撃は、乗り物に乗っている人に危害を加え得る構造体への侵入を引き起こす。それゆえ、そのような中心領域103において変形が生じないようにすることが重要である。
【0040】
図2aと図2bは、上側柔らかい領域210、220と下側柔らかい領域211、221とを有するBピラー中心梁の別の実施例を示す。柔らかい領域は、該領域の柔軟性を高くするために、機械的特性を変化させるようにミクロ構造が適合(テーラー)される(鋼ブランク)領域である。考えられるテーラーされた領域の種々の例の特性は、以下にまとめられる。
【表3】
【0041】
HT400、HT500、HT700、HT800は、Gestamp(商標登録)によって商業的に提供される鋼の様々なグレードである。
【0042】
本開示の実施例に係る柔らかい領域は、様々なグレード又は降伏強度を有しており、Bピラー中心梁における変形を制御し得る。上側柔らかい領域のグレードは、下側柔らかい領域のグレードより高くてもよい。より高い柔らかい領域と下側柔らかい領域に対するあり得るグレードの組み合わせの別の実施例は、以下にまとめられる。
【表4】
【0043】
本開示の実施例によると、既に説明した2つの柔らかい領域は異なる高さであってもよい。下側柔らかい領域の高さは10〜300mmの間、望ましくは30〜200mm、より望ましくは30〜200mmである。一方で、上側柔らかい領域の高さは、10〜150mm、望ましくは10〜100mm、より望ましくは30〜100mmである。上側柔らかい領域の目的は、主としてはエネルギ消散ではないので、下側柔らかい領域と同じ幅/高さであることは必ずしも必要ではない。
【0044】
図2aは、550MPaの降伏強度を有する上側柔らかい領域210と、上側柔らかい領域210より十分に幅が広い下側柔らかい領域211であって(つまり、下側柔らかい領域の高さは高い)、400MPaの降伏強度を有する下側柔らかい領域211とを有するBピラー中心梁200の正面図の一例を示す。
【0045】
図2bには、図2aに示されている柔らかい領域210の高さより高い上側柔らかい領域220を有するBピラー中心梁200の正面図が示されている。図2bの実施例では、降伏強度は図2aの実施例と異なっており、上側柔らかい領域221は800MPaの降伏強度を有しており、下側柔らかい領域は700MPaの降伏強度を有する。
【0046】
そのような前述の柔らかい領域は、Bピラー中心梁の異なる領域に生成されてもよい。下側柔らかい領域は、下側固定部とBピラー中心梁の50%の高さとの間、Bピラー中心梁の3〜50%の高さの間、より望ましくはBピラー中心梁の3〜25%の高さの間に生成され得る。上側柔らかい領域は、上側固定部とBピラー中心梁の50%の高さとの間、Bピラー中心梁の80〜95%の高さの間、望ましくはBピラー中心梁の85〜95%の高さの間に生成され得る。
【0047】
柔らかい領域は、変形工程後の金型内の制御された冷却又はレーザー加熱のような別の技術により、鋼ブランク内に生成され得る。
【0048】
本開示の実施例に係る柔らかい領域は、とりわけ、柔らかい領域が有意な面を有する場合、金型内の制御された冷却によってホットスタンピング工程中に形成され得る。(高温)変形工程で使用される金型は、異なる金型ブロックを多数有してもよい。柔らかい領域を生成するために、そのような金型ブロックの1つにおける温度は、別の金型ブロックの温度とは異なるように制御される。柔らかい領域が加熱変形工程の間に生成されるとき、柔らかい領域は少なくともそのような金型ブロックの表面に相当することが望ましい。従って、この方法で形成された柔らかい領域は、少なくとも30mmの下限高さを有する。
【0049】
別の実施例に係る柔らかい領域は、例えば、レーザー加熱を使用して、スタンピング工程の後、例えば、冷却又は加熱スタンピング工程の後、生成され得る。レーザー加熱工程は、ワークピース、例えば、材料ブランクを加熱するためにレーザービームを使用し、そのミクロ構造を変化させ、それゆえ、その機械的特性を変化させる。
【0050】
レーザー加熱技術は、10mmの最小幅を必要とする。レーザー加熱は、より広い領域を生成するためにも使用されるが、消費時間を増やし得る。それゆえ、レーザー加熱は狭い柔らかい領域の生成により焦点をあわせられる。
【0051】
さらなる実施例に従い、かつ、各柔らかい領域の幅に依拠して、各柔らかい領域の生成において異なる技術が用いられ得る。柔らかい領域、例えば、下側柔らかい領域は、金型内の制御された冷却によって生成されてもよく、鋼ブランク、例えば、Bピラー中心梁が製造されると、レーザー加熱技術又は、例えば、誘導加熱が利用され、(少なくとも)柔らかい領域、例えば、上側柔らかい領域が生成され得る。
【0052】
図3は、2つの柔らかい領域310、311を有するBピラー中心梁の正面図を示している。下側柔らかい領域311は、Bピラー中心梁の全幅を覆うが、上側柔らかい領域310はBピラー中心梁の幅の一部のみを覆う。
【0053】
図4a〜図4dは、本開示の実施例に係る柔らかい領域を有するBピラーの一部の断面の異なる例を概略的に示す。そのような柔らかい領域は、上側柔らかい領域を有することが望ましい。
【0054】
図4aは、全U字形状断面とBピラー中心梁の一部のフランジを覆う柔らかい領域410を示している。図4bは、柔らかい領域420がU字形状の底壁と略全側壁とを有する断面を示す。図4cは、U字形状の底部と側壁の一部を有する柔らかい領域430の断面を示す。図4dは、両方の横向きフランジを有する柔らかい領域440の断面を示す。
【0055】
これらの実施例における上側柔らかい領域の主な目的は、衝突時の局所的エネルギ吸収よりむしろ、変形運動力学に影響を及ぼすことである。変形を誘導するためには、Bピラーの局所的断面の幅の一部にわたってのみ柔らかい領域を広げることで十分であることが分かった。従って、この場合のBピラーの全強度は、柔らかい領域が局所的な幅の全体にわたって広がっている場合よりも大きくなり得る。
【0056】
これらの実施例のいくつかにおいて、柔らかい領域はBピラーの縦軸に対して略対称である。ある実施例で、柔らかい領域は、(主に横向きのフランジにおいて)2つの部分に分割されている。
【0057】
図5aは、実施例に係る衝突事故の前のBピラー中心梁500の側面図を概略的に示す。Bピラー中心梁500は中心領域511と2つの柔らかい領域510、512を有する。上側柔らかい領域510は構造体の運動力学的挙動を改善し、一方、下側柔らかい領域512はエネルギ消散を可能にする。
【0058】
図5bは本実施例に係る衝突事故後のBピラー中心梁500の側面図を示す。横向き衝突の後、主な変形はエネルギ消散の結果として下側柔らかい領域522に生じ、一方、上側柔らかい領域520が受ける変形はわずかである。結果として、Bピラー中心梁500の中心領域521で生じる侵入又は変形は全く無い、又はわずかである。
【0059】
図6は、柔らかい領域を1つしか有さない先行技術の配置に係る衝突事故後のBピラー中心梁600の側面図を示す。Bピラー中心領域に侵入のないままである図5bとは反対に、図6のBピラー中心梁600は、中心領域における侵入610を受けた。これはBピラー中心梁の下側部分の傾斜によるものであり、柔らかい領域は変形に対する「ヒンジ」として作用する。
【0060】
この意味で、図5bでは、そのような「ヒンジ」が2つ設けられるが、梁の中心部は真っ直ぐなままであることが明らかになり得る。
【0061】
本明細書で開示された実施例はわずかであるが、別の代替、修正、仕様、同等な物があり得る。さらに、記載された実施例の全ての可能な組み合わせもまた、カバーされる。従って、本開示の範囲は、特定の実施例によって限定されず、以下の請求項の公平な解釈によって決定されるべきである。
図1
図2a
図2b
図3
図4a
図4b
図4c
図4d
図5a
図5b
図6
【国際調査報告】