(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
イベントを検出するための装置は、プロセッサと、プロセッサにより実行される場合に、チャネル状態情報(CSI)を分類し、且つ、監視段階の間に取得されたCSIの分類に基づいてイベントを検出するための分類器を、プロセッサにトレーニングさせる命令を格納する記憶装置とを含む。分類器のトレーニングは、検出されるべき既知のイベント毎に、会場内の無線送信機と無線受信機との間の無線マルチパスチャネルのトレーニングCSIであって、送信機から無線マルチパスチャネルを介して受信機へ送信された1つ以上のプロービング信号から導出されるトレーニングCSIを、既知のイベントが会場で発生する期間の間に取得することと、既知のイベント及び各イベントに関連付けられたトレーニングCSIに基づいて、分類器をトレーニングすることとを含む。
【発明を実施するための形態】
【0064】
本明細書において、屋内会場であってもよく又は無線信号を反射して豊富なマルチパス環境を提供できる複数の表面を有する屋外会場であってもよい会場内のイベントを監視又は検出するシステム及び方法を説明する。会場は、例えば部屋、家屋、オフィス、店舗、工場、ホテルの部屋、博物館、教室、倉庫、自動車、トラック、バス、船舶、列車、航空機、移動住宅、洞窟又はトンネルであってもよい。例えば会場は、1つ又は複数の階を有する建物であってもよく、建物の一部分は地下であってもよい。建物の形状は、例えば円形、正方形、矩形、三角形又は不規則な形状であってもよい。これらは単なる例であり、本発明は他の種類の会場又は空間におけるイベントを検出するために使用可能である。
【0065】
送信機が会場においてマルチパスチャネルと呼ばれる複数のパスを介して受信機に無線信号を送出する場合、マルチパスチャネルは会場内の物体又は表面の配置等の会場の特徴の影響を受ける。従って、送信機及び受信機が会場内の固定位置に配置され且つ送信機が同一の波形を有する信号を受信機に繰り返し送出する場合、会場の特徴が時間と共に変化すると、受信機において受信される信号の波形も時間と共に変化する場合がある。受信機において受信された信号の波形の特徴を測定することにより、会場内で起きているイベントを推測することができる。
【0066】
いくつかの実現例において、システムはトレーニング段階で動作し、次に監視段階で動作する。トレーニング段階において、ユーザが監視することを意図する特定のイベントを表すために参照値を使用できるように特定のパラメータの参照値を確立するために、分類器がトレーニングされる。イベントは、例えば「扉が開く」、「扉が閉じる」、「窓が開く」、「窓が閉じる」、「室内で人間が動いていない」又は「室内で人間が動いている」であってもよい。これらは単なる例であり、システムは他の種類のイベントを検出することもできる。分類器は、イベントが会場内で発生している時に測定された無線信号から導出された情報を使用してトレーニングされる。監視段階において、会場内の無線信号が測定され、無線信号から導出された情報が分類器に提供される。測定された無線信号から導出された情報及び参照値に基づいて、分類器は会場内で発生したイベントを判定する。
【0067】
以下の説明において、環境固有シグニチャ及び時間反転無線システムの概要を提供する。次に、ベースライン法、統計的方法、機械学習法、時間反転共振強度の分散に基づく方法、アンテナ相関に基づく方法及び到着時間に基づく方法を使用する分類器等の分類器の種々の実現例を説明する。
【0068】
環境固有シグニチャ
図35は、2つの送受信機210及び212を備える無線システム208の例示的な一実施形態を示す。本実施形態において、アンテナを備える送受信機A210は無線信号214を発射し、当該信号は無線チャネル216を伝搬し、アンテナを備える送受信機B212にマルチパス無線信号218として到着する。例示的な実施形態において、少なくとも1つのアンテナは少なくとも1つの無線信号をチャネルに発射してもよく、少なくとも1つのアンテナは無線チャネルから信号を受信してもよい。実施形態において、送信アンテナ及び受信アンテナは互いに離間して配置されてもよく、いくつかの実施形態において、それらは同一場所に設置されてもよい。例えば装置、コンピュータ、モバイル装置及びアクセスポイント等は2つ以上のアンテナを備えてもよく、アンテナは送信アンテナ及び受信アンテナのいずれか又は双方として動作されてもよい。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのアンテナは、チャネルへの無線信号の発射及びチャネルからのマルチパス信号の受信の双方に使用されてもよい単一アンテナであってもよい。実施形態において、アンテナは、異なる時間スロット、異なる周波数帯域、異なる方向及び/又は異なる偏波で信号を送受信してもよく、あるいは同一又は同様の時間、同一又は同様の周波数帯域、同一又は同様の方向及び/又は同一又は同様の偏波で信号を送受信してもよい。いくつかの実施形態において、アンテナ及び/又はアンテナを備える装置は、信号送信及び信号受信のタイミング、搬送周波数、方向及び/又は偏波を調節してもよい。
【0069】
例示的な実施形態におけるアンテナは、電気出力又は電気信号を電波、マイクロ波、マイクロ波信号又は無線信号に変換し且つ電波、マイクロ波、マイクロ波信号又は無線信号を電気出力又は電気信号に変換するあらゆる種類の電気装置であってもよい。例えば少なくとも1つのアンテナは指向性アンテナ又は全方向性アンテナとして構成されてもよいが、それらに限定されない。少なくとも1つのアンテナは、何らかの種類のモノポールアンテナ、ダイポールアンテナ及びクワドラポールアンテナ等であってもよい。少なくとも1つのアンテナは、何らかの種類のループアンテナであってもよく且つ/又は1本のワイヤから形成されてもよい。少なくとも1つのアンテナは、パッチアンテナ、パラボラアンテナ、ホーンアンテナ、八木アンテナ、折り返しダイポールアンテナ、マルチバンドアンテナ、短波アンテナ、マイクロ波アンテナ、同軸アンテナ、メタマテリアルアンテナ、衛星アンテナ、誘電共振アンテナ、フラクタルアンテナ、ヘリカルアンテナ、等方性放射体、Jポールアンテナ、スロットアンテナ、マイクロストリップアンテナ、コンフォーマルアンテナ、皿型アンテナ、テレビアンテナ、ラジオアンテナ、ランダムワイヤアンテナ、セクタアンテナ、セルラアンテナ、スマートアンテナ及び傘形アンテナ等であってもよい。少なくとも1つのアンテナは、直線アレイアンテナ、フェーズドアレイアンテナ、反射アレイアンテナ及び指向性アレイアンテナ等のアンテナアレイの一部であってもよい。少なくとも1つのアンテナは、狭帯域アンテナ又は広帯域アンテナ、高利得アンテナ又は低利得アンテナ、調節可能アンテナ又はチューナブルアンテナ、あるいは固定アンテナであってもよい。あらゆる種類のアンテナは、本明細書中で説明するシステム、方法及び技術において使用されるように構成されてもよい。実施形態において、例示的なアンテナに関連する放射パターンは調整可能であってもよく、本明細書中で説明する例示的なシステム、方法及び技術の性能を向上するために調整されてもよい。
【0070】
実施形態において、電気信号は無線送信のために1つ以上のアンテナに適用されてもよく、処理するために1つ以上のアンテナから受信されてもよい。実施形態において、無線信号は電波又はマイクロ波であってもよい。実施形態において、無線信号はキロヘルツからテラヘルツの範囲のいずれかの搬送周波数を有してもよい。実施形態において、アンテナは、フィルタ、増幅器、スイッチ、モニタポート及びインピーダンス整合回路等のうちの少なくとも1つを備えてもよい。実施形態において、電気信号はアナログ回路網及び/又はデジタル回路網を使用して生成されてもよく、少なくとも1つのアンテナを駆動するために使用されてもよい。実施形態において、少なくとも1つのアンテナから受信された電気信号は、アナログ回路網及び/又はデジタル回路網を使用して処理されてもよい。本明細書中で開示される本発明の例示的な実施形態において、電気信号は、サンプリング、デジタル化、格納、比較、相関、時間反転、増幅、減衰、調節、補償、統合及び処理等が行われてもよい。
【0071】
本開示において、チャネルの特性をプロービングするために送信アンテナにより発射される信号は、場合によってはプローブ信号、チャンネルプローブ信号又はチャネルプローブ波形と呼ばれてもよい。
図36は、第1の装置210から広帯域無線チャネル216を介して第2の装置212へ送信される無線信号214を示す。チャネルプローブ信号214は、受信プローブ波形218とも呼ばれるものとして第2の装置212に到着してもよい。当該受信プローブ波形218は、少なくとも1つのアンテナと受信機電子機器のセットとを備える受信機により受信され且つ処理されてもよい。例示的な実施形態において、受信プローブ波形218を処理することは、装置210と装置212との間の広帯域チャネルに対する推定チャネル応答を生成してもよい。実施形態において、プローブ信号及び受信信号はデジタル信号に変換されるアナログ信号であってもよく(また、アナログ信号に変換されるデジタル信号であってもよく)、デジタル信号プロセッサ(DSP),フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、ARM(Advanced RISC Machine)プロセッサ、マイクロプロセッサ、コンピュータ及び特定用途向け集積回路(ASIC)等を使用して処理され且つ/又は生成されてもよい。
【0072】
時間領域において、通信リンクのチャネルインパルス応答は
としてモデル化可能である。式中、h
i[k]は長さLを有するチャネルインパルス応答(CIR)のk番目のタップであり、δ[]はディラックのデルタ関数である。尚、チャネル応答の時間領域表現h及びチャネル応答の周波数領域表現Hはフーリエ変換により関連付けられる。
【0073】
例示的な実施形態において、チャネルインパルス応答が既知である場合、受信プローブ波形は、チャネルプローブ信号とチャネルインパルス応答とを畳み込むことにより予測されてもよい。チャネルインパルス応答又は推定チャネル応答は、実際のチャネルインパルス応答の近似値又は推定値であってもよい。例えば推定チャネル応答は、チャネルの「十分に正確な」推定値であると考えられるか又はチャネルの特定の特性を優先的にプロービングするように選択される特定のチャネル長に切り捨てられてもよい。更に、推定チャネル応答は、特定の用途に対して「十分に正確である」と判定された離散化信号の時間/振幅分解能を用いて受信プローブ波形の離散化近似値から導出されてもよい。推定チャネル応答は、実際のチャネル応答のフィルタリングされたバージョンであってもよく、チャネルの十分に正確な推定値であってもよい。何が「十分に正確である」かの判定は、用途、無線装置で使用されるハードウェア構成要素、装置の処理能力、装置の許容電力消費及びシステム性能の所望の精度等に依存してもよい。
【0074】
装置により送信されるプローブ信号が単一のパルス信号又はインパルス信号である場合、受信プローブ波形はチャネルインパルス応答の十分に正確な推定値であってもよく、推定チャネル応答を取得するために受信プローブ波形の受信、離散化及び格納以外の追加処理は殆ど不要であってもよい。装置により送信されるプローブ信号が単一のパルス信号又はインパルス信号以外の波形である場合、受信機は、推定チャネル応答を判定するために受信プローブ波形に追加処理を実行する必要がある場合がある。例示的な一実施形態において、受信器が受信プローブ波形を検出し且つ離散化してもよい。アナログデジタル(A/D)変換器が離散化を実行するために使用されてもよい。実施形態において、デコンボリューション処理は、離散化された受信プローブ波形とチャネルプローブ信号の表現とを使用して推定チャネル応答を得てもよい。実施形態において、推定チャネル応答を得るために他の数学関数が使用されてもよい。チャネルインパルス応答(CIR)は、本明細書においてチャネル応答(CR)、CR信号、CIR信号、チャネルプローブ信号応答及び推定チャネル応答と呼ばれてもよい。チャネル応答は測定され且つ/又は計算されてもよく、且つ/又は測定及び計算の組み合わせにより生成されてもよい。本開示において、チャネル応答及び受信プローブ波形をロケーション固有シグニチャと呼ぶ場合もある。
【0075】
実施形態において、広帯域チャネルのチャネル応答の推定値の精度を向上又は低下するために、異なるチャネルプローブ信号が選択されてもよい。例示的な実施形態において、チャネルプローブ信号はパルス又はインパルスであってもよい。更に、チャネルプローブ信号は、規則的なパターン、任意のパターン又は不規則的なパターンを有する一連のパルスであってもよい。チャネルプローブ信号は波形であってもよい。波形は、実質的に矩形波形、二乗余弦波形、ガウス波形、ローレンツ波形、あるいは何らかの最適又は所望の方法でチャネルをプロービングするように設計された形状を有する波形であってもよい。例えばチャネルプローブ波形は、周波数がチャープされてもよく、あるいは何らかの最適又は所望の方法でチャネルをプロービングするように適合される周波数スペクトルを有してもよい。プローブ波形は、異なる中心周波数及び帯域幅を有する複数の波形であってもよい。プローブ波形は、振幅変調、位相変調、周波数変調、パルス位置変調又は偏波変調されてもよく、あるいは振幅、位相、周波数、パルス位置及び偏波の何らかの組み合わせで変調されてもよい。
【0076】
波形は、関連する通信チャネルを介して交換されることを意図してもよいデータストリームのビット持続時間とほぼ等しい時間幅を有してもよい。波形は、関連する通信チャネルを介して交換されることを意図するデータストリームのビット持続時間の略半分、略4分の1、略10分の1、略100分の1又はそれ以下の時間幅を有してもよい。プローブ信号/波形はデータパターンであってもよく、反復するデータパターンであってもよい。プローブ信号は、パケット及び/又はフレーミング情報、同期及び/又はクロック再生情報、ストリーム取り込み情報、装置ID/ネットワーク/リンク層動作情報を含んでもよい。プローブ信号は、動作環境、並びに/又はシステムの送信機及び/又は受信機内の電子構成要素に対して適合された周波数スペクトルを有してもよい。プローブ信号はチャネルインパルス応答の推定値であってもよく、あるいはチャネルインパルス応答の推定値の変更されたバージョンであってもよい。例えばプローブ信号は、推定チャネル応答の時間反転バージョンであってもよい。プローブ信号は、送信機及び/又は受信機内の特定の電子構成要素及び/又は特定の環境要素により生じる信号歪みを補償し且つ/又は強調するように設計されてもよい。
【0077】
チャネルプロービング信号の1つの例示的な種類は、周期パルス系列である。そのようなチャネルプロービング信号を用いる場合、受信プローブ波形は周期的チャネルパルス応答のノイズバージョンであってもよい。実施形態において、ノイズを抑制してチャネル応答を抽出するために時間平均化法を使用できる。
【0078】
いくつかの実施形態において、時間平均化法はチャネル応答の信頼できる測度を提供しない場合がある。チャネル応答推定を向上するためには、ノイズを抑制するために更に長いパルス系列を使用できる。システムの性能を更に向上するために、短い擬似ランダムパルス系列をチャネルプロービング信号として使用できる。そのような場合、受信プローブ波形は、擬似ランダム系列とチャネル応答との畳み込みであってもよい。
【0079】
実施形態において、プロービング信号として使用される擬似ランダム系列は、受信機が既知であってもよい。その場合、チャネル応答は、受信信号が擬似ランダム系列と畳み込まれる相関に基づく方法を使用して推定可能である。一般に、擬似ランダム系列の自己相関は、シンボル間干渉が生じて推定チャネル応答に誤差が存在する場合があるため、理想的なデルタ関数でない場合がある。実施形態において、シンボル間干渉によるそのような種類のチャネル推定誤差は、擬似ランダム系列でなく、自己相関関数に対する理想的なデルタ形状を有してもよい直交ゴレイ相補系列を使用することにより最小化又は回避されてもよい。
【0080】
実施形態において、無線装置は、f
1GHzの中心周波数を有する第1の無線信号を送信してもよい。実施形態において、第1の無線信号はチャネルプローブ信号、パルス信号、フレーム信号、擬似ランダムノイズ(PN)系列及びプリアンブル信号等であってもよい。実施形態において、無線信号の帯域幅は、約10MHz、約20MHz、約40MHz、約60MHz、約125MHz、約250MHz、約500MHz及び約1GHz等であってもよい。実施形態において、無線装置はf
2GHzの中心周波数を有する第2の無線信号を送出してもよい。実施形態において、第2の無線信号はチャネルプローブ信号、パルス信号、フレーム信号、PN系列及びプリアンブル信号等であってもよい。実施形態において、無線信号の帯域幅は、約10MHz、約20MHz、約40MHz、約60MHz、約125MHz、約250MHz、約500MHz及び約1GHz等であってもよい。実施形態において、第1の無線信号の周波数スペクトル及び第2の無線信号の周波数スペクトルはオーバラップする周波数を含んでもよい。いくつかの実施形態において、2つの無線信号の間にオーバラップする周波数が存在しなくてもよい。いくつかの実施形態において、異なる無線信号の周波数スペクトルは、いわゆるガードバンド又はガードバンド周波数により分離されてもよい。第1の無線信号(例えば、周波数f
1における)を使用してプロービングされたチャネルに対するチャネル応答はH
ij(f
1)と表されてもよい。第2の無線信号(例えば、プローブ周波数f
2における)を使用してプロービングされたチャネルに対するチャネル応答はH
ij(f
2)と表されてもよい。実施形態において、3つ以上のプローブ周波数信号がチャネルをプロービングするために使用されてもよい。3つ以上のプローブ周波数信号は何らかのオーバラップする周波数を有してもよく、あるいはオーバラップする周波数を有さなくてもよい。
【0081】
実施形態において、無線装置は、異なる無線信号搬送周波数に同調して無線チャネルをプロービングするために、チャネル同調及び/又は周波数ホッピングを使用してもよい。いくつかの実施形態において、無線装置は、指定された周波数帯域内の異なるチャネルに同調して無線チャネルをプロービングしてもよい。例えば無線装置は、最初にWiFi(IEEE802.11)信号伝送帯域幅内の1つのチャネルに同調した後に無線帯域内の別のチャネルに同調してもよい。周波数同調は、1つのチャネルから次のチャネルに順次行われてもよいが、WiFi帯域内で1つのチャネルから別のチャネルにランダムにホップしてもよい。実施形態において、異なるチャネルは異なるチャネル帯域幅を有してもよい。実施形態において、プローブ信号を生成するため及び/又は受信信号内のチャネル情報を解析するために、あらゆる無線プロトコルが使用されてもよい。
【0082】
実施形態において、チャネルをプロービングするために複数のチャネルプローブ信号が使用されてもよい。いくつかの実現例において、同一のプローブ信号が複数回送出されてもよく、受信プローブ波形が平均化され且つ/又は比較されてもよい。例えばプローブ信号は2回、5回、10回、30回、50回、100回、500回又は1000回送出されてもよい。実施形態において、プローブ信号は1回送出されてもよく、2回〜1000回のいずれかの回数送出されてもよい。実施形態において、プローブ信号は1001回以上送出されてもよい。例えば何らかの監視及びセキュリティ用途において、プローブ信号は継続的に送出されてもよい。空間を監視してプロービングするために、例えば毎秒1個、毎秒10個、毎秒100個等のプローブ信号が継続的に送出されてもよい。プローブ信号が継続的に送出される速度は、環境の変化が検出される必要のある速度により判定されてもよい。
【0083】
実施形態において、一部の受信プローブ波形のみが更なる処理に使用されてもよい。例えば一部の受信プローブ波形及び/又は推定チャネル応答が廃棄又は削除されてもよい。廃棄及び/又は削除される波形及び/又は応答は、他の受信波形及び/又は推定応答と十分に異なるため、外れ値(outlier)でありチャネルの十分に正確な表現ではないと考えられるものであってもよい。いくつかの実施形態において、異なるプローブ信号は異なる時間に送出されてもよく且つ/又は受信機からのフィードバックに応答して送出されてもよい。例えば送信機におけるプローブ信号は、受信プローブ波形、推定チャネル応答、並びに/又は受信プローブ波形及び/又は推定チャネル応答の類似性を向上するように調整されてもよい。実施形態において、送信機は少なくとも2つの異なるプローブ信号を送出してもよく、受信機は少なくとも2つの異なる受信プローブ波形のいずれか1つ、いくつか又は全てに基づいてチャネル応答を推定してもよい。実施形態において、プローブ信号は、以前に測定され且つ/又は計算されたチャネル応答のバージョン及び/又は測定され且つ/又は計算されたチャネル応答の時間反転バージョンであってもよい。
【0084】
本開示中で以下に更に詳細に説明するように、波形、シグニチャ及び/又は応答の類似性、マッチング又は相関は、仮想時間反転処理技術、時間反転共振強度、パターン認識及び/又はパターンマッチング、線形及び/又は非線形のサポートベクトルマシン及び/又はサポートベクトルネットワーク、機械学習、データマイニング、分類、統計的分類、タギング及びカーネルトリック(例えば、カーネル関数を適用するカーネル法)等を使用して判定されてもよい。
【0085】
実施形態において、受信プローブ波形を処理することは、受信信号のいずれか一部分を増幅又は減衰することを含んでもよい。実施形態において、チャネルは1回プロービングされてもよく、あるいはチャネルは2回以上プロービングされてもよい。実施形態において、複数の受信プローブ波形の測定、処理及び記録等が行われてもよい。実施形態において、いくつかのチャネル応答が他のチャネル応答と平均化されてもよい。実施形態において、いくつかのチャネル応答が廃棄されてもよく又は記録されなくてもよい。実施形態において、いくつかのチャネル応答が異なる環境条件で測定されて格納されてもよい。そのような格納された応答信号は、元の測定値に関連する環境条件を示すための参照信号として使用されてもよい。実施形態において、新規に測定されたチャネル応答は、以前に格納されたチャネル応答の中で新規に測定されたチャネル応答と最もマッチングするものを判定するために、多くの以前に格納されたチャネル応答と比較されてもよい。その場合、最も密接に相関するか又は最もマッチングする、以前に格納されたチャネル応答の環境パラメータが、新規に測定されたチャネル応答に関連付けられてもよい。例示的な実施形態において、環境条件は、温度、物体のロケーション又は配置、人間のロケーション及び/又は配置、物体の姿勢、人間の姿勢、アクセスポイントのロケーション及び/又は姿勢、端末装置、センサの位置及び/又は姿勢、信号反射体の位置及び/又は姿勢、信号散乱体の位置及び/又は姿勢、並びに信号減衰体の位置及び/又は姿勢等を含んでもよいが、それらに限定されなくてもよい。
【0086】
例示的な一実施形態において、推定チャネル応答は、特定の環境における2つの装置間のチャネル応答、あるいは会場又は特定の環境における装置と物体及び/又は構造との間のチャネル応答を表すため、環境固有波形及び/又はシグニチャであると考えられてもよい。
図36に示すように、装置210と装置212との間で送信された信号が伝搬する会場又は環境内の1つ以上の物体及び/又は構造及び/又は表面において1つ以上の動きが存在する場合、信号が伝搬する複数の伝搬パスのうちの少なくともいくつかが変化することによりチャネル応答が変化する可能性がある。推定チャネル波形の特性及びその変化量は、会場、環境及びシステム内のハードウェア構成要素に依存してもよい。
【0087】
時間反転無線システムの概要
時間反転無線システムの概要を以下に提供する。
図1Aを参照すると、時間反転システムは、無線信号を1回以上反射させる場合がある構造又は物体を有する環境において使用可能である。例えば会場102は、第1の部屋104及び第2の部屋106を有してもよい。第1の部屋104内の第1の装置108が第2の部屋106内の第2の装置110へ信号を送信する場合、信号は複数の方向に伝搬し、例えば112、114及び116である複数の伝搬パスを通って移動することにより第2の装置110に到達できる。複数の伝搬パスを通って移動する信号をマルチパス信号と呼ぶ。信号が伝搬パスを通って移動する際、信号は歪む場合がある。第2の装置110により受信されるマルチパス信号は、第1の装置108により送信された信号と非常に異なる場合がある。
【0088】
例えば
図1Bを参照すると、第1の装置108がパルス信号を送出する場合、第2の装置110により受信される信号は波形120を有してもよい。波形120をチャネルインパルス応答(CIR)と呼び、これは時間領域におけるチャネル状態情報(CSI)を反映する。本明細書において、「チャネル状態情報」(CSI)は通信リンクのチャネル特性を示す。これは、信号が送信機から受信機に伝搬する様子を説明する。チャネル状態情報は、受信チャネルサウンディング信号又は受信チャネルプロービング信号に基づくチャネル推定を使用して取得可能である。時間領域におけるチャネル状態情報は、チャネルインパルス応答(CIR)と呼ばれることが多く、チャネル遅延スプレッドの間のチャネル減衰及び位相シフトを反映する複素値のベクトルにより表すことができる。周波数領域におけるチャネル状態情報は、チャネル周波数応答(CFR)と呼ばれることが多く、例えばWiFiチャネル内のサブキャリアである各周波数ユニットにおけるチャネル減衰及び位相シフトを反映する複素値のベクトルにより表すことができる。
【0089】
図1Cを参照すると、時間反転波形(シグニチャ)130は、波形120を時間に関して反転することにより生成できる。第2の装置110が波形130を有する信号を送出する場合、信号は伝搬パス112、114及び116を含む種々の方向に伝搬し(インパルス信号の伝搬方向に対して逆方向に)、第1の装置108に到達する。第1の装置108において受信されるマルチパス信号は、第1の装置108から第2の装置110に以前に送出されたインパルス信号と同様のインパルス信号を形成してもよい。
【0090】
図1B及び
図1Cに示す波形120及び130は単なる例である。時間反転システムにおける波形は、例えば環境及び送信される情報又はデータに依存して変化する場合がある。更に、第1の装置108から送出される初期信号は、あらゆる種類の信号であってもよく、インパルスは一例にすぎない。初期信号はあらゆる波形であってもよい。
【0091】
いくつかの実現例において、第2の装置110が第1の装置108へデータストリームを送信することを意図する場合、第2の装置110は装置108から受信した信号の正規化時間反転共役を基本送信波形(シグニチャ)として使用してもよい。第2の装置110は、基本波形(シグニチャ)においてデータストリームを符号化し、無線チャネルを介して信号を送信してもよい。装置108において受信される信号は、送信信号とチャネルインパルス応答との畳み込みに加法性白色ガウスノイズが加わったものとして説明されてもよい。送信信号はチャネルインパルス応答の時間反転バージョンに基づいて設計されているため、第1の装置108は、受信信号に対して単純な調整を実行してダウンサンプリングするだけで、第2の装置110により送信されたデータストリームを再生できる。
【0092】
いくつかの例において、送信装置又は基地局又はアクセスポイントは、2つ以上の受信装置に信号を同時に送出してもよい。送信信号は、複数の伝搬パスを通って各受信機に移動する。受信機が異なるロケーションに位置するため、マルチパス信号は異なる伝搬パスを通って受信機に到達する。送信機から送出される信号の波形を慎重に構成することにより、各受信機が自身に向けられたデータを十分に高品質で受信できるようにすることが可能である。
【0093】
チャネルプロービング
いくつかの実現例において、
図37を参照すると、チャネルプロービングは送受信機又はアクセスポイント(AP)590が端末装置592と通信する場合に実行される。チャネルプロービング段階において、端末装置592は、アップサンプリング部596を使用してインパルス信号594をαでアップサンプリングし、ルートレイズドコサイン(RRC)フィルタRRC
B,fs598を使用してアップサンプル信号をフィルタリングする。この場合、Bは帯域幅であり、f
s=αBはサンプルレートである。ビットレートを上げる目的の1つは、オーバサンプリングすることにより、データ送信段階において送信機と受信機との間にサンプル周波数オフセットが存在する場合に正確なサンプルを取得できることである。オーバサンプリングはデータ送信段階におけるステップの1つであってもよいため、チャネルを正確に推定するために、チャネルプロービング段階にオーバサンプリング及びダウンサンプリングを更に含むことができる。αの値はユーザが選択できる。例えばαは4に等しくなるように選択できるが、他の値であってもよい。ルートレイズドコサインフィルタは、帯域幅を制限するためにパルス整形を実行できる。異種時間反転システムにおいて、異なる種類の装置は異なる帯域幅を使用してもよいため、異なる種類の装置に対するルートレイズドコサインフィルタの帯域幅も異なる。
【0094】
フィルタリングされた信号は、デジタルアナログ変換器(DAC)600によりアナログベースバンド信号に変換される。ベースバンド信号は、電圧制御発振器(VCO)602により高搬送周波数に変調され、バンドパスフィルタ604を通過し、電力増幅器606により増幅されて無線周波数(RF)信号が生成される。RF信号は、アンテナ608によりブロードキャストされる。ブロードキャスト信号は、プロファイルhを有するマルチパスチャネル610を通過し、ここでノイズn'が信号に追加される。ブロードキャスト信号は、アクセスポイント590においてアンテナ612により取り込まれる。取り込まれた信号は、低ノイズ増幅器(LNA)614により増幅され、バンドパスフィルタ616によりフィルタリングされ、電圧制御発振器618を使用してアナログベースバンド信号に変換される。ベースバンド信号は、アナログデジタル変換器(ADC)620によりサンプルレートf
s=αBでサンプリングされ、デジタル信号が生成される。デジタル信号は、ルートレイズドコサインフィルタRRC
B,fs622によりフィルタリングされ、ダウンサンプリング部624により係数αでダウンサンプリングされる。インパルス信号が端末装置592により送信されたため、ダウンサンプリング信号はチャネル推定値
として扱われる。
【0095】
ルートレイズドコサインフィルタ598はデジタルフィルタであり、ルートレイズドコサインフィルタ622はアナログフィルタであり、双方は同一の帯域幅を有する。バンドパスフィルタ604は、端末装置592により使用される周波数帯域を定義する。従って、端末装置592が周波数f1〜周波数f2の通過帯域を有するバンドパスフィルタ604を含む場合、端末装置592は周波数帯域f1〜f2を使用するか又はそれに関連付けられると言う。
図37の例において、端末装置592のバンドパスフィルタ604の通過帯域はアクセスポイント590のバンドパスフィルタ616の通過帯域と同一である。
【0096】
アクセスポイント590は、本明細書中で説明する通信技術を使用して複数の他の装置と通信する基地局又は送受信機であってもよい。
【0097】
サンプリングレートf
s=αBの場合、離散チャネルインパルス応答を以下のように書くことができる。
式中、T
s=1/(αB)である。完璧なチャネル推定値(チャネルプロービング段階においてノイズ及び干渉が無視される)を仮定すると、
図37の2つのルートレイズドコサインフィルタ598、622の間の同等のチャネルインパルス応答を以下のように書くことができる。
【0098】
図26を参照すると、いくつかの実現例において、会場140におけるイベントを検出するために、送信機142はマルチパスチャネル146を介して受信機144に無線信号を送出する。送信機142はチャネルプロービング信号148を生成し、無線周波数変調150を実行して、関連するマルチパスチャネル146を通って受信機144に伝搬する無線周波数信号を生成する。受信機144は、送信された無線周波数信号を受信し、無線周波数復調152を実行して一意のチャネル応答(波形)154を再生し、これを記録する。送信機142に関連するチャネル応答154を受信すると、受信機144は、受信機144において受信したチャネル応答に基づいて、送信機142に対するシグニチャ波形156を計算する。文脈に依存して、用語「チャネルプロービング信号」は、無線周波数変調前のプローブ信号を示してもよく、あるいは無線周波数変調を適用後の信号を示してもよい。いくつかの実現例において、送信機142は
図37の装置592と同様の方法で実現可能であり、受信機144は
図37の装置590と同様の方法で実現可能である。
【0099】
受信機144は、チャネルプロービング信号148を使用してチャネル応答を推定できる。この目的を達成するために、受信機144は最初に、チャネル情報を知らない状態でマルチパスの影響を相殺してチャネルプロービング信号と同期する必要がある。一般的なチャネルプロービング信号は、プリアンブルと可能性のある確認ビットの2つの部分とを含む。受信機144は、マルチパスフェージングにより破損されないプリアンブルの基本特徴を抽出することにより、チャネルプロービング信号と同期する。その後、確認ビットを使用して、同期を更に検証する。同期が達成されると、受信機144はチャネルプロービング信号内の情報を使用して受信信号からチャネル応答を抽出する。
【0100】
チャネルプロービングのためのハンドシェイク方法の2つの例を
図27〜
図34を使用して後述する。第1の方法はパルス位置変調を使用し、第2の方法は擬似ランダム系列の相関を計算する。
【0101】
時間領域における時間反転パラメータ
時間領域におけるチャネル状態情報の表現がベクトルh=[h[1],h[2],...,h[L]]として表されると仮定する。式中、Lはチャネル状態情報のタップの数である。例えばh[1]、h[2]、h[L]等は、受信プロービング信号のデジタルサンプルであってもよい。サンプリングレートは、例えば125MHzであってもよい(他のサンプリングレートを使用することもできる)。時間領域における2つのチャネル状態情報サンプルh
1及びh
2の間の時空間共振の強度TR(h
1, h
2)を「時間反転共振強度(TRRS)」と呼び、これを以下のように定義する。
式中、「*」は畳み込みを示し、lはタップインデックスを示し、g
2はh
2のTRシグニチャである。すなわち、
g
2[k]=h
*2[L−k−1], k=0,1,...,L−1 式(2)
【0102】
2つのチャネル状態情報サンプルh
1及びh
2の間の時間反転共振強度が高いほど、h
1とh
2との間の類似性が高いことを示し、2つのチャネル状態情報サンプルh
1及びh
2の間の時間反転共振強度が低いほど、h
1とh
2との間の類似性が低いことを示す。環境が特定の状態にある場合の時間t1において測定されたチャネル状態情報をh
1が表し且つその後の時間t2において測定されたチャネル状態情報をh
2が表す場合、h
1とh
2との間の時間反転共振強度は、時間t2における環境と時間t1における環境との類似度のインジケーションを提供する。
【0103】
チャネルインパルス応答(CIR)は、時間領域において測定されるチャネル状態情報である。h
1とh
*2との内積は(h
1*g
2)[L−1]と同等であるため、式(1)で定義された共振強度はh
1とh
2との間の相互相関係数の定義と同様である。しかし、式(1)の分子は畳み込み済み系列における最大絶対値である。本ステップの目的は、2つのチャネル状態情報推定値の間のあらゆる可能性のあるランダム位相歪みを補正することである。チャネル状態情報は通常、初期位相歪み及び線形位相歪みの影響を受ける。初期位相歪みは通常、搬送周波数オフセット(CFO)及び共通位相オフセット(CPE)により生じる。線形位相歪みは、シンボルタイミングオフセット(STO)及びサンプリング周波数オフセット(SFO)により生じる場合がある。例えばチャネル状態情報の最初のいくつかのタップが損なわれるか又は異なる測定値に追加される場合があり、それにより2つのチャネル状態情報推定値の間に同期誤差が生じる。チャネル状態情報推定値における位相歪みを補正すると、時間反転共振強度は、精度を維持しつつ、チャネルインパルス応答間の一部又は実質的に全ての類似性を取り込むことができる。位相歪みを補正する方法を本明細書の後節で説明する。
【0104】
周波数領域における時間反転パラメータ
受信機側において、各チャネル状態サウンディングの後、それぞれに対するL×Mの未加工のチャネル状態情報行列を以下のように収集できる。
H
i =[h
(1), h
(2) ,... , h
(M)], ∀i 式(3)
この場合、Mは送信機と受信機との間のリンクの数であり、Lはチャネル周波数応答(CFR)における使用可能なサブキャリアの数である。本明細書において、各送信機は1つ以上のアンテナを有することができ、各受信機は1つ以上のアンテナを有することができる。送信機アンテナと受信機アンテナの各対は1つの通信リンクに対応する。従って、例えば送信機が3つのアンテナを有し且つ受信機が2つのアンテナを有する場合、このイベント検出器システムには3×2=6個のリンクが存在すると言う。チャネル周波数応答は、周波数領域において測定されるチャネル状態情報である。
【0105】
2つのチャネル状態情報サンプルh
1及びh
2の間の周波数領域における時間反転時空間共振強度(TRRS) TR(h
1, h
2) を以下のように定義する。
式中、Lはチャネル状態情報ベクトルの長さであり、kはサブキャリアインデックスであり、g
2は以下のように取得されるh
2の時間反転シグニチャである。
g
2[k]=h
*2[k], k=0, 1, ...,L−1 式(5)
【0106】
式(4)の分子において、線形位相成分にわたる最大値探索動作が実行され、例えばWiFiである直交周波数分割多重(OFDM)に基づくシステムにおけるランダム線形位相オフセットが低減又は除去される。推定チャネル状態情報における線形位相オフセットは、発振器のサンプリングタイミングオフセット(STO)及びサンプリング周波数オフセット(SFO)から生じる。
【0107】
2つの推定マルチパスプロファイル(時間領域におけるチャネルインパルス応答及び周波数領域におけるチャネル周波数応答)を比較する場合、それらは最初に時間反転空間にマッピングされ、そこで各々は1つの時間反転シグニチャとして表される。その場合、時間反転時空間共振強度は、マッピングされた時間反転空間における2つのマルチパスプロファイルの間の類似性を定量化するメトリックである。
【0108】
周波数領域におけるTRRSの統計的挙動
位相歪みを補正した後に推定チャネル周波数応答に位相オフセットが存在しない場合、多入力多出力(MIMO)システムにおける各リンクに対する式(4)の時間反転共振強度を以下のように計算できる。
式中、kはサブキャリアのインデックスであり、Lはサブキャリアの総数である。チャネルが定常性を有するという仮定に従うと、チャネル周波数応答(CFR)h
0及びh
1が同一のロケーション又は同一の状態から生じる場合、h
1を以下のようにモデル化できる。
h
1=h
0+n 式(7)
式中、nはガウスノイズのベクトルであり、
Lはチャネル周波数応答の長さである。
【0115】
時間反転イベント検出器:ベースライン法
段階1.オフライントレーニング
時間反転イベント検出器(TRED)は、一意の屋内マルチパスプロファイル及び時間反転技術を利用して、例えば屋内イベントであるイベントを区別して検出する。オフライントレーニング段階において、あらゆる対象イベントのマルチパスプロファイルが収集され、時間反転空間における対応する時間反転シグニチャがデータベースに格納される。しかし、ノイズ及びチャネルフェージングにより、特定の状態からのチャネル状態情報は時間と共に若干変化する場合がある。この種の変動に対処するために、状態毎にいくつかの瞬間チャネル状態情報サンプルを収集してトレーニングセットを構築する。
【0116】
基本的に、イベント検出器は分類を使用する。分類は、カテゴリの所属が既知である観察値を含むデータのトレーニングセットに基づいて、新規の観察値がどのカテゴリ/クラスセットに属するかを識別することである。特に、具体的な一実現例において、分類を実現する処理又はアルゴリズムは分類器として知られる。その一例は、所定の電子メールを迷惑メールクラス又は非迷惑メールクラスに割り当てること、特定の症状の存在に基づいて所定の患者の観察された特徴が示す通りに患者に診断を割り当てること等である。多くの場合、個々の観察値は、特徴としても知られる定量化可能なプロパティのセットに解析される。いくつかの例において、特徴は分類可能で、順序を示すことができ、整数値又は実数値を有することができる。他の例において、分類器は、相似関数又は距離関数を使用して観察値と以前の観察値とを比較することにより機能する。更に別の例において、分類器は、入力データをカテゴリにマッピングする分類アルゴリズムにより実現される数学関数を更に参照する場合がある。分類器による決定が行われ且つそれが正確な決定であると確認されると、その後に収集される観察値は以前の観察値に追加され、それを用いて分類器/特徴を再トレーニングできる。
【0117】
開示されるイベント検出器において、トレーニングセットは、既知である所定の各イベントにおいて収集された受信プロービング信号からの推定CSIを含む。ベースライン法において、イベント検出器は、類似性スコアとして見なすことができるTRRSにより、監視段階で取得された推定CSIとトレーニング段階における観察値とを比較する。イベント検出に対する決定が行われ且つそれが正確な決定であると確認されると、監視段階において収集されたCSIをデータベースに追加でき、それを用いて特徴を再トレーニングできる。
【0118】
特に、Sを状態セットとする各状態S
i∈Sに対して、対応する時間領域トレーニングチャネル状態情報、すなわちチャネルインパルス応答が推定され、以下のようにH
iを形成する。
この場合、ベクトル変数の上付き文字*は共役演算子を表す。Lはチャネル状態情報ベクトルの長さを示し、kはチャネル状態情報における時間領域タップのインデックスである。その場合、トレーニングデータベースgはG
iの集合である。
【0119】
段階2.オンライン監視
トレーニングデータベースgを構築すると、時間反転イベント検出器はイベント検出を行える状態になる。監視段階の間、受信機は現在の推定チャネル状態情報とg内の時間反転シグニチャとをマッチングさせ続け、最も強い時間反転時空間共振を生成するものを探す。未知の監視中チャネル状態情報H
~と状態S
i中のサンプルとの間の時間反転共振強度は、以下のように定義される。
【0122】
ベースライン法の実験結果
ベースライン法を使用して実験が行われた。
図2Aの間取り
図220に詳細な設定を示す。図中、異なるドットマークは送信機(TX)及び受信機(RX)の異なるロケーションを表す。実験において、D1〜D8と示される複数の木製扉の開閉状態を検出する。丸いドット(例えば、222a、222b、222c、222d)で示される送信機の各ロケーションは互いに1m離間し、受信機の候補ロケーションは星(例えば、224a及び224b)で示される。TX−RXロケーションは、見通し内(LOS)送信及び見通し外(NLOS)送信の双方を含む。
【0123】
最初に、複数の屋内イベントを検出する際の時間反転イベント検出器の性能を調べる。更に、受信信号強度インジケータ(RSSI)に基づく屋内検出方法と時間反転イベント検出器との性能比較を調べる。受信信号強度インジケータは、受信機において受信された信号エネルギーを表すスカラである。無線信号が空中を移動する場合、異なる物体に遭遇し、送信信号の複数の変化したコピーが生成される。更に、送信中、異なる送信信号は屋内環境に応答して異なる減衰が生じる。従って、屋内環境の各スナップショット、すなわち各屋内イベントは異なる受信信号強度インジケータ値に対応してもよく、これは異なる屋内イベントを認識するために使用できる。トレーニング段階において、システムは異なる注目屋内イベントに対する受信信号強度インジケータを収集してデータベースに格納する。受信信号強度インジケータを使用して屋内イベントを分類する分類器は最近傍法に基づき、監視中の環境からの受信信号強度インジケータはトレーニング段階で収集された全ての屋内イベントの受信信号強度インジケータと比較される。屋内イベント検出に対する決定は、監視中の環境からの受信信号強度インジケータと最もマッチングする格納済み受信信号強度インジケータを見つけることにより行われる。
【0124】
受信信号強度インジケータに基づく方法を使用する実験において、受信機はロケーションB(224a)又はロケーションC(224b)のいずれかに配置され、送信機のロケーションはドット(222a〜222d)により表される。それらは最も左側のロケーションから1mずつ離間し、それぞれを「軸1」〜「軸4」と呼ぶ。全部で2つの受信機のロケーションと4つの送信機のロケーションがあり、すなわち8個のTX−RX対がある。時間反転イベント検出器の目的は、D1〜D8のうち、他の全ての扉が開いている中で閉まった木製扉を検出することである。
【0125】
時間反転イベント検出器及び受信信号強度インジケータに基づく方法の全体的な誤警報率及び検出率を表2及び表3に示す。
【0126】
見通し内の場合及び見通し外の場合の双方において、時間反転イベント検出器は受信信号強度インジケータに基づく方法より高い検出率及び低い誤警報率を達成し、性能が優れている。時間反転イベント検出器は、見通し外の場合に96.92%以上の検出率及び3.08%以下の誤警報を得ることができ、見通し内の場合に97.89%以上の検出率及び2.11%以下の誤警報を得ることができる。更に、受信機と送信機との間の距離が増加するほど、双方の方法の精度は向上する。
【0127】
図2Bを参照すると、時間反転イベント検出器に対する人間の移動の影響を調査するために、図中に網掛け部分230として示す領域を継続的に前後に移動する人間が0人、1人及び2人いる状態で実験を行った。また、送信機は丸印232で表すロケーションに配置され、受信機は六角形印234で表すロケーションに配置され、「D1」及び「D2」で示す隣接する2つの扉の状態を表4に示すように検出した。
【0128】
人間の移動により導入される干渉はマルチパス伝搬を変化させ、時間反転イベント検出器の監視段階における時間反転共振強度に変動を生じさせる。人間が会場内を動き回る場合、導入される干渉は変化し続け、各干渉の持続時間は短い。時間反転共振強度におけるバースト変動の影響に対処するために、「スライディングウィンドウ」と組み合わせた「多数決」法を採用して、検出結果を時間にわたり平滑化する。先行するK−1個の出力S
*k(k=t−K+1,...,t−1)及び現在の結果S_t^*を有すると仮定した場合、全てのS
*k(k=t−K+1,...,t−1)にわたり投票することにより、時間スタンプtに対する決定が行われる。Kは平滑化用スライディングウィンドウのサイズを示す。K個の出力S
*kのうち最も多くの票を有するイベントが時間スタンプtに対するイベントとして選択される。
【0129】
例えばK=11であり、時間反転イベント検出器の11個の出力S
*k(k=t−10,...,t)のセットが{E1,E1,E2,E1,E1,E2,E2,E2,E2,E1,E2}であるとする。本例において、5個の出力がイベントE1に対応し、6個の出力がイベントE2に対応し、イベントE2が時間スタンプtに対するイベントとして選択される。時間スタンプt+3において、時間反転イベント検出器の11個の出力S
*k(k=t−7,...,t+3)のセットが{E1,E1,E2,E2,E2,E2,E1,E2,E1,E1,E1}であるとする。本例において、6個の出力がイベントE1に対応し、5個の出力がイベントE2に対応するため、イベントE1が時間スタンプt+3に対するイベントとして選択される。
【0130】
表5において、人間の移動(HM)がない場合と、1人の人間及び2人の人間により意図的に実行された継続的な人間の移動がある場合との平滑化アルゴリズム使用時又は未使用時の時間反転イベント検出器の平均精度を比較する。この場合、スライディングウィンドウの長さはK=20であり、これは0.1秒の持続時間を表す。第1に、時間反転イベント検出器の精度は、屋内イベント、送信機及び受信機のロケーションの付近で継続的な移動を実行する人間の数が増加するにつれて減少する。更に、採用された平滑化アルゴリズムは人間の動作に対する時間反転イベント検出器のロバスト性を向上し、平滑化を行わない場合と比較して精度を7%〜9%向上する。その一方で、実験において、最も脆弱な状態は全ての扉が開いている状態「00」(表4を参照)であることが更に分かった。この状態で人間の移動が存在する場合、時間反転イベント検出器が「扉が閉じた」という誤報を生成する確率は他の状態より高い。これは、人間が扉のロケーションの付近を移動する場合、人間の身体が扉のロケーションにおける重度の閉鎖と見なされ、木製扉が閉じた状態と類似するため、マルチパスチャネル状態情報の変化が「扉が閉じた」と同様であるためである。
【0131】
時間反転イベント検出器:統計的方法
いくつかの実現例において、イベント検出器は、「開いている扉は無い」、「玄関扉が開いている」等である屋内イベントの発生を検出するように設計される。ここでは、統計値に基づくイベント検出器の詳細を開示する。統計値に基づくイベント監視システム(又は保護システム)は、オフライントレーニング段階及びオンライン学習段階である2つの動作段階を有する。トレーニングセットは、所定の既知の各イベントにおいて収集された受信プロービング信号からの推定CSIを含み、それらから各イベントに対する時間反転共振強度の関数における統計的分布を計算する。オンライン監視段階では、未知のイベントにおいて収集されたCSIを使用する確率特徴が抽出され、未知のイベントは既知のイベントの1つに分類される。イベント検出の決定が行われ且つそれが正確な決定であると確認されると、監視段階において収集されたチャネル状態情報をトレーニングセットに追加でき、それを用いて特徴を再トレーニングできる。
【0132】
段階1.オフライントレーニング
図19を参照すると、オフライントレーニング段階240において、イベント監視システムは、監視される屋内イベント毎に同一のイベントプロファイルから収集されたチャネル周波数応答の間の時間反転共振強度の対数正規分布モデルを構築することを目的とする。
【0133】
特に、正常イベント及び異常イベントを含む屋内イベントのセットをSとする各屋内イベントS
i∈Sに対して、対応する周波数領域チャネル周波数応答が受信機側で取得され、以下のように推定される。
H
i=[h
i(1), h
i(2),..., h
i(M)], i=1,2,...,N 式(32)
式中、NはSのサイズであり、Mは送信機と受信機との間のリンクの数であり、H
iの次元はL×Mである。Mは、送信機アンテナの数と受信機アンテナの数の積である。ここで、用語「正常イベント」は、ユーザ/環境が正常であると考え、警報を生成する必要がないと考えるイベントを示す。用語「異常イベント」は、ユーザ/環境が正常でない又は異常であると考え、警報を生成する必要があると考えるイベントを示す。
【0134】
いくつかの実現例において、クラス内時間反転共振強度の統計値を学習するために、H
iの少なくとも300個の実現例が収集される。屋内イベントS
iに対するチャネル状態情報の十分なサンプルを収集すると、以下のステップを使用して統計値が推定される。
【0135】
・位相オフセットの較正:チャネル状態情報の各実現例にランダム線形位相オフセットがあるため、何らかの位相較正法を適用して全ての実現例を整列させ、その後、式(6)を使用して時間反転共振強度を計算できる。
【0136】
・CSI代表生成器:本ステップにおいて、リンク毎にトレーニングセット内の全ての屋内イベントに対して、同一の屋内イベントからの他の全てのチャネル周波数応答に最も類似する代表チャネル状態情報が見つけられる。最初に、屋内イベントS
iに対して収集された全ての実現例の間のリンクmに対する対の時間反転共振強度が計算される。時間反転共振強度は異なるチャネル周波数応答の間の類似性を定量化するのに使用できるため、自身とイベントS
iにおけるリンクmに対する他の全てのチャネル周波数応答との間の時間反転共振強度が事前に定義された類似性閾値を上回る数が最も多いチャネル周波数応答が、イベントS
iにおけるリンクmに対する代表チャネル状態情報として選択される。全てのリンク及び全ての屋内イベントに対して、これを繰り返す。その結果、全ての代表チャネル状態情報は以下のような集合を形成する。
式中、h
i(l)(n
l)は、n
l番目の実現例からのリンクlに対するイベントS
iのチャネル周波数応答を示す。n
l(l=1,2,...,M)は実現例インデックスであり、これは全てのl及びH
rep,iにおけるiに対して異なってもよい。
【0137】
・対数正規パラメータの推定:代表チャネル状態情報が多入力多出力システムにおける全てのイベント及び全てのリンクに対して見つけられると、対数正規分布パラメータを推定できる。リンクm及びイベントS
iに対して、代表チャネル状態情報H
(m)rep,iと他の全ての実現例h
i(m)(l)との間の時間反転共振強度が式(6)を使用して計算され、以下のように示される。
【0139】
トレーニングの最後に、全てのトレーニング済みイベントに対する代表チャネル状態情報H
repの集合及び対数正規分布パラメータQ
repの集合を含むことにより、トレーニングデータベースが構築される。全てのトレーニング済みイベントは、警報が生成されない正常イベントS
normal及び異常イベントが検出された場合に警報がユーザに報告される必要のある異常イベントS
abnormalである2つのグループに分類可能である。
【0140】
段階II.オンライン監視
監視段階において、
図19及び
図20に示すように、受信機は未知のイベントからチャネル状態情報をH
test=[h
(1)test, h
(2)test,..., h
(M)test]として継続的に収集する。統計値に基づくイベント検出器は、統計メトリックを計算して評価することにより、未知の監視されたチャネル状態情報に最も類似するトレーニングデータベース内のイベントを見つける。本明細書中、用語「監視されたチャネル状態情報」又は「検査されたチャネル状態情報」は、監視段階において収集されるチャネル状態情報を示す。詳細なステップを以下に列挙する。
【0141】
・TRRSの計算:取得されたチャネル状態情報測定値H
testが位相オフセットにより破損されるため、トレーニング段階で使用したのと同一の位相較正アルゴリズムをチャネル状態情報H
testに最初に適用して、ランダム位相オフセットを除去する必要がある。その後、トレーニング済み屋内イベント毎に、代表チャネル状態情報と監視測定値との間の時間反転共振強度を式(6)により全てのリンクに対して計算する。これは以下のように示される。
【0142】
・統計メトリックの計算:時間反転共振強度が取得されると、H
testと全てのトレーニング済みイベントS
iとの間の統計メトリックが以下のように計算される。
式中、F
(μ,σ)(x)は、パラメータ(μ,σ)及び変数xを有する対数正規分布の累積分布関数(CDF)である。関数F
(μ,σ)(x)が独立変数x及びパラメータ(μ,σ)を有する累積分布関数であるため、これはxと共に増加する。より大きいxはより高いF
(μ,σ)(x)を示し、より高いF
(μ,σ)(x)はより大きいxを示す。従って、より大きいW
i,testはより小さいTR
(m)i,testセットを示し、これは、監視されたチャネル状態情報とトレーニング済みイベントS
iのチャネル状態情報との間の類似性が低いため、未知のイベントの監視されたチャネル状態情報がトレーニング済みイベントS
iに属する可能性が低いことを意味する。そのため、当該統計メトリックは、未知のイベントからの監視されたチャネル状態情報が何らかのトレーニング済みイベントS
iに属する可能性の低さを反映する。
【0143】
・決定:提案される統計値に基づくイベント検出器は、2段階状態チェッカを用いて、監視中のチャネル状態情報測定値に対する決定を行う。詳細を以下に示す。
(a)段階1−正常状態チェッカ:環境が正常である(すなわち、正常イベントのうちの1つのみが発生する)か又は異常である(すなわち、現在の環境状態がトレーニング済み正常イベントのいずれにも属さない)かを検出するために、メトリック値W
normal,testを使用して、事前に定義された閾値γ
normalと比較する。
W
normal,test<γ
normalの場合、監視中のチャネル状態情報測定値に対するシステムの決定はD
test=normalであり、決定手順は終了する。W
normal,test<γ
normalでない場合、決定手順は次の段階である異常状態チェッカに進む。
(b)段階2−異常状態チェッカ:本ステップでは、H
testが収集される時間の間に何らのイベントが屋内環境において発生するため、どのトレーニング済み異常イベントが発生しているのかを判定することを目的とする。従って、メトリック値W
abnormal,testを使用して、事前に定義された閾値γ
abnormalと比較する。
その後、監視時間に対するシステムの決定が式(43)のW
abnormal,testに基づいて以下のように行われる。
D
test=nは、トレーニング段階でトレーニングされていない何らかの異常イベントが発生していることを示す。
【0144】
統計的方法の実験結果
図3を参照すると、実験は一軒の家屋において行われ、間取り
図250が図示される。間取り
図250において、間取り
図250中の矢印で示される扉及び窓の状態が統計値に基づくイベント検出器により監視される。試験家屋において、受信器のロケーション252が与えられ、2つの送信機のロケーション254a、254bが試験されて評価される。一方の送信機のロケーション254aは玄関扉の領域に存在し、他方の送信機のロケーション254bは台所に存在する。
【0145】
受信機動作特徴(ROC)性能が送信機の双方のロケーション254a、254bにおいて評価される。構成Iでは、送信機はロケーション254aに配置される。構成IIでは、送信機はロケーション254bに配置される。
図4A及び
図4Bは、検出率と誤警報率との間のトレードオフを表す受信機動作特徴の曲線プロットを示すグラフ260及びグラフ270である。検出率は、正確に分類されたクラスiからの監視サンプルの百分率であり、誤警報率は、クラスiに含まれないがクラスiとして識別された監視サンプルの百分率である。
【0146】
送信機が玄関扉領域254aに存在し且つ受信機がAliceの部屋252の内側に配置される第1の構成において、全てのイベントがトレーニングデータベースに含まれる場合、受信機動作特徴性能は完全ではなく、
図4Bのグラフ270に示すように、イベントe7の勉強部屋の扉256をe1と区別できない。これは、イベントe7が送信機及び受信機から遠すぎ、イベントe7により導入されたマルチパスの変化が小さすぎて、イベントe7と全ての扉が閉じているイベントe1とを分離できないためである。遠くのイベントをトレーニングデータベースから除外すると、
図4Aのグラフ260に示すように、受信機動作特徴性能は完全である。一般に、適切な監視性能を有するためには、イベントに対して監視されている物体(例えば、扉又は窓)は送信機又は受信機の少なくとも一方に対する見通し内パスを有するか又は送信機と受信機との間のリンクの近くに位置する必要がある。上記の基準を「適切な監視性能のための基準」と呼ぶ。構成Iにおいて、e6及びe7以外の全てのイベントは適切な監視性能のための基準を満たす。
【0147】
構成Iにおける結果と同様に、構成IIの場合、e2、e8及びe9以外の全ての対象イベントは適切な監視性能のための基準を満たす。適切な監視性能のための基準を満たす対象イベントに対して、システムは
図5Aのグラフ280に示すように、誤警報率がほぼ0である完璧な検出精度を有する。
図5Bを参照すると、グラフ290は、適切な監視性能のための基準を満たさないイベントに対して、システムが高い誤警報率を有することを示す。構成I及び構成IIの双方において、適切な監視性能のための基準を満たさないイベントは、「全ての扉が閉じている」と分類される。
【0148】
評価:動作
ここでは、構成Iのイベントリストの全ての対象イベントが意図的に実行され且つシステムが各イベントの間にチャネル状態情報を継続的に収集する監視環境がシミュレーションされる。3つの例を
図6A〜
図6Cに示す。
図6Aは、全ての扉及び窓が閉じている状況に対する決定を示すグラフ300である。
図6Bは、Bobの部屋の扉が部屋の内側から開かれる状況に対する決定を示すグラフ310である。
図6Cは、Aliceの部屋の窓が外側から開かれる状況に対する決定を示すグラフ320である。グラフ300、310、320において、x軸は決定インデックス又は時間インデックスを表し、決定は一定期間にわたり周期的に行われる。y軸は表6に対応する状態インデックスを表す。これらの例において、システムはイベントe1からイベントe4への移行(
図6Bに示すように)及びイベントe1からイベントe9への移行(
図6Cに示すように)の検出に成功している。
【0149】
家屋の外側のアクティビティに対する統計値に基づくイベント検出器のロバスト性をシミュレーションする。
図7Aを参照すると、グラフ330は玄関扉の外側を歩いている人間がいる時の決定結果を示す。出力された決定は、「全ての扉が閉じている」として全て正確に判定されている。
図7Bを参照すると、グラフ340は裏口の扉の外側を歩いている人間がいる時の決定結果を示す。出力された決定は、「全ての扉が閉じている」として全て正確に判定されている。
図7Cを参照すると、グラフ350は自動車が家屋の外側を走行している時の決定結果を示す。出力された決定は、「全ての扉が閉じている」として全て正確に判定されている。グラフ330、340及び350に示す決定結果は、システムが外側のダイナミクスに対して信頼性及び安定性を有することを示す。
【0150】
時間反転イベント検出器:機械学習法
屋内イベントの発生を検出するという、統計値に基づく方法と同一の目的を有する機械学習に基づくイベント検出器を以下に説明する。機械学習に基づく方法は、イベントを特徴空間にマッピングし、特徴空間における異なる屋内イベント間の距離を最大にしようとする。本方法は、計算の複雑性が高くなるが(統計値に基づく方法と比較して)、より高い決定性能を達成できる。機械学習に基づくイベント検出器は、
図21に示すように、オフライントレーニング段階470及びオンライン監視段階472で動作できる。
【0151】
段階1.オフライントレーニング
統計値に基づく方法と同様に、トレーニング段階470において、監視される全ての対象イベントの屋内マルチパスプロファイルが収集され、サポートベクトルマシン(SVM)及び特徴次元縮小法、すなわち主成分分析(PCA)である分類器をトレーニングするために使用される。
【0152】
データの取得:最初に、Sが正常イベント及び異常イベントを含む屋内イベントのセットである各屋内イベントS
i∈Sに対して、対応する周波数領域チャネル周波数応答が取得され、受信機側において式(32)と同様の形式で推定される。
【0153】
・位相オフセットの較正:チャネル状態情報の各実現例にランダム線形位相オフセットがあるため、位相較正法を適用して全ての実現例を個別に整列させた後、各チャネル周波数応答のエネルギーを正規化する。
【0154】
・初期特徴の生成:各イベントS
iに対して、チャネル状態情報プロファイルH
iが初期特徴として処理される。各リンクチャネル状態情報h
i(m)は複素値ベクトルであるため、機械学習用途で使用する前に処理する必要がある。複素値正規化チャネル状態情報の実数部及び虚数部を抽出して連結し、以下のような新規の特徴ベクトルを形成する。
【0155】
・特徴次元縮小:主成分分析において、直交変換を適用して、相関変数である可能性のあるものを含む元の特徴を各次元が無相関である新規の特徴空間に変換する。主成分分析は、全てのイベントに対して先行ステップで取得された新規に生成された特徴ベクトルを使用して学習される。いくつかの実現例において、大きい順に200個の変換後成分が新規特徴として選択され、特徴の次元が縮小される。同一の直交変換が監視段階で使用される。尚、上述した200という数は一例にすぎず、用途に応じて、大きい順に例えば100個又は300個である別の数の変換後成分を新規特徴として選択できる。
【0156】
・サポートベクトルマシンのトレーニング:より小さい次元の新規特徴が生成されると、それらは線形サポートベクトルマシンに提供され、異なるクラス(イベント)間のマージンが最大になるように重みベクトルがトレーニングされる。
【0157】
トレーニング段階の最後に、主成分分析に対する直交変換及び線形サポートベクトルマシン分類器が学習される。
【0158】
段階2.オンライン監視
未知のイベントから収集された各サンプルチャネル状態情報に対して、トレーニング段階で使用されたのと同一の前処理を最初に実行して、位相オフセット及び初期位相歪みを低減又は除去し、その後、チャネル状態情報の実数部及び虚数部を連結することにより特徴ベクトルが生成される。その後、学習された主成分分析の直交変換を特徴ベクトルに適用して、次元数を減少する。新規の特徴ベクトルは、トレーニング済み線形サポートベクトルマシンを使用して分類され且つラベル付けされる。イベント検出に関する決定が行われ且つそれが正確な決定であると確認されると、監視段階で収集されたチャネル状態情報をトレーニングセットに追加でき、それを用いてサポートベクトルマシンを再トレーニングできる。
【0159】
機械学習に基づく方法の実験結果
本節では、前節と同一のデータを使用する受信機動作特性性能及び運用テストを通じて、機械学習に基づくイベント検出器の性能を評価する。送信機が玄関扉領域に配置される構成Iを調べる。主成分分析の次元縮小後の分類特徴を形成するために、20個の実数値主成分が選択される。
【0160】
適切な監視性能の基準を満たす対象イベントに対して、機械学習に基づくイベント検出器は、
図8Aのグラフ360に示すように、誤警報率がほぼ0である完璧な検出精度を有する。
図8Bを参照すると、グラフ370は、適切な監視性能のための基準を満たさないイベントに対して、機械学習に基づくイベント検出器の誤警報率が高いことを示す。
【0161】
図9Aは、全ての扉及び窓が閉じている状況に対して機械学習に基づくイベント検出器により行われた決定を示すグラフ380である。
図9Bは、Bobの部屋の扉が部屋の内側から開かれる状況に対する決定を示すグラフ390である。
図9Cは、Aliceの部屋の窓が外側から開かれる状況に対する決定を示すグラフ400である。グラフ380、390及び400において、x軸は決定インデックス又は時間インデックスを表し、決定は一定期間にわたり周期的に行われる。y軸は表6に対応する状態インデックスを表す。これらの例において、システムはイベントe1からイベントe4への移行を検出することに成功し(
図9Bに示すように)、イベントe1からイベントe9への移行を検出することに成功した(
図9Cに示すように)。
【0162】
上記の結果は、受信機動作性能評価及び運用テストの双方において、適切な監視性能のための基準を満たす対象イベントに対して誤警報率がほぼ0である完璧な検出率を達成する点で、機械学習に基づくイベント検出器が統計値に基づくイベント検出器と同様と性能を有すること、並びに運用テストにおいて対象イベントの発生が検出され且つ報告されることを示す。
【0163】
人間動作検出器:TRRS分散に基づく方法
図22は、時間反転共振強度分散に基づく人間動作検出器480の処理ブロック図を示す。これは、時間反転共振強度の時系列の分散により定量化される大きいダイナミクスが検出されると即座に報告するように設計される。家屋内での人間の動作は、動作が送信機又は受信機の近くで起きる場合は特に、チャネルフェージング及びノイズにより発生する影響と比較して大きい変動を時間反転共振強度の時系列に導入する場合がある。時間反転共振強度分散に基づく人間動作検出器は、オフライントレーニング段階482及びオンライン監視段階484である2つの段階で動作できる。オフライントレーニング段階482において、マルチパス伝搬環境における異なる種類のダイナミクスにより導入される時間反転共振強度分散が調べられ、人間の動作がある場合と人間の動作がない場合のダイナミクスを判定する際に使用するために適切な閾値が取得される。オンライン監視段階484において、検出器480は測定されたチャネル状態情報を受信し、時間反転共振強度の時系列における分散を判定し、分散とトレーニング段階において確立された閾値とを比較し、家屋内に人間の動作が存在するか否かの判定を行う。
【0164】
段階1.オフライントレーニング
トレーニング段階482において、システムは、監視領域内に人間の動作が存在しない場合の時間反転共振強度の時系列におけるダイナミクスと比較した人間の動作が存在する場合のダイナミクスの大きさを学習する必要がある。トレーニングにおける詳細なステップを以下に列挙する。
・データの取得:最初に、屋内環境の状況を2つのクラス、すなわち、環境が静的であるS
0と、監視領域内で動いている人間が少なくとも1人いるS
1に分ける。双方のクラスに対して、チャネル状態情報サンプルとも呼ばれるチャネル周波数応答が継続的に収集され、以下のように示される。
式中、tはチャネル周波数応答が取り込まれる期間の時間インデックスである。チャネル周波数応答が位相歪みにより破損する場合があるため、時間反転共振強度分散に基づく人間動作検出器が時間反転共振強度の時系列のダイナミクスを学習する前に、位相オフセットがそれぞれ個別に補償される。
・ダイナミクスの取得:静的状態S
0及び動作状態S
1の双方に対するチャネル周波数応答測定値の時系列が取得されると、時間ウィンドウ内で時間に沿って時間反転共振強度の分散値を追跡(トラッキング)することにより、時間反転共振強度の時系列のダイナミクスが定量化される。分散の時系列を取得するために、各状態S
i(i=0,1)に対して、長さN及びオーバラップN−1を有するスライディングウィンドウがH
i(t)の時系列に適用され、ウィンドウ内で継続的に収集されたチャネル周波数応答をセグメント化する。例えばウィンドウ長Nとすると、チャネル周波数応答系列はH
i(t
0)〜H
i(t
0+N*T
s)であり、T
sはサンプリング時間であり、すなわち各チャネル状態情報の検知の時間間隔はT
sである。その後、時間t
0から始まるウィンドウに対する時間反転共振強度系列が、t
0≦t≦t
0+N*T
sである
【0166】
段階2.オンライン監視
監視段階において、システムが継続的に環境を感知してチャネル状態情報サンプルを収集するため、チャネル状態情報の時系列H
test(t),t
0≦t≦t
0+N*T
s,∀t
0を取得するために、トレーニング段階と同一の長さN及びオーバラップ長さN−1を有するスライディングウィンドウが適用される。位相オフセット及び初期位相歪みを補償した後、時間反転共振強度系列が
として取得され、この時間ウィンドウ内の分散はσ
test(t
0)である。家屋内に人間の動作があるか否かを判定するために、σ
test(t
0)値が閾値γ
motionと比較される。σ
test(t
0)≧γ
motionの場合のみ、システムは人間の動作の存在を報告する。
【0167】
時間反転共振強度分散に基づく人間動作検出器を使用することにより、誰かが家屋内を歩いている場合、システムはそれを検出できる。更に、動作が送信機又は受信機の近くで生じる場合、精度は高くなる。内側に金属を有する大きい物体が部屋の中に存在する場合があるため、無線信号(送信機から送出され、受信機により受信される)が動いている人間の身体に到達する前に大部分又はほぼ全ての電磁波を反射する金属の後方で人間の動作が発生する場合、動作検出は妥協される場合がある。
【0168】
図10Aを参照すると、グラフ410は、家屋の中を歩いている人間がいないことを人間動作検出器が正確に判定したことを示す。
図10Bを参照すると、グラフ420は、玄関扉領域を歩いている人間がいることを人間動作検出器が正確に判定したことを示す。
【0169】
図10Cを参照すると、グラフ430は、決定432a、432b及び432cで表される特定の期間に広範囲を歩いている人間がいること、並びに決定434a及び434bで表される特定の期間に広範囲を歩いている人間がいないことを人間動作検出器が正確に判定したことを示す。
図10Dを参照すると、グラフ440は、特定の期間に居間領域を歩いている人間がいること及び特定の期間に居間領域を歩いている人間がいないことを人間動作検出器が正確に判定したことを示す。
図10Eを参照すると、グラフ450は、特定の期間に台所を歩いている人間がいること及び特定の期間に台所を歩いている人間がいないことを人間動作検出器が正確に判定したことを示す。
【0170】
図10Fを参照すると、グラフ460は、家屋の外側を歩いている人間がいる場合の決定結果を示す。人間動作検出器は、家屋の中を歩いている人間がいないことを正確に判定した。決定は、家屋の外側を歩いている人間の影響を受けなかった。
【0171】
平滑化のための時間ダイバーシチ
いくつかの例では、屋内環境において、無線送信におけるノイズ及び外のダイナミクスが存在し、受信機側における推定チャネル状態情報に影響を及ぼす場合がある。これらの種類の干渉は、保護システムの誤検出又は誤警報を引き起こす場合がある。いくつかの実現例において、これらの干渉は僅かであり且つ短時間である場合が多いため、時間と矛盾しない決定のみを出力するために時間ダイバーシチ平滑化法が提供される。時間ダイバーシチ平滑化法は、屋内イベントの一般的な持続時間が通常は数秒であるという仮定に依存する。
【0172】
いくつかの実現例において、時間ダイバーシチ平滑化アルゴリズムは、以下に説明するように2段階の多数決処理を使用する。
【0173】
・段階Iの多数決:当段階の多数決は、各単一チャネル状態情報推定値に基づいて生成された未加工の決定に直接適用される。長さN
1及びオーバラップ長O
1を有するスライディングウィンドウSW
1を用いて、インデックスnの決定は
D
MV1(n)=MajorityVote{D(1+(n−1)*O
1),D(2+(n−1)*O
1),...,D(N
1+(n−1)*O
1)}により取得される。式中、D(n)は、イベント検出器又は人間動作検出器のいずれかからのn番目のチャネル状態情報測定値に対する決定である。
【0174】
・段階IIの多数決:段階Iからの決定D
MV1(n)が取得されると、第2段階の多数決において、長さN
2及びオーバラップ長O
2を有する第2のスライディングウィンドウSW
2が決定系列D
MV1(n),n=1,2,...に適用される。この場合、本ステップにおいて、時間ダイバーシチ平滑化を適用後の最終的な決定出力はD
final(n)=MajorityVote{D
MV1(1+(n−1)*O
2),D
MV1(2+(n−1)*O
2),...,D
MV1(N
2+(n−1)*O
2)}である。
【0175】
時間ダイバーシチ平滑化を適用することにより導入される時間遅延は、(N
1+(N
2−1)*O
1)×T
s秒である。
【0176】
人間動作検出:アンテナ相関に基づく方法
いくつかの実現例において、アンテナ相関分散に基づく人間動作検出器は、アンテナ相関の分散により定量化される大きいダイナミクスが検出されると即座に報告するように設計される。人間の動作は、動作が送信機又は受信機の近くで起きる場合は特に、チャネルフェージング及びノイズにより発生する影響と比較して大きい変動をアンテナ相関に導入する場合がある。本方法において、人間の動作がある状況と人間の動作がない状況との間のアンテナ相関の分散におけるダイナミクスを区別するために、アンテナ相関の分散に基づく人間動作検出器が使用するのに適した閾値が取得される。
【0177】
アンテナ相関を計算する前に、位相補償アルゴリズムを使用して、各リンクにおけるCSIの位相歪みを補償する。
図11を参照すると、いくつかの実現例において、3アンテナWiFi装置490が送信機として使用され、3アンテナWiFi装置500が受信機として使用される。尚、3アンテナWiFi装置は例として使用されるにすぎず、送信機及び受信機は4個以上又は2個以下のアンテナを有することができる。例えば送信機及び受信機はそれぞれ、5個、10個、20個、30個又は31個以上のアンテナを有することができる。
【0178】
図11において、H
i,jは、i番目のTXアンテナとj番目のRXアンテナとの間のリンクにおけるチャネル状態情報推定値を表す。アンテナ相関γは、TXアンテナ相関又はRXアンテナ相関であってもよく、以下のように計算可能である。
式中、MはTXアンテナの数を表し、NはRXアンテナの数を表す。
式(47)及び式(48)から、各時間インスタンスにおけるアンテナ相関γ
tを
図12に示すように計算できる。
【0179】
背景ノイズ及びハードウェアの障害により、アンテナ相関γ
tは多くのノイズを含む場合がある。従って、動作検出にγ
tを使用する前に、γ
tに対する後処理が必要な場合がある。最初に、以下の式(49)に示すように、γ
tの時間差を取得する。
Δγ
t=γ
t−γ
t−1 式(49)
次に、ウィンドウサイズWを有する移動平均ウィンドウがΔγ
tに適用され、平均値及び分散は以下のように動作検出に使用できる。
【0180】
ここでは、実験は
図13に示すようなオフィスで行われ、4個の実験が実行された。送信機のロケーションを丸で示し、受信機のロケーションを三角形で示す。各実験において、矩形で示す人間が送信機と受信機との間の空間を繰り返し通過した。以下の実験に対して、RXアンテナ相関を考察する。
【0181】
実験1:小さい部屋における見通し内の場合の動作:第1の実験では、送信機及び受信機の双方が見通し内の状況で小さい部屋に配置され、人間は送信機と受信機との間のリンクを繰り返し通過した。アンテナ相関を
図14のグラフ510に示す。
図14のグラフ510は、アンテナ相関が時間インデックスに沿って非常に多くのノイズを含むことを示す。従って、アンテナ相関の差分が式(49)を使用して判定され、結果を
図15のグラフ520に示す。
【0182】
ウィンドウサイズW=1秒を選択した場合、Δγ
tの統計値を使用して、
図16及び
図17に示すように人間の動作を検出できる。
図16は、送信機と受信機との間の領域を歩いている人間がいる場合のΔγ
tの平均を示すグラフ530である。
図17は、送信機と受信機との間の領域を歩いている人間がいる場合のΔγ
tの分散を示すグラフ540である。
図16及び
図17のピークは、検出された人間の動作を表す。
【0183】
第2の実験では、送信機及び受信機をオフィスの入口に配置した。オフィスのカード鍵システムを使用して、入室履歴と歩いている人間がいる場合のVar(Δγ
t)とが、
図18のグラフ550に示すように、時間において整列される。
【0184】
尚、オフィスのカード鍵システムにより提供される入室履歴は、オフィスからの人間の退室を記録しない。従って、Var(Δγ
t)におけるいくつかの未知のピークは、オフィスから退室する人間により生じるものである場合がある。
【0185】
人間動作検出:ノイズレベルに基づく方法
いくつかの実現例において、線形位相オフセット及びランダム初期位相の問題を回避するために、チャネル周波数応答の振幅情報のみが使用される。説明の便宜上、時間iにおける(正規化された)チャネル周波数応答の振幅を以下のようなロングベクトルと示す。
【0189】
誤警報要件αを与えた場合、閾値ηは次式により判定される。
式中、Q(・)はQ関数であり、すなわち標準正規累積分布関数の補数である。誤警報確率αが小さい場合、Q
-1(α)は大きく、それと同時にηも大きい。上記の説明は、観察ウィンドウIの長さが上述したアルゴリズムの性能において重要な役割を果たすことを示す。ウィンドウのサイズIが大きいほどP
^Nの分散は減少し、閾値ηをより小さい値に設定でき、それにより、式(56)による観察ウィンドウの持続時間に相当する持続時間を有する動作に対する検出確率を向上できる。しかし、ウィンドウサイズが大きいほど、システムの応答時間は長くなり、持続時間が短い動作に対する検出確率は低下する。異なる目的又は用途に応じて、異なるウィンドウサイズが選択されてもよい。
【0190】
人間動作検出:到着時間(ToA)に基づく方法
【0191】
人間の動作がWiFi信号の物理的伝搬パスを変更するため、チャネルインパルス応答はそれに応じて影響を受ける。マルチパス成分の相対到着時間又は振幅の変化等の多くの特徴を利用できる。例えば第1の有意なマルチパスと第2の有意なマルチパスとの間の到着時間の差分を利用できる。この差分が変化する場合、これは送信機及び/又は受信機の近くで動作が起きたことを示す。
【0192】
ダイバーシチを使用するTRRSの組み合わせ
上記で定義したように、同一イベント又は異なるイベントにおいて収集されたCSI間の類似性を特徴づけるために、時間反転共振強度を以下のように計算できる。
h
0及びh
1は2つのフィンガープリントであり、Kは使用可能なサブキャリアの総数であり、H
0[k]及びH
1[k]はサブキャリアkにおけるCSIであり、ηは同期誤差を補償したh
0とh
1との間の変更された相互相関であり、Λ
0、Λ
1はそれぞれh
0及びh
1のチャネルエネルギーである。受信機及び送信機の無線周波数フロントエンド成分の不一致により受信機が送信機と完全に同期しない場合があるため、e
-jkφの追加の位相回転を使用して、ηの計算における同期誤差により発生した位相歪みを解消する。その場合、φは以下に説明するアルゴリズム1を使用して推定及び補償可能である。上記の式(64)は、時間反転共振強度が0から1の範囲であることを示す。更に詳細には、時間反転共振強度が大きいほど、2つのCSI間の類似性が高いことを示し、従って、2つの関連するイベント間の類似性が高いことを示す。
【0193】
いくつかの実現例において、イベント検出システム又は人間動作検出システムは、周波数ダイバーシチ及び/又は空間ダイバーシチを含むダイバーシチを利用することにより、有効帯域幅の増加を実現できる。周波数ダイバーシチは、異なるWiFiチャネルを使用することにより達成可能である。更に、周波数ダイバーシチは、直交周波数分割多重システムにおいてサブキャリアにより導入されるダイバーシチを含むことができる。大量のサブキャリア(例えばIEEE802.11nプロトコルを使用する40MHz帯域幅の場合、114個のサブキャリア)により、非常に安定した性能を得られる場合がある。
【0194】
無線通信システムに存在することのあるハードウェア不良を補償することにより、異なるダイバーシチを組み合わせた場合の時間反転共振強度を計算する方法を以下に説明する。一般に、時間反転共振強度は、2つのCSI間の差分を定量化するメトリックであると考えることができる。2つのCSIは、2つの異なる物理的ロケーションから発生してもよいが、2つの仮想(論理的)ロケーション/状態から発生してもよい。前者の場合、ダイバーシチを有する時間反転共振強度は、ロケーション特定及び追跡に役立つことができる。後者の場合、ダイバーシチを有する時間反転共振強度は、呼吸監視、人間認識及び/又は保護/セキュリティシステム等の用途に使用可能である。
【0195】
現在のWiFiシステムには2つの異なるダイバーシチが存在し、すなわち周波数ダイバーシチ及び空間ダイバーシチが存在する。IEEE802.11nによると、35個のWiFiチャネルが、40MHzの最大帯域幅を有する2.4GHz及び5GHzの周波数帯域におけるWiFi送信に割り当てられる。WiFiチャネルが多数であることで周波数ダイバーシチが得られ、深いフェージング又は重大な干渉が発生した場合にWiFi装置が周波数ホッピングを実行する機会が与えられる。それに対して、空間ダイバーシチは多入力多出力WiFi装置で利用可能であり、これはスペクトル効率を大幅に向上する高度な技術である。多入力多出力装置はIEEE802.11n/acの有用な構成要素になっており、多くの市販のWiFi装置で広範に使用されている。WiFiシステムの場合、双方の種類のダイバーシチを収集して、粒度がはるかに細かいフィンガープリントを提供することにより、僅か40MHzの帯域幅で測定されたフィンガープリントと比較して曖昧さを低減することができる。
【0196】
図23A〜
図23Cは、周波数ダイバーシチ及び空間ダイバーシチを個別に又は一緒に使用することにより広い有効帯域幅を生成するための一般的な原理を示す。
図23Aは、WiFi装置560が1つのアンテナを有する例を示す。
図23Bは、WiFi装置570が4つのアンテナを有する例を示す。
図23Cは、WiFi装置580が2つのアンテナを有する例を示す。WiFi装置は複数のWiFiチャネルで動作できるため、周波数ホッピングを実行して異なるWiFiチャネルにおけるCSIを取得することにより、周波数ダイバーシチを利用できる。
図23Aに示すように、4つの異なるWiFiチャネルにおけるCSIは連結され、広い有効帯域幅のフィンガープリントを形成する。周波数ダイバーシチは単アンテナWiFi装置で利用可能であるが、周波数ホッピングを実行するには時間がかかる。時間効率のために、多アンテナWiFi装置では空間ダイバーシチを利用できる。4つのアンテナを有する
図23BのWiFi受信機570の場合、4つの受信アンテナにおけるCSIを組み合わせて、広い有効帯域幅のフィンガープリントを形成できる。
図23Cの例では、周波数ダイバーシチ及び空間ダイバーシチの双方が使用され、2つのWiFiチャネルにおけるCSI及び2つの受信アンテナからのCSIが組み合わされてフィンガープリントを形成する。
【0197】
WiFiシステムの場合、空間ダイバーシチはアンテナリンクの数により判定されるが、周波数ダイバーシチは使用可能なWiFiチャネルの数に依存する。最大空間ダイバーシチをSとし、最大周波数ダイバーシチをFとし、各WiFiチャネルの帯域幅をWとすると、チャネル状態情報測定値は
と書くことができ、S×F×Wの有効帯域幅を有する粒度の細かいチャネル状態情報フィンガープリントを提供できる。
【0199】
以下に示すアルゴリズム1は、
の計算を詳細に説明する。アルゴリズム1において、ステップ4〜9は仮想リンク(s,f)におけるチャネルエネルギーを計算し、ステップ10〜14は仮想リンク(s,f)における2つのフィンガープリントの変更された相互相関を計算する。各仮想リンクにおけるチャネルエネルギー及び変更された相互相関はそれぞれ、ステップ9及びステップ15に示すように累算される。最後に、時間反転共振強度がステップ18により取得される。η
s,fの計算は、サイズNの離散フーリエ変換と同一の形式をとる
により近似され、従って、高速フーリエ変換により効率的に計算可能である。計算において大きいNを使用することで、η
s,fのより正確な近似を得られる。
【0200】
アルゴリズム1において開示した時間反転共振強度の組み合わせに加えて、時間反転共振強度を組み合わせる他の方法が考えられる。更に簡潔に記述すると、チャネルh
0,dとチャネルh
1,dとの間のd番目のリンクにおける(正規化)共振強度は以下のように再定義される。
【0201】
結果として、各リンクdに対して3つの特徴が得られる。
1.正規化共振強度TR(h
0,d,h
1,d)
2.リンクdにおけるチャネルh
0のチャネルエネルギー:Λ
0,d
3.リンクdにおけるチャネルh
1のチャネルエネルギー:Λ
1,d
【0202】
次の計算ステップは、各リンクの(正規化)共振強度を組み合わせて一般的特徴を形成することである。時間反転共振強度を組み合わせる4つの方法を以下に説明する。
【0203】
最初に、チャネルh
0とチャネルh
1との間の共振強度の基本的組み合わせは次式である。
式中、Dはアンテナリンクの総数である。
【0204】
本方法において、各リンクは品質に関係なく平等に扱われる。この組み合わせアルゴリズムにより、位置特定及び認識における性能の評価基準を得られることが期待できる。
【0205】
第2に、チャネルh
0とチャネルh
1との間の時間反転共振強度のエネルギー加重組み合わせは次式である。
【0206】
前述の方法と異なり、エネルギー加重組み合わせ法は、チャネル利得の積Λ
0,dΛ
1,dに従って異なるリンクを組み合わせる。より高い品質(すなわち、より高いチャネル利得)を有するリンクは、他のリンクより加重される。一般に、エネルギー加重組み合わせ法は基本的組み合わせ法より高い性能を得られる。
【0207】
第3に、チャネルh
0とチャネルh
1との間の共振強度の全リンク連結組み合わせは次式である。
【0208】
本方法の背景にある考えは、各リンクチャネルを個別に整列させた後、使用可能なリンクにおける全てのCSIを連結して、新規のチャネル状態情報を効果的に形成することである。
【0209】
第4に、チャネルh
0とチャネルh
1との間の共振強度の部分リンク連結組み合わせは次式である。
式中、N
RXは受信アンテナの数であり、D
iは受信アンテナiを含むアンテナリンクのセットを表す。例えば3×3多入力多出力システムにおいて、アンテナリンク1、4、7はそれぞれ、送信アンテナ1と受信アンテナ1との間のリンク、送信アンテナ2と受信アンテナ1との間のリンク、送信アンテナ3と受信アンテナ1との間のリンクを表す。従ってD
1={1,4,7}である。本方法の背景にある考えは、最初に同一の受信アンテナにおけるCSIを連結して時間反転共振強度を計算して、全ての受信アンテナにおける計算された時間反転共振強度の平均を得ることである。
【0210】
チャネル状態情報の位相オフセットの補償
チャネル状態情報は、(i)搬送周波数オフセット(CFO)α及び共通位相オフセット(CPE)βにより生じる初期位相歪みと、(ii)シンボルタイミングオフセット(STO)σ及びサンプリング周波数オフセット(SFO)δにより生じる線形位相歪みによる影響を受ける場合がある。
【0211】
ランダム性は、以下のようにしてチャネル状態情報フィンガープリントの位相品質を歪める。
式中、φ
k=α+δkである。
【0212】
従って、
で定義される時間反転共振強度の計算は、位相歪みを補償するための「max」演算を含み、非常に複雑である。
【0213】
位相歪みを補償しつつ複雑さを軽減するために、タイプIのチャネル状態情報フィンガープリント等のチャネル状態情報フィンガープリントを使用できる。
【0214】
例えば、以下のように書くことができる。
式中、H
1,1[k]は送信アンテナ1から受信アンテナ1において受信されたチャネル状態情報フィンガープリントを表し、H
2,1[k]は送信アンテナ2から受信アンテナ1において受信されたチャネル状態情報フィンガープリントを表す。
【0215】
各サブキャリアkに対するアンテナ間フィンガープリントG
1,2[k]を以下のように形成できる。
上記は、シンボルタイミングオフセットσ及び共通位相オフセットβの影響が相殺されたことを示す。α及びδは残留した搬送周波数オフセット及びサンプリング周波数オフセットであるため、多くの場合に無視できる。
【0216】
3×3多入力多出力システムにおける各無線周波数チェーンに対して、3つの新規のチャネル状態情報フィンガープリントを形成できる。従って、全体で、G
1,2,...,9を形成できる。更に一般に、
の新規のチャネル状態情報フィンガープリントを形成できる。
【0217】
次に、単純な内積を適用して共振強度を取得する。例えば較正後の2つのCSI間の共振強度(リンク毎)を以下のように計算する。
【0218】
別の実施形態において、以下のフィンガープリント(チャネル状態情報フィンガープリントII)を使用できる。TXアンテナi及びRXアンテナjに対して、以下のように書くことができる。
これは、線形位相シフトを完全に除去する。
【0219】
CSI位相のサニタイズ:サブキャリアkに対するグランドトゥルースチャネル状態情報を
式中、αは初期位相オフセットを表し、βは線形位相オフセットを表し、n
kはサブキャリアkにおける推定雑音である。
【0220】
線形位相オフセットのクリーニング:最初に、線形位相オフセットαに注目する。いくつかの例において、αを除去する1つの方法は、全てのサブキャリアに沿って位相成分にわたり線形フィッティングを行い、推定線形位相オフセットとして勾配を抽出することである。これは解析では正しいが、ノイズの多いアンラッピングのため、線形フィッティング法は実際の実現例では正しくない場合がある。
【0221】
アンラッピングを用いる線形位相較正:未加工のチャネル状態情報位相は連結されて[−π,π]となり、これをラッピング位相φ
wと呼ぶ。全てのサブキャリアに沿ってチャネル状態情報位相を線形フィッティングするためには、最初に各サブキャリアにおける位相を以下のようにアンラッピングする必要がある。
φ[k]=φ[k−1]+W{φ
w[k]−φ
w[k−1]} 式(79)
式中、φ[k]はサブキャリアkにおけるアンラッピング位相を示し、φ
w[k]はラッピング位相である。演算Wはアンラッピング関数である。
【0222】
ラッピング位相φ[k]に更なる位相φ
n[k]を追加するノイズのため、
であり、アンラッピング法はW{φ
w[k]+φ
n[k]−φ
w[k−1]}に劣化する場合がある。式(80)におけるアンラッピング手順の誤トリガ又はミストリガにより、少なくとも|2π−φ
n[k]|の誤りが振幅に導入される場合がある。
【0223】
従って、アンラッピング動作が破損したため、線形フィッティングにより取得される線形位相オフセットは正しくない場合がある。同一のロケーション(状態)からのCSIに対する線形フィッティング方法の一例を
図24に示す。アンラッピング動作により誤りが導入される。
【0224】
実験値から、電力において
である場合、すなわち信号対ノイズ比(SNR)が小さい場合、破損した位相アンラッピングを得る可能性が高いことが更にわかった。
【0225】
アンラッピングを用いない線形位相較正:位相をアンラッピングせず且つ特別なハードウェア実現例を用いずに線形位相オフセットを較正するために、以下の方法を使用する。
【0228】
式(83)に示すように、真の線形位相オフセットβ以外に剰余項β
resが得られ、これは各ロケーションに対して以下のようにほぼ固定される。
式中、h[k]H
kはグランドトゥルースチャネル状態情報である。各サブキャリアにおける位相が独立して無相関であるという仮定によると、β
resは非常に小さく、無視できる。
【0229】
線形位相較正方法の例を
図25に示す。
【0230】
初期位相オフセットのクリーニング:線形位相オフセットβ^がチャネル状態情報ベクトルに対して除去されると、次のステップは、初期位相オフセットαを除去することである。
【0232】
線形位相オフセットのクリーニングと同様の方法を使用して、αパラメータが以下のように推定される。
【0233】
β
resと同様に、初期位相の剰余α
resは全てのサブキャリアにわたる共通位相として近似的に推定される。
この場合、ノイズの独立性が考慮される。各サブキャリアにおける位相が独立していると仮定すると、α
resは小さいはずである。
【0234】
上述したように、線形位相較正及び初期位相較正は並行して実現可能であり、双方は高速で効率的な配列演算である。上述した位相較正法は、従来技術のチャネル状態情報整列アルゴリズムで必要とされる参照チャネル状態情報を必要とせずに、各チャネル状態情報に対する位相を較正して補償する。実験結果から、CSIが同一のロケーション/状態から取得される場合、較正後のCSIは全て一致し、適切に整列されている。
【0235】
上述したアルゴリズムに従って位相が較正され且つサニタイズされると、残りのチャネル状態情報は、位相歪みを有さないグランドトゥルースチャネル状態情報であると見ることができる。その結果、共振強度を計算するためのFFTに基づく方法は不要になる。位相較正を行った後、取得されるCSIは、AoA又はToFを推定するために使用されてもよいグランドトゥルースチャネル状態情報を維持する。更に、較正されたCSIの共振強度を計算するために、単純な内積法が使用される。この場合、共振強度は、送信中に伝搬する屋内環境に対する電磁波応答であるため、その物理的意味を維持する。
【0236】
図26に関連して上述したように、会場140におけるイベントを検出するために、送信機142はマルチパスチャネル146を介して受信機144に無線信号を送出する。受信機144がチャネル特性を正確に推定するための送信機142と受信機144との間のハンドシェイク処理の例を以下に説明する。
【0237】
最小二乗(LS)に基づくチャネルプロービングハンドシェイク
チャネルプロービングのための最小二乗(LS)に基づくハンドシェイク方法を以下に説明する。本方法において、送信機142は受信機144にプローブ信号を送出する。受信機144は受信信号と同期し、受信信号に基づいてチャネル応答を推定する。
【0238】
図27を参照すると、いくつかの実現例において、送信機142により送信されるチャネルプロービング信号160のフレームは、4つの連続する部分、すなわちプリアンブル162、バーカ符号164、ペイロード166及びトレーニング系列168を含む。各フレームの長さは本方法では固定され、送信機142及び受信機144の双方により認識される。いくつかの例において、受信機144がより正確なチャネル情報及びタイミング情報を取得できるように、送信機142はチャネルプロービング信号の2つ以上のフレームを受信機144に送出してもよい。いくつかの実現例において、タイミングの精度はプリアンブル162及びバーカ符号164の長さを増加することにより向上でき、チャネル情報の精度はトレーニング系列168の長さを増加することにより向上できる。
【0239】
プリアンブル162は、例えばパルス位置変調(PPM)を使用して変調される。パルス位置変調シンボル「0」及び「1」を
図28に示す。プリアンブル162は連続するパルス位置変調シンボル「0」を含む。パルス位置変調シンボル「0」において、LはL=τ
s/δ
tにより定義されるマルチパスチャネルの長さであり、τ
sは遅延スプレッドであり、δ
tはシステムのサンプリング周期である。実際、チャネル長が正確に認識されない場合でも、受信機144は環境の一般的な遅延スプレッド及びシステムのサンプリングレートに基づいてチャネル長を推定できる。本方法において、推定チャネル長が実際のチャネル長より長い場合、性能に影響はない。従って、受信機144はチャネル長を過大評価でき、誤りを生じることなくLを実際のチャネル長より大きく設定できる。
【0240】
送信機142により送信されるバーカ符号164は、送信機142及び受信機144の双方により認識される符号である。バーカ符号164の長さはL
bである。送信機142により送信されるペイロード166は、パルス位置変調を使用して変調される符号化情報であってもよい。情報は、トレーニング系列168のインデックスを含んでもよい。ペイロード166の長さはL
pである。
【0241】
図29を参照すると、トレーニング系列168は、ガードインターバルA170、有効トレーニング系列(ETS)172及びガードインターバルB174を含む3つの連続する部分を有する。いくつかの例において、ガードインターバルA170は長さL
aを有する「0」ビットの系列であり、有効トレーニング系列172は長さL
eを有する「0」ビット及び「1」ビットの系列であり、ガードインターバルB174は、LB≧Lである長さLBを有する「0」ビットの系列である。
【0242】
送信機142から送信されたチャネルプロービング信号は、マルチパスチャネル146を通って受信機144に到達する。受信信号は、ノイズにより汚染されたチャネルプロービング信号とチャネル応答との畳み込みである。受信機144は、受信信号を使用してチャネル応答を推定する。
【0243】
図30を参照すると、チャネルプロービング信号を受信した場合、受信機144は、チャネルプロービング信号のプリアンブル162に対してスライディングウィンドウエネルギー検出を使用して同期インデックスを判定する。グラフ180は、受信機144において受信される信号の一例を示す。スライディングウィンドウエネルギー検出法は、l
pがPPMシンボルの長さであるウィンドウサイズL
w=l
p+Lを有する移動ウィンドウ182を使用する。E
Iはi番目、(i+L
w)番目、(i+2L
w)番目、...、(i+(γ−1)L
w)番目のサンプルから開始するウィンドウにより累積された平均エネルギーであると定義する。この場合、γは平均ウィンドウの数であり、i∈{0,1,2,...,L
w−1}である。同期インデックスi
sはE
iを最大化するインデックスiであり、i=argmax
iE
iと書くことができる。この場合、インデックスiは受信信号内のi番目のサンプルに対応する。同期インデックスi
sが判定された後、他のインデックスは同期インデックスi
sを参照として使用して判定される。
【0244】
図31を参照すると、同期インデックスi
sを取得した後、受信機144は同期を確認するためにバーカ符号164の検出を開始する。受信機144は、受信信号のインデックスi
s+mL
wからインデックスi
s+mL
w+L
b−1までの部分を復調し、復調された信号の部分と事前格納済みのバーカ符号系列とを比較する。この場合、L
bはバーカ符号164の長さであり、m∈{0,1,...,N}であり、Nはユーザにより設定される探索範囲である。いくつかの例において、Nはプリアンブル162内のパルス位置変調シンボルの数より大きく設定される。復調信号が事前格納済みバーカ符号とマッチングする場合、送信機は、受信機がチャネルプロービング段階にあり、ペイロード及びトレーニング系列が受信信号内のバーカ符号に後続することを保証される。更に、送信機は、バーカ符号164が開始する受信信号内の位置がマッチングインデックスi
s+mL
wであること及びバーカ符号164が終了する受信信号内の位置がインデックスi
s+mL
w+L
b−1であることを認識する。当該情報により、受信機144はチャネル応答を推定するための情報を取得できる。
【0245】
ペイロード166がバーカ符号164に後続するため、受信機144は、ペイロード166がインデックスi
s+mL
w+L
bから開始すると仮定する。ペイロード166は固定長L
dを有するため、受信機144は受信チャネルプロービング信号のインデックスi
s+mL
w+L
bからインデックスi
s+mL
w+L
b+L
d−1までの部分を復調し、復調部分を復号化してトレーニング系列のインデックスqを取得する。この場合、インデックスqは受信信号内のq番目のサンプルを示さない。寧ろ、送信機142及び受信機144の双方により認識される2つ以上のトレーニング系列のセットが存在し、送信機142はセット内のいずれかのトレーニング系列を選択できる。インデックスqは、トレーニング系列のセットの中で送信機142により選択されたトレーニング系列を示す。
【0246】
受信機144は、トレーニング系列が受信信号のインデックスi
s+mL
w+L
b+L
dから開始すると仮定し、受信信号のインデックスi
s+mL
w+L
b+L
dからインデックスi
s+mL
w+L
b+L
d+L
t−1までの部分を使用してチャネル応答を推定する。この場合、L
t=L
e+Lである。uは受信信号のインデックスi
s+mL
w+L
b+L
dからインデックスi
s+mL
w+L
b+L
d+L
t−1までの部分を示すとする。受信機142は、ペイロード166から取得したインデックスqに対応する変換行列C
qを使用して、uを推定チャネル応答に変換する。この変換を以下のように書くことができる。
【0247】
変換行列C
qは、受信機により使用されるトレーニング系列s
qにより以下のように構成されうる。
C
q= (T'T)
-1T'
式中、Tはs
qにより生成されるテプリッツ行列であり、送信機142により使用される有効トレーニング系列である。行列Tの1列目はs
qe=[s
q;0]であり、0はL個の0で構成されるベクトルである。
図32を参照すると、テプリッツ行列T190の第1の列は、s
qeから取得される第1の要素以外は全て0で構成される。行列T190は次元c
m×c
nを有し、c
m=L
e+L及びc
n=L
a+τ+Lである。パラメータτは、先行ステップにおける同期ミスマッチの最大値より大きい必要のある補償係数であり、すなわち、トレーニング系列が開始する受信信号におけるインデックスと受信機144により検出されたトレーニング系列168の始点であるインデックスi
s+mL
w+L
b+L
dとの間の差分である。
【0248】
図33は、SNR=0dB及びチャネル長L=200である1000個の実現例に対する同期ミスマッチヒストグラムの一例を示すグラフ200である。ミスマッチ量はチャネル長と比較して小さく、何らかの特定の値により制限される。τが大きいほど多くのシステムリソースを使用するため、τの値は、同期誤差を制限できる可能な限り小さい値になるように選択されうる。
【0249】
推定チャネル応答が実際のチャネル応答のサイズであるLより大きいサイズを有することが、
及び変換行列C
qの次元からわかる。長いチャネル応答が推定される理由は、同期誤差により、推定チャネル応答は実際のチャネル応答がシフトされたバージョンであるためである。長いチャネル応答を推定することにより、有効チャネル応答が推定の中に含まれることが保証されるため、重要なタップが失われず、このことは、受信装置において送信波形をフォーカスするためにマルチパスチャネルを整合フィルタとして使用する時間反転システムにとって重要である。
【0250】
有効トレーニング系列が特に選択される場合、チャネル応答は変換行列C
qを使用せずに容易に推定されうる。例えば有効トレーニング系列がD≧LであるDにより分離されるインパルス列である場合、チャネル応答は受信信号内のサイズDのウィンドウを平均化することにより単純に推定されうる。v
iが受信信号のインデックスi
s+mL
w+L
b+L
d+iDからインデックスi
s+mL
w+L
b+L
d+iD+D−1までの部分を示すとすると、推定チャネル応答を以下のように書くことができる。
【0251】
相関に基づくチャネルプロービングハンドシェイク
チャネルプロービングに対する相関に基づくハンドシェイク方法を以下に説明する。本方法において、時間同期及びチャネル応答推定の双方のために単一系列が使用される。
【0252】
送信機142は、マルチパスチャネル146を介して受信機144へ擬似ランダム(PN)系列xを送信する。系列xは、例えば以下の式に示す確率質量関数(pmf)を有する分散ランダム変数の列であってもよい。
【0253】
ここで使用される擬似ランダム符号の1つの重要な特徴は、長い擬似ランダム符号の自己相関関数がデルタ関数である傾向があることである。例えば
図34を参照して1000の長さを有する擬似ランダム符号の自己相関関数を考えると、自己相関関数はm=0において非常に高い値を有するが、他のロケーションにおいて大幅に抑制される。
【0254】
以下の説明において、複数の記号が使用される。Lはチャネル応答の長さであり、Nは擬似ランダム符号の長さであり、αはチャネルプロービングに対する閾値に関するパラメータである。
【0255】
以下の式に示すように、受信信号yは擬似ランダム符号xとチャネルhとの畳み込み結果である。
【0256】
以下の式において定義される相互相関関数r
yx(m)は、擬似ランダム符号x及びチャネルhの自己相関の畳み込みに等しい。
【0257】
相関による同期のためのアルゴリズムを以下に説明する。送信機は相互相関r
yx(m)を計算し、その最大振幅を見つける。
corr
max=max|r
yx(m)|
corr
maxに基づいて、送信機は受信信号yの同期インデックスi
sを以下のように見つける。
【0258】
パラメータαは実験により選択可能であり、0〜1の範囲である。例えばシミュレーションで使用される超広帯域チャネルモデルによると、パラメータαは約0.2であるように選択される。インデックスi
sを取得した後、以下のように相互相関関数r
yx(m)を切り捨てることにより推定チャネル応答
【0259】
例示的な一実施形態において、受信器144は無線チャネル146に対するチャネル状態情報(CSI)を取り込むために使用される回路を含んでもよい。チャネル状態情報は、無線信号におけるサブキャリア毎の無線チャネル応答を推定するために使用されてもよい。チャネル状態情報は、無線チャネルに関する振幅情報及び位相情報の双方を含む複素ベクトルであってもよい。いくつかの実施形態において、チャネル振幅情報のみが判定され且つ/又はエクスポートされ且つ/又は処理されてもよい。いくつかの実施形態において、チャネル位相情報のみが判定され且つ/又はエクスポートされ且つ/又は処理されてもよい。好適な実施形態において、チャネル振幅情報及びチャネル位相情報の双方がイベント監視システムの用途の一部として判定され且つ/又はエクスポートされ且つ/又は処理されてもよい。実施形態において、チャネル状態情報信号は、マイクロプロセッサ及び/又はDSP等のプロセッサ、コンピュータ、FPGA及びASIC等において処理されてもよく、チャネル状態情報信号を生成するチップ又はシステムと一体化されるか又は非常に近接するリソース上でローカルに処理されてもよく、且つ/又はチャネル状態情報信号は信号処理を実行するために構成されてもよい距離計算装置においてリモートに処理されてもよく、且つ/又はチャネル状態情報信号は少なくともいくつかのクラウドリソースを使用して処理されてもよい。
【0260】
実施形態において、チャネル状態情報は、802.11信号伝送プロトコルに対して存在するような正規化機構により判定されてもよい。いくつかの実施形態において、チャネル状態情報は、無線受信機においてパラメータを監視し且つ記録すること及び/又は受信機と送信機との間で渡されるプロービング信号又はトレーニング系列又はトレーニングプリアンブルを監視することにより判定されてもよい。実験室レベルでの実証において、チャネル状態情報を取り込むために使用された回路は、USRP(National InstrumentsノUniversal Software Radio Peripheral platform)及び/又はIntel5300チップを含んだ。
【0261】
実施形態において、無線プロトコルパケット構成の特定の部分は、チャネル状態情報及び/又はチャネル周波数応答を推定するために使用されてもよい。例示的な802.11ネットワークにおいて、ショートプリアンブルの後のロングプリアンブルがチャネル状態情報を判定するために使用されてもよい。例示的な802.11通信システムは、直交周波数分割多重(OFDM)を使用してもよい。各直交周波数分割多重チャネルは、複数のサブキャリアを含んでもよい。直交周波数分割多重チャネルは、21個以上のサブキャリア、31個以上のサブキャリア、41個以上のサブキャリア、48個のサブキャリア、56個のサブキャリア、64個のサブキャリア又は114個のサブキャリア等を含んでもよい。実施形態において、直交周波数分割多重信号におけるサブキャリアのいくつかはヌルサブキャリアであってもよく、あるいはパイロットサブキャリアであってもよい。実施形態において、直交周波数分割多重シンボルにおけるサブキャリアのうちのいくつかのみがデータサブキャリアであってもよい。
【0262】
実施形態において、回路はサブキャリアのうちのいくつか又は全てに対するチャネル状態情報を提供してもよい。例えばいくつかの例示的な実施形態において、Intel5300チップ及び/又はUSRPは直交周波数分割多重チャネルにおける30個のサブキャリアに対するチャネル状態情報をエクスポートしてもよい。実施形態において、不完全なタイミング及び/又は周波数同期に起因するチャネル状態情報の変動を緩和するために、チャネル状態情報の更なる処理が実行されてもよい。実施形態において、1つのサブバンドからのチャネル状態情報がベクトルとして構成されてもよく、これを帯域内フィンガープリントと呼んでもよい。いくつかの実施形態において、1つのサブバンドからのチャネル状態情報は複数のチャネル状態情報判定値の平均であってもよく、いくつかの判定値がトリミング又は廃棄されてもよい。実施形態において、所定のチャネルに対するサブバンドチャネル状態情報は、1回、2回、10回、30回、50回及び100回等、測定され且つ/又は判定されてもよい。実施形態において、サブバンドチャネル状態情報のうちのいくつか又は全てが帯域内フィンガープリントを形成するために使用されてもよい。
【0263】
チャネル状態情報が特定の数のサブキャリアに対して報告される上述の例は一例にすぎず、限定することを全く意図しない。あらゆる数のサブキャリアからのチャネル状態情報が本明細書中で説明するイベント監視システムにおいて使用されてもよい。また、チャネル状態情報及び帯域内フィンガープリントを判定するために実行されてもよいチャネル測定の数又は交換されるWiFiパケットの数は例示であり、限定することを全く意図しない。例えばイベントを監視するイベント監視システムは、推定チャネル応答及びイベントを判定するために使用可能なプローブ信号を常時送出してもよい。
【0264】
実施形態において、複数の異なる中心周波数、周波数帯域幅及び/又はアンテナの帯域内フィンガープリントが組み合わされ且つ/又は連結されて複合フィンガープリント又は帯域間フィンガープリントにされてもよい。実施形態において、帯域間フィンガープリントが複合チャネル応答を形成してもよい。当該複合チャネル応答は、会場内で発生しているイベントを判定するために使用されてもよい。実施形態において、複合チャネル応答を使用するイベント監視システムの精度は、単一の帯域内フィンガープリントを使用して達成される精度より高い場合がある。
【0265】
例示的な一実施形態において、無線装置(例えば、送信機142及び受信機144)間の無線チャネルに対するチャネル状態情報を判定するために、802.11フレーム内の2つのロングプリアンブルを使用できる。例えば一方の無線装置は無線ルータ/アクセスポイントであってもよく、無線ホットスポット(例えば、自宅又は職場の)をサポートしてもよい。無線ルータ/アクセスポイントは、本明細書中で説明するシステム及び方法と動作するように特に変更及び/又は構成されていない標準的な装置であってもよい。換言すると、本明細書中で説明するシステム及び方法は、イベント情報を判定するために、そのような既存の無線装置及びそれらの手法を利用できる。この例示的な実施形態において、第2の無線装置(例えば、コンピュータ、スマートフォン、タブレット等)がルータ/アクセスポイントの範囲内に存在する場合、第2の無線装置はルータ/アクセスポイントからWiFi信号を受信してもよく、WiFi信号に含まれるロングプリアンブルを処理して第2の装置とルータ/アクセスポイントとの間の環境固有シグニチャを判定してもよい。いくつかの実現例において、第2の無線装置は、第2の無線装置がシステムと動作できるようにするソフトウェア及び/又はファームウェアを含んでもよい。いくつかの実現例において、第2の無線装置はホットスポットに接続されない。寧ろ、第2の無線装置は、ルータ/アクセスポイントから標準的なプリアンブル情報を受信できるパッシブ装置であってもよい。このように、第2の無線装置を「スニファ(sniffer)」と呼んでもよい。実施形態において、2つのロングプリアンブルは1つのフレームで、例えば直交周波数分割多重チャネル毎に送出される。実施形態において、直交周波数分割多重チャネルは、例えば20MHz又は40MHzの帯域幅を有してもよい。
【0266】
上述したように、システムはチャネル状態情報を判定し且つチャネル状態情報と種々のイベントとを関連付けることができる。例えば1つの例において、第2の無線装置は、チャネル状態情報を格納し且つそれを特定のイベント(例えば、「扉が開いて窓が閉じた」)に関連付けることができる。特定のイベントがその後に発生する場合、第2の装置はインジケーション(例えば、警報)を提供してもよい。いくつかの実現例において、第2の無線装置が(例えば、WiFiネットワークに加わることにより)インターネットにアクセスできる場合、第2の無線装置は取得した環境情報(例えば、イベントに関連付けられたチャネル状態情報)をアップロードしてもよい。環境情報は、そのような環境情報を格納するように構成される1つ以上のサーバ、ハードドライブ、記憶装置及び/又はデータベース等のリソース(例えば、クラウドベースのリソース)にアップロードされてもよい。
【0267】
いくつかの実現例において、種々のイベントに関連付けられたチャネル状態情報は、リソース(例えば、クラウド内のデータベース)にアップロード可能であり、情報はチャネル状態情報固有シグニチャと既知のイベントとを関連付けるために使用可能である。いくつかの例において、イベント分類器をトレーニングする装置は、イベントに関連付けられた物体(例えば、扉及び窓)を有する間取り図を示すためにユーザインタフェースを提示するディスプレイを有してもよい。ユーザが扉をタップした場合、扉が閉鎖位置と開放位置との間で切り替わってもよい。扉が開放位置にあると仮定する。ユーザは、ボタンをタップしてトレーニングセッションを開始してもよく、それによりシステムはチャネル状態情報を収集して「開扉」イベントに関連付けられたパラメータを認識するようにイベント分類器をトレーニングすることを開始する。「開扉」イベントに対するトレーニングが完了した後、ユーザは扉をタップして扉を閉鎖位置に切り替えて、ボタンをタップしてトレーニングセッションを開始してもよく、それによりシステムはチャネル状態情報を収集して「閉扉」イベントに関連付けられたパラメータを認識するようにイベント分類器をトレーニングすることを開始する。ユーザは、他のイベントに対する分類器のトレーニングを同様の方法で開始できる。
【0268】
環境監視システムにおける送信機及び受信機の各々は、1つ以上のプロセッサ及び1つ以上のコンピュータ可読媒体(例えば、RAM、ROM、SDRAM、ハードディスク、光ディスク及びフラッシュメモリ)を含むことができる。1つ以上のプロセッサは、上述した種々の計算を実行できる。計算は、特定用途向け集積回路(ASIC)を使用して同様に実現可能である。用語「コンピュータ可読媒体」は、実行するためにプロセッサに命令を提供する際に関わる不揮発性媒体(例えば、光ディスク又は磁気ディスク)及び揮発性媒体(例えば、メモリ)及び伝送媒体を含むがそれらに限定されない媒体を示す。伝送媒体は、同軸ケーブル、銅線及び光ファイバを含むが、それらに限定されない。
【0269】
上述した特徴は、データ格納システムとの間でデータ及び命令を送受信するように接続された少なくとも1つのプログラマブルプロセッサと、少なくとも1つの入力装置と、少なくとも1つの出力装置とを含むプログラマブルシステム上で実行可能な1つ以上のコンピュータプログラムにおいて有利に実現可能である。コンピュータプログラムは、特定のアクティビティを実行するため又は特定の結果を得るためにコンピュータにおいて直接又は間接的に使用可能な命令セットである。コンピュータプログラムは、コンパイラ型言語又はインタープリタ型言語を含むあらゆる形態のプログラミング言語(例えば、C、Java)で記述可能であり、スタンドアロンプログラム又はモジュール、構成要素、サブルーチン、ブラウザベースウェブアプリケーション、あるいはコンピュータ環境における使用に適した他のユニットとしての形態を含むあらゆる形態で配布可能である。
【0270】
命令プログラムを実行するのに適したプロセッサは、例えばあらゆる種類のコンピュータの汎用マイクロプロセッサ及び専用マイクロプロセッサの双方、デジタル信号プロセッサ及びソロプロセッサ、あるいは複数のプロセッサ又はコアのうちの1つを含む。一般に、プロセッサは読み出し専用メモリ又はランダムアクセスメモリ又はその双方から命令及びデータを受信する。コンピュータの不可欠な要素は、命令を実行するプロセッサと命令及びデータを格納する1つ以上のメモリである。一般にコンピュータは、データファイルを格納するための1つ以上の大容量記憶装置を更に含むか又はそれらと通信するために動作可能に接続される。そのような装置は、内部ハードディスク及び取外し可能ディスク、光磁気ディスク及び光ディスク等の磁気ディスクを含む。コンピュータプログラム命令及びデータを具体的に実現するのに適した記憶装置は、例えばEPROM、EEPROM及びフラッシュメモリ素子等の半導体メモリ素子、内部ハードディスク及び取外し可能ディスク等の磁気ディスク、光磁気ディスク、並びにCD−ROM及びDVD−ROMディスクを含む全ての形態の不揮発性メモリを含む。プロセッサ及びメモリは、ASIC(特定用途向け集積回路)により補足されるか又はASICに組み込まれることが可能である。
【0271】
本明細書は多くの特定の実現例の詳細を含むが、それらは、あらゆる発明又は特許請求されてもよいものの範囲を制限すると解釈されるべきでなく、特定の発明の特定の実施形態に固有の特徴の説明であると解釈されるべきである。個別の実施形態において本明細書中で説明される特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わされても同様に実現可能である。反対に、単一の実施形態において説明される種々の特徴は、複数の実施形態において個別に又は何らかの適切な部分的組み合わせでも同様に実現可能である。
【0272】
同様に、動作は図中で特定の順序で示されるが、所望の結果を達成するためにはそのような動作が示される特定の順序で又は順次実行されるか、あるいは図示される全ての動作が実行される必要があると理解されるべきではない。特定の状況において、マルチタスク動作及び並行処理が有利な場合がある。更に、上述した実施形態における種々のシステム構成要素の分離は、そのような分離が全ての実施形態で必要であると理解されるべきでなく、説明されたプログラム構成要素及びシステムは一般に、単一のソフトウェアに一体化可能であるか又は複数のソフトウェアにパッケージ化可能であると理解されるべきである。
【0273】
従って、主題の特定の実施形態を説明した。他の実施形態は以下の請求項の範囲内である。いくつかの例において、請求項において示される動作は異なる順序で実行可能であり、所望の結果を依然として達成できる。更に、添付の図面に示される処理は、所望の結果を達成するために、示される特定の順序又は順番を必ずしも必要としない。特定の実現例において、マルチタスク動作及び並行処理が有利な場合がある。
【0274】
本発明の多くの実現例を説明した。しかし、本発明の主旨の範囲から逸脱することなく種々の変更を行うことができることが理解されるだろう。例えばチャネルプロービング信号のフレーム構成、プリアンブル162、バーカ符号164、ペイロード166及びトレーニング系列168のフォーマットは上述したものと異なってもよい。送信機142及び受信機144は、図示されていない更に多くの構成要素を含むことができる。例えばアナログデジタル変換器、デジタルアナログ変換器及び電力増幅器等の標準的な構成要素は図面から省略されている。
【0275】
上記の例では1つの送信機及び1つの受信機が示されるが、複数の送信機及び複数の受信器が存在してもよい。監視システムの送信機又は受信機は、ロケーションが固定されてもよく又は移動できてもよい。監視システムの送信機又は受信機は、単の一アンテナ又は複数のアンテナを有することができる。時間反転監視システムは、人間に加え、猫、犬、馬又は鶏等の動物も監視できる。監視システムにより特定のイベントが検出された場合、システムは例えば音声、ビデオ、ショートメッセージサービス又は電子メール等で警報信号を与えることができる。システムが警報信号を送出する場合、例えば3G、4G−LTE、5G、WiFi等を使用できる。上記の例ではチャネル状態情報はWiFiを介して取得されると示したが、これはLTE/HSPAマクロセル、ピコセル、フェムトセル、ホットスポット等による信号であってもよい。監視システムの帯域幅は、例えば20MHzであってもよく、あるいは異なるアンテナからのCSI、異なる周波数サブキャリア/帯域/チャネルにおけるCSI、異なる時間インスタンスにおけるCSI等を連結することにより20MHzより小さくてもよい。時間反転監視システムはスタンドアロンであってもよく、誤警報を減少するために他の監視システムを補助するために使用されてもよく、あるいは感度を向上するために他の監視システムを補助するために使用されてもよい。時間反転監視システムはプログラム可能であってもよい。
【0276】
いくつかの例において、カスタマイズされた送信機及び受信機が、チャネルインパルス応答(時間領域)を取得するためにチャネルサウンディングにおいて使用可能である。いくつかの例において、市販のWiFi装置をチャネルサウンディングに使用でき、チャネル推定値出力はチャネル周波数応答として読み取り可能である。受信機はチャネルを推定する市販のWiFi装置であってもよく、チャネル周波数応答は受信機装置から抽出される。市販のWiFi装置のデータ処理能力が制限されるため、コンピュータが分類器のトレーニングに関連する計算及び式の計算を実行する。いくつかの例において、WiFi受信機がパワーデータプロセッサを有する場合、分類器のトレーニングに関連する計算は受信機により実行可能であり、全ての式は受信機において計算される。
【0277】
チャネル状態情報h[1]、h[2]、h[L]等に対するサンプリング周波数は、システムの帯域幅に従って選択可能である。例えば、システムの帯域幅(両側)に少なくとも等しい。サンプリング周波数は高いほどよい。タップの数Lは大きいほどよい。いくつかの例において、収集されたチャネルのエネルギーが最大になるように、Lを徐々に増加することができる。例えばL=30とL=50の双方で同様のチャネル状態情報が得られる場合、L=30を使用できる。
【0278】
プロービング信号のフォーマットは
図27及び
図29に示したものと異なってもよく、ハンドシェイク処理は上述したものと異なってもよい。例えば無線信号を送受信するために市販のWiFi装置が使用される場合、ハンドシェイク処理はWiFiプロトコルに従う。
【0279】
イベント検出システム又は人間動作検出システムは、多くの方法で実現可能である。例えば
図38を参照すると、イベント検出システム又は人間動作検出システム630は会場638内に配置された送信機632及び受信機636を含むことができ、送信機632は、システム630により検出されるべきイベント又は人間の動作により影響を受けるマルチパスチャネル634を介して受信機636に無線信号を送出する。この例において、受信機636は、上述した種々のデータ処理ステップを実行するためのデータプロセッサ640を含む。
【0280】
いくつかの実現例において、
図39を参照すると、イベント検出システム又は人間動作検出システム650は、送信機632、受信機636及びコンピュータ652を含むことができる。受信機636は基本的なデータ処理を実行するデータプロセッサ640を含み、複雑な計算の大部分は受信機636と通信するコンピュータ652により実行される。
【0281】
いくつかの実現例において、
図40を参照すると、イベント検出システム又は人間動作検出システム660は送信機632及び受信機636を含むことができ、受信機636は、基本的なデータ処理を実行するデータプロセッサ640を含む。受信機636はクラウドサーバ662と通信し、クラウドサーバ662が複雑な計算の大部分を実行する。
【0282】
従って、他の実施形態は以下の請求項の範囲内である。