特表2019-507488(P2019-507488A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2019-507488高品質のリチウムリッチマンガン系リチウムイオン電池正極材料およびその合成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-507488(P2019-507488A)
(43)【公表日】2019年3月14日
(54)【発明の名称】高品質のリチウムリッチマンガン系リチウムイオン電池正極材料およびその合成方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/505 20100101AFI20190215BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20190215BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20190215BHJP
【FI】
   H01M4/505
   H01M4/525
   C01G53/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-561298(P2018-561298)
(86)(22)【出願日】2016年9月19日
(85)【翻訳文提出日】2018年8月13日
(86)【国際出願番号】CN2016099356
(87)【国際公開番号】WO2018040143
(87)【国際公開日】20180308
(31)【優先権主張番号】201610758473.7
(32)【優先日】2016年8月30日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG
(71)【出願人】
【識別番号】518288925
【氏名又は名称】山▲東▼玉皇新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANDONG YUHUANG NEW ENERGY TECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】董 ▲シン▼
(72)【発明者】
【氏名】周 娟
(72)【発明者】
【氏名】▲エン▼ ▲麗▼▲ピン▼
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ ▲愛▼花
(72)【発明者】
【氏名】李 岩
(72)【発明者】
【氏名】王 瑛
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼ 成▲龍▼
(72)【発明者】
【氏名】高 洪森
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AB02
4G048AB06
4G048AC06
4G048AE05
4G048AE08
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050GA02
5H050GA05
5H050GA27
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA10
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
本発明に係る方法は、アミノ酸とニッケル−コバルト−マンガン金属とを錯体化して前駆体を調製するステップと、前記前駆体をリチウム塩と混合し、ボールミリング、乾燥、焼成して製品を取得するステップとを含む。アミノ酸を錯化剤とし、環境にやさしく無毒で、運転機器への腐食性が非常に小さく、ニッケル、コバルトおよびマンガンの錯体作用がアンモニア水より少し強く、かつ、この3つの金属への錯体作用が概ね同様であるので、3つの遷移金属の共沈に有利であり、材料中の各金属元素の均一な分布を実現し、リチウムリッチマンガン系材料の総合的な電気化学的性能を向上させ、材料の品質を改善する。この方法によって製造されたリチウムリッチマンガン材料は、タップ密度が高く、コンパクション密度が高く、電気化学的性能が優れる特性を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸とニッケル−コバルト−マンガン金属とを錯体化して前駆体を調製するステップと、
前記前駆体をリチウム塩と混合し、ボールミリングし、乾燥し、焼成して製品を取得するステップとを含むことを特徴とする高品質のリチウムリッチマンガン系リチウムイオン電池の正極材料の合成方法。
【請求項2】
所定の濃度の易溶性炭酸塩系化合物とアミノ酸との混合溶液を調製し、モル比Mn:Ni:Coを所定の割合とする適切な濃度の混合金属塩溶液を調製し、適切な濃度のアミノ酸を反応ベース液として調製するステップ(1)と、
易溶性炭酸塩系化合物とアミノ酸混合溶液とを反応させて前記前駆体を得て、合成された前記前駆体を使用に供するべく乾燥するステップ(2)と、
前記ステップ(2)で得た前記前駆体をリチウム塩と混合し、ボールミリングするステップ(3)と、
ボールミリングされた後の混合物を750〜900℃の焼成温度で高温焼成して製品を取得するステップ(4)と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の高品質のリチウムリッチマンガン系リチウムイオン電池の正極材料の合成方法。
【請求項3】
前記ステップ(1)において、モル比Mn:Ni:Coはx:y:(1−x−y)であり、x値は0.5〜0.7であり、y値は0.1〜0.3であり、前記易溶性炭酸塩系化合物の濃度は0.5〜4mol/Lであり、前記混合金属塩溶液の濃度は0.5〜10mol/Lであり、前記アミノ酸の濃度は0.0001〜1mol/Lであり、前記ベース液中のアミノ酸の濃度は0.001〜0.2mol/Lであることを特徴とする請求項2に記載の高品質のリチウムリッチマンガン系リチウムイオン電池の正極材料の合成方法。
【請求項4】
前記ステップ(2)において、適切な反応系のpH、水浴の温度および混合塩溶液の流速を設定し、オンラインpH自動制御システムにより、前記易溶性炭酸塩系化合物とアミノ酸との混合溶液の流速が調整され、前記混合溶液の流速は0.1〜10mL/minであり、pHは7〜9であり、反応温度は30〜70℃であることを特徴とする請求項2に記載の高品質のリチウムリッチマンガン系リチウムイオン電池の正極材料の合成方法。
【請求項5】
前記ステップ(3)において、高品質のリチウムリッチマンガン系リチウムイオン電池の正極材料の化学式を基準として、前記前駆体とリチウム塩とのモル比は1:zであり、リチウム塩が1〜10%過量することを特徴とする請求項2に記載の高品質のリチウムリッチマンガン系リチウムイオン電池の正極材料の合成方法。
【請求項6】
前記ステップ(1)において、
前記アミノ酸は、アラニン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、セリン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシンなどであり、
前記易溶性炭酸塩系化合物は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどであることを特徴とする請求項4または5に記載の高品質のリチウムリッチマンガン系リチウムイオン電池の正極材料の合成方法。
【請求項7】
前記ステップ(2)において、合成された前記前駆体を80〜140℃で、2〜24時間真空乾燥させることを特徴とする請求項6に記載の高品質のリチウムリッチマンガン系リチウムイオン電池の正極材料の合成方法。
【請求項8】
前記ステップ(3)において、粉砕助剤は、無水エタノール、アセトン、エチレングリコール、CMC、 ポリエチレングリコールであり、
ボールミリング時間は1〜10時間であり、材料に対するボールの比は1〜4:1であり、回転速度は100〜600r/minであることを特徴とする請求項7に記載の高品質のリチウムリッチマンガン系リチウムイオン電池の正極材料の合成方法。
【請求項9】
前記ステップ(4)において、ボールミリング後の混合物をブラスト乾燥オーブンで乾燥させた後、コランダムルツボに入れ、マッフ炉の中で空気または酸素雰囲気中で、3〜20時間高温焼成することを特徴とする請求項8に記載の高品質のリチウムリッチマンガン系リチウムイオン電池の正極材料の合成方法。
【請求項10】
化学式は、Li1+z(MnNiCo1−x−y1−zであり、x値は0.5〜0.7であり、y値は0.1〜0.3であり、z値は0.01〜0.3であることを特徴とする請求項1に記載の リチウムリッチマンガン系リチウムイオン電池の正極材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池の技術分野に関わり、特に、高品質のリチウムリッチマンガン系リチウムイオン電池正極材料およびその合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
正極材料は、リチウムイオン二次電池を構成するための重要な材料であり、その性能はリチウムイオン電池の品質に直接に影響を与える。
【0003】
リチウムイオン電池において、高容量はその開発方向の一つであり、従来の正極材料中のリン酸鉄リチウムのエネルギー密度は580Wh/kgであり、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物のエネルギー密度は750Wh/kgであり、いずれも低い。リチウムリッチマンガン系正極材料の理論エネルギー密度は900Wh/kgに達し、研究開発の注目点となっている。
【0004】
リチウムリッチマンガン系正極材料は、多くの方法で製造することができるが、工業的意義のある合成方法は共沈法に限られる。共沈法は、沈殿剤に応じて、水酸化物系、炭酸塩系、シュウ酸塩系にさらに分けることができる。三元系材料の水酸化物共沈法をそのまま利用すると、製造されたリチウムリッチマンガン系材料の電気化学的性能が満足できる水準にならない。その主因として、Mnが容易に酸化されて前駆体の相分離が起こり、焼結生成物としてLiMnOクラスターが生成しやすいことが挙げられる。また、水酸化物前駆体が密集しすぎることも原因である。共沈プロセスにおいて、Nガスを利用して保護して、錯化剤のモル比を調整すると、上記の問題を解決することができるが、総合的な製造コストが高くなる。シュウ酸塩系は、高コストおよび排水処理の問題が存在する。従来、良好な電気化学的特性を有するリチウムリッチマンガン材料は、一般に、炭酸塩共沈法によって前駆体を調製する。
【0005】
従来、リチウムリッチマンガン系材料は、炭酸塩共沈法により製造されており、一般にアンモニア水を錯化剤として使用し、合成されたリチウムリッチマンガン材料はタップ密度が低く、コンパクション密度が低いという問題がある。アンモニア水は、揮発しやすく、アルカリ性であり、毒性があり、目、鼻、および皮膚に刺激性、腐食性があり、人の窒息を引き起こし、製造現場に従事する従業員の安全を脅かすおそれがある。さらに、合成装置に対する腐食性があるため、装置の運転コストを増加させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来技術の欠如を補完するために、リチウムリッチマンガンの電気化学的性能、タップ密度およびコンパクション密度を大幅に改善することができる高品質のリチウムリッチマンガン系リチウムイオン電池正極材料およびその合成方法を提供し、さらに従来方法の合成過程で存在する環境の汚染、機器の腐食、製造現場に従事する従業員の安全を脅かすなどの問題を解決することができる。
【0007】
このリチウムリッチマンガン系リチウムイオン電池の正極材料の化学式は、Li1+z(MnNiCo1−x−y1−zであり、z値は0.01〜0.30である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の技術案によって実現する。
【0009】
高品質のリチウムリッチマンガン系リチウムイオン電池の正極材料の合成方法であって、アミノ酸とニッケル−コバルト−マンガン金属とを錯体化して前駆体を調製するステップと、前記前駆体をリチウム塩と混合し、ボールミリングし、乾燥し、焼成して製品を取得するステップと、を含むことを特徴とする。
【0010】
安全かつ無毒であり、機器に対する腐食性が低く、ニッケル、コバルト、マンガンなどの金属への錯化力が適切な新しい錯化剤であるアミノ酸を使用して、適切な濃度、供給速度、反応温度およびpHで、所望の粒子径を有する高タップ密度の前駆体を迅速に合成する共沈合成プロセスである。
【0011】
本発明は、高品質のリチウムリッチマンガン系正極材料の合成方法であって、
所定の濃度の易溶性炭酸塩系化合物とアミノ酸との混合溶液を調製し、モル比Mn:Ni:Coを所定の割合とする適切な濃度の混合金属塩溶液を調製し、適切な濃度のアミノ酸を反応ベース液として調製するステップ(1)と、
易溶性炭酸塩系化合物とアミノ酸混合溶液とを反応させて前駆体を得て、合成された前駆体を使用に供するべく乾燥するステップ(2)と、
ステップ(2)で得た前駆体をリチウム塩と混合し、ボールミリングするステップ(3)と、
ボールミリングされた後の混合物を750〜900℃の焼成温度で高温焼成して製品を取得するステップ(4)と、を含む。
【0012】
ステップ(1)において、Mn:Ni:Coのモル比はx:y:(1−x−y)であり、x値は0.5〜0.7であり、y値は0.1〜0.3であり、易溶性炭酸塩系化合物の濃度は0.5〜4mol/Lであり、混合金属溶液の濃度は0.5〜10mol/Lであり、アミノ酸の濃度は0.0001〜1mol/Lであり、好ましくは0.001〜0.2mol/Lであり、ベース液中のアミノ酸の濃度は0.001〜0.2mol/Lである。
【0013】
アミノ酸は、アラニン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、セリン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシンなどであり、易溶性炭酸塩系化合物は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどである。
【0014】
ステップ(2)において、適切な反応系のpH、水浴の温度および混合塩溶液の流速を設定し、オンラインpH自動制御システムにより、易溶性炭酸塩系化合物とアミノ酸との混合溶液の流速を調整する。前記混合溶液の流速は0.1〜10mL/minであり、好ましくは0.5〜3mL/minである。pHは7〜9であり、好ましくは7.5〜8.5である。反応温度は30〜70℃であり、好ましくは40〜60℃である。
【0015】
合成された前駆体を80〜140℃で、2〜24時間真空乾燥させる。
【0016】
ステップ(3)において、前駆体とリチウム塩中のリチウム元素とのモル比は(1−z):(1+z)であり、z値は0.01〜0.30である。リチウム塩は1〜10%過量する必要がある。
【0017】
粉砕助剤は、無水エタノール、アセトン、エチレングリコール、CMC、ポリエチレングリコールであり、ボールミリング時間は1〜10時間であり、材料に対するボールの比は1〜4:1であり、回転速度は100〜600r/minである。
【0018】
ステップ(4)において、ボールミリング後の混合物をブラスト乾燥オーブンで乾燥させた後、コランダムルツボに入れ、マッフ炉の中で空気または酸素雰囲気中で3〜20時間高温焼成する。
【発明の効果】
【0019】
従来技術に比べて、本発明は以下の利点を有する。
【0020】
アミノ酸を錯化剤とし、環境にやさしく無毒で、運転機器への腐食性が非常に小さく、ニッケル、コバルトおよびマンガンの錯体作用がアンモニア水より少し強く、かつ、この3つの金属への錯体作用が概ね同様であるので、3つの金属の共沈に有利であり、材料中の各金属の均一な分布を実現し、リチウムリッチマンガン系材料の総合的な電気化学的性能を向上させ、材料の品質を改善する。本発明によって製造されたリチウムリッチマンガン材料は、タップ密度が高く、固体密度が高く、電気化学的性能が優れる特性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明は、ここで添付の図面を参照してさらに説明される。
【0022】
図1】実施例1により製造されたリチウムリッチマンガン原料前駆体のSEM図である。
図2】実施例1により製造されたリチウムリッチマンガン材料のSEM図である。
図3】は、実施例1および比較例の0.1Cの最初の充放電曲線の比較を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔実施例1〕
前駆体の合成は、通常の炭酸塩共沈法に従って、グリシンを錯化剤として用いて行う。
【0024】
2mol/LのNaCOと0.2mol/Lのグリシンとの混合溶液を調製し、Mn:Ni:Coのモル比が0.5350:0.2325:0.2325になるように2mol/Lの混合塩溶液を調製し、反応ベース液として0.01mol/Lのグリシン700mLを調製する。
【0025】
反応器内の温度は50℃であり、塩溶液の流速は3mL/minである。炭酸ナトリウムとグリシンとの混合溶液の流速は、オンラインpH自動制御装置により調整され、pHは8±0.05に制御する。合成時間は3hである。合成された前駆体の平均粒子径は10.4μmであり、タップ密度は1.89g/cmである。
【0026】
合成された前駆体を120℃で10時間真空乾燥する。
【0027】
前駆体と炭酸リチウムLiCOとをモル比が1:0.650(リチウム元素に相当する比は1:1.164、すなわちz=0.13)になるように秤量して混合し、適量の無水エタノールを加え、6時間ボールミリングする。材料に対するボールの比は2:1であり、回転速度は200r/minである。
【0028】
ボールミリングされた後の混合物をブラスト乾燥オーブン中で乾燥させ、コランダムルツボに入れ、マッフル炉内で高温焼成する。空気雰囲気で850℃、10h行う。
【0029】
高品質のリチウムリッチマンガン系材料:SP:r−GO:PVDF=90:3:3:4で混合し、適量のNMPを加え、6時間ボールミリングし、所定の粘度のスラリーに調製する。調製されたスラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔上に塗布して電極シートを作製する。真空オーブンで120℃で乾燥させた後、ボタン電池パンチを利用して直径1.2cmの電極シートを作製する。Cellgard2400をセパレータとし、LiPFを電解液とし、EC:EMC=1:1で、濃度が1.0mol/Lである溶液を電解液とし、リチウムシートを負極として、アルゴン充填グローブボックスでCR2016ボタン電池を組み込み、充放電電圧範囲は2.0−4.8Vである。
【0030】
この実施例により合成されたリチウムリッチマンガン材料の化学組成は、Li1.13Mn0.46Ni0.2Co0.2であり、タップ密度は2.18g/cmであり、コンパクション密度は2.89g/cmであり、0.1Cの初回充電容量は320mAh/gであり、放電容量は245mAh/gであり、初回クーロン効率は76%であった。
【0031】
〔実施例2〕
グルタミン酸を錯化剤とし、0.05mol/Lのグルタミン酸溶液500mLを反応ベース液とし、塩溶液の流速を1.6mL/min、合成温度を40℃とし、実施例1の材料合成およびボタン電池の作製方法およびステップによって、材料の合成と試験を行う。この実施例により合成されたリチウムリッチマンガン系正極材料は、タップ密度は2.01g/cmであり、コンパクション密度は2.9g/cmであり、0.1Cの初回充電容量は320mAh/gであり、放電容量は241mAh/gであり、初回クーロン効率は75%であった。
【0032】
〔実施例3〕
アラニンを錯化剤とし、0.075mol/Lのアラニン溶液500mLを反応ベース液とし、塩溶液の流速を1.6mL/min、合成温度を40℃とし、実施例1の材料合成およびボタン電池の作製方法およびステップによって、材料の合成と試験を行う。この実施例により合成されたリチウムリッチマンガン系正極材料は、タップ密度は2.10g/cmであり、コンパクション密度は2.99g/cmであり、0.1Cの初回充電容量は323mAh/gであり、放電容量は247mAh/gであり、初回クーロン効率は77%であった。
【0033】
〔実施例4〕
グルタミンを錯化剤とし、0.1mol/Lのグルタミン溶液500mLを反応ベース液とし、塩溶液の流速を1.6mL/min、合成温度を40℃とし、実施例1の材料合成およびボタン電池の作製方法およびステップによって、材料の合成と試験を行う。この実施例により合成されたリチウムリッチマンガン系正極材料は、タップ密度は1.97g/cmであり、コンパクション密度は2.81g/cmであり、0.1Cの初回充電容量は319mAh/gであり、放電容量は234mAh/gであり、初回クーロン効率は73%であった。
【0034】
〔実施例5〕
前駆体の合成は、通常の炭酸塩共沈法に従って、グルタミンを錯化剤として用いて行う。
【0035】
4mol/LのKCOと1mol/Lのグルタミンとの混合溶液を調製し、Mn:Ni:Coのモル比が0.5350:0.2325:0.2325になるように10mol/Lの混合塩溶液を調製し、反応ベース液として0.2mol/Lのグルタミン500mLを調製する。
【0036】
反応系内のpHを9、温度を70℃、混合塩溶液の流速を0.1mL/minに設定し、炭酸カリウムとグルタミンの混合溶液の流速はオンラインpH自動制御装置により調整される。合成時間は5hである。合成された前駆体の平均粒子径は10.5μmであり、タップ密度は1.88g/cmである。
【0037】
合成された前駆体を80℃で24時間真空乾燥する。
【0038】
前駆体と酢酸リチウムとをモル比が1:1.3になるように秤量して混合し、適量のアセトンを加え、10時間ボールミリングする。材料に対するボールの比は4:1であり、回転速度は100r/minである。
【0039】
ボールミリングされた後の混合物をブラスト乾燥オーブン中で乾燥させ、コランダムルツボに入れ、マッフル炉内で高温焼成する。焼結温度が750℃であり、焼結時間は20hであり、焼結間に酸素雰囲気を通す。
【0040】
高品質のリチウムリッチマンガン系材料:SP:r−GO:PVDF=90:3:3:4で混合し、適量のNMPを加え、6時間ボールミリングし、所定の粘度のスラリーに調製する。調製されたスラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔上に塗布して電極シートを作製する。真空オーブンで120℃で乾燥させた後、ボタン電池パンチを利用して直径1.2cmの電極シートを作製する。Cellgard2400をセパレータとし、LiPFを電解液とし、EC:EMC=1:1で、濃度が1.0mol/Lである溶液を電解液とし、リチウムシートを負極として、アルゴン充填グローブボックスでCR2016ボタン電池を組み込み、充放電電圧範囲は2.0−4.8Vである。
【0041】
この実施例により合成されたリチウムリッチマンガン材料において、タップ密度は2.23g/cmであり、コンパクション密度は2.92g/cmであり、0.1Cの初回充電容量は325mAh/gであり、放電容量は248mAh/gであり、初回クーロン効率は77%であった。
【0042】
〔実施例6〕
前駆体の合成は、通常の炭酸塩共沈法に従って、セリンを錯化剤として用いて行う。
【0043】
0.5mol/LのLiCOと0.0001mol/Lのセリンとの混合溶液を調製し、Mn:Ni:Coのモル比が0.6250:0.1875:0.1875になるように0.5mol/Lの混合塩溶液を調製し、反応ベース液として0.001mol/Lのセリン800mLを調製する。
【0044】
反応系内のpHは7であり、温度は30℃であり、混合塩溶液の流速は10mL/minである。炭酸リチウムとセリンの混合溶液の流速はオンラインpH自動制御装置により調整される。合成時間は4hである。合成された前駆体の平均粒子径は10.6μmであり、タップ密度は1.89g/cmである。
【0045】
合成された前駆体を140℃で2時間真空乾燥する。
【0046】
前駆体と酢酸リチウムをモル比が1:1.5なるように秤量して混合し、適量のエタノールを加え、10時間ボールミリングする。材料に対するボールの比は1:1であり、回転速度は600r/minである。
【0047】
ボールミリングされた後の混合物をブラスト乾燥オーブン中で乾燥させ、コランダムルツボに入れ、マッフル炉内で高温焼成する。焼結温度は900℃であり、焼結時間は3hであり、酸素雰囲気で行う。
【0048】
高品質のリチウムリッチマンガン系材料:SP:r−GO:PVDF=90:3:3:4で混合し、適量のNMPを加え、6時間ボールミリングし、所定の粘度のスラリーに調製する。調製されたスラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔上に塗布して電極シートを作製する。真空オーブンで120℃で乾燥させた後、ボタン電池パンチを利用して直径1.2cmの電極シートを作製する。Cellgard2400をセパレータとし、LiPFを電解液とし、EC:EMC=1:1で、濃度が1.0mol/Lである溶液を電解液とし、リチウムシートを負極として、アルゴン充填グローブボックスでCR2016ボタン電池を組み込み、充放電電圧範囲は2.0−4.8Vである。
【0049】
この実施例により合成されたリチウムリッチマンガン材料の化学組成は、Li1.2Mn0.5Ni0.15Co0.15であり、タップ密度は2.27g/cmであり、コンパクション密度は2.99g/cmであり、0.1Cの初回充電容量は331mAh/gであり、放電容量は251mAh/gであり、初回クーロン効率は80%であった。
【0050】
〔実施例7〕
前駆体の合成は、通常の炭酸塩共沈法に従って、スレオニンを錯化剤として用いて行う。
【0051】
3mol/LのNaHCOと0.5mol/Lのスレオニンとの混合溶液を調製し、Mn:Ni:Coのモル比が0.70:0.15:0.15になるように5mol/Lの混合塩溶液を調製し、反応ベース液として0.1mol/Lのスレオニン600mLを調製する。
【0052】
反応系内のpHを7.5、温度を60℃、混合塩溶液の流速を5mL/minに設定し、炭酸水素ナトリウムとスレオニンの混合溶液の流速はオンラインpH自動制御装置により調整される。合成時間は3hである。合成された前駆体の平均粒子径は10.4μmであり、タップ密度は1.87g/cmである。
【0053】
合成された前駆体を110℃で10時間真空乾燥する
【0054】
前駆体と水酸化リチウムをモル比が1:1.22になるように秤量して混合し、適量のCMCを加え、5時間ボールミリングする。材料に対するボールの比は3:1であり、回転速度は300r/minである。
【0055】
ボールミリングされた後の混合物をブラスト乾燥オーブン中で乾燥させ、コランダムルツボに入れ、マッフル炉内で高温焼成する。酸素雰囲気で850℃、10h行う。
【0056】
高品質のリチウムリッチマンガン系材料:SP:r−GO:PVDF=90:3:3:4で混合し、適量のNMPを加え、6時間ボールミリングし、所定の粘度のスラリーに調製する。調製されたスラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔上に塗布して電極シートを作製する。真空オーブンで120℃で乾燥させた後、ボタン電池パンチを利用して直径1.2cmの電極シートを作製する。Cellgard2400をセパレータとし、LiPF6を電解液とし、EC:EMC=1:1で、濃度が1.0mol/Lである溶液を電解液とし、リチウムシートを負極として、アルゴン充填グローブボックスでCR2016ボタン電池を組み込み、充放電電圧範囲は2.0−4.8Vである。
【0057】
この実施例により合成されたリチウムリッチマンガン材料の化学組成は、Li1.10Mn0.63Ni0.135Co0.135であり、タップ密度は2.25g/cmであり、コンパクション密度は2.95g/cmであり、0.1Cの初回充電容量は329mAh/gであり、放電容量は250mAh/gであり、初回クーロン効率は79%であった。
【0058】
〔実施例8〕
前駆体の合成は、通常の炭酸塩共沈法に従って、フェニルアラニンを錯化剤として用いて行う。
【0059】
1mol/LのKHCOと0.1mol/Lのフェニルアラニンとの混合溶液を調製し、Mn:Ni:Coのモル比が0.6:0.3:0.1になるように3mol/Lの混合塩溶液を調製し、反応ベース液として0.15mol/Lのフェニルアラニン700mLを調製する。
【0060】
反応系内のpHを8.5、温度を60℃、混合塩溶液の流速を0.5mL/minに設定し、炭酸水素カリウムとフェニルアラニンの混合溶液の流速はオンラインpH自動制御装置により調整される。合成時間は6hである。合成された前駆体の平均粒子径は10.6μmであり、タップ密度は1.91g/cmである。
【0061】
合成された前駆体を110℃で9時間真空乾燥する。
【0062】
前駆体と硝酸リチウムをモル比が1:1.67になるように秤量して混合し、適量のポリエチレングリコールを加え、7時間ボールミリングする。材料に対するボールの比は3:1であり、回転速度は500r/minである。
【0063】
ボールミリングされた後の混合物をブラスト乾燥オーブン中で乾燥させ、コランダムルツボに入れ、マッフル炉内で高温焼成する。酸素雰囲気で、800℃、9h行う。
【0064】
高品質のリチウムリッチマンガン系材料:SP:r−GO:PVDF=90:3:3:4で混合し、適量のNMPを加え、6時間ボールミリングし、所定の粘度のスラリーに調製する。調製されたスラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔上に塗布して電極シートを作製する。真空オーブンで120℃で乾燥させた後、ボタン電池パンチを利用して直径1.2cmの電極シートをで作製する。Cellgard2400をセパレータとし、LiPFを電解液とし、EC:EMC=1:1で、濃度が1.0mol/Lである溶液を電解液とし、リチウムシートを負極として、アルゴン充填グローブボックスでCR2016ボタン電池を組み込み、充放電電圧範囲は2.0−4.8Vである。
【0065】
この実施例により合成されたリチウムリッチマンガン材料の化学組成は、Li1.25Mn0.45Ni0.225Co0.075であり、タップ密度は2.26g/cmであり、コンパクション密度は2.95g/cmであり、0.1Cの初回充電容量は329mAh/gであり、放電容量は253mAh/gであり、初回クーロン効率は80%であった。
【0066】
〔実施例9〕
前駆体の合成は、通常の炭酸塩共沈法に従って、チロシンを錯化剤として用いて行う。
【0067】
1.5mol/LのKHCOと0.001mol/Lのチロシンとの混合溶液を調製し、Mn:Ni:Coのモル比が0.5350:0.2325:0.2325になるように1mol/Lの混合塩溶液を調製し、反応ベース液として0.1mol/Lのチロシン700mLを調製する。
【0068】
反応系内のpHを8、温度を50℃、混合塩溶液の流速を2mL/minに設定し、炭酸水素カリウムとチロシンの混合溶液の流速はオンラインpH自動制御装置により調整される。合成時間は6hである。合成された前駆体の平均粒子径は10.8μmであり、タップ密度は1.94g/cmである。
【0069】
合成された前駆体を130℃で9時間真空乾燥する。
【0070】
前駆体と硝酸リチウムをモル比が1:1.3になるように秤量して混合し、適量のポリエチレングリコールを加え、3時間ボールミリングする。材料に対するボールの比は2:1、回転速度は500r/minである。
【0071】
ボールミリングされた後の混合物をブラスト乾燥オーブン中で乾燥させ、コランダムルツボに入れ、マッフル炉内で高温焼成する。酸素雰囲気で900℃、9h行う。
【0072】
高品質のリチウムリッチマンガン系材料:SP:r−GO:PVDF=90:3:3:4で混合し、適量のNMPを加え、6時間ボールミリングし、所定の粘度のスラリーに調製する。調製されたスラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔上に塗布して電極シートを作製する。真空オーブンで120℃で乾燥させた後、ボタン電池パンチを利用して直径1.2cmの電極シートを作製する。Cellgard2400をセパレータとし、LiPFを電解液とし、EC:EMC=1:1で、濃度が1.0mol/Lである溶液を電解液とし、リチウムシートを負極として、アルゴン充填グローブボックスでCR2016ボタン電池を組み込み、充放電電圧範囲は2.0−4.8Vである。
【0073】
この実施例により合成されたリチウムリッチマンガン材料の化学組成は、Li1.13Mn0.46Ni0.2Co0.2であり、タップ密度は2.31g/cmであり、コンパクション密度は3.01g/cmであり、0.1Cの初回充電容量は334mAh/gであり、放電容量は260mAh/gであり、初回クーロン効率は83%であった。
【0074】
〔比較例〕
実施例1の比較として、錯化剤としてアンモニア水を使用した以外、他のプロセスは実施例1と同じである。合成された前駆体材料は、平均粒径が10.1μmであり、前駆体タップ密度は1.64g/cmであった。合成リチウムリッチマンガン材料はLi1.13Mn0.46Ni0.2Co0.2であり、タップ密度は1.79g/cmであり、コンパクション密度は2.4g/cmであり、0.1Cの初回充電容量は321mAh/gであり、放電容量は224mAh/gであり、初回クーロン効率は69%であった。
【0075】
表1 実施例と比較例の主な性能指標の比較
【表1】
図1
図2
図3
【国際調査報告】