(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-507666(P2019-507666A)
(43)【公表日】2019年3月22日
(54)【発明の名称】胸腔ドレナージ治療をカスタマイズするためのデバイス、システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61M 1/00 20060101AFI20190222BHJP
【FI】
A61M1/00 190
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2018-548094(P2018-548094)
(86)(22)【出願日】2017年3月7日
(85)【翻訳文提出日】2018年11月6日
(86)【国際出願番号】US2017021155
(87)【国際公開番号】WO2017155994
(87)【国際公開日】20170914
(31)【優先権主張番号】62/304,822
(32)【優先日】2016年3月7日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/343,031
(32)【優先日】2016年5月30日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】518319414
【氏名又は名称】アントニチェッリ、アルベルト
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アントニチェッリ、アルベルト
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA18
4C077DD01
4C077DD11
4C077DD12
4C077EE04
4C077HH07
4C077HH13
4C077JJ06
4C077JJ13
4C077JJ16
(57)【要約】
胸腔ドレナージ装置を特徴付けるためのデバイス、システムおよび方法を開示する。このデバイスは、正圧および負圧の両方の供給源と、正圧および負圧を胸腔ドレナージ装置に供給する導管と、正圧または負圧のいずれかに対する胸腔ドレナージ装置の応答を検出するセンサとを含む。このシステムは、胸腔ドレナージ装置に正圧または負圧のいずれかを制御可能に供給するデバイスと、ドレナージ装置に対する正圧または負圧の作用を記録するセンサとを含む。この方法は、(1)正圧および負圧の両方の供給源を提供する工程と、(2)胸腔ドレナージ装置に正圧または負圧のいずれかを制御可能に印加する工程と、(3)圧力印加に対する胸腔ドレナージ装置からの応答を検出する工程とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
胸腔ドレナージ装置を特徴付けるためのデバイスであって
周囲圧力に対する正圧および負圧の両方の供給源と、
前記正圧および前記負圧を前記胸腔ドレナージ装置に供給する導管と、
前記胸腔ドレナージ装置の前記正圧または前記負圧への応答を検出するセンサと
を備える、デバイス。
【請求項2】
前記供給源が、正圧または負圧のいずれかを選択的に生成するのに有効なポンプである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
複数の電磁弁が前記正圧または前記負圧のいずれかを前記導管に選択的に伝達する、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
空気圧縮機がベンチュリと連通しており、それによって、正圧は、前記空気圧縮機からの直接流によって供給され、負圧は、前記空気圧縮機の前記出力が前記ベンチュリを通って流れるときに生成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
複数の空気圧ラインが、前記正圧または前記負圧のいずれかを前記導管に選択的に伝達する、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記センサが、光ビームおよび光検出器を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
レーザが前記光ビームを生成し、前記光検出器が前記光ビームの反射率を測定する、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記レーザセンサが、高さと角度の両方を固定するのに有効な支持部に取り付けられている、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
真空チャンバをさらに含む、請求項3に記載のデバイス。
【請求項10】
前記電磁弁が前記導管を前記供給源から隔離し、それによって所望の真空が前記真空チャンバに引き込まれる、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
真空チャンバをさらに含む、請求項5に記載のデバイス。
【請求項12】
前記空気圧ラインが前記導管を前記供給源から隔離し、それによって所望の真空が前記真空チャンバに引き込まれる、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記センサが時間の関数として圧力を検出する、請求項10に記載のデバイス。
【請求項14】
前記センサは、前記所望の真空が前記胸腔ドレナージ装置に印加されたときとして時間0を識別する、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記電磁弁が、前記導管から前記正圧源を隔離する、請求項3に記載のデバイス。
【請求項16】
前記センサは、時間の関数として空気流の容積を識別する、請求項16に記載のデバイス。
【請求項17】
前記センサが、前記空気流の容積が前記胸腔ドレナージ装置に加えられたときとして時間0を識別する、請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
胸腔ドレナージ装置を特徴付けるシステムであって、
前記胸腔ドレナージ装置に正圧または負圧のいずれかを制御可能に提供するデバイスと、
前記胸腔ドレナージ装置に対する前記正圧または前記負圧の作用を記録するセンサと
を備える、システム。
【請求項19】
前記胸腔ドレナージ装置は、胸腔ドレナージチューブを収集チャンバに空気圧で接合するための接続チューブを含み、前記デバイスは、前記胸腔ドレナージチューブの代わりに前記接続チューブに空気圧で接合され、それによって前記デバイスが前記収集チャンバと通信する、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記デバイスが前記収集チューブに負圧を印加する、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記収集チャンバがUWSDシステムである、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記センサが光ビームと光検出器とを含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
レーザが前記光ビームを生成し、前記光検出器が前記光ビームの反射率を測定する、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記レーザは、前記導管の透明部分に衝突するように位置付けられ、空気または流体が存在するかどうかを検出する、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記センサが、所定時間内に前記透明部分を通過する気泡の存在を検出する、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記胸腔ドレナージシステムがデジタルドレナージシステムである、請求項20に記載のシステム。
【請求項27】
前記センサが、時間の関数として負圧を検出する、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記センサは、前記負圧が前記デジタルドレナージシステムに印加されたときとして時間0を識別する、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記デバイスは、前記接続チューブに正圧を印加する、請求項19に記載のシステム。
【請求項30】
前記胸腔ドレナージ装置が、UWSDシステム、デジタルドレナージシステムおよびそれらのハイブリッドで構成される群から選択される、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記センサが、時間の関数として空気流の容積を検出する、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
前記センサは、前記空気流の容積が前記胸腔ドレナージ装置に加えられたときとして時間0を識別する、請求項27に記載のシステム。
【請求項33】
胸腔ドレナージシステムを特徴付ける方法であって、
周囲圧力に対して正圧および負圧の両方の供給源を提供するステップと、
前記正圧または前記負圧のいずれかを制御可能に前記胸腔ドレナージ装置に印加するステップと、
前記胸部ドレナージ装置から前記圧力印加への応答を検出するステップと
を含む、方法。
【請求項34】
前記正圧源および前記負圧源としてポンプを設けることを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記ポンプと前記胸腔ドレナージ装置との間に複数の電磁弁が配設されている、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
真空チャンバに負圧が印加され前記胸腔ドレナージ装置が前記供給源から隔離されるように、前記複数の電磁弁が第1の構成に設定されるステップを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記真空チャンバからの負圧が前記胸腔ドレナージ装置に印加され前記ポンプが前記真空チャンバから隔離されるように、前記複数の電磁弁が第2の構成に設定される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記胸腔ドレナージ装置からの前記応答が複数の気泡である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
空気と流体との間の反射率の差が、前記気泡を検出するために使用される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記胸腔ドレナージ装置からの前記応答が、印加前の圧力に戻る試みである、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
関数が時間であるときの圧力変化が記録される、請求項40に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この特許出願は、2016年3月7日に提出されたAlberto Antonicelliによる「胸膜内過負圧から患者を保護するためのシステムおよびデバイス(System and Device to Protect Patients from Excessive Negative Intrapleural Pressures)」と題する米国仮特許出願第62/304,822号の優先権を主張する。この特許出願はまた、2016年5月30日に提出されたAlberto Antonicelliによる「個々の患者に合わせた胸腔ドレナージ治療の自動パイロット(Automatic Pilot to Tailor Chest Drainage Therapy to Individual Patients)」と題する米国仮特許出願第62/343,031号の優先権を主張する。米国特許出願第62/304,822号および米国特許出願第62/343,031号の両方の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
胸部疾患の診断および治療を受けている患者の大半が胸腔チューブを必要とする。胸腔チューブは、胸膜腔から空気および流体(漿液、血液、乳びまたは膿など)を除去する。代表的な胸腔ドレナージ装置は、Elliottらによる「チェック弁付き胸腔ドレナージ装置(Chest Drainage Apparatus with Check Valve)」と題された米国特許第4,738,671号に開示されている。この胸腔ドレナージシステムの主な特徴は、胸腔チューブの近位端部を収集チャンバに接続する接続チューブを含む。胸腔チューブの反対側の遠位端部は、空気および流体を除去するために患者の胸膜腔内に挿入される。第2のチューブは収集チャンバを真空源に接続し、真空源は、収集チャンバを介して胸腔ドレナージ装置に負圧を印加して、胸膜腔から収集チャンバへの空気および流体の流れをさらに促進する。この外部から印加される負圧は、注意深く調整しなければならない。低すぎると、1ボトルの胸腔ドレナージシステムを使用する場合に、患者は吸息中に空気と液体の両方を引いて胸膜腔に戻す可能性があり、または2ボトル、3ボトルまたはコンパクトな胸腔ドレナージシステムを使用する場合には空気のみを引き戻す可能性がある。外部からの負圧が高すぎると、特に患者が脆弱な状態にある場合に、胸腔内の構造が損傷する可能性がある。米国特許第4,738,671号はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
先行技術から知られているような一般的な胸腔ドレナージシステムを
図30に示す。
【0004】
胸腔ドレナージシステム自体が、進行中の疾患に対する治療である。胸水ドレナージ管理の最適化は、患者の回復を促進する。しかし、胸膜腔の病態生理学は何十年もの間、分かっていない課題と考えられており、科学における真の調査は比較的稀である。大部分の外科医は経験的観察によって定められ、ある世代から次の世代に伝えられた教義を教えられ、受け入れる。胸腔ドレナージ治療の臨床ガイドラインがないことに伴い、胸腔ドレナージシステムの技術進化を左右する適切な規制および基準が欠如している。結果として、胸腔ドレナージシステムの進化は、いかなる指針でも行われていない。実際に、現在利用可能な「伝統的な」胸腔ドレナージシステム(アンダーウォーター・シールド・ドレナージ(UWSD)およびドライシール)のデバイス設計、ならびにソフトウェアおよびハードウェアがデジタルシステムで設計される原則は、デバイスによって、および製造業者によって大きく異なる。現在、40を超えると推定される多数の異なるタイプの胸腔ドレナージシステムが世界中で市販されている。価格または好ましい供給源に基づく病院管理者側の好みによって、医師が1種以上の胸腔ドレナージシステムに触れる機会は制限されることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,738,671号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Alberto Antonicelliら著「胸腔ドレナージシステムにおけるウォーターシールの一方向動作:パラダイムが作用しないとき(Water Seal’s One−Way Action in Chest Drainage Systems:When the Paradigm Fails)」(コペンハーゲン、2014)
【非特許文献2】Alberto Antonicelli著「潜在的に危険な胸腔内負圧:デジタル胸腔ドレナージシステムの長所と短所(Potentially Dangerous Negative Intrapleural Pressure:Pros and Cons of Digital Chest Drainage Systems)」(ナポリ、2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述の理由から、胸腔チューブを有する患者の現在の管理は標準化されていない。経験豊富な病院では根拠に基づくプロトコルから満足のいく治療が得られるかもしれないが、治療は必ずしも科学的根拠に関して最新のものではない。ある種の胸腔ドレナージシステムの全体的な異質性、または不十分な臨床的性能は、臨床試験において偏りをもたらし、結果を解釈して比較することを困難にし、パーソナライズされた治療の開発を非常に難しくする。
【0008】
さらに、胸部外科患者は、これまであり得ると考えられていたものよりも広い範囲の疾患を包含する。例えば、現在では末期の線維症または肺気腫患者に手術がより頻繁に提供される。これらは高リスク患者であり、したがって、個人に合わせた胸腔ドレナージ治療が考慮されるべきである。しかし、市場にはこれに対処できるシステムがない。
【0009】
心臓胸郭部手術後の肺合併症は、死亡率および罹患率、病院の滞在期間および費用を増加させる。胸膜腔から空気および液体を適切にドレナージすることは、良好な管理の基盤である。いくつかの胸腔ドレナージシステムは世界中で市販されているが、それらの性能は様々であり、特定の患者においては最適ではない。さらに、胸腔ドレナージシステムが作動する原則の真の調査が乏しいだけでなく、多くの医師は、実質的な科学的根拠ではなく、経験的観察に基づく知識に依然として依拠している。
【0010】
胸膜腔管理の性質とその結果に関連する予備的作業が行われた。2つの実験室試験により、異なる性能パラメータを有する異なる胸腔ドレナージシステムが、合併症を生じるきっかけとなることが示された。例えば、Alberto Antonicelliらによる「胸腔ドレナージシステムにおけるウォーターシールの一方向動作:パラダイムが作用しないとき(Water Seal’s One−Way Action in Chest Drainage Systems:When the Paradigm Fails)」(コペンハーゲン、2014)、およびAlberto Antonicelliによる「潜在的に危険な胸腔内負圧:デジタル胸腔ドレナージシステムの長所と短所(Potentially Dangerous Negative Intrapleural Pressure:Pros and Cons of Digital Chest Drainage Systems)」(ナポリ、2016)を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】本明細書の第1の実施形態による胸腔ドレナージシステムを特徴付けるデバイスを概略的に示す図である。
【
図1B】本明細書の第1の実施形態による胸腔ドレナージシステムを特徴付けるデバイスを概略的に示す図である。
【
図1C】本明細書の第1の実施形態による胸腔ドレナージシステムを特徴付けるデバイスを概略的に示す図である。
【
図1D】本明細書の第1の実施形態による胸腔ドレナージシステムを特徴付けるデバイスを概略的に示す図である。
【
図2】選択された外部構成要素を示す、
図1のデバイスの外部の写真である。
【
図3】
図2の外部構成要素の1つとしての真空チャンバの写真である。
【
図4】
図2の外部構成要素の1つとしてのレーザセンサの写真である。
【
図5】
図1のデバイスの制御パネルを概略的に示す図である。
【
図7】特徴付けプロセスの第1の工程で
図1のデバイスを利用して空気引き戻しの生じやすさについて一体型3ボトルUWSDシステムを特徴付けるシステムを図式的に示す図である。
【
図8】特徴付けプロセスの第2の工程における
図7のシステムを図式的に示す図である。
【
図9】特徴付けプロセスの第3の工程における
図7のシステムを図式的に示す図である。
【
図10】特徴付けプロセスの第4の工程における
図7のシステムを図式的に示す図である。
【
図11】特徴付けプロセスの第1の工程で
図1のデバイスを利用して高い胸腔内負圧を処理する能力について胸腔ドレナージシステムを特徴付けるシステムを図式的に示す図である。
【
図12】特徴付けプロセスの第2の工程における
図11のシステムを図式的に示す図である。
【
図13】特徴付けプロセスの第3の工程における
図11のシステムを図式的に示す図である。
【
図14】特徴付けプロセスの第4の工程における
図11のシステムを図式的に示す図である。
【
図15】特徴付けプロセスの第1の工程で
図1のデバイスを利用して、気管支肺エアリークを処理する能力について胸腔ドレナージシステムを特徴付けるシステムを図式的に示す図である。
【
図16】特徴付けプロセスの第2の工程における
図15のシステムを図式的に示す図である。
【
図17】特徴付けプロセスの第3の工程における
図15のシステムを図式的に示す図である。
【
図18】特徴付けプロセスの第4の工程における
図15のシステムを図式的に示す図である。
【
図19A】本明細書の第2の実施形態による胸腔ドレナージシステムを特徴付けるデバイスを概略的に示す図である。
【
図19B】本明細書の第2の実施形態による胸腔ドレナージシステムを特徴付けるデバイスを概略的に示す図である。
【
図19C】本明細書の第2の実施形態による胸腔ドレナージシステムを特徴付けるデバイスを概略的に示す図である。
【
図21】
図19のデバイスを利用した空気引き戻しの生じやすさについて胸腔ドレナージシステムを特徴付けるシステムを図式的に示す図である。
【
図22】
図19のデバイスを利用して高い胸腔内負圧を処理する能力について胸腔ドレナージシステムを特徴付けるシステムを図式的に示す図である。
【
図23】
図19のデバイスを利用して、気管支肺エアリークを処理する能力について胸腔ドレナージシステムを特徴付けるシステムを図式的に示す図である。
【
図24A】空気引き戻しの生じやすさに関する一体型3ボトルUWSDシステム4台の連続した目盛付きのグラフによる比較である。
【
図24B】空気引き戻しの生じやすさに関する一体型3ボトルUWSDシステム4台の連続した目盛付きのグラフによる比較である。
【
図24C】空気引き戻しの生じやすさに関する一体型3ボトルUWSDシステム4台の連続した目盛付きのグラフによる比較である。
【
図24D】空気引き戻しの生じやすさに関する一体型3ボトルUWSDシステム4台の連続した目盛付きのグラフによる比較である。
【
図25】胸膜腔内に挿入された胸腔チューブの遠位端部と、空気引き戻し(医原性持続性気胸)に対して未調整で非常に生じやすい一体型3ボトルUWSDシステムの影響を示す胸部X線写真である。
【
図26】空気引き戻しの生じやすさが調整されたデジタル胸腔ドレナージシステムに切り替えた直後の
図25の患者の、気胸を示していない追跡胸部X線写真である。
【
図27】一体型3ボトルUWSDシステムを介する空気引き戻しを示す写真である。
【
図28】高い胸腔内負圧の処理についていくつかの胸腔ドレナージシステムを比較したグラフである。
【
図29】気管支肺エアリークを処理し、生理学的に負の胸腔内圧を再確立することについて2台の胸腔ドレナージシステムを比較したグラフである。
【
図30A】従来技術から知られている一体型3ボトルUWSDシステムの略図である。
【
図30B】従来技術から知られている一体型3ボトルUWSDシステムの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
カスタマイズされた胸腔ドレナージ治療の分野にはほとんど進歩がなかった。標準化された治療法は依然として必要であり、それが次にパーソナライズされたアルゴリズムへの扉を開くであろう。この文化的および科学的不均一性の代価を患者が負担しているため、パラダイムシフトが必要である。以下に開示されたデバイス、システムおよび方法は、a)すべての胸腔ドレナージシステムが同じように機能するわけではない、b)デジタル胸腔ドレナージシステムは、必ずしも「伝統的」なものより優れているわけではなく、すべての患者に必要なわけでもない、およびc)高い外科的リスク(例えば、脆弱な肺組織、長期間の喫煙者における治癒時間の長期化)を有する患者などの特定の患者は、パーソナライズされた治療アプローチから最も利益を受ける患者である、という主要な概念を医師に提供するように十分に準備されている。
【0013】
現象や働きの教育的モデルにより、ユーザーは、クライアントや施設のリソースを危険にさらすことなく、挙動や試験機器をリハーサルすることができる。本明細書に開示されたデバイス、システムおよび方法は、さらなる学術研究および臨床的意思決定のために医師が応用できるリアルタイムの分析論を提供することにより、この必要性に答えるものである。
【0014】
以下に、胸腔ドレナージ装置を特徴付けるためのデバイス、システム、および方法を開示する。このデバイスは、正圧および負圧の両方の供給源と、正圧および負圧を胸腔ドレナージ装置に供給する導管と、正圧または負圧のいずれかに対する胸腔ドレナージ装置の応答を検出するセンサとを含む。このシステムは、胸腔ドレナージ装置に正圧または負圧のいずれかを制御可能に供給するデバイスと、ドレナージ装置に対する正圧または負圧の作用を記録するセンサとを含む。この方法は、(1)正圧および負圧の両方の供給源を提供する工程と、(2)胸腔ドレナージ装置に正圧または負圧のいずれかを制御可能に印加する工程と、(3)圧力印加に対する胸腔ドレナージ装置からの応答を検出する工程とを含む。
【0015】
図1を参照すると、デバイス10は、境界線14の内側に示す構成要素が搭載された回路マザーボード12を含む。圧力トランスミッタ16およびレーザセンサ18などのいくつかの構成要素は、マザーボード12と通信しているが、典型的にはマザーボード上に設置されていない。デバイス10は評価中の胸腔ドレナージシステムと通信する。真空圧(周囲よりも低い圧力)または空気流(周囲よりも高い圧力)のいずれかの出力が、胸腔ドレナージシステムの接続チューブに送達される。ポンプ40は、真空圧力または空気流のいずれかに対して適切な出力を生成する。
【0016】
電源20は、AC110V/60Hz(米国)またはAC220V/50Hz(欧州)などの標準的なAC電流を受け入れるためのコンセントに接続され、変圧器22でDC24V電流に変換され、電源バス24によってデバイス10の構成要素に接続される。マイクロプロセッサ26は、レーザセンサエレクトロニクス28、圧力トランスミッタ16および流量トランスミッタ30のうちの1つ以上(実行中の評価に依存する)からの入力を受信する。マイクロプロセッサは、圧力制御弁32、複数の電磁弁34(EV0−EV6は
図1に示されている)およびデータ送信ポート38にデータを出力する。
【0017】
マイクロプロセッサ26によって収集されたデータは、データバス36によってデータ送信ポート38に送信される。その後、データは、パーソナルコンピュータ、メインフレームコンピュータ、タブレット、スマートフォン、または他のデジタル処理デバイスに送信されて、受信情報が処理および保存される。データ送信は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット、または他の適切なプライベートネットワークまたはパブリックネットワークにすることができる。デジタル処理デバイスへの送信は、データケーブルを介するものであってもよいし、無線通信によるものであってもよい。
【0018】
図2は、制御パネル42と、真空チャンバ98とレーザセンサ18とを含む外部構成要素を示すデバイス10の写真である。データ通信ライン44は、レーザセンサをレーザセンサエレクトロニクス(
図1の28)に接続する。空気圧チューブ46は、以下に開示するように、真空チャンバ98をデバイス10の他の空気圧構成要素に接続する。
図3は、真空チャンバ98の写真である。1つの適切な真空チャンバは、0.75Lの容積を有するが、他の容積の真空チャンバも等しく適している。真空/正圧ポンプ(
図1の40)は、所望の負圧に達するまで負圧を真空チャンバ98に引き込む。以下に開示するように、いくつかの評価手順では、次にポンプが試験から隔離され、真空チャンバを介して一体型3ボトルUWSDシステムに真空が適用される。
【0019】
図4は、支持部48に取り付けられ、空気引き戻しの生じやすさについて胸腔ドレナージシステムを特徴付ける際に使用される一体型3ボトルUWSDシステムの導管56のベースと位置合わせされたレーザセンサ18の写真である。一体型3ボトルUWSDシステムでは、堰54と組み合わされたウォーターシールチャンバ52が空気のための「一方向」弁として機能すると当該技術分野では考えられている。空気は、接続チューブに接続された吸気胸腔チューブから、ウォーターシールチャンバの水(「泡」)を介してウォーターシールチャンバの大気側57に流れることができるが、特に、肺線維症に起因するなど高い胸腔内負圧を有する患者について、胸腔チューブを配置した後、通常は吸気中に逆流すべきではない。導管56内の気泡のサイズおよび量は、圧力は正または負であり得、ポンプ(
図1の40)によって生成される圧力の関数であり、空気圧ラインによって評価中の胸腔ドレナージシステムに適用される。堰54の周りの間欠的または連続的な空気流(「泡」)は、試験中の胸腔ドレナージシステムが逆流の危険性を有することを示すものである。
【0020】
レーザセンサ18は、空気検出器として機能し、気泡または空気ポケットを検出し、データをレーザセンサエレクトロニクス(
図1の28)に電気的に伝達し、レーザセンサエレクトロニクスは次に電線であるレーザセンサケーブル58を介してマイクロプロセッサ(
図1の26)に通信する。レーザセンサ18は、UWSDシステムのウォーターシールチャンバ52と相互作用する。支持部48は、大気圧の水で満たされた導管56の部分に対して固定位置にレーザセンサ18を保持する。固定具60は、導管56に対してレーザセンサを高さおよび角度の両方で調節することを可能にする。
【0021】
1つの適切なレーザセンサ18は、米国イリノイ州アイタスカのKeyence Corporationによって製造されたILシリーズIntelligent−Lレーザセンサである。このセンサは、ターゲットの反射率に応じてレーザ出力を変化させる。気泡の反射率は液体の反射率とは異なるため、レーザ出力の測定は、検出器フィールドを通過する気泡の正確な検出を提供する。
【0022】
図5は、
図2の写真に示される制御パネル42の概略図であり、
図6は、その制御パネルのより詳細な写真である。制御パネルは、デバイスのトップカバーが開いているときにアクセスできる。電気接続部62は、レーザセンサ(
図1の18)用であり、データ送信ポート38は、外部デジタルコンピューティングシステムへの接続用である。空気圧アクセス64は、真空チャンバ(
図1の98)に接続し、正圧/負圧アクセス66は、試験中の胸腔ドレナージシステムの接続チューブに接続する。ヒューズは、過電流から保護するために様々な構成要素に接続される。図示されているように、ヒューズ68は真空出力用、ヒューズ70は圧力調整器用、ヒューズ72は流量センサ用、ヒューズ74はレーザセンサ用、ヒューズ76はDC24V電源用、ヒューズ78は電源状態用である。インジケータランプ80は、これらの構成要素の状態を示し、コンセント82は、外部A/C電源から電源コードを受け取るためのものである。
【0023】
デバイスの機能は、以下に説明するようにデバイスを利用して行うことができる3つの試験についての説明概要からより明らかになるであろう。これらの3つの試験は以下の通りである。
A)逆空気流(RAF)−レーザセンサとカスタムサポートは外部アクセサリである。空気圧縮機、流量制限器、および圧力トランスミッタは外部アクセサリであり得る。
B)持続的高負圧−真空チャンバは外部アクセサリである。空気圧縮機と圧力トランスミッタは外部アクセサリであり得る。
C)空気パッケージ−空気圧縮機と圧力トランスミッタは外部アクセサリであり得る。
【0024】
「伝統的な」胸腔ドレナージシステムは、空気が胸膜腔から出ることを可能にし、介在するウォーターシールチャンバ(「一方向」弁)によって胸膜腔内の還流を防止する。ある種のUWSDシステムを使用すると、一定の患者は吸気中に胸膜腔内の大気および流体を引き戻すことができる。上述したデバイスおよび
図7〜
図10に例示する方法を利用すると、特定の胸腔ドレナージシステムにおける空気引き戻しの生じやすさが決定される。
【0025】
図7は、一体型3ボトルUWSDシステム収集チャンバにその接続チューブによって接続されたデバイス10を示す。電磁弁86(
図1のEV6)は最初開かれ、UWSDシステムは大気に開放されている。
図8において、境界線14の左側(「左」および「右」は境界線に対する部分を例示するためのものであり、限定することを意図しない)の構成要素は、所望の圧力、典型的には以下のように−10cmH
2Oと−100cmH
2Oの間に設定されている。適切なソフトウェア(図示も請求もされていない)を備えた外部コンピュータが、マイクロプロセッサ26に命令を送信する。真空ポンプ40が起動する。圧力トランスミッタ16は発生した圧力を測定し、発生した圧力は次に圧力制御弁32によって調整され、所望の試験圧力に設定される。専門用語では、これは閉ループシステム制御と呼ばれる。真空が圧力トランスミッタ16に到達するが、電磁弁86を介して大気に開放されたままであるUWSDシステム50には到達しないように、電磁弁88(
図1のEV2)および電磁弁90(
図1のEV3)が閉じ、電磁弁92(
図1のEV5)が開く。
【0026】
図9では、電磁弁88,90が開き、電磁弁86が閉じ、それによってUWSDシステム50に所望の試験圧力が印加される。所望の試験圧力は大気圧よりも低いため、UWSDシステム50に真空が印加され、空気は試験中の胸腔ドレナージシステムを介して引き込まれてもよい。試験中の胸腔ドレナージシステムの出力は、導管56内の一連の気泡94である。レーザセンサ18は、気泡を検出し、データ通信ライン44を介してレーザセンサエレクトロニクス(
図1の28)にデータを送信し、レーザセンサエレクトロニクスはデータをマイクロプロセッサ(
図1の26)に送信する。
【0027】
図10では、電磁弁88,90が閉じ、電磁弁86が開いてUWSDシステム50を大気圧に配置し、導管56内の気泡(
図9の94)をウォーターシールチャンバ52に戻す。
【0028】
新しく設計された胸腔ドレナージシステムは、デジタル電子機器を使用して連続的な負圧差を維持する。
図11〜
図14を参照すると、特に新しく設計されたデジタル胸腔ドレナージシステムが使用される場合、定期的な胸部外科処置後に、高い胸腔内負圧変動(ピーク)および持続的な高い胸腔内負圧(平均)に遭遇する可能性がある。これは、真空解除機構(すなわち、高負圧弁)が組み込まれていないか、またはそのような機構が所与量の真空を緩衝するのに十分迅速に作動しないためである。これは特定の「伝統的な」胸腔ドレナージシステム(UWSDシステムまたはドライシール)でも起こり得る。
【0029】
図11を参照すると、デバイス10は、デジタル胸腔ドレナージシステム96を特徴付けるために使用される。始動モードでは、デジタルドレナージシステム96の電源が投入され、電磁弁88,90を閉じることによってデバイスから隔離される。次に、
図12に示すように、真空チャンバ98は、所望の負圧、典型的には以下のように−30cm H
2Oと−100cm H
2Oの間に設定され、適切なソフトウェアを備えた外部コンピュータがマイクロプロセッサ(
図1の26)に命令を送信する。真空ポンプ40が起動する。圧力トランスミッタ16は、発生した圧力を測定する。圧力制御弁32は、この発生した圧力を調整し、所望の試験圧力に設定する。専門用語では、これは閉ループシステム制御と呼ばれる。電磁弁92は三方弁である。第1のポート100および第3のポート104は、真空が圧力トランスミッタ16に到達するように開いている。第2のポート102は閉じ、真空がデジタル胸腔ドレナージシステム96に到達するのを防止し、デジタル胸腔ドレナージシステム96はシステムから隔離されたままである。
【0030】
図13を参照すると、電磁弁88,90が開き、電磁弁106(
図1のEV4)が閉じて、デジタルドレナージシステム96の中に真空が解放され、デジタル胸腔ドレナージシステム96が真空チャンバ98内で発生した真空を目標圧力(ソフトウェアを介して設定)まで低下させるのにかかる時間、およびどれくらいスムーズに低下させるかを圧力トランスミッタ16を通じて監視し、目標圧力はより正であるが依然として大気圧より低く、通常は−10cm H
2Oと−30cm H
2Oの間である。目標圧力に到達すると、デジタル胸腔ドレナージシステム96がそれ自身の目標圧力で安定した状態で、真空ポンプ40がオフになる(
図14)。
【0031】
図15〜
図18は、患者からの気管支肺エアリークをシミュレートし、特定の「伝統的」胸腔ドレナージシステムまたはデジタル胸腔ドレナージシステムが胸膜腔からそのようなエアリークを排除し、それによって生理的負圧を再確立する能力を決定するために使用される空気パッケージ試験を示す。
図15に示すように、試験の開始時に、UWSD50またはデジタル96(またはドライシールまたはハイブリッド)のいずれかの胸腔ドレナージシステムは、電磁弁88,90が閉じているため、デバイス10から隔離されている。電磁弁92の第1のポート100も閉じている。
図16に示すように、正圧を送達するように設定されたポンプ40が起動し、電磁弁88,90が開き空気の流れが開始する。電磁弁90の第1のポート108は閉じたままであり、胸腔ドレナージシステム50,96を空気の流れから隔離する。電磁弁の第2のポート110は大気に開放され、空気流を逃がす(通気孔112)。
【0032】
図17は、空気試験パッケージの試験部分を示す。電磁弁90の第2のポート110は閉じ、第1のポート108は開き、胸腔ドレナージシステム50,96への空気流を可能にし、UWSDコレクタ50への泡の流れを発生させ、デジタルデバイス96への正圧を発生させる。デバイス10は、圧力トランスミッタ16を通じて、胸腔ドレナージシステム50,96が発生した空気流を排除し目標圧力(ソフトウェアを介して設定)に到達するまでの時間、およびどれくらいスムーズに到達するかを監視する。試験の終了時には、
図18に示すように、胸腔ドレナージシステム50,96は、電磁弁90の第1のポート108を閉じ、第2のポート110を通気孔112に開放することによって、空気流から隔離される。
【0033】
図19は、第2の実施形態による胸腔ドレナージシステムを特徴付けるデバイス150を概略的に示す。デバイス150は、上述したデバイス10よりも少ない電磁弁を利用する。さらに、逆空気流、高負圧および空気パッケージを特徴付けるために必要な空気流または真空を生成するために、真空/正圧ポンプ(
図1の40)は空気圧縮機とベンチュリとの組合せに置き換えられる。
【0034】
デバイス150の制御パネル152が
図20に示されている。制御パネル152は、空気圧ラインをデバイスに接続するためのポート154,156,158,160,162,164,166、168と、電力およびデータ用の電気コネクタ170,172,174,176とを有する。
図20に示す例示的な実施形態では、電気コネクタ170はAC電力を受け取るためのものである。電気コネクタ172はレーザセンサに接続され、電気コネクタ174は圧力トランスミッタに接続される。電気コネクタ176は、デバイスとの間でデータを転送するためのものである。
【0035】
ポート154は空気圧縮機に接続され、ポート168は試験中の胸腔ドレナージ装置の接続チューブに接続される。他のポートへの接続は、実行される試験によって異なる。
図21は、逆空気流を特徴付けるための空気圧構成を示す。空気圧縮機178は、ベンチュリ180に接続されて真空を発生させる。空気圧縮機178とベンチュリ180との間には、圧力調整器202と圧力制御弁204があり、それらは組合せでベンチュリ内への空気流を調整することによって、発生した圧力を調整する。空気圧縮機は、約3バールと6バールの間の圧力の空気流を作り出す。空気圧ライン182はポート156とポート158とを接続するため、圧縮機178からの空気流はベンチュリ180に入り、空気圧ライン184に真空を発生させ、空気圧ライン184は空気圧ライン190,192を介して第1の三方弁186と第2の三方弁188に接続する。第2の三方弁188を閉じることにより、接続チューブ84を介してデバイスに接続されたときに、試験中の一体型3ボトルUWSDシステムの収集チャンバ50が隔離される。圧力は、圧力トランスミッタ16によって測定される。所望の圧力が得られると、第2の三方弁188が開き、逆空気流を特徴付けるために収集チャンバ50に真空が適用される。
【0036】
図22は、高い胸腔内負圧を特徴付けるための第2のデバイス150(
図19)の空気圧構成を示す。空気圧縮機178とベンチュリの組合せは、上述のように空気圧ライン190内に真空を発生させる。第1の三方弁186は、圧力トランスミッタ16が真空を測定できるように開いている。第2の三方弁188は、真空チャンバ98内に真空が集まるように開いた第1のポート194を有する。第2の三方弁188の第2のポート196および第3のポート198は、デジタルドレナージシステム96を真空から隔離するように閉じている。デジタルドレナージシステムを特徴付ける際、第1の三方弁186は閉じ、真空発生構成要素178,180を隔離する。次に、第2の三方弁188の第3のポート198が開き、空気圧ライン200を介してデジタルドレナージシステム96に真空を適用する。
図23は、空気パッケージを特徴付けるための空気圧構成を示す。
【0037】
ベンチュリ180はシステムから隔離され、空気圧縮機によって発生した空気流は、圧力調整器202、圧力制御弁204および流量トランスミッタ30によって調整される。第2の三方弁188の第2のポート196および第3のポート198が開き、第1のポート194が閉じているとき、試験中のデバイス50,96はシステムから隔離され、空気流は通気孔205を通って逃げる。第2のポート196が閉じ、第1のポート194が開くことにより、試験中のデバイス50,96への空気の流れが可能になる。
【0038】
図24は、空気引き戻しの生じやすさに関する一体型3ボトルUWSDシステム4台の連続した目盛付きのグラフによる比較である。縦軸は負圧(cm H
2O)を表し、横軸は時間(秒)を表す。塗りつぶされた円は、真空が適用されたとき(時間0)から、最初の気泡が検出されるまでの時間を表す。適度な時間、例えば−30cm H
2Oで15〜20秒がそれより短いまたは長い時間よりも好ましく、これは空気があまりにも早く戻ってくると、場合によっては各吸気時に空気が胸腔チューブに戻り、したがって最適ではない装置の幾何学的形状のために、引き戻された大気と肺エアリークを区別することができないためである。時間が長すぎると、真空が緩衝されず、したがって胸膜腔内に蓄積され、胸内の構造に損傷を与える可能性がある。
【0039】
図25および
図26は、同じ患者の胸部X線写真であり、逆空気流の臨床的影響を示している。
図26を参照すると、肺206を胸壁209に再付着させる必要がある病状がある。その再付着に続いて、胸腔チューブの遠位端部208が胸膜腔210(仮想空間)に挿入されて、空気および流体を排出する。
図25を参照すると、胸腔ドレナージシステムが逆空気流を許容する場合、肺206は、ここで胸膜腔210を満たしている大量の空気によって示されるように、胸壁209から離脱することがある。
【0040】
図27は、空気を逆流させる傾向があることを特徴とするUWSDシステムを示す。導管56には真空が適用され、収容された水の表面を曲げてウォーターシールチャンバ52に空気を引き戻す。
【0041】
高負圧の処理を評価するために、
図28は、−20cm H
2Oの連続負圧で動作するように設定したデジタル胸腔ドレナージシステム4台およびハイブリッド胸腔ドレナージシステム1台の回復時間および回復パターンをグラフで表したものである。例示的なデバイス(
図1の10)に0.75Lの真空チャンバを、
図13の時間0に示すように−100cm H
2Oの試験圧力に設定する。デバイス10がフェーズ2(
図13)で作動するときに、胸腔ドレナージシステムが試験圧力を−25cm H
2O(ソフトウェアを介して設定)の目標圧力まで低下させる時間および円滑さを記録する。
図28に示すように、一部のデジタルドレナージシステムは迅速かつ円滑に回復し(参照線A)、他のデジタルドレナージシステムはかなり長い時間をかけて階段状に回復するが(参照線B)、ハイブリッドは回復しない(参照線C)。参照線Aに最も密接に対応するデジタル胸腔ドレナージシステムが好ましい。
【0042】
空気パッケージを評価するために、
図29は、デジタル胸腔ドレナージシステム2台に関する空気流からの回復時間および回復パターンをグラフで表したものである。下の線214は、デバイス10によって生成された空気流を示す。上の線216,218は、試験中の胸腔ドレナージシステム内の圧力を示す。線216は、ベースライン220よりも高い圧力のままである。線218はベースライン220への緩やかな回復を示し、好ましいシステムである。
【0043】
逆空気流、高い胸腔内負圧、および空気パッケージの低速度の排気によって、エアリークの長期化など術後合併症の割合が高くなる可能性があり、胸腔チューブ期間の長期化(疼痛、不動および感染リスクの増加)、入院期間の長期化(費用)、不完全な実質組織の再膨張、皮下気腫および再手術を引き起こす。
【0044】
特に、調整されていない逆空気流は、気泡の起源を判断する医師の意思決定プロセスに影響を及ぼす可能性がある。治癒していない肺実質からの気泡は、本当のエアリークなのか?または、気泡は外側からであり、偽のエアリークなのか?高い胸腔内負圧は、高リスク患者において、術後の合併症を増加させ、さらには死亡率を高めるきっかけとなる可能性がある。排気時間の長期化に関連して、空気パッケージは肺虚脱および皮下気腫を伴う背圧を発生させる可能性があり、壁側胸膜への内臓の癒着が中断されるため、ある種の外科技術、すなわち気胸のための胸膜癒着術の意図が無効になる可能性がある。
【0045】
上記で生成されたデータを利用して、医師は、技術的特徴の迅速な評価を通じて、任意の所与の胸腔ドレナージシステムについて予測される臨床性能の洞察を得るであろう。術前および術後の患者パラメータ(入力)をデバイスに実際に与えて、これらの技術的特徴が患者に対する医師の治療方法に及ぼし得る影響についての表現(出力)を得ることができる。
【0046】
したがって、医師は、患者固有のリアルタイムのパラメータと統合された検査データに基づいて臨床決定を下すことができるであろう。例えば、術前の臨床的予想に沿った特徴を有する胸腔ドレナージシステムを合理的に選択するか、または潜在的な術後合併症に対処する方法を計画することができるであろう。
【0047】
これらの偏りのないデータは、医師の間で共有することができるため、臨床的に適用可能な深い技術的理解と普及によって良好な実践を育成することができるであろう。実際、多くの外科医は、病院管理者(価格に依存する基準)によって購入された1つまたは2つのモデルのみに触れることが多く、他のモデルの技術的特徴および臨床的含意について完全に気づいていないとは言わないが熟知していない可能性がある。
【0048】
このシステムは、研究開発を指導し、製品を体系的にベンチマークするために胸腔ドレナージの企業を製造する企業によって採用される可能性もある。
【0049】
胸腔ドレナージ治療を個々の患者に合わせることができる胸腔ドレナージシステムは、上記のデバイスおよびシステムによって開発されたデータに基づく。術前の患者パラメータを本発明にプログラムすると、患者の予測されるアウトカムに対する(通常のフィードバックに加えて)直接的な制御を医師に提供する。任意の所与の胸腔ドレナージシステムの性能を知ることにより、医師はよく知られている合併症を予期することができ、より良い患者ケアを即座に提供することができ、したがってより早い回復と病院にとっての費用削減をもたらすことができる。ベンチデータと患者固有のパラメータとを統合することにより、回路マザーボードをプログラムし、エアリークおよび胸膜内圧などの各患者の状態の変化にリアルタイムで反応することができるようにするアルゴリズムが開発されている。試験システムを用いて異なる大きさ(容積)またはエアリークおよび胸腔内圧の変化を試験し、検証する。取得知識は患者のベッドサイドに戻され、結果的に患者のアウトカムが改善され、より市場性の高い胸腔ドレナージシステムの基礎がもたらされる。
【0050】
リアルタイムの胸腔ドレナージシステム性能とプログラム可能な患者特性との統合に基づいて、医師は術前に胸腔ドレナージシステムの任意のモデルをベンチマークすることができるであろう。ケースバイケースで最適な胸腔ドレナージ治療を選択することにより、胸腔ドレナージ管理に対するカスタムアプローチが提示される。
【国際調査報告】