(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-508506(P2019-508506A)
(43)【公表日】2019年3月28日
(54)【発明の名称】N−リポアミノ酸又はペプチド、誘導体及びそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C07D 339/04 20060101AFI20190301BHJP
A61K 31/385 20060101ALI20190301BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20190301BHJP
C07K 5/062 20060101ALN20190301BHJP
C07K 5/078 20060101ALN20190301BHJP
C07K 5/065 20060101ALN20190301BHJP
C07K 5/083 20060101ALN20190301BHJP
C07K 5/08 20060101ALN20190301BHJP
C07K 5/087 20060101ALN20190301BHJP
C07K 5/097 20060101ALN20190301BHJP
【FI】
C07D339/04
A61K31/385
A61P17/00
C07K5/062
C07K5/078
C07K5/065
C07K5/083
C07K5/08
C07K5/087
C07K5/097
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2019-500210(P2019-500210)
(86)(22)【出願日】2016年3月14日
(85)【翻訳文提出日】2018年10月23日
(86)【国際出願番号】US2016022289
(87)【国際公開番号】WO2017160269
(87)【国際公開日】20170921
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】518327785
【氏名又は名称】ネオストラータ・カンパニー・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NeoStrata Company, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ユ・ルエイ・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】バンスコット・ユージン・ジェイ
【テーマコード(参考)】
4C023
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C023MA03
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BB04
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA89
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA11
4H045BA12
4H045EA15
4H045EA20
4H045FA10
(57)【要約】
N−リポアミノ酸、N−リポペプチド、及びそれらの誘導体の新規な化合物が説明される。アミノ酸又はペプチドの誘導体を含む組成物、及び組成物の方法、並びに皮膚科学的若しくは美容的状態又は皮膚系の他の障害を治療及び予防することを含むこれらの使用方法についても説明される。組成物、並びに皮膚美白及び化粧品のために組成物を使用する方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物であって、下記式(I)を有するN−リポアミノ酸又はペプチドの誘導体:
N−リポ−(X)n−Z−R1 式(I)
又はその異性体、遊離酸、塩基、塩、ラクトン、アミド、ヒドロキシルアミド、ヒドラジド、エステル若しくはニトリルを含み、
式中、リポは、リポ(Lp)ラジカルであり、
(X)nは、n個のアミノ酸残基を有するペプチドであり、
前記アミノ酸残基の各々、
Xは、任意のアミノ酸から独立して選択され、
nは、0〜2の整数であり、
Zは、カルボキシル末端アミノ酸残基であり、前記アミノ酸残基の各々は、任意のアミノ酸から独立して選択され、
R1は、OR2、NHR3、又はNHNHR4であり、
R2は、最大9個の炭素原子を有するH、アルキル、アラルキル又はアリールラジカルであり、
R3又はR4は独立して、最大9個の炭素原子を有するH、OH、アルキル、アラルキル、アリール又はアシルラジカルである、化合物。
【請求項2】
前記リポアミノ酸の誘導体は、N−Lp−Gly−NH2;N−Lp−Cys−NH2;N−Lp−Tyr−NH2;N−Lp−Tyr(OAc)−NH2;N−Lp−Pro−NH2;N−Lp−Cys−OH;N−Lp−Cys−OEt;N−Lp−Cys−(SAc)−OEt;及びN−Lp−Cys−(SAc)−NH2からなる群から選択されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記リポペプチドの誘導体は、N−Lp−Gly−Cys−NH2;N−Lp−Pro−Cys−NH2;N−Lp−Cys−Gly−NH2;N−Lp−Tyr−Gly−NH2;N−Lp−Gly−Tyr−NH2;N−Lp−Tyr−Cys−NH2;N−Lp−Tyr−Cys−OEt;N−Lp−Gly−Cys−OH;及びN−Lp−Gly−Cys−OEtからなる群から選択されるリポジペプチドである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記リポペプチドの誘導体は、N−Lp−Gly−Cys−Cys−NH2;N−Lp−Cys−Cys−Cys−NH2;N−Lp−Tyr−Cys−Cys−NH2;N−Lp−Gly−Tyr−Cys−NH2;及びN−Lp−Pro−Cys−Cys−NH2からなる群から選択されるリポトリペプチドである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記リポアミノ酸の誘導体は、
下記構造:
【化1】
を有するN−Lp−Gly−NH
2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
対象に局所投与するための組成物であって、治療有効量の請求項1に記載の化合物と、任意に、医薬的又は美容的に許容される担体とを含む、組成物。
【請求項7】
前記化合物は、N−Lp−Gly−NH2;N−Lp−Cys−NH2;N−Lp−Tyr−NH2;N−Lp−Tyr(OAc)−NH2;N−Lp−Pro−NH2;N−Lp−Cys−OH;N−Lp−Cys−OEt;N−Lp−Cys−(SAc)−OEt;及びN−Lp−Cys−(SAc)−NH2からなる群から選択されるリポアミノ酸である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記化合物は、N−Lp−Gly−Cys−NH2;N−Lp−Pro−Cys−NH2;N−Lp−Cys−Gly−NH2;N−Lp−Tyr−Gly−NH2;N−Lp−Gly−Tyr−NH2;N−Lp−Tyr−Cys−NH2;N−Lp−Tyr−Cys−OEt;N−Lp−Gly−Cys−OH;及びN−Lp−Gly−Cys−OEtからなる群から選択されるリポジペプチドである、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記化合物は、N−Lp−Gly−Cys−Cys−NH2;N−Lp−Cys−Cys−Cys−NH2;N−Lp−Tyr−Cys−Cys−NH2;N−Lp−Gly−Tyr−Cys−NH2;及びN−Lp−Pro−Cys−Cys−NH2からなる群から選択されるリポトリペプチドである、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
前記化合物が、N−Lp−Gly−NH2のリポアミノ酸である、請求項6に記載の組成物。
【請求項11】
老化に関連する皮膚の変化を局所的に治療するための医薬組成物であって、有効量の請求項1に記載の化合物と、任意に、化粧品として局所送達に適した医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項12】
前記化合物は、N−Lp−Gly−NH2;N−Lp−Cys−NH2;N−Lp−Tyr−NH2;N−Lp−Tyr(OAc)−NH2;N−Lp−Pro−NH2;N−Lp−Cys−OH;N−Lp−Cys−OEt;N−Lp−Cys−(SAc)−OEt;N−Lp−Cys−(SAc)−NH2;N−Lp−Gly−Cys−NH2;N−Lp−Pro−Cys−NH2;N−Lp−Cys−Gly−NH2;N−Lp−Tyr−Gly−NH2;N−Lp−Gly−Tyr−NH2;N−Lp−Tyr−Cys−NH2;N−Lp−Tyr−Cys−OEt;N−Lp−Gly−Cys−OH;N−Lp−Gly−Cys−OEt;N−Lp−Gly−Cys−Cys−NH2;N−Lp−Cys−Cys−Cys−NH2;N−Lp−Tyr−Cys−Cys−NH2;N−Lp−Gly−Tyr−Cys−NH2;及びN−Lp−Pro−Cys−Cys−NH2からなる群から選択されている、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記組成物は、N−リポアミノ酸又はペプチドの誘導体ではない少なくとも1つの化合物を含み、前記化合物は、日焼け止め剤、抗ニキビ化合物、抗菌化合物、抗炎症化合物、抗酸化剤、キレート化合物、pH調整剤、皮膚軟化剤、増粘化合物、防腐剤、乳化剤、湿潤剤、保湿剤、懸濁化合物、蛍光増白剤、安定化剤、浸透促進剤、香料、及び着色化合物からなる群から選択されている、請求項12に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載される実施形態は、皮膚科学的若しくは美容的状態又は皮膚系の他の障害に関連する障害、疾患、症状又は症候群を治療又は予防するために対象に局所投与するためのN−リポアミノ酸又はN−リポペプチド、その誘導体を含む化合物、組成物、及びその組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
α−リポ酸としても知られるリポ酸は、最も強力な抗酸化剤の1つであり、サプリメント及び治療化合物としてスキンケア配合物で広く用いられている。リポ酸はミトコンドリアのエネルギー代謝の必須補因子である。これは、ビタミンC、E及びグルタチオンなどの他の水溶性及び脂溶性ビタミンを還元して、グルコース代謝及び炎症を調節する。リポ酸は、抗老化化合物として皮膚用製剤において広く使用され、知られている。しかし、リポ酸は、その感光性及び生物活性の喪失のために使用が制限されている。
【0003】
リポ酸は、ミトコンドリア酸化的経路における鍵酵素の必須補因子である。これは、細胞環境で強力な抗酸化剤及び金属キレート剤として作用する(Gomesら)。これは、皮膚用製剤向け抗酸化剤として広く使用されている。リポ酸は2つの光学エナンチオマー、すなわちR型及びS型のリポ酸を有する(Gomesら)。リポ酸は、スキンケア製品における抗老化化合物として用いられている。しかしながら、リポ酸は感光性であるため、紫外線に暴露されるとその生物学的効果を失う(Wadaら)。そのため、皮膚保護及び抗老化のために、より安定したリポ酸誘導体が理想的となる。
【0004】
リポ酸が抗メラニン形成効果を有し、リポ酸がメラニン形成経路における鍵酵素チロシナーゼの発現を阻害することを、いくつかの研究が実証している(Kim JHら)。他の研究は、リポ酸誘導体がメラニン合成経路における中間体であるDOPAキノンをスカベンジすることを実証する。これらの研究は、リポ酸誘導体が2つ以上の機構によってメラニン合成を阻害することを実証する。しかし、リポ酸は、その感光性のために皮膚における生物学的利用能が限定されているため、より安定なリポ酸誘導体を開発することが重要である。
【0005】
また、高用量のリポ酸の使用は、掻痒症及び皮膚潰瘍形成などの特定の有害効果に関連する(Gomesら)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、共有アミド結合によってアミノ酸又はペプチドに連結したリポ酸を含むアミノ酸又はペプチドの新規な誘導体である化合物に関する。本発明では、アミノ酸又はペプチドの新規な誘導体、具体的にはN−リポアミノ酸又はペプチド及びその誘導体、並びに対象に局所投与するための、本発明に従うアミノ酸又はペプチドの誘導体を含む組成物は、皮膚科学的若しくは美容的状態、又は皮膚系の他の障害に関連する障害、疾患、症状又は症候群を治療又は予防するための治療的効果があるということが発見された。
【0007】
1つの一般的な態様では、本発明の実施形態は、化合物であって、下記一般式(I)を有するアミノ酸又はペプチドの新規な誘導体:
N−リポ−(X)
n−Z−R
1 式(I)
又はその異性体、遊離酸、塩基、塩、ラクトン、アミド、ヒドロキシルアミド、ヒドラジド、エステル若しくはニトリルである、化合物に関し、
式中、「N−リポ」は、アミノ酸ラジカル中のアミノ基又はイミノ基の窒素原子に結合したリポ(Lp)ラジカル(複数可)であり、
(X)
nは、n個のアミノ酸残基を有するペプチドであり、アミノ酸残基の各々、
Xは、任意のアミノ酸残基から独立して選択され、
nは、0〜2の整数であり、
Zは、カルボキシル末端アミノ酸残基であり、
アミノ酸残基の各々は、任意のアミノ酸から独立して選択され、
R
1は、OR
2、NHR
3、又はNHNHR
4であり、
R
2は、最大9個の炭素原子を有するH、アルキル、アラルキル又はアリールラジカルであり、
R
3又はR
4は独立して、最大9個の炭素原子を有するH、OH、アルキル、アラルキル、アリール、又はアシルラジカルである。
【0008】
上記に加え、X及びZのそれぞれの側鎖は、任意にかつ独立して、OH、SH、NHCONH
2、NHC(=NH)NH
2、NH
2、COOH、CONH
2、イミダゾリル、ピロリジニル、及びインドリルからなる群から選択される追加の官能ラジカルを有し、
追加の官能ラジカルのHは、最大9個の炭素原子を有するNH
2、アシル、アルキル、アラルキル、又はアリールラジカルで任意に置換され、
NH
2、NHNH
2、NHOH、又はNH(C=NH)NH
2中のHは、リポラジカルによって任意に置換される。
【0009】
典型的なアシルラジカルとしては、アセチル(Ac)、プロパノイル(Pa)、及びベンゾイル(Bz)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0010】
カルボキシル末端アミノ酸残基に結合する典型的な基としては、カルボキシル基を置換するOH、OEt、NH
2、NHOH、及びNHNH
2、NHNHAc、NHNHPa、又はCNが挙げられるが、これらに限定されない。
【0011】
一実施形態では、リポアミノ酸の誘導体は、N−Lp−Gly−NH
2;N−Lp−Cys−NH
2;N−Lp−Tyr−NH
2;N−Lp−Tyr(OAc)−NH
2;N−Lp−Pro−NH
2;N−Lp−Cys−OH;N−Lp−Cys−OEt;N−Lp−Cys−(SAc)−OEt;及びN−Lp−Cys−(SAc)−NH
2からなる群から選択され得る。
【0012】
別の実施形態では、リポペプチドの誘導体は、N−Lp−Gly−Cys−NH
2;N−Lp−Pro−Cys−NH
2;N−Lp−Cys−Gly−NH
2;N−Lp−Tyr−Gly−NH
2;N−Lp−Gly−Tyr−NH
2;N−Lp−Tyr−Cys−NH
2;N−Lp−Tyr−Cys−OEt;N−Lp−Gly−Cys−OH;及びN−Lp−Gly−Cys−OEtからなる群から選択され得るリポジペプチドである。
【0013】
別の実施形態では、リポペプチドの誘導体は、N−Lp−Gly−Cys−Cys−NH
2;N−Lp−Cys−Cys−Cys−NH
2;N−Lp−Tyr−Cys−Cys−NH
2;N−Lp−Gly−Tyr−Cys−NH
2;及びN−Lp−Pro−Cys−Cys−NH
2からなる群から選択されるリポトリペプチドである。
【0014】
好ましい実施形態では、リポアミノ酸の誘導体は、以下の構造:
【0015】
【化1】
を有するN−Lp−Gly−NH
2である。
【0016】
本発明の別の態様は、対象に局所投与するための組成物に関し、この組成物は、任意に医薬的又は美容的に許容される担体に関して説明されるとおり、治療有効量の化合物(N−リポアミノ酸、若しくはN−リポペプチド、又はその誘導体を含む)を含む。化合物は、本開示で説明される任意のリポアミノ酸、リポジペプチド、及びリポトリペプチドであってよい。好ましい実施形態では、リポアミノ酸は、好ましくは上記で定義された構造を有するN−Lp−Gly−NH
2である。
【0017】
本発明はまた、老化に関連する皮膚の変化を局所的に治療するための医薬組成物にであって、有効量の上述の化合物(N−リポアミノ酸、若しくはN−リポペプチド、又はその誘導体を含む)と、任意に化粧品として局所送達に適した医薬的に許容される担体と、を含む、医薬組成物に関する。化合物は、本開示で説明される任意のリポアミノ酸、リポジペプチド、及びリポトリペプチドであってよい。好ましい実施形態では、リポアミノ酸は、好ましくは上記で定義された構造を有するN−Lp−Gly−NH
2である。一実施形態では、組成物は、N−リポアミノ酸又はペプチドの誘導体ではない少なくとも1種の化合物を含み、上記化合物は、日焼け止め剤、抗ニキビ化合物、抗菌化合物、抗炎症化合物、抗酸化剤、キレート化合物、pH調整剤、皮膚軟化剤、増粘化合物、防腐剤、乳化剤、湿潤剤、保湿剤、懸濁化合物、蛍光増白剤、安定化剤、浸透促進剤、香料、及び着色化合物からなる群から選択される。
【0018】
本発明はまた、角質化障害、炎症、並びに内因性及び外因性老化に関連する変化からなる群から選択される美容状態又は皮膚科学的障害を治療するための方法であって、上述のN−リポアミノ酸、若しくはN−リポペプチド、又はその誘導体を含む、治療有効量の化合物を含む組成物を対象に局所投与することを含む、方法に関する。
【0019】
いずれの実施形態においても、美容状態又は皮膚科学的障害は、小じわ、しわ、加齢斑、及び皮膚美白目的からなる群から選択される。
【0020】
別の態様では、本発明の実施形態は、対象に局所投与するための組成物に関し、この組成物は、本発明に従う治療有効量のアミノ酸又はペプチドの誘導体、及び任意に医薬的又は美容的に許容される担体を含む。
【0021】
更に別の態様では、本発明の実施形態は、それを必要とする対象における、皮膚科学的若しくは美容的状態、又は皮膚系のその他の障害に関連する状態、障害、疾患、症状、又は症候群を治療、予防、緩和、又は改善する方法に関し、方法は、本発明に従う治療有効量のアミノ酸又はペプチドの誘導体を含む組成物を対象に局所投与することを含む。
【0022】
更に別の態様では、本発明は皮膚美白化合物に関し、皮膚美白添加剤は本開示のアミノ酸又はペプチドの新規な誘導体を含む。皮膚美白に加えて、本開示のアミノ酸又はペプチドの新規な誘導体は、メラニン阻害及び/又はプロコラーゲン誘導の効果を更に有し得る。
【0023】
更に別の態様では、本発明は、上記の皮膚美白化合物を含む、皮膚美白用化粧品組成物に関する。
【0024】
別の態様では、本発明は、上述の化粧品組成物を用いて、皮膚を美白化するための、又は小じわ及びしわを含む老化に関連する皮膚変化を治療するための方法に関する。
【0025】
本明細書で使用する時、化粧品組成物とは、哺乳動物、特にヒトの皮膚に局所適用するための組成物を含むことを意味する。こうした組成物は、一般に、リーブオン式又はリンスオフ式として分類することができ、コンディショナ又はトニック、リップスティック、カラー化粧品、及び何らかの方法で少なくとも、ケラチノサイトに対するメラニンの効果を低減させる汎用局所組成物を含むことが意図される。本明細書で使用する時、美白化及びホワイトニングは同じ意味であることが意図されており、これらには皮膚を直接美白化すること、並びに加齢斑及びそばかすなどの皮膚の染みを美白化することが含まれる。
【0026】
本発明の化粧品組成物は、液体、ローション、クリーム、セラム、ゲル、石鹸バー、若しくは化粧液の形態であってもよく、又はフェイスマスク若しくはパッチを介して適用されてもよい。本発明の組成物は、皮膚が、顔、首、胸、背、腕、手、脚、及び頭皮の皮膚を含むことが意図される場合に、少なくとも皮膚を美白化するものである。
【0027】
別の実施形態は、皮膚科学的障害を治療するための化合物(N−リポアミノ酸、若しくはN−リポペプチド、又はその誘導体を含む)を含む治療組成物に関する。別の実施形態は、皮膚科学的障害の治療における薬剤の製造における、化合物(N−リポアミノ酸、若しくはN−リポペプチド、又はその誘導体を含む)の使用に関する。
【0028】
別の実施形態では、本発明は、皮膚科学的障害を治療するための薬剤の製造における、本発明に従う化合物の使用方法を提供する。本発明の更なる態様では、本発明に従う組成物を含む薬剤の製造方法も提供する。好ましくは、本発明の方法は、薬剤を殺菌する工程を含む。皮膚科学的障害は、本開示で論じられた任意の障害であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1a】正常な新生児ヒト表皮メラニン細胞のメラニン合成を有意に遮断する、N−Lp−Gly−NH
2(L20)を示す。
【
図1b】正常な新生児ヒト表皮メラニン細胞のメラニン合成を有意に遮断する、N−Lp−Gly−NH
2(L20)を示す。
【
図1c】正常な新生児ヒト表皮メラニン細胞のメラニン合成を有意に遮断する、N−Lp−Gly−NH
2(L20)を示す。
【
図2a】L20が正常なヒト成人のMelanoderm 3D共培養物のメラニン合成を有意に遮断することを示す。
【
図2b】L20が正常なヒト成人のMelanoderm 3D共培養物のメラニン合成を有意に遮断することを示す。
【
図2c】L20が正常なヒト成人のMelanoderm 3D共培養物のメラニン合成を有意に遮断することを示す。
【
図2d】L20が正常なヒト成人のMelanoderm 3D共培養物のメラニン合成を有意に遮断することを示す。
【
図3】L20が正常な表皮3D共培養物のプロコラーゲン合成を有意に誘導することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
アミノ酸は、炭素1以外の任意の炭素原子の位置で結合した、1つ又は複数の、アミノ、グアニジノ、イミノ、又はヒドラジンラジカルなどのアルカリラジカルを有する有機酸である。「グリシン」などの化学名、又は3文字「Gly」、若しくは1文字「G」などの省略記号で表される、20の共通アミノ酸が存在する。本開示では、1文字及び3文字の両方を使用する。グリシン以外の他の全ての共通アミノ酸は、立体異性体、すなわちD又L型のエナンチオマーを有する。最も自然なペプチド及びタンパク質中のアミノ酸は全てL型である。いくつかのD型アミノ酸は、微生物によって生成されるか、又は抗生物質中に存在し、抑制又は拮抗作用を有する。例えば、細菌細胞壁中にはD−アラニン、D−アスパラギン酸、及びD−グルタミン酸が存在し、抗生物質のバシトラシン中にはD−グルタミン酸、D−アスパラギン酸、及びD−フェニルアラニンが存在する。非共通アミノ酸は、共通アミノ酸ではないアミノ酸である。非共通アミノ酸の例としては、β−アラニン及びタウリンが挙げられるが、これらに限定されない。非共通アミノ酸は、D型又はL型として存在し得る。
【0031】
20の共通アミノ酸に使用される1文字及び3文字の記号は以下のとおりである:アラニン(A、Ala)、アルギニン(R、Arg)、アスパラギン酸(D、Asp)、アスパラギン(N、Asn)、システイン(C、Cys)、グリシン(G、Gly)、グルタミン酸(E、Glu)、グルタミン(Q、Gln)、ヒスチジン(H、His)、イソロイシン(I、Ile)、ロイシン(L、Leu)、リジン(K、Lys)、メチオニン(M、Met)、フェニルアラニン(F、Phe)、プロリン(P、Pro)、セリン(S、Ser)、スレオニン(T、Thr)、トリプトファン(W、Trp)、チロシン(Y、Tyr)、及びバリン(V、Val)。
【0032】
非共通アミノ酸に使用される文字記号は以下のとおりである:β−アラニン(bAla)、4−アミノ安息香酸(Aba)、2−アミノブタン酸(Abu)、4−アミノブタン酸(4Abu)、2−アミノイソ酪酸(Aib)、5−アミノレブリン酸(All)、アリイン(Ali)、2−アミノアジピン酸(Aad)、3−アミノアジピン酸(bAad)、アミノピメリン酸(Apa);3−アミノチロシン(Atyr)、カナバニン(Cav)、カナリン(Can)、シリアチン(Cil)、システイン酸(Cya)、システインスルフィン酸(Csa)、シトルリン(Cit);クレアチン(Cre)、クレアチニン(Crn);2,3−ジアミノコハク酸(Dsa);2,4−ジアミノブタン酸(Dbu);2,3−ジアミノプロパン酸(Dpr);3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(Dopa);3,5−ジヨードチロシン(Dtyr);ホモアルギニン(Har)、ホモセリン(Hser)、ホモシステイン(Hcys)、ホモシトルリン(Hcit)、ヒドロキシリジン(Hyl);3−ヒドロキシプロリン(3Hyp);4−ヒドロキシプロリン(4Hyp);2−ヒドロキシ−4−アミノブタン酸(Haba);3−ヒドロキシ−4−アミノブタン酸(Hyba);4−ヒドロキシオルニチン(Horn);4−ヒドロキシアスパラギン酸(Hasp);4−ヒドロキシフェニルグリシン(Hpg);3−ヨードチロシン(Ityr)、ランチオニン(Lan)、β−リジン(βLys);α−メチルアラニン(Mala);β−メチルアスパラギン酸(Mas)、4−メチルプロリン(Mpro);2−メチルセリン(Mser);N−メチルヒスチジン(Mhis);オルニチン(Orn);フェニルグリシン(Pgly);3−フェニルセリン(Pser);サルコシン(Sar);S−アリル−システイン(Sac);テアニン(The);チロキシン(Thy);3,5,3’−トリヨードチロニン(Tth);及びタウリン(Tau)。
【0033】
本出願で使用される用語及び略語は以下のとおりである:リポ(Lp);ホルミル(Fo);アセチル(Ac);プロパノイル(Pa);ベンゾイル(Bz);ピログルタミル(Pyro);フェニルアセチル(PhAc);ベンジルオキシカルボニル(Z);メチルエステル(OMe);エチルエステル(OEt);プロピルエステル(OPr);ブチルエステル(OBu);t−ブチルエステル(OtBu);ヘキシルエステル(OHex);オクチルエステル(OOc);ベンジルエステル(Obzl)。
【0034】
アミド共有結合を有するペプチドは、脱水合成反応中に一方のアミノ酸のカルボキシル基がもう一方のアミノ酸のアミノ基と反応する時に、少なくとも2つのアミノ酸から形成される。ジペプチドは、2つのアミノ酸残基を含むペプチドである。トリペプチドは、3つのアミノ酸残基を含有するペプチドである。ペプチドは、置換又は誘導によって更に改変することができる。各ペプチドは、異なる化学的及び物理的性質を有し、異なる生物学的及び薬理学的作用を有し得る。
【0035】
本明細書で使用する時、化合物の「誘導体」とは、化合物中の1つ又は2つ以上の官能基の置換により形成される化合物分子として定義される。その例としては、OH、NH
2、NHNH
2、NHOH、及びNH(C=NH)NH
2のアシル化、COOHのエステル化、COOHからアミド、ヒドロキシルアミド、ヒドラジド、若しくはニトリルへの変換、又はNH
2、NHNH
2、NHOH、若しくはNH(C=NH)NH
2中のHの置換、又はリポラジカルによるものが挙げられる。
【0036】
1つの一般的な態様では、本発明の実施形態は、化合物であって、下記一般式(I)を有するアミノ酸又はペプチドの新規な誘導体:
N−リポ−(X)
n−Z−R
1 式(I)
又はその異性体、遊離酸、塩基、塩、ラクトン、アミド、ヒドロキシルアミド、ヒドラジド、エステル若しくはニトリルである、化合物に関し、
式中、「N−リポ」は、アミノ酸ラジカル中のアミノ基又はイミノ基の窒素原子に結合したリポ(Lp)ラジカル(複数可)であり、
(X)
nは、n個のアミノ酸残基を有するペプチドであり、
アミノ酸残基Xの各々は、任意のアミノ酸残基から独立して選択され、
nは、0〜2の整数であり、
Zは、カルボキシル末端アミノ酸残基であり、
アミノ酸残基の各々は、任意のアミノ酸から独立して選択され、
R
1は、OR
2、NHR
3、又はNHNHR
4であり、
R
2は、最大9個の炭素原子を有するH、アルキル、アラルキル又はアリールラジカルであり、
R
3又はR
4は独立して、最大9個の炭素原子を有するH、OH、アルキル、アラルキル、アリール、又はアシルラジカルであり、
X及びZの各々の側鎖は、任意にかつ独立して、OH、SH、NHCONH
2、NHC(=NH)NH
2、NH
2、COOH、CONH
2、イミダゾリル、ピロリジニル、及びインドリルからなる群から選択される追加の官能ラジカルを有し、
追加の官能ラジカルのHは、最大9個の炭素原子を有するNH
2、アシル、アルキル、アラルキル、又はアリールラジカルで任意に置換され、
NH
2、NHNH
2、NHOH、又はNH(C=NH)NH
2中のHは、リポラジカルによって任意に置換される。
【0037】
典型的なアシルラジカルとしては、アセチル(Ac)、プロパノイル(Pa)、及びベンゾイル(Bz)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
カルボキシル末端アミノ酸残基に結合する典型的な基としては、カルボキシル基を置換するOH、OEt、NH
2、NHOH、及びNHNH
2、NHNHAc、NHNHPa、又はCNが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
別の態様では、本発明の実施形態は、対象に局所投与するための組成物に関し、この組成物は、本発明に従う治療有効量のアミノ酸又はペプチドの誘導体、及び任意に医薬的又は美容的に許容される担体を含む。
【0040】
本発明の別の実施形態によれば、アミノ酸又はペプチドの誘導体は、ジ(リポ)残基であってもよく、ここで追加のリポ残基が、共有アミド結合によって、式(I)のX又はZの追加の官能基、好ましくはアミノ基に結合する。
【0041】
本発明に従う代表的なN−リポアミノ酸又はペプチド、その誘導体としては、(1)N−Lp−(X)
n−Z−R
1が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
(1)N−リポアミノ酸又はペプチド誘導体:N−Lp−(X)
n−Z−R
1
代表的なN−リポアミノ酸誘導体としては、
N−Lp−Z−R
1が挙げられるが、これらに限定されず、式中、Zは、A;R;D;N;C;G;E;Q;H;I;L;K;M;F;P;S;T;W;Y;V;bAla;Aba;Abu;4Abu;Aib;All;Ali;Aad;bAad;Apa;Atyr;Cav;Can;Cil;Cya;Csa;Cit;Cre;Crn;Dsa;Dbu;Dpr;Dopa;Dtyr;Har;Hser;Hcys;Hcit;Hyl;3Hyp;4Hyp;Haba;Hyba;Horn;Hasp;Hpg;Ityr;Lan;βLys;Mala;Mas;Mpro;Mser;Mhis;Orn;Pgly;Pser;Sar;Sac;The;Thy;Tth;Tauを含む任意のアミノ酸から選択される。
【0043】
アミノ酸Zは、異性体、遊離酸、塩基、塩、ラクトン、アミド、ヒドロキシルアミド、ヒドラジド、エステル、又はニトリル形態、例えば、OH、NH
2、NHOH、NHNH
2、NHNHAc、NHNHPa、OEt、OP、及びCN形態などであることができる。
【0044】
好ましいリポアミノ酸誘導体は以下のとおりである:N−Lp−Gly−NH
2;N−Lp−Cys−NH
2;N−Lp−Tyr−NH
2;N−Lp−Tyr(OAc)−NH
2;N−Lp−Pro−NH
2;N−Lp−Cys−OH;N−Lp−Cys−OEt;N−Lp−Cys−(SAc)−OEt;及びN−Lp−Cys−(SAc)−NH
2。
【0045】
好ましいリポジペプチド誘導体は以下のとおりである:N−Lp−Gly−Cys−NH
2;N−Lp−Pro−Cys−NH
2;N−Lp−Cys−Gly−NH
2;N−Lp−Tyr−Gly−NH
2;N−Lp−Gly−Tyr−NH
2;N−Lp−Tyr−Cys−NH
2;N−Lp−Tyr−Cys−OEt;N−Lp−Gly−Cys−OH;及びN−Lp−Gly−Cys−OEt。
【0046】
好ましいリポトリペプチド誘導体は以下のとおりである:N−Lp−Gly−Cys−Cys−NH
2;N−Lp−Cys−Cys−Cys−NH
2;N−Lp−Tyr−Cys−Cys−NH
2;N−Lp−Gly−Tyr−Cys−NH
2;及びN−Lp−Pro−Cys−Cys−NH
2。
【0047】
本開示を考慮すれば、本発明の実施形態に従うN−リポアミノ酸又はペプチド及びその誘導体は、当業者に既知のいずれの方法でも製造することができる。
【0048】
本発明の別の一般的な態様は、皮膚系の皮膚科学的若しくは美容的状態又は他の障害に関連する状態、障害、疾患、症状、又は症候群を治療、予防、緩和、又は改善する方法に関する。方法は、本発明に従う治療有効量の、アミノ酸又はペプチドの誘導体、及び任意に医薬的又は美容的に許容される担体を含む組成物を対象に局所投与することを含む。
【0049】
本発明の組成物で処置可能な皮膚系に関連する状態、障害、症状、及び症候群について、以下のとおり説明する。
【0050】
皮膚系
本発明の組成物で処理することができる、皮膚系の美容的、皮膚科学的、又は他の状態及び障害としては、皮膚、爪、及び毛髪;口腔、膣及び肛門粘膜;角質化障害;炎症;内因性及び外因性老化に関連する変化に関連する感染、乱れた又は病的な皮膚又は皮膚粘膜組織が挙げられるが、これらに限定されない。症状としては、油性肌;にきび;酒さ;加齢斑;皮膚の染み;斑点;セルライト;皮膚疾患;皮膚炎;皮膚、爪、及び毛髪の感染症;フケ;皮膚、爪、及び毛髪の乾燥又は弛緩;乾皮症;炎症又は湿疹;弾力線維症;ヘルペス;角質増殖症;皮膚の色素過剰;魚鱗癬;角化症;黒子症;黒皮症;皮膚斑;偽鬚髯毛嚢炎;光老化及び光損傷;掻痒;乾癬;皮膚線;ストレッチマーク;皮膚、爪甲、及び毛髪の薄化;イボ;しわ;口腔又は歯肉疾患;かぶれた、炎症を起こした、充血した、不健康な、損傷した、又は異常な粘膜、皮膚、毛髪、爪、鼻孔、耳道、肛門、又は膣の状態;真皮構成要素の分解、不完全合成、又は修復;コラーゲン、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、及びエラスチンの合成異常又は不足、並びに真皮中におけるこうした成分レベルの不足;不均一な肌色合い;不均一ででこぼこした皮膚、爪、及び毛髪表面;皮膚、爪、及び毛髪の弾性、弾力性、及びはね返り性の喪失又は低下;弛緩;皮膚、爪、及び毛髪の潤滑性及び光沢の欠如;爪及び毛髪の脆弱化及び割れ;肌の黄変;敏感な、ひりひりする、又は毛細血管拡張症の皮膚;並びに艶がなく衰えた外見の肌、爪、及び毛髪が挙げられるが、これらに限定されない。更に、本発明の組成物は、皮膚、爪、及び毛髪の一般的なケア;皮膚の質感及び毛穴、ぱさつき及び充血を改善すること;皮膚を、柔らかく、滑らかで、みずみずしく、バランスが取れ、視覚的に透明感があり、均一な色合いがあり、明るくすること;皮膚の豊かさ及びふくよかさを高めること;並びに皮膚の白化及び淡色化、並びに創傷治療;身体の脇下、股、掌、又は身体部分の発汗又は汗をかくことを軽減又は防止することに用いることができる。
【0051】
皮膚、爪、毛髪の感染は、細菌、真菌、酵母、カビ、寄生虫、ウイルスを含む微生物により引き起こされ得る。より具体的には、細菌感染症は、腋窩菌毛症、孔紋表皮剥脱症、紅色陰癬、膿痂疹、膿瘡、せつ腫症(腫脹)、癰、熱傷様皮膚症候群、毒性ショック症候群、丹毒、蜂巣炎、壊死性筋膜炎、小疱瘡、ネコ引っかき病(ロシャリメア・ヘンセラ)、梅毒、ライム病(ボレリア・ブルグドルフェリ)、皮膚炭疽(炭疽菌)、淋菌性敗血症、接種結核、皮膚腺病、結核疹、硬結性紅斑、ハンセン病(マイコバクテリウムレプレ)、リーシュマニア症、及び急性爪囲炎を生じさせ得る。ウイルス感染症は、ウイルス性疣贅(ヒト乳頭腫ウイルス)、水痘(水疱瘡)、帯状疱疹(水痘帯状疱疹)、単純ヘルペス(ヘルペスウイルスホミニス)、伝染性軟属腫、伝染性膿疱性皮膚炎、AIDS(後天性免疫不全症候群、ヒト免疫不全ウイルス、HIV)、ヘルパンギナ、皮膚粘膜リンパ節症候群(川崎病)、ジャノッティ−クロスティ症候群(B型肝炎ウイルス)、麻疹、風疹、及び伝染性紅斑を生じさせ得る。真菌感染症は、白癬、足白癬(水虫)、爪白癬(爪感染症)、手白癬、鼠径白癬、四肢白癬、頭部白癬(頭皮)、口腔カンジダ症、カンジダ性間擦疹、性器カンジダ症、慢性爪囲炎、慢性粘膜皮膚カンジダ症、癜風、ヒストプラスマ症、コクシジオイデス症、分芽菌症、スポロトリクム症、放線菌症、及び足菌腫(マズラ足)を生じさせ得る。抗生物質耐性微生物としては、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、及び表皮ブドウ球菌(MRSE)が挙げられる。
【0052】
投与経路及び一般的な調製
N−リポアミノ酸若しくはペプチド又はその誘導体などの本発明に従うアミノ酸又はペプチドの誘導体を含む組成物は、当業者に既知の局所適用によって、必要な対象に投与することができる。
【0053】
局所適用のために、本発明のアミノ酸又はペプチドの誘導体を含む組成物は、溶液、ゲル、ローション、クリーム、水中油型エマルジョン、油中水型エマルション、軟膏、シャンプー、スプレー、スティック、パウダー、マスク、パッド、マウスリン若しくはウォッシュ、膣用ゲル若しくは坐剤、直腸用ゲル若しくは坐剤、尿道用ゲル若しくは座薬、又は皮膚、爪、毛髪、口腔粘膜、膣、若しくは肛門粘膜、口、若しくは歯肉に使用するための許容されるその他の形態として配合することができる。アミノ酸又はペプチドの誘導体の濃度は、全組成物の重量又は体積の約0.001重量%〜約99重量%であってもよい。
【0054】
別の実施形態では、組成物は、皮膚系の皮膚科学的又は美容的状態又は他の障害に関連する疾患、障害、及び症候群の治療又は予防において共同効果又は相乗効果を達成するために、追加の美容的、医薬的、又はその他の化合物を更に含んでもよい。局所的組み合わせ組成物を調製するためには、美容的、医薬的、又は他の化合物を、化合物を配合物に溶解又は混合することによって上記の組成物のいずれか1つに組み込む。本発明のN−リポアミノ酸若しくはペプチド又はその誘導体の局所送達のための組成物の他の形態は、当業者によって容易に認識される。
【0055】
化粧品
別の態様では、本発明の実施形態は、化粧品組成物中で抗老化及び/又は皮膚美白化合物として働く、N−リポアミノ酸又はペプチドの新規な誘導体に関する。本発明の化粧品組成物は、典型的には、化粧品組成物の全重量に基づき、その中に包含される全ての範囲を含む、約0.001重量%〜約99重量%、好ましくは約0.01%〜約20%、最も好ましくは約0.1重量%〜約10重量%の、N−リポアミノ酸又はペプチドの新規な誘導体を含む。他の好ましい範囲としては、約0.001重量%〜0.05重量%;約0.001重量%〜0.5重量%;約0.001重量%〜1重量%;及び約0.001重量%〜2重量%が挙げられる。
【0056】
本発明の組成物用の包装は、パッチ、ボトル、チューブ、ロールボールアプリケータ、推進剤駆動式エアゾール装置、スクイズ容器、又は蓋付きジャーであることができる。
【0057】
本発明のいずれの組成物でも、組成物は、N−リポアミノ酸又はペプチドの誘導体ではない少なくとも1種の化合物を含んでもよい。この化合物は、例えば、日焼け止め剤;抗ニキビ化合物、抗菌化合物、抗炎症化合物、抗酸化剤、キレート化合物、pH調整剤、皮膚軟化剤、増粘化合物、防腐剤、乳化剤、湿潤剤、保湿剤、懸濁化合物、蛍光増白剤、安定化剤、浸透促進剤、香料;及び着色化合物から選択される1つ又は2つ以上であってもよい。
【0058】
リポ酸誘導体
好ましい実施形態において、N−リポアミノ酸又はペプチドの新規な誘導体は、リポ酸の誘導体である。
【0059】
本発明者らは、安定性が強化され抗メラニン形成効果を有する様々なリポ酸誘導体を開発した。誘導体の中でもN−リポグリシンアミド(glycinamde)(L20)は、正常なヒト表皮メラニン細胞及びMelanoDermモデルの顕著なメラニン低減を示した。L20の構造は以下のとおりである。
【0061】
L20は、非毒性用量では、メラニン合成を完全にブロックし、メラニン細胞は測定可能なメラニンを全く有さなかった。L20の効果を、3次元皮膚共培養MelanoDermモデルを用いて試験した。L20は、微視的評価により観察して24時間でのメラニン合成を阻害した。L20は、非毒性用量では、色素の濃い皮膚の生検において、ケラチノサイト−メラニン細胞共培養物のメラニン含量を56%低減した。更に、1週間の回帰研究の結果、メラニン合成の可逆阻害がもたらされた。正常な真皮等価物(EpiDerm−FT)を用いると、L20は線維芽細胞−ケラチノサイト共培養物中でプロコラーゲンを誘導した。そのため、L20は、皮膚色素過剰、並びに小じわ及びしわを含む抗老化効果に対して見込みのある化合物である。
【0062】
本発明者らは、様々なリポ酸誘導体を合成し、これらには、N−リポグリシンアミド、及びN−リポシステインアミドが含まれる。
【0063】
これらのリポ酸誘導体はリポ酸よりも安定している。したがって、スキンケア製品には非毒性用量を使用することが必須である。
【0064】
本開示では、本発明者らは、リポ酸誘導体であるN−リポアミノ酸又はペプチドの様々な新規な誘導体を合成し(synthesis)、抗メラニン形成、抗老化、及び抗酸化特性としてのこれらの能力を試験した。
【0065】
好ましいリポアミノ酸誘導体は以下のとおりである:N−Lp−Gly−NH
2;N−Lp−Cys−NH
2;N−Lp−Tyr−NH
2;N−Lp−Tyr(OAc)−NH
2;N−Lp−Pro−NH
2;N−Lp−Cys−OH;N−Lp−Cys−OEt;N−Lp−Cys−(SAc)−OEt;及びN−Lp−Cys−(SAc)−NH
2。
【0066】
好ましいリポジペプチド誘導体は以下のとおりである:N−Lp−Gly−Cys−NH
2;N−Lp−Pro−Cys−NH
2;N−Lp−Cys−Gly−NH
2;N−Lp−Tyr−Gly−NH
2;N−Lp−Gly−Tyr−NH
2;N−Lp−Tyr−Cys−NH
2;N−Lp−Tyr−Cys−OEt;N−Lp−Gly−Cys−OH;及びN−Lp−Gly−Cys−OEt。
【0067】
好ましいリポトリペプチド誘導体は以下のとおりである:
N−Lp−Gly−Cys−Cys−NH
2;N−Lp−Cys−Cys−Cys−NH
2;N−Lp−Tyr−Cys−Cys−NH
2;N−Lp−Gly−Tyr−Cys−NH
2;及びN−Lp−Pro−Cys−Cys−NH
2。
【0068】
以下の実施例は、本発明の性質を更に図示する。以下の実施例は本発明を限定するものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって決定されるものと理解されたい。
【実施例】
【0069】
実施例1:マイクロメータキャリパを用いた皮膚の厚さの測定。
皮膚の老化に伴う皮膚の変化に関連する研究で、皮膚の厚さを、以下のとおりマイクロメータキャリパによって測定した。
【0070】
皮膚を2×6cmの金属ヒンジで把持し;その内面をエメリー布で被覆して滑りを防止し、対象の不快感閾値まで手で絞った。2つのヒンジリーフの厚さを含む2つの全皮膚層の合計厚さを、マイクロメータキャリパで測定した。2つのヒンジリーフの厚さを減算して、2つの全皮膚層の実際の厚さを決定した。本発明の組成物で処理した部位を3重に測定し、完了後に平均数値を用いて皮膚厚さを計算した。
【0071】
実施例2:電子式デジタルキャリパを用いた皮膚の厚さの測定。
皮膚の老化に伴う皮膚の変化に関連する研究では、皮膚の厚さを以下のとおり電子式デジタルキャリパによって測定した。
【0072】
直径17mmの皮膚の試験部位を使用し、円形の部位にパーマネントインキで印を付けた。間に介在する対照部位もまた直径17mmであった。試験部位は、試験部位では本発明の組成物で処理し、対照部位では対照で処理した。全ての部位の皮膚厚さを、電子式デジタルキャリパによって直接測定した。このとき、キャリパのジョーは17mmに開き、圧力を加えて皮膚部位に適用し、続いてきつく閉じた。次に、キャリパの画面から皮膚の厚さを読み取った。全部位の測定は3重に実施した。
【0073】
実施例3:配合
本発明に従うN−リポアミノ酸若しくはペプチド化合物、又はその誘導体を含む典型的な水溶液組成物は、以下のとおり配合される。グリシンを除く全てのアミノ酸又はペプチドはL型であった。
【0074】
本発明に従うN−リポアミノ酸若しくはペプチド化合物、又はその誘導体0.1〜1.0gを、体積基準で40部の水、40部のエタノール、及び20部のプロピレングリコール(以下WEP442と称する)、又は体積基準で80部のエタノール、及び20部のプロピレングリコール(以下EP82と称する)から調製した99.9〜99.0mLの溶液に溶解した。こうした配合された溶液は、溶液組成物中に本発明のN−リポアミノ酸若しくはペプチド化合物又はその誘導体を0.1%〜1%(w/v)含有していた。同様の条件下で、本発明のN−リポアミノ酸若しくはペプチド化合物又はその誘導体の異なる濃度を含む溶液組成物を容易に配合した。
【0075】
このように調製又は配合された溶液又はその他の組成物は、神経、血管、筋肉−骨格、又は皮膚系を含む様々な医学的障害の治療に治療的効果を有するものと考えられる。また、これらの溶液及び組成物は、湿疹、乾癬、及び加齢斑、しわなどの加齢に関連する皮膚の変化を含む炎症性疾患の治療に治療的効果を有するものと考えられる。
【0076】
実施例4:配合
実例として、N−Lp−O−Ac−Y−NH
2 0.2gを99.8mLのEP82に溶解した。このようにpH6.7で配合された溶液組成物は、0.2%(w/v)のN−Lp−O−Ac−Y−NH
2を含有していた。
【0077】
同様の条件下で、N−Lp−Y−NH
20.2gを99.8mLのEP82に溶解した。このようにpH6.7で配合された溶液組成物は、0.2%(w/v)のN−Lp−Y−NH
2を含有していた。
【0078】
同様の条件下で、N−Lp−P−NH
20.1gを99.9mLのEP82に溶解した。このようにpH6.8で配合された溶液組成物は、0.1%(w/v)のN−Lp−P−NH
2を含有していた。
【0079】
同様の条件下で、N−Lp−G−NH
20.2gを99.8mLのWEP442に溶解した。このようにpH5.9で配合された溶液組成物は、0.2%(w/v)のN−Lp−G−NH
2を含有していた。
【0080】
同様の条件下で、N−Lp−G−NH
20.4gを99.6mLのWEP442に溶解した。このようにpH5.6で配合された溶液組成物は、0.4%(w/v)のN−Lp−G−NH
2を含有していた。
【0081】
この溶液組成物又は他の配合物は、ニキビ、及びしわ、加齢斑を含む老化に関連する皮膚の変化を治療するために、また皮膚美白のために治療的効果があるものと考えられる。
【0082】
実施例5
N−リポアミノ酸又はペプチドを含有する典型的な溶液形態の無水組成物を、以下のとおり配合した。
N−Lp−Tyr−NH
2200mgを、体積基準で30部のプロピレングリコール、40部のエタノール、及び30部の乳酸オレイル(以下PAO343と称する)から調製した100mLの溶液に溶解した。
このように配合された組成物は、PAO343中に0.2%のN−Lp−Tyr−NH
2を含有していた。
(A)において、同じ条件下で、以下の無水組成物中N−リポアミノ酸誘導体を配合した。
PAO343中N−Lp−Tyr(OAc)−NH
20.2%。
PAO343中N−Lp−Pro−NH
20.2%。
PAO343中N−Lp−Gly−NH
20.2%。
PAO343中Lp−Cys−OEt0.2%。
【0083】
実施例6
N−リポアミノ酸又はペプチドを含有する別の溶液形態の無水組成物を、以下のとおり配合した。
N−Lp−Tyr−NH
2200mgを、体積基準で30部のプロピレングリコール、及び70部のエタノール(以下EP73と称する)から調製した100mLの溶液に溶解した。
このように配合された組成物は、EP73中に0.2%のN−Lp−Tyr−NH
2を含有していた。
(B)において、同じ条件下で、以下の無水組成物中N−リポアミノ酸誘導体を配合した。
EP73中Lp−Cys−OEt0.2%。
EP73中Lp−Cys−OH0.2%。
【0084】
実施例7
N−リポアミノ酸又はペプチドを含有する別のクリーム形態の無水組成物を、以下のとおり配合した。
N−Lp−Pro−NH
2200mgを20mLのプロピレングリコールに溶解し、こうして調製された溶液を、重量基準で20部のプロピレングリコール、30部の乳酸オレイル、5部の蜜ろう、5部のグリセリルモノステアラート、5部のPEG−40ステアラート、35部のシアバターから調製された80gの溶融混合物と混合した。
クリーム中でこのように配合された組成物は、無水クリーム中に0.2%のN−Lp−Pro−NH
2を含有していた。
同じ条件下で、無水クリーム中に0.2%のLp−Cys−OEtを含有する組成物を容易に配合した。
実施例4〜7で配合された上記の組成物は、皮膚美白化、並びに湿疹、乾癬、加齢斑、小じわ、しわなどの炎症性障害及び加齢に関連する皮膚の変化の局所的治療に治療的効果があると考えられる。
【0085】
実施例8:配合
この溶液組成物又はその他の配合物は、湿疹、乾せん、ニキビを含む炎症性疾患、及びしわ、加齢斑を含む加齢に関連する皮膚の変化の治療、並びに皮膚美白化に治療的効果を有するものと考えられる。
【0086】
実施例9:L20はメラニンを抑制してプロコラーゲンを誘導する
L20は、正常な新生児ヒト表皮メラニン細胞におけるメラニン合成を検出できないレベルまで抑制する:
L20はリポ酸のグリシンアミド誘導体であり、様々な用量で48時間、正常なヒト表皮メラニン細胞上で処理された。0.05%を超えるL20の用量は、中程度の毒性を有するように見えた(
図1a)。本発明者らは、L20がメラニン細胞培養物のメラニン合成を抑制する能力を判定した。L20を0.001%の非毒性用量で7日間使用し(
図1b)、これらの処理を連続日で実施した。1週間の処理後、メラニンを抽出し、メラニン標準曲線を用いて定量化した。L20で処理した正常なメラニン細胞は、未処理の対照及びDMSOで処理した対照と比較して、検出可能なメラニンが存在しなかった(
図1c)。
【0087】
L20は、3D皮膚等価物MelanoDermモデルにおけるメラニン合成を大幅に抑制する:
MelanoDermはケラチノサイト及びメラニン細胞の共培養モデルであり、抗メラニン形成化合物としてのL20の能力を試験するのに用いた。MelanoDermは、色素の濃い皮膚を有する正常な成人から抽出された。これらの組織は、様々な用量のL20を用いて連続日で2週間処理された。1組の培養物が回帰研究に用いられ、これは1週間の処理の後にL20を除去した。処理から2週間後に、組織をメラニン含量及び細胞生存性に関して試験した(
図2a)。視覚的には、L20で処理されたMelanodermは、0.5%及び1%で顕著な皮膚美白効果を有した(
図2b)。メラニン標準曲線を用いてメラニン含量をアッセイした。対照と比較して、L20のみでは1%でメラニン含量を60%減少させ、0.5%で56%、0.1%で44%減少させた。様々な用量のL20で、用量依存性のメラニンの減少が観察された(
図2b〜d)。コウジ酸が陽性対照として用いられ、これはメラニンを27%減少させた。更に、0.5%のL20用量群でL20の回帰が実施され、ここではL20を除去した結果、メラニン細胞が再生し、メラニンが再合成した(
図2b〜d)。これらの研究では、0.5%のL20は非毒性であり、かつメラニンを大幅に減少させることが実証される。微視的観察では、L20は最初の処理から24時間後にメラニンを減少させたことが示された。総合すれば、これらの研究は、弱い角質層を有するMelanoDermモデルでは、0.5%の用量がメラニン合成を抑制するのに十分であり、また抑制は可逆的であることを実証する。
【0088】
L20はヒト表皮モデルにおけるプロコラーゲン合成を誘導し、抗老化効果を強化する:
真皮線維芽細胞は、光老化及び皮膚の恒常性に重要な役割を担う。本発明者らは、真皮線維芽細胞を用いてL20が抗老化効果を有するか否かを判定した。正常なヒトEpiDerm−FT組織を研究に使用した。Epiderm−FTは、完全に分化した表皮及び真皮の皮膚層からなる。これは、10〜15層の角質層、並びに更に基底層、有棘層、及び顆粒層を有する。組織をビヒクル対照及びL20(1%)で48時間処理した。組織は、ELISAアッセイを用いてプロコラーゲンの発現を測定するのに用いた。プロコラーゲンのレベルを合計タンパク質を基準に正規化した。
【0089】
L20を、天然pHの水、エタノール、及びプロピレングリコールからなるWEPビヒクル中1%溶液として調製した。試験材料及びビヒクル(WEP)を、再構成ヒト表皮(RHE、EpiDermFT(商標))、正常なヒト由来表皮ケラチノサイト(NHEK)からなる高度に分化した3D組織モデル、及び特別に調製された組織培養インサート上で培養されたヒト真皮線維芽細胞からなる組織培養モデルに適用した。組織を25μLのL20(1%)又はビヒクルで処理し、48時間維持した。細胞溶解バッファを用いて組織サンプルを消化し、プロコラーゲンたんぱく質の発現レベルを判定した。プロコラーゲンは、標準ELISA技術(Takara Bio Inc.)を用いて定量化した。
図3に示すように、1%のL20は、ビヒクル対照(p<0.02)と比較してプロコラーゲン産生量を大幅に増加させた。
【0090】
材料及び方法:
細胞培養:正常なヒト表皮メラニン細胞(Lonza(Walkersville,MA))を、サプリメントを含む特別なメラニン細胞培地MGM4(Lonza(Walkersville,MA))中で培養した。細胞をプレーティングし、様々な用量のL20で48時間処理した。L20は、最初にDMSO(100%)中に溶解し、培地中で連続希釈を実施した。ストックを、最終溶液で0.001%未満のDMSOを有するように1000倍に希釈した。10xの倍率で顕微鏡画像を撮影した。正常ヒト真皮線維芽細胞(Lonza(Walkersville,MA))を、特別な線維芽細胞培養培地(Lonza(Walkersville,MA))中で培養した。L20毒性アッセイを様々な用量で実施し、0.001%以下は非毒性であることが判明した。細胞の生存性を試験するため、Cell Titer 96(登録商標)Aqueous One Solution Cell Proliferation Assayを用いて、吸光度をTecanマイクロプレートリーダを使用して490nmで比色分析によって測定した。
【0091】
メラニン減少アッセイ:正常なヒト表皮メラニン細胞を対照又はL20で7日間処理し、L20は連続日で交換した。細胞を7日目に回収して、65度でSolvable(Perkin Elmer(Akron,OH))内で終夜保持した。並行して、メラニン(Sigma(St.Louis,MO))標準をSolvable中で製造し、サンプルと同様に処理した。続いて、Tecanマイクロプレートリーダを用いて490nmで比色分析によってメラニン含量を定量化した。
【0092】
MelanoDerm研究:企業(Mattek(Ashland,MA))の指示に従いMelanoDerm研究を実施した。MelanoDerm組織は、色素の濃い皮膚タイプから抽出した。組織を24時間安定化させ、続いてWEP改質ビヒクル中で様々な用量のL20(25μL)を用いて処理した。MelanoDermを連続日で2週間処理した。顕微鏡画像を1日おきに撮影した。2週間後、Cell Titer 96(登録商標)Aqueous One Solutionを用いてMTTアッセイを行い、手順で説明したようにメラニン含量をアッセイした。
【0093】
表皮研究:新生児陰茎包皮から抽出したEpiderm−FT(Mattek(Ashland,MA))を研究に使用した。組織を1%のL20(100μL)で処理して48時間保持した。はさみを用いて組織を細断し、プロテアーゼ抑制剤を含む細胞溶解バッファで処理した。ELISA(Takara(Shiga,Japan))を用いて、指示に従い、細胞溶解物をプロコラーゲンに関して分析し、合計たんぱく質を基準に正規化した。
【0094】
当業者は、広い発明概念から逸脱することなく前述の実施形態に変更を行うことができることを理解されたい。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に制限されず、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨及び範囲内の修正を包含することを意図するものと理解される。
【0095】
〔実施の態様〕
(1) 化合物であって、下記式(I)を有するN−リポアミノ酸又はペプチドの誘導体:
N−リポ−(X)
n−Z−R
1 式(I)
又はその異性体、遊離酸、塩基、塩、ラクトン、アミド、ヒドロキシルアミド、ヒドラジド、エステル若しくはニトリルを含み、
式中、リポは、リポ(Lp)ラジカルであり、
(X)
nは、n個のアミノ酸残基を有するペプチドであり、
前記アミノ酸残基の各々、
Xは、任意のアミノ酸から独立して選択され、
nは、0〜2の整数であり、
Zは、カルボキシル末端アミノ酸残基であり、前記アミノ酸残基の各々は、任意のアミノ酸から独立して選択され、
R
1は、OR
2、NHR
3、又はNHNHR
4であり、
R
2は、最大9個の炭素原子を有するH、アルキル、アラルキル又はアリールラジカルであり、
R
3又はR
4は独立して、最大9個の炭素原子を有するH、OH、アルキル、アラルキル、アリール又はアシルラジカルである、化合物。
(2) 前記リポアミノ酸の誘導体は、N−Lp−Gly−NH
2;N−Lp−Cys−NH
2;N−Lp−Tyr−NH
2;N−Lp−Tyr(OAc)−NH
2;N−Lp−Pro−NH
2;N−Lp−Cys−OH;N−Lp−Cys−OEt;N−Lp−Cys−(SAc)−OEt;及びN−Lp−Cys−(SAc)−NH
2からなる群から選択されている、実施態様1に記載の化合物。
(3) 前記リポペプチドの誘導体は、N−Lp−Gly−Cys−NH
2;N−Lp−Pro−Cys−NH
2;N−Lp−Cys−Gly−NH
2;N−Lp−Tyr−Gly−NH
2;N−Lp−Gly−Tyr−NH
2;N−Lp−Tyr−Cys−NH
2;N−Lp−Tyr−Cys−OEt;N−Lp−Gly−Cys−OH;及びN−Lp−Gly−Cys−OEtからなる群から選択されるリポジペプチドである、実施態様1に記載の化合物。
(4) 前記リポペプチドの誘導体は、N−Lp−Gly−Cys−Cys−NH
2;N−Lp−Cys−Cys−Cys−NH
2;N−Lp−Tyr−Cys−Cys−NH
2;N−Lp−Gly−Tyr−Cys−NH
2;及びN−Lp−Pro−Cys−Cys−NH
2からなる群から選択されるリポトリペプチドである、実施態様1に記載の化合物。
(5) 前記リポアミノ酸の誘導体は、
下記構造:
【化3】
を有するN−Lp−Gly−NH
2である、実施態様1に記載の化合物。
【0096】
(6) 対象に局所投与するための組成物であって、治療有効量の実施態様1に記載の化合物と、任意に、医薬的又は美容的に許容される担体とを含む、組成物。
(7) 前記化合物は、N−Lp−Gly−NH
2;N−Lp−Cys−NH
2;N−Lp−Tyr−NH
2;N−Lp−Tyr(OAc)−NH
2;N−Lp−Pro−NH
2;N−Lp−Cys−OH;N−Lp−Cys−OEt;N−Lp−Cys−(SAc)−OEt;及びN−Lp−Cys−(SAc)−NH
2からなる群から選択されるリポアミノ酸である、実施態様6に記載の組成物。
(8) 前記化合物は、N−Lp−Gly−Cys−NH
2;N−Lp−Pro−Cys−NH
2;N−Lp−Cys−Gly−NH
2;N−Lp−Tyr−Gly−NH
2;N−Lp−Gly−Tyr−NH
2;N−Lp−Tyr−Cys−NH
2;N−Lp−Tyr−Cys−OEt;N−Lp−Gly−Cys−OH;及びN−Lp−Gly−Cys−OEtからなる群から選択されるリポジペプチドである、実施態様6に記載の組成物。
(9) 前記化合物は、N−Lp−Gly−Cys−Cys−NH
2;N−Lp−Cys−Cys−Cys−NH
2;N−Lp−Tyr−Cys−Cys−NH
2;N−Lp−Gly−Tyr−Cys−NH
2;及びN−Lp−Pro−Cys−Cys−NH
2からなる群から選択されるリポトリペプチドである、実施態様6に記載の組成物。
(10) 前記化合物が、N−Lp−Gly−NH
2のリポアミノ酸である、実施態様6に記載の組成物。
【0097】
(11) 老化に関連する皮膚の変化を局所的に治療するための医薬組成物であって、有効量の実施態様1に記載の化合物と、任意に、化粧品として局所送達に適した医薬的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
(12) 前記化合物は、N−Lp−Gly−NH
2;N−Lp−Cys−NH
2;N−Lp−Tyr−NH
2;N−Lp−Tyr(OAc)−NH
2;N−Lp−Pro−NH
2;N−Lp−Cys−OH;N−Lp−Cys−OEt;N−Lp−Cys−(SAc)−OEt;N−Lp−Cys−(SAc)−NH
2;N−Lp−Gly−Cys−NH
2;N−Lp−Pro−Cys−NH
2;N−Lp−Cys−Gly−NH
2;N−Lp−Tyr−Gly−NH
2;N−Lp−Gly−Tyr−NH
2;N−Lp−Tyr−Cys−NH
2;N−Lp−Tyr−Cys−OEt;N−Lp−Gly−Cys−OH;N−Lp−Gly−Cys−OEt;N−Lp−Gly−Cys−Cys−NH
2;N−Lp−Cys−Cys−Cys−NH
2;N−Lp−Tyr−Cys−Cys−NH
2;N−Lp−Gly−Tyr−Cys−NH
2;及びN−Lp−Pro−Cys−Cys−NH
2からなる群から選択されている、実施態様11に記載の医薬組成物。
(13) 前記組成物は、N−リポアミノ酸又はペプチドの誘導体ではない少なくとも1つの化合物を含み、前記化合物は、日焼け止め剤、抗ニキビ化合物、抗菌化合物、抗炎症化合物、抗酸化剤、キレート化合物、pH調整剤、皮膚軟化剤、増粘化合物、防腐剤、乳化剤、湿潤剤、保湿剤、懸濁化合物、蛍光増白剤、安定化剤、浸透促進剤、香料、及び着色化合物からなる群から選択されている、実施態様12に記載の医薬組成物。
(14) 角質化障害、炎症、並びに内因性及び外因性老化に関連する変化からなる群から選択される美容状態又は皮膚科学的障害を治療する方法であって、治療有効量の実施態様1に記載の化合物を含む組成物を対象に局所投与することを含む、方法。
(15) 前記化合物は、N−Lp−Gly−NH
2;N−Lp−Cys−NH
2;N−Lp−Tyr−NH
2;N−Lp−Tyr(OAc)−NH
2;N−Lp−Pro−NH
2;N−Lp−Cys−OH;N−Lp−Cys−OEt;N−Lp−Cys−(SAc)−OEt;N−Lp−Cys−(SAc)−NH
2;N−Lp−Gly−Cys−NH
2;N−Lp−Pro−Cys−NH
2;N−Lp−Cys−Gly−NH
2;N−Lp−Tyr−Gly−NH
2;N−Lp−Gly−Tyr−NH
2;N−Lp−Tyr−Cys−NH
2;N−Lp−Tyr−Cys−OEt;N−Lp−Gly−Cys−OH;N−Lp−Gly−Cys−OEt;N−Lp−Gly−Cys−Cys−NH
2;N−Lp−Cys−Cys−Cys−NH
2;N−Lp−Tyr−Cys−Cys−NH
2;N−Lp−Gly−Tyr−Cys−NH
2;及びN−Lp−Pro−Cys−Cys−NH
2からなる群から選択されている、実施態様14に記載の方法。
【0098】
(16) 前記美容状態又は皮膚科学的障害は、小じわ、しわ、加齢性の染み、及び皮膚美白目的からなる群から選択されている、実施態様14に記載の方法。
(17) 皮膚科学的障害の治療のための実施態様1に記載の化合物を含む治療用組成物の使用。
(18) 皮膚科学的障害の治療における薬剤の製造における、実施態様1に記載の化合物の使用。
(19) 前記皮膚科学的障害は、小じわ、しわ、加齢性の染み、及び皮膚美白目的からなる群から選択されている、実施態様17〜18に記載の任意の化合物。
【国際調査報告】