特表2019-509320(P2019-509320A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2019-5093201−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミンの新規な酸付加塩
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-509320(P2019-509320A)
(43)【公表日】2019年4月4日
(54)【発明の名称】1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミンの新規な酸付加塩
(51)【国際特許分類】
   C07D 207/48 20060101AFI20190308BHJP
   A61K 31/40 20060101ALI20190308BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20190308BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20190308BHJP
【FI】
   C07D207/48CSP
   A61K31/40
   A61P1/00
   A61P1/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-549922(P2018-549922)
(86)(22)【出願日】2017年3月17日
(85)【翻訳文提出日】2018年9月21日
(86)【国際出願番号】KR2017002913
(87)【国際公開番号】WO2017164575
(87)【国際公開日】20170928
(31)【優先権主張番号】10-2016-0036081
(32)【優先日】2016年3月25日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0018336
(32)【優先日】2017年2月9日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA
(71)【出願人】
【識別番号】508131716
【氏名又は名称】デウン ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】キム,エリ
(72)【発明者】
【氏名】チョ,クァンヒョン
【テーマコード(参考)】
4C069
4C086
【Fターム(参考)】
4C069AC10
4C069BB02
4C069BB08
4C069BB12
4C069BB34
4C069BC05
4C069BC18
4C069CC06
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC05
4C086GA13
4C086GA14
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA66
4C086ZA68
(57)【要約】
本発明は、1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミンの新規な酸付加塩を提供する。前記酸付加塩は、優れたプロトンポンプ抑制活性、胃損傷抑制活性および防御因子増強効果を有するだけでなく、優れたヘリコバクターピロリ(H.pylori)除菌活性を有することによって、胃腸管潰瘍、胃炎、逆流性食道炎、またはヘリコバクターピロリ(H.pylori)による胃腸管損傷の予防および治療に有用に適用できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミンの酸付加塩であって、
前記酸は、塩酸、コハク酸、酒石酸またはフマル酸である、
1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミンの酸付加塩。
【請求項2】
1)1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミンおよび酸をそれぞれ有機溶媒に溶解させて1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミン溶液および酸溶液を製造する段階;および
2)前記1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミン溶液および前記酸溶液を混合および攪拌する段階;を含む、
請求項1の1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミンの酸付加塩の製造方法。
【請求項3】
前記酸は、塩酸、コハク酸、酒石酸またはフマル酸であることを特徴とする、
請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記有機溶媒は、n−ヘキサン、エチルアセテート、ブチルアセテート、アセトニトリル、クロロホルム、ジエチルエーテル、アセトン、メタノールおよびエタノールからなる群より選択された1種以上であることを特徴とする、
請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
請求項1の1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミンの酸付加塩を含む、胃腸管潰瘍、胃炎、逆流性食道炎、またはヘリコバクターピロリ(H.pylori)による胃腸管損傷の予防または治療用薬学組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミンの新規な酸付加塩に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薬学的に許容可能な塩の選定は、新薬研究開発過程で非常に重要な段階である。これは特定薬物の塩が時々原料医薬品製造の容易性、溶解度、流通および保管期間の間の安定性、剤形化の容易性および薬物動態学的特性の重要な決定要因になり得るためである。
【0003】
多様な種類の塩の製造は、特定薬物の化学的構造を変形させないながら薬物の生理化学的特性および生物学的特性を変化させる手段になり得る。これにより、好ましい塩を選定することにおいて、数多い塩の特性が考慮されなければならない。例えば、塩の製造の容易性、安定性、溶解度および/または吸湿性などの多様な因子が使用される環境および状況などによって考慮され得る。
【0004】
特に、さらに良好な生体利用率またはさらに良好な安定性を示す薬物製剤に対する持続的な要求が存在し、存在する薬物分子の新規な塩またはさらに純粋な塩に関する持続的な研究が行われている。
【0005】
よって、本発明者らは新規な活性医薬物質の1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミンの新規な酸付加塩の製造が可能であるのを発見し、これらの物理化学的性質および安定性からこれらが薬学的に使用可能であるのを確認して本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、水に対する溶解度が高く安定性に優れた1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミンの薬学的に許容可能な酸付加塩を提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、
1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミンの塩酸塩、
1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミンのコハク酸塩、
1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミンの酒石酸塩および
1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミンのフマル酸塩を提供する。
【0008】
以下、本発明を詳しく説明する。
新規な活性医薬物質の1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミンは下記化学式1で表される化合物であって、4−メトキシピロール誘導体に該当する:
[化学式1]
【0009】
前記1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミンおよびその薬学的に許容可能な塩は、プロトンポンプ抑制活性、胃損傷抑制活性および防御因子増強効果を有するだけでなく、優れたヘリコバクターピロリ(H.pylori)除菌活性を有し得る。したがって、前記1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミンおよびその薬学的に許容可能な塩は、胃腸管潰瘍、胃炎、逆流性食道炎、またはヘリコバクターピロリ(H.pylori)による胃腸管損傷の予防および治療に有用に適用できる。
【0010】
このような前記1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミンの薬学的に許容可能な塩は、1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミンの酸付加塩であり得る。
【0011】
この時、前記酸は、塩酸、コハク酸、酒石酸またはフマル酸であり得る。
【0012】
前記1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミンの酸付加塩は、下記段階を含む製造方法によって製造できる:
1)1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミンおよび酸をそれぞれ有機溶媒に溶解させて1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミン溶液および酸溶液を製造する段階;および
2)前記1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミン溶液および前記酸溶液を混合および攪拌する段階。
【0013】
前記段階1)は、1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミンおよび酸それぞれを完全に溶解させることができる良溶媒(good solvent)を用いてそれぞれの溶液を製造する段階であって、1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミンおよび酸の溶解に使用される溶媒は同一であるか或いは相異なってもよい。
【0014】
この時、酸としては、前述のように塩酸、コハク酸、酒石酸またはフマルを使用することができる。
【0015】
また、有機溶媒は、n−ヘキサン、エチルアセテート、ブチルアセテート、アセトニトリル、クロロホルム、ジエチルエーテル、アセトン、メタノールおよびエタノールからなる群より選択された1種以上であり得る。
【0016】
具体的に、前記1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミン溶液の製造段階で、前記有機溶媒は、前記1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミンの重量に対して1〜20倍の体積の量(ml/g)、または好ましくは1〜10倍の体積の量(ml/g)で使用することができる。
【0017】
また、前記酸溶液の製造段階で、前記有機溶媒は、前記酸の重量に対して1〜30倍の体積の量(ml/g)、または好ましくは5〜30倍の体積の量(ml/g)で使用することができる。
【0018】
前記段階2)は、前記段階1)で製造された溶液を混合した後に攪拌して、1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミンと酸が化学的に結合された塩を生成させる段階である。
【0019】
この時、製造された溶液の混合段階で、前記酸は、前記1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミンに対して0.5当量〜3当量、または好ましくは0.5当量〜2当量で使用することができる。前記範囲で、1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミンと酸が1:0.5、1:1、1:1.5、または1:2のモル比で結合された塩が生成され得る。
【0020】
その次に、前記混合された溶液を攪拌する段階は、24℃〜28℃の温度で30分〜4時間行うことができる。この時、攪拌速度は50〜300rpmの範囲内であり得る。前記範囲で高収率および高純度の塩が生成され得る。
【0021】
前記製造方法によって製造された1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミンの酸付加塩は、減圧ろ過工程によって溶液から回収することができる。必要によって、回収された酸付加塩を洗浄および真空乾燥して高純度の酸付加塩を得ることができる。また、前記製造方法に記載された溶媒の比率、温度範囲、工程時間などの反応条件は、選択される溶媒によって調節され得る。
【0022】
一方、本発明は、前記1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミンの塩酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩およびフマル酸塩からなる群より選択された1種以上の酸付加塩を含む、胃腸管潰瘍、胃炎、逆流性食道炎、またはヘリコバクターピロリ(H.pylori)による胃腸管損傷の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0023】
このような薬学組成物は、通常使用される薬学的に許容可能な担体を含むことができる。前記担体は通常製剤時に使用されるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウムおよびミネラルオイルなどを含むが、これに限定されるのではない。前記薬学組成物は、前記成分以外に潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などを追加的に含むことができる。
【0024】
前記薬学組成物は、経口投与するか、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下および経皮投与を含む非経口で投与することができる。
【0025】
この時、薬学組成物は、治療学的有効量、例えば約0.001mg/kg〜約100mg/kg per dayの有効量で投与することができる。前記容量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性病的状態、飲食、投与時間、投与経路、排泄速度または反応感応性によって変更され得る。
【0026】
前記薬学組成物は、当該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できる方法によって、薬学的に許容される担体および/または賦形剤を用いて製剤化することによって単位容量形態に製造されるか、または多用量容器内に入れて製造され得る。この時、剤形は、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの経口型剤形、軟膏、クリームなどの外用剤、座剤および滅菌注射用水などをはじめとして薬学的製剤に適した形態であれば制限なく使用可能であり、分散剤または安定化剤を追加的に含むことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明による1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミンの酸付加塩は、水に対する溶解度が高くて防湿条件および高湿度露出条件で安定性に優れ、薬学的に使用可能であるという特徴がある。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0028】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、下記の実施例によって本発明の内容が限定されるのではない。
製造例:1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−((3−フルオロフェニル)
スルホニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミン(free base)の製造
【0029】
段階1−1)2−(2,4−ジフルオロフェニル)−2−((3−メトキシ−2−(メトキシカルボニル)−3−オキソプロプ−1−エン−1−イル)アミノ)酢酸の製造
2,4−ジフルオロフェニルグリシン(150.0g、801.5mmol)、ジメチル2−(メトキシメチレン)マロネート(126.9g、728.6mmol)、および酢酸ナトリウム(65.8g、801.5mmol)をメタノール(800.0ml)に加えた後、60℃で4時間還流させた。反応混合物を室温に冷却した後、減圧濃縮してメタノールを約70%除去した後、ろ過した。得られた固体を減圧乾燥して表題化合物190.0gを製造した。(収率:79.2%)
H−NMR(500MHz、CDCl):8.02−7.99(m、1H)、7.45−7.40(m、1H)、7.00−6.95(m、2H)、5.16(s、1H)、3.74(s、3H)、3.76(s、3H)
【0030】
段階1−2)メチル5−(2,4−ジフルオロフェニル)−4−ヒドロキシ−1H−ピロール−3−カルボキシレートの製造
前記段階1−1で製造された2−(2,4−ジフルオロフェニル)−2−((3−メトキシ−2−(メトキシカルボニル)−3−オキソプロプ−1−エン−1−イル)アミノ)酢酸(190.0g、577.1mmol)に酢酸無水物(1731.2ml)およびトリエチルアミン(577.1ml)を加えた。反応混合物を140℃で30分間還流させた後、0℃に冷却した。反応混合物に0℃で氷水(577.1ml)を加えた後、室温で1時間攪拌した後、エチルアセテートで抽出した。得られた抽出液を無水硫酸マグネシウム上で乾燥した後、減圧濃縮した。得られた化合物をシリカゲルを用いてフィルターして固体を除去した後、減圧濃縮した。
【0031】
得られた残渣にテトラヒドロフラン(140.0ml)および水(120.0ml)を加え、0℃に冷却した後、水酸化ナトリウム(46.17g、1154.2mmol)を添加した。反応混合物を0℃で30分間攪拌した後、1N塩酸水溶液を用いて中和させた後、エチルアセテートで抽出した。得られた抽出物を無水硫酸マグネシウム上で乾燥した後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(エチルアセテート:n−ヘキサン=1:4(v/v))で精製して表題化合物22.0gを製造した。(収率:15.1%)
H−NMR(500MHz、CDCl):8.80(s、1H)、8.17−8.12(m、2H)、7.13(d、1H)、6.95(t、1H)、6.86−6.83(m、1H)、3.88(s、3H)
【0032】
段階1−3)メチル5−(2,4−ジフルオロフェニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−カルボキシレートの製造
前記段階1−2で製造されたメチル5−(2,4−ジフルオロフェニル)−4−ヒドロキシ−1H−ピロール−3−カルボキシレート(22.0g、86.9mmol)をテトラヒドロフラン(434.5ml)およびメタノール(173.9ml)に溶解させた。応混合物に(トリメチルシリル)ジアゾメタン(2.0Mジエチルエーテル溶液、173.8ml)を加え、室温で48時間攪拌した。反応混合物に水を添加し、エチルアセテートで抽出した。得られた抽出液を無水硫酸マグネシウム上で乾燥した後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(エチルアセテート:n−ヘキサン=1:4(v/v))で精製して表題化合物18.1gを製造した。(収率:75.3%)
H−NMR(500MHz、CDCl):8.78(s、1H)、8.12(m、1H)、7.30(d、1H)、6.95(t、1H)、6.88(t、1H)、3.87(s、3H)、3.85(s、3H)
【0033】
段階1−4)メチル5−(2,4−ジフルオロフェニル)−4−メトキシ−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−1H−ピロール−3−カルボキシレートの製造
前記段階1−3で製造されたメチル5−(2,4−ジフルオロフェニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−カルボキシレート(18.0g、67.4mmol)をジメチルホルムアミド(335.0ml)に溶解させた。得られた溶液に室温で水素化ナトリウム(60%、流動パラフィン中の分散液)(4.0g、101.0mmol)を加え、室温で10分間攪拌した。反応混合物に3−フルオロベンゼンスルホニルクロリド(13.37ml、101.0mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。反応混合物に水を添加し、エチルアセテートで抽出した。得られた抽出液を無水硫酸マグネシウム上で乾燥した後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(エチルアセテート:n−ヘキサン=1:4(v/v))で精製して表題化合物26.1gを製造した。(収率:91.1%)
H−NMR(500MHz、CDCl):7.98(s、1H)、7.43−7.39(m、1H)、7.30(t、1H)、7.23(d、1H)、7.15(q、1H)、7.67(q、1H)、6.91(t、1H)、6.77(t、1H)、3.87(s、3H)、3.61(s、3H)
【0034】
段階1−5)5−(2,4−ジフルオロフェニル)−4−メトキシ−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−1H−ピロール−3−カルバルデヒドの製造
前記段階1−4で製造されたメチル5−(2,4−ジフルオロフェニル)−4−メトキシ−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−1H−ピロール−3−カルボキシレート(26.0g、61.1mmol)をテトラヒドロフラン(300.0ml)に溶解させた。得られた溶液に0℃でジイソブチルアルミニウムヒドリド(1.0Mテトラヒドロフラン溶液)(183.4ml、183.4mmol)を添加し、室温で1時間攪拌した後、1N塩酸溶液を用いて中和させ、エチルアセテートで抽出した。得られた抽出物を無水硫酸マグネシウム上で乾燥した後、減圧濃縮した。
【0035】
得られた残渣をジクロロメタン(300.0ml)に溶解させた後、セライト(26.0g)およびピリジニウムクロロクロメート(39.5g、183.4mmol)を添加した。反応混合物を室温で1時間攪拌した後、ろ過して固体を除去し、得られた濾液を減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(エチルアセテート:n−ヘキサン=1:2(v/v))で精製して表題化合物17.2gを製造した。(収率:70.9%)
H−NMR(500MHz、CDCl):9.89(s、1H)、7.99(s、1H)、7.45−7.41(m、1H)、7.33(s、1H)、7.25(d、1H)、7.18(q、1H)、7.05(s、1H)、6.92(t、1H)、6.77(t、1H)、3.63(s、3H)
【0036】
段階1−6)1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−4−メトキシ−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミンの製造
前記段階1−5で製造された5−(2,4−ジフルオロフェニル)−4−メトキシ−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−1H−ピロール−3−カルバルデヒド(17.0g、43.0mmol)をメタノール(430.0ml)に溶解させた。得られた溶液にメチルアミン(9.8Mメタノール溶液)(87.8ml、860.0mmol)を加え、室温で30分間攪拌した。反応混合物に水素化ホウ素ナトリウム(16.3g、430.0mmol)を加え、室温で30分間攪拌した。反応混合物に水を加えた後、エチルアセテートで抽出した。得られた抽出液を無水硫酸マグネシウム上で乾燥した後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(エチルアセテート:n−ヘキサン=1:2(v/v))で精製して表題化合物15.2gを製造した。(収率:86.1%)
H−NMR(500MHz、CDCl):7.39−7.35(m、1H)、7.26−7.20(m、2H)、7.15(q、1H)、7.06(d、1H)、6.87(t、1H)、6.78(t、1H)、3.60(d、2H)、3.44(s、3H)、2.45(s、3H)
【0037】
以下、実施例では前記製造例で製造した1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−4−メトキシ−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミン(free base)を使用した。
【0038】
実施例1:1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミン塩酸塩の製造
前記製造例1で製造された1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−4−メトキシ−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミン(15.0g、36.6mmol)をエチルアセテート(36.6ml)に溶解した後に塩酸溶液(2.0Mジエチルエーテル溶液)(36.6ml、73.1mmol)を加えた。反応混合物を室温で1時間攪拌した後、ろ過し、得られた固体を減圧乾燥して表題化合物15.1gを製造した。(収率:92.5%)
分子量446.87
H−NMR(500MHz、MeOD):7.69(s、1H)、7.58−7.53(m、1H)、7.45(t、1H)、7.30(d、1H)、7.20−7.15(m、2H)、7.02−6.94(m、2H)、4.07(d、2H)、3.46(s、3H)、2.71(s、3H)
【0039】
以下の追加実施例は、先に製造した実施例の製造方法と類似の方法で製造し、明細書内の製造方法を参照して製造しようとする化合物の構造に合わせて出発物質を適切に代替して、製造した。
【0040】
実施例2:1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミンコハク酸塩の製造
分子量510.51
H−NMR(500MHz、MeOD):7.60(s、1H)、7.57−7.52(m、1H)、7.46−7.43(t、1H)、7.30(d、1H)、7.19−7.14(m、2H)、7.01−6.94(m、2H)、3.91(s、2H)、3.45(s、3H)、2.59(s、3H)、2.50(s、2H)
【0041】
実施例3:1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミン酒石酸塩の製造
分子量560.50
H−NMR(500MHz、MeOD):7.70(s、1H)、7.58−7.53(m、1H)、7.49−7.44(t、1H)、7.31(d、1H)、7.20−7.15(m、2H)、7.03−6.94(m、2H)、4.4(s、2H)、4.07(s、2H)、3.46(s、3H)、2.71(s、3H)
【0042】
実施例4:1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミンフマル酸塩の製造
分子量526.48
H−NMR(500MHz、MeOD):7.63(s、1H)、7.58−7.53(m、1H)、7.48−7.44(t、1H)、7.30(d、1H)、7.20−7.16(m、2H)、7.02−6.94(m、2H)、6.68(s、1H)、3.97(s、2H)、3.45(s、3H)、2.64(s、3H)
【0043】
試験例1:プロトンポンプ(H+/K+−ATPase)活性に対する抑制活性
前記実施例1で製造された1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミン塩酸塩のプロトンポンプ(H+/K+−ATPase)活性に対する抑制活性を以下のように測定した。
【0044】
胃腸管小胞(gastric vesicles)は、豚の胃(hog stomach)から公知の方法(Edd C.Rabon et al., Preparation of Gastric H, K−ATPase., Methods in enzymology, vol.157 Academic Press Inc.,(1988), pp.649−654)によって製造した。製造した胃腸管小胞の蛋白質内容物は、ビシンコニン酸(BCA)キット(Thermo社)で定量した。96ウェルプレートの各ウェルに(所定濃度の試験化合物、0.5%DMSO、2.5mM MgCl、12.5mM KCl、1.25mM EDTA、60mM Tris−HCl、pH7.4)80μlを入れた。それぞれのウェルに胃腸管小胞を含有する反応液(60mmol/l、Tris−HCl緩衝溶液、pH7.4)10μl、アデノシン三リン酸を含有するトリス緩衝溶液(10mM ATP、Tris−HCl緩衝溶液、pH7.4)10μlを添加した後、37℃で40分間酵素反応させた。50μlのマラカイトグリーン溶液(6.2N硫酸中の0.12%マラカイトグリーン溶液、5.8%モリブデン酸アンモニウムおよび11%ツイン20を100:67:2の比率で混合)を添加して酵素反応を停止させ、15.1%クエン酸ナトリウム50μlを添加した。反応液中のモノホスフェート(Pi)量はマイクロプレートリーダー(micro plate reader、FLUOstar Omega、BMG社)を用いて570nmで測定した。抑制率(%)を対照群の活性値および多様な濃度の試験化合物の活性値から測定し、H/K−ATPase活性を50%抑制する濃度(IC50)をSigmaplot8.0プログラムのLogistic 4−parameter関数を用いて化合物の各%抑制値から計算した。
【0045】
その結果、実施例1で製造した1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミン塩酸塩は、0.024μMのIC50値を示した。これにより、本発明の一実施形態による1−(5−(2,4−ジフルオロフェニル)−1−((3−フルオロフェニル)スルホニル)−4−メトキシ−1H−ピロール−3−イル)−N−メチルメタンアミンの酸付加塩は、優れたプロトンポンプ抑制活性を有し、胃腸管潰瘍、胃炎、逆流性食道炎、またはヘリコバクターピロリ(H.pylori)による胃腸管損傷の予防または治療用薬学組成物に使用可能であるのが分かる。
【0046】
試験例2:吸湿性試験
前記実施例で製造した酸付加塩に対して吸湿性試験を実施した。まず、前記実施例の塩40mgを下記表1のように一定の相対湿度の条件下で様々な塩の飽和水溶液が入っているそれぞれのガラスデシケーターに2日以上密閉保管した。その後、これらそれぞれに対して重量変化を測定した結果、水分による重量変化が示されなかった。これにより、前記実施例で製造した酸付加塩は吸湿性を有しないのが分かる。
【表1】
【0047】
試験例3:安定性確認試験
前記実施例で製造した酸付加塩に対して苛酷条件(防湿条件および高湿度露出条件)下で保管する間の不純物の生成程度を評価するための安定性試験を実施し、防湿条件下での安定性試験結果を下記表2に、高湿度露出条件下での安定性試験結果を下記表3にそれぞれ示した。
【0048】
安定性試験のために、まず、各試料10mgを精密に取って入れたバイアルを計画された数量だけ用意し、これらを防湿条件(60℃および10%未満の相対湿度)および高湿度露出条件(60℃および95%の相対湿度)に分けて保管した。但し、高湿度露出条件では試料と空気中の水分が十分に接触できるように保管するバイアルの蓋を使用しなかった。試験開始後、定められた時点に、それぞれの時点当り2つのバイアルを取り出して(試験当り検体数n=2)、各バイアル内に10mlのメタノールを加えて試料を溶解させた後、これを遠心分離して得られた上澄みを液体クロマトグラフィーを用いて分析した。検出された全てのピークに対して積分を通じてピーク面積を求めた後、主成分と総不純物に対する相対ピーク面積を計算して平均値として示した。
【表2】
【表3】
【0049】
上記表2および3に示されているように、実施例で製造された酸付加塩は防湿条件および高湿度露出条件下で意味ある主成分のピーク面積減少および総不純物のピーク面積増加を示さないのが分かる。したがって、実施例で製造された酸付加塩は苛酷条件下で湿度の影響とは関係なく不純物の増加を抑制して、優れた化学的安定性を示すのを確認した。
【0050】
試験例4:水溶解度試験
前記実施例で製造した酸付加塩に対して水に対する溶解度試験を実施し、その結果を下記表4に示した。水溶解度試験のために、まず、バイアルに10mg未満の試料を精密に取って入れ、ここに50μlの脱イオン水を加えて30秒間の振とうおよび1分間の超音波振とうを実施し、このような過程を数回繰り返し、前記試料全部を溶解させるために使用された水の量を測定して水溶解度を計算した。
【表4】
【0051】
上記表4に示されているように、実施例で製造した酸付加塩は製造例で製造した遊離塩基に比べて10倍以上増加された水溶解度を有するのが分かる。また、前記実施例で製造した酸付加塩は塩酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩およびフマル酸塩の順に高い溶解度を示した。
【国際調査報告】