特表2019-509807(P2019-509807A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シーラス エンドバスキュラー リミテッドの特許一覧

<>
  • 特表2019509807-閉塞装置 図000003
  • 特表2019509807-閉塞装置 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-509807(P2019-509807A)
(43)【公表日】2019年4月11日
(54)【発明の名称】閉塞装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/12 20060101AFI20190315BHJP
   A61B 17/00 20060101ALI20190315BHJP
【FI】
   A61B17/12
   A61B17/00 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-548075(P2018-548075)
(86)(22)【出願日】2017年3月13日
(85)【翻訳文提出日】2018年11月7日
(86)【国際出願番号】EP2017055765
(87)【国際公開番号】WO2017153603
(87)【国際公開日】20170914
(31)【優先権主張番号】62/307,137
(32)【優先日】2016年3月11日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】516326368
【氏名又は名称】シーラス エンドバスキュラー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100138357
【弁理士】
【氏名又は名称】矢澤 広伸
(72)【発明者】
【氏名】グリフィン,スティーブン
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160DD62
4C160DD65
4C160DD70
4C160MM33
(57)【要約】
本明細書に提供されるのは、(a)内径および外径、近位端および遠位端を有する実質的に固体のマーカーバンドと、(b)マーカーバンド内に取り付けられた弾性メッシュ本体であって、本体は長さyであり、本体は長さxの追加の弾性メッシュ材料の塊を含み、yはxより大きく、本体はマーカーバンドから遠位方向に延在し、第1の送達形状および第2の拡張可能な展開形状を有する、弾性メッシュ本体とを含む閉塞装置である。同じく本明細書に提供されるのは、本明細書に開示される閉塞装置と、その送達手段とを含むキットである。本明細書に開示される閉塞装置の製造および使用方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)内径および外径、近位端および遠位端を有する実質的に固体のマーカーバンドと、(b)前記マーカーバンド内に取り付けられた弾性メッシュ本体であって、前記本体は長さyであり、前記本体は長さxの追加の弾性メッシュ材料の塊を含み、yはxより大きく、前記本体は前記マーカーバンドから遠位方向に延在し、第1の送達形状および第2の拡張可能な展開形状を有する、弾性メッシュ本体とを含む閉塞装置。
【請求項2】
前記本体が、周方向に折り畳まれた二重メッシュ層を含む、請求項1に記載の閉塞装置。
【請求項3】
前記本体が、前記閉塞装置の向上した組織一体化および/または安定化のために粗いメッシュ密度を有する、請求項1に記載の閉塞装置。
【請求項4】
弾性メッシュ本体および追加弾性メッシュ材料の前記塊が異なる金属である、請求項1に記載の閉塞装置。
【請求項5】
前記弾性メッシュ本体が超弾性材料から構成される、請求項1に記載の閉塞装置。
【請求項6】
前記弾性メッシュ本体がニチノールから構成される、請求項5に記載の閉塞装置。
【請求項7】
前記弾性メッシュ本体がDFT白金コアニチノールから構成される、請求項5に記載の閉塞装置。
【請求項8】
追加の弾性メッシュの前記塊が超弾性材料から構成される、請求項1に記載の閉塞装置。
【請求項9】
追加の弾性メッシュの前記塊がニチノールから構成される、請求項8に記載の閉塞装置。
【請求項10】
追加の弾性メッシュの前記塊がDFT白金コアニチノールから構成される、請求項8に記載の閉塞装置。
【請求項11】
前記マーカーバンドが剛性部材を含む、請求項1に記載の閉塞装置。
【請求項12】
前記マーカーバンドが、リング、カラー、および縫合糸からなる群から選択される剛性部材を含む、請求項1に記載の閉塞装置。
【請求項13】
前記マーカーバンドが補強される、請求項1に記載の閉塞装置。
【請求項14】
左心耳(LAA)閉塞装置である、請求項1に記載の閉塞装置。
【請求項15】
患者の左心耳(LAA)を治療または改善するための方法であって、
i)LAAに閉塞装置を送達することであって、前記装置は(a)内径および外径、近位端および遠位端を有する実質的に固体のマーカーバンドと、(b)前記マーカーバンド内に取り付けられた弾性メッシュ本体であって、前記本体は長さyであり、前記本体は長さxの追加の弾性メッシュ材料の塊を含み、yはxより大きく、前記本体は前記マーカーバンドから遠位方向に延在し、第1の送達形状および第2の拡張可能な展開形状を有する、弾性メッシュ本体とを含む、送達すること、および
ii)前記LAA内で前記閉塞装置を展開し、それによって前記患者のLAAを治療ま
たは改善すること
を含む方法。
【請求項16】
電解ワイヤを使用して前記LAAに隣接する左心房空間を介して前記装置を展開することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記装置をカテーテルで展開することを含む、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、閉塞装置および/または閉塞装置システムおよび/または植込み可能な閉塞装置および左心耳(LAA:Left Atrial Appendage)の治療および/または改善の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
左心耳(Left Atrial Appendage(LAA)またはleft auricleまたはauriculaまたはleft auricle appendix)は、心臓の左心房から突出した筋肉の嚢またはウィンドソック(円錐形吹き流し)状の構造である。心房細動(AF)または僧帽弁疾患または他の心臓病の病状の間、LAAに血餅が形成され得る。例えば、AFに罹患した患者の10〜20%がLAAに血餅の形成を呈し得る。現在、AFの結果として形成される血餅の90%がLAAに形成されることが知られている。Blackshear JL、Odell JA(1996年2月)Ann.Thorac.Surg.61(2):755−9。このような血餅は、LAAから出て、卒中または身体臓器への他の虚血性障害に関連する重大な危険をもたらし得る塞栓物質になる危険を孕む。従って、LAA閉塞治療技術は、AFまたはLAA中に血餅形成を伴う他の障害における卒中の予防の実行可能な選択肢である。
【0003】
LAA閉塞は、クマリン型薬剤、ヘパリン系薬剤、小分子阻害剤薬剤、抗トロンビンタンパク質系薬剤および/またはそれらと同様の薬剤のクラスの中などの血液凝固剤または抗凝固剤に対する代替治療戦略である。過去の出血、服薬違反、および/または妊娠に関連する根底にある問題のせいで全ての患者がこのような血液凝固薬の好適な候補者であるというわけではなく(1つの研究では患者の17%:Gottlieb LK、Salem−Schatz S(1994年9月)Arch.Intern.Med.154(17):1945−53)、従って、全ての患者が閉塞装置戦略を用いるなど他の治療選択肢が必要であるというわけではない。
【0004】
LAA閉塞のための現在の装置は、拡張可能なニチノールフレーム等を一般に含む。そのようなカテーテルベースの装置の1つは、LAAを閉塞するように設計された本体と、本体に固定された保持部材とを含む。しかしながら、このような装置の使用は抗凝固剤単独よりも出血性卒中を生じないが、限定するものではないが心臓周囲浸出、LAA閉鎖、装置の脱落、装置上の血餅形成、解剖学的不適合および/またはそれらの組み合わせなどの欠点および制限が知られている。従って、現場において改善された閉塞装置が必要とされている。
【0005】
このような閉塞装置は、例えば、米国特許第5,025,060号明細書;同第5,496,277号明細書;同第5,928,260号明細書;同第6,152,144号明細書;同第6,168,622号明細書;同第6,221,086号明細書;同第6,334,048号明細書;同第6,419,686号明細書;同第6,506,204号明細書;同第6,605,102号明細書;同第6,589,256号明細書;同第6,663,068号明細書;同第6,669,721号明細書;同第6,780,196号明細書;同第7,044,134号明細書;同第7,093,527号明細書;同第7,128,073号明細書;同第7,128,736号明細書;同第7,152,605号明細書;同第7,410,482号明細書;同第7,722,641号明細書;同第7,229,461号明細書;同第7,410,482号明細書;同第7,597,704号明細書;同第7,695,488号明細書;同第8,034,061号明細書;同第8,080,032号明細書;同第8,142,456号明細書;同第8,261,648号明
細書;同第8,262,692号明細書;同第8,361,138号明細書;同第8,430,012号明細書;同第8,454,633号明細書;同第8,470,013号明細書;同第8,500,751号明細書;同第8,523,897号明細書;および同第8,535,343号明細書;および米国特許出願公開第2003/0195553号明細書;同第2004/0098027号明細書;同第2006/0167494号明細書;同第2006/0206199号明細書;同第2007/0288083号明細書;同第2008/0147100号明細書;同第2008/0221600号明細書;同第2010/0069948号明細書;同第2011/0046658号明細書;同第2012/0172973号明細書;同第2012/0283768号明細書;同第2012/0330341号明細書;同第2013/0035712号明細書;同第2013/0090682号明細書;同第2013/0197622号明細書;同第2013/0274868号明細書;および同第2014/0005714号明細書;欧州特許出願第EP 1651117号明細書;および国際公開第WO13/028579号パンフレット;同第WO13/109309号パンフレット;同第WO13/152327号パンフレットにおいて見出すことができ、これらの参考文献のいずれも、本明細書に開示される閉塞装置の実施形態を開示していない。
【0006】
共通に所有されている米国特許出願第14/699,188号明細書も参照される。これは、血管内疾患を治療するための装置を開示し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0007】
従って、本明細書に開示される閉塞装置はLAA治療および/または改善を提供する一方で装置周囲のより効果的な内皮形成を促進するため、閉塞装置の分野における革新的な改良およびいくつかの利点が本明細書に開示される。従って、本明細書に開示される改良されたLAA閉塞装置は、左心耳に入る血流の遮蔽を最大化し、あらゆる血餅を内側に捕捉する。さらに、本明細書に開示される閉塞装置は、向上した組織の一体化および装置の安定化を可能にする粗いメッシュ密度を有する。他の利点には、限定するものではないが、多数のコイルまたはフレーミングワイヤまたはニチノールケージをLAA嚢に配置する必要性の排除およびそれに関連するコスト効果;LAAに隣接する左心房空間に相当のスペースを必要とする現在の装置と適合しない困難な解剖学的構造とのより高いレベルの適合性;および単一のインプラントを使用することによる大幅な時間節約の機会が含まれる。
【0008】
本明細書に挙げた全ての文献および参考文献ならびに参照した特許文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、LAA治療を提供するための閉塞装置を設計した。このように、本発明の閉塞装置は、安定化および装置周囲のより効果的な内皮形成を促進するためのものであり、LAAへの血流の遮蔽を最大化するように構成され、血餅を内側に捕捉する。
【0010】
本明細書に開示されるのは、(a)内径および外径、近位端および遠位端を有する実質的に固体のマーカーバンドと、(b)マーカーバンド内に取り付けられた弾性メッシュ本体であって、本体は長さyであり、本体は長さxの追加の弾性メッシュ材料の塊を含み、yはxより大きく、本体はマーカーバンドから遠位方向に延在し、本体は第1の送達形状および第2の拡張可能な展開形状を有する、弾性メッシュ本体とを含む閉塞装置である。
【0011】
一実施形態では、弾性メッシュ本体は、二重メッシュ層を含む。さらなる実施形態では、二重メッシュ層は、周方向に折り畳まれた二重メッシュ層である。
【0012】
一実施形態では、弾性メッシュ本体は、閉塞装置の向上した組織一体化および/または安定化のために粗いメッシュ密度を有する。
【0013】
別の実施形態では、弾性メッシュ本体および追加弾性メッシュ材料の塊は、異なる金属である。
【0014】
別の実施形態では、弾性メッシュ本体は超弾性材料から構成される。さらなる実施形態では、弾性メッシュ本体は、ニチノールから構成される。さらに別の実施形態では、弾性メッシュ本体はDFT白金コアニチノールから構成される。
【0015】
別の実施形態では、追加の弾性メッシュの塊は超弾性材料から構成される。さらなる実施形態では、追加の弾性メッシュの塊は、ニチノールから構成される。さらに別の実施形態では、追加の弾性メッシュの塊はDFT白金コアニチノールから構成される。
【0016】
別の実施形態では、マーカーバンドは剛性部材を含む。
【0017】
別の実施形態では、マーカーバンドは、リング、カラー、および縫合糸からなる群から選択される剛性部材を含む。
【0018】
別の実施形態では、マーカーバンドは補強される。
【0019】
別の実施形態では、閉塞装置は、左心耳(LAA)閉塞装置である。
【0020】
同じく本明細書に開示されるのは、本明細書に開示される閉塞装置と、閉塞装置を展開するための送達手段とを含むキットである。
【0021】
さらに本明細書に開示されるのは、本明細書に開示される閉塞装置の製造および/または送達および/または展開のための方法である。
【0022】
他の実施形態では、先行する段落の閉塞装置は、先行するまたは後に開示される実施形態のいずれかを組み込むことができる。
【0023】
発明の概要は特許請求の範囲を定義するつもりもなければ本発明の範囲を限定するつもりもない。
【0024】
本発明の他の特徴および利点は、以下の図面、発明を実施するための形態および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、LAA治療用の本明細書に開示される閉塞装置の実施形態の断面図を示す。
図2図2は、LAA嚢または腔内で展開された本明細書に開示される閉塞装置の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、同様の要素に同じ参照番号が割り当てられている図面および記載中に示されている。しかしながら、特定の実施形態が図面に示されているが、開示された特定の実施形態に本発明を限定するつもりはない。むしろ、本発明は、本発明の趣旨および範囲内に入るすべての修正、代替構成、および等価物を網羅することが意図されている。このよう
に、図面は説明に役立つものであり、限定的なものではない。
【0027】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語は、本技術が属する技術分野の通常の技術を有する人によって共通に理解されるものと同じ意味を有する。
【0028】
本明細書に開示されるLAA閉塞装置の実践例は、LAAの治療および/または改善を提供する。そのような閉塞装置は、閉塞装置の展開された形状が少なくともLAA嚢の開口部および/または内側をシールするライナを形成するように、カテーテルまたは他の送達様式を介してLAA部位(嚢および/または腔)に血管内的に送達され、実質的に固体のマーカーバンドがLAA嚢または腔の開口部を横断しながら装置周囲のより効果的な内皮形成を促進する。
【0029】
本明細書に開示される閉塞装置の例示的な送達方法において、カテーテルが、左心耳(LAA)を有する左心房空間に導入される。左心耳(LAA)には血餅が形成されている。LAAは、一般に、LAAの開口部(またはネック部分)およびLAAの筋肉の嚢または腔を含む。カテーテル先端部は、閉塞装置を展開することができるように、LAAの開口部に隣接して配置される。本明細書に開示される閉塞装置は、逆さになったキノコのように低プロファイルで拡張可能な弾性メッシュから構成され、LAA嚢の内側を効果的に裏打ちし、それにより装置周囲の内皮形成を促進することによってLAAを閉塞する。
【0030】
本明細書の開示の目的のために、「低プロファイル」という用語は、装置の弾性メッシュ本体が自由空気中でその幅の約10〜20%の高さを有することを意味し、従ってその展開された形状において、弾性メッシュ本体は、拡張したとしても、逆さになったキノコのように平坦な態様で平らに横たわり、LAA腔の組織壁にぶつかり、その結果、LAA腔の内面を少なくとも部分的に覆うように配置される。このように、LAA嚢または腔の開口部および/または内側はシールされ、それによってLAAが閉塞される。
【0031】
本明細書の開示の目的のために、「に対応する」という用語は、互いに対応する物の間に機能的および/または機械的な関係が存在することを意味する。例えば、閉塞装置送達システムは、その展開のための閉塞装置に対応する(またはそれと適合する)。
【0032】
本明細書の開示の目的のために、「閉塞装置」という用語は、限定するものではないが「装置」または「閉塞装置システム」または「閉塞システム」または「システム」または「閉塞装置インプラント」または「インプラント」等などの用語と交換可能であることを意味するおよび/または交換可能であり得る。
【0033】
閉塞装置送達システムは当技術分野で周知であり、容易に利用可能である。例えば、そのような送達技術は、限定するものではないが、米国特許第4,991,602号明細書;同第5,067,489号明細書;同第6,833,003号明細書;米国特許出願公開第2006/0167494号明細書;および同第2007/0288083号明細書において見出すことができ、それらの教示のそれぞれは本明細書に組み込まれる。本発明の目的のために、任意のタイプの閉塞装置送達手段および/または送達システムおよび/または送達技術および/または送達機構および/または切離し(および/または取付け)手段および/または切離しシステムおよび/または切離し技術および/または切離し機構が利用されてもよい、および/または、本明細書に開示される閉塞装置と適合する(対応する)ように修正されてもよい。例示的な閉塞装置送達機構および/またはシステムには、限定するものではないが、ガイドワイヤ、プッシャーワイヤ、カテーテル、マイクロカテーテル等が含まれる。例示的な閉塞装置切離し機構には、限定するものではないが、流体圧、電解機構、油圧機構、インターロック機構等が含まれる。一実施形態では、本明細書で開示される閉塞装置は、電解切離しの方法で使用される。電解切離しは、当該技術分
野において周知であり、例えば、米国特許第5,122,136号明細書;同第5,423,829号明細書;同第5,624,449号明細書;同第5,891,128号明細書;同第6,123,714号明細書;同第6,589,230号明細書;および同第6,620,152号明細書において見出すことができる。
【0034】
本明細書に開示される閉塞装置の例示的な実施形態が、図1〜2に示されている。
【0035】
図1は、装置周囲のより効果的な内皮形成を促進するための本明細書に開示される閉塞装置の例示的な実施形態を示す。本明細書に開示される閉塞装置は、LAA嚢の内側を効果的に裏打ち(または被覆)するために拡張可能な弾性メッシュから構成され、それにより装置周囲の内皮形成を促進することによってLAAを閉塞する。本明細書の閉塞装置は、二重メッシュ層を形成するために、周方向に折り畳まれた単一メッシュ層から構成される弾性メッシュの本体20を含む。このような本体20は、マーカーバンド40から遠位方向に延在し、長さyを有する。二重メッシュ層の端部は、マーカーバンド40内に取り付けられる。一実施形態では、メッシュの端部は、マーカーバンド40の近位端90に取り付けられ、本体20は遠位方向に延在する。別の実施形態では、メッシュの端部は遠位端100に取り付けられ、本体20は遠位方向に延在する。本体20は、その中に、長さxの弾性メッシュ材料の塊30(追加メッシュ質量)を含む。本明細書に開示され示される閉塞装置のこのような例示的な構成では、yはxより長い。装置の拡張された、または展開された形状においても、本体20は、LAAの嚢50に対して低プロファイル形状を維持し、および装置の本体20は展開されるとLAAの嚢50の内側に存在する(およびLAA組織の壁70を裏打ちする)。当技術分野で受け入れられているように、そのような閉塞装置の長さのxおよびy測定値は自由空気中で測定される。閉塞装置の本体20の長さ(y)の例示的な範囲は、約20〜50ミリメートル(mm)であり、本体20内に含まれる塊30の例示的な長さ(x)は、長さyの値よりも小さい。一実施形態では、弾性メッシュの本体20は、実質的に固体のマーカーバンド40の内側/内に取り付けられ、本体20は、マーカーバンド40から遠位方向に延在する。本体20に対するマーカーバンド40のそのような構成は、LAAの開口部80をシールし、そのようにしてLAAを効果的に閉塞する装置の能力を与える。
【0036】
図2は、LAAの嚢50内で展開された、LAAを治療および/または改善するための本明細書に開示される閉塞装置の例示的な実施形態を示す。図1および図2の両方に示すような構成は、LAA嚢の開口部80をシールし、LAAを効果的に閉塞する装置の能力を与える。この実施形態では、装置のメッシュの本体20は、(逆さになったキノコのように平坦に横たわる)低プロファイルの態様のように、LAAの壁70を裏打ちする。従って、本明細書に開示され、図2にも示されているような装置の展開された形状であっても、距離yは距離xより長い。一実施形態では、本明細書で開示される装置の展開のために、12F以下のサイズのカテーテルが使用される。別の実施形態では、LAAに隣接する左心房空間を通る電解ワイヤによる電解送達および/または展開および/または切離しが、本明細書に開示される装置に使用される。米国特許第5,122,136号明細書に開示されているような電解切離し手段および方法は、当該技術分野において周知である。
【0037】
装置の本体20の低プロファイル展開形状は、左心房空間を通る流体の流れを妨害することなく閉塞装置のための固定装置を提供する。この作用機構は、その展開された形状において逆さになったキノコの態様で拡張可能なメッシュの本体20の二重層が、LAAの嚢50の内側の壁70を裏打ちし、メッシュの本体20と追加メッシュのその塊30とによってメッシュ本体内に形成された開放メッシュ密度を通して内皮成長を促進することを可能にする。このような構成がLAAへの血流の遮蔽を最大にし、どのような血餅60も内側に捕捉するので、装置の周囲の内皮形成および/または装置の本体20周囲の内皮成長がトリガされる。本体の20/30の二重メッシュ層内のメッシュの塊30の組み合わ
せは、装置をLAA内で効果的なシールドとして機能させる、すなわち血流をさらに低減するインプラントのキャップにおける向上した被覆領域として機能させる。このような装置はまた、安定装置として機能し、拡張中にメッシュを介した移動または力の伝達を防止する。これは、全て左心房空間内に追加の材料(メッシュまたは他のもの)を一切必要とせずに、装置を固定すること、妨げられない流体の流れを提供すること、および/またはLAAの開口部80を横切る新生内膜の発達を促進することを含むがこれらに限定されないいくつかの利点を有する。このように、本体20内に追加メッシュの塊30を含みかつ装置がLAA内で固定または安定化するために必要なマーカーバンド40から延在するメッシュの本体20以外、追加のメッシュ材料構成要素は存在しない。
【0038】
このような構成は、LAAの開口部80のシール、従って血餅60の形成および/または治癒および/またはLAAの嚢50の収縮を促進し、これは血餅60のサイズまたは質量が患者に痛みまたは他の副作用を引き起こしている場合に特に有利である。このような構成はまた、最小量の弾性メッシュ材料を必要とし、それによってLAAの嚢50内の空間を球状の半径方向に拡張される態様で充填または実質的に充填する必要性をなくすので有利である。このような閉塞装置はまた、特にLAAのサイズがかなり変化し、形状が完全に丸くないことがよく知られ、一般的に受け入れられているので、広範なLAA形態にわたる適合性にも適している。有利には、本明細書に開示されているような閉塞装置は、最小限の材料または現行の標準的な装置よりも少ない材料を有するので、抗凝固療法の必要性を最小限にし、および/または血餅塞栓形成のリスクを低減する。
【0039】
本明細書に開示される閉塞装置の別の実施形態では、弾性メッシュの弾性メッシュ本体20は、限定するものではないが72ニチノール(NiTi)ワイヤメッシュストランド編組構成などのワイヤメッシュストランドまたは編組の比較的均一の分布を含む。他の実施形態では、閉塞装置は、36〜144NiTiストランド編組構成の範囲のワイヤメッシュストランドまたは編組を含む。
【0040】
本明細書に開示される閉塞装置の別の実施形態では、本体20内に収容された追加の弾性メッシュの塊30は、限定するものではないが72ニチノール(NiTi)ワイヤメッシュストランド編組構成などのワイヤメッシュストランドまたは編組の比較的均一な分布を含む。他の実施形態では、閉塞装置の塊30は、36〜144NiTiストランド編組構成の範囲のワイヤメッシュストランドまたは編組を含む。一実施形態では、装置の本体20の弾性メッシュは、本体20内の塊30の追加の弾性メッシュ内の金属と比較して異種金属から構成される。
【0041】
別の実施形態では、内側の塊30のメッシュ密度は二重メッシュ層であり、その本体20の外側二重メッシュ層のメッシュ密度よりも大きい(または高い)。
【0042】
本明細書に開示される閉塞装置は、血管内またはLAAの開口部80を横切る内皮細胞足場のように機能し、それによって血餅の形成および/またはLAAの治癒を引き起こすために血流を約60%低減するのに十分なメッシュ密度の弾性メッシュ材料で構成される。本発明の目的のために、「メッシュ密度」という用語は、メッシュ装置の空隙率のレベルまたは金属対開口面積の比を意味する。メッシュ密度は、メッシュの開口または細孔の数およびサイズに関係し、また、開口または細孔の開放度が送達と展開との間で変化する状況において細孔が開くまたは閉じる程度に関連する。一般に、弾性メッシュ材料の高いメッシュ密度領域は、約70%以上の金属面積と約60%以下の開口面積とを有する。
【0043】
一実施形態では、弾性メッシュの本体20は、向上した組織の一体化および/または閉塞装置の安定化のための「粗いメッシュ密度」を有する。粗いメッシュ密度は、メッシュ内の約40%の開放面積よりも高い。粗いメッシュ密度は、メッシュ層の多孔度を表す1
インチあたりのピック数(PPI)が通常は約40〜80の低い数であることが知られている。PPIは、線形インチにおける編組材料の繰返し交差数である。高い繰返し(またはPPI)数、通常約100〜180は、メッシュが密であるという指標である。より低い繰返し(またはPPI)数は、メッシュが多孔質である(粗い)という指標である。さらなる実施形態では、弾性メッシュの本体20は、限定するものではないが、ニチノールなどの超弾性材料から構成される。さらに別の実施形態では、弾性メッシュの本体20はDFT白金コアニチノールから構成される。他の実施形態では、本体20メッシュがニチノールから構成されている場合、その本体20メッシュ内の塊30はDFT白金コアニチノールから構成される。さらに他の実施形態では、本体20がDFT白金コアニチノールから構築される場合、その本体20メッシュ内の塊30はニチノールから構成される。DFT白金コアニチノールは、展開および植込み中の装置の視覚化を高めるために使用される。
【0044】
図1および2はまた、近位端90および遠位端100を有するマーカーバンド40の本発明の閉塞装置上の位置を示す。マーカー40は、閉塞装置の本体20に取り付けられ、本体は、マーカーバンド40の遠位端100から延在する。図2において、マーカーバンド20の近位端90は、治療されるべきLAAの開口部80を橋のように横切って置かれて示されており、これは、追加メッシュの塊30を含む低プロファイルの弾性メッシュ14の本体20の特性と組み合されると、粗いメッシュ密度効果を生み、それにより、装置周囲のより効果的な内皮形成を促進する。他の利点は、LAAの開口部80をシールするために、または左心房空間に装置を固定するために、マーカーバンドから近位方向に延在する追加のメッシュ材料を組み込む必要性を排除することを含む。さらに、マーカーバンド40の近位端90をLAAの開口部80を横切るように配置することは、装置の完全な回収可能性を有利に提供する。
【0045】
本明細書に開示された装置の一実施形態では、カテーテル(またはマイクロカテーテル)のコイル巻きコアワイヤ(またはガイドワイヤ)が、マーカーバンド40の内側に、二重メッシュ層の本体20の端部に対するその遠位端90に取り付けられている。コイルの巻きは、送達カテーテルまたはマイクロカテーテルまたはガイドワイヤの柔軟性または剛性に影響を与えないように、一定の直径(φ)を維持する。特定の実施形態において、FEP(フッ素化エチレンプロピレン)熱収縮チューブが、コアワイヤのコイル巻き部分を包む。医療装置技術における数多くの容易に入手可能で周知の取り付け技術を用いて、コアワイヤの遠位端をマーカーバンド40の内側におよび/または閉塞装置またはインプラントに取り付けることができる。このような公知の技術はまた、弾性メッシュの本体20の端部を、マーカーバンド40に、および/またはその内側/内に取り付けるために使用される。このような取り付け技術には、限定するものではないが、接着剤、レーザー溶融、レーザータック、スポット、および/または連続溶接が含まれる。一実施形態では、接着剤を使用して、コアワイヤの遠位端をマーカーバンド40の内側に取り付ける。別の実施形態では、接着剤を使用して、弾性メッシュの本体20の端部を、マーカーバンド40におよび/またはその内側/内に取り付ける。さらなる実施形態では、接着剤は、熱またはUV(紫外線)放射の適用によって硬化または硬くされるエポキシ材料である。なおもさらなる実施形態では、エポキシは、Epoxy Technology,Inc.(14 Fortune Drive,Billerica,Mass)から入手可能なEPO−TEK(登録商標)353ND−4などの熱硬化性2液型エポキシである。追加の実施形態では、そのような接着剤またはエポキシ材料は、マーカーバンド40の内側でコアワイヤの接合部を封入し、その機械的安定性を高める。
【0046】
別の実施形態では、装置の展開中および/または展開後に、コイル巻きコアワイヤは、本明細書に開示された装置を、コアワイヤがマーカーバンド40の基部で電解作用によって切断および/または溶解されるような方法で、コアワイヤ自体の電解切離し部位(また
はゾーン)において切り離す。このような作用は、その後、治療されるべきLAAに閉塞装置を開放および/または配置する。
【0047】
一実施形態では、本明細書に開示される閉塞装置のマーカーバンド40は、限定するものではないが金、白金、ステンレス鋼および/またはそれらの組み合わせなどの材料から構成された、限定するものではないが固体リングなどの実質的に固体のカラーまたは剛性部材である。別の実施形態では、限定するものではないが金、白金、白金/イリジウム合金、および/またはそれらの組み合わせなどの放射線不透過性材料を使用することができる。このようなマーカー40は、送達および配置中の装置の視覚化を提供する。マーカー40の硬度は、LAA内の装置の安定性に一役買い、装置の弾性メッシュを介した力の移動または伝達を防止し、それにより装置の誤配置または偶発的な動きを防止する。マーカー40はまた、限定するものではないが、送達カテーテルまたはガイドワイヤおよび/またはプッシャーワイヤ技術などの対応する送達手段と協働しかつそこから解放/それに取り付けられるための接合部(マーカーバンド40の内側のコアワイヤ取付け部)を備えて構成される。それはまた、本明細書に開示された装置の完全な回収可能性を有利に提供する。
【0048】
別の実施形態では、実質的に固体のマーカーバンド40は、送達、配置および/または展開中、X線透視下での閉塞装置の視覚化を容易にする放射線不透過性材料(例えば、限定するものではないが、白金、金、白金/イリジウム合金、および/またはそれらの組み合わせ)を含む。マーカー40は、近位端90および遠位端100を含む。弾性メッシュの各アーム20は、マーカーバンド40に取り付けられ、マーカーバンド40の遠位端100から延在する。一実施形態では、マーカーバンド40は、閉塞装置の拡張時に弾性メッシュの本体20の形状、直径、および/または曲率に影響を及ぼすように構成されてもよい。マーカー40は、LAAの嚢50内の拡張/展開された閉塞装置の適切な密着を保証するために閉塞装置の全体的なプロファイルに影響を及ぼすように様々な形状に設計されてもよい。
【0049】
本明細書に開示される閉塞装置のいくつかの実施形態では、マーカーバンド40は、リング、カラー(例えば、潰れたまたは平坦なカラーなど)、バンドまたは縫合糸(例えば、ポリマー縫合糸など)などの剛性部材である。このような「実質的に固体の」または「剛性部材」は、装置の本体20の端部を集めるピンチポイントとして機能する。さらなる実施形態では、マーカーバンド40は補強され、従って装置のメッシュは、LAAの開口部80からLAAの嚢50までの内面に連続的なプロファイルを提供するためにマーカーバンド40を横切る。このような補強されたマーカーバンド40は、限定するものではないが、塑性変形可能な形状記憶弾性メッシュ材料、ワイヤ編組メッシュ材料(限定するものではないが、2ストランドオーバー−1ストランドアンダー、1ストランドアンダー−1ストランドオーバー、1ストランドオーバー−2ストランドアンダー等などの様々なメッシュ編組構造を含む)、レーザーカットメッシュ材料、および/またはそれらの組み合わせを含む材料を含む。
【0050】
実質的に固体のマーカーバンド40は、ネック部分に向かって移動する剛性部材を提供することによって、LAAの開口部80に隣接する閉塞装置の送達および位置決めを容易にする。さらに、いくつかの実施形態では、実質的に固体のマーカーバンド40は、X線透視法の下で可視性を提供し、それにより、装置のより正確な視覚化および正確な配置を可能にする。
【0051】
特定の実施形態では、本明細書に開示される閉塞装置の弾性メッシュは、LAAの凝固および閉鎖を促進するために、限定するものではないが液体剤および/または微粒子などの塞栓材料で充填することができる。液体剤および微粒子の例としては、限定するもので
はないがゼラチンフォーム、ポリビニルアルコール粒子、トリスアクリルゼラチンミクロスフェア、N−ブチル−2−シノアクリレート、エチレンビニルアルコールコポリマー、アルギン酸カルシウムゲル、無水アルコール等が挙げられる。
【0052】
他の実施形態では、本明細書に開示される閉塞装置は、コイリング技術、フレーミングコイル、塞栓剤、追加のマーカー、ポリマー、吸収性ポリマーおよび/またはそれらの組み合わせなどの当該技術分野で周知の補助要素および/または部材をさらに組み込んでもよい、および/またはそれらと共に使用されてもよい。
【0053】
閉塞装置の設計および/または製造のための弾性メッシュ材料は、容易に入手可能であり、当業者に周知である。従って、弾性メッシュ材料は、限定するものではないがニッケルチタン(ニチノールまたはNiTiとして知られている)、ステンレス鋼、ポリマー、および/またはそれらの組み合わせなどの多様な入手可能な材料から広がる。例示的に知られる医用ポリマーファミリーは、限定するものではないが、ポリホスファゼン、ポリ無水物、ポリアセタール、ポリ(オルトエステル)、ポリホスホエステル、ポリカプロラクトン、ポリウレタン、ポリラクチド、ポリカーボネート、ポリアミド、および/またはそれらの組み合わせなどのポリマーが挙げられる。(例えば、J Polym Sci B
Polym Phys.著者原稿;PMC 2012年6月15日に入手可能を参照。)
【0054】
1つの例示的な実施形態では、弾性メッシュ材料は、限定するものではないがナイロン、ポリプロピレンまたはポリエステルなどのポリマー材料の織りストランドから形成される。ポリマーストランドは、動脈瘤を治療する医師が脈管構造内の装置の位置をX線透視法で視覚化することを可能にする放射線不透過性材料で充填することができる。放射線不透過性フィラー材料は、好ましくは、三酸化ビスマス、タングステン、二酸化チタンもしくは硫酸バリウム、またはヨウ素などの放射線不透過性染料を含む。弾性メッシュ材料は、放射線不透過性材料のストランドによって形成することができる。放射線不透過性ストランドは、充填されたポリマー材料を使用することなく、医師および/または放射線専門医がメッシュの位置をX線透視法で視覚化することを可能にする。このような放射線不透過性ストランドは、限定するものではないが金、白金、白金/イリジウム合金、および/またはそれらの組み合わせなどの材料で形成することができる。一実施形態では、弾性メッシュ材料は、10%〜20%の白金コアNiTiから構成される。別の実施形態では、弾性メッシュ材料は、10%の白金コアNiTi、15%の白金コアNiTi、または20%の白金コアNiTiから構成される。10%の白金コアNiTiの構造は、X線の下で閉塞装置のゴースト像を提供するのに十分である。
【0055】
放射線不透過性コアおよび非放射線不透過性外層またはケーシングを有するそのような構成された組み合わせワイヤまたは複合ワイヤは、DFT(登録商標)(drawn−filled tube(引抜充填管))ワイヤ、ケーブルまたはリボンとして容易に入手可能であり、医療機器および金属技術において周知である。DFT(登録商標)ワイヤは、2種以上の材料の所望の物理的および機械的属性を単一のワイヤに組み合わせるように構成された金属−金属複合材である。より放射線不透過性であるがより延性の高い材料をワイヤのコアに配置することにより、NiTi外層は、100%NiTiワイヤの同様の機械的特性を有する複合ワイヤを提供することができる。DFT(登録商標)ワイヤは、Fort Wayne Metals Corp.(Fort Wayne,Ind.,U.S.A.)から入手可能である。同じく、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Advanced Materials & Processes、2002年10月、51−54ページのSchafferによるBiocompatible Wireと題するジャーナル記事も参照されたい。
【0056】
弾性メッシュ材料が放射線不透過性の金属ストランドから形成される場合、ストランドはポリマーコーティングまたは押出しによって被覆されてもよい。放射線不透過性のワイヤストランド上へのコーティングまたは押出しは、X線透視による視覚化を提供するが、曲げ疲労に対するストランドの抵抗を増加させ、また、ストランドの潤滑性を増加させる可能性がある。ポリマーコーティングまたは押出しは、一実施形態では、ヘパリンなどの凝固に抵抗する傾向がある薬剤でコーティングまたは処理される。そのような凝固抵抗性コーティングは一般的に知られている。ポリマーコーティングまたは押出しは、任意の適切な押出可能なポリマー、またはテフロン(登録商標)もしくはポリウレタンなど薄いコーティングで塗布することができる任意のポリマーであり得る。
【0057】
さらに別の実施形態では、弾性メッシュ材料のストランドは、金属およびポリマー編組ストランドの両方を使用して形成される。金属ストランドとポリマーストランドとを編組に組み合わせることによりメッシュの柔軟性は変化する。このようなメッシュ部分を展開および/または崩壊させるのに必要な力は、金属メッシュストランドのみを含むメッシュ部分に必要な力よりも大幅に低減される。しかしながらX線透視視覚化のためのメッシュの放射線不透過特性は保持される。このような装置を形成する金属ストランドには、限定するものではないが、ステンレス鋼、金、白金、白金/イリジウム、ニチノール、および/またはそれらの組み合わせが含まれる。装置を形成するポリマーストランドは、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエステル、テフロン(登録商標)、および/またはそれらの組み合わせを含むことができる。さらに、メッシュ材料のポリマーストランドは、限定するものではないが、ポリマーストランドへの金の堆積を用いることによって、またはポリマーストランドへの適切な金属イオンのイオンビームプラズマ堆積を用いることによってなど、既知の技術でそれらを放射線不透過性にするために化学的に修飾することができる。
【0058】
弾性メッシュ材料は、様々な直径および/または様々な柔軟性のフィラメントまたはストランドで形成することもできる。ポリマーストランドのサイズまたは柔軟性を変えることによって、展開時のメッシュの柔軟性特性を変えることもできる。柔軟性特性を変えることによって、弾性メッシュの本体20の展開された形態および折り畳まれた形態の両方を、実質的に任意の所望の形状に変えるまたは変更することができる。
【0059】
メッシュは、ポリマーストランドまたはフィラメントおよび金属ストランドまたはフィラメントの両方から形成できるだけでなく、異なるポリマー材料のフィラメントを用いて形成することもできる。例えば、異なる柔軟性特性を有する異なるポリマー材料をメッシュの形成に使用することができる。これは、展開された位置と折り畳まれた位置の両方で、メッシュの本体20の結果として得られる構成を変更するために装置の柔軟性特性を変更する。そのような医用ポリマーは、当該技術分野において容易に知られまた入手可能であり、限定するものではないが、ポリホスファゼン、ポリ無水物、ポリアセタール、ポリ(オルトエステル)、ポリホスホエステル、ポリカプロラクトン、ポリウレタン、ポリラクチド、ポリカーボネート、ポリアミドおよび/またはそれらの混合物などのポリマーファミリーに由来することができる。
【0060】
装置内で使用するのに適した弾性メッシュ材料は、平らな織物シート、編みシート、またはレーザーカットワイヤメッシュの形態を取ることができる。一般に材料は2つ以上の実質的に平行なストランドの組を含み、1組の平行なストランドは他の組の平行なストランドに対して45度〜135度のピッチであるべきである。いくつかの実施形態では、メッシュ材料を形成する2組の平行なストランドは、互いに実質的に垂直である。メッシュ材料のピッチおよび全体的な構造は、閉塞装置の性能要求を満たすように最適化されてもよい。
【0061】
本発明で使用される金属織物のワイヤストランドは、弾性を有し、所望の形状に実質的
に設定するために熱処理することができる材料で形成されるべきである。この目的に適していると考えられる材料には、閉塞装置の分野でElgiloy(登録商標)(Eligiloy Specialty Metals(Elgin,Illinois)から入手可能)と呼ばれるコバルトベースの低熱拡張合金、Haynes InternationalからHastelloy(登録商標)の商品名で市販されているニッケルベースの高温高強度の「超合金」、International NickelによってIncoloy(登録商標)の名称で販売されているニッケルベースの熱処理可能合金、および複数の異なる等級のステンレス鋼が挙げられる。ワイヤに適した材料を選択する際の重要な要因は、所定の熱処理にかけられたときに、ワイヤが、成形面(または後述の形状記憶)によって誘導される適切な量の変形を保持することである。
【0062】
これらの条件を満たす1つのクラスの材料は、いわゆる形状記憶合金である。そのような合金は、材料の相の変化を誘発するある特定遷移温度を超えて材料を加熱することによって固定することができる好ましい形状を材料が有することを引き起こす温度誘導相変化を有する傾向がある。合金が冷却されると、合金は熱処理中の形状を「記憶」し、そうすることから制約されない限り、同じおよび/または類似の形状をとる傾向がある。
【0063】
本発明で使用するための1つの特定の形状記憶合金は、所望の特性を達成するための他の少量の他の金属も含んでよいニッケルとチタンのほぼ化学量論的合金であるニチノールである。ニチノールなどのNiTi合金は、適切な組成および取り扱い要件を含み、当該技術分野において周知であり、このような合金はここで詳細に考察する必要はない。例えば、米国特許第5,067,489号明細書および同第4,991,602号明細書(それらの教示は参照により本明細書に組み込まれる)は、ガイドワイヤに基づく技術における形状記憶NiTi合金の使用を考察している。このようなNiTi合金は、市販されており、他の公知の形状記憶合金よりもそのような合金を取り扱うことについてより知られているので、少なくとも部分的に好ましい。NiTi合金はまた非常に弾性である。実際、これらは、「超弾性」または「疑似弾性」として知られていると言われている。この弾力性は、本明細書で開示される閉塞装置が、その展開のため前の拡張構成に戻るのに一役買う。
【0064】
ワイヤストランドは、選択された材料の標準モノフィラメントを含むことができる、すなわち、標準的なワイヤストックを使用することができる。いくつかの実施形態では、72のワイヤストランドおよび/または72のストランド編組構成を使用することができる。他の実施形態では、閉塞装置は、36〜144のNiTiストランド編組構成の範囲のワイヤメッシュストランドまたは編組を含む。しかし、必要であれば、個々のワイヤストランドは、複数の個々のワイヤから構成された「ケーブル」から形成されてもよい。例えば、いくつかのワイヤが中心ワイヤの周りに螺旋状に巻かれた金属ワイヤから形成されたケーブルが市販されており、外径が0.003インチ以下のNiTiケーブルを購入することができる。特定のケーブルの1つの利点は、それらが、同じ直径を有し同じ材料から形成されたモノフィラメントワイヤよりも「軟らかい」傾向があることである。さらに、ケーブルの使用は、ワイヤストランドの有効表面積を増加させる可能性があり、これは血栓形成を促進する傾向がある。
【0065】
いくつかの実施形態では、弾性メッシュは、同じ材料から均一に形成されてもよい。しかしながら、そのような材料は、異なる編み込み、縫合、編組、および/または切断構造を有してもよい。
【0066】
他の実施形態では、本明細書に開示される閉塞装置は、適切にスケーリングされる場合、動脈瘤、特に大きくて不規則なサイズの動脈瘤の治療および/または改善のためなどの血管内技術において、および装置周囲のより効果的な内皮形成を促進するために、使用す
ることができる。この点に関して、共通に所有される米国特許出願第14/699,188号明細書が参照される。この特許出願は参照により本明細書に組み込まれる。さらに、本明細書に開示される閉塞装置は、適切にスケーリングされる場合、末梢血管塞栓術のプロセス(当該技術分野で周知のプロセスであり、特定の血管部位の遠位の血流の遮断を伴うことが知られているプロセス)において、例えば、末梢動脈または静脈病状および/またはその治療のための血管閉塞を必要とするいずれかの関連病変の治療および/または改善において使用することができる。
【0067】
本発明の閉塞装置は、閉塞装置の分野の当業者に容易に明らかである合理的な設計パラメータ、特徴、修正、利点および変形を組み込むことができる。
図1
図2
【国際調査報告】