(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-510102(P2019-510102A)
(43)【公表日】2019年4月11日
(54)【発明の名称】ポリ(グリセロールセバケート)フィラーを含む複合材料
(51)【国際特許分類】
C08L 67/00 20060101AFI20190315BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20190315BHJP
C08K 7/16 20060101ALI20190315BHJP
C08G 63/12 20060101ALI20190315BHJP
【FI】
C08L67/00
C08L101/00
C08K7/16
C08G63/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-544788(P2018-544788)
(86)(22)【出願日】2017年2月24日
(85)【翻訳文提出日】2018年10月23日
(86)【国際出願番号】US2017019406
(87)【国際公開番号】WO2017147457
(87)【国際公開日】20170831
(31)【優先権主張番号】62/299,595
(32)【優先日】2016年2月25日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】516334709
【氏名又は名称】ザ・セカント・グループ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】ローブルスキー,ケイラ
(72)【発明者】
【氏名】スムート,カリッサ
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエーレ,ピーター・ディー
(72)【発明者】
【氏名】ハリス,ジェレミー・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ニコルソン,チャールズ・ブレンダン
(72)【発明者】
【氏名】ルー,スティーブン
【テーマコード(参考)】
4J002
4J029
【Fターム(参考)】
4J002AA02X
4J002CF01W
4J002CF01X
4J002DH046
4J002EJ066
4J002FA08W
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4J002FB08W
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4J002GB01
4J029AA01
4J029AD10
4J029AE06
4J029CA02
4J029FC03
(57)【要約】
PGSのような二酸/ポリオールの熱硬化性樹脂のフィラー材料を提供する。このフィラーは、フィラーと樹脂マトリクスが同じ材料のもので、均一なポリマー組成物を与えるもののような複合材料を形成するのに有用である。マトリクス、フィラーの少なくとも一方又は両方がPGSである複合材料も提供される。また、かかるフィラー材料及び複合材料を形成する方法も開示する。この複合材料によって、本発明の適用がなければ押出すことができないであろう材料から物品を押出プロセスによって形成することが可能になる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸とポリオールの縮合反応生成物を含むポリマーの熱硬化性樹脂を含み、0.5〜1000ミクロンの間の粒径を有するフィラー材料。
【請求項2】
300ミクロン以下の粒径を有する、請求項1に記載のフィラー材料。
【請求項3】
前記フィラー材料がグリセロールとセバシン酸の熱硬化性樹脂(PGS)である、請求項1に記載のフィラー材料。
【請求項4】
前記PGSが0.7:1〜1.3:1の範囲のグリセロールとセバシン酸とのモル比を有する、請求項3に記載のフィラー材料。
【請求項5】
前記PGSが1:1のグリセロールとセバシン酸とのモル比を有する、請求項4に記載のフィラー材料。
【請求項6】
前記PGSが約0.07モル/L以上の架橋密度を有する、請求項3に記載のフィラー材料。
【請求項7】
前記熱硬化性樹脂に活性成分がドープされている、請求項1に記載のフィラー材料。
【請求項8】
樹脂マトリクスと熱硬化性フィラーの複合材料を含む物品であって、前記熱硬化性フィラーは0.5〜1000ミクロンの間の粒径を有し、前記樹脂マトリクス、熱硬化性フィラー、又は前記樹脂マトリクスと熱硬化性フィラーの両方はPGSを含み、前記熱硬化性フィラーは前記複合材料の約10重量%〜約90重量%として存在する、前記物品。
【請求項9】
前記複合材料が硬化状態である、請求項8に記載の物品。
【請求項10】
前記樹脂マトリクスが5,000〜50,000Daの分子量を有する、請求項8に記載の物品。
【請求項11】
前記熱硬化性フィラーが約0.07モル/L以上の架橋密度を有する、請求項10に記載の物品。
【請求項12】
前記熱硬化性フィラーがPGSを含む、請求項8に記載の物品。
【請求項13】
前記樹脂マトリクスがPGSを含む、請求項12に記載の物品。
【請求項14】
前記熱硬化性フィラー及び前記樹脂マトリクスがそれぞれ0.7:1〜1.3:1の範囲のグリセロールとセバシン酸とのモル比を有する、請求項13に記載の物品。
【請求項15】
前記熱硬化性フィラー及び前記樹脂マトリクスがそれぞれグリセロールとセバシン酸との同じモル比を有する、請求項14に記載の物品。
【請求項16】
グリセロールとセバシン酸とのモル比が1:1である、請求項14に記載の物品。
【請求項17】
前記物品が抗菌性である、請求項8に記載の物品。
【請求項18】
前記樹脂マトリクスが、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(グリコリド−co−ラクチド)(PLGA)、ポリ(プロピレンフマレート)、ポリ(エーテルエステル)、ポリジオキサノン、ポリ(オルトエステル)、ポリ無水物、ポリカーボネート、これらのコポリマー、これらのブレンド、ウレタン類、アクリレート類、コラーゲン、ゼラチン、多糖、アルギネート、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、キトサン、キチン、又はアガロースを含む、請求項8に記載の物品。
【請求項19】
無機塩、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、β−リン酸三カルシウム、二酸化チタン、コラーゲン、ゼラチン、PCL、PGLA、PGA、PLA、及びこれらの組合せからなる群から選択される第2のフィラーを更に含む、請求項8に記載の物品。
【請求項20】
前記熱硬化性フィラーが前記複合材料の少なくとも50重量%を構成する、請求項8に記載の物品。
【請求項21】
前記PGSに活性成分がドープされている、請求項8に記載の物品。
【請求項22】
前記熱硬化性フィラーの粒径が300ミクロン未満である、請求項8に記載の物品。
【請求項23】
架橋樹脂マトリクス内の250ミクロン未満の粒径を有する熱硬化性フィラーの複合材料を含む物品であって、前記樹脂マトリクス及び熱硬化性フィラーは両方ともPGSを含み、前記熱硬化性フィラーは前記複合材料の約40重量%〜約70重量%で存在し、前記樹脂マトリクスは架橋前に5,000〜50,000Daの分子量を有し、前記熱硬化性フィラーは約0.07モル/L以上の架橋密度を有し、前記熱硬化性フィラー及び前記樹脂マトリクスはそれぞれ0.7:1〜1.3:1の範囲のグリセロールとセバシン酸とのモル比を有する、前記物品。
【請求項24】
樹脂マトリクスと熱硬化性フィラーの複合材料を含む物品であって、前記熱硬化性フィラーは0.5〜1000ミクロンの間の粒径を有し、前記樹脂マトリクス及び前記熱硬化性フィラーは両方とも同じ材料を含み、前記熱硬化性フィラーは前記複合材料の約10重量%〜約90重量%として存在する、前記物品。
【請求項25】
前記複合材料がPGS樹脂マトリクス及びPGS熱硬化性フィラーを含む、請求項24に記載の物品。
【請求項26】
フィラー材料を形成する方法であって、
PGSを含む熱硬化性樹脂を与える工程;
0.5〜1000ミクロンの間の粒径を有する前記熱硬化性材料の粒子を形成する工程;
を含む、前記方法。
【請求項27】
形成工程が、前記熱硬化性材料を凍結粉砕する工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
形成工程が、前記熱硬化性材料を溶媒中に浸漬して低分子量フラクションを溶解し、その後、前記熱硬化性材料を粉砕する工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
物品を形成する方法であって、
PGS樹脂マトリクス及び0.5〜1000ミクロンの間の粒径を有する熱硬化性PGSフィラー材料を含む複合材料を与える工程であって、前記熱硬化性PGSフィラー材料は前記複合材料の少なくとも50重量%である、前記工程;
前記複合材料を所定の形状に形成する工程;及び
前記PGS樹脂マトリクスを硬化させる工程;
を含む、前記方法。
【請求項30】
形成工程が押出を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
硬化工程を、金型の不存在下で90℃〜150℃の範囲の温度において大気圧未満で行う、請求項29に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、2016年2月25日出願の米国出願62/299,595(その全部を参照として本明細書中に包含する)の利益及びそれに対する優先権を主張する。
[0002]本出願は、複合材料、より特にはグリセロール/セバシン酸ポリマーフィラーを含む複合材料、並びにフィラーそれ自体に関する。
【背景技術】
【0002】
[0003]グリセロール/セバシン酸のポリマー(PGS)(ホモポリマー及びコポリマーの両方を含む)は、医療及び他の用途において用いるための生体吸収性材料としてかなり有望であることが示されている。しかしながら、PGSは幾つかの材料の欠点を有しており、これにより商業的処理の可能性が限定されている。PGSは約35℃の融点を有しており、熱硬化性エラストマーを生成させる硬化プロセスは100℃より高い温度を必要とする。したがって、規定の形態を有する構造体を製造するためには、硬化プロセス中において金型が必要である。これにより、熱硬化性PGSの潜在的用途及び実現可能な構造が制限される。
【0003】
[0004]押出は成形品を形成するより望ましい方法であるが、純粋なPGSは、その低い粘度、非理想的な熱特性、及び長い硬化時間のために容易に押出すことができない。PGSを押出すためには、それを昇温温度で軟化させてダイを通して処理して、生理的温度及び/又は硬化温度に耐えることができる構造体を産出しなければならない。したがって、電界紡糸のような押出技術は、共ブレンド及び/又は溶剤ベースの押出プロセスが必要なので満足できないことが判明している。更に、電界紡糸プロセスは、非繊維質である可能性がある配向構造を生成する押出に対してランダムな繊維配向を生成する。
【発明の概要】
【0004】
[0005]代表的な態様によれば、フィラー材料は、二酸とポリオールの縮合反応生成物を含むポリマーの熱硬化性樹脂を含み、フィラー材料は0.5〜1000ミクロンの間の粒径を有する。幾つかの態様においては、フィラー材料はPGSを含む。
【0005】
[0006]他の代表的な態様によれば、物品は樹脂マトリクス及び熱硬化性フィラーの複合材料を含み、熱硬化性フィラーは0.5〜1000ミクロンの間の粒径を有し、樹脂マトリクス、熱硬化性フィラー、又は樹脂マトリクスと熱硬化性フィラーの両方はPGSを含み、熱硬化性フィラーは複合材料の約10重量%〜約90重量%として存在する。
【0006】
[0007]1つの代表的な態様によれば、物品は、架橋樹脂マトリクス内の250ミクロン未満の粒径を有する熱硬化性フィラーの複合材料を含み、樹脂マトリクス及び熱硬化性フィラーは両方ともPGSを含み、熱硬化性フィラーは複合材料の約40重量%〜約70重量%で存在し、樹脂マトリクスは架橋前に5,000〜50,000Daの分子量を有し、熱硬化性フィラーは約0.07モル/L以上の架橋密度を有し、熱硬化性フィラー及び樹脂マトリクスはそれぞれ0.7:1〜1.3:1の範囲のグリセロールとセバシン酸とのモル比を有する。
【0007】
[0008]他の代表的な態様によれば、物品は樹脂マトリクス及び熱硬化性フィラーの複合材料を含み、熱硬化性フィラーは0.5〜1000ミクロンの間の粒径を有し、樹脂マトリクス及び熱硬化性フィラーは両方とも同じ材料を含み、熱硬化性フィラーは複合材料の約10重量%〜約90重量%として存在する。
【0008】
[0009]他の代表的な態様によれば、フィラー材料を形成する方法は、PGSを含む熱硬化性樹脂を与え、0.5〜1000ミクロンの間の粒径を有する熱硬化性材料の粒子を形成することを含む。
【0009】
[0010]他の代表的な態様によれば、物品を形成する方法は、PGS樹脂マトリクス、及び0.5〜1000ミクロンの間の粒径を有する熱硬化性PGSフィラー材料を含む複合材料を与え(熱硬化性PGSフィラー材料は複合材料の少なくとも50重量%である);複合材料を所定の形状に形成し;そしてPGS樹脂マトリクスを硬化させる;ことを含む。
【0010】
[0011]代表的な態様の有利性の中でも、微細な熱硬化性PGSフィラーを用いることによって、金型の必要なしに複合材料の構造体を形成して架橋させることができることが見出された。
【0011】
[0012]他の有利性は、同じ分子式のマトリクス及び熱硬化性フィラーを含み、これにより、物品がなお全体的に均一な組成を有することを維持する能力を与えながら、ニートの樹脂単独によっては達成することができない材料の押出性及び他の加工性が可能になる複合材料が提供されることである。
【0012】
[0013]他の有利性は、PGSフィラーと混合したPGS樹脂が37℃においてその構造を保持し、したがって一旦所望の構造が形成されたら高温で更に処理する必要がないが、それを更に架橋させてより機械的に安定な構造を生成させることができることである。
【0013】
[0014]更に他の有利性は、PGS樹脂とPGSフィラーの複合材料は、37℃において及び100℃を超える温度における硬化下においてそれらの形状を保持する幾つかの形状に押出すことができることである。
【0014】
[0015]更に他の有利性は、加工の困難性を克服するのに加えて、代表的な態様にしたがって複合材料の形態のPGSを押出す能力によって、3D印刷及び他の付加製造技術などのより広範囲の用途、並びに広範囲の医療及び産業用途に対するこの材料の使用の可能性が開かれることである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[0016]代表的な態様は、熱硬化性PGSフィラー、及びPGSフィラーを用いて形成される複合材料、並びにこれらに関係する方法及び製品に関する。PGSフィラーは、本発明においては時にはPGS粉又はPGS粉末と呼ぶ。
【0016】
[0017]本明細書において用いる「複合材料」とは、樹脂及びフィラー材料の任意の組合せを広く指し、バルク固体を形成するため、或いは被覆及びフィルム用途において用いることができる低固形分及び高固形分の組成物の両方を含み、フィラーは基本配合物に対するビヒクル−バインダー助剤又は唯一のバルク樹脂として機能する。他の態様においては、フィラーは、粒径に基づいて制御された「吸油率」機能を有して、「湿潤状態の配合添加剤」をフィラー粒子内に吸着させることができるようにする添加剤として挙動し;即ち、フィラー粒子によって流体相の添加剤を吸い取る湿潤表面が提供される。
【0017】
[0018]ここでは主としてPGSに関して記載するが、熱硬化性樹脂を形成することができる多官能性酸モノマー及びポリオールモノマーから形成される任意のポリマーを、フィラー材料を形成するために用いることができることが認識される。したがって、本発明の幾つかの形態においては、ポリマーは、グリセロール又は他のアルコールモノマーと、式:[HOOC(CH
2)
nCOOH](式中、n=1〜30である)を有する二酸、例えばマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、及びアゼライン酸、並びにセバシン酸との縮合反応生成物である。
【0018】
[0019]更に、ここでは複合材料の好ましい樹脂として主としてPGSに関して議論するが、代表的な態様にしたがって形成される複合材料のマトリクスのために用いる樹脂はそのようには限定されず、任意のポリマー材料であってよいが、好ましくは生体適合性で浸食性/分解性である。代表的な樹脂としては、PGSに加えて、種々の当初のモル比のグリセロールとセバシン酸を含むポリマー、二酸(例えば上記で議論したもの)とポリオールの縮合ポリマー、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、及びポリ(グリコリド−co−ラクチド)(PLGA)、ポリ(プロピレンフマレート)、ポリ(エーテルエステル)、例えばポリジオキサノン、ポリ(オルトエステル)、ポリ無水物、ポリカーボネート、並びにこれらのコポリマー及びブレンド、並びに好適なウレタン類及びアクリレート類が挙げられる。マトリクスのための他の好適な樹脂材料としては、コラーゲン、ゼラチン、多糖、アルギネート、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、キトサン及びキチン、アガロース等のような生物製剤が挙げられ、これらはマトリクス内で1種類以上の合成樹脂と一緒に組み合わせて用いるか、及び/又はそれとブレンドすることができる。
【0019】
[0020]幾つかの現在好ましい態様によれば、複合材料は同じ化学的性質を有する樹脂及び熱硬化性フィラーから形成される。
[0021]マトリクス樹脂は、所定の温度で流動又は軟化して粒子の結合を可能にすることができなければならない。特に樹脂がPGSである場合には、PGS樹脂は5,000〜50,000Daの範囲の分子量を有し;幾つかの態様においては、PGS樹脂は15,000〜25,000Daの範囲の分子量を有する。本明細書における分子量という記載は重量平均分子量を指す。
【0020】
[0022]マトリクスは、完全にポリマー樹脂から構成することができ、或いは1以上の更なる成分を含ませることができる。幾つかの態様においては、マトリクスは、PGSの表面浸食特性によってその後のマトリクスの吸収又は分解中に制御放出するようにその中に組み込むことができる1種類以上の薬物、薬剤、又は他の生物学的及び/又は薬学的に活性の成分を含む。
【0021】
[0023]代表的な態様による複合材料のフィラーは、微細な粒径(例えば1000ミクロン未満)の粉又は粉末に加工されている熱硬化性PGS(又は二酸とポリオールの他のポリマー)を含む。PGS熱硬化性フィラーの架橋密度は、試料をテトラヒドロフラン中に24時間浸漬して膨潤した物質を得て、一定の乾燥質量が得られるまで(通常は約3日間)乾燥し、次に膨潤率を用いて四官能性アフィンネットワークに関するFlory-Rehner式を用いて架橋密度を計算することによって、特殊化(particularization)の前の熱硬化性材料に関して計算して約0.07モル/L以上である。
【0022】
[0024]フィラー材料としてPGSを用いることに成功したことは予期しなかったこと且つ驚くべきことであった;PGSは軟質のエラストマーであり、したがって、多くの用途において、特にPGS樹脂を含むマトリクス内に分散させて、ニートのPGS樹脂又はニートの熱硬化性PGS単独のいずれかとのレオロジーにおける大きな相違並びにこれらよりも向上した取扱い性及び加工特性を示す複合材料を形成するために好適なフィラー材料とは通常は考えられてはいない。
【0023】
[0025]代表的な態様にしたがって複合材料を形成するための更なるフィラー材料として、PGS粉末と組み合わせて他の材料(有機及び無機の両方)を用いることができ、これらとしては、全てほんの一例としてコラーゲン、無機塩(例えば、リン酸カルシウム、二酸化チタン)、ゼラチン、PCL、PGLA、PGA、及びPLAの粒子が挙げられる。他のフィラーを用いる場合であっても、PGSフィラーは、37℃の生理的温度及び100℃より高い硬化温度においてその構造を維持することができるレオロジーを有する安定な複合材料を生成させるための主要なフィラー成分のままである。
【0024】
[0026]フィラーの粒径は用途に応じて変化させることができるが、フィラーは一般に0.5〜1000ミクロンの間であり、通常は850ミクロン未満である。これよりも小さい粒径は、一般に付加製造及び伝統的なBrabender又は繊維押出機のために好ましく、これよりも多少大きな寸法は、産業用途、整形外科用途、創傷ケア用途、及び歯科用途のために用いることができる。幾つかの態様においては、最大粒径は付加製造に関しては約60〜125ミクロンであり、他の形態の押出に関する最大粒径は、通常は約75〜約300ミクロン、例えば約175〜約250ミクロンの範囲である。
【0025】
[0027]熱硬化性フィラーは、熱硬化性材料の微粒子を形成する任意の好適な方法によって製造することができる。
[0028]一態様においては、熱硬化性PGSは凍結粉砕によってフィラー粒子に加工する。このプロセスにおいては、熱硬化性PGSのシート又は他のより大きな物体を、例えば液体窒素に直接曝露して非常に低い温度に凍結する。これにより、PGS熱硬化性樹脂が、その凍結状態にある間に小さな顆粒に粉砕されるのに十分に脆性になる。かくして形成されるフィラー粒子は、プロセスの完了後に雰囲気温度に戻すことによってそれらのエラストマー状態に戻される。凍結粉砕は、より小さい径(例えば約300ミクロン以下)を有するより微細な粒子が所望の場合に最も有用である可能性がある。
【0026】
[0029]他の態様においては、フィラー粒子は抽出及び粉砕技術によって形成する。PGSはゾルゲルに類比することができ、より高分子量の鎖はゲルとして機能し、より低分子量の鎖は結合ゾルとして機能する。熱硬化性PGSを有機溶媒中に浸漬すると、一部のゾル部分が除去され、これにより微粉末に粉砕することができるゲル部分の不安定な構造がもたらされる。
【0027】
[0030]PGSフィラー製造の抽出プロセスにおいては、熱硬化性PGSを有機溶媒(例えば酢酸エチル又はTHF)中に浸漬して、PGSの低分子量フラクションの部分を溶解する。これにより熱硬化性構造体全体を脆弱化して、二軸非対称遠心ミキサーなどによって撹拌した際に崩壊させて綿毛状の粉末様材料を得ることが可能になる。
【0028】
[0031]幾つかの態様においては、酢酸エチルは、低分子量のフラクションの溶解においてより良好な選択性を示しているので、好ましい有機溶媒である。THFのような他の有機溶媒を用いることもできるが、幾つかのより高分子量のフラクションも抽出(pull out)される傾向を有する可能性がある。いくつかのより高分子量のフラクションを除去することは、より小さな粒径を生成させる幾つかの場合においては望ましい可能性がある。粒径は溶媒浸漬時間に基づいて制御することができ、より長い浸漬及び/又はより高分子量のフラクションの除去によってより小さな粒径が得られ、PGSの重合において用いられるグリセロールとセバシン酸とのモル比もより小さくなる。
【0029】
[0032]用いる技術に関係なく、得られるフィラー粒子は次に、例えば篩別又は他の寸法調整技術によって更に寸法調整することができる。PGSフィラー粒子は、凝集性で集塊を形成する傾向があることが観察される。したがって幾つかの態様においては、フィラー粒子は酢酸エチルで湿潤させて、粒子相互作用を減少させ、且つ更なる重量を与えることができる。また、ヒドロキシアパタイトを用いて粒子を被覆することによって粒子の相互作用を阻止して、全ての相互作用を最小にして微粉末を得ることができる。他の態様においては、寸法調整は、粒子が例えば液体窒素の存在下でより硬い凍結状態にある際に行うことができる。
【0030】
[0033]フィラー材料のために用いる熱硬化性PGSにおけるグリセロール:セバシン酸のモル比は変化させることができるが、通常は0.7:1〜1.3:1の範囲である。セバシン酸の量に対してグリセロールの量を減少させると、構造体を保持するゾルの割合がより小さくなるために、抽出法を用いるフィラー粒子の製造中により微細な粒径がより多い量で生成する。しかしながら、より多い量、例えばグリセロール:セバシン酸が1.3:1までのグリセロールも好適であり、幾つかの態様においては1:1のモル比が好ましい。グリセロールとセバシン酸との化学量論比はPGS粒子に関しては変化させることができるが、粒子はなお樹脂マトリクスのものと同等の表面エネルギーのものでなければならない。幾つかの態様においては、これは、マトリクス中の樹脂のものと同様又は同一のグリセロール:セバシン酸のモル比を有するPGSフィラー粒子を与えることによって達成される。現在好ましい態様においては、複合材料は、これも1:1のグリセロール:セバシン酸のモル比を有するPGS樹脂マトリクス中に分散している1:1のグリセロール:セバシン酸のモル比で形成されたPGS熱硬化性フィラーを含む。
【0031】
[0034]マトリクス材料と同様に、フィラー粒子を形成するのに用いるポリマー材料には、活性成分をドープすることができる。
[0035]フィラー粒子を樹脂マトリクスに加えて複合材料を形成する。複合材料中のフィラーの重量%は、所期の最終用途などの数多くのファクターに基づいて広く変化させることができる。一般に、複合材料は約10重量%〜約90重量%のフィラーである。幾つかの態様においては、複合材料は、押出用途に関しては、複合材料がその形状を保持するために、約40重量%〜約70重量%のフィラー、好ましくは(75〜250μmの粒子に関して)少なくとも50重量%以上のフィラーである。より高い比のフィラーは、最終硬化複合材料のピーク荷重の増加、及び未硬化の複合材料における増大した機械的完全性をもたらすことが観察された。更に、上述したように、フィラー粒子が複数の異なる材料を含む限りにおいては、フィラーは主として、好ましくは樹脂マトリクスとして用いられるものと同じ組成の粒子状の熱硬化性材料である。
【0032】
[0036]外観によっては、複合材料は、室温においては硬化して未硬化のPGS樹脂に付きものの粘着性又は粘性を示さないので、室温において硬化しているように見える。外観にかかわらず、示差走査熱量測定による分析は複合材料が室温において硬化しないことを示しているが、フィラーが樹脂の結晶化温度に影響を与えて、それをより低い値にシフトさせていることが示唆される。フィラーは硬化それ自体は変化させないように見える一方で、その形状を保持することができ、容易に取り扱うことができる複合材料を与える。理論によって縛られることは望まないが、モルホロジー変化の幾つかは、複合材料の未硬化の樹脂を吸収又は吸着するフィラー粒子に起因すると考えられる。
【0033】
[0037]複合材料は、チューブ、繊維、又は他の装置中に押出すことなどによる任意の所望の方法で、及び/又は付加製造において用いるためのインクとして処理及び成形することができる。幾つかの場合においては、複合材料は他のポリマー材料と混合及び/又は共押出することができる。
【0034】
[0038]所望の形状が形成されたら、複合材料は金型を使用しないで最終生成物に硬化させることができる。複合材料の硬化(即ち複合材料の樹脂マトリクスの硬化)は、通常は100℃を超える温度において、大気圧よりも低い圧力下で行い、複合材料で形成された最終生成物を与える。幾つかの態様においては、硬化工程はアニーリングを伴うこともある。幾つかの態様においては、複合材料は、約90℃〜約150℃の温度、約5torr〜約20torrの範囲の圧力において、約4時間〜約96時間の間硬化させる。
【0035】
[0039]ニートのPGSと同様に、PGS/PGS複合材料は、樹脂マトリクス及び熱硬化性粒子の両方の表面浸食による制御放出性を有する。複合材料の樹脂及び熱硬化性粒子は異なる架橋密度を有しており、その結果として2つの異なる速度で分解する。異なるPGS/PGS複合材料構造体のin vitro分解実験は、当初の急速分解(bolus degradation)、続いて時間経過に伴う質量損失の線形減少を有するキャスト成形PGS熱硬化性樹脂に密に類似した。表面浸食はまた、時間経過に伴う表面トポグラフィー分析、並びに表面に限定された固有の細孔形成によっても確認された。in vivoでは、代表的な態様による複合材料は、複合材料の樹脂部分が熱硬化性粒子よりも早く分解して、複合材料構造体中への細胞浸潤を可能にするので、リアルタイムで多孔質ネットワークを形成することができる。
【0036】
[0040]ニートのPGSと同様に、代表的な態様はまた抗菌活性も示し、複合材料はその目的のために好適な用途において用いることができる。一態様においては、複合材料は、複合材料のポリマーの分解作用によって、(調剤によって)含まれた生物活性材料を特定又は調整された放出プロファイルで放出し、PGS成分自体の内在する抗菌分解生成物も放出する制御放出又は二重制御放出のための送達ビヒクルである。
【0037】
[0041]代表的な態様は、吸収性複合材料ポリマーに抗菌性の利益を与えることが望ましい任意の状況において用いることができる。代表的な用途としては、全てほんの一例として、農業;建築;水管理;表面保存;建築保存;防汚;環境障壁;創傷治癒布帛表面、処置、被覆、及び制御放出ビヒクル;食品添加剤;移植装置保護用手術時手術後感染予防のための生物医学装置の被覆/接着剤/シート又はフィルム;一時的バリヤ;微生物のコロニー形成が人間の健康又はコンディションを脅かす任意の表面;親水性薬剤;編織布処理;獣医学;創傷ケア;バイオフィルム制御;抗生物質を必要としない再生工学;表面保護/浄化;水管理;濾過;保護目的の布帛の被覆;移植可能な編織布;保護用人工移植片被覆;コンフォーマルコーティング;化粧品;OTC医薬品;及び水産養殖;が挙げられる。
【0038】
[0042]代表的な態様によるPGS複合材料は、広範囲の編織構造体中に結合させることができる。編織構造体は、限定なしにポリラクチド及びポリグリコリド並びにこれらのコポリマー、ポリジオキサノン、ポリトリメチレンカーボネート、ポリカプロラクトン、ポリエチレンテレフタレート、低〜超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、絹、及びポリテトラフルオロエチレンを含むモノフィラメント又はマルチフィラメントから形成することができる。種々の寸法の硬化したチューブ又はロッド複合材料をマンドレル上に配置して、その上に編成することができる。未硬化の複合材料シートはまた、より高い温度を用いて軟化させて、ダイプレス、3段ロール積層、又は他の積層技術を用いて、異なるポリマーのタイプ及び構造のメッシュと積層することもできる。これらの積層シートは次に硬化させて、層間剥離させることができない1つの結合した構造体を形成することができる。PGS複合材料はまた編織構造体と共押出することもでき、これにより引き続く積層工程の必要性がなくなる。編織布で強化されたPGS複合材料は、心臓血管パッチ、心臓パッチ、心膜パッチ、心臓サポートメッシュラップ、血管保護、血管移植片、シャント、接着バリヤ、硬膜代用材、神経チューブ、心臓弁、ペースメーカーメッシュバッグ、中耳腔換気用チューブ、弁形成リング、半月板足場材、骨鞘又はラッピング材、腱ラッピング材、手術用フィルム、又は手術用メッシュ(しかしながらこれらに限定されない)として用いるための医療装置中に組み込むことができる。
【0039】
[0043]本発明の代表的な態様を用いることができる用途の中で、広範囲の医療及び産業用途が挙げられる。幾つかの態様においては、複合材料は、例えば、移植片の形成において、或いは整形外科、神経系、及び心臓血管用途において用いられる移植片又は他の装置の上の潤滑剤又は被覆として用いることができる。他の医療用途としては、ヒドロゲルを形成するためのコラーゲン粉末(例えばAvitene)とPGS熱硬化性フィラーの複合材料、骨パテ複合材料(PGS樹脂、リン酸カルシウム、及びPGS熱硬化性フィラー)、並びに種々の異なる寸法に切断した硬化パテで形成される骨プラグの形成のように、創傷ケアにおいて用いることが挙げられる。
【0040】
[0044]更に他の医療用途としては、全て例として、皮下注射、二成分薬物送達による物質の送達のためのビヒクル、並びにポロゲンとしての用途が挙げられる。
[0045]産業用途としては、ここでも全て例として、分解性の塗料及びインク;風味又はビタミン類を与える食品加工;例えば殺藻剤、殺虫剤、又は他の処置の制御放出のための水処理;における使用、或いは更には魚餌の遅延放出としての使用が挙げられる。
【実施例】
【0041】
[0046]例示の目的で示し、限定目的ではない以下の実施例に関して本発明を更に記載する。
実施例1:
[0047]種々の装填レベルでPGS樹脂に加えたPGS熱硬化性フィラーを用いることによって、PGS/PGS複合材料を形成した。フィラーは、ここに記載した抽出法により、(粒子形成前に)0.100モル/Lより高い架橋密度を有するPGS熱硬化性樹脂で出発して、212μm未満の平均粒径を有するPGS熱硬化性フィラーを与えることによって生成させた。フィラーを、50重量%、60重量%、及び70重量%の量でPGS樹脂(MW=12,625、PDI=7.044)中に加え、プレスして1mmのフィルムにし、次に120℃、10torrの圧力において20時間硬化させた。
【0042】
[0048]得られた試験片の引張試験を行ったところ、フィラー濃度を増加させるとヤング率の増加(800kPaまで)、及び0.5から0.3への破断歪みの減少が観察されたことが示された。複合材料はまた、ニートのPGSのキャストフィルムと比べて増加した縫合糸強度も示した。キャストフィルムの縫合糸強度は通常は1.5N未満であるが、実施例1の硬化PGS複合材料に関して観察された最も低い縫合糸強度は2.2で、殆ど50%高かった。
【0043】
実施例2:
[0049]整形外科用途に対する適用性を調べるために、PGSフィラー(<212μmの粒径、架橋前の樹脂のMW=21,597、0.100モル/Lより高い架橋密度、及び(1:1)のグリセロール:セバシン酸の比)を、種々の量(3重量%〜25重量%)のヒドロキシアパタイト(HA)と混合して、微細被覆の不連続のPGSフィラー粒子を形成した。PGSフィラー、PGS樹脂(同じく1:1のグリセロール:セバシン酸の比を有する)、及びリン酸カルシウムフィラー(ヒドロキシアパタイト(HA)及びβ−リン酸三カルシウム(TCP)を含む)の複合材料を成形可能なペーストにした。
【0044】
[0050]実施例2a:30重量%のPGS粉末(212〜850μm)、30重量%のHA、及び40重量%のPGS樹脂;実施例2b:35重量%のPGS粉末(<212μm)、20重量%のHA、及び45重量%のPGS樹脂;実施例2c:50重量%のPGS粉末(212〜850μm)、30重量%のTCP、及び20%のPGS樹脂;並びに実施例2d:40重量%のPGS粉末(<212μm)、30重量%のTCP、及び30重量%のPGS樹脂;を含む種々の複合材料を形成した。
【0045】
実施例3:
[0051]異なる重量比のPGS/PGS複合材料を、ディスペンサーを備えた965μmのノズルを通して押出して、3D印刷用途に対する適用性を調べた。40重量%のフィラー濃度を有する組成物は最も高い見込みを示し、硬化後に完全に保持された構造を有しており;40重量%未満のものはそれらの形状を良好に保持せず;40重量%を超えて70重量%までのものは構造を維持するのに好適であったが、粘度が上昇して押出がより低速であった。フィラー粒子はグリセロール又はオイルで予め湿潤させて、硬化及びこれに関連するその後の押出の困難性を最小にすることができる。
【0046】
実施例4:
[0052]ビタミンB
12を、3%w/wの濃度でPGS樹脂中に装填した。この材料を120℃で48時間硬化させた。得られた熱硬化性樹脂を、抽出法によってフィラー粒子に成形した。約100mgの粒子を複数のバイアル中に配置し、pH=7.4のリン酸緩衝食塩水(PBS)中に浸漬した。所定のインキュベーション時間において、試料のPBSをUV/Visによって試験して放出されたビタミンB
12の量を求め、試料の質量損失も求めた。ビタミンB
12放出及び質量損失の速度は両方とも線形の傾向(それぞれ5.95μg/日及び0.16%/日)を示し、これはフィラーがその表面分解機構によって制御された放出特性を呈示することを示している。
【0047】
[0053]活性成分に関する二段階制御放出機構を実証するために、200gのドープ樹脂を300gのドープ粉末粒子と混合することによって、クルクミンをドープしたPGS粉末粒子をPGS樹脂(5%w/wのビタミンB
12を含む)と60:40の比で混合して、複合材料を生成させた。粉末粒子及び樹脂マトリクスのそれぞれに関するグリセロール:セバシン酸のモル比は1:1であった。試料を120℃及び10torrで15時間硬化させ、1mmのウエハに切断した。試料を個々のバイアル中に配置し、pH=7.4のリン酸緩衝食塩水(PBS)中に浸漬した。所定のインキュベーション時間において、試料のPBSをUV/Visによって試験して放出されたビタミンB
12及びクルクミンの量を求めた。結果は、B
12(1.2%/日)及びクルクミン(0.12%/日)の両方の異なる速度での0次放出を示した。2つの異なる線形放出速度は、複合材料の樹脂部分(より低い架橋密度)と粉末粒子(より高い架橋密度)の間の架橋密度の差に起因する。
【0048】
実施例5:
[0054]溶融したPGSを金型内でキャスト及び硬化させることによって、1ミリのPGS熱硬化性樹脂を生成させた(これには硬化まで約72時間かかった)。同じ寸法のPGS/PGS複合材料(60重量%のPGS粉末/40重量%のPGS樹脂;それぞれ1:1のグリセロール:セバシン酸のモル比)を、金型を用いないで手作業でブロックに成形し、硬化中においてその形状を保持した。これは15時間で完全な硬化を示し、これは、PGS/PGS複合材料を用いるとPGS樹脂に比べて半分未満の時間で同じ最終寸法の熱硬化性樹脂の形態のPGSを製造することができることを示している。これは、少なくとも部分的に、PGS/PGS複合材料中に存在するPGS樹脂が減少したことに起因するものであると考えられる。PGS樹脂は熱硬化性フィラー粒子を薄く被覆するように見え、薄いPGS樹脂フィルムはPGS樹脂の厚い層よりも早く硬化する。
【0049】
実施例6:
[0055]60/40w/wの比のPGS粉末/PGS樹脂(それぞれ1:1のグリセロール:セバシン酸のモル比)を、シリンジポンプを用いて10mL/分でBrabender中に注入した。スクリューを通して約50gの材料を送った後、0.5インチOD/0.25インチIDのチューブダイを通して中空のチューブが上首尾に押出された。同じ複合材料は、0.375インチOD/0.125インチIDのチューブダイを通して同じようにして上首尾に押出された。選択された量のチューブ材をオーブン内で120℃及び10torrにおいて約16時間硬化させた。チューブはオーブン内でその形状を保持し、内壁の厚さは最小の変化を示した。
【0050】
[0056]この同じ60/40w/wの比のPGS粉末/PGS樹脂を、空気シリンダーを用いてBrabender中に注入し、異なるダイを用いて種々の形状/寸法に押出した。シート、チューブ、及びロッドは全て工業スケールで上首尾に押出された。材料のタイプ及び寸法を表1にまとめる。全ての成形物を、真空オーブン内で120℃、10torrにおいて最小で15時間、最大で48時間硬化させることによって更に処理した。成形物は、硬化プロセスの間中それらの構造を維持した。
【0051】
【表1】
【0052】
実施例7:
[0057]また、塩浸出技術を用いて多孔質構造体も得た。55/45のPGS粉末/樹脂の比及び2:1の塩:樹脂の塩/PGS樹脂/PGS粉末混合物をブラベンダー二軸押出機中に注入し、ニートの複合材料構造体と同じように処理した。塩複合材料の1mmのシート及び3/8インチOD/1/8インチIDのチューブが上首尾に押出され、これを硬化させ、次に水中に浸漬して塩を除去して開放気孔を形成した。
【0053】
実施例8:
[0058]塩化カルシウム、塩化ナトリウム、及びPGS粉末を処理して、106μm未満の平均粒径を有する粒子を得た。PGS樹脂複合材料に対して50重量%のフィラーを混合し、球体に成形した。この球体を120℃及び10torrにおいて約16時間硬化させた。同じ粒径の異なるフィラーの中で、PGS/PGS複合材料が球状の形状を維持した唯一のものであった。SEM画像化によって、PGSフィラーは完全に一体化され、一方、NaCl粒子はPGSを撥いているように見え、そしてCaCl
2は粒子の外表面を被覆しているように見え、これは粒径のみでは複合材料を形成するためには十分でなく、上首尾に複合材料を形成するためには樹脂マトリクスと粉末の間の化学的適合性が必要であることを示唆している。
【0054】
実施例9:
[0059]PGSフィラーの粒径を変化させ(<212μm、212〜850μm、及び1〜2mm)、これを用いてPGS樹脂複合材料に対して60重量%のPGSフィラーを形成した。未硬化の複合材料のレオロジーは同等のLVE範囲を示し、これは安定な構造を示している。試料を硬化させて球体にしたところ、最も小さなPGS粉末粒子(例えば<212μm)のみが球状の形状を維持した。しかしながら、全てのPGS/PGS複合材料は均一で可撓性の構造であった。同じ比の400μmのゼラチン/PGS樹脂複合材料も形成した;そのレオロジーは、不安定な構造を表す非常に短いLVE範囲を示した。硬化の後、硬質で脆性のゼラチン/PGS複合材料はその形状を維持していなかった。
【0055】
実施例10:
[0060]0.25インチOD/0.125インチID、及び3ミリOD/2mmIDの寸法のPGS/PGS複合材料押出チューブを、適当な寸法のマンドレル上に配置し、まとめて編組機中に供給した。PGA繊維を用いて押出チューブの上に編組を形成して、構造体の縫合糸保持性を増加させた。また、温和な温度及び圧力を用いて積層して、未硬化の押出シートを、PET、PGA、及びPPから形成された低空隙率及び高空隙率のメッシュ上に固定することによって、PGS/PGS複合材料を編織布中に導入した。
【0056】
実施例11:
[0061]PGS複合材料を、Pseudomonas aeruginosa及びStaphylococcus aureusに対する抗菌活性及び効能に関して試験した。PGS複合材料の表面にバクテリアを接種し、ポリプロピレン対照試料と比較した。24時間のインキュベーション時間の後、PGS複合材料は、Pseudomonas aeruginosa及びStaphylococcus aureusに対して>6.38及び>5.80の対数減少値を示し、これはそれぞれバクテリアカウント数における>99.99996%及び>99.9998%の減少に等しい。
【0057】
実施例12:
[0062]米国公開20160046832に記載されているようにして、二軸非対称遠心混合によって、<212μmの寸法のPGS粉末粒子をゼラチンPGS混合物と60:40の比で配合した。得られた複合材料を1mmのフィルムにプレスし、16時間凍結乾燥した。凍結乾燥したフィルムは良好な機械的強度を示し、多孔質であった。次に、フィルムを真空オーブン内で120℃及び10Torrにおいて15時間更に処理して、水性in vivo条件に耐えることができるフィルムを生成させた。かかるフィルムは、創傷ケアドレッシング材又は軟組織フィラーとして作用させることができる。
【0058】
実施例13:
[0063]PGS粉末/樹脂(60/40wt/wt)を、3ミリのロッド:0.25インチOD/0.125インチIDのチューブ;及び1ミリのシートに押出した。試料を15又は24時間硬化させた。硬化したら、試料を長さ2インチ(チューブ及びロッド)、又はASTM−D638−Vドックボーン(シート)に切断した。試料を、pH=7.4及び37.0℃の0.05M−PBS中に所定時間浸漬した。試料を、時間経過に伴う質量損失、表面モルホロジー(SEM)及び機械的強度(引張に関してはロッド及びシート、圧縮に関してはチューブ)における変化に関して分析した。3つの試料タイプ全てが、質量損失と分解速度の間に直線関係(R
2値>0.99)を示し、これはこれらが表面浸食によって分解したことを示している。更に、機械的試験によって、時間経過に伴う機械的強度(引張又は圧縮)の線形損失が示された。走査電子顕微鏡測定によって、時間経過に伴って試料の表面に限定されて細孔が形成されることが明らかになり、これは更に試料が表面浸食によって分解したことを示している。これらの結果によって、PGS/PGS複合材料がニートの均質なPGS材料の表面浸食特性を保持していることが立証される。
【0059】
実施例14:
[0064]60/40w/wの粉末/樹脂の押出1mmシート複合材料を、筋肉内in vivoウサギモデルにおいて試験した。12匹の雌のニュージーランドホワイトラビットを麻酔にかけて傍脊椎筋を露出させた。筋線維の間に1匹あたり3つのポケットを形成した。ガンマ線滅菌した10×1×1mmの複合材料、水蒸気滅菌した10×1×mmの高密度ポリエチレン(HDPE)(陰性対照)、及び長さ10mmのVicrylPGA縫合糸(陽性対照)を、位置マーカーに沿ってポケットの中に移植した。非吸収性縫合糸で筋膜を縫合し、ステンレススチール創傷クリップで皮膚を縫合した。動物をAAALAC国際認可施設において飼育し、室温、相対湿度、照明サイクル、及び総体的な健康状態を毎日維持/観察した。
【0060】
[0065]移植後2週、4週、8週、及び16週において、3匹の動物を任意に選択して安楽死させ、傍脊椎筋を解剖して緩衝ホルマリン中に固定した。複合材料の試験物品は、4週、8週、及び16週においてほぼ完全又は完全な分解を示した。これは、2週においてHDPEと比べて僅かに刺激性であり、4週、8週、及び16週においてHDPEと比べて非刺激性であった。VicrylPGA縫合糸と比べると、PGS複合材料は全ての時点において非刺激性であった。
【0061】
実施例15:
[0066]オリゴマー形態のPGSをHDIと1:1のHDI:遊離ヒドロキシルの比で反応させることによって、ポリ(グリセロールセバケート)ウレタン(PGSU)を生成させた。得られた物質は熱硬化性ウレタンであった。二軸非対称遠心ミキサーを用いて材料を粉砕して、212ミクロンより小さい粒子を得た。PGSU粉末粒子は、コンシステンシー及び粒子形状に関して標準的なPGS粉末粒子に似ていた。PGSU粉末粒子は、60/40の粉末/樹脂の比でPGS樹脂と配合して安定な複合材料を得ることができる。
【0062】
[0067]上記に本発明の幾つかの態様を記載し及び/又は例示したが、種々の他の態様は上記の開示事項から当業者に明らかになるであろう。したがって、本発明は記載され及び/又は例示された特定の態様に限定されず、添付の請求項の範囲及び精神から逸脱することなく、相当な変更及び修正を行うことができる。
【0063】
[0068]更に、本明細書において用いる「約」という用語は、大きさ、寸法、配合、パラメーター、形状、並びに他の量及び特性は厳密ではなく、且つ厳密である必要はなく、要望に応じて、許容範囲、換算係数、丸め、測定誤差など、及び当業者に公知の他のファクターを反映して概算値、及び/又はより大きいか若しくは小さくてよいことを意味する。一般に、大きさ、寸法、配合、パラメーター、形状、又は他の量若しくは特性は、そのように明確に示されているかどうかにかかわらず「約」又は「概算値」である。非常に異なる寸法、形状、及び大きさの態様が記載されている構成を用いることができることが留意される。
【0064】
[0069]更に、転換語の「含む」、「実質的に構成される」、及び「構成される」は、元の形態及び補正形態の添付の特許請求の範囲において用いる場合には、存在する場合には示されていない更なる特許請求の範囲の構成要素又は工程が1つ又は複数の特許請求の範囲から除外されているものに関する特許請求の範囲を規定する。「含む」という用語は、包含的又は開放型を意図しており、更なる示されていない構成要素、方法、工程、又は材料を排除しない。「構成される」という用語は、特許請求の範囲において規定されているもの、及び材料の場合においては、規定されている1つ又は複数の材料に通常関係する不純物以外の構成要素、工程、又は材料を除外するものである。「実質的に構成される」という用語は、特許請求の範囲を、規定されている構成要素、工程、又は1つ若しくは複数の材料、並びに特許請求されている発明の基礎的及び新規な1つ又は複数の特徴に実質的に影響を与えないものに限定するものである。本発明を具現化するここに記載する全ての材料及び方法は、別の態様においては、「含む」、「実質的に構成される」、及び「構成される」の転換語のいずれかによってより具体的に規定することができる。
【国際調査報告】