特表2019-511372(P2019-511372A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-511372(P2019-511372A)
(43)【公表日】2019年4月25日
(54)【発明の名称】切削インサート
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/20 20060101AFI20190329BHJP
   B23C 5/06 20060101ALI20190329BHJP
【FI】
   B23C5/20
   B23C5/06 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-544839(P2018-544839)
(86)(22)【出願日】2017年2月22日
(85)【翻訳文提出日】2018年10月4日
(86)【国際出願番号】AT2017000009
(87)【国際公開番号】WO2017147630
(87)【国際公開日】20170908
(31)【優先権主張番号】GM42/2016
(32)【優先日】2016年2月29日
(33)【優先権主張国】AT
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】500005837
【氏名又は名称】セラティチット オーストリア ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】ブルチャー,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】プラスト,ヨーゼフ
【テーマコード(参考)】
3C022
【Fターム(参考)】
3C022HH01
3C022HH05
3C022HH13
(57)【要約】
側面の複数の逃げ面(4)により互いに結合された上面(2)および底面(3)を備えた、ほゞ三角形または四角形の底面形状を有する切削インサート(1)であって、少なくとも1つの逃げ面(4)から上面(2)への移行部に1つの切刃(5)が形成されており、この切刃(5)は複数のコーナー切刃(6)の間に延びており、この切刃(5)は逃げ面(4)の側面図において1つの凸形部(51)を有しており、前記切刃(5)の凸形部(51)の両側が凹形湾曲部(52a、52b)と接している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面の複数の逃げ面(4)により互いに結合された上面(2)および底面(3)を備えた、ほゞ三角形または四角形の底面形状を有する切削インサート(1)であって、少なくとも1つの逃げ面(4)から上面(2)への移行部に1つの切刃(5)が形成されており、この切刃(5)は複数のコーナー切刃(6)の間に延びており、さらに、この切刃(5)は逃げ面(4)の側面図において1つの凸形部(51)を有している切削インサートにおいて、前記切刃(5)の凸形部(51)の両側が凹形湾曲部(52a、52b)と接していることを特徴とする切削インサート。
【請求項2】
前記複数の凹形湾曲部(52a、52b)がそれぞれに接するコーナー切刃(6)まで延びていることを特徴とする、請求項1に記載の切削インサート(1)。
【請求項3】
前記凸形部(51)から前記第1の凹形湾曲部(52a)への移行部および前記凸形部(51)から前記第2の凹形湾曲部(52b)への移行部が、それぞれ接線が一致するように形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の切削インサート(1)。
【請求項4】
前記複数の逃げ面(4)から上面(2)への全ての移行部に切刃(5)が形成されていることを特徴とする、請求項1から3の少なくとも1項に記載の切削インサート(1)。
【請求項5】
前記凸形湾曲部(51)が2つのコーナー切刃(6)間で中心を外れた位置にある、すなわち、当該凸形湾曲部(51)の頂点(8)が、切削インサート(1)の使用時に該切削インサート(1)の軌道を基準にして半径方向内側に在るコーナー切刃(6a)の方にずれている位置にある、ことを特徴とする、請求項1から4の少なくとも1項に記載の切削インサート(1)。
【請求項6】
凹形湾曲部(52a、52b)の湾曲半径(R、R)が、凸形湾曲部(51)の湾曲半径(R)の3倍から6倍であることを特徴とする、請求項1から5の少なくとも1項に記載の切削インサート(1)。
【請求項7】
前記複数の切刃(5)が上面(2)の上面図において凸形形状を有していることを特徴とする、請求項1から6の少なくとも1項に記載の切削インサート(1)。
【請求項8】
前記複数の切刃(5)の前記形状が上面(1)の上面図において楕円の一部で形成されていることを特徴とする、請求項7に記載の切削インサート(1)。
【請求項9】
請求項1から8の少なくとも1項に記載の少なくとも1つの切削インサート(1)および1つの工具ホルダー(15)を備えた構成。
【請求項10】
前記少なくとも1つの切削インサート(1)が前記工具ホルダー(15)に、前記凸形湾曲部(51)が当該切削インサート(1)の軌道を基準にして半径方向内側に在るように配設されている、請求項9に記載の構成。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1の前文に記載の特徴を有する切削インサートに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の切削インサートは、いわゆる高速送り切削フライス加工(High Feed Milling)に使用される。これは比較的切削深さが浅く、送り速度が速いフライスである。
【0003】
高速送り切削フライス加工では、例えば、平面をできるだけ効率よく切削加工するために、高速の送り速度と浅い切削深さで加工される。
【0004】
これらの切削インサートは、一般的に三角形または四角形のスローアウェイインサートである。
【0005】
特許文献1から、ほゞ三角形または四角形の底面形状を有し、横側の複数の逃げ面により互いに結合された上面及び底面を有するこの種の切削インサートが知られており、この場合、上面及び/又は底面の、逃げ面との交差により、外向きに凸形に湾曲したそれぞれ3個または4個の切刃が形成されており、これらの切刃はそれぞれ少なくとも1つの円弧および少なくとも1つのほゞ直線状の部分から成り、或るコーナー半径を有するコーナー切刃により互いに結合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】オーストリア実用新案出願公開第12004U1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、改善された切削インサートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1の特徴を有する切削インサートにより解決される。好適な実施形態は従属請求項に記載されている。
【0009】
切刃の凸形部の両側が凹形湾曲部と接していることにより、本質的に、従来技術で知られた切削インサートの場合よりも滑らかな切削を達成することができる。
【0010】
このことは、一つには、公知の切削インサートよりも切刃の接触長さが長くなったことにより説明することができる。本出願の文脈における接触長さとは、ワークピースに実際に食い込む切刃の長さを意味する。凸形部及びこれに接している複数の凹形部におけるこの形状により、例えば直線状の切刃に比べて接触長さが長くなる。長くなった接触長さにより、切削インサートの外側寸法が一定の場合には、局所的により小さい切削力が作用し、より長い区間を排熱のために使用に供することができる。
【0011】
さらに、本発明による切刃の形状により、切削加工される材料に食い込む切刃のほゞ全長にわたってピーリング切削が可能になる。切刃が移動方向に対して垂直でない場合に、ピーリング切削といわれる。ピーリング切削は、より滑らかな切削力の形成及びより小さい切削力を伴う。
【0012】
切削インサートの移動方向において前方にある凸形部は犂(すき)のような作用をし、ピーリング切削を行う。これに続く凹形部は、切削力に関して特に有利となるように切屑を形成する:
【0013】
本出願人の実験により以下のことが判った。すなわち、このように形成された切刃は、ほゞ真直ぐな形を維持する切屑を生じる、すなわち、その切屑は切削インサートの移動方向の反対には巻き上がらない。切屑の巻き上げに必要な力により、切刃の負荷が大きくなる。すなわち、切屑がほゞ真直ぐな形を維持することにより、切刃に作用する力は減少し、切削インサートの寿命が長くなる。
【0014】
「凸形」および「凹形」という表現はここでは、切刃輪郭の側面図における側面への外観に関する。すなわち、凸形部は切削インサートを基準にして上側外向きに湾曲している。
【0015】
この切削インサートの底面形状はほゞ三角形または四角形とすることができる。これは好適には四角形である。というのは、この場合、この切削インサートは4回割出し可能に使用することができるからである。
【0016】
複数の凹形湾曲部が、それぞれに隣接するコーナー切刃まで延びていると好適である。このことは、切刃が常に湾曲していることを意味する。
【0017】
凸形部から第1の凹形部への移行部、および、凸形部から第2の凹形部への移行部がそれぞれ接線が一致するように形成されていると好適である。
【0018】
複数の逃げ面から上面への全ての移行部に切刃が形成されていると好適である。これにより、四角形の切削インサートでは4個の、三角形の切削インサートでは3個の、独立した切刃が提供される。第1の場合には、4回割出し可能な切削インサートと言い、三角形の切削インサートの場合には、3回割出し可能な切削インサートと言う。材料の有効利用という理由から、逃げ面から上面への全ての移行部に努めて切刃が形成される。
【0019】
凸形湾曲部が2つのコーナー切刃の間で中心を外れた位置にあると好適である。すなわち、1つの切刃についてみると、凸形部の頂点はその切刃の中心にはない。そうではなく、凸形湾曲部の頂点は、切削インサート使用時にこの切削インサートの軌道を基準にして半径方向内側に在るコーナー切刃の方にずれている、ないしは、工具ホルダーに関しては、工具ホルダーを基準にして半径方向内側に在るコーナー切刃の方にずれている。これにより、この切削工具使用時に凸形湾曲部が切刃の最初の部位として被切削材料に潜り込むことができる。
【0020】
凹形湾曲部の湾曲半径が凸形湾曲部の湾曲半径の3から6倍であると好適である。すなわち、凹形部の湾曲が凸形部の湾曲よりも小さいと好適である。
【0021】
これら切刃が上面を上から見て凸形の形状を有していると好適である。すなわち、これらの切刃は外向きに湾曲している。この場合、これらの切刃の形状が楕円の一部で形成されていると好適である。
【0022】
1つの工具ホルダーに少なくとも1つの切削インサートを備えた構成についても権利保護を請求する。
【0023】
以下、図面により本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明による切削インサートの斜視図
図2】本発明による切削インサートの側面図
図3】本発明による切削インサートの上面図
図4】本発明による切削インサートの上面図、ワークピースに食い込んでいる状態
図5】本発明による切削インサート及び工具ホルダーから成る構成
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は本発明による切削インサートの斜視図である。この切削インサート1は高速送りフライス、いわゆるHigh Feed Milling、のために形成されている。高速送りフライスの特徴は、浅い切削深さ及び高速の送り速度である。この切削インサート1は、図1の実施例では、四角形の底面形状(いわゆる、Sチップ(S−Platte)として)で形成されている。この代わりに、この切削インサート1を三角形の底面形状(Tチップ(T−Platte)とも呼ばれる、いわゆる三角形チップとして)で形成することもできる。
【0026】
切削インサート1は上面2および底面3を有し、これらの間に複数の側面4がある。少なくとも1つの側面4に1つの逃げ面41が形成されており、これは上面2と接している。逃げ面41の上面2への移行部に1つの切刃5が形成されており、これは複数のコーナー切刃6の間に延びている。これらのコーナー切刃6は或る湾曲半径で丸みを帯びて形成されている。
【0027】
さらに、側面4に当接面42が形成されており、この当接面を介して切削インサート1を(図示されていない)工具ホルダーに嵌め合い結合的に位置決めすることができる。切削インサート1は中心軸Mに関して対称である。
【0028】
好適に、それぞれの逃げ面41の上面2への移行部に切刃5が形成されている。こうして、四角形の底面形状の場合には、4回割出し可能な切削インサート1が得られる。4回割出し可能とは、或る加工に対して4つの独立な切刃5を使用することができる、ことを意味する。この場合、切削インサート1を90°回転することにより、新しい加工ポジションが得られる。すなわち、切削インサートの底面形状が四角形の場合には、4つの切刃5があり、これらが4つのコーナー切刃6で隔てられている。
【0029】
この切削インサート1はさらに締付けねじを収容するための中心孔7を有し、この中心孔を用いて切削インサート1を(図示されていない)工具ホルダーに固定することができる。
【0030】
逃げ面41は、90°よりも小さい角度で上面2と接している。この切削インサート1は上面2から底面3に向かって先細りになっている。
【0031】
切刃5は凸形の上向き湾曲部51を有している。この凸形部51は、左側で第1の凹形部52aに、右側で第2の凹形部52bに移行している。これらの凹形部52a、52bはそれぞれ、凸形部51からそれぞれが接しているコーナー切刃6まで延びている。この方向についての表示は側面図において側面4を基準にしている。
【0032】
この関係は図2でより明確になる。図2は本発明による切削インサート1の側面4を側面図で示す。
【0033】
切刃5は、湾曲半径Rの凸形部51を有している。この凸形部51は切削インサートを基準にして上向き外側に湾曲している。この凸形部51は、視線方向左側の移行点9において湾曲半径Rの第1凹形部52aに、視線方向右側の移行点10において湾曲半径Rの第2凹形部52bに、移行する。
【0034】
この凸形湾曲部51は好適に、2つのコーナー切刃の間で中心を外した位置に在る。この場合、凸形湾曲部51の頂点8は、切削インサート1使用時に切削インサート1の軌道を基準にして半径方向内側に在るコーナー切刃6aの方にずれている。
【0035】
凸形部51から第1凹形部52aへの移行部、および、凸形部51から第2凹形部52bへの移行部は、それぞれ接線が一致するように形成されている。換言すれば、凸形部51の湾曲半径の中心点と、それぞれの凹形部の湾曲半径の中心点、ならびに、それぞれの移行点9、10が一直線上に在る。
【0036】
注記すれば、凸形、凹形ならびに移行点の明細書の表記は切削インサート1の垂直方向投影を基準にしている。
【0037】
凸形部51および凹形部52a、52bをそれぞれ唯一の湾曲半径で仕様決めしなければならない、ことは決してない。それぞれの輪郭が異なる湾曲形状を有することも考えられる。
【0038】
使用に際し、切削インサート1は(図示されていない)ワークピースに対して、加工されるワークピース表面にコーナー切刃6a(側面図で左側のコーナー切刃6)が最初に当接する、ように配設されている。凸形部51の頂点8は、切削インサート1の中心軸Mに対して、当該切刃5の使用中に、加工されるワークピース表面に最初に当接するコーナー切刃6aの方にずれている。
【0039】
凸形部51の頂点8の位置に関する上述した関係は、右方向に回転する工具による加工のための切削インサート1について当てはまる。この切削インサートが左方向回転使用に用いられる場合には、この構成が鏡面対称にされる。すなわち、凸形部51の頂点8は切削インサート1の中心軸Mに対して右方向にずらされる。
【0040】
湾曲半径Rを有する第1凹形部52aは、第1移行点9から、加工されるワークピース表面に最初に当接するコーナー切刃6aまで延びている。
【0041】
第2凹形部52bは、第2移行点10から、切削インサート使用時に半径方向外側に在るコーナー切刃6bまで延びている。半径方向外側に在るこのコーナー切刃6bは、High Feed Millingでは通常はワークピースに食い込まない。
【0042】
使用中に凸形部51は、切削インサート1の移動方向において最も遠くに突き出ている。切削されるワークピースに切削インサートが食い込むときに、凸形部51が最初に食い込み、犂のようなピーリング切削を行う。時間経過と共に、食い込んでいる切刃51の長さが連続的に増加する。このことにより、一様な切削力の構成、および、滑らかな切削が得られる。
【0043】
これに続いている凹形部52a、52bが同様にピーリング切削を行い、さらに、切除された切屑が切削インサートの移動方向とは反対側に巻き上がるのではなく、ほゞ真直ぐな形を保持する、ように作用する。切屑を移動方向とは反対側に巻きあげるには力が必要なので、本発明による切削インサート1を使用する場合に現れる力は、従来の切削インサートの場合よりも小さい。
【0044】
観察された特に有利な切削力についてさらに説明すると、凸形部の両側に続いている凹形部が切屑の横方向への広がりを防ぎ、それにより切削力を低減する。すなわち、凸形部で切屑が犂のように横方向に広げられるのに対し、凹形部は切屑をそれを妨げるように形成する。これにより、切削力を大きくする切屑の横方向の広がりないし拡大を避ける、ないし、低減することができる。これらの凹形部には特に有利な作用がある。
【0045】
逃げ面41は90°より小さい角度で上面2に接している。これにより、この切削インサート1はチップ特有のプラスの逃げ角γを有する。
【0046】
図3は本発明による切削インサート1を上面2の上面図で示す。複数の切刃5が凸形に外向きに湾曲し、部分的に楕円形の輪郭を有している。こうして、第1凹形部52a、凸形部51および第2凹形部52bの輪郭に、それぞれ楕円形の一部を内接させることができる。その代わりに、これらの湾曲部に楕円とは異なる他の形を内接させることができる。
【0047】
明確にするために繰り返すと、冒頭で述べた、凹形部52a、52bの凹形性および凸形部51の凸形性は側面4の側面図を基準にしたものである。その外に、さらに、本図に示すように、凹形部52a、52bおよび凸形部51は上面2の上面図において凸形の(外向きに膨らんだ)形状を示している。この凸形の形状は、中心軸Mに対して垂直な湾曲半径により描くことができる。この輪郭を楕円の一部で表示すると好適である。この表示は上面2への垂直方向投影を基準にしている。
【0048】
上面2から切刃5ないしコーナー切刃6への移行部には、支持斜面11が形成されている。この支持斜面11は振動ならびに切刃5の破断の危険を低減する。
【0049】
さらに上面2に切屑破砕段12が形成されている。この切屑破砕段12は、切削インサート1により削り取られた切屑を制御して排出するのに役立つ。
【0050】
図4は、切削されるワークピース13に食い込んでいる本発明による切削インサート1を示す。
【0051】
切削インサート1の送り方向が塗り潰し矢印で示されている。切削インサート1の回転方向は紙面に垂直であり、観察者の方向を示している。破線の補助線により、切削インサート1の次の食い込みで切除されるワークピース13の切削断面が示唆されている。
【0052】
この切削インサート1は、ワークピース表面14に対し切込み角(Einstellwinkel)κで半径方向に傾斜している。この切込み角κは、ワークピース表面14と、ワークピース表面14を基準にした切削インサート1の最深部と切刃5のワークピース13からの脱出点とを結ぶ線との間で決められる。
【0053】
コーナー切刃6aは、切削後のワークピース表面14の面にあり、送り方向に関して後方に在る。ここに表示されていない工具ホルダーを基準にして、コーナー切刃6aは半径方向内側に在る。
【0054】
切刃5の第1凹形部51aは仕上げ切刃を形成し、凸形部51および第2凹形部52bは主切刃を形成している。この主切刃は材料の主切削を受け持ち、仕上げ切刃は表面を平滑にする。
【0055】
この切削インサート1は好適には粉末冶金法で、通常は圧縮及び焼結で作られている。この切削インサート1は好適には硬質金属またはサーメットで作られている。
【0056】
図5には、高速送り平面フライスのために適切な工具ホルダー15に取り付けられた本発明により作られた複数の切削インサート1の構成が示されている。この例では5つの切削インサート1が配設されている。1つの工具ホルダーにこれより多い、または、少ない切削インサート1を配設することもできる。
【0057】
工具ホルダー15の回転軸Rを中心とする回転方向が矢印で示されている。これらの切削インサート1は半径方向に締め付けられている。
【0058】
この切削インサート1は工具ホルダー15に、凸形湾曲部51が切削インサート1の軌道に関して半径方向で内側に在るように配設されている。この構成により、切削されるべきワークピースに凸形湾曲部51が最初に食い込むことが保証される。
【0059】
この構成は、高速送りのフライス操作、いわゆるHigh Feed Millingに特に適している。本発明による切削インサート1の特性は、工具ホルダー15を備えたこの構成と相俟って、回転軸R(これはスピンドル軸と同じである)方向の主負荷方向を生じさせ、このことにより、特に強い剛性、及び、これに伴い高精度が得られる。
【符号の説明】
【0060】
1 切削インサート
2 上面
3 底面
4 側面
41 逃げ面
42 当接面
5 切刃
51 切刃の凸形部
52a、52b 切刃の凹形部
6 コーナー切刃
7 孔
8 頂点
9、10 移行点
11 支持斜面
12 切屑破砕段
13 ワークピース
14 ワークピースの表面
15 工具ホルダー
γ 逃げ角
κ 切込み角
M 中心軸
R 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】