(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-511483(P2019-511483A)
(43)【公表日】2019年4月25日
(54)【発明の名称】免疫療法のためのSTING活性化ナノワクチン
(51)【国際特許分類】
A61K 39/00 20060101AFI20190329BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20190329BHJP
A61K 39/29 20060101ALI20190329BHJP
A61K 39/145 20060101ALI20190329BHJP
A61K 39/04 20060101ALI20190329BHJP
A61K 39/015 20060101ALI20190329BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20190329BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20190329BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20190329BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20190329BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20190329BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20190329BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20190329BHJP
A61K 9/00 20060101ALI20190329BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20190329BHJP
【FI】
A61K39/00 HZNA
A61K39/00 G
A61K39/12
A61K39/29
A61K39/145
A61K39/04
A61K39/015
A61P35/00
A61P31/12
A61P31/04
A61K39/39
A61K45/00
A61K47/34
A61K47/32
A61K9/00
A61K9/51
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】85
(21)【出願番号】特願2018-545910(P2018-545910)
(86)(22)【出願日】2017年3月2日
(85)【翻訳文提出日】2018年10月26日
(86)【国際出願番号】US2017020451
(87)【国際公開番号】WO2017151922
(87)【国際公開日】20170908
(31)【優先権主張番号】62/302,637
(32)【優先日】2016年3月2日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.Triton
(71)【出願人】
【識別番号】508152917
【氏名又は名称】ザ ボード オブ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティー オブ テキサス システム
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100114889
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ガオ ジンミン
(72)【発明者】
【氏名】チェン ジーチアン
(72)【発明者】
【氏名】ルオ ミン
(72)【発明者】
【氏名】ワン チャオホイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン ホワ
(72)【発明者】
【氏名】カイ ハオチェン
(72)【発明者】
【氏名】ファン ガン
(72)【発明者】
【氏名】フー ヤン−シン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA65
4C076CC27
4C076CC32
4C076CC35
4C076EE13
4C076EE16
4C076EE23
4C076EE49
4C076FF70
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB26
4C085BA06
4C085BA07
4C085BA09
4C085BA51
4C085BA55
4C085BA69
4C085BA89
4C085BB01
4C085CC21
4C085EE01
4C085EE03
4C085FF11
4C085FF17
4C085FF30
(57)【要約】
一部の局面では、本開示は、抗原とpH応答性であるジブロックコポリマーとを含むワクチン組成物を提供する。一部の態様では、これらの組成物は、STING経路および/またはインターフェロン受容体経路を活性化する。一部の態様では、ジブロックコポリマーは、約6から約7.5のpKaを有する。感染性疾患またはがんを処置するためにこれらの組成物を使用する処置方法も、本明細書に提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)抗原と、
(B)pH感受性ジブロックコポリマーと
を含む組成物であって、前記抗原が前記コポリマーによって封入されている、前記組成物。
【請求項2】
前記抗原が、抗がん抗原である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記抗原が、腫瘍関連抗原または腫瘍ネオ抗原である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
腫瘍関連抗原が、ヒトパピローマウイルスE6タンパク質、E7タンパク質、またはそれらのフラグメントである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
腫瘍関連抗原が、メソセリンまたはそのフラグメントである、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
抗がん抗原が、メラノーマ腫瘍関連抗原またはネオ抗原である、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
抗がん抗原が、膀胱、血液、骨、脳、乳房、中枢神経系、子宮頸部、結腸、子宮内膜、食道、胆嚢、胃腸管、生殖器、尿生殖路、頭部、腎臓、喉頭、肝臓、肺、筋肉組織、頸部、口腔もしくは鼻粘膜、卵巣、膵臓、前立腺、皮膚、脾臓、小腸、大腸、胃、精巣、または甲状腺のがん抗原である、請求項3に記載の組成物。
【請求項8】
前記抗原が、ウイルス抗原である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
ウイルス抗原が、B型肝炎ウイルス抗原、インフルエンザウイルス抗原、ウエストナイルウイルス抗原、デングウイルス抗原、エボラウイルス抗原、またはHIV抗原である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記抗原が、細菌抗原である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記抗原が、結核菌(mycobacterium tuberculosis)(Mtb)抗原である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記抗原が、マラリア抗原である、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記ジブロックコポリマーが、水中で、pH滴定によって計算される約6から約7.5のpKaを有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記ジブロックコポリマーから形成されるナノ粒子が、pKa未満のpHで解離している、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記ジブロックコポリマーが、親水性ブロックおよび疎水性ブロックを含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
親水性ブロックが、PEGポリマー、PVPポリマー、またはMPCポリマーである、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記ジブロックコポリマーが、式
によってさらに定義される、請求項1〜16のいずれか一項に記載の組成物:
式中、
R
1は、水素、アルキル
(C≦12)、シクロアルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、置換シクロアルキル
(C≦12)であり;
nは、1から500の整数であり;
R
2およびR
2'は、水素、アルキル
(C≦12)、シクロアルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、または置換シクロアルキル
(C≦12)よりそれぞれ独立して選択され;
R
3は、式
で示される基であり、
式中、
n
xは、1〜10であり;
X
1、X
2、およびX
3は、水素、アルキル
(C≦12)、シクロアルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、または置換シクロアルキル
(C≦12)よりそれぞれ独立して選択され;かつ
X
4およびX
5は、アルキル
(C≦12)、シクロアルキル
(C≦12)、もしくはこれらの基のうちのいずれかの基の置換バージョンよりそれぞれ独立して選択されるか、またはX
4およびX
5は、一緒になって、アルカンジイル
(C≦12)、アルコキシジイル
(C≦12)、アルキルアミノジイル
(C≦12)、もしくはこれらの基のうちのいずれかの基の置換バージョンであり;
xは、1から150の整数であり;
R
4は、式
で示される基であり、
式中、
n
yは、1〜10であり;
X
1'、X
2'、およびX
3'は、水素、アルキル
(C≦12)、シクロアルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、または置換シクロアルキル
(C≦12)よりそれぞれ独立して選択され;かつ
X
4'およびX
5'は、水素、アルキル
(C≦12)、シクロアルキル
(C≦12)、アシル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、置換シクロアルキル
(C≦12)、置換アシル
(C≦12)、色素、もしくは蛍光消光剤よりそれぞれ独立して選択されるか、またはX
4'およびX
5'は、一緒になって、アルカンジイル
(C≦12)、アルコキシジイル
(C≦12)、アルキルアミノジイル
(C≦12)、もしくはこれらの基のうちのいずれかの基の置換バージョンであり;
yは、1から150の整数であり;
R
5は、水素、ハロ、ヒドロキシ、アルキル
(C≦12)、または置換アルキル
(C≦12)であり、
ここで、R
3およびR
4は、R
3およびR
4が同じ基ではないという条件で、ポリマー内に任意の順序で存在することができる。
【請求項18】
下記式としてさらに定義される、請求項17に記載の組成物:
式中、
R
1は、水素、アルキル
(C≦12)、シクロアルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、置換シクロアルキル
(C≦12)であり;
nは、1から500の整数であり;
R
2およびR
2'は、水素、アルキル
(C≦12)、シクロアルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、または置換シクロアルキル
(C≦12)よりそれぞれ独立して選択され;
R
3は、式
で示される基であり、
式中、
X
4およびX
5は、アルキル
(C≦12)、シクロアルキル
(C≦12)、もしくはこれらの基のうちのいずれかの基の置換バージョンよりそれぞれ独立して選択されるか、またはX
4およびX
5は、一緒になって、アルカンジイル
(C≦12)、アルコキシジイル
(C≦12)、アルキルアミノジイル
(C≦12)、もしくはこれらの基のうちのいずれかの基の置換バージョンであり;
xは、1から150の整数であり;
R
4は、式
で示される基であり、
式中、
X
4'およびX
5'は、水素、アルキル
(C≦12)、シクロアルキル
(C≦12)、アシル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、置換シクロアルキル
(C≦12)、置換アシル
(C≦12)、色素、もしくは蛍光消光剤よりそれぞれ独立して選択されるか、またはX
4'およびX
5'は、一緒になって、アルカンジイル
(C≦12)、アルコキシジイル
(C≦12)、アルキルアミノジイル
(C≦12)、もしくはこれらの基のうちのいずれかの基の置換バージョンであり;
yは、0から150の整数であり;
R
5は、水素、ハロ、ヒドロキシ、アルキル
(C≦12)、または置換アルキル
(C≦12)であり、
ここで、R
3およびR
4は、R
3およびR
4が同じ基ではないという条件で、ポリマー内に任意の順序で存在することができる。
【請求項19】
下記式としてさらに定義される、請求項18に記載の組成物:
式中、
R
1は、水素、アルキル
(C≦12)、シクロアルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、置換シクロアルキル
(C≦12)であり;
nは、1から500の整数であり;
R
3は、式
で示される基であり、
式中、
X
4およびX
5は、アルキル
(C≦12)、シクロアルキル
(C≦12)、もしくはこれらの基のうちのいずれかの基の置換バージョンよりそれぞれ独立して選択されるか、またはX
4およびX
5は、一緒になって、アルカンジイル
(C≦12)、アルコキシジイル
(C≦12)、アルキルアミノジイル
(C≦12)、もしくはこれらの基のうちのいずれかの基の置換バージョンであり;
xは、1から150の整数であり;
R
5は、水素、ハロ、ヒドロキシ、アルキル
(C≦12)、または置換アルキル
(C≦12)である。
【請求項20】
R1がアルキル(C≦12)である、請求項17〜19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
nが50から200である、請求項17〜20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
X4がアルキル(C≦12)またはシクロアルキル(C≦12)である、請求項17〜21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
X5がアルキル(C≦12)またはシクロアルキル(C≦12)である、請求項17〜22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
X4およびX5が、一緒になって、アルカンジイル(C≦12)、アルコキシジイル(C≦12)、アルキルアミノジイル(C≦12)、またはこれらの基のうちのいずれかの基の置換バージョンである、請求項17〜23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
X4およびX5が、一緒になって、アルカンジイル(C≦12)または置換アルカンジイル(C≦12)である、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
X4およびX5が、一緒になって、-CH2CH2CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH(CH3)CH2CH2-、または-CH2CH(CH3)CH2CH(CH3)CH2-である、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
xが50から120である、請求項17〜26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
yが0である、請求項17〜27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
X4'およびX5'が、一緒になって、アルカンジイル(C≦12)である、請求項17〜28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
前記ジブロックコポリマーが、PEG114-b-PDEA70、PEG114-b-PEPA70、PEG114-b-PDPA70、PEG114-b-PDBA70、PEG114-b-PD5A70、PEG114-b-PC6A70、PEG114-b-PC7A70、PEG114-b-PC8A70、PEG114-b-PC6S1A70、またはPEG114-b-PC6S2A70である、請求項17〜29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
前記ジブロックコポリマーが、PEG114-b-PEPA70、PEG114-b-PC6A70、PEG114-b-PC7A70、PEG114-b-PC6S1A70、またはPEG114-b-PC6S2A70である、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
溶媒をさらに含む、請求項1〜31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
溶媒が、水または水性緩衝液である、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
アジュバントとSTING経路を活性化する抗原とを含む組成物であって、前記アジュバントがナノ粒子を形成する、前記組成物。
【請求項35】
アジュバントと1種類または複数種類のインターフェロン受容体タンパク質を活性化する抗原とを含む組成物であって、前記アジュバントがナノ粒子を形成する、前記組成物。
【請求項36】
(A)アジュバントと、
(B)抗原と
を含む組成物であって、前記組成物が、50nm未満の粒子サイズ、前記アジュバント上の複数のヘテロシクロアルキル基、および約6.5から7.4のpH転移点を含むナノ粒子であり、前記ヘテロシクロアルキル基中のヘテロ原子のうちの少なくとも1つが窒素原子である、前記組成物。
【請求項37】
粒子サイズが、5nmから50nmである、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
複数のヘテロシクロアルキル基が、10から200個のヘテロシクロアルキル基である、請求項36に記載の組成物。
【請求項39】
ヘテロシクロアルキル基が、アゼパンである、請求項36に記載の組成物。
【請求項40】
pH転移点が、6.5から7.2である、請求項36に記載の組成物。
【請求項41】
(A)請求項1〜40のいずれか一項に記載の組成物と、
(B)賦形剤と
を含む、薬学的組成物。
【請求項42】
注射用に製剤化されている、請求項41に記載の薬学的組成物。
【請求項43】
静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、または皮下注射用に製剤化されている、請求項42に記載の薬学的組成物。
【請求項44】
単位用量として製剤化されている、請求項41〜43のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項45】
第2の活性薬剤をさらに含む、請求項41〜44のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項46】
第2の活性薬剤が、チェックポイント阻害剤である、請求項45に記載の薬学的組成物。
【請求項47】
その必要がある患者における疾患または障害を処置する方法であって、前記患者に請求項1〜46のいずれか一項に記載の組成物の治療有効量を投与する段階を含む、前記方法。
【請求項48】
疾患または障害が、がんである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
がんが、癌腫、肉腫、リンパ腫、白血病、メラノーマ、中皮腫、多発性骨髄腫、またはセミノーマである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
がんが、膀胱、血液、骨、脳、乳房、中枢神経系、子宮頸部、結腸、子宮内膜、食道、胆嚢、胃腸管、生殖器、尿生殖路、頭部、腎臓、喉頭、肝臓、肺、筋肉組織、頸部、口腔もしくは鼻粘膜、卵巣、膵臓、前立腺、皮膚、脾臓、小腸、大腸、胃、精巣、または甲状腺のがんである、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
第2の抗がん療法をさらに含む、請求項47〜50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
第2の抗がん療法が、手術、化学療法、放射線療法、遺伝子療法、または第2の免疫療法である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
第2の抗がん療法が、第2の免疫療法である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
第2の免疫療法が、チェックポイント療法である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
第2の抗がん療法が、放射線療法である、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
放射線療法が2回以上行われるか、前記組成物の投与が2回以上行われるか、または両方が2回以上行われる、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
疾患または障害が、感染性疾患である、請求項47に記載の方法。
【請求項58】
疾患または障害が、ウイルス感染症である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
疾患または障害が、細菌感染症である、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
患者が、哺乳動物である、請求項47〜59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
患者が、ヒトである、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記組成物を1回投与することを含む、請求項47〜61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記組成物を2回以上投与することを含む、請求項47〜61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
その必要がある患者に抗原とアジュバントとを含む組成物を投与する段階を含む、患者におけるSTING経路を活性化する方法であって、前記アジュバントがナノ粒子を形成する、前記方法。
【請求項65】
前記アジュバントが、合成ポリマーである、請求項64に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年3月2日に出願された米国仮出願第62/302,637号の優先権の恩典を主張し、その全内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、米国国立衛生研究所によって授与された助成金番号R01AI093967、R01EB013149、およびR01CA129011の下で政府支援を受けてなされたものである。政府は、本発明にある一定の権利を有する。
【0003】
1. 分野
本開示は、一般的にワクチン組成物の分野に関する。より詳細には、本開示は、がんまたは感染性疾患の免疫療法に使用するためのワクチン組成物に関する。
【背景技術】
【0004】
2. 関連技術の説明
大部分のがん細胞は、わずかに弱く免疫原性であるにすぎない。そうであるから、免疫療法は、免疫系の反応を増大させて適切な免疫応答を生成するためにアジュバントの使用を必要とする。多くの場合に、これは、疾患マーカーに対する抗体の開発を促進するために抗原の送達を伴う。腫瘍特異的T細胞の生成は、がん免疫療法にとって極めて重要である(Rosenberg and Restifo, 2015; Tumeh, et al., 2014)。頑強な適応T細胞応答を達成する大きな課題は、抗原提示細胞(APC)における抗原送達および交差提示と自然免疫刺激との空間時間的編成である(Hubbell, et al., 2009; Abbas, et al., 2014; Chen and Mellman, 2013)。がんおよび感染性疾患に対するワクチンの開発におけるこれらおよび他の課題を考えると、新しいワクチン組成物が必要とされる。
【発明の概要】
【0005】
概要
一部の局面では、本開示は、STING経路を介した疾患または障害に対する免疫応答を促進するために使用され得る組成物を提供する。一部の局面では、本開示は、
(A)抗原と、
(B)pH感受性ジブロックコポリマーと
を含む組成物であって、抗原がコポリマーによって封入されている、組成物を提供する。一部の態様では、抗原は、抗がん抗原である。一部の態様では、抗原は、腫瘍関連抗原または腫瘍ネオ抗原である。一部の態様では、腫瘍関連抗原は、ヒトパピローマウイルスE6タンパク質、E7タンパク質、または
などのそのフラグメントである。他の態様では、腫瘍関連抗原は、メソセリンまたは
などのそのフラグメントである。他の態様では、抗がん抗原は、メラノーマ腫瘍関連抗原または
などのネオ抗原である。一部の態様では、抗がん抗原は、膀胱、血液、骨、脳、乳房、中枢神経系、子宮頸部、結腸、子宮内膜、食道、胆嚢、胃腸管、生殖器、尿生殖路、頭部、腎臓、喉頭、肝臓、肺、筋肉組織、頸部、口腔もしくは鼻粘膜、卵巣、膵臓、前立腺、皮膚、脾臓、小腸、大腸、胃、精巣、または甲状腺のがん抗原である。一部の態様では、抗がん抗原は、中皮腫、メラノーマ、膵臓、卵巣、または子宮頸がん抗原である。
【0006】
他の態様では、抗原はウイルス抗原である。一部の態様では、ウイルス抗原は、HBV表面(HBsAg)、コア(HBcAg)抗原などのB型肝炎ウイルス抗原、またはそのフラグメントである。他の態様では、ウイルス抗原は、赤血球凝集素抗原(HA)、ノイラミニダーゼ抗原(NA)、またはそのフラグメントなどのインフルエンザウイルス抗原である。他の態様では、ウイルス抗原は、エンベロープタンパク質(E)、プレメンブラン(premembrane)タンパク質(prM)、またはそのフラグメントなどのウエストナイルウイルス抗原である。他の態様では、ウイルス抗原は、80Eサブユニットタンパク質またはそのフラグメントなどのデングウイルス抗原である。他の態様では、ウイルス抗原は、糖タンパク質(GP)またはそのフラグメントなどのエボラウイルス抗原である。他の態様では、ウイルス抗原は、HIVエンベロープタンパク質gp41、gp120、またはそのフラグメントなどのHIV抗原である。他の態様では、抗原は、組換えAg85A、Ag85B、ESAT6、TB10.4、またはそのフラグメントなどの結核菌(mycobacterium tuberculosis)(Mtb)抗原のような細菌抗原である。他の態様では、抗原は、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)のスポロゾイト周囲タンパク質(CSP)、スポロゾイト肝臓期抗原(SALSA)、メロゾイト表面タンパク質(MSP)、またはそのフラグメントなどのマラリア抗原である。
【0007】
一部の態様では、ジブロックコポリマーは、水中で、pH滴定によって計算される約6から約7.5のpK
aを有する。一部の態様では、ジブロックコポリマーから形成されるナノ粒子は、pK
a未満のpHで解離している。一部の態様では、ジブロックコポリマーは、親水性ブロックおよび疎水性ブロックを含む。一部の態様では、親水性ブロックは、PEGポリマー、PVPポリマー、またはMPCポリマーである。一部の態様では、親水性ブロックは、PEGポリマーである。一部の態様では、疎水性ブロックは、約6から約7.5のpK
aを有するアミン基を含む。一部の態様では、疎水性ブロックは、アミン基がプロトン化されると親水性になる。一部の態様では、アミン基は、環状アミン基である。一部の態様では、ジブロックコポリマーは、下記式
によってさらに定義され、
式中、
R
1は、水素、アルキル
(C≦12)、シクロアルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、置換シクロアルキル
(C≦12)であり;
nは、1から500の整数であり;
R
2およびR
2'は、水素、アルキル
(C≦12)、シクロアルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、または置換シクロアルキル
(C≦12)よりそれぞれ独立して選択され;
R
3は、式
で示される基であり;
式中、
n
xは、1〜10であり;
X
1、X
2、およびX
3は、水素、アルキル
(C≦12)、シクロアルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、または置換シクロアルキル
(C≦12)よりそれぞれ独立して選択され;かつ
X
4およびX
5は、アルキル
(C≦12)、シクロアルキル
(C≦12)、もしくはこれらの基のうちのいずれかの基の置換バージョンよりそれぞれ独立して選択されるか、またはX
4およびX
5は、一緒になって、アルカンジイル
(C≦12)、アルコキシジイル
(C≦12)、アルキルアミノジイル
(C≦12)、もしくはこれらの基のうちのいずれかの基の置換バージョンであり;
xは、1から150の整数であり;
R
4は、式
で示される基であり;
式中、
n
yは、1〜10であり;
X
1'、X
2'、およびX
3'は、水素、アルキル
(C≦12)、シクロアルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、または置換シクロアルキル
(C≦12)よりそれぞれ独立して選択され;かつ
X
4'およびX
5'は、水素、アルキル
(C≦12)、シクロアルキル
(C≦12)、アシル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、置換シクロアルキル
(C≦12)、置換アシル
(C≦12)、色素、もしくは蛍光消光剤よりそれぞれ独立して選択されるか、またはX
4'およびX
5'は、一緒になって、アルカンジイル
(C≦12)、アルコキシジイル
(C≦12)、アルキルアミノジイル
(C≦12)、もしくはこれらの基のうちのいずれかの基の置換バージョンであり;
yは、0から150の整数であり;
R
5は、水素、ハロ、ヒドロキシ、アルキル
(C≦12)、または置換アルキル
(C≦12)であり、
ここで、R
3およびR
4は、R
3およびR
4が同じ基ではないという条件で、ポリマー内に任意の順序で存在することができる。一部の態様では、ジブロックコポリマーは、下記式
としてさらに定義され、
式中、
R
1は、水素、アルキル
(C≦12)、シクロアルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、置換シクロアルキル
(C≦12)であり;
nは、1から500の整数であり;
R
2およびR
2'は、水素、アルキル
(C≦12)、シクロアルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、または置換シクロアルキル
(C≦12)よりそれぞれ独立して選択され;
R
3は、式
で示される基であり、
式中、
X
4およびX
5は、アルキル
(C≦12)、シクロアルキル
(C≦12)、もしくはこれらの基のうちのいずれかの基の置換バージョンよりそれぞれ独立して選択されるか、またはX
4およびX
5は、一緒になって、アルカンジイル
(C≦12)、アルコキシジイル
(C≦12)、アルキルアミノジイル
(C≦12)、もしくはこれらの基のうちのいずれかの基の置換バージョンであり;
xは、1から150の整数であり;
R
4は、式
で示される基であり、
式中、
X
4'およびX
5'は、水素、アルキル
(C≦12)、シクロアルキル
(C≦12)、アシル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、置換シクロアルキル
(C≦12)、置換アシル
(C≦12)、色素、もしくは蛍光消光剤よりそれぞれ独立して選択されるか、またはX
4'およびX
5'は、一緒になって、アルカンジイル
(C≦12)、アルコキシジイル
(C≦12)、アルキルアミノジイル
(C≦12)、もしくはこれらの基のうちのいずれかの基の置換バージョンであり;
yは、0から150の整数であり;
R
5は、水素、ハロ、ヒドロキシ、アルキル
(C≦12)、または置換アルキル
(C≦12)であり、
ここで、R
3およびR
4は、R
3およびR
4が同じ基ではないという条件で、ポリマー内に任意の順序で存在することができる。一部の態様では、ジブロックコポリマーは、下記式
としてさらに定義され、
式中、
R
1は、水素、アルキル
(C≦12)、シクロアルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、置換シクロアルキル
(C≦12)であり;
nは、1から500の整数であり;
R
3は、式
で示される基であり、
式中、
X
4およびX
5は、アルキル
(C≦12)、シクロアルキル
(C≦12)、もしくはこれらの基のうちのいずれかの基の置換バージョンよりそれぞれ独立して選択されるか、またはX
4およびX
5は、一緒になって、アルカンジイル
(C≦12)、アルコキシジイル
(C≦12)、アルキルアミノジイル
(C≦12)、もしくはこれらの基のうちのいずれかの基の置換バージョンであり;
xは、1から150の整数であり;
R
4は、式
で示される基であり、
式中、
X
4'およびX
5'は、水素、アルキル
(C≦12)、シクロアルキル
(C≦12)、アシル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、置換シクロアルキル
(C≦12)、置換アシル
(C≦12)、色素、もしくは蛍光消光剤よりそれぞれ独立して選択されるか、またはX
4'およびX
5'は、一緒になって、アルカンジイル
(C≦12)、アルコキシジイル
(C≦12)、アルキルアミノジイル
(C≦12)、もしくはこれらの基のうちのいずれかの基の置換バージョンであり;
yは、0から15の整数であり;
R
5は、水素、ハロ、ヒドロキシ、アルキル
(C≦12)、または置換アルキル
(C≦12)であり、
但し、R
3およびR
4は、同じ基ではないことを条件とする。一部の態様では、ジブロックコポリマーは、下記式
としてさらに定義され、
式中、
R
1は、水素、アルキル
(C≦12)、シクロアルキル
(C≦12)、置換アルキル
(C≦12)、置換シクロアルキル
(C≦12)であり;
nは、1から500の整数であり;
R
3は、式
で示される基であり、
式中、
X
4およびX
5は、アルキル
(C≦12)、シクロアルキル
(C≦12)、もしくはこれらの基のうちのいずれかの基の置換バージョンよりそれぞれ独立して選択されるか、またはX
4およびX
5は、一緒になって、アルカンジイル
(C≦12)、アルコキシジイル
(C≦12)、アルキルアミノジイル
(C≦12)、もしくはこれらの基のうちのいずれかの基の置換バージョンであり;
xは、1から150の整数であり;
R
5は、水素、ハロ、ヒドロキシ、アルキル
(C≦12)、または置換アルキル
(C≦12)であり、
但し、R
3およびR
4は、同じ基ではないことを条件とする。
【0008】
一部の態様では、R
1は、メチルなどのアルキル
(C≦12)である。一部の態様では、nは、50から200である。一部の態様では、nは、75から150である。一部の態様では、nは、114である。
【0009】
一部の態様では、X
4は、アルキル
(C≦12)またはシクロアルキル
(C≦12)である。一部の態様では、X
4は、エチル、イソプロピル、n-プロピル、n-ブチル、またはn-ペンチルなどのアルキル
(C≦12)である。一部の態様では、X
4は、アルキル
(C1-3)である。一部の態様では、X
5は、アルキル
(C≦12)またはシクロアルキル
(C≦12)である。一部の態様では、X
5は、エチル、イソプロピル、n-プロピル、n-ブチル、またはn-ペンチルなどのアルキル
(C≦12)である。一部の態様では、X
4は、アルキル
(C1-3)である。一部の態様では、X
4およびX
5は、一緒になって、アルカンジイル
(C≦12)、アルコキシジイル
(C≦12)、アルキルアミノジイル
(C≦12)、またはこれらの基のうちのいずれかの基の置換バージョンである。一部の態様では、X
4およびX
5は、一緒になって、アルカンジイル
(C≦12)または置換アルカンジイル
(C≦12)である。一部の態様では、X
4およびX
5は、一緒になって、-CH
2CH
2CH
2CH
2CH
2-、-CH
2CH
2CH
2CH
2CH
2CH
2-、-CH
2CH
2CH
2CH
2CH
2CH
2CH
2-、-CH
2CH
2CH(CH
3)CH
2CH
2-、または-CH
2CH(CH
3)CH
2CH(CH
3)CH
2-である。
【0010】
一部の態様では、xは、50から120である。一部の態様では、xは、60から100である。一部の態様では、yは、0である。他の態様では、yは、1、2、3、4、または5である。一部の態様では、X
4'は、蛍光色素などの色素または蛍光消光剤である。一部の態様では、X
4'は、アルキル
(C≦12)である。一部の態様では、X
4'およびX
5'は、一緒になって、アルカンジイル
(C≦12)である。一部の態様では、X
5'は、水素である。一部の態様では、X
5'は、アルキル
(C≦12)である。一部の態様では、ジブロックコポリマーは、PEG
114-b-PDEA
70、PEG
114-b-PEPA
70、PEG
114-b-PDPA
70、PEG
114-b-PDBA
70、PEG
114-b-PD5A
70、PEG
114-b-PC6A
70、PEG
114-b-PC7A
70、PEG
114-b-PC8A
70、PEG
114-b-PC6S1A
70、またはPEG
114-b-PC6S2A
70である。一部の態様では、ジブロックコポリマーは、PEG
114-b-PEPA
70、PEG
114-b-PC6A
70、PEG
114-b-PC7A
70、PEG
114-b-PC6S1A
70、またはPEG
114-b-PC6S2A
70である。
【0011】
一部の態様では、組成物は、溶媒をさらに含む。一部の態様では、溶媒は、水である。一部の態様では、溶媒は、リン酸緩衝食塩水(PBS)などの水性緩衝液である。一部の態様では、組成物は、STING経路を活性化する。一部の態様では、組成物は、インターフェロン受容体経路を活性化する。
【0012】
別の局面では、本開示は、アジュバントとSTING経路を活性化する抗原とを含む組成物を提供し、アジュバントは、ナノ粒子を形成する。
【0013】
なおさらに別の局面では、本開示は、アジュバントと1種類または複数種類のインターフェロン受容体タンパク質を活性化する抗原とを含む組成物を提供し、アジュバントは、ナノ粒子を形成する。
【0014】
なお別の局面では、本開示は、
(A)アジュバントと、
(B)抗原と
を含む組成物を提供し、ここで、組成物は、50nm未満の粒子サイズ、アジュバント上の複数のヘテロシクロアルキル基(ヘテロシクロアルキル基中のヘテロ原子のうちの少なくとも1つは、窒素原子である)、および約6.5から7.4のpH転移点を含むナノ粒子である。一部の態様では、粒子サイズは、5nmから50nmである。一部の態様では、複数のヘテロシクロアルキル基は、10から200個のヘテロシクロアルキル基である。一部の態様では、複数のヘテロシクロアルキル基は、40から160個のヘテロシクロアルキル基である。一部の態様では、ヘテロシクロアルキル基は、アゼパンである。一部の態様では、pH転移点は、6.5から7.2である。一部の態様では、pH転移点は、6.8から7.0である。
【0015】
なおさらに別の局面では、本開示は、
(A)本明細書に記載の組成物と、
(B)賦形剤と
を含む薬学的組成物を提供する。一部の態様では、薬学的組成物は、注射用に製剤化されている。一部の態様では、薬学的組成物は、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、または皮下注射用に製剤化されている。一部の態様では、薬学的組成物は、単位用量として製剤化されている。
【0016】
一部の態様では、薬学的組成物は、第2の活性薬剤をさらに含む。一部の態様では、第2の活性薬剤は、チェックポイント阻害剤である。一部の態様では、チェックポイント阻害剤は、PD-1阻害剤である。一部の態様では、PD-1阻害剤は、抗PD-1抗体である。抗PD-I抗体は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、BMS936559、MPDL328OA、またはピディリズマブである。
【0017】
なお別の局面では、本開示は、その必要がある患者における疾患または障害を処置する方法であって、患者に本明細書記載の組成物の治療有効量を投与する段階を含む方法を提供する。
【0018】
一部の態様では、疾患または障害は、がんである。一部の態様では、がんは、癌腫、肉腫、リンパ腫、白血病、メラノーマ、中皮腫、多発性骨髄腫、またはセミノーマである。一部の態様では、がんは、膀胱、血液、骨、脳、乳房、中枢神経系、子宮頸部、結腸、子宮内膜、食道、胆嚢、胃腸管、生殖器、尿生殖路、頭部、腎臓、喉頭、肝臓、肺、筋肉組織、頸部、口腔もしくは鼻粘膜、卵巣、膵臓、前立腺、皮膚、脾臓、小腸、大腸、胃、精巣、または甲状腺のがんである。一部の態様では、がんは、メラノーマ、中皮腫、または子宮頸がんである。
【0019】
一部の態様では、該方法は、第2の抗がん療法をさらに含む。一部の態様では、第2の抗がん療法は、手術、化学療法、放射線療法、遺伝子療法、または第2の免疫療法である。一部の態様では、第2の抗がん療法は、第2の免疫療法である。一部の態様では、第2の免疫療法は、チェックポイント療法である。一部の態様では、免疫療法は、PD-1の阻害剤である。一部の態様では、免疫療法は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピディリズマブ、BMS936559、またはMPDL328OAである。他の態様では、第2の抗がん療法は、放射線療法である。一部の態様では、放射線療法が2回以上行われるか、組成物の投与が2回以上行われるか、または両方が2回以上行われる。
【0020】
他の態様では、疾患または障害は、感染性疾患である。一部の態様では、疾患または障害は、マラリアである。一部の態様では、疾患または障害は、HIV、B型肝炎、エボラ、デング、またはウエストナイルウイルスなどのウイルス感染症である。他の態様では、疾患または障害は、結核などの細菌感染症である。他の態様では、疾患または障害は、自己免疫疾患である。
【0021】
一部の態様では、患者は、哺乳動物である。一部の態様では、患者は、ヒトである。一部の態様では、該方法は、組成物を1回投与することを含む。他の態様では、該方法は、組成物を2回以上投与することを含む。
【0022】
なおさらに別の局面では、本開示は、その必要がある患者に抗原とアジュバントとを含む組成物を投与する段階を含む、患者におけるSTING経路を活性化する方法であって、アジュバントがナノ粒子を形成する、方法を提供する。一部の態様では、アジュバントは、合成ポリマーである。
【0023】
本明細書に使用される「1つの(a)」または「1つの(an)」は、1つまたは複数を意味し得る。「含む」という語と共に使用される場合、本特許請求の範囲に使用される「1つの(a)」または「1つの(an)」という語は、1つまたは1つ超を意味し得る。
【0024】
特許請求の範囲における「または」という用語の使用は、選択肢のみを表すと明白に示されないかぎり、または選択肢が相互排他的でないかぎり、「および/または」を意味するために使用されるものの、本開示は、選択肢のみと「および/または」とを表す定義を支持する。本明細書に使用される「別の」は、少なくとも2番目またはそれ以降を意味し得る。
【0025】
本出願にわたり、「約」という用語は、値が、該値を決定するために採用されている装置もしくは方法について誤差の固有の変動、または試験対象の間に存在する変動を含むことを示すために使用される。
【0026】
本開示の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになる。しかし、詳細な説明および具体例は、本開示の好ましい態様を示すものの、単に例示として与えられていることを理解すべきである。それは、この詳細な説明から、本開示の精神および範囲内の様々な変更および改変が当業者に明らかになるからである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
以下の図面は、本明細書の一部分を形成しており、本開示のある特定の局面をさらに実証するために含まれるものである。本開示は、本明細書に提示される具体的な態様の詳細な説明と共にこれらの図面のうちの1つまたは複数を参照することにより、より十分に理解され得る。
【0028】
(
図1A)PC7A NPは、頑強な抗原特異的CTLおよびTh1応答を誘導する。(
図1A)強いOVA特異的CTL応答を生成するポリマー構造についてスクリーニングするためのCFSE法の概略図である。モデル抗原としてOVA(10μg)を使用し、異なるポリマーNP(30μg)中に負荷した。
(
図1B)PC7A NPは、頑強な抗原特異的CTLおよびTh1応答を誘導する。(
図1B)異なるNP群(1群n=3)におけるOVA特異的CTL応答の定量的比較により、PC7A NPが最良の候補として同定された。
図1B〜Dに、3つの独立した実験からの代表的なデータを平均±s.e.mとして表す。
(
図1C)PC7A NPは、頑強な抗原特異的CTLおよびTh1応答を誘導する。異なるワクチン群によって誘導される、IgG1(
図1C)およびIgG2c(
図1D)のOVA特異的産生。PC7A NPは、各部類において公知のアジュバントと匹敵するまたはそれよりも良好な幅広いCTL、Th1およびTh2応答を産生した。
図1B〜Dに、3つの独立した実験からの代表的なデータを平均±s.e.mとして表す。
(
図1D)PC7A NPは、頑強な抗原特異的CTLおよびTh1応答を誘導する。異なるワクチン群によって誘導される、IgG1(
図1C)およびIgG2c(
図1D)のOVA特異的産生。PC7A NPは、各部類において公知のアジュバントと匹敵するまたはそれよりも良好な幅広いCTL、Th1およびTh2応答を産生した。
図1B〜Dに、3つの独立した実験からの代表的なデータを平均±s.e.mとして表す。
(
図2)
図2A〜G。PC7A NPは、APCにおける抗原送達および交差提示を改善し、CD8 T細胞応答を刺激する。(
図2A)C57BL/6マウス(n=5)の尾基部にAF647-OVA-PC7A NPを皮下注射した24時間後の、リンパ節内部の3つのAPCサブタイプのOVA陽性細胞の定量。(
図2B)BMDCにおける抗原交差提示およびCD8
+ T細胞のインビトロ活性化の検出の概略図。(
図2C)AF647-OVA単独、AF647-OVA-PC7A NPまたはAF647-OVA-PD5A NPと共に4時間インキュベーション後のフローサイトメトリーによるBMDCにおけるAF647-OVAの取込みの定量。BMDC中のAF647-OVA
+細胞の平均蛍光強度(MFI)を決定した(n=3)。(
図2D)PC7AまたはPD5A NPによって誘導されたBMDC中のH-2K
b上の抗原提示レベル(n=3)。(
図2E)異なるOVA-NPで処置されたBMDCと共にOT-I CD8
+ T細胞をインキュベートした後のOT-I CD8
+ T細胞によるIFN-γ分泌(n=3)。(
図2F)脾臓のCD8
+ T細胞のH-2k
b/SIINFEKLテトラマー染色の代表的なフロードットプロット。(
図2G)フローサイトメトリーによりOVA(SIINFEKL)特異的CD8
+ T細胞のパーセンテージを測定した(n=4)。
図2A、2C〜Eおよび2Gに、3つの独立した実験からの代表的なデータを平均±s.e.m.として表す。統計的有意性をスチューデントのt検定により計算した。***P<0.001、**P<0.01、*P<0.05。NS、有意でない。
(
図3)
図3A〜F。PC7A NPは、流入領域リンパ節におけるAPCを活性化し、STING依存性適応免疫応答を刺激する。(
図3A)ナノワクチンの注射の24時間後の鼠径部リンパ節におけるCD8α
+ DCおよびCD8α
- DC上の共刺激因子CD86の発現(1群n=5)。マクロファージおよびB細胞のデータを
図7Dに示す。(
図3B〜C)qPCRによる、注射部位でのインターフェロン刺激遺伝子(IRF7およびCXCL10)の発現レベルの測定(n=6)。(
図3D)異なるノックアウトマウス群におけるOVA特異的CTL応答の定量的比較(1群n=5)。血清中のIgG1(
図3E)およびIgG2c(
図3F)抗体の力価をELISAによって決定した(1群n=5)。データを平均±s.e.m.として表す。統計的有意性をスチューデントのt検定により計算した。***P<0.001、**P<0.01、*P<0.05。NS、有意でない。
(
図4)
図4A〜G。PC7Aナノワクチンは、担腫瘍マウスにおける腫瘍成長を阻害し、生存期間を延長する。(
図4A)PC7Aナノワクチンの必要最低限設計の概略図。(
図4B〜C)B16-OVA腫瘍細胞1.5×10
5個を接種されたC57BL/6マウス(1群n=10)をOVAペプチド、PC7Aナノワクチン、CpG、ポリ(I:C)およびアラム+ペプチド(0.5μg)で処置した。担腫瘍マウスの腫瘍成長(
図4B)およびカプラン-マイヤー生存曲線(
図4C)を示した。(
図4D)B16F10メラノーマの腫瘍成長阻害研究。B16F10腫瘍細胞1.5×10
5個を接種されたC57BL/6マウス(1群n=10)を、矢印に示す特定の時点でPC7A NP中の腫瘍関連抗原(Gp100
21-41、Trp1
214-237、Trp2
173-196)のカクテルで処置した。(
図4E)C57BL/6マウスにおけるMC38結腸がんの腫瘍成長阻害研究。MC38腫瘍細胞1.0×10
6個を接種されたマウス(1群n=10)を、PC7A NP中のネオ抗原(Reps1
P45A、Adpgk
R304M、Dpagt1
V213L)のカクテルで処置し、10および15日目に、確立した腫瘍(100〜200mm
3)にナノワクチンを投与した。HPV腫瘍モデルにおいて、TC-1腫瘍細胞1.5×10
5個を腫瘍接種後にC57BL/6マウス(1群n=10)における腫瘍成長阻害(
図4F)および生存データ(
図4G)を解析した。
図4Bおよび4D〜Fでは、データを平均±s.e.m.として表す。統計的有意性をスチューデントのt検定によって計算した。***P<0.001、**P<0.01、*P<0.05。
図4Cおよび4Gにおける生存解析についての統計的有意性は、ログランク検定によって計算した。***P<0.001、**P<0.01、*P<0.05。
(
図5)
図5A〜C。超pH感受性(UPS)のPEG-b-PRブロックコポリマーの合成およびpH滴定を示す図である。(
図5A)原子移動ラジカル重合(ATRP)法を用いたブロックコポリマーの合成の概略図。PEG-Br(MW=5kD)を阻害剤として使用し、異なる第三級アミン側鎖を有するメタクリレートをモノマーとして使用した。(
図5B)ライブラリーからのコポリマーの特徴付け。溶出液としてTHFを使用するGPCによって数平均分子量(Mn)を決定した;4M NaOHを使用するポリマー溶液のpH滴定によってpKaを決定した。動的光散乱を用いてサイズを測定した。平均±s.d。(
図5C)UPSコポリマーのpH滴定により、pH4から8のpH特異的緩衝作用が示された。環系列について、環のサイズ(すなわち、6、7および8)および六員環上のメチル置換数(例えば、0、1および2)の両方を検討した。類似の疎水性強度(例えば、PC7A vs. PC6S1A;PC8A vs. PC6S2A)を有するコポリマーは、異なるポリマー構造およびCTL応答にかかわらず、類似のpKa値を共有する(
図1B参照)。
(
図6)
図6A〜D。物理的混合手順によるPC7A NP中のOVAの効率的な負荷を示す図である。(
図6A)ミセルナノ粒子中のOVAの負荷効率を限外濾過法により測定した。(
図6B)PC7AミセルへのOVAの負荷安定性を、5%ウシ胎仔血清を含有するPBS緩衝液(pH7.4)中で異なる時点で試験した。(
図6C)色素コンジュゲート型PEG-b-PC7Aコポリマーの合成の概略図。Cy3.5を色素の例として使用した。(
図6D)Cy3.5標識PC7A、AF647-OVAおよびPC7A+OVA混合物の蛍光スペクトルであって、混合物群においてPC7A NP内部でのOVA負荷を示す強い蛍光共鳴電子移動(FRET)効果が示された蛍光スペクトル。(
図6E)PBS緩衝液(pH=7.4)中に系列希釈されたCy3.5コンジュゲート型PC7Aと共にAF647-OVA(100μg/mL)をインキュベートし、点線に、ナノワクチンの作業濃度およびそのFRET効率を示した。
図6A〜Bに、3つの独立した実験からの代表的なデータを平均±s.e.mとして表す。
(
図7)
図7A〜D。PC7A NPは、流入領域リンパ節における抗原送達を改善し、LN炎症およびAPC成熟を誘導する。(図>7A)C57BL/6マウス(n=3)の尾基部に皮下注射後のリンパ器官におけるICG標識PC7A NPの蓄積の近赤外撮像。24時間後に、リンパ節および主要器官を収集し、エクスビボ撮像により他の器官よりもリンパ節におけるPC7A NPの高い蓄積が示された。(
図7B)C57BL/6マウスから切除した流入領域リンパ節の中線断面(最大表面)は、OVA単独と比べてPC7A NPによって腫脹した節を示した。(
図7C)24時間での流入領域リンパ節における総細胞数の定量。PC7A NP群における腫脹したリンパ節および増加した細胞数は、自然免疫刺激を示す(n=5)。(
図7D)ナノワクチン注射(1群n=5)の24時間後の鼠径部リンパ節CD8α
+ DC、CD8α
- DC、マクロファージおよびB細胞におけるCD86発現の定量的比較。
図7C〜Dに、3つの独立した実験からの代表的なデータを平均±s.e.m.として表す。統計的有意性を、スチューデントのt検定によって計算した。***P<0.001、**P<0.01、*P<0.05。NS、有意でない。
(
図8)
図8A〜B。PC7A NPが酸性pHで膜を破壊することを示す。(
図8A)異なるpHの培地中でPC7AまたはPD5Aコポリマーを用いて処理後の赤血球の溶血分析。(
図8B)培地中へのヘモグロビンの放出により溶血パーセンテージをPC7A NPまたはPD5A NPについてのpHの関数として定量した(n=3)。両方のポリマー濃度を20μg/mLに制御した。
図8Bに、3つの独立した実験からの代表的なデータを平均±s.e.mとして表す。
(
図9A)PC7A NPはSTING経路によりI型IFN誘導遺伝子を活性化する。マウス骨髄由来マクロファージ(BMDM、
図9A)およびヒトTHP-1単球細胞(
図9B)を、表示の濃度および時間でPC7A NPと共にインキュベートし、続いてCXCL10 mRNAをqPCRにより測定した(n=3)。リポフェクタミンによりトランスフェクトされたcGAMP、STING活性化因子を陽性対照として使用した。結果は、両方の細胞株におけるCXCL10のSTING依存性発現を示している。
図9A〜Cおよび
図9I〜Jに、3つの独立した実験からの代表的なデータを平均±s.e.m.として表す。統計的有意性をスチューデントのt検定によって計算した。***P<0.001、**P<0.01、*P<0.05。NS、有意でない。
(
図9B)PC7A NPはSTING経路によりI型IFN誘導遺伝子を活性化する。マウス骨髄由来マクロファージ(BMDM、
図9A)およびヒトTHP-1単球細胞(
図9B)を、表示の濃度および時間でPC7A NPと共にインキュベートし、続いてCXCL10 mRNAをqPCRにより測定した(n=3)。リポフェクタミンによりトランスフェクトされたcGAMP、STING活性化因子を陽性対照として使用した。結果は、両方の細胞株におけるCXCL10のSTING依存性発現を示している。
図9A〜Cおよび
図9I〜Jに、3つの独立した実験からの代表的なデータを平均±s.e.m.として表す。統計的有意性をスチューデントのt検定によって計算した。***P<0.001、**P<0.01、*P<0.05。NS、有意でない。
(
図9C)PC7A NPはSTING経路によりI型IFN誘導遺伝子を活性化する。(
図9C)BMDMにDNアーゼIを1時間トランスフェクトし、続いてPC7A NPで処理した。CXCL10 mRNAをqPCRにより測定した(n=3)。
図9A〜Cおよび
図9I〜Jに、3つの独立した実験からの代表的なデータを平均±s.e.m.として表す。統計的有意性をスチューデントのt検定によって計算した。***P<0.001、**P<0.01、*P<0.05。NS、有意でない。
(
図9D)PC7A NPはSTING経路によりI型IFN誘導遺伝子を活性化する。(
図9D)PC7A NPで処理されたTHP-1細胞は、ストレプトアビジン修飾ダイナビーズ(dynabead)によりSTINGタンパク質のプルダウンを招いた。PD5A-ビオチンおよびPC7Aのみ(ビオチン不含)の対照は、STINGのいかなるプルダウンも示さなかった。
(
図9E)PC7A NPはSTING経路によりI型IFN誘導遺伝子を活性化する。(
図9E)精製されたヒトSTING C末端ドメイン(CTD、139〜379AA)の直接プルダウンアッセイ。PC7A-ビオチンコポリマーはSTING CTDをプルダウンしたが、他のコポリマーまたはPC7Aのみの対照をプルダウンしなかった。
(
図9F)PC7A NPはSTING経路によりI型IFN誘導遺伝子を活性化する。(
図9F)等温熱量測定(ITC)実験によるSTING CTDへのPC7Aの結合の滴定。本来の滴定曲線(上)および積分データ(下)を示す。PC7A-ウシ血清アルブミン(BSA)のITCを陰性対照として、cGAMP-STING CTDを陽性対照として使用した。
(
図9G)PC7A NPはSTING経路によりI型IFN誘導遺伝子を活性化する。(
図9G)ITC実験における結合親和性の概要。PC7AとBSAとの間で無視できる結合が見られた。
(
図9H)PC7A NPはSTING経路によりI型IFN誘導遺伝子を活性化する。(
図9H)異なるコポリマー(150μg、n=5)の皮下注射後の脾臓細胞におけるIDO酵素活性の測定。PEI-DNA(30μg)を陽性対照として使用した。
図9Hに、2つの独立した実験からの代表的なデータを平均±s.e.m.として表す。統計的有意性をスチューデントのt検定によって計算した。***P<0.001、**P<0.01、*P<0.05。NS、有意でない。
(
図9I)PC7A NPはSTING経路によりI型IFN誘導遺伝子を活性化する。(
図9I)ヒトTHP-1細胞および(
図9J)マウスBMDM細胞を異なるNPで処置し、続いてIDO-1 mRNAおよびCXCL10 mRNAをqPCRにより測定した(n=3)。PEI-DNA、ポリ(I:C)およびcGAMPを陽性対照として使用した。
図9A〜Cおよび
図9I〜Jに、3つの独立した実験からの代表的なデータを平均±s.e.m.として表す。
(
図9J)PC7A NPはSTING経路によりI型IFN誘導遺伝子を活性化する。(
図9I)ヒトTHP-1細胞および(
図9J)マウスBMDM細胞を異なるNPで処置し、続いてIDO-1 mRNAおよびCXCL10 mRNAをqPCRにより測定した(n=3)。PEI-DNA、ポリ(I:C)およびcGAMPを陽性対照として使用した。
図9A〜Cおよび
図9I〜Jに、3つの独立した実験からの代表的なデータを平均±s.e.m.として表す。
(
図10A)APCは、PC7A NPを取込み、STING経路をインビボで活性化する主要細胞集団である。PC7A NP-Cy5をC57BL/6マウスの尾基部に皮下注射し、PBSを注射されたマウスを対照として含めた(n=5)。24時間後に、鼠径部LNおよび皮下組織を単離し、単一細胞懸濁液にした。細胞を最初に生存細胞についてゲート設定し、次に白血球(CD45+)および非白血球(CD45-)として分けた。PC7A NPの蛍光により、NP処置マウスからの細胞をNP+集団およびNP-集団に分けた。これらのサブセット中のpIRF3の発現およびDCマーカーCD11cを評価した。(
図10A)LN中のCD45+NP+細胞およびCD45+NP-細胞の比較評価。
図10Aおよび10Cに、2つの独立した実験からの代表的なデータを平均±s.e.mとして表す。統計的有意性をスチューデントのt検定によって計算した。***P<0.001。NS、有意でない。
(
図10B)APCは、PC7A NPを取込み、STING経路をインビボで活性化する主要細胞集団である。PC7A NP-Cy5をC57BL/6マウスの尾基部に皮下注射し、PBSを注射されたマウスを対照として含めた(n=5)。24時間後に、鼠径部LNおよび皮下組織を単離し、単一細胞懸濁液にした。細胞を最初に生存細胞についてゲート設定し、次に白血球(CD45+)および非白血球(CD45-)として分けた。PC7A NPの蛍光により、NP処置マウスからの細胞をNP+集団およびNP-集団に分けた。これらのサブセット中のpIRF3の発現およびDCマーカーCD11cを評価した。(
図10B)フローサイトメトリーによるLN中のNP+細胞およびNP-細胞の表現型分析。
(
図10C)APCは、PC7A NPを取込み、STING経路をインビボで活性化する主要細胞集団である。PC7A NP-Cy5をC57BL/6マウスの尾基部に皮下注射し、PBSを注射されたマウスを対照として含めた(n=5)。24時間後に、鼠径部LNおよび皮下組織を単離し、単一細胞懸濁液にした。細胞を最初に生存細胞についてゲート設定し、次に白血球(CD45+)および非白血球(CD45-)として分けた。PC7A NPの蛍光により、NP処置マウスからの細胞をNP+集団およびNP-集団に分けた。これらのサブセット中のpIRF3の発現およびDCマーカーCD11cを評価した。(
図10C)皮下組織からのCD45+細胞およびCD45-細胞の両方におけるNP蓄積細胞(NP+)の評価。
図10Aおよび10Cに、2つの独立した実験からの代表的なデータを平均±s.e.mとして表す。統計的有意性をスチューデントのt検定によって計算した。***P<0.001。NS、有意でない。
(
図10D)APCは、PC7A NPを取込み、STING経路をインビボで活性化する主要細胞集団である。PC7A NP-Cy5をC57BL/6マウスの尾基部に皮下注射し、PBSを注射されたマウスを対照として含めた(n=5)。24時間後に、鼠径部LNおよび皮下組織を単離し、単一細胞懸濁液にした。細胞を最初に生存細胞についてゲート設定し、次に白血球(CD45+)および非白血球(CD45-)として分けた。PC7A NPの蛍光により、NP処置マウスからの細胞をNP+集団およびNP-集団に分けた。これらのサブセット中のpIRF3の発現およびDCマーカーCD11cを評価した。(
図10D)フローサイトメトリーによる皮下組織中のCD45+NP-細胞およびCD45+ NP+細胞の表現型分析。
(
図11)
図11A〜F。PC7Aナノワクチンは、腫瘍成長を阻害し、生存期間を延長する。C57BL/6マウス(1群n=10)に最初にB16-OVA腫瘍細胞1.5×10
5個を接種し、続いてOVAペプチド(0.5μg)、OVAp-PD5A NP、PC7A単独またはOVAp-PC7A NPで処置した。OVApを有さないPC7A NP単独は、腫瘍成長阻害(
図11A)または動物の生存曲線(
図11B)に観察可能な効果を有さなかった。(
図11C)ネオ抗原-PC7A NPにより処置されたB16F10の腫瘍成長阻害。B16F10腫瘍細胞1.5×10
5個を接種されたC57BL/6マウス(1群n=10)を、矢印に示す時点につきPC7A NP(各ペプチド0.5μg、ポリマー30μg)中のネオ抗原(Obsl1
T1764M、Kif18b
K739N、Def8
R255G)のカクテルで処置した。(
図11D)C57BL/6マウス(1群n=3)にE7ペプチド(E7p、0.5μg)およびE7p-PC7A NPを免疫した。インビボ細胞傷害性殺傷アッセイを用いてE7特異的細胞傷害性を測定した。(
図11E)ナイーブマウスまたはTC-1モデルにおける腫瘍接種の82日後の無腫瘍マウス(1群n=10)をTC-1腫瘍細胞1×10
6個で誘発した。手術の30日後に、マウスをTC-1腫瘍細胞1×10
6個で再誘発した。ナノワクチン治癒群のメモリーT細胞は、60日かけて腫瘍の成長を完全に阻害した。(
図11F)TC-1腫瘍細胞1.5×10
5個を接種され、10日目および15日目(腫瘍が約100mm
3で確立した)にナノワクチンで処置されたC57BL/6マウス(1群n=10)における腫瘍成長の阻害曲線。
図11Aおよび11C〜Fに、データを平均±s.e.m.として表す。統計的有意性をスチューデントのt検定によって計算した。***P<0.001、**P<0.01、*P<0.05。NS、有意でない。
図11Bの生存分析についての統計的有意性は、ログランク検定によって計算した。***P<0.001。NS、有意でない。
(
図12A)2つの腫瘍モデルにおけるナノワクチンおよび抗PD-1抗体の相乗効果。(
図12A)B16-OVA腫瘍細胞1.5×10
5個を接種されたC57BL/6マウスを、OVAペプチド、PC7Aナノワクチン、抗PD-1単独および抗PD-1とPC7Aナノワクチンとの併用により処置した。担腫瘍マウスのカプラン-マイヤー生存曲線を示した。
図12Aにおける生存分析についての統計的有意性を、ログランク検定によって計算した。*P<0.05。
(
図12B)2つの腫瘍モデルにおけるナノワクチンおよび抗PD-1抗体の相乗効果。(
図12B)TC-1腫瘍細胞1.5×10
5個を接種され、続いてE7p(0.5μg)、PC7Aナノワクチン、および抗PD-1とナノワクチンとの併用により処置されたC57BL/6マウス(1群n=10)における長期腫瘍成長阻害曲線。
図12Bに、データを平均±s.e.mとして表す。統計的有意性を、スチューデントのt検定によって計算した。**P<0.01。
(
図12C)2つの腫瘍モデルにおけるナノワクチンおよび抗PD-1抗体の相乗効果。(
図12C)OVAp単独、OVAp-PC7A NP、およびOVAp-PC7A NPと抗PD-1との併用についての個別の腫瘍成長曲線。
(
図12D)2つの腫瘍モデルにおけるナノワクチンおよび抗PD-1抗体の相乗効果。(
図12B)B16-OVA腫瘍におけるPD-L1の発現プロファイル。PD-L1は、アイソタイプ対照と比べてMDSC(CD11b+Gr1+)およびマクロファージ(CD11b+F4/80+)に高発現していたが、一方でDC(CD11c+)およびB16-OVAメラノーマ細胞(CD45-)における発現は中程度である。
(
図12E)2つの腫瘍モデルにおけるナノワクチンおよび抗PD-1抗体の相乗効果。(
図12E)E7p単独、E7p-PC7A NP、およびE7p-PC7A NPと抗PD-1との併用についての個別の腫瘍成長曲線。データは、E7p-PC7A NP群およびE7p-PC7A NP/抗PD-1群においてそれぞれマウスの50%および90%が無腫瘍で生存したことを示している。
(
図12F)2つの腫瘍モデルにおけるナノワクチンおよび抗PD-1抗体の相乗効果。(
図12F)TC-1腫瘍におけるPD-L1の発現プロファイル。PD-L1の発現は、アイソタイプ対照と比べてDC、MDSC、およびマクロファージにおいて高発現していたが、一方でTC-1腫瘍細胞における発現は中程度である。
(
図13)PC7Aナノワクチンは、ポリ(I:C)対照と比較して低い全身サイトカインレベルを示した。C57BL/6マウス(1群n=5)にOVA 10μg+PC7A NP 150μgまたは同用量のポリ(I:C)を皮下注射した。血清中の全身サイトカインおよびケモカインを、ビーズに基づくBio-Plex Pro Mouse Cytokine 23-plex Assayにより経時的に測定した。IL-1α、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-9、IL-10、IL-12(p70)、IL-13、IL-17、GM-CSFは、全ての群でいかなる有意差も示さなかったので、本図に含めなかった。データを平均±s.e.m.として表す。統計的有意性をスチューデントのt検定によって計算した。***P<0.001、**P<0.01、*P<0.05。
(
図14)PC7Aナノワクチンの安全性評価のための主要器官の組織学的分析。OVA 10μg+PC7A NP 150μgまたは同用量のポリ(I:C)を反復注射後のC57BL/6マウスからの主要器官の代表的なH&E切片。2回目の注射の24時間後にマウス(1群n=5)を屠殺した。ポリ(I:C)群の肝臓は、脂肪性肝炎を指し示す風船化肝細胞を示した。脾臓、腎臓および心臓は、全ての群で異常を示さなかった。
(
図15)インビボ細胞傷害性殺傷アッセイによる異なるNP群におけるOVA特異的CTL応答の比較。OVA
257-264ペプチドをそれぞれパルスしていないまたはパルスしたCFSE
highおよびCFSE
low標識脾臓細胞の1:1混合物の注射後の免疫済みマウスの血液試料をフローサイトメトリーによって分析して、CFSE
high細胞およびCFSE
low細胞のパーセンテージを決定した。各群について3つの独立した実験からの代表的なフローサイトメトリーのプロット。各欄の値は、血液中の特異的溶解の平均パーセンテージ±s.e.m.を表す。
(
図16A)CTL応答に関するペプチド抗原の共有結合性コンジュゲーションと比べた物理的負荷の評価。(
図16A)抗原負荷のためのPEG-b-PC7Aミセルナノ粒子の表面またはコアへのペプチドコンジュゲーションという2つの合成経路。
(
図16B)CTL応答に関するペプチド抗原の共有結合性コンジュゲーションと比べた物理的負荷の評価。(
図16B)3つの異なる戦略から製造されたナノワクチンの概略図。
(
図16C)CTL応答に関するペプチド抗原の共有結合性コンジュゲーションと比べた物理的負荷の評価。(
図16C)異なるナノワクチン群(1群n=3)の間のOVA特異的CTL応答の定量的比較。OVAp-ポリ(I:C)を対照として使用した。データは、平均±s.e.m.を表す。***P<0.001、**P<0.01、*P<0.05、NS、有意でない。
(
図17)
図17A〜E。インフルエンザウイルスH1N1 HA抗原およびPC7Aナノ粒子をワクチン接種されたマウスは抗HA抗体を産生し、H1N1インフルエンザウイルスによる致死的感染から防御されている。
図17A〜Cについて、ワクチン接種されたマウスから追加免疫の1週間後に採集された血清中の循環抗H1N1 HA総IgG(
図17A)レベルをELISAにより測定した。ワクチン接種されたマウス血清中の循環抗H1N1 HA IgG1(
図17B)レベルおよびIgG2b(
図17C)レベルも測定した。B6 WTマウス(n=5/群)にH1N1 PR8 HAを単独でまたはアラムもしくはPC7Aのいずれかと組み合わせてi.m.で初回抗原刺激した。初回刺激の10日後に追加免疫の用量を投与した。
図17D〜Eについて、追加免疫の1.5週間後にインフルエンザA/PR/8/34(H1N1)ウイルス10×MLD
50(致死率50%についての致死用量中央値)をマウスに鼻腔内誘発してワクチン接種した。体重(
図17D)および生存率(
図17E)を2週間毎日追跡した。
(
図18)放射線療法(RT)と併用したナノワクチンは、確立したHPV腫瘍の退縮を誘導することができる。TC-1細胞2×10
5個をC57BL/6マウス(n=8/群)の背部に皮下注射した。その後、腫瘍が約200mm
3のサイズに達した14日後に、腫瘍に20Gyを照射した。ワクチン接種処置については、電離放射線と同じ日に、ナノワクチン(PC7A 30μg+ペプチドE7
43-62
0.5μg)をマウス背部の尾基部に皮下注射した。6日後に、マウスに同用量のナノワクチンの別の注射で追加免疫した。続いて、盲検化された調査者がデジタルキャリパーを使用して腫瘍成長を1週間に2回測定し、0.5×長さ×幅
2として計算した。腫瘍サイズが1500mm
3に達したときにマウスを屠殺した。ナノワクチンと放射線療法との併用により、放射線照射またはナノワクチン単独処置よりも有意に改善した治療的相乗性が示された。
【発明を実施するための形態】
【0029】
詳細な説明
一部の局面では、本開示は、がんまたは感染性疾患などの疾患抗原に対する免疫応答を生成するために使用され得るワクチン組成物を提供する。これらのワクチン組成物は、増強した免疫応答へと導くSTINGおよび/またはインターフェロン受容体経路をインビボで活性化し得る。一部の態様では、ワクチン組成物は、抗原およびpH感受性ジブロックコポリマーを含む。これらの組成物は、がんまたは感染性疾患などの様々な疾患および障害の処置に使用され得る。
【0030】
I. ワクチンの成分
本明細書に記載の組成物は、1種類または複数種類の免疫刺激剤を含み得る。免疫刺激剤には、抗原または抗原性化合物、免疫調節物質、APC、アジュバントまたは担体が非限定的に含まれる。参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,980,912号に記載されているキトサンを含む多糖などの他の免疫強化化合物も、本開示の組成物を用いた使用のために企図される。複数種類(1種類超)の抗原が相互に架橋結合される(例えば重合される)場合がある。抗体生成またはワクチン接種のための小型ペプチドの使用も、免疫原性担体タンパク質へのペプチドのコンジュゲーションを必要とする場合がある。
【0031】
当業者は、腫瘍関連ペプチドに対する免疫応答が生成したかどうかを判定するための様々なアッセイを知っている。語句「免疫応答」には、細胞性免疫応答および体液性免疫応答の両方が含まれる。ELISAなどの様々なBリンパ球アッセイ、末梢血リンパ球(PBL)を使用する増殖アッセイ、サイトカイン産生アッセイおよび抗体産生アッセイが周知である。参照により本明細書に組み入れられるBenjaminiら(1991)を参照されたい。
【0032】
A. 抗原
一部の局面では、本開示は、組成物に1種類または複数種類の抗原成分を提供する。抗原は、免疫応答を促進する物質であり、それにより、抗体が該物質に対して特異的に生成される。免疫原性がより大きいことで、免疫系が適切な免疫応答を容易に発生する物質もあれば、抗原に対する抗体を生成するのに十分な免疫応答を生成するために助けを要する物質もある。大部分のがんは、抗原に対する抗体の生成を強化するために追加的な活性化を要する場合がある。抗原のいくつかの非限定的な例には、がん特異的表面タンパク質またはがん細胞によって過剰発現される表面タンパク質のタンパク質またはそのフラグメントが含まれる。追加的に、抗原は、表1に含まれるペプチドまたはタンパク質のうちの1種類であり得る。
【0033】
(表1)タンパク質抗原およびペプチド抗原のいくつかの非限定的な例の配列
【0034】
追加的に、いくつかの異なる感染性疾患、毒素、およびがんを含む特定の適応のための抗原が、本明細書において企図される。
【0035】
i. 細菌病原体
抗生剤を開発する数十年の努力にかかわらず、世界中で重大な病気および死亡を引き起こす数百の細菌病原体が、グラム陽性菌およびグラム陰性菌の科の両方にある。実際に、抗生物質耐性は、細菌疾患におけるますます大きな問題である。
【0036】
疾患負担が最高である細菌疾患の1つは、結核菌という細菌によって引き起こされる結核であり、結核は、主にサハラ以南のアフリカにおいて1年に約200万人を死亡させる。結核菌抗原のいくつかの非限定的な例には、組換えAg85A、Ag85B、ESAT6、TB10.4、または参照により本明細書に組み入れられるOttenhoffおよびKaufmann、2012によって教示されるものを含むそのフラグメントが含まれる。病原性細菌は、連鎖球菌(Streptococcus)およびシュードモナス(Pseudomonas)などの細菌によって起こる可能性がある肺炎ならびに赤痢菌(Shigella)、カンピロバクター(Campylobacter)、およびサルモネラ(Salmonella)などの細菌によって起こる可能性がある食中毒などの、他の世界的に重要な疾患の原因になる。病原性細菌は、破傷風、腸チフス、ジフテリア、梅毒、およびハンセン病などの感染症も引き起こす。
【0037】
条件的病原性細菌は、細菌の血液侵入を助長する創傷、または免疫機能の低下などの、ある特定の状態でのみ病原性である。例えば、ブドウ球菌(Staphylococcus)または連鎖球菌は、正常なヒトのフローラの一部でもあり、通常は疾患を起こさずに皮膚上または鼻の中に存在するが、潜在的に皮膚感染、肺炎、髄膜炎、ならびに致死的敗血症、全身炎症応答産生性ショック、広範な血管拡張および死亡でさえ引き起こす可能性がある。緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、バークホルデリア-セノセパシア(Burkholderia cenocepacia)、およびトリ型結核菌(Mycobacterium avium)などの一部の細菌種は、日和見病原体であり、主に免疫抑制を被るまたは嚢胞性線維症を患う人々に疾患を引き起こす。
【0038】
他の細菌は、他の生体の細胞内でのみ成長および繁殖することが可能な偏性細胞内寄生体(例えば、クラミドフィラ(Chlamydophila)、エーリキア(Ehrlichia)、リケッチア(Rickettsia))のように、ヒトに疾患を常に引き起こす。さらに、細胞内細菌の感染は、潜伏期間中のように無症候性の場合がある。細胞内細菌の例は、リケッチアである。リケッチアの1種はチフスを起こし、一方で別の種はロッキー山紅斑熱を引き起こす。偏性細胞内寄生体の別の門であるクラミジア(Chlamydia)は、肺炎または尿路感染を引き起こす可能性がある種を含み、冠動脈心疾患に関与し得る。ミコバクテリウム(Mycobacterium)、ブルセラ(Brucella)、フランシセラ(Francisella)、レジオネラ(Legionella)、およびリステリアは、通性(非偏性)細胞内寄生体であるが、細胞内に存在することができる。これらの細菌についての抗原が本組成物に使用され得る。
【0039】
ii. ウイルス病原体
防御性抗体が入手可能な任意のウイルス病原体のためにワクチンが開発され得る。これらには、アデノウイルス、トリインフルエンザ、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、麻疹、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、ライノウイルス、およびSARS-CoVなどの呼吸器ウイルス、コクサッキーウイルスなどの胃腸ウイルス(gastro-enteric virus)、ポリオウイルスおよびロタウイルスなどのエンテロウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスなどの肝炎ウイルス、ウシウイルス性下痢ウイルス(代替)、単純ヘルペス1型、単純ヘルペス2型、ヒトサイトメガロウイルス、および水痘帯状疱疹ウイルスなどのヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)、およびヒト免疫不全ウイルス2型(HIV-2)などのレトロウイルス、ならびにデングウイルス、ハンタウイルス、出血熱ウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、天然痘ウイルス、エボラウイルス、狂犬病ウイルス、ウエストナイルウイルスおよび黄熱ウイルスが含まれる。いくつかの非限定的なウイルス抗原には、B型肝炎ウイルスHBV表面抗原およびコア抗原、インフルエンザウイルス赤血球凝集素抗原およびノイラミニダーゼ抗原、ウエストナイルウイルスエンベロープタンパク質(E)およびプレメンブランタンパク質(prM)、デングウイルス80Eサブユニットタンパク質、エボラウイルス糖タンパク質、HIVエンベロープタンパク質gp41およびgp120、またはそのフラグメントが含まれる。他のHIV抗原は、参照により本明細書に組み入れられるde Taeyeら、2016に見出すことができる。これらのウイルス病原体のいずれかについての抗原は、本組成物に使用され得る。
【0040】
iii. 真菌病原体
病原性真菌は、ヒトまたは他の生体に疾患を引き起こす真菌である。以下は、ほんの数少ない例である。
【0041】
カンジダ(Candida)種は、免疫無防備状態の宿主(例えば、移植患者、AIDS罹患者、およびがん患者)に日和見感染を引き起こすことが最も公知の重要なヒト病原体である。感染は、処置が難しく、非常に重篤になる可能性がある。アスペルギルス(Aspergillus)は、以下の3つの主な方法で疾患を引き起こす可能性があり、実際に引き起こす:マイコトキシンの産生による;アレルギー誘発応答の誘導による;および局所または全身感染による。後者の2つの分類に関して、宿主の免疫状態が重要である。最も一般的な病原体種は、アスペルギルス-フミガーツス(Aspergillus fumigatus)およびアスペルギルス-フラバス(Aspergillus flavus)である。クリプトコッカス-ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)は、HIV感染およびAIDSを有する患者において重症型の髄膜炎および髄膜脳炎を引き起こす可能性がある。大部分のクリプトコッカス種は土壌中に生息し、ヒトに疾患を引き起こさない。クリプトコッカス-ラウレンティイ(Cryptococcus laurentii)およびクリプトコッカス-アルビダス(Cryptococcus albidus)は、免疫力が低下した状態のヒト患者に中等度から重度の疾患を時により引き起こすことが公知である。クリプトコッカス-ガッティイ(Cryptococcus gattii)は、アフリカおよびオーストラリアの大陸の熱帯地域に特有であり、免疫力が低下していない人々に疾患を引き起こす可能性がある。ヒストプラズマ-カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)は、ヒト、イヌおよびネコにヒストプラズマ症を引き起こす可能性がある。ニューモシスチス-ジロベシイ(Pneumocystis jirovecii)(またはニューモシスチス-カリニ(Pneumocystis carinii))は、未熟児、高齢者、移植患者およびAIDS患者などの免疫系が脆弱な人々に肺炎の一形態を引き起こす可能性がある。スタキボトリス-チャルタルム(Stachybotrys chartarum)または「クロカビ」は、呼吸器損傷および重度の頭痛を引き起こす可能性がある。これは、慢性的に湿気のある地方の屋内で起こることが多い。これらの真菌からの抗原は、本明細書に記載の組成物に含まれる場合がある。
【0042】
iv. 寄生虫
寄生虫は、特に世界中の低開発国で大きな健康上の問題を提示する。重大な病原性寄生虫には、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、ランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)、腟トリコモナス(Trichomonas vaginalis)、熱帯熱マラリア原虫、四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)、卵形マラリア原虫(Plasmodium ovale)、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、ガンビアトリパノソーマ(Trypanosoma gambiense)、ローデシアトリパノソーマ(Trypanosoma rhodesiense)、クルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)、ヒト回虫(Ascaris lumbricoides)、旋毛虫(Trichinella spiralis)、トキソプラズマ-ゴンディイ(Toxoplasma gondii)、ドノバンリーシュマニア(Leishmania donovani)、熱帯リーシュマニア(Leishmania tropica)、ブラジルリーシュマニア(Leishmania braziliensis)、マンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)、日本住血吸虫(Schistosoma japonicum)、ビルハルツ住血吸虫(Schistosoma haematobium)、およびニューモシスチス-ジロベシ(Pneumocystis jiroveci)が含まれる。マラリア寄生虫由来抗原には、熱帯熱マラリア原虫のスポロゾイト周囲タンパク質(CSP)、スポロゾイト肝臓期抗原(SALSA)、メロゾイト表面タンパク質(MSP)、またはそのフラグメントおよび参照により本明細書に組み入れられるCarvalhoら、2002に記載されているものが、非限定的に含まれ得る。これらの寄生虫からの抗原は、本明細書に記載の組成物に含まれ得る。
【0043】
v. 毒素
毒素は、先進国および低開発国の両方で集団を大きく脅かすものである。生物毒素は、本質的に生物性であり、すなわち、生物毒素は、細菌、昆虫、ヘビおよび植物を含む多くの生きた生物によって産生される。これらには、クモ、サソリ、スズメバチ、またはアリなどの多種多様な昆虫毒素、多くが神経毒から血液毒であるヘビ毒素、シアノ毒素、クラゲ毒素、リシン、ボツリヌス毒素、破傷風トキソイドおよびマイコトキシンが含まれる。
【0044】
他方で環境毒素は、元来は非生物性で、天然または人造であり得る毒素である。これらには、フタレート、ポリ塩化ビフェニル(PCB)、駆除薬、ダイオキシン、アスベスト、塩素、クロロホルム、揮発性有機化合物(VOC)などの工業用および農業用化学物質、ならびに鉛、カドミウムおよびヒ素などの重金属が含まれる。免疫応答を促進するためにこれらの毒素のいずれかが本組成物に使用され得る。
【0045】
vi. がん
多様な異なるペプチド、タンパク質フラグメント、またはタンパク質が、本組成物中に抗原として使用され得る。いくつかの非限定的な例は、5T4、707-AP(707アラニンプロリン)、9D7、AFP(α-胎児タンパク質)、AlbZIP HPG1、α5β1-インテグリン、α5β6-インテグリン、α-メチルアシル-補酵素Aラセマーゼ、ART-4(T細胞により認識される腺がん抗原4)、B7H4、BAGE-1(B抗原)、BCL-2、BING-4、CA15-3/CA27-29、CA19-9、CA72-4、CA125、カルレチキュリン、CAMEL(メラノーマ上CTL認識抗原)、CASP-8(カスパーゼ-8)、カテプシンB、カテプシンL、CD19、CD20、CD22、CD25、CD30、CD33、CD40、CD52、CD55、CD56、CD80、CEA(がん胎児性抗原)、CLCA2(カルシウム活性化塩素チャネル-2)、CML28、コアクトシン(Coactosin)様タンパク質、コラーゲンXXIII型、COX-2、CT-9/BRD6(ブロモドメイン精巣特異タンパク質)、Cten(C末端テンシン様タンパク質)、サイクリンB1、サイクリンD1、cyp-B(シクロフィリンB)、CYPB1(チトクロムP450 1B1)、DAM-10/MAGE-B1(分化抗原メラノーマ10)、DAM-6/MAGE-B2(分化抗原メラノーマ6)、EGFR/Her1、EMMPRIN(腫瘍細胞関連細胞外マトリックスメタロプロテイナーゼ誘導因子)、EpCam(上皮細胞接着分子)、EphA2(エフリンA型受容体2)、EphA3(エフリンA型受容体3)、ErbB3、EZH2(Zesteホモログエンハンサー2)、FGF-5(線維芽細胞増殖因子5)、FN(フィブロネクチン)、Fra-1(Fos関連抗原1)、G250/CAIX(糖タンパク質250)、GAGE-1(G抗原1)、GAGE-2(G抗原2)、GAGE-3(G抗原3)、GAGE-4(G抗原4)、GAGE-5(G抗原5)、GAGE-6(G抗原6)、GAGE-7b(G抗原7b)、GAGE-8(G抗原8)、GDEP(前立腺差次的発現遺伝子)、GnT-V(N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV)、gp100(糖タンパク質100kDa)、GPC3(グリピカン3)、HAGE(ヘリカーゼ抗原)、HAST-2(ヒト印環腫瘍-2)、ヘプシン、Her2/neu/ErbB2(ヒト上皮受容体-2/神経性)、HERV-K-MEL、HNE(ヒト好中球エラスターゼ)、ホメオボックスNKX3.1、HOM-TES-14/SCP-1、HOM-TES-85、HPV-E6、HPV-E7、HST-2、hTERT(ヒトテロメラーゼ逆転写酵素)、iCE(腸カルボキシルエステラーゼ)、IGF-1R、IL-13Ra2(インターロイキン13受容体α2鎖)、IL-2R、IL-5、未熟ラミニン受容体、カリクレイン2、カリクレイン4、Ki67、KIAA0205、KK-LC-1(北九州肺がん抗原1)、KM-HN-1、LAGE-1(L抗原)、リビン(livin)、MAGE-A1(メラノーマ抗原A1)、MAGE-A10(メラノーマ抗原A10)、MAGE-A12(メラノーマ抗原A12)、MAGE-A2(メラノーマ抗原A2)、MAGE-A3(メラノーマ抗原A3)、MAGE-A4(メラノーマ抗原A4)、MAGE-A6(メラノーマ抗原A6)、MAGE-A9(メラノーマ抗原A9)、MAGE-B1(メラノーマ抗原B1)、MAGE-B10(メラノーマ抗原B10)、MAGE-B16(メラノーマ抗原B16)、MAGE-B17(メラノーマ抗原B17)、MAGE-B2(メラノーマ抗原B2)、MAGE-B3(メラノーマ抗原B3)、MAGE-B4(メラノーマ抗原B4)、MAGE-B5(メラノーマ抗原B5)、MAGE-B6(メラノーマ抗原B6)、MAGE-C1(メラノーマ抗原C1)、MAGE-C2(メラノーマ抗原C2)、MAGE-C3(メラノーマ抗原C3)、MAGE-D1(メラノーマ抗原D1)、MAGE-D2(メラノーマ抗原D2)、MAGE-D4(メラノーマ抗原D4)、MAGE-E1(メラノーマ抗原E1)、MAGE-E2(メラノーマ抗原E2)、MAGE-F1(メラノーマ抗原F1)、MAGE-H1(メラノーマ抗原H1)、MAGEL2(MAGE様2)、マンマグロビンA、MART-1/Melan-A(T細胞により認識されるメラノーマ抗原1/メラノーマ抗原A)、MART-2(T細胞により認識されるメラノーマ抗原2)、マトリックスタンパク質22、MC1R(メラノコルチン1受容体)、M-CSF(マクロファージコロニー刺激因子遺伝子)、メソセリン、MG50/PXDN、MMP11(M期リンタンパク質11)、MN/CA IX抗原、MRP-3(多剤耐性関連タンパク質3)、MUC1(ムチン1)、MUC2(ムチン2)、NA88-A(患者M88のNA cDNAクローン)、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ-V、Neo-PAP(Neo-ポリ(A)ポリメラーゼ)、NGEP、NMP22、NPM/ALK(ヌクレオフォスミン/未分化リンパ腫キナーゼ融合タンパク質)、NSE(神経特異的エノラーゼ)、NY-ESO-1(ニューヨーク食道(esophageous)1)、NY-ESO-B、OA1(眼白子症1型タンパク質)、OFA-iLRP(がん胎児抗原-未熟ラミニン受容体)、OGT(O-結合型N-アセチルグルコサミントランスフェラーゼ遺伝子)、OS-9、オステオカルシン、オステオポンチン、p15(タンパク質15)、p15、p190マイナーbcr-abl、p53、PAGE-4(前立腺GAGE様タンパク質4)、PAI-1(プラスミノーゲン活性化因子阻害物質1)、PAI-2(プラスミノーゲン活性化因子阻害物質2)、PAP(前立腺酸性ホスファターゼ)、PART-1、PATE、PDEF、Pim-1-キナーゼ、Pin1(プロピルイソメラーゼ)、POTE、PRAME(メラノーマ優先発現抗原)、プロステイン(prostein)、プロテイナーゼ3、PSA(前立腺特異抗原)、PSCA、PSGR、PSM、PSMA(前立腺特異膜抗原)、RAGE-1(腎性抗原)、RHAMM/CD168(ヒアルロン酸媒介運動性受容体)、RU1(腎遍在性1)、RU2(腎遍在性1)、S-100、SAGE(肉腫抗原)、SART-1(扁平上皮抗原拒絶腫瘍1)、SART-2(扁平上皮抗原拒絶腫瘍1)、SART-3(扁平上皮抗原拒絶腫瘍1)、SCC(扁平上皮がん抗原)、Sp17(精子タンパク質17)、SSX-1(滑膜肉腫Xブレークポイント1)、SSX-2/HOM-MEL-40(滑膜肉腫Xブレークポイント)、SSX-4(滑膜肉腫Xブレークポイント4)、STAMP-1、STEAP(6回膜貫通上皮抗原前立腺)、サバイビング(surviving)、サバイビン2B(イントロン2保持サバイビン)、TA-90、TAG-72、TARP、TGFb(TGFβ)、TGFbRII(TGFβ受容体II)、TGM-4(前立腺特異的トランスグルタミナーゼ)、TRAG-3(タキソール耐性関連タンパク質3)、TRG(テスチン(testin)関連遺伝子)、TRP-1(チロシン関連タンパク質1)、TRP-2/6b(TRP-2/新規エクソン6b)、TRP-2/INT2(TRP-2/イントロン2)、Trp-p8、チロシナーゼ、UPA(ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子)、VEGF(血管内皮増殖因子)、VEGFR-2/FLK-1(血管内皮増殖因子受容体2)、WT1(ウィルムス腫瘍遺伝子)を含む、または例えば、α-アクチニン-4/m、ARTC1/m、bcr/abl(ブレークポイントクラスター領域-エーベルソン融合タンパク質)、β-カテニン/m(β-カテニン)、BRCA1/m、BRCA2/m、CASP-5/m、CASP-8/m、CDC27/m(細胞分裂周期27)、CDK4/m(サイクリン依存性キナーゼ4)、CDKN2A/m、CML66、COA-1/m、DEK-CAN(融合タンパク質)、EFTUD2/m、ELF2/m(伸長因子2)、ETV6-AML1(Ets異種遺伝子6/急性骨髄性白血病1遺伝子融合タンパク質)、FN1/m(フィブロネクチン1)、GPNMB/m、HLA-A*0201-R170I(HLA-A2遺伝子中のα2ドメインのα-ヘリックスの残基170におけるアルギニンからイソロイシンへの交換)、HLA-A11/m、HLA-A2/m、HSP70-2M(熱ショックタンパク質70-2変異型)、KIAA0205/m、K-Ras/m、LDLR-FUT(LDR-フコシルトランスフェラーゼ融合タンパク質)、MART2/m、ME1/m、MUM-1/m(メラノーマ遍在性変異型1)、MUM-2/m(メラノーマ遍在性変異型2)、MUM-3/m(メラノーマ遍在性変異型3)、ミオシンクラスI/m、neo-PAP/m、NFYC/m、N-Ras/m、OGT/m、OS-9/m、p53/m、Pml/RARα(前骨髄球性白血病/レチノイン酸受容体α)、PRDX5/m、PTPRK/m(受容体型タンパク質チロシンホスファターゼκ)、RBAF600/m、SIRT2/m、SYT-SSX-1(シナプトタグミンI/滑膜肉腫X融合タンパク質)、SYT-SSX-2(シナプトタグミンI/滑膜肉腫X融合タンパク質)、TEL-AML1(トランスロケーションEtsファミリー白血病/急性骨髄性白血病1融合タンパク質)、TGFβRII(TGFβ受容体II)、TPI/m(トリオースホスファターゼイソメラーゼ)を非限定的に含む群より選択される、がん疾患に発現される変異型抗原を含み得る。
【0046】
vii. 他の薬剤
多様な他の薬剤が、本開示に従って開発されたワクチンに供される場合がある。例えば、狂牛病およびクールーなどの疾患を生じる可能性があるプリオン(タンパク質性感染性粒子)に対する抗原が、本明細書に記載の組成物に使用される場合がある。また、マダニ、トコジラミまたはシラミなどの皮膚に食い込む小型昆虫からの抗原は、本組成物からの宿主免疫応答を受けることができる。
【0047】
B. ジブロックコポリマー
一部の局面では、本明細書に記載のジブロックコポリマーは、免疫原性組成物中のアジュバントとして作用し得る。本明細書開示のpH応答性ミセルおよびナノ粒子は、ブロックコポリマーを含む。ブロックコポリマーは、親水性ポリマーセグメントおよび疎水性ポリマーセグメントを含む。疎水性ポリマーセグメントは、pH感受性である。例えば、疎水性ポリマーセグメントは、pH感受性にするためにイオン化可能なアミン基を含み得る。疎水性ポリマーセグメント内で、複数の異なるモノマー(例えば1、2、3、またはそれ以上の異なるモノマー)を使用して、疎水性ポリマーセグメントのpK
a感受性が調整され得る。ブロックコポリマーは、これらのイオン化可能なブロックコポリマーの超分子自己集合に基づきpH活性化可能なミセル状(pHAM)ナノ粒子を形成する。より高いpHで、ブロックコポリマーは集合してミセルになるのに対して、より低いpHでは、疎水性ポリマーセグメント中のアミン基のイオン化の結果として、ミセルの解離が生じる。イオン化可能な基は、異なるpH値で調整可能な親水性/疎水性ブロックとして作用する場合があり、そのことは、ミセルの動的自己集合に直接影響し得る。
【0048】
一部の局面では、ブロックコポリマーは、ブロックコポリマーがナノ粒子から解離型に変わるpH値であるpH転移値を有する。pH転移値は、6.0から7.4、6.5から7.4、6.5から7.2、6.8から7.4、6.8から7.2、もしくは6.0、6.2、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.85、6.9、6.95、7.0、7.05、7.1、7.2から7.4、またはその中に導き出せる任意の範囲であり得る。一部の局面では、ブロックコポリマーは、50nm未満の粒子サイズを有するナノ粒子を形成する。一部の態様では、ナノ粒子は、1nmから50nm、5nmから50nm、10nmから50nm、10nmから40nm、20nmから40nm、もしくは5nm、10nm、15nm、20nm、22nm、24nm、26nm、28nm、30nm、32nm、34nm、35nm、40nm、45nmから50nm、またはその中に導き出される任意の範囲の粒子サイズを有し得る。
【0049】
i. 親水性ブロック
一部の態様では、親水性ポリマーセグメントは、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)を含む。一部の態様では、親水性ポリマーセグメントは、ポリ(メタクリレートホスファチジルコリン)(MPC)を含む。一部の態様では、親水性ポリマーセグメントは、ポリビニルピロリドン(PVP)を含む。一般に、親水性ポリマーセグメント中のPEO、MPC、またはPVPポリマーは、サイズが約2kDから約20kDである。一部の態様では、ポリマーは、サイズが約2kDから約10kDである。一部の態様では、ポリマーは、サイズが約2kDから約5kDである。一部の態様では、ポリマーは、サイズが約3kDから約8kDである。一部の態様では、ポリマーは、サイズが約4kDから約6kDである。一部の態様では、ポリマーは、サイズが約5kDである。一部の態様では、ポリマーは、約100から約130個のモノマーユニットを有する。一部の態様では、ポリマーは、約110から約120個のモノマーユニットを有する。一部の態様では、ポリマーは、約114個のモノマーユニットを有する。ジブロックコポリマーの親水性ブロックとして使用するために適切な親水性ポリマーセグメントは、当技術分野において公知の方法を用いて調製され得る、または購入され得る。例えば、エチル2-ブロモ-2-メチルプロパノエート(Sigma Aldrich)などの市販の小分子開始剤を用いた原子移動ラジカル重合(ATRP)によってMPCポリマー(例えば狭い分布のMPCポリマー)を調製することができる。結果として生じるこれらのMPCポリマーを高分子ATRP開始剤として使用して、他のモノマーとさらに共重合させて、MPC-b-PDPAなどのブロックポリマーを形成させることができる。PEO-b-PRブロックコポリマーを、原子移動ラジカル重合(ATRP)または可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)法を用いて合成することができる(例えば、Australian Journal of Chemistry Volume: 58 Issue: 6 Pages: 379-410 (2005); Progress in Polymer Science Volume: 32 Issue: 1 Pages: 93-146 (2007)を参照されたい)。ATRPまたはRAFTは、PEO-b-PRコポリマーを狭い多分散性(<1.1)で産出することができるリビング重合を可能にする。異なるメタクリレートモノマーまたはアクリレートモノマーを使用して、異なるpH感受性を有するPRセグメントを産生することができる。
【0050】
ii. 疎水性ブロック
一部の局面では、疎水性ポリマーセグメントは、pH感受性のメタクリレートユニットを含むアミンを使用して調製される。疎水性ポリマーセグメントは、x個の繰り返しユニットを有するポリマーを含み得る。一部の態様では、xは、合計で約40から約100である。一部の態様では、xは、合計で約50から約100である。一部の態様では、xは、合計で約40から約70である。一部の態様では、xは、合計で約60から約80である。疎水性ポリマーセグメントは、例えば原子移動ラジカル重合(ATRP)または可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)に従って、または下の実施例に記載のように合成され得る。
【0051】
一部の局面では、疎水性ポリマーセグメントは、繰り返しユニットを含み、ここで、X
4およびX
5は、C1〜C3炭素原子を有するアルキル基である、または一緒になって、C4〜C8炭素原子を有する。一部の態様では、これらの炭素原子の長さは、約6.0から約7.5のpK
aを有する疎水性ポリマーセグメントを得るように最適化されている。一部の態様では、pK
aは、約6.5から約7.4である。pK
aは、pH滴定のような、当業者に公知の方法を用いて測定され得る。
【0052】
C. 追加的なアジュバント
同じく当技術分野において周知のように、特定の免疫原性組成物の免疫原性を、アジュバントとして公知の非特異的免疫応答刺激物質の使用によって強化することができる。アジュバントは、免疫原性に乏しい抗原に対する免疫の全般的増加を促進するために実験的に使用されている(例えば、米国特許第4,877,611号)。免疫プロトコールは、長年、応答を刺激するためにアジュバントを使用しており、そのように、アジュバントは、当業者に周知である。一部のアジュバントは、抗原が提示される方法に影響を与える。例えば、免疫応答は、タンパク質抗原をアラムに吸着させると増加する。抗原の乳化も抗原提示の持続期間を延長し、自然免疫応答を開始させる。適切な分子アジュバントには、サイトカイン、毒素または合成組成物などの全ての許容される免疫刺激化合物が含まれる。
【0053】
一部の局面では、本明細書に記載の組成物は、別のアジュバントをさらに含み得る。アラムは、ヒトに対して承認されたアジュバントであるものの、実験動物におけるアジュバントには、フロイント完全アジュバント(結核死菌を含有する、免疫応答の非特異的刺激物質)、フロイント不完全アジュバントおよび水酸化アルミニウムアジュバントが含まれる。同じく動物および時にはヒトに使用され得る他のアジュバントには、インターロイキン(IL)-1、IL-2、IL-4、IL-7、IL-12、インターフェロン、カルメット-ゲラン桿菌(BCG)、水酸化アルミニウム、ムラミルジペプチド(MDP)(N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン MDP)化合物、例えばthur-MDPおよびnor-MDPなど、リピドA、ならびにモノホスホリルリピドA(MPL)が含まれる。細菌から抽出された3つの成分、MPL、トレハロースジミコレート(TDM)および細胞壁骨格(CWS)を2%スクアレン/Tween 80エマルション中に含有するRIBIも、企図される。MHC抗原でさえ使用される場合がある。
【0054】
ヒトに対して承認されている一局面では、リン酸緩衝食塩水中に約0.05から約0.1%溶液として使用される、アラムなどの薬剤の使用によってアジュバント効果が達成される。あるいは、実験動物において、抗原は、約0.25%溶液として使用される糖の合成ポリマー(Carbopol(登録商標))との混合物として作製される。アジュバント効果は、約70℃から約101℃の間の範囲の温度でそれぞれ30秒から2分間熱処理することによってワクチン中の抗原を凝集させることによっても達成され得る。アルブミンに対するペプシン処理(Fab)抗体を用いた再活性化による凝集、C.パルバム(C. parvum)などの細菌細胞、グラム陰性細菌の内毒素もしくはリポ多糖成分との混合、マンニドモノオレエート(Aracel A)などの生理学的に許容される油性ビヒクル中での乳化、またはブロック代替物(block substitute)として使用されるパーフルオロカーボン(Fluosol-DA(登録商標))の20%溶液を用いた乳化も採用される場合がある。
【0055】
一部のアジュバント、例えば、細菌から得られたある特定の有機分子は、抗原よりもむしろ宿主に作用する。例は、細菌ペプチドグリカンであるMDPである。大部分のアジュバントのようにMDPの効果は完全には理解されていないとはいえ、本発明者らは、現在、MDPが自然免疫系の細胞、例えば樹状細胞、マクロファージ、好中球、NKT細胞、NK細胞などを活性化することを理解しつつある。MDPは、マクロファージを刺激するが、B細胞を直接刺激するようにも見える。したがって、アジュバントの効果は、抗原に非特異的である。しかし、アジュバントが精製抗原と一緒に投与されるならば、それらを、抗原に対する応答を選択的に促進するために使用することができる。
【0056】
ある特定の態様では、ヘモシアニンおよびヘモエリトリンも本開示の組成物に使用され得る。キーホールリンペット由来ヘモシアニン(KLH)の使用は、ある特定の態様で好ましいとはいえ、他の軟体動物および拙速動物のヘモシアニンおよびヘモエリトリンが採用される場合がある。
【0057】
様々な多糖アジュバントも使用され得る。例えば、マウスの抗体応答に関する様々な肺炎球菌多糖アジュバントの使用が記載されている(Yin et al., 1989)。最適な応答を産生する用量、またはさもなければ抑制を生じない用量を表示のように採用すべきである(Yin et al., 1989)。脱アセチル化キチンを含めたキチンおよびキトサンなどの、多糖のポリアミン異種が特に好ましい。
【0058】
別の群のアジュバントは、ムラミルジペプチド(MDP、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン)群の細菌ペプチドグリカンである。アミノ酸誘導体トレオニル-MDPなどのムラミルジペプチド誘導体、および脂肪酸誘導体ムラミルトリペプチドホスファチジルエタノールアミン(MTPPE)も企図される。
【0059】
米国特許第4,950,645号は、ホスファチジルコリンおよびホスファチジルグリセロールから形成される人工リポソームにおける使用について記載されている、ムラミルジペプチドの親油性二糖-トリペプチド誘導体を記載している。これは、ヒト単球の活性化および腫瘍細胞の破壊に有効であるが、一般的に高用量で無毒である。米国特許第4,950,645号およびPCT特許出願である国際公開公報第91/16347号の化合物は、本開示の細胞担体および他の態様での使用のために企図される。
【0060】
トレハロースジミコレートを有するまたは有さないBCGおよびBCG-細胞壁骨格(CWS)もまた、アジュバントとして使用される場合がある。トレハロースジミコレート自体が使用される場合がある。トレハロースジミコレートの投与は、マウスにおけるインフルエンザウイルス感染に対する耐性増強と相関することが示されている(Azuma et al., 1988)。トレハロースジミコレートは、米国特許第4,579,945号に記載されているように調製される場合がある。BCGは、その免疫刺激特性のおかげで、重要な臨床ツールである。BCGは、細網内皮系(RES)を刺激するように作用し、ナチュラルキラー(NK)細胞を活性化し、造血幹細胞の増殖を増加させる。BCGの細胞壁抽出物は、優れた免疫アジュバント活性を有することが証明されている。ミコバクテリアのための分子遺伝学的ツールおよび方法は、BCGに外来遺伝子を導入するための手段を提供した(Jacobs et al., 1987; Snapper et al., 1988; Husson et al., 1990; Martin et al., 1990)。BCG生菌は、結核を予防するために世界中で使用されている有効で安全なワクチンである。BCGおよび他のミコバクテリアは、高度に有効なアジュバントであり、ミコバクテリアに対する免疫応答は、広く研究されている。20億回近くの免疫処置が行われて、BCGは、ヒトにおける安全な使用の長期記録を有する(Luelmo, 1982; Lotte et al., 1984)。BCGは、誕生時に与えることができる数少ないワクチンの1つであり、わずか1回の投与で長期間持続する免疫応答を生み、BCGワクチン接種に経験がある世界的流通網がある。例示的なBCGワクチンは、TICE BCG(Organon Inc., West Orange, NJ)として販売されている。
【0061】
両親媒性薬剤および表面活性薬剤、例えば、QS21(Cambridge Biotech)などのサポニンおよび誘導体は、本開示の免疫原での使用のための、なお別の群のアジュバントを形成する。非イオン性ブロックコポリマー界面活性剤(Rabinovich et al., 1994)も採用される場合がある。オリゴヌクレオチドは、別の有用な群のアジュバントである(Yamamoto et al., 1988)。Quil Aおよびレンチネン(lentinen)は、本開示のある特定の態様に使用され得る他のアジュバントである。
【0062】
別の群のアジュバントは、米国特許第4,866,034号の精製および解毒された内毒素などの解毒された内毒素である。これらの精製および解毒された内毒素は、哺乳動物においてアジュバント応答を産生するのに有効である。もちろん、解毒された内毒素を他のアジュバントと組み合わせて、複数のアジュバントを組み入れた細胞が調製される場合がある。例えば、米国特許第4,435,386号に記載されているように、解毒された内毒素とトレハロースジミコレートとの組合せが、特に企図される。解毒された内毒素と、トレハロースジミコレートおよび内毒素性糖脂質との組合せも企図されており(米国特許第4,505,899号)、米国特許第4,436,727号、第4,436,728号および第4,505,900号に記載されているような解毒された内毒素と、cCWSまたはCWSおよびトレハロースジミコレートとの組合せも同様である。米国特許第4,520,019号に記載されているように、解毒された内毒素を有さないCWSとトレハロースジミコレートとだけの組合せも有用であると予想されている。
【0063】
当業者は、本開示に従ってワクチンにコンジュゲートすることができ、実験的使用と比べてヒトについて承認されている、異なる種類のアジュバントを知っている。これらには、とりわけ、アルキルリゾリン脂質(ALP);BCG;およびビオチン(ビオチン化誘導体を含む)が含まれる。使用のために特に企図されるある特定のアジュバントは、グラム陰性細菌細胞からのテイコ酸である。これらには、リポテイコ酸(LTA)、リビトールテイコ酸(RTA)およびグリセロールテイコ酸(GTA)が含まれる。それらの合成対応物の活性形態が、本開示の組成物と共に採用される場合もある(Takada et al., 1995)。
【0064】
様々なアジュバントが、ヒトにおいて通例使用されないものであっても、動物においてなお採用され得る。アジュバントは、核酸(例えばDNAまたはRNA)によってコードされる場合がある。そのようなアジュバントは、抗原をコードしている核酸(例えば発現ベクター)または異なるベクターもしくは他の構築物にコードされている場合もあることが、企図される。アジュバントをコードする核酸を、例えば脂質またはリポソームなどを用いて直接送達することができる。
【0065】
D. 生物学的応答調節物質(BRM)
アジュバントに加えて、T細胞免疫をアップレギュレーションする、またはサプレッサー細胞活性をダウンレギュレーションすることが示されているBRMを同時投与することが望ましい場合がある。そのようなBRMには、シメチジン(CIM;1200mg/d)(Smith/Kline, PA);低用量シクロホスファミド(CYP;300mg/m
2)(Johnson/ Mead, NJ)、サイトカイン(インターフェロン、IL-2、もしくはIL-12など)、またはB-7などの免疫ヘルパー機能に関与するタンパク質をコードする遺伝子が非限定的に含まれる。追加的な生物学的応答調節物質には、両方とも参照により本明細書に組み入れられるGupta and Kanodia, 2002およびBisht, et al., 2010に記載されているものが含まれる。
【0066】
E. ケモカイン
ケモカイン、ケモカインをコードする核酸、および/またはそれを発現する細胞も、ワクチン成分として使用され得る。ケモカインは、一般的に、ケモカインの発現部位に免疫エフェクター細胞を動員するための化学誘引物質として作用する。特定のケモカインコード配列を、例えばサイトカインコード配列と共に発現させて、処置部位への他の免疫系成分の動員を強化することが有利であり得る。そのようなケモカインには、例えば、RANTES、MCAF、MIP1-α、MIP1-β、IP-10およびその組合せが含まれる。ある特定のサイトカインは化学誘引効果も有することが公知であり、ケモカインという用語の下に分類することもできることを、当業者は認識している。
【0067】
F. 免疫原性担体タンパク質
一部の態様では、本明細書に記載のワクチン組成物を担体と化学結合させる、または免疫原性担体ペプチドもしくはポリペプチド(例えば、抗原-担体融合ペプチドもしくはポリペプチド)と共に組換え発現させて、免疫反応を強化させる場合がある。例示的で好ましい免疫原性担体アミノ酸配列には、B型肝炎表面抗原(HBSA)、破傷風トキソイド(TT)、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)およびBSAが含まれる。ヒトでは、TTが、すでに承認されたタンパク質ワクチンであるので、有利である。実験動物については、OVA、マウス血清アルブミンまたはウサギ血清アルブミンなどの他のアルブミンも、免疫原性担体タンパク質として使用することができる。ポリペプチドまたはペプチドを免疫原性担体タンパク質とコンジュゲートするための手段は、当技術分野において周知であり、それには、例えば、グルタルアルデヒド、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、カルボジイミドおよびビス-二アゾ化ベンジジン(bis-biazotized benzidine)が含まれる。
【0068】
II. 薬学的製剤および処置方法
A. 薬学的製剤および投与経路
臨床適用が企図される場合、薬学的組成物を意図される適用に適切な形態に調製することが必要である。一部の態様では、本開示の化合物を有するそのような製剤が企図される。一般的に、これは、発熱物質、およびヒトまたは動物に有害な可能性もある他の不純物を本質的に含まない組成物を調製することを必然的に伴う。
【0069】
組成物を安定にし、標的細胞に取り込ませるために適切な塩および緩衝液を採用することが一般的に要求される。組成物を患者に導入する場合にも緩衝液が採用される。本開示の水性組成物は、薬学的に許容される担体または水性媒質中に溶解または分散されたワクチン組成物の有効量を含む。そのような組成物は、接種材料とも呼ばれる。語句「薬学的または薬理学的に許容される」は、動物またはヒトに投与したときに有害反応、アレルギー反応、または他の不都合な反応を生じない分子的実体および組成物を表す。本明細書に使用される、「薬学的に許容される担体」には、任意および全ての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗細菌剤および抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤などが含まれる。薬学的に活性な物質のためのそのような媒質および薬剤の使用は、当技術分野において周知である。任意の従来の媒質または薬剤が本開示の組成物と適合しない場合を除き、治療用組成物におけるその使用が企図される。補助的活性成分も組成物中に組み入れることができる。
【0070】
本開示の活性組成物は、古典的な薬学的調製物を含み得る。本開示によるこれらの組成物の投与は、任意の通例の経路を介するが、但し、標的組織がその経路を介して利用可能であることを条件とする。そのような経路には、経口、経鼻、口腔、直腸、膣または局所経路が含まれる。あるいは、投与は、同所性、皮内、皮下、筋肉内、腫瘍内、腹腔内、または静脈内注射による場合がある。そのような組成物は、上記の薬学的に許容される組成物として通常は投与される。
【0071】
本明細書に使用される、「薬学的に許容される担体」には、任意および全ての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗細菌剤および抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤などが含まれる。薬学的に活性な物質のためのそのような媒質および薬剤の使用は、当技術分野において周知である。任意の従来の媒質または薬剤が活性成分と適合しない場合を除き、治療用組成物におけるその使用が企図される。補助的活性成分も組成物中に組み入れることができる。
【0072】
経口投与のために、本明細書に記載のワクチン組成物は、賦形剤と組み合わされ、摂取できないマウスウォッシュおよび歯磨剤の形態で使用され得る。マウスウォッシュは、ホウ酸ナトリウム溶液(ドーベル液)などの適切な溶媒中に活性成分を必要量組み入れて調製され得る。あるいは、活性成分は、ホウ酸ナトリウム、グリセリンおよび重炭酸カリウムを含有する防腐洗浄液に組み入れられる場合がある。活性成分は、ゲル、ペースト、粉末およびスラリーを含めた歯磨剤中に分散される場合もある。活性成分は、水、結合剤、研磨剤、香味剤、発泡剤、および保水剤を含み得るペースト状歯磨剤に治療有効量で添加される場合がある。
【0073】
本開示に従って薬学的組成物を送達するための一方法は、全身的である。しかしその代わりに、状況に応じて、本明細書開示の薬学的組成物は、米国特許第5,543,158号;米国特許第5,641,515号および米国特許第5,399,363号(これらの各々は、その全体で参照により本明細書に具体的に組み入れられる)に記載されているように、非経口、静脈内、皮下、皮内、筋肉内、経皮または腹腔内にさえ投与される場合がある。
【0074】
薬剤が注射のために必要な特定ゲージの針を通過することができるかぎり、注射は、溶液の注射のために使用されるシリンジまたは任意の他の方法により行われ得る。溶液を収容するためのアンプルチャンバーを規定するノズルおよびノズルから溶液を送達部位に押し出すためのエネルギー装置を有する、新規な針なし注射システムが記載されている(米国特許第5,846,233号)。
【0075】
遊離塩基または薬理学的に許容される塩としての活性化合物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水の中に調製され得る。分散物は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびその混合物中ならびに油中にも調製され得る。通常の保存および使用の条件で、これらの調製物は、微生物の成長を阻止するための保存剤を含有する。注射用途に適切な薬学的剤形には、無菌水溶液または分散物および無菌注射液または分散物の即時調製のための無菌粉末が含まれる(その全体で参照により本明細書に具体的に組み入れられる米国特許第5,466,468号)。全ての場合で、剤形は、無菌でなければならず、容易なシリンジ通過性が存在する程度に流動性でなければならない。剤形は、製造および保存の条件で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用から保護されなければならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、その適切な混合物、および/または植物油を含有する溶媒または分散媒であることができる。例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用、分散物の場合は必要な粒子サイズの維持、および界面活性剤の使用により、妥当な流動性が維持され得る。微生物の作用の防止は、様々な抗細菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらすことができる。多くの場合に、等張剤、例えば糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の長期吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物中に使用することによってもたらすことができる。
【0076】
水溶液としての非経口投与のために、例えば、溶液を必要に応じて適切に緩衝化し、液体希釈剤を十分な食塩水またはグルコースで最初に等張にするべきである。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、および腹腔内投与に特に適切である。これに関連して、採用できる無菌水性媒質は、本開示に照らして当業者に公知である。例えば、1回分の投薬量を等張NaCl溶液1mlに溶解し、皮下点滴液1000mLに添加するか、または提案された注入部位に注射するかのいずれかとする場合がある(例えば、"Remington's Pharmaceutical Sciences," 15th Edition, pages 1035-1038および1570-1580を参照されたい)。処置されている対象の状態に応じて、投薬量のある程度の変動が必然的に起こる。投与担当者は、いずれにせよ、個別の対象に適切な用量を決定する。そのうえ、ヒト投与のために、調製物は、FDAの生物製剤基準事務局によって要求されるような無菌性、発熱性、ならびに全般的な安全性および純度の基準に適合すべきである。
【0077】
無菌注射液は、活性化合物を適切な溶媒中に、必要に応じて上に列挙した様々な他の成分と共に、必要量組み入れ、続いて濾過滅菌することによって調製される。一般的に、分散物は、基本分散媒と、上に列挙した成分からの必要な他の成分とを含有する無菌ビヒクル中に様々な無菌活性成分を組み入れることによって調製される。無菌注射液を調製するための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は真空乾燥技法および凍結乾燥技法であり、これにより、任意の追加的な所望の成分を加えた活性成分の粉末が、予め無菌濾過されたその溶液から得られる。
【0078】
本明細書開示の組成物は、中性形態または塩形態で製剤化される場合がある。薬学的に許容される塩には、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基と共に形成される)が含まれ、酸付加塩は、例えば、塩酸もしくはリン酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸を用いて形成される。遊離カルボキシル基と共に形成される塩は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化第二鉄などの無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基にも由来することができる。製剤化後、溶液は、投薬製剤に適合した方法で、かつ治療有効量で、投与される。製剤は、注射液、薬物放出カプセルなどの多様な剤形で容易に投与される。
【0079】
本明細書に使用される「緩衝剤または希釈剤」には、任意および全ての溶媒、分散媒、ビヒクル、コーティング剤、希釈剤、賦形剤、抗細菌剤および抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤、緩衝剤、溶液、懸濁物、コロイドなどが含まれる。薬学的活性物質用のそのような媒質および薬剤の使用は、当技術分野において周知である。任意の従来の媒質または薬剤が活性成分と適合しない場合を除き、治療用組成物におけるその使用が企図される。補助的活性成分も組成物中に組み入れることができる。
【0080】
語句「薬学的に許容される」または「薬理学的に許容される」は、ヒトに投与した場合にアレルギー反応または類似の不都合な反応を生じない分子的実体および組成物を表す。タンパク質を活性成分として含有する水性組成物の調製は、当技術分野において十分に理解されている。典型的には、そのような組成物は、液体溶液もしくは懸濁液のいずれかとしての注射用として調製される。注射前に液体中に溶解または懸濁するために適切な固体形態も調製することができる。
【0081】
B. 処置方法
特に、対象(例えばヒト対象)におけるがんを処置するのに使用され得る組成物が、本明細書に開示される。上記組成物は、哺乳動物(例えば、げっ歯動物、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ネコなど)に対して、処置された対象に所望の結果をもたらす(例えば、がん性細胞のアポトーシスを引き起こす)ことができる量である有効量で好ましくは投与される。本開示の方法に利用される組成物の毒性および治療効力を、標準的な薬学的手順により決定することができる。医学および獣医学分野で周知のように、任意の一動物についての投薬量は、対象のサイズ、体表面積、体重、年齢、投与されるべき特定の組成物、投与時間および経路、全身の健康状態、感染症またはがんの臨床症状および同時に投与されている他の薬物を含めた多数の要因に依存する。本明細書に記載の組成物は、細菌細胞の成長もしくは増殖を阻害する投薬量、バイオフィルムの成長を阻害する投薬量、あるいは血液学的パラメーター(全血球算定 - CBC)の減少またはがん細胞の成長もしくは増殖を特定することによってアッセイされるがん性細胞の死滅を誘導する(例えば、がん細胞のアポトーシスを誘導する)投薬量で、典型的には投与される。一部の態様では、がん細胞のアポトーシスを誘導するために使用されるメアヤマイシン、タイランスタチンAメチルエステル、およびその類似体の量は、約0.01mgから約10,000mg/日であると計算される。一部の態様では、量は、約1mgから約1,000mg/日である。一部の態様では、これらの投薬は、薬物の代謝分解の増加もしくは減少、または経口投与された場合の消化管による取込み減少などの、特定の患者の生物学的要因に基づき減少または増加され得る。追加的に、本明細書に記載のワクチン組成物は、より効率的な場合があり、したがって、より少ない用量が類似の効果を達成するために必要とされる。そのような用量は、典型的には、1日1回数週間またはがん細胞の十分な減少が達成されるまで投与される。
【0082】
本開示の治療方法(予防的処置を含む)は、本明細書に記載の組成物の治療有効量を、哺乳動物、特にヒトを含む、その必要がある対象に投与することを一般に含む。そのような処置は、疾患、障害、またはその症状を患う、有する、それに感受性の、またはその危険がある対象、特にヒトに適切に投与される。「危険のある」対象の判定は、診断検査または対象もしくは医療提供者の意見(例えば、遺伝子検査、酵素またはタンパク質マーカー、マーカー(本明細書において定義)、家族歴など)による任意の客観的または主観的判定により行うことができる。
【0083】
一態様では、本開示は、処置の進行を監視する方法を提供する。該方法は、がん(例えば白血病)に関連する障害またはその症状を患うまたはそれに感受性の対象において血液学的パラメーターの変化レベルを決定する段階および/または細胞表面タンパク質(例えば、CD34、CD38、CD90、およびCD117を非限定的に含むことができる)を診断マーカーとするがん幹細胞(CSC)分析もしくは診断測定(例えばスクリーニング、アッセイ)を含み、その際、対象は、本明細書に記載の組成物の治療量を投与されている。該方法において決定されたマーカーのレベルを、健常対照または他の罹患患者のいずれかにおけるマーカーの公知のレベルと比較して、対象の病状を確定することができる。好ましい態様では、対象におけるマーカーの第2のレベルは、第1のレベルの決定よりも後の時点で決定され、2つのレベルは、疾患の経過または治療の効力を監視するために比較される。ある特定の好ましい態様では、対象におけるマーカーの処置前のレベルは、本明細書に記載の方法に従って処置を開始する前に決定され、次に、マーカーのこの処置前のレベルを、処置が始まった後の対象におけるマーカーのレベルと比較して、処置の効力を決定することができる。
【0084】
III. 組合せ療法
本明細書に記載のワクチン組成物は、患者によって経験される副作用のうちの1つまたは複数を軽減する1つまたは複数の追加的な治療法または化合物との組合せ療法に使用される場合があることが予想されている。治療様式を組み合わせることは、医学分野において一般的である。以下は、本開示の治療法と共に使用され得る治療法の一般的な論考である。
【0085】
本開示の方法および組成物を使用して疾患または障害を処置するために、患者に組成物および少なくとも1つの他の治療法を一般的に施与する。これらの治療法は、1つまたは複数の疾患パラメーターにおける減少を達成するために有効な合計量で提供される。この工程は、例えば、両方の薬剤を含む単一の組成物もしくは薬理製剤を使用して、または細胞/対象を2種の別個の組成物(一方の組成物は、ワクチン組成物を含み、他方は他の薬剤を含む)もしくは製剤と同時に接触させることによって、細胞/対象を両方の薬剤/治療法と同時に接触させる段階を伴う場合がある。
【0086】
あるいは、本明細書に記載のワクチン組成物は、数分から数週間の範囲の間隔で他の処置に先行または後続する場合がある。治療法が、細胞/対象に有利な併用効果を依然として発揮できるように、各送達時点の間に重大な期限が切れなかったことを一般的に確実にする。そのような場合、細胞を両方の様式と相互に約12〜24時間以内、相互に約6〜12時間以内、またはわずか約1〜2時間の遅れで接触させることが企図される。一部の状況では、処置の期間を顕著に延長することが望ましい場合があるが、その際、数日(2、3、4、5、6または7日)から数週間(1、2、3、4、5、6、7または8週間)がそれぞれの施与の間で経過する。追加的に、これらの治療法のそれぞれが、組合せまたは個別のいずれかで2回以上施与され得ることも企図される。例えば、第1の治療法が第2の治療法と共に施与され、次に第1の治療法が2回目に単独でまたは再び第2の治療法と組み合わせてのいずれかで施与され得る。
【0087】
ワクチン組成物または他の治療法のいずれかの1回を超える施与が望ましいことも予想されている。下に例示するように、本開示のワクチン組成物が「A」、他の治療法が「B」である様々な組合せが採用され得る。
【0088】
他の組合せも企図される。以下は、本開示の組成物と併用され得る追加的な治療法の一般的な論考である。
【0089】
A. 化学療法
「化学療法」という用語は、がんを処置するための薬物の使用を表す。「化学療法剤」は、がんの処置において投与される化合物または組成物を暗示するために使用される。これらの薬剤または薬物は、細胞内の活性方式、例えばそれらが細胞周期に影響を与えるかおよびどの段階で影響を与えるかにより分類される。あるいは、薬剤は、DNAと直接架橋結合する能力、DNAにインターカレートする能力、または核酸合成に影響を与えることによって染色体異常および有糸分裂異常を誘導する能力に基づき特徴づけされる場合がある。大部分の化学療法剤は、以下の部類に入る:アルキル化剤、代謝拮抗物質、抗腫瘍抗生物質、有糸分裂阻害剤、およびニトロソウレア。
【0090】
化学療法剤の例には、チオテパおよびシクロスホスファミドのようなアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファンのようなアルキルスルホネート;ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)およびウレドーパのようなアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミドおよびトリメチロロメラミンを含むエチレンイミンおよびメチラメラミン;アセトゲニン(特にブラタシンおよびブラタシノン);カンプトテシン(合成類似体トポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシンおよびビゼレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(duocarumycin)(合成類似体、KW-2189およびCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンジスタチン;ナイトロジェンマスタード、例えばクロラムブシル、クロルナファジン、コロフォスフェミド(cholophosphamide)、エストラムスチン;イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノベンビキン(novembichin);フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロスウレア、例えばカルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、およびラニムスチン(ranimnustine);抗生物質、例えばエンジイン系抗生物質(例えばカリケアミシン、特にカリケアミシンγ1およびカリケアミシンω1;ジネマイシンAを含むジネマイシン;ウンシアラマイシンおよびその誘導体;ビスホスフォネート、例えばクロドロネート;エスペラマイシン;ならびにネオカルジノスタチンクロモフォアおよび関連する色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラルナイシン(authrarnycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシニス(chromomycinis)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシンおよびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、例えばマイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン(nogalarnycin)、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、またはゾルビシン;代謝拮抗薬、例えばメトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体、例えばデノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート;プリン類似体、例えばフルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えばアンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン;アンドロゲン、例えばカルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗アドレナリン薬、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補給剤、例えば葉酸;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン;エダトラキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジクオン;エルフォルミチン(elformithine);酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン;メイタンシノイド、例えばメイタンシンおよびアンサミトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール(mopidanmol);ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジン;プロカルバジン;PSK多糖複合体);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT-2毒素、ベラキュリンA、ロリジンAおよびアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えばパクリタキセルおよびドセタキセル;クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金配位錯体、例えばシスプラチン、オキサリプラチンおよびカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;イリノテカン(例えばCPT-11);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(difluorometlhylornithine)(DMFO);レチノイド、例えばレチノイン酸;カペシタビン;シスプラチン(CDDP)、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、カンプトテシン、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、ニトロソウレア、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリコマイシン(plicomycin)、マイトマイシン、エトポシド(VP16)、タモキシフェン、ラロキシフェン、エストロゲン受容体結合剤、タキソール、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン(gemcitabien)、ナベルビン、ファルネシル-タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、トランス白金、5-フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチンおよびメトトレキサートならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体が含まれる。
【0091】
B. 放射線療法
放射線照射療法とも呼ばれる放射線療法は、電離放射線を用いたがんおよび他の疾患の処置である。電離放射線は、処置されている区域の細胞を、その遺伝物質を損傷することによって傷害または破壊するエネルギーを蓄積しており、これらの細胞が成長し続けることを不可能にする。放射線はがん細胞および正常細胞の両方を損傷するものの、後者は自己修復し、適正に機能することができる。
【0092】
本開示により使用される放射線療法は、腫瘍細胞へのγ線、X線、および/または放射性同位体の定方向送達の使用を非限定的に含み得る。マイクロ波およびUV照射などの他の形態のDNA損傷因子も企図される。これらの因子のうちの全ては、DNA、DNA前駆体、DNAの複製および修復、ならびに染色体の集合および維持に広範囲の損傷を誘導する可能性が最も高い。X線についての線量範囲は、長期間(3〜4週間)にわたる1日量50〜200レントゲンから、単回での2000〜6000レントゲンに及ぶ。放射性同位体についての投薬量範囲は、広く変動し、同位体の半減期、放射される放射線の強度および種類、ならびに腫瘍細胞による取込みに依存する。
【0093】
放射線療法は、放射線の線量をがんの部位に直接送達するための放射標識抗体の使用を含み得る(放射免疫療法)。抗体は、抗原(免疫系によって異物として認識される物質)の存在に応答して身体によって作られる、高度に特異的なタンパク質である。一部の腫瘍細胞は、腫瘍特異的抗体の産生をトリガする特異的抗原を含有する。大量のこれらの抗体を研究室で製造し、放射性物質に結合させることができる(放射標識として公知の工程)。体内に注射された後、抗体は活発にがん細胞を見つけ出し、がん細胞は、放射線の細胞殺傷(細胞傷害)作用によって破壊される。このアプローチは、健康な細胞に対する放射線損傷の危険性を最小限にすることができる。
【0094】
原体照射療法は、通常の放射線療法処置と同じ放射線治療機である直線加速器を使用するが、X線ビームの形状をがんに適合したものに変えるためにX線ビームの経路に金属ブロックが置かれる。これにより、より高い放射線量が腫瘍に与えられることが確実になる。周囲の健康細胞および近接構造物はより低い放射線量を受けるので、副作用の可能性は低い。多葉コリメーターと呼ばれる装置が開発されており、それが金属ブロックの代替として使用される場合がある。多葉コリメーターは、直線加速器に固定されたいくつかの金属シートからなる。金属ブロックの必要なしに放射線療法ビームを処置区域に合わせることができるように、各層を調整することができる。放射線治療機の正確な位置合わせは、原体照射療法の処置にとって非常に重要であり、各処置の開始時に内部器官の位置をチェックするために特別なスキャン機が使用される場合がある。
【0095】
高分解能強度変調放射線療法も多葉コリメーターを使用する。この処置の途中、処置が施されている間に多葉コリメーターの層が移動される。この方法は、処置ビームのより一層正確な形状化を達成する可能性があり、放射線療法の線量を全処置区域にわたり一定にさせる。
【0096】
原体照射療法および強度変調放射線療法が放射線療法の処置の副作用を減らし得ると調査研究により示されたものの、そのように正確に処置区域を形状化することで、処置区域の少し外側の顕微鏡的がん細胞の破壊が止まる可能性もあり得る。これは、これらの特殊化された放射線治療技法を用いると将来的にがんが再発する危険がより高くなり得ることを意味する。
【0097】
科学者は、放射線療法の有効性を高める方法も探している。2種類の治験薬が放射線を受けている細胞に対するそれらの効果について研究途中である。放射線増感剤は、腫瘍細胞が損傷される可能性を大きくし、放射線防護剤は、正常な組織を放射線の影響から保護する。温熱療法、熱の使用も、放射線に対して組織を増感するその効果について研究途中である。
【0098】
C. 免疫療法
がんの処置に関連して、免疫療法は、一般的にがん細胞を標的とするおよび破壊するための免疫エフェクター細胞および分子の使用に依存している。トラスツズマブ(Herceptin(商標))は、そのような一例である。免疫エフェクターは、例えば、腫瘍細胞の表面のいくつかのマーカーに特異的な抗体であり得る。抗体は単独で、治療のエフェクターとして役立つ場合がある。または抗体は、他の細胞を動員して細胞殺傷に実際に影響を与え得る。抗体は、薬物または毒素(化学療法剤、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素など)にコンジュゲートされ、単に標的化剤として役立つ場合もある。あるいは、エフェクターは、腫瘍細胞標的と直接的または間接的のいずれかで相互作用する表面分子を有するリンパ球であり得る。様々なエフェクター細胞には、細胞傷害性T細胞およびNK細胞が含まれる。治療様式の組合せ、すなわち直接細胞傷害活性およびErbB2の阻害または減少は、ErbB2を過剰発現しているがんの処置に治療的恩恵を提供する。
【0099】
免疫療法の一局面では、腫瘍細胞は、標的化が容易な、すなわち大部分の他の細胞に存在しない、いつくかのマーカーを有さなければならない。多数の腫瘍マーカーが存在し、これらのうちのいずれかは、本開示に関連して標的化に適切であり得る。一般的な腫瘍マーカーには、がん胎児性抗原、前立腺特異抗原、泌尿器腫瘍関連抗原、胎児抗原、チロシナーゼ(p97)、gp68、TAG-72、HMFG、シアリルルイス抗原、MucA、MucB、PLAP、エストロゲン受容体、ラミニン受容体、erbBおよびp155が含まれる。免疫療法の代替的な局面は、抗がん効果を免疫刺激効果と組み合わせることである。IL-2、IL-4、IL-12、GM-CSF、γ-IFNなどのサイトカイン、MIP-1、MCP-1、IL-8などのケモカインおよびFLT3リガンドなどの増殖因子を含めた免疫刺激分子も存在する。腫瘍サプレッサーと組み合わせて遺伝子送達を使用してまたはタンパク質としてのいずれかで免疫刺激分子を組み合わせることは、抗腫瘍効果を強化することが示されている(Ju et al., 2000)。さらに、これらの化合物のうちのいずれかに対する抗体は、本明細書議論の抗がん剤を標的化するために使用される場合がある。
【0100】
現在研究中または使用されている免疫療法の例は、免疫アジュバント、例えばウシ型結核菌(Mycobacterium bovis)、熱帯熱マラリア原虫、ジニトロクロロベンゼンおよび芳香族化合物(米国特許第5,801,005号および同第5,739,169号; Hui and Hashimoto, 1998; Christodoulides et al., 1998)、サイトカイン療法、例えばインターフェロンα、β、およびγ;IL-1、GM-CSFならびにTNF(Bukowski et al., 1998; Davidson et al., 1998; Hellstrand et al., 1998)遺伝子療法、例えばTNF、IL-1、IL-2、p53(Qin et al., 1998; Austin-Ward and Villaseca, 1998;米国特許第5,830,880号および同第5,846,945号)ならびにモノクローナル抗体、例えば、抗ガングリオシドGM2、抗HER-2、抗p185(Pietras et al., 1998; Hanibuchi et al., 1998;米国特許第5,824,311号)である。本明細書に記載の遺伝子サイレンシング療法と共に1つまたは複数の抗がん療法が採用される場合があることが、企図される。
【0101】
能動免疫療法では、抗原性ペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質、または自己もしくは同種異系腫瘍細胞組成物、すなわち「ワクチン」が、一般的に別個の細菌アジュバントと共に投与される(Ravindranath and Morton, 1991; Morton et al., 1992; Mitchell et al., 1990; Mitchell et al., 1993)。
【0102】
養子免疫療法では、患者の循環リンパ球、または腫瘍浸潤リンパ球が、インビトロで単離され、IL-2などのリンホカインによって活性化されるか、または腫瘍壊死のための遺伝子が形質導入されて、再投与される(Rosenberg et al., 1988; 1989)。
【0103】
D. 手術
がんを有する人間のおよそ60%がある種の手術を受ける。手術には、予防的、診断もしくは病期分類的、治癒的、および姑息的手術が含まれる。治癒的手術は、本開示の処置、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、遺伝子療法、免疫療法および/または代替療法などの他の治療法と共に使用され得るがんの処置である。
【0104】
治癒的手術は、がん性組織の全てまたは一部分が物理的に除去、切除、および/または破壊される摘除を含む。腫瘍の摘除は、腫瘍の少なくとも部分の物理的除去を表す。腫瘍の摘除に加えて、手術による処置には、レーザ手術、凍結手術、電気手術、および顕微鏡下(microscopically controlled)手術(モース氏手術)が含まれる。本開示が、表在がん、前がん、または偶発的な量の正常組織の除去と共に用いられる場合があることが、さらに企図される。
【0105】
がん性細胞、組織、または腫瘍の一部分または全てが切除されると、体内に空洞が形成される場合がある。追加的な抗がん療法によるこの区域の灌流、直接注射または局所適用によって、処置が達成される場合がある。そのような処置は、例えば1、2、3、4、5、6、もしくは7日毎、または1、2、3、4、および5週間毎または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12ヶ月毎に繰り返される場合がある。これらの処置は、同様に様々な投薬量であり得る。
【0106】
一部の特定の態様では、腫瘍の除去の後、本開示の化合物を用いた術後補助処置は、腫瘍の再発を減少させるのに特に効果的であると考えられる。追加的に、本開示の化合物を術前補助の設定で使用することもできる。
【0107】
E. 他の薬剤
他の薬剤が本開示で使用される場合があることが企図される。これらの追加的な薬剤には、免疫調節剤、細胞表面受容体およびギャップ結合のアップレギュレーションに影響を与える薬剤、細胞増殖抑制剤および分化剤、細胞接着阻害剤、アポトーシス誘導因子に対する過剰増殖細胞の感受性を増大させる薬剤、または他の生物学的薬剤が含まれる。免疫調節剤には、腫瘍壊死因子;インターフェロンα、β、およびγ;IL-2および他のサイトカイン;F42Kおよび他のサイトカイン類似体;またはMIP-1、MIP-1β、MCP-1、RANTES、および他のケモカインが含まれる。細胞表面受容体またはFas/Fasリガンド、DR4もしくはDR5/TRAIL(Apo-2リガンド)などのそれらのリガンドのアップレギュレーションは、過剰増殖細胞に対するオートクリンまたはパラクリン効果を確立することによって本開示のアポトーシス誘導能を増強することが、さらに企図される。ギャップ結合の数を増加させることにより細胞間シグナル伝達を増大させることは、近隣の過剰増殖細胞集団に対する抗過剰増殖効果を増大させる。他の態様では、処置の抗過剰増殖効力を改善するために細胞増殖抑制剤または分化剤が、本開示と共に使用される場合がある。細胞接着阻害剤は、本開示の効力を改善すると企図される。細胞接着阻害剤の例は、局所接着キナーゼ(FAK)阻害剤およびロバスタチンである。抗体c225などのアポトーシスに対する過剰増殖細胞の感受性を増大させる他の薬剤を、処置の効力を改善するために本開示と共に使用することもできることが、さらに企図される。
【0108】
細胞傷害性化学療法薬の導入後にがんの治療法に多くの進歩があった。しかし、化学療法の成り行きの1つは、薬物耐性表現型の発生/獲得および多剤耐性の発生である。薬物耐性の発生は、そのような腫瘍の処置における大きな障害のままであり、したがって、遺伝子療法などの代替アプローチの明らかな必要性がある。
【0109】
化学療法、放射線療法または生物学的療法と共に使用するための別の形態の治療法には、患者の組織が高温(最大106°F)に曝露される手技である温熱療法が含まれる。外部または内部加熱装置が、局所、領域、または全身温熱療法の適用に関与する場合がある。局所温熱療法は、腫瘍などの小さい区域に熱を適用することを伴う。体外の装置から腫瘍を標的とする高周波を用いて外部から熱を発生する場合がある。内部熱は、細い加熱されたワイヤまたは温水が満たされた中空チューブ、埋め込まれたマイクロ波アンテナ、またはラジオ波電極を含む無菌プローブを必要とし得る。
【0110】
領域療法のために、患者の器官または四肢が加熱されるが、領域療法は、磁石などの高エネルギーを産生する装置を使用して達成される。あるいは、患者の血液の一部が取り出され、加熱され、その後内部加熱されることになる区域に灌流される場合がある。全身加熱は、がんが身体全体に広がった場合に実行され得る。温水ブランケット、熱ワックス、誘導コイル、および熱チャンバーが、この目的のために使用され得る。
【0111】
当業者は、"Remington's Pharmaceutical Sciences" 15th Edition, chapter 33の特に624〜652ページを参照されたい。処置されている対象の状態に依存して、投薬量に必然的にいくらかの変動が起こる。いずれにせよ投与責任者が、個別の対象に適切な用量を決定する。そのうえ、ヒトへの投与のために、調製物は、FDAの生物製剤基準事務局によって要求されるような無菌性、発熱性、全般的な安全性および純度の基準に適合すべきである。
【0112】
F. 抗生物質
「抗生物質」という用語は、細菌の成長を阻害することまたは細菌を殺傷することのいずれかにより細菌感染症を処置するために使用され得る薬物である。理論に縛られることなく、抗生物質は、細菌を殺傷する殺菌剤または細菌の成長を減速または防止する静菌剤の2つの主なクラスに分類することができると考えられる。
【0113】
最初の市販の抗生物質は、1930年代に発売された。それ以来、多くの異なる抗生物質が開発され、広く処方されてきた。2010年に、平均して年間でアメリカ人5人中4人が抗生物質を処方されている。抗生物質の普及により、細菌は、特定の抗生物質および抗菌メカニズムに対する耐性を発生し始めた。理論に縛られることなく、別の抗生物質と組み合わせた抗生物質の使用は、耐性をモジュレートし、一方または両方の薬剤の効力を強化する場合がある。
【0114】
一部の態様では、抗生物質を、幅広いクラスに分けることができる。一部の態様では、本開示の化合物は、別の抗生物質と共に使用される場合がある。一部の態様では、化合物は、特定の細菌型を標的とする狭域抗生物質と共に使用される場合がある。殺菌性抗生物質の一部の非限定的な例には、ペニシリン、セファロスポリン、ポリミキシン、リファマイシン、リピアルマイシン、キノロン、およびスルホンアミドが含まれる。静菌性抗生物質の一部の非限定的な例には、マクロライド、リンコサミド、またはテトラサイクリンが含まれる。一部の態様では、抗生物質は、カナマイシンおよびストレプトマイシンなどのアミノグリコシド、リファキシミンおよびゲルダナマイシンなどのアンサマイシン、ロラカルベフなどのカルバセフェム、エルタペネム、イミペネムなどのカルバペネム、セファレキシン、セフィキシム、セフェピム、およびセフトビプロールなどのセファロスポリン、バンコマイシンもしくはテイコプラニンなどの糖ペプチド、リンコマイシンおよびクリンダマイシンなどのリンコサミド、ダプトマイシンなどのリポペプチド、クラリスロマイシン、スピラマイシン、アジスロマイシン、およびテリスロマイシンなどのマクロライド、アズトレオナムなどのモノバクタム、フラゾリドンおよびニトロフラントインなどのニトロフラン、リネゾリドなどのオキサゾリドノン、アモキシシリン、アズロシリン、フルクロキサシリン、およびペニシリンGなどのペニシリン、バシトラシン、ポリミキシンB、およびコリスチンなどの抗生物質ポリペプチド、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、およびガチフロキサシンなどのキノロン、スルファジアジン銀、マフェナイド(mefenide)、スルファジメトキシン、もしくはスルファサラジンなどのスルホンアミド、またはデメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、もしくはテトラサイクリンなどのテトラサイクリンである。一部の態様では、化合物を、シクロセリン、カプレオマイシン、エチオナミド、リファンピシン、リファブチン、リファペンチン、およびストレプトマイシンなどのミコバクテリアに対して作用する薬物と組み合わせることもできる。組合せ療法のために企図される他の抗生物質には、アルスフェナミン、クロラムフェニコール、ホスホマイシン、フシジン酸、メトロニダゾール、ムピロシン、プラテンシマイシン、キヌプリスチン、ダルホプリスチン、チアンフェニコール、チゲサイクリン、チニダゾール、またはトリメトプリムが含まれ得る。
【0115】
G. 抗ウイルス薬
「抗ウイルス薬」または「抗ウイルス剤」という用語は、ウイルス感染症を処置するために使用され得る薬物である。一般に、抗ウイルス剤は、細胞へのウイルス侵入を防止するおよびウイルス合成を阻害するという2つの主なメカニズムにより作用する。理論に縛られることなく、ウイルスの複製は、ウイルス関連タンパク質を模倣することで細胞性受容体を遮断する薬剤または細胞性受容体を模倣することでウイルス関連タンパク質を遮断する薬剤のいずれかを使用することによって阻害することができる。さらに、ウイルスの外被の除去を引き起こす薬剤も抗ウイルス剤として使用することができる。
【0116】
ウイルス阻害の第2のメカニズムは、ウイルス合成を阻止または妨害することである。そのような薬物は、逆転写酵素、インテグラーゼ、転写因子、またはリボザイムを含めた、ウイルスDNAの複製に関連する異なるタンパク質を標的とすることができる。追加的に、治療剤は、アンチセンスDNA系統として作用すること、タンパク質のプロセシングもしくは集合の形成を阻害すること、またはウイルスプロテアーゼ阻害剤として作用することによって翻訳を妨害する。最後に、抗ウイルス剤は、細胞におけるウイルス産生後のウイルス放出を追加的に阻害することもできる。
【0117】
追加的に、抗ウイルス剤は、ウイルス感染と闘うように身体自体の免疫系をモジュレートすることもできる。理論に縛られることなく、免疫系を刺激する抗ウイルス剤は、多種多様なウイルス感染症で使用され得る。
【0118】
一部の態様では、本開示は、上記抗ウイルス剤との組合せ療法において開示の化合物を使用する方法を提供する。一部の非限定的な例では、抗ウイルス剤は、アバカビル、アシクロビル(aciclovir)、アシクロビル(acyclovir)、アデフォビル、アマンタジン、アンプレナビル、アムプリゲン(ampligen)、アルビドール、アタザナビル、アトリプラ、バラビル(balavir)、ボセプレビレルテット(boceprevirertet)、シドホビル、コンビビル、ドルテグラビル、ダルアビル(daruavir)、デラビルジン、ジダノシン、ドコサノール、エドクスジン、エファビレンツ、エムトリシタビン、エンフビルチド、エンテカビル、エコリーバー(ecoliever)、ファムシクロビル、ホミビルセン、ホスアンプレナビル、ホスカルネット、ホスホネット、ガンシクロビル、イバシタビン、イムノビル(imunovir)、イドクスウリジン、イミキモド、インジナビル、イノシン、インターフェロンI型、II型、およびIII型、ラミブジン、ロピナビル、ロビリド、マラビロク、モロキシジン、メチサゾン、ネルフィナビル、ネビラピン、ネクサビル(nexavir)、オセルタミビル、ペンシクロビル、ペラミビル、プレコナリル、ポドフィロトキシン、ラルテグラビル、リバビリン、リマンタジン、リトナビル、ピラミジン、サキナビル、ソホスブビル、スタブジン、テラプレビル、テノホビル、テノホビルジソプロキシル、チプラナビル、トリフルリジン、トリジビル、トロマンタジン、ツルバダ、トラポルベド(traporved)、バラシクロビル、バルガンシクロビル、ビクリビロク、ビダラビン、ビラミジン、ザルシタビン、ザナミビル、またはジドブジンである。一部の態様では、抗ウイルス剤は、抗レトロウイルス剤、融合阻害剤、インテグラーゼ阻害剤、インターフェロン、ヌクレオシド類似体、プロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、相乗的増強剤、またはチャノキ油などの天然産物である。
【0119】
前記治療法のうちのいずれかは、がんまたはその感染症を処置するのにそれ自体有用であることが判明する場合があることも指摘されるべきである。
【0120】
IV. 定義
化学基に関連して使用される場合、「水素」は、-Hを意味し;「ヒドロキシ」は、-OHを意味し;「オキソ」は、=Oを意味し;「カルボニル」は、-C(=O)-を意味し;「カルボキシ」は、-C(=O)OH(-COOHまたは-CO
2Hとも表記される)を意味し;「ハロ」は、独立して-F、-Cl、-Brまたは-Iを意味し;「アミノ」は、-NH
2を意味し;「ヒドロキシアミノ」は、-NHOHを意味し;「ニトロ」は、-NO
2を意味し;イミノは、=NHを意味し;「シアノ」は、-CNを意味し;「イソシアネート」は、-N=C=Oを意味し;「アジド」は、-N
3を意味し;一価の状況で、「ホスフェート」は、-OP(O)(OH)
2またはその脱プロトン化形態を意味し;二価の状況で、「ホスフェート」は、-OP(O)(OH)O-またはその脱プロトン化形態を意味し;「メルカプト」は、-SHを意味し;「チオ」は、=Sを意味し;「スルホニル」は、-S(O)
2-を意味し;「スルフィニル」は、-S(O)-を意味する。
【0121】
化学式に関連して、記号「-」は、単結合を意味し、「=」は、二重結合を意味し、「≡」は、三重結合を意味する。記号
は、存在する場合に単結合または二重結合のいずれかである、任意選択の結合を表す。記号
は、単結合または二重結合を表す。したがって、式
は、例えば、
を包含する。また、1つのそのような環原子が、1つを超える二重結合の部分を形成することはないことが理解されている。さらに、1つまたは2つのステレオジェニックな原子を繋いでいる場合の共有結合記号「-」は、いかなる好ましい立体化学も示さないことに留意されたい。その代わりに、この記号は、全ての立体異性体およびその混合物を包含する。結合に対して垂直に描かれる場合の記号
(例えば、メチルについて
)は、基の結合点を示す。結合点は、典型的には、読者が結合点を明白に特定することを助けるために、より大きな基についてこの方法で特定されているだけであることに留意されたい。記号
は、楔印の太い方の端に結合した基が「紙面から手前」にある単結合を意味する。記号
は、楔印の太い方の端に結合した基が「紙面から奥」にある単結合を意味する。記号
は、二重結合周囲の形状(例えば、EまたはZのいずれか)が定義されていない単結合を意味する。したがって、両方の選択肢およびその組合せが意図される。本出願に示される構造の原子上の任意の未定義の結合価は、その原子に結合する水素原子を暗黙的に表す。炭素原子上の太い点は、その炭素に結合する水素が紙面から外に方向付けられていることを示す。
【0122】
基「R」が、環系上の「浮動基」として描かれる場合、例えば、式
では、Rは、安定な構造が形成されるかぎり、描かれた、暗示された、または明白に定義された水素を含む、環原子のうちのいずれかに結合する任意の水素原子に取って代わり得る。基「R」が、縮合環系上の「浮動基」として描かれる場合、例えば式
では、Rは、特に明記されないかぎり、どちらかの縮合環の環原子のうちのいずれかに結合する任意の水素に取って代わり得る。置換可能な水素には、安定な構造が形成されるかぎり、描かれた水素(例えば、上式の窒素に結合する水素)、暗示された水素(例えば、示されていないが、存在することが理解される上式の水素)、明白に定義された水素、および存在が環原子の同一性に依存する任意選択の水素(例えば、Xが-CH-と等しい場合に基Xに結合する水素)が含まれる。描かれた例では、Rは、縮合環系の五員環または六員環のいずれかに存在し得る。上式では、カッコ内の基「R」の直後の下付き文字「y」は、数値変数を表す。特に明記しないかぎり、この変数は、0、1、2、または2よりも大きな任意の整数であることができ、環または環系の置換可能な水素原子の最大数によってのみ制限される。
【0123】
化学基および化合物のクラスについて、基またはクラスにおける炭素原子数は、以下に示される通りである:「Cn」は、基/クラスにおける炭素原子の正確な数(n)を定義する。「C≦n」は、基/クラス中にあることができる炭素原子の最大数(n)を定義し、最小数は、問題の基/クラスにとって可能なかぎり小さく、例えば、基「アルケニル
(C≦8)」またはクラス「アルケン
(C≦8)」における炭素原子の最小数は、2であることが理解される。1から10個の炭素原子を有するアルコキシ基を指し示す「アルコキシ
(C≦10)」と比較されたい。「C
n-n'」は、基における炭素原子の最小数(n)および最大数(n')の両方を定義する。したがって、「アルキル
(C2-10)」は、2から10個の炭素原子を有するアルキル基を指し示す。これらの炭素数の表示は、それが修飾する化学基またはクラスに先行または後続する場合があり、意味にいかなる変更も示さずにカッコに囲まれている場合または囲まれていない場合がある。したがって、「C5オレフィン」、「C5-オレフィン」、「オレフィン
(C5)」、および「オレフィン
C5」という用語は、全て同義である。本明細書において定義される化学基または化合物クラスのいずれかが、「置換」という用語によって修飾されている場合、水素原子を置換している部分におけるいかなる炭素原子も計数されない。したがって、合計で7つの炭素原子を有するメトキシヘキシルは、置換アルキル
(C1-6)の一例である。
【0124】
化合物または化学基を修飾するために使用される場合の「飽和」という用語は、該化合物または化学基が、下に注記されたことを除き、炭素-炭素二重結合も炭素-炭素三重結合も有さないことを意味する。該用語が原子を修飾するために使用される場合、それは、該原子がいかなる二重結合または三重結合の部分でもないことを意味する。置換バージョンの飽和基の場合、1つまたは複数の炭素酸素二重結合または炭素窒素二重結合が存在し得る。そのような結合が存在するならば、ケト-エノール互変異性またはイミン/エナミン互変異性の部分として発生し得る炭素-炭素二重結合は除外されない。用語「飽和」が、物質の溶液を修飾するために使用される場合、それは、該物質がそれ以上その溶液中に溶解できないことを意味する。
【0125】
「置換」という修飾語なしに使用される場合の「脂肪族」という用語は、そのように修飾された化合物または化学基が非環式または環式であるが、非芳香族炭化水素化合物または基であることを示す。脂肪族化合物/基において、炭素原子は、直鎖、分岐鎖、または非芳香環(脂環式)として一緒に結合することができる。脂肪族化合物/基は、炭素-炭素単結合により結合する飽和(アルカン/アルキル)あるいは1つもしくは複数の炭素-炭素二重結合(アルケン/アルケニル)または1つもしくは複数の炭素-炭素三重結合(アルキン/アルキニル)を有する不飽和であることができる。
【0126】
化合物または化学基を修飾するために使用される場合の「芳香族」という用語は、完全に共役した環状π系の4n+2個の電子を有する原子の平面状不飽和環を表す。
【0127】
「置換」という修飾語なしに使用される場合の「アルキル」という用語は、結合点としての炭素原子および直鎖または分岐非環式構造を有し、炭素および水素以外の原子を有さない一価飽和脂肪族基を表す。基-CH
3(Me)、-CH
2CH
3(Et)、-CH
2CH
2CH
3(n-Prまたはプロピル)、-CH(CH
3)
2(i-Pr、
iPrまたはイソプロピル)、-CH
2CH
2CH
2CH
3(n-Bu)、-CH(CH
3)CH
2CH
3(sec-ブチル)、-CH
2CH(CH
3)
2(イソブチル)、-C(CH
3)
3(tert-ブチル、t-ブチル、t-Buまたは
tBu)、および-CH
2C(CH
3)
3(ネオペンチル)は、アルキル基の非限定的な例である。「置換」という修飾語なしに使用される場合の「アルカンジイル」という用語は、結合点としての1つまたは2つの飽和炭素原子および直鎖または分岐非環式構造を有し、炭素-炭素二重または三重結合、および炭素および水素以外の原子を有さない二価飽和脂肪族基を表す。基-CH
2-(メチレン)、-CH
2CH
2-、-CH
2C(CH
3)
2CH
2-、および-CH
2CH
2CH
2-は、アルカンジイル基の非限定的な例である。「置換」という修飾語なしに使用される場合の「アルキリデン」という用語は、RおよびR'が独立して水素またはアルキルである二価基=CRR'を表す。アルキリデン基の非限定的な例には、=CH
2、=CH(CH
2CH
3)、および=C(CH
3)
2が含まれる。「アルカン」は、式H-Rを有する化合物のクラスを表し、式中、Rは、この用語が上に定義されるようなアルキルである。これらの用語のいずれかが、「置換」という修飾語と共に使用される場合、1つまたは複数の水素原子は、-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH
2、-NO
2、-CO
2H、-CO
2CH
3、-CN、-SH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-C(O)CH
3、-NHCH
3、-NHCH
2CH
3、-N(CH
3)
2、-C(O)NH
2、-C(O)NHCH
3、-C(O)N(CH
3)
2、-OC(O)CH
3、-NHC(O)CH
3、-S(O)
2OH、または-S(O)
2NH
2により独立して置換されている。以下の基:-CH
2OH、-CH
2Cl、-CF
3、-CH
2CN、-CH
2C(O)OH、-CH
2C(O)OCH
3、-CH
2C(O)NH
2、-CH
2C(O)CH
3、-CH
2OCH
3、-CH
2OC(O)CH
3、-CH
2NH
2、-CH
2N(CH
3)
2、および-CH
2CH
2Clは、置換アルキル基の非限定的な例である。「ハロアルキル」という用語は、水素原子の置換がハロ(すなわち-F、-Cl、-Br、または-I)に限定されることにより、炭素、水素およびハロゲンを除き他の原子が存在しない、置換アルキルのサブセットである。基-CH
2Clは、ハロアルキルの非限定的な例である。「フルオロアルキル」という用語は、水素原子の置換がフルオロに限定されることにより、炭素、水素およびフッ素を除き他の原子が存在しない、置換アルキルのサブセットである。基-CH
2F、-CF
3、および-CH
2CF
3は、フルオロアルキル基の非限定的な例である。
【0128】
「置換」という修飾語なしに使用される場合の「シクロアルキル」という用語は、結合点としての炭素原子であって、1つまたは複数の非芳香環構造の部分を形成している炭素原子を有し、炭素-炭素二重または三重結合ならびに炭素および水素以外の原子を有さない一価飽和脂肪族基を表す。非限定的な例には、-CH(CH
2)
2(シクロプロピル)、シクロブチル、シクロペンチル、またはシクロヘキシル(Cy)が含まれる。「置換」という修飾語なしに使用される場合の「シクロアルカンジイル」という用語は、結合点としての2つの炭素原子を有し、炭素-炭素二重または三重結合、ならびに炭素および水素以外の原子を有さない二価飽和脂肪族基を表す。基
は、シクロアルカンジイル基の非限定的な例である。「シクロアルカン」は、式H-Rを有する化合物のクラスを表し、式中、Rは、この用語が上に定義されるようなシクロアルキルである。これらの用語のいずれかが、「置換」という修飾語と共に使用される場合、1つまたは複数の水素原子は、-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH
2、-NO
2、-CO
2H、-CO
2CH
3、-CN、-SH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-C(O)CH
3、-NHCH
3、-NHCH
2CH
3、-N(CH
3)
2、-C(O)NH
2、-C(O)NHCH
3、-C(O)N(CH
3)
2、-OC(O)CH
3、-NHC(O)CH
3、-S(O)
2OH、または-S(O)
2NH
2により独立して置換されている。
【0129】
「置換」という修飾語なしに使用される場合の「ヘテロシクロアルキル」という用語は、結合点としての炭素原子または窒素原子であって、1つまたは複数の非芳香環構造の部分を形成している炭素原子または窒素原子を有する一価非芳香族基を表し、ここで、環原子の少なくとも1つは、窒素、酸素または硫黄であり、ここで、ヘテロシクロアルキル基は、炭素、水素、窒素、酸素および硫黄以外の原子から構成されない。1つ超の環が存在する場合、環は、縮合されている場合または縮合されていない場合がある。本明細書に使用されるように、該用語は、環または環系に結合する1つまたは複数のアルキル基(炭素数の制限が許容される)の存在を除外しない。また、結果として生じる基が非芳香族のままであることを条件に、該用語は、環または環系における1つまたは複数の二重結合の存在を除外しない。ヘテロシクロアルキル基の非限定的な例には、アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフラニル、テトラヒドロピラニル、ピラニル、オキシラニル、およびオキセタニルが含まれる。「N-ヘテロシクロアルキル」という用語は、結合点としての窒素原子を有するヘテロシクロアルキル基を表す。N-ピロリジニルは、そのような基の例である。これらの用語が「置換」という修飾語と共に使用される場合、1つまたは複数の水素原子は、-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH
2、-NO
2、-CO
2H、-CO
2CH
3、-CN、-SH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-C(O)CH
3、-NHCH
3、-NHCH
2CH
3、-N(CH
3)
2、-C(O)NH
2、-C(O)NHCH
3、-C(O)N(CH
3)
2、-OC(O)CH
3、-NHC(O)CH
3、-S(O)
2OH、または-S(O)
2NH
2により独立して置換されている。
【0130】
「置換」という修飾語なしに使用される場合の「アシル」という用語は、基-C(O)Rを表し、式中、Rは、用語が上に定義されるような水素、アルキル、シクロアルキル、またはアリールである。基、-CHO、-C(O)CH
3(アセチル、Ac)、-C(O)CH
2CH
3、-C(O)CH(CH
3)
2、-C(O)CH(CH
2)
2、-C(O)C
6H
5、および-C(O)C
6H
4CH
3は、アシル基の非限定的な例である。「チオアシル」は、基-C(O)Rの酸素原子が硫黄原子により置換されていることを除き、類似の方法で定義される-C(S)Rである。「アルデヒド」という用語は、-CHO基に結合した上記と同義のアルキル基に対応する。これらの用語のいずれかが、「置換」という修飾語と共に使用される場合、1つまたは複数の水素原子(カルボニルまたはチオカルボニル基がもしあれば、その炭素原子に直接結合する水素原子を含む)は、-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH
2、-NO
2、-CO
2H、-CO
2CH
3、-CN、-SH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-C(O)CH
3、-NHCH
3、-NHCH
2CH
3、-N(CH
3)
2、-C(O)NH
2、-C(O)NHCH
3、-C(O)N(CH
3)
2、-OC(O)CH
3、-NHC(O)CH
3、-S(O)
2OH、または-S(O)
2NH
2により独立して置換されている。基、-C(O)CH
2CF
3、-CO
2H(カルボキシル)、-CO
2CH
3(メチルカルボキシル)、-CO
2CH
2CH
3、-C(O)NH
2(カルバモイル)、および-CON(CH
3)
2は、置換アシル基の非限定的な例である。
【0131】
「置換」という修飾語なしに使用される場合の「アルコキシ」という用語は、基-ORを表し、式中、Rは、用語が上に定義されるようなアルキルである。非限定的な例には、-OCH
3(メトキシ)、-OCH
2CH
3(エトキシ)、-OCH
2CH
2CH
3、-OCH(CH
3)
2(イソプロポキシ)、-OC(CH
3)
3(tert-ブトキシ)、-OCH(CH
2)
2、-O-シクロペンチル、および-O-シクロヘキシルが含まれる。「置換」という修飾語なしに使用される場合の「シクロアルコキシ」、「アルケニルオキシ」、「アルキニルオキシ」、「アリールオキシ」、「アラルコキシ(aralkoxy)」、「ヘテロアリールオキシ」、「ヘテロシクロアルコキシ」、および「アシルオキシ」という用語は、-ORとして定義される基を表し、式中、Rは、それぞれシクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、およびアシルである。「アルコキシジイル」という用語は、二価基-O-アルカンジイル-、-O-アルカンジイル-O-、または-アルカンジイル-O-アルカンジイル-を表す。「置換」という修飾語なしに使用される場合の「アルキルチオ」および「アシルチオ」という用語は、基-SRを表し、式中、Rは、それぞれアルキルおよびアシルである。「アルコール」という用語は、上記と同義のアルカンであって、水素原子の少なくとも1つが、ヒドロキシ基により置換されているアルカンに対応する。「エーテル」という用語は、上記と同義のアルカンであって、水素原子の少なくとも1つが、アルコキシ基により置換されているアルカンに対応する。これらの用語のいずれかが、「置換」という修飾語と共に使用される場合、1つまたは複数の水素原子は、-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH
2、-NO
2、-CO
2H、-CO
2CH
3、-CN、-SH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-C(O)CH
3、-NHCH
3、-NHCH
2CH
3、-N(CH
3)
2、-C(O)NH
2、-C(O)NHCH
3、-C(O)N(CH
3)
2、-OC(O)CH
3、-NHC(O)CH
3、-S(O)
2OH、または-S(O)
2NH
2により独立して置換されている。
【0132】
「置換」という修飾語なしに使用される場合の「アルキルアミノ」という用語は、基-NHRを表し、式中、Rは、用語が上に定義されるようなアルキルである。非限定的な例には、-NHCH
3および-NHCH
2CH
3が含まれる。「置換」という修飾語なしに使用される場合の「ジアルキルアミノ」という用語は、基-NRR'を表し、式中、RおよびR'は、同じもしくは異なるアルキル基であることができる、またはRおよびR'は、一緒になって、アルカンジイルを表すことができる。ジアルキルアミノ基の非限定的な例には、-N(CH
3)
2および-N(CH
3)(CH
2CH
3)が含まれる。「置換」という修飾語なしに使用される場合の「シクロアルキルアミノ」、「アルケニルアミノ」、「アルキニルアミノ」、「アリールアミノ」、「アラルキルアミノ」、「ヘテロアリールアミノ」、「ヘテロシクロアルキルアミノ」、「アルコキシアミノ」、および「アルキルスルホニルアミノ」という用語は、-NHRとして定義される基を表し、式中、Rは、それぞれシクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、アルコキシ、およびアルキルスルホニルである。アリールアミノ基の非限定的な例は、-NHC
6H
5である。「置換」という修飾語なしに使用される場合の「アミド」(アシルアミノ)という用語は、基-NHRを表し、式中、Rは、用語が上に定義されるようなアシルである。アミド基の非限定的な例は、-NHC(O)CH
3である。「置換」という修飾語なしに使用される場合の「アルキルイミノ」という用語は、二価基=NRを表し、式中、Rは、用語が上に定義されるようなアルキルである。「アルキルアミノジイル」という用語は、二価基-NH-アルカンジイル-、-NH-アルカンジイル-NH-、または-アルカンジイル-NH-アルカンジイル-を表す。これらの用語のいずれかが、「置換」という修飾語と共に使用される場合、炭素原子に結合する1つまたは複数の水素原子は、-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH
2、-NO
2、-CO
2H、-CO
2CH
3、-CN、-SH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-C(O)CH
3、-NHCH
3、-NHCH
2CH
3、-N(CH
3)
2、-C(O)NH
2、-C(O)NHCH
3、-C(O)N(CH
3)
2、-OC(O)CH
3、-NHC(O)CH
3、-S(O)
2OH、または-S(O)
2NH
2により独立して置換されている。基-NHC(O)OCH
3および-NHC(O)NHCH
3は、置換アミド基の非限定的な例である。
【0133】
特許請求の範囲および/または明細書において「含む」という用語と共に使用される場合の単語「1つの(a)」または「1つの(an)」の使用は、「1つ」を意味し得るが、これは、「1つまたは複数」、「少なくとも1つ」および「1つまたは1つ超」の意味とも一致する。
【0134】
本出願にわたり、「約」という用語は、値が、該値を決定するために採用されている装置もしくは方法について誤差の固有の変動、または試験対象の間に存在する変動を含むことを示すために使用される。
【0135】
「活性成分」(AI)(活性化合物、活性物質、活性薬剤、薬学的薬剤、薬剤、生物学的活性分子、または治療用化合物とも呼ばれる)は、生物学的に活性である薬学的薬物または駆除薬中の成分である。活性薬学的成分(API)およびバルク原薬(bulk active)という類似の用語も医学において使用され、活性物質という用語が、駆除薬製剤のために使用される場合がある。
【0136】
「含む(comprise)」、「有する」および「含む(include)」という用語は、非限定的な連結動詞である。「含む(comprises)」、「含むこと(comprising)」、「有する」、「有すること」、「含む(includes)」および「含むこと(including)」などの、これらの動詞のうちの1つまたは複数の任意の形態または時制も、非限定的である。例えば、1つまたは複数の段階を「含む(comprise)」、「有する」または「含む(include)」任意の方法は、それらの1つまたは複数の段階を有するだけに限らず、掲載されていない他の段階も包含する。
【0137】
明細書および/または特許請求の範囲において使用されるような「有効な」という用語は、所望の、予期された、または意図された結果を達成するために十分なことを意味する。化合物を用いて患者または対象を処置する状況で使用する場合の「有効量」、「治療有効量」または「薬学的有効量」は、疾患を治療または予防するために対象または患者に投与される場合に、該疾患のそのような治療または予防をもたらすために十分な量である、化合物の量を意味する。
【0138】
「賦形剤」は、医薬、薬学的組成物、製剤、または薬物送達システムの活性成分と一緒に製剤化される、薬学的に許容される物質である。賦形剤は、例えば、組成物を安定化するため、組成物を増量するため(したがって、この目的のために使用される場合、「増量剤」、「充填剤」、または「希釈剤」と呼ばれることが多い)、または薬物吸収を促進する、粘度を低下させる、もしくは溶解度を高めるなどの最終剤形中の活性成分に治療的強化を付与するために使用される場合がある。賦形剤には、薬学的に許容されるバージョンの抗付着剤、結合剤、コーティング剤、着色剤、崩壊剤、香味剤、流動促進剤、滑沢剤、保存剤、吸着剤、甘味剤、およびビヒクルが含まれる。活性成分を運搬するための媒質として役立つ主な賦形剤は、通常、ビヒクルと呼ばれる。賦形剤は、例えば、予期される有効期間にわたる変性または凝集の防止などのインビトロ安定性を助けることに加えて、粉末の流動性または固着防止特性を促進することなどによって活性物質の取扱いを援助するために、製造工程でも使用され得る。賦形剤の適性は、典型的には、投与経路、剤形、活性成分、および他の要因に応じて変動する。
【0139】
本明細書に使用される「IC
50」という用語は、得られる最大応答の50%である阻害用量を表す。この量的尺度は、どれだけ多くの特定の薬物または他の物質(阻害剤)が、所与の生物学的、生化学的または化学的過程(または過程の成分、すなわち酵素、細胞、細胞受容体もしくは微生物)を半分阻害するために必要であるかを示す。
【0140】
第1の化合物の「異性体」は、各分子が第1の化合物と同じ構成原子を含むが、それらの原子の三次元配置が異なる、別の化合物である。
【0141】
本明細書に使用される「患者」または「対象」という用語は、ヒト、サル、ウシ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、モルモット、またはそのトランスジェニック種などの生きた哺乳生物を表す。ある特定の態様では、患者または対象は、霊長類である。ヒト患者の非限定的な例は、成人、若年者、乳児および胎児である。
【0142】
本明細書において一般的に使用される「薬学的に許容される」は、健全な医学的判断の範囲内であり、ヒトおよび動物の組織、器官、および/または体液と接触した使用に適切であり、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を有さない、合理的なベネフィット/リスク比に見合った化合物、物質、組成物、および/または剤形を表す。
【0143】
「薬学的に許容される塩」は、上記に定義されるように薬学的に許容され、所望の薬理活性を有する、本発明の化合物の塩を意味する。そのような塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸;または1,2-エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、3-フェニルプロピオン酸、4,4'-メチレンビス(3-ヒドロキシ-2-エン-1-カルボン酸)、4-メチルビシクロ[2.2.2]オクタ-2-エン-1-カルボン酸、酢酸、脂肪族モノカルボン酸およびジカルボン酸、脂肪族硫酸、芳香族硫酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、炭酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクロペンタンプロピオン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、ヒドロキシナフトエ酸、乳酸、ラウリル硫酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコン酸、o-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、シュウ酸、p-クロロベンゼンスルホン酸、フェニル置換アルカン酸、プロピオン酸、p-トルエンスルホン酸、ピルビン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、酒石酸、tert-ブチル酢酸、トリメチル酢酸などの有機酸を用いて形成された酸付加塩が含まれる。薬学的に許容される塩には、存在する酸性プロトンが無機塩基または有機塩基と反応することができる場合に形成され得る塩基付加塩も含まれる。許容される無機塩基には、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アルミニウムおよび水酸化カルシウムが含まれる。許容される有機塩基には、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N-メチルグルカミンなどが含まれる。塩が全体として薬理学的に許容されるかぎり、本発明の任意の塩の一部を形成している特定の陰イオンまたは陽イオンは、重大ではないことを認識すべきである。薬学的に許容される塩ならびにその調製方法および使用方法の追加的な例は、Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, and Use(P. H. Stahl & C. G. Wermuth eds., Verlag Helvetica Chimica Acta, 2002)に示されている。
【0144】
「薬学的に許容される担体」、「薬物担体」、または単に「担体」は、化学薬剤の運搬、送達および/または輸送に関与する、活性成分医薬と一緒に製剤化された薬学的に許容される物質である。薬物担体は、例えば、薬物のバイオアベイラビリティーをモジュレートする、薬物代謝を減少させる、および/または薬物毒性を減少させるための制御放出技法を含めた、薬物の送達および有効性を改善するために、使用され得る。一部の薬物担体は、特定の標的部位への薬物送達の有効性を増加させる場合がある。担体の例には、リポソーム、ミクロスフェア(例えば、乳酸-グリコール酸コポリマー製)、アルブミンミクロスフェア、合成ポリマー、ナノファイバー、タンパク質-DNA複合体、タンパク質コンジュゲート、赤血球、ビロソーム、およびデンドリマーが含まれる。
【0145】
「薬学的薬物」(調剤、薬学的調製物、薬学的組成物、薬学的製剤、薬学的製品、医薬製品、医薬品、医薬、薬、または単に薬物とも呼ばれる)は、疾患を診断、治癒、治療、または予防するために使用される薬物である。活性成分(AI)(上に定義)は、生物学的に活性である薬学的薬物または駆除薬中の成分である。活性薬学的成分(API)およびバルク原薬という類似の用語も医学において使用され、活性物質という用語が、駆除薬製剤のために使用される場合がある。いくつかの医薬および駆除薬製品は、1種類超の活性成分を含有する場合がある。活性成分と対照的に、不活性成分は、通常、薬学的文脈で賦形剤(上に定義)と呼ばれる。
【0146】
「予防」または「予防すること」は、(1)疾患の危険および/もしくは素因があり得るが、まだ疾患の病理もしくは総合的症状のいずれかもしくは全てを経験もしくは提示していない対象もしくは患者における疾患の発症を阻害すること、ならびに/または(2)疾患の危険および/もしくは素因があり得るが、まだ疾患の病理もしくは総合的症状のいずれかもしくは全てを経験もしくは提示していない対象もしくは患者における疾患の病理もしくは総合的症状の開始を遅らせることを含む。
【0147】
「処置」または「処置すること」は、(1)疾患の病理もしくは総合的症状を経験もしくは提示している対象もしくは患者における疾患を阻害すること(例えば、病理および/もしくは総合的症状のさらなる発展を停止させること)、(2)疾患の病理もしくは総合的症状を経験もしくは提示している対象もしくは患者における疾患を寛解させること(例えば、病理および/もしくは総合的症状を逆転させること)、ならびに/または(3)疾患の病理もしくは総合的症状を経験もしくは提示している対象もしくは患者における疾患の任意の測定可能な減少をもたらすことを含む。
【0148】
上記定義は、参照により本明細書に組み入れられる任意の参照における任意の相反する定義に優先する。しかし、ある特定の用語が定義される事実は、未定義の任意の用語が不確定であることを示していると見なすべきではない。逆に、使用される全ての用語は、当業者が本開示の範囲および実施を認識することができるような用語で本発明を説明すると考えられる。
【実施例】
【0149】
V. 実施例
以下の実施例は、本開示の好ましい態様を示すために含まれるものである。以下の実施例に開示される技法が、本発明者らによって本開示の実施にうまく機能することが発見された技法を表し、したがって、その実施のための好ましい様式を構成すると考えられることが、当業者によって理解されるはずである。しかし、当業者は、本開示に照らして、開示されている具体的な態様に多くの変更を加えることができ、それでも本開示の精神および範囲から逸脱せずに同様または類似の結果を得ることができることを理解するはずである。
【0150】
実施例1 方法および材料
A. 材料
モノマー、2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート(DEA-MA)および2-アミノエチルメタクリレート(AMA-MA)をPolyscience Companyから購入した。卵白アルブミンおよびOVA
257-263、CpG ODNをInvivogenから購入した。ImjectアラムをThermo Scientificから購入し、LPSおよびポリ(I:C)をSigma-Aldrichから購入した。
は、Biomatikが合成した。PEG-PLAをAdvanced Polymer Materials Inc.(Montreal, QC, Canada)から購入した。他の溶媒および試薬をSigma-AldrichまたはFisher Scientific Incから購入した。
【0151】
B. メタクリレートモノマーの合成
モノマーAMA-MAを、使用前にイソプロパノール-酢酸エチル(3:7)中で2回再結晶させた。2-(エチルプロピルアミノ)エチルメタクリレート(EPA-MA)、2-(ジプロピルアミノ)エチルメタクリレート(DPA-MA)、2-(ジブチルアミノ)エチルメタクリレート(DBA-MA)および2-(ジペンチルアミノ)エチルメタクリレート(D5A-MA)、2-(ペンタメチレンイミノ)エチルメタクリレート(C6A-MA)、2-(ヘキサメチレンイミノ)エチルメタクリレート(C7A-MA)を含んでいるモノマーを、以前の刊行物に従って合成した(Zhou et al., 2011; 2012)。2-(ヘプタメチレンイミノ)エチルメタクリレート(C8A-MA)、2-(4-メチルピペリジネレン(piperidinelene)イミノ)エチルメタクリレート(C6S1A-MA)、2-(3,5-ジメチルピペリジネレンイミノ)エチルメタクリレート(C6S2A-MA)を含んでいる新しいモノマーを、以前に刊行された手順(Zhou et al., 2012)に従って合成した。新しいモノマーの化学的特徴づけは、以下である。
【0152】
2-(ヘプタメチレンイミノ)エチルメタクリレート(C8A-MA):
【0153】
2-(4-メチルピペリジネレンイミノ)エチルメタクリレート(C6S1A-MA):
【0154】
2-(3,5-ジメチルピペリジネレンイミノ)エチルメタクリレート(C6S2A-MA):
【0155】
C. PEG-b-PRブロックコポリマーの合成
以前に報告された類似の手順に従って、PEG-b-PRコポリマーを原子移動ラジカル重合(ATRP)により合成した(Tsavrevsky et al., 2007)。色素不含コポリマーをポリマーの特徴づけに使用した。手順を説明する例としてPEG-b-PDPAを使用する。まず、DPA-MA(1.48g、7mmol)、PMDETA(21μL、0.1mmol)、およびMeO-PEG
114-Br(0.5g、0.1mmol)を重合チューブに充填した。次に、2-プロパノール(2mL)とDMF(2mL)との混合物を添加して、モノマーおよび開始剤を溶解させた。酸素を除去するための凍結-脱気(pump)-融解の3サイクル後、CuBr(14mg、0.1mmol)を窒素雰囲気下で重合チューブ内に添加し、チューブを真空中で密封した。重合を40℃で10時間実施した。重合後、反応混合物をTHF 10mLで希釈し、中性Al
2O
3カラムを通過させて触媒を除去した。THF溶媒は、ロータリーエバポレーターにより除去した。残渣を蒸留水中で透析し、凍結乾燥して白色粉末を得た。合成後、ポリマーを
1H NMRおよびゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって特徴づけた。
【0156】
D. PEG-b-(PR-r-色素)ブロックコポリマーの合成
色素のコンジュゲーションのためにAMA-MAをPEG-b-PRコポリマーに導入した。PEG-b-(PR-r-AMA)コポリマーの合成は、上記手順に従った(Zhou et al., 2011; 2012)。AMA-MAモノマーと開始剤との仕込み比(比=1)を制御することによって、1つの第1アミノ基を各ポリマー鎖に導入した。合成後、PEG-b-(PR-r-AMA)(10mg)をDMF 2mLに溶解させた。次にNHS-エステル(色素-NHSに対して1.5当量)を添加した。一晩反応させた後、分取ゲル浸透クロマトグラフィーによってコポリマーを精製して(VarianによるPLgel Prep 10 m 10E3Å 300×250カラム、溶出液としてTHFを5mL/min)、遊離の色素分子を除去した。産生したPEG-b-(PR-r-色素)コポリマーを凍結乾燥し、保存のために-20℃に保った。
【0157】
E. ミセルナノ粒子の調製
以前に刊行されたような溶媒蒸発法に従ってミセルを調製した(Zhou et al. 2012)。PEG-b-PC7Aの例では、最初にコポリマー10mgをメタノール1mLに溶解させ、次に超音波処理しながら蒸留水4mLに滴下して加えた。マイクロ限外濾過システム(MW=100KD)を使用してこの混合物を4回濾過してTHFを除去した。次に、蒸留水を添加して、原液としてポリマー濃度を10mg/mLに調整した。ミセルの形成後、ナノ粒子を動的光散乱によって流体力学直径(Dh)について特徴づけた(DLS、Malvern MicroVモデル、He-Neレーザ、λ=632nm)。
【0158】
F. OVA-PC7Aア親和性アッセイ
ポリマーとタンパク質との相互作用を異なる比で検討するためにFRET実験を計画した。典型的な手順では、Cy3.5コンジュゲート型PC7A(100μg/mL)をPBS緩衝液(pH7.4)中でAlexa Fluor 647標識OVA(20μg/mL)と共にインキュベートした。0.5時間インキュベーション後に、日立蛍光光度計(F-7500モデル)を用いて蛍光発光スペクトルを得た。試料を590nmで励起させ、発光スペクトルを600から750nmで収集した。
【0159】
G. リンパ節撮像
NPが流入領域リンパ節に蓄積することができるかどうか検討するために、本発明者らは、PC7Aコポリマーをインドシアニングリーン(ICG、λ
ex/λ
em=800/820nm)で標識した。ICGでコードされたPC7A NP(30μg/マウス)をC57BL/6マウスの尾基部に皮下注射した。NPの分布を、臨床カメラ(SPY Elite(登録商標))を使用して撮像した。NPの注射の24時間後に動物を屠殺し、主要器官ならびに鼠径部および腋窩LNを切除および撮像した。
【0160】
H. ジスルフィド結合によるNPへのペプチド導入
ペプチドをPC7A NPのコアに導入するために、PEG-b-P(C7A-r-AMA)および(スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート)(SPDP、PC7Aの-NH
2に対して1.5の比)をフラスコの中でDMFにより溶解した。この混合物を室温で24時間撹拌した。この混合物をメタノールで希釈し、4回濾過して未反応のSDPDおよび副産物を除去した。次にSH-ペプチドをPBS(7.4)中に溶解し、ポリマー溶液中に添加した。6時間インキュベーション後に、この混合物を4回濾過して、未反応のペプチドおよび副産物を除去した。ペプチド-PC7Aコンジュゲートを凍結乾燥し、保存のために-80℃に保った。ミセル溶液の調製は、前記プロトコールを用いた。NPの表面にペプチドをコンジュゲーションするために、Fmoc-PC7Aを脱保護用のピペリジンで前処理したことを除き、同じ手順を使用した。
【0161】
I. 動物および細胞
全ての動物手技は、倫理コンプライアンスを守り、テキサス大学サウスウエスタン医療センターの施設内動物実験委員会の承認を受けて行われた。雌性C57BL/6マウス(6〜8週齢)をUTサウスウエスタン繁殖コアから得た。INF-α/βR
-/-マウスは親切にもDavid Farrar博士(UT Southwestern)から供与された。STING
gt/gtマウス、MyD88
-/-マウス、TRIF
-/-マウスC57BL/6- Tg(TcraTcrb)1100Mjb/J(CD45.2、H-2
b)(OT-I)マウス、C57BL/6- CD45.1マウスをJackson laboratoryから購入した。MyD88
-/-/TRIF
-/-マウスを本発明者らの研究室で交配した。cGas
-/-マウスを以前に記載したように生み出した
4。全てのこれらの系統をC57BL/6Jバックグラウンドで維持した。各実験について、盲検化された研究者がマウスを各群に無作為に割り付けた。STING
gt/gtおよびcGAS
-/- BMDMを対応するノックアウトマウスから得て、次に、M-CSF含有培地中で6〜7日間培養した。THP-1細胞をATCCから購入し、本発明者らは、以前に記載されたようにhSTINGおよびhcGASを標的とするshRNAを安定発現しているTHP-1細胞株を樹立し(Collins et al., 2015)、これらのTHP-1細胞株を、10% FBS、0.05% β-メルカプトエタノール(Sigma)、およびPen/strepを補充した懸濁RPMI培地(Gibco)中で成長させた。B16-OVA細胞は、親切にもMDアンダーソンがんセンターのPatrick Hwu博士から供与され、TC-1細胞は、親切にもジョンホプキンス大学のT. C. Wu博士から供与され、MC38細胞は、親切にもYangxin Fu博士(UT Southwestern)から供与された。マイコプラズマ混入キット(R&D)を使用して全ての細胞株を日常的に検査した。完全培地(DMEM、10% ウシ胎仔血清、100U/mL ペニシリンGナトリウムおよび100μg/mL ストレプトマイシン(Pen/Strep)、MEM可欠アミノ酸(全てInvitrogen製)および20μM β-メルカプトエタノール(β-ME))中で細胞を37℃および5% CO
2および正常レベルのO
2中で培養した。
【0162】
J. インビボ細胞傷害殺傷アッセイ
C57BL/6マウスの群に(OVA 10μg+ナノ粒子30μgまたは同用量を加えた他のアジュバント)をC57BL/6マウスの尾基部に皮下注射した。Imjectアラム(4mg/マウス、抗原溶液と50μL:50μL混合物)を製造業者が推奨する体積比により使用した。1週間後に、ナイーブC57BL/6マウスを屠殺し、脾臓細胞を収集した。脾臓細胞の半分にOVA
257-263またはE7
49-57ペプチドを37℃の完全培地中で2時間パルスした。パルスしていない細胞およびペプチドをパルスした細胞を無血清培地中にそれぞれ0.5または0.05μMのカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)で15分間標識した。等しい数(1×10
7個)のCFSE
low(OVAをパルスした細胞)およびCFSE
high(パルスしていない細胞)を一緒に混合し、免疫されたマウスに静脈内注射した。16時間後に、処置したマウスから血液を収集し、フローサイトメトリー分析に供した。CFSE
highおよびCFSE
lowの数を決定し、OVAペプチドをパルスした標的細胞の殺傷パーセンテージを計算するために使用した。特異的殺傷を、特異的溶解のパーセンテージ=[1-未導入対照比/実験比]×100として定義した。
【0163】
K. ELISAアッセイ
抗体検出のために、C57BL/6マウスの群に異なるワクチンを0日目および14日目に免疫した。21日目に、血液50μLを尾静脈から採取し、血清中の抗原特異的IgG1およびIgG2cをELISAにより測定した。ELISAアッセイのために、平底96ウェルプレート(Nunc, Rochester, NY)に50mM 炭酸緩衝液(pH9.6)中の濃度0.5μgタンパク質/ウェルのOVAタンパク質を4℃で一晩予備コーティングし、それを次に5%グリシンでブロッキングした。免疫された動物から得られた抗血清をPBS-0.05% Tween(PBS-T)、pH7.4中で10
2から10
6倍に系列希釈し、ウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートした。標識のために、ヤギ抗マウスIgG1およびIgG2c(HRP)(Abcam, Cambridge, MA)をPBS-T-1%BSA中に1:10,000の希釈で使用した。HRP基質を添加後、ELISAプレートリーダー(Bio-Rad, Hercules, CA)を用いて波長450nmで光学密度を決定した。
【0164】
L. インビボ細胞取込みアッセイ
抗原送達アッセイのために、C57BL/6マウスの尾基部での皮下注射によりPBS単独、OVA-AF647、またはナノ粒子+OVA-AF647処置を行った。注射の24時間後に、マウスを屠殺し、鼠径部リンパ節を取り出し、26ゲージ針で掻き裂き、次に70μm細胞ストレーナー(BD)に通して、細胞懸濁液を回収した。リンパ節細胞懸濁液をPIおよび抗CD11c-FITC、抗CD11b-パシフィックブルー、抗B220-APC-Cy7、抗CD8a-PE-Cy7で染色した。4つの主なAPC集団(CD8α
+DC細胞(CD11c
+CD11b
-B220
-CD8α
+)、CD8α
-DC細胞(CD11c
+CD8α
-)、マクロファージ細胞(CD11b
+CD11c
-B220
-)、B細胞(B220
+CD11c
-))をOVA-AF647陽性細胞について分析した。抗CD86-PEを用いた染色によりAPCの成熟を測定した。
【0165】
ナノ粒子取込みおよびSTING活性化アッセイのために、C57BL/6マウスの尾基部での皮下注射を、PBS単独、またはPC7A-Cy5(30μg)処置により実施した。注射の24時間後に、マウスを屠殺し、鼠径部リンパ節および皮下組織を取り出し、コラゲナーゼIV (Sigma-Aldrich)溶液中において37℃で25分間消化した。次に組織を70μm細胞ストレーナー(BD)に通して、細胞懸濁液を回収した。全ての細胞懸濁液をPIおよび抗CD11c-FITC、抗MHCII-BV605、抗CD45.2-Apc-Cy7で染色した。細胞内pIRF3染色のために、固定/透過処理キット(BD Cat#554714)により細胞を透過処理した。マウス血清を用いてブロッキング後、細胞をpIRF3抗体(Cell Signaling, Cat # 4947)で染色し、続いて抗ウサギIgG-PE二次抗体(Biolegend)で染色した。染色後の細胞懸濁液にフローサイトメトリー(LSRII, BD)を行い、FlowJo(登録商標)ソフトウェア(Tree Star Inc. Ashland, OR)で分析した。
【0166】
M. インビトロ取込みおよび交差提示アッセイ
C57BL/6Jマウスの大腿骨から流した骨髄細胞をDC培地、すなわち10% FBS、pen/strep、ピルビン酸ナトリウムおよび20ng/mL GM-CSFを補充したDMEM中で培養することによって骨髄由来樹状細胞を生成させた。2日毎に培地を半分交換し、非接着および緩く接着した未熟樹状細胞(DC)を6日目に収集し、CD11cの発現を決定することによって表現型を決定した(日常的にCD11c
+が60〜80%)。OVA-AF647(2ug/mL)またはOVA-AF647と異なるナノ粒子(50μg/mL)との混合物をマウス骨髄由来樹状細胞(BMDC)と共に37℃で4時間インキュベートし、FACSによる細胞の平均蛍光強度(MFI)を用いて定量した。交差提示アッセイのために、BMDCをOVA単独またはOVAと異なるナノ粒子との混合物と共に37℃で18〜20時間インキュベートし、次に、細胞表面のMHC-I上に提示されたOVA
257-267を、H-2K
bに結合したOVAペプチドSIINFEKLを特異的に認識する抗体であるモノクローナル抗体25mAb-D1.16により検出した。
【0167】
N. インビトロおよびインビボCD8
+ T細胞プライミングアッセイ
OVA-NPをパルスしたBMDCによる抗原提示を評価するために、プライミングされたOT-I T細胞によるIFN-γ分泌を用いて、CD8
+ T細胞の活性化を定量した。手短には、BMDCを3μg/mL OVA単独またはOVAと異なるナノ粒子(50μg/mL)との混合物と共に37℃で18時間インキュベートした。OT-IマウスからのCD8
+ Tリンパ球を、製造業者の指示に従って磁気分離により選択した(MACS system; Miltenyi Biotec, Bergisch Gladbach, Germany)。CD8
+ Tリンパ球の純度は>95%であった。96ウェルプレート(Costar;Corning, Inc., Corning, NY)に入れた10% FCSを含有するRPMI培地中で、CD8
+ T細胞を細胞2×10
5個/ウェルで平板培養し、2×10
5個のパルスしていない、または抗原をパルスしたBMDCを24時間添加した。細胞培養上清を収集し、マウスTH1/TH2 9-Plex Ultra-sensitiveキット(Meso Scale Discovery)を使用してサイトカイン含量について分析した。試料を3つ組にして行った。
【0168】
脾臓をB6 CD45.2
+ OT-Iマウスから採集し、細胞懸濁液からMACSカラムを用いた磁気ビーズ分離によりCD8+ T細胞を単離した。OT-1 CD8
+ T細胞5×10
4個を静脈内(i.v.)注射によりB6 CD45.1
+マウスに移植し、免疫処置の前に1日間順応させた。1日後、CD45.1
+マウスの群にPBS単独、OVA(10μg)、またはナノ粒子(30μg)+OVAを尾基部に皮下免疫した。1週間後に、脾臓を採集し、分散させて単一細胞懸濁液にし、フローサイトメトリー分析のために抗CD8-PE-cy7、APCコンジュゲート型H-2Kb/OVA(SIINFEKL)テトラマー(NIH)で染色した。
【0169】
O. 溶血アッセイ
ポリマーが脂質二重膜のpH依存性破壊を促進する能力を、以前に記載されたような赤血球溶血アッセイにより評価した(Wilson et al., 2013)。エンドソームプロセシング経路のpH範囲(7.4、7.2、7.0、6.8、6.6、および6.4)の100mM リン酸ナトリウム緩衝液(150mM NaClを補充)中に20μg/mLのマウス赤血球の存在下で、ポリマーを37℃で1時間インキュベートした。放出されたヘモグロビンの量を測定(A541nm)することにより、細胞溶解の程度(すなわち溶血活性)を分光光度法により決定した。溶血活性を100%溶解対照(1% Triton X-100処理した赤血球)に対して規準化した。試料を3つ組にして行った。
【0170】
P. フローサイトメトリー
抗体をBiolegendから購入した。以下の一次抗体を使用した:抗CD16/CD32(Biolegend, Cat#:101301、クローン:93)、抗CD8-PE-cy7(Biolegend, Cat#:100721、クローン:53-6.7)、抗CD11c-FITC(Biolegend, Cat#:117305、クローン:N418)および抗CD11b-パシフィックブルー(Biolegend, Cat#:101223、クローン:M1/70)、抗B220-APC-cy7(Biolegend, Cat#:103223、クローン:RA3-6B2)、抗CD86-PE(Biolegend, Cat#:105007、クローン:GL-1)、SIINFEKL-APCに結合した抗H-2K
b(Biolegend, Cat#:141605、クローン:25-D1.16)、抗CD45.2-APC(Biolegend, Cat#:109814、クローン:104)、抗CD45.2-APCcy7(Biolegend, Cat#:109823、クローン:104)、抗PD-L1-PE(Biolegend, Cat#:124307、クローン:10F.9G2)、アイソタイプ対照-PE(Biolegend, Cat#:400607、クローン:RTK4530)、抗F4/80-PE/cy7(Biolegend, Cat#:123113、クローン:BM8)、抗Gr-1-FITC(Biolegend, Cat#:108419、クローン:RB608C5)、抗MHCII-BV605(Biolegend, Cat#:107639、クローン:M5/114.15.2)、抗ウサギIgG-PE(Biolegend, Cat#:406421、クローン:ポリ4064)。BD(商標)LSR IIフローサイトメーターを用いてフローデータを取得し、Flowjo(登録商標)ソフトウェアを使用して解析した。
【0171】
Q. RT-PCR
OVA-PC7A NP(OVA 10μg、PC7A 150μg)または同用量の異なるアジュバントを注射後の表示の時点に皮下組織を採取した。BMDMを得るために、10% FBS、抗生物質およびL929細胞培養物からの馴化培地を含有するDMEM中で骨髄細胞約1×10
7個を培養した。6から7日後に、成熟マクロファージを採集し、実験のために12ウェルプレート上で培養した(Collins et al., 2015)。製造業者の説明書に従って細胞または組織からTRIzol(Invitrogen)により総RNAを抽出した。以前に記載されたようにq-RT-PCRを行った(Li et al., 2013; Collins et al., 2015)。試料を3つ組にして行った。q-RT-PCRのために以下のプライマーを使用した。
【0172】
R. 免疫処置および腫瘍治療実験
6から8週齢マウス(各群n=10)のマウス右側腹部にB16-OVAまたはB16F10メラノーマ細胞(1.5×10
5)個、またはTC-1細胞(1.5×10
5個)、MC38細胞(5×10
5個)を皮下注射した。抗原-ポリマーNP(抗原ペプチドにつき0.5μg、PC7A NP 30μg)または本文に記載の同用量の異なるアジュバントを尾基部に皮下注射して動物に免疫した。または3、6、9および12日目に、比較または相乗性の判断のために、一部の群にチェックポイント阻害剤(抗mPD-1、BioXcell、BE0146)200μgをi.p.注射した。続いて、デジタルキャリパーを使用して腫瘍成長を1週間に2回測定し、盲検化された研究者が0.5×長さ×幅
2として計算した。腫瘍の表面積が1500mm
3に達したときにマウスを屠殺し、腫瘍検出の終点は、対照群の最長生存期間(LST)の2倍であり、それでメラノーマ腫瘍モデルについておよそ40日であり、TC-1およびMC38腫瘍モデルについておよそ60日である。
【0173】
PD-L1発現分析のために、腫瘍組織を1mg/mL コラゲナーゼIV(Sigma-Aldrich)および0.2mg/mL DNアーゼI(Sigma-Aldrich)により37℃で45分間消化した。次に細胞をPD-L1、CD11b、Gr-1、F4/80、CD11c、およびCD45に対する抗体(Biolegend)で染色した。
【0174】
S. 統計解析
パイロット免疫研究および腫瘍処置研究に基づき、本発明者らは、免疫原性の測定のために動物3〜6匹/群および腫瘍治療実験のために動物10匹/群の群サイズを使用した。Microsoft ExcelおよびPrism 5.0(GraphPad)を使用して統計解析を行った。データを平均±s.e.mとして表す。データをスチューデントのt検定により解析した。分散の類似性検定(f検定)をt検定の前に行った。全てのt検定は片側であり、対応がなく、p<0.05ならば統計的に有意と見なされた(特に表示しないかぎり、*、p<0.05;**、p<0.01;***、p<0.001)。2つの群の生存率を、ログランク検定を使用して解析し、p<0.05ならば統計的に有意と見なした。
【0175】
T. ポリマーナノワクチン
PRセグメントの繰り返しユニットを70個有するPEG-b-PRのpH感受性ポリマーライブラリーを、原子移動ラジカル重合法を用いて合成した。N,N-ジメチルホルムアミド中でPEG-b-PR(NH
2)をNHS-色素と反応させることによって、色素とコンジュゲートしたポリマーを合成した。水中でPC7Aナノ粒子をタンパク質抗原またはペプチド抗原と物理的に混合することによってPC7Aナノワクチンを新鮮調製した。
【0176】
U. 免疫
C57BL/6マウス(雌、6〜8週齢、構内の繁殖コア)に、PBS溶液100μL中のナノワクチンを尾基部に皮下注射してナノワクチンを免疫した。全ての動物は、手技テキサス大学サウスウエスタン医療センターの施設内動物実験委員会によって承認された。
【0177】
V. DNアーゼIのトランスフェクション
製造業者の説明書に従ってトランスフェクション試薬DOTAP(Roche)によりDNアーゼI(Roche)5μgをBMDMにトランスフェクトした。細胞をDOTAP-DNアーゼIまたはDOTAP単独と共に1時間インキュベート後に、細胞を洗浄して過剰のトランスフェクション試薬および酵素を除去し、次に、400μg/ml PC7Aと共に9時間インキュベートした。CXCL10をRT-PCRにより測定した。
【0178】
W. STINGプルダウンアッセイ
STINGとPC7Aコポリマーとの相互作用を検討するために、本発明者らは、PC7Aコポリマーをビオチンで標識した(ポリマー鎖1つあたりビオチン2〜3個)。THP-1細胞のプルダウンアッセイのために、PC7A-ビオチン(200μg/ml)をTHP-1細胞と共に8時間インキュベートし、次に、細胞を収集し、RIPA緩衝液(Sigma R0278)中で溶解させた。ストレプトアビジン修飾ダイナビーズ(BD 557812)を用いて溶解液を沈殿させた。SDS-PAGEおよびウサギ抗STING抗体(Cell Signaling、Cat # 13647)によるウエスタンブロットを用いて試料を分析した。STINGタンパク質のプルダウンアッセイのために、ヒトSTING CTD(139-379)の発現および精製が前に記載されていたが
7、PC7A-ビオチン(50μg/mL)をPBS(pH=6.8)中でSTING CTD(1μg/ml)と共に3時間インキュベートし、PBS中の同濃度のPEPA-ビオチン(pH=6.8)およびPBS中のPD5A-ビオチン(pH=4.4)を対照群として使用し、次に、ストレプトアビジン修飾ダイナビーズを用いて沈殿させた。SDS-PAGEおよびウエスタンブロットを用いて試料を分析した。
【0179】
X. 等温滴定熱量測定(ITC)
ITCを採用して、STING CTDとPC7AポリマーまたはcGAMPとの間の結合親和性を、VP-ITCマイクロ熱量計(GE Healthcare)を用いて測定し、PC7A-ウシ血清アルブミン(BSA)のITCを陰性対照として使用した。25mM HEPES(pH6.8)、150mM NaClを含有する緩衝液中において滴定を20℃で行った。4分間隔で32回のインジェクションを行った。滴定曲線をNITPICにより積分し、次に曲線をSEDFITによって当てはめた(Zhang et al., 2013)。GUSSI(biophysics.swmed.edu/MBR/software.html)を使用して図面を調整した。
【0180】
Y. 組織中のIDO酵素活性アッセイ
内毒素不含キット(Qiagen)を使用して細菌pDNA(pEGFPN1、Clontech)を調製した。in vivo-jetPEI(Polyplus-transfection, N:P=8)と混合したpDNA 30μgをマウスに静脈内注射した、またはNP(150μg、ワクチン用量の5倍)をs.c.注射した。以前の報告に記載されたようにIDO活性を測定した(Huang et al., 2012; Hoshi et al., 2010)。手短には、免疫の24時間後に組織を取り出し、1.5体積の氷冷0.14M KCl-20mMリン酸カリウム緩衝液(pH7)中で均質化した。ホモジェネート試料を7000×gおよび4℃で10分間遠心分離した。次に、上清50μLを基質溶液50μLと混合した。基質溶液の組成は、100mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.5)、50μMメチレンブルー、カタラーゼ 20μg、50mM アスコルビン酸塩、および0.4mM L-TRPであった。反応混合物を37℃でインキュベーション後に、試料を3%過塩素酸で酸性化し、7000×gおよび4℃で10分間遠心分離した。産物の濃度をHPLCにより測定した。1時間あたり組織タンパク質1グラムあたりの産物含量として酵素活性を表した。
【0181】
Z. OVAの負荷研究および安定性研究
ミセルナノ粒子内部のOVAの負荷効率を限外濾過法により測定した。手短には、異なるポリマーからのミセルナノ粒子(300μg/mL)をAF647標識OVA(100μg/mL)と共に30分間混合した。OVAの負荷後に、分子量カットオフ100kDを有する限外濾過チューブにより遊離のOVAをOVA負荷ナノ粒子から除去した。日立蛍光光度計(F-7500モデル)を用いて遊離OVAの濃度を励起波長640nmで測定した。下記式を使用して負荷効率を計算した:
【0182】
負荷安定性を判断するために、OVAを負荷したPC7Aナノ粒子を、5%ウシ胎仔血清を含有するPBS緩衝液(pH7.4)中で異なる時間にわたりインキュベートした。遊離OVAを分離し、上記のように決定した。
【0183】
FRET実験をさらに計画して、ポリマーとOVAとの相互作用を検討した。典型的な手順では、Cy3.5コンジュゲート型PC7A(100μg/mL)を、PBS緩衝液(pH=7.4)中のAF647標識OVA(20ug/mL)と共にインキュベートした。30分間インキュベーション後に、日立蛍光光度計(F-7500モデル)を用いて蛍光発光スペクトルを得た。試料を590nmで励起させ、発光スペクトルを600から750nmで収集した。
【0184】
H1N1 PR8(A型インフルエンザウイルスA/PR/8/1934(H1N1)ヘマグルチニン(HA)抗原 1μgをPC7A[PC7A 200μg/マウス]、アラム[1:1 vol/vol比]、または内毒素不含H
2Oのいずれかと一緒にi.m.ワクチン接種することにより8週齢雌性B6 WTマウスを初回免疫した。初回免疫の10日後に、マウスにH1N1 PR8 HA 0.5μgをPC7A 200μg/マウス]、アラム[1:1 vol/vol比]、または内毒素不含H
2Oのいずれかと一緒に追加免疫した。17日目にワクチン接種後のマウスから血清を採集した(追加免疫の1週間後)。
【0185】
ELISAのために、プレートにH1N1 HA PR8抗原(PBS中に5μg/mL)を4℃で一晩コーティングした。プレートをTBS-3%(wt/vol)ウシ血清アルブミン(BSA)でブロッキングした。試料を1:10000希釈でプレートに添加した。プレートを洗浄後、HRPコンジュゲート型ヤギ抗マウスIgG(H+L)を1:5000希釈で添加した。IgG1およびIgG2bの検出のために、HRPコンジュゲート型ヤギ抗マウスIgG1またはIgG2b抗体を1:5000希釈で添加した。プレートを3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン基質で顕色させ、450nmのODを測定した。
【0186】
インフルエンザ誘発のために、インフルエンザA/PR/8/34(H1N1)ウイルスを無菌PBSで10×(700pfu/マウス)MLD
50に希釈した。腹腔内(i.p.)のケタミン(30mg/ml)/キシラジン(4mg/ml)を使用してマウスを鎮静させ、合計体積40μLのウイルスを両鼻腔の間で等しく分けて鼻腔内投与した。ウイルス誘発後、マウスにアチパメゾール(0.63mg/ml)をi.p.投与し、続いて体重減少および死亡率について14日間監視した。体重減少が30%を超えたときに、マウスを人道的に屠殺した。
【0187】
実施例2 データおよび考察
腫瘍特異的CD8 T細胞応答の産生成功は、二次リンパ器官への腫瘍抗原の輸送、自然免疫刺激と協調した抗原提示細胞(APC)におけるサイトソル送達および交差提示の時間空間的制御を必要とする。ナノ粒子を使用する免疫療法は、ウイルスナノ粒子の免疫原性の利点に焦点を合わせて最近進歩した新興領域である(Lizotte et al., 2016)。非ウイルス性ナノ粒子(直径<50nm)が、リンパ節内部に選択的に蓄積することができるとはいえ(Reddy et al., 2007; Liu et al., 2014)、わずかな研究しか、非ウイルス性ナノ粒子が同時に抗原提示を促進し、アジュバント(例えば、CpG、ポリ(I:C))の組み入れなしに自然免疫応答を刺激することができることを示していなかった。最近、本発明者らの研究室は、生理的pH(4〜7.4)の広い範囲で微調整可能な超pH感受性(UPS)ナノ粒子(直径20〜50nm)のライブラリーを確立した(Ma et al., 2014)。マクロピノサイトーシスにより細胞に取り込まれた後、これらのUPSナノ粒子は、エンドサイトーシスオルガネラの内腔pHを特定のpH値に緩衝化することができる(Wang et al., 2015)。生物製剤のサイトソル送達のための「プロトンスポンジ」ポリマー(Boussif et al., 1995)およびLN標的化のためのナノ粒子の小さなサイズに示唆されて、本発明者らは、UPSナノ粒子のインビボスクリーニングを行って、それらが細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答を生成する能力を判断した。UPSライブラリーは、直鎖または環状側鎖を有する第三級アミンを含むコポリマーからなり(
図1Aおよび
図5A)、各成分は、対応するpKaで鋭いpH緩衝作用を与える(
図5B〜C)。卵白アルブミン(OVA)をモデル抗原として使用した。異なるポリマーナノ粒子にわたりOVA負荷効率は、>75%と測定された(
図6A)。
【0188】
確立したインビボ細胞傷害性アッセイによりOVA特異的CTL応答を定量した(
図1A)(Barber et al., 2015)。手短には、OVA-ポリマーNPを最初にC57BL/6マウスの尾基部に皮下注射した。7日後に、CFSE標識標的細胞の殺傷速度を測定することによってOVAエピトープ(SIINFEKL)特異的CTL効果を決定した。フローサイトメトリーのデータにより、PC7A NPが他の環状アミン(例えばPC6A、置換PC6AおよびPC8A)ならびに直鎖第三級アミンと比較して最高のOVA特異的脾臓細胞殺傷(82%)を可能にしたことが示された(
図1B)。PC7A NPは、匹敵するpKa(6.9〜7.0)を有するPC6S1AおよびPEPA NPと比較しておよそ2倍強いCTL応答をもたらした。直鎖系列では、PEPAが、他のコポリマーと比較して最高のCTL応答を有した。これらのデータは、UPSコポリマーのpH転移(すなわち、初期エンドソームのpHを標的とする6.9)およびポリマー構造(すなわち、環状七員環)の両方が、強いCTL応答を誘導するために重要であることを示唆している。従来のPEG-b-ポリ(D,L-乳酸)(PEG-PLA)ミセルは、弱いCTL応答(4.2%)を有した(Maldonado et al., 2015)。OVA-PC7A NPは、OVA-アラム(4.3%)またはTLR4経路を刺激するOVA-LPS(3.7%)よりもおよそ20倍高く(Poltorak et al., 1998)、TLR9経路を刺激するOVA-CpG(23%)よりも3.6倍高いCTL応答を誘導した(Hemmi et al., 2000)。加えて、追加免疫の7日後に収集した、免疫されたマウスの血清からのOVA特異的抗体応答は、PC7A NPをワクチン接種されたマウスが、アラムまたはLPSによるものに匹敵するOVA特異的IgG1応答の類似の力価を生成したことを示した(
図1C)。PC7A NPは、OVA+CpGまたはLPSを免疫されたマウスと比較して類似のOVA特異的IgG2c抗体力価も生成した(
図1D)。全体的に見て本発明者らは、PC7A NPがいくつかの確立されたアジュバントに匹敵するまたはより優れた効力を有する、頑強な抗原特異的CTL、Th1およびTh2応答を誘導することができたと結論する。
【0189】
PC7A NPのAPC標的化能を検討するために、本発明者らは、最初にPC7Aコポリマーをインドシアニングリーン(λ
ex/λ
em=800/820nm)で標識し、尾基部に皮下注射後の流入領域リンパ節(dLN)へのナノ粒子の輸送を、臨床カメラ(SPY Elite(登録商標))を使用して撮像した。結果は、24時間で末梢リンパ節中のPC7A NP(直径29nm)の効率的な蓄積を示している(
図7A)。他の器官は顕著な蓄積を示さなかった。PC7A NPの抗原送達能力を検討するために、本発明者らは、強いFRET効果によりOVAをPC7Aミセル中に封入することができ(
図6C〜E)、封入が5%血清中で24時間にわたり比較的安定であったことを最初に確認した(
図6B)。次に本発明者らは、PC7Aミセル封入を行ったおよび行わないAlexa Fluor647標識OVAを使用し、皮下注射の24時間後にdLNを採集した。フローサイトメトリーを行って、CD8α
+およびCD8α
-樹状細胞(DC)およびマクロファージ中のOVA陽性細胞のパーセンテージを定量した。3つの亜集団の全ては、OVA単独よりもPC7A介在送達による有意に高いOVA蓄積を示した(
図2A)。LN常在CD8α
+DC細胞は、CTL応答の誘導に重要であることが公知であった(Hildner et al., 2008; Sancho et al., 2008)。OVA陽性CD8α
+DCの量は、OVAのみの対照と比べてOVA-PC7A NP群で29倍に増加した。
【0190】
本発明者らは、いくつかのインビトロ細胞培養アッセイを使用して抗原のサイトソル送達および交差提示に対するPC7A NPの能力を検討した(Heath et al., 2004)(
図2B)。骨髄由来樹状細胞(BMDC)と一緒のOVA-PC7A NPのインキュベーションは、OVA-PD5A NPに類似で、OVAのみの群よりも小さい抗原取込みを示した(
図2C)。対照的に、mAb25-D1.16により検出されたOVAペプチド(SIINFEKL)-MHC-I複合体は、2つの対照群と比べて3倍の抗原交差提示を示した(
図2D)。インビトロOT-I CD8
+ T細胞プライミングアッセイを用いて、OVA-PC7A NPで処理されたBMDCは、他の対照群と比べてOT-Iマウスから単離されたCD8
+ T細胞のIFN-γ分泌を劇的に増加させた(
図2E)。この結果は、インビボCD8
+ T細胞プライミングアッセイによりさらに支持され、このアッセイでは、OVAエピトープ(SIINFEKL)特異的CD8
+ T細胞がOVAのみの群と比べてOVA-PC7A NP群において15倍高い増殖を示した(
図2F〜G)。サイトソル送達のためのエンドソーム破壊に関するさらなる証拠は、異なるpH値での赤血球(RBC)における溶血アッセイによって例証された(Wilson et al., 2013)。結果は、PC7A NPがpH7.4においてミセル状態で溶血作用を有さなかったが、pH7.0未満でミセルが解離すると強い溶血活性(約90%)を表したことを示した。PD5A NPは、同じpH範囲でいかなる観察可能なRBCの溶血も示さなかった(
図8A〜B)。
【0191】
共刺激シグナル(例えばCD80/86)およびサイトカインも強い腫瘍特異的CTL応答を誘導するために必要である(Liechtenstein et al., 2012)。以前の実験において、OVA-PC7A NPを免疫した24時間後に、本発明者らは、鼠径部LNの大きさがOVA単独と比較して増加したように見えたことを見出した(
図7B)。OVA-PC7A NP処置マウスからの鼠径部LNにおける総細胞数は、OVA-PD5AまたはOVA単独の対照と比べて>2倍増加した(
図7C)。フローサイトメトリー分析は、3つの他の対照群と比べて、OVA-PC7A NPにより処置されたマウスからのAPCの異なる亜群にCD86が有意に高く発現していることを示した(
図3Aおよび
図7D)。I型IFNは、CD8
+ T細胞応答の有効性を増大させることが示されている(Zitvogel et al., 2015; Fuertes et al., 2013)。本発明者らは、局所組織においてIFNにより刺激される遺伝子(ISG)の発現を(Trinchieri et al., 2010)、PC7A NPの皮下注射後に経時的に調査した。ポリ(I:C)を陽性対照として使用した(Alexopoulou et al., 2001)。結果は、ポリ(I:C)が2から8時間という早い時点でIRF7およびCXCL10の発現にPC7A NPよりも高い応答を誘起することができたことを示している。24時間目に、PC7A NPは、ポリ(I:C)群およびPD5A NP群の両方よりも強い応答を生じた(
図3B〜C)。
【0192】
CTL応答に及ぼすIFN経路の影響を確認するために、本発明者らは、IFN受容体(IFN-α/βR
-/-)ノックアウトマウスにおけるOVA特異的CTLおよびTh1応答を測定した。データは、野生型対照と比較してIFN-α/βR
-/-マウスではCTL/Th1応答の大部分が打ち消されたことを示し(
図3D〜F、n=5)、これは、ISG発現データと矛盾しない。Toll様受容体(TLR)、MAVSおよびSTINGは、I型インターフェロン経路を活性化することが公知である(Zitvogel et al., 2015; Baccala et al., 2007)。
【0193】
メカニズムをさらに解明するために、本発明者らは、MyD88
-/-/TRIF
-/-マウス、MAVS
-/-マウスおよびSTING
gt/gtマウスにおける免疫応答を分析した。結果は、PC7A NPにより誘導されるT細胞応答がTLR経路およびMAVS経路に依存しなかったのに対して、STING
gt/gtマウスは、IFN-α/βR
-/-マウスにおける結果をほとんど再現したことを示している(
図3D〜F)。サイクリックGMP-AMPシンターゼ(cGAS)は、サイトソルDNAを感知し、サイクリックGMP-AMP(cGAMP)を産生することができ、cGAMPは、続いてSTINGを活性化し、I型IFNの誘導に導く(Sun et al., 2013)。cGAS
-/-マウスにおける追加的な研究は、CTL応答がcGASに部分的に依存したことを示した。ISG誘導に果たすSTINGおよびcGASの役割は、骨髄由来マクロファージおよびヒト単球THP-1細胞を使用するインビトロ細胞培養の結果によってさらに確認された(
図9A〜B)。この過程に果たすサイトソルDNAの役割をさらに判断するために、本発明者らは、PC7A処置の前にDNアーゼIをBMDMにトランスフェクトし(Carroll et al., 2016)、WT BMDMにおいてPC7Aが誘導するISGレベルがcGAS
-/- BMDMとほぼ同じレベルに減少したことを見出した(
図9C)。この結果は、サイトソルDNAがcGAS依存性STING活性化を部分的に担うことを示唆している。cGAS非依存性STING活性化のために、本発明者らは、THP-1細胞と共にインキュベートしたビオチンコンジュゲート型PC7A NPを使用するSTINGプルダウンアッセイを行った。ストレプトアビジン修飾ダイナビーズによる細胞溶解およびタンパク質のプルダウンは、PD5A-ビオチンおよびPC7Aのみ(ビオチン不含)対照ではなく、PC7A-ビオチンだけがSTINGを保持することができたことを示している(
図9D)。STINGの精製C末端ドメイン(CTD、139-397AA)を用いたさらなる研究は、他のタンパク質の不在下でSTING CTDのプルダウンを示し(
図9E)、これは、STINGとPC7Aとの直接結合を示唆している。これは、HEPES緩衝液中のSTINGのPC7A滴定が解離定数(Kd)1.3μMを示した等温熱量測定(ITC)実験によってさらに支持されている(
図9F〜G)。この相互作用は、cGAMP-STING複合体と比較して弱い(Kd=9.6nM)。対照的に、陰性対照ではPC7Aとウシ血清アルブミンとの間に無視できる結合が見出された。本発明者らは、PC7AとSTINGとの間の特異的相互作用を検出することができたものの、PC7Aが直接結合によりSTINGを活性化できるかどうかを判定するためには、さらなる構造研究および機能研究が必要である。
【0194】
次に、本発明者らは、ナノ粒子の取込みおよびSTING活性化を担う主な細胞集団を特定しようと努めた。Cy5標識PC7Aポリマーを採用して、細胞におけるNP取込みを定量し、リン酸化IRF3(pIRF3)を使用して、STING-I型IFN経路の活性化を検出した(Woo et al., 2014)。Cy5-PC7A NPの皮下注射の1日後に、本発明者らは、鼠径部LNおよび注射部位の皮下組織を収集し、単一細胞懸濁液を産生した。フローサイトメトリー分析により、LNにおいて、NP+細胞は、NP-細胞およびPBS対照におけるCD45+白血球よりもpIRF3の発現を有意に増加させたことが明らかとなった(
図10A)。さらなる分析により、NP+細胞の87%がDC細胞マーカーを発現していた(CD11c+)ことが示され、そのことは、MHC-II+の発現によりさらに確証された(
図10B)。注射部位からの細胞懸濁液に同じ分析を行った(
図10C)。データは、CD45+白血球がCD45-細胞よりも有意に大きい量のPC7A NPをインターナリゼーションしたことを示している。CD45-細胞集団において、本発明者らは、pIRF3レベルにいかなる有意な増加も観察しなかった。CD45+細胞集団において、NP-細胞よりもNP+細胞において有意に高いpIRF3レベルが見出された。CD45+NP+細胞のさらなる分析により、細胞集団の95%がCD11c+マーカーを有することが示された(
図10Dの下欄)。これらのデータに基づき、本発明者らは、注射部位および流入領域LNの両方で、APC(特にDC)が、PC7A NPを取り込み、続いてSTING-I型IFN経路を活性化した主な細胞集団であったと結論する。
【0195】
STING-I型IFNの活性化は、IDO-1の発現がこの調節経路における主な免疫チェックポイントとして特定された免疫調節性応答を誘導すると報告されている(Lemos et al., 2014; Huang et al., 2012)。本研究において、本発明者らは、まず異なるポリマーで処置されたマウスにインビボIDO酵素活性アッセイを行った。PC7A、PD5AまたはPEPAコポリマーの皮下注射(150μg、ワクチン用量の5倍)で処置されたマウスは、PBS対照よりも脾臓におけるIDO活性に33〜51%の増加を示したが、それは、静脈注射されたPEI-DNAの陽性対照よりも小さい。PC7A、PD5AまたはPEPAコポリマーにより誘導されるIDO活性の間に統計的有意差は検出されなかった(
図9H)。動物のインビボデータは、THP-1細胞およびBMDM細胞における細胞培養データによってさらに支持された。本研究において、本発明者らは、全パネルのナノ粒子で処置されたIDO-1およびCXCL10の発現プロファイルを比較した。結果は、PC7A NP以外のナノ粒子によるCTL活性の欠如が、IDO-1の発現増加の結果ではなく、むしろSTING活性化の欠如(
図9I〜J)ならびにDC上での非効率な抗原送達および提示が原因である(例えば、
図2DにおけるPD5Aの代表的なデータを参照されたい)ことを示している。
【0196】
上記特徴に基づき(
図4A)、本発明者らは、PC7Aナノワクチンの抗腫瘍効力をいくつかの腫瘍モデルにおいて検討した。B16-OVAメラノーマモデルにおいて、抗原性ペプチド(OVA
257-280、0.5μg)とPC7A NP(30μg)との物理的混合物を製剤化した。異なるナノワクチン群を腫瘍接種の5日後に皮下注射し、続いて5日後に追加免疫注射を行った(
図4B)。PBS対照群では、全ての動物が20日以内に死亡した。OVA
257-280単独群、PC7A NP単独群またはOVA
257-280-PD5A NP群は、PBS対照と比べていかなる有意な腫瘍成長阻害または延命効果も提供しなかった(
図11A〜B)。OVA
257-280-CpG群およびOVA
257-280-ポリ(I:C)群は、軽度の免疫防御を提供した(
図4B〜C)。なお、全ての動物は40日目よりも前に死亡した。対照的に、OVA
257-280-PC7A NPは、動物の50%が40日にわたり生存したという最大の治療効力を達成した。B16-F10メラノーマにおいて、本発明者らは、PC7A NP中に腫瘍関連抗原(Gp100
21-41、Trp1
214-237、Trp2
173-196)またはネオ抗原(Obsl1
T1764M、Kif18b
K739N、Def8
R255G)(Kreiter et al., 2015)のいずれかのカクテル(各ペプチドについて0.5μg、ポリマー30μg)を使用した。PC7Aのワクチン接種は、抗原のみ、PC7Aのみおよび非処置対照よりもB16F10腫瘍の成長を有意に減速させた(両方の研究においてP<0.001、n=10、
図4dおよび
図11C)。結腸がんMC38モデルにおいて、本発明者らは、3種の腫瘍ネオ抗原(Reps1
P45A、Adpgk
R304M、Dpagt1
V213L)を検証済み免疫原性新エピトープ(Yadav et al., 2014)と共に選択した。データは、有意に改善した腫瘍成長阻害も示している(
図4E)。最終的に、本発明者らは、ヒトパピローマウイルス(HPV)E6/7 TC-1腫瘍を採用した(Sun et al., 2015; Liu et al., 2016)。E7由来ペプチドであるE7
43-62を使用したとき、E7
43-62-PC7A NPで処置された場合のマウスの50%は、60日にわたり無腫瘍である(
図4F〜Gおよび
図12E)。PC7Aナノワクチンと抗PD-1抗体との組合せは、B16-OVAメラノーマモデルおよびTC-1腫瘍モデルの両方で相乗性を示した(
図4Gおよび
図12A〜F)。TC-1モデルでは、動物の100%が60日よりも長く生存し、これらの動物の90%が無腫瘍であった(
図12E)。B16OVA腫瘍モデルおよびTC-1腫瘍モデルの両方が、腫瘍細胞上に軽度のPD-L1発現を示し、一方で、ある特定のサブタイプの骨髄系細胞は、アイソタイプ対照よりも高いPD-L1発現を有した(
図12Dおよび12F)。これらのデータは、ナノワクチンと抗PD1療法との相乗性を裏付けている。一方、抗PD-1療法単独は、他のグループによっても報告されているように、どちらのモデルでも有意に改善した抗腫瘍効果に繋がらなかった(Rice et al., 2015; Holmgaard et al., 2013)。腫瘍接種の82日後に無腫瘍マウスをTC-1腫瘍細胞1×10
6個で再誘発した。データは、以前に処置された無腫瘍マウスが、新たに移植された腫瘍に対して60日間にわたり耐性であったのに対して、そのような腫瘍が、ナイーブマウスおよび外科的治癒マウスにおいて強く成長したことを示した(
図12E)。これらの結果は、ナノワクチンが長期抗腫瘍応答を誘導し、ナノワクチンがメモリーT細胞を活性化する可能性があることを示唆している。PC7A NP(150μg、ワクチン用量の5倍)で処置されたマウスの全身サイトカイン/ケモカインの分析により、ポリ(I:C)対照と比較してはるかに小さい全身炎症が示された(
図13)。主要器官(例えば、肝臓、脾臓、腎臓、心臓)の組織分析は、PC7Aナノワクチン(150μg、ワクチン用量の5倍、
図14)の反復注射で処置されたマウスにいかなる観察可能な毒性も示さなかった。これらのデータは、低い抗原用量(0.5μg)でPC7Aナノワクチンの安全かつ有効な抗腫瘍免疫およびそれとチェックポイント阻害剤との注目すべき相乗性を実証している。
【0197】
本研究からの結果により、広範囲の腫瘍抗原と物理的に混合されて頑強ながん特異的T細胞応答を生じることができる簡単なナノ粒子、PC7A NPが確立された。本発明者らの本来の試みは、腫瘍に対するT細胞免疫を可能にする超pH感受性ポリマー組成物のライブラリーをスクリーニングすることであった。PC7A NPにおいて、本発明者らは、T細胞活性化についての全ての空間時間的基準を満たす単一のポリマー組成物を思いがけなく発見した。機構的に、PC7A NPは、安定な抗原負荷を、リンパ節への抗原送達を促す小さなサイズへの閉じ込め(<50nm)で可能にした。等しく重要なことに、PC7A NPは、腫瘍抗原の効率的なサイトソル送達およびSTING活性化を達成した。PC7A NPの七員環アミン側鎖構造は、比較的高い転移pH(すなわち6.9)にし、初期エンドソームpH(6.5〜7.0)でpH特異的プロトンスポンジ効果および膜破壊のためのプロトン化ユニマーの強固な配置を提供する(
図8A〜B)。従来のpH非感受性ナノ粒子、PEG-b-PLAミセルもCTLスクリーニングに含めたが、いかなる観察可能なCTL効果も示さなかった(
図1B)。サイトソルへの腫瘍抗原の初期エンドソーム放出は、リソソームの分解を回避し、細胞表面での抗原交差提示の増加に繋がる。この独特な膜破壊能は、サイトソルに痕跡量のDNAを導入することも担う場合があり、それは、続いて自然免疫刺激のためのサイトソルcGAS-STING経路を活性化する
21。一方、STINGプルダウンアッセイおよびITC実験により、STINGへのPC7Aの直接結合が明らかとなった。PC7A-STINGの相互作用は、PEPAコポリマーおよびPD5Aコポリマー(特にPEPAは、PC7Aと同じ転移pHを有するが、環構造を欠如する)によるSTING CTDプルダウンの欠如ならびにITC実験によるPC7AとBSAとの間の無視できる結合により裏付けられるように、特異的に見えた。
【0198】
要約すると、合成ナノ粒子が抗原送達を強化するだけでなく、STING経路を刺激して抗腫瘍免疫を増大させるという本発明者らの発見は、がん免疫療法に新しいアプローチを提供するものである。簡単であること、頑強なT細胞応答およびチェックポイント阻害との相乗性は、PC7Aナノワクチンを臨床開発の魅力的な候補にする。このナノワクチンプラットフォームを迅速に採用して、多数の既存の腫瘍関連抗原および増え続ける腫瘍ネオ抗原を組み入れることができる(Schumacher & Schreiber, 2015; Sharma & Allison, 2015)。PC7A NPの独特な特徴は、感染性疾患の予防および治療のために微生物抗原をワクチンとしてパッケージングすることも可能にする。
【0199】
実施例3 ナノワクチンと放射線療法との組合せ
TC-1細胞2×10
5個をC57BL/6マウス(n=8/群)の背部に皮下注射した。大きさが約200mm
3に達したときである14日後に20Gyを腫瘍に照射した。ワクチン接種処置のために、電離放射線と同じ日に、ナノワクチン(PC7A 30μg+ペプチドE7
43-62
0.5μg)をマウス背部の尾基部に皮下注射した。6日後、同用量のナノワクチンの別の注射でマウスを追加免疫した。続いてデジタルキャリパーを使用して腫瘍成長を1週間に2回測定し、盲検化された研究者が0.5×長さ×幅
2として計算した。腫瘍のサイズが1500mm
3に達したときにマウスを屠殺した。
図18から分かるように、ナノワクチンと放射線療法との組合せは、放射線またはナノワクチン単独のいずれかによる処置よりも有意に改善された治療相乗性を示した。
【0200】
本明細書において開示および請求された方法の全てを、本開示に照らして過度の実験なしに作製および実行することができる。本開示の組成物および方法を好ましい態様によって説明したが、本開示の概念、精神および範囲から逸脱せずに本明細書に記載の方法および方法の段階または段階の順序に変化が適用され得ることは、当業者に明らかであろう。より具体的には、化学的および生理学的の両方で関連するある特定の薬剤が、本明細書に記載の薬剤に代用され得る一方で、同じまたは類似の結果が達成されることが明らかである。当業者に明白な全てのそのような類似の代用および修飾は、添付の特許請求の範囲により定義される本開示の精神、範囲および概念の範囲内であると見なされる。
【0201】
参考文献
以下の参考文献は、本明細書に示されるものを補足する例示的な手順または他の詳細を提供する程度に、参照により本明細書に具体的に組み入れられる。
【手続補正書】
【提出日】2018年12月13日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
概要
一部の局面では、本開示は、STING経路を介した疾患または障害に対する免疫応答を促進するために使用され得る組成物を提供する。一部の局面では、本開示は、
(A)抗原と、
(B)pH感受性ジブロックコポリマーと
を含む組成物であって、抗原がコポリマーによって封入されている、組成物を提供する。一部の態様では、抗原は、抗がん抗原である。一部の態様では、抗原は、腫瘍関連抗原または腫瘍ネオ抗原である。一部の態様では、腫瘍関連抗原は、ヒトパピローマウイルスE6タンパク質、E7タンパク質、または
などのそのフラグメントである。他の態様では、腫瘍関連抗原は、メソセリンまたは
などのそのフラグメントである。他の態様では、抗がん抗原は、メラノーマ腫瘍関連抗原または
などのネオ抗原である。一部の態様では、抗がん抗原は、膀胱、血液、骨、脳、乳房、中枢神経系、子宮頸部、結腸、子宮内膜、食道、胆嚢、胃腸管、生殖器、尿生殖路、頭部、腎臓、喉頭、肝臓、肺、筋肉組織、頸部、口腔もしくは鼻粘膜、卵巣、膵臓、前立腺、皮膚、脾臓、小腸、大腸、胃、精巣、または甲状腺のがん抗原である。一部の態様では、抗がん抗原は、中皮腫、メラノーマ、膵臓、卵巣、または子宮頸がん抗原である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
[本発明1001]
(A)抗原と、
(B)pH感受性ジブロックコポリマーと
を含む組成物であって、前記抗原が前記コポリマーによって封入されている、前記組成物。
[本発明1002]
前記抗原が、抗がん抗原である、本発明1001の組成物。
[本発明1003]
前記抗原が、腫瘍関連抗原または腫瘍ネオ抗原である、本発明1002の組成物。
[本発明1004]
腫瘍関連抗原が、ヒトパピローマウイルスE6タンパク質、E7タンパク質、またはそれらのフラグメントである、本発明1003の組成物。
[本発明1005]
腫瘍関連抗原が、メソセリンまたはそのフラグメントである、本発明1003の組成物。
[本発明1006]
抗がん抗原が、メラノーマ腫瘍関連抗原またはネオ抗原である、本発明1003の組成物。
[本発明1007]
抗がん抗原が、膀胱、血液、骨、脳、乳房、中枢神経系、子宮頸部、結腸、子宮内膜、食道、胆嚢、胃腸管、生殖器、尿生殖路、頭部、腎臓、喉頭、肝臓、肺、筋肉組織、頸部、口腔もしくは鼻粘膜、卵巣、膵臓、前立腺、皮膚、脾臓、小腸、大腸、胃、精巣、または甲状腺のがん抗原である、本発明1003の組成物。
[本発明1008]
前記抗原が、ウイルス抗原である、本発明1001の組成物。
[本発明1009]
ウイルス抗原が、B型肝炎ウイルス抗原、インフルエンザウイルス抗原、ウエストナイルウイルス抗原、デングウイルス抗原、エボラウイルス抗原、またはHIV抗原である、本発明1008の組成物。
[本発明1010]
前記抗原が、細菌抗原である、本発明1001の組成物。
[本発明1011]
前記抗原が、結核菌(mycobacterium tuberculosis)(Mtb)抗原である、本発明1010の組成物。
[本発明1012]
前記抗原が、マラリア抗原である、本発明1001の組成物。
[本発明1013]
前記ジブロックコポリマーが、水中で、pH滴定によって計算される約6から約7.5のpKaを有する、本発明1001〜1012のいずれかの組成物。
[本発明1014]
前記ジブロックコポリマーから形成されるナノ粒子が、pKa未満のpHで解離している、本発明1001〜1012のいずれかの組成物。
[本発明1015]
前記ジブロックコポリマーが、親水性ブロックおよび疎水性ブロックを含む、本発明1001〜1012のいずれかの組成物。
[本発明1016]
親水性ブロックが、PEGポリマー、PVPポリマー、またはMPCポリマーである、本発明1015の組成物。
[本発明1017]
前記ジブロックコポリマーが、式
によってさらに定義される、本発明1001〜1016のいずれかの組成物:
式中、
R1は、水素、アルキル(C≦12)、シクロアルキル(C≦12)、置換アルキル(C≦12)、置換シクロアルキル(C≦12)であり;
nは、1から500の整数であり;
R2およびR2'は、水素、アルキル(C≦12)、シクロアルキル(C≦12)、置換アルキル(C≦12)、または置換シクロアルキル(C≦12)よりそれぞれ独立して選択され;
R3は、式
で示される基であり、
式中、
nxは、1〜10であり;
X1、X2、およびX3は、水素、アルキル(C≦12)、シクロアルキル(C≦12)、置換アルキル(C≦12)、または置換シクロアルキル(C≦12)よりそれぞれ独立して選択され;かつ
X4およびX5は、アルキル(C≦12)、シクロアルキル(C≦12)、もしくはこれらの基のうちのいずれかの基の置換バージョンよりそれぞれ独立して選択されるか、またはX4およびX5は、一緒になって、アルカンジイル(C≦12)、アルコキシジイル(C≦12)、アルキルアミノジイル(C≦12)、もしくはこれらの基のうちのいずれかの基の置換バージョンであり;
xは、1から150の整数であり;
R4は、式
で示される基であり、
式中、
nyは、1〜10であり;
X1'、X2'、およびX3'は、水素、アルキル(C≦12)、シクロアルキル(C≦12)、置換アルキル(C≦12)、または置換シクロアルキル(C≦12)よりそれぞれ独立して選択され;かつ
X4'およびX5'は、水素、アルキル(C≦12)、シクロアルキル(C≦12)、アシル(C≦12)、置換アルキル(C≦12)、置換シクロアルキル(C≦12)、置換アシル(C≦12)、色素、もしくは蛍光消光剤よりそれぞれ独立して選択されるか、またはX4'およびX5'は、一緒になって、アルカンジイル(C≦12)、アルコキシジイル(C≦12)、アルキルアミノジイル(C≦12)、もしくはこれらの基のうちのいずれかの基の置換バージョンであり;
yは、1から150の整数であり;
R5は、水素、ハロ、ヒドロキシ、アルキル(C≦12)、または置換アルキル(C≦12)であり、
ここで、R3およびR4は、R3およびR4が同じ基ではないという条件で、ポリマー内に任意の順序で存在することができる。
[本発明1018]
下記式としてさらに定義される、本発明1017の組成物:
式中、
R1は、水素、アルキル(C≦12)、シクロアルキル(C≦12)、置換アルキル(C≦12)、置換シクロアルキル(C≦12)であり;
nは、1から500の整数であり;
R2およびR2'は、水素、アルキル(C≦12)、シクロアルキル(C≦12)、置換アルキル(C≦12)、または置換シクロアルキル(C≦12)よりそれぞれ独立して選択され;
R3は、式
で示される基であり、
式中、
X4およびX5は、アルキル(C≦12)、シクロアルキル(C≦12)、もしくはこれらの基のうちのいずれかの基の置換バージョンよりそれぞれ独立して選択されるか、またはX4およびX5は、一緒になって、アルカンジイル(C≦12)、アルコキシジイル(C≦12)、アルキルアミノジイル(C≦12)、もしくはこれらの基のうちのいずれかの基の置換バージョンであり;
xは、1から150の整数であり;
R4は、式
で示される基であり、
式中、
X4'およびX5'は、水素、アルキル(C≦12)、シクロアルキル(C≦12)、アシル(C≦12)、置換アルキル(C≦12)、置換シクロアルキル(C≦12)、置換アシル(C≦12)、色素、もしくは蛍光消光剤よりそれぞれ独立して選択されるか、またはX4'およびX5'は、一緒になって、アルカンジイル(C≦12)、アルコキシジイル(C≦12)、アルキルアミノジイル(C≦12)、もしくはこれらの基のうちのいずれかの基の置換バージョンであり;
yは、0から150の整数であり;
R5は、水素、ハロ、ヒドロキシ、アルキル(C≦12)、または置換アルキル(C≦12)であり、
ここで、R3およびR4は、R3およびR4が同じ基ではないという条件で、ポリマー内に任意の順序で存在することができる。
[本発明1019]
下記式としてさらに定義される、本発明1018の組成物:
式中、
R1は、水素、アルキル(C≦12)、シクロアルキル(C≦12)、置換アルキル(C≦12)、置換シクロアルキル(C≦12)であり;
nは、1から500の整数であり;
R3は、式
で示される基であり、
式中、
X4およびX5は、アルキル(C≦12)、シクロアルキル(C≦12)、もしくはこれらの基のうちのいずれかの基の置換バージョンよりそれぞれ独立して選択されるか、またはX4およびX5は、一緒になって、アルカンジイル(C≦12)、アルコキシジイル(C≦12)、アルキルアミノジイル(C≦12)、もしくはこれらの基のうちのいずれかの基の置換バージョンであり;
xは、1から150の整数であり;
R5は、水素、ハロ、ヒドロキシ、アルキル(C≦12)、または置換アルキル(C≦12)である。
[本発明1020]
R1がアルキル(C≦12)である、本発明1017〜1019のいずれかの組成物。
[本発明1021]
nが50から200である、本発明1017〜1020のいずれかの組成物。
[本発明1022]
X4がアルキル(C≦12)またはシクロアルキル(C≦12)である、本発明1017〜1021のいずれかの組成物。
[本発明1023]
X5がアルキル(C≦12)またはシクロアルキル(C≦12)である、本発明1017〜1022のいずれかの組成物。
[本発明1024]
X4およびX5が、一緒になって、アルカンジイル(C≦12)、アルコキシジイル(C≦12)、アルキルアミノジイル(C≦12)、またはこれらの基のうちのいずれかの基の置換バージョンである、本発明1017〜1023のいずれかの組成物。
[本発明1025]
X4およびX5が、一緒になって、アルカンジイル(C≦12)または置換アルカンジイル(C≦12)である、本発明1024の組成物。
[本発明1026]
X4およびX5が、一緒になって、-CH2CH2CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH(CH3)CH2CH2-、または-CH2CH(CH3)CH2CH(CH3)CH2-である、本発明1025の組成物。
[本発明1027]
xが50から120である、本発明1017〜1026のいずれかの組成物。
[本発明1028]
yが0である、本発明1017〜1027のいずれかの組成物。
[本発明1029]
X4'およびX5'が、一緒になって、アルカンジイル(C≦12)である、本発明1017〜1028のいずれかの組成物。
[本発明1030]
前記ジブロックコポリマーが、PEG114-b-PDEA70、PEG114-b-PEPA70、PEG114-b-PDPA70、PEG114-b-PDBA70、PEG114-b-PD5A70、PEG114-b-PC6A70、PEG114-b-PC7A70、PEG114-b-PC8A70、PEG114-b-PC6S1A70、またはPEG114-b-PC6S2A70である、本発明1017〜1029のいずれかの組成物。
[本発明1031]
前記ジブロックコポリマーが、PEG114-b-PEPA70、PEG114-b-PC6A70、PEG114-b-PC7A70、PEG114-b-PC6S1A70、またはPEG114-b-PC6S2A70である、本発明1030の組成物。
[本発明1032]
溶媒をさらに含む、本発明1001〜1031のいずれかの組成物。
[本発明1033]
溶媒が、水または水性緩衝液である、本発明1032の組成物。
[本発明1034]
アジュバントとSTING経路を活性化する抗原とを含む組成物であって、前記アジュバントがナノ粒子を形成する、前記組成物。
[本発明1035]
アジュバントと1種類または複数種類のインターフェロン受容体タンパク質を活性化する抗原とを含む組成物であって、前記アジュバントがナノ粒子を形成する、前記組成物。
[本発明1036]
(A)アジュバントと、
(B)抗原と
を含む組成物であって、前記組成物が、50nm未満の粒子サイズ、前記アジュバント上の複数のヘテロシクロアルキル基、および約6.5から7.4のpH転移点を含むナノ粒子であり、前記ヘテロシクロアルキル基中のヘテロ原子のうちの少なくとも1つが窒素原子である、前記組成物。
[本発明1037]
粒子サイズが、5nmから50nmである、本発明1036の組成物。
[本発明1038]
複数のヘテロシクロアルキル基が、10から200個のヘテロシクロアルキル基である、本発明1036の組成物。
[本発明1039]
ヘテロシクロアルキル基が、アゼパンである、本発明1036の組成物。
[本発明1040]
pH転移点が、6.5から7.2である、本発明1036の組成物。
[本発明1041]
(A)本発明1001〜1040のいずれかの組成物と、
(B)賦形剤と
を含む、薬学的組成物。
[本発明1042]
注射用に製剤化されている、本発明1041の薬学的組成物。
[本発明1043]
静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、または皮下注射用に製剤化されている、本発明1042の薬学的組成物。
[本発明1044]
単位用量として製剤化されている、本発明1041〜1043のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1045]
第2の活性薬剤をさらに含む、本発明1041〜1044のいずれかの薬学的組成物。
[本発明1046]
第2の活性薬剤が、チェックポイント阻害剤である、本発明1045の薬学的組成物。
[本発明1047]
その必要がある患者における疾患または障害を処置する方法であって、前記患者に本発明1001〜1046のいずれかの組成物の治療有効量を投与する段階を含む、前記方法。
[本発明1048]
疾患または障害が、がんである、本発明1047の方法。
[本発明1049]
がんが、癌腫、肉腫、リンパ腫、白血病、メラノーマ、中皮腫、多発性骨髄腫、またはセミノーマである、本発明1048の方法。
[本発明1050]
がんが、膀胱、血液、骨、脳、乳房、中枢神経系、子宮頸部、結腸、子宮内膜、食道、胆嚢、胃腸管、生殖器、尿生殖路、頭部、腎臓、喉頭、肝臓、肺、筋肉組織、頸部、口腔もしくは鼻粘膜、卵巣、膵臓、前立腺、皮膚、脾臓、小腸、大腸、胃、精巣、または甲状腺のがんである、本発明1048の方法。
[本発明1051]
第2の抗がん療法をさらに含む、本発明1047〜1050のいずれかの方法。
[本発明1052]
第2の抗がん療法が、手術、化学療法、放射線療法、遺伝子療法、または第2の免疫療法である、本発明1051の方法。
[本発明1053]
第2の抗がん療法が、第2の免疫療法である、本発明1052の方法。
[本発明1054]
第2の免疫療法が、チェックポイント療法である、本発明1053の方法。
[本発明1055]
第2の抗がん療法が、放射線療法である、本発明1052の方法。
[本発明1056]
放射線療法が2回以上行われるか、前記組成物の投与が2回以上行われるか、または両方が2回以上行われる、本発明1055の方法。
[本発明1057]
疾患または障害が、感染性疾患である、本発明1047の方法。
[本発明1058]
疾患または障害が、ウイルス感染症である、本発明1057の方法。
[本発明1059]
疾患または障害が、細菌感染症である、本発明1057の方法。
[本発明1060]
患者が、哺乳動物である、本発明1047〜1059のいずれかの方法。
[本発明1061]
患者が、ヒトである、本発明1060の方法。
[本発明1062]
前記組成物を1回投与することを含む、本発明1047〜1061のいずれかの方法。
[本発明1063]
前記組成物を2回以上投与することを含む、本発明1047〜1061のいずれかの方法。
[本発明1064]
その必要がある患者に抗原とアジュバントとを含む組成物を投与する段階を含む、患者におけるSTING経路を活性化する方法であって、前記アジュバントがナノ粒子を形成する、前記方法。
[本発明1065]
前記アジュバントが、合成ポリマーである、本発明1064の方法。
本開示の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになる。しかし、詳細な説明および具体例は、本開示の好ましい態様を示すものの、単に例示として与えられていることを理解すべきである。それは、この詳細な説明から、本開示の精神および範囲内の様々な変更および改変が当業者に明らかになるからである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0033】
(表1)タンパク質抗原およびペプチド抗原のいくつかの非限定的な例の配列
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]
【国際調査報告】