特表2019-511596(P2019-511596A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2019-511596ポリマーへの添加剤としての官能化F−POSS材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-511596(P2019-511596A)
(43)【公表日】2019年4月25日
(54)【発明の名称】ポリマーへの添加剤としての官能化F−POSS材料
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20190329BHJP
   C08K 5/549 20060101ALI20190329BHJP
   C07F 7/21 20060101ALI20190329BHJP
【FI】
   C08L101/00
   C08K5/549
   C07F7/21CSP
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-546419(P2018-546419)
(86)(22)【出願日】2017年3月28日
(85)【翻訳文提出日】2018年10月31日
(86)【国際出願番号】US2017024528
(87)【国際公開番号】WO2017172758
(87)【国際公開日】20171005
(31)【優先権主張番号】62/313,948
(32)【優先日】2016年3月28日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】516344753
【氏名又は名称】エヌビーディー ナノテクノロジーズ, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NBD NANOTECHNOLOGIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100095577
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 富雅
(74)【代理人】
【識別番号】100100424
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 知公
(72)【発明者】
【氏名】ディアオ, チェン
(72)【発明者】
【氏名】アルティノク, エスラ.
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ボン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】キャッチングス, エスアール., ペリー エル.
【テーマコード(参考)】
4H049
4J002
【Fターム(参考)】
4H049VN01
4H049VP08
4H049VQ35
4H049VR21
4H049VR43
4H049VS11
4H049VS35
4H049VT03
4H049VT23
4H049VU16
4H049VV02
4H049VV05
4J002BB001
4J002BC031
4J002BD121
4J002BG041
4J002BG051
4J002CF001
4J002CH001
4J002CK021
4J002CL001
4J002EX026
4J002EX036
4J002EX066
4J002EX076
4J002EX086
4J002FD206
4J002GC00
(57)【要約】
種々のポリマーの撥液性を向上させるための添加剤としての官能化フルオロかご型シルセスキオキサン(F−POSS)材料であって、前記添加剤は少なくとも1つの官能化F−POSS材料を含み、前記官能化F−POSS材料において、官能基はアミン、イソシアネート、エポキシ、カルボン酸、およびエステルからなる群から選択される少なくとも1つの材料である、前記F−POSS材料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーへの添加剤であって、少なくとも1つの官能化F−POSS材料を含み、
前記官能化F−POSS材料において、官能基はアミン、イソシアネート、エポキシ、カルボン酸、およびエステルからなる群から選択される少なくとも1つの材料である、添加剤。
【請求項2】
前記ポリマーはポリウレタン、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエーテル、フッ素化ポリマー、およびポリスチレンからなる群から選択される少なくとも1つのポリマーである、請求項1に記載の添加剤。
【請求項3】
完全フッ素化鎖対極性官能基のモル比は7:1、6:2、5:3、4:4、3:5、2:6、または1:7のいずれかである、請求項1に記載の添加剤。
【請求項4】
ポリマー配合物であって、
a)ポリウレタン、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエーテル、フッ素化ポリマー、およびポリスチレンからなる群から選択される少なくとも1つのポリマー材料;および
b)少なくとも1つの官能化F−POSS材料を含み、前記官能化F−POSS材料において、官能基はアミン、イソシアネート、エポキシ、カルボン酸、およびエステルからなる群から選択される少なくとも1つの材料である、添加剤、
を含むポリマー配合物。
【請求項5】
以下の式1に示される構造を含む、官能化F−POSS材料:
【化3】
【請求項6】
a)式中、RはRまたはR’のいずれかであり、
b)式中、Rは−(CH−(CF−CFであり、ここでnは0〜5であり、ここでqは0〜15であり、
c)式中、R’は−(CH−Xであり、ここでmは0〜15であり、かつ
d)式中、Xは−NH(第一級、第二級または第三級のアミンのいずれか)、−NCO、−COOH、−CO−O−、エポキシ、−OH、−S−CN、−(C)、−N(CHCl、ハロゲン、−SH、シアノ、アルコキシ、アリールオキシ、N−カルバミル、チオカルバミル、アミド、スルフィニル、スルホニル、スルホンアミド、アルキルチオ、アリールチオ、ヘテロ環式、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、第四級アンモニウム、シクロアルキル、カルボニル、オキソ、ニトロ、アルケニル、およびアルキニル基からなる群から選択される基である、
請求項5に記載の官能化F−POSS材料。
【請求項7】
:R’の比は7:1、6:2、5:3、4:4、3:5、2:6、または1:7のいずれかである、請求項0に記載の官能化F−POSS材料。
【請求項8】
は−(CH−(CF−CFであり、ここでnは2である、請求項0に記載の官能化F−POSS材料。
【請求項9】
は−(CH−(CF−CFであり、ここでqは6または8のいずれかである、請求項0に記載の官能化F−POSS材料。
【請求項10】
官能化シランとフッ素化アルキルシラン(FAS)から合成された官能化F−POSS材料。
【請求項11】
アニーリング後の前記材料は、アニーリング前の前記材料の水接触角およびヘキサデカン接触角よりも約20%小さい水接触角およびヘキサデカン接触角を有する、請求項5に記載の官能化F−POSS材料。
【請求項12】
式[2]に示される構造を含む、フッ素化アルキルシラン(FAS)分子:
[CH−(CH−O]−Si−(CH−(CF−CF [2]
式中、
nは0〜15であり、
mは0〜5であり、かつ
qは0〜15である。
【請求項13】
式[3]に示される構造を含む、フッ素化シラン分子:
[CH−(CH−O]−Si−(CH−X [3]
式中、
nは0〜15であり、
mは0〜18であり、かつ
Xは−NH(第一級、第二級または第三級アミン)、−NCO、−COOH、−CO−O−、エポキシ、−OH、−S−CN、−(C)、−N(CHCl、ハロゲン(例えば、−Cl、Br、F、またはI)、−SH、シアノ、アルコキシ、アリールオキシ、N−カルバミル、チオカルバミル、アミド、スルフィニル、スルホニル、スルホンアミド、アルキルチオ、アリールチオ、ヘテロ環、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、第四級アンモニウム、シクロアルキル、カルボニル、オキソ、ニトロ、アルケニル、およびアルキニルからなる群から選択される基である。
【請求項14】
官能化F−POSSを合成する方法であって、
a)フッ素化アルキルシラン(FAS)と少なくとも1つの官能化シラン前駆体を7:1、6:2、5:3、4:4、3:5、2:6、または1:7のいずれかのモル比で混合するステップ;
b)前記ステップa)の混合物を、7:1、6:2、5:3、4:4、3:5、2:6、または1:7のいずれかのモル比で溶媒に添加するステップ;
c)KOH水溶液を触媒として添加するステップ;
d)前記c)で得られた混合物を室温で撹拌するステップ;および
e)沈殿した最終生成物を集めるステップ、
を含む、方法。
【請求項15】
前記方法はさらに、f)前記沈殿した最終生成物をエタノールで洗浄し、次いで乾燥させるステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記添加剤である官能化F−POSSおよびポリマーは、以下の量で存在する:
a)官能化F−POSS:0.05wt%〜50wt%および、
b)ポリマー:99.5wt%〜50wt%、
請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記溶媒の前駆体はアルカンと、エタノールとイソプロピルアルコールの混合物との組み合わせである、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記アルカンはヘプタン、オクタン、ペンタンおよび前記の少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
複合材料を形成する方法であって、
a)請求項14に記載の方法に従って形成された材料および熱可塑性ポリウレタンを準備するステップ;および
b)前記a)の前記材料および前記ポリウレタンを配合機において配合してペレットを形成するステップ、
を含む、方法。
【請求項20】
靴の製造に使用されるポリマー配合物中の添加剤であって、前記添加剤は請求項14に記載の方法に従って製造される、添加剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、本出願の譲受人に共通して譲渡された、“FUNCTIONALIZED F−POSS MATERIALS AS ADDITIVES TO POLYMERS(ポリマーへの添加剤としての官能化F−POSS材料)”と題され、2016年3月28日に出願された、同時係属中の米国仮特許出願第62/313,948号の利益を主張し、その開示は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
本開示は、例示的な実施形態において、優れた疎水性および疎油性の特性を提供するためのポリマーへの添加剤としての官能化フルオロかご型シルセスキオキサン(「F−POSS」)分子に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
例示的な実施形態では、種々のポリマーの撥液性を改善するための添加剤として官能化F−POSSが開示される。F−POSS自体が優れた撥液性を有するが、その完全にフッ素化された構造のために、ポリマーマトリックスとの相互作用が制限され、経時的にそれ自体に向かって凝集し、高温になる傾向があり、撥液性の低下がもたらされる。したがって、これらの課題を緩和するためにある程度の官能性をF−POSSに導入することが望ましいであろう。本明細書に開示されるように合成された官能化F−POSSは、導入された官能基とホストポリマーとの間の増加した分子相互作用に起因して、ホストポリマーとの混和性を著しく増加させ、それ自体をポリマーマトリックス内で経時的に高温で安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図面は、図面全体を通じて同様の参照符号が同一または類似の部分を示す例示的な実施形態を開示する。
【0005】
図1図1は実施例3に従ったFO−POSSおよびプロピルアミンF−POSSのDSC特性のグラフである。
【0006】
図2図2は実施例3に従ったプロピルアミンF−POSSのNMR特性のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
ポリマーは汎用性の高い材料であり、軽量で簡単な加工、コストなどの多くの他の材料(金属、セラミックなど)の特性よりも優れているため、普遍的に使用されている。ポリマーの用途がますますより速い速度で広がるにつれて、様々な新規用途が優れた耐久性、例えば高い機械的特性、高い撥液性などの優れた特性を必要とする。これら全ての特性の中でも、高い撥液性は最も重要な特性の1つであり、近年大きな注目を集めている。
【0008】
一般に、金属およびセラミックと比較して、ポリマーは極性原子およびそのポリマー構造における結合が少ないため、表面張力がはるかに低い。それらの表面張力は、水の表面張力72N/mよりもはるかに低いため、大部分のポリマーは本質的に疎水性である。それにもかかわらず、それらの表面張力は、油性液体(約25N/m)の大部分よりも高く、親油性となる。多くの新規な用途では、ポリマーはより疎水性とより疎油性の両方を必要とするため、ポリマーの表面張力を低下させるために修飾が必要とされる。
【0009】
ポリマーの表面張力を減少させる2つの主なアプローチ:表面改質および添加剤がある。多くの研究により、表面改質はポリマーの表面張力を劇的に低下させることが示されているが、製造プロセスは高価であり、特に摩擦下では、表面の耐久性は低い。従来の低表面張力添加剤、例えばPTFE、PFA、PVDFは、ホスト材料とのそれらの低い混和性のために効果的に表面張力を低下させることができない。通常、大きな相分離が観察され、表面張力はほとんど低下しない。一方、それらの高分子量または大きな粒子サイズは、それらが表面にブルーミングするのを防ぐ。したがって、上記の課題に対処するための新規なアプローチが期待される。F−POSSは、いくつかの理由によりポリマーの撥液性を改善することができる。第1に、F−POSS(モル質量=3993.54g/mol、p=2.067g/cm)は、現在知られている最も疎水性/オムニフォビックな固体材料の1つである。滑らかな表面上では、そのクラスの最も疎油性の物質のうち、それは80°を超えるヘキサデカン接触角を示す。第2に、F−POSSは、約309℃までの優れた熱安定性を示し、約309℃を超えてのみ蒸発する。第3に、F−POSSの溶融温度は126℃であるため、F−POSSはそれらの押出温度でホストポリマーに統合されるのがはるかに容易である。さらに、ポリマーと配合された後、一部のF−POSS材料はポリマー−空気界面に移動して、ホスト材料とのその限られた混和性のために、低表面張力層を形成することができる。表面下のF−POSSは、自己修復的に前記表面層を補充することもできる。
【0010】
それにもかかわらず、F−POSSの限られた混和性は、経時および高温でそれ自体を凝集させ、撥液性を低下させることになる。したがって、官能化されたF−POSSは、マトリックスポリマーとのその分子相互作用を増大させ、経時および高温でその分布を安定化するために提案される。例示的な実施形態では、様々な官能化F−POSS、例えばアミン官能化F−POSS、イソシアネート官能化F−POSS、エポキシ官能化F−POSS、カルボン酸官能化F−POSS、エステル官能化F−POSSが合成され、その混和性を増大しかつ、ポリウレタン、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエーテル、フッ素化ポリマー(PTFE、PFA、PVDF、FEP、ETFEなど)、ポリスチレンなどを含む、ポリマーの撥液性を改善するための有効な添加剤として使用されることが提案される。
【0011】
例示的な実施形態では、官能化F−POSSは、式[1]に示される式を有し:
【化1】
式中、
R=RまたはR’、
=−(CH−(CF−CF(ここで、例示的な実施形態では、nは0〜5であり、他の例示的な実施形態では、n=2であり;ここで、例示的な実施形態では、qは0〜15であり、他の例示的な実施形態では、qは6または8のいずれかである);
’=−(CH−X(ここでmは0〜15である);かつ
Xは−NH(第一級、第二級または第三級アミンのいずれか)、−NCO、−COOH、−CO−O−、エポキシ、−OH、−S−CN、−(C)、−N(CHCl、ハロゲン(例えば、−Cl、Br、F、またはI)、−SH、シアノ、アルコキシ、アリールオキシ、N−カルバミル、チオカルバミル、アミド、スルフィニル、スルホニル、スルホンアミド、アルキルチオ、アリールチオ、ヘテロ環、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、第四級アンモニウム、シクロアルキル、カルボニル、オキソ、ニトロ、アルケニル、およびアルキニル基からなる群から選択される基であり、かつ
:R’=7:1、6:2、5:3、4:4、3:5、2:6、または1:7の比率である。
【0012】
官能化F−POSSは、官能化シランおよびフッ素化アルキルシラン(FAS)から合成される。
【0013】
フッ素化アルキルシラン(FAS)分子構造を式[2]に示し:
[CH−(CH−O]−Si−(CH−(CF−CF [2]
式中、
例示的な実施形態では、nは0〜15であり、他の例示的な実施形態では、nは異なる数であってもよく;
例示的な実施形態では、mは0〜5であり、他の実施形態では、mは2であり、かつ
例示的な実施形態では、qは0〜15であり、他の例示的な実施形態では、mは6または8である。
【0014】
官能化シラン分子構造を式[3]に示し:
[CH−(CH−O]−Si−(CH−X [3]
式中、
例示的な実施形態では、nは0〜15であり、他の例示的な実施形態では、nは異なる数であってもよく;
mは0〜18であり;かつ
Xは−NH(第一級、第二級または第三級アミン)、−NCO、−COOH、−CO−O−、エポキシ、−OH、−S−CN、−(C)、−N(CHCl、ハロゲン(例えば、−Cl、Br、F、またはI)、−SH、シアノ、アルコキシ、アリールオキシ、N−カルバミル、チオカルバミル、アミド、スルフィニル、スルホニル、スルホンアミド、アルキルチオ、アリールチオ、ヘテロ環、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、第四級アンモニウム、シクロアルキル、カルボニル、オキソ、ニトロ、アルケニル、またはアルキニルである。
【0015】
例示的な一実施形態では、官能化F−POSSは、以下のように合成される:
a)フッ素化アルキルシラン(FAS)および官能化シラン前駆体は、7:1、6:2、5:3、4:4、3:5、2:6、または1:7のモル比で混合され;
b)前記比の1つで前駆体を反応溶媒に添加し;
c)KOH水溶液を触媒として使用し;
d)反応を室温で一晩撹拌しながら行い;
e)最終生成物を回収し、温エタノールで洗浄し、次いで一晩乾燥させる。
【0016】
例示的な実施形態では、添加剤である前記官能化F−POSSおよびポリマーは、以下の処方に従って配合される:
a)官能化F−POSS:0.05wt%〜50wt%
b)ポリマー:99.5%wt〜50wt%。
【0017】
例示的な一実施形態では、前記の比で、官能化F−POSSおよびポリウレタンは、ホストポリマーの処理温度で二軸スクリュー押出機において配合される。
【0018】
例示的な一実施形態では、本明細書に記載のポリマーおよび本明細書に記載の官能化F−POSS材料を含むポリマー配合物が提供される。
【0019】
例示的な一実施形態では、前記官能化F−POSS材料は、これに限定されないが、サッカー(a/k/aフットボール)シューズなどのスパイク付き靴の製造におけるポリマー配合物中の添加剤として使用して、靴の泥の蓄積を予防するかまたは減じることができる。
【0020】
官能化F−POSS材料を形成する方法の例示的な実施形態では、形成されたF−POSSアミン材料が固体粉末になるように、反応はアルカン、これらに限定されないが、例えばヘプタン、オクタン、ペンタン、これらのうちの少なくとも2つの組み合わせなどを用いて、エタノール/イソプロピルアルコール混合物と組み合わせて行われる。
【0021】
以下の実施例は、例示のみを目的として記載する。このような実施例に出てくる部およびパーセンテージは、別段の定めがない限り重量による。
【実施例】
【0022】
実施例1
プロピルアミンF−POSSの合成
【0023】
1)4mlの1H,1H,2H,2H−ペルフルオロオクチルトリエトキシシランおよび(3−アミノプロピル)トリエトキシシランを7:1のモル比でフラスコ中で混合した。
【0024】
2)前駆体混合物を11mlのエタノール/ヘプタン混合物に10:1の比で添加した。
【0025】
3)400μlの0.01g/mlのKOH溶液を触媒として添加した。
【0026】
4)反応物を室温で16時間撹拌した。
【0027】
5)析出した白色粉末を集め、次いでエタノールで洗浄して精製した。真空下で16時間乾燥させた後、純粋な白色の固体が得られた。
【0028】
実施例2
熱可塑性ポリウレタン/プロピルアミンF−POSSナノコンポジットの調製
【0029】
1)4gの熱可塑性ポリウレタン(TPU)(95wt%)およびプロピルアミンF−POSS(5wt%)を、210℃で5分間、100rpmの速度でベンチトップツインスクリューミニコンパウンダーにおいて配合した。
【0030】
2)次いで、配合されたペレットを、接触角測定用の小さな棒内に射出成形した。
【0031】
実施例3
プロピルアミンF−POSSの示差走査熱量測定(DSC)特性
【0032】
5gのフルオロオクチルかご型シルセスキオキサン(FO−POSS)およびプロピルアミンF−POSSをDSC特性評価のために実施し、その結果を図1に示した。FO−POSSの融解温度は127℃であり、プロピルアミンPOSSの融解温度は124℃であった。プロピルアミンPOSSの比較的低い融解温度は、プロピルアミンシランのより短い鎖によって引き起こされるわずかに不規則な構造に起因すると考えられた。さらに、FO−POSSおよびプロピルアミンPOSSの両方は、第1および第2の加熱サイクルの結晶化ピークおよび完全なオーバーレイによって証明された、配合温度まで優れた熱安定性を示した。
【0033】
プロピルアミンF−POSSの核磁気共鳴分光法(NMR)の特性を図2に示す。
【0034】
実施例4
接触角測定
【0035】
接触角測定のためにTPU/5%FO−POSSおよびTPU/5%プロピルアミンF−POSS試料の両方を行い、そのデータを表1および表2に要約した。
【表1】
【表2】
【0036】
アニーリング前は、TPU/5%FO−POSSおよびTPU/5%プロピルアミンF−POSSの両方が同様の水およびヘキサデカン接触角を示す。それにもかかわらず、熱アニールを行うと、TPU/5%FO−POSSの水接触角とヘキサデカン接触角の両方が20°減少し、これは表面上のFO−POSS凝集に起因すると考えられる。これに対して、TPU/5%プロピルアミンF−POSSの水およびヘキサデカン接触角は、高温でのアニーリング中にうまく保存され、相凝集を効果的に防ぐ、TPUとアミン官能化POSSとの間の分子相互作用の増加が実証される。
【0037】
以下の番号の付いた条項は、企図されかつ非限定的な実施形態を含む。
【0038】
第1項:ポリマーへの添加剤であって、少なくとも1つの官能化F−POSS材料を含み、
前記官能化F−POSS材料において、官能基はアミン、イソシアネート、エポキシ、カルボン酸、およびエステルからなる群から選択される少なくとも1つの材料である、添加剤。
【0039】
第2項:前記ポリマーはポリウレタン、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエーテル、フッ素化ポリマー、およびポリスチレンからなる群から選択される少なくとも1つのポリマーである、条項1に記載の添加剤。
【0040】
第3項:完全フッ素化鎖対極性官能基のモル比は7:1、6:2、5:3、4:4、3:5、2:6、または1:7のいずれかである、条項1に記載の添加剤。
【0041】
第4項:ポリマー配合物であって、
a.ポリウレタン、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエーテル、フッ素化ポリマー、およびポリスチレンからなる群から選択される少なくとも1つのポリマー材料;および
b.少なくとも1つの官能化F−POSS材料を含み、前記官能化F−POSS材料において、官能基はアミン、イソシアネート、エポキシ、カルボン酸、およびエステルからなる群から選択される少なくとも1つの材料である、添加剤、
を含むポリマー配合物。
【0042】
項5項:以下の式1に示される構造を含む、官能化F−POSS材料:
【化2】
【0043】
第6項:
a.式中、RはRまたはR’のいずれかであり、
b.式中、Rは−(CH−(CF−CFであり、ここでnは0〜5であり、ここでqは0〜15であり、
c.式中、R’は−(CH−Xであり、ここでmは0〜15であり、かつ
d.式中、Xは−NH(第一級、第二級または第三級のアミンのいずれか)、−NCO、−COOH、−CO−O−、エポキシ、−OH、−S−CN、−(C)、−N(CHCl、ハロゲン、−SH、シアノ、アルコキシ、アリールオキシ、N−カルバミル、チオカルバミル、アミド、スルフィニル、スルホニル、スルホンアミド、アルキルチオ、アリールチオ、ヘテロ環式、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、第四級アンモニウム、シクロアルキル、カルボニル、オキソ、ニトロ、アルケニル、およびアルキニル基からなる群から選択される基である、
条項5に記載の官能化F−POSS材料。
【0044】
第7項:R:R’の比は7:1、6:2、5:3、4:4、3:5、2:6、または1:7のいずれかである、条項6に記載の官能化F−POSS材料。
【0045】
第8項:Rは−(CH−(CF−CFであり、ここでnは2である、条項6に記載の官能化F−POSS材料。
【0046】
第9項:Rは−(CH−(CF−CFであり、ここでqは6または8のいずれかである、条項6に記載の官能化F−POSS材料。
【0047】
第10項:官能化シランとフッ素化アルキルシラン(FAS)から合成された官能化F−POSS材料。
【0048】
第11項:アニーリング後の前記材料は、アニーリング前の前記材料の水接触角およびヘキサデカン接触角よりも約20%小さい水接触角およびヘキサデカン接触角を有する、条項5に記載の官能化F−POSS材料。
【0049】
第12項:式[2]に示される構造を含む、フッ素化アルキルシラン(FAS)分子:
[CH−(CH−O]−Si−(CH−(CF−CF [2]
式中、
nは0〜15であり、
mは0〜5であり、かつ
qは0〜15である。
【0050】
項13:式[3]に示される構造を含む、フッ素化シラン分子:
[CH−(CH−O]−Si−(CH−X [3]
式中、
nは0〜15であり、
mは0〜18であり、かつ
Xは−NH(第一級、第二級または第三級アミン)、−NCO、−COOH、−CO−O−、エポキシ、−OH、−S−CN、−(C)、−N(CHCl、ハロゲン(例えば、−Cl、Br、F、またはI)、−SH、シアノ、アルコキシ、アリールオキシ、N−カルバミル、チオカルバミル、アミド、スルフィニル、スルホニル、スルホンアミド、アルキルチオ、アリールチオ、ヘテロ環、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、第四級アンモニウム、シクロアルキル、カルボニル、オキソ、ニトロ、アルケニル、およびアルキニルからなる群から選択される基である。
【0051】
第14項:官能化F−POSSを合成する方法であって、
フッ素化アルキルシラン(FAS)と少なくとも1つの官能化シラン前駆体を7:1、6:2、5:3、4:4、3:5、2:6、または1:7のいずれかのモル比で混合するステップ;
前記ステップa)の混合物を、7:1、6:2、5:3、4:4、3:5、2:6、または1:7のいずれかのモル比で溶媒に添加するステップ;
KOH水溶液を触媒として添加するステップ;
前記で得られた混合物を室温で撹拌するステップ;および
沈殿した最終生成物を集めるステップ、
を含む、方法。
【0052】
第15項:前記方法はさらに、f)前記沈殿した最終生成物をエタノールで洗浄し、次いで乾燥させるステップを含む、条項14に記載の方法。
【0053】
第16項:前記添加剤である官能化F−POSSおよびポリマーは、以下の量で存在する:
官能化F−POSS:0.05wt%〜50wt%および、
ポリマー:99.5wt%〜50wt%、
条項14に記載の方法。
【0054】
第17項:前記溶媒の前駆体はアルカンと、エタノールとイソプロピルアルコールの混合物との組み合わせである、条項14に記載の方法。
【0055】
第18項:前記アルカンはヘプタン、オクタン、ペンタンおよび前記の少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される、条項17に記載の方法。
【0056】
第19項:複合材料を形成する方法であって、
a.条項14に記載の方法に従って形成された材料および熱可塑性ポリウレタンを準備するステップ;および
b.前記材料および前記ポリウレタンを配合機において配合してペレットを形成するステップ、
を含む、方法。
【0057】
第20項:靴の製造に使用されるポリマー配合物中の添加剤であって、前記添加剤は条項14に記載の方法に従って製造される、添加剤。
【0058】
いくつかの例示的な実施形態のみを上記で詳細に説明したが、当業者は、新規な教示および利点から実質的に逸脱することなく、前記例示的な実施形態において多くの変更が可能であることを容易に理解するであろう。したがって、そのような変更の全ては、以下の特許請求の範囲で定義される本開示の範囲内に含まれることが意図される。
【0059】
特定の実施形態に関連して方法、装置およびシステムを説明してきたが、本明細書の実施形態は全ての点で限定的ではなく例示的であることが意図されているため、前記範囲は記載された特定の実施形態に限定されることを意図するものではない。
【0060】
特に明記しない限り、本明細書に記載された方法は、そのステップが特定の順序で実行されることを必要とするものと解釈されることを決して意図していない。したがって、方法の請求項が実際にそのステップの後に続くべき順序を列記していない場合、またはそのステップは特定の順序に限定されることが前記請求項または詳細な記載に特に明記されていない場合、いかなる点でも順序が推論されることは決して意図されるものではない。
【0061】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。
【0062】
本明細書では、範囲は、「約」ある特定の値から、および/または「約」別の特定の値までを表すことができる。そのような範囲が表される場合、別の実施形態は、前記のある特定の値から、および/または前記の別の特定の値までを含む。同様に、値が近似値として表現される場合、先行する「約」の使用により、特定の値が別の実施形態を形成することが理解される。さらに、前記範囲のそれぞれの終点は、他方の終点に関連してと、他方の終点とは独立しての両方を意味することが理解されるであろう。
【0063】
「任意の」または「任意に」は後に記載される事象または状況が起こっても起こらなくてもよいことを意味し、その記載は前記事象または状況が起こる場合および起こらない場合を含む。
【0064】
本明細書の詳細な説明および特許請求の範囲を通して、「含む(comprise)」という用語ならびに「含み(comprising)」および「含む(comprises)」などの前記用語の変形は、「含むがこれに限定されないこと」を意味し、例えば、他の添加剤、成分、整数またはステップを排除することを意図しない。「例示的」は、「の例」を意味し、好ましいまたは理想的な実施形態の表示を伝えることを意図したものではない。「などの〜、または例えば、〜」は限定的な意味ではなく、説明のために使用される。
【0065】
開示された方法、装置およびシステムを実行するために使用され得る構成要素が開示される。これらおよびその他の構成要素は本明細書に開示され、これらの構成要素の組み合わせ、サブセット、相互作用、群などが開示されているが、これらの様々な個別および集合的な組合せおよび置換のそれぞれの特定の参照は明示的に開示されていない可能性がある場合、全ての方法、装置およびシステムについて、それぞれ具体的に考慮され、本明細書に記載されていると理解される。これは、開示された方法のステップを含むが、これに限定されない、本出願の全ての局面に当てはまる。したがって、実行可能な追加のステップが様々である場合、これらの追加のステップのそれぞれは、開示された方法の任意の特定の実施形態または実施形態の組み合わせを用いて実行され得ることが理解される。
図1
図2
【国際調査報告】