(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-511617(P2019-511617A)
(43)【公表日】2019年4月25日
(54)【発明の名称】補強剤を含む複合材料から作製された部品を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
C08J 5/24 20060101AFI20190329BHJP
B29C 70/48 20060101ALI20190329BHJP
【FI】
C08J5/24
B29C70/48
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2018-551919(P2018-551919)
(86)(22)【出願日】2017年3月31日
(85)【翻訳文提出日】2018年11月16日
(86)【国際出願番号】FR2017050740
(87)【国際公開番号】WO2017191381
(87)【国際公開日】20171109
(31)【優先権主張番号】1652951
(32)【優先日】2016年4月5日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】オックステッテル, ジル
(72)【発明者】
【氏名】カペロ, マチュー
【テーマコード(参考)】
4F072
4F205
【Fターム(参考)】
4F072AA07
4F072AA08
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4F205HM02
4F205HT02
4F205HT13
4F205HT26
(57)【要約】
本発明は、局所補強材とプリフォームに含侵する100Pa.s未満の低粘度の第1の樹脂を含有するプリフォームから得られる複合材料から作製された部品を製造する方法に関する。本発明によれば、本方法は以下の工程:−i)第1の繊維材料と、第1の繊維材料の繊維より大きな機械的強度の繊維を有し、前記第1の繊維材料の繊維よりも少なくとも30%高い弾性モジュール又は破断応力を示す第2の繊維材料から作製される補強剤の形態である前記局所補強剤とを含む前記プリフォームの製造工程であって、第2の繊維材料が、80℃超のガラス転移温度(Tg)を有する熱可塑性、アクリル系又はポリアミドの第2のポリマー樹脂で予備含侵され、第2のポリマー樹脂の量が前記第2の繊維材料の総体積に対して25体積%から60体積%の間である、前記プリフォームの製造工程、ii)第1の含侵樹脂で前記プリフォームの含侵工程、iii)部品を得るために前記含侵されたプリフォームの冷却工程、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材料から作製された部品を製造するための方法であって、前記部品が、局所補強剤とプリフォームのための100Pa.s未満の低粘度の第1の含侵樹脂とを含む前記プリフォームから得られること、及び以下の工程:
− i)第1の繊維材料と、第1の繊維材料の繊維よりも少なくとも30%大きい破壊係数又は破断応力を示すように前記第1の繊維材料の繊維より大きな機械的強度を有する繊維を有する第2の繊維材料で形成された補強剤の形態で提供される前記局所補強剤とを含む前記プリフォームの製造工程であって、前記第2の繊維材料が、80℃超のガラス転移温度(Tg)を有する第2の、アクリル系又はポリアミドの熱可塑性ポリマー樹脂で予備含侵され、第2のポリマー樹脂の量が、前記第2の繊維材料の総体積に対して25体積%から60体積%の間である、前記プリフォームの製造工程、
− ii)第1の含侵樹脂による前記プリフォームの含侵工程、
− iii)部品を得るための前記含侵されたプリフォームの冷却工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
部品が
− 密閉金型中の射出成形により、又は
− 金型の外側若しくはプリフォームを含有する開口金型中のいずれかのプリフォーム上への樹脂の堆積により
作製されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
局所補強剤が、フェルト若しくはマットの形態、又は織布、不織布(NCF、「不捲縮布」)、一方向繊維若しくはブレードの形態のいずれかで提供されることと、それらが、好ましくは連続繊維からなり、且つ織布、不織布、一方向(UD)繊維若しくはブレードのウェブ又はストリップの形態で提供されることとを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記プリフォームの製造の工程i)が、
− 乾燥しているか又は任意選択的に第1及び第2の樹脂とは異なる第3の樹脂で弱く予備含侵された繊維の織布の層又は前記繊維の不織布(NCF、「不捲縮布」)の層又は前記繊維のマットの層を重ねることにより、次いで、前記局所補強剤を製造するために、第2の繊維材料で形成される補強剤を表面に堆積させることにより、又は
− ロボットによって堆積される、任意選択的に第1及び第2の樹脂とは異なる第3の樹脂で弱く予備含侵された一方向ストリップからプリフォームを製造することにより、及び、同じ操作で、好ましくはプリフォームのコアで、前記局所補強剤を構成する第2の完全に予備含侵した繊維材料で形成される補強剤を加えることにより
前記局所補強剤の前記プリフォームの表面での堆積及び/又は前記補強剤のプリフォームへの挿入を含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
プリフォームの製造の工程i)が、前記補強剤がサーボロボットによりプリフォームの表面に堆積される及び/又はその製造中にプリフォームに挿入される自動繊維配置(AFP)法によって行われることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ウェブ、織布、NCF、繊維のマット又は一方向ストリップを構成する補強繊維が、一又は複数のポリマー繊維と共混合されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
補強繊維と共混合された繊維を構成するポリマーが、複合材料の操作温度範囲内で延性であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
補強繊維と共混合された繊維を構成するポリマーが、好ましくはカーボンナノチューブである導電性及び/又は熱伝導性充填剤を含むことを特徴とする、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
プリフォームが、プリフォームを予備加熱する第1の工程と、熱盤プレスによって最終形に押しつけられるその後の第2の工程とを含むホットスタンプ法により成形されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
好ましくは風力タービン部品の製造に使用される注入成形法であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
樹脂トランスファー成形(RTM)、圧縮樹脂トランスファー成形(C−RTM)又は真空補助樹脂トランスファー成形(VARTM)法であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ウェットルート(LCM又はWCM又はDFCM)による圧縮成形のための方法であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
第1の含侵樹脂が、500mbarから200barの間、好ましくは800mbarから100barの間、より好ましくは800mbarから60barの間の圧力で密閉金型中に射出されることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
第1の含侵樹脂が、密閉金型における方法の場合は射出温度で、又は開口金型における方法の場合は成形温度で、100Pa.s未満、好ましくは20Pa.s未満、さらにより好ましくは0.2Pa.s未満の粘度を示すことを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
第1の繊維材料がガラス繊維から作製されることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
第1の繊維材料が第3のポリマー樹脂で予備含侵されることを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
第2の補強繊維材料が炭素繊維から作製されることを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
第1の繊維材料がガラス繊維から作製されており、第2の補強繊維材料が炭素繊維から作製されていることを特徴とする、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
第2の繊維材料を含侵させている第2のポリマー樹脂が、80℃以上、好ましくは180℃以上、より好ましくは230℃以上、且つ250℃未満のTgを有する非晶性熱可塑性樹脂から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
第2の繊維材料を含侵させている第2のポリマー樹脂が、80℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは150℃以上のTg、及び180℃以上、好ましくは200℃以上、より好ましくは230℃以上、且つ420℃未満、好ましくは390℃未満、より好ましくは300℃未満のM.p.を示す半結晶性熱可塑性樹脂から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
第2の繊維材料を含侵させている第2のポリマー樹脂が、ポリアミド(PA)、特に、半結晶性又は非晶性である芳香族又は半芳香族ポリアミド(コポリアミドを含む)、より特に、高温半結晶性ポリアミド(HTPA)、あるいは、アクリル系熱可塑性樹脂、例えばポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)コポリマー若しくはメチルメタクリレート(MMA)コポリマー又はそれらのブレンドから選択される熱可塑性樹脂であることを特徴とする、請求項1、19又は20に記載の方法。
【請求項22】
第2の繊維材料を含侵させている第2のポリマー樹脂が、コポリアミドを含むポリアミド(PA)、特に芳香族又は半芳香族ポリアミド、好ましくは、ポリアミドx.T又はコポリアミドx.T/x’.T[式中、Tはテレフタル酸であり、xは直鎖状C9からC18、好ましくはC9からC12の脂肪族ジアミンであり、x’は、モル比[x/(x+x’)]が15%から45%の間(境界値含む)であるようにxとは異なるジアミンであり、x’はメチル又はエチルによりモノ分岐化され、且つジアミンxと少なくとも一の炭素原子の鎖長の差を有するジアミンから選択され、あるいはキシレンジアミン又は、xがC10からC18の場合、直鎖状C4からC18脂肪族ジアミン、若しくはxがC9若しくはC10の場合、x’C9からC18、から選択される]から好ましくは選択される高温半結晶性ポリアミド(HTPA)から選択される半結晶性樹脂であることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
局所補強剤の第2の繊維材料が、前記第2の繊維材料の総体積に対して、35体積%から60体積%の間、好ましくは35体積%から50体積%の間の量の第2のポリマー樹脂を含むことを特徴とする、請求項1から22に記載の方法。
【請求項24】
第1の含侵樹脂が、230℃未満、好ましくは150℃以下、好ましくは120℃以下、さらにより好ましくは100℃以下のTgを有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
第1の含侵樹脂が半結晶性であり、230℃未満、好ましくは200℃以下、さらにより好ましくは190℃以下のM.p.を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
第1の含侵樹脂が、熱硬化性樹脂、好ましくはポリエステル、ビニルエステル、アクリル系若しくはエポキシ(エポキシ−アミン)樹脂、ポリイミド熱硬化性樹脂、特にビスマレイミド樹脂又はポリウレタン熱硬化性樹脂から選択されること、又は熱可塑性樹脂、好ましくはポリアミド(PA、HTPA)樹脂、アクリル系樹脂又はそれらのブレンドから選択されることを特徴とする、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
第1の含侵樹脂がエポキシ樹脂から選択され、第2の繊維材料から作製される補強剤の第2のポリマー樹脂がポリアミド(PA、HTPA)樹脂であることを特徴とする、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
プリフォームの含侵のための第1の樹脂が、第2の繊維材料の含侵のための前記第2の樹脂及び/又は第1の繊維材料の含侵のための第3の樹脂と適合性があることを特徴とする、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
第1の含侵樹脂で含侵されたプリフォームを含み、前記プリフォームが、第1の繊維材料と、第1の繊維材料の繊維よりも大きな強度を有する繊維を有する第2の繊維材料で形成された局所補強剤との集合体を含み、且つ前記第1の繊維材料の繊維よりも少なくとも30%、好ましくは少なくとも100%大きい係数を示し、前記第2の繊維材料が、前記第2の繊維材料の総体積に対して25体積%から60体積%の間の量である80℃超のガラス転移温度(Tg)を有する第2の、アクリル系又はポリアミドの熱可塑性ポリマー樹脂で予備含侵されており、前記プリフォームが前記第1の含侵樹脂で含侵されていることを特徴とする、複合材料から作製された部品。
【請求項30】
請求項1から28のいずれか一項に記載の方法によって得られることを特徴とする、請求項29に記載の部品。
【請求項31】
第1の繊維材料が第3のポリマー樹脂で予備含侵されていることを特徴とする、請求項29又は30に記載の部品。
【請求項32】
・ガラス繊維から作製され、任意選択的にポリマー樹脂で予備含侵された第1の繊維材料を含む少なくとも一のプリフォーム、
・炭素繊維から作製された、80℃超のガラス転移温度(Tg)を有する熱可塑性ポリマー樹脂、好ましくはポリアミド(PA、HTPA)樹脂で予備含侵された第2の繊維材料を含む少なくとも一の補強剤、
・エポキシ樹脂、ポリアミド(PA若しくはHTPA)樹脂又はアクリル系樹脂から選択される、100Pa.s未満の低粘度の前記プリフォームの含侵のための樹脂
を含むことを特徴とする、請求項29から31のいずれか一項に記載の部品。
【請求項33】
第2の繊維材料を含む補強剤のポリマー樹脂が、アクリル系熱可塑性樹脂、例えばポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)コポリマー又はメチルメタクリレート(MMA)コポリマーからさらに選択されることを特徴とする、請求項29に記載の部品。
【請求項34】
エンジン又は機械、航空機又は船舶の製造、又は水上スポーツ、自動車産業、特に自動車シャーシ、風力、潮力若しくは水力発電(風力タービン、船舶用タービン、タービン)又は建設産業、又は保健及び医療分野、軍及び兵器産業、スポーツ及びレジャー、エレクトロニクス産業、又は太陽(ミラー)若しくは太陽光発電(パネル)発電所における用途のための、請求項29から33のいずれか一項に記載の部品の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2又は3次元部品の製造のための複合材料の分野に関する。
【0002】
本発明は、より具体的には、繊維性基材(以下、プリフォームと称する)を弱粘性のポリマー樹脂を用いて含浸させた後、成形操作を行うことによる、複合材料から作製された部品の製造のための方法、及びそのような方法の実施によって得られる複合材料に関する。
【背景技術】
【0003】
複合材料は、少なくとも二つの非混和性成分の集合体である。このような集合体によって相乗効果が得られ、それにより、得られる複合材料は、各初期成分を有していないか、又は複合材料と比較して少ないが有する機械的及び/又は熱的特性を有する。
【0004】
さらに、複合材料は、前記複合材料に良好な機械的特性、特に連続相を形成し、且つ前記複合材料にその凝集力を提供する、複合材料及びマトリックス材料、又はより簡潔にはマトリックスが受ける機械的応力に対する良好な耐性を付与する織布繊維又は不織布繊維からなる少なくとも一の補強用材料を含む。業界で使用されている様々なタイプの複合材料の中で、有機マトリックスを有する複合材料が最も広く占めている。有機マトリックスを有する複合材料の場合、マトリックス材料は一般的にポリマーである。このポリマーは、熱硬化性ポリマー又は熱可塑性ポリマーのいずれかでありうる。
【0005】
特定の用途について、複合材料の調製は、初めに「プリフォーム」の製造によって行われる。プリフォームは一般的に複数のプリプレグ層からなる。プリプレグはそれ自体が、織布又は不織繊維材料からなる、例えば炭素繊維又はガラス繊維、及びポリマー樹脂からなるポリマーマトリックスからなる複合材料である。
【0006】
RTM(樹脂トランスファー成形)型又はC−RTM(圧縮樹脂トランスファー成形)型の方法によれば、プリフォームは密閉金型に置かれ、続いて、弱粘性樹脂を含侵し、その後前記密閉金型に射出される。この樹脂は、プリフォームを完全に含侵させるために、プリフォームの含侵の段階後に、好ましくはin situで重合される。C−RTMの場合、樹脂はプリフォームの表面上に射出され、金型の最終的な圧縮は、プリフォームの樹脂の完全な含侵を強制する。射出及び圧縮の間、繊維の含侵を促進するために、金型は密閉及び気密され、さらにはしばしば減圧下に置かれる。
【0007】
ウェットルート(LCM、「液体圧縮成形」又はWCM、「湿り圧縮成形」又はDFCM、「動的流体圧縮成形」)による圧縮は、同じ種類のプリフォームを使用するが、樹脂が金型内に既に配置されているプリフォーム上の開口金型に直積堆積され、金型が好ましくは予め加熱される点で、C−RTMとは異なる。金型は続いて密閉され、C−RTMの場合、これは樹脂によるプリフォームの完全な含侵を強制する。この段階の後には樹脂のin situでの重合が続く。
【0008】
これらの異なる方法において、プリフォームは中間材料であり、その形は最終的な複合部品のもとに対応する。
【0009】
別のバージョンでは、ウェットルート(LCM又はWCM又はDFCM)による圧縮は、部分的に樹脂が予備含浸され、複合部品の製造の最終操作中に成形されるフラット半製品の集合体からなるフラットプリフォームを使用する。その後、樹脂の最終含有量に対するプリフォームの予備含浸が、液体樹脂を用いて型の外側で行われる。この予備含浸の後に、予備含浸されたプリフォームを予熱された型に移し、高温金型の密閉(あるいはホットスタンプ操作としても知られる)中に圧縮成形による成形を可能にし、それに続いてin situ重合が行われる。
【0010】
完全には重合していない樹脂が密閉金型に射出されるとき、簡略化のため、密閉金型の方法が参照される。
【0011】
完全には重合していない樹脂が開口金型又は型の外側のプリフォームに堆積するとき、簡略化のため、密閉金型の方法が参照される。
【0012】
これらの方法の実施により得られる複合材料から作製された部品は、機械的強度などの良好な機械的特性、及び耐熱性を有する。
【0013】
利用分野に応じて、安い複合材料を使用することが必要な場合がある。これらの部品は、それほど高価ではないが、厳密な仕様を満たし、問題の用途に満足のいく機械的特性を有するために全て同じである。
【0014】
この目的のため、複合部品の製造に必要なプリフォームは、例えば、局所的に補強することができる。この補強は、プリフォームの変形による補強剤を局所的に作成することによって行うことができる。しかしながら、プリフォームの形状は、その後複雑になり、これは、技術的問題点の源及びその製造のための追加費用の原因となる。さらに、繊維材料の種類の選択の制限を伴って、プリフォームの繊維材料の高度な変形が必要である。この形状の複雑さは、金型の密閉中の圧縮の段階中の射出、RTM、VARTM、C−RTM又はLCM又はWCM又はDFCM法における含浸の質に関する、特に、圧縮の軸に対してもはや垂直ではないプリフォームの壁に関する障害でもある。
【0015】
さらに、解決策の中でも、プリフォームの変形による補強剤の解決策は、一般に、特に複合部品の動作温度がプリフォームを含浸させるため及び複合部品を得るためにその後に使用される含浸樹脂のガラス転移温度(Tg)よりも高いとき、複合部品の動作温度範囲全体にわたる複合部品の最適な機械的特性を保証することができない。
【0016】
そして、解決策の中でも、プリフォームの変形による補強剤の解決は、一般的に、電気泳動のサイクルの温度より低いガラス転移温度(Tg)を有する非晶質熱可塑性樹脂について又は電気泳動のサイクルの温度よりも低い融点(Mp)を有する半結晶質樹脂について得られた複合部品の電気泳動の通過を可能にできない(これは、工業用塗料の電気泳動による堆積のための技術である)熱硬化性樹脂に関して、それらのTgが電気泳動法のサイクルの温度より低い場合、電気泳動サイクル後に最終複合部品の変形が観察されうる。
【0017】
技術的問題
よって、本発明の目的は、プリフォームから出発する複合材料から作製された部品の製造のための方法を提供することによって先行技術の欠点を克服することであり、前記方法は、プリフォーム及びこのプリフォームから得られる複合部品の局所補強についての既存の解決策の代替策を提供する。
【0018】
この方法はまた、複合部品の操作温度範囲、特に、プリフォームの含侵のための樹脂のガラス転移温度(Tg)より高い操作温度にわたって前記方法により得られる複合材料の良好な機械的特性の保証を可能にする。
【0019】
該方法は、電気泳動に使用されるサイクル温度が何度であっても、複合部品が電気泳動を通過することを可能にし、これはプリフォームの含侵のためのいかなる種類の樹脂、特に、電気泳動が行われる時点の温度よりも低いガラス転移温度(Tg)若しくは半結晶質樹脂の場合は融点(M.p.)を有し、よって電気泳動に適合しない含侵樹脂か、又はこの樹脂を含侵した複合部品が電気泳動を通過することにより、一般的に減少した機械的特性又は前記部品の変形がもたらされる樹脂にも当てはまる。
【0020】
ガラス転移温度Tgは、簡略化のために以下ではTgと表す。
【0021】
融点M.p.は、簡略化のために以下ではM.p.と表す。
【発明の概要】
【0022】
この目的のため、本発明の主題は、複合材料から作製された部品を製造するための方法であって、前記部品が、局所補強剤とプリフォームのための100Pa.s未満の低粘度の第1の樹脂とを含むプリフォームから得られること、並びに、以下の段階:
−i)第1の繊維材料と、第1の繊維材料の繊維のものよりも少なくとも30%大きい破壊係数又は破断応力を示すように第1の繊維材料の繊維のものより大きな機械的強度を有する繊維を有する第2の繊維材料で形成された補強剤の形態で提供される前記局所補強剤とを含む前記プリフォームの製造であって、ここで、第2の繊維材料は、前記第2の繊維材料の総体積に対して25体積%から60体積%の間の量である80℃超のガラス転移温度(Tg)を有する第2の、アクリル系又はポリアミドの熱可塑性ポリマー樹脂で予備含侵される、第2のポリマー樹脂の量は、前記第2の繊維材料の総体積に対して25体積%から60体積%の間である、前記プリフォームの製造工程、
− ii)第1の含侵樹脂による前記プリフォームの含侵工程、
− iii)部品を得るための前記含侵されたプリフォームの冷却工程
を含むことを特徴とする方法である。
【0023】
ガラス転移温度(Tg)が80℃超である第2の熱可塑性ポリマー樹脂の使用は、補強ストリップの、及びその結果として、製造される部品の機械的及び/又は熱的性能品質を高めることを可能にする。
【0024】
該方法の他の任意の特性によれば、
− 部品は、密閉金型中の射出成形により又は金型の外側若しくはプリフォームを含有する開口金型中のいずれかのプリフォーム上への樹脂の堆積により作製される;
− 局所補強剤は、フェルト若しくはマットのいずれかの形態、又は織布、不織布(NCF、「不捲縮布」)、一方向繊維若しくはブレードの形態で提供され、それらは、好ましくは連続繊維からなり、織布、不織布、一方向(UD)繊維若しくはブレードのウェブ又はストリップの形態で提供される;
− 前記プリフォームの製造の段階i)は、
・乾燥しているか又は任意選択的に第1及び第2の樹脂とは異なる第3の樹脂で弱く予備含侵された繊維の織布の層又は前記繊維の不織布(NCF、「不捲縮布」)の層又は前記繊維のマットの層を重ねることにより、次いで、前記局所補強剤を製造するために、第2の繊維材料から形成される補強剤を表面に堆積させることにより、又は
・ロボットによって堆積される、任意選択的に第1及び第2の樹脂とは異なる第3の樹脂で弱く予備含侵された一方向ストリップからプリフォームを製造することにより、及び、同じ操作に、好ましくはプリフォームのコアで、前記局所補強剤を構成する第2の完全に予備含侵した繊維材料から形成される補強剤を加えることにより、
前記局所補強剤の前記プリフォームの表面への堆積及び/又は前記補強剤のプリフォームへの挿入を含む;
− プリフォームの製造の段階i)は、前記補強剤が、サーボロボットにより、プリフォームの表面に堆積される及び/又はその製造中にプリフォームに挿入される自動繊維配置(AFP)法によって行われる;
− ウェブ、織布、NCF、繊維のマット又は一方向ストリップを構成する補強繊維は、一又は複数のポリマー繊維と共混合することができる;
− 補強繊維と共混合された繊維を構成するポリマーは、複合材料の操作温度範囲内で延性である;
− 補強繊維と共混合された繊維を構成するポリマーは、好ましくはカーボンナノチューブである導電性及び/又は熱伝導性充填剤を含む;
− プリフォームは、プリフォームを予備加熱する第1の段階と、熱盤プレスによって最終形に押しつけられるその後の第2の段階を含むホットスタンプ法により成形される;
− 該方法は、好ましくは風力タービン部品の製造に使用される注入成形法である;
− 該方法は、樹脂トランスファー成形(RTM)、圧縮樹脂トランスファー成形(C−RTM)又は真空補助樹脂トランスファー成形(VARTM)法である;
− 該方法は、ウェットルート(LCM又はWCM又DFCM)による圧縮成形のための方法である;
− 密閉金型における方法の場合、第1の含侵樹脂は、500mbarから200barの間、好ましくは800mbarから100barの間、より好ましくは800mbarから60barの間の圧力で射出される;
− 密閉金型における方法の場合、第1の含侵樹脂は、射出温度で、100Pa.s未満、好ましくは20Pa.s未満、より好ましくはさらに0.2Pa.s未満の粘度を示す;
− 開口金型における方法の場合、第1の含侵樹脂は、成形温度で、100Pa.s未満、好ましくは20Pa.s未満、より好ましくはさらに0.2Pa.s未満の粘度を示す;
− 第1の繊維材料はガラス繊維から作製されている;
− 第1の繊維材料は第3のポリマー樹脂で予備含侵されている;
− 第2の補強繊維材料は炭素繊維から作製されている;
− 第1の繊維材料はガラス繊維から作製され、第2の補強繊維材料は炭素繊維から作製されている;
− 第2の繊維材料を含侵させている第2のポリマー樹脂は、80℃以上、好ましくは180℃以上、より好ましくは230℃以上、且つ好ましくは250℃未満のTgを有する非晶性熱可塑性樹脂から選択される;
− 第2の繊維材料を含侵させている第2のポリマー樹脂は、80℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは150℃以上のTg、及び180℃以上、好ましくは200℃以上、より好ましくは230℃以上且つ420℃未満、好ましくは390℃未満、より好ましくは300℃未満のM.p.を示す半結晶性熱可塑性樹脂から選択される;
− 第2の繊維材料を含侵させている第2のポリマー樹脂は、ポリアミド(PA)、特に、半結晶性又は非晶性である芳香族又は半芳香族ポリアミド(コポリアミドを含む)、より特に、高温半結晶性ポリアミド(HTPA)、あるいは、アクリル系熱可塑性樹脂、例えばポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)コポリマー若しくはメチルメタクリレート(MMA)コポリマー又はそれらのブレンドから選択される熱可塑性樹脂である;
− 第2の繊維材料を含侵させている第2のポリマー樹脂は、コポリアミドを含むポリアミド(PA)、特に芳香族又は半芳香族ポリアミド、好ましくは、ポリアミドx.T又はコポリアミドx.T/x’.T[式中、Tはテレフタル酸であり、xは直鎖状C
9からC
18、好ましくはC
9からC
12の脂肪族ジアミンであり、x’は、モル比[x/(x+x’)]が15%から45%の間(境界値含む)であるようにxとは異なるジアミンであり、x’はメチル又はエチルによりモノ分岐化され、且つジアミンxと少なくとも一の炭素原子の鎖長の差を有するジアミンから選択され、あるいはキシレンジアミン又は、xがC
10からC
18の場合、直鎖状C
4からC
18脂肪族ジアミン、若しくはxがC
9若しくはC
10の場合、x’C
9からC
18から選択される]から好ましくは選択される高温半結晶性ポリアミド(HTPA)から選択される半結晶性樹脂である;
− 局所補強剤の第2の繊維材料は、前記第2の繊維材料の総体積に対して25体積%から60体積%の間、好ましくは35体積%から60体積%の間、より好ましくは35体積%から55体積%の間、さらにより好ましくは35体積%から50体積%の間の量の第2のポリマー樹脂を含む;
− 第1の含侵樹脂は、230℃未満、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下、さらにより好ましくは100℃以下のTgを有する;
− 第1の含侵樹脂は半結晶性であり、230℃未満、好ましくは200℃以下、さらにより好ましくは190℃以下のM.p.を有する;
− 第1の含侵樹脂は、熱硬化性樹脂、好ましくはポリエステル、ビニルエステル、アクリル系又はエポキシ(エポキシ−アミン)樹脂、ポリイミド熱硬化性樹脂、特にビスマレイミド樹脂又はポリウレタン熱硬化性樹脂から選択され、又は熱可塑性樹脂、好ましくはポリアミド(PA、HTPA)樹脂、アクリル系樹脂又はそれらのブレンドから選択される;
− 第1の含侵樹脂はエポキシ樹脂から選択され、局所補強剤の第2の繊維材料の含侵のための第2のポリマー樹脂は、ポリアミド(PA、HTPA)樹脂である;
− プリフォームの含侵のための第1の樹脂は、第2の繊維材料の含侵のための前記第2の樹脂及び/又は第1の繊維材料の含侵のための第3の樹脂と適合性がある。
【0025】
本発明は、第1の含侵樹脂で含侵されたプリフォームを含み、前記プリフォームは、第1の繊維材料と、第1の繊維材料の繊維よりも大きな機械的強度を有する繊維を有し、第1の繊維材料の繊維よりも少なくとも30%、好ましくは少なくとも100%大きい係数を示す第2の繊維材料から形成された補強剤とを含み、ここで、第2の繊維材料は、前記第2の繊維材料の総体積に対して25体積%から60体積%の間の量である80℃超のガラス転移温度(Tg)を有する第2の、アクリル系又はポリアミドの熱可塑性ポリマー樹脂である前記プリフォームで予備含侵されており、前記プリフォームは前記第1の含侵樹脂で含侵されていることを特徴とする、複合材料から作製された部品にさらに関する。
【0026】
有利には、複合部品は上記の方法により得られる。
【0027】
第1の繊維材料は第3のポリマー樹脂で予備含侵される。
【0028】
好ましくは、部品は以下を含む:
・ガラス繊維から作製され、任意選択的にポリマー樹脂で含侵された第1の繊維材料を含む少なくとも一のプリフォーム、
・炭素繊維から作製された、80℃超のガラス転移温度(Tg)を有する熱可塑性ポリマー樹脂、好ましくはポリアミド(PA、HTPA)樹脂で含侵された第2の繊維材料を含む少なくとも一の補強剤、
・エポキシ樹脂、ポリアミド(PA、HTPA)樹脂又はアクリル系樹脂から選択される、100Pa.s未満の低粘度の前記プリフォームの含侵のための樹脂。
【0029】
あるいは、第2の繊維材料を含む補強剤のポリマー樹脂は、アクリル系熱可塑性樹脂、例えばポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)コポリマー又はメチルメタクリレート(MMA)コポリマーから選択される。
【0030】
このような部品は、特にエンジン若しくは機械、航空機又は船舶の製造、又は水上スポーツ、自動車産業、特に自動車シャーシ、風力、潮力又は水力発電(風力タービン、船舶用タービン、タービン)又は建設産業、又は保健及び医療分野、軍及び兵器産業、スポーツ及びレジャー、エレクトロニクス産業、又は太陽(ミラー)若しくは太陽光発電(パネル)発電所に使用される。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の第1の主題は、複合材料から作製されている部品、特に、構造化又は半構造化3次元部品の製造のための方法に関する。製造方法は、第1の複合材料(以下「プリプレグ」とも表される)を含むプリフォームの製造の段階を含み、前記プリプレグは、第1の繊維材料a1)と繊維材料を含侵させるポリマーマトリックスa2)とを含む。プリフォームはまた、ポリマーマトリックスb2)で含侵された第2の繊維材料b1)から形成された補強剤の形態で提供される局所補強剤b)も含む。これらの補強剤は、好ましくは最大の機械的応力又はひずみをうけやすい最終複合部品の対応する点で、プリフォームに堆積するか又は前記プリフォーム中に挿入される。
【0032】
最終複合部品は、局所補強剤を含むプリフォームを金型に置き、その後、低粘度の樹脂を密閉金型に射出することによって前記プリフォームを含侵させ、任意選択的に圧縮の段階が続く(C−RTMの場合)ことによって得られる。
【0033】
ウェットルート(LCM、WCM、DFCM)による圧縮成形の場合、最終複合部品は、局所補強剤を含むプリフォームを金型に置くこと、金型の外側又は開口金型中のいずれかで繊維状プリフォームに低粘度の樹脂を堆積させることによって行われる含侵、及び、その後の金型の密閉中の圧縮の段階によって得られる。
【0034】
「低粘度の樹脂」とは、金型への樹脂の導入の温度、低勾配(1s
−1未満のせん断速度)でプレート−プレートレオメータを使用して測定される粘度が100Pa.s未満の樹脂を意味するものと理解される。好ましくは、粘度は20Pa.s未満であり、さらにより好ましくは0.2Pa.s未満である。
【0035】
用語「射出」とは、ここでは広義であり、例えば樹脂トランスファー成形(RTM)、圧縮樹脂トランスファー成形(C−RTM)、真空補助樹脂トランスファー成形(VARTM)、注入成形から選択される製造方法を指すものと理解される。
【0036】
金型の外側又は開口金型でのプリフォームへの樹脂の堆積は、溶射、熱可塑性樹脂の場合はフレーム溶射、又は低粘度の熱可塑性樹脂の例えば溶融装置若しくは押出機による溶融による堆積、及び金型への漏れ止め結合のシステムを有さない重力による堆積についての方法を指す。
【0037】
局所補強剤は、マット若しくはフェルトの形態、又は織布、不織布、一方向(UD)繊維若しくはブレードの形態で提供される。それらは好ましくは連続繊維であり、織布、不織布(「不捲縮布」についてNCFとも表される)、一方向繊維又はブレードのウェブ若しくはストリップの形態で提供される。
【0038】
用語「ストリップ」とは、幅よりもはるかに大きな長さを示すシート材料を意味するものと理解される。好ましくは、本発明に関連して使用されるストリップは、その長さ全体にわたって実質的に一定の幅を有する。補強ストリップの構成繊維は、前記補強ストリップの長さと平行な方向に沿って延び、これは「一方向」補強剤と称される。
【0039】
使用される用語「熱可塑性ポリマー」又は「熱可塑性樹脂」とは、架橋されておらず、溶融状態にあり、そのガラス転移温度Tg(非晶性ポリマー)又はその融点M.p.(半結晶性ポリマー)よりも高い温度に加熱されたときに多少は粘度のある(温度による)ポリマー又は樹脂に関する。
【0040】
使用される用語「熱硬化性ポリマー」又は「熱硬化性樹脂」あるいは「架橋性ポリマー若しくは樹脂」とは、硬化(架橋)によって不溶融性且つ不溶性(架橋)ポリマーネットワークに不可逆的に転化するポリマー又は樹脂又は多成分反応系に関する。
【0041】
使用される用語「ポリマー」とは、一又は複数の同一の又は異なる繰り返し単位の配列を含む材料を表す。
【0042】
例えばロービング、ウェブ若しくは織布の形態、又は予備含侵繊維材料(「プリプレグ」として知られる)の複数の層からなるプリフォームの形態の繊維材料のような繊維基材の含侵のための、ポリマー又はポリマーと添加剤、例えば触媒、重合開始剤、硬化剤等のブレンドを表すものには、「樹脂」又は「ポリマー樹脂」が挙げられる。ポリマー樹脂は、プリプレグ又はプリフォームのような複合材料のポリマーマトリックスを構成する。
【0043】
使用される異なるポリマーマトリックスのガラス転移温度Tg及び融点M.p.は、20℃/分の温度上昇を伴う第2の加熱において、それぞれ、ISO規格11357−2及び11357−3に従ってDSCにより測定される。温度は、±1℃の正確さで測定される。
【0044】
プリフォームa)のプリプレグ
プリプレグの第1の繊維材料a1)に関して、それは、繊維、特に、鉱物由来、有機物由来又は植物由来の繊維を含む。鉱物由来の繊維の中では、例えば炭素繊維、ガラス繊維、玄武岩繊維、シリカ繊維又は炭化ケイ素繊維が挙げられる。有機物由来の繊維の中では、例えば熱可塑性熱硬化性ポリマーに基づく繊維、例えば芳香族ポリアミド繊維、アラミド繊維又はポリオレフィン繊維が挙げられる。好ましくは、それらは熱可塑性ポリマーに基づく。有機物由来の繊維が非晶性熱可塑性ポリマーに基づく場合、それらは、このポリマー(又はポリマーのブレンド)が非晶性又は熱硬化性であるとき、前記第1の繊維材料a1)を含侵させるのに使用される低粘度の樹脂a2)のポリマー(又はポリマーのブレンド)のTgよりも大きく、又は、このポリマー(又はポリマーのブレンド)が半結晶性であるとき、第1の繊維材料a1)を含侵させるのに使用される低粘度の樹脂a2)のポリマー(又はポリマーのブレンド)の融点M.p.よりも大きい。繊維a1)が半結晶性熱可塑性ポリマーから作製されているとき、それらの融点M.p.は、それらが、非晶性、熱硬化性又は半結晶性であるかによって、樹脂a2)のポリマー(又はポリマーのブレンド)のガラス転移温度又は融点よりも大きい。そのため、繊維材料を構成する有機繊維が溶融するリスクは存在しない。植物由来の繊維の中では、亜麻、麻、絹、特にクモの糸、サイザルに基づく天然繊維及びその他セルロース繊維、特にビスコース繊維が挙げられる。
【0045】
第1の繊維材料a1)の繊維は、単独で又は混合物として使用することができる。よって、有機繊維は、プリプレグのポリマーマトリックスa2)で鉱物繊維と混合することができる。
【0046】
好ましくは、繊維は、単一糸、多数糸又は二つの混合物であり、単位面積当たり複数の重量を有することができる。加えて、それらはいくつかの形状を示しうる。よって、繊維は、切断繊維の形態で提供され、その後、バンド、ウェブ、ブレード、ロービング又はピースの形態で提供されうるフェルト又は不織布を作製することができる。あるいは、繊維は、連続繊維の形態で提供され、多方向(2D、3D)、ブレード又は一方向繊維(UD)若しくは不織布のロービングである織布を作製することができる。繊維材料の繊維はまた、異なる形状を有するこれらの補強繊維の混合物の形態で提供されうる。好ましくは、該繊維は連続している。
【0047】
好ましくは、第1の繊維材料a1)は、炭素、ガラス又は炭化ケイ素の連続繊維、又はそれらの混合物から、より好ましくはガラス繊維からなる。有利には、それは、ロービング又は一緒に組まれた複数のロービングの形態で使用される。
【0048】
本発明の好ましい形態によれば、繊維はガラス繊維である。
【0049】
プリプレグのポリマーマトリックスa2)に関しては、それは有利には熱可塑性樹脂からなる。
【0050】
より具体的には、プリフォームのプリプレグのポリマーマトリックスa2)の構造に関与する熱可塑性樹脂は以下から選択されうる:
− ポリアミド(PA)のファミリー、例えばポリアミド6(PA−6)、ポリアミド11(PA−11)、ポリアミド12(PA−12)、ポリアミド6.6(PA−6.6)、ポリアミド4.6(PA−4.6)、ポリアミド6.10(PA−6.10)、ポリアミド6.12(PA−6.12)、尿素単位により修飾されていてもよい芳香族単位を含有するポリアミド、特にポリフタルアミド及びアラミドの樹脂、及びブロックコポリマー、特にポリアミド/ポリエーテルブロックコポリマー、
− ポリ尿素、特に芳香族ポリ尿素、
− アクリルファミリー(例えばポリアクリレート、より具体的にはポリメチルメタクリレート(PMMA)又はその誘導体)のポリマー及びコポリマー、
− ポリアリールエーテルケトン(PAEK)のファミリー、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)又はポリアリールエーテルケトンケトン(PAEKK)(例えばポリエーテルケトンケトン(PEKK))又はその誘導体のポリマー及びコポリマー、
− 芳香族ポリエーテルイミド(PEI)、
− ポリアリールスルフィド、特にポリフェニレンスルフィド(PPS)、
− ポリアリールスルホン、特にポリフェニレンスルホン(PPSU)、
− ポリオレフィン、特にポリエチレン(PE)、
− ポリ乳酸(PLA)、
− ポリビニルアルコール(PVA)、
− フッ素樹脂、特にポリビニリデンフルオリド(PVDF)又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又はポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、
− 上記樹脂の混合物。
【0051】
フルオロ樹脂に関しては、フッ化ビニリデン(式CH
2=CF
2のVDF)のホモポリマー、又は50重量%のVDFと、VDFと共重合可能な少なくとも一の他のモノマーとを含むVDFのコポリマーを使用することが好ましい。最終複合部品が特に熱的応力を受けているとき、それに良好な機械的強度を提供するためには、VDFの含有量は、好ましくは80重量%、より好ましくは90重量%である。コモノマーは、例えば、フッ化ビニルから選択されるフルオロモノマーでありうる。
【0052】
任意選択的には、熱可塑性樹脂は、好ましくは炭素系ナノフィラー、特にグラフェン及び/又はカーボンナノチューブ及び/又はカーボンナノフィブリル、又はそれらの混合物から選択される、炭素系充填剤、特にカーボンブラック、又は炭素系ナノフィラーをさらに含む。これらの充填剤は、電機及び熱を伝導することを可能にし、結果として、ポリマーマトリックスが加熱されるときにその流動化を改善することを可能にする。
【0053】
別の代替的な形態によれば、熱可塑性樹脂は、添加剤、例えば液晶ポリマー若しくは環状ポリブチレンテレフタレート又はこれら二つの添加剤の混合物、例えばCyclics Corporationにより販売されるCBT 100樹脂を追加で含むことができる。これらの添加剤は特に、繊維のコアへのよりよい浸透のための、溶融状態のポリマーマトリックスの流動化を可能にする。プリプレグのマトリックスを構成する熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマーのブレンドの性質、特にその融点に応じて、これらの添加剤のうちの一つ又は他のものが選択される。
【0054】
プリフォームの構成プリプレグは、繊維と、それらを一緒に保持するために表面で繊維を覆う少量のポリマーマトリックスとの間に多孔性を含む点で、好ましくは「乾燥」している。多孔性は、複合部品の機械的特性、特にその機械的凝集を改善させるために、最終複合部品を形成するための金型への前記樹脂の射出中に、後に続くプリプレグ内の含侵樹脂c)の輸送を容易にすることができる。
【0055】
よって、ポリマーマトリックスa2)のパーセンテージは、プリプレグの総体積に対して、有利には0.2体積%から15体積%の間、好ましくは0.2体積%から10体積%の間、より好ましくは0.2体積%から5体積%の間である。この場合、単位面積当たり低重量を有し、繊維を互いに保持するために繊維材料に堆積される結合剤又はポリマーベールも参照される。
【0056】
プリフォームa)の局所補強剤b)
局所補強剤は、フェルト若しくはマットの形態、又は織布、不織布、一方向繊維若しくはブレードの形態で提供される。それらは好ましくは連続繊維からなり、織布、不織布、一方向(UD)繊維若しくはブレードのウェブ又はストリップの形態で提供される。
【0057】
有利には、ウェブ、織布、不織布繊維NCF(「不捲縮布」)の層、繊維のマット又は一方向ストリップを構成する補強用繊維は、一又は複数のポリマー繊維と共混合される。補強繊維と共混合された繊維からなるポリマーは、複合材料の操作温度範囲内で延性がある。別の製造方法によれば、これらのポリマーは、好ましくはカーボンナノチューブである導電性及び/又は熱伝導充填剤を含むことができる。
【0058】
プリフォームの局所補強剤b)は、有利には、第2の繊維材料b1)とポリマーマトリックスb2)とを含む複合材料から作製されたストリップの形態で提供される。プリフォームの製造中、及びプリフォームa)の含侵のための樹脂c)の射出の段階前に、補強ストリップはプリフォームに堆積するか又はプリフォーム中、有利には機械的及び/又は熱的に最も応力を受けた最終複合部品の領域に対応するプリフォームの領域に挿入される。
【0059】
補強ストリップのプリフォームへの堆積又は挿入中、前記ストリップは、最終複合部品の機械的及び/又は熱的特性を最適化するように、配置又は配向される。特に、ストリップは、複合部品の将来的なローディングに従って配置及び配向される。
【0060】
作用領域中の補強ストリップのこの選択的な堆積又は挿入は、最適な機械的及び熱的特性を提供する一方、プリフォーム及び複合部品を補強するために、かなり削減された量の補強繊維材料b1)、特に炭素繊維、及び補強マトリックスb2)を使用することを可能にする。結果として、製造費用も大きく削減される。
【0061】
補強剤b)の第2の繊維材料b1)に関しては、それはプリプレグの第1の繊維材料a1)を構成するものから選択されうる繊維を含む。ストリップの第2の繊維材料b1)の繊維及びプリプレグの第1の繊維材料の繊維は、同じ性質を有していても有していなくてもよく、同一であっても同一でなくてもよい。好ましくは、ストリップの第2の繊維材料b1)の繊維及びプリプレグの第1の繊維材料a1)の繊維は異なり、ストリップの繊維は、プリフォームの第1の繊維材料a1)の繊維よりも大きな機械的強度を有し、それらは第1の繊維材料a1)の繊維のものより少なくとも30%、好ましくは前記第1の繊維材料の繊維より少なくとも100%大きい破壊係数及び破断横領を示す。
【0062】
より好ましくは、補強ストリップの繊維材料の繊維は炭素繊維である。
【0063】
補強剤b)のポリマーマトリックスb2)に関しては、それは、80℃超のガラス転移温度Tgを有するアクリル系又はポリアミド熱可塑性ポリマー樹脂を含む。高いガラス転移温度(Tg)、すなわち80℃超のガラス転移温度を有するポリマー樹脂の選択は、補強ストリップの、及びその結果として、製造される部品の機械的及び/又は熱的性能品質を高めることを可能にする。
【0064】
好ましくは、補強ストリップb)を形成する第2の繊維材料b1)は、コアにポリマー樹脂b2)を含侵している。この場合、第2の繊維材料b1)は、第2の繊維材料b1)の総体積に対して25体積%から60体積%の間、好ましくは35体積%から60体積%の間、より好ましくは35体積%から55体積%の間、さらにより好ましくは35体積%から50体積%の間の量のポリマー樹脂b2)を含む。この場合、樹脂が繊維の周囲に均一に及び均質に分布している「使用準備完了」予備含侵ストリップも挙げられ、これは、最小の多孔率及び機械的にロバストな補強ストリップを得ることを可能にする。
【0065】
補強ストリップのポリマーマトリックスb2)を構成する樹脂は、好ましくは、特に前記最終複合部品の操作温度が高いとき、最終複合部品の操作温度範囲にわたって前記補強ストリップの最適な有効性を可能にするように選択される。
【0066】
有利には、補強ストリップの樹脂b2)は、80℃超、好ましくは180℃超、より好ましくは230℃超のTgを有する非結晶性熱可塑性樹脂から選択される。好ましくは、Tgは250℃未満である。
【0067】
好ましくは、補強ストリップの樹脂b2)は、80℃超、好ましくは120℃以上、より好ましくは150℃以上のTg、及び180℃以上、好ましくは200℃以上、より好ましくは230℃以上且つ420℃未満、好ましくは390℃未満、より好ましくは300℃未満のM.p.を有する半結晶性熱可塑性樹脂から選択される。
【0068】
さらに、補強ストリップb)のポリマーマトリックスb2)を構成する樹脂は、好ましくは、カタフォルシスに使用されるサイクル温度が何度であっても、複合部品がカタフォルシスの通過を可能にするように選択され、これはプリフォームの含侵のためのいかなる種類の樹脂、特に、カタフォルシスの実施の最高温度よりも低いガラス転移温度(Tg)を有する非晶性若しくは熱硬化性含侵樹脂又はカタフォルシスの実施の最高温度よりも低い融点(M.p.)を有し、よってカタフォルシスに適合しない半結晶性含侵樹脂、又はこの樹脂を含侵した複合部品がカタフォルシスを通過することにより、減少した機械的特性又は前記部品の変形がもたらされる樹脂にも当てはまる。
【0069】
補強ストリップの熱可塑性樹脂b2)はカタフォルシスを通過することができる。該熱可塑性樹脂は以下から選択されうる:
− カタフォルシスサイクルの最高温度(一般的には約220℃)以上のTgを示す非晶性熱可塑性樹脂、
− カタフォルシスサイクルの最高温度以上の融点(M.p.)を示す半結晶性熱可塑性樹脂。
【0070】
補強ストリップの樹脂b2)は、以下の樹脂:ポリアミド(PA)、特に、半結晶性又は非晶性である芳香族又は半芳香族ポリアミド、より特に、高温半結晶性ポリアミド(以下、HTPAと表す)から、又はアクリル系熱可塑性樹脂、例えばポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)コポリマー若しくはメチルメタクリレート(MMA)コポリマー又はそれらのブレンドから選択される。
【0071】
より好ましくは、補強ストリップの樹脂b2)は、高温ポリアミドHTPAである。ポリアミドHTPAは、好ましくは、ポリアミドx.T又はコポリアミドx.T/x’.T[式中、Tはテレフタル酸であり、xは直鎖状C
9からC
18、好ましくはC
9からC
12の脂肪族ジアミンであり、x’は、モル比[x/(x+x’)]が15%から45%の間(境界値含む)であるようにxとは異なるジアミンである]から選択される。ジアミンx’は、メチル又はエチルによりモノ分岐化され、ジアミンxと少なくとも一の炭素原子の鎖長の差を有するジアミンから選択され、あるいはキシレンジアミン又は、、xがC
10からC
18の場合、直鎖状C
4からC
18脂肪族ジアミン、若しくはxがC
9若しくはC
10の場合、x’C
9からC
18から選択される。
【0072】
さらに別の選択によれば、熱可塑性ポリマー樹脂は、半芳香族ポリアミド(芳香族構造に基づく)及び/又は半脂環式ポリアミド(脂環式構造に基づく)、好ましくは半芳香族ポリアミド(芳香族構造に基づく)、ホモポリアミド(ホモポリマー)又はコポリアミド(ポリアミドコポリマー)、より具体的には以下の式の一つに対応するものである:
− 8.T、9.T、10.T、11.T、12.T、13.T、14.T、15.T、16.T、17.T、18.T、6.T/9.T、9.T/10.T、9.T/11.T、9.T/12.T、9/6.T、10/6.T、11/6.T、12/6.T、10/9.T、10/10.T、10/11.T、10/12.T、11/9.T、11/10.T、11/11.T、11/12.T、12/9.T、12/10.T、12/11.T、12/12.T、6.10/6.T、6.12/6.T、9.10/6.T、9.12/6.T、10.10/6.T、10.12/6.T、6.10/9.T、6.12/9.T、9.10/9.T、9.12/9.T、10.10/9.T、10.12/9.T、6.10/10.T、6.12/10.T、9.10/10.T、9.12/10.T、10.10/10.T、10.12/10.T、6.10/12.T、6.12/12.T、9.10/12.T、9.12/12.T、10.10/12.T、11/6.T/9.T、11/6.T/10.T、11/6.T/11.T、11/6.T/12.T、11/9.T/10.T、11/9.T/11.T、11/9.T/12.T、11/10.T/11.T、11/10.T/12.T、11/11.T/12.T、6.T/10.T、6.T/11.T、6.T/12.T、10.T/11.T、10.T/12.T、11.T/12.T、12/6.T/10.T、12/6.T/11.T、12/6.T/12.T、12/9.T/10.T、12/9.T/11.T、12/9.T/12.T、12/10.T/11.T、12/10.T/12.T、12/11.T/12.T、66/6.T、6/6.Tからのポリアミド、
− 9/、10/、6.10/、6.12/、10.10/、10.12/、9.10/及び9.12/で置き換えられている12/を有する先述のポリアミドターポリマー、
− テレフタル酸(T)がイソフタル酸(I)、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸及び/又は1,3−若しくは1,4−CHDA(シクロヘキサンジカルボン酸)と部分的に又は完全に置き換えられており、脂肪族ジアミンの全部又は一部が脂環式ジアミンと置き換えられている可能性のある場合、全ての上記ポリアミド、
− C
6からC
12脂肪族ジアミンがBMACM、BACM及び/又はIPDAからの脂環式ジアミンと置き換えられ、且つ芳香族二酸の一部又は全部が直鎖状又は分岐状C
6からC
18脂肪族二酸で置き換えられている全ての上記ポリアミド、
− 異なるアミド単位A及びBと任意選択的に異なるアミド単位C及びDを含み、ここでモル含有量の合計A+B+C+D又はA+B又はA+B+C又はA+B+Dは、C及び/又はDが存在するか否かに応じて100%に等しい、ポリアミド(ランダム又は逐次コポリアミドを含む)であって、単位A、B、C及びDは以下のように選択される、ポリアミド:
・Aは、55%から95%、好ましくは55%から80%、より好ましくは55%から75%の範囲のモル含有量で存在し、x.T単位[式中、xは直鎖状C
9からC
18、好ましくはC
9、C
10、C
11又はC
12の脂肪族ジアミンであり、Tはテレフタル酸である]から選択される主要アミド単位、
・Bは、Aとは異なるアミド単位であって、単位Aに基づくポリアミドのM.p.に応じて5%から45%、好ましくは20%から45%、より好ましくは25%から45%のモル含有量で存在し、x’.T単位
[式中、x’は
○B1)単一のメチル又はエチル、好ましくはメチル、分岐(同じものを意味する分岐)、特に2−メチルペンタメチレンジアミン(MPMD)又は2−メチルオクタメチレンジアミン(MOMD)を担持し、且つ前記関連単位のジアミンxの主鎖の長さに対して少なくとも二の炭素原子だけ異なる主鎖の長さを有する分岐状脂肪族ジアミンであって、好ましくはx’が(B1に従い)MPMDである、分岐状脂肪族ジアミン、又は
○B2)m−キシレンジアミン(MXD)、又は
○B3)前記単位Aにおいて前記ジアミンxが直鎖状C
11からC
18脂肪族ジアミンであり、且つx’がC
9からC
18ジアミンであるときに、前記ジアミンxが、好ましくは前記単位Aのジアミンxの鎖と前記単位Bのジアミンx’の鎖との間に少なくとも二の炭素原子の差異を有するC
9若しくはC
10ジアミンであるとき、直鎖状C
4からC
18脂肪族ジアミンから選択される]
から選択され、
且つ、好ましくは前記単位Bは、x’.T単位[式中、x’は選択肢B1)に従ってMPMDであるか若しくは選択肢B2)に従ってMXDであるか若しくは選択肢b3)に従って上で規定された直鎖状脂肪族ジアミンであるか、又はより好ましくはx’はB1)に従ってMPMDであるか若しくはB2)に従ってMXDであり、さらにより好ましくはx’はB2)に従ってMXDである]から選択される、
アミド単位、
・Cは、A及びBとは異なる任意選択的なアミド単位であり、脂環式及び/又は芳香族構造に基づく(それらを含むことを意味する)か、又はBに関して上に規定のx’.T(ただし、x’は単位Bのx’とは異なる)に基づく(それを含むことを意味する)アミド単位から選択される。したがって、単位Cのx’がB1)に従って規定されるときは、この場合、単位BはB2又はB3のいずれかに従って規定されたx’を有しうる。Cが、B2に従ったx’に基づくときは、この場合、単位BはB1又はB3のいずれかに従って規定されるx’を有しうる。そして、Cが、B3に従ったx’に基づく場合、単位BはB1又はB2のいずれかに従って規定されるx’を有しうる。より具体的には、この単位Cにおいて、前記芳香族構造はイソフタル酸及び/又はナフタレン酸構造から選択されうる。ジアミンが脂環式であるとき、テレフタル酸構造は、特に二酸成分であることが可能である。脂環式構造は、シクロヘキサン環に基づく構造又はデカヒドロナフタレン環に基づく構造(水素化ナフタレン構造)から選択されうる。
・Dは、A、B及びC(Cは存在する場合)とは異なる任意選択的なアミド単位であり
○C
6からC
12、好ましくはC
6、C
11及びC
12のアミノ酸又はラクタム又はそれらの混合物、
○直鎖状C
6からC
18、好ましくはC
6からC
12の脂肪族二酸及び直鎖状C
6からC
18、好ましくはC
6からC
12の脂肪族ジアミン又はそれらの混合物と、好ましくは単位A及びB(それぞれ上で規定されたジアミンx及びx’に基づく)との反応
から生じる脂肪族アミド単位から選択される。
【0073】
任意選択的に、補強ストリップb)の第2の樹脂b2)と最終複合部品を得るために使用されるプリフォームa)の第1の含侵樹脂c)とを適合させる又はそれらの間の適合性を増加させるために、結合剤又は接着剤を補強ストリップに添加することが可能である。結合剤は、補強ストリップb)の製造中又はプリフォームへのその堆積若しくは挿入後に、適切な堆積手段を使用して添加されうる。
【0074】
補強ストリップは、ポリマー業界で一般的に使用される技術によって得ることができる。これらの方法の一つは、ウェブを形成するために、所望の繊維のヤーン又はフィラメント、例えば炭素ヤーンからなるロービングを組むことからなる。これらのウェブは、しばしば約500mmの幅を有する。
【0075】
続いてウェブは、プリプレグを形成するために、ポリマーマトリックスb2)を構成する樹脂で含侵される。続いてウェブは、幅の狭い、つまり一般的には約5から100mmの幅のストリップを得るために分割される。このストリップは、有効幅で直接製造することもできる。
【0076】
プリフォームa)の調製
プリフォームは、補強ストリップに提供されるプリプレグのいくつかの層を含み、その構成は、最終複合部品の機械的特性の最適化に寄与する。プリフォームは、例えば以下の方法の一つによって得ることができる:
− 第1の方法は、繊維の織布の複数の層又は不織布繊維(NCF、「不捲縮布」)の層又は繊維のマットの層(第1の繊維材料a1)に対応する)を組み合わせることからなり、ここで、前記繊維は、乾燥しているか又は樹脂a2)で予備含侵されている。これらの層は、好ましくは一般的には約1mの大きな幅を有し、最終複合部品の形に実質的に対応する形の金属担体に堆積する。層は、プリフォームの含侵のための任意選択的には樹脂b2)及び樹脂c)とは異なるポリマー樹脂a2)、又は結合剤を予備含侵し、これは織布又は繊維の異なる層を一緒に結合することを可能にする。プリフォームは、織布又は繊維の層を加熱することにより強化される。本発明による補強ストリップb1)は、続いて、局所補強剤を必要とする所定の領域のプリフォームの表面に堆積する。
− 第2の方法は、任意選択的にはプリフォームの含侵のための樹脂b2)及び樹脂c)とは異なる樹脂a2)でわずかに予備含侵された一方向ストリップ(第1の繊維材料a1)に対応する)からプリフォームを製造することからなる。予備含侵した一方向ストリップは、AFP(自動繊維配置)法にしたがってロボットにより堆積する。前述の方法とは異なり、完全に予備含侵した本発明による局所補強ストリップb)は、この例では、一方向ストリップと同時に、プリフォームの調製中にロボットによって添加される。これは、特に、プリフォームのコアに挿入されうるストリップの、表面に堆積されるような配置に関して、より大きな自由度を可能にする。好ましくは、局所補強剤はプリフォームのコアに堆積する。
【0077】
含侵ポリマー樹脂c)
この例では、ポリマー樹脂は、わずかに粘性の化学組成物、つまり、反応基を含む成分を含む、100Pa.s未満の粘度を示す化学組成物を意味するものと理解される。プリフォームを含有する金型に射出されるとき、そのような樹脂は、プリフォームの含侵及びその後の樹脂の重合によって、様々な用途、例えば鉄道若しくは航空分野又は建築業界及び建設業界のための複合材料から作製された部品を得ることを可能にする。
【0078】
使用される樹脂は反応性樹脂であり、in situ の重合を可能にする。これらの樹脂は、樹脂の金型への導入の温度で、好ましくは100Pa.s以下、好ましくは20Pa.s以下、より好ましくは0.2Pa.s以下の粘度を有し、わずかに粘性がある。
【0079】
樹脂の重合は、ラジカル経路による重合又は重付加又は重縮合でありうる。
【0080】
含侵樹脂は熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂から選択されうる。
【0081】
樹脂が熱硬化性樹脂から選択されるときはポリエステル熱硬化性樹脂、ビニルエステル熱硬化性樹脂、アクリル系熱硬化性樹脂、エポキシ熱硬化性樹脂(エポキシ−アミン系)、ポリイミド熱硬化性樹脂(特にビスマレイミド樹脂)、ポリウレタン熱硬化性樹脂又はそれらのブレンドから選択される。
【0082】
樹脂が熱可塑性樹脂から選択されるときは、ポリアミド(PA及びHTPA)熱可塑性樹脂又はアクリル系熱可塑性樹脂又はそれらのブレンドから選択される。
【0083】
使用されるポリアミド(PA及びHTPA)樹脂は、ラクタム、特に主環に3から12の炭素原子を有し、置換されうるラクタムの開環によって得ることができる。例えば、β,β−ジメチルプロピオラクタム(dimethylpropriolactam)、α,α−ジメチルプロピオラクタム(dimethylpropriolactam)、アミロラクタム、カプロラクタム、カプリルラクタム及びラウリルラクタムが挙げられる。ポリアミド樹脂は、さらに、添加剤、例えば染料、顔料、光学的光沢剤、抗酸化剤又はUV安定剤を含有しうる。
【0084】
使用されるポリアミド樹脂は、さらに、nの同一反応性官能基X、好ましくはカルボキシ又アミノ官能基を含むポリアミドプレポリマーP(X)
nと、非ポリマー鎖延長剤Y−A−Y(同一反応性官能基Yはプレポリマーの官能基Xと反応する)との反応によって、得ることができる。
【0085】
前記プレポリマーによって生じる官能基Xに関して、鎖延長剤の特定の選択は、以下の方法で規定される:
− XがNH
2又はOH、好ましくはNH
2であるとき:
・鎖延長剤Y−A−Yは以下のいずれかに対応する
○マレイミド、イソシアネート、任意選択的にブロック化イソシアネート、オキサジノン及びオキサゾリノン、好ましくはオキサジノン及びオキサゾリノンから選択されるY、並びに、
○炭素系スペーサー又は反応基若しくは官能基Yを担持する炭素系ラジカルであり、以下より選択されるA、
■二つの官能基Y間の共有結合(Yがオキサジノン、オキサゾリノンである場合)、又は
■脂肪族炭化水素鎖又は芳香族及び/若しくは脂環式炭化水素鎖(後者二つは5又は6の炭素原子の少なくとも一の任意選択的に置換されている環を含み、前記脂肪族炭化水素鎖は好ましくは14から200のモル重量を有する)
・又は、鎖延長剤Y−A−Yは、基Yとして、カプロラクタムを有する(Aはカルボニル、例えばカルボニルビスカプロラクタムであることが可能であり、又はAはテレフタロイル若しくはイソフタロイルでありうる)、
・又は、前記鎖延長剤は環状無水物基であるYに対応し、これは前記鎖延長剤が二の環状無水物基Yを担持する又は含むことを意味し、この鎖延長剤は芳香族及び/又は脂環式カルボン酸二無水物から、より好ましくはエチレンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリト酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ペリレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ヘキサフルオロイソプロピリデンビスフタル酸二無水物、9,9−ビス(トリフルオロメチル)キサンテンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物又はそれらの混合物から選択される。
− また、XがCOOHであるとき:
・鎖延長剤Y−A−Yは以下に対応する
○オキサゾリン、オキサジン、イミダゾリン及びアジリジン、例えば1,1’−イソフタロイルビス(2−メチルアジリジン)又はテレフタロイルを有する同等のアジリジンから選択されるY、並びに
○上に規定される炭素系スペーサー(ラジカル)であるA(オキサゾリン、オキサジン及びイミダゾリンの場合、Aは二つの基の間の単一の共有結合であることができる)。
【0086】
より具体的には、Yがオキサジノン、オキサゾリン、オキサジン、オキサゾリン又はイミダゾリンから選択されるとき、この場合、Y−A−Yで表される鎖延長剤において、Aはアルキレン、例えば−(CH
2)
m−(mは1から14、好ましくは2から10の範囲)を表すことができ、又はAはシクロアルキレン及び/又は置換(アルキル)若しくは非置換のアリーレン、例えばベンゼンアリーレン、例えばo−、m−若しくはp−フェニレン、又はナフタレンアリーレンを表すこともでき、好ましくはAは、アリーレン及び/又はシクロアルキレンである。
【0087】
鎖延長剤Y−A−Yとしてのカルボニル−又はテレフタロイル−又はイソフタロイルビスカプロラクタムの場合、好ましい条件は、溶融状態の重合及び加工中の副産物、例えばカプロラクタムの除去を回避する。
【0088】
Yがブロック化イソシアネート官能基を表す上記の任意選択的な場合、このブロック化は、イソシアネート官能基のためのブロック化剤、例えばエプシロン−カプロラクタム、メチルエチルケトキシム、ジメチルピラゾール又はマロン酸ジエチルによって得ることができる。
【0089】
X=OH又はNH
2に関して、基Yは好ましくはイソシアネート(非ブロック化)、オキサジノン及びオキサゾリノンから、より好ましくはオキサジノン及びオキサゾリノンから選択され、スペーサー(ラジカル)として上に規定されるAを有する。
【0090】
本発明による方法の実施に適しているオキサゾリン又はオキサジン反応性官能基Yを有する鎖延長剤の例としては、出願人の特許出願EP0581642の第7ページの参照A、B、C及びD下に記載されているものが挙げられ、また、該文献に記載されているそれらの調製方法及びそれらの反応様式も言及される。Aはビスオキサゾリンであり、Bはビスオキサジンであり、Cは1,3−フェニレンビスオキサゾリンであり、且つDは1,4−フェニレンビスオキサゾリンである。
【0091】
本発明による方法の実施に適しているイミダゾリン反応性官能基Yを有する鎖延長剤の例としては、出願人の特許出願EP0739924の第7から8ページに記載されるもの(AからF)並びに第10ページの表1に記載されるものが挙げられ、また、該文献に記載されているそれらの調製方法及びそれらの反応様式も言及される。
【0092】
本発明による方法の実施に適しているオキサジノン又はオキサゾリノン反応性官能基Yを有する鎖延長剤の例としては、出願人の特許出願EP0581641の第7から8ページの参照AからD下に記載されているものが挙げられ、また、該文献に記載されているそれらの調製方法及びそれらの反応様式も言及される。
【0093】
適切なオキサジノン(6の原子を有する環)及びオキサゾリノン(5の原子を有する環)基Yの例としては、ビス(ベンゾオキサジノン)、ビスオキサジノン及びビスオキサゾリノンであるそれぞれ対応する延長剤との単一の共有結合でありうるスペーサーAとして、ベンズオキサジノン、オキサジノン又はオキサゾリノンから誘導される基Yが挙げられうる。
【0094】
Aはまた、C
1からC
14、好ましくはC
2からC
10のアルキレンでありうるが、Aは好ましくはアリーレン、より具体的には(Yで置換された、1,2−若しくは1,3−若しくは1,4−)フェニレン又は(Yで二置換された)ナフタレン基でありうるか、又はAはシクロアルキレンでありうる。
【0095】
オキサジン(6員環)、オキサゾリン(5員環)及びイミダゾリン(5員環)のような官能基Yに関して、基Aは、Aが共有結合であることができ、ビスオキジン、ビスオキサゾリン及びビスイミダゾリンであるそれぞれ対応する延長剤を有して、上記の通りである。Aはまた、C
1からC
14、好ましくはC
2からC
10のアルキレンでありうる。基Aは好ましくはアリーレンであり、より具体的には(Yで置換された、1,2−若しくは1,3−若しくは1,4−)フェニレン又は(Yで二置換された)ナフタレン基又はフタロイル(イソ−若しくはテレフタロイル)でありうるか、又はAはシクロアルキレンでありうる。
【0096】
Yがアジリジン(−NH−でエーテル−O−が置き換られている酸化エチレンと同等の3員窒素複素環)である場合、基Aは、延長剤の例として1,1’−イソフタロイルビス(2−メチルアジリジン)を有するフタロイル(1,1’−イソ−又はテレフタロイル)でありうる。
【0097】
使用されるポリアミド樹脂は、相補性反応性官能基を有する二つのプレポリマーの反応によっても得ることができる。
【0098】
さらに別の選択によれば、熱可塑性ポリマー樹脂は、半芳香族ポリアミド(芳香族構造に基づく)及び/又は半脂環式ポリアミド(脂環式構造に基づく)、好ましくは半芳香族ポリアミド(芳香族構造に基づく)、ホモポリアミド(ホモポリマー)又はコポリアミド(ポリアミドコポリマー)、より具体的には以下の式の一つに対応するものである:
− 8.T、9.T、10.T、11.T、12.T、13.T、14.T、15.T、16.T、17.T、18.T、6.T/9.T、9.T/10.T、9.T/11.T、9.T/12.T、9/6.T、10/6.T、11/6.T、12/6.T、10/9.T、10/10.T、10/11.T、10/12.T、11/9.T、11/10.T、11/11.T、11/12.T、12/9.T、12/10.T、12/11.T、12/12.T、6.10/6.T、6.12/6.T、9.10/6.T、9.12/6.T、10.10/6.T、10.12/6.T、6.10/9.T、6.12/9.T、9.10/9.T、9.12/9.T、10.10/9.T、10.12/9.T、6.10/10.T、6.12/10.T、9.10/10.T、9.12/10.T、10.10/10.T、10.12/10.T、6.10/12.T、6.12/12.T、9.10/12.T、9.12/12.T、10.10/12.T、11/6.T/9.T、11/6.T/10.T、11/6.T/11.T、11/6.T/12.T、11/9.T/10.T、11/9.T/11.T、11/9.T/12.T、11/10.T/11.T、11/10.T/12.T、11/11.T/12.T、6.T/10.T、6.T/11.T、6.T/12.T、10.T/11.T、10.T/12.T、11.T/12.T、12/6.T/10.T、12/6.T/11.T、12/6.T/12.T、12/9.T/10.T、12/9.T/11.T、12/9.T/12.T、12/10.T/11.T、12/10.T/12.T、12/11.T/12.T、66/6.T、6/6.Tからのポリアミド、
− 9/、10/、6.10/、6.12/、10.10/、10.12/、9.10/及び9.12/で置き換えられている12/を有する先述のポリアミドターポリマー、
− テレフタル酸(T)がイソフタル酸(I)、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸及び/又は1,3−若しくは1,4−CHDA(シクロヘキサンジカルボン酸)と部分的に又は完全に置き換えられており、脂肪族ジアミンの全部又は一部が脂環式ジアミンと置き換えられている可能性のある場合、全ての上記ポリアミド、
− C
6からC
12脂肪族ジアミンがBMACM、BACM及び/又はIPDAからの脂環式ジアミンと置き換えられ、且つ芳香族二酸の一部又は全部が直鎖状又は分岐状C
6からC
18脂肪族二酸で置き換えられている全ての上記ポリアミド、
− 異なるアミド単位A及びBと任意選択的に異なるアミド単位C及びDを含み、ここでモル含有量の合計A+B+C+D又はA+B又はA+B+C又はA+B+Dは、C及び/又はDが存在するか否かに応じて100%に等しい、ポリアミド(ランダム又は逐次コポリアミドを含む)、であって、単位A、B、C及びDは以下のように選択される、ポリアミド:
・Aは、55%から95%、好ましくは55%から80%、より好ましくは55%から75%の範囲のモル含有量で存在し、x.T単位[式中、xは直鎖状C
9からC
18、好ましくはC
9、C
10、C
11又はC
12の脂肪族ジアミンであり、Tはテレフタル酸である]から選択される主要アミド単位、
・Bは、単位Aに基づくポリアミドのM.p.に応じて5%から45%、好ましくは20%から45%、より好ましくは25%から45%のモル含有量で存在し、x’.T単位[式中、x’は
○B1)単一メチル又はエチル、好ましくはメチル、分岐(同じものを意味する分岐)、特に2−メチルペンタメチレンジアミン(MPMD)又は2−メチルオクタメチレンジアミン(MOMD)を担持し、且つ前記関連単位のジアミンxの主鎖の長さに対して少なくとも二の炭素原子だけ異なる主鎖の長さを有する分岐状脂肪族ジアミンであって、好ましくはx’が(B1に従い)MPMDである、分岐状脂肪族ジアミン、又は
○B2)m−キシレンジアミン(MXD)、又は
○B3)前記単位Aにおいて前記ジアミンxが直鎖状C
11からC
18脂肪族ジアミンであり、且つx’がC
9からC
18ジアミンであるときに、前記ジアミンxが、好ましくは前記単位Aのジアミンxの鎖と前記単位Bのジアミンx’の鎖との間に少なくとも二の炭素原子の差異を有するC
9若しくはC
10ジアミンであるとき、直鎖状C
4からC
18脂肪族ジアミンから選択される]
から選択され、
且つ好ましくは前記単位Bは、x’.T単位[式中、x’は選択肢B1)に従ってMPMDであるか若しくは選択肢B2)に従ってMXDであるか若しくは選択肢b3)に従って上で規定された直鎖状脂肪族ジアミンであるか、又はより好ましくはx’はB1)に従ってMPMDであるか若しくはB2)に従ってMXDであり、さらにより好ましくはx’はB2)に従ってMXDである]から選択される、
Aとは異なるアミド単位、
・Cは、A及びBとは異なる任意選択的なアミド単位であり、脂環式及び/又は芳香族構造に基づく(それらを含むことを意味する)か、又はBに関して上に規定のx’.T(ただし、x’は単位Bのx’とは異なる)に基づく(それを含むことを意味する)アミド単位から選択される。したがって、単位Cのx’がB1)に従って規定されるときは、この場合、単位BはB2又はB3のいずれかに従って規定されたx’を有しうる。Cが、B2に従ったx’に基づくときは、この場合、単位BはB1又はB3のいずれかに従って規定されるx’を有しうる。そして、Cが、B3に従ったx’に基づく場合、単位BはB1又はB2のいずれかに従って規定されるx’を有しうる。より具体的には、この単位Cにおいて、前記芳香族構造はイソフタル酸及び/又はナフタレン酸構造から選択されうる。ジアミンが脂環式であるとき、テレフタル酸構造は、特に二酸成分であることが可能である。脂環式構造は、シクロヘキサン環に基づく構造又はデカヒドロナフタレン環に基づく構造(水素化ナフタレン構造)から選択されうる。
・Dは、A、B及びC(Cは存在する場合)とは異なる任意選択的なアミド単位であり、
○C
6からC
12、好ましくはC
6、C
11及びC
12のアミノ酸又はラクタム又はそれらの混合物、
○直鎖状C
6からC
18、好ましくはC
6からC
12の脂肪族二酸及び直鎖状C
6からC
18、好ましくはC
6からC
12の脂肪族ジアミン又はそれらの混合物と、好ましくは単位A及びB(それぞれ上で規定されたジアミンx及びx’に基づく)との反応
から生じる脂肪族アミド単位から選択される。
【0099】
含侵樹脂c)は、プリプレグの第1の繊維材料a1)のポリマーマトリックスa2)の構成樹脂又は補強剤b)の第2の繊維材料b1)のポリマーマトリックスb2)の構成樹脂から選択することができる。好ましくは、それは、補強剤b)の第2の繊維材料b1)のポリマーマトリックスb2)の構成樹脂から選択される。
【0100】
含侵樹脂c)は、プリフォームのプリプレグの第1の繊維材料a1)のポリマーマトリックスa2)と同じ化学的性質であってもそれとは異なる化学的性質であってもよい。好ましくは、含侵樹脂は、プリフォームのプリプレグの第1の繊維材料a1)のポリマーマトリックスa2)と同じ化学的性質である。
【0101】
含侵樹脂c)は、補強剤b)の第2の繊維材料b1)のポリマーマトリックスb2)と同じ化学的性質であってもそれとは異なる化学的性質であってもよい。好ましくは、含侵樹脂は、補強剤b)の第2の繊維材料b1)のポリマーマトリックスb2)とは異なる化学的性質である。
【0102】
好ましくは、含侵樹脂はc)は、低温でのプリフォームの含侵を可能にするために、電気泳動を通過することができない樹脂から選択される。これらの樹脂の中でも、Tgが<230℃、好ましくは≦150℃、より具体的には120℃以下、より好ましくは100℃以下の非晶性熱硬化性若しくは熱可塑性樹脂、又はM.p.が<230℃、好ましくは200℃以下、より好ましくは190℃以下の半結晶性熱可塑性樹脂が好ましくは選択される。
【0103】
含侵樹脂c)及び補強剤b)の第2の繊維材料b1)のポリマーマトリックスb2)を構成する樹脂は、好ましくは、互いに適合性があるように選択される。プリフォームの第1の繊維材料a1)を含侵させる樹脂a2)と適合性のある含侵樹脂c)も選択することができる。「適合性がある」とは、含侵樹脂が補強ストリップの樹脂に付着することができる樹脂を意味するものと理解される。特に、二つの樹脂は互いに良好な化学親和力を有する。
【0104】
プリフォームからの複合部品の製造
複合材料から作製される部品は、プリフォームを含有する金型への含侵樹脂の射出により、プリフォームの製造に続いて行われる異なる方法によって得ることができる。用語「射出」とは、この例では、広義で理解され、異なる製造技術(とりわけ真空バッグ成形、圧力バッグ成形、オートクレーブ成形、樹脂トランスファー成形(RTM)及びその代替形態、例えば圧縮樹脂トランスファー成形(C−RTM)及び真空補助樹脂トランスファー成形(VARTM)、反応射出成形(RIM)、強化反応射出成形(R−RIM)及びその代替形態、プレス成形、引き抜き成形、ホットスタンプ成形、フィラメントワインディング成形、注入成形、真空若しくは圧力下のバッグ中での成形、又はウェットルート(LCM若しくはWCM若しくはDFCM)による圧縮が挙げられる)をまとめる。
【0105】
好ましくは、本発明による製造方法は、樹脂トランスファー成形(RTM)、圧縮樹脂トランスファー成形(C−RTM)、又は注入又はウェットルート(LCM又はWCM又はDFCM)による圧縮によって行われる。
【0106】
樹脂トランスファー成形法は、2つの面を持ち両方の表面が複合材料となる金型のセットを使用する方法である。下側は硬質金型である。上側は硬質又は可撓性の金型である。可撓性の金型は、複合材料、シリコーン、又はナイロンなどのような押出成形されたポリマーフィルムから製造されうる。2つの面は、金型の空洞を生成するために組み合わせる。樹脂トランスファー成形の顕著な特徴は、本発明に関してはプリフォームである繊維基材がこの空洞に置かれていることと、金型セットが含侵樹脂の導入前に密閉されることである。樹脂トランスファー成形法は、樹脂が金型の空洞中で繊維基材に導入される機構に違いがある多数の変形例を含む。これらの変形例は、真空注入法から真空補助樹脂トランスファー成形法(VARTM)までの全てを含む。真空のために、繊維基材は注入され、樹脂によって良好に含浸される。この方法の一つの利点は、得られた最終複合材料中の多量の繊維材料である。この方法は、周囲温度又は高温で行うことができる。C−RTMバージョンも存在する。
【0107】
注入の場合、わずかな減圧を適用することにより、樹脂は特別に大きな金型に存在する繊維基材に吸い込まれる。繊維基材は注入され、樹脂により完全に含浸される。この方法の利点の一つは、製造される複合部品のサイズが大きいことである。
【0108】
ウェットルートによる成形の場合、樹脂の堆積は、平坦なプリフォーム上、金型の外側で行われるか、又はプリフォームを含有する開口金型中で行われる。
【0109】
本発明による製造方法は、補強ストリップを利用し、そのポリマーマトリックスb2)の構成樹脂は、最終複合部品の操作温度より高いTgを有する。それゆえ、Tgが低く、本発明による補強ストリップを添加せずに高温範囲内で部品の使用に適さない又はあまり適さない含侵樹脂c)を使用することは可能である。よって、特にRTM若しくはLCM型又はそれらの代替形態の方法によって得られる、複合材料から作製される部品の製造に使用されうる含侵樹脂の範囲は拡大される。
【0110】
さらに、補強ストリップの使用(そのポリマーマトリックスの構成樹脂非常に高いTgを有し、典型的には電気泳動サイクルの最高温度よりも高いTgを有する非晶性ポリマー、又は、そのポリマーマトリックスの構成樹脂は高いM.p.を有し、典型的には電気泳動サイクルの最高温度よりも高いM.p.を有する半結晶性ポリマー)は、含侵樹脂が初めに電気泳動を受けることができないときでさえも、最終複合部品が電気泳動を通過することを可能にする。よって、電気泳動を通過することが意図される複合材料から作製される部品の製造に使用されうる含侵樹脂の範囲は拡大される。
【0111】
本発明による複合部品の製造のための方法に関連して使用される補強ストリップの繊維及びポリマーマトリックスによれば、低いTgの含侵樹脂c)を有しても高い操作温度範囲内で使用されうる複合部品を、又は低いTg若しくは低いM.p.の含侵樹脂c)を有しても、それが非晶性熱可塑性、熱硬化性若しくは半結晶性熱可塑性樹脂であるか、又は複合部品が二つの先述の特徴を合わせて有するかどうかによって、電気泳動を通過することができる複合部品を得ることが可能である。
【0112】
上記のように、複合部品は、第1の繊維材料a1)及びポリマーマトリックスa2)で形成されるプリプレグを含むプリフォームと、第2の繊維材料b1)及びポリマーマトリックスb2)で形成されるストリップの形態で提供される局所補強剤b)とを含む。
【0113】
本発明の好ましい実施態様によれば、プリフォームを構成するプリプレグ及び補強ストリップ、並びに含侵樹脂c)は、
・ガラス繊維及びポリマーマトリックスa2)を含む少なくとも一のプリプレグa1)、
・炭素繊維と高温半結晶性ポリアミド(HTPA)又はポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)又はメチルメタクリレート(MMA)コポリマーのようなアクリル系熱可塑性樹脂を含むポリマーマトリックスb2)とを含む少なくとも一の補強ストリップb)
・100Pa.s未満の低粘度を有する、エポキシ樹脂又はポリアミド(PA、HTPA)樹脂又はアクリル系樹脂からなるプリフォームの含侵c)のための樹脂
を含む最終複合部品を製造できるように選択される。
【0114】
本発明による製造方法により得られる複合部品は、製造コストが削減され、機械工学、航空(ガラス工事、ジェットエンジンテールコーン)及び航海(帆船船体)分野、自動車産業(シャーシ、フード、ドア、ベント)、エネルギー部門、建築業界、建設業界、保健及び医療分野、軍及び兵器産業、スポーツ及びレジャー(自転車フレーム及びフォーク)、並びに、エレクトロニクス産業を含む所望の用途に関して最適な機械的特性及び/又は熱的特性を有する。
【国際調査報告】