特表2019-511700(P2019-511700A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2019-511700試料中のインターフェレントを検出するための方法と装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-511700(P2019-511700A)
(43)【公表日】2019年4月25日
(54)【発明の名称】試料中のインターフェレントを検出するための方法と装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/49 20060101AFI20190329BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20190329BHJP
   G01J 3/46 20060101ALI20190329BHJP
【FI】
   G01N33/49 K
   G01N21/27 A
   G01J3/46 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2018-539287(P2018-539287)
(86)(22)【出願日】2017年1月24日
(85)【翻訳文提出日】2018年9月26日
(86)【国際出願番号】US2017014775
(87)【国際公開番号】WO2017132169
(87)【国際公開日】20170803
(31)【優先権主張番号】62/288,375
(32)【優先日】2016年1月28日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】507269175
【氏名又は名称】シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】SIEMENS HEALTHCARE DIAGNOSTICS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】クルックナー,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】チャーン,ヤオ−ジェン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,テレンス
(72)【発明者】
【氏名】ポラック,ベンジャミン エス.
(72)【発明者】
【氏名】ヴィスマン,パトリック
【テーマコード(参考)】
2G020
2G045
2G059
【Fターム(参考)】
2G020AA08
2G020DA05
2G020DA22
2G020DA33
2G020DA34
2G020DA62
2G045AA01
2G045BB03
2G045BB10
2G045CA25
2G045CA26
2G045FA11
2G045FA19
2G045JA01
2G045JA07
2G059AA01
2G059BB04
2G059BB12
2G059CC16
2G059DD12
2G059EE01
2G059EE12
2G059HH02
2G059KK04
(57)【要約】
インターフェレント(H、I、及び/又はL)の存在を試料で検査するモデルベースの方法。この方法は、複数の異なる露光時間及び異なる公称波長を有する複数のスペクトルで、試料の画像をキャプチャすることと、キャプチャした画像から最適に露光された画素を選択して各スペクトルにおいて最適に露光された画像データを生成することと、試料の血清又は血漿部分を識別することと、インターフェレントが血清又は血漿部分内に存在するかしないかを分類することとを含む。この方法を実行するように構成された検査装置及び品質チェックモジュールは、他の態様と同様に記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料容器内に収容された試料におけるインターフェレントを判定する方法であって、
試料容器に収容された試料を提供し、
複数の異なる露光時間及び異なる公称波長を有する複数の異なるスペクトルで、前記試料の画像を撮像し、
各スペクトルにおける前記異なる露光時間の前記画像から最適に露光された画素を選択し、各スペクトルにおいて最適に露光された画像データを生成し、
試料の血清又は血漿部分を分類し、
インターフェレントが前記血清又は血漿部分内に存在するか、あるいは
前記血清又は血漿部分内に存在しないか
を判定する
ことを含む方法。
【請求項2】
前記血清又は血漿部分を分類することは、前記異なるスペクトルで前記最適に露光された画素の統計を演算して統計データを生成することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試料は、分離された血液部分と前記血清又は血漿部分を含む遠心分離された試料である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記試料の画像を撮像することは、複数の異なる視点からカメラで複数の画像を撮像することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の視点は、3つ以上である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の異なるスペクトルは、約400nm〜約1500nmの間の2つ以上のスペクトルを含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の異なるスペクトルは、約400nm〜約700nmの間の2つ以上のスペクトルを備える請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の異なるスペクトルは、赤色光、緑色光、青色光を含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の異なるスペクトルは、赤外光及び近赤外光を含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記複数の露光時間は、約0.1ms〜約256msの間である請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記最適に露光された画素の選択は、約0〜255の範囲において約16〜254の間の強度を有する前記画像から画素を選択することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記血清又は血漿部分を分類することは、マルチクラス分類器を使用することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記マルチクラス分類器は、サポートベクトルマシン又はランダム判定ツリーを含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記血清又は血漿部分内のインターフェレントの存在又は不存在を判定することは、複数のトレーニングセットから生成されたインターフェレント分類器に基づく請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記インターフェレント分類器は、溶血、黄疸、及び脂肪血を識別することが可能なマルチクラス分類器を含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記インターフェレント分類器は、溶血、黄疸、及び脂肪血を独立して識別することが可能な独立したバイナリ分類器を含む請求項14に記載の方法。
【請求項17】
試料容器内に収容された試料におけるインターフェレントの存在を判定するように構成された品質チェックモジュールであって、
前記試料容器の周囲に配置され、複数の異なる露光時間及び異なる公称波長を有する複数のスペクトルで複数の視点から前記試料の複数の画像をキャプチャするように構成された複数のカメラと、
前記複数のカメラに接続され、前記複数の画像の画像データを処理するように構成されたコンピュータであって、
各スペクトルにおける前記異なる露光時間の前記複数の画像から最適に露光された画素を選択し、各スペクトルにおいて最適に露光された画像データを生成し、
試料の血清又は血漿部分を分類し、
インターフェレントが前記血清又は血漿部分内に存在するか、あるいは前記血清又は血漿部分内に存在しないかを分類する
ように構成されるとともに操作可能な前記コンピュータと、
を含む品質チェックモジュール。
【請求項18】
トラックに設けられたキャリア内に受け付けた前記試料容器を囲む筐体を備える請求項17に記載の品質チェックモジュール。
【請求項19】
試料容器を上方から前記品質チェックモジュールに搭載可能とするように構成された、前記筐体の上面に開口が形成された請求項18に記載の品質チェックモジュール。
【請求項20】
背面照明を提供する複数のRGB光源を備えた請求項17に記載の品質チェックモジュール。
【請求項21】
前面照明を提供する複数の白色光源を備えた請求項17に記載の品質チェックモジュール。
【請求項22】
試料容器内に収容された試料におけるインターフェレントの存在を判定するように構成された試料検査装置であって、
トラックと、
前記トラック上を移動可能であり、前記試料容器を収容するように構成されたキャリアと、
前記トラックの周囲に配置され、複数の異なる露光時間及び異なる公称波長を有する複数のスペクトルで複数の視点から前記試料の複数の画像をキャプチャするように構成された複数のカメラと、
前記複数のカメラに接続され、前記複数の画像から画像データを処理するように構成されたコンピュータであって、
前記異なる露光時間とスペクトルの前記複数の画像から最適に露光された画素を選択し、各スペクトルにおいて最適に露光された画像データを生成し、
試料の血清又は血漿部分を分類し、
インターフェレントが前記血清又は血漿部分内に存在するか、又は前記血清又は血漿部分内に存在しないかを分類する
ように構成されるとともに操作可能な前記コンピュータと、
を含む試料検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2016年1月28日に出願された「試料中のインターフェレントを検出するための方法と装置」と題する米国仮特許出願通し番号62/288,375号に対する優先権を主張し、その開示はその全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、試料を検査するための方法及び装置に関し、より詳細には、溶血、黄疸又は脂肪血(HIL)のような試料中のインターフェレントの存在を判定するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
自動検査システムは、尿、血清、血漿、間質液、脳脊髄液などの試料中の分析物又は他の成分を識別するために、1つ以上の試薬を用いて臨床化学検査又は化学分析検査を行うために使用することができる。便宜上及び安全上の理由から、これらの試料は、試料容器(例えば、試料採取管)に収容してもよい。化学分析又は検査反応は、様々な変化を生じ得るものであり、読み取り及び/又は操作して、分析物又は試料内に存在する他の成分の濃度を判定する。
【0004】
自動化された検査技術の改良には、実験室自動化システム(LAS)の一部であってもよい自動分析前試料準備システムによる分類、バッチ処理準備、試料成分を分離するための試料容器の遠心分離、試料アクセスを容易にするためのキャップ除去などの分析前試料準備及び取り扱い操作における対応する進歩が伴う。LASは、試料容器内の試料を、多数の分析前試料処理ステーション並びに臨床化学分析装置及び/又は化学分析機器を含む分析装置ステーションに自動的に搬送する。
【0005】
これらのLASは、バーコードラベル付き試料容器に収容され得る多数の異なる試料の処理を一度に行ってもよい。バーコードラベルは、病院の検査室情報システム(LIS)に入力される人口統計情報に関連付けることができる受託番号を、検査指示及び/又は他の情報と共に含んでいてもよい。オペレータは、ラベル付き試料容器を、LASシステム上に置くことができ、LASは、例えば、遠心分離、キャップ取り外し、さらに一定分量(アリコート)準備などの分析前操作のために試料容器を自動的に搬送可能である。これらはすべて、試料に対して、実際に臨床分析が行われる前、又はLASの一部となり得る1つ以上の分析装置(臨床化学又は化学分析機器)による化学分析が行われる前に実施される。
【0006】
溶血、黄疸、及び脂肪血(以下、総称して「HIL」という)といったインターフェレントの検出のようなある種の検査には、分別(例えば、遠心分離)によって全血から得られる血清又は血漿部分を使用することができる。場合によっては、ゲルセパレータを試料容器に加えて、血清又は血漿部分から沈降した血液部分の分離を補助してもよい。分別、及びその後のキャップ取り外し処理の後、いくつかの実施形態では、試料容器は、吸引によって血清又は血漿部分を試料容器から抽出し、血清又は血漿部分を反応容器(例えば、キュベット又は他の容器)中の1つ以上の試薬と組み合わせることができる適切な分析装置に搬送してもよい。分析測定は、例えば、しばしば検査用の放射線のビームを使用して、又は測光又は蛍光測定吸収読み取りなどを使用して実行される。測定値から、終了点又は割合値を判定し、それらから既知の技術を用いて分析物又は他の成分の濃度を判定することができる。
【0007】
残念なことに、患者の状態やサンプル処理により、試料中にインターフェレント(例えば、H、I、及び/又はL)が存在すると、分析物の検査結果、又は分析装置から得られた成分測定値に悪影響を及ぼす可能性がある。例えば、患者の疾患状態と無関係かもしれない試料中の溶血の存在により、患者の疾患状態の解釈が変わってしまう可能性がある。さらに、試料の中に黄疸及び/又は脂肪血が存在すると、患者の病状の解釈が変わってしまう可能性もある。
【0008】
先行技術では、試料の血清又は血漿部分の完全性は、熟練した実験技師であれば視覚的に検査し、HILの度合い(例えば、指数)を評価できる。これには、周知の基準に対する、試料の血清又は血漿部分の色の検査も含まれ得る。正常な血清又は血漿部分は淡黄色から淡い琥珀色を呈する。溶血を含む血清又は血漿部分は赤みがかった色をしている。黄疸を含む血清又は血漿部分は、ビリルビンの量が多いので暗い黄色をしており、脂肪血を含む血清又は血漿部分は、白っぽい又は乳白色の外観の場合がある。しかし、視覚検査は非常に主観的であり、労働集約的であり、人為的ミスの可能性を伴う。
【0009】
手動検査には上記の問題が含まれているため、検査技術者による目視検査を使用せずに、むしろ自動検査法を使用することにより、試料の完全性を評価することがますます重要になってきている。しかしながら、場合によっては、試料容器に直接貼付されたバーコードラベルが、試料の視野を部分的に閉塞して、血清又は血漿部分の視覚的に鮮明な観察をできない場合もある。よって自動化は難しい。
【0010】
これに対処するため、ミラーに付与された特許文献1に記載されているようないくつかのシステムには、試料容器を回転することにより、ラベルによって遮られることのないビューウィンドウを見つけるための、HILに対する自動予備スクリーニングが記載されている。しかしながら、そのようなシステムは、自動化し難い可能性がある。
【0011】
溶血、黄疸、又は脂肪血(HIL)が分析対象の試料内に含まれる場合に遭遇するであろう問題のため、HILの存在及び可能性のある範囲を容易に判定できるように構成された方法及び装置が依然として必要である。この方法及び装置は、分析又は化学分析の検査結果を得る速度に、感知できるほどの悪影響を及ぼすべきではない。すなわち、HILの存在を判定する時間は非常に短くすべきである。さらに、この方法及び装置は、ラベルが試料の少なくとも一部を遮るような1つ以上のラベル付き試料容器上でも使用可能でなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第9,322,761号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の態様によれば、試料容器内に収容された試料におけるインターフェレントを判定する方法が提供される。この方法は、試料容器に収容された試料を提供することと、複数の異なる露光時間及び異なる公称波長を有する複数のスペクトルで、前記試料の画像を撮像(キャプチャ)することと、各スペクトルにおける異なる露光時間でキャプチャした画像から最適に露光された画素を選択して、各スペクトルにおいて最適に露光された画像データを生成することと、試料の血清又は血漿部分を分類することと、インターフェレントが血清又は血漿部分内に存在するか、あるいは血清又は血漿部分内に存在しないかを判定することとを含む。
【0014】
別の態様によれば、試料容器内に収容された試料におけるインターフェレントの存在を判定するように構成された品質チェックモジュールが提供される。品質チェックモジュールは、試料容器の周囲に配置され、複数の異なる露光時間及び異なる公称波長を有する複数のスペクトルで複数の視点から試料の複数の画像をキャプチャするように構成された複数のカメラと、複数のカメラに連結され、複数の画像の画像データを処理するように構成されたコンピュータと、を備え、コンピュータが、各スペクトルにおける異なる露光時間で複数の画像から最適に露光された画素を選択して、スペクトルごとに最適に露光された画像データを生成し、試料の血清又は血漿部分を分類し、インターフェレントが血清又は血漿部分内に存在するか、又は血清又は血漿部分内に存在しないかを分類するように構成されるとともに操作可能であるコンピュータを含む。
【0015】
別の態様によれば、試料容器内に収容された試料におけるインターフェレントの存在を判定するように構成された試料検査装置が提供される。試料検査装置は、トラックと、トラック上を移動可能であり、試料容器を収容するように構成されたキャリアと、トラックの周囲に配置され、複数の異なる露光時間及び異なる公称波長を有する複数のスペクトルで複数の視点から試料の複数の画像をキャプチャするように構成された複数のカメラと、複数のカメラに連結され、複数の画像から画像データを処理するように構成されたコンピュータと、を備え、コンピュータが、異なる露光時間とスペクトルでの複数の画像から最適に露光された画素を選択してスペクトルごとに最適に露光された画像データを生成し、試料の血清又は血漿部分を分類し、インターフェレントが血清又は血漿部分内に存在するか、又は血清又は血漿部分内に存在しないかを分類するように構成されるとともに操作可能であるコンピュータを含む。
【0016】
本発明のさらに他の態様、特徴、及び利点は、本発明を実施するために考えられる最良の形態を含む多くの例示的な実施形態及び実施を例示することによって、以下の説明から容易に明らかになるであろう。本発明は、他の異なる実施形態も可能であり、そのいくつかの詳細は、本発明の範囲からすべて逸脱することなく、様々な点で変更してもよい。本発明は、添付の特許請求の範囲に含まれるすべての変更、均等物、及び代替物を含有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
以下に説明する図面は、説明のためのものであり、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではない。したがって、図面及び説明は、本質的に例示的であると見なされるべきであり、限定的とみなされるべきではない。図面は、決して本発明の範囲を限定するものではない。
【0018】
図1図1は、1つ以上の実施形態による1つ以上の品質チェックモジュールと1つ以上の分析装置(臨床化学又は化学分析機器)とを含む試料検査装置を示す上面図である。
図2図2は、1つ以上の実施形態によるインターフェレント検出方法を使って判定可能な、インターフェレントを含む分離した試料を含むラベル付き試料容器を示す側面図である。
図3図3は、インターフェレントとゲルセパレータを含む分離した試料を含むラベル付き試料容器を示す側面図であり、1つ以上の実施形態によるインターフェレント検出方法を使ってインターフェレントの存在が判定可能である。
図4A図4Aは、1つ以上の実施形態による、試料中のインターフェレントの存在について複数の画像をキャプチャ及び分析するように構成された品質チェックモジュールを示す略上面図(天井を取り外した状態)である。
図4B図4Bは、1つ以上の実施形態による図4Aの品質チェックモジュールを示す略側面図(側面を取り外した状態)である。
図4C図4Cは、1つ以上の実施形態による、インターフェレントの存在について複数の画像をキャプチャ及び分析するように構成された品質チェックモジュールを示す略上面図(天井を取り外した状態)である。
図4D図4Dは、1つ以上の実施形態による図4Cの品質チェックモジュールを示す略側面図(側面を取り外した状態)である。
図5図5は、1つ以上の実施形態による試料中のインターフェレントの存在を判定するように構成された品質チェックモジュールの構成要素を示すブロック図である。
図6図6は、1つ以上の実施形態による試料中のインターフェレントの存在を判定する能力、並びに特徴を検出する、又は試料若しくは試料容器を定量化する能力を含む試料検査装置の構成要素全体を示すブロック図である。
図7図7は、1つ以上の実施形態による試料中のインターフェレントの存在を判定する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
第1の広範な局面では、本発明の実施形態は、試料の血清又は血漿部分に1つ以上のインターフェレントが存在するかどうか、あるいは血清又は部位が「ノーマル」、すなわち、インターフェレントを含まないかどうかを判定するように構成された方法及び装置を提供する。本明細書で使用される「インターフェレント」は、試料の血清又は血漿部分における溶血(H)、黄疸(I)、又は脂肪血(L)の少なくとも1つの存在を意味する。溶血(H)、黄疸(I)、及び脂肪血(L)は、本明細書においてまとめてHILと呼ばれる。
【0020】
本明細書で使用される「溶血」は、赤血球が破壊された血清又は血漿部分の状態として定義され、赤血球内から血清又は血漿部分へヘモグロビンを放出させ、血清又は血漿部分が赤い色相を帯びる。
【0021】
本明細書で使用される「黄疸」は、血液中の胆汁色素(ビリルビン)の蓄積によって血清又は血漿部分が暗黄色に変色する血液の状態を意味する。
【0022】
本明細書で使用する「脂肪血」は、異常に高濃度の乳化脂肪が血液中に存在することを意味し、その結果、血清又は血漿部分は白っぽい、又は乳白色の外観を有する。
【0023】
血清又は血漿部分中の1つ以上のインターフェレント(HIL)の存在は、分析装置(例えば、臨床化学又は化学分析検査)における後続の検査の結果の解釈に影響を及ぼす可能性がある。したがって、最終分析の前にHILを事前にスクリーニングする能力により、分析するに及ばない品質の試料を分析するという無駄な時間を最小限に抑えることができる。より多くのHILの含有量があるとわかった試料は、オペレータにフラグ立てするか、再採取を予定するか、修復の対象とするか、又は存在するインターフェレントの程度をより正確に測定するためのさらなる検査を受けるようにする。
【0024】
本明細書に記載のように、試料は、概ね、採血管のような試料容器に採取することができ、分別(例えば、遠心分離による分離)後の沈降した血液部分及び血清及び血漿部分を含むものとする。沈降した血液部分は、白血球、赤血球、及び血小板などの血液細胞で構成され、血清又は血漿部分から凝集分離される。沈降した血液部分は、概ね、試料容器の底部に見られる。血清又は血漿部分は、沈降した血液部分の一部以外の血液の液体構成要素である。これは、概ね、分別後の沈降した血液部分の上に見られる。血漿及び血清は、凝固成分、主にフィブリノーゲンの含有量が異なる。血漿は、凝固していない液体であり、血清は、内因性酵素又は外因性構成要素の影響下で凝固することが可能な血漿を指す。いくつかの試料容器では、小さなゲルセパレータを使用してもよく、これは、遠心分離中に沈降した血液部分と血清又は血漿部分との間に位置させる。ゲルセパレータは、2つの部分の間の物理的障壁として機能する。
【0025】
1つ以上の実施形態によれば、このインターフェレント検出方法は、事前分析検査方法として、すなわち、分析装置(例えば、臨床化学又は化学分析機器)で分析を実施する前に実施することができる。本明細書に記載のHIL検出方法は、試料の血清又は血漿部分の高ダイナミックレンジ(HDR)画像処理を使用して、インターフェレント(H、I及び/又はL)の存在を判定することができる。いくつかの実施形態では、血清又は血漿部分の物理的境界の識別は、HDR画像処理を使用することによっても行うことができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、インターフェレント検出方法を実行するように品質チェックモジュールを構成することができる。品質チェックモジュールは、ロボット機構(例えば、トラック又は把持フィンガーロボット)が、試料容器に収容された試料を品質検査モジュールに搬送する領域に設けてもよい。いくつかの実施形態では、品質チェックモジュールは、トラック上に設けられてもよく、トラックは試料を遠隔位置に運んで、分析装置上の分析(例えば、臨床化学検査又は化学分析)をしてもよい。特定の実施形態では、品質チェックモジュールをトラック上に設けて、トラック上に存在する間にインターフェレントの存在について試料を検査してもよい。
【0027】
1つ以上の実施形態では、処理されたHDRデータは、HIL検出に使用されてもよい。さらなる実施形態では、HDRデータは、アーチファクト検出(例えば、血清又は血漿部分における凝塊、気泡、又は泡の検出)に使用することもできる。この場合、アーチファクトを含むことが分かっている画素は、アーチファクトの位置及び範囲が分かっているので、処理したHDRデータに基づいてHILの判定を実行する際に単に無視してもよい。試料にH、I、及びLの1つ以上が含まれていることが判明した場合、試料をオフラインにして、H、I又はLのうちの1つ以上を修正する修復を実施し、さらにHILの程度の定量化、再採取、又は他の処理を行う。インターフェレント検出方法は、画像ベースであり、すなわち、複数の視点の複数のデジタルカメラによって得られた画素画像に基づく。本明細書で使用される「画素」は、単一の画素又はスーパー画素のような画素のグループのいずれかを意味する。個々の画素11個×11個のサイズを有するスーパー画素が、データを処理するためにうまく機能することが分かった。
【0028】
本発明の、関連する別の態様では、HIL分析から得られたデータを用いて、血清又は血漿部分の体積、そして、場合によっては沈降した血液部分の体積を判定することができる。また、データは、液体と空気との界面(LA)、血清又は血漿部分と沈降した血液部分との間の界面(SB)、血清又は血漿部分とゲルセパレータとの間の界面(SG)、及び/又は沈降した血液部分とゲルセパレータとの間の界面(BG)を判定するのに使用することができる。
【0029】
HDRデータ処理を含むHIL検出方法は、複数の露光時間及び異なる公称波長を有する複数のスペクトル、さらには複数のカメラを使用する複数の視点から複数の画像を品質チェックモジュールでキャプチャすることを含んでいてもよい。本明細書で使用される「カメラ」は、分析のために画素化された画像(例えば、デジタル画像)をキャプチャすることができる任意の装置を意味する。露光時間は、照明強度及びカメラの特徴に基づいて変えてもよいが、各スペクトル及び各カメラに複数の露光時間を使用することができる。各カメラについて、露出時間は、それぞれの対応する画像キャプチャについて同じであってもよい。
【0030】
特定の波長における複数の画像の各対応する画素に対し、最適な画像強度を示す画素を選択することができる。その結果、すべての画素が最適に露光される各異なるスペクトル(例えば、赤色、緑色、青色、近赤外線、赤外線)に対する複数の統合されたカラー画像データセット(例えば、スペクトルごとに1つの画像データセット)が得られる。統合されたカラーデータセットからのデータを統計分析の対象として、その各画素上の統計データ(例えば、平均、標準偏差、及び共分散マトリックス)を判定してもよい。「共分散」とは、2つ以上のカラー画素がどれだけ一緒に変化するかの尺度である。次いで、画像データセットをクラスに分類するために、1つ以上のデータマトリックスの形態の統計データを1つ以上のクラスの分類器で操作してもよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、画像内の血清又は血漿部分の領域並びに他のクラス(例えば、沈降した血液部分、ゲルセパレータ、管、キャップ、ラベル、空気)をさらに判定するために、HDRデータをマルチクラス分類器に提供されてもよい。マルチクラス分類器は、複数のトレーニングセットから予めトレーニングされたサポートベクトルマシン(SVM)又はランダム判定ツリーであってもよい。血清又は血漿部分がマルチクラス分類器によって識別されると、1つ以上のインターフェレント分類器を用いてインターフェレント(例えば、H、I、及び/又はL)の存在を識別することができる。1つ以上のインターフェレント分類器は、各画素をそれぞれH、I、又はLとして分類することができる個別にトレーニングされたバイナリモデルであってもよい。他の実施形態では、インターフェレント分類器は、マルチクラス分類器であってもよい。インターフェレント分類器のモデルは、それぞれサポートベクトルマシン(SVM)又はランダム判定ツリーであってもよい。
【0032】
インターフェレント分類結果に基づいて、全体として血清又は血漿部分のインターフェレントタイプを判定することができる(すなわち、H、I及び/又はL)。任意で、判定されたインターフェレントタイプのインターフェレントレベルを提供してもよい。インターフェレントレベルは、いくつかの実施形態では、1つ以上の追加モデル(例えば、1つ以上の回帰モデル)に基づいていてもよい。回帰モデルは、様々なインターフェレントレベルを示すサンプル試料に基づいて、各インターフェレントタイプについてトレーニングしてもよい。2つ以上のインターフェレントタイプがこの方法によって判定され、それにより、各判定されたインターフェレントタイプのインターフェレントレベルが特定される。
【0033】
本発明のインターフェレント検出方法、品質チェックモジュール、及び品質チェックモジュールを含む試料検査装置のさらなる詳細については、本明細書の図1図7を参照してさらに説明する。
【0034】
図1は、複数の試料容器102(例えば、試料採取管、図2及び図3参照)を自動的に処理可能な試料検査装置100を示す。試料容器102は、1つ以上の分析装置(例えば、それぞれ試料検査装置100の周囲に配置される第1、第2、及び第3の分析装置106、108、110)への搬送及びこれらによる分析の前に、ローディングエリア105にある1つ以上のラック104に収容してもよい。それより多くの又は少ない数の分析装置を使用できることは明らかである。分析装置は、臨床化学分析装置及び/又は分析機器などの任意の組み合わせであってもよい。試料容器102は、採血管、検査管、サンプルカップ、キュベット、又は他の概ね透明なガラス又はプラスチック容器などの、概ね透明又は半透明の容器であってもよい。
【0035】
典型的には、自動的に処理される試料212(図2及び図3)は、試料容器102内の試料検査装置100に提供される。試料容器102はキャップ214(図2及び図3。あるいは「ストッパ」とも称する)でキャップしてもよい。キャップ214は、異なる形状及び/又は色(例えば、赤色、ロイヤルブルー、ライトブルー、緑色、グレー、黄褐色、黄色、又はこれらの色組み合わせ)を有していてもよく、試料容器102がどの検査に使用されるか、添加剤の種類、等を示すという意味を持つ。他のキャップの色を使用してもよい。
【0036】
試料容器102のそれぞれには、試料検査装置100の周囲の様々な位置で機械可読の識別情報215(すなわち、指数)、例えばバーコード、英字、数字、英数字、又はこれらの組み合わせを設けてもよい。識別情報215は、検査室情報システム(LIS)を介して、患者の識別並びに試料212上で達成する検査、又は、例えば他の情報を示すことができる、あるいは、それらを相互に関連付けることができる。このような識別情報215は概ね、試料容器102に貼付された、又は試料容器102の側面に設けられたラベル218上に設けてもよい。ラベル218は、概して、試料容器102の周囲全体、又は試料容器102の長さ全体に亘って延びているのではない。いくつかの実施形態では、複数のラベルが貼付されてもよく、わずかに重なっていてもよい。したがって、ラベル218は、試料212の一部を遮ることがあるが、試料212の一部は、依然として、見ることができる。いくつかの実施形態では、ラック104は、その上に追加の識別情報を有してもよい。
【0037】
試料212は、管212T内に収容された血清又は血漿部分212SP及び沈降した血液部分212SBを含んでいてもよい。空気212Aは、血清及び血漿部分212SPの上に提供され、それらの間の線又は境界は、本明細書では液体と空気との界面(LA)として定義する。血清又は血漿部分212SPと沈降した血液部分212SBとの間の境界線は、本明細書では血清と血液との界面(SB)として定義され、図2に示されている。空気212Aとキャップ214との間の界面は、本明細書では管とキャップとの界面(TC)と称する。管の高さ(HT)は、管212Tの最下部からキャップ214の底部までの高さとして定義する。血清又は血漿部分212SPの高さは(HSP)であり、血清又は血漿部分212SPの上面から、沈降した血液部分212SBの上面から、すなわち図2のLAからSBまでの高さとして定義する。沈降した血液部分212SBの高さは(HSB)であり、図2のSBで沈降した血液部分212SBの底部から沈降した血液部分212SBの上面までの高さとして定義する。HTOTは、試料212の全高であり、図2のHSP+HSBに等しい。
【0038】
ゲルセパレータ313を使用する場合(図3)、血清又は血漿部分212SPの高さは(HSP)であり、LAの血清又は血漿部分212SPの上面からSGのゲルセパレータ313の上端までの高さ、すなわち、図3のLAからSGまでの距離として定義する。沈降した血液部分212SBの高さは(HSB)であり、図3の沈降した血液部分212SBの底部からBGのゲルセパレータ313の底部までの高さとして定義する。HTOTは、試料212の全高であり、HSP+HSBにゲルセパレータ313の高さを加えたものに等しい。いずれの場合も、壁厚はTwであり、外幅はWであり、試料容器102の内幅はWiである。
【0039】
より詳細には、試料検査装置100は、トラック121を取り付けるベース120(例えば、フレーム又は他の構造体)を含んでいてもよい。トラック121は、レール付きトラック(例えば、モノレール又はマルチレール)、コンベヤベルトの集合、コンベヤチェーン、移動可能なプラットフォーム、又は任意の他の適切な種類の搬送機構であってもよい。トラック121は、円形又は任意の他の適切な形状であってもよく、いくつかの実施形態ではクローズドトラック(例えば、無限トラック)であってもよい。トラック121は、動作中に、個々の試料容器102を、キャリア122内のトラック121の周囲に間隔を置いて配置された位置に搬送してもよい。
【0040】
キャリア122は、トラック121上に単一の試料容器102を運ぶように構成された受動的な装置、すなわち、非運動性のパックであってもよく、又は、トラック121の周囲を移動し、又は予めプログラムされた位置で停止するようにプログラムされた、あるいは制御されたリニアモータなどの搭載型駆動モータを含む自動キャリアであってもよい。キャリア122は、それぞれ、試料容器102を規定の直立位置に保持するように構成されたホルダ122H(図4A図4D)を含んでいてもよい。ホルダ122Hは、試料容器102をキャリア122に固定するが、異なるサイズの試料容器102が収容されるように移動可能又は柔軟な複数のフィンガ又は板ばねを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、キャリア122は、そこにステージングされた1つ以上のラック104を有するローディングエリア105から退出してもよい。いくつかの実施形態では、ローディングエリア105は、分析が完了した後に、キャリア122から試料容器102を外すことを許容する二重の機能を果たすことができる。
【0041】
ロボット124を、ローディングエリア105に設けてもよく、1つ以上のラック104から試料容器102を把持し、試料容器102をトラック121の入力レーンのようなキャリア122上に搭載するように構成してもよい。ロボット124はまた、検査の完了時にキャリア122から試料容器102を除去するように構成されてもよい。ロボット124は、X及びZ、Y及びZ、X、Y及びZ、又はr及びθ運動が可能な1つ以上の(例えば、少なくとも2つの)ロボットアーム又は構成要素を含む。ロボット124は、ガントリーロボット、関節ロボット、R−θロボット、又は他の適切なロボットであってもよく、ロボット124は、試料容器102をピックアップして配置可能とするサイズのロボット把持フィンガを備えていてもよい。トラック121上に搭載されると、キャリア122によって担持された試料容器102は、遠心分離機125(例えば、試料212の分別を行うように構成された自動遠心分離器)に進むことができる。試料容器102を運ぶキャリア122を、流入レーン126又は他の適切なロボットによって遠心分離機125に向かって迂回させてもよい。遠心分離後、試料容器102は流出レーン128を退出するか、あるいはロボットによって除去されて、引き続きトラック121上を進んでもよい。図示された実施形態では、キャリア122内の試料容器102は、次に、図4A図4Dを参照してさらに説明される様に、品質チェックモジュール130に搬送してもよい。
【0042】
品質チェックモジュール130は、試料検査装置100によって処理される試料212に含まれる1つ以上のH、I、及び/又はLの存在を自動的に判定するように構成される。ノーマル(Normal)(N)と考えられる程度に実質的に低い量のH、I、及び/又はLを含むことが分かったら、試料212をトラック121上で引き続き移動させて、さらに、1つ以上の分析装置(例えば、第1、第2、及び第3の分析装置106、108、及び/又は110)で分析してから、各試料容器102をローディングエリア105に戻して降ろす。いくつかの実施形態では、試料212は、品質チェックモジュール130においてアーチファクト(例えば、凝塊、気泡、又は泡)の存在について検査してもよい。いくつかの実施形態では、試料212の定量化(すなわち、HSP、HSB、又はHTOTの判定、並びにSB、LAの位置の判定)を品質チェックモジュール130で行ってもよい。いくつかの実施形態では、HT、キャップの色、キャップの種類、TC、及び管幅(W)を判定するなど、試料容器102の物理的属性の定量化を品質チェックモジュール130で行ってもよい。
【0043】
さらに、遠隔ステーション132は、遠隔ステーション132がトラック121に直接接続されていなくても、自動化された試料検査装置100上に設けてもよい。例えば、独立したロボット133(点線で示す)は、試料212を収容する試料容器102を遠隔ステーション132に搬送し、それらを検査/処理の後に戻すことができる。任意で、試料容器102は、手動で取り出して戻すことができる。遠隔ステーション132を使用して、溶血レベルなどの特定の構成要素を検査することができ、あるいは、1つ以上の添加物によって脂肪血レベルを低下させるため、あるいは、例えば、凝塊、気泡、又は泡を除去するためなどのさらなる処理を行ってもよい。他の検査又は処理は、遠隔ステーション132で達成してもよい。他のステーション(図示せず)を、キャップ取り外しステーションなどのようなトラック121に沿って設ける、又は配置することができる。
【0044】
試料検査装置100は、トラック121の周囲の1つ以上の位置に多数のセンサ116を含んでいてもよい。センサ116を使用して、試料容器102上に置かれた識別情報215(図2)、又は各キャリア122に設けられた同様の情報(図示せず)を読み取ることによって、トラック121に沿って試料容器102の位置を検出してもよい。いくつかの実施形態では、例えば、別個のRFIDチップを各キャリア122に埋め込み、従来のRFIDリーダシステムをトラッキング動作に使用してもよい。キャリア122内の試料容器102の位置をトラッキングするための他の手段、例えば近接センサなどを使用してもよい。すべてのセンサ116は、各試料容器102の位置を常に適度に知ることができるように、コンピュータ143とインターフェースをとってもよい。
【0045】
遠心分離機125及び分析装置106、108、110のそれぞれは、概ね、キャリア122をトラック121から除去するように構成されたロボット機構及び/又は流入レーン(例えば、流入レーン126、134、138、144)と、キャリア122をトラック121上に再投入するように構成されたロボット機構及び/又は流出レーン(例えば、流出レーン128、136、141、及び146)を備えていてもよい。
【0046】
試料検査装置100は、コンピュータ143によって制御してもよく、コンピュータ143は、適切なメモリと、適切な調整用電子機器と、様々なシステム構成要素を操作するためのドライバと、を有するマイクロプロセッサベースの中央処理装置CPUであってもよい。コンピュータ143は、試料検査装置100のベース120の一部として収容されてよく、又はベース120から分離してもよい。コンピュータ143は、キャリア122のローディングエリア105への及びそこからの移動、トラック121周りの運き、遠心分離機125への及びそこからの運き、並びに遠心分離機125の動作、品質チェックモジュール130との間の運動、並びに品質検査モジュール130の動作、各分析装置106、108、110への及びそこからの運動、並びに各分析装置106、108、110の動作を制御するように動作して、様々なタイプの検査(例えば、化学分析又は臨床化学)を行ってもよい。
【0047】
品質チェックモジュール130以外のすべてについて、コンピュータ143は、ニューヨーク、タリータウンのシーメンスヘルスケアダイアグノスティックス社(Siemens Healthcare Diagnostics Inc.)によって販売されているディメンション(登録商標)臨床化学分析装置で使用されるものなどのソフトウェア、ファームウェア、及び/又はハードウェアコマンド又は回路に従って試料検査装置100を制御してもよく、このような制御は、コンピュータベースの電気機械制御プログラミングの当業者にとって典型的であるので、本明細書ではこれ以上説明しない。しかしながら、他の適切なシステムを使用して、試料検査装置100を制御してもよい。品質チェックモジュール130の制御は、本明細書で詳細に説明するように、本発明のモデルベースの方法によれば、コンピュータ143によって提供してもよい。
【0048】
本発明の実施形態は、ユーザが様々な制御画面及びステータス表示画面に容易且つ迅速にアクセス可能とするコンピュータインタフェースモジュール(CIM)を使用して実施してもよい。これらの制御及びステータス画面で、試料212の準備及び分析に使用される複数の相互に関係する自動化装置のいくつか又はすべての態様を説明することができる。CIMを採用して、複数の相互に関係する自動化装置の動作状態についての情報を提供してもよく、また、任意の試料212の位置を記述する情報、及び試料212上で実行する、又は実行されている検査のステータスを記述する情報を提供してもよい。よって、CIM145は、オペレータと試料検査装置100が相互作用しやすくなるように構成してもよい。CIM145は、オペレータが試料検査装置100とインターフェースをとるアイコン、スクロールバー、ボックス、及びボタンを含むメニューを表示するように構成された表示画面を含んでいてもよい。メニューは、試料検査装置100の機能的な側面を表示するようにプログラムされた多数の機能ボタンを含んでいてもよい。
【0049】
図2及び図3には、H、I、又はLを含む試料容器102が示されている。図2は、血清又は血漿部分212SPのH、I、又はLを含む試料212をゲルセパレータなしで示す。図3は、血清又は血漿部分212SPのH、I、又はLを含む試料212をゲルセパレータ313とともに示す。インターフェレントの存在について試料容器102を事前にスクリーニングすることにより、所望であれば試料212が1つ以上の分析装置106、108、110に進まないよう、阻止することができる。このようにして、不正確な検査結果を回避することができる。いくつかの実施形態では、この方法によりインターフェレントが存在すると判定した場合、試料容器102は、それを修復する(例えば、脂肪血を減らす)ために、溶血又は黄疸のレベルの定量化をしやすくし、検査結果とともに報告するために、あるいはおそらく試料212を再採取したりするために、遠隔ステーション132へ送るなど、ラインから外すことができる。
【0050】
図4A〜4Bを参照して、品質チェックモジュール130の第1の実施形態を示し説明する。品質チェックモジュール130は、試料212(例えば、その血清又は血漿部分212SP)内のインターフェレント(例えば、H、I、又はL)の存在を1つ以上の分析装置106、108、110で分析する前に自動的に判定するように構成してもよい。このようにプレスクリーニングすることにより、試料212の追加の処理、追加の定量化、廃棄、再採取を、貴重な分析リソースを浪費することなく、又は、おそらくインターフェレントの存在によって検査結果の真実性に影響を及ぼすことなく行うことができる。
【0051】
インターフェレント検出方法に加えて、品質チェックモジュール130において試料容器102に収容される試料212に対して他の検出方法を行ってもよい。さらに、検出方法を使って試料容器102の1つ以上の幾何学的特徴を定量化することができる。例えば、品質チェックモジュール130を使用して、試料212を定量化する、すなわち、試料212の特定の物理的寸法特徴(例えば、LA及びSBの物理的位置、及び/又は、HSP、HSB、及び/又はHTOTの判定、及び/又は血清又は血漿部分の体積(VSP)及び/又は沈降した血液部分の体積(VSB)など)を判定してもよい。さらに、いくつかの実施形態では、アーチファクト検出法は、血清又は血漿部分212SPの中のアーチファクト(例えば、凝塊、気泡、又は泡)の有無を判定することができる。
【0052】
1つ以上の実施形態では、品質チェックモジュール130を使用して、試料容器102を定量化する、すなわち、試料容器102のTC、HT、及び/又はWの位置、及び/又はキャップ214の色及び/又は種類などのような試料容器102の1つ以上の物理的寸法特徴を定量化することができる。
【0053】
ここで図1図4A、及び図4Bを参照すると、品質チェックモジュール130の第1の実施形態は、複数のカメラ440A〜440Cを含んでいてもよい。3つのカメラ440A〜440Cが示されているが、2つ以上、3つ以上、4つ以上のカメラを使用してもよい。カメラ440A〜440Cは、デジタル画像(すなわち、画素化された画像)をキャプチャできる従来のデジタルカメラ、電荷結合素子(CCD)、光検出器のアレイ、1つ以上のCMOSセンサなどであってもよい。例えば、3つのカメラ440A、440B、440Cが図4Aに示されており、3つの異なる視点(例えば、側方からの視点)から画像をキャプチャするように構成されている。各カメラ440A、440B、440Cは、画像サイズを有する画像をキャプチャすることができる装置であってもよい。一実施形態では、画像サイズは、例えば、約2560×694画素であってもよい。別の実施形態では、画像サイズは、例えば、約1280×384画素であってもよい。他の画素密度を使用してもよい。各カメラ440A、440B、440Cは、試料容器102の少なくとも一部、及び試料212の少なくとも一部の側方画像をキャプチャするように構成され、及び動作可能である。例えば、カメラ440A〜440Cは、ラベル218又はキャップ214の一部及び管212Tの一部、そして少なくとも血清又は血漿部分212SPの一部をキャプチャしてもよい。最終的に、複数の画像から、試料容器102内の試料212の複合モデルを生成することができる。複合モデルは、いくつかの実施形態では、分類結果を含む3Dモデルであってもよく、これを使用して、試料212についての最終判定を行ってもよい。
【0054】
図示の実施形態では、複数のカメラ440A、440B、440Cは、試料212の周囲に配置され、複数の視点から側方画像をキャプチャするように構成される。視点は、3つのカメラ440A、440B、440Cが使用されるときに、図示のように互いに約120度など、互いにほぼ等間隔になるように離間されていてもよい。図示のように、カメラ440A、440B、440Cは、トラック121の周りに配置してもよい。複数のカメラ440A、440B、440Cの他の配置を使用してもよい。いくつかの実施形態では、試料容器102内の試料212の画像は、試料容器102がキャリア122に存在している間に撮影される。画像はわずかに重なり合うことがある。
【0055】
1つ以上の実施形態では、各カメラ440A、440B、440Cからの法線ベクトルが交差する点など、キャリア122を品質チェックモジュール130内の所定の位置で停止させることができる。いくつかの実施形態では、キャリア122を停止させるためにゲートを設けて、1つ以上の良好な品質の画像をそこで撮像(キャプチャ)することができる。他の実施形態では、キャリア122は、プログラムされたように所望の位置でキャリア122を開始及び停止させるように構成されたリニアモータを含んでいてもよい。品質チェックモジュール130にゲートを含む実施形態では、(センサ116などの)1つ以上のセンサを使用して、品質チェックモジュール130でキャリア122の存在を判定してもよい。
【0056】
カメラ440A、440B、440Cは、画像ウィンドウ、すなわち、試料容器102の予想される位置を含む領域に、近接して、又は撮像(キャプチャ)するために向けて又は焦点を合わせて設けてもよく、試料容器102は、ビューウィンドウのほぼ中心に配置されるように停止させてもよい。構成されたように、カメラ440A、440B、440Cは、血清又は血漿部分212SPの一部、沈降した血液部分212SBの一部、管212Tの一部又は全部、キャップ214の一部又は全部を含む画像をキャプチャすることができる。キャプチャされた画像内には、1つ以上の参照データが存在してもよい。参照データは、試料212の定量化を助けることができる。参照データは、TC又は試料容器102の最下部、又は、試料容器102上のどこか既知の場所のマーク、例えば、すべての視点から見ることができる所定の高さにあるリングでもよい。
【0057】
動作中、各画像は、コンピュータ143が送信可能な通信ライン443A、443B、443Cに供給されたトリガ信号に応答してトリガされキャプチャされてもよい。キャプチャされた画像の各々は、本明細書で提供される方法の1つ以上の実施形態に従って処理してもよい。特に、HDR処理を使用して画像をキャプチャして処理することができる。
【0058】
より詳細には、品質チェックモジュール130で、複数の異なる露光時間で、及び1つ以上の異なる波長スペクトルで、試料212(例えば、分別によって分離された試料)の複数の画像がキャプチャされる。例えば、各カメラ440A、440B、440Cは、1つ以上のスペクトル(1つ以上の波長範囲)において、異なる露光時間で4〜8枚の画像を撮ることができる。
【0059】
一実施形態では、複数の波長画像は、異なるスペクトルの照光を発光する異なる色の光源444A〜444Cを使用して達成することができる。光源444A〜444Cは、(図示のように)試料容器102を背面照明することができる。任意で、図4C及び図4Dに示すように、光源444D〜444Fは、それぞれのカメラ440A、440B、440Cの上、下、又は側面に配置された試料容器102を前面照明してもよく、又は他の場所に配置し、照明してもよい。いくつかの実施形態では、光源444A〜444C又は444D〜444Fと共に、光拡散器を使用することができる。複数の異なるスペクトル光源444A〜444Cは、RGB又は、2つ以上の異なるスペクトルを放射するLEDのような他の光源であってもよい。例えば、光源は、634nm±35nm(赤色−R)、537nm±35nm(緑色−G)、及び455nm±35nm(青色−B)の公称波長に照明を発光することができる。他の実施形態では、照明スペクトルは、約700nmと約1500nmの間、又は約700nmと約1200nmとの間の公称波長を有する1つ以上のスペクトルを含んでいてもよい。
【0060】
例えば、第1の波長で画像をキャプチャするために、3つの赤色光源(約634nm±35nmの波長)を使用して、試料212を3つの側方位置から照明することができる。光源444A〜444Cによる赤色照明は、異なる露光時間での複数の画像(例えば、4〜8枚以上の画像)が各カメラ440A〜440Cによってキャプチャされるときに発生する可能性がある。いくつかの実施形態では、露光時間は、約0.1msと256msとの間でよい。他の露光時間を使用してもよい。各カメラ440A〜440Cのそれぞれの画像はそれぞれ順次又は同時に撮影される。
【0061】
各実施形態において、品質チェックモジュール130、130Aは、トラック121を少なくとも部分的に囲む、もしくは覆うことができるハウジング446を含んでいてもよく、試料容器102は、画像取得段階中にハウジング446の内側に位置していてもよい。ハウジング446は、キャリア122がハウジング446の中に出入りできるようにするためのドア446D(例えば、開口)を1つ以上含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、天井は、移動可能なロボットフィンガを含むロボットによって、試料容器102がキャリア122内に上方から搭載されることを可能にする開口部446Oを含んでいてもよい。前面照明(図4C〜4D)が使用される場合、品質チェックモジュール130Aは、画像コントラストを改善するバックストップ壁447を含んでいてもよい。バックストップ壁447は、試料212の予想される色の範囲以外であれば任意の適切な色でよい。いくつかの実施形態では、黒色の材料を使用してもよい。
【0062】
赤色に照明された画像が図4A及び図4Bの実施形態でキャプチャされると、赤色光源444A〜444Cは、消灯されてもよく、例えば、緑色光源444A〜444Cの1つ以上の他のスペクトル(約±35nmの帯域幅を有する約537nmの公称波長)をオンにしてもよい、異なる露光時間での複数の画像(例えば、4〜8枚以上の画像)を、各カメラ440A、440B、440Cによってそのスペクトルでキャプチャしてもよい。これは、各カメラ440A〜440Cの青色光源444A、440B、444C(帯域幅約±35nmで約455nmの公称波長)を用いて繰り返すことができる。他の実施形態では、白色光源(400nm〜700nm)、近赤外(NIR)光源(例えば、700nm〜1200nm)、又は赤外(IR)光源(例えば、1200nm〜1500nm)を使用することができる。赤外光(IR)及び近赤外光(NIR)源は、試料212及びラベル218両方の透過率を増加させ、シースルー能力を向上させるのに特に効果的となり得る。NIR及びIR光源はまた、たとえラベル218による視野妨害があっても、液体レベル(血清又は血漿部分212SPのレベル)を検出するのに有益となり得る。さらに、黄疸対脂質異常の試料の判定は、画像化中に照明するIR又はNIR源を使って改善することができる。異なる公称波長光源444A〜444Cは、例えば、切替え可能なバンドパスフィルタ、又は、例えば、選択的にオン/オフすることができる異なる色又はスペクトルの光源のバンクを使用することによって達成することができる。他の手段を使用して異なるスペクトル照明を提供してもよい。2つ以上、あるいは、さらに3つ以上の異なるスペクトルで照明と画像キャプチャを行ってもよい。
【0063】
任意の実施形態では、例えば、図4C及び図4Dに最もよく示すように、カメラ440A〜440Cに隣接して、すなわち、上方、下方、側方、又はそれらの組み合わせで、ただし試料容器102に対しそれぞれのカメラ440A、440B、440Cと同じ側に来るように配置された光源444D、444E、及び444Fを備えることにより、試料容器102を、品質チェックモジュール130Aで前面照明することができる。この実施形態では、カメラ440A〜440Cは、それぞれ、約634nm、537nm、及び455nmにRGB公称波長ピークを有するデジタルカラーカメラであってもよいが、RGBカラースペクトルのそれぞれは、モノクロカメラでは上記の実施形態で使用される離散的な光源に比べて比較的広い波長範囲を有する。この実施形態では、光源444D、444E、及び444Fはそれぞれ白色光源であってもよい。例えば、光源444D〜444Fは、上記に特定した波長範囲を発光してもよく、複数の側方位置から試料212を照射するために使用してもよい。異なる露光時間での複数の画像は、各カメラ440A〜440Cによって撮影してもよい。撮影した白色光画像はそれぞれ複数の波長で色成分に分離させてもよい。例えば、コンピュータ143は、画像を、約400nm〜約700nmの間の少なくとも3つのキャプチャした波長に分離してもよい。例えば、RGB成分をコンピュータ143によって画像から分離して、マルチスペクトルの複数の露光時間でキャプチャされた画像を生成することができる。画像は、ライン443A〜443Cのコンピュータ143からの信号を介して、以前のように撮影することができる。
【0064】
上記の設定のそれぞれについて、それぞれの波長スペクトル(例えば、R、G、及びB)ごとに複数の露光時間に撮影されたこれらの複数の画像のすべてを迅速に連続して得ることができ、複数の視点からの試料212の画像収集全体が、例えば、約2秒未満のような短時間で得られるようにしてもよい。一例として、カメラ440A、440B、440Cと、RGB光源444A〜444Cを用いた背面照明を使用して、3つの視点において各波長に対して4枚の異なる露光画像から、4枚の画像×3色×3つのカメラ=36画像が得られる。別の例では、カメラ440A、440B、440Cと、白色光源444D〜444Fを用いた前面照明を使用して、3つの視点において各波長に対して4枚の異なる露光画像から、4枚の画像×3つのカメラ=12画像が得られる。しかし、RGB画像は、個々のRGB成分に撮影された白色光画像を分離することによってキャプチャされる。よって、分離後に、36枚の画像もキャプチャされる。画像データは、コンピュータ143のメモリに格納され、その後、処理される。これらに加えて参照画像を撮影して背景除去に使用してもよい。
【0065】
このHIL特徴付け方法によれば、画像データの処理は、例えば、異なる露光時間及び各波長スペクトルで各カメラ440A〜440Cごとにキャプチャされた複数の画像から最適に露光された画素を選択して、各波長スペクトル、そしてカメラ440A〜440Cごとに最適に露光された画像データを生成することを含む。これは、本明細書では「画像統合」と称することにする。対応する各画素について、カメラ440A〜440Cごとの画像のそれぞれに対して、最適な画像強度を示す画素を、異なる露光時間画像それぞれから選択してもよい。一実施形態では、最適画像強度は、例えば、0〜255の尺度で16〜254の間である。別の例では、最適な画像強度は、例えば、所定の範囲内、0〜255のスケールでは180〜254の間にある画素であってもよい。2つの画像の対応する位置にある2つ以上の画素が最適に露光されると判定された場合、2つのうちのより高い方を選択する。最適な画像強度を示す選択された画像は、それらのそれぞれの露光時間で正規化してもよい。その結果、すべての画素が最適に露光されるカメラ440A〜440Cごとに、複数の正規化され、統合されたカラー画像データセット(例えば、R、G、及びB)(例えば、波長ごと(例えばR、G、B)に1つの画像データセット)が得られる。近赤外及び/又は赤外光の画像セットはさらに、又は任意でキャプチャされ、処理されて視点ごとに最適に露光された画像データセットを提供してもよい。
【0066】
品質チェックモジュール130の較正(キャリブレーション)処理の一部として、試料容器102又はキャリア122のない参照画像を撮影してもよい。このようにして、各画像データセットから管背景(試料容器102の外側の領域)を除去することによって、計算上の負担を最小限に抑えることができる。露光時間及び照明条件(R、G、B、白色光、近IR,IR)ごとの参照画像は、インターフェレント検出方法を実施する前に品質チェックモジュール130によって撮影されてもよい。
【0067】
最適に露光された画素を含む各画像データセットに対して、特徴付けプロセスが行われ、試料212の血清又は血漿部分212SPとして分類された画素を識別する。血清又は血漿部分212SPを識別することは、最適に露光された画像データの各画素を分類することに基づくことができる。分類は、複数のトレーニングセットから生成されたマルチクラス分類器を使用することに基づいて行うことができる。マルチクラス分類器は、例えば、サポートベクトルマシン(SVM)又はランダム判定ツリーを備えることができる。血清又は血漿部分212SPの分類を判定する他の手段を使用してもよい。
【0068】
分類を実行するために、カメラ440A〜440Cごとに異なる波長スペクトル(例えば、R、G、B、白色光、近IR、及び/又はIR)での最適に露光された画素のそれぞれについて、上記のような第1の統計データを計算してもよい。統計データは、例えば、2次までの平均値及び共分散を含んでいてもよい。計算された統計的属性は、オブジェクトのクラスの特定の特性(プロパティ)を符号化し、したがって、クラスラベルを割り当てることによって異なるオブジェクトのクラス間の識別のために使用される。一度生成されると、統計データは、マルチクラス分類器515に送られるとともに、そこで操作される。マルチクラス分類器515は、画像内の画素を、1―血清又は血漿部分、2―沈降した血液部分、3―管、4―キャップ、5―ラベル、6―空気、7―ゲルセパレータ(使用する場合)などのような複数のクラスラベルの1つに属するものとして分類することができる。これにより、液体領域(すなわち、血清及び血漿部分212SP)を構成する画素を識別することができる。
【0069】
マルチクラス分類器515は、線形又は非線形である任意の適切な種類の教師あり分類モデルであってもよい。例えば、マルチクラス分類器515は、線形又はカーネルベースのサポートベクトルマシン(SVM)であってもよい。任意で、マルチクラス分類器515は、適応ブースティング分類器(例えば、AdaBoost、LogitBoostなど)、任意の人工ニューラルネットワーク、ツリーベースの分類器(例えば、決定ツリー、ランダム決定フォレスト)、分類子としてのロジスティック回帰などのブースティング分類器であってよい。SVMは、例えば試料212の分析で見られるような液体と非液体との間の分類に特に効果的となり得る。SVMは、データを分析してパターンを認識する関連する学習アルゴリズムを備えた教師あり学習モデルである。SVMは、分類及び回帰分析に使用される。
【0070】
マルチクラス分類器515をトレーニングするために複数セットのトレーニング例が使用され、次いで、画像データセットがマルチクラス分類器515上で操作され、各画素が分類される。マルチクラス分類器515は、様々な試料条件、ラベル218による閉塞、血清又は血漿部分212SP及び沈降した血液部分212SBのレベルなどを含む試料容器102の多くの例における様々な領域をグラフィックスで輪郭を取ることによってトレーニングされてもよい。500以上もの画像を使用してマルチクラス分類器515のトレーニングを行ってもよい。各トレーニング画像は、手動で輪郭を描いて、各クラスに属する領域を識別し、マルチクラス分類器515に教示してもよい。
【0071】
トレーニングアルゴリズムは、任意の新しい試料の画素をクラスの1つに割り当てるマルチクラス分類器515を構築する。SVMモデルは、別々のクラスの例が可能な限り広い明確な隙間で分割されるようにマッピングされた空間における点としての例を表す。画像データセットからの新しい画素は、その同じ空間にマップされ、隙間のどちら側にあるかに基づいて特定のクラスに属することを予測する。いくつかの実施形態では、SVMは、カーネルトリック(例えば、カーネルベースのSVM分類器など)と称されるものを使用して非線形分類を効率的に実行し、その入力を高次元の特徴空間に暗黙的にマッピングしてもよい。SVM及びブースティングが特に好ましい。他の種類の分類モデルを使用してもよい。
【0072】
血清又は血漿部分212SPのクラスであるとみなされるマルチクラス分類器515の結果は、H、I、又はLが血清又は血漿部分212SP内に存在するかどうか、あるいは、HILは存在せず、したがって試料212はノーマル(Normal)(N)であるかどうか、を識別するように構成されたモデルに供給することができる。よって、インターフェレントモデルは、画像データサブセットに基づいて、インターフェレントが血清又は血漿部分212SPの1つ以上の領域内に存在するか、或いは血清又は血漿部分212SP内には存在しないかを分類する。1つ以上の実施形態では、インターフェレントモデルは、溶血モデル、黄疸モデル、脂肪血モデルなど、1つ以上の異なるインターフェレントタイプモデルとして具現化することができる。場合によっては、ノーマルモデルも使用できる。各インターフェレント又はノーマルモデルは、バイナリ分類モデルでもよい。先に液体として定義された画像データサブセット上で操作した結果は、血清又は血漿部分212SPのインターレフェレントの存在又はインターフェレントの不在、すなわち、試料212の血清又は血漿部分212SPがノーマルかどうかということを示す。
【0073】
1つ以上の実施形態によるインターフェレント検出方法の単純な機能フローチャートを図5に示す。まず、キャリア122によって担持された試料212を含む試料容器102を、502で品質チェックモジュール130に提供する。複数の画像が、504でキャプチャされる。その複数の画像とは、上述したように、複数の異なる露光で、また、複数の異なる波長スペクトルで、そして複数の視点から撮影されたマルチスペクトル画像である。複数の画像は、コンピュータ143のメモリに格納してもよい。これらの画像から、背景を508の背景削減フェーズで任意に減算して計算負荷を低減することができる。背景除去は、予め510で撮影した参照画像を減算することによって達成できる。
【0074】
画像キャプチャ及び任意の背景減算の後、511においてセグメント化を行う。511でのセグメント化は、512で行われる画像統合プロセスを含んでいてもよい。512におけるこの画像統合プロセス中に、各色スペクトル(R、G、B、白色光、NIR、及び/又はIR)及びカメラ440A〜440Cごとの様々な露光時間画像が、画素ごとに再検討され、最適に露光された画素を判定する。それぞれの対応する画素位置ごとに、最適に露光された画素のうちの最良のものが選択され、最適に露光された画像データセットに含まれる。したがって、512での画像統合に続いて、スペクトルごと及びカメラ440A〜440Cごとに1つの最適に露光された画像データセットが生成される。HDR処理を使用することにより、反射及び吸収に関して、画像の細部まで強化することができる。
【0075】
512での画像統合、又は、おそらくそれと並行して、514で統計生成処理を行うことができる。514では、平均及び/又は共分散マトリックスのような各画素について統計が生成される。次いで、最適に露光されたデータセット上の統計データは、マルチクラス分類器515によって操作され、516において画像に存在する画素クラスを識別する。各画素の最終クラスは、各画素についての信頼値を最大化することにより判定してもよい。各画素位置について、統計的記述を画素内(例えば、小さなスーパー画素パッチ(例えば、11×11画素))で抽出することができる。各スーパー画素パッチは、トレーニング及び評価工程で考慮される記述子を提供する。典型的には、分類器は特徴記述子上で動作し、検査/評価中にトレーニング用のクラスラベルと出力クラスラベルを使用する。
【0076】
この511のセグメント化プロセスから、516において、カメラ440A〜440Cごとに統合された画像の各画素を複数のクラスタイプの1つとして分類する。分類のタイプとしては、例えば、液体(血清又は血漿部分212SP)、沈降した血液部分212SB、管212T、ラベル218、キャップ214、ゲルセパレータ313、又は空気212Aであってもよい。このセグメント化情報から、518で、液体領域(血清又は血漿部分212SP)を判定することができる。これは、液体(血清又は血漿部分212SP)と空気212Aとの間(すなわち、LA)の上部の界面の位置、SB又はSPG(ゲルセパレータ313を使用する場合)、及び幅(W)を識別することを含んでいてもよい。この情報から、液体領域(血清又は血漿部分212SP)の体積の予測を判定することができる。518で液体領域が識別されると、その後、521でインターフェレントの存在を検出できる。H、I、及び/又はLの存在は、液体領域(血清又は血漿部分212SP)のデータサブセットを1つ以上の追加の分類器で操作することによって行うことができる。一実施形態では、以下で説明するように、H、I、及びLのそれぞれに別個の分類器を使用することができる。
「溶血検出」
【0077】
第1の広い態様によれば、本発明の実施形態は、遠心分離された血液の試料容器102に収容される試料212が溶血しているかどうかを検出するために使用できる方法及び装置に関する。この方法は、複数のカメラ440A〜440Cと、カメラごとに複数の露光(例えば、4〜8回の露光又はそれ以上)及び複数の波長スペクトル(例えば、R、G、B、近IR、及び/又はIR)を使用して複数の画素化画像をキャプチャする。次いで、これらの画像を分析し、操作して、上述のように、518で液体領域を識別する。液体領域からのデータのこのサブセットをさらに分析して、521Hにおいて溶血を識別する。
【0078】
溶血はサンプルの質の変色の問題であり、特別な処理で解決することはできない。赤血球が破裂し、内部のヘモグロビンが遠心分離された試料212の血清又は血漿部分212SPに放出されると、溶血が起こり得る。これにより、血清又は血漿部分212SPは、赤みがかった色、又は外観となる。赤みを帯びた色と共に、カリウムが血清又は血漿部分212Sに放出され、分析装置106、108、及び/又は110で検査したときに誤った結果を与える可能性がある。誤った採血、取り扱い、保存、及び/又は処理などが溶血を引き起こすことがある。
【0079】
溶血の程度又は度合いは、526Hで判定された溶血指数によって特徴付けることができる。本明細書で使用する「溶血指数」は、血清又は血漿部分212SPに存在する判定された溶血含量に基づいて、特定の試料212に与えられた等級を意味するものとする。一般に、観測の尺度はゼロから4(0−4)の範囲である。ゼロは実質的に溶血を示さず、4は著しい溶血を示す。あるいは、0−10、0−20、A−Fのスケール、又は他のある範囲のスケールを使用することができる。品質チェックモジュール130によって判定される、十分に高い溶血指数を有する試料212は、排除してもよい。通常の手順では、分析装置106、108、及び/又は110に良質の試料212が確実に提供されるように、患者から別の試料212を再採取する。よって、溶血を示す試料212は、さらに検査をすることなく排除され、ローディングエリア105から降ろされる。任意で、試料212は、分析装置(例えば、分析装置106、108、又は110)で検査してもよく、指示された検査に応じて、検査結果と共に溶血指数を報告してもよい。
【0080】
新しい試料212が処理され、品質チェックモジュール130によってノーマルとみなされると、ヘモグロビンの妨害なく、上手く解析できる。いくつかの実施形態では、試料212が、品質チェックモジュール130で検出された際に溶血を含むと判定されると、試料212は、別の分析機器(例えば、図1の遠隔ステーション132の特殊臨床分析装置)に送られ、そこで正確な溶血レベルを測定し、特徴付けることができる。試料検査装置100のコンピュータ143又はCIM145のディスプレイ(例えば、コンピュータスクリーン)にアラートを表示して、検査者に知らせ、試料212に溶血が含まれているかどうかを見つけると、さらに評価及び/又は判定させるようにすることもできる。
【0081】
検査者に溶血を含む試料212の評価を伝える性能を向上させるため、溶血を有する試料212を含む試料容器102の画像を、コンピュータ143又はCIM145のディスプレイ上に表示してもよい。この画像は、それに限定されるのもではないが、種々の既知の溶血試料の参照画像、比較のためのカラースペクトル、試料212の溶血評価レベル(すなわち、指数)、及び/又は検査者の措置の提案などの他の共同する情報とともに表示してもよい。
「黄疸検出」
【0082】
別の広い態様によれば、本発明の実施形態は、遠心分離された血液の試料容器102に収容される試料212中の黄疸を検出するために使用され得る方法及び装置に関する。黄疸インターフェレントは、例えば、過剰のビリルビンから生じる可能性があり、赤血球が崩壊すると、脾臓においてビリルビンに変換される。2〜3mg/dlを超えるビリルビンのレベルは、一般に、視覚的には暗黄色又は茶色がかった色であり、分析装置(例えば、分析装置106、108、及び/又は110)で実施される酵素ベースの免疫学的分析に悪影響を及ぼす可能性がある。そのような症状は、ビリルビン血症とも呼ばれる。
【0083】
黄疸検出方法は、溶血検出方法と同様である。518において、画像をキャプチャし、画素化画像を分析して液体領域を識別した後、液体領域からのデータサブセットを黄疸の存在について分析することができる。この方法によれば、溶血検出のために使用されたのと同じデジタル画像データサブセットを使用して黄疸検出をすることができる。この分析では、黄疸が存在するかどうかを判定するため、バイナリ分類器を使用することができ、その場合は、黄疸指数のようなインターフェレントレベルを判定することができる。本明細書で使用される「黄疸指数」は、存在する黄疸の判定内容に基づいて、特定の試料212に与えられた等級を意味するものとする。一般に、観測の尺度はゼロから4(0−4)の範囲である。同様に、ゼロはほぼ黄疸を示さず、4は黄疸が著しく存在することを表す。あるいは、0−10,0−20、A−F、又はその他の範囲のような他のスケールを使用してもよい。
「脂肪血の検出」
【0084】
別の広い態様によれば、本発明の実施形態は、遠心分離された血液の試料容器102に収容される試料212中の脂肪血を検出するために使用され得る方法及び装置に関する。血清又は血漿部分において白っぽい、又は乳白色の外観を呈する脂肪血インターフェレントは、血液中の過剰な脂質の存在から生じ得る。約50mg/dlを超える脂質レベルは、免疫学的分析検査での抗体結合を妨害し、したがって分析装置106、108、又は110からの免疫学的分析結果に影響を与える。
【0085】
脂肪血検出方法は、溶血及び黄疸検出方法と同様である。この方法は、品質チェックモジュール130において試料容器102を受け取ることができる。次に、カメラ440A〜440Cは、試料212の画素化画像をキャプチャすることができる。次いで、コンピュータ143は、511で画像の分析を行い、試料容器102と試料212をセグメント化して、518で液体部分を識別する。最後に、画像データサブセットを、521Lで脂肪血の存在について分析することができる。この方法によれば、溶血及び黄疸検出のために使用されたのと同じデジタル画像データサブセットを、脂肪血の検出に使用できる。分析により、インターフェレントが存在するかどうかを判定し、インターフェレントが存在する場合は、インターフェレントレベル、例えば、脂質異常の指数を判定することができる。「脂肪血指数」を本明細書中で使用する場合、その中の判定された含脂肪量に基づいて試料212に与えられた等級を意味するものとする。一般的に、視覚的観測のための尺度はゼロから4(0−4)の範囲である。同様に、ゼロは実質的に脂肪血を示さず、4は脂肪血が著しく存在することを表す。あるいは、0−10,0−20、A−F、又は他のある範囲のスケールのような他のスケールを使用することができる。脂肪血は、試料212を分析装置(例えば、分析装置106、108、及び/又は110)上で検査又は分析する前に特別な処理によって解決できる、特定のサンプル品質変色欠陥である。
【0086】
検査室で試料が脂質異常であることを認識した後、試料は例えば、遠隔ステーション132で試料212をさらに処理して脂質を除去又は減少させることができる。例えば、溶媒又は他の物質を導入して、脂肪血の量を減らすことができる。遠隔ステーション132での脂肪血レベルを低下させる追加の処理の後、試料212をトラック121に戻して、分析装置(例えば、分析装置106、108、及び/又は110)に直接載置して分析することができる。任意で、試料212は、再度、品質チェックモジュール130に送られ、その結果、試料は、脂肪血症について再スクリーニングされ得る。もし、脂肪血レベルが今度は十分に低ければ、試料をトラック121上に送り、分析装置(例えば、分析装置106、108、及び/又は110)で分析させ、次いで試料212をローディングエリア105に戻せばよい。脂肪血の再検査をすれば、試料212は、1つ以上の分析装置(例えば、分析装置106,108,110)で適切に分析でき、検査室は検査結果についてより信頼することができる。
【0087】
したがって、本発明の実施形態は、試料212の遠心分離の後で、第1の可能な場合に(例えば、品質チェックモジュール130において)H、I、及び/又はLを検出できることは理解できよう。この処理の時点でH、I及び/又はLを検出した場合、試料212は無駄にならず、誤った検査結果が防止され、いかなる患者の検査結果の遅延も最小限に抑えられる。もちろん、血清又は血漿部分212SP中に存在するH、I、及び/又はLのレベルのさらに正確な測定値を提供するために、アーチファクト検出法を用いて、凝塊、気泡、又は泡などのアーチファクトの存在を識別することができる。1つ以上のアーチファクトを含むと識別された画素は、この方法では無視され、HIL検出には使用されない。622のアーチファクト検出法(図6)は、2016年1月28日に出願された「試料中のアーチファクトを分類するための方法及び装置」と題した米国仮特許出願第62/288,358号でさらに説明されている。
【0088】
この方法によれば、複数のトレーニングセットに基づいてトレーニングされた1つ以上の分類器を用いて画像データサブセットを操作することによって、521Hにおける溶血の識別、521Iにおける黄疸の識別、及び521Lにおける脂肪血の識別を行うことができる。個々のバイナリ分類器は、H、I、及び/又はLのそれぞれに対して、又はNについてそれぞれ使用されてもよく、又は、存在する1つ以上のH、I、及び/又はLあるいはNを識別するために1つのマルチクラス分類器が使用されてもよい。任意で、データサブセットの各画素の格納されたRGB値は、参照テーブルなどのメモリ内のRGB値に対して測定することができる。
【0089】
1つ以上の実施形態では、1つ以上のインターフェレントの存在を判定することは、画素のうちの個々をノーマル(N)であるか、あるいは溶血(H)、黄疸(I)、又は脂肪血(L)を含むか、を特徴付けるために画像データサブセットを最初に分析することを含む。この判定から、液体領域の全体的な分類が提供される。全体的な分類は、ノーマル(N)であるか、又は特定の単数又は複数の種類のインターフェレントを含んでいるかでもよい。例えば、液体領域内の特定のインターフェレントの種類は、H、I、及び/又はLのうちの1つであると判定することができる。例えば、H、I、L、H及びI、H及びL、I及びL、又はH、I、及びLなどである。
【0090】
1つ以上の実施形態では、インターフェレント分類器521は、任意の適切な教師あり分類モデルを含んでいてもよい。インターフェレント分類器521は、別の分類モデルを利用して、液体領域内にあるとして分類された画素がN、H、I、又はLのクラスの1つであるかどうかを判定することができる。インターフェレント分類器は、521で、個々のバイナリ分類器に基づいて、H、I、及びLのそれぞれに対して1つでもよく、あるいは、H、I、L、及びNの複数のインターフェレントトレーニングセットに基づいて十分にトレーニングされたマルチクラス分類器に基づいてもよい。一実施形態では、マルチクラス分類器(例えば、4クラス分類モデル)は、サポートベクトルマシン(SVM)、サポートベクトルネットワーク、又はブースティングクラスアルゴリズムでもよい。サポートベクトルマシン及びネットワークの例は、“C. Cortes and V. Vapnik, “Support-vectorNetworks”, Machine Learning, Vol. 20, Issue 3, page273-297”と題する論文、及び “J. Friedman, T. Hastie, R.Tibshirani (1998), “Additive Logistic Regression: AStatistical View of Boosting””と題する論文、及び “Y. Freund andR. E. Schapire (1999), A Short Introduction to Boosting”と題する論文などに記載されている。
【0091】
画像データサブセットの画素がインターフェレント分類器521によってN、H、I、又はLであると分類されると、方法500は、試料212の液体領域が全体としてノーマル(N)かどうか、あるいは、ノーマル(N)でない場合には、H、I、及び/又はLのうちの1つ以上を含むと判定することも含んでよい。試料212がノーマル(N)であるようなら、試料212は、単にトラック121上を指示された検査のための分析装置(例えば、分析装置106、108、及び/又は110)まで進めてもよい。ノーマルでない場合には、1つ以上のインターフェレントタイプを判定する。さらに、インターフェレントレベル検出器を521Bで使用して、各インターフェレントタイプのインターフェレントレベルを判定することもできる。
【0092】
血清又は血漿部分212SPが全体としてノーマル(N)であると判定された場合、あるいはノーマル(N)でないと判定された場合、インターフェレントタイプは、N、H、I、又はLであると予め分類された液体領域内の多数の画素を加えることによって判定することができる。ノーマル(N)であるかインターフェレントを含むかどうかの分類は、各クラスの最大数の画素、又はいくつかの実施形態における重み付けスキームに基づくものであってもよい。したがって、一実施形態では、画素の大部分がNとして分類される場合、液体領域と試料212はノーマル(N)として分類してもよい。画素の大部分がHとして分類される場合、液体領域と試料212は溶血(H)を含むものとして分類してもよい。同様に、画素の大部分がI又はLとして分類される場合、液体領域と試料212は、黄疸(I)又は脂肪血(L)としてそれぞれ分類してもよい。他の実施形態では、重み付き多数決方式を用いて、インターフェレント分類器521からの確率を重みとして使用して試料212を分類することもできる。他の手段を使用して、試料212を全体として特徴付けることもできる。
【0093】
さらに、試料212の画像データセットが、2つ以上のインターフェレントクラス(例えば、H及びI、H及びL、I及びL、又はさらにH、I、及びL)に分類される比較的多量の画素を含有する場合、インターフェレント検出方法は、複数のインターフェレントタイプが試料212に存在すると報告するようにしてもよい。試料212に複数のインターフェレントタイプ(例えば、H、I、及び/又はL)を含有するような特徴付けが与えられると、インターフェレントレベル検出器521Bを使用して、試料212の複数のインターフェレントタイプのインターフェレントレベルを提供することができる。インターフェレントレベル検出器521Bは、画像データサブセットを、教師あり回帰モデルのようなレベル特徴化モデルに通すことにより、特定のインターフェレントごとにインターフェレントレベル又は指数を得ることができる。サポートベクトル回帰(SVR)、ニューラルネットワーク回帰、ツリーベース回帰などの任意の適切な回帰モデルを使用することができる。
【0094】
溶血回帰モデル526H、黄疸回帰モデル526I、及び脂肪血回帰モデル526Lなどのような異なる回帰モデルをそれぞれのインターフェレントタイプに対して使用してもよい。1つ以上の実施形態では、回帰モデルのそれぞれはSVRマシンであってもよく、その特定のタイプのインターフェレントタイプ(例えば、H、I、又はL)を示す液体領域のみを用いてトレーニングされてもよい。例えば、溶血回帰モデル526Hは、予想される溶血レベルの多様な範囲に亘って溶血レベルを有する広範囲の試料212を用いてトレーニングすることができる。例えば、溶血範囲は、約50〜525の溶血レベルを含んでいてもよい。同様に、黄疸回帰モデル526Iは、約1.7〜30の黄疸レベルを含む多様な範囲の予測レベルにわたる黄疸レベルを有する、広範な試料212でトレーニングすることができる。同様に、脂肪血回帰モデル526Lは、約125〜1000の脂肪血レベルを含む、多様な範囲の予想レベルに亘って脂肪血レベルを有する広範な範囲の試料212でトレーニングすることができる。
【0095】
いくつかの実施形態では、インターフェレントレベルを離散化することができる。例えば、4つの離散的なレベルを使用してもよい。溶血回帰モデル526Hでは、50、150、250及び525の離散的な溶血レベルを使用することができる。黄疸回帰モデル526Iでは、1.7、6.6、16、及び30の離散的な黄疸レベルを使用することができ、脂肪血回帰モデル526Lでは、125、250、500、及び1000の離散的な脂肪血レベルを使用することができる。4つ前後の離散的なレベルを使用してもよい。上記の離散的なレベル以外のレベルを使用してもよい。
【0096】
複数の視点からの結果は、試料がノーマル(N)であるか、又はより多くのHILを含むかを示すことができるが、インターフェレントレベルの最終判定は、所望の回帰モデルを通したときのその特定なインターフェレントタイプの画像データサブセットの回帰結果を融合することによって判定することができる。モデルのインターフェレントレベルが離散化されている場合、回帰モデルからの出力も、最も近い目標レベルにマッピングすることによって離散化することもできる。いずれにしても、1つ以上の実施形態によれば、試料212内の検出されたインターフェレントタイプごとに、インターフェレントレベル又は指数を提供することができる。この判定は、各クラスの画素数に基づいて画像が重み付けされる重み付けスキームに従って集計することができる。最終的な決定は、複数の視点に亘って検証することができる。
【0097】
したがって、品質チェックモジュール130によって実行されるモデルベースのインターフェレント検出及び分類方法500は、試料212がノーマルであるか、又は1つ以上のインターフェレントを含むかどうか、迅速に特徴付けすることができることは明らかである。試料212が1つ以上のインターフェレントを含む場合、この方法500はさらに、存在する単数又は複数のインターフェレントのタイプを判定し、存在するインターフェレントのタイプそれぞれについてインターフェレントレベル又は指数を判定することもできる。最終的な結果及び判定は、複数の視点に亘って集約することができる。
【0098】
図6は、より広範な特徴付け方法600のフローチャートを示し、621でのインターフェレント(すなわちHILN分類)の特徴付けは、品質チェックモジュール130を使用して、より広範な方法600によって特徴付けられる、又は分類される多くの品目のうちの1つのみである。方法600の1つ以上の実施形態によれば、例えば複数のカメラ(カメラ440Aが示されている)によって画像がキャプチャされる。しかしながら、他のカメラ440B、440Cを使用して、他の視点から画像をキャプチャすることができる。カメラ440Aでキャプチャされた画像について説明する処理は、他の視点の他のカメラ440B、440Cについても同じであり、ライン605のそれらの入力を使用して、最終的な判定、又は視点による違いを解決するために使用する試料212の3Dモデルを生成することができる。
【0099】
カメラ440A及び他のカメラ440B、440Cによってキャプチャされた画像は、上述したように、マルチスペクトル(例えば、RGB、近IR、IR)及び複数露光画像であってもよい。特に、604Aで使用される光の波長スペクトルごとに、複数の露光(例えば、4〜8回の露光)を行ってもよい。図4A及び図4Bに示すように、各カメラ440A〜440Cの各露光のそれぞれの画像は、モノクロカメラと背面照明光源444A〜444Cを使用して同時に取得することができる。任意で、白色光源444D〜444Fを使用して、前面照明された複数の露光画像を、カラーカメラを使用して604Bで取得してもよい。
【0100】
その後、任意の背景除去方法に関して上述したように、画像を任意で508において処理して、参照画像510を使用して背景を除去してもよい。その後、画像をさらに処理して、上述したように511でセグメント化を判定してもよい。いくつかの実施形態では、604Bからの前面照明カメラ440A〜440C(図4C〜4D参照)からの画像は、511でのセグメント化に最もよく使用できる。同様に、背景照明を使って604Aでキャプチャされた任意の画像は、621でのHILNの特徴付けに最もよく使用される。しかしながら、明らかに、604Aでキャプチャされた画像は、511でのセグメント化に使用でき、604Bでキャプチャされた画像は、621でのHILN検出に使用できる。
【0101】
623での液体の識別及び定量化は、511でのセグメント化に続いて実施してもよい。623で液体を定量化することは、LA、SB、SG、及び/又はBGの物理的位置、及び/又はHSP、HSB及び/又はHTOTの判定、及び/又は血清又は血漿部分の体積(VSP)及び/又は沈降した血液部分の体積(VSB)などの試料212の特定の物理的寸法特徴の判定を含んでいてもよい。内部幅(Wi)は、627における試料容器の特徴付けから得ることができる。これらの境界区域の画素を選択し、画素空間でのそれらの位置値を平均化してLA、SB、又はSPGに対する値を取得することによって識別することができるようになる。この情報から、血清又は血漿部分212SPの体積を判定することができる。任意の適切な較正を使用して画素をミリメートルに較正することによって画素空間から機械的測定値へ関連付けることができる。
【0102】
検査に利用可能な血清又は血漿部分212SPの実際の体積をさらに正確に測定するために、アーチファクト検出法を622で使用して、凝塊、気泡、又は泡が存在することを識別してもよい。存在する1つ以上のアーチファクトのそれぞれの推定体積は、より良い体積推定値を得るために、上記で判定された血清又は血漿部分212SPの推定体積から差し引かれてもよい。アーチファクト分類器を使用して画像を処理して、622で血清又は血漿部分212SP中のアーチファクトの有無を判定してもよい。アーチファクト検出622でアーチファクトとして識別されたそれらの画素は、621でのHILN分類では無視されてもよい。アーチファクトの検出により、いくつかの実施形態において修復を開始できる。アーチファクト検出法については、2016年1月28日に出願された「試料中のアーチファクトを分類するための方法及び装置」と題した米国仮特許出願第62/288,358号で説明している。
【0103】
511でのセグメント化の結果は、バーコードなどの識別情報215を含むラベル218を識別するためにも使用してもよい。バーコードは625で読み取ることができる。従来のバーコード読み取りソフトウェアは、ラベル218が511のセグメント化で識別された場合に使用されてもよい。特定の画像が、読み取られるべきバーコードを十分に含まない場合、バーコードは、他のカメラ440A〜440Cから得られた他の画像から、又はそれらに連動して読み取ることができる。
【0104】
試料容器102のさらなる特徴付けは、627でより広範な方法600に従って達成してもよい。529での管の種類、531でのキャップの種類、533でのキャップの色の特徴付けは、3Dモデル635に供給されて、各カメラ440A〜440Cからの画像の処理に基づいて同じ特徴付けが達成されかどうかを検証する。わずかに異なる値が得られた場合、その値は平均化してもよい。621でのHILN分類、623での液体定量化、622でのアーチファクト検出、及び627での試料容器検出からの出力のすべてが3Dモデル635に供給されて、最終的な意思判定、特徴付け、及び様々なカメラ440A〜440Cからの結果の調和のために使用される。
【0105】
図7は、本開示の1つ以上の実施形態による、試料212のインターフェレントを判定する方法のフローチャートを示す。方法700は、702で試料容器(例えば、キャップ付き採血管などの試料容器102)に収容された試料(例えば、試料212)を提供することを含む。次に、方法700は、704で試料212を収容する試料容器102の画像を、異なる露光時間と異なるスペクトルでキャプチャすることを含む。例えば、いくつかの実施形態では、異なる露光時間で撮影された4〜8の異なる露出またはそれ以上であってもよいが、同じ照明条件で撮影してもよい。1つ以上の実施形態では、いくつかの画像は、白色光を用いて、また、前面照明を用いてキャプチャされ、一部は、背面照明光源444A〜444Cとして、赤色、青色、及び緑色のような複数の単一の波長ピークの狭帯域光源を用いてキャプチャできる。他の実施形態では、NIR及び/又はIRスペクトル源を使用することができる。いくつかの実施形態では、白色光画像は、上述のように、コンピュータ143によってキャプチャされたR、G、及びB画像に分解されてもよい。それぞれの場合において、複数のカメラ440A〜440Cによって複数の視点から画像を撮影してもよい。
【0106】
方法700は、任意で、706に示すように背景除去を含み、背景の一部を減算して計算負荷を低減してもよい。背景除去は、較正プロセスの一部として撮影することができる対応する参照画像から画像を減算することによって達成できる。参照画像は、試料容器102の画像と同じ露光時間、波長スペクトル、及び照明条件で撮影してもよいが、キャリア122に試料容器102なしでキャプチャすることができる。背景縮小段階は、正規化を含んでいてもよい。
【0107】
方法700は、710において、それぞれの波長の異なる露光時間の画像から最適に露光された画素を選択して、各波長スペクトルにおいて最適に露光された画像データを生成することを含む。特定の波長における各画像内の対応する画素位置毎に、(露光不足でも、又は露光しすぎでもない)最良に露光された画素を選択することができる。最適な露光範囲は、上述したようなものであってもよい。この最適に露光された画素の選択は、画像統合フェーズ(例えば、画像統合512)で行われる。したがって、スペクトル(R、G、B、近IR、及び/又はIR)のそれぞれについて、最適に露光された画素のデータセットが生成されてもよい。
【0108】
次に、方法700は、最適に露光された画素を、血清及び血漿部分212SP、すなわち、712における液体領域として分類することを含む。分類は、異なる波長スペクトルにおける最適に露光された画素の統計データを計算して統計データを生成し、次いで、最適に露光された画素の統計データを操作して、血清及び血漿部分212SPを識別することによって達成できる。他のクラス(例えば、沈降した血液部分212SB、空気212A、管212T、ラベル218、及び/又はゲルセパレータ313)は、511のセグメント化によって識別してもよい。
【0109】
最後に、方法700は、インターフェレント分類器を用いて各波長スペクトルについて最適に露光された画像データを操作することに基づいて、インターフェレントの存在又は不存在及びインターフェレントタイプを714で識別することを含む。任意で、716において、回帰モデルなどのインターフェレントレベルモデルを使用するなどして、インターフェレントレベル又は指数を検出することができる。したがって、上記に基づいて、品質チェックモジュール130によって実行されるモデルベースの試料インターフェレント検出方法700により、H、I、及び/又はL、又はNの存在の迅速な特徴付けが可能となることは明らかである。インターフェレントが検出された場合、インターフェレントレベルを評価して報告することができる。
【0110】
品質チェックモジュール130は、プレスクリーニングが遠心分離機125での遠心分離の直後に行われるような位置にあるように図1に示されているが、いくつかの実施形態では、この特性を直接分析装置(例えば分析装置106,108、及び/又は110)、あるいは、その他の場所に含んでいても有利である。例えば、試料検査装置100のトラック121に物理的に接続されていない遠隔ステーション132に配置された独立した品質チェックモジュール130は、この技術を使用して分析前に試料212を検証することができる。さらに、いくつかの実施形態では、品質チェックモジュール130をローディングエリア105に配置して、ロボット124が試料容器102をキャリア122にロードするとすぐに品質チェックを実施することができるように、ラック104をローディングエリア105にロードする前に遠心分離を行ってもよい。品質チェックモジュール130は他の位置に配置することも可能である。
【0111】
本発明は様々な変更及び代替形態が可能であるが、特定のシステム及び装置の実施形態及びその方法は、図面の例として示されており、本明細書で詳細に説明してきた。しかしながら、開示された特定の装置又は方法に本開示を限定することを意図するものではなく、反対に、添付の特許請求の範囲の範囲内に入るすべての変更、均等物、及び代替物を網羅することを意図するものであることを理解されたい。
【符号の説明】
【0112】
100 試料検査装置
102 試料容器
104 ラック
106、108、110 分析装置
121 トラック
122 キャリア
130、130A 品質チェックモジュール
143 コンピュータ
212 試料
212SP 血清又は血漿部分
440A〜440C カメラ
446 ハウジング
521 インターフェレント分類器
515 マルチクラス分類器
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7
【国際調査報告】