特表2019-511816(P2019-511816A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2019-511816加速荷電粒子または放射線ビームを供給するハイブリッド定在波/進行波線形加速器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-511816(P2019-511816A)
(43)【公表日】2019年4月25日
(54)【発明の名称】加速荷電粒子または放射線ビームを供給するハイブリッド定在波/進行波線形加速器
(51)【国際特許分類】
   H05H 9/00 20060101AFI20190329BHJP
   H05H 7/02 20060101ALI20190329BHJP
   H05H 9/04 20060101ALI20190329BHJP
   H05H 9/02 20060101ALI20190329BHJP
【FI】
   H05H9/00 A
   H05H7/02
   H05H9/04
   H05H9/02
【審査請求】有
【予備審査請求】有
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2018-548063(P2018-548063)
(86)(22)【出願日】2017年3月10日
(85)【翻訳文提出日】2018年9月28日
(86)【国際出願番号】US2017021895
(87)【国際公開番号】WO2017156452
(87)【国際公開日】20170914
(31)【優先権主張番号】15/068,355
(32)【優先日】2016年3月11日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】517023736
【氏名又は名称】ヴァレックス イメージング コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ミシン アンドレイ
【テーマコード(参考)】
2G085
【Fターム(参考)】
2G085AA04
2G085AA07
2G085BA08
2G085BA17
2G085BB17
2G085BB20
2G085EA07
2G085EA10
(57)【要約】
定在波線形加速器区間(「SW区間」)と、その後に続く進行波線形加速器区間(「TW区間」)とを備えたハイブリッド線形加速器が開示される。一例では、RF電力はTW区間に供給され、TW区間によって使用されない電力は、導波管を通ってSW区間に供給される。SW区間に供給されるRF電力のエネルギー及び/または位相を変化させるために、RFスイッチ、RF位相調整器、及び/またはRF電力調整器が、導波管に沿って設けられる。別の例では、RF電力がSW区間とTW区間との両方に供給され、TW区間によって使用されないRF電力が、RFスイッチ、RF位相調整器、及び/またはRF電力を介してSW区間に供給される。別の例では、RF負荷が、RFスイッチによってTW区間の出力部に整合される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子の入力ビームを供給するように構成された荷電粒子源と、
荷電粒子の前記入力ビームを受け入れて前記荷電粒子を加速するように構成された定在波線形加速器区間であって、加速電子の中間ビームを形成する前記定在波線形加速器区間と、
加速電子の前記中間ビームを受け入れるように構成されているとともに加速電子の前記中間ビームの運動量及びエネルギーをさらに増加させるように構成された進行波線形加速器区間であって、荷電粒子の出力ビームを形成する前記進行波線形加速器区間と、
前記中間ビームを前記定在波線形加速器区間から前記進行波線形加速器区間に通過させる経路を形成するように構成されたドリフト管であって、前記進行波線形加速器区間から前記定在波線形加速器区間をRF分離して、前記中間ビームの前記運動量及びエネルギーをさらに増加させるように構成された前記ドリフト管と、
前記進行波線形加速器区間にRF電力を供給するように構成されたRF源と、
前記進行波線形加速器区間の出力部に結合された入力部と、前記定在波線形加速器区間の入力部に結合された出力部とを有した導波管とを備え、
前記進行波線形加速器区間に減衰後に残存しているRF電力が、前記定在波線形加速器区間に送り込まれて、前記荷電粒子を加速させる、ハイブリッド線形加速器。
【請求項2】
前記定在波線形加速器区間に供給される前記RF電力の電力及び/または位相を変更するために、スイッチ、移相器、及び/または電力調整器を前記導波管に沿ってさらに備える、請求項1に記載のハイブリッド線形加速器。
【請求項3】
移相器、及び/または前記電力調整器が、約0.5MeVから最大線形加速器エネルギーまでの電子の前記出力ビームのエネルギー調整を前記スイッチにもたらすように構成された、請求項2に記載のハイブリッド線形加速器。
【請求項4】
前記定在波線形加速器がバンチャーの形態で構成された、請求項1に記載のハイブリッド線形加速器。
【請求項5】
前記荷電粒子源が、電子の入力ビームを供給するように構成された電子銃を備える、請求項1に記載のハイブリッド線形加速器。
【請求項6】
前記定在波線形加速器と協働する第1の外部磁気システム、及び/または
前記進行波線形加速器区間と協働する第2の外部磁気システムをさらに備える、請求項1に記載のハイブリッド線形加速器。
【請求項7】
前記RF源から前記進行波線形加速器区間にRF電力を供給するように構成された、前記RF源と進行波線形加速器との間の第2のRF導波管、及び
反射されたRF電力が前記RF源に後進伝搬することを防止する、前記第2のRF導波管の途中の高電力サーキュレータ、及び/または
反射されたRF電力が前記進行波線形加速器区間に後進伝搬することを防止する、前記第1のRF導波管の途中の低電力サーキュレータをさらに備える、請求項1に記載のハイブリッド線形加速器。
【請求項8】
荷電粒子ビーム窓と制動放射線を生成する変換ターゲットとの少なくとも一方をさらに備える、請求項1に記載のハイブリッド線形加速器。
【請求項9】
荷電粒子源と、
電子の前記入力ビームを受け入れて前記荷電粒子を加速するように構成された定在波線形加速器区間であって、加速荷電粒子の中間ビームを形成する前記定在波線形加速器区間と、
加速荷電粒子の前記中間ビームを受け入れるように構成されているとともに前記加速電子の運動量及びエネルギーをさらに増加させるように構成された進行波線形加速器区間であって、荷電粒子の出力ビームを形成する前記進行波線形加速器区間と、
前記定在波線形加速器区間と前記進行波線形加速器区間との間のRF分離をもたらすと同時に、前記定在波線形加速器区間から前記進行波線形加速器区間への加速電子の前記中間ビームの通過をも可能にするように構成されたドリフト管と、
RF電源と、
前記RF電源からRF電力を受け入れるように構成されているとともに、前記RF電力を、前記定在波線形加速器区間に供給されるRF電力の第1の部分と、前記進行波線形加速器区間に供給されるRF電力の第2の部分とに分岐させるように構成されたRF分配器とを備える、ハイブリッド線形加速器。
【請求項10】
前記進行波線形加速器区間と前記RF分配器との間にRFスイッチ、RF移相器、及びRF電力調整器をさらに備え、前記RFスイッチ、前記RF移相器、及び前記RF電力調整器が、前記進行波線形加速器区間によって使用されないRF電力を、前記定在波線形加速器区間に送り込むように構成された、及び/または前記定在波線形加速器と前記進行波線形加速器区間との間の位相関係を変更するように構成された、請求項9に記載のハイブリッド線形加速器。
【請求項11】
前記スイッチ、前記移相器、及び/または前記電力調整器が、約0.5MeVから最大線形加速器エネルギーまでのエネルギー調整をもたらすように構成された、請求項10に記載のハイブリッド線形加速器。
【請求項12】
前記定在波線形加速器がバンチャーの形態で構成された、請求項9に記載のハイブリッド線形加速器。
【請求項13】
前記荷電粒子源が、電子の入力ビームを供給するように構成された電子銃を備える、請求項9に記載のハイブリッド線形加速器。
【請求項14】
前記定在波線形加速器区間と協働する第1の外部磁気システム、及び/または
前記進行波線形加速器区間と協働する第2の外部磁気システムをさらに備える、請求項9に記載のハイブリッド線形加速器。
【請求項15】
前記RF分配器にRF電力を供給する、前記RF源と前記RF分配器との間のRF導波管、及び
反射されたRF電力が前記RF源に後進伝搬することを防止する、前記RF導波管の途中の高電力サーキュレータをさらに備える、請求項9に記載のハイブリッド線形加速器。
【請求項16】
前記進行波線形加速器区間に加速後に残存しているRF電力を吸収する、前記進行波線形加速器に結合されている整合されたRF負荷をさらに備える、請求項9に記載のハイブリッド線形加速器。
【請求項17】
荷電粒子ビーム窓と制動放射線を生成する変換ターゲットとの少なくとも一方をさらに備える、請求項9に記載のハイブリッド線形加速器。
【請求項18】
電子の入力ビームを供給するように構成された荷電粒子源と、
荷電粒子の前記入力ビームを受け入れて前記荷電粒子を加速するように構成された定在波線形加速器区間であって、加速荷電粒子の中間ビームを形成する前記定在波線形加速器区間と、
加速荷電粒子の前記中間ビームを受け入れるように構成されているとともに前記加速荷電粒子の運動量及びエネルギーをさらに増加させるように構成された進行波線形加速器区間であって、出力部を有した前記進行波線形加速器区間と、
前記定在波線形加速器区間と前記進行波線形加速器区間との間のRF結合をもたらすように構成されているとともに前記定在波線形加速器区間から前記進行波線形加速器区間への加速電子の前記中間ビームの通過を可能にするように構成されたRF結合器と、
前記RF結合器と協働するRF導波管を介して前記定在波線形加速器区間と前記進行波線形加速器区間との両方にRF電力を供給するように構成されたRF源と、
前記進行波線形加速器区間の前記出力部と協働するRF負荷と、
前記進行波線形加速器区間によって出力された前記RF電力に前記RF負荷を整合させて前記進行波線形加速器に減衰後に残存している電力を吸収するように構成されたRFスイッチとを備える、ハイブリッド線形加速器。
【請求項19】
前記定在波線形加速器がバンチャーの形態で構成された、請求項18に記載のハイブリッド線形加速器。
【請求項20】
前記荷電粒子源が、電子の入力ビームを供給するように構成された電子銃を備える、請求項18に記載のハイブリッド線形加速器。
【請求項21】
前記定在波線形加速器区間と協働する第1の外部磁気システム、及び/または
前記進行波線形加速器区間と協働する第2の磁気システムをさらに備える、請求項18に記載のハイブリッド線形加速器。
【請求項22】
前記RF源と前記RF結合器との間のRF導波管、及び
反射されたRF電力が前記RF源に後進伝搬することを防止する、前記RF導波管の途中の高電力サーキュレータをさらに備える、請求項18に記載のハイブリッド線形加速器。
【請求項23】
電子の前記出力ビームのエネルギー制御が、約0.5MeVから最大線形加速器エネルギーまでのエネルギー調整をもたらす、請求項18に記載のハイブリッド線形加速器。
【請求項24】
荷電粒子ビーム窓と制動放射線を生成する変換ターゲットとの少なくとも一方をさらに備える、請求項18に記載のハイブリッド線形加速器。
【請求項25】
定在波線形加速器区間と、前記定在波区間に続く進行波線形加速器区間とを備えたハイブリッド線形加速器によって荷電粒子を加速する方法であって、
前記定在波線形加速器区間に荷電粒子を供給すること、
前記ハイブリッド線形加速器にRF電力を供給して、前記定在波線形加速器区間と前記進行波線形加速器区間とによって前記荷電粒子の加速を引き起こすこと、及び
前記ハイブリッド線形加速器の少なくとも一部におけるRF電力及び/または位相を調整して、前記進行波線形加速器区間によって出力される前記中間電子ビームのエネルギー及び/または線量を調整することを含む、前記方法。
【請求項26】
RF電源によって前記進行波線形加速器区間にRF電力を供給すること、
前記進行波区間に減衰後に残存している前記RF電力を前記定在波区間に供給すること、及び
前記定在波線形加速器区間の前記荷電粒子を、前記定在波区間に供給された前記RF電力によって加速することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
RFスイッチ、RF移相器、及び/またはRF電力調整器によって前記定在波線形加速器区間に供給された前記RF電力及び/または前記RF電力の位相を調整して、前記進行波線形加速器区間によって出力された前記中間電子ビームのエネルギー及び/または線量を調整する、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2016年3月11日に出願された米国特許出願第15/068,355号の一部継続出願であり、本発明の譲受人に譲渡され、参照により本明細書に援用されるものである。
【0002】
本発明の実施形態は、全般に、電子ビームまたはX線ビームを形成する線形加速器に関し、特に、定在波区間と、定在波区間に続いて共線の関係にある進行波区間とを含む同様の線形加速器に関する。
【背景技術】
【0003】
線形加速器(「LINACS」とも呼ばれる)は、例えば、非破壊検査(NDT)、セキュリティ検査(SI)、放射線治療(RT)、電子ビーム処理滅菌、及びポリマー硬化などの産業用途を含む、広範囲の用途で様々なタスクに広く使用されている。加速された電子ビームと、そのような電子ビームが加速経路の終端の変換ターゲットに衝突することによって生成される制動放射X線ビームとは、両方とも様々なタスクに使用されている。選択される放射線ビームの種類は、通常は、具体的な用途と、その要件によって決定される。多くの用途では、要件には、放射線ビームのエネルギー変化量及び線量率変化量が含まれる。これには、広範な放射線ビームエネルギーの変化量、例えば0.5MeVから、中性子の生成及び活性化の問題のために一般に最大10MeVを超えることはない、最大エネルギーまでの変化量が含まれる。しかし、既知の事例によっては、最大エネルギーは12MeV、15MeV、20MeV、またはそれより高いエネルギーに達する可能性がある。当業者にはよく知られていることであるが、線形加速器は、常に効果的に作動するとは限らず、またはかかる広範な放射線ビーム動作エネルギー範囲にわたっては、全く機能することがない複雑なツールである。
【0004】
線形加速器は、粒子の速度が増加する間に粒子を正しい加速位相に保つために、電子ビームの伝搬方向に徐々に長さが増加する複数の空洞共振器を備えている。電子速度がほぼ光速に達すると、構造の周期と加速セルの形状は、通常、加速器の終端まで同じままである。
【0005】
電子の速さが大きく(光の速さの約20%から約95%に)変化し、電子が電子の束の流れとしてまとめられている線形加速器の前部不規則区間は、一般に「バンチャー」と呼ばれる。バンチャーは、その次に「加速器」と呼ばれる線形加速器構造の規則的な周期的部分に入る、相対論的な電子ビームを形成する役割を担う。「加速器」では、電子の速度はほぼ変化しないが、それらは1MeVを超える高エネルギーに達して、N×10MeV以上の範囲(ここでNは整数1,2,・・・N)にまで及ぶ。
【0006】
バンチャーの効率を定義するために使用される重要なパラメータは「捕獲」と呼ばれ、加速場によって捕らえられて必要なエネルギーまで同期的に加速された粒子の、構造内に注入された粒子の総数に対するパーセンテージを表す。捕獲は、バンチャー内の加速場分布に非常に影響されやすい。線形加速器への入力RF電力を変えることによって、生成される放射線ビームの出力エネルギーを調整しようと試みる間に、バンチャー内の場の構造が変化し、加速経路内の電子ビーム流が、バンチャーにおける捕獲の劣化のために大幅に減少することによって、生成される放射線ビームの強度が減少する場合がある。
【0007】
線形加速器に沿って電力及び場の分布を最適化することなく、注入される電子ビームパルス流のスイッチングによって放射線ビームエネルギーを調整することについても同じことが当てはまる。最適化は、商業市場の大部分を占めるマグネトロン駆動線形加速器にとって特に重要である。最適化は、Xバンド電源で動作するように設計された高周波線形加速器にとって、いっそう重要である。Xバンド電源では、例えば、所与のタスクのための市販の最良のXバンドマグネトロンによって生成される入力RF電力の欠如が、全てではないにしても、ほとんどの場合に存在する(いわゆる「パワーハングリー」動作モード)。
【0008】
当技術分野で知られている定在波線形加速器の一例が図1に概略的に示されている。当該線形加速器は、RF構造設計に応じて様々な方法で連結された複数の単一RF空洞共振器(図示せず)を備える。RF電力は、マグネトロンまたはクライストロンなどのRF電源1によって供給される。RF電力は、RF送信導波管2及び高電力サーキュレータ3を通って、動作RF周波数での電力反射を最小にするために外部及び内部のRF回路のインピーダンスを整合するように構成された入力RF結合器4に伝搬する。高電力サーキュレータ5は、反射電力がRF源1に後進伝搬することを防止する。サーキュレータ5は、RF源1によって生成される、出力し得る最大電力に適合しているので、サーキュレータ5は、「低電力」サーキュレータではなく、「高電力」サーキュレータと呼ばれる。したがって、RF源1からのRF電力の大部分は線形加速器に入る。
【0009】
図1において、線形加速器は、連結した2つの単一RF構造、定在波バンチャー区間6(または「バンチャー6」)及び定在波加速器区間7(または「加速器7」)を有する。バンチャー区間6は、空洞共振器の並びを含み、それらは長さが異なっていて、隣接したセルの加速場の間の適切な位相シフトを維持し、徐々に増加する電子速度に対応する。電子の速さは、定在波バンチャー区間6において、相対論的な値(光の速さに近い)まで急速に増加する。加速器7では、電子の速さがほとんど一定になるので、全てのセルの長さは同じである。RF源は、当技術分野で知られているように、1つ以上の供給源(図示せず)によって給電される。
【0010】
入力RF結合器4の単一RF空洞も、線形加速器RF構造の一部である。定在波線形加速器の場合、入力RF結合器4は、線形加速器に沿ってどこにでも配置し得るが、通常、バンチャー5の後ろであって加速器7の前のどこかに配置される。図1の線形加速器では、バンチャー5、入力RF結合器4、及び加速器区間7が共に、線形加速器の単一RF結合加速器構造を提供する。RF源によって供給されるRF電力は、線形加速器構成及びそのRF特性に従って線形加速器空洞共振器の間に分布し、電子などの荷電粒子を加速するRF場分布を形成する。
【0011】
電子ビーム10は電子銃11内で形成される。電子銃11は、高電圧N×(1,2,3・・・100)kVの範囲で動作することができ、バンチャー6に入るのに十分小さい径を有した電子ビーム10を形成する。電子ビーム10は、バンチャー6と加速器区間7とからなる線形加速器空洞共振器のRF場中を伝搬しながらエネルギーを得る。電子ビーム10がRF加速構造を出た後、電子ビームは、電子ビーム用途の真空気密の薄箔を通して線形加速器の真空外囲器の外部に引き出されるか、または当技術分野で知られているように、電子ビームは重金属ターゲットに衝突して、制動放射(X線)を生成する。電子銃11は、当技術分野で知られているように、例えば、ダイオード電子銃または三極管電子銃であり得る。電子銃11は、当技術分野で知られているように、RF源または別の電源装置(図示せず)に電力を供給する同一の電源によって電力供給され得る。
【0012】
集束ソレノイドまたは周期永久磁石(「PPM」)システムなどの、オプションの外付けの磁気システム13が使用され得る。磁気システム13は、線形加速器の内部のビーム位置、または、電子ビーム窓または変換ターゲット12を介したその出口におけるビーム位置を補正するために、ステアリングコイル、偏向磁石などを含むこともある。外部集束システムの使用は、複雑さ及び電力消費を増加させ、またその結果として線形加速器システムのコストを増加させるので望ましくない。定在波線形加速器システムでは、磁気システム13の使用を回避することができる。対照的に、進行波線形加速器では、磁気システム13が、大抵の場合、特に線形加速器のバンチャー部分向けに提供される。
【0013】
RF源1からの単一のRF給電口を有する図1の定在波線形加速器のエネルギーを調整するために、線形加速器RF構造内の場の振幅を、ビームローディングを変えることによって、または入力電力の調整を変えることによって、変更することができる。性能の分析を図2に示す。図2は、電子ビームエネルギー対ピーク電子ビーム電流(下軸)と負荷線及び線量率(上軸)とのグラフである。図2は、一次近似での理論的な線形加速器の負荷線(四角形)(エネルギー、MeV)の、ビーム力学のParmelaシミュレーションに基づく補正済みの負荷線(菱形)に対する変化を示す。外部磁気集束場は設けられていない。また図2のグラフは、一次線形負荷線に基づく対応する線量率曲線(それぞれX及び三角)(1mでの線量率、R/分)と、Parmela計算(Parmela/線量)に基づく負荷線に対応する他の線量率曲線(または関数)とを示す。出力放射線ビーム特性に対するビーム力学の影響は明らかである。
【0014】
複雑さ及びコストが低減された線形加速器が一般に好ましい。外付けの集束の使用を避けるために、定在波型の線形加速器を設計する方が、そのような集束を行わない進行波型の線形加速器を設計するよりも、容易である。進行波線形加速器は、定在波線形加速器よりも一部優れた特性を提供するが、通常、集束ソレノイドが必要である。進行導波管の主要な挙動は、上述の定在波に対するものと同様である。
【0015】
線形加速器は、共通するRF電力不足のために、通常、最大最適出力エネルギーに近づくように設計され、線量率は、以下のような周知の経験的な比率によって定義されるその最大値である。
P=70×I×Wn (1)
ここで、
Pは、重金属変換ターゲットから1メートルでの制動放射線量率(R/分)であり、
Iはターゲットに当たる平均電子ビーム電流(mA)であり、Wは電子ビームエネルギー(MeV)であり、nはエネルギーによって変化するパラメータである(数MeVの範囲では約2.7)。
【0016】
広いエネルギー範囲の電子ビームを使用する線形加速器にとって、より低いエネルギーで捕獲及び効率を高めることが重要であり、それによって加速ビーム電流が増加し、放射線ビームの電子ビーム線量率が増加する。線形加速器が制動放射線を生成する変換ターゲットを備えている場合、変換線量率は、電流に比例し、エネルギーのほぼ3乗に比例する。したがって、線形加速器の、より高いビーム電流での低エネルギー動作がさらにいっそう重要になる。線形加速器が、最良の放射線ビーム出力を得るために所与のビーム電流で最大エネルギーのビームを提供するように設計されている場合、より低いエネルギーで効率的な動作を達成することは困難である。
【発明の概要】
【0017】
本発明の一実施形態によれば、ハイブリッド線形加速器は、エネルギー値の範囲にわたって出力ビームエのネルギー及び線量率を最適化するエネルギー及び線量の調整を伴う、同一直線上の定在波線形加速器区間及び進行波線形加速器区間を備える。実施形態には、RF導波管を介して、並列または直列に、正順序または逆順序で接続されたハイブリッド線形加速器が含まれ、線形加速器の区間の間でRF電力を転送して再分配し、及び/またはこれらの区間の間で位相シフトを変更するために、RFスイッチ、移相器、及び/または電力調整器を有している。別の実施形態では、RF負荷が、RFスイッチによって進行波区間の出力部に整合される。
【0018】
本発明の第1の実施形態によれば、ハイブリッド線形加速器は、荷電粒子の入力ビームを供給するように構成された荷電粒子源と、荷電粒子の入力ビームを受け入れるように構成されているとともに荷電粒子を加速して加速電子の中間ビームを形成するように構成された定在波線形加速器区間とを備える。進行波線形加速器区間が、加速電子の中間ビームを受け入れるように構成されているとともに、加速電子の運動量及びエネルギーをさらに増加させるように構成されている。進行波線形加速器区間は、荷電粒子の出力ビームを形成する。定在波線形加速器区間と進行波線形加速器区間との間にドリフト管が設けられている。ドリフト管は、中間ビームを定在波線形加速器区間から進行波線形加速器区間に通過させる経路を形成するように構成されているとともに、進行波線形加速器区間から定在波線形加速器区間をRF分離するように構成されている。ハイブリッド線形加速器は、進行波線形加速器区間にRF電力を供給して荷電粒子の中間ビームの運動量及びエネルギーをさらに増加させるように構成されたRF源をさらに備える。進行波線形加速器区間の出力部に結合された入力部と、定在波線形加速器区間の入力部に結合された出力部とを有した導波管が設けられている。進行波線形加速器区間に減衰後に残存しているRF電力が、定在波線形加速器区間に送り込まれて荷電粒子を加速させる。
【0019】
ハイブリッド線形加速器は、定在波線形加速器区間に供給されるRF電力の電力及び/または位相を変更するために、RFスイッチ、RF移相器、及び/またはRF電力調整器を導波管に沿ってさらに備えてよい。RFスイッチ、RF移相器、及び/またはRF電力調整器は、約0.5MeVから最大線形加速器エネルギーまでのエネルギー調整をもたらすように構成され得る。
【0020】
定在波線形加速器区間は、例えば、バンチャーの形態で構成され得る。荷電粒子源は、例えば、電子の入力ビームを供給するように構成された電子銃を備えることができる。定在波線形加速器と協働する第1の外部磁気システム、及び/または進行波線形加速器区間と協働する第2の外部磁気システムを設けてもよい。
【0021】
本実施形態によるハイブリッド線形加速器は、RF源から進行波線形加速器区間にRF電力を供給するように構成された、RF源と進行波線形加速器区間との間の第2のRF導波管をさらに備えることができる。第2のRF導波管の途中に高電力サーキュレータを設けて、反射されたRF電力がRF源に後進伝搬することを防止することができ、及び/または第1のRF導波管の途中に低電力サーキュレータを設けて、反射されたRF電力が進行波加速器区間に後進伝搬することを防止することができる。進行波線形加速器の出力部の下流に、荷電粒子ビーム窓か、または制動放射線を生成する変換ターゲットを設けることができる。
【0022】
本発明の第2の実施形態によれば、荷電粒子源と、電子の入力ビームを受け入れ、荷電粒子を加速して加速荷電粒子の中間ビームを形成するように構成された定在波線形加速器区間とを備えたハイブリッド線形加速器が開示される。ハイブリッド線形加速器は、加速荷電粒子の中間ビームを受け入れるように構成されているとともに加速電子の運動量及びエネルギーをさらに増加させるように構成された進行波線形加速器区間をさらに備える。進行波線形加速器区間は、荷電粒子の出力ビームを形成する。定在波線形加速器区間と進行波線形加速器区間との間にドリフト管を設けて、定在波線形加速器区間と進行波線形加速器区間との間のRF分離をもたらすと同時に、加速電子の中間ビームの、定在波線形加速器区間から進行波線形加速器区間への通過をも可能にする。ハイブリッド線形加速器は、RF電源と、RF電源からRF電力を受け入れるように構成されているとともに、RF電力を、定在波加速器区間に供給されるRF電力の第1の部分と進行波加速器区間に供給されるRF電力の第2の部分とに分岐させるように構成されたRF分配器とをさらに備える。
【0023】
本実施形態によるハイブリッド線形加速器は、進行波線形加速器区間によって使用されないRF電力を、定在波線形加速器区間に送り込むように構成された、及び/または定在波線形加速器と進行波線形加速器区間との間の位相関係を変更するように構成された、RFスイッチ、RF移相器、及びRF電力調整器の少なくとも1つをさらに備える。RFスイッチ、RF移相器、及び/またはRF電力調整器は、約0.5MeVから最大線形加速器エネルギーまでのエネルギー調整をもたらすように構成され得る。
【0024】
定在波線形加速器区間は、例えば、バンチャーの形態で構成され得る。荷電粒子源は、例えば、電子の入力ビームを供給するように構成された電子銃を備え得る。定在波線形加速器と協働する第1の外部磁気システム、及び/または進行波線形加速器区間と協働する第2の外部磁気システムを設けることもできる。進行波線形加速器の出力部の下流に、荷電粒子ビーム窓か、または制動放射線を生成する変換ターゲットを設けることができる。
【0025】
本発明の本実施形態によるハイブリッド線形加速器は、RF源とRF分配器との間にRF導波管をさらに備えることができる。RF導波管は、RF分配器にRF電力を供給するように構成されており、RF導波管の途中に高電力サーキュレータをさらに設けて、反射されたRF電力がRF源に後進伝搬することを防止する。
【0026】
本実施形態によるハイブリッド線形加速器は、進行波加速器に結合されている整合されたRF負荷をさらに備えて、進行波線形加速器区間に加速後に残存しているRF電力を吸収することができる。荷電粒子窓か、または制動放射線を生成する変換ターゲットを設けることもできる。
【0027】
本発明の第3の実施形態によれば、電子の入力ビームを供給するように構成された荷電粒子源と、荷電粒子の入力ビームを受け入れて荷電粒子を加速し、加速荷電粒子の中間ビームを形成するように構成された定在波線形加速器区間と備えたハイブリッド線形加速器が開示される。加速荷電粒子の中間ビームを受け入れるように構成されているとともに加速荷電粒子の運動量及びエネルギーをさらに増加させるように構成された進行波線形加速器区も、設けられている。進行波線形加速器区間は、出力部を有している。定在波線形加速器と進行波線形加速器区間との間のRF結合をもたらすように構成されたRF結合器が、定在波線形加速器区間から進行波線形加速器区間への加速電子の中間ビームの通過を可能にするように設けられている。ハイブリッド線形加速器は、RF結合器と協働するRF導波管を介して、定在波線形加速器区間と進行波加速器区間との両方にRF電力を供給するように構成されたRF源をさらに備える。進行波線形加速器区間の出力部と協働するRF負荷が設けられている。進行波線形加速器に減衰後に残存している電力を吸収する、RF負荷を進行波線形加速器区間から出力されたRF電力に整合させるRFスイッチが、RF結合器とRF負荷との間に設けられている。RFスイッチは、例えば、約0.5MeVから最大線形加速器エネルギーまでのエネルギー調整をもたらすように構成され得る。
【0028】
定在波線形加速器区間は、例えば、バンチャーの形態で構成され得る。荷電粒子源は、例えば、電子の入力ビームを供給するように構成された電子銃を備えることができる。定在波線形加速器と協働する第1の外部磁気システム、及び/または進行波線形加速器区間と協働する第2の外部磁気システムを設けてもよい。
【0029】
RF源とRF結合器との間にRF導波管を設けることができ、またRF導波管の途中に高電力サーキュレータを設けて、反射されたRF電力がRF源に戻って伝搬することを防止することができる。荷電粒子窓か、または制動放射線を生成する変換ターゲットを設けることもできる。
【0030】
本発明の別の実施形態によれば、定在波線形加速器区間と、定在波区間に続く進行波線形加速器区間とを備えたハイブリッド線形加速器によって荷電粒子を加速する方法であって、定在波線形加速器区間に荷電粒子を供給すること、及びハイブリッド線形加速器にRF電力を供給して、定在波線形加速器区間と進行波線形加速器区間とによって荷電粒子の加速を引き起こすことを含む方法が開示される。本方法は、進行波区間に減衰後に残存している吸収RF電力におけるRF電力の電力及び/または位相を、調整可能な共振負荷によって調整することをさらに含む。
【0031】
一例では、本方法は、RF電力源によって進行波線形加速器区間にRF電力を供給すること、及び進行波区間に減衰後に残存しているRF電力を、定在波区間に供給することをさらに含む。荷電粒子は、定在波区間に供給されたRF電力によって、定在波線形加速器区間で加速される。RF電力及び/または位相は、RFスイッチ、RF移相器、及び/またはRF電力調整器によって変更することができる。
【0032】
別の例では、本方法は、電源から定在波線形加速器区間及び進行波線形加速器区間にRF電力を供給することをさらに含む。進行波線形加速器区間によって使用されないRF電力を定在波線形加速器区間に送り込み、及び/または定在波区間と進行波区間との間の位相関係を変更する。
【0033】
本発明の実施形態のハイブリッド線形加速器は、例えば、セキュリティ及び取引マニフェスト検証(ひとまとめにセキュリティ検査と呼ばれる)のための車両スクリーニング及び様々な積み荷のスクリーニングと、非破壊検査(NDT)と、放射線療法(RT)とに使用することができる。本発明の実施形態は、例えば、様々な厚さ及び形状の物体の電子ビーム照射や、複合材料の硬化、及び電子ビーム滅菌のためなど、他の用途に使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】従来の定在波線形加速器の一例の概略図である。
図2】非適合標準単一区間線形加速器におけるビーム力学及び対応する線量率プロットのParmelaシミュレーションに基づく補正バージョンと比較した線形加速器負荷線に対する変化を示す電子ビームエネルギー対ピーク電子ビーム電流のグラフである。
図3】進行波線形加速器区間に減衰後に残存しているRF電力が、ハイブリッド線形加速器の定在波区間に供給される、本発明の第1の実施形態のハイブリッド線形加速器の一例の概略図である。
図4】本発明の第2の実施形態による、並列RF給電口を備えたハイブリッド線形加速器の概略図である。
図5】本発明の第3の実施形態による、単一RF給電口を備えたハイブリッド線形加速器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図3は、本発明の一実施形態によるハイブリッド線形加速器システム100の一例の概略図である。ハイブリッド線形加速器システム100は、定在波線形加速器区間110及び進行波線形加速区間120を有する線形加速器105を備える。図1に関して上に述べたように、また当技術分野で知られているように、線形加速器105は、RF電力が伝搬して電子などの荷電粒子を加速する空洞共振器またはセル(図示せず)を備える。本例の定在波線形加速器区間110は、バンチャーとなるように構成されているが、それは必須ではない。本例では、定在波線形加速器区間110を、本明細書では「バンチャー区間110」とも称し、進行波線形加速区間120を「進行波区間120」とも称する。
【0036】
荷電粒子源140は、荷電粒子ビーム145を定在波線形加速器区間110に注入するために設けられている。荷電粒子は電子である場合があり、荷電粒子源130は、例えば図1に関して上に述べたように、電子銃であり得る。電子銃140は、三極管、ダイオード、または他の任意の種類の電子銃であり得る。以下の議論では電子銃130に言及するが、他の種類の荷電粒子が、他の種類の荷電粒子源によって定在波バンチャー区間110に注入されてもよく、ハイブリッド線形加速器100システムによって加速され得ることが理解される。
【0037】
バンチャー区間110と進行波区間120とは、加速された荷電粒子がバンチャー区間110から進行波区間120へ通過する経路を形成するドリフト管125によって、互いに接続されている。バンチャー区間110の出力部は、第1のRF結合器130によって、ドリフト管115の入力部に結合されている。ドリフト管115の出力部は、第2のRF結合器135を介して、進行波区間120の入力部に結合されている。ドリフト管125は、当技術分野で知られているように、バンチャー区間110を進行波線形加速器区間120からRF分離するように構成されている。
【0038】
本発明の本実施形態によれば、RF源150は、導波管160を介して、進行波区間120の空洞共振器にRF電力を供給する。本例では、選択できるものではあるが、RF電力は、RF源150によって定在波線形加速器区間110に供給されない。第2のRF結合器135は、導波管160を進行波区間120の内部に結合して、当該進行波区間の空洞共振器の内部を通してRF電力を伝搬させる。RF源150及び電子銃140は、当技術分野で知られているように、1つ以上の電源(図示せず)によって電力が供給される。
【0039】
RF電源150は、定常状態モードにおいて分離デバイス無しで、進行波入力RF結合器135にRF電力をもたらすことができるが、高電力サーキュレータ160が、導波管160に沿って、RF電源150と第2のRF結合器135との間に設けられてもよい。高電力サーキュレータ160は、伝搬するRF電力がその最高値にあるRF電力源に、またはRF電力源に近接して、設けられてよい。
【0040】
進行波区間120の出力部に、第3のRF結合器170が設けられている。図1に関して上に述べたように、加速された荷電粒子、例えば電子は、荷電粒子ビーム窓または変換ターゲット180に向かって、第3のRF結合器170の第1出力部を通過する。
【0041】
線形加速器システム100のこの部分の動作中、例えば電子ビーム145は、n×10KeVに形成され得る。電子ビーム145はバンチャー区間110のRF構造内に注入され、そこで電子束が形成され、加速されて、電子ビームエネルギーをMeV範囲、典型的には約1MeVに至らせる。これにより集群化がほとんど完了することができるようにし、電子ビーム145は、ほぼ十分に相対論的になり、典型的には、光の速さの約0.85倍から約0.95倍までになる。その次に本例では、電子ビーム145は、進行波区間120(または、進行波区間120と同一線上にさらなる進行波区間が設けられている場合には、複数の進行波区間)に入り、例えば4MeVから12MeVなどの、より高い出力エネルギーにまで加速される。電子ビーム145内の電子は、より低いエネルギーまたはより高いエネルギーに加速され得る。一例では、加速された電子ビーム145は、制動放射変換ターゲット180に衝突して、X線を生成する。別の例では、加速された電子ビーム145は、薄い金属箔などの出力窓180を通過し、加速器の真空外囲器から空気、または、当技術分野で知られているように、異なる気体もしくは液体、水などの異なる環境に出る。
【0042】
線形加速器システム100の説明を続けると、第1のRF結合器130、第2のRF結合器135及び第3のRF結合器170は、公称のエネルギー及びビーム電流値で動作している間、動作RF周波数での電力反射を最小にするために、外部RF回路及び内部RF回路のインピーダンスに整合させるように構成されている。さらに、本例の高電力サーキュレータ160は、反射電力がRF源150に後進伝搬することを防止する。したがって、RF電源150からのRF電力の大部分または全部が、第2のRF結合器135に入り、進行波線形加速器区間120内を伝搬して、加速進行波場分布を形成し、電力を電子ビームに移す。
【0043】
本発明の本実施形態によれば、第3のRF結合器170は、第2のRF導波路190の入力部に接続された第2の出力部を有する。第2のRF導波路190の出力部は、第1のRF結合器130の第2の入力部に接続されている。進行波線形加速器区間と電子加速とを経て伝搬した後に残存するRF電力は、第3の入力結合器170及び導波管190を通って、バンチャー区間110に伝搬する。バンチャー区間110は、進行波線形加速器区間120から出てくる残存電力を吸収するために、線形加速器で共通に使用されている余分なRF負荷を置き換えるか、または過剰にして、線形加速器効率を実質的に増加させることができる。
【0044】
進行波線形加速器区間120によって出力される加速された電子ビーム145またはシステム100によって生成される制動放射線のエネルギー及び/または線量を変化させるために、図3のブロック200によって示されるRFスイッチ、RF移相器、及び/またはRF電力調整器を、第2のRF導波管190に沿って設けて、バンチャー区間110に向かって伝搬するRF電力の電力及び/または位相を調整することができる。1つ以上のRFスイッチ、RF位相調整器、及び/またはRF電力調整器を設けることができる。導波管190と、RFスイッチ、移相器、及び/または電力調整器200は、逆供給シーケンス(RFS)を形成して、進行波区間120内の減衰後及び電子ビーム加速後に残存しているRF電力をバンチャー区間110に供給し、線形加速器100の効率を向上させる。スイッチ、移相器、及び/または電力調整器は、線形加速器105の真空外囲器の外側にある。
【0045】
定在波区間110に供給されるRF電力の電力/位相比は、RFスイッチ、RF移相器、及び/またはRF電力調整器200によって変更されて、加速された電子ビーム145またはシステム100によって生成される制動放射線の所望のエネルギー、線量、及び/または他の出力特性を達成することができる。図4及び図5と共に後述する本発明の本実施形態及び他の実施形態におけるRFスイッチ、RF移相器及び/またはRF電力調整器200の使用は、当技術分野で知られている方法でビーム電流及び/または入力電力の調整と併用され、加速器によって出力される放射線ビームまたは電子ビームの特性をさらに最適化することができる。線形加速器システム100の動作領域内のエネルギー/線量の設定を含み得る広範な電子エネルギー調整や、動作領域内の走査手順中に、2つ以上のエネルギー及び/または線量の間でエネルギー/線量を切り替えることを提供することができる。線形加速器システム100の動作領域は、広範囲の入力RF電力と入力電子ビーム電流強度とを伴う、例えば、約0.5MeVから最大線形加速器エネルギー、例えば7MeVなどとすることができる。最大エネルギーレベルが高い領域及び/または最小エネルギーレベルが低い領域など、様々な動作領域を提供することができる。
【0046】
RFスイッチ及び/またはRF移相器が低速デバイスまたは高速デバイスである場合、電子ビームまたはX線は、それぞれ、1つのエネルギー/線量レベルからの変動の時間が、パルス長及び/またはパルス繰返し周期よりも実質的に長いとき、動作中に「ゆっくり」切り替えることができ、または例えば、パルス内での変動、ならびにパルス間のエネルギー及び線量のスイッチング(総称して「高速スイッチング」と呼ばれる)による変動を含む、パルス長及び/またはパルス繰返し期間に相当する時間内などで、「速く」切り替えることができる。ブロック200のRFスイッチ、RF移相器、及び/またはRF電力調整器の動作と構成とを制御して、所望のエネルギー/線量を設定するか、または動作中に所望のエネルギー/線量の間を切り替える適切な制御を提供することができる。
【0047】
ブロック200で使用することができる適切なRFスイッチ、RF移相器、及びRF電力調整器は市販されている。RFスイッチは、例えば、オン/オフ動作のRFスイッチか、またはそれ自体で、もしくはRF移相器及び/またはRF電力調整器と連動して、エネルギーレベルまたは位相レベルの間を切り替えるRFスイッチとすることができる。高速デバイス及び低速デバイスの両方をブロック200に設けて、汎用性を持たせることができる。ブロック200のスイッチは、当技術分野で知られているガス充填スイッチ、フェライトスイッチまたは他のRFスイッチであってよい。使用され得る高速フェライトスイッチの一例がG.S. Uebele, “High−Speed ferrite microwave switch, 1957 IRE National Connection Record, Vol. 5, pt. 7, pp. 227−234、Proceedings IRE Transaction on Microwave Theory and Techniques, January 1959, pp. 73−82に記載されている。ブロック200の移相器は、高速移相器及び/または低速移相器を含み得る。適切な高速移相器は、例えば、Ampas GmBH, Grosserlach, Germanyから得ることができる。
【0048】
バンチャー区間110から反射されたRF電力が、進行波線形加速器区間120に後進伝搬するのを防止するために、例えばバンチャー区間100とブロック200との間に、導波管190に沿って、低電力サーキュレータ220が設けられ得る。サーキュレータ220は、この箇所のRF電力が、一部の反射と、進行波線形加速器120での減衰と、電子ビームによって消費される電力とに起因して、RF源によって供給されるRF電力よりもはるかに低いので、「低電力」サーキュレータと呼ばれる。
【0049】
外部の集束ソレノイドまたは周期永久磁石(「PPM」)システムなどの磁気システム220は、電子ビーム145がバンチャー区間110及び/または進行波区間120を通過する際に電子ビーム145を集束させるために、バンチャー区間110及び/または進行波区間120に近接して、かつバンチャー区間110及び/または進行波区間120と協働する状態に、任意選択的に設けられる。磁気システム200は、電流伝送のわずかな改善しかもたらさず、ハイブリッド線形加速器システム100と本明細書に記載されたハイブリッド線形加速器システムの他の例との、複雑さ、電力消費、従ってコストを増加させるので、省くことができる。いくつかの具体的な例のシミュレーションは、外部集束システム200を使用すると電流伝送を約20%だけ改善することを実証した。RF場は、進行波区間120に電子ビームを集束して移動させるように、バンチャー区間110及び/または進行波区間120で利用されてもよく、それによって外部磁気集束システム13を使用しないようにする。
【0050】
定在波区間と進行波区間とのこの組合せは、両方のいくつかの有利な点を活かす。例えば、線形加速器の主な動作周波数が定在波バンチャー区間110によって大きく規定される一方で、進行波線形加速器区間120はより広帯域であり、定在波バンチャー区間の必要な共振周波数に容易に合わせられる。したがって、自動周波数制御(AFC)は、定在波線形加速器にとって共通のバンチャー区間110に基づいてもよい。AFCが進行波区間120のみに基づいている場合、AFCは、線形加速器の安定した動作を保証するために、さらに複雑である必要がある。加えて、定在波バンチャー区間110は、相対論的速度に達しつつも、電子ビームの効果的なRF集束を可能にし、上記の一切の外部磁気システム無しで、進行波区間120でのさらなる加速を利用することもできる。
【0051】
図3の実施形態の設計例を、例えばL−3 Electron Devices, San Carlos, Californiaによって製造されたPM−1110X Xバンドマグネトロンを用いて9300MHzで探ると、60cm長のハイブリッドRF構造の設計パラメータは、同様の特性を有する既存の非ハイブリッド構成よりも優れていることが判明した。ハイブリッドRF構造は、1MeVから7MeVの広いエネルギー範囲のエネルギーで安定したビームを送り出し、1mでの最大出力線量率が1100R/分であり、これは80cmで1700R/分超に相当する。その一方で、1mで数十R/分と評価される、低エネルギーでのかなりの線量率を出力する。記録的に高い放射線ビーム特性を有するこのような小型の線形加速器システムは、例えば非破壊試験(NDT)、保安検査(SI)、放射線治療(RT)などの多くの分野において有用であり得る。
【0052】
図4は、並列RF給電口を備えた、本発明の第2の実施形態によるハイブリッド線形加速器の一例の概略図である。図3と共通の要素には同様の番号が付されている。本発明の本実施形態の動作及び能力は、本明細書で述べることを除いては、図3の実施形態と同じである。
【0053】
本例では、バンチャー区間110及び進行波区間120は、図3の場合と同じく、ドリフト管125によって分離されている。RF源150は、RF送信導波管160を通して、高電力サーキュレータ165経由でRF電力を供給し、その次にRF分配器310によって分割される。RF分配器310の分割比によって決定されたRF電力の一部は、RF分配器の第1のアーム315を通って、バンチャー区間110の出力部の第1のRF結合器320に送られる。残りの電力は、RF分配器310の第2のアーム330を通って、図3の実施形態で使用されるブロック200と同一または同様であり得る、RFスイッチ、RF移相器、及び/またはRF電力調整器340を経て、第2の入力RF結合器135に送られる。
【0054】
RFスイッチ、RF移相器、及び/またはRF電力調整器340は、RF分配器310を介して、バンチャー区間110と進行波区間120との間でRF電力を再分配する。バンチャー区間110に再分配されるRF電力のRFエネルギー及び/または位相は、進行波線形加速器区間120によって出力される電子の中間ビームのエネルギー及び/または線量を設定または変更するように変化させることができる。RFスイッチ、RF移相器、及び/またはRF電力調整器340は、バンチャー区間と進行波区間との間の位相関係を変化させるように構成してもよく、進行波線形加速器区間120によって出力される電子の中間ビームのエネルギー及び/または線量を設定または変更することもできる。これによって、電子出力ビームの広い範囲でのエネルギー調整が提供される。上記の通り、RFスイッチ、RF位相調整器、及び/またはRF電力調整器は、線形加速器105の真空外囲器の外側にある。
【0055】
図4の実施形態では、進行波加速器区間120に減衰後に残存しているRF電力を吸収するために、整合されたRF負荷350が設けられている。進行波区間120内の残りのRF電力は、進行波区間の出力部でRF結合器170を介して整合されたRF負荷350に結合される。
【0056】
図4の実施形態は、残りのRF電力が利用されないので、図3の実施形態ほど効率的でない可能性がある。上記の通り、例えば約0.5MeVから最大線形加速器エネルギーまでの広範な電子エネルギー調整を、広範囲の入力RF電力で動作しつつも達成することができ、それによって高効率で、様々な入力電子ビーム電流強度で、効率的に動作することができる。
【0057】
図5は、本発明の第3の実施形態によるハイブリッド線形加速器400の一例の概略図である。図3と共通の要素には同様の番号が付されている。本発明の本実施形態の動作及び能力は、本明細書で述べることを除いては、図3の実施形態と同じである。
【0058】
入力RF結合器410は、定在波バンチャー区間110及び進行波線形加速器区間120の両方に対する結合した単一のRF電力入力として機能する。本実施形態では、バンチャー区間110と進行波区間120との間にドリフト管を設けていない。
【0059】
進行波区間120のRF出力部に、RFスイッチ420が、RF結合器430の後に設けられ得る。例えば、上述のRFスイッチを、ここで使用してもよい。
【0060】
図4と同様に、進行波区間120における加速後に残存しているRF電力を吸収するために、放射線ビームパラメータRFスイッチ420の後に、整合されたRF負荷350が設けられる。上記の通り、例えば約0.5MeVから最大線形加速器エネルギーまでの広範な電子エネルギー調整を、広範囲の入力RF電力で動作しつつも達成することができ、それによって高効率で、様々な入力電子ビーム電流強度で、効率的に動作することができる。
【0061】
上記の例では、1つの定在波線形加速器(バンチャー)区間110と、1つの進行波線形加速器区間120とが示されているが、さらなる定在波区間及び/または進行波区間を設けてもよい。さらなる定在波区間を設ける場合、一例では、第1の定在波区間のみをバンチャーとなるように構成する。
【0062】
上述の実施形態において、線形加速器制御装置及び/または変調器(図示せず)は、線形加速器の、そのパラメータの広い範囲での最適化を支援するために、電子ビーム電流及び/または入力RF電力を調整する補足的な方法を提供してもよいし、しなくてもよい。
【0063】
特許請求された本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、他の変更及び実施を当業者なら思いつくであろう。したがって、上記の説明は、以下の特許請求の範囲に示すものを別にすれば、本発明を限定することを意図するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2018年9月28日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子の入力ビームを供給するように構成された荷電粒子源と、
荷電粒子の前記入力ビームを受け入れて前記荷電粒子を加速するように構成された定在波線形加速器区間であって、加速電子の中間ビームを形成する前記定在波線形加速器区間と、
加速電子の前記中間ビームを受け入れるように構成されているとともに加速電子の前記中間ビームの運動量及びエネルギーをさらに増加させるように構成された進行波線形加速器区間であって、荷電粒子の出力ビームを形成する前記進行波線形加速器区間と、
前記中間ビームを前記定在波線形加速器区間から前記進行波線形加速器区間に通過させる経路を形成するように構成されたドリフト管であって、前記進行波線形加速器区間から前記定在波線形加速器区間をRF分離して、前記中間ビームの前記運動量及びエネルギーをさらに増加させるように構成された前記ドリフト管と、
前記進行波線形加速器区間にRF電力を供給するように構成されたRF源と、
前記進行波線形加速器区間の出力部に結合された入力部と、前記定在波線形加速器区間の入力部に結合された出力部とを有した第1のRF導波管とを備え、
前記進行波線形加速器区間に減衰後に残存しているRF電力が、前記定在波線形加速器区間に送り込まれて、前記荷電粒子を加速させる、ハイブリッド線形加速器。
【請求項2】
前記定在波線形加速器区間に供給される前記RF電力の電力及び/または位相を変更するために、スイッチ、移相器、及び/または電力調整器を前記第1のRF導波管に沿ってさらに備える、請求項1に記載のハイブリッド線形加速器。
【請求項3】
前記移相器、及び/または前記電力調整器が、約0.5MeVから最大線形加速器エネルギーまでの電子の前記出力ビームのエネルギー調整をもたらすように構成された、請求項2に記載のハイブリッド線形加速器。
【請求項4】
前記定在波線形加速器区間がバンチャーの形態で構成された、請求項1に記載のハイブリッド線形加速器。
【請求項5】
前記荷電粒子源が、電子の入力ビームを供給するように構成された電子銃を備える、請求項1に記載のハイブリッド線形加速器。
【請求項6】
前記定在波線形加速器区間と協働する第1の外部磁気システム、及び/または
前記進行波線形加速器区間と協働する第2の外部磁気システムをさらに備える、請求項1に記載のハイブリッド線形加速器。
【請求項7】
前記RF源から前記進行波線形加速器区間にRF電力を供給するように構成された、前記RF源と進行波線形加速器区間との間の第2のRF導波管、及び
反射されたRF電力が前記RF源に後進伝搬することを防止する、前記第2のRF導波管の途中の高電力サーキュレータ、及び/または
反射されたRF電力が前記進行波線形加速器区間に後進伝搬することを防止する、前記第1のRF導波管の途中の低電力サーキュレータをさらに備える、請求項1に記載のハイブリッド線形加速器。
【請求項8】
荷電粒子ビーム窓と、制動放射線を生成する変換ターゲットとの少なくとも一方をさらに備える、請求項1に記載のハイブリッド線形加速器。
【請求項9】
荷電粒子源と、
電子の前記入力ビームを受け入れて前記荷電粒子を加速するように構成された定在波線形加速器区間であって、加速荷電粒子の中間ビームを形成する前記定在波線形加速器区間と、
加速荷電粒子の前記中間ビームを受け入れるように構成されているとともに前記加速電子の運動量及びエネルギーをさらに増加させるように構成された進行波線形加速器区間であって、荷電粒子の出力ビームを形成する前記進行波線形加速器区間と、
前記定在波線形加速器区間と前記進行波線形加速器区間との間のRF分離をもたらすと同時に、前記定在波線形加速器区間から前記進行波線形加速器区間への加速電子の前記中間ビームの通過をも可能にするように構成されたドリフト管と、
RF電源と、
前記RF電源からRF電力を受け入れるように構成されているとともに、前記RF電力を、前記定在波線形加速器区間に供給されるRF電力の第1の部分と、前記進行波線形加速器区間に供給されるRF電力の第2の部分とに分岐させるように構成されたRF分配器とを備える、ハイブリッド線形加速器。
【請求項10】
前記進行波線形加速器区間と前記RF分配器との間にRFスイッチ、RF移相器、及びRF電力調整器をさらに備え、前記RFスイッチ、前記RF移相器、及び前記RF電力調整器が、前記進行波線形加速器区間によって使用されないRF電力を前記定在波線形加速器区間に送り込むように構成された、及び/または前記定在波線形加速器区間と前記進行波線形加速器区間との間の位相関係を変更するように構成された、請求項9に記載のハイブリッド線形加速器。
【請求項11】
前記スイッチ、前記移相器、及び/または前記電力調整器が、約0.5MeVから最大線形加速器エネルギーまでのエネルギー調整をもたらすように構成された、請求項10に記載のハイブリッド線形加速器。
【請求項12】
前記定在波線形加速器区間がバンチャーの形態で構成された、請求項9に記載のハイブリッド線形加速器。
【請求項13】
前記荷電粒子源が、電子の入力ビームを供給するように構成された電子銃を備える、請求項9に記載のハイブリッド線形加速器。
【請求項14】
前記定在波線形加速器区間と協働する第1の外部磁気システム、及び/または
前記進行波線形加速器区間と協働する第2の外部磁気システムをさらに備える、請求項9に記載のハイブリッド線形加速器。
【請求項15】
前記RF分配器にRF電力を供給する、前記RF源と前記RF分配器との間のRF導波管、及び
反射されたRF電力が前記RF源に後進伝搬することを防止する、前記RF導波管の途中の高電力サーキュレータをさらに備える、請求項9に記載のハイブリッド線形加速器。
【請求項16】
前記進行波線形加速器区間に加速後に残存しているRF電力を吸収する、前記進行波線形加速器区間に結合されている整合されたRF負荷をさらに備える、請求項9に記載のハイブリッド線形加速器。
【請求項17】
荷電粒子ビーム窓と、制動放射線を生成する変換ターゲットとの少なくとも一方をさらに備える、請求項9に記載のハイブリッド線形加速器。
【請求項18】
電子の入力ビームを供給するように構成された荷電粒子源と、
荷電粒子の前記入力ビームを受け入れて前記荷電粒子を加速するように構成された定在波線形加速器区間であって、加速荷電粒子の中間ビームを形成する前記定在波線形加速器区間と、
加速荷電粒子の前記中間ビームを受け入れるように構成されているとともに前記加速荷電粒子の運動量及びエネルギーをさらに増加させるように構成された進行波線形加速器区間であって、出力部を有した前記進行波線形加速器区間と、
前記定在波線形加速器区間と前記進行波線形加速器区間との間のRF結合をもたらすように構成されているとともに前記定在波線形加速器区間から前記進行波線形加速器区間への加速電子の前記中間ビームの通過を可能にするように構成されたRF結合器と、
前記RF結合器と協働するRF導波管を介して、前記定在波線形加速器区間と前記進行波線形加速器区間との両方にRF電力を供給するように構成されたRF源と、
前記進行波線形加速器区間の前記出力部と協働するRF負荷と、
前記進行波線形加速器区間によって出力された前記RF電力に前記RF負荷を整合させて前記進行波線形加速器区間に減衰後に残存している電力を吸収するように構成されたRFスイッチとを備える、ハイブリッド線形加速器。
【請求項19】
前記定在波線形加速器区間がバンチャーの形態で構成された、請求項18に記載のハイブリッド線形加速器。
【請求項20】
前記荷電粒子源が、電子の入力ビームを供給するように構成された電子銃を備える、請求項18に記載のハイブリッド線形加速器。
【請求項21】
前記定在波線形加速器区間と協働する第1の外部磁気システム、及び/または
前記進行波線形加速器区間と協働する第2の磁気システムをさらに備える、請求項18に記載のハイブリッド線形加速器。
【請求項22】
前記RF源と前記RF結合器との間のRF導波管、及び
反射されたRF電力が前記RF源に後進伝搬することを防止する、前記RF導波管の途中の高電力サーキュレータをさらに備える、請求項18に記載のハイブリッド線形加速器。
【請求項23】
電子の前記出力ビームのエネルギー制御が、約0.5MeVから最大線形加速器エネルギーまでのエネルギー調整をもたらす、請求項18に記載のハイブリッド線形加速器。
【請求項24】
荷電粒子ビーム窓と、制動放射線を生成する変換ターゲットとの少なくとも一方をさらに備える、請求項18に記載のハイブリッド線形加速器。
【請求項25】
定在波線形加速器区間と、前記定在波線形加速器区間に続く進行波線形加速器区間とを備えたハイブリッド線形加速器によって荷電粒子を加速する方法であって、
前記定在波線形加速器区間に荷電粒子を供給すること、
前記ハイブリッド線形加速器にRF電力を供給して、前記定在波線形加速器区間と前記進行波線形加速器区間とによって前記荷電粒子の加速を引き起こすこと、及び
前記ハイブリッド線形加速器の少なくとも一部におけるRF電力及び/または位相を調整して、前記進行波線形加速器区間によって出力される加速荷電粒子のビームのエネルギー及び/または線量を調整することを含む、前記方法。
【請求項26】
RF電源によって前記進行波線形加速器区間にRF電力を供給すること、
前記進行波区間に減衰後に残存している前記RF電力を前記定在波区間に供給すること、及び
前記定在波線形加速器区間の前記荷電粒子を、前記定在波線形加速器区間に供給された前記RF電力によって加速することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
RFスイッチ、RF移相器、及び/またはRF電力調整器によって前記定在波線形加速器区間に供給された前記RF電力及び/または前記RF電力の位相を調整して、前記進行波線形加速器区間によって出力された加速荷電粒子の前記ビームのエネルギー及び/または線量を調整する、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記ハイブリッド線形加速器にRF電力を供給することが、
前記定在波線形加速器区間及び前記進行波線形加速器区間に、RF電源からRF電力を供給すること、ならびに
前記進行波線形加速器区間に供給した前記RF電力及び/または前記RF電力の位相を調整して、前記進行波線形加速器区間によって出力される加速荷電粒子のビームのエネルギー及び/または線量を調整することを含む、請求項27に記載の方法。
【国際調査報告】