特表2019-513929(P2019-513929A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2019-513929風力タービン又は水力発電設備の発電機用の発電機ローター、並びに、これを備えた発電機、風力タービン及び水力発電設備
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-513929(P2019-513929A)
(43)【公表日】2019年5月30日
(54)【発明の名称】風力タービン又は水力発電設備の発電機用の発電機ローター、並びに、これを備えた発電機、風力タービン及び水力発電設備
(51)【国際特許分類】
   F03D 9/25 20160101AFI20190510BHJP
   F03D 15/20 20160101ALI20190510BHJP
   F03B 11/00 20060101ALI20190510BHJP
   H02K 7/18 20060101ALI20190510BHJP
【FI】
   F03D9/25
   F03D15/20
   F03B11/00 Z
   H02K7/18 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-549504(P2018-549504)
(86)(22)【出願日】2017年4月5日
(85)【翻訳文提出日】2018年11月19日
(86)【国際出願番号】EP2017058047
(87)【国際公開番号】WO2017178291
(87)【国際公開日】20171019
(31)【優先権主張番号】102016206179.8
(32)【優先日】2016年4月13日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】512197272
【氏名又は名称】ヴォッベン プロパティーズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】WOBBEN PROPERTIES GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】ベトヒャー ベルント
【テーマコード(参考)】
3H072
3H178
5H607
【Fターム(参考)】
3H072AA02
3H072BB02
3H072BB19
3H072CC00
3H178AA03
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB42
3H178BB62
3H178BB75
3H178DD12X
5H607BB02
5H607BB14
5H607CC01
5H607CC05
5H607FF26
(57)【要約】
本発明は、風力タービン又は水力発電設備の発電機、特に低速回転発電機用の発電機ローターに関する。本発明に従って、発電機ローターが、複数のポールシューを保持するローターベルトと、発電機ローターを、風力タービンの軸、特に主軸または伝動軸に固定するための、あるいは、水力発電設備の一定数のタービンブレードに固定するための、ハブフランジと、一方でローターベルトに対して、他方でハブフランジに対して、それぞれ非回転可能に接続されたキャリア構造体と、を備えており、ローターベルトが、第1の減衰度を有する金属製材料で構成されており、キャリア構造体とハブフランジの少なくとも一方が、第2の減衰度を有する材料で部分的に又は完全に構成されており、第2の減衰度が第1の減衰度よりも大きいことを提案する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力タービン(100)又は水力発電設備(200)の発電機(1)、特に低速回転発電機用の発電機ローター(5)であって、
複数のポールシューを保持するローターベルト(15)と、
前記発電機ローター(5)を、前記風力タービン(100)の軸、特に主軸または伝動軸に固定するための、あるいは、前記水力発電設備(200)の一定数のタービンブレードに固定するための、ハブフランジ(19)と、
一方で前記ローターベルト(15)に対して、他方で前記ハブフランジ(19)に対して、それぞれ非回転可能に接続されたキャリア構造体(17)と、
を備えており、
前記ローターベルト(15)が、第1の減衰度(D)を有する金属製材料で構成されており、前記キャリア構造体(17)と前記ハブフランジ(19)の少なくとも一方が、第2の減衰度(D)を有する材料で部分的に又は完全に構成されており、前記第2の減衰度(D)が前記第1の減衰度(D)よりも大きい、前記発電機ローター。
【請求項2】
前記第1の減衰度(D)が、D=0.002又はそれよりも小さい範囲内、望ましくはD=0.0015又はそれよりも小さい範囲内に在る、請求項1に記載の発電機ローター(5)。
【請求項3】
前記第2の減衰度が前記第1の減衰度のn倍であり、ここでnが2に等しい又はそれよりも大きい、請求項1又は2に記載の発電機ローター(5)。
【請求項4】
前記キャリア構造体(17)と前記ハブフランジ(19)の少なくとも一方が、次の材料、即ち、
コンクリート、
コンクリート複合材、特に鉄骨鉄筋コンクリート又は繊維補強コンクリート、
無垢木材、
合板、
積層木材、
ガラス繊維強化プラスチック、及び、
炭素繊維強化プラスチック
のうちの1つで部分的に又は完全に構成されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発電機ローター(5)。
【請求項5】
前記キャリア構造体(17)が環状に構成されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の発電機ローター(5)。
【請求項6】
前記キャリア構造体(17)が複数のセグメント(17a〜17f)から成る、請求項1〜5のいずれか一項に記載の発電機ローター(5)。
【請求項7】
分離間隙(23)が前記ローターベルト(15)と前記キャリア構造体(17)との間に設けられており、前記キャリア構造体(17)が、前記ローターベルト(15)に、前記分離間隙(23)に沿って、材料接着関係ではなく強制固定関係又は確動固定関係で、接続されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の発電機ローター(5)。
【請求項8】
分離間隙(23)が前記キャリア構造体(17)と前記ハブフランジ(19)との間に設けられており、前記キャリア構造体(17)が、前記ハブフランジ(19)に、前記分離間隙(23)に沿って、材料接着関係ではなく強制固定関係又は確動固定関係で、接続されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の発電機ローター(5)。
【請求項9】
前記分離間隙(23)が、前記第1の減衰度(D)よりも大きく、特に望ましくは前記第2の減衰度(D)に等しいかそれよりも大きい第3の減衰度(D)を備えた充填材料(33)で部分的に又は完全に充填されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の発電機ローター(5)。
【請求項10】
前記ローターベルト(15)及び/又は前記ハブフランジ(19)が鋼鉄製または鋼鉄合金製である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の発電機ローター(5)。
【請求項11】
風力タービン(100)又は水力発電設備の発電機(1)であって、
発電機ステーター(3)と、該発電機ステーター(3)に対して回転する発電機ローター(5)と、を備えており、
前記発電機ローター(5)が請求項1〜10のいずれか一項に記載されたものであることを特徴とする前記発電機。
【請求項12】
発電機(1)を備えた風力タービン(100)であって、
前記発電機(1)が、発電機ステーター(3)と、該発電機ステーター(3)に対して回転する発電機ローター(5)と、を備えており、
前記発電機ローター(5)が請求項1〜11のいずれか一項に記載されたものであることを特徴とする前記風力タービン。
【請求項13】
水力発電設備(200)であって、
流入口(213)と流出口(215)とを有する流路(212)と、
電気エネルギを生成する発電機(1)に動作可能に接続されており、前記流路内に配置されている水力タービン(211)と、
を備えており、
前記発電機が請求項1〜10のいずれか一項に記載の発電機ローター(5)を備えていることを特徴とする前記水力発電設備。
【請求項14】
風力タービン(100)又は水力発電設備(200)の発電機ローター(5)のハブフランジ(19)及び/又はキャリア構造体(17)用の材料としての、
コンクリート、
コンクリート複合材、特に鉄骨鉄筋コンクリート又は繊維補強コンクリート、
無垢木材、
合板、
積層木材、
ガラス繊維強化プラスチック、あるいは、
炭素繊維強化プラスチック
の使用。
【請求項15】
前記発電機ローター(5)が請求項1〜10のいずれか一項に記載されたものである、請求項14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力タービン又は水力発電設備の発電機、特に低速回転発電機用の発電機ローターに関する。更に、本発明は、このような発電機ローターを有する発電機と、このような発電機を有する風力タービンとにも関する。
【背景技術】
【0002】
風力タービンは、一般的に知られている。それらは、タワーを備えており、その上にポッド(pod:流線形格納器)が回転可能に取り付けられている。ポッドには、一般的にその内部には、マシンキャリア(machine carrier)、発電機、その発電機用の駆動軸、オプションとして動力伝達装置、及び、ローターハブが取り付けられており、該ローターハブは、風の中で回転して発電機を駆動する一定数のローターブレードを備えている。発電機は、通常、マシンキャリアによって保持された発電機ステーターと、該発電機ステーターに対して、望ましくはその内側又は外側で、回転する発電機ローターと、を備えている。
【0003】
水力発電設備は、水の流れの運動エネルギを用いたタービンブレードの回転駆動によって電気エネルギを生成するタービンを使用している。この点に関して、ローター軸によってトルクを流路外の領域に伝え、その際、ローター軸におけるトルクによって発電機を駆動するタービンと、タービンローターが発電機のローターに直接接続されているタービンとは、基本的に区別される。最初に述べたタイプは、特に特許文献1に記載されている。後者の場合、これは、いわゆるストレートフロータービン(straight-flow turbine:一体形水車または直流水車)と呼ばれている。もしタービンの回転軸が水流方向と実質的に平行ならば、これは、アキシアルタービン(axial turbine:軸流タービン)と呼ばれている。上述の水力発電設備で使用される発電機は、風力タービンの発電機と機能上実質的に同じ設計とすることができ、この理由により、本発明は、その分野にも適用される。
【0004】
発電機ローターは、いわゆるローターベルト上に複数のポールシューを備えている。ポールシューは、発電機ステーターのステーター巻線に対して回転する。ポールシューと発電機ステーターの巻線との間には、可能な限り狭い間隙がある。発電機ローター内の励磁機界磁によって、電圧が発電機ステーターに誘起される。常に若干非定常に作用する回転励磁機界磁によって、トルク変動が生じる。それらのトルク変動は、通常、発電機ローターの回転速度に依存する周波数を伴い、発電機に振動を引き起こす。
【0005】
このようにして発電機に生じた振動は、キャリア構造体(carrier structure)とハブフランジとを介して、風力タービンの主軸に、又は水力発電設備の構成要素部分に、伝えられ、前者の場合、同じものを介してローターハブを通じてローターブレードに伝えられる。
【0006】
風力タービンが人口の多い地域の近くにも設置されることが増えてきているため、厄介な音の放出を最大限に避けることに格別な注意が払われている。更に、周知の風力タービンについて指摘すべき点は、発電機ローター内に設けられるキャリア構造体の組み立てが比較的に複雑で高額な費用を要することである。また、通常必要とされる、複数の部品から成る鋼鉄製の構造体は、その製造に、溶接及びその他の接合技術を用いた、それに対応する多数の作業工程を要する。それに応じて、必要な材料の使用量が多くなり、コストは高くなる。
【0007】
本出願に関する優先権出願において、独国特許商標庁は、先行最新技術文献として、次の特許文献1、特許文献2及び特許文献3を調査した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2008 045 500号公報
【特許文献2】独国特許出願公開第10 2010 030 205号公報
【特許文献3】独国特許出願公開第10 2011 006 680号公報
【発明の概要】
【0009】
従って、本発明の根底を成す目的は、本明細書の冒頭部分で述べた種類の発電機ローターを改善し、それによって先行最新技術における欠点を可能な限り解消することである。特に、本発明の目的は、本明細書の冒頭部分で述べた種類の発電機ローターを改善し、それによって風力タービン又は水力発電設備を振動特性に関して改善して、特に、それらから放出される全体的なノイズのレベルを低減することである。更に、本発明の目的は、本明細書の冒頭部分で述べた種類の発電機ローターを改善することによって、特に、その製造に要するコスト及び/又は時間の低減を可能にすることである。
【0010】
本発明は、特許請求の範囲の請求項1の特徴を備えた発電機ローターを提案することによって、その目的を達成する。この発電機ローターは、複数のポールシューを保持するローターベルトと、発電機ローターを、風力タービンの軸、特に主軸または伝動軸に固定するためのハブフランジと、一方でローターベルトに対して、他方でハブフランジに対して、それぞれ非回転可能に接続されたキャリア構造体と、を備えており、ローターベルトは、第1の減衰度を有する金属製材料で構成されており、キャリア構造体とハブフランジの少なくとも一方は、第2の減衰度を有する材料で部分的に又は完全に構成されており、第2の減衰度は第1の減衰度よりも大きい。本発明に従って使用される減衰度という用語は、Lehrの減衰比を意味している。Lehrの減衰比は、周知の態様で特定でき、また、多数の材料についての参考書にも記されている。本発明の説明において、材料に関して「完全に」という場合は、動力伝達を担う本質的な構造部材がそのそれぞれの材料で構成されていると解釈されるべきであり、いかなる組み立て手段やその他の挿入または固定手段も、必ずしもその材料から成る必要はない。
【0011】
本発明は、ローターベルトにおけるポールシューからの音が風力タービンの軸方向に伝わることを、増大されるエネルギ放散によって、意図した態様で、低減する手法に従っている。この点に関して、本発明は、次のいくつかの洞察を利用している。
【0012】
キャリア構造体及び/又はハブフランジについて、各々の場合にローターベルトの金属製材料とは異なる材料を使用することによって、複数の部品から成る構造を敢えて使用し、従って、もはや、例えば、キャリア構造体がローターベルトとハブフランジとに一体的に又は材料接着関係で接続されるような一体構造ではなくなる。上記金属製材料からキャリア構造体及び/又はハブフランジの材料への遷移において、エネルギが必然的に早くも放散させられて、これによって、ローターベルトから生じる振動が減衰される。
【0013】
キャリア構造体及び/又はハブフランジの材料がローターベルトの金属製材料よりも大きい減衰度を備えていることによって、更なるエネルギがキャリア構造体又はハブフランジにおいて、それぞれ、追加的に放散させられる。
【0014】
本発明に従って使用される低速回転発電機という用語は、毎分50回転かそれより少ない回転の回転速度を呈する発電機を意味している。本発明に従う発電機は、多極同期リング型発電機であることが望ましい。多極という用語は、48又はそれよりも多い、望ましくは96又はそれよりも多い極数を意味している。
【0015】
本発明の一推奨実施形態において、第1の減衰度はD=0.002又はそれよりも小さい範囲内、望ましくはD=0.0015又はそれよりも小さい範囲内に在る。殆どの種類の鋼鉄は、通常、それらの範囲内の減衰度を呈する。
【0016】
一推奨実施形態において、第2の減衰度は第1の減衰度のn倍であり、ここでnは2に等しい又はそれよりも大きい。第2の減衰度が第1の減衰度に比べて大きければ大きいほど、キャリア構造体内の又はハブフランジ内のエネルギの放散はそれに応じて大きくなる。しかしながら、構造に関して注意すべき点として、キャリア構造体又はハブフランジは、ローターベルトとハブフランジ又は伝動軸との間の動力の伝達のために、十分な剛性、せん断強度及び圧縮強度を常に依然として備えている必要がある。尚、材料の特質に加えて、これは、リブ及びウェブなどの形態をとる追加的な補強手段によってもプラス方向に影響を受け得る。
【0017】
別の推奨実施形態において、キャリア構造体とハブフランジの少なくとも一方は、次の材料、即ち、
コンクリート、
コンクリート複合材、特に鉄骨鉄筋コンクリート又は繊維補強コンクリート、
無垢木材、
合板、
積層木材、
ガラス繊維強化プラスチック、及び、
炭素繊維強化プラスチック
のうちの1つで部分的に又は完全に構成されている。
【0018】
コンクリート複合材が繊維成分を備えている場合、それらの繊維は、鋼鉄繊維、炭素繊維、ガラス繊維、竹繊維、麻繊維およびアラミド繊維から成るリストから選択されることが望ましい。合板がキャリア構造体またはハブフランジの材料として選択される実施形態では、特にベニヤ合板が有益であることが判明している。
【0019】
コンクリート又は、例えば鉄骨鉄筋コンクリートのようなコンクリート複合材の使用について指摘する価値のある利点は、その製造が安価であり且つ時間効率が良いことである。具体的には、鉄骨鉄筋コンクリートを使用する場合、周知のキャリア構造体と比較して重量が偏らず、負荷保持能力を同等としながら顕著に安価であり、且つ、顕著に改善された、つまり増大された減衰特性を備えている、キャリア構造体を製造できることが判明している。それ故、本発明によれば、鉄骨鉄筋コンクリートの使用は特に望ましいと考えられる。
【0020】
更に別の推奨実施形態において、発電機ローターのキャリア構造体は環状に構成されている。キャリア構造体は、例えば、1つ又は複数のディスク又はディスク部分及び/又はフレームワーク構成要素及び/又は折返し構造構成要素及び/又はスポークを備えることができる。キャリア構造体は、単一のディスクの形態を取り、半径方向の外側において周知の接続素子によって金属製ローターベルトに接続されており、且つ、半径方向の内側において周知の態様でハブフランジに接続されていることが特に望ましい。ここでは、ハブフランジも金属製材料で構成されているか、あるいは、キャリア構造体と同じ材料で構成されているか否かに従って、最新技術に照らして好適な接続手段を使用すべきである。
【0021】
キャリア構造体は複数のセグメントから成ることが望ましい。キャリア構造体のセグメンテーション(分割)は、一方では、キャリア構造体が複数のそれぞれ互に同じ組立て式部品、例えば鉄筋コンクリートの組立て式部品から製造できるという利点を備えている。これによって、部品数を低減する場合にコスト効率と時間効率の良い製造を保証できる。キャリア構造体が複数の部分から成るという特徴も、エネルギ放散に貢献し、従って、単なる材料の選択を超えた減衰特性に貢献する。
【0022】
更に別の推奨構成では、分離間隙がローターベルトとキャリア構造体との間に設けられており、キャリア構造体は、ローターベルトに、分離間隙に沿って、材料接着関係ではなく強制固定関係(力による固定関係)又は確動固定関係(形状による固定関係)で、接続されている。更に望ましくは、分離間隙がキャリア構造体とハブフランジとの間に設けられており、キャリア構造体は、ハブフランジに、分離間隙に沿って、材料接着関係ではなく強制固定関係又は確動固定関係で、接続されている。
【0023】
分離間隙は、第1の減衰度よりも大きく、特に望ましくは第2の減衰度に等しいかそれよりも大きい第3の減衰度を備えた充填材料で部分的に又は完全に充填されていることが望ましい。分離間隙は、例えばセメント又は硬化重合体などによって、充填できる。
【0024】
本発明の推奨実施形態において、ローターベルト及び/又はハブフランジは鋼鉄製または鋼鉄合金製である。
【0025】
更に、本発明の目的は、本明細書の冒頭部分で述べた種類の発電機において、請求項11に記載の発電機を提案することによって、達成される。それは、発電機ステーターと、該発電機ステーターに対して回転する発電機ローターと、を備えており、この発電機ローターは、上述の望ましい実施形態のいずれかの1つで述べたように構成されている。本発明に従うこの発電機は、上述の発電機ローターと同じ利点に恵まれており、また、同じ望ましい実施形態を有しており、それ故、これらの点については、前述の説明を参照されたい。
【0026】
更に、本発明の目的は、本明細書の冒頭部分で述べた種類の風力タービンにおいて、請求項12に記載の特徴を備えた風力タービンによって、達成される。この風力タービンは、発電機を備えており、この発電機は、発電機ステーターと、該発電機ステーターに対して回転する発電機ローターと、を備えている。本発明は、この発電機ローターが上述の望ましい実施形態のいずれか1つに従うことを提案する。それ故、本発明による風力タービンも、上述の望ましい実施形態に従って、本発明による発電機及び本発明による発電機ローターと同じ利点及び同じ望ましい実施形態を必然的に伴う。
【0027】
更に、本発明の目的は、本明細書の冒頭部分で述べた種類の水力発電設備において、請求項13に記載の特徴を備えた水力発電設備によって、達成される。この水力発電設備は、流入口と流出口とを有する流路と、電気エネルギを生成する発電機に動作可能に接続されており、流路内に配置されている水力タービンと、を備えており、その発電機は、上述の望ましい実施形態のいずれか1つに従って構成された発電機ローターを備えている。
【0028】
この点についても、実現される利点に関する前述の説明を参照されたい。
【0029】
本発明は、更に、風力タービン又は水力発電設備の発電機ローターのハブフランジ及び/又はキャリア構造体用の材料としての、コンクリート、コンクリート複合材、特に鉄骨鉄筋コンクリート又は繊維補強コンクリート、無垢木材、合板、積層木材、ガラス繊維強化プラスチック、あるいは、炭素繊維強化プラスチックの使用に関する。この場合、その発電機ローターは、上述の望ましい実施形態のいずれか1つに従って構成されていることが望ましい。
【0030】
以下、添付図面を参照しつつ、例としての幾つかの望ましい実施形態によって、本発明を更に詳しく説明する。ここでは、同一の構成要素、あるいは、同じ機能を備えた構成要素は、同一の参照番号で示されている。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1a】風力タービンの概略的斜視図を示す図である。
図1b】水力発電設備の概略的斜視図を示す図である。
図2図1aに示された風力タービンのポッドの断面における斜視図を概略的に示す図である。
図3a図1と2に示された風力タービン用の発電機の部分的な概略的斜視図を示す図である。
図3b図3aに示された部分の別の概略的斜視図を示す図である。
図4a図3aと3bの発電機ローターについての第1の固定実施態様の概略的細部図を示す図である。
図4b図3aと3bに示された発電機ローターについての第2の固定実施態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1aは、タワー102とポッド104とを備えた風力タービン100を示している。ポッド104には、3つのローターブレード108とスピナー110とを有するローター106が配置されている。ローター106は、動作中、風によって回転させられることによって、ポッド104内の発電機1(図2)を駆動する。
【0033】
図1bは、水力発電設備200を示している。水力発電設備200は、流路212を流れる水によって駆動される水力タービン211を備えている。水力タービン211は、流入口213と流出口215との間に配置されており、発電機5、特に多極低速回転同期リング型発電機を備えている。発電機5は、後述の図2〜4bに示されているように設計されているが、構造的な例外として、そのハブフランジ(図示せず)が必ずしも駆動軸に接続されている必要はなく、その代わりに、流路内で回転する一定数のタービンブレードに直接接続されていてもよい。その点で、これは、いわゆるストレートフロータービン(straight-flow turbine:一体形水車または直流水車)と呼ばれている。特に、本発明は、ストレートフローアキシアルタービン(straight-flow axial turbine)にも関する。
【0034】
図2には、風力タービン100のポッド104が更に詳しく示されている。ポッド104は、タワー102に回転可能に取り付けられており、方位駆動装置(azimuth drive)7によって周知の態様で駆動されるように接続されている。望ましくは同期発電機の形態を取る発電機1を保持するマシンキャリア9が、更に周知の態様でポッド104内に配置されている。発電機1は、本発明に従って設計されており、特に低速回転多極同期リング型発電機である。発電機1は、発電機ステーター3と、ローター部材とも呼ばれる内部で回転する発電機ローター5と、を備えている。発電機ローター5は、風によって起こされたローターブレード108の回転運動を同期発電機1に伝えるローターハブ13に接続されている。
【0035】
図3a、bと図4a、bには、発電機1の詳細が示されている。図3aと3bには、発電機ローター5が、その一部として切断された状態で示されている。発電機ローター5は、複数のセグメント17a〜17fから形成されたキャリア構造体17を備えている。セグメント17a〜17fは、特に望ましくは鉄骨鉄筋コンクリート製である組立て式部品であることが望ましい。キャリア構造体17は、ローターベルト15に接続されている。ローターベルト15は、発電機1のポールシュー(図示せず)を受け入れるように構成されている。半径方向の反対側に配置された内側面において、キャリア構造体17は、ハブフランジ19に接続されている。ハブフランジ19は、風力タービンの主軸または伝動軸(transmission shaft)に装着されるように構成されている。
【0036】
ローターベルト15とハブフランジ19は、鋼鉄製または鋼鉄合金製であることが望ましい。
【0037】
キャリア構造体17には、空気流通過開口として機能し、また、キャリア構造体17の重量を軽減して取り扱い性を高める目的も果たす複数の開口21が設けられている。
【0038】
キャリア構造体17は、実質的にディスク形状に構成されているが、オプションとして、テーパ角度(cone angle)αで表現できるやや円錐台形状を成す輪郭を有する(図3b参照)。
【0039】
図4aと4bは、キャリア構造体17をローターベルト15に接続するための種々の固定のオプションを示している。キャリア構造体17をハブフランジ19に接続することにも同じ固定の実施態様を用いることが望ましい。これは、図面の明瞭性を高めるために、ここでは別途示さない。
【0040】
本発明に従えば、発電機ローターは完全には一体的に構成されておらず、ローターベルト15とキャリア構造体17との間に(そして、望ましくは等しく、キャリア構造体17とハブフランジ19との間に(図3a及び3b参照))分離間隙23が設けられている。分離間隙23には、その周辺に沿って一定数の固定手段によってブリッジ(橋)が架けられている。
【0041】
図4aに示された一実施態様において、提案する固定手段はネジ27であり、これらは、キャリア構造体17内の対応する開口28内を伸延して、ローターベルト15内の対応するネジ穴25内にねじ込まれて、強制固定接続を形成している。分離間隙23は、キャリア構造体17とローターベルト15が、組み立てられた状態において、互いに支え合うが互いに圧迫しないような寸法を有することが望ましい。
【0042】
図4bに示された第2の固定実施態様において、キャリア構造体17は、一定数のヘッドボルト接続体29によって、分離間隙に沿って、ローターベルト15に固定されている。ヘッドボルト接続体は、ローターベルト15において、これに溶接されて、キャリア構造体17内の凹部31に嵌め込まれる。ローターベルト15に対するキャリア構造体17の位置決めが完了した後、それらの凹部31が硬化材料33で充填される。この硬化材料は、例えば、セメント、あるいは、硬化重合体、例えば合成樹脂であってもよい。図4bに示された一実施態様においても、分離間隙23は、キャリア構造体17とローターベルト15が、組み立てられた状態において、互いに支え合うが互いに圧迫しないような寸法を有することが望ましい。推奨構成に代わる選択肢として、両実施態様(図4aと図4b)について、分離間隙23も、硬化材料で部分的に又は完全に充填されてもよい。分離間隙23に部分的に又は完全に充填される材料は、完全には弾性ではないが、望ましくはローターベルト15の第1の減衰度よりも大きく、且つ、特に望ましくはキャリア構造体の第2の減衰度に等しいかそれよりも大きい第3の減衰度を備えていることが特に望ましい。
図1a
図1b
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
【国際調査報告】