特表2019-513981(P2019-513981A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2019-513981シールディングに優れる静電気力検出器および静電気力検出器の使用方法関連出願の相互参照 本願は、2016年4月8日に出願された米国仮特許出願番号第62/320409号の優先権を主張するものである。
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  • 特表2019513981-シールディングに優れる静電気力検出器および静電気力検出器の使用方法関連出願の相互参照  本願は、2016年4月8日に出願された米国仮特許出願番号第62/320409号の優先権を主張するものである。 図000011
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2019-513981(P2019-513981A)
(43)【公表日】2019年5月30日
(54)【発明の名称】シールディングに優れる静電気力検出器および静電気力検出器の使用方法関連出願の相互参照 本願は、2016年4月8日に出願された米国仮特許出願番号第62/320409号の優先権を主張するものである。
(51)【国際特許分類】
   G01Q 60/30 20100101AFI20190510BHJP
   G01R 29/24 20060101ALI20190510BHJP
【FI】
   G01Q60/30
   G01R29/24 G
   G01R29/24 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】有
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-546849(P2018-546849)
(86)(22)【出願日】2017年4月10日
(85)【翻訳文提出日】2018年9月6日
(86)【国際出願番号】US2017026846
(87)【国際公開番号】WO2017177234
(87)【国際公開日】20171012
(31)【優先権主張番号】62/320,409
(32)【優先日】2016年4月8日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】516235369
【氏名又は名称】トレック インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(72)【発明者】
【氏名】上原 利夫
(72)【発明者】
【氏名】東尾 順平
(57)【要約】
被測定表面(SUT)の静電気力を測定する静電気力検出器(EFD)は、カンチレバーアームとプローブを備えた静電気力検出器を有する。EFDは、その中をプローブが延びる孔を備え、SUTからの静電電界がカンチレバーアームおよびプローブの大部分に到達するのを防止すべく配置され、光がSUTに到達することを防ぐシールドを有する。SUT上の電位を測定するEFDの電位範囲を選択する方法は、推定電位範囲の端点またはその近くでEFDを用いて2つの電位を測定し、極性を比較することを含む。極性が相違すれば、推定電位範囲が選択される。だが極性が同じなら、推定電位範囲が調整されて新たな推定電位範囲が与えられ、これはSUT上の電位がその範囲内かどうか調べるためにテストされる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定表面(SUT)の静電力を測定する静電気力検出器(EFD)であって、
(a)カンチレバーアームとプローブを有し、前記プローブが、前記カンチレバーアームの支点から遠位の位置で前記カンチレバーアームから延出し、前記SUT上の静電位による静電気力が前記プローブの先端に生じるように向けられている静電気力検出器と、
(b)前記先端に生じた静電気力による前記カンチレバーアームの曲げを、前記先端に生じた静電力の周波数成分を含む電気信号へと変換する光学システムと、
(c)前記力検出器にバイアス電圧を印加する電圧源と、
(d)前記SUT上の静電位の測定値が得られるように前記電気信号の前記周波数成分を検出する周波数検出器と、
(e)貫通孔を画定する表面を備えたシールドと、を有し、前記貫通孔は、前記シールドに対して前記プローブが動けるサイズであり、前記シールドは、前記SUTからの静電電界が前記カンチレバーアームに到達するのを抑制し、かつ光が前記SUTに到達するのを防ぐように配置されており、前記シールドは、前記カンチレバーアームと前記SUTの間に配置され、前記プローブの一部が、前記シールドの前記貫通孔の中を延びていることを特徴とするEFD。
【請求項2】
前記シールドは、前記カンチレバーアームに対するよりも前記SUTに対して、より近い位置に設けられている請求項1記載のEFD。
【請求項3】
前記シールドは、静電力線が前記シールドで終わるように、前記静電気力検出器と同じ電位に維持されている請求項1記載のEFD。
【請求項4】
前記カンチレバーアームの長さが900μmから3600μmの間である請求項1記載のEFD。
【請求項5】
前記カンチレバーアームの幅が400μmから1400μmの間である請求項1記載のEFD。
【請求項6】
前記シールドの幅が前記カンチレバーアームの幅以上である請求項5記載のEFD。
【請求項7】
前記シールドの幅が前記カンチレバーアームの幅以上である請求項1記載のEFD。
【請求項8】
EFDの電圧範囲を選択する方法であって、
(a)被測定表面(SUT)上の帯電による電位の第1の推定値(第1電位推定値)を与え、
(b)前記第1電位推定値を含む電位範囲を選択し、前記電位範囲が第1電位(Vdc−high)から第2電位(Vdc−low)まで広がるものとし、
(c)前記EFDのプローブ先端を、前記プローブ先端と前記SUTの間のアーク放電を防止できる距離だけ、前記SUTから離して置き、
(d)Vdc−highを用い、以下の式:
=VACSinωt+VDC
に従って前記プローブ先端へと入力電圧を印加し、前記EFDからの測定出力電位の第1電位指標を得て、
(e)Vdc−lowを用い、以下の式:
=VACSinωt+VDC
に従って前記プローブ先端へと入力電圧を印加し、前記EFDからの前記測定出力電圧の第2電位指標を得て、
(f)前記第1電位指標の極性を前記第2電圧指標の極性と比較して第1極性指標を得て、
(g)前記第1極性指標が相反する極性を示していれば、前記電荷が選択された前記電位範囲内にあるものと判定し、
(h)前記第1極性指標が同一の極性を示していれば、前記電位が選択された前記電位範囲内にないものと判定することを特徴とする方法。
【請求項9】
前記電位が選択された前記電位範囲内にあると判定された場合に、前記EFDを用いて前記電位を測定する請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記電位が選択された前記電位範囲内にあると判定された場合に、前記プローブ先端を前記SUTのより近くへと動かす請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記電位が選択された前記電位範囲内にないと判定された場合に、新たな電位推定値を与え、前記第1電位推定値の代わりに前記新たな電位推定値を用いて(b)から(h)に至るステップを繰り返す請求項8記載の方法。
【請求項12】
前記第1電位指標がゼロ未満の極性を有する場合、前記第1電位推定値から、特定の差の数を引いたものを、前記新たな電位推定値とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記第1電位指標がゼロより大きい極性を有する場合、前記第1電位推定値に、特定の差の数を足したものを、前記新たな電位推定値とする請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記特定の電位差の数は、40ボルトの倍数である請求項12または13記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定表面(SUT)上の帯電を測定する装置、システム、および方法に関する。こうしたSUTには、とりわけ、複写機の電子写真ドラムや顕微鏡法におけるものが含まれる。
【背景技術】
【0002】
静電気力検出器(EFD)は、SUT上の帯電の測定に用いられる。EFDは、原子間力顕微鏡(AFM)、静電気力顕微鏡(EFM)、などの高精度測定装置、および類似の限界寸法測定装置に用いられる。EFDでは、カンチレバーアームからSUTに向かってプローブ部が延びる。プローブ部は大抵の場合、幅よりも長さがずっと大きいものとして形作られ、非常に小さい表面積を有する先端に向けて先細る。プローブ部の先端は、SUTの近傍に配置される。理想的には、SUT上の帯電によりEFDに作用する静電力は、プローブ部の先端のみに作用するが、従来技術の装置はこのような理想的状態を達成できていない。従来技術の装置では、静電力が先端以外の場所、例えばカンチレバーアームや、カンチレバーアームと先端の間のプローブ部のシャフトに作用すると、測定エラーが生じる。その結果、従来技術の装置は、SUT上の静電電位を正確に測定できない。
【0003】
従来技術の装置には、さもなくばカンチレバーアームに作用するであろう静電力を減らし測定精度を高めるため、力検出器の一部をシールドしているものもある。これらの従来技術の装置では、シールドは、SUTとカンチレバーアームの間に配置されている。このような従来技術のシールドは、SUT上の静電電位による影響からカンチレバーアームを実質的にシールドしているが、この従来技術のシールドは、SUT上の静電電位による影響からプローブ部のシャフト側面を適切にシールドできていない。(先端に加えて)プローブ部のシャフト側面もSUT上の静電電位によって生じる静電力の作用を受けるので、従来技術の装置では測定誤差が生じる。
【0004】
加えて、多くのSUTは感光性である。従来技術のシールドの構成は、望ましくない光がSUTに到達するのを適切に減らすことができていない。感光体を有する多くのSUTの感光度は、約0.15〜0.4nJ/cmなので、SUTに到達する少量の光が、SUT上の静電電位に観測可能な違いを生じ得る。光源にかかわらず、光に敏感なSUTに望ましくない光が到達すれば、この望ましくない光は、SUT上の静電電位に変化を与え、それによりSUT上にあるべき静電電位の正確な測定値を得ることを不可能とする。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、被測定表面(SUT)の静電気力を測定する静電気力検出器(EFD)として実施可能である。このEFDは、
(a)カンチレバーアームとプローブを有し、前記プローブが、前記カンチレバーアームの支点から遠位の位置で前記カンチレバーアームから延出し、前記SUT上の静電荷による静電気力が前記プローブの先端に生じるように向けられている静電気力検出器と、
(b)前記先端に生じた静電気力による前記カンチレバーアームの曲げを、前記先端に生じた静電気力の周波数成分を含む電気信号へと変換する光学システムと、
(c)前記静電気力検出器にバイアス電圧を印加する電圧源と、
(d)前記SUT上の帯電状況の測定値が得られるように前記電気信号の前記周波数成分を検出する周波数検出器と、
(e)貫通孔を画定する表面を備えたシールドと、を有し、前記シールドは、前記SUTからの静電電界が前記カンチレバーアームに到達するのを抑制し、かつ光が前記SUTに到達するのを防ぐように配置されており、前記シールドは、前記カンチレバーアームと前記SUTの間に配置され、前記プローブの一部が、前記シールドの前記貫通孔の中を延びている。
【0006】
前記シールドは、
(1)前記カンチレバーアームに対するよりも前記SUTに対して、より近い位置に設けられ、および/または、
(2)電気力線が前記シールドで終わるように、前記静電気力検出器と同じ電位に維持されるものとでき、および/または、
(3)前記カンチレバーアームの幅以上の幅を有するものとできる。
【0007】
前記カンチレバーアームは、
(1)長さが900μmから3600μmの間、および/または、幅が400μmから1400μmの間であるものとできる。
【0008】
本発明は、EFDの電圧範囲が選択される方法として実施可能である。この方法は、
(a)被測定表面(SUT)上の帯電による電位の第1の推定値(第1電位推定値)を与え、
(b)前記第1電位推定値を含む電圧範囲を選択し、前記電圧範囲が第1電位(Vdc−high)から第2電位(Vdc−low)まで広がるものとし、
(c)前記EFDのプローブ先端を、前記プローブ先端と前記SUTの間のアーク放電を防止できる距離だけ、前記SUTから離して置き、
(d)Vdc−highを用い、以下の式:
=VACSinωt+VDC
に従って前記プローブ先端へと入力電圧を印加し、前記EFDからの測定出力電圧の第1電位指標を得て、
(e)Vdc−lowを用い、以下の式:
=VACSinωt+VDC
に従って前記プローブ先端へと入力電圧を印加し、前記EFDからの前記測定出力電圧の第2電位指標を得て、
(f)前記第1電位指標の極性を前記第2電位指標の極性と比較して第1極性指標を得て、
(g)前記第1極性指標が相反する極性を示していれば、前記電圧が選択された前記電圧範囲内にあるものと判定し、
(h)前記第1極性指標が同一の極性を示していれば、前記電圧が選択された前記電圧範囲内にないものと判定する。
【0009】
前記帯電が選択された前記電位範囲内にあると判定された場合には、前記SUT上の電圧は、前記EFDを用いて測定可能である。だが、前記電荷が選択された前記電位範囲内にないと判定された場合には、新たな電圧推定値が与えられ、前記第1電位推定値の代わりに前記新たな電圧推定値を用いて(b)から(h)に至るステップが繰り返されるものとできる。前記電荷が選択された前記電圧範囲内にあると判定された時には、前記プローブが前記SUTのより近くへと動かされてよいし、測定された電荷がその特定の場所での前記SUT上の電荷の測定値とされてもよい。このような方法は、前記測定範囲を狭めることで前記SUT上の電位を正確に測定することに役立ち、同時に、電位が大まかに分かるまでプローブを安全な距離に保つことでアーク放電を防止することにも役立つ。
【0010】
極性が同一である(両方とも+または両方とも−)と判定されると、推定値の範囲が変更される。これを行うために、前記第1電圧指標がゼロ未満の極性を有するかどうかの判定が下され、前者の場合には、前記第1電圧推定値から、特定の差の数を引いたものを、前記新たな電圧推定値とする。だが、前記第1電圧指標がゼロより大きい極性を有する場合には、前記第1電圧推定値に、特定の差の数を足したものを、前記新たな電圧推定値とする。例えば、前記特定の差の数は、40ボルトの倍数である。
【0011】
本発明の本質および目的をより完全に理解してもらうために、添付の図面および以下の記載を参照されたし。簡単には、図面は以下のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1a図1aは、シールドを持たない従来技術のEFMの模式図である。
図1b図1bは、シールドを持たない従来技術のEFMの体系的なヘッドを描いた模式的斜視図である。
図2図2は、従来技術のEFMの平行面モデルの線図である。
図3図3は、従来技術のEFMの一部を描いた線図である。
図4a図4aは、本発明によるEFDの諸様相を描いた斜視図である。
図4b図4bは、本発明によるEFDの諸様相を描いた斜視図である。
図4c図4cは、本発明によるEFDの諸様相を描いた斜視図である。
図5図5は、本発明によるシールドを備えたEFDの模式図である。
図6図6は、我々のシールドを用いることで達成可能なSUTへ到達する光の減少具合を示すグラフである。
図7図7は、電圧差対Vωを示すグラフである。
図8図8は、目標電圧入力範囲が決定される我々の発明による方法のフローチャートである。
図9図9は、SUTの表面電圧の時間経過に伴う変化をEFM及び一般的な表面電位計で測定したグラフである。
図10図10は、低移動度を持つ感光体の潜像測定の試験結果を示す。
図11図11は、高移動度を持つ感光体の潜像測定の試験結果を示す。
図12図12は、露光エネルギ対潜像電圧を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、SUT上の電位を測定するためのEFMなどのEFDである。本発明は、EFM以外の装置にも利用可能であり、よって本発明はEFMには限定されない。本発明は、写真複写機の電子写真ドラム、あるいは圧電セラミック製造におけるSUTに用いることができる。よって、説明はEFMのものに集中しがちではあるが、本文献のクレームは、そのクレームが明らかにEFMを指している場合を除けば、必ずしもEFMに限定されてはいない。
【0014】
本発明は、静電気力検出器を備えるEFDとして実施可能である。静電気力検出器は、カンチレバーアームと、カンチレバーアームから延びるプローブとからなるものとできる。力検出器は単一材料から形成可能である。プローブは、先端が終点となるシャフトからなるものとでき、この先端は、理想的には小さな表面積を有する。使用時、プローブの先端は、SUT上の電位がEFDの先端でのみ静電気力を生じるように、SUTの近傍に置かれる。先端に作用する力は、カンチレバーアームが曲げを生じるように、プローブのシャフトを介してカンチレバーアームへと伝えられる。レーザが、カンチレバーアームの反射面へと向けられる。レーザからのレーザ光は、カンチレバーアームで反射され、光検出器で受光される。受光されたレーザ光の位置は、カンチレバーアームの湾曲を示すものであり、この湾曲は、カンチレバーアームに作用している静電気力を示している。よって、光検出器上の反射レーザ光の位置を検出することで、カンチレバーアームに作用している静電気力を測定することが可能である。例えば、光検出器上の特定の位置をSUT上の特定の電位と関連付けるように、検出回路を設計および/または校正することができる。
【0015】
カンチレバーアームの湾曲がSUT上の電圧を測定するために用いられ、かつ、その湾曲がプローブに作用する静電気力によって生じるものであるため、そのような静電気力を、SUT上の電位に応じて先端に作用する静電気力に限定することが望ましい。測定精度を高めるために、SUT上の電位が、例えばカンチレバーアーム上、および/または、カンチレバーアームに近いプローブのシャフト上などのプローブ先端以外の場所で静電気力検出器に静電気力を作用することを防止することを目的として、1つ以上のシールドを用いることが可能である。
【0016】
さらに、SUTで受光される光は、とりわけSUTが感光性である場合に、SUT上の電位に影響を及ぼし得る。このような光は、レーザ、あるいはその他の場所から生じ得る。例えば、SUTで受光されるこうした光は、(a)カンチレバーアームからのレーザ光の不完全な反射、(b)周囲の気体の汚染物質によって引き起こされ得る、周囲媒体を介してのレーザ光の不完全な伝達、および/または(c)光検出器で受光される光の不完全な吸収、から生じ得る。SUTで受光される光の量を減らすために、我々の発明の実施の形態では、1つ以上のシールドが使用され、そのうち1つ以上がカンチレバーアームとSUTとの間に配置され、かつ、プローブの向こうまで延びるものとできる。我々の発明の実施の形態が、プローブの向こうまで延びるシールドを有する場合には、プローブがシールドを貫いて延びることができるように、シールドに孔を設けるものとできる。さらに、シールドの1つ以上はカンチレバーアームよりも幅広とできる。
【0017】
本発明が適用可能な従来技術の静電気力顕微鏡の代表的な構成が、図1aおよび図1bに示されている。この従来技術のシステムは、光学系20と、大まかに符号10で示される静電気力検出器を有する。静電気力検出器は、カンチレバーアーム12と、先端16を備えたプローブ14とを有する。光学系20は、レーザ22と、光検出器24と、検出回路30とを有する。SUT40は機能可能な状態でアクチュエータ44と結びついており、これは例えば圧電ドライバであり、さらに機能可能な状態でスキャナ48と結びついている。プロセッサ50は、検出回路30の出力とつながっており、検出回路30から得られたデータを処理するのに利用可能である。フィードバック回路70は、入力が、検出回路30の出力に電気的に接続され、出力が、制御を行えるように、直流電源60に電気的に接続されている。SUT40と直流電源60は両方とも、電気アース、すなわち符号65に電気的に接続可能である。直流電源60と交流電源80を組み合わせたものが、力検出器10と検出回路30に接続されている。
【0018】
SUT40上の電荷によって、検出器10の先端16に静電力が生じる。カンチレバーアーム12の一端は、この場合トランスデューサ90に固定されているので、先端16の静電力によって、カンチレバーアーム12が支点85から曲がる。トランスデューサ90は、トランスデューサ90に与えられた電気信号に応じてアーム12に動きを生じさせる圧電素子とすることができる。
【0019】
カンチレバーアームの曲がり量は、光てこ方式を用いて電気信号に変換される。SUT40上の電荷の極性を識別するために、導体92を介して、直流および交流成分を有する外部バイアス電圧がトランスデューサ90に印加される。バイアス電圧Vは以下の式によって表わされる。
【0020】
【数1】
【0021】
光検出器24は、トランスデューサ90に与えられた電気信号によって変調された反射レーザ光を受光し、ωおよび2ωの周波数成分を含む信号を検出器30に与える。先端16とSUT40との間の関係が平行面モデル(図2図3を参照)と考えられる場合には、以下の式により、プローブ先端16上の生じた静電力から、ωおよび2ωのそれぞれに対応する情報が得られる。
【0022】
【数2】
【0023】
【数3】
【0024】
上述の式において、Vは外部バイアス電圧、ρはSUT40上の電荷分布密度、εはSUT40の誘電率、dはSUT40の厚さ、dはプローブ先端16と金属基板300間の距離、Sは先端16によって検知されているSUT40の面積である。εとdが分かっていれば、Fω(静電気力のω成分)を検出することで、あるいは、Fωがゼロになるようにフィードバックとして検出器に与えられるVDCを測定することで、ρ(電荷分布密度)を算出することが可能である。dがゼロの場合は、被測定表面が固体金属であり、プローブがもはやSUT40上に位置していないことを意味する。誘電体膜100上の電荷分布を測定することが求められているのだから、d=0の状態は現実的ではなく、よってF2ωを直接測定することが求められる。
【0025】
SUT40上の特定の場所に関する電荷分布密度(すなわちSUT40上の電荷)を計算可能とするためには、プローブ先端16とSUT40上の表面電荷との間に生じた静電力が特定されなくてはならない。電位分布を得るには、ポアソン方程式が役立つと思われる。
【0026】
【数4】
【0027】
ここで、Vは本計算から得られる電位、ρは電荷分布密度、εは真空の誘電率である。
【0028】
プローブ先端16によって検知されている領域の静電場分布は、上述の電位分布(∇V)を用いることで特定可能である。先行する2つのステップによって得られたデータから、先端16とSUT40上の電荷の間に生じた静電気力を計算する。
【0029】
図1bはさらに、図1aに描かれた先行技術のEFMの諸様相を描いている。静電気力検出器10は、カンチレバーアーム12の一端に固定されたプローブ14を有し、アーム12の他端は、機能可能な状態でカンチレバー角度のコントローラ178およびマイクロメータヘッド179と結びつくボディ176に固定されている。レーザ22は、レンズ184によってカンチレバーアーム12上に集束されるビーム182を生じる。ミラー186は、反射されたビーム188を、ビームを光検出器24上に集めるシリンドリカルレンズ190へと向ける。図1bに描かれたSUT40は、圧電アクチュエータ44上にあり、これは機能可能な状態でX‐Yステージ48と結びついており、プローブ先端16に対してSUT40を位置決めする役目を果たす。X‐Yステージ48は、SUT40とプローブ14との間の距離を変えることなく、SUT40の移動を可能とする。圧電アクチュエータ44は、プローブ先端16に近づくように、あるいは遠ざかるようにSUT40を動かす。
【0030】
数式3に関連して、F2ωは、SUT40の粗さについての情報をもたらすのに利用可能である。これがどのように達成可能かについて、詳細を述べるのが有益であろう。図1aを参照すると、検出回路30、CPU50、およびフィードバック回路70は、圧電アクチュエータ44およびX‐Yステージ48と連動して働き、(a)SUT40の特定の場所を先端16の下に置くためにX軸および/またはY軸方向にSUT40を動かし、(b)数式3を用いてそのX‐Y位置におけるF2ωを特定し、(c)圧電アクチュエータ44を用いてZ軸方向のSUT40の位置を調整し、F2ωが所定の一定値と等しくなるようにし、(d)X軸方向のSUT40の位置を知ることで、dを特定し、(e)dを知ることで、参照用テーブルやその他の手段で、そのX‐Y位置におけるSUT40上の対応する電荷を特定する。
【0031】
上述のカンチレバーアームを備えた静電気力検出器は、導体表面に置かれた誘電体膜上の静電電位を検出可能なように設計および製作されている。上述の方法および装置を用いれば、比較的広い領域(例えば、数百平方ミリメートル)のスキャンにおいて、比較的高い空間分解能および電位分布の正確な測定が可能となる。このような正確な測定を行うには、帯電した誘電体膜の厚さを測定することが必要である。
【0032】
静電気力の作用によって厚さdのフィルム上の静電位を測定するシステムおよび方法は、SUT40を“見る”等価の先端領域がdの変化により変化するために、フィルム厚dの変化で生じる静電力の変化によって起きるエラーの影響を受けやすいことが確認されている。よって、SUT40上の静電位のより正確な測定値を特定するためには、誘電体膜厚の変化についての情報を用いて、EFDによって集められたデータを調整しなくてはならない。ここで提案されている膜厚測定方法は、ACバイアス電圧から生じる検出F2ω成分を利用するものである。膜厚を考慮して測定された静電気力のデータを調整することで、さもなければ存在するであろうエラーを10%未満に減らすことができ、エラーの大半を膜厚dの変化に帰することができる。
【0033】
本発明に基づくプローブ14は、1fC未満の感度および10μmの空間分解能で静電位を検出するものとできる。このようなプローブ14は、ニッケル箔から作成可能である。このようなプローブ14を用いることで、本発明は、SUT40上の静電位とSUT40の膜厚の両方を同時に測定するのに利用でき、よって測定された静電位を調整し、これによりSUT40上の実際の静電電位を特定することができる。
【0034】
プローブ14の先端16に静電気力が印加された時、同じ静電界によるさらなる静電気力がカンチレバーアーム12に生じ、これが測定エラーを起こし、プローブの空間分解能を下げることがある。本発明によると、カンチレバーアーム12およびプローブ14のシャフト204の大部分は、SUT40からシールドされており、これは、測定システムの正確性を高めるために、プローブ14のシールドされた部分にSUT上の電位が作用することを防ぐためのものである。図4a、図4b、図4cを参照すると、本発明に基づくEFDの静電気力検出器200が示されている。静電気力検出器200は、カンチレバーアーム12と、先端16を備えたプローブ14を含む。プローブ14は、さまざまな形状およびサイズが可能である。図4a、図4b、図4cでは、プローブ14は、従来技術のシャフトよりも長さが大きいシャフト204を有するものとして描かれている。本発明のシャフト204は、200μmから1000μmの間の長さとできる。本発明によれば、静電シールド210は機能可能な状態で、静電気力検出器200のカンチレバーアーム12と結びついている。シールド210は、金属などの導体材料とでき、図面においては、カンチレバーアーム202とSUT40の間に配置された細長い帯状のものとして描かれている。シールド210は、SUT40と近い距離に設けられており、好ましくは300μm未満である。シールド210の長さは、好ましくはカンチレバーアーム12より長く、カンチレバーアーム12の遠位端19がSUT40上の静電荷からシールドされている。遠位端19がシールドされていることを確実なものとすることで、シャフト204のかなりの部分もまた、SUT40上の静電電界からシールドされることになる。図4a、図4b、図4cに描かれた構成では、シールド210の幅は、カンチレバーアーム12の幅よりも相当に大きい。シールド210はこれ以外の幅を持つものであってもよいが、シールド210は、カンチレバーアーム12の幅より少なくとも大きい。本発明のさまざまな実施の形態において、シールド210がカンチレバーアーム12よりも約5mm長く、8mm幅広であれば、適切なシールディングが得られると考えられる。
【0035】
力検出器200とシールド210は、同一またはほぼ同一の電位に維持されるものとできる。これは導電接続216によって図4aに図式的に示されているが、所望の結果は、電圧源を用いて、アーム12とシールド210の両方に同じ電圧を印加することによって達成可能である。カンチレバーアーム12とシールド210を同じ電位に保つために他の構成を採用することも可能で、これは両者の間に導体を設けることを含む。アーム12とシールド210の両方の電圧を同じに保つことで、先端16が据えられている場所以外の場所でSUT40上の電荷によって生じる電気気力は、カンチレバーアーム12あるいはプローブ14のシールドされた部分に与えられず、代わりにシールド210に与えられる。その結果、検出器200に与えられる力は、SUT40の特定の部分における電荷と関連する静電気力に限定されて、主としてシールド210とSUT40との間にあるプローブ14の部分、つまり大半がプローブ14の先端16に付与される。従来技術の装置と比べると、我々のシールドの構成は、静電気力検出器200へと与えられた静電気力を、より大きな割合で先端16からやって来たものとできる。我々の構成によれば、先端16に最も近い電荷以外の電荷から生じる静電気力をほぼ排除することができると考えられる。
【0036】
ここまで本発明に基づくEFDのあらましを述べたので、以下には本発明のさらなる詳細を述べる。
【0037】
電子写真などの場合においては、測定が求められるSUT40上の帯電による表面電位は非常に高く、例えば+/−1kVである。さらに、SUT40は、必要とされる空間分解能に対して非常に広く、よってSUT40についての有用な情報を得るには、多くの測定読み取りが必要となる。例えば多くの場合において、分析を受ける総面積は、およそ数百平方ミリメートルであり、必要な空間分解能は、およそ10マイクロメートルである。従来のケルビンフォース顕微鏡(KFM)は、10nm〜100nmの空間分解能で表面電圧を測定できる能力を持つが、KFMが現実的に測定可能な面積は数百平方マイクロメートルの範囲であり、これは電子写真で期待されるものと比べて非常に小さい。対照的に、センサとSUT40との間の容量結合を用いる従来技術の静電電圧計は、広範囲(例えば200mm)をスキャンできる能力を有するが、空間分解能は通常、数ミリメートル程度の低さにすぎない。理想的には、改良後のEFDは、一般的なKFMよりもずっと広範囲をスキャンできる能力を有し、+/−1kVの入力電圧範囲を有し、およそ10マイクロメートルの空間分解能を有するものである。
【0038】
我々の発明は、大きなシールドとの組み合わせでEFDに光てこ方式を適用し、電圧測定のためにカンチレバーアーム12の反りを検知するものであり、我々のEFDは、走査型プローブ顕微鏡(SPM)の一種として分類可能である。我々の発明は、SUT40上の電荷の存在によって生じるカンチレバーアーム12の振動における微小な変化を検出するものであって、シールド210は、特定の種類のSUT40、とりわけ感光性物質(例えば、光の存在に対して反応する感光体)を含むSUT40に対して光が及ぼす影響を減らすことができる。
【0039】
感光体の表面電位は、たとえ感光体が暗所に置かれていても自然と減衰する(すなわち、暗減衰)。我々のEFDは、実際に測定が行われた時に表面電位の正確な推定値を得るために、SUT40の特定の感光体の予期される暗減衰特性を補償する特徴を含むである。暗減衰特性を補正する一つの方法は、暗減衰率についての周知の情報と、電圧が印加された時と測定された時との間の時間差とを用いて、我々のEFDによって得られたデータを正規化することである。このような補正は、静電気力検出器200から静電気力情報を受け取り、SUT40に電位が与えられてからどれだけ時間が経過したかを特定し、経過時間に対応する補正値を選び、この補正値を静電気力検出器200から得られた静電気力情報に与えるようにプログラムされたコンピュータを用いることで達成可能である。
【0040】
ここに述べたシールド210は、さもなければSUT40の感光性物質を照らすことになる散乱および漏出レーザ光をシールド210が減らす、または無くすので、EFDによる表面電位測定値を改善可能な手段として利用可能である。また上述したように、このようなシールド210は、先端16以外の領域、例えばカンチレバーアーム12またはアーム12に最も近いシャフト204の部分、において静電気力が静電気力検出器200に作用する能力を低くするように配置され、かつ機能可能に構成されるものとできる。このようなシステムによって、我々の発明のEFDは、感光体のSUT40の静電潜像を検知するものとして構成可能であり、これは従来技術のEFDシステムを著しく進歩させるものである。
【0041】
既に述べた情報をいくつか繰り返すことになるが、以下の情報を述べる。
我々のEFDの実施の形態の模式図を図5に示す。図5に示すEFDでは、DCバイアス電圧(VDC)とACバイアス電圧(VACsinωt)が、同時に力検出器200とシールド210に印加される。シールド210とSUT40の間に位置する先端16は、SUT40に接近させられ(あるいはその逆)、SUT40上の電位による誘導によって生じた静電引力が原因のカンチレバーアーム12の動きが検知される。先端16が電位に近いと、検出器200に印加されたACバイアス電圧がアーム12を振動させ、この検知された振動が2つの周期的成分ωおよび2ωを含む。平行面モデル(図2参照)が我々のEFDを正確にモデル化しているならば、静電引力は特定可能であり、よって以下に改めて示す数式2および3(既述)に示されるように、2つの異なる力FωとF2ωを得ることが可能である。
【0042】
【数2】
【0043】
【数3】
【0044】
DCバイアス電圧がプローブ14に印加され、そのDCバイアス電圧がSUT40の表面電圧(ρd/ε)と等しい時、数式2から、Fωはゼロであると分かる。EFDで表面電位測定が行われる時はいつも、Fωがゼロになるようにバイアス電圧VDCが制御されるが、これはフィードバックループを制御することによって行い得る。この方法は、先端16とSUT40の間にアーク放電を起こすことなく、SUT40の表面電圧の測定を可能とする。この方法ではまた、高い空間分解能での測定も行える。
【0045】
(EFMを用いた感光体の表面電圧測定)
(光漏出抑制装置)
光てこ方式を採用した我々のEFDの実施の形態の動作中、カンチレバーアーム12上の反射面へとレーザ光が向けられる。測定持続時間を100秒とすると、我々の発明の一実施形態は、光漏出量を1.5nW未満に制御するものとできる。この条件を満たすために、我々の発明のその実施形態は、3つの改良点:(1)カンチレバーアーム12の形状の変更、(2)改良されたシールド210の使用、および(3)SUT40上の電位を測定するために用いられる手順の改良、のうち1つ以上を取り入れることができる。これら3つの改良点を以下に述べる。
【0046】
(カンチレバー形状の変更)
より効率的な光シールドであるために、本発明の実施の形態は、従来技術に見られるアームよりも幅広のカンチレバーアーム12を有するものとできる。しかしながら、カンチレバーアーム12の幅が広くなってその他の部分が変わらなければ、カンチレバーアーム12のばね定数が大きくなる。ばね定数はシステムの重要な要素(共振周波数や検出感度など)に影響を与えるので、ばね定数の変化は最小とすることが望ましく、これはカンチレバーアーム12の長さを伸ばすことで実現可能である。表1は、従来技術のカンチレバーアーム12と本発明のカンチレバーアーム12に関する情報を示す。
【0047】
【表1】
【0048】
図6との関連で、以下に表1についてさらに述べる。
(光シールド性能の確認)
上述のように我々は、カンチレバーアーム12の寸法を変え、従来技術に見られるカンチレバーアーム12よりも幅広で長いものとした。より幅広で長いアーム12を用いることで、光がSUTに到達することが防止できる。これに代えて、あるいはこれに加えて、我々の発明は、より大きなシールド210を配置し、SUT40に光が到達する能力を低くするためにシールド210にピンホール212を設けるものであってもよい。このようなシールド210はまた、シールド210とSUT40の間にあるプローブ14の部分へと静電気力を限定することで、静電気力検出器200への望ましくない静電気力を減らす。光がSUT40に到達するのを防ぐシールド210の能力を改善するために、ピンホール212の直径の大きさは、プローブ先端16の自由な動きを許容するのに必要なものより大きくならないように、慎重に決定されなくてはならない。
【0049】
図6は、我々の発明を用いることで得られる利点を示している。図6には3つのプロットが示されている。一番上のプロットは、表1に示された従来のカンチレバーの特徴を備えたEFMを用いて得られたデータを示す。真ん中のプロットおよび下側のプロットは、表1に示された新しいカンチレバーの特徴を備えたEFMを用いて得られたデータを示す。真ん中のプロットのデータは、直径500μmの孔212を有するシールドを用いて得られたもので、プローブシャフト204の直径は50μmである。下側のプロットのデータは、直径100μmの孔212を有するシールドを用いて得られたもので、プローブシャフト204の直径は50μmである。ここで、孔212を有する我々のシールドを用いることで、SUT40に到達する望ましくない光において、27%の減少が達成され、プローブシャフト204の直径に近づくように孔212を狭めることで、51%のさらなる減少が達成された。
【0050】
本発明の一実施形態において、我々は、レーザ22のレーザダイオードへの電流対漏出レーザ光の光パワーの関係を測定したが、その関係は図6に示されている。図6から、レーザ22のレーザダイオードへの電流が25mA未満に制御され、かつ本発明のシールド210が利用されていれば、漏出光パワーが1.5nW未満になったことが分かる。そういうわけで、我々の発明のシステムは、(従来技術のシステムに比べての)レーザ22への電力低減、および/または、レーザ22へ届けられる電力を調整する能力、も含み得る。あるいは、従来技術のシステムよりも低出力のレーザ22が用いられてもよい。
【0051】
(感光性物質に対する測定ルーチンの改善)
図7および上記説明に関してだが、我々のEFDの一実施形態では、検出回路30の一部である差動アンプから得られる電圧信号Vωを利用している。数式2を使うものとして構成された検出回路30によって感知された振動は、差動アンプへと与えられる。我々の発明の一実施形態のデータが図7に示されている。図7には、Vωと、SUT40の電圧とVDCの間の電圧差との関係が示されている。図7ならびに数式2から、Vωと電圧差との関係が一次関数として理解可能であることが分かる。
【0052】
測定中に、Vω(VDC−HIGH)およびVω(VDC−LOW)からVωがゼロとなるVDCを得ることを目的に、プローブ14へと所定範囲(VDC−HIGHからVDC−LOW)の初期DC電圧を印加することで、フィードバック制御が実施可能である。よって各電荷測定の開始前に、予想電圧範囲が決められる。このターゲット電圧および範囲は、AD/DAコンバータの入力範囲を調整するため、SUT上の電荷が正確に測定できるようにプローブ14にバイアスをかけるため、ならびに先端16とSUT40の間のアーク放電を防止するために用いられる。
【0053】
図8のフローチャートは、SUT40の電位測定を行い、かつEFMを適切に作動させるのに必要な経験を最小化する方法を示している。図8の方法に従うことで、静電気力検出器200によって測定されるべきターゲット電圧範囲が、そのような方法を用いずに行われるものと比べて、迅速に調整可能である。この説明において“ターゲット電位”はSUT40上の予想電位である。図8に関して、最初のステップは、ターゲット電位が予想範囲内にあるかどうかの確認を含むものとできる。これを行うために、推定電位が選ばれ、例えば、推定電位に所定の数を加えること、および推定電位から所定の数を引くことで範囲が定められる。このステップの一例として、例えば推定電位が0ボルトとされた時、範囲は40ボルトを加算および減算することで得られ、−40ボルトから+40ボルトまでの範囲(VDC−HIGHおよびVDC−LOWと呼ばれる)とできる。そして、VDC−LOWがプローブに印加され、電位測定値(VωVDC−LOW)、Vω−とも呼ばれる)が得られる。さらに別のステップでは、VDC−HIGHがプローブに印加され、電位測定値(VωVDC−HIGH)、Vω+とも呼ばれる)が得られる。次に、極性Vω−とVω+が比較され、極性が同一か、あるいは相違するかが判定される。極性が相違する場合、範囲は適切な位置にあり、その場所におけるSUT40上の電荷が測定可能である。だが極性が同一の場合には、範囲は上下にシフトされ、新たなペアの極性が求められ、比較される。このプロセスは、極性Vω−とVω+が相違するまで繰り返される。
【0054】
範囲を上下のどちらにシフトさせるか判断するために、極性Vω−とVω+が調べられ、極性が両方ともゼロ未満であれば、範囲は下にシフトされ、極性が両方ともゼロより大きければ、範囲は上にシフトされる。図8において、この移動は、先立つ推定電位に所定の電位(例えば40ボルト)を加算または減算することで行われる。
【0055】
このような方法を実行することで、SUT40とプローブ14の間のアーク放電が回避できる。例えば、プローブ先端16は最初、SUT40から遠い位置に置かれ、上述の方法が実行されて、電位を含む電位範囲を特定する。この範囲の選択後に、プローブ先端16は、アーク放電が起きないであろう程度にSUT40に向けて動かされ、先に選択した範囲を開始点として用いて該方法を再び実行し、極性が相違するまで範囲を変更する。新たな範囲が選択されるごとに、プローブ先端16は再び、アーク放電が起きないであろう程度にSUT40に向けて動かされ、該方法が再び繰り返される。このプロセスはプローブ先端16がSUT40から望ましい距離となるまで繰り返すことができ、このポイントでSUT40上の電荷が測定され、ユーザへと与えられる。すなわち、本発明の方法は、SUT40とプローブ先端16との間にアーク放電を生じるリスクなしにSUT40に近づくように徐々にプローブ先端16を動かすものとして考え得る。
【0056】
(EFMを用いた光減衰測定)
本発明の特定に実施形態に関して、我々は、我々の発明の光シールド210を備えたEFMならびに上述の我々の新たな測定ルーチンを用いて感光体を測定した。比較のために、我々は、従来の静電電位計(トレック社モデル347)を用いて同様に表面40の電位を測定した。同一の測定条件を確保するために、測定エリアでの相対湿度は、EFMと静電電位計の両方とも1.2%とした。EFMは、プローブ14が通過する直径100マイクロメートルのピンホール212を有するシールド210を含むものであった。プローブ14が孔212の中を延びる場所で、プローブの直径は50μmであった。レーザダイオードへの電流は7mAとされた。図9は、時間経過に伴う表面40の電位変化を示している。図9のX軸は、SUT40の感光体を帯電させてから経過した時間を表わす。EFMに関するデータと静電電位計に関するデータは、同一ではないにしても非常に似ている。この測定は、EFMと静電電位計に関してそれぞれ3回ずつ繰り返され、類似性はこの繰り返しによって確認された。したがって図9にプロットされた実験データは、(1)我々の発明のEFMは、レーザ22からの光がSUT40に測定可能な影響を及ぼすことを防止しつつ、感光体SUT40の表面電位を測定可能であること、および(2)我々の発明は、操作者が高レベルの専門技術を持たなくても、SUT40の表面電位を測定する能力をもたらし得る、ことを示している。なお、(レーザ光を用いた)EFMに関するデータは、(光を用いない)静電電位計に関するデータと非常に近いラインを描く。よって、たとえSUT40が感光性であったとしても、(光を用いる)我々の発明は、光を用いない装置と類似または同等のデータを取得するのに利用可能である。
【0057】
(感光体の静電潜像の測定)
我々は、我々の発明に基づくEFDを用いて感光体SUT40の静電潜像の測定に挑戦した。比較のため我々は、高移動性あるいは低移動性の、一般的な有機感光体を有するSUT40を用いた。SUT40感光体に電荷を与えるのには、スコロトロンが用いられた。スコロトロンのタングステンワイヤには−4kV、グリッドには−800Vを印加した。SUT40感光体に静電潜像を作り出すために、ビーム径が50マイクロメートルで波長が670nmのレーザ22が用いられた。静電潜像を作り出すに当たっては、露光時間を制御するためにパルス発生器が用いられた。表2は、露光エネルギ密度が1.7〜28.5mJ/mの範囲となるように制御されたことを示している。
【0058】
【表2】
【0059】
テスト結果は、図10および図11に示されている。プロットの傾きは、感光体の暗減衰の作用を示している。図10図11のそれぞれにおいて、検出器のスキャン方向は、各グラフの右から左となっている。いずれの感光体においても、露光エネルギ密度の増加に伴って静電潜像の中央において著しい電位変化が起こる傾向が確認できた。低移動性の感光体に関するデータと比べると、高移動性の感光体に関するデータの後半では、データがより分散していることが分かる。
【0060】
我々は、いくつかの異なる露光エネルギ密度レベルで静電潜像電位を取得した。これらのデータを図12に示す。予想どおり図12は、低移動性の感光体と比べて、高移動性の感光体からの静電潜像は、電位の振れが大きいことを示している。
【0061】
我々は、SUT40感光体の表面電位ならびに静電潜像を測定した。光シールド210を備えた我々のEFD、およびSUT40感光体の表面電位測定のための測定ルーチンは、優れた結果をもたらした。さらに我々のデータは、移動性が異なる場合でも我々のEFDを用いて潜像を検出できることを示しており、我々のEFDに感光体の移動性の違いを表現する能力があることを立証している。
【0062】
本発明を、1つ以上の特定の実施の形態に関して説明したが、当然ながら本発明は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、他の形態でも実施可能である。よって本発明は、添付のクレームおよびその合理的解釈のみによって限定されるものとみなされる。
図1a
図1b
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】